説明

形状測定方法、これを用いた加工方法、および形状測定装置

【課題】表面形状の設計値が複数の関数によって定義される場合にも、測定データのアライメント補正を行った上で被測定体の表面形状の設計値からのずれ量として測定することができるようにする。
【解決手段】表面形状の設計値を複数の関数で定義する形状定義工程(S1)と、表面形状の測定データを取得するデータ取得工程(S2)と、測定データを関数の定義域ごとの部分群に区画するデータ区画工程(S3)と、部分群による表面形状の設計値からのずれ量を表す移動パラメータを推定する解析工程(S4、S7、S11)と、この移動パラメータを用いて測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成するアライメント補正工程(S5、S8、S12)と、補正済測定データと複数の関数との偏差を形状誤差として算出する形状誤差算出工程(S13)と、を備える形状測定方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定方法、これを用いた加工方法、および形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物を加工して形成された表面形状を測定する形状測定方法として、表面形状の測定データを表面形状の設計値からの偏差として測定することが行われている。この形状測定方法では、形状誤差測定装置における被加工物の保持位置の誤差によって生じる測定誤差を補正するため、測定データ全体に対して平行移動と回転移動とからなる座標変換を施して、設計値からの偏差が最小となるように、測定データの位置補正(アライメント補正)を施し、この補正後の測定データと設計値との偏差を形状誤差として求めることが行われている。
このような形状測定方法を用いた形状測定装置では、予め被加工物の表面形状の設計値の情報を記憶しておく必要がある。このとき、表面形状が複雑な構成であると、汎用的な形状測定装置では設計式が入力できないため、専用仕様の形状測定装置が必要になっていた。
このため、例えば、特許文献1には、形状設計式に基づき加工された被測定物の形状を検出する測定部と、この測定部にて得られた測定形状データを入力して被測定物表面と形状設計式に基づく設計形状データとの差を求めるデータ処理手段を有する演算処理装置とを具備するとともに、上記データ処理手段を、予め組み込まれた形状設計式に基づき設計形状データを演算するためのライブラリファイルを格納するライブラリ部と、このライブラリ部からライブラリファイルを読み込むとともに上記測定部から入力された測定形状データと設計形状データとの差を演算する演算部と、上記ライブラリ部から上記演算部に読み込まれるライブラリファイルに設計パラメータの値を与える設計パラメータ入力部とから構成し、さらに上記ライブラリ部に組み込まれた形状設計式以外の新たな形状設計式を定義し得るとともにそのライブラリファイルを作成し得る設計式作成手段を具備し、且つこの設計式作成手段にて作成されたライブラリファイルを、上記ライブラリ部に格納し得るように構成し、設計形状データを演算するライブラリファイルに、形状設計式の偏微分式またはこの偏微分式の近似値を計算する近似計算式を含ませたことを特徴とする形状測定装置が記載されている。
この形状測定装置では、ライブラリ部に形状設計式に基づく設計形状データと、形状設計式の偏微分式を記憶することができるため、表面形状が適宜の形状設計式で表されるものであっても、形状測定装置の位置補正機能を用いて位置補正を行って形状誤差を測定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4462772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記のような従来の形状測定方法においては、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、表面形状が1つの形状設計式(関数)で表される場合に、ユーザ側にて独自の設計式を組み込むことができるようになっているが、表面形状が複数の形状設計式(関数)で表される場合には、複数の形状設計式(関数)の組合せによって表面形状を設定することができないため、測定が行えないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、被測定体の表面形状の設計値が複数の関数によって定義される場合にも、測定データのアライメント補正を行った上で被測定体の表面形状の設計値からのずれ量として測定することができる形状測定方法、これを用いた加工方法、および形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、被測定体の表面形状を測定する形状測定方法であって、前記表面形状の設計値を複数の関数で定義する形状定義工程と、前記表面形状を測定して、前記表面形状の測定データを取得するデータ取得工程と、前記測定データを前記関数の定義域ごとの部分群に区画するデータ区画工程と、前記部分群による表面形状の設計値からのずれ量を表す移動パラメータを推定する解析工程と、該解析工程で推定された前記移動パラメータを用いて前記測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成するアライメント補正工程と、前記補正済測定データと前記複数の関数との偏差を形状誤差として算出する形状誤差算出工程と、を備える方法とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の形状測定方法において、前記部分群のうち互いに隣り合って境界で接続する2つの部分群を第1の部分群および第2の部分群と称し、前記第1の部分群における前記境界を終点、前記第2の部分群における前記境界を始点と称し、前記第1および前記第2の部分群に対して行う前記解析工程および前記アライメント補正工程をそれぞれ第1および第2の解析工程、第1および第2のアライメント補正工程と称するとき、前記第1の解析工程と前記第1のアライメント補正工程とをこの順に行った後に、前記始点がアライメント補正後の前記終点と一致するとともに、前記始点での微分係数がアライメント補正後の前記終点での微分係数と一致するように、前記第2の部分群の測定データの座標変換を行うデータ変換工程を行い、該データ変換工程で座標変換された後の前記第2の部分群の測定データに対して、前記第2の解析工程および前記第2のアライメント補正工程をこの順に行い、該第2のアライメント補正工程後に、前記形状誤差算出工程を行う方法とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の形状測定方法において、前記第2のアライメント補正工程と前記形状誤差算出工程との間に、アライメント補正された前記終点における微分係数と、アライメント補正された前記始点における微分係数との差による傾き偏差を計算し、該傾き偏差が予め設定された許容値以下かどうかを判定する収束判定工程を備え、該収束判定工程において、前記傾き偏差が許容値以下の場合には、前記形状誤差算出工程を行い、前記傾き偏差が許容値を超えた場合には、前記収束判定工程における前記測定データに基づいて、前記データ変換工程、前記第2の解析工程、前記第2のアライメント補正工程、および前記収束判定工程をこの順に繰り返す方法とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の形状測定方法において、前記解析工程では、前記移動パラメータを前記部分群のすべてに共通な値として推定する方法とする。
【0010】
請求項5に記載の発明では、加工方法において、加工目標の表面形状が複数の関数で定義された被加工物を加工し、該被加工物を前記被測定体として請求項1に記載の形状測定方法によって、前記被加工物の前記加工目標の表面形状に対する形状誤差を測定し、該形状誤差が予め設定された許容値を超える場合に、前記形状誤差を修正するように前記被加工物の再加工を行う方法とする。
【0011】
請求項6に記載の発明では、被測定体の表面形状を測定する形状測定装置であって、前記表面形状の設計値を定義する複数の関数の情報を記憶する関数記憶部と、前記被測定体の表面形状を測定して該表面形状の測定データを生成する測定データ生成部と、前記測定データを取得するデータ取得部と、前記測定データを前記関数の定義域ごとの部分群に区画するデータ区画部と、前記部分群による表面形状が対応する前記関数からの移動によって得られるとしたときの移動量を表す移動パラメータを推定する解析部と、該解析部で推定された前記移動パラメータを用いて前記測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成するアライメント補正部と、前記補正済測定データと前記複数の関数との偏差を形状誤差として算出する形状誤差算出部と、を備える構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の形状測定方法および形状測定装置によれば、測定データを複数の関数の定義域ごとの部分群に区画して、各部分群がそれぞれ対応する関数に対する移動量を推定して、測定データのアライメント補正を行うことができるため、被測定体の表面形状の設計値が複数の関数によって定義される場合にも、測定データのアライメント補正を行った上で被測定体の表面形状の設計値からのずれ量として測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る形状測定装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る形状測定装置の制御ユニットの機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る形状測定装置で測定する被測定体の一例を示す模式的な断面図、および被測定体の第1面の表面形状を表す模式的なグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法の工程フローを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法の解析工程およびアライメント補正工程を説明する模式的なグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る加工方法に用いる加工装置の概略構成を示す模式的な平面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法によって得られた形状誤差のデータの一例を示す模式的なグラフ、および加工データの求め方の一例を説明する模式的なグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る形状測定方法の工程フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る形状測定装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法に用いる形状測定装置の概略構成を示す模式的な正面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法に用いる形状測定装置の制御ユニットの機能構成を示す機能ブロック図である。図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法に用いる被測定体の一例を示す模式的な断面図である。図3(b)は、被測定体の第1面の表面形状を表す模式的なグラフである。
【0016】
本実施形態の形状測定装置50は、図1に示すように、基台20、被測定体支持部1、第1の位置検出部9、支持台部3、および測定部7を備え、図2に示すように、形状測定装置50の測定動作を制御する制御ユニット8を備える。
【0017】
基台20は、平坦に形成された上面に、被測定体支持部1、第1の位置検出部5、および支持台部3を水平面上に支持するベース部材である。
以下では、形状測定装置50内の相対的な位置を参照する際に、形状測定に用いるxyz座標系を用いて説明する場合がある。このxyz座標系は、鉛直軸をy軸とし、基台20の上面に平行な水平面がzx平面となる座標系である。図1では、z軸は紙面左右方向、x軸は紙面垂直方向であり、z軸の正方向は左から右に向かう方向、x軸の正方向は、紙面手前側から奥側に向かう方向である。
【0018】
被測定体支持部1は、被測定体2を保持し、x軸に沿う方向に移動可能に支持するものである。
被測定体支持部1の概略構成は、被測定体2をその径方向外側から押さえ、被測定体2の外形の中心軸線によって決まる基準軸線Pがz軸に平行となる姿勢で保持する保持台1aと、側面に保持台1aを固定し保持台1aをx軸に沿って移動する移動体1bと、制御ユニット8に電気的に接続され制御ユニット8からの制御信号に応じて移動体1bを駆動する駆動機構1cとを備える。
駆動機構1cとしては、適宜の直動機構を採用することができる。例えば、ねじ送り機構およびモータを備える構成や、リニアモータなどの直動機構を採用することができる。
【0019】
被測定体2としては、表面形状が複数の関数で表される部材であって、表面形状を測定することができる部材であれば、特に限定されない。ここで「複数の関数で表される」とは、表面形状を表す関数が異なる関数の組合せからなり、表面形状を表す関数の定義域がこれらの異なる関数に対応する複数の定義域に区画できることを意味する。例えばステップ関数U(x)は数学的には1つの関数と見なされているが、定義域x<0でU(x)=0、定義域x≧0でU(x)=1となる関数であるため、本明細書では異なる2つの定数関数を見なす。また、ステップ関数等を用いて形式的に1つの関数形に書き表された場合も同様である。
被測定体2の具体例としては、例えば、レンズ等の光学素子、レンズ等の光学素子を成形する金型などの例を挙げることができる。
また、被測定体2の被測定面の形状も特に限定されない。
【0020】
以下では、被測定体2の一例として図3(a)に示すレンズの場合で説明する。
被測定体2は、凸面からなる第1面2Aと、凸面からなる第2面2Bとを有し、これらの外周側に円環状のフランジ部2Cが形成されている。フランジ部2Cの側面は、精度が良好な円筒面として形成され、被測定体2の径方向の基準外形を構成している。この基準外形の中心軸線は被測定体2の基準軸線Pを構成している。
被測定体2の加工では、第1面2Aおよび第2面2Bの光軸Oと基準軸線Pと同軸とすべく芯合わせが行われるが、基準軸線Pと光軸Oとの間には、加工誤差によるシフトずれ、チルトずれが存在している。
【0021】
第1面2Aは、光軸Oを中心として直径dの円内に形成されたレンズ面2aと、直径Dから外周側に距離rだけ延ばされ内径d、外径d=d+2rの円環状領域に形成された接続面2bと、フランジ部2Cの端面である直径d(ただし、d>d)のフランジ面2cとからなる。
レンズ面2aは、1つの関数f(x)によって光軸Oを含む断面の表面形状が表される凸面であり、直径dはレンズ有効径になっている。関数f(x)としては、例えば、球面や回転対称非球面などを表す関数を採用することができる。図3(a)において点dは、レンズ面2aの面頂を示す。
フランジ面2cは、光軸Oに直交する平面である。
接続面2bは、レンズ面2aとフランジ面2cとを接続する湾曲面であり、1つの関数g(x)で表される。また、本実施形態では、レンズ面2aおよびフランジ面2のいずれにも滑らかに接続されている。
すなわち、光軸Oを含む断面におけるフランジ面2cと接続面2bとの境界の点を点b、f、接続面2bとレンズ面2aとの境界の点を点c、eとすると、点b、f、c、eでは、接線の傾きが連続的に変化している。なお、点a、gは、フランジ面2cの最外位置の点を示す。
【0022】
このため、形状測定装置50に設定されたxyz座標系において、光軸Oをz軸に整列させた場合の、被測定体2の水平方向(zx平面に沿う方向)の断面における第1面2Aの表面形状をzとすると、表面形状zは、図3(b)に示すように、微分可能な関数f(x)、g(x)、h(x)を用いて、次式(1)、(2a)、(2b)、(3a)、(3b)で表される。ただし、かっこ内は、定義域D、DB1、DB2、DC1、DC2を表す。
また、関数h(x)は、本実施形態では定数関数である。
図3(b)において、グラフ上の点q、q、q、q、q、q、qは、それぞれ図3(a)の点a、b、c、d、e、f、gに対応する。
【0023】
z=f(x) (D={x|−X≦x≦X}) ・・・(1)
z=g(x) (DB1={x|X≦x≦X}) ・・・(2a)
z=g(x) (DB2={x|−X≦x≦−X}) ・・・(2b)
z=Z(=h(x)) (DC1={x|X≦x≦X}) ・・・(3a)
z=Z(=h(x)) (DC2={x|−X≦x≦−X}) ・・・(3b)
=d/2 ・・・(4)
=d/2 ・・・(5)
=d/2 ・・・(6)
【0024】
また、関数f(x)、g(x)、h(x)の導関数をそれぞれf’(x)、g’(x)、h’(x)と表すと、境界で滑らかに接続する条件は、境界での微分係数が一致することである。この条件は、次式(7a)、(7b)、(8a)、(8b)で表される。各導関数は既知であるため、各微分係数の値も既知である。
【0025】
f’(X)=g’(X) ・・・(7a)
f’(−X)=g’(−X) ・・・(7b)
g’(X)=h’(X) ・・・(8a)
g’(−X)=h’(−X) ・・・(8b)
【0026】
例えば、レンズ面2aが回転対称非球面の場合には、関数f(x)は、次式(9)によって表される。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、Cは近軸曲率半径の逆数である曲率半径定数、Kは円錐定数、Nは非球面係数の個数、2Nは非球面次数、C、…、C2Nは非球面係数である。
なお、ここでは、偶数次のみの非球面係数を用いた軸対称非球面式の例を挙げたが、例えば、奇数項をC2i−1|x|2i−1として入れた軸対称非球面式を採用してもよい。
【0029】
なお、第2面2Bも同様にして複数の関数で表される表面形状を有するが、第2面2Bの詳細説明は省略する。
【0030】
第1の位置検出部9は、被測定体支持部1に保持された被測定体2のx軸方向の位置を検出するものである。被測定体2の位置は、例えば、保持台1aが固定された移動体1bの移動位置を検出することによって検出することができる。第1の位置検出部9の具体例としては、例えば、光学スケールとスケール読み取りセンサとの組合せや、レーザ測長器などを採用することができる。
第1の位置検出部9は、制御ユニット8に電気的に接続され、検出した被測定体2のx軸方向の位置情報を制御ユニット8に送出できるようになっている。
【0031】
支持台部3は、被測定体支持部1に保持された被測定体2に対向する位置に、測定部7を保持するためのもので、基台20上に固定された支持基台3Aと、測定部7を支持する支持板3Cと、支持基台3A上に設けられ支持板3Cを水平面に対する傾斜角を調整可能に支持する傾斜角調整部3Bとを備える。
【0032】
傾斜角調整部3Bは、本実施形態では、測定部7をz軸正方向から負方向に向かって下向きとなるようにx軸回りに微小に傾斜させることで、傾斜方向に測定部7に作用する重力の分力を発生させるためのものである。このような微小な傾斜による重力の分力によって、後述する測定プローブ6から被測定体2に対して、微小な押圧力が発生するようになっている。
傾斜角調整部3Bの構成は、本実施形態では、支持基台3A上で被測定体支持部1に近い側と遠い側の2箇所にz軸方向に離間して配置され、それぞれ鉛直方向に独立に進退する角度調整部材3a、3bが設けられている。
角度調整部材3a、3bの進退量の調整は、本実施形態では、角度調整部材3a、3bの下端部に設けられるとともに制御ユニット8に電気的に接続された図示略のモータによって行うようにしている。また、角度調整部材3a、3bの上端部は、支持板3Cの下面において、ピン支点を構成する回転ジョイントもしくは回転可能な支持部材を介して連結されている。
このため、角度調整部材3a、3bの進退量の差によって、支持板3Cのx軸回りの傾斜角を微調整することができる。
なお、傾斜角調整部3Bは、例えば、角度調整部材3a、3bを進退させるねじ送り手段等の機械的手段を設けて手動で調整するようにしてもよい。
【0033】
測定部7は、被測定体支持部1に保持された被測定体2の表面形状を測定する装置部分であり、測定プローブ6と、支持板3C上に設けられたスライダ4および第2の位置検出部5とを備える。
測定プローブ6は、被測定体支持部1に保持された被測定体2の表面に当接する触針部6aと、触針部6aを支持する棒状の胴体部6bとを備える。
触針部6aは、球状、もしくはクサビ型形状に設けられている。
【0034】
スライダ4は、測定プローブ6の胴体部6bの基端部に固定された棒状のスライダ移動部4bと、スライダ移動部4bをその軸方向に沿って進退可能に保持するスライダ支持部4aとを備える。
スライダ移動部4bの移動方向は、支持板3Cが水平に配置された際に、z軸に沿う方向になっている。
スライダ4の構成は、直動移動機構であれば特に限定されず、適宜の直動ガイドを採用することができるが、本実施形態ではエアスライダを採用している。このため、スライダ支持部4aには水平方向に貫通する開口部が形成されており、開口部の内側には、図示略のエア供給部が設けられている。これにより、開口部を貫通するスライダ移動部4bが浮動して支持され、開口部の貫通方向に進退可能に支持されている。
なお、図示略のエア供給部と、スライダ移動部4bとの間の隙間は、非常に狭く、かつスライダ移動部4bの自重に対して充分な軸受剛性を備えており、鉛直方向の振動は抑制されている。
スライダ4の材質は、例えば、セラミックス、鉄などの金属材料、もしくはガラス材料を採用することができる。
【0035】
第2の位置検出部5は、スライダ移動部4bの移動位置を検出するためのものである。第2の位置検出部5は、制御ユニット8に電気的に接続され、検出したスライダ移動部4bのz軸方向の位置情報を制御ユニット8に送出できるようになっている。
第2の位置検出部5の具体例としては、例えば、光学スケールとスケール読み取りセンサとの組合せや、レーザ測長器などを採用することができる。
【0036】
このような構成により、傾斜角調整部3Bによって、支持板3Cが傾斜されると、スライダ支持部4aに浮動支持されたスライダ移動部4bは、自重によって傾斜に沿って移動する。これにより、スライダ移動部4bの先端側の測定プローブ6が、被測定体支持部1に保持された被測定体2に微小な分力によって押圧され、触針部6aが被測定体2の表面に当接する。
この状態で、駆動機構1cが駆動されて、測定プローブ6に対して被測定体2がx軸方向に移動すると、触針部6aは被測定体2の表面の凹凸形状に倣ってz軸方向に移動することになる。
このため、第2の位置検出部5によって検出されるスライダ移動部4bの位置情報は、被測定体2の表面形状のz軸方向の位置に対応する位置情報になっている。また、第1の位置検出部9によって検出される位置情報は、被測定体2の表面における触針部6aのx軸方向の位置に対応する位置情報になっている。
【0037】
したがって、第1の位置検出部9および第2の位置検出部5の原点、正負の方向を適宜設定することにより、第2の位置検出部5による位置情報は、被測定体支持部1の保持中心軸を通るxz座標系における被測定体2の表面形状のz座標の測定値、第1の位置検出部9による位置情報はx座標の測定値を表すことができる。
このため、測定部7、駆動機構1c、第1の位置検出部9、および第2の位置検出部5は、被測定体2の表面形状を測定して表面形状の測定データを生成する測定データ生成部を構成している。特に、本実施形態では、被測定体2の表面に測定プローブ6を走査して、測定プローブ6の動きに基づく表面形状の測定データを生成する測定データ生成部になっている。
【0038】
制御ユニット8の機能構成は、図2に示すように、装置制御部14、関数記憶部13、データ取得部10、データ区画部11、および演算処理部12を備える。
【0039】
装置制御部14は、形状測定装置50の装置全体の制御を行うものである。例えば、駆動機構1c、傾斜角調整部3Bと電気的に接続され、これらに制御信号を送出することにより、駆動機構1cの移動と、傾斜角調整部3Bの傾斜角の調整とを行うことができるようになっている。
装置制御部14には、例えば、キーボード、マウス、操作ボタン等の入力手段を備える入力部15が接続されており、入力部15を介して測定者から操作入力される情報に基づいて、駆動機構1cの移動量や傾斜角調整部3Bの傾斜角の設定を行うことができる。
また、入力部15は、被測定体2の被測定面を定義する複数の関数の情報も入力できるようになっている。
関数の情報としては、関数形の情報と、関数の定義域の情報とがある。入力の仕方は、特に限定されないが、本実施形態では図示略のモニタ上の入力画面を介して対話的に入力できるようになっている。例えば、後述する関数記憶部13には、種々の関数形に対応する演算プログラムが内蔵されており、装置制御部14は、これらの内蔵された関数の情報を関数記憶部13から取得してモニタに表示することができる。また、測定者はこの表示を見て、入力部15を通して、これらの関数を適宜選択することができる。また、これら関数に含まれる係数等のパラメータを数値入力して設定することができる。
また、関数の定義域は、上下限の数値を数値入力して設定することができる。
入力部15から入力されたこれら関数の情報は関数記憶部13に送出されるようになっている。
【0040】
また、装置制御部14は、入力部15から測定開始の操作入力がなされた場合には、予め設定された測定動作の制御を行う。
例えば、駆動機構1cを予め設定された測定開始位置から測定範囲内を一定の速度で自動的に移動させる制御を開始するとともに、データ取得部10に制御信号を送出して、第1の位置検出部9および第2の位置検出部5から、被測定体2の位置および測定プローブ6の位置を一定周期で取得させる制御を開始させる。
また、予め設定された測定が終了したら、これらの動作を終了させ、データ取得部10が取得した測定データの演算処理を開始させる制御を行う。
【0041】
関数記憶部13は、表面形状の設計値を定義する複数の関数の情報を記憶するものであり、装置制御部14、データ区画部11、および演算処理部12と通信可能に接続されている。
関数記憶部13には、種々の関数を記憶する関数記憶領域と、入力部15を通して入力され、装置制御部14から送出された、関数の情報を記憶する設定値記憶領域とが設けられている。
【0042】
データ取得部10は、第1の位置検出部9、第2の位置検出部5、および装置制御部14と電気的に接続され、装置制御部14からの制御信号に基づいて第1の位置検出部9および第2の位置検出部5から測定データを取得するものである。
すなわち、装置制御部14から測定開始の制御信号を受信すると、予め設定されたサンプリング周期で、第1の位置検出部9および第2の位置検出部5から送出される位置情報を取得して記憶していく。
なお、サンプリング周期は、被測定面の設計値である複数の関数の各定義域の境界に相当する位置での測定データが含まれるように適宜設定しておく。
装置制御部14から測定終了の制御信号が送出されると、取得した位置情報を、xz座標系の点列からなる測定データとして、データ区画部11に送出する。
例えば、測定データとして得られたN個の点列Q、Q、…、QN−1と表すと、各測定データは、次式(10)のように表される。
【0043】
=(x,z) (ただし、n=0,…,N−1) ・・・(10)
【0044】
データ区画部11は、測定データを被測定面の表面形状を表す複数の関数の定義域ごとの部分群に区画するものである。
定義域の情報は関数記憶部13の設定値記憶領域に記憶されている。このため、データ区画部11は関数記憶部13の設定値記憶領域から関数の定義域の情報を取得することができる。
すなわち、データ区画部11は、被測定面である第1面2Aを表す複数の関数の定義域D、DB1、DB2、DC1、DC2を取得することができるため、これらの数値範囲に対応して区画された部分群を生成し、測定データを次式(11)、(12a)、(12b)、(13a)、(13b)のように、複数の2次元配列A、B、B、C、Cに格納する。以下では、これらの2次元配列を、部分群A、B、B、C、Cと称する場合がある。
これらの2次元配列は、演算処理部12に送出される。
【0045】
【数2】

【0046】
ここで、K、KB1、KB2、KC1、KC2は、それぞれ定義域D、DB1、DB2、DC1、DC2に含まれる点の個数である。
なお、以下では、各配列の要素について標記する場合には、例えば、配列の添字をkとして、A(k)=(xAk,zAk)のように表記する。
【0047】
演算処理部12は、データ区画部11および関数記憶部13と通信可能に接続され、データ区画部11から送出された部分群に区画された測定データに演算処理を施して、最終的に測定データから表面形状の設計値に対する形状誤差を算出するものである。この演算処理は、後述する動作説明の中で詳しく説明する。
また、演算処理部12は、出力部16と電気的に接続され、算出した形状誤差を出力部16に出力できるようになっている。
出力部16の例としては、形状誤差を数値やグラフとして表示するモニタや、表示を印字するプリンタや、形状誤差の数値をデータとして保存するハードディスク等の記憶装置のうちの1以上を挙げることができる。
また、形状誤差を加工に用いる場合には、出力部16は加工装置であってもよい。
【0048】
制御ユニット8の装置構成は、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などを有するコンピュータからなり、これにより上記のような制御機能、演算機能に対応する制御プログラム、演算プログラムを実行することで、上記のような制御機能、演算機能が実現されるようになっている。
【0049】
次に、形状測定装置50の動作について、本実施形態の形状測定方法を中心に説明する。
なお、形状測定装置50は、フランジ面2cも含めた第1面2A全体の形状測定を行うことができるが、簡単のため、レンズ面2aと接続面2bの範囲のみを形状測定するとして説明し、必要に応じてフランジ面2cの測定を行う場合についての説明を補足する。このような説明であっても、フランジ面2cも含めて測定する場合の形状測定方法は当業者には容易に理解される。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法の工程フローを示すフローチャートである。図5(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法の解析工程およびアライメント補正工程を説明する模式的なグラフである。
【0050】
形状測定装置50を用いて被測定体2のレンズ面2a、接続面2bを被測定面とする形状測定を行うには、図4に示すフローチャートにしたがって、ステップS1〜S14を行う。
ステップS1では、形状定義工程を行う。
本工程は、被測定体2の表面形状の設計値を複数の関数で定義する工程である。
被測定体2は、レンズであるため、すでに、レンズ設計に用いた設計式やレンズ加工データを与える数式等によって第1面2Aの形状が定義されている。このため、第1面2Aの形状の関数形と定義域とは既知であり、例えば、上記式(1)、(2a)、(2b)、(4)、(5)のように表される。
そこで測定者は、入力部15を介して、関数の情報であるこれらの関数形と定義域とを対話的に入力する。装置制御部14は、入力された関数の情報を関数記憶部13に送出する。
以上で、ステップS1が終了する。
【0051】
次にステップS2では、データ取得工程を行う。
本工程は、被測定体2の表面形状を測定して、表面形状の測定データを取得する工程である。
測定者は、図1に示すように、被測定体2の基準軸線Pを水平に配置し、第1面2Aが測定部7側に向くように被測定体2を被測定体支持部1に保持させてから、入力部15から測定開始の入力を行う。
装置制御部14は、入力部15からの測定開始の入力を検出すると、駆動機構1cを駆動して、移動体1bをx軸正方向に移動して、被測定体2の形状測定範囲において最もx軸負方向側の位置である点b(図3(a)参照)に測定プローブ6を対向させる。
次に装置制御部14は、傾斜角調整部3Bを駆動して、支持板3Cの水平面に対する傾斜角を予め設定された傾斜角に設定する。これにより、スライダ移動部4bにその自重の分力が作用し、スライダ移動部4bが被測定体2に向かう方向にスライド移動する。そして、先端側の触針部6aが第1面2Aの点bに当接する。
【0052】
装置制御部14は、この状態から駆動機構1cをx軸負方向に駆動開始するとともに、データ取得部10に測定データの取得開始の制御信号を送出する。
これにより、触針部6aは、第1面2Aに対して相対的にx軸正方向側に移動するともに、第1面2Aの凹凸にならってz軸方向に変位する。
このため、触針部6aは、時間とともに、図3(a)に示す点b、c、d、eを順次通過して、形状測定範囲において第1面2Aの最もx軸負方向側の点fに到達する。
【0053】
このような相対移動が行われ、第1面2A上を触針部6aが走査する間に、第1の位置検出部9は、被測定体2のx軸方向の位置を検出して、逐次、データ取得部10に位置情報を送出する。
また、第2の位置検出部5は、スライダ移動部4bのx軸方向の移動位置を検出して、逐次、データ取得部10に位置情報を送出する。
【0054】
データ取得部10は、第1の位置検出部9および第2の位置検出部5からの位置情報を一定サンプリング周期でサンプリングし、離散的な測定データとして取得する。
この測定データは、上記式(10)で表される点列{Q}として、データ区画部11に送出される。ここで、添字nは適宜設定することができるが、以下では、測定順に付与するものとし、添字の相対的に小さい添字を有する測定データが相対的にx軸負方向側の測定データになっているものとする。
なお、点列{Q}における座標(x、z)は、形状測定装置50に固有のxyz座標系に基づいており、被測定体支持部1の保持中心軸がz軸に一致されている。
図5(a)に、測定データと設計値の関係をグラフで示した。図5(a)のグラフにおいて、実線は、z=f(x)、z=g(x)で表される設計値のグラフであり、破線は、点列{Q}を模式的に示したものである。
測定データは、|x|が大きい径方向外側で、設計値からのずれ量が大きいが、これは加工誤差の他に、第1面2Aの光軸が被測定体支持部1の保持中心軸からずれた状態に保持されることに起因する誤差を含んでいる。このような測定時の保持位置のずれや上述した被測定体2の基準軸線Pと光軸Oとのずれに起因する誤差は、測定データの全体に関わる誤差であり、第1面2Aの設計値に対する形状誤差とは異なる誤差である。このような形状誤差を除く誤差であって、測定データ全体に一様に寄与する誤差を、以下では位置ずれ誤差と称する。図5(a)では、見易さのため、位置ずれ誤差を誇張し、形状誤差がほとんどないような図示としている。
以上でステップS2が終了する。
【0055】
なお、フランジ面2cも含めて形状測定を行う場合には、形状測定範囲を点a〜点gまでの範囲とする。
【0056】
次にステップS3では、データ区画工程を行う。
本工程は、測定データを関数の定義域ごとの部分群に区画する工程である。
データ区画部11は、関数記憶部13に記憶された第1面2Aを定義する関数の定義域の情報を取得し、送出された点列{Q}を、各定義域に対応する部分群に区画する。
具体的には、点列{Q}のxが定義域D、DB1、DB2のいずれに属するかを、添字nの昇順に判定し、点(x,z)を、各定義域に対応する2次元配列A、B、Bに順次格納する。このとき、互いに隣接する定義域の境界の点は、隣接する各定義域に格納する。
このようにして、点列{Q}の部分群として、上記式(11)、(12a)、(12b)に示すような2次元配列A、B、Bが生成され、演算処理部12に送出される。
以上で、ステップS3が終了する。
【0057】
なお、フランジ面2cも含めて形状測定を行う場合には、点列{Q}の部分群として、2次元配列A、B、Bに加えて、上記式(13a)、(13b)に示す2次元配列C、Cが生成される。
【0058】
本実施形態の形状測定方法では、測定データの設計値からのずれ量を最小化する測定データのアライメント補正を行うことにより、形状誤差を測定する。アライメント補正の際のデータの移動量は位置ずれ誤差になっている。
その際、本実施形態では、複数の部分群のうちから選択した第1の部分群のアライメント補正を行ってから、この第1の部分群に隣接する第2の部分群を、補正後の第1の部分群との境界の点での接続条件が満足されるように座標変換した状態で、第2の部分群の測定データのアライメント補正を行い、必要に応じて第2の部分群の座標変換およびアライメント補正を繰り返すことにより、測定データの全体をアライメント補正する。
以下のステップS4〜S13では、一例として、第1の部分群が2次元配列A、第2の部分群が2次元配列B、Bの場合の例で説明する。これは、本実施形態の例の被測定体2では、レンズ面2aの形状の測定範囲が広く、また測定データの個数も多いため、例えば2次元配列Bを第1の部分群とするよりもアライメント補正の精度が良好となると考えられるからである。
ただし、第1の部分群の選択基準としては、測定データ数に限らず、他にも、例えば、面形状や加工能力から形状誤差が小さいと推定される面に対応する部分群を選択する、といった選択基準でもよい。
【0059】
ステップS4では、部分群Aを対象として第1の解析工程を行う。
本工程は、第1の部分群である2次元配列Aの表す表面形状の設計値からのずれ量を表す移動パラメータを推定する工程である。
測定データの位置ずれ誤差は、設計値からの平行移動のずれ量であるシフト誤差Δx、Δzと、設計値からの回転移動のずれ量であるチルト誤差θとによって表すことができる。本実施形態では、移動パラメータとしては、シフト誤差Δx、Δz、チルト誤差θを採用している。
【0060】
本工程では、演算処理部12によって、部分群Aの移動パラメータとしてのシフト誤差Δx、Δz、チルト誤差θを推定する演算を行う。推定方法としては、最小二乗法を採用している。
部分群Aが位置ずれ誤差としてシフト誤差Δx、Δz、チルト誤差θを有している場合に、部分群Aの各点(xAk,zAk)の加工誤差がないときに対応する点(x,z)と設計値の点(x,z)は、(x,z)を移動パラメータと逆方向に平行移動、回転移動させればよいため、次式(14)、(15)で表される。
【0061】
【数3】

【0062】
これらの移動パラメータは、演算処理部12が行う最小二乗法の演算処理によって求められる。すなわち、次式(16)で表される残差平方和S(Δx,Δz,θ)が最小値を取るΔx、Δz、θの値として求められる。
ただし、次式(16)における(x,z)は、次式(17)、(18)に示すように、上記式(14)、(15)に、2次元配列A(i)=(xAi,zAi)(i=0,…,K−1)を代入して得られる値である。
【0063】
【数4】

【0064】
以上で、ステップS4が終了する。
次にステップS5では、部分群Aを対象として第1のアライメント補正工程を行う。
本工程は、第1の解析工程で推定された移動パラメータを用いて測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成する工程である。
演算処理部12は、上記式(14)、(15)のΔx、Δz、θに、ステップS4で求められた推定値を代入し、これにより2次元配列Aの各測定データを座標変換して、第1の部分群の補正済測定データである2次元配列Aを次式(19)のように生成する。以下、2次元配列Aを、(アライメント)補正後の部分群Aと称する場合がある。
【0065】
【数5】

【0066】
2次元配列Aは、グラフ上にプロットすると、図5(b)に示すように、レンズ面2aの加工誤差を除いて関数f(x)と重なり合う位置にプロットされる。
以上で、ステップS5が終了する。
【0067】
次にステップS6では、部分群Aに隣接する部分群Bを対象としてデータ変換工程を行う。なお、ステップS6〜S8は、j回(jは1以上の整数)行われるが、まずj=1の場合で説明する。
本工程は、第1の部分群における境界を終点、第2の部分群における境界を始点と称するとき、始点がアライメント補正後の終点と一致するとともに、始点での微分係数がアライメント補正後の終点での微分係数と一致するように、第2の部分群の測定データの座標変換を行う工程である。
【0068】
図5(a)に示すように、位置ずれ誤差のうちチルト誤差が大きいと、測定データの周辺での位置ずれ誤差が大きくなる。このため、部分群Bは、図5(b)に示すように、設計値である関数g(x)に対する偏差が部分群Aの関数f(x)に対する偏差よりも大きくなっている。
このため、ステップS4、S5と同様にして、解析工程、アライメント補正工程を行うと、部分群Aに比べてアライメント補正の補正精度が悪化するおそれがある。
また、単に部分群Bのみでアライメント補正を行うと、補正後の部分群Aに対する滑らかな接続条件が満足されなくなるおそれがある。
そこで、本工程では、演算処理部12によって、補正後の部分群Aの終点である点A(K−1)=(x(KA−1),z(KA−1))と、部分群Bの始点である点B(0)=(xB10,zB10)との差をとることで、点B(0)を点A(K−1)に一致させる平行移動量Δx、Δzを算出する。
また、演算処理部12は、補正後の部分群Aの終点での微分係数z’(x(KA−1))と部分群Bの始点での微分係数zB1’(0)との差をとることで、部分群Bの始点を部分群Aの終点に滑らかに接続させる回転移動量θを算出する。微分係数は、測定データの数値計算により算出する。
これにより、次式(20)(ただし、j=1)で表される変換行列Hが生成される。
【0069】
【数6】

【0070】
次に、演算処理部12は、2次元配列Bの各点を次式(21)によって、データ変換する。ただし、式(21)の右辺は、j=1では、次式(22)、(23)を用いる。
【0071】
【数7】

【0072】
このようにして、始点が第1の部分群の終点と滑らかに接続されるように座標変換された2次元配列B*(1)が生成される。以下、2次元配列B*(1)を、座標変換後の部分群B*(1)と称する場合がある。
以上で、ステップS6が終了する。
【0073】
次にステップS7では、部分群B*(1)を対象として第2の解析工程を行う。
本工程は、第2の部分群である2次元配列B*(1)による表面形状の設計値からのずれ量を表す移動パラメータを推定する工程である。
本工程は、対象となる部分群が異なるのみで、演算処理部12によって上記ステップS4と同様にして、2次元配列B*(1)の移動パラメータであるシフト誤差Δx、Δz、チルト誤差θを推定する演算を行う。すなわち、下記式(24)、(25)、(26)から最小二乗法によって、Δx、Δz、θを求める。これらΔx、Δz、θの推定値は、ステップS4による推定値とは一般には異なる。
【0074】
【数8】

以上でステップS7が終了する。
【0075】
次にステップS8では、部分群B*(1)を対象として、第2のアライメント補正工程を行う。
本工程は、第2の解析工程で推定された移動パラメータを用いて測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成する工程である。
本工程は、対象となる部分群が異なるのみで、上記ステップS5とほぼ同様の工程である。演算処理部12は、上記式(25)、(26)に示す座標変換式のΔx、Δz、θに、ステップS7で求められた推定値を代入し、これにより2次元配列B*(1)の各測定データを座標変換して、第2の部分群の補正済測定データである2次元配列Bを次式(27)のように生成する。以下、2次元配列Bを、(アライメント)補正後の部分群Bと称する場合がある。
【0076】
【数9】

【0077】
このようにして、図5(c)に示すように、部分群Bは、部分群Bとしてアライメント補正される。
以上で、ステップS8が終了する。
【0078】
次にステップS9では、収束判定工程を行う。
本工程は、ステップS5でアライメント補正された第1の部分群の終点における微分係数と、ステップS8でアライメント補正された第2の部分群の始点における微分係数との差による傾き偏差を計算し、この傾き偏差が予め設定された許容値以下かどうかを判定する工程である。
【0079】
ステップS6では、接続された部分群Aの終点と、部分群B*(1)の始点とが接続されているが、ステップS7、S8では、部分群B*(1)の測定データ全体を用いて、アライメント補正が行われるため、補正後の部分群Bの始点は、部分群Aの終点とわずかにずれているおそれがある。
そこで、本工程では、補正後の部分群Aの終点での微分係数z’(xA(KA−1))と部分群Bの始点での微分係数zB1’(xB10)との差をとって、次式(28)に示す傾き偏差Δθを算出する。
また、補正後の部分群Aの終点と部分群Bの始点との位置偏差ΔLを、次式(29)のように算出する。
【0080】
【数10】

【0081】
演算処理部12は、Δθ、ΔLの大きさが許容値以下かどうか判定する。許容値としては、必要に応じて適宜設定することができるが、本実施形態では、一例として制御ユニット8に用いるコンピュータの数値範囲の最小値ε未満の値を許容値としている。したがって傾き偏差Δθおよび位置偏差ΔLの大きさの計算結果が、アンダーフローエラーを発生させた場合、または0に一致したときに許容値以下とする判定を行っている。
傾き偏差Δθおよび位置偏差ΔLのいずれかの大きさが、許容値より大きい場合には、ステップS6に移行して、上記ステップS6〜S8を繰り返す。これらの各ステップの動作は、jの値を繰り返し回数の値に置き換える以外は、上記の説明と同様である。
傾き偏差Δθおよび位置偏差ΔLの大きさが、許容値以下の場合には、ステップS10に移行する。
【0082】
ステップS10からステップS13は、上記のステップS6〜S9とほぼ同様のループ処理を行うステップである。
すなわち、ステップS10は、第2の部分群として2次元配列(部分群)Bを対象とするデータ変換工程であり、2次元配列(部分群)B*(j)(jは1以上の整数)を生成する。
また、ステップS11は、部分群B*(j)を対象とする第2の解析工程であり、Δx、Δz、θを求める。ただし、図5(a)に示すように、第1の部分群の終点はA(0)であり、第2の部分群の始点はB(KB2−1)である。
また、ステップS12は、部分群B*(j)を対象とする第2のアライメント解析工程であり、2次元配列(部分群)Bを求める。
また、ステップS13は、収束判定工程であり、傾き偏差Δθを算出する。そして、傾き偏差Δθが、許容値より大きい場合には、ステップS10に移行して、上記ステップS10〜S12を繰り返す。傾き偏差Δθが、許容値以下の場合には、ステップS14に移行する。
ステップS10〜S14の詳細は、上記ステップS6〜S9の説明および数式において「B」を「B」に読み替えればよい。
【0083】
なお、フランジ面2cも含めて形状測定を行う場合には、部分群B(B)を第1の部分群、2次元配列C(C)を第2の部分群として、ステップS6〜S9とほぼ同様のループ処理を行う。
【0084】
ステップS14では、形状誤差算出工程を行う。
本工程は、補正済測定データと複数の関数との偏差を形状誤差として算出する工程である。
演算処理部12は、ステップS13までに算出された補正済測定データである2次元配列A、B、Bから、アライメント補正された点列{Q}を次式(30)として生成する。ここで、各部分群の境界の点同士は、アライメント補正の過程で座標値が一致しているため、重複しないように点列を選ぶ。このため、点の個数Nは変わらない。
【0085】
=(x,z) (ただし、n=0,…,N−1) ・・・(30)
【0086】
次に演算処理部12は、xが定義域のいずれに属するか判断して、次式(31)によって、形状誤差E(n)を算出し、出力部16に出力する。
【0087】
(n)=z−F(x) ・・・(31)
【0088】
ここで、関数Fは、xが属する定義域によって異なる関数を意味しており、例えば、定義域Dの場合は関数f、定義域DB1、DB2の場合は関数gを意味する。このため、それぞれ式(1)、(2a)、(2b)を用いて算出する。
以上で、ステップS14が終了するとともに、本実施形態の形状測定方法が終了する。
【0089】
以上に説明したように、演算処理部12は、部分群による表面形状が対応する関数からの移動によって得られるとしたときの移動量を表す移動パラメータを推定する解析部と、この解析部で推定された移動パラメータを用いて測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成するアライメント補正部と、補正済測定データと複数の関数との偏差を形状誤差として算出する形状誤差算出部とを構成している。
【0090】
このように、形状測定装置50およびこれを用いた形状測定方法によれば、測定データを複数の関数の定義域ごとの部分群に区画して、各部分群による表面形状の設計値からのずれ量を表す移動パラメータを推定して、測定データのアライメント補正を行うことができるため、被測定体2の表面形状の設計値が複数の関数によって定義される場合にも、測定データのアライメント補正を行った上で被測定体の表面形状の設計値からのずれ量として測定することができる。
このため、複雑な形状を有する被測定体でも設計値に対する形状誤差を精度よく測定することができる。
また、複数の関数は、関数記憶部13に記憶させることができるため、例えばレンズ面等の一般的によく用いられる表面形状とは異なる被測定体固有の形状であっても、関数で与えられる形状であれば、正確に形状誤差を測定することができる。
【0091】
例えば、レンズ等の光学素子の形状測定では、レンズ有効領域の表面形状が重要であるが、触針部6aは有限の大きさを有している。このため、必要なレンズ有効領域を確実にカバーして測定を行うには必要なレンズ有効領域よりもわずかに外側まで触針部6aを移動して測定することが好ましい。
ところが、近年、レンズの小型化や加工コスト向上のため、レンズ面の表面形状は、必要なレンズ有効領域にごく近い範囲にしか形成されない。このため、レンズ有効領域の近傍では、レンズ面の形状とは異なる表面形状を測定している可能性があり、このような測定点を考慮してアライメント補正されると、アライメント補正の精度が悪化するおそれがある。
本実施形態では、レンズ有効領域を構成するレンズ面2aの表面形状の他に、レンズ面2aと隣接するレンズ有効領域外の接続面2bの表面形状の設計値が、関数gとして与えられている。したがって、仮に、触針部6aがレンズ面2aと接続面2bとの境界位置に正確には当接されなかったとしても、アライメント補正は、関数gの定義域に確実に属する複数の測定データを含めた演算によって行われるため、アライメント補正の精度を向上することができる。
【0092】
次に、本実施形態の形状測定方法を用いた加工方法について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る加工方法に用いる加工装置の概略構成を示す模式的な平面図である。図7(a)、(b)は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係る形状測定方法によって得られた形状誤差のデータの一例を示す模式的なグラフ、および加工データの求め方を説明する模式的なグラフである。
【0093】
本実施形態の加工方法は、加工目標の表面形状が複数の関数で定義された被加工物を加工し、この被加工物を被測定体として、本実施形態の形状測定方法によって、前記被加工物の加工目標の表面形状に対する形状誤差を測定し、この形状誤差が予め設定された許容値を超える場合に、形状誤差を修正するように被加工物の再加工を行う方法である。
本加工方法は、例えば、図6に示す加工装置60によって行うことができる。
加工装置60は、加工目標の表面形状が被測定体2と同様の関数で表される被加工物64に、例えば、切削加工、研削加工、研磨加工等の加工を施すとともに、加工の前後において被加工物64の保持解除を行うことなく表面形状をオンマシン計測することが可能な装置である。
加工装置60は、形状測定装置50の被測定体支持部1、出力部16に代えて、被加工物保持台61、NC制御部63を備え、加工部62を追加したものである。
以下、上記の形状測定装置50と異なる点を中心に説明する。
【0094】
被加工物保持台61は、被測定体支持部1の移動体1bに代えて、保持台1aをZ軸回りに回転可能に保持するスピンドル61bを備える。
スピンドル61bは、形状測定時には回転が停止され、被加工物64を、測定部7に対して一定の位置関係に保持できるようになっている。
【0095】
NC制御部63は、加工時に、予め設定された被加工物64の表面形状を表す複数の関数に基づいて、駆動機構1cの動作および加工部62の動作を制御して、被加工物64の表面の加工制御を行うものであり、駆動機構1c、第1の位置検出部9、および加工部62に電気的に接続されている。
また、NC制御部63は、制御ユニット8と電気的に接続され、複数の関数を制御ユニット8の関数記憶部13に記憶させたり、制御ユニット8から出力される形状誤差のデータを取得したりすることができるようになっている。
【0096】
加工部62は、被加工物64の加工を行う工具62aと、工具62aを回転駆動する駆動軸62bと、駆動軸62bを移動して先端の工具62aを複数の関数に基づく所定の移動軌跡上に移動させる駆動軸移動部62cとを備える。
加工部62および測定部7は、加工時および形状測定時にそれぞれが干渉しない位置関係に設けられている。それぞれの配置位置は、加工時および形状測定時の位置関係が一対一に対応するようになっていれば、加工部62および測定部7の少なくともいずれかが移動可能に設けられていてもよい。また加工部62および測定部7の位置を基台20上に固定して、駆動機構1cを駆動することによって、被加工物64を加工時と形状測定時とで、配置位置を切り換えるようにしてもよい。
【0097】
このような加工装置60によれば、保持台1aに被加工物64を保持して、駆動機構1cによって加工部62の加工領域に位置付け、加工部62によって、表面形状の加工を行うことができる。その際、加工部62の動作制御は、NC制御部63によって行われる。
NC制御部63は、加工目標の表面形状に基づいて、NC加工データを生成して、駆動軸移動部62cおよび駆動機構1cの動作を制御する。
【0098】
加工が終了すると、被加工物64を測定部7の形状測定領域に位置付けることにより、形状測定装置50と同様にして、形状測定が行うことができる。
その際、被加工物64の被測定面である第1面2Aの設計値を表す関数f、g等は上記と同様に、入力部15から入力することもできるが、本実施形態では、NC制御部63に記憶された複数の関数が、NC制御部63によって関数記憶部13に送出される。
【0099】
測定部7では、上記と同様にして、第1面2Aの形状測定を行う。これにより、形状誤差Eが算出される。形状誤差Eは、点列であるが、点間距離はきわめて小さいため、模式的には、図7(a)に示す曲線101、102のような曲線としてプロットすることが可能である。
形状誤差Eは、必要に応じて図示略のモニタに表示されるとともに、NC制御部63に送出される。
【0100】
形状誤差Eを受信したNC制御部63では、形状誤差Eを解析し、形状誤差Eが予め設定された許容値を超える場合には、再加工のNC加工データを作成し、このNCデータに基づいて、再加工を行う。このように、加工、形状測定を繰り返して、許容値以下の形状誤差が得られるまで加工を続ける。これにより、被加工物64の加工が終了する。
【0101】
再加工のNC加工データは、例えば、工具62aの移動量を形状誤差Eと逆方向に移動させて全面を再加工する構成することができる。また、形状誤差Eのうち、関数が表す表面形状に対して凸形状になっている部分(z>0の部分)のみ再加工することもできる。
【0102】
また、本実施形態のように、被加工物64が回転対称な表面形状を有する場合、1つの半径に沿って行われることが多い。この場合には、図7(a)におけるx≧0の形状誤差E(曲線101参照)と、x<0の形状誤差E(曲線102参照)とを区別することには意味がないため、例えば、図7(b)に示すように、曲線101を中心で折り返した曲線103と、曲線102との平均値を曲線104として求め、この曲線104に基づいてNC加工データを生成するとよい。
【0103】
このように、加工装置60によれば、本実施形態の形状測定方法に基づいた形状誤差を再加工時にフィードバックすることができる。
その際、被加工物64を保持台1aから取り外すことなく、加工と形状測定とを行うことができるため、測定された形状誤差をより高精度に加工に反映することができる。また、加工と測定とを切り換える際に被加工物64の着脱作業や位置合わせが不要になるため生産性が向上する。
【0104】
[第2の実施形態]
次に本発明の第2の実施形態に係る形状測定方法について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る形状測定方法の工程フローを示すフローチャートである。
【0105】
本実施形態の形状測定方法は、上記第1の実施形態におけるデータ変換工程を削除し、部分群ごとに行う解析工程とアライメント工程とを一括して行うようにした方法である。
以下では、上記第1の実施形態と同様に、形状測定装置50を用いて被測定体2のレンズ面2aおよび接続面2bの形状測定を行う場合の例で説明する。また、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0106】
本実施形態の形状測定方法は、図8に示す工程フローに基づいて、ステップS20〜S25を行う方法である。
ステップS20〜S22は、上記第1の実施形態のステップS1〜S3と同様の工程であり、それぞれ形状定義工程、データ取得工程、データ区画工程を構成している。
【0107】
次にステップS23では、部分群A、B、Bを対象として、上記第1の実施形態のステップS4とほぼ同様な解析工程を行う。
本工程は、部分群A、B、Bの表す各表面形状の設計値からのずれ量を表す移動パラメータを推定する工程である。ただし、各部分群の設計値が異なる関数f、gで表されている点、および、移動パラメータは各部分群のすべてに共通な値として推定する点が上記第1の実施形態とは異なる。
【0108】
本実施形態では、移動パラメータであるシフト誤差Δx、Δz、チルト誤差θは、各部分群に共通である。これらの推定値は、演算処理部12によって、最小二乗法の演算処理によって求められる。すなわち、次式(32)で表される残差平方和S(Δx,Δz,θ)が最小値を取るΔx、Δz、θの値として求められる。
【0109】
【数11】

【0110】
ただし、式(32)における(x,z)は、3つの総和記号のそれぞれにおいて異なり、第1項では次式(35)、(36)、第2項では上記式(17)、(18)、第3項では、次式(33)、(34)が用いられる。
【0111】
【数12】

【0112】
以上でステップS23が終了する。
【0113】
次にステップS24では、部分群A、B、Bを対象として、上記第1の実施形態のステップS5とほぼ同様なアライメント補正工程を行う。
本工程は、解析工程で推定された移動パラメータを用いて測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成する工程である。
演算処理部12は、次式(37)に示す座標変換式のΔx、Δz、θに、ステップS4で求められた推定値を代入し、これにより2次元配列A、B、Bの各測定データをx、zに代入して座標変換を行い、各部分群の補正済測定データである2次元配列Q=(x,z)を生成する。
ただし、座標変換に際して、各部分群の境界の点の測定データ、例えば、B(KB2−1)およびA(0)等は同一の測定データであるため、重複させないようにする。このため、点の個数Nは変わらない。
【0114】
【数13】

【0115】
以上で、ステップS24が終了する。
次にステップS25では、上記第1の実施形態のステップS14とほぼ同様な形状誤差算出工程を行う。
本実施形態では、ステップS24で補正済測定データQが算出されるため、本ステップでは、上記ステップS14のQが算出された後と同様な動作を行う。
これにより、上記式(31)によって、形状誤差E(n)が算出され、出力部16に出力される。
以上で、ステップS25が終了するとともに本実施形態の形状測定方法が終了する。
する。
【0116】
本実施形態の形状測定方法では、上記第1の実施形態と同様に、測定データを複数の関数の定義域ごとの部分群に区画して、各部分群による表面形状の設計値からのずれ量を表す移動パラメータを推定して、測定データのアライメント補正を行うことができるため、被測定体2の表面形状の設計値が複数の関数によって定義される場合にも、測定データのアライメント補正を行った上で被測定体の表面形状の設計値からのずれ量として測定することができる。
また、第1の実施形態と同様の加工方法に好適に用いることができる。
第1の実施形態とは異なるのは、各部分群に対して、共通の移動パラメータによって、アライメント補正を行う点である。このため、第1の実施形態に比べるとより工程が簡素化される。
【0117】
なお、上記の説明では、測定データ生成部は、測定プローブ6を被測定体2の被測定面に走査させて接触測定を行う場合の例で説明したが、これは一例であり、形状測定は、他の測定手段を採用してもよい。例えば、レーザ変位計等による非接触測定を採用してもよい。
また、測定プローブ6のx軸方向の走査は、被測定体2を移動して行う場合の例で説明したが、測定プローブ6をx軸方向に移動して測定してよい。
【0118】
また、上記の説明では、被測定体の断面に沿う表面形状を測定する場合の例で説明したが、表面形状の設計値が複数の関数で与えられるならば、3次元の面形状に適用してもよい。
【0119】
また、上記の説明では、レンズ面2aが回転対称な球面や非球面の場合で説明したため、表面形状を表す関数が、例えば、軸対称非球面式で表される場合の例で説明した。ただし、被測定体は、回転非対称な表面形状を有していてもよく、この場合には、表面形状を表す関数は軸非対称な関数を採用することができる。
【0120】
また、上記の第1の実施形態の説明では、3つの部分群A、B、Bに対して、第1の部分群が部分群A、第2の部分群B、Bの場合の例で説明したが、この設定は一例である。
例えば、第1の部分群を部分群B、第2の部分群を部分群Aとしてアライメント補正を行い、さらにアライメント補正後の部分群Aを第1の部分群とし、第2の部分群を部分群Bとしてアライメント補正することも可能である。
【0121】
また、上記の説明では、表面形状としてレンズ面を有する場合、レンズ有効径の範囲が1つの関数で定義されている場合の例で説明したが、複数の関数の定義域は任意に設定することができるため、レンズ有効径内を複数の定義域に分割して、各定義域の表面形状を異なる関数で定義してもよい。
【0122】
また、上記の第1の実施形態の説明では、収束判定工程を設けて、ステップS6〜S8等の各工程を繰り返し行う場合の例で説明したが、測定条件等によって、所定の測定精度を得るために必要な繰り返し回数が予め分かっている場合や、ステップS6〜S8等の各工程を繰り返さなくてもよい所定の測定精度が得られると予め分かっている場合には、収束判定工程を省略してもよい。
【0123】
また、上記の第1の実施形態の説明では、収束判定工程において、傾き偏差Δθおよび位置偏差ΔLが許容値以下となることを収束条件とし、しかも許容値をコンピュータの数値範囲の最小値ε未満の値として、実質的に各部分群の境界の点同士は座標値が一致するようにしている。
ただし、境界の点の一致度合いは、必要な測定精度や加工精度によっては、適宜設定できる。
また、収束判定工程において位置偏差ΔLを収束条件に含めることは必須ではない。
例えば、データ変換工程において境界の点を一致させた後に、第2のアライメント補正工程では、境界の点を固定して回転方向のみのアライメント補正演算(制約条件付のアライメント補正)を行うようにすれば、傾き偏差Δθのみを収束条件の判定に使っても、同様のアライメント補正を行うことができる。
【0124】
また、上記の説明では、表面形状の設計値が滑らかに接続される複数の関数で表される場合の例で説明したが、例えば、角部等の関数の境界点で微分係数が不連続になっていてもよい。この場合、境界点での微分係数の差が所定の差になるようにアライメント補正を行えばよい。
【0125】
また、上記の説明では、加工装置がオンマシン計測を行うことができる場合の例で説明したが、測定部7を削除して形状測定は、例えば形状測定装置50などの別の装置で行うようにしてもよい。
【0126】
また、上記の実施形態に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせを代えたり、削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 被測定体支持部
1a 保持台
1c 駆動機構(測定データ生成部)
2 被測定体(被加工物)
2A 第1面(表面形状)
2a レンズ面
2b 接続面
2c フランジ面
5 第2の位置検出部(測定データ生成部)
7 測定部(測定データ生成部)
8 制御ユニット
9 第1の位置検出部(測定データ生成部)
10 データ取得部
11 データ区画部
12 演算処理部(解析部、アライメント補正部、形状誤差算出部)
13 関数記憶部
50 形状測定装置
、B、B 2次元配列(補正済測定データ)
、DB1、DB2、DC1、DC2 定義域
f、g、h 関数
O 光軸
P 基準軸線
点列(測定データ)
z 表面形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体の表面形状を測定する形状測定方法であって、
前記表面形状の設計値を複数の関数で定義する形状定義工程と、
前記表面形状を測定して、前記表面形状の測定データを取得するデータ取得工程と、
前記測定データを前記関数の定義域ごとの部分群に区画するデータ区画工程と、
前記部分群による表面形状の設計値からのずれ量を表す移動パラメータを推定する解析工程と、
該解析工程で推定された前記移動パラメータを用いて前記測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成するアライメント補正工程と、
前記補正済測定データと前記複数の関数との偏差を形状誤差として算出する形状誤差算出工程と、
を備える形状測定方法。
【請求項2】
前記部分群のうち互いに隣り合って境界で接続する2つの部分群を第1の部分群および第2の部分群と称し、前記第1の部分群における前記境界を終点、前記第2の部分群における前記境界を始点と称し、前記第1および前記第2の部分群に対して行う前記解析工程および前記アライメント補正工程をそれぞれ第1および第2の解析工程、第1および第2のアライメント補正工程と称するとき、
前記第1の解析工程と前記第1のアライメント補正工程とをこの順に行った後に、
前記始点がアライメント補正後の前記終点と一致するとともに、前記始点での微分係数がアライメント補正後の前記終点での微分係数と一致するように、前記第2の部分群の測定データの座標変換を行うデータ変換工程を行い、
該データ変換工程で座標変換された後の前記第2の部分群の測定データに対して、前記第2の解析工程および前記第2のアライメント補正工程をこの順に行い、
該第2のアライメント補正工程後に、前記形状誤差算出工程を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の形状測定方法。
【請求項3】
前記第2のアライメント補正工程と前記形状誤差算出工程との間に、アライメント補正された前記終点における微分係数と、アライメント補正された前記始点における微分係数との差による傾き偏差を計算し、該傾き偏差が予め設定された許容値以下かどうかを判定する収束判定工程を備え、
該収束判定工程において、前記傾き偏差が許容値以下の場合には、前記形状誤差算出工程を行い、
前記傾き偏差が許容値を超えた場合には、前記収束判定工程における前記測定データに基づいて、前記データ変換工程、前記第2の解析工程、前記第2のアライメント補正工程、および前記収束判定工程をこの順に繰り返す
ことを特徴とする請求項2に記載の形状測定方法。
【請求項4】
前記解析工程では、前記移動パラメータを前記部分群のすべてに共通な値として推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の形状測定方法。
【請求項5】
加工目標の表面形状が複数の関数で定義された被加工物を加工し、
該被加工物を前記被測定体として請求項1に記載の形状測定方法によって、前記被加工物の前記加工目標の表面形状に対する形状誤差を測定し、
該形状誤差が予め設定された許容値を超える場合に、前記形状誤差を修正するように前記被加工物の再加工を行う
ことを特徴とする加工方法。
【請求項6】
被測定体の表面形状を測定する形状測定装置であって、
前記表面形状の設計値を定義する複数の関数の情報を記憶する関数記憶部と、
前記被測定体の表面形状を測定して該表面形状の測定データを生成する測定データ生成部と、
前記測定データを取得するデータ取得部と、
前記測定データを前記関数の定義域ごとの部分群に区画するデータ区画部と、
前記部分群による表面形状が対応する前記関数からの移動によって得られるとしたときの移動量を表す移動パラメータを推定する解析部と、
該解析部で推定された前記移動パラメータを用いて前記測定データのアライメント補正を行って、補正済測定データを生成するアライメント補正部と、
前記補正済測定データと前記複数の関数との偏差を形状誤差として算出する形状誤差算出部と、
を備える形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−242136(P2012−242136A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109821(P2011−109821)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】