形状計測装置、形状計測装置の制御方法、およびプログラム
【課題】物体の反射特性によらずに高精度に形状計測ができ、また計測精度の調整が可能な光学的走査による高速な形状計測装置を提供する。
【解決手段】形状計測装置100は、スリット光1により物体を走査する光学走査手段10と、物体からの、スリット光1の反射光による計測画像を取得する撮像手段20と、取得した計測画像を基に、物体の反射位置を算出する反射位置検出手段30と、を備え、反射位置検出手段30は、取得した計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、物体の反射位置候補座標を算出し、計測輝度パターンと、反射位置候補座標を含む比較座標範囲内において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、計測輝度パターンとそれぞれの参照輝度パターンとのパターン類似度を算出し、パターン類似度が最も大きな参照輝度パターンが特定する座標情報から、物体の反射位置座標を求める。
【解決手段】形状計測装置100は、スリット光1により物体を走査する光学走査手段10と、物体からの、スリット光1の反射光による計測画像を取得する撮像手段20と、取得した計測画像を基に、物体の反射位置を算出する反射位置検出手段30と、を備え、反射位置検出手段30は、取得した計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、物体の反射位置候補座標を算出し、計測輝度パターンと、反射位置候補座標を含む比較座標範囲内において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、計測輝度パターンとそれぞれの参照輝度パターンとのパターン類似度を算出し、パターン類似度が最も大きな参照輝度パターンが特定する座標情報から、物体の反射位置座標を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的走査による形状計測装置、該形状計測装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体を光学的に走査して形状の情報を得る非接触型の形状計測装置の代表的な計測方法として、光切断法(スリット光投影法)がある。光切断法の測定原理は、三角測量の原理に基づく。スリット光を物体に投影し、別の角度から物体を撮像すると、物体の形状に合わせて変形したスリット画像が得られる。スリット光の投影光学系とスリット画像の撮像光学系、およびスリット光の投影角度と変形したスリット画像各点の観察角度などにより、幾何学的に物体の座標を算出することができる。さらにスリット光を物体上で走査することで、物体の三次元情報を得ることができる。
【0003】
このような測定において、撮像したスリット画像から得られる情報は、画像を構成する画素(ピクセル)毎の離散データであることから、物体の座標位置をより精度の高いサブピクセル精度で算出するために様々な技術が提案されている。例えば、受光強度の空間的分布(輝度分布)から重心演算を行い、画素ピッチで決まる値よりも分解能を高める技術などがある。特許文献1では、この重心演算において、多重反射などによる誤った重心情報を除外することで、測定精度を高める方法が提案されている。具体的には、重心演算を行う輝度分布を切り出す輝度閾値を変化させた場合に、算出した重心情報にある程度以上の差異が生じる場合には、その情報を無効として除外する方法である。また特許文献2では、実測した離散データを、ガウスフィッティングさせることで、輝度のピーク点を求める方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−22423号公報
【特許文献2】特開2009−74814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法では、より高い精度の計測が必要な場合に、測定対象が限定されてしまうという課題や、計測に時間を要してしまうなどの課題があった。具体的には、特許文献1による方法では、重心演算を行う輝度分布の輝度閾値を変えた場合に、重心位置が変化してしまうような測定対象は測定が困難であるという課題があった。例えば、光の反射が物体の表面だけでなく、表面下散乱など、わずかな深層からの反射も観測されるような物体の場合には、輝度分布が対称にならないために、有効な情報として処理されず、測定することが困難であった。また、特許文献2による方法では、ガウスフィッティングに時間を要してしまうという課題や、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわない物体の場合には、高い精度での計測が困難であるなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる形状計測装置は、投射光により物体を走査する光学走査手段と、物体からの、投射光の反射光による計測画像を取得する撮像手段と、取得した計測画像を基に、物体の反射位置を算出する反射位置検出手段と、を備え、反射位置検出手段は、取得した計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、物体の反射位置候補座標を算出し、計測輝度パターンと、反射位置候補座標を含む比較座標範囲内において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、計測輝度パターンとそれぞれの参照輝度パターンとのパターン類似度を算出し、パターン類似度が最も大きな参照輝度パターンが特定する座標情報から、物体の反射位置座標を求めることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、取得した計測画像の最大輝度を示す画素位置を物体の反射位置として単純に認識するのではなく、複数の画素に分布する計測輝度パターンと参照輝度パターンとを比較した結果により物体の反射位置座標を求める。この方法を適用することにより、物体の反射位置座標を特定するための参照輝度パターンを、物体の反射特性に応じて予め個別に準備することが可能となる。その結果、物体の反射特性に合わせて、より精度の高い計測が可能となる。
また、複数の画素に分布する計測輝度パターンと参照輝度パターンとの類似度を算出し、算出した類似度の大小を比較することで、物体の反射位置座標を求めることができるため、都度ガウスフィッティングを行う処理に比較して要する時間が短く、高速な計測が可能となる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる形状計測装置において、複数の参照輝度パターンは、複数種類の物体の反射光の分布特性に合わせ、複数の参照パターンセットとして予め備えられ、計測に際し、物体の種類に応じて、対応する参照パターンセットが選択できることが好ましい。
【0010】
本適用例によれば、物体の種類によって異なる反射特性に応じて、対応する分布特性を持つ参照パターンセットを予め準備しておき、計測に際して最適な比較用の参照パターンセットを選択することで、より精度の高い計測が可能となる。具体的には、例えば物体からの反射が、物体表面からだけではなく、その下層からの反射も含むような場合、分布特性は単一のガウス分布で近似される分布とはならず、物体固有の分布となる。予めこの物体固有の分布に従った参照パターンセットを準備しておくことで、より精度の高いパターンマッチングの得られる比較ができるため、より精度の高い計測を行うことが可能となる。
また、予め測定対象として想定される様々な物体に対応した反射特性の参照パターンセットを準備しておくことで、計測に際し、最適な参照パターンセットを選択するだけで様々な物体の精度の良い測定が可能となる。
従って、反射特性により測定対象の限定がされることのない、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる形状計測装置において、分解能および比較座標範囲は、計測に際し、予め設定できることが好ましい。
【0012】
本適用例によれば、測定に際して分解能を設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、例えば、それほどの測定精度を必要としない計測の場合には、分解能を、画素間隔、あるいは画素間隔の二分の一程度に設定するなどで、比較に要する時間を短縮することができる。
また、測定に際してパターンの比較を行う座標範囲が設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、比較座標範囲の設定において、算出された反射位置候補座標の前後・周辺で比較する範囲を狭くした場合には、パターンの比較回数が減少するため、計測時間が短縮される。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる形状計測装置において、分解能は、画素間隔以下であることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、物体の反射位置の特定は、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンと、画素間隔以下のピッチで準備された複数の参照輝度パターンとの比較で実施されるため、算出される物体の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素間隔よりも細かな精度で検出される。つまり、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる形状計測装置において、パターン類似度が最も大きくなる参照輝度パターンのピーク点を示す座標を、物体の反射位置座標とすることを特徴とする。
【0016】
本適用例によれば、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンに最も類似した参照輝度パターンの輝度ピーク点が、物体の反射位置座標として特定される。輝度分布に基づく検出であるため、物体の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素間隔よりも細かな精度で検出される。従って、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる形状計測装置において、パターン類似度は、計測輝度パターンと参照輝度パターンとの正規化相互相関値であり、計測輝度パターンと複数の参照輝度パターンとの比較によって得られる正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した場合に、二次関数の値が最大値を示す位置情報から、物体の反射位置座標を求めることを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、計測輝度パターンと参照輝度パターンとの正規化相互相関値をもってパターン類似度が評価されるため、反射輝度の違いによる影響を受けずにパターン形状の類似度が評価される。また、正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した最大値を基に反射位置座標を求めることで、より高精度の位置検出が可能となる。その結果、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる形状計測装置において、参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、画素輝度パターンは、一または複数のガウス関数が合成された関数から導出され、サブピクセル輝度パターンは、画素輝度パターンから導出されることを特徴とする。
【0020】
本適用例によれば、実際の反射特性による計測輝度パターンに、より類似させたパターンで位置検出のための比較をすることができる。その結果、物体による誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。その結果、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる形状計測装置において、参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、画素輝度パターンは、計測輝度パターンから導出され、サブピクセル輝度パターンは、画素輝度パターンから導出されることを特徴とする。
【0022】
本適用例によれば、参照輝度パターンが、実際の物体の反射光から得られる計測輝度パターンの分布情報を基に導出される。具体的には、複数の関数を合成して類似パターンを作成するのではなく、計測輝度パターンの分布情報を使用して画素輝度パターンを作成する。このようにすることで、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわないような物体であっても、誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。また、複数のガウス関数から類似した参照輝度パターンを合成することが難しい場合や、合成作業に時間を要する場合など、より簡便に参照輝度パターンを作成することができる。
【0023】
[適用例9]本適用例にかかる形状計測装置の制御方法は、投射光により物体を走査するステップと、物体からの、投射光の反射光による計測画像を取得するステップと、取得した計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、物体の反射位置候補座標を算出するステップと、計測輝度パターンと、反射位置候補座標を含む比較座標範囲において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、計測輝度パターンとそれぞれの参照輝度パターンとのパターン類似度を算出するステップと、パターン類似度が最も大きな参照輝度パターンが特定する座標情報から、物体の反射位置座標を求めるステップと、を含むことを特徴とする。
【0024】
本適用例によれば、取得した計測画像の最大輝度を示す画素位置を物体の反射位置として単純に認識するのではなく、複数の画素に分布する計測輝度パターンと参照輝度パターンとを比較した結果により物体の反射位置座標を求める。この方法を適用することにより、物体の反射位置座標を特定するための参照輝度パターンを、物体の反射特性に応じて予め個別に準備することが可能となる。その結果、物体の反射特性によって計測結果に差異が生ずることなく、物体の反射特性に合わせて、より精度の高い計測が可能となる。
また、複数の画素に分布する計測輝度パターンと参照輝度パターンとの類似度を算出し、算出した類似度の大小を比較することで、物体の反射位置座標を求めることができるため、都度ガウスフィッティングを行う処理に比較して要する時間が短く、高速な計測が可能となる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、複数の参照輝度パターンを、複数種類の物体の反射光の分布特性に合わせ、複数の参照パターンセットとして予め備えるステップと、計測に際し、物体の種類に応じて、対応する参照パターンセットを選択するステップと、を含むことが好ましい。
【0026】
本適用例によれば、物体の種類によって異なる反射特性に応じて、対応する分布特性を持つ参照パターンセットを予め準備しておき、計測に際して最適な比較用の参照パターンセットを選択することで、より精度の高い計測が可能となる。具体的には、例えば物体からの反射が、物体表面からだけではなく、その下層からの反射も含むような場合、分布特性は単一のガウス分布で近似される分布とはならず、物体固有の分布となる。予めこの物体固有の分布に従った参照パターンセットを準備しておくことで、より精度の高いパターンマッチングの得られる比較ができるため、より精度の高い計測を行うことが可能となる。
また、予め測定対象として想定される様々な物体に対応した反射特性の参照パターンセットを準備しておくことで、計測に際し、最適な参照パターンセットを選択するだけで様々な物体の精度の良い測定が可能となる。
従って、反射特性により測定対象の限定がされることのない、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、分解能および比較座標範囲を、計測に際し、予め設定することが好ましい。
【0028】
本適用例によれば、測定に際して分解能を設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、例えば、それほどの測定精度を必要としない計測の場合には、分解能を、画素間隔、あるいは画素間隔の二分の一程度に設定するなどで、比較に要する時間を短縮することができる。
また、測定に際してパターンの比較を行う座標範囲が設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、比較座標範囲の設定において、算出された反射位置候補座標の前後・周辺で比較する範囲を狭くした場合には、パターンの比較回数が減少するため、計測時間が短縮される。
【0029】
[適用例12]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、分解能は、画素間隔以下であることが好ましい。
【0030】
本適用例によれば、物体の反射位置の特定は、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンと、画素間隔以下のピッチで準備された複数の参照輝度パターンとの比較で実施されるため、算出される物体の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素間隔よりも細かな精度で検出される。つまり、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0031】
[適用例13]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、パターン類似度が最も大きくなる参照輝度パターンのピーク点を示す座標を、物体の反射位置座標とすることを特徴とする。
【0032】
本適用例によれば、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンに最も類似した参照輝度パターンの輝度ピーク点が、物体の反射位置座標として特定される。輝度分布に基づく検出であるため、物体の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素間隔よりも細かな精度で検出される。従って、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0033】
[適用例14]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、パターン類似度は、計測輝度パターンと参照輝度パターンとの正規化相互相関値であり、計測輝度パターンと複数の参照輝度パターンとの比較によって得られる正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した場合に、二次関数の値が最大値を示す位置情報から、物体の反射位置座標を求めることを特徴とする。
【0034】
本適用例によれば、計測輝度パターンと参照輝度パターンとの正規化相互相関値をもってパターン類似度が評価されるため、反射輝度の違いによる影響を受けずにパターン形状の類似度が評価される。また、正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した最大値を基に反射位置座標を求めることで、統計的に、より高精度の位置検出が可能となる。その結果、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0035】
[適用例15]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、画素輝度パターンは、一または複数のガウス関数が合成された関数から導出され、サブピクセル輝度パターンは、画素輝度パターンから導出されることを特徴とする。
【0036】
本適用例によれば、実際の反射特性による計測輝度パターンに、より類似させたパターンで位置検出のための比較をすることができる。その結果、物体による誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。その結果、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0037】
[適用例16]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、画素輝度パターンは、計測輝度パターンから導出され、サブピクセル輝度パターンは、画素輝度パターンから導出されることを特徴とする。
【0038】
本適用例によれば、参照輝度パターンが、実際の物体の反射光から得られる計測輝度パターンの分布情報を基に導出される。具体的には、複数の関数を合成して類似パターンを作成するのではなく、計測輝度パターンの分布情報を使用して画素輝度パターンを作成する。このようにすることで、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわないような物体であっても、誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。また、複数のガウス関数から類似した参照輝度パターンを合成することが難しい場合や、合成作業に時間を要する場合など、より簡便に参照輝度パターンを作成することができる。
【0039】
[適用例17]本適用例にかかるプログラムは、形状計測装置を、上記に記載の制御方法を含み機能させることを特徴とする。
【0040】
本適用例によれば、上記に記載の制御方法を含み機能させるプログラムを用いることで、反射特性により測定対象の限定がされることのない、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。また、位置検出に要する時間を必要充分な範囲で調整し、効率的に計測できる形状計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a);実施形態1にかかる形状計測装置の構成を示すブロック図、(b);形状計測方法を説明する斜視図。
【図2】(a);計測画像の例を示す説明図、(b);画素が捕らえている反射光の輝度分布の例を示す説明図。
【図3】単一のガウス分布に従わない反射輝度分布の例を示す説明図。
【図4】(a);計測輝度パターンDmの例を示すグラフ、(b);分布関数Pm(y)の作成例を示すグラフ。
【図5】(a);画素輝度パターンを示すグラフ、(b);サブピクセル輝度パターンを説明するグラフ。
【図6】参照輝度パターンDs−4〜Ds4を示すグラフ。
【図7】形状計測のフローチャート。
【図8】反射位置検出のサブルーチンのフローチャート。
【図9】(a)、(b);計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDsiとの関係を示すグラフ。
【図10】反射輝度分布にノイズが含まれる例を模式的に示すグラフ。
【図11】実施形態2に係る反射位置検出のフローチャート。
【図12】正規化相互相関値の分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、説明を分かりやすくするため、実際とは異なる尺度で記載している場合がある。
【0043】
(実施形態1)
図1(a)は、実施形態1にかかる形状計測装置100の構成を示すブロック図、図1(b)は、形状計測方法を説明する斜視図である。
形状計測装置100は、非接触型の形状計測装置であり、光学走査手段10、撮像手段20、反射位置検出手段30などから構成される。光学走査手段10から照射されるスリット光1をステージ14に乗せた物体2に投影し、撮像手段20により別の角度から物体2を撮像すると、物体2の形状に合わせて変形したスリット画像が得られる。スリット光1の投影角度と、変形したスリット画像各点の観察角度などにより、幾何学的に物体2の座標を算出することができる。さらにスリット光1を物体2上で走査することで、物体2の三次元情報を得ることができる。
【0044】
なお、図1(b)において、スリット光1のスリット長方向をXp方向、Xp方向に交差してスリット光1を物体2上で走査する方向をYp方向とする。また、ステージ14は、XpYp平面で構成される。
【0045】
光学走査手段10は、光源11、光学系12、スキャンドライブ部13などから構成される。光源11は、光学系12を通してスリット光1を照射する。スキャンドライブ部13は、光学系12を駆動してスリット光1の投影角度を変化させる。スリット光1の投影角度を変化させることで、物体2の全体をスリット光1で走査する。光源11には、レーザー光源を用いているが、LED(Light Emitting Diode)光源などであっても良い。なお、走査の方法は、光学系12の駆動によらず、スリット光1の投影角度を固定して、ステージ14をY方向に移動させ、ステージ14に乗せた物体2がスリット光1の下を移動する方法であっても良い。
【0046】
撮像手段20は、撮像素子21、光学系22、撮像ドライブ部23、ADC(Analog to Digital Converter)回路24などから構成される。撮像素子21は、CCD型やMOS型などのエリアセンサーであり、光学系22を通して受光した光を撮像ドライブ部23の制御の下に、計測画像として取り込む。計測画像は、計測輝度パターンDmの情報としてADC回路24から出力される。計測輝度パターンDmは、撮像素子21を構成する複数の画素のそれぞれが受光した輝度情報などから構成される。各画素は、画素ピッチfでマトリクス状に配列されている。
【0047】
反射位置検出手段30は、輝度パターン解析部31、制御部32などから構成される。輝度パターン解析部31は、制御部32の制御の下に計測輝度パターンDmを解析して、スリット光1の物体2における各点の反射位置などを算出する。また、制御部32は、光学走査手段10および撮像手段20の制御や、後述する参照パターンセットPSの生成、上記の反射位置算出結果を基にした物体2の形状計測結果の出力なども行う。
【0048】
次に、形状計測装置100による形状計測の方法について説明する。
図2(a)は、計測画像の例を示す説明図である。図2(a)におけるX軸、Y軸は、計測画像を構成する画素の座標であり、図1(b)のXp、Ypの方向に対応している。
【0049】
図2(a)に描かれている折れ線は、直線状のスリット光1が物体2に投影され、物体2の形状に合わせて台形状に変形したスリット画像(輝線3)の例である。輝線3のY軸上の位置から、物体2で反射して撮像手段20に入射するスリット光1の入射角(観察角度)を求めることができる。この観察角度と、既知情報であるスリット光1の投影角度、および投影の基点とステージ14上の基準点との距離とから三角測量の手法によって物体2の反射点の高さを求めることができる。
【0050】
物体2の高さを精度良く計測するためには、図2(a)における輝線3の位置(y=y0)の値を正確に算出し、y0に対応する位置を高精度に特定する必要がある。しかしながら、一般的に輝線3は、ある程度の幅を持った画像情報として得られる。輝線3の略中央(x、y)=(x0、y0)に着目した場合に、x0における輝線3は、y0を略中央としながら、Y方向に幅を持った画素毎に離散した輝度情報として得られるため、この幅の範囲で実際の位置に対応したy0の位置を特定する必要がある。以下に具体的に説明する。
【0051】
図2(b)は、x0線上におけるy0付近の画素が捕らえている反射光の輝度分布の例を示す図であり、輝線3が幅方向に輝度の分布を持っている様子を示している。図2(b)は、図2(a)のY軸スケールに対して、Y軸スケールを、輝線3の幅程度に拡大している。
図2(b)において、輝線3は、画素n−4〜画素n+5の幅を持った計測輝度パターンDmとして分布している。計測輝度パターンDmは、それぞれの画素に分布する輝度情報の離散データから成る。従って、実際の物体2の反射位置は、この輝度の離散データから精度良く算出し特定することが望まれる。
【0052】
スリット光1を投影した場合に、物体2が反射する光の輝度は、一般的にガウス分布に略従う場合が多く、ガウス分布のピーク点が物体2の反射位置に対応する場合が多い。図2(b)に一点鎖線で示す曲線は、各画素の離散データをガウスフィッティングさせた場合の分布を示している。この図からもわかるように、最大輝度の得られている画素nの位置ypは、実際の反射位置に対応するガウス分布のピーク点y0との間にesのズレがあり、計測輝度パターンDmをガウスフィッティングすることで、精度良く位置の特定ができることを示している。つまり、実際の輝度分布がガウス分布に従う場合には、フィッティングさせたガウス分布のピーク点を算出することで、離散データから精度の高い位置検出が可能となる。
【0053】
しかしながら、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわない物体の場合には、フッティングさせたガウス分布のピーク点が実際の反射位置を示さない場合がある。つまり、物体の反射特性によっては、測定の精度が悪くなる場合がある。また、計測の都度、画素情報(離散データ)に対してガウスフィッティングを行うことで計測に時間を要してしまう。そこで、本実施形態により、反射特性によって測定対象の限定がされることがなく、より精度の高い計測が可能な、また都度ガウスフィッティング処理を必要とせず、短時間で計測のできる形状計測の方法を提案する。以下にその方法について説明する。
【0054】
図3は、単一のガウス分布に従わない反射輝度分布の例を示す説明図である。
物体2の表面が半透明な場合や、表面にコーティングが施されている場合などは、スリット光1の投影に対する反射は、物体2の表面からの反射だけではなく、物体2の深層(表面下)からの反射が合成される場合がある。また、例えば大理石のような物質では、表面の反射に加えて、表面下散乱(サブサーフェススキャタリング)が見られる。
図3において、分布P1は、表面からの反射による輝度分布、分布P2は、物体2の表面下からの反射のよる輝度分布を示している。実際の計測においては、これらの反射が合成された分布Pmが観測される。分布Pmのピーク点(y=y0)は、実際の反射位置に略等しい分布P1のピーク点(y=yr)との間にズレ量erがあり計測誤差の原因となり得る。このような単一のガウス分布に従わない分布を呈する物体の計測方法を以下に実施例として説明する。
【0055】
(実施例1)
1.測定の概要
本実施例による測定方法の概要を説明する。
図4(a)は、計測輝度パターンDmの例を示すグラフ、図4(b)は、計測輝度パターンDmにフィッティングさせる分布関数Pm(y)の作成例を示すグラフである。
まず、予め、物体2からの反射による輝度分布を計測し、計測輝度パターンDmを取得する。次に、一または複数のガウス関数を合成するなどして、計測輝度パターンDmにフィッティングする分布関数Pm(y)を求める。この際、分布関数Pm(y)と共に分布関数Pm(y)のピーク点y0、および物体2の反射位置yrの情報を特定しておく。物体2の反射位置yrは、合成に使用したガウス関数の中から、表面反射部分に関わるガウス関数を抽出してそのピーク値をyrとする方法や、実際に他の物理的測定を行って求めておく方法などがある。
【0056】
次に、この分布関数Pm(y)から、画素分解能(画素ピッチf)を上回るサブピクセルの分解能δy毎に位置情報を持った複数の位置検出用の参照輝度パターンDsi(i=・・・、−3、−2、−1、0、1、2、3、・・・)を生成する。参照輝度パターンDsiは、画素ピッチfを持って配置された画素が、分布関数Pm(y)上で持つ離散データの集まりである。
具体的には、まず、ひとつの画素が反射位置y0と重なった場合の参照輝度パターンDs0を求め、次に反射位置y0からY軸上のプラスマイナスに必要な範囲で分解能δyずつずらして複数の参照輝度パターンDsiを生成する。それぞれの参照輝度パターンDsiは、反射位置y0からのずれ量の位置情報を持っている。
この複数の参照輝度パターンDsiは、予め、反射特性の異なる物体の種類毎に生成し、物体の種類毎に参照パターンセットPSとして記憶しておき、実際の物体の形状測定にあたって、その物体に該当する参照パターンセットPSを選択して使用するのが好ましい。
【0057】
次に、計測して得られる計測輝度パターンDmと個々の参照輝度パターンDsiとの相関値を算出する。ここで、最も高い相関値の得られる参照輝度パターンDsiの持つ位置情報(反射位置y0からのずれ量)から物体2の反射位置を特定することができる。
なお、本実施例では、相関値として正規化相互相関値Rを用いている。正規化相互相関(NCC:normalized cross correlation)は、平均と標準偏差とによって正規化された絶対測度であり、値が1に近く大きいほど類似性が高いことを表す。
【0058】
以下に本実施例の詳細を説明する。
2.準備
準備段階では、参照輝度パターンDsiを作成して参照パターンセットPSを準備する。
まず、形状の計測に先立ち、物体2の反射輝度分布を実測し反射特性を確認する。
図4(a)に、実測で得られた計測輝度パターンDmを示す。
次に、この計測輝度パターンDmの分布に略フィットする分布関数Pm(y)を作成する。分布関数Pm(y)の作成は、下記数1に示すように、複数のガウス関数を合成することにより行う。C1、C2、・・・、σ1、σ2、・・・、y1、y2、・・・の定数は、計測輝度パターンDmの分布に略フィットするように適正に設定する。
【0059】
【数1】
【0060】
図4(b)は、ガウス関数P1とP2とを合成して分布関数Pm(y)を作成し、計測輝度パターンDmとのフィッティングが略確認された様子を示している。また、ガウス関数P1のピーク点から、分布関数Pm(y)における物体2の反射位置yrを求めている。
ここで得られた分布関数Pm(y)、分布関数Pm(y)のピーク点y0、反射位置yr、ズレ量er=y0−yrは、物体2専用、あるいは、物体2と同等の反射特性を示す物体群専用の参照輝度分布関数、およびこの分布における反射位置情報として外部記憶装置などに保存しておく。
【0061】
なお、分布関数Pm(y)の作成は、上記のように複数のガウス関数を合成する方法に限定するものではなく、例えば、実測した計測輝度パターンDmの離散データをそのまま使用し、離散データのそれぞれの点をスプライン関数などで補間する方法をとっても良い。
【0062】
次に、分布関数Pm(y)から、参照輝度パターンDsiを作成する。
参照輝度パターンDsiは、物体2を撮像して得られた計測輝度パターンDmと比較照合して相関を評価し、反射位置を特定するための位置情報を持った輝度分布データのセットである。参照輝度パターンDsiは、画素輝度パターン(参照輝度パターンDs0)とそれ以外のサブピクセル輝度パターンから成り、それぞれ生成する方法が異なる。
【0063】
図5(a)は、画素輝度パターンを示すグラフであり、分布関数Pm(y)と、各画素位置における分布関数Pm(y)の値を示している。このグラフにおいて、丸印で示される各点(d1〜d13)の輝度分布データが画素輝度パターンである。
【0064】
まず、分布関数Pm(y)におけるピーク点y0が、画素nの位置に重なるようにシフトし、画素輝度パターンとして基本となる参照輝度パターンDs0を作成する。図5(a)におけるd1〜d13がそれに当たり、画素n−5から画素n+7までの各位置における分布関数Pm(y)の値としてグラフ上の交点から求められる。
【0065】
次に、サブピクセル輝度パターンとしての参照輝度パターンDsiを作成する。
サブピクセル輝度パターンは、サブピクセルの分解能δyで位置検出するための参照輝度パターンDsiであり、参照輝度パターンDs0を画素nの位置を中心として画素方向にサブピクセルの分解能δyずつシフトして作成する。つまり、分布関数Pm(y)のピーク点y0を、画素nの位置から、所望の分解能δyに相当するピッチだけY方向にシフトさせて、各画素位置に対応する分布関数Pm(y)の値をデータセットとして参照輝度パターンDsiを作成する。
【0066】
図5(b)は、その具体例であり、サブピクセル輝度パターンを示している。ここでは、画素ピッチの四分の一を分解能δyとするためのひとつの参照輝度パターンDsiを作成している。分布関数Pm(y)のピーク点を−1/4画素分Y方向にシフトし、画素n−5から画素n+7までの各位置における分布関数Pm(y)の値をグラフ上の交点に丸印で示している。この丸印位置のデータセット(d1〜d13)が、−1/4画素位置に重なる場合の参照輝度パターンDs−1である。
【0067】
同様にして、−4/4画素位置から+4/4画素位置まで、1/4画素ピッチ(=分解能δy)で参照輝度パターンDsi(=Ds−4〜Ds4)を作成する。
図6は、この様にして求めた参照輝度パターンDs−4〜Ds4(Ds0を除く)を示すグラフである。この参照輝度パターンDs−4〜Ds4のセットが、分解能δyが四分の一画素(サブピクセル)の参照パターンセットPSであり、この参照パターンセットおよびy0、yr、erの値を記憶することで準備が完了する。
【0068】
3.計測
図7に本実施例による形状計測のフローチャートを示す。本フローチャートに従い、形状計測の方法を具体的に説明する。
なお、形状計測装置100は、本フローチャートに従った形状計測のための制御方法を含み機能させるプログラムを備えている。
【0069】
まず、物体2をステージ14(図1(b))にセットする(ステップSA1)。
次に、物体2用に準備した参照輝度パターンDs−4〜Ds4のセットを計測における参照パターンセットPSとして選択する(ステップSA2)。また、同時に対応するy0、yr、erの値を読み出しておく。
次に、光学走査手段10とステージ14との位置を調整し、投影の基点とステージ14上の基準点との距離を求める。あるいは、予めセットした距離の位置に調整する(ステップSA3)。
次に、光学走査手段10からスリット光1を投影し(ステップSA4)、撮像手段20によってスリット画像を撮像する(ステップSA5)。その結果、例えば、図2(a)の画像が得られる。
【0070】
次に、撮像したスリット画像から、反射位置を検出する処理を行う。
まず、X=0として(ステップSA6)、X=0における反射位置を検出する(ステップSA7)。反射位置検出のステップSA7は、サブルーチンとして後述する。
【0071】
次に、Xの値が必要な1ライン(スリット光1)の長さに相当する所定の値に達しているかを確認し、必要な1ラインの処理が終了したか判断する(ステップSA8)。処理が終了していない場合(No)は、Xをインクリメントして画素座標XをX方向にインデックスし(ステップSA9)、次のX位置における反射位置を検出する(ステップSA7)。必要な1ラインの処理が終了するまで、ステップSA7からステップSA9を繰り返す。
処理が終了した場合は(ステップSA8においてYes)、光学走査範囲が終了し計測を終了して良いか確認し(ステップSA10)、終了していない場合(No)には、光学走査手段10により光学走査をインデックスして(ステップSA11)、次のスリット光1の投影処理を行う(ステップSA4)。
【0072】
必要な光学走査が完了するまで、ステップSA4からステップSA11を繰り返す。光学走査が完了した場合は(ステップSA10においてYes)、物体2の形状計測結果を出力して(ステップSA12)、計測を終了する。
【0073】
図8は、反射位置検出のサブルーチン(ステップSA7)のフローチャートである。
また、図9(a)、(b)は、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDsiとの関係を示すグラフである。これらの図に従い、反射位置検出の方法を具体的に説明する。
【0074】
まず、ステップSA6、あるいはステップSA9で選択された画素座標XにてY方向に画素をスキャンし、反射位置候補座標として、最大輝度の画素を検出する(ステップSB1)。例えば、図9(a)においては、画素nが最大輝度の画素である。
【0075】
次に、参照パターンセットPS全体を画素nの位置に合わせる(ステップSB2)。具体的には、図9(a)に示すように、参照輝度パターンDs0の最大輝度の位置が、画素nの位置と一致するように、Y方向にシフトさせる。同様に参照パターンセットPS全体(参照輝度パターンDs−4〜Ds4)のY座標値を、Y方向に同量シフトさせる。
【0076】
次に、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDs−4とを比較する(ステップSB3)。具体的には、正規化相互相関値Rを算出し、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDs−4との相関の程度を数値化する。次に、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDs−3とを比較し、同様に相関値を算出する(ステップSB5、SB3)。参照輝度パターンDs4までの処理を繰り返し、参照輝度パターンDs4までの処理が完了したかを確認する(ステップSB4)。完了した場合には、相関値の最も大きな値となった参照輝度パターンDsiを特定する(ステップSB6)。
【0077】
図9(b)に、最も相関値が大きくなった計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDs2との関係を示す。それぞれのデータは略一致し、正規化相互相関値Rは約1の最大値を示すことがわかる。この結果として、分解能δyが画素ピッチの四分の一の計測において、反射分布のピーク位置y0が、画素nと画素n+1との中間位置(+2/4画素位置)にあると検出され、同時にズレ量erから反射位置yrが特定されることで、反射位置検出の処理が完了する。
【0078】
なお、本実施例では、分解能δyが画素ピッチの四分の一となるように参照パターンセットPSを準備し、比較範囲を前後2画素分の範囲としたが、これに限定するものではない。より高い計測精度を求める場合には、より細かなピッチ、例えば十分の一のピッチで参照パターンセットPSを準備し、必要な範囲でそれぞれの相関評価を行えば良い。
【0079】
以上述べたように、本実施形態による形状計測装置100、該形状計測装置の制御方法、およびこの制御方法を含み機能させるプログラムによれば、以下の効果を得ることができる。
【0080】
取得した計測画像の最大輝度を示す画素位置を物体2の反射位置として単純に認識するのではなく、複数の画素に分布する計測輝度パターンDmと、参照輝度パターンDsiとを比較した結果により物体2の反射位置座標を求める。この方法を適用することにより、物体2の反射特性に応じた輝度分布を持つ比較用の参照輝度パターンDsiを予め準備することが可能であり、輝度の分布パターンを比較することで、より精度の高い計測が可能となる。
【0081】
また、複数の画素に分布する計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDsiとの正規化相互相関値Rを算出し、算出した正規化相互相関値Rの大小を比較することで、物体2の反射位置座標を求めることができる。計算に使用するこれらのデータ数は、サブピクセル単位の離散データであり、都度ガウスフィッティングを行う処理に比較してそのデータ数が少ないため、計算に要する時間が短く、高速な計測が可能である。
【0082】
また、物体2の種類によって異なる反射特性に応じて、対応する分布特性を持つ参照パターンセットPSを予め準備しておき、計測に際して最適な比較用の参照パターンセットPSを選択することで、より精度の高い計測が可能となる。具体的には、例えば物体2からの反射が、物体2の表面からだけではなく、その下層からの反射も含むような場合、分布特性は単一のガウス分布で近似される分布とはならず、物体2固有の分布となる。予めこの物体2固有の分布に従った参照パターンセットPSを準備しておくことで、より精度の高いパターンマッチングの得られる比較ができるため、より精度の高い計測を行うことが可能となる。
【0083】
また、予め測定対象として想定される様々な物体に対応した反射特性の参照パターンセットPSを準備しておくことで、計測に際し、最適な参照パターンセットPSを選択するだけで様々な物体の精度の良い測定が可能となる。
従って、反射特性により測定対象の限定がされることのない、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0084】
また、測定に先立ち分解能δyを設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、例えば、それほどの測定精度を必要としない計測の場合には、分解能δyを画素ピッチfあるいは画素ピッチfの二分の一程度に設定するなどで、より細かな分解能δyで計測する場合と比較して、計測に要する時間を短縮することができる。
【0085】
また、測定に先立ちパターンの比較を行う座標範囲が設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、比較座標範囲の設定において、算出された反射位置候補座標(最大輝度の画素)の前後・周辺で比較する範囲を狭くした場合には、パターンの比較回数が減少するため、計測時間が短縮される。
【0086】
また、物体2の反射位置の特定は、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンDmと、画素ピッチf以下の間隔で準備された複数の参照輝度パターンDsiとの比較で実施されるため、算出される物体2の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素ピッチfよりも細かな精度で検出される。
【0087】
また、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンDmに最も類似した参照輝度パターンDsiの輝度ピーク点から、物体2の反射位置座標が特定される。輝度分布に基づく検出であるため、物体2の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素ピッチfよりも細かな精度で検出される。従って、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0088】
また、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDsiとの正規化相互相関値Rをもってパターン類似度が評価されるため、反射輝度の違いによる影響を受けずにパターン形状の類似度が評価される。
【0089】
また、参照輝度パターンDsiが、一または複数のガウス関数から合成されることで、実際の反射特性による計測輝度パターンDmに、より類似させたパターンで位置検出のための比較をすることができる。その結果、物体による誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。
【0090】
また、参照輝度パターンDsiは、計測輝度パターンDmの分布情報を使用して作成することが可能であるため、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわないような物体であっても、誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。また、複数のガウス関数から類似した参照輝度パターンDsiを合成することが難しい場合や、合成作業に時間を要する場合など、より簡便に参照輝度パターンDsiを作成することができる。
【0091】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る形状計測装置100、形状計測装置の制御方法について説明する。なお、説明にあたり、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。
【0092】
実際の計測にあたっては、外乱光や反射表面の粗さ、異物などの存在により反射光の輝度分布にはノイズを含む場合がある。ここでは、ノイズが含まれる場合の計測の例を実施形態2として説明する。
【0093】
図10は、反射輝度分布にノイズが含まれる例を模式的に示すグラフである。
反射光の分布Pm′には画素nおよび画素n+1に対応する部分にノイズがあり、それぞれの画素の輝度が低下した計測輝度パターンDm′が得られている。実施形態1(実施例1)では、図9(a)に示すように、反射位置候補座標として、最大輝度を示す画素nが選択されたが、この例では、画素n+2が反射位置候補座標として選択され、参照輝度パターンDs0の最大輝度の位置が、図10に示すように、画素n+2の位置と一致するように、Y方向にシフトさせることになる。このように、反射光にノイズが含まれる場合には、反射位置候補座標は本来の位置からずれて検出される事がある。図10からも明らかなように、実際の反射位置から離れた位置で反射位置検出を行うことになる。
【0094】
このような場合、すなわち、ノイズの影響によって反射位置候補座標が画素単位でずれることが想定される場合には、反射位置候補座標の選択を、最大輝度を示す画素により行うのではなく、複数の画素輝度パターンと、計測輝度パターンDm′との相関評価によって行う。具体的には、参照輝度パターンDs0の最大輝度の位置を、最大輝度を示す画素n+2の前後に複数の画素位置にシフトさせて得られる複数の参照輝度パターンDs0と、計測輝度パターンDm′との相関評価を行い、もっとも高い相関値の得られた画素を反射位置候補座標とする。
【0095】
図11に本実施形態による反射位置検出のサブルーチンのフローチャートを示す。本実施形態は、実施形態1の形状計測のフローチャート(図7)における反射位置検出のサブルーチン部分(ステップSA7)のみが異なる。図11のフローチャートに従い、反射位置検出の方法を具体的に説明する。
なお、形状計測装置100は、本フローチャートに従った形状計測のための制御方法を含み機能させるプログラムを備えている。
【0096】
まず、複数の参照輝度パターンDs0を作成する(ステップSC1)。具体的には、比較範囲を、画素nの前後2画素とした場合には、画素nから画素n+4までの5つの画素位置に参照輝度パターンDs0の最大輝度の位置をシフトさせて得られる5つの参照輝度パターンDs01〜Ds05を生成する。
次に、それぞれの参照輝度パターンDs0iと計測輝度パターンDm′との相関値を計算する(ステップSC2〜SC4)。
次に、計算の結果、もっとも大きな相関値の得られた画素を反射位置候補座標とする(ステップSC5)。このようにすることで、実際の反射位置により近い画素を反射位置候補座標として選択することができる。
【0097】
以降のフローは、実施例1のステップSB2〜SB6と同様に、反射位置候補座標として選択された画素を中心としてサブピクセルで用意された参照パターンセットPSを適用して相関値を比較評価して最大相関値の得られる参照輝度パターンDsiから反射位置の特定を行う。
【0098】
なお、上記の例では、画素n−1から画素n+3までの5つの画素位置から得られる参照輝度パターンDs01〜Ds05を用いて反射位置候補座標としての画素を求めたが、前後にずらす画素数についてはノイズの大きさに応じて決定すればよい。
【0099】
また、上記のようにノイズの影響によって反射位置候補座標が画素単位でずれることが想定される場合には、上記の方法によらず、実施例1の方法において使用する参照パターンセットPSの範囲を、複数の画素に亘る範囲で用意し、すべての参照輝度パターンDsiとの相関値を評価する方法を用いても良い。但し、この場合には、サブピクセルで比較処理する回数が増えるために計測時間が増加してしまうことを考慮しておく必要がある。
【0100】
以上述べたように、本実施形態による形状計測装置100、該形状計測装置の制御方法、およびこの制御方法を含み機能させるプログラムによれば、外乱光や反射表面の粗さ、異物などの存在により反射光の輝度分布にノイズを含む場合であっても、計測輝度の分布と、参照パターンセットPSとの相関値を比較評価することで、反射位置の特定を精度よく行うことができる。
【0101】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0102】
(変形例1)
実施形態1では、計測輝度パターンDmと複数の参照輝度パターンDsiとの比較によって得られる相関値の最も大きな値となった参照輝度パターンDsiを特定し、この参照輝度パターンDsiの位置および付随するy0、yr、erの情報から反射位置を求めていた。これに対し、本変形例は、相関値の分布を二次関数で近似した場合に、二次関数の値が最大値を示す位置情報および付随するy0、yr、erから、物体2の反射位置座標を求めることを特徴としている。以下、具体的に説明する。
【0103】
図12は、算出した正規化相互相関値Rの分布を示すグラフである。
前述した反射位置検出のステップSA7(ステップSB1〜SB6)により、分解能δyずつシフトさせて正規化相互相関値Rを算出し、横軸に分解能δyのシフト量、縦軸に正規化相互相関値Rを取りプロットしている。プロットした各点を二次関数で近似して結ぶことにより、二次関数が最大値となる点が導出される。
【0104】
実施形態1(実施例1)では、算出した正規化相互相関値Rの最大値を示す分解能δyのシフト量となる参照輝度パターンDsiの位置から反射位置座標を特定したが、上記の二次関数の値が最大値を示す位置情報から反射位置座標を特定した方が、より高精度の結果を得ることができる。正規化相互相関値Rの分布を二次関数で近似した最大値を基に反射位置座標を求めることで、統計的により高精度の位置検出が可能となる。
【符号の説明】
【0105】
1…スリット光、2…物体、3…輝線、10…光学走査手段、11…光源、12,22…光学系、13…スキャンドライブ部、14…ステージ、20…撮像手段、21…撮像素子、23…撮像ドライブ部、24…ADC回路、30…反射位置検出手段、31…輝度パターン解析部、32…制御部、100…形状計測装置、Dm…計測輝度パターン、Dsi…参照輝度パターン、PS…参照パターンセット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的走査による形状計測装置、該形状計測装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体を光学的に走査して形状の情報を得る非接触型の形状計測装置の代表的な計測方法として、光切断法(スリット光投影法)がある。光切断法の測定原理は、三角測量の原理に基づく。スリット光を物体に投影し、別の角度から物体を撮像すると、物体の形状に合わせて変形したスリット画像が得られる。スリット光の投影光学系とスリット画像の撮像光学系、およびスリット光の投影角度と変形したスリット画像各点の観察角度などにより、幾何学的に物体の座標を算出することができる。さらにスリット光を物体上で走査することで、物体の三次元情報を得ることができる。
【0003】
このような測定において、撮像したスリット画像から得られる情報は、画像を構成する画素(ピクセル)毎の離散データであることから、物体の座標位置をより精度の高いサブピクセル精度で算出するために様々な技術が提案されている。例えば、受光強度の空間的分布(輝度分布)から重心演算を行い、画素ピッチで決まる値よりも分解能を高める技術などがある。特許文献1では、この重心演算において、多重反射などによる誤った重心情報を除外することで、測定精度を高める方法が提案されている。具体的には、重心演算を行う輝度分布を切り出す輝度閾値を変化させた場合に、算出した重心情報にある程度以上の差異が生じる場合には、その情報を無効として除外する方法である。また特許文献2では、実測した離散データを、ガウスフィッティングさせることで、輝度のピーク点を求める方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−22423号公報
【特許文献2】特開2009−74814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法では、より高い精度の計測が必要な場合に、測定対象が限定されてしまうという課題や、計測に時間を要してしまうなどの課題があった。具体的には、特許文献1による方法では、重心演算を行う輝度分布の輝度閾値を変えた場合に、重心位置が変化してしまうような測定対象は測定が困難であるという課題があった。例えば、光の反射が物体の表面だけでなく、表面下散乱など、わずかな深層からの反射も観測されるような物体の場合には、輝度分布が対称にならないために、有効な情報として処理されず、測定することが困難であった。また、特許文献2による方法では、ガウスフィッティングに時間を要してしまうという課題や、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわない物体の場合には、高い精度での計測が困難であるなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる形状計測装置は、投射光により物体を走査する光学走査手段と、物体からの、投射光の反射光による計測画像を取得する撮像手段と、取得した計測画像を基に、物体の反射位置を算出する反射位置検出手段と、を備え、反射位置検出手段は、取得した計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、物体の反射位置候補座標を算出し、計測輝度パターンと、反射位置候補座標を含む比較座標範囲内において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、計測輝度パターンとそれぞれの参照輝度パターンとのパターン類似度を算出し、パターン類似度が最も大きな参照輝度パターンが特定する座標情報から、物体の反射位置座標を求めることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、取得した計測画像の最大輝度を示す画素位置を物体の反射位置として単純に認識するのではなく、複数の画素に分布する計測輝度パターンと参照輝度パターンとを比較した結果により物体の反射位置座標を求める。この方法を適用することにより、物体の反射位置座標を特定するための参照輝度パターンを、物体の反射特性に応じて予め個別に準備することが可能となる。その結果、物体の反射特性に合わせて、より精度の高い計測が可能となる。
また、複数の画素に分布する計測輝度パターンと参照輝度パターンとの類似度を算出し、算出した類似度の大小を比較することで、物体の反射位置座標を求めることができるため、都度ガウスフィッティングを行う処理に比較して要する時間が短く、高速な計測が可能となる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる形状計測装置において、複数の参照輝度パターンは、複数種類の物体の反射光の分布特性に合わせ、複数の参照パターンセットとして予め備えられ、計測に際し、物体の種類に応じて、対応する参照パターンセットが選択できることが好ましい。
【0010】
本適用例によれば、物体の種類によって異なる反射特性に応じて、対応する分布特性を持つ参照パターンセットを予め準備しておき、計測に際して最適な比較用の参照パターンセットを選択することで、より精度の高い計測が可能となる。具体的には、例えば物体からの反射が、物体表面からだけではなく、その下層からの反射も含むような場合、分布特性は単一のガウス分布で近似される分布とはならず、物体固有の分布となる。予めこの物体固有の分布に従った参照パターンセットを準備しておくことで、より精度の高いパターンマッチングの得られる比較ができるため、より精度の高い計測を行うことが可能となる。
また、予め測定対象として想定される様々な物体に対応した反射特性の参照パターンセットを準備しておくことで、計測に際し、最適な参照パターンセットを選択するだけで様々な物体の精度の良い測定が可能となる。
従って、反射特性により測定対象の限定がされることのない、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる形状計測装置において、分解能および比較座標範囲は、計測に際し、予め設定できることが好ましい。
【0012】
本適用例によれば、測定に際して分解能を設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、例えば、それほどの測定精度を必要としない計測の場合には、分解能を、画素間隔、あるいは画素間隔の二分の一程度に設定するなどで、比較に要する時間を短縮することができる。
また、測定に際してパターンの比較を行う座標範囲が設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、比較座標範囲の設定において、算出された反射位置候補座標の前後・周辺で比較する範囲を狭くした場合には、パターンの比較回数が減少するため、計測時間が短縮される。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる形状計測装置において、分解能は、画素間隔以下であることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、物体の反射位置の特定は、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンと、画素間隔以下のピッチで準備された複数の参照輝度パターンとの比較で実施されるため、算出される物体の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素間隔よりも細かな精度で検出される。つまり、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる形状計測装置において、パターン類似度が最も大きくなる参照輝度パターンのピーク点を示す座標を、物体の反射位置座標とすることを特徴とする。
【0016】
本適用例によれば、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンに最も類似した参照輝度パターンの輝度ピーク点が、物体の反射位置座標として特定される。輝度分布に基づく検出であるため、物体の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素間隔よりも細かな精度で検出される。従って、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる形状計測装置において、パターン類似度は、計測輝度パターンと参照輝度パターンとの正規化相互相関値であり、計測輝度パターンと複数の参照輝度パターンとの比較によって得られる正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した場合に、二次関数の値が最大値を示す位置情報から、物体の反射位置座標を求めることを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、計測輝度パターンと参照輝度パターンとの正規化相互相関値をもってパターン類似度が評価されるため、反射輝度の違いによる影響を受けずにパターン形状の類似度が評価される。また、正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した最大値を基に反射位置座標を求めることで、より高精度の位置検出が可能となる。その結果、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる形状計測装置において、参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、画素輝度パターンは、一または複数のガウス関数が合成された関数から導出され、サブピクセル輝度パターンは、画素輝度パターンから導出されることを特徴とする。
【0020】
本適用例によれば、実際の反射特性による計測輝度パターンに、より類似させたパターンで位置検出のための比較をすることができる。その結果、物体による誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。その結果、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる形状計測装置において、参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、画素輝度パターンは、計測輝度パターンから導出され、サブピクセル輝度パターンは、画素輝度パターンから導出されることを特徴とする。
【0022】
本適用例によれば、参照輝度パターンが、実際の物体の反射光から得られる計測輝度パターンの分布情報を基に導出される。具体的には、複数の関数を合成して類似パターンを作成するのではなく、計測輝度パターンの分布情報を使用して画素輝度パターンを作成する。このようにすることで、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわないような物体であっても、誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。また、複数のガウス関数から類似した参照輝度パターンを合成することが難しい場合や、合成作業に時間を要する場合など、より簡便に参照輝度パターンを作成することができる。
【0023】
[適用例9]本適用例にかかる形状計測装置の制御方法は、投射光により物体を走査するステップと、物体からの、投射光の反射光による計測画像を取得するステップと、取得した計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、物体の反射位置候補座標を算出するステップと、計測輝度パターンと、反射位置候補座標を含む比較座標範囲において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、計測輝度パターンとそれぞれの参照輝度パターンとのパターン類似度を算出するステップと、パターン類似度が最も大きな参照輝度パターンが特定する座標情報から、物体の反射位置座標を求めるステップと、を含むことを特徴とする。
【0024】
本適用例によれば、取得した計測画像の最大輝度を示す画素位置を物体の反射位置として単純に認識するのではなく、複数の画素に分布する計測輝度パターンと参照輝度パターンとを比較した結果により物体の反射位置座標を求める。この方法を適用することにより、物体の反射位置座標を特定するための参照輝度パターンを、物体の反射特性に応じて予め個別に準備することが可能となる。その結果、物体の反射特性によって計測結果に差異が生ずることなく、物体の反射特性に合わせて、より精度の高い計測が可能となる。
また、複数の画素に分布する計測輝度パターンと参照輝度パターンとの類似度を算出し、算出した類似度の大小を比較することで、物体の反射位置座標を求めることができるため、都度ガウスフィッティングを行う処理に比較して要する時間が短く、高速な計測が可能となる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、複数の参照輝度パターンを、複数種類の物体の反射光の分布特性に合わせ、複数の参照パターンセットとして予め備えるステップと、計測に際し、物体の種類に応じて、対応する参照パターンセットを選択するステップと、を含むことが好ましい。
【0026】
本適用例によれば、物体の種類によって異なる反射特性に応じて、対応する分布特性を持つ参照パターンセットを予め準備しておき、計測に際して最適な比較用の参照パターンセットを選択することで、より精度の高い計測が可能となる。具体的には、例えば物体からの反射が、物体表面からだけではなく、その下層からの反射も含むような場合、分布特性は単一のガウス分布で近似される分布とはならず、物体固有の分布となる。予めこの物体固有の分布に従った参照パターンセットを準備しておくことで、より精度の高いパターンマッチングの得られる比較ができるため、より精度の高い計測を行うことが可能となる。
また、予め測定対象として想定される様々な物体に対応した反射特性の参照パターンセットを準備しておくことで、計測に際し、最適な参照パターンセットを選択するだけで様々な物体の精度の良い測定が可能となる。
従って、反射特性により測定対象の限定がされることのない、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、分解能および比較座標範囲を、計測に際し、予め設定することが好ましい。
【0028】
本適用例によれば、測定に際して分解能を設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、例えば、それほどの測定精度を必要としない計測の場合には、分解能を、画素間隔、あるいは画素間隔の二分の一程度に設定するなどで、比較に要する時間を短縮することができる。
また、測定に際してパターンの比較を行う座標範囲が設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、比較座標範囲の設定において、算出された反射位置候補座標の前後・周辺で比較する範囲を狭くした場合には、パターンの比較回数が減少するため、計測時間が短縮される。
【0029】
[適用例12]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、分解能は、画素間隔以下であることが好ましい。
【0030】
本適用例によれば、物体の反射位置の特定は、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンと、画素間隔以下のピッチで準備された複数の参照輝度パターンとの比較で実施されるため、算出される物体の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素間隔よりも細かな精度で検出される。つまり、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0031】
[適用例13]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、パターン類似度が最も大きくなる参照輝度パターンのピーク点を示す座標を、物体の反射位置座標とすることを特徴とする。
【0032】
本適用例によれば、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンに最も類似した参照輝度パターンの輝度ピーク点が、物体の反射位置座標として特定される。輝度分布に基づく検出であるため、物体の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素間隔よりも細かな精度で検出される。従って、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0033】
[適用例14]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、パターン類似度は、計測輝度パターンと参照輝度パターンとの正規化相互相関値であり、計測輝度パターンと複数の参照輝度パターンとの比較によって得られる正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した場合に、二次関数の値が最大値を示す位置情報から、物体の反射位置座標を求めることを特徴とする。
【0034】
本適用例によれば、計測輝度パターンと参照輝度パターンとの正規化相互相関値をもってパターン類似度が評価されるため、反射輝度の違いによる影響を受けずにパターン形状の類似度が評価される。また、正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した最大値を基に反射位置座標を求めることで、統計的に、より高精度の位置検出が可能となる。その結果、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0035】
[適用例15]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、画素輝度パターンは、一または複数のガウス関数が合成された関数から導出され、サブピクセル輝度パターンは、画素輝度パターンから導出されることを特徴とする。
【0036】
本適用例によれば、実際の反射特性による計測輝度パターンに、より類似させたパターンで位置検出のための比較をすることができる。その結果、物体による誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。その結果、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0037】
[適用例16]上記適用例にかかる形状計測装置の制御方法において、参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、画素輝度パターンは、計測輝度パターンから導出され、サブピクセル輝度パターンは、画素輝度パターンから導出されることを特徴とする。
【0038】
本適用例によれば、参照輝度パターンが、実際の物体の反射光から得られる計測輝度パターンの分布情報を基に導出される。具体的には、複数の関数を合成して類似パターンを作成するのではなく、計測輝度パターンの分布情報を使用して画素輝度パターンを作成する。このようにすることで、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわないような物体であっても、誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。また、複数のガウス関数から類似した参照輝度パターンを合成することが難しい場合や、合成作業に時間を要する場合など、より簡便に参照輝度パターンを作成することができる。
【0039】
[適用例17]本適用例にかかるプログラムは、形状計測装置を、上記に記載の制御方法を含み機能させることを特徴とする。
【0040】
本適用例によれば、上記に記載の制御方法を含み機能させるプログラムを用いることで、反射特性により測定対象の限定がされることのない、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。また、位置検出に要する時間を必要充分な範囲で調整し、効率的に計測できる形状計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a);実施形態1にかかる形状計測装置の構成を示すブロック図、(b);形状計測方法を説明する斜視図。
【図2】(a);計測画像の例を示す説明図、(b);画素が捕らえている反射光の輝度分布の例を示す説明図。
【図3】単一のガウス分布に従わない反射輝度分布の例を示す説明図。
【図4】(a);計測輝度パターンDmの例を示すグラフ、(b);分布関数Pm(y)の作成例を示すグラフ。
【図5】(a);画素輝度パターンを示すグラフ、(b);サブピクセル輝度パターンを説明するグラフ。
【図6】参照輝度パターンDs−4〜Ds4を示すグラフ。
【図7】形状計測のフローチャート。
【図8】反射位置検出のサブルーチンのフローチャート。
【図9】(a)、(b);計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDsiとの関係を示すグラフ。
【図10】反射輝度分布にノイズが含まれる例を模式的に示すグラフ。
【図11】実施形態2に係る反射位置検出のフローチャート。
【図12】正規化相互相関値の分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、説明を分かりやすくするため、実際とは異なる尺度で記載している場合がある。
【0043】
(実施形態1)
図1(a)は、実施形態1にかかる形状計測装置100の構成を示すブロック図、図1(b)は、形状計測方法を説明する斜視図である。
形状計測装置100は、非接触型の形状計測装置であり、光学走査手段10、撮像手段20、反射位置検出手段30などから構成される。光学走査手段10から照射されるスリット光1をステージ14に乗せた物体2に投影し、撮像手段20により別の角度から物体2を撮像すると、物体2の形状に合わせて変形したスリット画像が得られる。スリット光1の投影角度と、変形したスリット画像各点の観察角度などにより、幾何学的に物体2の座標を算出することができる。さらにスリット光1を物体2上で走査することで、物体2の三次元情報を得ることができる。
【0044】
なお、図1(b)において、スリット光1のスリット長方向をXp方向、Xp方向に交差してスリット光1を物体2上で走査する方向をYp方向とする。また、ステージ14は、XpYp平面で構成される。
【0045】
光学走査手段10は、光源11、光学系12、スキャンドライブ部13などから構成される。光源11は、光学系12を通してスリット光1を照射する。スキャンドライブ部13は、光学系12を駆動してスリット光1の投影角度を変化させる。スリット光1の投影角度を変化させることで、物体2の全体をスリット光1で走査する。光源11には、レーザー光源を用いているが、LED(Light Emitting Diode)光源などであっても良い。なお、走査の方法は、光学系12の駆動によらず、スリット光1の投影角度を固定して、ステージ14をY方向に移動させ、ステージ14に乗せた物体2がスリット光1の下を移動する方法であっても良い。
【0046】
撮像手段20は、撮像素子21、光学系22、撮像ドライブ部23、ADC(Analog to Digital Converter)回路24などから構成される。撮像素子21は、CCD型やMOS型などのエリアセンサーであり、光学系22を通して受光した光を撮像ドライブ部23の制御の下に、計測画像として取り込む。計測画像は、計測輝度パターンDmの情報としてADC回路24から出力される。計測輝度パターンDmは、撮像素子21を構成する複数の画素のそれぞれが受光した輝度情報などから構成される。各画素は、画素ピッチfでマトリクス状に配列されている。
【0047】
反射位置検出手段30は、輝度パターン解析部31、制御部32などから構成される。輝度パターン解析部31は、制御部32の制御の下に計測輝度パターンDmを解析して、スリット光1の物体2における各点の反射位置などを算出する。また、制御部32は、光学走査手段10および撮像手段20の制御や、後述する参照パターンセットPSの生成、上記の反射位置算出結果を基にした物体2の形状計測結果の出力なども行う。
【0048】
次に、形状計測装置100による形状計測の方法について説明する。
図2(a)は、計測画像の例を示す説明図である。図2(a)におけるX軸、Y軸は、計測画像を構成する画素の座標であり、図1(b)のXp、Ypの方向に対応している。
【0049】
図2(a)に描かれている折れ線は、直線状のスリット光1が物体2に投影され、物体2の形状に合わせて台形状に変形したスリット画像(輝線3)の例である。輝線3のY軸上の位置から、物体2で反射して撮像手段20に入射するスリット光1の入射角(観察角度)を求めることができる。この観察角度と、既知情報であるスリット光1の投影角度、および投影の基点とステージ14上の基準点との距離とから三角測量の手法によって物体2の反射点の高さを求めることができる。
【0050】
物体2の高さを精度良く計測するためには、図2(a)における輝線3の位置(y=y0)の値を正確に算出し、y0に対応する位置を高精度に特定する必要がある。しかしながら、一般的に輝線3は、ある程度の幅を持った画像情報として得られる。輝線3の略中央(x、y)=(x0、y0)に着目した場合に、x0における輝線3は、y0を略中央としながら、Y方向に幅を持った画素毎に離散した輝度情報として得られるため、この幅の範囲で実際の位置に対応したy0の位置を特定する必要がある。以下に具体的に説明する。
【0051】
図2(b)は、x0線上におけるy0付近の画素が捕らえている反射光の輝度分布の例を示す図であり、輝線3が幅方向に輝度の分布を持っている様子を示している。図2(b)は、図2(a)のY軸スケールに対して、Y軸スケールを、輝線3の幅程度に拡大している。
図2(b)において、輝線3は、画素n−4〜画素n+5の幅を持った計測輝度パターンDmとして分布している。計測輝度パターンDmは、それぞれの画素に分布する輝度情報の離散データから成る。従って、実際の物体2の反射位置は、この輝度の離散データから精度良く算出し特定することが望まれる。
【0052】
スリット光1を投影した場合に、物体2が反射する光の輝度は、一般的にガウス分布に略従う場合が多く、ガウス分布のピーク点が物体2の反射位置に対応する場合が多い。図2(b)に一点鎖線で示す曲線は、各画素の離散データをガウスフィッティングさせた場合の分布を示している。この図からもわかるように、最大輝度の得られている画素nの位置ypは、実際の反射位置に対応するガウス分布のピーク点y0との間にesのズレがあり、計測輝度パターンDmをガウスフィッティングすることで、精度良く位置の特定ができることを示している。つまり、実際の輝度分布がガウス分布に従う場合には、フィッティングさせたガウス分布のピーク点を算出することで、離散データから精度の高い位置検出が可能となる。
【0053】
しかしながら、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわない物体の場合には、フッティングさせたガウス分布のピーク点が実際の反射位置を示さない場合がある。つまり、物体の反射特性によっては、測定の精度が悪くなる場合がある。また、計測の都度、画素情報(離散データ)に対してガウスフィッティングを行うことで計測に時間を要してしまう。そこで、本実施形態により、反射特性によって測定対象の限定がされることがなく、より精度の高い計測が可能な、また都度ガウスフィッティング処理を必要とせず、短時間で計測のできる形状計測の方法を提案する。以下にその方法について説明する。
【0054】
図3は、単一のガウス分布に従わない反射輝度分布の例を示す説明図である。
物体2の表面が半透明な場合や、表面にコーティングが施されている場合などは、スリット光1の投影に対する反射は、物体2の表面からの反射だけではなく、物体2の深層(表面下)からの反射が合成される場合がある。また、例えば大理石のような物質では、表面の反射に加えて、表面下散乱(サブサーフェススキャタリング)が見られる。
図3において、分布P1は、表面からの反射による輝度分布、分布P2は、物体2の表面下からの反射のよる輝度分布を示している。実際の計測においては、これらの反射が合成された分布Pmが観測される。分布Pmのピーク点(y=y0)は、実際の反射位置に略等しい分布P1のピーク点(y=yr)との間にズレ量erがあり計測誤差の原因となり得る。このような単一のガウス分布に従わない分布を呈する物体の計測方法を以下に実施例として説明する。
【0055】
(実施例1)
1.測定の概要
本実施例による測定方法の概要を説明する。
図4(a)は、計測輝度パターンDmの例を示すグラフ、図4(b)は、計測輝度パターンDmにフィッティングさせる分布関数Pm(y)の作成例を示すグラフである。
まず、予め、物体2からの反射による輝度分布を計測し、計測輝度パターンDmを取得する。次に、一または複数のガウス関数を合成するなどして、計測輝度パターンDmにフィッティングする分布関数Pm(y)を求める。この際、分布関数Pm(y)と共に分布関数Pm(y)のピーク点y0、および物体2の反射位置yrの情報を特定しておく。物体2の反射位置yrは、合成に使用したガウス関数の中から、表面反射部分に関わるガウス関数を抽出してそのピーク値をyrとする方法や、実際に他の物理的測定を行って求めておく方法などがある。
【0056】
次に、この分布関数Pm(y)から、画素分解能(画素ピッチf)を上回るサブピクセルの分解能δy毎に位置情報を持った複数の位置検出用の参照輝度パターンDsi(i=・・・、−3、−2、−1、0、1、2、3、・・・)を生成する。参照輝度パターンDsiは、画素ピッチfを持って配置された画素が、分布関数Pm(y)上で持つ離散データの集まりである。
具体的には、まず、ひとつの画素が反射位置y0と重なった場合の参照輝度パターンDs0を求め、次に反射位置y0からY軸上のプラスマイナスに必要な範囲で分解能δyずつずらして複数の参照輝度パターンDsiを生成する。それぞれの参照輝度パターンDsiは、反射位置y0からのずれ量の位置情報を持っている。
この複数の参照輝度パターンDsiは、予め、反射特性の異なる物体の種類毎に生成し、物体の種類毎に参照パターンセットPSとして記憶しておき、実際の物体の形状測定にあたって、その物体に該当する参照パターンセットPSを選択して使用するのが好ましい。
【0057】
次に、計測して得られる計測輝度パターンDmと個々の参照輝度パターンDsiとの相関値を算出する。ここで、最も高い相関値の得られる参照輝度パターンDsiの持つ位置情報(反射位置y0からのずれ量)から物体2の反射位置を特定することができる。
なお、本実施例では、相関値として正規化相互相関値Rを用いている。正規化相互相関(NCC:normalized cross correlation)は、平均と標準偏差とによって正規化された絶対測度であり、値が1に近く大きいほど類似性が高いことを表す。
【0058】
以下に本実施例の詳細を説明する。
2.準備
準備段階では、参照輝度パターンDsiを作成して参照パターンセットPSを準備する。
まず、形状の計測に先立ち、物体2の反射輝度分布を実測し反射特性を確認する。
図4(a)に、実測で得られた計測輝度パターンDmを示す。
次に、この計測輝度パターンDmの分布に略フィットする分布関数Pm(y)を作成する。分布関数Pm(y)の作成は、下記数1に示すように、複数のガウス関数を合成することにより行う。C1、C2、・・・、σ1、σ2、・・・、y1、y2、・・・の定数は、計測輝度パターンDmの分布に略フィットするように適正に設定する。
【0059】
【数1】
【0060】
図4(b)は、ガウス関数P1とP2とを合成して分布関数Pm(y)を作成し、計測輝度パターンDmとのフィッティングが略確認された様子を示している。また、ガウス関数P1のピーク点から、分布関数Pm(y)における物体2の反射位置yrを求めている。
ここで得られた分布関数Pm(y)、分布関数Pm(y)のピーク点y0、反射位置yr、ズレ量er=y0−yrは、物体2専用、あるいは、物体2と同等の反射特性を示す物体群専用の参照輝度分布関数、およびこの分布における反射位置情報として外部記憶装置などに保存しておく。
【0061】
なお、分布関数Pm(y)の作成は、上記のように複数のガウス関数を合成する方法に限定するものではなく、例えば、実測した計測輝度パターンDmの離散データをそのまま使用し、離散データのそれぞれの点をスプライン関数などで補間する方法をとっても良い。
【0062】
次に、分布関数Pm(y)から、参照輝度パターンDsiを作成する。
参照輝度パターンDsiは、物体2を撮像して得られた計測輝度パターンDmと比較照合して相関を評価し、反射位置を特定するための位置情報を持った輝度分布データのセットである。参照輝度パターンDsiは、画素輝度パターン(参照輝度パターンDs0)とそれ以外のサブピクセル輝度パターンから成り、それぞれ生成する方法が異なる。
【0063】
図5(a)は、画素輝度パターンを示すグラフであり、分布関数Pm(y)と、各画素位置における分布関数Pm(y)の値を示している。このグラフにおいて、丸印で示される各点(d1〜d13)の輝度分布データが画素輝度パターンである。
【0064】
まず、分布関数Pm(y)におけるピーク点y0が、画素nの位置に重なるようにシフトし、画素輝度パターンとして基本となる参照輝度パターンDs0を作成する。図5(a)におけるd1〜d13がそれに当たり、画素n−5から画素n+7までの各位置における分布関数Pm(y)の値としてグラフ上の交点から求められる。
【0065】
次に、サブピクセル輝度パターンとしての参照輝度パターンDsiを作成する。
サブピクセル輝度パターンは、サブピクセルの分解能δyで位置検出するための参照輝度パターンDsiであり、参照輝度パターンDs0を画素nの位置を中心として画素方向にサブピクセルの分解能δyずつシフトして作成する。つまり、分布関数Pm(y)のピーク点y0を、画素nの位置から、所望の分解能δyに相当するピッチだけY方向にシフトさせて、各画素位置に対応する分布関数Pm(y)の値をデータセットとして参照輝度パターンDsiを作成する。
【0066】
図5(b)は、その具体例であり、サブピクセル輝度パターンを示している。ここでは、画素ピッチの四分の一を分解能δyとするためのひとつの参照輝度パターンDsiを作成している。分布関数Pm(y)のピーク点を−1/4画素分Y方向にシフトし、画素n−5から画素n+7までの各位置における分布関数Pm(y)の値をグラフ上の交点に丸印で示している。この丸印位置のデータセット(d1〜d13)が、−1/4画素位置に重なる場合の参照輝度パターンDs−1である。
【0067】
同様にして、−4/4画素位置から+4/4画素位置まで、1/4画素ピッチ(=分解能δy)で参照輝度パターンDsi(=Ds−4〜Ds4)を作成する。
図6は、この様にして求めた参照輝度パターンDs−4〜Ds4(Ds0を除く)を示すグラフである。この参照輝度パターンDs−4〜Ds4のセットが、分解能δyが四分の一画素(サブピクセル)の参照パターンセットPSであり、この参照パターンセットおよびy0、yr、erの値を記憶することで準備が完了する。
【0068】
3.計測
図7に本実施例による形状計測のフローチャートを示す。本フローチャートに従い、形状計測の方法を具体的に説明する。
なお、形状計測装置100は、本フローチャートに従った形状計測のための制御方法を含み機能させるプログラムを備えている。
【0069】
まず、物体2をステージ14(図1(b))にセットする(ステップSA1)。
次に、物体2用に準備した参照輝度パターンDs−4〜Ds4のセットを計測における参照パターンセットPSとして選択する(ステップSA2)。また、同時に対応するy0、yr、erの値を読み出しておく。
次に、光学走査手段10とステージ14との位置を調整し、投影の基点とステージ14上の基準点との距離を求める。あるいは、予めセットした距離の位置に調整する(ステップSA3)。
次に、光学走査手段10からスリット光1を投影し(ステップSA4)、撮像手段20によってスリット画像を撮像する(ステップSA5)。その結果、例えば、図2(a)の画像が得られる。
【0070】
次に、撮像したスリット画像から、反射位置を検出する処理を行う。
まず、X=0として(ステップSA6)、X=0における反射位置を検出する(ステップSA7)。反射位置検出のステップSA7は、サブルーチンとして後述する。
【0071】
次に、Xの値が必要な1ライン(スリット光1)の長さに相当する所定の値に達しているかを確認し、必要な1ラインの処理が終了したか判断する(ステップSA8)。処理が終了していない場合(No)は、Xをインクリメントして画素座標XをX方向にインデックスし(ステップSA9)、次のX位置における反射位置を検出する(ステップSA7)。必要な1ラインの処理が終了するまで、ステップSA7からステップSA9を繰り返す。
処理が終了した場合は(ステップSA8においてYes)、光学走査範囲が終了し計測を終了して良いか確認し(ステップSA10)、終了していない場合(No)には、光学走査手段10により光学走査をインデックスして(ステップSA11)、次のスリット光1の投影処理を行う(ステップSA4)。
【0072】
必要な光学走査が完了するまで、ステップSA4からステップSA11を繰り返す。光学走査が完了した場合は(ステップSA10においてYes)、物体2の形状計測結果を出力して(ステップSA12)、計測を終了する。
【0073】
図8は、反射位置検出のサブルーチン(ステップSA7)のフローチャートである。
また、図9(a)、(b)は、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDsiとの関係を示すグラフである。これらの図に従い、反射位置検出の方法を具体的に説明する。
【0074】
まず、ステップSA6、あるいはステップSA9で選択された画素座標XにてY方向に画素をスキャンし、反射位置候補座標として、最大輝度の画素を検出する(ステップSB1)。例えば、図9(a)においては、画素nが最大輝度の画素である。
【0075】
次に、参照パターンセットPS全体を画素nの位置に合わせる(ステップSB2)。具体的には、図9(a)に示すように、参照輝度パターンDs0の最大輝度の位置が、画素nの位置と一致するように、Y方向にシフトさせる。同様に参照パターンセットPS全体(参照輝度パターンDs−4〜Ds4)のY座標値を、Y方向に同量シフトさせる。
【0076】
次に、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDs−4とを比較する(ステップSB3)。具体的には、正規化相互相関値Rを算出し、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDs−4との相関の程度を数値化する。次に、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDs−3とを比較し、同様に相関値を算出する(ステップSB5、SB3)。参照輝度パターンDs4までの処理を繰り返し、参照輝度パターンDs4までの処理が完了したかを確認する(ステップSB4)。完了した場合には、相関値の最も大きな値となった参照輝度パターンDsiを特定する(ステップSB6)。
【0077】
図9(b)に、最も相関値が大きくなった計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDs2との関係を示す。それぞれのデータは略一致し、正規化相互相関値Rは約1の最大値を示すことがわかる。この結果として、分解能δyが画素ピッチの四分の一の計測において、反射分布のピーク位置y0が、画素nと画素n+1との中間位置(+2/4画素位置)にあると検出され、同時にズレ量erから反射位置yrが特定されることで、反射位置検出の処理が完了する。
【0078】
なお、本実施例では、分解能δyが画素ピッチの四分の一となるように参照パターンセットPSを準備し、比較範囲を前後2画素分の範囲としたが、これに限定するものではない。より高い計測精度を求める場合には、より細かなピッチ、例えば十分の一のピッチで参照パターンセットPSを準備し、必要な範囲でそれぞれの相関評価を行えば良い。
【0079】
以上述べたように、本実施形態による形状計測装置100、該形状計測装置の制御方法、およびこの制御方法を含み機能させるプログラムによれば、以下の効果を得ることができる。
【0080】
取得した計測画像の最大輝度を示す画素位置を物体2の反射位置として単純に認識するのではなく、複数の画素に分布する計測輝度パターンDmと、参照輝度パターンDsiとを比較した結果により物体2の反射位置座標を求める。この方法を適用することにより、物体2の反射特性に応じた輝度分布を持つ比較用の参照輝度パターンDsiを予め準備することが可能であり、輝度の分布パターンを比較することで、より精度の高い計測が可能となる。
【0081】
また、複数の画素に分布する計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDsiとの正規化相互相関値Rを算出し、算出した正規化相互相関値Rの大小を比較することで、物体2の反射位置座標を求めることができる。計算に使用するこれらのデータ数は、サブピクセル単位の離散データであり、都度ガウスフィッティングを行う処理に比較してそのデータ数が少ないため、計算に要する時間が短く、高速な計測が可能である。
【0082】
また、物体2の種類によって異なる反射特性に応じて、対応する分布特性を持つ参照パターンセットPSを予め準備しておき、計測に際して最適な比較用の参照パターンセットPSを選択することで、より精度の高い計測が可能となる。具体的には、例えば物体2からの反射が、物体2の表面からだけではなく、その下層からの反射も含むような場合、分布特性は単一のガウス分布で近似される分布とはならず、物体2固有の分布となる。予めこの物体2固有の分布に従った参照パターンセットPSを準備しておくことで、より精度の高いパターンマッチングの得られる比較ができるため、より精度の高い計測を行うことが可能となる。
【0083】
また、予め測定対象として想定される様々な物体に対応した反射特性の参照パターンセットPSを準備しておくことで、計測に際し、最適な参照パターンセットPSを選択するだけで様々な物体の精度の良い測定が可能となる。
従って、反射特性により測定対象の限定がされることのない、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0084】
また、測定に先立ち分解能δyを設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、例えば、それほどの測定精度を必要としない計測の場合には、分解能δyを画素ピッチfあるいは画素ピッチfの二分の一程度に設定するなどで、より細かな分解能δyで計測する場合と比較して、計測に要する時間を短縮することができる。
【0085】
また、測定に先立ちパターンの比較を行う座標範囲が設定できるため、比較に要する時間を必要充分な範囲で調整することができる。具体的には、比較座標範囲の設定において、算出された反射位置候補座標(最大輝度の画素)の前後・周辺で比較する範囲を狭くした場合には、パターンの比較回数が減少するため、計測時間が短縮される。
【0086】
また、物体2の反射位置の特定は、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンDmと、画素ピッチf以下の間隔で準備された複数の参照輝度パターンDsiとの比較で実施されるため、算出される物体2の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素ピッチfよりも細かな精度で検出される。
【0087】
また、計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンDmに最も類似した参照輝度パターンDsiの輝度ピーク点から、物体2の反射位置座標が特定される。輝度分布に基づく検出であるため、物体2の反射位置座標は、輝度情報を持つ画素ピッチfよりも細かな精度で検出される。従って、より精度の高い計測が可能な形状計測装置を提供することができる。
【0088】
また、計測輝度パターンDmと参照輝度パターンDsiとの正規化相互相関値Rをもってパターン類似度が評価されるため、反射輝度の違いによる影響を受けずにパターン形状の類似度が評価される。
【0089】
また、参照輝度パターンDsiが、一または複数のガウス関数から合成されることで、実際の反射特性による計測輝度パターンDmに、より類似させたパターンで位置検出のための比較をすることができる。その結果、物体による誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。
【0090】
また、参照輝度パターンDsiは、計測輝度パターンDmの分布情報を使用して作成することが可能であるため、反射光の輝度分布がガウスフィッティングにそぐわないような物体であっても、誤差が少ない高精度の位置検出が可能となる。また、複数のガウス関数から類似した参照輝度パターンDsiを合成することが難しい場合や、合成作業に時間を要する場合など、より簡便に参照輝度パターンDsiを作成することができる。
【0091】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る形状計測装置100、形状計測装置の制御方法について説明する。なお、説明にあたり、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。
【0092】
実際の計測にあたっては、外乱光や反射表面の粗さ、異物などの存在により反射光の輝度分布にはノイズを含む場合がある。ここでは、ノイズが含まれる場合の計測の例を実施形態2として説明する。
【0093】
図10は、反射輝度分布にノイズが含まれる例を模式的に示すグラフである。
反射光の分布Pm′には画素nおよび画素n+1に対応する部分にノイズがあり、それぞれの画素の輝度が低下した計測輝度パターンDm′が得られている。実施形態1(実施例1)では、図9(a)に示すように、反射位置候補座標として、最大輝度を示す画素nが選択されたが、この例では、画素n+2が反射位置候補座標として選択され、参照輝度パターンDs0の最大輝度の位置が、図10に示すように、画素n+2の位置と一致するように、Y方向にシフトさせることになる。このように、反射光にノイズが含まれる場合には、反射位置候補座標は本来の位置からずれて検出される事がある。図10からも明らかなように、実際の反射位置から離れた位置で反射位置検出を行うことになる。
【0094】
このような場合、すなわち、ノイズの影響によって反射位置候補座標が画素単位でずれることが想定される場合には、反射位置候補座標の選択を、最大輝度を示す画素により行うのではなく、複数の画素輝度パターンと、計測輝度パターンDm′との相関評価によって行う。具体的には、参照輝度パターンDs0の最大輝度の位置を、最大輝度を示す画素n+2の前後に複数の画素位置にシフトさせて得られる複数の参照輝度パターンDs0と、計測輝度パターンDm′との相関評価を行い、もっとも高い相関値の得られた画素を反射位置候補座標とする。
【0095】
図11に本実施形態による反射位置検出のサブルーチンのフローチャートを示す。本実施形態は、実施形態1の形状計測のフローチャート(図7)における反射位置検出のサブルーチン部分(ステップSA7)のみが異なる。図11のフローチャートに従い、反射位置検出の方法を具体的に説明する。
なお、形状計測装置100は、本フローチャートに従った形状計測のための制御方法を含み機能させるプログラムを備えている。
【0096】
まず、複数の参照輝度パターンDs0を作成する(ステップSC1)。具体的には、比較範囲を、画素nの前後2画素とした場合には、画素nから画素n+4までの5つの画素位置に参照輝度パターンDs0の最大輝度の位置をシフトさせて得られる5つの参照輝度パターンDs01〜Ds05を生成する。
次に、それぞれの参照輝度パターンDs0iと計測輝度パターンDm′との相関値を計算する(ステップSC2〜SC4)。
次に、計算の結果、もっとも大きな相関値の得られた画素を反射位置候補座標とする(ステップSC5)。このようにすることで、実際の反射位置により近い画素を反射位置候補座標として選択することができる。
【0097】
以降のフローは、実施例1のステップSB2〜SB6と同様に、反射位置候補座標として選択された画素を中心としてサブピクセルで用意された参照パターンセットPSを適用して相関値を比較評価して最大相関値の得られる参照輝度パターンDsiから反射位置の特定を行う。
【0098】
なお、上記の例では、画素n−1から画素n+3までの5つの画素位置から得られる参照輝度パターンDs01〜Ds05を用いて反射位置候補座標としての画素を求めたが、前後にずらす画素数についてはノイズの大きさに応じて決定すればよい。
【0099】
また、上記のようにノイズの影響によって反射位置候補座標が画素単位でずれることが想定される場合には、上記の方法によらず、実施例1の方法において使用する参照パターンセットPSの範囲を、複数の画素に亘る範囲で用意し、すべての参照輝度パターンDsiとの相関値を評価する方法を用いても良い。但し、この場合には、サブピクセルで比較処理する回数が増えるために計測時間が増加してしまうことを考慮しておく必要がある。
【0100】
以上述べたように、本実施形態による形状計測装置100、該形状計測装置の制御方法、およびこの制御方法を含み機能させるプログラムによれば、外乱光や反射表面の粗さ、異物などの存在により反射光の輝度分布にノイズを含む場合であっても、計測輝度の分布と、参照パターンセットPSとの相関値を比較評価することで、反射位置の特定を精度よく行うことができる。
【0101】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0102】
(変形例1)
実施形態1では、計測輝度パターンDmと複数の参照輝度パターンDsiとの比較によって得られる相関値の最も大きな値となった参照輝度パターンDsiを特定し、この参照輝度パターンDsiの位置および付随するy0、yr、erの情報から反射位置を求めていた。これに対し、本変形例は、相関値の分布を二次関数で近似した場合に、二次関数の値が最大値を示す位置情報および付随するy0、yr、erから、物体2の反射位置座標を求めることを特徴としている。以下、具体的に説明する。
【0103】
図12は、算出した正規化相互相関値Rの分布を示すグラフである。
前述した反射位置検出のステップSA7(ステップSB1〜SB6)により、分解能δyずつシフトさせて正規化相互相関値Rを算出し、横軸に分解能δyのシフト量、縦軸に正規化相互相関値Rを取りプロットしている。プロットした各点を二次関数で近似して結ぶことにより、二次関数が最大値となる点が導出される。
【0104】
実施形態1(実施例1)では、算出した正規化相互相関値Rの最大値を示す分解能δyのシフト量となる参照輝度パターンDsiの位置から反射位置座標を特定したが、上記の二次関数の値が最大値を示す位置情報から反射位置座標を特定した方が、より高精度の結果を得ることができる。正規化相互相関値Rの分布を二次関数で近似した最大値を基に反射位置座標を求めることで、統計的により高精度の位置検出が可能となる。
【符号の説明】
【0105】
1…スリット光、2…物体、3…輝線、10…光学走査手段、11…光源、12,22…光学系、13…スキャンドライブ部、14…ステージ、20…撮像手段、21…撮像素子、23…撮像ドライブ部、24…ADC回路、30…反射位置検出手段、31…輝度パターン解析部、32…制御部、100…形状計測装置、Dm…計測輝度パターン、Dsi…参照輝度パターン、PS…参照パターンセット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射光により物体を走査する光学走査手段と、
前記物体からの、前記投射光の反射光による計測画像を取得する撮像手段と、
取得した前記計測画像を基に、前記物体の反射位置を算出する反射位置検出手段と、を備え、
前記反射位置検出手段は、取得した前記計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、前記物体の反射位置候補座標を算出し、
前記計測輝度パターンと、前記反射位置候補座標を含む比較座標範囲内において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、前記計測輝度パターンとそれぞれの前記参照輝度パターンとのパターン類似度を算出し、
前記パターン類似度が最も大きな前記参照輝度パターンが特定する座標情報から、前記物体の反射位置座標を求めることを特徴とする形状計測装置。
【請求項2】
前記複数の参照輝度パターンは、複数種類の前記物体の前記反射光の分布特性に合わせ、複数の参照パターンセットとして予め備えられ、
計測に際し、前記物体の種類に応じて、対応する前記参照パターンセットが選択できることを特徴とする請求項1に記載の形状計測装置。
【請求項3】
前記分解能および前記比較座標範囲は、計測に際し、予め設定できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の形状計測装置。
【請求項4】
前記分解能は、前記画素間隔以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項5】
前記パターン類似度が最も大きくなる前記参照輝度パターンのピーク点を示す座標を、前記物体の反射位置座標とすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項6】
前記パターン類似度は、前記計測輝度パターンと前記参照輝度パターンとの正規化相互相関値であり、
前記計測輝度パターンと前記複数の参照輝度パターンとの比較によって得られる前記正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した場合に、
前記二次関数の値が最大値を示す位置情報から、前記物体の反射位置座標を求めることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項7】
前記参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、
前記画素輝度パターンは、一または複数のガウス関数が合成された関数から導出され、
前記サブピクセル輝度パターンは、前記画素輝度パターンから導出されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項8】
前記参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、
前記画素輝度パターンは、前記計測輝度パターンから導出され、
前記サブピクセル輝度パターンは、前記画素輝度パターンから導出されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項9】
投射光により物体を走査するステップと、
前記物体からの、前記投射光の反射光による計測画像を取得するステップと、
取得した前記計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、前記物体の反射位置候補座標を算出するステップと、
前記計測輝度パターンと、前記反射位置候補座標を含む比較座標範囲において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、前記計測輝度パターンとそれぞれの前記参照輝度パターンとのパターン類似度を算出するステップと、
前記パターン類似度が最も大きな前記参照輝度パターンが特定する座標情報から、前記物体の反射位置座標を求めるステップと、を含むことを特徴とする形状計測装置の制御方法。
【請求項10】
前記複数の参照輝度パターンを、複数種類の前記物体の前記反射光の分布特性に合わせ、複数の参照パターンセットとして予め備えるステップと、
計測に際し、前記物体の種類に応じて、対応する前記参照パターンセットを選択するステップと、を含むことを特徴とする請求項9に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項11】
前記分解能および前記比較座標範囲を、計測に際し、予め設定することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項12】
前記分解能は、前記画素間隔以下であることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項13】
前記パターン類似度が最も大きくなる前記参照輝度パターンのピーク点を示す座標を、前記物体の反射位置座標とすることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項14】
前記パターン類似度は、前記計測輝度パターンと前記参照輝度パターンとの正規化相互相関値であり、
前記計測輝度パターンと前記複数の参照輝度パターンとの比較によって得られる前記正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した場合に、
前記二次関数の値が最大値を示す位置情報から、前記物体の反射位置座標を求めることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項15】
前記参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、
前記画素輝度パターンは、一または複数のガウス関数が合成された関数から導出され、
前記サブピクセル輝度パターンは、前記画素輝度パターンから導出されることを特徴とする請求項9ないし請求項14のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項16】
前記参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、
前記画素輝度パターンは、前記計測輝度パターンから導出され、
前記サブピクセル輝度パターンは、前記画素輝度パターンから導出されることを特徴とする請求項9ないし請求項14のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項17】
形状計測装置を、請求項9ないし請求項16のいずれか一項に記載の制御方法を含み機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
投射光により物体を走査する光学走査手段と、
前記物体からの、前記投射光の反射光による計測画像を取得する撮像手段と、
取得した前記計測画像を基に、前記物体の反射位置を算出する反射位置検出手段と、を備え、
前記反射位置検出手段は、取得した前記計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、前記物体の反射位置候補座標を算出し、
前記計測輝度パターンと、前記反射位置候補座標を含む比較座標範囲内において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、前記計測輝度パターンとそれぞれの前記参照輝度パターンとのパターン類似度を算出し、
前記パターン類似度が最も大きな前記参照輝度パターンが特定する座標情報から、前記物体の反射位置座標を求めることを特徴とする形状計測装置。
【請求項2】
前記複数の参照輝度パターンは、複数種類の前記物体の前記反射光の分布特性に合わせ、複数の参照パターンセットとして予め備えられ、
計測に際し、前記物体の種類に応じて、対応する前記参照パターンセットが選択できることを特徴とする請求項1に記載の形状計測装置。
【請求項3】
前記分解能および前記比較座標範囲は、計測に際し、予め設定できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の形状計測装置。
【請求項4】
前記分解能は、前記画素間隔以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項5】
前記パターン類似度が最も大きくなる前記参照輝度パターンのピーク点を示す座標を、前記物体の反射位置座標とすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項6】
前記パターン類似度は、前記計測輝度パターンと前記参照輝度パターンとの正規化相互相関値であり、
前記計測輝度パターンと前記複数の参照輝度パターンとの比較によって得られる前記正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した場合に、
前記二次関数の値が最大値を示す位置情報から、前記物体の反射位置座標を求めることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項7】
前記参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、
前記画素輝度パターンは、一または複数のガウス関数が合成された関数から導出され、
前記サブピクセル輝度パターンは、前記画素輝度パターンから導出されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項8】
前記参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、
前記画素輝度パターンは、前記計測輝度パターンから導出され、
前記サブピクセル輝度パターンは、前記画素輝度パターンから導出されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の形状計測装置。
【請求項9】
投射光により物体を走査するステップと、
前記物体からの、前記投射光の反射光による計測画像を取得するステップと、
取得した前記計測画像を構成する複数の画素に分布する計測輝度パターンから、前記物体の反射位置候補座標を算出するステップと、
前記計測輝度パターンと、前記反射位置候補座標を含む比較座標範囲において所定の分解能の間隔で用意された複数の参照輝度パターンとを比較して、前記計測輝度パターンとそれぞれの前記参照輝度パターンとのパターン類似度を算出するステップと、
前記パターン類似度が最も大きな前記参照輝度パターンが特定する座標情報から、前記物体の反射位置座標を求めるステップと、を含むことを特徴とする形状計測装置の制御方法。
【請求項10】
前記複数の参照輝度パターンを、複数種類の前記物体の前記反射光の分布特性に合わせ、複数の参照パターンセットとして予め備えるステップと、
計測に際し、前記物体の種類に応じて、対応する前記参照パターンセットを選択するステップと、を含むことを特徴とする請求項9に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項11】
前記分解能および前記比較座標範囲を、計測に際し、予め設定することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項12】
前記分解能は、前記画素間隔以下であることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項13】
前記パターン類似度が最も大きくなる前記参照輝度パターンのピーク点を示す座標を、前記物体の反射位置座標とすることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項14】
前記パターン類似度は、前記計測輝度パターンと前記参照輝度パターンとの正規化相互相関値であり、
前記計測輝度パターンと前記複数の参照輝度パターンとの比較によって得られる前記正規化相互相関値の分布を二次関数で近似した場合に、
前記二次関数の値が最大値を示す位置情報から、前記物体の反射位置座標を求めることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項15】
前記参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、
前記画素輝度パターンは、一または複数のガウス関数が合成された関数から導出され、
前記サブピクセル輝度パターンは、前記画素輝度パターンから導出されることを特徴とする請求項9ないし請求項14のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項16】
前記参照輝度パターンは、画素輝度パターンとサブピクセル輝度パターンから成り、
前記画素輝度パターンは、前記計測輝度パターンから導出され、
前記サブピクセル輝度パターンは、前記画素輝度パターンから導出されることを特徴とする請求項9ないし請求項14のいずれか一項に記載の形状計測装置の制御方法。
【請求項17】
形状計測装置を、請求項9ないし請求項16のいずれか一項に記載の制御方法を含み機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−251893(P2012−251893A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125107(P2011−125107)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]