説明

微小光記録ヘッドとその製造方法

【課題】小さな光スポットで高密度の情報記録が可能な小型の微小光記録ヘッド,その製造方法,微小光記録装置;光アシスト式磁気記録ヘッド,その製造方法,光アシスト式磁気記録装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドであって、記録媒体上で浮上しながら相対的に移動するスライダ11を有する。スライダ11は、コア31,サブコア32,クラッド33から成る光導波路と、その集光部分に設けられたプラズモンプローブ30を有する。光導波路のコア31を形成する際、その途中までコア層の成膜を行い、その上からコア31の中心近傍部分にプラズモンプローブ30を形成し、残りのコア層の成膜を行った後、コア層を所定のコア形状に加工すると、厚みのあるプラズモンプローブ30が光導波路内に埋め込まれた状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微小光記録ヘッドとその製造方法に関するものであり、例えば、情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドとその製造方法、並びに情報記録に磁界と光を利用する光アシスト式磁気記録ヘッドとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録方式では、記録密度が高くなると磁気ビットが外部温度等の影響を顕著に受けるようになる。このため高い保磁力を有する記録媒体が必要になるが、そのような記録媒体を使用すると記録時に必要な磁界も大きくなる。記録ヘッドによって発生する磁界は飽和磁束密度によって上限が決まるが、この値は材料限界に近づいており飛躍的な増大は望めない。そこで、記録時に局所的に加熱して磁気軟化を生じさせ、保磁力が小さくなった状態で記録し、その後に加熱を止めて自然冷却することにより、記録した磁気ビットの安定性を保証する方式が提案されている。この方式は熱アシスト磁気記録方式と呼ばれている。
【0003】
熱アシスト磁気記録方式では、記録媒体の加熱を瞬間的に行うことが望ましい。また、加熱する機構と記録媒体とが接触することは許されない。このため、加熱は光の吸収を利用して行われるのが一般的であり、加熱に光を用いる方式は光アシスト式と呼ばれている。光アシスト式で超高密度記録を行う場合、必要なスポット径は20nm程度になるが、通常の光学系では回折限界があるため、光をそこまで集光することはできない。そこで、非伝搬光である近接場光を用いて加熱する方式がいくつか提案されている(特許文献1等参照。)。この方式では適当な波長のレーザ光を光学系によって集光し、数十nmの大きさの金属(プラズモンプローブと呼ばれる。)に照射して近接場光を発生させ、その近接場光を加熱手段として用いている。
【特許文献1】特開2005−116155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な磁気記録装置(例えばハードディスク装置)では、狭いスペースに記録用のディスクが複数枚積層され、その隙間は1mm以下に設定される。このため、磁気記録ヘッドの厚みは制限される。特許文献1記載の光アシスト式磁気記録ヘッドや通常の光磁気記録ヘッド(MO)では、ヘッド背面に大きな光学系が配置されるため、上記のように磁気記録ヘッドが厚みの制限を受ける磁気記録装置に対応することはできない。この点から、光アシスト式磁気記録ヘッドには非常に薄い導光手段及び集光手段が求められている。
【0005】
また、通常のレンズやSIL(solid immersion lens)でディスク上に光スポットを形成する場合、スポットサイズを小さくするためにNA(numerical aperture)を大きくとらなければならない。これは集光点に向かう光線の角度が大きいことを意味する。光アシスト式磁気記録ヘッドにおける光アシスト部は、通常のハードディスク装置に用いられている磁気記録部や磁気再生部と共存する必要があるので、上記のようにNAが大きいと、光が磁気記録部や磁気再生部と干渉してしまうことになる。また、ビーム径や磁気記録ヘッドの大型化を招くことにもなる。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、小さな光スポットで高密度の情報記録が可能な小型の微小光記録ヘッド、その製造方法及び微小光記録装置、並びに小さな光スポットで高密度の情報記録が可能な小型の光アシスト式磁気記録ヘッド、その製造方法及び光アシスト式磁気記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明の微小光記録ヘッドは、記録媒体に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドであって、記録媒体上で浮上しながら相対的に移動するスライダを有し、そのスライダが光導波路とその集光部分に設けられたプラズモンプローブとを有し、前記プラズモンプローブが厚みのある形状となって前記光導波路内に埋め込まれていることを特徴とする。
【0008】
第2の発明の微小光記録ヘッドは、上記第1の発明において、前記光導波路による光の導波方向を前記プラズモンプローブ及びスライダの厚み方向とし、プラズモンプローブの厚さをL1とし、スライダの厚さをL2とすると、条件式:1μm<L1<L2を満たすことを特徴とする。
【0009】
第3の発明の微小光記録ヘッドの製造方法は、上記第1又は第2の発明に係る微小光記録ヘッドの製造方法であって、前記光導波路のコアを形成する際、その途中までコア層の成膜を行い、その上からコアの中心近傍部分に前記プラズモンプローブを形成し、残りのコア層の成膜を行った後、コア層を所定のコア形状に加工することを特徴とする。
【0010】
第4の発明の光アシスト式磁気記録ヘッドは、上記第1又は第2の発明に係る微小光記録ヘッドにおいて、さらに磁気記録素子を有することを特徴とする。
【0011】
第5の発明の光アシスト式磁気記録ヘッドの製造方法は、上記第4の発明に係る光アシスト式磁気記録ヘッドの製造方法であって、前記光導波路のコアを形成する際、その途中までコア層の成膜を行い、その上からコアの中心近傍部分に前記プラズモンプローブを形成し、残りのコア層の成膜を行った後、コア層を所定のコア形状に加工することを特徴とする。
【0012】
第6の発明の微小光記録装置は、上記第1又は第2の発明に係る微小光記録ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0013】
第7の発明の光アシスト式磁気記録装置は、上記第4の発明に係る光アシスト式磁気記録ヘッドを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スライダに光導波路を有するとともに光導波路内に厚みのあるプラズモンプローブが埋め込まれた構成になっているため、記録ヘッド及びそれを備えた記録装置の小型化とともに、小さな光スポットを得ることが可能になる。そして、光スポットサイズが小さくなることにより、記録の高密度化が可能になる。光導波路内へのプラズモンプローブの埋め込みは、コア層の成膜を2段階に分けて行うことにより容易に実現可能であり、光導波路におけるプラズモンプローブの位置合わせも簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る光アシスト式の磁気記録ヘッドとそれを備えた磁気記録装置等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0016】
図1に、光アシスト式の磁気記録ヘッドを搭載した磁気記録装置(例えばハードディスク装置)の概略構成例を示す。この磁気記録装置10は、記録用のディスク(磁気記録媒体)2と、支軸5を支点として矢印A方向(トラッキング方向)に回転可能に設けられたサスペンション4と、サスペンション4に取り付けられたトラッキング用のアクチュエータ6と、サスペンション4の先端部に取り付けられた光アシスト式の磁気記録ヘッド3と、ディスク2を矢印B方向に回転させるモータ(不図示)と、を筐体1内に備えており、磁気記録ヘッド3がディスク2上で浮上しながら相対的に移動しうるように構成されている。
【0017】
磁気記録ヘッド3は、ディスク2に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドであって、半導体レーザ,光ファイバー等から成る光源部と、ディスク2の被記録部分を近赤外レーザー光でスポット加熱するための光アシスト部と、光源部からの近赤外レーザー光を光アシスト部に導く光学系と、ディスク2の被記録部分に対して磁気情報の書き込み行う磁気記録部と、ディスク2に記録されている磁気情報の読み取りを行う磁気再生部と、を備えている。光源部を構成している半導体レーザは近赤外光源であり、その半導体レーザから出射した近赤外波長(1550nm,1310nm等)のレーザー光は光ファイバーで所定位置まで導光される。光源部から出射した近赤外レーザー光は、光学系により光アシスト部に導光され、光アシスト部の光導波路を通って磁気記録ヘッド3から出射する。光アシスト部から出射した近赤外レーザー光が微小な光スポットとしてディスク2に照射されると、ディスク2の照射部分の温度が一時的に上昇してディスク2の保磁力が低下する。その保磁力の低下した状態の照射部分に対して、磁気記録部により磁気情報が書き込まれる。この磁気記録ヘッド3の詳細を以下に説明する。
【0018】
図2〜図5に、磁気記録ヘッド3の具体的な光学構成(光学面形状,光路等)を実施例1〜4として光学断面で示し、また、実施例1〜4のコンストラクションデータを以下に挙げる。各実施例のコンストラクションデータにおいて、ri(i=0,1,2,3,...)は光源部側から数えてi番目の面Si(i=0,1,2,3,...)の曲率半径(mm)、di(i=0,1,2,3,...)は光源部側から数えてi番目の軸上面間隔(mm)をそれぞれ示しており、Ni(i=1,2,...)は光源部側から数えてi番目の媒質の使用波長に対する屈折率を示しており、x軸傾きai(i=0,1,2,3,...)とy軸偏心bi(i=0,1,2,3,...)は互いに直交するxy座標系における面Siの傾き角度(°)と偏心量(mm)をそれぞれ示している。なお、光源位置は光ファイバー14の出射端面に相当する。また、光源のNA(numerical aperture)及び使用波長をあわせて示す。
【0019】
《実施例1》
光源のNA=0.083333
使用波長:1.31(μm)
[面] [曲率半径][軸上面間隔][屈折率] [x軸傾き] [y軸偏心]
S0 r0= ∞ d0= 0.244 - a0= 0 b0= 0(光源)
S1 r1= 0.125 d1= 0.25 N1=1.50358291 a1= 0 b1= 0
S2 r2=-0.125 d2= 0.03 - a2= 0 b2= 0
S3 r3= - d3= 0 - a3= 35.26 b3= 0
S4 r4= ∞ d4= 0.6 N2=3.51136585 a4= 0 b4= 0
S5 r5= - d5= 0 - a5=-70.528 b5= 0
S6 r6= - d6= 0 - a6= 0 b6= 0.20388742
S7 r7= ∞ d7= 0 - a7= 0 b7= 0(全反射面)
S8 r8= ∞ d8=-0.8 N3=3.51136585 a8= 0 b8= 0
S9 r9= - d9= 0 - a9=-61.03 b9= 0
S10 r10= - d10=0 - a10= 0 b10=-0.70013749
S11 r11=∞ d11=0 N4=3.51136585 a11= 0 b11= 0
S12 r12=∞ a12= 0 b12= 0
【0020】
《実施例2》
光源のNA=0.083333
使用波長:1.31(μm)
[面] [曲率半径][軸上面間隔][屈折率] [x軸傾き] [y軸偏心]
S0 r0= ∞ d0= 0.1 - a0= 0 b0= 0(光源)
S1 r1= 0.075 d1= 0.15 N1=1.75030841 a1= 0 b1= 0
S2 r2=-0.075 d2= 0.02 - a2= 0 b2= 0
S3 r3= - d3= 0 - a3= 35.26 b3= 0
S4 r4= ∞ d4= 0.2 N2=3.51136585 a4= 0 b4= 0
S5 r5= - d5= 0 - a5=-70.528 b5= 0
S6 r6= - d6= 0 - a6= 0 b6= 0.067962472
S7 r7= ∞ d7= 0 - a7= 0 b7= 0(全反射面)
S8 r8= ∞ d8=-0.4 N3=3.51136585 a8= 0 b8= 0
S9 r9= - d9= 0 - a9=-61.03 b9= 0
S10 r10= - d10=0 - a10= 0 b10=-0.35006874
S11 r11=∞ d11=0 N4=3.51136585 a11= 0 b11= 0
S12 r12=∞ a12= 0 b12= 0
【0021】
《実施例3》
光源のNA=0.083333
使用波長:1.31(μm)
[面] [曲率半径] [軸上面間隔] [屈折率] [x軸傾き] [y軸偏心]
S0 r0= ∞ d0= 0.0402565 - a0= 0 b0= 0(光源)
S1 r1= 0.075 d1= 0.15 N1=1.50358291 a1= 0 b1= 0
S2 r2=-0.075 d2= 0.005 - a2= 0 b2= 0
S3 r3= - d3= 0 - a3= 42.4 b3= 0
S4 r4= - d4= 0 - a4= 0 b4= 0.04259
S5 r5= 0.0466425 d5= 0.0466425 N2=1.50358291 a5= 0 b5= 0
S6 r6= ∞ d6= 0 N3=1.50358291 a6= 0 b6= 0
S7 r7= ∞ d7= 0.3 N4=3.51136585 a7= 0 b7= 0
S8 r8= - d8= 0 - a8= -70.528779 b8= 0
S9 r9= - d9= 0 - a9= 0 b9= 0.14647875
S10 r10=∞ d10= 0 - a10= 0 b10= 0(全反射面)
S11 r11=∞ d11=-0.25 N5=3.51136585 a11= 0 b11= 0
S12 r12= - d12= 0 - a12=-54.738842 b12= 0
S13 r13= - d13= 0 - a13= 0 b13=-0.20163192
S14 r14=∞ d14= 0 N6=3.51136585 a14= 0 b14= 0
S15 r15=∞ a15= 0 b15= 0
【0022】
《実施例4》
光源のNA=0.083333
使用波長:1.31(μm)
[面] [曲率半径][軸上面間隔] [屈折率] [x軸傾き] [y軸偏心]
S0 r0= ∞ d0= 0.293245 - a0= 0 b0= 0(光源)
S1 r1= 0.15 d1= 0.3 N1=1.50358291 a1= 0 b1= 0
S2 r2=-0.15 d2= 0.05 - a2= 0 b2= 0
S3 r3= - d3= 0.035 - a3=-54.73561 b3= 0
S4 r4= - d4= 0 - a4= 0 b4=-0.049497475
S5 r5= ∞ d5= 0 - a5= 0 b5= 0(反射面)
S6 r6= ∞ d6= 0 - a6= 0 b6= 0
S7 r7= - d7=-0.15 - a7=-54.73561 b7= 0
S8 r8= - d8= 0 - a8= 0 b8= 0
S9 r9= ∞ d9= 0 - a9= 0 b9= 0
S10 r10=∞ a10= 0 b10=0
【0023】
実施例1〜3(図2〜図4)は光路中に全反射のあるタイプの磁気記録ヘッド、実施例4(図5)は光路中に全反射のないタイプの磁気記録ヘッドであり、いずれも図1中の磁気記録ヘッド3に相当するものである。図2〜図5において、11はスライダ、12Aは光導波路を有する光アシスト部、12Bは磁気記録部、12Cは磁気再生部、13はシリコンベンチ、14は光ファイバー、15は球レンズ、19は基板であり、図2〜図4において17はマイクロプリズムであり、図4において16は半球レンズであり、図5において18はマイクロミラーである。
【0024】
実施例1〜4において、磁気記録部12Bはディスク2に対して磁気情報の書き込みを行う磁気記録素子であり、磁気再生部12Cはディスク2に記録されている磁気情報の読み取りを行う磁気再生素子であり、光アシスト部12Aはディスク2の被記録部分を近赤外レーザー光でスポット加熱するための光アシスト素子である。なお、各実施例ではディスク2の記録領域の流入側から流出側にかけて、磁気再生部12C,光アシスト部12A,磁気記録部12Bの順に配置されているが、配置順はこれに限らない。光アシスト部12Aの流出側直後に磁気記録部12Bが位置すればよいので、例えば、光アシスト部12A,磁気記録部12B,磁気再生部12Cの順に配置してもよい。
【0025】
実施例1,2の磁気記録ヘッド3は、光ファイバー14を含む光源部と、その光ファイバー14からの近赤外レーザー光を光アシスト部12Aに導くための球レンズ15及びマイクロプリズム17から成る光学系と、光源部及び光学系が取り付けられるシリコンベンチ13と、シリコンベンチ13が取り付けられた状態でディスク2(図1)上で浮上しながら相対的に移動するスライダ11と、で構成されている。実施例3の磁気記録ヘッド3は、光ファイバー14を含む光源部と、その光ファイバー14からの近赤外レーザー光を光アシスト部12Aに導くための球レンズ15,半球レンズ16及びマイクロプリズム17から成る光学系と、光源部及び光学系が取り付けられるシリコンベンチ13と、シリコンベンチ13が取り付けられた状態でディスク2(図1)上で浮上しながら相対的に移動するスライダ11と、で構成されている。実施例4の磁気記録ヘッド3は、光ファイバー14を含む光源部と、その光ファイバー14からの近赤外レーザー光を光アシスト部12Aに導くための球レンズ15及びマイクロミラー18から成る光学系と、光源部及び光学系が取り付けられるシリコンベンチ13と、シリコンベンチ13が取り付けられた状態でディスク2(図1)上で浮上しながら相対的に移動するスライダ11と、で構成されている。実施例1〜4におけるスライダ11内には、光アシスト部12A,磁気記録部12B及び磁気再生部12Cがスライダ11と一体化された状態で設けられている。また、実施例1〜3においてマイクロプリズム17はシリコンベンチ13と一体的に構成されており、実施例4においてマイクロミラー18はシリコンベンチ13と一体的に構成されている。
【0026】
実施例1(図2)の光学構成を説明する。シリコンベンチ13には異方性エッチングでV溝(不図示)が設けられており、そのV溝に直径125μmの光ファイバー14が設置されている。光ファイバー14の光出射側端面は斜めにカットされているため、光束は光ファイバー14から右下方に出射した後、球レンズ15に入射する。球レンズ15は、直径0.25mmのガラス球(BK7)から成る等倍光学系であり、球レンズ15を通過した光束は、シリコンベンチ13と一体化されたシリコンマイクロプリズム17での全反射により偏向される。シリコンマイクロプリズム17は頂角が約70°であり、異方性エッチングにより形成されている。シリコンマイクロプリズム17で偏向された光束は、直下の光アシスト部12A内の光導波路に対して集光され、光導波路との結合が完了する。光ファイバー14のモードフィールド径は約9μmであり、光アシスト部12A内の光導波路のモードフィールド径も約9μmであるため、この光学系の倍率は1:1である。光アシスト部12Aから出射した光束が微小な光スポットとしてディスク2(図1)に照射されると、ディスク2の照射部分の温度が一時的に上昇してディスク2の保磁力が低下する。その保磁力の低下した状態の照射部分に対して、磁気記録部12Bにより磁気情報の書き込みが行われる。
【0027】
実施例2(図3)の光学構成を説明する。シリコンベンチ13には異方性エッチングでV溝(不図示)が設けられており、そのV溝に直径125μmの光ファイバー14が設置されている。光ファイバー14の光出射側端面は斜めにカットされているため、光束は光ファイバー14から右下方に出射した後、球レンズ15に入射する。球レンズ15は、直径0.15mmのサファイアガラス球から成る等倍光学系であり、球レンズ15を通過した光束は、シリコンベンチ13と一体化されたシリコンマイクロプリズム17での全反射により偏向される。シリコンマイクロプリズム17は頂角が約70°であり、異方性エッチングにより形成されている。シリコンマイクロプリズム17で偏向された光束は、直下の光アシスト部12A内の光導波路に対して集光され、光導波路との結合が完了する。光ファイバー14のモードフィールド径は約9μmであり、光アシスト部12A内の光導波路のモードフィールド径も約9μmであるため、この光学系の倍率は1:1である。光アシスト部12Aから出射した光束が微小な光スポットとしてディスク2(図1)に照射されると、ディスク2の照射部分の温度が一時的に上昇してディスク2の保磁力が低下する。その保磁力の低下した状態の照射部分に対して、磁気記録部12Bにより磁気情報の書き込みが行われる。
【0028】
実施例3(図4)の光学構成を説明する。シリコンベンチ13には異方性エッチングでV溝(不図示)が設けられており、そのV溝に直径125μmの光ファイバー14が設置されている。光ファイバー14の光出射側端面は斜めにカットされているため、光束は光ファイバー14から右上方に出射した後、球レンズ15に入射する。球レンズ15は直径0.15mmのガラス球(BK7)から成り、光束は球レンズ15で略コリメートされる。球レンズ15を通過した光束は、半球レンズ16に入射する。半球レンズ16は直径0.093285mmのガラス半球(BK7)から成り、シリコンベンチ13と一体化されたシリコンマイクロプリズム17に接着されている。球レンズ15から出射した略コリメート光束は、半球レンズ16で集光された後、シリコンマイクロプリズム17での全反射により偏向される。シリコンマイクロプリズム17は頂角が約70°であり、異方性エッチングにより形成されている。シリコンマイクロプリズム17で偏向された光束は、直下の光アシスト部12A内の光導波路に対して集光され、光導波路との結合が完了する。光ファイバー14のモードフィールド径は約9μmであり、光アシスト部12A内の光導波路のモードフィールド径も約9μmであるため、この光学系の倍率は1:1である。光アシスト部12Aから出射した光束が微小な光スポットとしてディスク2(図1)に照射されると、ディスク2の照射部分の温度が一時的に上昇してディスク2の保磁力が低下する。その保磁力の低下した状態の照射部分に対して、磁気記録部12Bにより磁気情報の書き込みが行われる。
【0029】
実施例4(図5)の光学構成を説明する。シリコンベンチ13には異方性エッチングでV溝(不図示)が設けられており、そのV溝に直径125μmの光ファイバー14が設置されている。光ファイバー14の光出射側端面は斜めにカットされているため、光束は光ファイバー14から右下方に出射した後、球レンズ15に入射する。球レンズ15は、直径0.3mmのガラス球(BK7)から成る等倍光学系であり、球レンズ15を通過した光束は、シリコンベンチ13と一体化されたシリコンマイクロミラー18での反射により偏向される。シリコンマイクロミラー18はスライダ11との成す角度が約54°であり、異方性エッチングにより形成されている。また、シリコンマイクロミラー18の表面はアルミコートされている。シリコンマイクロミラー18で偏向された光束は、直下の光アシスト部12A内の光導波路に対して集光され、光導波路との結合が完了する。光ファイバー14のモードフィールド径は約9μmであり、光アシスト部12A内の光導波路のモードフィールド径も約9μmであるため、この光学系の倍率は1:1である。光アシスト部12Aから出射した光束が微小な光スポットとしてディスク2(図1)に照射されると、ディスク2の照射部分の温度が一時的に上昇してディスク2の保磁力が低下する。その保磁力の低下した状態の照射部分に対して、磁気記録部12Bにより磁気情報の書き込みが行われる。
【0030】
次に、実施例1〜4(図2〜図5)の磁気記録ヘッド3がスライダ11内に有する光アシスト部12Aを、具体例を挙げて説明する。図6〜図8に、光アシスト部12Aの具体例を示す。図6は光アシスト部12Aの具体例の内部構造を斜視図で示しており、図7は光アシスト部12Aに対する光入力側(つまり図2〜図5に示す配置での上面側)から見たスライダ11の外観を示している。また、図8はスライダ11の断面構造を示しており、図8(A)は図7におけるA−A’線断面(図2〜図5の断面と対応する。)、図8(B)は図7におけるB−B’線断面(ディスク2(図1)の記録領域の流出側から見た断面)をそれぞれ示している。
【0031】
図6〜図8に示す光アシスト部12Aは、コア31(例えばSi),サブコア32(例えばSiON)及びクラッド33(例えばSiO2)から成る光導波路、並びに光導波路の集光部分に設けられたプラズモンプローブ30を有している。プラズモンプローブ30は、ピン形状の金属薄膜(材料例:金,銀,アルミニウム等)から成るプラズモン励起用アンテナで構成されており、厚みのある形状となって光導波路(具体的にはコア31の光出力側部分)内に埋め込まれている。光導波路の幅方向のサイズは、図8(B)に示すように、コア31の光入力側の幅D3が100nm以下、光出力側の幅D2が300nmであるのに対し、プラズモンプローブ30の幅D1は20nm以下である。また、光導波路による光の導波方向をプラズモンプローブ30及びスライダ11の厚み方向とし、図8に示すように、プラズモンプローブ30の厚さをL1とし、スライダ11の厚さをL2とすると、条件式:1μm<L1<L2を満たした構成になっている。
【0032】
図6等に示すような3次元光導波路に、厚みのある形状のアンテナから成るプラズモンプローブを埋め込むことにより、集光点とプラズモンプローブとの位置合わせを光導波路形成後に行うことが不要になる。また、そのような構成では、プラズモンプローブの位置合わせを簡易に行うことが可能である。例えば、プラズモンプローブをアパーチャやアンテナとして光導波路の集光点に貼り付ける場合には、集光点との位置合わせは困難である。しかし、プラズモンプローブを光導波路に埋め込む構成であれば、コア加工時に一連の作業として高精度の位置合わせを行うことが可能である。また、光導波路にプラズモンプローブを埋め込む構成では、SILに埋め込む構成等に比べて集光点とプラズモンプローブとの間に位置ズレが生じにくいというメリットもある。したがって、記録媒体に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドにあっては、記録媒体上で浮上しながら相対的に移動するスライダを設け、そのスライダに光導波路を設け、その集光部分に厚みのある形状のプラズモンプローブを光導波路内に埋め込むように設けることが好ましい。
【0033】
厚みのある形状のプラズモンプローブを用いる場合、ある程度の厚みにすると端面の加工時に切断位置の誤差に対する許容が良くなる。ブレード幅の約10分の1が誤差になるので、条件式:1μm<L1を満たすようにすればよい。また、その厚みL1をスライダの厚みL2以上にしても意味がないので、条件式:1μm<L1<L2を満たすことが好ましいといえる。
【0034】
プラズモンプローブ30に光が作用すると、その頂点近辺に近接場光が発生して、非常に小さいスポットサイズの光を用いた記録又は再生を行うことが可能となる。つまり、光導波路の光出力側部分にプラズモンプローブを設けることにより局在プラズモンを発生させれば、光導波路で形成された光スポットのサイズを更に小さくすることができ、高密度記録に有利となる。また、コア材料としてシリコンを用いれば、シリコンは屈折率が高いので、近接場発生効率が良くなる。なお、コア31の中央にプラズモンプローブ30の頂点が位置することが好ましく、また、近赤外波長(1550nm)では金属薄膜の材料として金を用いることが好ましい。
【0035】
光アシスト式で超高密度記録を行う場合に必要なスポット径は20nm程度であり、光の利用効率を考えると、プラズモンプローブ30におけるモードフィールド径(MFD)は0.3μm程度が望ましい。そのままの大きさでは光入射が困難であるため、スポット径を5μm程度から数100nmまで小さくするスポットサイズ変換を行う必要がある。光アシスト部12Aの具体例(図6〜図8)では、光導波路の少なくとも一部でスポットサイズ変換器を構成することにより、光入射を容易にするためのスポットサイズ変換を行う構成としている。
【0036】
図6〜図8に示す光アシスト部12Aでのコア31の幅は、図8(A)に示す断面では光入力側から光出力側にかけて一定になっているが、図8(B)に示す断面ではサブコア32内において光入力側から光出力側にかけて徐々に広くなるように変化している。この光導波路径の滑らかな変化により、モードフィールド径が変換される。つまり、この具体例における光導波路のコア31の幅は、図8(B)に示すように、光入力側でD3=100nm以下、光出力側でD2=300nmとなっているが、光入力側ではサブコア32によりMFD:5μm程度の光導波路が構成され、その後徐々にコア31に光結合してモードフィールド径が小さくなる。このように、光導波路径を滑らかに変化させることによりモードフィールド径を変換して、[光導波路の光入力側のモードフィールド径]>[光導波路の光出力側のモードフィールド径]を満たすようにすることが好ましい。
【0037】
光導波路の先端を徐々に細く(又は薄く)なるようにしておくと、光導波路のコアを伝搬してきた光がスポットサイズ変換用光導波路のコア部分にさしかかると、光がクラッドへ漏れだす量が多くなり、光の電界分布が広がることになる。その結果、スポットサイズが大きくなる。しかしながら、変換用光導波路のコアの幅を極端に細く又は厚みを薄くすると、光導波路として伝搬モードが存在できない状態、すなわちカットオフ状態となる。このとき、光はサブコア(例えばSiON)及びクラッド(例えばSiO2)で構成された光導波路と結合し、大きな光スポットを形成することができる。これは小さいスポットを拡大する方向での説明であるが、光の逆進性により上記のように拡大された光スポットと同じ形状の光を入射させれば、光スポットを縮小することができる。なお、細く又は薄くする方向が一方向であっても、光スポットを2次元的に拡大することができる。
【0038】
前述したように、通常のレンズやSILでディスク上に光スポットを形成する場合、スポットサイズを小さくするためにNAを大きくとらなければならない。これは集光点に向かう光線の角度が大きいことを意味するので、光が磁気記録部や磁気再生部と干渉してしまうことになり、また、ビーム径や磁気記録ヘッドの大型化を招くことにもなる。それに対し前述した磁気記録ヘッド3では、スライダ11に光導波路を有する構成になっているため、磁気記録部や磁気再生部との配置的干渉は問題とならない。また、光導波路の少なくとも一部で構成されるスポットサイズ変換器により、スライダ11の上部におけるモードフィールド径を大きくしておけば、上部レンズのNAを小さくすることができ、ビーム径も小さくとることができるため、光学系の小型化に寄与することができる。
【0039】
通常、光導波路部の長さはスライダ厚さと一致させるが、特殊な構成ではその前後としてもよい。例えば、位置合わせ用としてスライダに凹形状(又は凸形状)を設け、逆にシリコンベンチに凸形状(又は凹形状)を設けた場合では、光導波路部の長さがスライダ厚さと一致していなくてもよい。また、スポットサイズ変換器の長さは、0.2mm以上であることが好ましい。スポットサイズ変換を急激に行うと漏れ光が発生し、この過剰損失を低減するには0.2mm以上の長さが必要となるからである。なお、図6〜図8に示す具体例におけるスポットサイズ変換器の長さは、コア31の幅が光入力側から光出力側にかけて徐々に変化している部分の長さ、つまりサブコア32の長さに相当する。
【0040】
次に、光アシスト部12A(図6〜図8)を有するスライダ11の製造方法を、図9〜図11の工程図を用いて説明する。図9はスライダ11の製造工程を示しており、図10,図11は図9中のプラズモンプローブ30の製造工程1,2をそれぞれ示している。図9(A)に示すように、基板19(材料:AlTiC等)に磁気再生部12Cを作製した後、平坦化し、CVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて第1のSiO2層20を6μm成膜する。そして、フォトリソ工程でSiO2層20に深さ3μmの凹部をサブコア32用として形成し、その凹部にCVDを用いて第1のSiON層21を形成する(図9(B))。SiO2層20及びSiON層21の上に、図9(C)に示すように、第1のSi層(コア層)22aを成膜する。このとき、後述する製造工程1でプラズモンプローブ30を作製する場合にはSi層22aを150nm成膜し、製造工程2でプラズモンプローブ30を作製する場合にはSi層22aを250nm成膜する。
【0041】
次に、プラズモンプローブ30の製造工程に入る。図10に示す製造工程1では、第1のSi層(コア層)22aの上にレジストを塗布し、電子ビームリソグラフィーにより20nm(図8(B)の幅D1に相当する。)の溝形状をパターニングして、図10(A)に示すようにレジストパターン26を形成する。そして、蒸着,スパッタ等で金を成膜すると、図10(B)に示すように金薄膜27が得られる。リフトオフ工程により、図10(C)に示すように金薄膜27から金線形状を形成する。次に、図9(D)及び図10(D)に示すように、第2のSi層(コア層)22bを150nm成膜する。その上にレジストを塗布し、電子ビームリソグラフィーによりコア形状をパターニングして、レジストパターンを形成する。このとき、コア形状が所望のテーパ形状となるようにレジストパターンを形成する。RIE(Reactive Ion Etching)を用いて、第1,第2のSi層22a,22bを加工し、図9(E)及び図10(E)に示すようにコア31を形成する。
【0042】
図11に示す製造工程2では、第1のSi層(コア層)22aの上にレジストを塗布し、電子ビームリソグラフィーにより150nm(図8(B)の幅D1に相当する。)の溝形状をパターニングして、図11(A)に示すようにレジストパターン26を形成する。そして、図11(B)に示すようにドライエッチングによりSi層22aをV溝形状に加工する。次に、蒸着,スパッタ等で金を成膜すると、図11(C)に示すように金薄膜27が得られる。図11(D)に示すように、V溝部以外の金薄膜27を研磨工程により除去して平坦化する。次に、図9(D)及び図11(E)に示すように、第2のSi層(コア層)22bを50nm成膜する。その上にレジストを塗布し、電子ビームリソグラフィーによりコア形状をパターニングして、レジストパターンを形成する。このとき、コア形状が所望のテーパ形状となるようにレジストパターンを形成する。RIEを用いて、第1,第2のSi層22a,22bを加工し、図9(E)及び図11(F)に示すようにコア31を形成する。
【0043】
上記製造工程1又は2でプラズモンプローブ30が埋め込まれたコア31を形成した後、図9(E)に示すように、CVDを用いて第2のSiON層23をコア31上で3μm積層する。フォトリソ工程でSiON層23を3μm幅に加工し、図9(F)に示すようにサブコア32を形成する。図9(G)に示すように、CVDを用いて第2のSiO2層24を8μm成膜した後に平坦化し、磁気記録部12Bを作製する。図9(H)に示すように、ダイシング,ミリング等の加工方法により、スライダ形状に切断加工する。クラッド33はSiO2層20とSiO2層24とで構成される。なお、基板19はAlTiCから成っているが、シリコンから成るものを用いてもよい。
【0044】
なお、図6〜図8に示す光アシスト部の変形例として、図17の上面図に示すように、コア31の一面がサブコア32の一面と一致するように構成することもできる。このようにすれば、図9(B)の製造工程を省略することができ、光アシスト部の製造プロセスを簡略化することができる。
【0045】
上述したように、光導波路のコアを形成する際、その途中までコア層の成膜を行い、その上からコアの中心近傍部分にプラズモンプローブを形成し、残りのコア層の成膜を行った後、コア層を所定のコア形状に加工することが好ましい。このようにプラズモンプローブを光導波路に埋め込むことにより、コア加工時に一連の作業としてプラズモンプローブの位置合わせを高精度かつ簡易に行うことが可能となり、そのような構成を有する光導波路では、光導波路形成後の集光点との位置合わせが不要になる。
【0046】
上記光導波路のように、そのコア材料がシリコンであり、光導波路の使用波長が近赤外波長であることが好ましい。いろいろな高屈折率材料が一般的に知られており、その高屈折率材料を使用することにより、紫外光から可視光,近赤外光まで様々な波長に対応することができ、レーザや光学系の部材の選択肢は広がる。しかし、一般に高屈折率材料はドライエッチング装置で加工してもエッチング速度が遅く、レジストとの選択比も取り難く、性能の良い微細構造を形成するためには困難が伴う。例えば、GaAs,GaN等の材料では可視光を用いることができるが、加工は困難である。シリコンは半導体プロセスの一般的材料であり、その加工方法が確立されているため、比較的簡単に加工を行うことができる。したがって、シリコンを光導波路のコア材料として用いることが好ましい。ただし、シリコンを光導波路のコア材料として用いると、可視光を使用することができないので、光導波路に使用する光として近赤外光を用いることが好ましい。つまり、近赤外波長(1550nm,1310nm等)の光源を用いれば、実績のあるシリコンをコア材料として用いることができるため、加工性が向上して有利になる。
【0047】
シリコンは屈折率が石英に比べてはるかに高いので、シリコンを光導波路のコア材料として用いることにより、コアとクラッドとの屈折率差Δnを大きくすることができ、単純な構成で微小スポット(つまり高エネルギー密度)を得ることが可能となる。例えば、上記のようにコアをシリコンで構成しクラッドをSiO2で構成すれば、屈折率差Δnを大きくすることができ、スポット径を1μm以下、0.5μm程度にまで小さくすることができる。コアとクラッドとの屈折率差Δnは、コアの屈折率(ここではシリコン等)をn1とし、クラッドの屈折率(ここではSiO2等)をn2とすると、式:Δn(%)=(n12−n22)/(2・n12)×100≒(n1−n2)/n1×100で定義される。なお、SiO2の屈折率は1.465、SiONの屈折率は1.5、Siの屈折率は3.5であり、コア材料が石英の光導波路で得られるスポット径は10μm程度である。
【0048】
光導波路においてコアとクラッドとの屈折率差Δnは20%以上であることが望ましい。Δnが20%以上となる高屈折率差の光導波路を用いることにより、単純な構成で微小なスポットを得ることが可能となる。基本モードのビーム径が1μm以下になるので、屈折率差Δnは20%以上必要である。その1μmはプラズモンを高効率に励起するために必要なビーム径である。また、屈折率差Δnは50%以下である。なぜならば、コアの屈折率をいくら高くしてもΔnの式は50%に漸近するだけだからである。
【0049】
前述したようにシリコンは近赤外波長用として有効なコア材料であるが、加工上のメリットを要しない場合には、コア材料として他の高屈折率材料を用いることにより、紫外光から可視光,近赤外光まで幅広い波長域で微小スポットの効果を得ることができる。シリコン以外の高屈折率材料(波長域)の例としては、ダイヤモンド(可視全域);III−V族半導体:AlGaAs(近赤外,赤),GaN(緑,青)GaAsP(赤,橙,青),GaP(赤,黄,緑),InGaN(青緑,青),AlGaInP(橙,黄橙,黄,緑);II−VI族半導体:ZnSe(青)が挙げられる。また、シリコン以外の高屈折率材料の加工方法の例としては、ダイヤモンドではO2ガスによるドライエッチングが挙げられ、GaAs系,GaP系,ZnSe,GaN系では、Cl2系ガス又はメタン水素を用いたICPエッチング装置でのドライエッチング加工が挙げられる。
【0050】
前述したように、高屈折率材料であるシリコン等でコアが構成された光導波路を用いることが好ましく、コアの高い屈折率により光スポットを小さくすることが可能となる。しかし、その小さいスポットサイズのままでスライダ上部に光導波路をつないだ場合(スポットサイズ変換器を用いない場合)、その光導波路に光を入射させるためにはNAの大きな光学系を用いる必要がある。したがって、光学系として非球面レンズ等の高精度のレンズを用いる必要がある。一般に、非球面レンズ等の高精度レンズの作製には加熱成形が用いられるが、加熱成形には金型作製に伴う問題があり、成形時にレンズ面の精度等を維持する必要性もある。このため、レンズはある程度の大きさを持つ必要があり、現状ではφ1.5mm程度が下限である。
【0051】
また前述したように、ハードディスク装置等のディスク装置では、高容量化の要請から複数枚の記録用ディスクを用いることが一般的である(図1参照。)。その場合、磁気記録ヘッドはその隙間に入って動けるような薄さが必須要件となっている。複数枚使用しない場合でも、小型のハードディス装置等では筐体の壁とディスクとの間が薄くなっており、同様に磁気記録ヘッドは薄くなる必要がある。その空間はおよそ1mm程度である。しかし、前述したような光導波路を用いると、高いNAの光学系が必要となり、非球面レンズ等の高精度のレンズ、すなわちある程度の大きさのレンズを用いる必要となり、この要請を満たすことができない。また、スライダと光学系に必要とされる配置精度は、光入力側での光導波路の光スポットサイズに依存しており、その観点からも光出力側(記録部側)の光スポットと比較して、光入力側の光スポットは大きくなることが必要とされる。
【0052】
前述した磁気記録ヘッド3では、スポットサイズ変換器を用いることにより、光出力側の光スポットと比較して、光入力側の光スポットを大きくしている。これにより、NAの小さな光学系を用いることができるため、構成が単純で小型化が容易なレンズ(例えば、ボールレンズや回折レンズ等)を用いることが可能となり、光学系を薄型にすることが初めて可能となる。また、スライダと光学系とに必要とされる配置精度も緩くなり、組み立て時にも有利になる。
【0053】
以上の要件から、光導波路の光出力側のモードフィールド径をdとし、光導波路の光入力側のモードフィールド径をDとしたとき、光導波路径を滑らかに変化させることによりモードフィールド径を変換して、D>dを満たすことが望ましい。例えば前記具体例の場合、D=5μm,d=0.3μmである。光導波路径を滑らかに変化させることによりモードフィールド径を変換して、光導波路の光入力側のモードフィールド径よりも光導波路の光出力側のモードフィールド径が小さくなるようにする構成により、小さな光スポットを得ることが可能になる。そして、光スポットサイズが小さくなることにより、記録の高密度化が可能になる。倍率の上限に関しては、作製時の原理的な問題(広げることのできる最大光スポットサイズの限界と、作ることのできる最も小さな光スポットサイズの限界)と、倍率の実用上必要とされる値(光出力側サイズ:0.25μm,光入力側サイズ:10μm)と、から40倍程度と規定することができる。したがって、モードフィールド径が40d>D>dを満たすことが更に望ましい。
【0054】
また、光学系とスライダとを合わせた磁気記録ヘッドの最大高さが、ディスクと部材(例えば、ディスク及びスライダを収容する筐体、記録用の第2のディスクである。)との間の距離より小さいことが望ましい。図1に示す磁気記録装置10では、ディスク2に情報を書き込むために光導波路を有し、かつ、ディスク2上で浮上しながら相対的に移動するスライダ11(図2等)と、光導波路に光を入射させる光学系と、を合わせた磁気記録ヘッド3の最大高さが、スライダ11の移動経路を覆うように配された筐体1とディスク2との間の距離より小さく、さらに隣り合って位置するディスク2間の距離より小さい構成になっている。そしてこの構成により、磁気記録装置10の小型化を達成している。
【0055】
前述した磁気記録ヘッド3は、ディスク2に対する情報記録に光を利用する光アシスト式磁気記録ヘッドであるが、記録媒体に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドであって、記録媒体上で浮上しながら相対的に移動するスライダを有し、そのスライダが光導波路とその集光部分に設けられたプラズモンプローブとを有し、プラズモンプローブが厚みのある形状となって光導波路内に埋め込まれているものであれば、光アシスト式磁気記録ヘッドに限らない。例えば、近接場光記録,相変化記録等の記録を行う記録ヘッドにおいても、前記特徴のある光導波路を用いることにより同様の効果を得ることが可能である。図12に、そのような光導波路12aを有する微小光記録ヘッド3aを示す。この微小光記録ヘッド3aは、磁気を利用しない光記録を行う構成になっており、磁気再生部12Cと磁気記録部12Bを有しない他は、実施例3(図4)の磁気記録ヘッド3と同様の構成になっている。
【0056】
次に、実施例3(図4)の磁気記録ヘッド3を例に挙げて、シリコンベンチ13とスライダ11との位置調整,接着等を説明する。シリコンベンチ13への光源部(光ファイバー14等)及び光学系(球レンズ15等)の取り付けは、メカ精度での組付けにより行われる。一方、スライダ11内への光アシスト部12A,磁気記録部12B及び磁気再生部12Cの形成は、図9〜図11に示す工程により作製され、浮上構造(不図示)やプラズモンプローブ30を設けることにより得られる。つまり、シリコンベンチ13とスライダ11とは、図13中の両方向矢印で示すように作製方向が異なる。したがって、別々に作製して組付けることが好ましく、それが個々の作製精度の向上及び作製時間の短縮を図る上で効果的である。
【0057】
シリコンベンチ13とスライダ11との水平方向の位置決めは、それらの上部からカメラ等で観察しながら、図14に示すように位置決めマーク(+)等を基準に行うことが可能である。カメラでの観察は赤外光で行うことができる。シリコンは赤外波長に対して透明であるため、赤外光を用いることによりマーク(+)を基準とする位置決めが可能である。位置決めマーク(+)が2点あれば光軸(Z軸)に対して互いに直交する2方向(X軸,Y軸)と光軸回りの角度θZを調整することが可能である。なお、シリコンベンチ13の上部には光ファイバー14等の構造物があるので、シリコンベンチ13の裏面に位置決めマーク(+)を設けることが好ましい。
【0058】
シリコンベンチ13とスライダ11との傾き調整は、赤外光を用いた相互の干渉を利用して行うことができる(傾き調整1)。例えば、図15(A)中の実線矢印で示すようにシリコンベンチ13上から赤外光を照射し、シリコンベンチ13の底面での反射光とスライダ11の上面での反射光との干渉により得られる干渉縞(図15(B))を見ながら、傾き調整を行うことができる。また、傾き調整は赤外光を用いたオートコリメータを利用して行うこともできる(傾き調整2)。図16(A)にオートコリメータ25でスライダ11の傾きを計測しながら調整する様子を示し、図16(B)にそのときのオートコリメータ画像を示す。図16(C)にオートコリメータ25でシリコンベンチ13の傾きを計測しながら調整する様子を示し、図16(D)にそのときのオートコリメータ画像を示す。
【0059】
シリコンベンチ13とスライダ11との接着は、接着剤を用いて行うのが好ましい。接着剤の例としては、熱硬化性接着剤(液状,シート状),二液混合型接着剤(液状),嫌気性接着剤(液状)が挙げられる。熱硬化性接着剤(液状,シート状)の例としては、使用波長を透過する(透明な)アクリル樹脂,エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,熱硬化性ポリイミドが挙げられ、二液混合型接着剤(液状)の例としては、使用波長を透過する(透明な)アクリル樹脂,エポキシ樹脂,ウレタン樹脂が挙げられ、嫌気性接着剤(液状)の例としては空気に触れている間は硬化せず、空気を遮断することで硬化するもの、使用波長を透過する(透明な)アクリル樹脂(ロックタイト(商品名)等)が挙げられる。
【0060】
一般的に光学部品の接着に用いられるUV硬化性樹脂は、UVがシリコンやスライダ材料を透過しないので好ましくない。横からUV照射しようとしても、接着層が薄いと届かないので好ましくない。溶剤の揮発により基材同士が結びつき接着するタイプは、接着層が薄いため溶剤が揮発できず好ましくない。空気中又は物体表面の水分と反応して固化するシアノアクリレート接着剤(瞬間接着剤)は、接着面に水分が入り込めないので好ましくない。また、シリコンベンチ13とスライダ11との接着に基板直接接合法を用いてもよい。この方法は、一般に材質の異なる2種の基板を面と面とで直接圧接し、加熱等を行うことにより、原子オーダーで接合させる方法である。この方法には、ハンダや接着剤等の中間物質を必要としないというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】光アシスト式磁気記録装置の概略構成例を示す斜視図。
【図2】光アシスト式磁気記録ヘッドの実施例1を示す断面図。
【図3】光アシスト式磁気記録ヘッドの実施例2を示す断面図。
【図4】光アシスト式磁気記録ヘッドの実施例3を示す断面図。
【図5】光アシスト式磁気記録ヘッドの実施例4を示す断面図。
【図6】光アシスト部の具体例を示す斜視図。
【図7】光アシスト部の具体例を示す上面図。
【図8】光アシスト部の具体例を示す断面図。
【図9】光アシスト部の具体例を有するスライダの製造工程を示す断面図。
【図10】図9中のプラズモンプローブの製造工程1を示す断面図。
【図11】図9中のプラズモンプローブの製造工程2を示す断面図。
【図12】光アシスト式磁気記録ヘッド以外の微小記録ヘッドの実施例を示す断面図。
【図13】シリコンベンチとスライダとの組み立てを説明するための断面図。
【図14】シリコンベンチとスライダとの水平方向の位置調整を説明するための平面図。
【図15】シリコンベンチとスライダとの傾き調整1を説明するための図。
【図16】シリコンベンチとスライダとの傾き調整2を説明するための図。
【図17】光アシスト部の変形例を示す上面図。
【符号の説明】
【0062】
1 筐体
2 記録用のディスク(記録媒体)
3 磁気記録ヘッド(微小光記録ヘッド)
3a 微小光記録ヘッド
10 磁気記録装置(ハードディスク装置)
11 スライダ
12A 光アシスト部(光アシスト素子,光導波路)
12B 磁気記録部(磁気記録素子)
12C 磁気再生部(磁気再生素子)
12a 光導波路
13 シリコンベンチ
14 光ファイバー(光源部)
15 球レンズ(光学系)
16 半球レンズ(光学系)
17 マイクロプリズム(光学系)
18 マイクロミラー(光学系)
19 基板
20 第1のSiO2
21 第1のSiON層
22a 第1のSi層(コア層)
22b 第2のSi層(コア層)
23 第2のSiON層
24 第2のSiO2
26 レジストパターン
27 金薄膜
30 プラズモンプローブ
31 コア
32 サブコア
33 クラッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対する情報記録に光を利用する微小光記録ヘッドであって、記録媒体上で浮上しながら相対的に移動するスライダを有し、そのスライダが光導波路とその集光部分に設けられたプラズモンプローブとを有し、前記プラズモンプローブが厚みのある形状となって前記光導波路内に埋め込まれていることを特徴とする微小光記録ヘッド。
【請求項2】
前記光導波路による光の導波方向を前記プラズモンプローブ及びスライダの厚み方向とし、プラズモンプローブの厚さをL1とし、スライダの厚さをL2とすると、条件式:1μm<L1<L2を満たすことを特徴とする請求項1記載の微小光記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2記載の微小光記録ヘッドの製造方法であって、前記光導波路のコアを形成する際、その途中までコア層の成膜を行い、その上からコアの中心近傍部分に前記プラズモンプローブを形成し、残りのコア層の成膜を行った後、コア層を所定のコア形状に加工することを特徴とする微小光記録ヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の微小光記録ヘッドにおいて、さらに磁気記録素子を有することを特徴とする光アシスト式磁気記録ヘッド。
【請求項5】
請求項4記載の光アシスト式磁気記録ヘッドの製造方法であって、前記光導波路のコアを形成する際、その途中までコア層の成膜を行い、その上からコアの中心近傍部分に前記プラズモンプローブを形成し、残りのコア層の成膜を行った後、コア層を所定のコア形状に加工することを特徴とする光アシスト式磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の微小光記録ヘッドを備えたことを特徴とする微小光記録装置。
【請求項7】
請求項4記載の光アシスト式磁気記録ヘッドを備えたことを特徴とする光アシスト式磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−257753(P2007−257753A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81990(P2006−81990)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】