説明

微生物発酵材料を生成する方法及び装置

【課題】都市下水汚泥の減量又はバイオ燃料の生成を実現する微生物発酵有機物の生成方法及び装置を提供する。
【解決手段】微生物発酵有機物の生成方法であって、有機物及びセルロース系材料の少なくとも一部を、ジェットポンプ1,101において超音速衝撃領域を形成し、有機物及びセルロース系材料の少なくとも一方を供給して破砕又は液化すること、ジェットポンプのチューブを囲む環状リングチャンバに高圧蒸気を加え、蒸気を前記チューブ内に導いて、有機物及びセルロース系材料の少なくとも一方を前記チューブ内に吸引し、超音速衝撃領域を形成してこれを破砕又は液化すること、の少なくとも1つを含む生成方法。また、微生物発酵有機物を生成する装置であって、該微生物発酵有機物は下水汚泥及びセルロース系材料の少なくとも一方であり、ジェットポンプを含んで構成される装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市下水汚泥を減量するために該下水汚泥によるもの及びバイオ燃料を生成するためにセルロース系材料によるものの少なくとも一方による微生物発酵材料を生成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物発酵は、例えば、都市下水の好気性及び嫌気性消化等の多くの工程において、並びにセルロース系材料からのバイオ燃料の製造において、用いられている。
【0003】
発酵工程の効率は、凝集塊(aggregate)又は固形物の存在に起因する微生物の有機物への到達能に影響される。
【0004】
下水の嫌気性消化では、汚泥が消化槽の底に生じる。この汚泥は、除去、乾燥及び処分を必要とし、これには大きなコストがかかる。WO01/16037A1には、ホモジナイザーを用いて汚泥を機械により破砕(disruption)する方法が開示されている。この工程の概略図を図1に示す。尚、WO01/16037A1の全開示は、参照により本開示に含まれるものとする。このホモジナイザーにより、汚泥はより小さな凝集塊に破砕され、そして嫌気性消化槽に返送され、細菌による消化が引き続き行われる。これにより、メタンガスが生成され、また、除去対象汚泥の最終的な体積が減少する。
【0005】
機械式ホモジナイザーを稼動させるために必要とされる電力について、この処理はエネルギーを大量に消費するが、純エネルギーバランスは、汚泥を最小ファクターである1.5で予め濃縮し、ホモジナイザーを通過する物質の体積を減少させることにより得ることができる。メタンを電気に変換することで得られるエネルギーにより、ホモジナイザーの消費電力を相殺することができる。
【0006】
WO00/07946A1(EP1102426A1、出願人はParadigm社)には、下水処理について、嫌気性消化槽の前段において、上流の好気性消化槽の汚泥をホモジナイズするために機械式ホモジナイザーを使用することが開示されている。ここでは、超高圧のホモジナイズ圧力が必要とされ、また、汚泥を溶解して破砕工程を補助するために水酸化ナトリウムを添加する必要がある。この工程の概略図を図2に示す。尚、WO00/07946A1の全開示は、参照により本開示に含まれるものとする。
【0007】
上記両工程では、エネルギー消費が大きい他、下水中の砂及び他の研磨材によって急激に起こるホモジナイザーバルブの破損が問題となっている。したがって、ホモジナイザーバルブを頻繁にまたコストをかけてメンテナンスを行ったり取り替えたりする必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO01/16037A1
【特許文献2】WO00/07946A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、都市下水汚泥を減量するために該下水汚泥によるもの及びバイオ燃料を生成するためにセルロース系材料によるものの少なくとも一方による微生物発酵材料を生成する方法及び装置であって、改善された効率を提供する微生物発酵用装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、有機物及びセルロース系材料の少なくとも一部を、ジェットポンプを用いて破砕又は液化すること、ジェットポンプにおいて超音速衝撃領域を形成し、有機物及びセルロース系材料の少なくとも一方を供給してこれを破砕又は液化すること、ジェットポンプのチューブを囲む環状リングチャンバに高圧蒸気を加え、前記蒸気をジェットポンプのチューブ内に導いて、有機物及びセルロース系材料の少なくとも一方をチューブ内に吸引し、超音速衝撃領域を形成して有機物及びセルロース系材料の少なくとも一方を破砕又は液化すること、により実現される。本発明の好ましい態様は、従属項に開示されている。
【0011】
本発明の一態様によれば、微生物発酵有機物の生成方法であって、該微生物発酵有機物は、都市下水汚泥を減量するために該下水汚泥によるもの及びバイオ燃料を生成するためにセルロース系材料によるものの少なくとも一方であり、前記有機物及び前記セルロース系材料の少なくとも一部を、ジェットポンプを用いて破砕又は液化すること、前記ジェットポンプにおいて超音速衝撃領域を形成し、前記有機物及び前記セルロース系材料の少なくとも一方を供給してこれを破砕又は液化すること、ジェットポンプのチューブを囲む環状リングチャンバに高圧蒸気を加え、前記蒸気を前記ジェットポンプの前記チューブ内に導いて、前記有機物及び前記セルロース系材料の少なくとも一方を前記チューブ内に吸引し、超音速衝撃領域を形成して前記有機物及び前記セルロース系材料の少なくとも一方を破砕又は液化すること、の少なくとも1つを含んで構成される生成方法を提供する。
【0012】
本発明によれば、都市下水汚泥は、ジェットポンプを通って好気性又は嫌気性消化槽に返送されてもよい。
【0013】
本発明によれば、有機物は、セルロース系材料を含んで構成されてもよく、また、セルロース系材料の液化は該セルロース系材料の発酵前に行ってもよい。
【0014】
本発明によれば、ジェットポンプは、プレカット又は粉砕したセルロース系材料の水中スラリーの液化に用いられてもよい。
【0015】
本発明によれば、水酸化ナトリウム等の化学物質を、破砕又は液化工程を助けるために添加してもよく、好ましくは該破砕若しくは液化工程の前又は該破砕若しくは液化工程の間に添加する。
【0016】
本発明によれば、酸を添加して、破砕又は液化の間の酸加水分解を可能にしてもよい。
【0017】
本発明によれば、酸を液化後に添加して加水分解を可能にしてもよい。
【0018】
本発明によれば、酵素を添加してセルロースを加水分解してもよい。
【0019】
本発明によれば、安価で既に利用可能なソースとなっているセルロース系材料を用いてもよく、これには例えば、刈り取った草(cut grass)、小麦の茎、サトウキビ廃棄物及びサトウダイコン廃棄物等が挙げられる。
【0020】
本発明によれば、例えば、加熱装置及び自動車の内燃機関の少なくとも一方に使用されるバイオ燃料を生成してもよい。
【0021】
本発明によれば、微生物発酵有機物を生成する装置であって、該微生物発酵有機物は、都市下水汚泥を減量するために該下水汚泥によるもの及びバイオ燃料を生成するためにセルロース系材料によるものの少なくとも一方であり、ジェットポンプ、とりわけ蒸気ジェットポンプ、を含んで構成され、該蒸気ジェットポンプは好ましくは蒸気が導入される環状リングチャンバを備える装置を提供する。
【0022】
本発明によれば、ジェットポンプは、チューブと、チューブの壁部に設けられた環状リングチャンバと、環状リングチャンバをチューブの内部空間に接続するノズルと、を含んで構成されてもよく、該環状リングチャンバにはパイプが接続され、該パイプを介して高圧蒸気が前記環状リングチャンバに導入されて、チューブ内に有機物を含む液体が吸引されると、チューブ内のノズルの出口の後ろにおいて、チューブ内に含まれる物質中に超音速衝撃波が発生し、前記超音速衝撃波は、好ましくはチューブの断面全体におよぶ。
【0023】
本発明によれば、ジェットポンプは、粉砕されたセルロース系材料の液化及び下水汚泥の減量の少なくとも一方に適応するよう構成されてもよい。
【0024】
本発明によれば、本装置は、本発明の方法を実行するように構成されてもよく、該装置は、好ましくは、スクリーン手段、好気性消化手段、嫌気性消化手段及び発酵手段の少なくとも1つを含んで構成されてもよい。
【0025】
本発明によれば、1つ以上のジェットポンプを用いて構成されてもよく、複数のジェットポンプを直列接続で使用してもよい。
【発明の効果】
【0026】
セルロース系材料からのバイオ燃料の生成では、液化によりその後の酸又は酵素による加水分解に関してセルロースの到達性が大きく改善されることとなり、さらに、アルコールに変換されうる発酵可能な糖がより多く放出されるようになる可能性がある。
【0027】
EP1549856B1及びWO2006/010949A1に詳述されるようなジェットポンプを使用することで、好気性及び嫌気性の両都市下水汚泥の機械式ホモジナイズの代替となり、資本金及び運転費を削減し、機械の破損を最小限にして破砕装置のメンテナンス間の稼動時間を延ばすことができるという利点を有する。尚、EP1549856B1及びWO2006/010949A1の全記載は、参照により本開示に含まれる。
【0028】
砂糖及び小麦からのバイオ燃料の生成については、資料が十分に存在する。しかし、食用作物をバイオ燃料に転換することで、食料価格の上昇と食料不足が生じてしまう。したがって、他の発酵性物質源を見つける必要があり、これには廃棄物が考えられる。この廃棄物としては、液化及び加水分解されると発酵可能な糖源となるセルロース系材料が挙げられる。また、液化の機械的手段は高価であり、装置についてもエネルギーの利用やメンテナンスのために費用がかかる。
【0029】
商業的に成功するためには、セルロース系材料からエタノールを製造するためのコストが、油のそれより小さくなければならない。したがって、例えば、刈り取った草、小麦の茎、サトウキビ廃棄物又はサトウダイコン廃棄物など、安価で既に利用可能なソースとなっているセルロース系材料を使用することができることが有利となる。
【0030】
EP1549856B1及びWO2006/010949A1に詳述されているようなジェットポンプを、刈り取った草及び他の産物(例えば、小麦の茎、サトウキビ廃棄物及びサトウダイコン廃棄物)などの水中のセルロース産物の液化に、同様に採用することができる。実際に、どのセルロース産物を用いてもよい。得られた液体は、その後酵素により又は化学的に加水分解されて、発酵可能な糖になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】WO01/16037A1に開示されているような装置又は方法の概略図である。
【図2】WO00/07946A1に開示されているような装置又は方法の概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態による装置又は方法の概略図である。
【図4】本発明の第2実施形態による装置又は方法の概略図である。
【図5】本発明で用いられ、本発明による装置に含まれるジェットポンプの概略断面図である。
【図6】本発明で用いられ、本発明による装置に含まれる他のジェットポンプの概略断面図である。
【図7】本発明の好ましい第3実施形態による装置又は方法の概略図である。
【図8】本発明の第4実施形態による装置又は方法の概略図である。
【図9】本発明の第5実施形態による装置又は方法の概略図である。
【図10】本発明の第6実施形態による装置又は方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の方法で用いられ、本発明による装置に含まれるジェットポンプは、例えば、EP1549856B1及びWO2006/01949A1に詳細が記載された、極めて特殊なタイプのジェットポンプである。この種のジェットポンプについては、その概略断面図を図5及び図6に示し、これらの図5及び図6を基に説明する。
【0033】
図3は、下水の嫌気性消化用に用いられる方法及び装置の概略図である。消化槽の底に生じる汚泥の機械破砕は、図5及び図6に示すような蒸気ジェットポンプで行われる。
【0034】
ここではまず、下水をスクリーン手段201に導く。その後、この液体は好気性消化手段に送られ、浄化された処理水及び汚泥として排出される。スクリーン手段201で得られた1次汚泥及び好気性消化手段202の汚泥は、嫌気性消化手段203に送られる。嫌気性消化手段203から排出された汚泥の一部は、ジェットポンプ1、101に送られる。ここで破砕又は液化された汚泥は、嫌気性消化手段203のインレットへ再度送られる。一方、嫌気性消化手段の余剰アウトプットは、通常の方法で圧縮乾燥される。上述した従来技術により知られるホモジナイザーに代わるジェットポンプ1、101を用いることで、磨耗やコストが劇的に減少するという利点が生じる。
【0035】
或いは、嫌気性消化手段に送られるすべての汚泥が蒸気ジェットポンプ1、101を通過するように、ジェットポンプ1、101を、嫌気性消化手段203のインレットの前段に更に設けてもよいし、その前段にのみ設けてもよい。或いは又はこれに加えて、好気性消化手段202又はスクリーン手段201に送られるすべての物質が蒸気ジェットポンプ1、101を通過するように、図5及び図6に示した蒸気ジェットポンプ1、101を、好気性消化手段202及びスクリーン手段201の少なくとも一方の前段に設けてもよい。
【0036】
また、ジェットポンプ1、101は、嫌気性消化手段に導入される前の好気性汚泥の処理に用いることもできる。
【0037】
本発明では、ジェットポンプ1、101を、好気性消化手段及び嫌気性消化手段の少なくとも一方において汚泥を循環させるために用いてもよい。
【0038】
本発明によれば、ジェットポンプ1、101を、機械ホモジナイズと組み合わせて用いてもよく、ここでは、ジェットポンプ1、101をホモジナイザーの前段に配置し、砂や砂利を含む汚泥によりホモジナイザーが破損しないよう、ホモジナイザーを保護するように構成してもよい。本発明によれば、1次汚泥のみを処理することもできる。また、汚泥をその後ジェットポンプ1、101により更に処理することとしてもよいことも明らかである。
【0039】
図4は、本発明の他の実施形態による、下水の嫌気性消化用に用いられる方法及び装置の概略図である。尚、図3に示した構成要素と同一のものには、同一の符号を付している。以下、図3の実施形態との相違点のみ説明し、それ以外については図3の実施形態の記載を参照する。ここでは、嫌気性消化手段203のアウトプットは蒸気ジェットポンプに送らず、好気性消化手段202の汚泥アウトプットの一部を蒸気ジェットポンプ1、101に送る。蒸気ジェットポンプによる処理の前に、例えばNaOHの添加により汚泥のpHを上げてもよい。その後、破砕又は液化された汚泥を、嫌気性消化手段203に送る。
【0040】
図5及び図6に示す蒸気ジェットポンプ1、101は、セルロース系材料の液化がセルロース系材料の発酵の前に起こるように接続される。
【0041】
図5は、このようなジェットポンプの概略断面図を示している。ジェットポンプ1は、チューブインレット3及びチューブアウトレット4を有するチューブ2を含んで構成される。チューブ2の壁部には、環状リングチャンバ6が設けられており、これにはパイプ5が接続されている。また、この環状リングチャンバ6は、ノズル7によってチューブ2の内部空間と接続されている。
【0042】
動作時には、蒸気が高圧で押されてパイプ5に入り、環状リングチャンバ6内に分散する。環状リングチャンバ6から、蒸気がノズル7を通ってチューブ2へ導かれ、これにより有機物を含む液体をチューブ2へ吸引する。蒸気を液体に凝縮することで、有機物又はセルロース系材料はチューブに吸引される。蒸気が凝縮するとその体積は減少し、チューブ内の圧力が低下して、物質がチューブ内に吸引される。
【0043】
チューブ内においてノズル7の出口に隣接する領域は、ミキシングチャンバとして機能する。
【0044】
動作時には、高圧蒸気がパイプ5に向かい、これにより液体が、チューブインレット3を介して中空のチューブ2内に吸引される。このとき、速度は代表的には8〜10m/sである。ミキシングチャンバ8では、液体は蒸気と混合され、蒸気の凝縮と蒸気排出ノズル7の高運動量により超音速衝撃波9が生じる。ノズル7の出口では、蒸気及び水滴の混合物が約800m/sの超音速となる。チューブアウトレット8において、速度は再び約8〜10m/sに低下する。
【0045】
尚、図5及び図6に示されるミキシングチャンバ8及び超音速衝撃波9は、チューブ内のどこで混合及び衝撃波が起こるかを示しているに過ぎない。したがって、液体と蒸気との混合及び超音波衝撃波の発生を生じさせるために、チューブ内に様々な手段を挿入する必要はない。これらの効果は、チューブに吸引された液体に蒸気を導く環状リングチャンバ6及びノズル7により得られる。
【0046】
有機物質を含む高速の水滴により、有機物質の物理的な破砕又は液化が起こる。汚泥塊の一部は物理的に浸軟(mascerate)し、細菌がより到達しやすいより小さな塊となることにより、本発明の嫌気性消化工程の効率が高められる。本発明の方法及び装置により、処理を必要とする消化汚泥がより少なくなる。
【0047】
本発明によれば、ノズル7は、環状リング、又は環状リングチャンバの延長上若しくはチューブの周に沿って分布する複数のパイプとすることもできる。複数のパイプを含んで構成されるノズルを有する本発明の一実施形態によれば、この複数のパイプを、チューブ内に渦を発生させうる角度をつけて配置してもよい。
【0048】
図6は、図5に示すジェットポンプ1と大部分が対応するジェットポンプ101の他の実施形態を示している。尚、同様の構成要素には100を加えた数の符号を付した。以下、他の構成要素及び特徴について説明する。図5のジェットポンプ1と対応する特徴及び構成要素については、図5に示されるジェットポンプ1の記載を参照する。
【0049】
環状リングチャンバ106及びノズル106の形状は、超音速衝撃領域109を形成するように最適化されている。添加剤又は添加物をチューブ102内に供給するパイプ又はノズル111、113を有する環状リングチャンバ110、112が設けられている。環状リングチャンバ110、112は、複合多糖の加水分解に用いられる酸や酵素などの添加物質を供給する連結部(図示せず)をそれぞれ有している。
【0050】
図7〜図10は、図3及び図4に示される実施形態と大部分が対応する本発明の他の実施形態を示している。同一の符号は、同様の又は同一の構成要素を示すために用いている。以下、相違点についてのみ説明する。図7〜図10の実施形態では、嫌気性消化手段203から排出される物質を濾過するフィルター手段204が設けられている。
【0051】
図7の実施形態によれば、図5及び図6で示されるような2つのジェットポンプ1、101が設けられている。
【0052】
ジェットポンプAは、汚泥が排出される好気性消化手段202のアウトレットと嫌気性消化手段203との間に設けられる。スクリーンフィルター手段201からの一次汚泥は、ジェットポンプAをバイパスして、嫌気性消化手段203のインレットに直接送られる。或いは、スクリーンフィルター手段の一次汚泥は、ジェットポンプA、又は他のジェットポンプ(図示せず)を通過してもよい。
【0053】
ジェットポンプBは、嫌気性消化手段から排出される嫌気性汚泥を処理し嫌気性消化手段のインレットへ再び送るように配置接続される。
【0054】
図8は、図7の実施形態におけるジェットポンプBを省いた本発明の一実施形態を示している。
【0055】
図9は、図7の実施形態におけるジェットポンプAを省いた本発明の一実施形態を示している。
【0056】
図10は、嫌気性消化手段に入る前にスクリーンフィルター手段201の一次汚泥を処理するために、スクリーンフィルター手段201のアウトレット及び嫌気性消化手段203のインレットの間に、図5及び図6に示したようなジェットポンプ1、101を設けた一実施形態を示している。
【0057】
本発明によれば、図7〜図10で示されるような位置に配置されるジェットポンプの使用を含む複数の実施形態が、単独又はとりうる組み合わせにおいて、想定される。例えば、ジェットポンプを3つ用いる場合、図8、図9及び図10に示した位置に配置することが可能である。
【0058】
本発明によれば、従来の方法や装置に用いられるようなホモジナイザーに加えて好ましくは前段に又はより好ましくはその代わりに、超音速衝撃波を発生して有機物質又は汚泥を破砕又は液化するジェットポンプが用いられる。
【0059】
従って、上記のようなジェットポンプ及び他の用途について従来技術において知られるジェットポンプであって、参照により本開示に含まれるジェットポンプが、ホモジナイザーの代わりに用いられる。或いは、ジェットポンプを、ホモジナイザーの前段における処理で用いてもよい。
【0060】
現在、世界のバイオ燃料の大部分は、砂糖やトウモロコシ等の原材料から製造されている。しかしながら、このような農産物の使用により食料の価格が高騰している。このような理由から、イネ科草本、サトウダイコン廃棄物、トウモロコシの茎等の二次植物産物からバイオ燃料を経済的に製造することが注目されている。
【0061】
廃棄物は細かくする必要があり、また好ましくは、構成要素であるセルロースが溶解するよう完全に浸軟させる必要がある。セルロースが溶解すると、このセルロースを加水分解して炭化水素に変換し、その後酵母又は細菌を用いて発酵してこの炭化水素をエタノールやブタノールに変換する必要がある。その後、生成した希アルコール蒸気を蒸発させ、モレキュラーシーブを用いた最終的な乾燥の前に蒸留する。
【0062】
例えば図5又は図6に概略的に示した蒸気ジェットポンプの使用により、例えば細断装置を用いた機械破砕の後にセルロースを急速に溶解する低コスト手段が提供される。蒸気ジェットポンプはまた、加熱効果を通して、そしてポンプに供給される前の酸添加により、セルロースの加水分解に寄与することができる。
【0063】
バイオ燃料を製造する公知の方法の概要は、米国エネルギー省ホームページの「Energy Efficiency and renewable Energy, BIOMASS PROGRAM」(http://www1.eere.energy.gov/biomass/abcs_biofuels.html)に開示されている。尚、すべての開示は、参照により本開示に含まれるものとする。
【0064】
最初に、複合多糖を加水分解によって単糖に変換する。酸及び酵素を用いて加水分解を触媒する。次に、糖に加えた酵母や細菌による発酵で糖をエタノールに変換する。これにより、糖からエタノール及び酸化炭素を生成する。
【0065】
本発明の方法及び装置によれば、多糖類を含有するバイオマスは超音波衝撃波を発生させるジェットポンプで処理される。これによりバイオマスは液化され、また、多糖類はその少なくとも一部分が加水分解されてもよい。
【0066】
したがって、本発明は更に、セルロース系材料の微生物発酵の方法及び装置に関し、ここでは、プレカット又は粉砕したセルロース系材料を液化するジェットポンプを用いる。
【符号の説明】
【0067】
1 ジェットポンプ
2 チューブ
3 チューブインレット
4 チューブアウトレット
5 パイプ
6 環状リングチャンバ
7 ノズル
8 ミキシングチャンバ
9 圧縮衝撃波
101 ジェットポンプ
102 チューブ
103 チューブインレット
104 チューブアウトレット
105 パイプ
106 環状リングチャンバ
107 ノズル
108 ミキシングチャンバ
109 圧縮衝撃波
110 環状リングチャンバ
111 ノズル
112 環状リングチャンバ
113 パイプ
201 スクリーン手段
202 好気性消化手段
203 嫌気性消化手段
204 フィルター手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物発酵有機物の生成方法であって、
該微生物発酵有機物は、都市下水汚泥を減量するために該下水汚泥によるもの及びバイオ燃料を生成するためにセルロース系材料によるものの少なくとも一方であり、
前記有機物及び前記セルロース系材料の少なくとも一部を、ジェットポンプを用いて破砕又は液化すること、
前記ジェットポンプにおいて超音速衝撃領域を形成し、前記有機物及び前記セルロース系材料の少なくとも一方を供給してこれを破砕又は液化すること、
ジェットポンプのチューブを囲む環状リングチャンバに高圧蒸気を加え、前記蒸気を前記ジェットポンプの前記チューブ内に導いて、前記有機物及び前記セルロース系材料の少なくとも一方を前記チューブ内に吸引し、超音速衝撃領域を形成して前記有機物及び前記セルロース系材料の少なくとも一方を破砕又は液化すること、
を含んで構成される生成方法。
【請求項2】
前記都市下水汚泥は、前記ジェットポンプを通って好気性又は嫌気性発酵槽に返送される、請求項1に記載の生成方法。
【請求項3】
前記有機物は、セルロース系材料を含んで構成され、
前記セルロース系材料の液化は該セルロース系材料の発酵前に行われる、
請求項1に記載の生成方法。
【請求項4】
前記ジェットポンプは、プレカット又は粉砕したセルロース系材料の水中スラリーの液化に用いられる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の生成方法。
【請求項5】
前記破砕又は液化する工程の補助として、好ましくは該破砕又は液化工程の前又はその間に、化学物質を添加し、該化学物質は水酸化ナトリウムである、請求項1〜4のいずれか一つに記載の生成方法。
【請求項6】
酸を添加して、前記破砕又は液化の間に酸加水分解を可能にする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の生成方法。
【請求項7】
酸を前記液化後に添加して加水分解を可能にする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の生成方法。
【請求項8】
酵素を添加して前記セルロースを加水分解する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の生成方法。
【請求項9】
安価及び既に利用可能なソースとなっているセルロース系材料を使用し、該セルロース系材料には、刈り取った草、小麦の茎、サトウキビ廃棄物及びサトウダイコン廃棄物の少なくとも1つが含まれる、請求項1〜8のいずれか一つに記載の生成方法。
【請求項10】
加熱装置及び自動車の内燃機関の少なくとも一方に使用されるバイオ燃料を生成する、請求項1〜9のいずれか一つに記載の生成方法。
【請求項11】
微生物発酵有機物を生成する装置であって、
該微生物発酵有機物は、都市下水汚泥を減量するために該下水汚泥によるもの及びバイオ燃料を生成するためにセルロース系材料によるものの少なくとも一方であり、
ジェットポンプを含んで構成される装置。
【請求項12】
前記ジェットポンプは、
チューブと、
前記チューブの壁部に設けられた環状リングチャンバと、
前記環状リングチャンバを前記チューブの内部空間に接続するノズルと、
を含んで構成され、
前記環状リングチャンバにはパイプが接続され、該パイプを介して高圧蒸気が前記環状リングチャンバに導入されて、前記チューブ内に有機物を含む液体が吸引されると前記チューブの前記ノズルの出口の後ろにおいて前記チューブ内に含まれる物質中に超音速衝撃波が発生し、
前記超音速衝撃波は、好ましくは、前記チューブの断面の全体に及ぶ、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ジェットポンプは、粉砕されたセルロース系材料の液化及び下水汚泥の減量の少なくとも一方に適応するよう構成される、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法を実行するよう構成され、
前記装置は、好ましくは、スクリーン手段、好気性消化手段、嫌気性消化手段及び発酵手段の少なくとも1つを含んで構成される、
請求項11〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
1つ以上の前記ジェットポンプが用いて構成され、
前記ジェットポンプは、好ましくは直列接続で使用される、
請求項1〜14のいずれか1つに記載の生成方法又は装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−183936(P2009−183936A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−293461(P2008−293461)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(508341979)エーピーブイ システムズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】