説明

微細なスパンボンドフィラメントの製造方法

直径が減少したスパンボンドファイバーのウェブを製造する方法が提供される。スパンボンドファイバーは、単成分ファイバー、対称断面を有する多成分ファイバーまたはこれらの組み合わせであり得る。ファイバーを冷却後、二次延伸工程において再加熱し延伸すると、二次延伸工程において再加熱および延伸しなかったファイバーに比べて平均ファイバー直径が少なくとも5%減少したファイバーが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直径が減少したスパンボンドフィラメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスパンボンド方法において、1台もしくはそれ以上の押出し機によって溶融ポリマーをスピンパックに供給し、ポリマーが開口部を通ってスパンされて、フィラメントのカーテンを形成する。フィラメントは、空冷ゾーンにおいて部分的に冷却され、可動ベルト、スクリムまたは他の繊維層にレイダウンさせる前に空気ジェットに通過させる。空気ジェットによりファイバーにかかった張力によって、紡糸口金面近くに延伸されて、ファイバーサイズが減少し、ファイバー強度が増加する。スパンボンドファイバーは、約5マイクロメートルを超える直径を有している。ファイバー直径は、1穴あたりのポリマー処理量を下げ、空気延伸ジェット圧力を増加し、スピンライン距離(紡糸口金のポリマー毛管の出口と空気ジェットの入口との間の距離)を減少し、ポリマー粘度を減少して、紡糸プロセスを最適化することによって減少させることができる。しかしながら、かかる方法は、これらのアプローチの結果として生じ得るプロセス不安定性のために得ることのできるファイバー直径の減少度により制限される。例えば、ポリマードリップや破損フィラメントといった紡糸欠陥の頻度が増加し、市販のスパンボンドプロセスとしては許容されない。更に、1穴当たりの処理量を減じると、プロセスの経済性にマイナスの影響を与える。ポリマー粘度を減じると、ファイバー強度のようなその他のファイバー特性にマイナスの影響を与える。
【0003】
(特許文献1)には、両面マルチレベル冷却システムと、調整可能な一次および二次ジェットノズルと可変幅延伸ジェットスロットとを備えた垂直可動延伸ジェットアセンブリとを含んでなるサブデニールのスパンボンド不織布の製造装置が記載されている。(特許文献2)には、冷却チャンバに供給された冷却空気が垂直方向に少なくとも2つのストリームに分割され、最下部のストリームの冷却空気の空気速度が、最上部のストリームの冷却空気より速く設定されている、スパンボンドプロセスにおいてスパンボンド直径を減少する方法が記載されている。これらの方法は両方とも、既存のスパンボンドラインに容易に適合しない。更に、ドリップやファイバー破損の増大といった上述したプロセス不安定性のいくつかがこれらのプロセスを用いると生じる恐れがある。
【0004】
(特許文献3)には、レイダウンの前にフィラメントの潜在的な捲縮を活性化させる加熱工程を含む、非対称断面を有する捲縮二成分連続フィラメントを含んでなる不織布の製造方法が記載されている。一実施形態において、加熱空気を吸気ジェットで用いて潜在的な捲縮を活性化させる。
【0005】
既存のスパンボンド設備を用いてスパンボンドファイバーの直径を減少させる低コストの方法が必要とされている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,379,136号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0178741号明細書
【特許文献3】米国特許第5,418,045号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
スパンボンド布を製造する方法は、
単成分フィラメント、および対称断面を有し且つ少なくとも第1のポリマー成分と少なくとも第2のポリマー成分とを含んでなる多成分フィラメントよりなる群から選択された複数の連続ポリマーフィラメントを紡糸口金から溶融紡糸する工程と、
フィラメントを第1の延伸工程で延伸する工程と、
延伸したフィラメントを冷却する工程と、
冷却したフィラメントを空気延伸ジェットに通す工程と、
延伸ジェットにガス状ストリームを供給する工程であって、フィラメントおよびガス状ストリームが延伸ジェットを通過し出る際にガス状ストリームがフィラメントに張力をかける工程と、
ガス状ストリームによりかかった張力下でフィラメントを二次延伸工程で延伸するのに十分な温度までフィラメントを加熱する工程であって、それによりフィラメントを加熱せずに、二次延伸工程その他同一のプロセスにおいて延伸するときに得られる平均フィラメント直径に比べて少なくとも5パーセント平均フィラメント直径が減少する工程と、
フィラメントを収集表面に集めて不織ウェブを形成する工程と
を含んでなる。
【0008】
本発明はまた、本方法を実施する装置でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、直径が減少したフィラメントを含んでなるスパンボンド不織布の製造方法に係る。本発明の方法は、従来のスパンボンド設備を用いて実施することができ、僅かの修正が必要なだけである。
【0010】
本明細書で用いる「コポリマー」という用語は、2種類もしくはそれ以上のコモノマーを重合することにより調製され、ジポリマー、ターポリマー等を含むランダム、ブロック、交互およびグラフトコポリマーを含む。
【0011】
本明細書で用いる「ポリオレフィン」という用語は、炭素と水素のみで構成された、飽和が大の一連の鎖式ポリマー炭化水素のことを意味するものとする。代表的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンならびにエチレン、プロピレンおよびメチルペンテンモノマーの様々な組み合わせが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0012】
本明細書で用いる「ポリエチレン」(PE)という用語は、エチレンのホモポリマーのみでなく、少なくとも85%の繰り返し単位がエチレン単位で、約0.955g/cm未満の密度を有する鎖状エチレン/α−オレフィンコポリマーである「鎖状低密度ポリエチレン」(LLDPE)および少なくとも約0.94g/cmの密度を有するポリエチレンホモポリマーである「高密度ポリエチレン」(HDPE)を含むコポリマーも包含されるものとする。
【0013】
本明細書で用いる「ポリプロピレン」という用語には、プロピレンのホモポリマーばかりでなく、少なくとも85%の繰り返し単位がプロピレン単位であるコポリマーも含まれるものとする。
【0014】
本明細書で用いる「ポリエステル」という用語には、少なくとも85%の繰り返し単位がジカルボン酸とジヒドロキシアルコールの縮合生成物であって、結合がエステル単位の形成によりなされているポリマーが含まれるものとする。
【0015】
本明細書で用いる「ポリアミド」という用語には、繰り返しアミド(−COHN−)基を含有するポリマーが含まれるものとする。ポリアミドの1つの部類は、1種類もしくはそれ以上のジカルボン酸を1種類もしくはそれ以上のジアミンと共重合することにより調製される。
【0016】
本明細書で用いる「不織布、シート、層またはウェブ」という用語は、編または織布に対して、不規則に配置されて、識別可能なパターンなしで平面材料を形成する個々のファイバー、フィラメントまたはスレッドの構造のことを意味する。「ファイバー」および「フィラメント」という用語は、本明細書全体にわたって同じ意味で用いられる。不織布としては、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、カードウェブ、エアレイドウェブ、ウェットレイドウェブおよびスパンレースウェブ、ならびに2種類以上の不織層を含んでなる複合体ウェブが例示される。
【0017】
本明細書で用いる「スパンボンドファイバー」という用語は、溶融熱可塑性ポリマー材料を、紡績口金の複数の微細な、通常は円状の毛管から、ファイバーとして押出し、押し出されたファイバーの直径を延伸および急冷により即時に減少させることにより溶融スパンされるファイバーを意味する。スパンボンドファイバーは、通常連続ファイバーである。
【0018】
本明細書で用いる「メルトブローンファイバー」という用語は、溶融処理可能なポリマーを、複数の毛管から、溶融ストリームとして高速ガス(例えば、空気)ストリームに押出すことを含んでなるメルトブローにより溶融スパンされるファイバーを意味する。メルトブローンファイバーは、通常約0.5〜10マイクロメートルの直径を有し、一般的に不連続なファイバーであるが連続とすることもできる。
【0019】
本明細書で用いる「スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布」(SMS)という用語は、2枚のスパンボンド層間に挟まれボンドされたメルトブローンファイバーのウェブを含んでなる多層複合体のことを指す。追加のスパンボンドおよび/またはメルトブローン層を、SMS布、例えば、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS)等に組み込むことができる。
【0020】
本明細書で用いる「多成分ファイバー」という用語は、一緒にスパンされて単一のファイバーを形成する少なくとも2つの別個のポリマー成分から構成されるファイバーのことを指す。少なくとも2種類のポリマー成分が、多成分ファイバーの断面にわたって別個の実質的に一定して配置されたゾーンに構成されている。ゾーンは、ファイバーの長さに沿って実質的に連続して延在している。多成分ファイバーの一例は、シースを形成する第1のポリマー成分とシースにより完全に囲まれたコアを形成する第2のポリマー成分とを含んでなるシース−コアファイバーのような2つの別個のポリマー成分から作成された二成分ファイバーである。多成分ファイバーは、ポリマー材料の単一同種または異種ブレンドから押し出されたファイバーとは区別される。本明細書で用いる「多成分スパンボンドウェブ」という用語は、多成分スパンボンドファイバーを含んでなるスパンボンドウェブのことを指す。本明細書で用いる「二成分スパンボンドウェブ」という用語は、二成分スパンボンドファイバーを含んでなるスパンボンドウェブのことを指す。多成分ウェブは、多成分と単成分ファイバーの両方を含んでなる。
【0021】
本発明の方法は、単成分ファイバーおよび実質的に対称の断面を有する多成分ファイバーよりなる群から選択される直径が減少したスパンボンド不織ファイバーを製造するのに好適である。ファイバーは丸い断面を有していてもよい。ファイバーはまた多葉またはその他断面を有することもできる。ただし、ファイバーが多成分ファイバーの場合には、実質的に放射状に対称であるのが好ましい。「放射状に対称」な断面とは、長手方向軸周囲をファイバーが360°/n回転する断面のことを意味し、「n」は1より大きな整数であり、ファイバーの「n倍」対称を表し、別個のポリマー成分の位置を含む回転前のファイバーと見分けのつかないファイバーが得られる。ファイバーの対称性を求めるには、断面をファイバー軸に垂直にとる。丸くない断面を有するファイバーについて、「有効直径」は、同じ断面積を有する丸いと仮定されたファイバーの直径に等しい。平均ファイバー直径という用語を、丸くない断面のファイバーに用いるときは、平均ファイバー直径は平均有効直径であるものと考えられる。
【0022】
一実施形態において、ファイバーは、2種類のポリマーが同心シース−コア構造に構成された二成分ファイバーである。
【0023】
スパンボンドファイバーを形成するのに好適なポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドならびにこれらのコポリマーが挙げられる。好適なポリオレフィンとしては、ポリエチレン(LLDPEおよびHDPEのような)およびポリプロピレンが例示される。ポリエステルとしては、エチレングリコールとテレフタル酸の縮合生成物であるポリ(エチレンテレフタレート)(PET)および1,3−プロパンジオールとテレフタル酸の縮合生成物であるポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)が例示される。本発明に用いるのに好適なポリアミドとしては、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)およびポリカプロラクタム(ナイロン6)が例示される。対称断面を有する二成分ファイバーに用いるのに好適なポリマーの組み合わせとしては、ポリエステル/ポリエチレン、ポリエステル/ポリエステルコポリマーおよびポリプロピレン/ポリエチレンが例示される。好ましいポリマーの組み合わせとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)/ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)/鎖状低密度ポリエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)/ポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーおよびポリプロピレン/鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。ファイバーが対称シース−コア断面(例えば、同心シース−コア)を有するときは、低融点ポリマー(上記の各ポリマー組み合わせで挙げた第2のポリマー)がシース成分を形成するのが好ましい。本発明のプロセスにおいてファイバーを製造するのに好適なポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーとしては、アモルファスおよび半結晶ポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーが挙げられる。例えば、二酸成分に基づいて約5〜30モルパーセントがジ−メチルイソフタル酸から形成されたポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーおよびグリコール成分に基づいて約5〜60モルパーセントが1,4−シクロヘキサンジメタノールから形成されたポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーを用いることができる。1,4−シクロヘキサンジメタノールで変性してあるポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーは、イーストマンケミカルズ(テネシー州キングスポート)(Eastman Chemicals(Kingsport,TN))よりPETGコポリマーとして入手可能である。ジ−メチルイソフタル酸で変性してあるポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーは、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I. du Pont de Nemours and Company)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))よりクリスタ(Crystar)(登録商標)ポリエステルコポリマーとして入手可能である。
【0024】
他の実施形態において、ファイバーは、実質的に放射状に対称な構造で構成された別個のポリマーの偶数の交互のセグメントを有するセグメント化されたパイ断面を有している。セグメント化されたフィラメントは、二次延伸工程で容易に分離しないようなものを選ぶ。しかしながら、より微細なフィラメントサイズとするために、ヒドロエンタングリング等といった処理をフィラメントに更に施して、フィラメントを分離させてもよい。隣接するポリマーセグメントの溶解度差は2もしくはそれ以上(cal/cm1/2であるのが好ましい。用いるのに好適なポリマーの組み合わせは、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)またはポリアミドと交互のポリプロピレンまたはポリエチレンである。あるいは、ポリスチレンは、ポリアミドと交互にすることができ、ポリ(エチレンテレフタレート)はポリアミドと交互にすることができる。
【0025】
図1は、二成分スパンボンドウェブを製造するための従来のスパンボンド装置の側部立面図である。本発明の方法はまた、単成分ファイバーを紡糸するよう設計された紡糸ブロックを用いる、または図1に示すホッパー10および12へ同ポリマーを供給することにより、単成分ファイバーを含んでなるスパンボンド不織布の製造にも用いることができるものと考えられる。あるいは、3種類以上のポリマー成分を含んでなる多成分スパンボンドウェブは、1台もしくはそれ以上の追加の押出し機に導入し、多成分ファイバーを3種類もしくはそれ以上のポリマーから適切に設計された紡糸ブロックを用いて紡糸することにより製造することができる。この装置で二成分ファイバーを形成するには、2種類の異なる熱可塑性ポリマーをホッパー10および12にそれぞれ供給する。ホッパー10および12のポリマーは、押出し機14および16にそれぞれ供給され、それぞれ、中に含有されるポリマーを溶融および加圧して、フィルタ18および20、ならびに計量ポンプ22および24にそれぞれ通される。2つのポリマーストリームが、公知の方法により紡糸ブロック26で結合されて、所望の二成分フィラメント断面が生成される。一実施形態において、多成分ファイバーは、約5〜60重量パーセントのシース成分と約40〜95重量パーセントのコア成分とを含んでなる二成分シース−コアファイバーを含んでなる。より好ましくは、二成分ファイバーは、約15〜40重量パーセントのシース成分と約60〜85重量パーセントのコア成分とを含んでなる。一実施形態において、ポリマーシース成分は、スパンボンド布のサーマルボンディングを促すために、ポリマーコア成分よりも低い融点を有している。例えば、シース成分は、最高融点成分の融点よりも少なくとも10℃低い、より好ましくは最高融点成分の融点よりも少なくとも20℃低い融点を有する。例えば、シース成分は、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたはこれらのブレンドのようなポリエチレンとすることができ、コア成分はポリ(エチレンテレフタレートのようなポリエステルとすることができる。
【0026】
溶融ポリマーは、紡糸口金28の面にある複数の毛管開口部を通して紡糸ブロック26を出て、フィラメント30のカーテンを形成する。毛管開口部は、従来のパターン、例えば、矩形、千鳥配列またはその他構造で紡糸口金面に構成されていてもよい。フィラメントは、冷却空気32で冷却され、レイダウンの前に空気延伸ジェット34を通過して、二成分スパンボンドウェブを形成する。冷却空気は、通常は約0.3〜2.5m/秒の速度で、5℃〜25℃の範囲の温度でフィラメントに対して空気を向ける1つもしくはそれ以上の従来の冷却ボックスにより与えられる。本発明の方法の一実施形態において、両側冷却システムを用いている。冷却空気は、両側からフィラメントのカーテンへ向けられて、より均一な冷却がなされ、非対称(すなわち、片側)冷却を用いるときに生じ得る潜在的な捲縮の発現が減少または排除される。冷却工程中、フィラメントが互いに、またはジェットを通過しながらジェットの内壁へ粘着しないよう、フィラメントの温度は十分に下げる。例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)を紡糸するときは、フィラメントは、約150℃未満またはこれに等しいフィラメント温度まで冷却することができる。
【0027】
空気36は、延伸ジェット34に供給され、フィラメントに延伸張力を与え、紡糸口金面28近くで延伸(すなわち、一次延伸)できるようにさせる。延伸ジェットを出たフィラメント37は、レイダウンベルトまたは形成スクリーン38に付着して、連続フィラメントのウェブ40を形成する。本発明において、フィラメントは、空気延伸ジェット34に供給された空気36により張力をかけられながら再加熱される。フィラメントは、フィラメントが延伸(すなわち二次延伸)され、平均フィラメント直径が、ファイバーを再加熱しないときに得られる平均フィラメント直径に比べて少なくとも5パーセント、より好ましくは少なくとも10パーセント減少する温度まで再加熱される。しかしながら、再加熱工程においては、フィラメントが互いに接触するときに粘着し合ったり、延伸ジェットの内側壁に粘着するほど高い温度までフィラメントを加熱してはならない。例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)スパンボンドフィラメントを紡糸するとき、フィラメントを約70℃より高く225℃未満の温度まで加熱すると、ファイバー直径の所望の減少が得られることが分かった。延伸ジェットの空気速度および空気圧もまた、所望の二次ファイバー延伸がなされるよう十分な減衰力を与える十分なものとしなければならない。ファイバーのこの二次延伸は、空気延伸ジェットで、または延伸ジェットを出たほぼ直後に(フィラメントが空気延伸ジェットで再加熱されたか、または空気延伸ジェットを出た後かどうかに応じて)生じると考えられている。
【0028】
再加熱工程については、空気延伸ジェットに導入される空気36は、ファイバー直径の所望の減少がなされる十分な温度まで加熱することができる。しかしながら、大量の空気を加熱するのはコストが高くつくため、フィラメントが空気延伸ジェットを出た後に加熱するのが好ましい。好ましい実施形態において、フィラメントが空気延伸ジェットを出た後に、空気36により張力をかけながら、加熱手段により加熱される。図2に示す実施形態において、再加熱工程は、フィラメントが延伸ジェット34を出る際に、ノズル44を通して加熱空気42を、フィラメントのカーテンの両側に吹きかけることにより実施される。温風を用いる代わりに、照射加熱手段を空気ジェットの出口近傍に配置することができる。従来の赤外パネルヒーターが好適な加熱手段である。加熱手段は、好ましくは延伸ジェットの出口から20cm以内、より好ましくは延伸ジェットの出口から0.5cm以内に配置されている。空気延伸ジェットを出る空気の非放散速度は、この段階でフィラメントの二次延伸に寄与し、更に直径を減少させる。
【0029】
フィラメントは、単成分フィラメントまたは実質的に対称断面を有する多成分フィラメントであるのが好ましい。フィラメントが非対称断面を有する多成分フィラメントである場合には、異なるポリマー成分の異なる収縮のために再加熱工程中、捲縮を発現し、これが、再加熱工程において得られる二次延伸を減少または排除さえするものと考えられている。本発明の方法は、直径の小さなスパンボンドフィラメントを製造するのに特に好適である。これとは対照的に、ファイバー直径を減少させようとその他のプロセスパラメータを調整すると、上述した問題となる。フィラメント37の再加熱工程後の平均フィラメント直径は、好ましくは14.5マイクロメートル未満、より好ましくは約10マイクロメートル未満である。二次延伸工程においてフィラメントを延伸した後、レイダウンしてスパンボンドウェブを形成し、業界に知られているように場合によりボンドしてもよい。本発明の方法は、従来のスパンボンド設備で実施することができ、空気延伸ジェットの出口に加熱手段を挿入する、または空気延伸ジェットに導入された空気を加熱する源を提供する最低限の修正を行う。
【0030】
本発明の方法を用いて作成されたスパンボンドウェブは、二次延伸工程なしで作成したスパンボンドウェブよりも柔らかく、撓み性のある感触を有している。ファイバーサイズのみの減少に基づいて予測されるよりも意外にも高い感触の変化であった。理論に拘束されることは望むところではないが、再加熱および二次延伸工程で、スパンボンドファイバーを形成するポリマーの結晶モルホロジーを修正して、従来のスパンボンドプロセスにおいてスパンされるスパンボンドファイバーよりもより撓み性のある感触を与える。
【0031】
本発明の他の実施形態において、多層不織シートは、一連の、またはメルトブローダイと交互の多数のスピンブロックを用いて、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布を形成することにより作成することができる。任意の数のスパンボンドおよびメルトブローン層のレイドダウンして、多層不織シートを形成することができる。
【0032】
試験方法
上述の説明および後述の実施例において、以下の試験方法を用いて、様々な記録された特徴および特性を求めた。
【0033】
平均ファイバー直径は、光学顕微鏡により測定し、平均値としてマイクロメートルで記録してある。ファイバーは、ファイバーサイズを測定する光学スライドに装着した。各スパンボンド布地について、約100本のファイバーの直径を測定し平均した。ファイバー直径測定に用いたファイバーを、フィラメントが収集ベルトと接触する前に、フィラメントのカーテンの幅を超えて4つの異なる位置でファイバーを除去することにより手で集めた。約25本のファイバーを4つの収集位置の夫々から集めた。
【実施例】
【0034】
実施例1Aおよび1B
スパンボンド二成分シートをPET成分およびポリエステルコポリマー成分で作成した。PET成分の固有粘度は0.53dl/g(米国特許第4,743,504号の通りに測定)であった。デュポン(DuPont)よりクリスター(Crystar)(登録商標)ポリエステル(マージ(Merge)3949)として入手可能である。PET樹脂を120℃の空気温度でスルーエアードライヤーで乾燥して、ポリマー水分含有量50ppm未満とした。ポリエステルコポリマーは、イーストマンケミカルズ(Eastman Chemicals)よりマージ(Merge)PETG20372として入手可能な1,4−シクロヘキサンジメタノールで変性したポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーであった。別の押出し機で、PETポリマーは290℃まで加熱し、ポリエステルコポリマーは275℃まで加熱した。2つのポリマーを別々に押し出し、スピンパックアセンブリへと計量し、そこで2つの溶融ストリームを別々にろ過してから、分配プレートのスタックを通して組み合わせ、同心コア−シース断面を有する多列のフィラメントを提供した。PET成分はコアを形成し、ポリエステルコポリマー成分はシースを形成した。スピンパックアセンブリは、合計で3360の丸い毛管開口部からなっており、290℃まで加熱した。各毛管の直径は0.23mm、長さは0.92mmであった。ポリマー処理量は0.5g/穴/分であった。ファイバーは30重量パーセントのポリエステルコポリマーであった。
【0035】
フィラメントを交流形冷却(両側)で冷却し、ファイバーを矩形スロットジェットを通すことにより減衰力を与えた。ジェットの空気圧は70psigであった。
【0036】
二次温風延伸ユニットを、図2に示す通り、空気ジェットの出口の下約0.5cmに取り付けた。温風スロットは垂直方向に長さ0.5インチ(1.27cm)であり、空気延伸ジェットの全幅に延在していた。空気ジェットの出口は、フィラメントのカーテンの各側から約2インチ(5.08cm)に配置されていた。
【0037】
ジェットを出るファイバーを形成ベルトに集めた。ベルトの下に真空をかけて、レイダウン後ファイバーをベルトに留める補助とした。ベルト速度を調整して、秤量70g/mの不織シートを得た。ファイバーを、一組のエンボッサロールとアンビルロールとの間でサーマルボンドした。ボンディング条件は150℃ロール温度、直線1インチ当たり250ポンド(1メートル当たり4475kg)のニップ圧であった。シートをワインダーのロールに集めた。
【0038】
温風速度と二次温風延伸ユニットの温度の2つの異なる組み合わせを1Aおよび1Bに示す通りにして評価した。結果を表1に示す。
【0039】
比較例A
空気を二次延伸ユニットを通過させた以外は、実施例1Aおよび1Bと同一の条件で比較例Aを実施した。結果を表1に示す。
【0040】
実施例2Aおよび2B
PETポリマー(クリスター(Crystar)(登録商標)マージ(Merge)1988)、固有粘度が0.58dl/g)を両押出し機から供給して100%PETフィラメントを形成した以外は、実施例1に記載したプロセスを用いてスパンボンドウェブを作成した。温風速度と二次温風延伸ユニットの温度の2つの異なる組み合わせを2Aおよび2Bに示す通りにして評価した。結果を表1に示す。
【0041】
比較例B
空気を二次延伸ユニットを通過させた以外は、実施例2Aおよび2Bと同一の条件で比較例Bを実施した。結果を表1に示す。
【0042】
実施例3
PETポリマー(クリスター(Crystar)(登録商標)マージ(Merge)1988、固有粘度が0.58dl/g)を両押出し機から供給し、温風ジェットの代わりに赤外パネルを用いて二次延伸工程でフィラメントを加熱した以外は、実施例1に記載したプロセスを用いてスパンボンドウェブを作成した。2つの赤外ヒーターパネル(垂直方向に長さ10.16cm、空気延伸ジェットの全幅に延在している)を、空気延伸ジェットの出口下に取り付け、1つのパネルをジェットの出口のいずれかの側とした。赤外パネルは、クロマラックス(Chromalux)製セラミック赤外ヒーターパネルであり、表面温度は約1400°F(760℃)であった。パネルは、フィラメントのカーテンの各側から約3インチ(7.62cm)に配置されていた。結果を表1に示す。
【0043】
比較例C
赤外加熱工程を用いなかった以外は、実施例3と同一の条件下で比較例Cを実施した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】二成分スパンボンドウェブを製造するための従来のスパンボンド装置の側部立面図である。
【図2】空気延伸ジェットの出口下に加熱手段を含む本発明の方法を実施するための装置の一実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.単成分フィラメント、および対称断面を有し且つ少なくとも第1のポリマー成分と少なくとも第2のポリマー成分とを含んでなる多成分フィラメントよりなる群から選択された複数の連続ポリマーフィラメントを紡糸口金から溶融紡糸する工程と、
b.前記フィラメントを第1の延伸工程で延伸する工程と、
c.前記延伸したフィラメントを冷却する工程と、
d.前記冷却したフィラメントを空気延伸ジェットに通す工程と、
e.前記延伸ジェットにガス状ストリームを供給する工程であって、前記フィラメントおよびガス状ストリームが前記延伸ジェットを通過し出る際に前記ガス状ストリームが前記フィラメントに張力をかける工程と、
f.前記ガス状ストリームによってかけられた張力下で前記フィラメントを二次延伸工程で延伸するのに十分な温度まで前記フィラメントを加熱する工程であって、それにより前記フィラメントを加熱せずに二次延伸工程その他同一のプロセスにおいて延伸するときに得られる平均フィラメント直径に比べて少なくとも5パーセント平均フィラメント直径が減少する工程と、
g.前記フィラメントを収集表面に集めて不織ウェブを形成する工程と
を含んでなるスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程が、前記フィラメントが前記延伸ジェットを出る際に前記フィラメントに温風を吹きかけることを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱工程が、前記フィラメントが前記延伸ジェットを出る際に前記フィラメントを輻射熱に曝すことを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多成分フィラメントが、同心シース−コア断面を有する二成分フィラメントを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シースが、ポリエチレンおよびポリエステルコポリマーよりなる群から選択されたポリマーを含んでなり、前記コアが、ポリプロピレン、ポリエステルおよびポリアミドよりなる群から選択されたポリマーを含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シースが、ポリエチレンおよびポリエステルコポリマーよりなる群から選択されたポリマーを含んでなり、前記コアがポリエステルを含んでなる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コアが、ポリ(エチレンテレフタレート)を含んでなる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シースが、直鎖状低密度ポリエチレンを含んでなる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記シースが、ジ−メチルイソフタル酸で変性したポリ(エチレンテレフタレート)および1,4−シクロヘキサンジメタノールで変性したポリ(エチレンテレフタレート)よりなる群から選択されたポリエステルコポリマーを含んでなる請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記フィラメントの直径が、前記フィラメントを加熱せずに二次延伸工程において延伸するときに得られる平均フィラメント直径に比べて少なくとも10パーセント減少する請求項1または6に記載の方法。
【請求項11】
前記フィラメントを加熱せずに且つ二次延伸工程その他同一のプロセスにおいて延伸しないときに得られる平均フィラメント直径に比べて、二次延伸工程後に14.5マイクロメートル未満の平均フィラメント直径が得られる請求項1または6に記載の方法。
【請求項12】
前記二次延伸工程後に10マイクロメートル未満の平均フィラメント直径が得られる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記連続フィラメントが、単成分フィラメントを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記単成分フィラメントが、ポリエステルフィラメントを含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)を含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多成分フィラメントが、偶数の交互のセグメントを有するセグメント化されたパイ断面を有する二成分フィラメントを含んでなり、隣接するセグメントが異なるポリマーを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
隣接するポリマーセグメントの組み合わせが、ポリプロピレン/ポリスチレン、ポリプロピレン/ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリスチレン、ポリエチレン/ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエチレン/ポリアミド、ポリスチレン/ポリアミドおよびポリ(エチレンテレフタレート)/ポリアミドよりなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記隣接するポリマーセグメントの組み合わせが、ポリプロピレン/ポリ(エチレンテレフタレート)である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記隣接するポリマーセグメントの組み合わせが、ポリエチレン/ポリ(エチレンテレフタレート)である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
a.連続ポリマーフィラメントを紡糸する紡糸口金と、
b.前記紡糸口金の下に配置された冷却手段と、
c.前記冷却手段の下に配置されたフィラメント入口とフィラメント出口とを有する空気延伸ジェットであって、前記空気延伸ジェットに供給されるガス状ストリームと共にポリマーフィラメントが通過する空気延伸ジェットと、
d.前記フィラメントが前記延伸ジェットを出た後に、前記フィラメントを延伸するのに十分な温度まで前記ポリマーフィラメントを加熱する手段であって、前記延伸ジェットの前記出口下20cm以内に配置された加熱手段と、
e.不織ウェブを形成するための前記フィラメントを収集する収集表面と
を含んでなるポリマー連続フィラメントの不織ウェブを製造する装置。
【請求項21】
前記加熱手段が、温風ジェットを含んでなる請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記加熱手段が、輻射熱源を含んでなる請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記輻射熱源が赤外熱源を含んでなる請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記加熱手段が、前記延伸ジェットの前記出口から0.5cm以内に配置されている請求項21または22に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−534854(P2007−534854A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509750(P2007−509750)
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/015272
【国際公開番号】WO2005/108657
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】