説明

微細凹凸構造を表面に有する物品、およびその製造方法

【課題】表面の微細凹凸構造に欠陥が少ない高品質な物品を、安定的かつ容易に製造できる、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法を提供する。
【解決手段】微細凹凸構造を表面に有する金型6とフィルム7(基材)との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、フィルム7の表面に微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層12を形成することによって、微細凹凸構造を表面に有する物品14を製造する方法であって、活性エネルギー線硬化性組成物として、1分子鎖中におけるジメチルシロキサン構造の比率の低い成分の含有量が高い、ジメチルシロキサン構造とエチレンオキサイド構造を有するラジカル重合性シリコーンオイルモノマーと、他の重合性化合物とを含むものを用い、金型6として、表面積1m当りに付着したタンパク質が1000個以下である金型を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細凹凸構造を表面に有する物品、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する物品は、反射防止効果、ロータス効果等を発現することが知られている。特に、略円錐形状の凸部を並べたモスアイ構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から物品の材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となるため、ディスプレイ、自動車のメーターカバー、自動車のミラー等の表面における不要な光の反射を抑える反射防止物品への応用が期待されている。
【0003】
物品の表面に微細凹凸構造を形成する方法としては、微細凹凸構造を表面に有する金型と透明基材との間に液状の活性エネルギー線硬化性組成物を充填し、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、透明基材の表面に微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を形成する方法、いわゆる光インプリント法が注目されている。
また、該金型としては、簡便に製造できることから、複数の細孔を有する酸化皮膜をアルミニウム基材の表面に形成した金型が注目されている(特許文献1)。
【0004】
光インプリント法においては、金型の表面に欠陥があると、物品の表面にも欠陥が転写されてしまうため、金型の表面の欠陥を可能な限り少なくする必要がある。
しかし、金型の表面に欠陥がなくても、硬化樹脂層が形成された透明基材を金型から剥離する際に、金型の表面に硬化樹脂が付着してしまうと、硬化樹脂層の表面の微細凹凸構造に欠陥を生じてしまう場合がある。
そのため、該金型は、通常、微細凹凸構造が形成された側の表面が離型剤によって処理されている(特許文献2)。
【0005】
ところで、反射防止物品においては、高い外観品質が求められてきている。特に、特許文献1に記載されているような、微細凹凸構造が表面に形成されている反射防止物品は、反射防止性能に非常に優れているだけに、少しの欠陥でも容易に視認されてしまうおそれがある。
そのため、金型の表面の欠陥を低減するだけでなく、硬化樹脂層が形成された透明基材を金型から剥離する際にも、反射防止物品の表面に欠陥が生じさせない必要がある。
【0006】
しかし、特許文献2に記載の方法では、金型の表面に樹脂残りが発生することは防止できても、離型剤を処理する前に異物が付着することは防止できないため、該異物の転写による欠陥の発生は防止できない。
また、離型剤処理中または処理後(いずれも物品の製造前)に、金型の表面に異物が付着すると、異物の部分に離型剤が存在しないため、樹脂残りが発生しやすくなり、欠陥を低減させることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4406553号公報
【特許文献2】特開2007−326367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、表面の微細凹凸構造に欠陥が少ない高品質な物品を、安定的かつ容易に製造できる、微細凹凸構造を表面に有する物品、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討した結果、活性エネルギー線硬化性組成物にラジカル重合性シリコーンオイルモノマーが含まれる場合、欠陥が発生しやすいことを突き止めた。また、金型の表面に人(作業者)由来等のタンパク質(皮膚の一部等)が付着していると、前記モノマーがその部分に多く付着し、硬化樹脂層が形成された透明基材を金型から剥離する際に、該部分の硬化樹脂が金型の表面に付着してしまい、硬化樹脂層の表面の微細凹凸構造に欠陥を生じてしまうことが判明した。
【0010】
図1は、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーを含む活性エネルギー線硬化性組成物を用いて、微細凹凸構造を表面に有する物品を製造した際に、金型の表面に付着した付着物の電子顕微鏡写真である。この際に得られた物品の表面には、欠陥が多発し、その原因が金型の付着物によるものであった。また、顕微赤外吸収スペクトル分析の結果、図1中の付着物aは、タンパク質(図2)であり、図1中の付着物bは、硬化樹脂(図3)であることがわかった。
【0011】
また、顕微ラマンスペクトル分析の結果から、付着物b(図4)には、物品における正常な硬化樹脂層(図5)と比較して、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマー由来のジメチルシロキサン構造成分(C=Oのピーク強度に対するSi−O−Siのピーク強度)が、1.5倍程度多いことがわかった。
【0012】
さらに解析した結果、付着物a(タンパク質)は、物品の製造前の金型の表面にすでに付着しており、また、物品の製造の際に、先に付着した付着物aに、付着物b(硬化樹脂)が特異的に付着することも判明した。
【0013】
これらの結果から、活性エネルギー線硬化性組成物中において、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーに含まれる、1分子鎖中におけるジメチルシロキサン構造の比率の高い成分が凝集する傾向を有し、さらに、該成分が、金型の表面に付着した付着物a(タンパク質)に、それらとの何らかの相互作用によって付着することが、欠陥の発生原因となっていると推定された。
【0014】
しかし、金型の表面に付着するタンパク質を皆無とすることは困難であり、また、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーは、物品に高い撥水性が求められる用途においては、必要不可欠な成分である。
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーに含まれる、1分子鎖中におけるジメチルシロキサン構造の比率の低い成分の含有量を増やすとともに、金型の表面に付着するタンパク質の数を所定のレベルに制御することによって、上記の付着物aに対する付着物bの付着を制御することで、欠陥を飛躍的に低減させることが可能であることを見出した。
【0015】
また、一度発生した付着物bの一部は、賦形中に反射防止物品側に脱落すると考えられるが、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の残存二重結合基量を一定の範囲内にすることにより、同部分に硬化樹脂が再付着することを抑制することで、結果として、付着物bを減少させることができることも見出した。
これは、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化収縮に伴い、当該組成物に含まれる内部離型剤のブリードアウトが促進されることにより、金型表面に硬化樹脂が再付着することを抑制する効果があると考えられる。
その結果、ハイレベルなクリーン環境等を用いなくとも、表面の微細凹凸構造に欠陥が少ない高品質な物品を、安定的かつ容易に製造することを可能とし、本発明の製造方法を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明の、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、微細凹凸構造を表面に有する金型と基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記基材の表面に前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を形成することによって、微細凹凸構造を表面に有する物品を製造する方法であって、
前記活性エネルギー線硬化性組成物が、下記式(1)で表されるラジカル重合性シリコーンオイルモノマーと、該モノマーと共重合可能な重合性化合物とを含み、
前記ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーが、前記式(1)のnと(m+o)との比(n/(m+o))が0.18〜0.85の範囲である成分を90質量%以上含み、
前記金型として、表面積1m当りに付着したタンパク質が1000個以下である金型を用いることを特徴とする。
【0017】
【化1】

【0018】
式(1)中、m、nおよびoは、それぞれ1以上の整数である。
前記ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーのSP値と、前記重合性化合物のSP値との差の絶対値は、1.6Mpa1/2以下であることが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の赤外吸収スペクトルにおける波数1635cm−1のピークの吸収強度(P)と波数1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)は、0.017〜0.020の範囲であることが好ましい。
本発明の物品は、硬化性組成物の硬化物からなる微細凹凸構造を表面に有する物品であって、前記硬化性組成物の硬化物の赤外吸収スペクトルにおける波数1635cm−1のピークの吸収強度(P)と波数1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)が、0.017〜0.020の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法によれば、表面の微細凹凸構造に欠陥が少ない高品質な物品を、安定的かつ容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】金型の表面に付着した付着物の電子顕微鏡写真である。
【図2】金型の表面に付着した付着物a(タンパク質)の顕微赤外吸収スペクトルである。
【図3】金型の表面に付着した付着物b(硬化樹脂)の顕微赤外吸収スペクトルである。
【図4】金型の表面に付着した付着物a(タンパク質)の顕微ラマンスペクトルである。
【図5】金型の表面に付着した付着物b(硬化樹脂)の顕微ラマンスペクトルである。
【図6】陽極酸化ポーラスアルミナを表面に有する金型の製造工程を示す断面図である。
【図7】微細凹凸構造を表面に有する物品の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】微細凹凸構造を表面に有する物品の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<物品の製造方法>
本発明の、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、微細凹凸構造を表面に有する金型と基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記基材の表面に前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を形成し、硬化樹脂層が表面に形成された基材と、金型とを分離する方法である。
【0022】
〔基材〕
基材の形状としては、フィルム、シート、射出成形品、プレス成形品等が挙げられる。
基材としては、金型が後述するアルミニウム基材の表面に陽極酸化ポーラスアルミナを有する金型である場合、活性エネルギー線を透過し得る透明基材を用いる。
透明基材の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、ガラス等が挙げられる。
【0023】
〔金型〕
モールドの製造方法としては、例えば、下記の方法(α)または方法(β)が挙げられる。大面積化が可能であり、かつ作製が簡便である点から、方法(α)が特に好ましい。
方法(α):アルミニウム基材の表面に、複数の細孔を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)を形成する方法。
方法(β):モールド基材(金属、石英、樹脂等)の表面にリソグラフィ法等によって微細凹凸構造を直接形成する方法。
【0024】
方法(α)としては、光インプリント法による、モスアイ構造を表面に有する物品の製造に好適な金型が得られる点から、下記の工程(I)〜(II)を有する方法が好ましい。
工程(I):アルミニウム基材の表面を陽極酸化し、複数の細孔からなる微細凹凸構造を有する酸化皮膜を形成し、金型本体を得る工程。
工程(II):金型本体の微細凹凸構造が形成された側の表面を、表面に存在する官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する工程。
【0025】
(工程(I))
工程(I)において酸化皮膜を形成する方法としては、下記の工程(a)〜(f)を有する方法が好ましい。
工程(a):アルミニウム基材を電解液中で陽極酸化して、アルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
工程(b):工程(a)の後、アルミニウム基材を、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に浸漬して酸化皮膜を除去する工程。
工程(c):工程(b)の後、アルミニウム基材を電解液中で再度陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
工程(d):工程(c)の後、アルミニウム基材を、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して細孔の径を拡大させる工程。
工程(e):工程(d)の後、アルミニウム基材を電解液中で再度陽極酸化する工程。
工程(f):工程(d)と工程(e)を繰り返し行い、複数の細孔を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)がアルミニウム基材の表面に形成された金型本体を得る工程。
【0026】
工程(a):
図6に示すように、切削加工されたアルミニウム基材1を定電圧下、電解液中で陽極酸化すると、細孔2を有する酸化皮膜3が形成される。
アルミニウム基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
また、アルミニウム基材は、表面状態を平滑化にするために、機械研磨、羽布研磨、化学的研磨、電解研磨処理(エッチング処理)等で研磨されることが好ましい。また、アルミニウム基材は、所定の形状に切削加工する際に用いた油が付着していることがあるため、陽極酸化の前にあらかじめ脱脂処理されることが好ましい。
【0027】
アルミニウムの純度は、99質量%以上が好ましく、99.5質量%以上がより好ましく、99.8質量%以上がさらに好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0028】
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、平均間隔が100nmの規則性の高い細孔を有する酸化皮膜を得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても、規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0029】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、平均間隔が63nmの規則性の高い細孔を有する酸化皮膜を得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0030】
工程(b):
図6に示すように、酸化皮膜3を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点4にすることで細孔の規則性を向上することができる。
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0031】
工程(c):
図6に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材1を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔2を有する酸化皮膜3が形成される。
陽極酸化条件は、特に限定はないが、例えば、工程(a)と同様な条件または工程(a)より短い時間条件とする。
【0032】
工程(d):
図6に示すように、細孔2の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して、陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0033】
工程(e):
図6に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔2の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔2がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0034】
工程(f):
図6に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔2を有する酸化皮膜3が形成され、アルミニウム基材1の表面に陽極酸化ポーラスアルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜)を有する金型本体5が得られる。最後は工程(d)または工程(e)のいずれで終了してもよいが、工程(d)で終了することが好ましい。
【0035】
(工程(II))
工程(II)においては、工程(I)で得られた金型本体の微細凹凸構造が形成された側の表面を、表面に存在する官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理する。
【0036】
官能基(A)とは、後述の離型剤が有している反応性の官能基(B)と反応して、化学結合を形成し得る基を意味する。
官能基(A)としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基、エステル基、等が挙げられ、後述の離型剤が反応性の官能基(B)として有することが多い加水分解性シリル基との反応性がよい点から、水酸基が特に好ましい。
官能基(A)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金がもともと有しているものでもよく、導入したものでもよい。
【0037】
官能基(B)とは、官能基(A)と反応して化学結合を形成し得る基または該基に容易に変換し得る基を意味する。
官能基(A)が水酸基の場合の官能基(B)としては、加水分解性シリル基、シラノール基、チタン原子またはアルミニウム原子を含む加水分解性基、等が挙げられ、水酸基との反応性がよい点から、加水分解性シリル基またはシラノール基が好ましい。加水分解性シリル基とは、加水分解によってシラノール基(Si−OH)を生成する基であり、Si−OR(Rはアルキル基である。)、Si−X(Xはハロゲン原子である。)等が挙げられる。
【0038】
離型剤としては、官能基(B)を有するシリコーン樹脂、官能基(B)を有するフッ素樹脂、官能基(B)を有するフッ素化合物等が挙げられ、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物が特に好ましい。加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の市販品としては、フルオロアルキルシラン、KBM−7803(信越化学工業社製)、「オプツール」シリーズ(ダイキン工業社製)、ノベックEGC−1720(住友3M社製)等が挙げられる。
【0039】
離型剤による処理方法としては、下記の方法(γ)または方法(δ)が挙げられ、金型本体の微細凹凸構造が形成された側の表面をムラなく離型剤で処理できる点から、方法(γ)が特に好ましい。
方法(γ):離型剤の希釈溶液に金型本体を浸漬する方法。
方法(δ):離型剤またはその希釈溶液を、金型本体の微細凹凸構造が形成された側の表面に塗布する方法。
【0040】
方法(γ)としては、下記の工程(g)〜(k)を有する方法が好ましい。
工程(g):金型本体を水洗する工程。
工程(h):工程(g)の後、金型本体にエアーを吹き付け、金型本体の表面に付着した水滴を除去する工程。
工程(i):加水分解性シリル基を有するフッ素化合物をフッ素系溶媒で希釈した希釈溶液に、官能基(A)を表面に有する金型本体を浸漬する工程。
工程(j):浸漬した金型本体をゆっくりと溶液から引き上げる工程。
工程(k):必要に応じて、工程(j)よりも後段にて金型本体を乾燥させる工程。
【0041】
工程(g):
金型本体には、微細凹凸構造を形成する際に用いた薬剤(細孔径拡大処理に用いたリン酸水溶液、リソグラフィ法に用いた剥離液等)、不純物(埃や作業者由来の異物等)等が付着しているため、水洗によってこれを除去する。
【0042】
工程(h):
金型本体の表面に水滴が付着していると、工程(i)の希釈溶液が劣化するため、金型本体にエアーを吹き付け、目に見える水滴はほぼ除去する。
【0043】
工程(i):
希釈用のフッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロポリエーテル、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の濃度は、希釈溶液(100質量%)中、0.01〜0.5質量%が好ましい。
浸漬時間は、1〜30分が好ましい。
浸漬温度は、0〜50℃が好ましい。
【0044】
工程(j):
浸漬した金型本体を溶液から引き上げる工程では、電動引き上げ機などを使用して、一定速度で引き上げ、引き上げ時の揺動を抑えることが好ましい。これにより塗布ムラを少なく出来る。
引き上げ速度は、1〜10mm/secが好ましい。
【0045】
工程(k):
工程(j)よりも後段にて金型本体を風乾させてもよく、乾燥機等で強制的に加熱乾燥させてもよい。
乾燥温度は、50〜150℃が好ましい。
乾燥時間は、5〜300分が好ましい。
【0046】
以上説明した金型の製造方法にあっては、金型本体の微細凹凸構造が形成された側の表面の官能基(A)と反応し得る官能基(B)を有する離型剤で処理することで、離型剤を金型本体の表面に十分に定着させることができる。
【0047】
(タンパク質)
工程(I)および工程(II)においては、人(作業者)由来等のタンパク質(皮膚の一部等)が金型の表面に付着しやすく、それらが付着していると、上述した通り、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーに含まれる、1分子鎖中におけるジメチルシロキサン構造の比率の高い成分が付着しやすくなり、それらの硬化物が物品に転写されて、欠陥を生じやすくなる。
【0048】
金型の表面に付着するタンパク質の大きさ(長径)は、人(作業者)由来等のタンパク質であれば10〜100μmの範囲であって、その数が少ないほど欠陥の発生を抑制できる。よって、本発明においては、金型として、表面積1m当りに付着したタンパク質が1000個以下である金型を用いる。タンパク質が1000個以下であれば、物品の製造開始初期に欠陥が多発しても、その後、金型の表面に付着した硬化樹脂が脱落する等によって欠陥が減少するため、物品の製造開始初期以外においては、欠陥の少ない物品を得ることができるようになる。タンパク質の数は、金型の表面積1m当りに換算して、700個以下が好ましく、300個以下がより好ましく、100個以下がさらに好ましい。
【0049】
タンパク質が原因となる金型の表面への硬化樹脂の付着は、タンパク質を核としてラジカル重合性シリコーンオイルモノマーが集合し、成長することによって発生する。よって、タンパク質の数は、下記のようにして求める。
微細凹凸構造を表面に有する金型と基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、基材の表面に微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を形成し、硬化樹脂層が表面に形成された基材と、金型とを分離して、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る。該物品の表面の欠陥を目視で確認し、さらに該欠陥に対応する金型の表面に付着した付着物(硬化樹脂)を光学検査することによってタンパク質の核の有無を検出し、該核がある付着物(硬化樹脂)の数を、金型の表面に付着するタンパク質の数とする。
【0050】
〔活性エネルギー線硬化性組成物〕
活性エネルギー線硬化性組成物は、下記式(1)で表されるラジカル重合性シリコーンオイルモノマーと、該モノマーと共重合可能な重合性化合物(以下、他の重合性化合物と記す。)と、必要に応じて重合開始剤とを含む。
【0051】
(ラジカル重合性シリコーンオイルモノマー)
硬化樹脂層の微細凹凸構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性組成物として、シリコーン系化合物を含む組成物を用いる。
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等のラジカル重合性シリコーンオイルモノマーが挙げられる。
【0052】
ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーは、下記式(1)で表されるジメチルシロキサン構造とエチレンオキサイド構造を有するものである。
【0053】
【化2】

【0054】
式(1)中、m、nおよびoは、それぞれ1以上の整数である。
ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーは、nと(m+o)との比(n/(m+o))が0.18〜0.85の範囲である成分を90質量%以上含む必要がある。
n/(m+o)が0.18未満の成分は、物品の表面の撥水性を低下させ、n/(m+o)が0.85を超える成分は、金型の表面に付着したタンパク質に付着しやすい。よって、n/(m+o)が0.18〜0.85の範囲である成分を90質量%以上含めば、物品の表面の撥水性を低下させることなく、物品の表面の欠陥を抑えることができる。n/(m+o)が0.18〜0.85の範囲である成分の割合は、95質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
【0055】
n/(m+o)が0.18〜0.85の範囲である成分の割合は、例えば、下記のようにして求める。
分取液体クロマトグラフによってラジカル重合性シリコーンオイルモノマーを複数(好ましくは6以上)のフラクションに分け、各フラクションについて、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)等を用いて数平均分子量を求める。
前記各フラクションの赤外吸収スペクトルを測定し、n成分のピーク(例えば、波数2960cm−1付近のピーク)強度と(m+o)成分のピーク(例えば、波数2870cm−1付近のピーク)強度それぞれの基準ピーク(例えば、1725cm−1付近のピーク)の強度に対する比を求める。
事前にnおよび(m+o)が既知のサンプルから前記赤外吸収スペクトルによるそれぞれのピーク強度比を求めておけば、前記フラクションについて、前記分子量と前記ピーク強度比をもとに、nおよび(m+o)を算出することができる。そして、全フラクションの質量に対する、n/(m+o)が0.18〜0.85の範囲である成分(フラクション)の質量割合を算出する。
【0056】
ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーのSP値(溶解度パラメータ)と、活性エネルギー線硬化性組成物中の他の重合性化合物のSP値との差の絶対値は、1.6Mpa1/2以下であることが好ましい。SP値の差の絶対値が1.6Mpa1/2を超えると、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーが活性エネルギー線硬化性組成物中で凝集しやすくなる。その結果、金型の表面に付着したタンパク質にラジカル重合性シリコーンオイルモノマーが付着しやすくなり、物品の表面に欠陥を生じやすくなる。
SP値の計算には、例えば、富士通社製の計算化学ソフトScigressを用いることができる。
【0057】
(他の重合性化合物)
他の重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
【0058】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
【0061】
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
【0062】
(重合開始剤)
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
熱硬化反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
【0065】
重合開始剤の量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤の量が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。重合開始剤の量が10質量部を超えると、硬化樹脂が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
【0066】
(内部離型剤)
離型性をさらに向上させる目的で、また、前述の通り、金型への硬化樹脂の再付着を防止するために、活性エネルギー線硬化性組成物には、内部離型剤を配合することが好ましい。
内部離型剤の量は、活性エネルギー線硬化性組成物の本質的な効果に影響しない範囲、例えば、組成物全量中に0.01〜10質量部含むことが好ましい。
【0067】
内部離型剤としては従来公知のフッ素含有化合物、シリコーン系化合物、リン酸エステル系化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス等が使用可能である。
また、これらの内部離型剤をモールドに付着させておくこともできる。
これらの内部離型剤の具体例としては、以下の通りである。
<大日本インキ化学工業社製:>
メガファックR−08、F−470、XRB−4、F−444、F−477、F−482、F−483、F−480SF、F−493、MCF−350SF
<ダイキン工業社製:>
オプツールDAC
<ソルベイソレクシス社製:>
フルオロリンク5105X、MD500、MD700、D10H、E10H、L10H
<ユニマテック社製:>
ケミノックスFA−4、FA−6、FA−8、FAAC−4、FAAC−6、FAAC−8、FAMAC−4、FAMAC−6、FAMAC−8、PFHE、PFOE
<信越化学工業社製:>
X−22−1602、X−22−4039、X−22−4015、KF−99、KF−9901、X−22−160AS、KF−1601、KF−1602、KF−1603、X−22−4952、X−22−4272、X−22−6266、X−22−170BX、
X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176F、KF−351A、
KF−352A、KF−410、KF−412、FL−100−100cs、KF−414、X−22−1877、サーフィノール465
<東レ・ダウコーニング社製:>
SH550、SH710、BY16−846、BY16−201、SR2411
<城北化学社製:>
JP−302、JP−308E、JP−312L、JP−502、JP−504、JP−506H、JP−508、JC−224
<アクセル社製:>
モールドウイズINT−AM121、INT−1285N、INT−1856
<日光ケミカル社製:>
DDP−10、TLP−4、TDP−10
<花王社製:>
エマルゲンLS−106、LS−110、LS−114、MS−110
<日本油脂社製:>
ノニオンK−220、K−230、LT−221、ディスパノールTOC
【0068】
(他の成分)
活性エネルギー線硬化性組成物は、必要に応じて、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物、帯電防止剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、少量の溶媒を含んでいてもよい。
【0069】
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
【0070】
アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
アルキルシリケート化合物としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
【0072】
〔製造装置〕
微細凹凸構造を表面に有する物品は、例えば、図7に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
表面に微細凹凸構造を有するロール状の金型6と、金型6の回転に同期して金型6の表面に沿って移動する帯状のフィルム7(透明基材)との間に、タンク8から活性エネルギー線硬化性組成物を供給する。
金型6は、内部に過冷却装置を具備したり、熱冷媒を通すなどして温度調整できる機能を備えていることが好ましい。
【0073】
金型6と、空気圧シリンダ9によってニップ圧が調整されたニップロール10との間で、フィルム7および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、フィルム7と金型6との間に均一に行き渡らせると同時に、金型6の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0074】
金型6の下方に設置された活性エネルギー線照射装置11から、フィルム7を通して活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させることによって、金型6の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層12を形成する。
剥離ロール13により、硬化樹脂層12が表面に形成されたフィルム7を金型6から剥離することによって、図8に示すような物品14を得る。
【0075】
活性エネルギー線照射装置11としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
【0076】
〔物品〕
硬化樹脂層12は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
アルミニウム基材の表面を陽極酸化して得られた金型を用いた場合の物品14の表面の微細凹凸構造は、酸化皮膜の複数の細孔からなる微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる複数の凸部15を有する。
【0077】
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0078】
凸部間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下が好ましい。陽極酸化ポーラスアルミナの金型を用いて凸部を形成した場合、凸部間の平均間隔は100nm程度となることから、200nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。
凸部間の平均間隔は、凸部の形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0079】
凸部のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。凸部のアスペクト比が1.0以上であれば、反射率が十分に低くなる。凸部のアスペクト比が5.0以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
凸部の高さは、電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
【0080】
凸部の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最表面から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。
【0081】
本発明においては、硬化樹脂層12の残存二重結合基量が一定範囲内であることが好ましい。前述の通り、硬化樹脂層12の残存二重結合基量を一定範囲内に制御することで、硬化樹脂の再付着を抑制することができる。
【0082】
残存二重結合基量の測定方法は、赤外吸収スペクトル法、ラマンスペクトル法、ヨウ素吸着によるX線光電子スペクトル法など、特に限定されないが、測定の簡易性から、赤外吸収スペクトル法が好ましい。
赤外吸収スペクトルを利用する場合、例えば、波数1650〜1605cm−1の範囲に現れる最も強いピーク(以下「1635cm−1のピーク」という)の強度(P)と波数1800〜1650cm−1の範囲に現れる最も強いピーク(以下「1725cm−1のピーク」という)の強度(Q)との比(P/Q)を指標とすることができる。
1635cm−1のピークは、残存二重結合基(不飽和C=C結合)に帰属され、当該ピークが大きいほど、残存二重結合基量が多いことを示唆する。
一方、1725cm−1のピークは、エステル構造等のC=O結合に帰属される相対比較するための基準ピークである。
前記スペクトルは、透過率または反射率によるものや、それらを吸光度に変換したものなどを使用することができる。
【0083】
赤外吸収スペクトルの測定方法は、透過法、反射法、全反射法(以下、「ATR法」という)等、特に限定されないが、反射防止物品を非破壊で測定できる利点から、ATR法が好ましい。
ATR法で測定する場合、プリズムには、ジンクセレン、ゲルマニウム、ダイヤモンド等を使用することができる。
また、全反射法で測定された赤外吸収スペクトルをそのまま解析に使用してもよいし、ピーク強度の波長依存性を補正したスペクトルを使用してもよい。
1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)が大きいほど、残存二重結合基量が多いことを示唆する。
【0084】
本発明においては、ダイヤモンドプリズムを使用して測定し、得られた赤外吸収スペクトルを補正しないまま吸光度に変換して解析に使用した場合、1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)が、0.017〜0.020の範囲であれば、硬化樹脂が金型表面に再付着しにくくなり好ましい。
活性エネルギー線硬化性組成物の開始剤量や金型6の温度、活性エネルギー線の光照射エネルギー量等を調整することにより、硬化樹脂層の残存二重結合基量を調整することができる。
【0085】
硬化樹脂層12の屈折率とフィルム7の屈折率との差は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。屈折率差が0.2以下であれば、硬化樹脂層12とフィルム7との界面における反射が抑えられる。
【0086】
表面に微細凹凸構造を有する場合、その表面が疎水性の材料から形成されていればロータス効果により超撥水性が得られることが知られている。
硬化樹脂層12の材料が疎水性の場合の微細凹凸構造の表面の水接触角は、90゜以上が好ましく、110゜以上がより好ましく、120゜以上が特に好ましい。水接触角が90゜以上であれば、水汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。また、水が付着しにくいため、着氷防止を期待できる。
【0087】
〔作用効果〕
以上説明した本発明の、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法にあっては、n/(m+o)が0.18〜0.85の範囲である成分を90質量%以上含むラジカル重合性シリコーンオイルモノマーを含む活性エネルギー線硬化性組成物を用いているため、ハイレベルなクリーン環境等を用いず、タンパク質が表面積1m当りに1000個以下付着した金型を用いても、金型の表面に硬化樹脂が付着しにくいため、欠陥の少ない高品質な物品を安定的かつ容易に製造できる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0089】
〔実施例1〕
(金型)
直径200mm、長さ300mmのアルミニウム円筒(純度99.99質量%)を、ヘキサンに30分間浸漬した後、アセトンに30分間浸漬して脱脂洗浄した。
【0090】
工程(a):
該アルミニウム円筒について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30分陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム円筒を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に4時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
工程(c):
該アルミニウム円筒について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
【0091】
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム円筒を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
該アルミニウム円筒について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
【0092】
工程(f):
前記工程(d)および工程(e)を合計で4回繰り返し、最後に工程(d)を行って、金型本体を得た。
【0093】
工程(g):
金型本体を水洗した。
工程(h):
金型本体にエアーを吹き付けて、表面に付着した水滴を除去した。
工程(i):
加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の0.1質量%をフッ素系溶媒で希釈した温度18℃の溶液(ダイキン工業社製、オプツール)に、金型本体を10分間浸漬した。
【0094】
工程(j):
浸漬した金型本体をゆっくりと溶液から引き上げた。
工程(k):
金型本体を24時間風燥させ、微細凹凸構造を表面に有するロール状の金型を得た。
金型の表面には、長径10〜100μmのタンパク質が、表面積1m当りに換算して300個付着していた。
【0095】
(活性エネルギー線硬化性組成物)
活性エネルギー線硬化組成物の原料とその配合量を以下に示す。
・モノマー:トリメチロールエタンアクリル酸・無水コハク酸縮合エステル(45質量部)。
・モノマー:ヘキサンジオールジアクリレート(45質量部)。
・モノマー:ラジカル重合性シリコーンオイルモノマー(10質量部)。
・光重合開始剤:「イルガキュア184」(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、3.0質量部)。
・光重合開始剤:「イルガキュア819」(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、0.2質量部)。
・内部離型剤「INT1856」(アクセル社製、0.1質量部)
【0096】
ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーは、1分子鎖中のジメチルシロキサンのユニット数に対するエチレンオキサイドのユニット数の比(n/(m+o))が0.18〜1.32の範囲であり、n/(m+o)が0.18〜0.85の範囲である成分を92質量%含んでいた。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーのSP値とトリメチロールエタンアクリル酸・無水コハク酸縮合エステルのSP値との差の絶対値は、1.5Mpa1/2であり、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーのSP値とヘキサンジオールジアクリレートのSP値との差の絶対値は、0.8Mpa1/2であった。
SP値は、富士通社製Scigress2.1.0を用いて計算した。
【0099】
図7に示す製造装置、前記金型、および前記活性エネルギー線硬化性組成物、透明基材(三菱樹脂社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム、290mm幅、38μm厚)を用い、ライン速度7m/minにて、透明基材の表面に硬化樹脂層(10μm厚、220m幅)を形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を製造した。
活性エネルギー線として、光照射エネルギー量1100mJ/cmの紫外線を照射距離80mmで金型表面の透明基材に照射した。
また、金型内部には、35〜40℃の温水を供給し、金型表面の温度をモニターした。
前記温度モニターは、金型幅方向の硬化樹脂層が形成される外側の金型外周方向の表面の1箇所に温度センサーを取り付けて、同箇所の1回転分の温度を連続的に読み取った。
【0100】
その結果、物品の製造開始初期(製造長60m付近)に最も多発した欠陥の数は、物品の表面積1m当りに換算して15個以下であった。
その時の活性エネルギー線硬化性組成物が硬化する間の金型表面温度は、1秒間に50℃から58℃まで上昇していた。
【0101】
物品の1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)の値は、以下の方法で求めた。
まず、サーモフィッシャー(株)製ニコレーMAGNA−IR860赤外吸収スペクトル測定装置にダイヤモンド製プリズムユニットを取り付け、反射防止物品表面(硬化樹脂層表面)の赤外吸収スペクトルをATR法により得た。
積算回数は64回、分解は4cm−1とした。
前記測定で得られたスペクトル(補正なし)を吸光度に変換し、1635cm−1のピークの吸収強度(P)を1725cm−1のピークの吸収強度(Q)で除した値(P/Q)を求めた。
1635cm−1のピークの吸収強度(P)は、波数1650cm−1の位置を示す縦軸の罫線とスペクトルが交差する点と波数1605cm−1の位置を示す縦軸の罫線とスペクトルが交差する点とを直線(ベースライン)で結び、当該ピークの頂点から、当該ベースラインと交差する点まで垂線を引き、その線分とした。
1725cm−1のピークの吸収強度は、波数1800cm−1の位置を示す縦軸の罫線とスペクトルが交差する点と波数1650cm−1の位置を示す縦軸の罫線とスペクトルが交差する点とを直線(ベースライン)で結び、当該ピークの頂点から、当該ベースラインと交差する点まで垂線を引き、その線分とした。
その結果、1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)は、0.0199であった。
【0102】
その後、欠陥の数は減少を続け、製造長200m以降では、物品の表面積1m当りに換算して0〜7個となり、非常に欠陥の少ない物品を得ることができた。
また、活性エネルギー線硬化性組成物が硬化する間の金型表面温度は、1秒間に53℃から60℃まで上昇していた。
物品の1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)を前記と同じ方法で測定した結果、0.0182であった。
全ての結果を表2に示す。
【0103】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして金型を得た。金型の表面には、長径10〜100μmのタンパク質が、表面積1m当りに換算して600個付着していた。
ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーは、1分子鎖中のジメチルシロキサンのユニット数に対するエチレンオキサイドのユニット数の比(n/(m+o))が0.18〜1.32の範囲であり、n/(m+o)が0.18〜0.85の範囲である成分を85質量%含んでいた。結果を表1に示す。
前記ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーのSP値とトリメチロールエタンアクリル酸・無水コハク酸縮合エステルのSP値との絶対値は、1.6Mpa1/2であり、ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーのSP値とヘキサンジオールジアクリレートのSP値との差の絶対値は、0.9Mpa1/2であった。
SP値は、富士通社製Scigress2.1.0を用いて計算した。
該金型および活性エネルギー線硬化性組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、微細凹凸構造を表面に有する物品を製造した。
【0104】
その結果、物品の製造開始初期(製造長60m付近)に最も多発した欠陥の数は、物品の表面積1m当りに換算して200個以下であった。
また、活性エネルギー線硬化性組成物が硬化する間の金型表面温度は、1秒間に50℃から54℃まで上昇していた。
物品の1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)を実施例1と同じ方法で測定した結果、0.0189であった。
その後、欠陥の数は減少を続け、製造長200m以降では、物品の表面積1m当りに換算して7〜15個となり、欠陥の少ない物品を得ることができた。
その時の活性エネルギー線硬化性組成物が硬化する間の金型表面温度は、1秒間に52℃から56℃まで上昇していた。
物品の1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)を前記と同じ方法で測定した結果、0.0185であった。
全ての結果を表2に示す。
【0105】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして金型を得た。金型の表面には、長径10〜100μmのタンパク質が、表面積1m当りに換算して15000個付着していた。
光重合開始剤:「イルガキュア819」(チバ・スペシャリティケミカルズ社製)を0.2質量部から0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
該金型および活性エネルギー線硬化性組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、微細凹凸構造を表面に有する物品を製造した。
【0106】
その結果、物品の製造開始初期(賦形長60m付近)に最も多発した欠陥の数は、物品の表面積1m当りに換算して4000個以上であった。
また、活性エネルギー線硬化性組成物が硬化する間の金型表面温度は、1秒間に54℃から58℃まで上昇していた。
物品の1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)を実施例1と同じ方法で測定した結果、0.0193であった。
その後、欠陥の数は減少傾向を示したものの、製造長200m時点では、物品の表面積1m当りに換算して400個以上あり、製造長800m以降でも、物品の表面積1m当りに換算して100個を下回ることはなく、非常に欠陥の多い物品しか得られなかった。
製造長200m時点での活性エネルギー線硬化性組成物が硬化する間の金型表面温度は、1秒間に55℃から59℃まで上昇していた。
製造長200m時点での物品の1635cm−1のピークの吸収強度(P)と1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)を上記と同じ方法で測定した結果、0.0197であった。
全ての結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の製造方法で得られた、微細凹凸構造を表面に有する物品は、ディスプレイ、道路標識、ミラー等の表面における不要な光の反射を抑える反射防止物品として有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 アルミニウム基材
2 細孔
3 酸化皮膜
4 細孔発生点
5 金型本体
6 金型
7 フィルム
8 タンク
9 空気圧シリンダ
10 ニップロール
11 活性エネルギー線照射装置
12 硬化樹脂層
13 剥離ロール
14 物品
15 凸部
a 金型表面に付着したタンパク質
b 金型表面に付着した硬化樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細凹凸構造を表面に有する金型と基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記基材の表面に前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を形成することによって、微細凹凸構造を表面に有する物品を製造する方法であって、
前記活性エネルギー線硬化性組成物が、下記式(1)で表されるラジカル重合性シリコーンオイルモノマーと、該モノマーと共重合可能な重合性化合物とを含み、
前記ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーが、前記式(1)のnと(m+o)との比(n/(m+o))が0.18〜0.85の範囲である成分を90質量%以上含み、
前記金型が、表面積1m当りに付着したタンパク質が1000個以下である、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
【化1】

式(1)中、m、nおよびoは、それぞれ1以上の整数である。
【請求項2】
前記ラジカル重合性シリコーンオイルモノマーのSP値と、前記重合性化合物のSP値との差の絶対値が、1.6Mpa1/2以下である、請求項1に記載の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の赤外吸収スペクトルにおける波数1635cm−1のピークの吸収強度(P)と波数1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)が、0.017〜0.020の範囲である、請求項1または2に記載の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
【請求項4】
硬化性組成物の硬化物からなる微細凹凸構造を表面に有する物品であって、前記硬化性組成物の硬化物の赤外吸収スペクトルにおける波数1635cm−1のピークの吸収強度(P)と波数1725cm−1のピークの吸収強度(Q)の比(P/Q)が、0.017〜0.020の範囲である、微細凹凸構造を表面に有する物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−7997(P2013−7997A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34184(P2012−34184)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】