説明

微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法

【課題】モールドの微細凹凸構造の転写性が良好であり、硬化物層に残存する気泡が抑えられ、基材としてプラスチックを用いることができ、しかも製造時間を短縮できる、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法を提供する。
【解決手段】モールド40の微細凹凸構造側の表面にアルコキシシラン、その加水分解物、縮合物の1種以上と光感応性酸発生剤とレベリング剤とを含む塗布液を塗布して塗布液層24を形成する工程、塗布液層24を部分硬化させてナノインデンテーション測定において、0.4mN試験荷重がかかった時の押し込み深さが、0.18μm以上である部分硬化物層26を形成する工程、部分硬化物層26を介してモールド40と基材10とを重ね、部分硬化物層26に活性エネルギー線を照射して硬化物層20を形成する工程、モールド40を離型する工程を有する物品1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細凹凸構造を表面に有するモールドと基材との間に硬化性組成物を挟持し、これを硬化させて、モールドの微細凹凸構造が転写された硬化物層を基材の表面に形成する方法、いわゆるインプリント法が注目されている。
【0003】
また、硬化性組成物としてアルコキシシラン等の金属有機化合物を含む塗布液を用いた下記の方法が知られている(例えば、特許文献1)。
基材およびまたはモールドの表面に、アルコキシシランを含む塗布液を塗布して塗布液層を形成し;塗布液層を介して基材とモールドとを重ねた後、塗布液層を加熱して部分硬化させて部分硬化物層を形成し;部分硬化物層からモールドを離型した後、基材の表面の部分硬化物層を高温にて焼成してガラス体からなる硬化物層を形成して、微細凹凸構造を有する硬化物層が基材の表面に形成された物品を製造する方法。
【0004】
しかし、この方法には、下記の問題がある。
(i)塗布液は、アルコキシシランのゾルが加水分解・縮合反応によってゲルの状態になっているため、ゲルがモールドの微細凹凸構造に十分に追随できず、モールドの微細凹凸構造の転写性が悪い。
(ii)モールドと基材との間に塗布液層を挟持した状態で部分硬化を行うため、アルコキシシランの加水分解・縮合反応によって発生するアルコール類や水、塗布液の溶媒が、部分硬化物層に気泡として残存し、これが硬化物層に残存する。
(iii)部分硬化物層を高温にて熱硬化させて硬化物層を形成しているため、硬化物層の形成に時間がかかり、また、耐熱性のない基材(プラスチック等)を用いることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3049820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、モールドの微細凹凸構造の転写性が良好であり、硬化物層に残存する気泡が抑えられ、基材としてプラスチックを用いることができ、しかも製造時間を短縮できる、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、微細凹凸構造を有する硬化物層が基材の表面に形成された物品を製造する方法であって、下記の工程(I)〜(IV)を有することを特徴とする。
(I)微細凹凸構造を表面に有するモールドの該表面に、下記式(A)で表わされる化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選ばれる1種以上と、光感応性酸発生剤と、レベリング剤とを含む塗布液を塗布して、塗布液層を形成する工程。
Si(OR ・・・(A)。
ただし、Rは、アルキル基またはアリール基であり、Rは、アルキル基であり、xは、0〜3の整数であり、x+yは、4である。
(II)前記塗布液層を部分硬化させて、ナノインデンテーション測定において、0.4mN試験荷重がかかった時の押し込み深さが、0.18μm以上である部分硬化物層を形成する工程、または、前記塗布液層を部分硬化させて、赤外吸収スペクトルにおける、シロキサン結合に起因するピーク面積A1と、シラノール基に起因するピーク面積A2との比(A1/A2)が、3〜120である部分硬化物層を形成する工程。
(III)前記部分硬化物層を介して前記モールドと基材とを重ねた後、前記部分硬化物層に活性エネルギー線を照射することによって前記部分硬化物層をさらに硬化させて、硬化物層を形成する工程。
(IV)前記硬化物層から前記モールドを離型して、微細凹凸構造を有する硬化物層が前記基材の表面に形成された物品を得る工程。
【0008】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、さらに下記の工程(I’)を有することが好ましい。
(I’)前記工程(II)の前に、基材の表面に、前記式(A)で表わされる化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選ばれる1種以上と、光感応性酸発生剤と、レベリング剤とを含む塗布液を塗布して、塗布液層を形成する工程。
【0009】
前記塗布液は、さらに平均粒子径が250nm以下の微粒子を含んでいてもよい。
前記微粒子は、氷晶石、酸化インジウムスズ、または酸化チタンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法によれば、モールドの微細凹凸構造の転写性が良好であり、硬化物層に残存する気泡が抑えられ、基材としてプラスチックを用いることができ、しかも製造時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】微細凹凸構造を表面に有する物品の製造工程の一例を示す断面図である。
【図2】微細凹凸構造を表面に有する物品の製造工程の他の例を示す断面図である。
【図3】陽極酸化アルミナを表面に有するモールドの製造工程の一例を示す断面図である。
【図4】部分硬化物層の赤外吸収スペクトルの一例である。
【図5】実施例1における硬化物層の走査型電子顕微鏡像である。
【図6】比較例1における硬化物層の走査型電子顕微鏡像である。
【図7】比較例1における硬化物層の原子間力顕微鏡像である。
【図8】実施例17における硬化物層の表面の構造Aの走査型電子顕微鏡像である。
【図9】実施例17における硬化物層の表面の構造Bの走査型電子顕微鏡像である。
【図10】実施例17における硬化物層の表面の構造Cの走査型電子顕微鏡像である。
【図11】実施例17における硬化物層の表面の構造Dの走査型電子顕微鏡像である。
【図12】実施例17における硬化物層の表面の構造Eの走査型電子顕微鏡像である。
【図13】実施例17における硬化物層の断面の構造Eの走査型電子顕微鏡像である。
【図14】実施例17における硬化物層の表面の構造Fの走査型電子顕微鏡像である。
【図15】実施例17における硬化物層の断面の構造Fの走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、微細凹凸構造は、凸部または凹部の平均間隔がナノメートルオーダー、つまり10000nm以下の構造を意味する。また、活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。また、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0013】
<物品の製造方法>
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法としては、下記の方法(α)または方法(β)が挙げられる。
【0014】
方法(α):
下記の工程(I)、工程(II)、工程(III)、および工程(IV)を有する方法。
(I)図1に示すように、微細凹凸構造(複数の細孔32)を表面に有するモールド40の該表面に塗布液を塗布して、塗布液層24を形成する工程。
(II)図1に示すように、塗布液層24を部分硬化させて、部分硬化物層26を形成する工程。
(III)図1に示すように、部分硬化物層26を介してモールド40と基材10とを重ねた後、部分硬化物層26に活性エネルギー線を照射することによって部分硬化物層26をさらに硬化させて、硬化物層20を形成する工程。
(IV)図1に示すように、硬化物層20からモールド40を離型して、微細凹凸構造(複数の突起22)を有する硬化物層20が基材10の表面に形成された物品1を得る工程。
【0015】
方法(β):
下記の工程(I)、工程(I’)、工程(II)、工程(III)、および工程(IV)を有する方法。
(I)図2に示すように、微細凹凸構造(複数の細孔32)を表面に有するモールド40の該表面に塗布液を塗布して、塗布液層24を形成する工程。
(I’)図2に示すように、基材10の表面に塗布液を塗布して、塗布液層25を形成する工程。
(II)図2に示すように、塗布液層24および塗布液層25を部分硬化させて、部分硬化物層26および部分硬化物層27を形成する工程。
(III)図2に示すように、部分硬化物層26および部分硬化物層27を介してモールド40と基材10とを重ねた後、部分硬化物層26および部分硬化物層27が一体化してなる部分硬化物層28に活性エネルギー線を照射することによって部分硬化物層28をさらに硬化させて、硬化物層20を形成する工程。
(IV)図2に示すように、硬化物層20からモールド40を離型して、微細凹凸構造(複数の突起22)を有する硬化物層20が基材10の表面に形成された物品1を得る工程。
【0016】
〔工程(I)〕
(塗布方法)
塗布液をモールドに塗布する方法としては、例えば、バーコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、スクリーンコート、スピンコート、フローコート、インクジェット等の方法が挙げられる。
【0017】
(モールド)
モールドとしては、目的とする物品の微細凹凸構造に対応する反転構造が形成された転写面を有するものを用いる。
【0018】
モールドの作製方法としては、例えば、下記の方法(γ−1)〜(γ−4)が挙げられ、低コストであり、大面積化が可能である点から、方法(γ−3)または方法(γ−4)が好ましく、作製が簡便である点から、方法(γ−3)が特に好ましい。
(γ−1)モールド基材の表面にリソグラフィ法によって微細凹凸構造を形成する方法。
(γ−2)モールド基材の表面に3次元描画装置等を用いたレーザー描画によって微細凹凸構造を形成する方法。
(γ−3)アルミニウム基材の表面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを形成する方法。
(γ−4)モールド基材の表面に切削バイトを用いて微細凹凸構造(プリズム)を形成する方法。
【0019】
方法(γ―1)においては、半導体素子を製造する場合と同様に、リソグラフィ法によって微細凹凸構造を形成する。具体的には、シリコン基板の表面にレジストを塗布し、マスクを用いて所定のパターンに露光させ、現像した後、エッチングによってシリコン基板の表面に所定の微細凹凸構造を形成する。その後、アッシングまたはレジスト洗浄工程により、残存するレジストを除去すれば、シリコンモールドが得られる。なお、シリコン基板の表面には、エッチングによる変質層(Si、F、O等からなる化合物層)が形成されているため、プラズマアッシングまたはRIE(リアクティブイオンエッチング)によってこの変質層を除去してもよい。リソグラフィ法は、フォトリソグラフィ法、電子線ソグラフィ法、X線リソグラフィ法等のいずれであってもよく、光源の波長は微細凹凸構造の細密度により適宜選択し、この光源に対応するレジストを用いればよい。また、これらのモールドの離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物、ダイヤライクカーボン膜等が挙げられ、撥水性の高い表面を有しているものが好ましい。
【0020】
また、これらのモールドの微細凹凸構造を樹脂基材の表面に転写した樹脂モールドを用いてもよい。物品の基材がガラス等の硬質基材の場合は、モールド側が柔軟性を持つ樹脂のため、転写の際の基材とモールドとの貼り合わせを行いやすいことから、硬質基材を用いる場合に好ましい。モールドの微細凹凸構造を樹脂基材の表面に転写する際に用いる賦型樹脂としては、後述するラジカル重合可能な化合物を用いることが可能である。樹脂モールドの樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート等を用いることが好ましい。
【0021】
方法(γ−3)としては、下記の工程(a)〜(f)を有する方法が好ましい。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)工程(d)と工程(e)を繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウムの表面に形成されたモールドを得る工程。
【0022】
工程(a):
図3に示すように、アルミニウム基材30を陽極酸化すると、細孔32を有する酸化皮膜34が形成される。
アルミニウム基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
また、アルミニウム基材は、表面状態を平滑化にするために、機械研磨、羽布研磨、化学的研磨、電解研磨処理(エッチング処理)などで研磨されることが好ましい。また、アルミニウム基材は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、陽極酸化の前にあらかじめ脱脂処理されることが好ましい。
【0023】
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0024】
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、平均間隔が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0025】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、平均間隔が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0026】
工程(b):
図3に示すように、酸化皮膜34を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点36にすることで細孔の規則性を向上することができる。
【0027】
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0028】
工程(c):
図3に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材30を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔32を有する酸化皮膜34が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0029】
工程(d):
図3に示すように、細孔32の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0030】
工程(e):
図3に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔32の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔32がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0031】
工程(f):
図3に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔32を有する酸化皮膜34が形成され、アルミニウム基材30の表面に陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有するモールド40が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
【0032】
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて形成された、後述するモスアイ構造の反射率低減効果は不十分である。
【0033】
細孔32の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
細孔32の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下が好ましい。細孔32間の平均間隔は、20nm以上が好ましい。
細孔32の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔32間の間隔(細孔32の中心から隣接する細孔32の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0034】
細孔32のアスペクト比(細孔の深さ/細孔の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
細孔32の深さは、電子顕微鏡観察によって細孔32の最底部と、細孔32間に存在する凸部の頭頂部との間の距離を測定した値である。
【0035】
モールドの細孔が形成された側の表面を離型剤で処理してもよい。
離型剤としては、アルミニウム基材の陽極酸化アルミナと化学結合を形成し得る官能基を有するものが好ましい。
【0036】
離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物等が挙げられ、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物が特に好ましい。加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の市販品としては、フルオロアルキルシラン、KBM−7803(信越化学工業社製)、MRAF(旭硝子社製)、オプツールHD1100、HD2100シリーズ(ハーベス社製)、オプツールDSX、AES4、AES6(ダイキン工業社製)、ノベックEGC−1720(住友3M社製)、FS‐2050シリーズ(フロロテクノロジー社製)等が挙げられる。
【0037】
離型剤による処理方法としては、下記の方法(δ−1)または方法(δ−2)が挙げられ、モールドの細孔が形成された側の表面をムラなく離型剤で処理できる点から、方法(δ−1)が特に好ましい。
(δ−1)離型剤の希釈溶液にモールドを浸漬する方法。
(δ−2)離型剤またはその希釈溶液を、モールドの細孔が形成された側の表面に塗布する方法。
【0038】
方法(δ−1)としては、下記の工程(g)〜(l)を有する方法が好ましい。
(g)モールドを水洗する工程。
(h)工程(g)の後、モールドにエアーを吹き付け、モールドの表面に付着した水滴を除去する工程。
(i)加水分解性シリル基を有するフッ素化合物をフッ素系溶媒で希釈した希釈溶液に、モールドを浸漬する工程。
(j)浸漬したモールドをゆっくりと溶液から引き上げる工程。
(k)必要に応じて、工程(j)よりも後段にてモールドを加熱加湿させる工程。
(l)モールドを乾燥させる工程。
【0039】
工程(g):
モールドには、細孔を形成する際に用いた薬剤(細孔径拡大処理に用いたリン酸水溶液等)、不純物(埃等)等が付着しているため、水洗によってこれを除去する。
【0040】
工程(h):
モールドの表面に水滴が付着していると、工程(i)の希釈溶液が劣化するため、モールドにエアーを吹き付け、目に見える水滴はほぼ除去する。
【0041】
工程(i):
希釈用のフッ素系溶媒としては、ヒドロフルオロポリエーテル、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の濃度は、希釈溶液(100質量%)中、0.01〜0.5質量%が好ましい。
浸漬時間は、1〜30分が好ましい。
浸漬温度は、0〜50℃が好ましい。
【0042】
工程(j):
浸漬したモールドを溶液から引き上げる際には、電動引き上げ機等を用いて、一定速度で引き上げ、引き上げ時の揺動を抑えることが好ましい。これにより塗布ムラを少なくできる。
引き上げ速度は、1〜10mm/secが好ましい。
【0043】
工程(k):
工程(j)よりも後段にて、モールドを加熱加湿させてもよい。モールドを加熱加湿下に放置することによって、フッ素化合物(離型剤)の加水分解性シリル基が加水分解されてシラノール基が生成し、該シラノール基とモールドの表面の水酸基との反応が十分に進行し、フッ素化合物の定着性が向上する。加湿方法としては、飽和塩水溶液を用いた飽和塩法、水を加熱して加湿する方法、加熱した水蒸気をモールドに直接吹付ける方法等が考えられる。この工程は恒温恒湿器中で行えばよい。
加熱温度は、30〜150℃が好ましい。
加湿条件は、相対湿度60%以上が好ましい。
放置時間は、10分〜7日が好ましい。
【0044】
工程(l):
モールドを乾燥させる工程では、モールドを風乾させてもよく、乾燥機等で強制的に加熱乾燥させてもよい。
乾燥温度は、30〜150℃が好ましい。
乾燥時間は、5〜300分が好ましい。
【0045】
(塗布液)
塗布液は、式(A)で表わされる化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選ばれる1種以上と、光感応性酸発生剤と、レベリング剤とを含む。
塗布液は、必要に応じて、pH調整剤、溶媒、酸によりカチオン重合可能な化合物、ラジカル重合可能な化合物と活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤との組み合わせ、ポリマー、ポリマー微粒子、コロイド状シリカ、コロイド状金属、コロイド状金属酸化物、染料、顔料、顔料分散剤、流動調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。
【0046】
((A)成分)
以下、下記式(A)で表わされる化合物、その加水分解物、およびその縮合物を、まとめて(A)成分と記す。
Si(OR ・・・(A)。
ただし、Rは、アルキル基またはアリール基であり、Rは、アルキル基であり、xは、0〜3の整数であり、x+yは、4である。
としては、メチル基、エチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロデシル基等が挙げられる。
としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0047】
塗布液においては、式(A)で表わされる化合物の一部または全部が加水分解され加水分解物となる。さらに、加水分解物の一部または全部が縮合し、縮合物(オリゴマー)となる。本発明においては、気泡の発生が抑えられ、部分硬化物層や硬化物層の寸法収縮が抑えられる点から、式(A)で表わされる化合物のほぼ全部を加水分解・縮合反応によって縮合物(オリゴマー)としてもよい。
【0048】
式(A)で表わされる化合物の加水分解・縮合反応は、公知の方法によって行う。
加水分解の方法としては、例えば、式(A)で表わされる化合物の100質量部に対して、水の10〜1000質量部、アルコール類の0〜1000質量部を加えた混合液を撹拌する方法が挙げられる。混合液の温度は、0〜100℃が好ましい。また、加水分解は、酸(塩酸、酢酸等)を加えて混合液を酸性(pH:2〜5)にして行ってもよい。加水分解に際して発生するアルコールは、反応系外に留去してもよい。
縮合反応は、例えば、混合液を1〜4時間、放置または撹拌することによって進行させることができる。縮合反応は、混合液のpHを6〜7に調整することによって早めることができる。また、混合液の温度を40〜80℃にすることによって早めることができる。縮合に際して発生する水は、反応系外に留去してもよい。
【0049】
式(A)で表わされる化合物としては、オルガノアルコキシシランまたはアルコキシシランが挙げられる。式(A)で表わされる化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
オルガノアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。オルガノアルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン(メチルシリケート)、テトラエトキシシラン(エチルシリケート)、テトラプロポキシシラン(プロピルシリケート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。アルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
(光感応性酸発生剤)
光感応性酸発生剤は、活性エネルギー線の照射により酸を発生し、(A)成分の硬化を促進する成分である。光感応性酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
光感応性酸発生剤としては、ジフェニルヨードニウム系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、ジアゾジスルホン系化合物等が挙げられる。
光感応性酸発生剤の市販品としては、イルガキュア250(チバ・ジャパン社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−170(ADEKA社製)、サイラキュアUVI−6992(ダウケミカル日本社製)、サンエイドSI−60L、SI−80L、SI−85L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L、SI−15H、SI−20H、SI−25H、SI−40H,SI−50H(三新化学工業社製)、CPI−100P、CPI−101A(サンアプロ社製)、MPI−103、MP−105、MP−109(みどり化学社製)等が挙げられる。
【0054】
光感応性酸発生剤の含有量は、(A)成分の合計(固形分)の100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。光感応性酸発生剤の含有量が0.01質量部以上であれば、(A)成分を効率よく硬化することができ、良好な硬化物層が形成される。光感応性酸発生剤の含有量が10質量部以下であれば、着色が抑制され、表面硬度や耐擦傷性が良好な硬化物層が形成される。
【0055】
(レベリング剤)
レベリング剤は、塗布液のモールドへの濡れ性の向上、塗布液層の平坦性の向上のための成分である。レベリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レベリング剤としては、(A)成分との親和性の点から、シリコーン系レベリング剤が好ましい。
【0056】
シリコーン系レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリレート変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらのうち、ポリエーテル変性シリコーンオイルは、末端に水酸基、メトキシ基等の反応性基を有するため、(A)成分を含む塗膜の形成に好適である。
【0057】
シリコーン系レベリング剤の市販品としては、BY16−201(東レダウコーニング社製)、SF8427(東レダウコーニング社製)、SF8428(東レダウコーニング社製)、FZ2162(東レダウコーニング社製)、FZ−77(東レダウコーニング社製)、L7001(東レダウコーニング社製)、FZ−2104(東レダウコーニング社製)、SH3773M(東レダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0058】
レベリング剤の含有量は、(A)成分の合計(固形分)の100質量部に対して、0.1〜40質量部が好ましく、0.25〜20質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が0.1質量部以下であれば、塗布液のモールドへの濡れ性、塗布液層の平坦性が高くなり、良好な硬化物層が形成される。レベリング剤の含有量が40質量部以下であれば、レベリング剤による硬化物層の硬度不良を抑えることができる。
【0059】
(pH調整剤)
pH調整剤は、(A)成分の硬化を促進させる成分である。
pH調整剤としては、有機酸、鉱酸または鉱酸塩が挙げられる。具体的には、酢酸、塩酸、硫酸、酢酸ナトリウム等が挙げられるが、縮合反応の促進に有効なものであれば特に制限はない。
【0060】
(溶媒)
塗布液は、通常、式(A)で表わされる化合物の加水分解のための水を含む。
水の含有量は、(A)成分の合計(固形分)の100質量部に対して、10〜1000質量部が好ましい。
【0061】
また、塗布液は、固形分濃度の調整、(A)成分の分散安定性の向上、塗布液層の形成性の向上、基材への硬化物層の密着性の向上の点から、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等が挙げられる。
【0062】
具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0063】
有機溶媒の含有量は、(A)成分の合計(固形分)の100質量部に対して、10〜1000質量部が好ましい。有機溶媒の含有量が10質量部以上であれば、塗布液の保存安定性が良好となり、塗布液が高粘度になるのを抑えることができ、その結果、作業性が向上し、良好な硬化物層が形成される。有機溶媒の含有量が1000質量部以下であれば、外観良好な硬化物層が形成される。
【0064】
(酸によりカチオン重合可能な化合物)
酸によりカチオン重合可能な化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。酸によりカチオン重合可能な化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルアミン、ジグリシジルベンジルアミン、フタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ブタジエンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンオールエポキシドグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とエチレンオキサイドとの付加物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0066】
ビニルエーテル化合物としては、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリト−ルテトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0067】
(ラジカル重合可能な化合物)
ラジカル重合可能な化合物としては、分子内にラジカル重合性二重結合基を含有するビニル化合物が挙げられる。分子内にラジカル重合性二重結合基を含有するビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分子内にラジカル重合性二重結合基を有するビニル化合物は、分子内に重合性二重結合基を1または2以上有するものであり、重合速度が速い点から、分子内にアクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0068】
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フォスフォエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル]−プロパン、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]−スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]−スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル]−スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル]−スルフィド、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン]、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
(活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤)
活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤としては、3,3−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1,2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0071】
(微粒子)
塗布液に微粒子を含ませることによって、硬化物層の屈折率を調整してもよい。
微粒子の平均粒子径は、10〜250nmが好ましい。微粒子の平均粒子径が250nm以下であれば、ヘイズが小さく、透明度が高い硬化物層が形成される。微粒子の平均粒子径が10nm以上であれば、屈折率調整効果が高くなる。
【0072】
微粒子としては、フッ化物(氷晶石(NaAlF)、フッ化ナトリウム(NaF)、チオライト(NaAl14)等)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化インジウム亜鉛(IZO)等が挙げられる。硬化物層を低屈折率化する場合は、微粒子としては、氷晶石が好ましい。硬化物層を高屈折率化する場合は、微粒子としては、酸化インジウムスズまたは酸化チタンが好ましい。
【0073】
微粒子の含有量は、(A)成分の合計(固形分)の100質量部に対して、10〜300質量部が好ましい。微粒子の含有量が10質量部以上であれば、硬化物層の屈折率の調整硬化が十分に得られる。微粒子の含有量が300質量部以下であれば、硬化物層がもろくなる。
【0074】
〔工程(I’)〕
基材の表面に塗布液を塗布して塗布液層を形成することによって、塗布液層を部分硬化させて部分硬化物層とした後、基材の表面の部分硬化物層と、モールドの表面の部分硬化物層部との密着性がよくなり、その結果、硬化物層からモールドを離型した際に、硬化物層がモールド側に残りにくくなる。
【0075】
(塗布方法)
塗布液を基材に塗布する方法としては、例えば、バーコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、スクリーンコート、スピンコート、フローコート、インクジェット等の方法が挙げられる。
【0076】
(基材)
基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、金属、紙、木質材、無機質材、電着塗装板、ラミネート板等が挙げられる。基材としては、物品を光学部材として用いる場合は、光透過性を有するものが好ましい。
基材の表面は、あらかじめ表面処理されていてもよい。表面処理としては、低圧水銀ランプ、エキシマランプ等を用いた紫外線処理、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。基材の表面を表面処理することによって、基材と硬化物層との密着性がよくなり、その結果、硬化物層からモールドを離型した際に、硬化物層がモールド側に残りにくくなる。
【0077】
(塗布液)
塗布液としては、工程(I)における塗布液と同様のものを用いればよい。工程(I’)における塗布液の組成は、工程(I)における塗布液と同じであってもよく、工程(I)における塗布液と異なっていてもよい。
【0078】
〔工程(II)〕
モールドの表面の塗布液層および基材の表面の塗布液層を加熱する、または溶媒を揮発させることで、(A)成分の加水分解・縮合反応をさらに進行させ、工程(IV)における活性エネルギー線による硬化の前に、硬化を適度に進行させる。必要に応じて、活性エネルギー線による硬化を併用してもよい。
【0079】
加熱方法としては、例えば、赤外線ヒーターを用いた照射法、熱風による循環加熱法、ホットプレート等による直接加熱法が挙げられる。
加熱温度は、50〜120℃が好ましい。
加熱時間は、5秒〜3600分が好ましく、30秒〜30分がより好ましく、1分〜10分がさらに好ましい。
【0080】
溶媒の揮発は、真空下で行うことが好ましい。適宜、加熱を併用してもよい。
揮発温度は、室温〜120℃が好ましい。
揮発時間は、1分〜3600分が好ましく、1分〜120分がより好ましい。
【0081】
塗布液層の部分硬化は、下記の(II−1)または(II−2)に示す部分硬化物層が形成されるように行う。
(II−1):ナノインデンテーション測定において、0.4mN試験荷重がかかった時の押し込み深さが、0.18μm以上である部分硬化物層。
0.4mN試験荷重がかかった時の押し込み深さが、0.18μm以上であれば、部分硬化物層と基材との密着性が良好となり基材側にモールド側の硬化物層が良好に転写できる。0.4mN試験荷重がかかった時の押し込み深さは、0.2μm以上が好ましい。
【0082】
ナノインデンテーション測定は、Fischerscope HM2000を用いて行う。測定に使用する圧子には、ダイヤモンド製の四角錐型、対面角135度のものを用いる。23℃、相対湿度50%環境下、荷重をF、経過時間をtとした時に、この圧子を部分硬化層に対しdF/dtが一定となるよう20秒間で1mNまで荷重させ、0.4mN試験荷重がかかった時点の圧子押し込み深さを求める。
【0083】
(II−2):赤外吸収スペクトルにおける、シロキサン結合に起因するピーク面積A1と、シラノール基に起因するピーク面積A2との比(A1/A2)が3〜120である部分硬化物層。
A1/A2が7以上であれば、気泡の発生が十分に抑えられる。A1/A2が30以下であれば、部分硬化物層と基材との密着性が良好となり基材側にモールド側の硬化物層が良好に転写できる。A1/A2は、7〜115がより好ましい。
【0084】
A1/A2は、下記のように求める。
部分硬化物層の赤外吸収スペクトルの測定は、FT−IRによる全反射法(ATR;Attenuated Total Reflactance)によって行う。
具体的には、Geクリスタルを用い、入射角:45°、1回反射の条件で測定すればよく、例えば、FT−IR(サーモニコレー社製、NEXUS470)にATR測定用アクセサリー(スペクトラテック社製、FOUNDATION ThunderDome)を取り付け、分解能:4cm−1、積算回数:32回で測定する。
ピーク面積は、例えば、FT−IR解析ソフト(サーモニコレー社製、OMNIC)の積分ツールを用いて求める。
【0085】
図4は、部分硬化物層の赤外吸収スペクトルの一例である。
シロキサン結合(Si−O−Si)は、960〜1240cm−1に吸収を有しており、図4に示すように960cm−1での吸光度である点Bと1240cm−1での吸光度である点Aとを結ぶ線分をABとすると、線ABとスペクトル曲線とで囲まれる面積がシロキサン結合に起因するピーク面積A1である。
シラノール基(Si−OH)は、860〜960cm−1に吸収を有しており、960cm−1での吸光度である点Bと860cm−1である点Cとを結ぶ線分BCとすると、線BCとスペクトル曲線とで囲まれる面積がシラノール基に起因するピーク面積A2である。
【0086】
〔工程(III)〕
部分硬化物層を介してモールドと基材とを重ねた状態で、部分硬化物層に活性エネルギー線を照射することによって光感応性酸発生剤から酸を発生させ、酸によって部分硬化物層の(A)成分をさらに硬化させて、硬化物層を形成する。
【0087】
活性エネルギー線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマランプ、太陽光等が挙げられる。これらのうち、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、またはメタルハライドランプが好ましい。光源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活性エネルギー線のエネルギー照射量は、例えば、紫外線を照射する場合においては、積算光量で100〜5000mJ/cmが好ましい。
【0088】
必要に応じて、活性エネルギー線の照射による硬化と、加熱硬化とを併用してもよい。
加熱硬化のタイミングは、活性エネルギー線の照射前であってもよく、活性エネルギー線の照射と同時であってもよく、活性エネルギー線の照射後であってもよい。
加熱時間は、活性エネルギー線の照射前に加熱する場合は1〜20分間、活性エネルギー線の照射と同時に加熱する場合は0.2〜10分間、活性エネルギー線の照射後に加熱する場合は1〜60分間が好ましい。
加熱温度は、50〜200℃が好ましい。
【0089】
〔工程(IV)〕
硬化物層からモールドを離型して、微細凹凸構造を有する硬化物層が基材の表面に形成された物品を得る。
【0090】
(物品)
図1および図2に示すように、硬化物層20は、モールド40の細孔32を転写して形成された複数の突起22を表面に有する。突起22は、平面六方格子や正方格子の配置となる。また、複数の突起のかわりに複数の凸条を有する場合には、凸条は、ランアンドスペースの配置となる。
【0091】
突起22は、略円錐形状、略角錐形状等の複数の突起22が50nmから10μm程度の間隔で基材10の表面に点在する。また、突起のかわりに凸条を有する場合には、断面が矩形形状、正弦波形状等の複数の凸条が50nmから10μm程度の間隔で基材10の表面に延在する。これらの突起22または凸条の間隔が可視光以下(400nm以下)の場合、いわゆるモスアイ構造を形成する。モスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。また、これらの突起22または凸条の間隔が可視光(400nm)から10μm程度の場合、光の散乱効果の高い、回折格子として作用する形状を有する。
【0092】
突起22または凸条の平均間隔は、50nmから10μm程度が好ましい。
突起22のアスペクト比(突起22の高さ/突起22間の平均間隔)または凸条のアスペクト比(凸条の高さ/凸条間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。突起22のアスペクト比が1.0以上であれば、モスアイ構造の場合には反射率が十分に低くなる。突起22のアスペクト比が5.0以下であれば、突起22の耐擦傷性が良好となる。
突起22または凸条の高さは、電子顕微鏡によって突起22または凸条の最頂部と、突起22または凸条間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
【0093】
硬化物層20の屈折率と基材10の屈折率との差は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。屈折率差が0.2以下であれば、硬化物層20と基材10との界面における反射が抑えられる。
【0094】
(作用効果)
以上説明した本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法によれば、下記の理由から、モールドの微細凹凸構造の転写性が良好であり、硬化物層に残存する気泡が抑えられ、基材としてガラスだけではなく耐熱性のないプラスチックも用いることができ、しかも製造時間を短縮できる。
【0095】
(i)塗布液をモールド上に塗布することで、式(A)で表わされる化合物のゾルが加水分解・縮合反応によってゲルの状態になっていても、ゲルがモールドの微細凹凸構造に十分に追随でき、モールドの微細凹凸構造の転写性が良好となる。
(ii)モールドと基材とを重ねる前に、塗布液層の部分硬化を行うため、アルコキシシランの縮合によって発生する水や、塗布液の溶媒が外部に揮発し、部分硬化物層に気泡が発生しにくい。その結果、硬化物層に残存する気泡が抑えられる。
(iii)部分硬化物層を活性エネルギー線の照射によって硬化させて硬化物層を形成しているため、硬化物層の形成に時間がかからず、また、耐熱性のない基材(プラスチック)を用いることもできる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
<測定方法>
(分子量測定方法)
分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定した。測定条件は下記の通りである。
溶離液:テトラヒドロフラン、
流速:1.0mL/min、
温度:40℃、
カラム:
・TSK:guard column HXL−L (サイズ:6.0×40)、
・TSKgel:GMHXL (サイズ:7.8×300)、
・TSKgel:GMHXL (サイズ:7.8×300)、
・TSKgel:G1000HXL (サイズ:7.8×300)。
【0098】
(モールドの微細凹凸構造の形状観察)
モールドの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、走査電子顕微鏡(日立ハイテク社製、S−4300SE/N)を用いて、加速電圧:5.00kVの条件にて、断面を観察し、微細凹凸構造における各寸法を測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
【0099】
(硬化物層の微細凹凸構造の形状観察)
硬化物層の断面にプラチナを1分間蒸着し、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、S−4300SE/N)による断面写真から、微細凹凸構造における各寸法を求めた。
比較例1については、原子間力顕微鏡(キーエンス社製、VN−8010、カンチレバーDFM/SS−Mode)を用いて、微細凹凸構造における各寸法を測長した。
【0100】
(ナノインデンテーション)
ナノインデンテーション測定は、Fischerscope HM2000を用いて行った。測定に使用する圧子には、ダイヤモンド製の四角錐型、対面角135度のものを用いた。23℃、相対湿度50%環境下、荷重をF、経過時間をtとした時に、この圧子を硬化物に対しdF/dtが一定となるよう20秒間で1mNまで荷重させ、0.4mN試験荷重がかかった時点の圧子押し込み深さを求めた。
また、荷重をF、経過時間をtとした時にこの圧子を硬化物に対しdF/dtが一定となるよう20秒間で1mNまで荷重させた後、5秒間クリープさせ、その後荷重時と同じ条件で除重させる測定条件において、荷重を、接触ゼロ点を超えて侵入した圧子の表面積で除すことでマルテンス硬さを求めた。
【0101】
(赤外吸収スペクトル)
FT−IR(サーモニコレー社製、NEXUS470)によるATR法にて部分硬化物層の赤外吸収スペクトルを測定した。具体的には、FT−IRにATR測定用アクセサリー(スペクトラテック社製、FOUNDATION ThunderDome)を取り付け、分解能:4cm−1、積算回数:32回で測定した。
ピーク面積は、FT−IR解析ソフト(サーモニコレー社製、OMNIC)の積分ツールを用いて求めた。
得られた赤外線吸収スペクトルから、ピーク面積比A1/A2を求めた。
【0102】
(屈折率)
プリズムカプラー(メトリコン社製、モデル2010)を用いて波長:594nmのレーザーに対する硬化物層の屈折率を測定した。
【0103】
(耐熱性)
TG−DTA測定装置(理学電機社製、TG8120)を用いて下記の条件で測定を行った。
・測定条件:25℃〜900℃、10℃/minで昇温、空気雰囲気。
・分解温度:TGで質量減少温度範囲でのDTAピーク値を分解温度とした。
【0104】
<評価方法>
塗布液、硬化物層の評価方法は下記の通りである。評価時の温度は指定がある場合を除き室温(約25℃)とした。
【0105】
(塗布性)
モールドの表面の塗布液層を目視観察し、下記の基準で判定した。
○:モールド全体に塗布液層が形成されていた。
△:モールドのエッジ部分にハジキがあるが、全体的に塗布液層が形成されていた。
×:塗布液層が形成されていない。
【0106】
(気泡)
硬化物層の中央部分の1cm□内を目視観察し、下記の基準で判定した。
○:気泡の残存は確認されなかった。
△:気泡が1〜10個程度であった。
×:気泡が10個以上であった。
【0107】
(モールドa賦型結果)
硬化物層の賦型中央部分の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、下記の基準で判定した。
○:モールドの微細凹凸構造が反転した、ピッチ100nm、高さ200nmのモスアイ構造が形成されていた。
×:モールドの微細凹凸構造が反転した、ピッチ100nm、高さ200nmのモスアイ構造が形成されていなかった。
【0108】
(樹脂モールドb賦型結果)
硬化物層の断面と表面にプラチナを1分間蒸着し、走査電子顕微鏡(日立ハイテク社製、S−4300SE/N)による断面写真から、突起の高さを求め、表面写真からピッチを測長し、下記の基準で判定した。
○:賦型構造A−F全てが樹脂モールドbの反転転写の形状となっている。
×:賦型構造A−Fの少なくとも1つ以上が樹脂モールドbの反転転写の形状となっていない。
【0109】
(総合判定)
塗布性、気泡、そしてモールドからの転写性として「モールドa賦型結果」または「樹脂モールドb賦型結果」の3つの評価を総合的に下記の基準で判定した。
◎:全ての評価が○である。
○:2つの評価が○であり、かつ1つが△である。
×:2つ以上の評価が△である、または1つ以上の評価が×である。
【0110】
<モールド>
(モールドa)
50mm×50mm×厚さ0.3mmのアルミニウム板(純度:99.99%)を、過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨した。
工程(a):
該アルミニウム板について、4.5質量%シュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で6時間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に9時間浸漬して、酸化皮膜を除去し、細孔発生点を形成した。
工程(c):
該アルミニウム板について、3質量%シュウ酸水溶液中、直流:40V、温度:16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
【0111】
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
該アルミニウム板について、3質量%シュウ酸水溶液中、直流:40V、温度:16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
工程(f):
前記工程(d)および工程(e)を合計で4回繰り返し、最後に工程(d)を行い、平均間隔:100nm、深さ:200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドaを得た。
【0112】
工程(g):
シャワーを用いてモールドaの表面のリン酸水溶液を軽く洗い流した後、モールドaを流水中に10分間浸漬した。
工程(h):
モールドaにエアーガンからエアーを吹き付け、モールドaの表面に付着した水滴を除去した。
【0113】
工程(i):
離型剤(ダイキン工業社製、オプツールDSX)を希釈用有機溶媒(ハーベス社製、デュラサーフHD−ZV)で希釈して、離型剤濃度が0.1質量%である希釈溶液を調製した。
モールドaを離型剤の希釈溶液に室温で10分間浸漬した。
工程(j):
モールドaを、希釈溶液から3mm/secでゆっくりと引き上げた。
【0114】
工程(k):
恒温恒湿器を用いて、モールドaを温度60℃、相対湿度:85%に1時間放置し、加熱加湿処理した。
工程(l):
モールドaを一晩風乾して、離型剤で処理されたモールドaを得た。
【0115】
(モールドb)
以下の構造を混載したモールドb(協同インターナショナル社製、シリコン製お試しモールド(2))を用意した。
・構造A:ピッチ1μm、高さ1μmのピラー構造(矩形部分の幅500nm、ピッチ1μm)。
・構造B:ピッチ8μm、高さ1μmのピラー構造(矩形部分の幅4μm、ピッチ8μm))。
・構造C:ピッチ1μm、高さ1μmのホール構造(矩形部分の幅500nm、ピッチ1μm)。
・構造D:ピッチ8μm、高さ1μmのホール構造(矩形部分の幅4μm、ピッチ8μm))。
・構造E:ピッチ1μm、高さ1μmのラインアンドスーペース構造(矩形部分の幅500nm、ピッチ1μm)。
・構造F:ピッチ8μm、高さ1μmのラインアンドスーペース構造(矩形部分の幅4μm、ピッチ8μm))。
【0116】
(樹脂モールドb)
賦型樹脂の調製:
1,6−ヘキサンジオールジアクリレートの50質量部およびトリメチロールエタン/アクリル酸/コハク酸(2/4/1)の縮合物の50質量部、ベンゾイルエチルエーテル(以下、BEEと略す。)の3部を加え、BEEが溶解するまで撹拌し、アクリルモノマー液(J−1)を調製した。
【0117】
賦型:
前記モールドbに対し、アクリルモノマー液(J−1)を滴下し、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)フィルム(東山フィルム社製、HK−31)で易接着面がアクリルモノマー液(J−1)側に来るように挟み、PETフィルム上からゴムローラーで加圧することでアクリルモノマー液(J−1)押し広げ、PETフィルム側から1000mJ/cmの照射強度にて紫外線を照射してアクリルモノマー液(J−1)を硬化させ、モールドbからPETフィルムを剥離し、樹脂モールドを得た。
【0118】
離型剤処理:
離型剤(ダイキン工業社製、オプツールDSX)を希釈用有機溶媒(ハーベス社製、デュラサーフHD−ZV)で希釈して、離型剤濃度が0.1質量%である希釈溶液を調製した。
樹脂モールドを離型剤の希釈溶液に室温で10分間浸漬した。
樹脂モールドを、希釈溶液から3mm/secでゆっくりと引き上げ、23℃、相対湿度50%環境下、24時間風乾し、樹脂モールドbを得た。
【0119】
〔実施例1〕
メチルトリメトキシシラン(多摩化学社製)の3.68g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−103)の0.67g、ジメチルジメトキシシラン(信越化学社製、AY43−004)の0.41g、イオン交換水の0.88g、プロピレングリコールモノメチルエーテルの1.00g、γ−ブチロラクトンの0.75g、シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、L−7001)の1質量%γ−ブチロラクトン溶液の1.00g、光感応性酸発生剤(三新化学工業社製、SI―80L)の50質量%γ−ブチロラクトン溶液の0.1gを室温下で15分間撹拌し、塗布液A−1を得た。
【0120】
工程(I)、(I’):
モールドaおよびアクリルフィルムx(三菱レイヨン社製、アクリプレンHBK002、長さ:10cm、幅:5cm)のそれぞれの表面に、塗布液A−1を適量滴下し、バーコーターNo.26を用いて乾燥後の厚さが3〜4μmになるように塗布し、塗布液層を形成した。塗布性を評価した。結果を表1に示す。
【0121】
工程(II):
モールドaの表面の塗布液層およびアクリルフィルムxの表面の塗布液層を、90℃で約4分間加熱し、部分硬化物層を形成した。部分硬化物層の赤外吸収スペクトル測定およびナノインデンテーション測定を行った。結果を表1に示す。
【0122】
工程(III):
部分硬化物層を介してモールドaとアクリルフィルムxとを重ね、ゴムロールで加圧して貼り合わせた後、90℃で10分加熱した。
コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ(オーク製作所社製、紫外線照射装置、ハンディーUV−1200、QRU−2161型)を用いて、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を、アクリルフィルムx側から部分硬化物層に照射し、硬化物層を形成した。
【0123】
工程(IV):
硬化物層からモールドaを離型して、複数の突起を有する硬化物層がアクリルフィルムxの表面に形成された物品を得た。硬化物層の突起の平均間隔、高さを求めた。結果を表1に示す。硬化物層の気泡、モールドの微細凹凸構造の転写性を評価した。結果を表1に示す。
塗布液の塗布性に優れ、硬化物層に気泡も残存せず、図5の硬化物層の走査型電子顕微鏡像に示すように硬化物層の表面にモスアイ構造(平均間隔:約100nm、高さ:約200nm)が形成されていた。
【0124】
〔実施例2〕
工程(II)における加熱時間を2分間にした以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。
塗布液の塗布性に優れ、硬化物層に気泡がわずかに残存したものの、走査型電子顕微鏡で観察したところ硬化物層の表面にモスアイ構造(平均間隔:約100nm、高さ:約200nm)が形成されていた。
【0125】
〔比較例1〕
工程(I”):
アクリルフィルムxの表面に、塗布液A−1を適量滴下し、バーコーターNo.26を用いて乾燥後の厚さが3〜4μmになるように塗布し、塗布液層を形成した。
【0126】
工程(II):
アクリルフィルムxの表面の塗布液層を、90℃で約2分間加熱し、部分硬化物層を形成した。
【0127】
工程(III):
アクリルフィルムxの部分硬化物層に、モールドaを重ね、ゴムロールで加圧して貼り合わせた後、90℃で10分加熱した。
コンベアを備えた高圧水銀ランプ(実施例1と同じ)を用いて、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を、アクリルフィルムx側から塗布液層に照射し、硬化物層を形成した。
【0128】
工程(IV):
硬化物層からモールドaを離型して、硬化物層がアクリルフィルムxの表面に形成された物品を得た。結果を表1に示す。
図6の硬化物層の走査型電子顕微鏡像に示すように硬化物層の表面に凹凸は見られたが、モスアイ構造は形成されていなかった。原子間力顕微鏡を用いて凸部の寸法を測定したところ、平均間隔は400nmであり、高さは30nmであった。
【0129】
〔比較例2〕
工程(II)における加熱時間を4分間にした以外は、比較例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。
走査型電子顕微鏡で観察したところ硬化物層の表面に凹凸は見られず、平坦であった。
【0130】
〔比較例3〕
工程(II)における加熱時間を0分間にした以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。
塗布液の塗布性に優れたが、硬化物層に気泡が多く残存した。走査型電子顕微鏡で観察したところ硬化物層の表面にモスアイ構造(平均間隔:約100nm、高さ:約200nm)が形成されていた。
【0131】
〔実施例3〕
塗布液A−1のシリコーン系レベリング剤の量を半分にした塗布液A−2を用いた以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。
モールドのエッジ部分に塗布液のハジキが見られたが、硬化物層に気泡は残存せず、走査型電子顕微鏡で観察したところ硬化物層の表面にモスアイ構造(平均間隔:約100nm、高さ:約200nm)が形成されていた。
【0132】
〔比較例4〕
塗布液A−1の組成からシリコーン系レベリング剤を抜いた塗布液A−3を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
モールド全体で塗布液のハジキが見られ、液滴状になり、塗布液層を形成できなかった。
【0133】
〔実施例4〕
メチルトリメトキシシラン(多摩化学社製)の4.47g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−103)の0.46g、イオン交換水の0.63g、プロピレングリコールモノメチルエーテルの1.00g、γ−ブチロラクトンの0.75g、シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、L−7001)の1質量%γ−ブチロラクトン溶液の1.00g、光感応性酸発生剤(三新化学工業社製のSI―80L)の50質量%γ−ブチロラクトン溶液の0.1gを室温下で15分間撹拌し、塗布液B−1を得た。
塗布液B−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。また、硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。
【0134】
〔実施例5〕
メチルトリメトキシシラン(多摩化学社製)の19.0g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−103)の2.2g、2−プロパノールの20.5g、イオン交換水の16.3gを混合し、撹拌して均一な溶液とした。さらに、撹拌しつつ80℃で6時間加熱し、加水分解・縮合を行い、固形分濃度20質量%のオリゴマー液Bを得た。GPCにより測定したポリスチレン換算質量平均分子量は1600であった。なお、固形分濃度とは、完全に加水分解・縮合した場合に得られるシロキサン化合物を溶液全体に対して算出した質量分率を意味する。
【0135】
オリゴマー液Bの3.00g、プロピレングリコールモノメチルエーテルの0.25g、γ−ブチロラクトンの0.20g、シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、L−7001)の1質量%γ−ブチロラクトン溶液の0.25g、光感応性酸発生剤(三新化学工業社製、SI―80L)の50質量%γ−ブチロラクトン溶液の0.05gを室温下で1分間撹拌し、塗布液B−2を得た。
塗布液B−2を用いた以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。
【0136】
〔実施例6〕
塗布液B−2における光感応性酸発生剤(三新化学工業社製、SI―80L)を光感応性酸発生剤(三新化学工業社製、SI―100L)に変更した塗布液B−3を用いた以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。
【0137】
〔比較例5〕
塗布液B−2の光感応性酸発生剤を、酢酸ナトリウムの1質量%水溶液の0.12gに変更した塗布液B−4を用い、工程(III)の紫外線照射を、90℃で120分間の加熱に変更した以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。走査型電子顕微鏡で観察したところ硬化物層の表面にモスアイ構造(平均間隔:約100nm、高さ:約200nm)が形成されていたが、物品の製造時間が長くなった。
【0138】
〔実施例7〕
塗布液B−1に、ITO微粒子(シーアイ化成ナノテック社製、ITRANB15WT%−G180、15質量%アルコール分散液、平均粒子径:40nm)の8.3gを追加した塗布液B−5を用いた以外は、実施例4と同様にして、物品を得た。硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。硬化物層の屈折率は、実施例4よりも高屈折率化していた。
【0139】
〔実施例8〕
塗布液B−5のITO微粒子の量を2倍にした塗布液B−6を用いた以外は、実施例7と同様にして、物品を得た。硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。硬化物層の屈折率は、実施例4、7よりも高屈折率化していた。
【0140】
〔実施例9〕
塗布液B−1に、酸化チタン微粒子(シーアイ化成ナノテック社製、RTTANB15WT%−T12、15質量%アルコール分散液、平均粒子径:21nm)の8.3gを追加した塗布液B−7を用いた以外は、実施例4と同様にして、物品を得た。硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。硬化物層の屈折率は、実施例4よりも高屈折率化していた。
【0141】
〔実施例10〕
塗布液B−7の酸化チタン微粒子の量を2倍にした塗布液B−8を用いた以外は、実施例9と同様にして、物品を得た。硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。硬化物層の屈折率は、実施例4、9よりも高屈折率化していた。
【0142】
〔実施例11〕
メチルシリケートオリゴマー(コルコート社製、メチルシリケート53A、平均約7量体、平均分子量:約789)の23.6g[0.03mol]、メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、分子量:136)の40.8g[0.3mol]、2−プロパノールの19.7g、イオン交換水の24.8gを混合し、撹拌して均一な溶液とした。さらに、撹拌しつつ80℃で3時間加熱し、加水分解・縮合を行い、固形分濃度30質量%のオリゴマー液Cを得た。GPCにより測定したポリスチレン換算質量平均分子量は6400であった。なお、固形分濃度とは、完全に加水分解・縮合した場合に得られるシロキサン化合物を溶液全体に対して算出した質量分率を意味する。
【0143】
オリゴマー液Cの2.00g、プロピレングリコールモノメチルエーテルの0.25g、γ−ブチロラクトンの0.20g、シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、L−7001)の1質量%γ−ブチロラクトン溶液の0.25g、光感応性酸発生剤(三新化学工業社製、SI―80L)の50質量%γ−ブチロラクトン溶液の0.05gを室温下で1分間撹拌し、塗布液C−1を得た。
塗布液C−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。また、硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。
【0144】
〔実施例12〕
塗布液C−1に、氷晶石微粒子(シーアイ化成ナノテック社製、NAAF−E47、15質量%分散液、平均粒子径:94nm)の1.3gを追加した塗布液C−2を用いた以外は、実施例11と同様にして、物品を得た。硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。硬化物層の屈折率は、実施例11よりも低屈折率化していた。
【0145】
〔実施例13〕
塗布液C−2の氷晶石微粒子の量を2倍にした塗布液C−3を用いた以外は、実施例12と同様にして、物品を得た。硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。硬化物層の屈折率は、実施例11よりも低屈折率化していた。
【0146】
〔実施例14〕
塗布液C−2の氷晶石微粒子の量を3倍にした塗布液C−4を用いた以外は、実施例12と同様にして、物品を得た。硬化物層の屈折率を測定した。結果を表2に示す。硬化物層の屈折率は、実施例11よりも低屈折率化していた。
【0147】
〔参考例1〕
塗布液A−1の5mL程度をアルミフォイル製容器(5cmφ)に流しいれ、一昼夜室温で乾燥させた後、アルミフォイルから固形物を剥がしとり、TG−DTA測定用のサンプルとした。TG−DTA測定を行ったところ、570℃で26%の質量減少が見られ、高耐熱性を有する素材であることが分かった。結果を表3に示す。
【0148】
〔参考例2〕
参考例1と同様にして塗布液B−1からサンプルを作製し、TG−DTA測定を行ったところ、578℃で16.5%の質量減少が見られ、高耐熱性を有する素材であることが分かった。結果を表3に示す。
【0149】
〔参考例3〕
参考例1と同様にして塗布液C−1からサンプルを作製し、TG−DTA測定を行ったところ、655℃で7.6%の質量減少が見られ、高耐熱性を有する素材であることが分かった。結果を表3に示す。
【0150】
〔参考例4〕
アクリル系の樹脂組成物(PMMA、三菱レイヨン社製、アクリライトL)のTG−DTA測定を行ったところ、340℃で100%の質量減少が見られ、樹脂材料が耐熱性に乏しいことが確認された。結果を表3に示す。
【0151】
〔実施例15〕
工程(II)を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。走査型電子顕微鏡で観察したところ硬化物層の表面にモスアイ構造(平均間隔:約100nm、高さ:約200nm)が形成されていた。
【0152】
工程(II):
モールドaの表面の塗布液層およびアクリルフィルムxの表面の塗布液層を、90℃で10分間加熱し、さらに コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ(実施例1と同じ)を用いて、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射して、部分硬化物層を形成した。
【0153】
〔実施例16〕
工程(I):
モールドaの表面に、塗布液A−1を適量滴下し、バーコーターNo.26を用いて乾燥後の厚さが3〜4μmになるように塗布し、塗布液層を形成した。
【0154】
工程(II):
モールドaの表面の塗布液層を、90℃で4分間加熱し、さらに コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ(実施例1と同じ)を用いて、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射して、部分硬化物層を形成した。
【0155】
工程(III):
アクリルフィルムxの表面に、50mW/cmのエキシマランプ(MDエキシマー社製、MEIRA−S−1−200)を用いて、酸素濃度2%雰囲気下で30秒間紫外線を照射し、アクリルフィルムxの表面処理を行った。
部分硬化物層を介してモールドaとアクリルフィルムxとを重ね、ゴムロールで加圧して貼り合わせた後、90℃で10分加熱した。
コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ(実施例1と同じ)を用いて、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を、アクリルフィルムx側から部分硬化物層に照射し、硬化物層を形成した。
【0156】
工程(IV):
硬化物層からモールドaを離型して、複数の突起を有する硬化物層がアクリルフィルムxの表面に形成された物品を得た。結果を表1に示す。走査型電子顕微鏡で観察したところ硬化物層の表面にモスアイ構造(平均間隔:約100nm、高さ:約200nm)が形成されていた。
【0157】
〔比較例6〕
工程(II)を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。結果を表1に示す。走査型電子顕微鏡で観察したところ部分硬化物層同士が貼り合わせできず、モールドaの微細凹凸構造は転写できていなかった。
【0158】
工程(II):
モールドaの表面の塗布液層およびアクリルフィルムxの表面の塗布液層を、90℃で10分間加熱し、さらに コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ(実施例1と同じ)を用いて、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射した後、90℃で30分間加熱し、部分硬化物層を形成した。
【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
〔実施例17〕
メチルトリメトキシシラン(多摩化学社製)の3.68g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−103)の0.67g、ジメチルジメトキシシラン(信越化学社製、AY43−004)の0.41g、イオン交換水の0.88g、プロピレングリコールモノメチルエーテルの1.00g、γ−ブチロラクトンの0.75g、シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、L−7001)の0.05g、光感応性酸発生剤(三新化学工業社製、SI―80L)の50質量%γ−ブチロラクトン溶液の0.1gを室温下で15分間撹拌し、塗布液A−4を得た。
【0163】
工程(I):
樹脂モールドbおよびガラス板y(コーニング社製、イーグルXG、長さ:5cm、幅:5cm)のそれぞれの表面に、塗布液A−4を適量滴下し、スピンコーターで500rpmで乾燥後の厚さが1〜3μmになるように塗布し、塗布液層を形成した。塗布性を評価した。結果を表4に示す。
【0164】
工程(II):
樹脂モールドbの表面の塗布液層およびガラス板yの表面の塗布液層を、90℃で約4分間加熱し、部分硬化物層を形成した。
【0165】
工程(III):
部分硬化物層を介して樹脂モールドbとガラス板yとを重ね、ゴムロールで加圧して貼り合わせた後、90℃で10分加熱した。
コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ(オーク製作所社製、紫外線照射装置、ハンディーUV−1200、QRU−2161型)を用いて、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を、ガラス板y側から部分硬化物層に照射し、硬化物層を形成した。
【0166】
工程(IV):
硬化物層から樹脂モールドbを離型して、複数の突起を有する硬化物層がガラス板yの表面に形成された物品を得た。硬化物層の突起の平均間隔、高さを求め、樹脂モールドbの反転構造が得られているかを走査電子顕微鏡で観察した。結果を表4に示す。塗布液の塗布性に優れ、硬化物層に気泡も残存せず、図8から図15に示すように、樹脂モールドbの反転構造が得られていた。
【0167】
〔実施例18〕
シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、L−7001)の0.1gを用いた以外は、塗布液A−4と同様に調製し、塗布液A−5を得た。
塗布液A−5を用いた以外は、実施例17と同様にして、物品を得た。結果を表4に示す。
【0168】
〔実施例19〕
シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、L−7001)の0.5gを用いた以外は、塗布液A−4と同様に調製し、塗布液A−6を得た。
塗布液A−6を用いた以外は、実施例17と同様にして、物品を得た。結果を表4に示す。
【0169】
〔実施例20〕
シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、L−7001)の1.0gを用いた以外は、塗布液A−4と同様に調製し、塗布液A−7を得た。
塗布液A−7を用いた以外は、実施例17と同様にして、物品を得た。結果を表4に示す。
【0170】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、光学部材(反射防止物品、回折格子物品、光散乱物品等)、有機ELの光取り出し構造付基材、太陽電池基材向けの光閉じ込め構造付基材等の効率的な量産にとって有用である。
【符号の説明】
【0172】
1 物品
10 基材
20 硬化物層
22 突起(微細凹凸構造)
24 塗布液層
25 塗布液層
26 部分硬化物層
27 部分硬化物層
28 部分硬化物層
32 細孔(微細凹凸構造)
40 モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細凹凸構造を有する硬化物層が基材の表面に形成された物品を製造する方法であって、
下記の工程(I)〜(IV)を有する、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
(I)微細凹凸構造を表面に有するモールドの該表面に、下記式(A)で表わされる化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選ばれる1種以上と、光感応性酸発生剤と、レベリング剤とを含む塗布液を塗布して、塗布液層を形成する工程。
Si(OR ・・・(A)。
ただし、Rは、アルキル基またはアリール基であり、Rは、アルキル基であり、xは、0〜3の整数であり、x+yは、4である。
(II)前記塗布液層を部分硬化させて、ナノインデンテーション測定において、0.4mN試験荷重がかかった時の押し込み深さが、0.18μm以上である部分硬化物層を形成する工程。
(III)前記部分硬化物層を介して前記モールドと基材とを重ねた後、前記部分硬化物層に活性エネルギー線を照射することによって前記部分硬化物層をさらに硬化させて、硬化物層を形成する工程。
(IV)前記硬化物層から前記モールドを離型して、微細凹凸構造を有する硬化物層が前記基材の表面に形成された物品を得る工程。
【請求項2】
微細凹凸構造を有する硬化物層が基材の表面に形成された物品を製造する方法であって、
下記の工程(I)〜(IV)を有する、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
(I)微細凹凸構造を表面に有するモールドの該表面に、下記式(A)で表わされる化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選ばれる1種以上と、光感応性酸発生剤と、レベリング剤とを含む塗布液を塗布して、塗布液層を形成する工程。
Si(OR ・・・(A)。
ただし、Rは、アルキル基またはアリール基であり、Rは、アルキル基であり、xは、0〜3の整数であり、x+yは、4である。
(II)前記塗布液層を部分硬化させて、赤外吸収スペクトルにおける、シロキサン結合に起因するピーク面積A1と、シラノール基に起因するピーク面積A2との比(A1/A2)が、3〜120である部分硬化物層を形成する工程。
(III)前記部分硬化物層を介して前記モールドと基材とを重ねた後、前記部分硬化物層に活性エネルギー線を照射することによって前記部分硬化物層をさらに硬化させて、硬化物層を形成する工程。
(IV)前記硬化物層から前記モールドを離型して、微細凹凸構造を有する硬化物層が前記基材の表面に形成された物品を得る工程。
【請求項3】
さらに下記の工程(I’)を有する、請求項1または2に記載の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
(I’)前記工程(II)の前に、基材の表面に、前記式(A)で表わされる化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選ばれる1種以上と、光感応性酸発生剤と、レベリング剤とを含む塗布液を塗布して、塗布液層を形成する工程。
【請求項4】
前記塗布液が、さらに平均粒子径が250nm以下の微粒子を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
【請求項5】
前記微粒子が、氷晶石、酸化インジウムスズ、または酸化チタンである、請求項4に記載の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−228674(P2011−228674A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71767(P2011−71767)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】