説明

微細加工方法及び微細加工装置

【課題】 比較的容易な操作で高精度な修正を可能とし、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止する。
【解決手段】 原子間力顕微鏡の自由端に探針1が形成されたカンチレバー11と、上記カンチレバー11を駆動して探針1も駆動する駆動手段であるXYZスキャナー12と、上記探針1にフェムト秒レーザー3を照射するフェムト秒レーザー光源4と対物レンズ5により構成されるフェムト秒レーザー照射手段を有し、上記探針1を一主面上にパターンが形成されてなるサンプル6に相対向させ、上記サンプル6上に形成されたパターンの余剰部分に接触させて駆動することにより、上記余剰部分を除去し、余剰部分除去後の探針1に付着している加工屑2にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザー3を照射し、上記加工屑2をレーザーアブレーションで除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路等の微細パターンの余剰部分を除去する微細加工方法及び微細加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化要求に対してリソグラフィは縮小投影露光装置の光源の波長の短波長化と高NA化と位相シフトマスクといった超解像技術や変形照明技術で対応してきた。そして、縮小投影露光装置の転写の原版で無欠陥であることが要求されるフォトマスクの欠陥修正は従来レーザーや集束イオンビームを用いて行われてきた。
【0003】
しかし、レーザーでは分解能が不十分で最先端の微細なパターンの欠陥は修正できなかった。一方、集束イオンビーム(以下、FIBと称する。)においては、縮小投影露光装置の光源の波長の短波長化により、プライマリービームとして使用するガリウムの注入によるガラス部のイメージングダメージ(透過率の低下)が問題となってきている。このため、微細なパターンの欠陥が修正できてイメージングダメージのない欠陥修正技術が求められている。なお、FIBにおいては、ガス支援エッチングを導入してガラス部の透過率の改善が図られているが、高いエッチレートで加工できる支援ガスが存在しないクロムマスクでは、ガス支援エッチングで透過率が改善されるものの、黒欠陥修正個所(以下、余剰部分と称する。)が除去されきれずにその透過率の低下が問題となっている。
【0004】
上記のような要望に応えて、最近ではフォトマスクの余剰部分に対して、低荷重の接触モードや間欠的接触モードではイメージングダメージがなく、高分解能で高い位置制御性を持った原子間力顕微鏡(AFM)を用い、被加工材質となる余剰部分よりも硬い材質よりなる探針で余剰部分を物理的に除去する原子間力顕微鏡スクラッチ加工が適用されるようになってきている(非特許文献1参照)。
【0005】
もちろんこの方法ではFIBのようにガラス部にガリウムが注入されることがないので修正後の形状が良くても透過率が悪いという不都合は生じない。しかも、比較的容易な操作でフォトマスクの修正が可能である。しかし、この加工方法では加工部周辺に余剰部分の材料でできた加工屑が堆積すると同時に加工中に探針先端に加工屑が付着するという問題が生じている。
【0006】
上述のように加工屑が探針先端に付着すると、探針先端に突起が2つあるときには両方の突起が原子間力を検出して重ね合わせた(コンボリューションした)像を形成してしまうダブルチップイメージになり、加工領域の高精度位置決めができなくなるため、探針先端に付着した加工屑を除去する必要がある。
【0007】
また探針先端へ加工屑が蓄積して付着すると、探針が加工針として機能せず、余剰部分を削れなくなることがあり、この場合も加工能力を回復するためには探針先端に付着した加工屑除去を除去する必要があった。
【0008】
そこで、この探針先端に付着した加工屑を除去する目的で、上記探針をクリーニングパターンである軟らかい材質に押し付けて走査したり、クリーニングパターンである急峻なパターンを高い荷重をかけて走査していた。
【0009】
しかしながら、これらのクリーニングパターンはマスクの外に置かれていてクリーニングのたびにステージ移動が必要で時間がかかり連続的に長時間の作業が不可能であり、熱ドリフトによる加工精度の低下の原因にもなっていた。熱ドリフトとは、熱による材料の膨張、収縮の時間的変位のことで、この時間的変位のため同じ位置を観察しているつもりでも視野のずれが生じてくる。例えば、フォトマスクが載置されるステージをボールネジと称されるネジを使用して長距離移動させると摩擦により熱が発生しボールネジが膨張する熱ドリフトが生じる(時間が経つと収縮に転じる)ため、所望の位置に到達してステージを停止させてもこの熱ドリフトのためにステージ上のフォトマスクの視野は時々刻々ずれ、加工すべき位置からずれていくため加工の精度が低下してしまう。
【0010】
またパルスの短いフェムト秒レーザーを用いることで加工時の熱的な効果を減らし、下地のガラス基板へのダメージが殆どないクロム膜やMOSiON位相シフト膜のレーザーアブレーション加工ができるようになってきている(非特許文献2参照)。上記熱的な効果とは、パルス幅が長いと吸収されたレーザーのエネルギーが化学的な結合を切る以外に格子振動のエネルギーにも変換され温度が上昇し、この熱によりレーザーが吸収されないはずのまわりの材料も変性してしまうことを示す。なお、フォトマスクとしてクロムマスクに用いた場合にはレーザーを照射したクロム膜の下地のガラスも熱のダメージを受け抉れ、この抉れにより修正個所の光学特性が悪くなることがある。一方、フェムト秒レーザーを使うとパルス幅が短く殆ど格子振動に変換されないため、まわりのレーザーを吸収しないはずの材料も変性されることがなくなる。
【非特許文献1】Y.Morikawa,H.Kokubo,M.Nishiguchi,N.Hayashi,R.White,R.Bozak,and L.Terrill,Proc.of SPIE 5130 520−527(2003)
【非特許文献2】R.White,J.LeClaire,T.Robinson,A.Dinsdale,R.Bozak, and D.A.Lee, Proc.of SPIE 6349 6349F−1−6349F−11(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正を可能とし、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止する微細加工方法及び微細加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第1の発明は、原子間力顕微鏡のカンチレバーの自由端に形成された探針を、上記探針と相対向して配されるサンプル上に形成されたパターンの余剰部分に接触させて駆動することにより、上記余剰部分を除去する微細加工方法において、余剰部分除去後の探針に付着している加工屑にフェムト秒レーザーを照射し、上記加工屑をレーザーアブレーションで除去することを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る第1の発明においては、原子間力顕微鏡の探針を用いてパターンの加工を行うことから、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正が可能となる。
【0014】
前述したように、フェムト秒レーザーを使うとパルス幅が短く殆ど格子振動に変換されないため、余剰部分の加工屑が付着している探針を変性することなく、加工屑だけを効率的に除去することが可能である。また、探針をパターン上から外すことなく加工屑を除去できることから、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止することが可能である。
【0015】
本発明に係る第2の発明は、上記加工屑にフェムト秒レーザーを照射する際、上記探針と上記サンプルの間に保護板を配し、上記レーザーアブレーションで除去された加工屑が上記サンプルに付着することを防止することを特徴とするものである。
【0016】
上述のようにして探針に付着した加工屑を除去すると、サンプル上に加工屑が落下してしまう可能性がある。しかしながら上記のように保護板を設ければ、サンプルを保護板で覆うこととなり、加工屑のサンプルへの付着が防止される。
【0017】
本発明に係る第3の発明は、原子間力顕微鏡の自由端に探針が形成されたカンチレバーと、上記カンチレバーを駆動して探針も駆動する駆動手段よりなる微細加工装置において、上記探針にフェムト秒レーザーを照射するフェムト秒レーザー照射手段を有し、上記探針を一主面上にパターンが形成されてなるサンプルに相対向させ、上記サンプル上に形成されたパターンの余剰部分に接触させて駆動することにより、上記余剰部分を除去し、余剰部分除去後の探針に付着している加工屑にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザーを照射し、上記加工屑をレーザーアブレーションで除去することを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る第4の発明は、上述したような微細加工装置において、上記フェムト秒レーザー照射手段が、上記探針の上記サンプルと相対向する方向と略直交する方向からフェムト秒レーザーを照射するように設けられており、余剰部分除去後の上記探針の上記サンプルと相対向する方向と略直交する方向の側面にフェムト秒レーザーが照射されて上記探針に付着している加工屑を除去することを特徴とするものである。
このような構成を有する微細加工装置においては、加工屑が比較的付着し易い探針の側面の加工屑を効率的に除去することが可能となる。
【0019】
本発明に係る第5の発明は、上述したような微細加工装置において、上記探針のパターンへの接触端側に保護板が配されていることを特徴とするものである。
本発明に係る第6の発明は、上述したような微細加工装置において、上記探針の上記サンプルと相対向する方向を回転軸として上記探針を回動させる回転機構を有し、余剰部分除去後に上記探針を回動させながらフェムト秒レーザーを照射し、上記探針に付着した加工屑を除去することを特徴とするものである。
このような構成を有する微細加工装置においては、探針を回動させながらフェムト秒レーザーを照射することから、加工屑が比較的付着し易い探針の側面全体の加工屑を効率的に除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、原子間力顕微鏡の探針を用いてパターンの加工を行うことから、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正が可能となる。
前述したように、フェムト秒レーザーを使うと、余剰部分の加工屑が付着している探針を変性することなく、加工屑だけを効率的に除去することが可能である。また、探針をパターン上から外すことなく加工屑を除去できることから、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止することが可能であり、スループットが向上される上、高精度な加工が可能となる。
【0021】
また、本発明においては、加工屑にフェムト秒レーザーを照射する際、探針とサンプルの間に保護板を配することから、サンプルを保護板で覆うこととなり、加工屑のサンプルへの付着が防止され、更に高精度な加工が可能となる。
さらに本発明においては、探針を回動させながらフェムト秒レーザーを照射することから、加工屑が比較的付着し易い探針の側面全体の加工屑を効率的に除去することが可能となり、更なるスループットの向上と高精度な加工が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
【実施例1】
【0023】
以下に本発明に係る微細加工装置の第1の実施例について図1を用いて詳細に説明する。
【0024】
本実施例の微細加工装置は、図1に示すように、原子間力顕微鏡の自由端に探針1が形成されたカンチレバー11と、上記カンチレバー11を駆動して探針1も駆動する駆動手段であるXYZスキャナー12と、上記探針1にフェムト秒レーザー3を照射するフェムト秒レーザー光源4と対物レンズ5により構成されるフェムト秒レーザー照射手段を有し、上記探針1を一主面上にパターンが形成されてなるサンプル6に相対向させ、上記サンプル6上に形成されたパターンの余剰部分に接触させて駆動することにより、上記余剰部分を除去し、余剰部分除去後の探針1に付着している加工屑2にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザー3を照射し、上記加工屑2をレーザーアブレーションで除去するものである。
【0025】
なお、本実施例の微細加工装置においては、上記フェムト秒レーザー照射手段が、上記探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向からフェムト秒レーザー3を照射するように設けられており、余剰部分除去後の上記探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面にフェムト秒レーザー3が照射されて上記探針1に付着している加工屑2を除去するようになされている。
【0026】
原子間力顕微鏡はカンチレバー (片持ち梁カンチレバー)11の先端に取り付けられた先鋭な探針1をサンプル6表面に近づけ、探針1とサンプル6表面との間に働く原子間力をカンチレバー11の変位で検出し、原子間力が一定になるようにXYZスキャナー(ピエゾ素子もしくはボイスコイルモーター)12によりカンチレバー11の高さを制御しながらXY方向にラスター走査して微細領域の表面形状を得る装置である。なお、カンチレバー11の変位はカンチレバー先端背面にレーザー光源14からレーザー光13を照射し、反射したレーザー光13を4分割フォトディテクター15で検出してその結果で制御する、もしくはカンチレバー11の根元にピエゾ効果のある材料を用いてカンチレバー11の変位によるひずみを抵抗の変化として検出してその結果で制御することで行っている。
【0027】
このとき、本実施例の微細加工装置においては、上述のように、探針1によりサンプル6上に形成される図示しないパターンの余剰部分を除去するが、原子間力顕微鏡を流用していることから、原子間力顕微鏡の有する高分解能表面形状観察及び位置決め能力を用いて加工領域である余剰部分(いわゆる黒欠陥)の決定と、決定した加工領域のみ高い位置決め能力を用いて高い荷重をかけるもしくはZフィードバックを切ってZ方向の高さを一定とした状態で局所的に機械的な除去加工を行うことで黒欠陥の修正を行う。
【0028】
通常の原子間力顕微鏡と本実施例の微細加工装置に流用されている原子間力顕微鏡との差異は、加工抵抗が働く高い荷重もしくはZフィードバックを切ってZ方向の高さを一定とした状態で局所的に機械的な除去加工を行う際に、加工位置がずれないよう、カンチレバー11が加工抵抗に負けてねじれ、切削できないような状態とならないよう、カンチレバー11としてバネ定数の高いものを用いている点と、黒欠陥を確実に切削できるように黒欠陥を構成する被加工材料よりも硬い材質の探針1(加工探針)を用いている点である。
【0029】
高精度な加工を実現するために上述の原子間力顕微鏡のように通常よりも硬いカンチレバーと硬い探針を用いていても、微細加工装置としては、同時に、加工領域認識のための観察時には加工する必要のない領域にダメージを与えてしまうと欠陥を作り込んでしまうことになるため、観察時にはダメージを与えないことが必要である。これを可能にするためにコンタクトモードよりも原子間力の検出感度が高い(探針と試料(サンプル)の間のより少ない相互作用でも観察できるためダメージの少ない)ダイナミックモードで加工領域認識のための観察を行っている。ダイナミックモード(振幅変調型ダイナミックモード)はカンチレバー11を共振させた状態でカンチレバー11の振動振幅が一定となるように探針1とサンプル6間の距離を制御しXY走査点に対応した高さ情報を画像化することで観察を行う。
【0030】
そして、本実施例の微細加工装置においては、黒欠陥修正中に例えばダイヤモンドよりなる探針1に加工屑2が付着し、ダブルチップイメージを生じたり、削れなくなった場合に、加工を中断して上述したように探針1に付着している加工屑2にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザー3を照射し、上記加工屑2をレーザーアブレーションで除去する。
【0031】
具体的には、図1a中に示すように、探針1をサンプル6から引き上げた状態で、フェムト秒レーザー光源4よりフェムト秒レーザー3(例えば波長248nm、周期150fs、出力3〜7mJ)を対物レンズ5で集光して照射し、上述のように探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面に付着した加工屑2を図1(b)に破線で示すようにレーザーアブレーションで除去する。
【0032】
このとき使用するフェムト秒レーザーの波長はクロム(酸化クロム)やMoSiONなどの加工屑は光を吸収するが下地の探針1を構成する材料(例えばダイヤモンドやBN)は光を吸収しない波長とする。ただし、探針1を構成する例えばダイヤモンドが削れないようにフェムト秒レーザーの出力は数10mJを超えないようにする。なお、フェムト秒レーザー照射位置の確認や調整は同じ波長のUVランプを同じ光軸で同じ対物レンズで照射し、透過光または反射光をUV光に感度のあるCCDカメラで画像化して行う。
本実施例の微細加工装置においては、原子間力顕微鏡の探針を用いてパターンの加工を行うことから、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正が可能となる。
【0033】
前述したように、フェムト秒レーザーを使うとパルス幅が短く殆ど格子振動に変換されないため、余剰部分の加工屑2が付着している探針1を変性することなく、加工屑2だけを効率的に除去することが可能である。また、探針1をパターン上から外すことなく加工屑2を除去できることから、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止することが可能である。
【0034】
また、本実施例の微細加工装置においては、探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面にフェムト秒レーザー3が照射されて上記探針1に付着している加工屑2を除去するようになされていることから、加工屑2が比較的付着し易い探針1の側面の加工屑2を効率的に除去することが可能となる。
従って、本実施例の微細加工装置においては、原子間力顕微鏡の探針を用いてパターンの加工を行うことから、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正が可能となる。
【0035】
また、本実施例の微細加工装置においては、フェムト秒レーザーを使っていることから、余剰部分の加工屑2が付着している探針1を変性することなく、加工屑2だけを効率的に除去することが可能である。また、探針1をパターン上から外すことなく加工屑2を除去できることから、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止することが可能であり、スループットが向上される上、高精度な加工が可能となる。
【実施例2】
【0036】
以下に本発明に係る微細加工装置の第2の実施例について図2を用いて詳細に説明する。
【0037】
本実施例の微細加工装置は、第1の実施例と同様に、原子間力顕微鏡の自由端に探針1が形成されたカンチレバーと、上記カンチレバーを駆動して探針1も駆動する図示しない駆動手段と、上記探針1にフェムト秒レーザー3を照射するフェムト秒レーザー光源4と対物レンズ5により構成されるフェムト秒レーザー照射手段を有し、上記探針1を一主面上にパターンが形成されてなるサンプル6に相対向させ、上記サンプル6上に形成されたパターンの余剰部分に接触させて駆動することにより、上記余剰部分を除去し、余剰部分除去後の探針1に付着している加工屑2にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザー3を照射し、上記加工屑2をレーザーアブレーションで除去するものである。
【0038】
なお、本実施例の微細加工装置においては、上記フェムト秒レーザー照射手段が、上記探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向からフェムト秒レーザー3を照射するように設けられており、余剰部分除去後の上記探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面にフェムト秒レーザー3が照射されて上記探針1に付着している加工屑2を除去するようになされている。
【0039】
本実施例においては、実施例1と同様の構成を有する部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
本実施例においても、原子間力顕微鏡はカンチレバー (片持ち梁カンチレバー)の先端に取り付けられた先鋭な探針1をサンプル6表面に近づけ、探針1とサンプル6表面との間に働く原子間力をカンチレバーの変位で検出し、原子間力が一定になるように図示しないXYZスキャナー(ピエゾ素子もしくはボイスコイルモーター)によりカンチレバーの高さを制御しながらXY方向にラスター走査して微細領域の表面形状を得る装置である。なお、カンチレバーの変位は、実施例1と同様にして制御している。
【0041】
本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、探針1によりサンプル6上に形成される図示しないパターンの余剰部分を除去するが、原子間力顕微鏡を流用していることから、原子間力顕微鏡の有する高分解能表面形状観察及び位置決め能力を用いて加工領域である余剰部分(いわゆる黒欠陥)の決定と、決定した加工領域のみ高い位置決め能力を用いて高い荷重をかけるもしくはZフィードバックを切ってZ方向の高さを一定とした状態で局所的に機械的な除去加工を行うことで黒欠陥の修正を行う。
【0042】
通常の原子間力顕微鏡と本実施例の微細加工装置に流用されている原子間力顕微鏡との差異は、実施例1と同様に、加工抵抗が働く高い荷重もしくはZフィードバックを切ってZ方向の高さを一定とした状態で局所的に機械的な除去加工を行う際に、加工位置がずれないよう、カンチレバーが加工抵抗に負けてねじれ、切削できないような状態とならないよう、カンチレバーとしてバネ定数の高いものを用いている点と、黒欠陥を確実に切削できるように黒欠陥を構成する被加工材料よりも硬い材質の探針1(加工探針)を用いている点である。
【0043】
通常よりも硬いカンチレバーと硬い探針を用いている本実施例に流用されている原子間力顕微鏡においては、実施例1の微細加工装置と同様に加工領域認識のための観察時には、加工する必要のない領域にもダメージを与えてしまうことを回避するべく、カンチレバーを共振させた状態でカンチレバーの振動振幅が一定となるように探針1とサンプル6間の距離を制御して観察を行い、ダメージの少ない、いわゆるダイナミックモードで観察を行っている。
【0044】
そして、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、黒欠陥修正中に例えばダイヤモンドよりなる探針1に加工屑2が付着し、ダブルチップイメージを生じたり、削れなくなった場合に、加工を中断して上述したように探針1に付着している加工屑2にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザー3を照射し、上記加工屑2をレーザーアブレーションで除去する。
【0045】
具体的には、図2a中に示すように、探針1をサンプル6から引き上げた状態で、フェムト秒レーザー光源4よりフェムト秒レーザー3(例えば波長248nm、周期150fs、出力3〜7mJ)を対物レンズ5で集光して照射し、上述のように探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面に付着した加工屑2を図2(b)に破線で示すようにレーザーアブレーションで除去する。
【0046】
このとき使用するフェムト秒レーザーの波長はクロム(酸化クロム)やMoSiONなどの加工屑は光を吸収するが下地の探針1を構成する材料(例えばダイヤモンドやBN)は光を吸収しない波長とする。ただし、探針1を構成する例えばダイヤモンドが削れないようにフェムト秒レーザーの出力は数10mJを超えないようにする。なお、フェムト秒レーザー照射位置の確認や調整は同じ波長のUVランプを同じ光軸で同じ対物レンズで照射し、透過光または反射光をUV光に感度のあるCCDカメラで画像化して行う。
そして、本実施例の微細加工装置においては、特に、図2中に示すように、上記探針1のパターンへの接触端側に保護板7が配されている。
【0047】
具体的には、図2a中に示すように、探針1をサンプル6から引き上げた状態で、フェムト秒レーザー光源4よりフェムト秒レーザー3(例えば波長248nm、周期150fs、出力3〜7mJ)を対物レンズ5で集光して照射し、上述のように探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面に付着した加工屑2をレーザーアブレーションで除去する際に、探針1とサンプル6の間に保護板7を配する。
【0048】
上述のようにして探針1に付着した加工屑2を除去すると、サンプル6上に加工屑2が落下してしまう可能性がある。しかしながら本実施例のように保護板7を設ければ、サンプル6を保護板7で覆うこととなり、加工屑2のサンプルへ6の付着が防止され、更に高精度な加工が可能となる。
【0049】
また、本実施例の微細加工装置においては、図2(b)に示すように探針1に付着した加工屑2が破線で示すように除去された後、落下した加工屑8が付着した保護板7をサンプル6上から外し、加工作業を継続するようにすれば良く、スループットを更に向上することが可能である。
なお、本実施例の微細加工装置においても実施例1の微細加工装置と同様の効果を有することは言うまでもない。
【0050】
すなわち、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、原子間力顕微鏡の探針を用いてパターンの加工を行うことから、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正が可能となる。
【0051】
前述したように、フェムト秒レーザーを使うとパルス幅が短く殆ど格子振動に変換されないため、余剰部分の加工屑2が付着している探針1を変性することなく、加工屑2だけを効率的に除去することが可能である。また、探針1をパターン上から外すことなく加工屑2を除去できることから、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止することが可能である。
【0052】
また、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面にフェムト秒レーザー3が照射されて上記探針1に付着している加工屑2を除去するようになされていることから、加工屑2が比較的付着し易い探針1の側面の加工屑2を効率的に除去することが可能となる。
【0053】
従って、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、原子間力顕微鏡の探針を用いてパターンの加工を行うことから、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正が可能となる。
【0054】
また、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、フェムト秒レーザーを使っていることから、余剰部分の加工屑2が付着している探針1を変性することなく、加工屑2だけを効率的に除去することが可能である。また、探針1をパターン上から外すことなく加工屑2を除去できることから、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止することが可能であり、スループットが向上される上、高精度な加工が可能となる。
【実施例3】
【0055】
以下に本発明に係る微細加工装置の第3の実施例について図3を用いて詳細に説明する。
【0056】
本実施例の微細加工装置は、第1の実施例と同様に、原子間力顕微鏡の自由端に探針1が形成されたカンチレバーと、上記カンチレバーを駆動して探針1も駆動する図示しない駆動手段と、上記探針1にフェムト秒レーザー3を照射するフェムト秒レーザー光源4と対物レンズ5により構成されるフェムト秒レーザー照射手段を有し、上記探針1を一主面上にパターンが形成されてなるサンプル6に相対向させ、上記サンプル6上に形成されたパターンの余剰部分に接触させて駆動することにより、上記余剰部分を除去し、余剰部分除去後の探針1に付着している加工屑2にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザー3を照射し、上記加工屑2をレーザーアブレーションで除去するものである。
【0057】
なお、本実施例の微細加工装置においては、上記フェムト秒レーザー照射手段が、上記探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向からフェムト秒レーザー3を照射するように設けられており、余剰部分除去後の上記探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面にフェムト秒レーザー3が照射されて上記探針1に付着している加工屑2を除去するようになされている。
【0058】
本実施例においては、実施例1と同様の構成を有する部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0059】
本実施例においても、原子間力顕微鏡はカンチレバー (片持ち梁カンチレバー)の先端に取り付けられた先鋭な探針1をサンプル6表面に近づけ、探針1とサンプル6表面との間に働く原子間力をカンチレバーの変位で検出し、原子間力が一定になるように図示しないXYZスキャナー(ピエゾ素子もしくはボイスコイルモーター)によりカンチレバーの高さを制御しながらXY方向にラスター走査して微細領域の表面形状を得る装置である。なお、カンチレバーの変位は、実施例1と同様にして制御している。
【0060】
本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、探針1によりサンプル6上に形成される図示しないパターンの余剰部分を除去するが、原子間力顕微鏡を流用していることから、原子間力顕微鏡の有する高分解能表面形状観察及び位置決め能力を用いて加工領域である余剰部分(いわゆる黒欠陥)の決定と、決定した加工領域のみ高い位置決め能力を用いて高い荷重をかけるもしくはZフィードバックを切ってZ方向の高さを一定とした状態で局所的に機械的な除去加工を行うことで黒欠陥の修正を行う。
【0061】
通常の原子間力顕微鏡と本実施例の微細加工装置に流用されている原子間力顕微鏡との差異は、実施例1と同様に、加工抵抗が働く高い荷重もしくはZフィードバックを切ってZ方向の高さを一定とした状態で局所的に機械的な除去加工を行う際に、加工位置がずれないよう、カンチレバーが加工抵抗に負けてねじれ、切削できないような状態とならないよう、カンチレバーとしてバネ定数の高いものを用いている点と、黒欠陥を確実に切削できるように黒欠陥を構成する被加工材料よりも硬い材質の探針1(加工探針)を用いている点である。
【0062】
通常よりも硬いカンチレバーと硬い探針を用いている本実施例に流用されている原子間力顕微鏡においては、実施例1の微細加工装置と同様に加工領域認識のための観察時には、加工する必要のない領域にもダメージを与えてしまうことを回避するべく、カンチレバーを共振させた状態でカンチレバーの振動振幅が一定となるように探針1とサンプル6間の距離を制御して観察を行い、ダメージの少ない、いわゆるダイナミックモードで観察を行っている。
【0063】
そして、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、黒欠陥修正中に例えばダイヤモンドよりなる探針1に加工屑2が付着し、ダブルチップイメージを生じたり、削れなくなった場合に、加工を中断して上述したように探針1に付着している加工屑2にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザー3を照射し、上記加工屑2をレーザーアブレーションで除去する。
【0064】
具体的には、図2a中に示すように、探針1をサンプル6から引き上げた状態で、フェムト秒レーザー光源4よりフェムト秒レーザー3(例えば波長248nm、周期150fs、出力3〜7mJ)を対物レンズ5で集光して照射し、ガルバノミラー10等反射して上述のように探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面に付着した加工屑2を図2(b)に破線で示すようにレーザーアブレーションで除去する。
【0065】
このとき使用するフェムト秒レーザーの波長はクロム(酸化クロム)やMoSiONなどの加工屑は光を吸収するが下地の探針1を構成する材料(例えばダイヤモンドやBN)は光を吸収しない波長とする。ただし、探針1を構成する例えばダイヤモンドが削れないようにフェムト秒レーザーの出力は数10mJを超えないようにする。なお、フェムト秒レーザー照射位置の確認や調整は同じ波長のUVランプを同じ光軸で同じ対物レンズで照射し、透過光または反射光をUV光に感度のあるCCDカメラで画像化して行う。
【0066】
本実施例の微細加工装置においては、特に、上記探針1の上記サンプル6と相対向する方向を回転軸として上記探針1を回転させる回転機構を有し、余剰部分除去後に上記探針1を回転させながらフェムト秒レーザー3を照射し、上記探針1に付着した加工屑2を除去するようにしている。
【0067】
具体的には、図3中に示すように、先端に探針1を有するカンチレバーの探針1が配されるのとは反対側にカンチレバーを回動させることにより探針1を回転させる探針回転機構9を有しており、図3(a)に示すように探針1の一側面に付着した加工屑2を除去した後、図3(b)に示すようにカンチレバーを回動させて探針1を回転させて探針1の反対側の側面の加工屑2を除去するようにしている。
【0068】
そして、探針1先端に付着した加工屑2を完全に除去できるまで探針1の回転とフェムト秒レーザー3のレーザーアブレーションによる加工屑2の除去を繰り返す。
本実施例の微細加工装置においては、探針1を回転させながらフェムト秒レーザーを照射することから、加工屑2が比較的付着し易い探針1の側面全体の加工屑2を効率的に除去することが可能となり、更なるスループットの向上と高精度な加工が可能となる。
なお、本実施例の微細加工装置においても実施例1の微細加工装置と同様の効果を有することは言うまでもない。
【0069】
すなわち、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、原子間力顕微鏡の探針を用いてパターンの加工を行うことから、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正が可能となる。
前述したように、フェムト秒レーザーを使うとパルス幅が短く殆ど格子振動に変換されないため、余剰部分の加工屑2が付着している探針1を変性することなく、加工屑2だけを効率的に除去することが可能である。また、探針1をパターン上から外すことなく加工屑2を除去できることから、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止することが可能である。
【0070】
また、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、探針1の上記サンプル6と相対向する方向と略直交する方向の側面にフェムト秒レーザー3が照射されて上記探針1に付着している加工屑2を除去するようになされていることから、加工屑2が比較的付着し易い探針1の側面の加工屑2を効率的に除去することが可能となる。
【0071】
従って、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、原子間力顕微鏡の探針を用いてパターンの加工を行うことから、比較的容易な操作でフォトマスク等の微細パターンの高精度な修正が可能となる。
【0072】
また、本実施例の微細加工装置においても、実施例1の微細加工装置と同様に、フェムト秒レーザーを使っていることから、余剰部分の加工屑2が付着している探針1を変性することなく、加工屑2だけを効率的に除去することが可能である。また、探針1をパターン上から外すことなく加工屑2を除去できることから、連続的に長時間の作業を可能とし、熱ドリフトによる加工精度の低下も防止することが可能であり、スループットが向上される上、高精度な加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明を適用した微細加工装置の第1の実施例を示す概略図である。
【図2】本発明を適用した微細加工装置の第2の実施例を示す概略図である。
【図3】本発明を適用した微細加工装置の第3の実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0074】
1 探針
2 加工屑
3 フェムト秒レーザー
4 フェムト秒レーザー光源
5 対物レンズ
6 サンプル
7 保護板
8 加工屑
9 探針回転機構
10 ガルバノミラー
11 カンチレバー
12 XYZスキャナー
13 レーザー光
14 レーザー光源
15 4分割フォトディテクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子間力顕微鏡のカンチレバーの自由端に形成された探針を、上記探針と相対向して配されるサンプル上に形成されたパターンの余剰部分に接触させて駆動することにより、上記余剰部分を除去する微細加工方法において、
余剰部分除去後の探針に付着している加工屑にフェムト秒レーザーを照射し、上記加工屑をレーザーアブレーションで除去することを特徴とする微細加工方法。
【請求項2】
上記加工屑にフェムト秒レーザーを照射する際、上記探針と上記サンプルの間に保護板を配し、上記レーザーアブレーションで除去された加工屑が上記サンプルに付着することを防止することを特徴とする請求項1に記載の微細加工方法。
【請求項3】
原子間力顕微鏡の自由端に探針が形成されたカンチレバーと、上記カンチレバーを駆動して探針も駆動する駆動手段よりなる微細加工装置において、
上記探針にフェムト秒レーザーを照射するフェムト秒レーザー照射手段を有し、
上記探針を一主面上にパターンが形成されてなるサンプルに相対向させ、上記サンプル上に形成されたパターンの余剰部分に接触させて駆動することにより、上記余剰部分を除去し、余剰部分除去後の探針に付着している加工屑にフェムト秒レーザー照射手段からフェムト秒レーザーを照射し、上記加工屑をレーザーアブレーションで除去することを特徴とする微細加装置。
【請求項4】
上記フェムト秒レーザー照射手段が、上記探針の上記サンプルと相対向する方向と略直交する方向からフェムト秒レーザーを照射するように設けられており、余剰部分除去後の上記探針の上記サンプルと相対向する方向と略直交する方向の側面にフェムト秒レーザーが照射されて上記探針に付着している加工屑を除去することを特徴とする請求項3に記載の微細加工装置。
【請求項5】
上記探針のパターンへの接触端側に保護板が配されていることを特徴とする請求項3から4のいずれかに記載の微細加工装置。
【請求項6】
上記探針の上記サンプルと相対向する方向を回転軸として上記探針を回動させる回転機構を有し、余剰部分除去後に上記探針を回動させながらフェムト秒レーザーを照射し、上記探針に付着した加工屑を除去することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の微細加装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−6378(P2009−6378A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171386(P2007−171386)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】