説明

急性心筋梗塞に関係する死亡率を減少させる方法

経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた心筋梗塞患者における死亡率を低下させる方法は、抗炎症性化合物をその患者に投与することを含む。一具体例において、その抗炎症性化合物は、補体成分に対する抗体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
技術分野
この開示は、心筋梗塞の患者における死亡率を減少させるための方法に関係する。一層詳細には、この開示は、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた心筋梗塞患者への抗炎症性化合物の投与に関係する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の背景
毎年、米国内で、約1,000,000人の患者が、急性心筋梗塞(MI)を生き延びている。急性MIにおいては、冠状動脈における血流の重大な制限が、心筋への減少した酸素の送達、及びその後の心筋組織の死(梗塞)をもたらす炎症反応のカスケードへと導く。経皮経管冠動脈形成術(PTCA)は、一次治療様式として、冠動脈疾患を有する多くの患者において広く用いられている。PTCAは、冠動脈疾患を有する患者の心筋の虚血を、内腔の閉塞を減少させて冠動脈血流を改善することにより軽減させることができる。この外科的手順の利用は、急速に増大した(年間、500,000件より多い)。PTCA後の狭窄は、重大な問題として残っており、これらの患者の25〜35%が、1〜3ヶ月以内に再狭窄を生じる。再狭窄は、有意の病的状態及び死亡を生じ、頻繁に、更なる介入例えば反復する血管形成術又は冠動脈バイパス外科手術を必要とする。
【0003】
血栓溶解及び経皮経管冠動脈形成術(PTCA)の出現が、治療された急性MI患者の約40〜90%で血流を回復させるにもかかわらず、更なる炎症反応(「再灌流障害」と呼ばれる)は、上首尾の血流回復後に、前に虚血であった心筋層に更なる組織損傷を生じる。心筋梗塞は、依然として、高い死亡率/罹患率を有している。MIポンプ機能不全に関連した重大な長期の臨床的病的状態及び死亡に加えて、上首尾の急性血行再建、臨床的提示、同時病的状態、及び梗塞の部位に依って、短期の病的状態が、5〜30%に及ぶ。それ故、急性MIにおける心筋組織の損傷に影響を与える更なる治療様式は、患者の罹患率及び死亡率を有意に低下させうるであろう。
【0004】
再灌流治療は、急性MI後の死亡率の低下に有益であることが示されてきた。一層早期の、一層完全な再灌流治療は、改善された生存と関係している。しかしながら、再灌流自体が、筋細胞ネクローシス、微小血管の傷害、心筋の激痛、及び不整脈を含む有害な副作用を生じうるという証拠がある。これらの現象の臨床的関連性についての幾つかの論争がある。再灌流障害の急性の機構は、完全には特性表示されていないが、次の幾つかの異なる機構によって引き起こされると考えられている:酸素遊離基の形成、細胞内カルシウムホメオスタシスの変化、好中球のリクルート、補体の活性化、撹乱された内皮機能、細胞エネルギー産生障害、及び細胞外コラーゲンマトリクスへの改変。
【0005】
心筋の虚血/再灌流(MI/R)傷害の病因論は、MI/R傷害のラットモデルにおいて研究され、その間に、抗C5治療が、細胞のアポトーシス、ネクローシス及び多型核(PMN)白血病細胞浸潤を、C3付着にもかかわらずに有意に阻止するということが注目された。この仕事は、最終的成分C5a及びC5b−9が、MI/R傷害における組織傷害のキーメディエーターであることを示唆している。この実験からの結果は、急性MIの患者における初期組織損傷並びに再潅流炎症反応の両者の減少における抗C5mAb療法の潜在的効力を示している。
【0006】
補体は、古典的経路又は代替経路の何れによって活性化されてもよい。これらは、C5が臨界的な役割を演じ、開裂してC5a及びC5bを形成する最終的な共通経路に合流する。C5aは、公知の最も強力なアナフィラトキシンであり、強力な前炎症性を有する。それは、平滑筋及び血管緊張の変化を誘導し、並びに血管の透過性を増大させる。それは又、好中球と内皮細胞の両方を活性化する。C5の開裂は又、C5b−9又は細胞膜傷害複合体の形成へも導き、これは、血小板及び内皮細胞の膨張、前血栓性微粒子の形成、並びに白血球及び内皮細胞の活性化を引き起こす。
【0007】
h5G1.1−scFvは、C5の前炎症性副生物への開裂を阻止するようにデザインされた抗C5モノクローナル抗体(mAb)である。(米国特許第6,355,245号参照、その開示を参考として本明細書中に援用する) 同時に、補体系のC5での遮断は、患者のC3bを生成する能力を保存し、これは、病原性微生物のオプソニン化及び免疫複合体クリアランスに臨界的である。
【0008】
ラットのC5に向けられたモノクローナル抗体を製造して、イン・ビボで、ラットにおいて試験して、MI/R誘導されたアポトーシス及びネクローシスにおける補体の役割を評価した。Vakeva等、Circulation, (22):2259-67 (1998)参照。心筋虚血を誘導したラットに投与した場合、抗ラットC5mAbは、そのラットにおけるMI/R誘導されたネクローシス及びPMNの浸潤を減少させ、MI/R誘導されたアポトーシスを減衰させた。
【0009】
不幸にも、再灌流動物モデルにおいて梗塞サイズを減少させることが示された殆どの薬剤は、大きい患者集団における研究において、失望させるものであった。例えば、CD11/CD18インテグリンレセプターの4つのイソ型の1つ又はすべてに対する抗体は、動物研究において、梗塞サイズを減少させることが示されてきた。しかしながら、ヒトでの研究において、1つのかかる抗体(Hu23F2G)は、梗塞サイズに如何なる効果を示すこともできなかった。(Faxon等、JACC, 第40巻、1199-1204頁、2002参照) Faxon等は又、如何なる有意の死亡率の減少又は、死亡率、抗体投薬量及びPTCA時のステントの使用の間の如何なる関係を認めることもできなかった。
【0010】
こうして、急性心筋梗塞に遭遇したときに再灌流傷害を減らして死亡率を改善することのできる薬剤に対する不適当な要求がある。1990年に、急性MIから3〜6ヶ月後の死亡率は、依然として、調べた患者集団に依って、約5〜10%である。更に、相当数の患者は、MIの兆しの後、数カ月〜数年以内に、鬱血性心不全(CHF)のために、院内心不全及びその後の再入院を経験する。新規な再灌流治療のための補助的治療が、再灌流傷害現象を更に減衰させて、急性MIの結果を改善するために必要である。
【0011】
ステントは、冠状動脈疾患の治療において有用であったが、それらの利用は、様々な望ましくない効果を引き起こしうる。例えば、ステントは、経時的に更に発展する中位の傷害を生じる血管壁に傷害を引き起こすことが見出されている。又、ステントは、更なる血管内ダメージをも引き起こすかも知れず、血管内に分かれた内腔を造ることにより潜在的に血流を歪めうる。ステントからの血管壁におけるダメージ及び流れている血液成分に対するダメージは又、急性に又は経時的に下流に運ばれる残骸をも生成しうる。これらの効果は、異なる種類の再灌流治療においてある程度存在しても、再灌流治療がステントの配置を伴う場合に、特に顕著である。
【0012】
それは、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた心筋梗塞患者における死亡率を低下させるのに有利であろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
今般、驚くべきことに、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた心筋梗塞患者における死亡率を低下させる方法が見出された。この方法は、抗炎症性化合物を、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた心筋梗塞患者に投与することを含む。一具体例においては、ある投与量の抗炎症性化合物を、血管形成術前に投与し、次いで、血管形成術後に経時的に投与する。この抗炎症性化合物は、例えば、NSAID、抗アポトーシス性化合物、インテグリン又は接着性分子に結合し或はそれらの生成及び/又は活性をブロックする分子、又は補体成分に結合し或はそれらの生成及び/又は活性をブロックする化合物(例えば、補体成分に対する抗体)であってよい。
【0014】
好適具体例の詳細な説明
この開示に従う方法を利用して、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた心筋梗塞患者における死亡率を、抗炎症性化合物を該患者に投与することによって減少させる。本発明の方法は、かかる患者の死亡率を、最大で約70%減少させることができる。
【0015】
ここに記載したこれらの方法で用いることのできる抗炎症性化合物は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)を包含する。このNSAIDSは、次のカテゴリーから選択することができる:プロピオン酸誘導体;酢酸誘導体;フェナム酸誘導体;ビフェニルカルボン酸誘導体;及びオキシカム。これらのNSAIDSのすべては、1991年1月15日に発行されたSunshine等の米国特許第4,985,459号(参考として、本明細書中に援用する)に完全に記載されている。最も好ましいのは、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン及びブクロクス酸を含む(これらに限らない)プロピオン性NSAIDSである。抗炎症性化合物の他の有用なクラスには、シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)のインヒビター及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)のインヒビターが含まれる。やはり有用なのは、ヒドロコーチゾンなどを包含するステロイド性抗炎症薬である。特に有用なのは、好中球の活性化又は単球の活性化を約30%以上低減させ又はアポトーシスを約30%低減させる抗炎症性化合物である。
【0016】
アポトーシスを減少させる有用な薬剤には、カスパーゼインヒビターが含まれる。適当なカスパーゼインヒビターには、心臓細胞と反応性の少なくとも一のカスパーゼ酵素に対する阻害活性を有する任意の化合物又は組成物が含まれる。かかるカスパーゼインヒビターには、z−VAD−DCB(不可逆的ICE/カスパーゼ−1インヒビター)、z−DEVD−fmk(カスパーゼ−3の幾分特異的なインヒビター)、ウイルスカスパーゼインヒビター遺伝子p35及び広いスペクトルのカスパーゼインヒビターのベンジロキシカルボニル−Val−Ala−Asp−フルオロメチルケトン(z−VAD−fmk)(カスパーゼ−3又はカスパーゼ様プロテアーゼを阻害)、ベンゾイルカルボニル−Asp−CH2OC(O)−2,6−ジクロロベンゼン(Z−Asp−DCB)、カスパーゼ3/7−選択的インヒビター例えば(S)−(+)−5(1−(2−メトキシメチルピロリジニル)スルホニル)イサチン(「MMPSI」)、カスパーゼ8インヒビター例えばZ−IETD−fmk;カスパーゼ9インヒビター例えばベンゾキシカルボニル−Leu−Glu−OMe−His−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(z−LEHD−fmk);カスパーゼ3インヒビター例えばアセチル−Asp−Glu−Val−Asp−cmk(Ac−DEVD−cmk)、及びアセチル−DEVD−CHO;Bocアスパルチル(OMe)−フルオロメチルケトン(BAF又はBocD−fmk)(カスパーゼ−1及びカスパーゼ−3のインヒビター)、及びカスパーゼ−1特異的インヒビター例えばAc−Try−Val−Ala−Asp−クロロメチルケトン(Y−VAD−cmk)、YVAD−アルデヒド、YVAD、DEVD−アルデヒド、DEVD、Ac−Try−Val−Ala−Asp−アルデヒド、crmA(サイトカイン応答改変遺伝子及びウイルスカスパーゼインヒビター)、Ac−YVAD−cmk(カスパーゼ1のインヒビター)、アセチル−Tyr−Val−Ala−Asp−クロロメチルケトン(Ac−YVAD−fmk)、CPP(カスパーゼ1及び3のインヒビター)、z−DEVD−fmk(カスパーゼ3のインヒビター)及びアンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター例えば薬物エナラプリラトが含まれるが、これらに限られない。他の公知のカスパーゼインヒビター例えば米国特許第6,153,591号及び「Apoptosis in Neuronal Development and Transplantation: Role of Caspases and Trophic Factors」, Exp.Neurol. 156:1-156(1999)(これらの内容を、参考として、本明細書中に援用する)に開示されたものを利用することができる。カスパーゼインヒビターの組合せをここに記載の組成物及び方法において用いることができるということは、理解されるべきである。好ましくは、このカスパーゼインヒビターは、一のカスパーゼに特異的でない。特に有用なカスパーゼインヒビターは、bocアスパルチル(o−メチル)−フルオロメチルケトン(BAF)及びAc−YVAD−cmkである。ここで有用な抗アポトーシス効果を有する他の化合物には、薬物ニコランジル、一酸化窒素(NO)、インスリン様成長因子I(IGF−I)及びホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3キナーゼ)が含まれる。
【0017】
他の抗炎症性化合物には、インテグリン又は接着性分子に結合し或はそれらの生成及び/又は活性をブロックする分子が含まれる。かかる分子には、炎症部位への白血球リクルートを、白血球表面のリガンド例えば好中球及び他の白血球上のLFA−1(CD11a/CD18複合体)及び食細胞上のMac−1(CD11b/CD18)への接着によって邪魔し又は媒介する化合物が含まれる。従って、ここでの利用のための適当な抗炎症性化合物の内には、抗インテグリン抗体及び抗接着分子抗体が含まれる。
【0018】
好適な抗炎症性化合物は、補体成分に結合し或はそれらの生成及び/又は活性をブロックする化合物である。特に有用なかかる化合物の特殊なクラスは、ヒト補体成分に特異的な抗体である。
【0019】
補体系は、身体の他の免疫系と共に作用して、細胞及びウイルス性病原体の侵入を防御する。少なくとも25の補体タンパク質があり、これらは、血漿タンパク質と膜補因子との複雑な集合として見出される。これらの血漿タンパク質は、脊椎動物の血清中のグロブリンの約10%を構成する。補体成分は、一連の複雑であるが正確な酵素的開裂及び膜結合事象において相互作用することによって、それらの免疫学的防御機能を達成する。その結果生成した補体カスケードは、オプソニン機能、免疫制御機能及び溶解機能を有する生成物の生成へと導く。補体活性化と関連する生物活性の簡潔な要約は、例えば、The Merck Manual, 第16版中に与えられている。
【0020】
この補体カスケードは、古典的経路又は代替経路によって進行する。これらの経路は、多くの成分を共有し、初期段階において異なっていても、それらは収束して、標的細胞の活性化及び破壊に責任のある同じ「最終的補体」成分(C5〜C9)を共有する。古典的補体経路は、典型的には、標的細胞上の抗原性部位の抗体認識と該部位への抗体結合により開始される。代替経路は、通常、抗体非依存性であり、病原体表面上のある種の分子によって開始されうる。加えて、このレクチン経路は、典型的には、マンノース結合性レクチン(MBL)の高マンノース基質への結合により開始される。これらの経路は、補体成分C3が活性なプロテアーゼ(各経路により異なる)によって開裂されてC3a及びC3bを生成する点に収束する。補体攻撃を活性化する他の経路は、補体機能の種々の面へ導く事象のシーケンスにおいて一層遅く作用することができる。
【0021】
C3aは、アナフィラトキシンである(下記の検討参照)。C3bは、細菌及び他の細胞並びにある種のウイルス及び免疫複合体に結合して、それらを循環からの除去のために標識する。(この役割におけるC3bは、オプソニンとして知られる。)このC3bのオプソニン機能は、一般に、補体系の最も重要な抗感染作用であると考えられている。C3b機能をブロックする遺伝的障害を有する患者は、広く多様な病原性生物体により感染を受けやすく、一方、補体カスケードシーケンスで一層遅く障害を有する患者(即ち、C5機能をブロックする障害を有する患者)は、淋菌にのみ一層(その上、幾分)感染しやすいことが見出されている(Fearon, Intensive Review of Internal Medicine, 第二版。Fanta及びMinaker 編、Brigham and Women's and Beth Israel Hospitals, 1983)。
【0022】
C3bは又、各経路にユニークな他の成分と複合体を形成して、古典的又は代替のC5コンバーターゼを形成し、これは、C5をC5aとC5bに開裂させる。こうして、C3は、代替経路と古典経路の両方において必須であるので、補体反応シーケンスにおける中心的タンパク質と考えられる(Wurzner等、Complement Inflamm. 8:328-340, 1991)。C3bの特性は、血清プロテアーゼ因子Iによって調節され、これは、C3bに作用してiC3bを生成する。iC3bは、オプソニンとして依然として機能的であるが、活性なC5コンバーターゼを形成することができない。
【0023】
C5aは、他のアナフィラトキシンである(下記の検討参照)。C5bは、C6、C7及びC8と結合して、標的細胞の表面でC5b−8複合体を形成する。幾つかのC9分子の結合に際して、膜攻撃複合体(MAC、C5b−9、末端補体複合体−TCC)が形成される。十分な数のMACが標的細胞膜に挿入された場合には、それらが造る開口(MAC孔)が、標的細胞の急速な浸透溶解を媒介する。一層低い、非溶解的濃度のMACは、他の効果を生じうる。特に、内皮細胞及び血小板への少数のC5b−9複合体の膜挿入は、有害な細胞活性化及びアポトーシスを引き起こしうる。幾つかの場合には、活性化が細胞溶解に先行しうる。
【0024】
上記のように、C3a及びC5aは、アナフィラトキシンである。これらの活性化された補体成分は、マスト細胞の脱顆粒の引き金を引くことができ、これは、ヒスタミン及び他の炎症メディエーターを放出させて、平滑筋の収縮、増大した血管透過性、白血球活性化、及び他の炎症現象(細胞充実性過多を生じる細胞増殖を含む)を生じる。C5aは又、補体活性化部位に前炎症性顆粒球を誘引するのに役立つ走化性ペプチドとしても機能する。
【0025】
ヒトの補体成分に結合し或はそれらの何れかの生成及び/又は活性をブロックする任意の化合物例えばヒトの補体成分に特異的な抗体は、ここで有用である。幾つかの化合物には、1)補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−5a、C−6、C−7、C−8、C−9、因子D、因子B、因子P、MBL、MASP−1、AND MASP−2に向けられた抗体及び2)天然の、改変された又は可溶性形態の補体阻害性化合物例えばCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、因子H、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、及びK76COOHが含まれる。ここでの利用に適当な化合物は、補体成分C5の補体成分C5a及びC5bへの変換を直接又は間接に減少させる抗体である。有用な抗体の一つのクラスは、少なくとも一つの抗体−抗原結合部位を有して、ヒトの補体成分C5への特異的結合を示す(この特異的結合は、ヒトの補体成分C5のアルファ鎖を標的とする)ものである。かかる抗体は、1)ヒトの体液における補体活性化を阻害し;2)精製したヒト補体成分C5のヒト補体成分C3又はヒト補体成分C4への結合を阻害し;及び3)C5aに関するヒト補体活性化生成物に特異的に結合しない。特に有用な補体インヒビターは、C5a及び/又はC5b−9の生成を約30%以上減じる化合物である。特に有用な抗C5抗体は、h5G1.1−scFvである。h5G1.1−scFvの製造方法は、1995年6月7日に出願された米国特許出願第08/487,283号(現在、米国特許第6,355,245号)及び「Inhibition of Complement Activity by Humanized Anti-C5 Antibody and Single Chain Fv」,Thomas等、Molecular Immunology, 第33巻、No.17/18, 第1389-1401, 1996 (これらの開示を、そっくりそのまま、参考として本明細書に援用する)に記載されている。
【0026】
抗炎症性化合物の投与経路は、公知の方法例えば静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、皮下、眼内、動脈内、髄腔内注射又は点滴、吸入又は病変内局注経路、又は下記のような持続的放出システムによる方法と合っている。抗炎症性化合物は、好ましくは、点滴により又はボーラス注射によって、連続的に投与する。抗炎症性化合物は、局所的又は全身的仕方で投与することができる。ステントの表面上に被覆された抗炎症性化合物を投与することができる。被覆されたステントを製造する技術は、当業者の活動範囲内にある。例えば、米国特許第6,358,556号及び6,258,121号(これらの開示を、参考として本明細書中に援用する)を参照されたい。
【0027】
特に有用な具体例においては、抗炎症性化合物の第一の投与量を投与してから、経皮経管冠動脈形成術を行ない、その後、抗炎症性化合物の第二の投与量の安定した点滴を一定期間行なう。抗炎症性化合物の第二の投与量の点滴は、好ましくは、第一の点滴後4時間以内に開始する。抗炎症性化合物の第二の投与量の点滴は、少なくとも4時間、好ましくは8〜24時間、一層好ましくは12〜20時間にわたって投与すべきである。しかしながら、他の投薬管理も有用でありうるということは理解されるべきである。
【0028】
抗炎症性化合物は、製薬上許容しうるキャリアーとの混合物にて製造することができる。本願の化合物の配合及び投与のための技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」, Mack Publishing Co., Easton, PA (最新版)中に見出すことができる。この治療用組成物は、静脈投与することができ又は、好ましくは、液体又は粉末エアゾル(凍結乾燥品)として鼻若しくは肺経由で投与することができる。この組成物は又、非経口又は皮下投与することができる(所望であれば)。全身投与する場合、この治療用組成物は、無菌的であり、発熱物質フリーであるべきであって、pH、等張性及び安定性に対する正当な考慮を有する、非経口的に受容可能な溶液中にあるべきである。これらの条件は、当業者に公知である。
【0029】
簡単にいえば、抗炎症性化合物の投薬配合物は、所望の程度の純度を有する化合物を、生理的に許容しうるキャリアー、賦形剤又は安定剤と混合することによって、貯蔵又は投与のために製造される。かかる物質は、受容者に対して、用いる投薬量及び濃度で無毒であり、緩衝剤例えばTRIS HCl、ホスフェート、シトレート、アセエテート及び他の有機酸塩;抗酸化剤例えばアスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ペプチド例えばポリアルギニン、タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー例えばポリビニルピロリジノン;アミノ酸例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸又はアルギニン;単糖類、二糖類、及び、セルロース又はその誘導体、グルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤例えばEDTA;糖アルコール例えばマンニトール又はソルビトール;対イオン例えばナトリウム及び/又は非イオン性界面活性剤例えばTWEEN、PLURONICS又はポリエチレングリコールが含まれうる。イン・ビボ投与に用いる場合、抗炎症性配合物は、無菌でなければならず、慣用の製薬業務に従って配合することができる。
【0030】
用いる抗炎症性化合物の投薬量は、投与すべき特異的抗炎症性化合物を含む(但し、限定はしない)因子の数に依存する。ここに記載の抗炎症性分子の毒性及び治療的効力は、例えばLD50(集団の50%に致死的である投与量)及びED50(集団の50%において治療上有効である投与量)の測定につき、細胞培養又は実験動物における標準的製薬手順によって、決定することができる。毒性と治療効果との間の投与量比は、治療インデックスであり、LD50とED50との間の比として表すことができる。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータは、ヒトにおける利用のための投薬量の範囲を配合する際に利用することができる。かかる分子の投薬量は、好ましくは、ED50を含み且つ殆ど又は全く毒性がない循環濃度の範囲内にある。この投薬量は、この範囲内で、用いる投薬形態及び用いる投与経路に依って変化しうる。正確な配合、投与の経路及び投薬量は、個々の医師によって、患者の状態を考慮して、選択することができる。(例えば、Fingl等、1975, 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」, 第1章、第1頁参照)。典型的な日々の投薬量は、約0.001mg/kg〜約1000mg/kgに、一層好ましくは、約0.01mg〜100mg/kgに及ぶことができ、一層好ましくは、約0.050〜20mg/kgの抗炎症性化合物が、患者への投与のための最初の候補の投薬量であってよい。
【0031】
ステント配置を伴う経皮経管冠動脈形成術を行なうための技術は、当業者の活動範囲内にある。
【0032】
下記の非制限的実施例は、本発明を説明するために含まれるものであり、その範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0033】
実施例1 − 経皮経管冠動脈形成術による再灌流治療を受けている急性心筋梗塞患者における、h5G1.1−scFvの2つの静脈内投与量管理の、ランダム化した、二重盲検の、プラシーボ対照試験による研究

急性MIの兆候の開始から6時間以内のPTCA再灌流治療に関連して、h5G1.1−scFvの静脈内(IV)投与の、多中心の、ランダム化した、二重盲検の、プラシーボ対照試験による研究を行なった。患者を、3つの処理グループに分割した。各グループに対する治療管理は、下記の通りであった:
【0034】
【表1】

【0035】
患者を、緊急治療室に到着した際に篩い分けした。24時間の治療期間と6カ月の追従期間があった。この24時間の治療期間は、次のように進行した:h5G1.1−scFv又はプラシーボのボーラスを(患者のグループ割り振りに依って)、PTCAの前に10分間にわたって静脈注射した。PTCA治療を、抗体又はプラシーボの全ボーラス投与量を投与した後に開始した。このボーラスの10分間の投与の約4時間後に、IV点滴を、h5G1.1−scFv又はプラシーボを用いて開始して、20時間にわたって蠕動ポンプ(例えば、IMED)又は同様の装置を利用して持続した。それ故、研究薬物を用いた治療の持続時間は、約24時間であった。
【0036】
h5G1.1−scFv及びマッチングするプラシーボを、ガラス瓶で供給し及び30mlのバイアル中に2mg/mlの濃度で注射用溶液としてパッケージ化した。これは、二重盲検試験による研究であった。この研究に参加したすべての人員は、各患者についての投与量管理を知らされなかった。
【0037】
急性MIの兆候の開始から6時間以内に与えられた患者(ECGでのST部分の2mmの上昇により確認)が、この研究に参加した。インフォームドコンセントが得られた。患者を、MIの位置(急性分離下壁MI対急性非下壁MI)によって階層化し、上記の3つの治療グループの一つに対する部位によってランダム化した。対話式音声活性化応答システム(IVRS)を利用して、MIプロフィルを追跡して記録し、急性分離下壁MIの患者の記載/ランダム化を、かかる患者の研究幅限界(約200)に達するまで許した。一度患者をランダム化したならば、ベースラインの評価を行なってから、抗炎症性化合物又はプラシーボの投与を行なった。患者は、PTCA治療を行なう決定、適格性の決定及びインフォームドコンセントの署名の後、できるだけ早期(但し、兆候の開始後6時間以内)に研究薬物のボーラスを受けた。研究薬物の全ボーラスを与えた後に、PTCA治療を開始して再灌流障害に対して防御した。患者の観察を、退院の際に、又は6日目、14日目、30日目及び90日目に、72時間にわたって行なった。180日目に、患者/代理人との6ヵ月フォローアップの電話コンタクトをした。心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)流を、PTCA手順後、注意した。
【0038】
安全性のモニターには、臨床研究室試験結果、12リードEGG測定並びに副作用(AE)の頻度及び程度の概観が含まれた。AEに関する情報は、インフォームドコンセントが90日目に得られた時点から収集した。
【0039】
MI患者は、緊急治療室への到着時には、C5b−9のレベルが上昇していた。レベルは、24時間にわたって上昇したままであり、48時間までに減少し始めた。従って、この研究のために投与量管理を選ぶ基準は、完全な補体の抑制が約24時間にわたって達成されるという仮説に基づいていた。
【0040】
以前の研究からの薬力学的データは、h5G1.1−scFvの2.0又は4.0mg/kgのボーラスだけでは、完全な24時間の補体の阻害を与えなかったことを示している。同様に、6時間間隔で投与した2.0mg/kgのh5G1.1−scFvの2つのボーラスは、完全な24時間の阻害を与えなかった。健康な志願者における用量研究は、2mg/kgのh5G1.1−scFvのボーラスを用いて行われ、その後、直ちに24時間又は4時間遅れで20時間にわたって、プラシーボの点滴又は0.05、0.10、0.20mg/kgのh5G1.1−scFvの点滴を行なった。薬力学的プロフィルの分析は、血清補体の溶血活性が、h5G1.1−scFv単独のボーラスを受けた患者において、少なくとも4時間にわたって殆ど完全にブロックされたことを示した。2.0mg/kgの初期ボーラスと0.05又は0.1mg/kg/時の点滴を受けた患者は、補体活性を、少なくとも36時間にわたって、殆どの患者において、完全にブロックした。0.05mg/kg/時の点滴の72時間の時点において、本質的に、大多数の患者において(8人中6人)、ベースラインの溶血補体活性への完全な復帰があった。プラシーボと活性な薬物のグループの間で、副作用の全体的発生率には、有意の差異はなかった。まとめると、薬力学及び安全性のデータは、2.0mg/kgのボーラスとその後、直ちに24時間又はボーラス後4時間遅れての20時間の、0.05mg/kg/時の点滴が、十分に許容され且つダメージを与える補体活性を24時間にわたって完全にブロックするのに十分であることを示唆している。
【0041】
この研究の終点は、梗塞の大きさ(72時間にわたってCK−MBAUCにより測定)を減少させることである。複合的終点は、死亡、新しい又は悪化したCHF、心臓性ショック又は発作の臨床結果よりなり、個々の成分は、第二の終点である。死亡は、すべての引き起こされた死として定義された。鬱血性心不全(CHF)の臨床的結果は、医師の評価に基づいたものであり、CHFの記載及び再入院の、少なくとも24時間後に起きる病院CHFを含む。心臓性ショックは、少なくとも1時間にわたって続き、流体回復単独に応答性でなく、心不全に対して二次的と思われ、低潅流の臨床的兆候と関連している90mmHgの収縮期血圧より低い低血圧として定義された。発作は、Stroke Patient Functional Status Scale (下記参照)により、少なくとも中位か又は重いと分類され、退院まで又は30日間続き(何れが最初であっても)又は死亡に至り、医師により発作と分類される新たな焦点の神経学的欠損として定義された。
【0042】
心筋梗塞の大きさを、CK−MB AUCにより測定した。CK MBのための血液試料は、中央研究所によって分析された。PTCA後の流れ回復/血管開通性の程度を、標的血管を通るTIMI流れの視覚的評価によって注意した。TIMI流れの等級の標準的規約は、下記の通りである:
【0043】
第0等級 − 潅流なし;閉塞点を超える順行流なし
第1等級 − 潅流なしの貫通;コントラスト剤は、閉塞領域を超えて通過するが、血管映画撮影持続期間にわたって、閉塞から遠位の冠状動脈床全体を不透明化することはできない
第2等級 − 部分的潅流;コントラスト剤は、閉塞を横切って通過する。しかしながら、コントラスト剤が閉塞から遠位の血管へ入る速度又はその遠位床からのクリアランス(又は、両者)の速度は、以前に閉塞した血管(例えば、反対の冠状動脈又は閉塞に近い冠状動脈床)によって潅流されない比較領域への流れ又は該領域からのクリアランスよりもかなり遅い
第3等級 − 完全な潅流;閉塞から遠位の床への順行流れが、閉塞に近い床への順行流れが起きるとすぐに起き、コントラスト剤の複雑な床からのクリアランスは、同じ血管内又は反対の動脈の複雑でない床からのクリアランスと同じくらいに急速である。
【0044】
この研究に記載するのに適格であるためには、患者は、下記の基準のすべてに合わなければならない:
1.18歳以上である。
2.少なくとも20分にわたる虚血性の不快感の持続的症状を経験したことがある。
3.ECGが、下記の一つを示す:
− 隣接する2つの前胸部リードV1−V6におけるST部分の2mm以上の上昇、又は
− リードI、AVLにおけるST部分の2mm以上の上昇、又は
− 新たな左脚ブロック。
4.緊急治療室に来たとき、PTCA再灌流治療に適格であり、胸痛の開始から6時間以内にPTCAを受けた。
5.インフォームドコンセントを与えた(又は、合法的に授権した患者の代理人が、インフォームドコンセントを与えた)。
【0045】
患者は、下記の排除基準の何れかに合致した場合には、不適格であった:
1.Hgb<9.5g/dl:WBC<3×103/mm3;好中球<1200/mm3;血小板<100,000/mm3で規定される異常な血液学的機能の病歴を有した。
2.活性なナイセリア感染又はその疑いを有した。
3.既知の遺伝的な補体欠乏又はその疑いを有した。
4.任意の他の薬物研究に参加しているか又は30日以内に他の研究薬剤に曝された。
5.妊娠中、授乳中であったか、又は研究期間中(追跡期間も含む)に妊娠する意図を有した。
【0046】
患者は、患者が研究からの撤退を希望し、又は任意の量の研究薬物を受容後に、研究からの撤退を必要とする(研究者の見解において)有害な事象若しくは併発症が起きた場合には、研究から撤退した。
【0047】
研究所の分析は、安全性評価の部分として行なわれた。退院時に、患者及びその家族/介護人は、任意の副作用の出現及び並行薬物療法における任意の変化に注意するように指導を受けた。
【0048】
この研究は、抗炎症性化合物(この場合、h5G1.1−scFv)の投与が、最大の梗塞の発生率を少し減少させることを示した。TIMI3流れの患者においては死亡率は梗塞の大きさと無関係に見えたが、h5G1.1−scFvは、最適以下のTIMI流れ0〜2の患者において、梗塞の大きさを減じ且つ死亡率を減少させた。h5G1.1−scFvは又、心臓性ショックの患者においても、心臓性ショックの発生率と梗塞の大きさを減少させた。
【0049】
収集した90日死亡率データの統計的分析は、ステントをも受けた患者の治療に伴う死亡率の有意の減少を示した(p=0.009対プラシーボ)。そのデータを、下記の表に与える:
【0050】
【表2】

*(p=0.009対プラシーボ)
【0051】
かなりの及び投与量依存性の74%の死亡率の減少が、並行ステント療法に加えての、h5G1.1sc−Fvの利用と関係した。並行ステント配置を受けなかった患者における抗炎症性化合物の投与に伴う死亡率の明白な減少はなかった。
【0052】
ここに開示した具体例に対する様々な改変がなされうるということは、理解されよう。それ故、上記は、限定と解するべきではなく、好適具体例の単なる例示である。当業者は、本書に添付した請求の範囲の範囲及び精神の内で他の改変を構想するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
死亡率を低下させる量の抗炎症性化合物を、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた患者に投与すること。
【請求項2】
抗炎症性化合物が、補体インヒビターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
補体インヒビターを、a)補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−5a、C−6、C−7、C−8、C−9、因子D、因子B、因子P、MBL、MASP−1、又はMASP−2に向けられた抗体;及びb)天然の又は可溶性形態のCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、因子H、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、又はK76COOH2よりなる群から選択する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
抗炎症性化合物が、補体成分C5の補体成分C5a及びC5bへの変換を直接又は間接に減少させる抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
抗体が、少なくとも一つの抗体−抗原結合部位を含む抗体であって、該抗体は、ヒトの補体成分C5への特異的結合を示し、該特異的結合は、ヒトの補体成分C5のアルファ鎖を標的とし、かかる抗体は、1)ヒトの体液における補体活性化を阻害し;2)精製したヒト補体成分C5のヒト補体成分C3又はヒト補体成分C4への結合を阻害し;及び3)C5aに関するヒト補体活性化生成物に特異的に結合しない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
補体インヒビターが、C5b−9複合体を形成する成分に特異的に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
抗炎症性化合物が、接着分子に結合し又は該分子を不活性化する抗体及びインテグリン分子に結合し又は該分子を不活性化する抗体よりなる群から選択する分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
死亡率を低下させる量の、補体成分に結合し或はそれらの生成及び/又は活性をブロックする化合物を、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた患者に投与すること。
【請求項9】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
死亡率を低下させる量の、インテグリンに結合し或はそれらの生成及び/又は活性をブロックする化合物を、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた患者に投与すること。
【請求項10】
化合物が、抗インテグリン抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
死亡率を低下させる量の、接着分子に結合し或はそれらの生成及び/又は活性をブロックする化合物を、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた患者に投与すること。
【請求項12】
化合物が、白血球の表面に結合する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
化合物が、好中球の表面に結合する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
化合物が、抗接着分子抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
化合物を、抗cd11a抗体、抗cd11b抗体及び抗cd18抗体よりなる群から選択する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
死亡率を低下させる量の、抗アポトーシス化合物を、経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた患者に投与すること。
【請求項17】
抗アポトーシス化合物が、カスパーゼインヒビターである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カスパーゼインヒビターを、z−VAD−DCB、z−DEVD−fmk、遺伝子p35、z−VAD−fmk、Z−Asp−DCB、MMPSI、Z−IETD−fmk、z−LEHD−fmk、Ac−DEVD−cmk、アセチル−DEVD−CHO、BAF、BocD−fmk、Y−VAD−cmk、YVAD−アルデヒド、YVAD、DEVD−アルデヒド、DEVD、Ac−Try−Val−Ala−Asp−アルデヒド、crmA、Ac−YVAD−cmk、Ac−YVAD−fmk、CPP、z−DEVD−fmk及びアンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビターよりなる群から選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗アポトーシス化合物を、ニコランジル、一酸化窒素、インスリン様成長因子I及びホスファチジルイノシトール3キナーゼよりなる群から選択する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた急性心筋梗塞患者の死亡率を低下させる方法であって、下記を含む当該方法:
抗炎症性化合物の第一の投薬量を患者に投与してから、経皮経管冠動脈形成術を行ない;そして
その後、抗炎症性化合物の第二の投与量を、静脈内への点滴を一定期間少なくとも4時間行なうことにより投与する。
【請求項21】
第二の投与量を、第一の投与量の投与後4時間以内に投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第二の投与量を、8〜24時間の期間にわたって投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第二の投与量を、12〜20時間の期間にわたって投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
抗炎症性化合物が、補体インヒビターである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
補体インヒビターを、a)補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−5a、C−6、C−7、C−8、C−9、因子D、因子B、因子P、MBL、MASP−1、又はMASP−2に向けられた抗体;及びb)天然の又は可溶性形態のCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、因子H、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、又はK76COOH2よりなる群から選択する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗炎症性化合物が、補体成分C5の補体成分C5a及びC5bへの変換を直接又は間接に減少させる抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
抗体が、少なくとも一つの抗体−抗原結合部位を含む抗体であって、該抗体は、ヒトの補体成分C5への特異的結合を示し、該特異的結合は、ヒトの補体成分C5のアルファ鎖を標的とし、かかる抗体は、1)ヒトの体液における補体活性化を阻害し;2)精製したヒト補体成分C5のヒト補体成分C3又はヒト補体成分C4への結合を阻害し;及び3)C5aに関するヒト補体活性化生成物に特異的に結合しない、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
補体インヒビターが、C5b−9複合体を形成する成分に特異的に結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた急性心筋梗塞患者の死亡率を低下させる方法であって、下記を含む当該方法:
インテグリンに結合し或はインテグリンの生成及び/又は活性をブロックする化合物の第一の投薬量を患者に投与してから、経皮経管冠動脈形成術を行ない;そして
その後、この化合物の第二の投与量を、静脈内への点滴を一定期間少なくとも4時間行なうことにより投与する。
【請求項30】
化合物が、抗インテグリン抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた急性心筋梗塞患者の死亡率を低下させる方法であって、下記を含む当該方法:
抗アポトーシス化合物の第一の投薬量を患者に投与してから、経皮経管冠動脈形成術を行ない;そして
その後、抗アポトーシス化合物の第二の投与量を、静脈内への点滴を一定期間少なくとも4時間行なうことにより投与する。
【請求項32】
抗アポトーシス化合物を、カスパーゼインヒビターよりなる群から選択する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
カスパーゼインヒビターを、z−VAD−DCB、z−DEVD−fmk、遺伝子p35、z−VAD−fmk、Z−Asp−DCB、MMPSI、Z−IETD−fmk、z−LEHD−fmk、Ac−DEVD−cmk、アセチル−DEVD−CHO、BAF、BocD−fmk、Y−VAD−cmk、YVAD−アルデヒド、YVAD、DEVD−アルデヒド、DEVD、Ac−Try−Val−Ala−Asp−アルデヒド、crmA、Ac−YVAD−cmk、Ac−YVAD−fmk、CPP、z−DEVD−fmk及びアンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビターよりなる群から選択する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた急性心筋梗塞患者の死亡率を低下させる方法であって、下記を含む当該方法:
接着分子に結合し或はそれらの生成及び/又は活性をブロックする化合物の第一の投薬量を患者に投与してから、経皮経管冠動脈形成術を行ない;そして
その後、この化合物の第二の投与量を、静脈内への点滴を一定期間少なくとも4時間行なうことにより投与する。
【請求項35】
化合物が、白血球の表面に結合する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
化合物が、好中球の表面に結合する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
化合物が、抗接着分子抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
化合物を、抗cd11a抗体、抗cd11b抗体及び抗cd18抗体よりなる群から選択する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた急性心筋梗塞患者の死亡率を低下させる方法であって、その患者に補体インヒビターを投与することを含む当該方法。
【請求項40】
補体インヒビターを、a)補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−5a、C−6、C−7、C−8、C−9、因子D、因子B、因子P、MBL、MASP−1、又はMASP−2に向けられた抗体;及びb)天然の又は可溶性形態のCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、因子H、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、又はK76COOH2よりなる群から選択する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
補体インヒビターが、補体成分C5の補体成分C5a及びC5bへの変換を直接又は間接に減少させる抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
抗体が、少なくとも一つの抗体−抗原結合部位を含む抗体であって、該抗体は、ヒトの補体成分C5への特異的結合を示し、該特異的結合は、ヒトの補体成分C5のアルファ鎖を標的とし、かかる抗体は、1)ヒトの体液における補体活性化を阻害し;2)精製したヒト補体成分C5のヒト補体成分C3又はヒト補体成分C4への結合を阻害し;及び3)C5aに関するヒト補体活性化生成物に特異的に結合しない、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
補体インヒビターが、C5b−9複合体を形成する成分に特異的に結合する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
補体インヒビターを第一の投薬量として投与してから、経皮経管冠動脈形成術を行ない;そして
補体インヒビターの第二の投与量を患者に、静脈内への点滴を一定期間少なくとも4時間行なうことにより投与する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
第二の投与量を、第一の投与量の投与後、4時間以内に投与する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第二の投与量を、8〜24時間の期間にわたって投与する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
第二の投与量を、12〜20時間の期間にわたって投与する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた急性心筋梗塞患者の死亡率を低下させる方法であって、その患者に抗アポトーシス化合物を投与することを含む当該方法。
【請求項49】
抗アポトーシス化合物を、カスパーゼインヒビターよりなる群から選択する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
カスパーゼインヒビターを、z−VAD−DCB、z−DEVD−fmk、遺伝子p35、z−VAD−fmk、Z−Asp−DCB、MMPSI、Z−IETD−fmk、z−LEHD−fmk、Ac−DEVD−cmk、アセチル−DEVD−CHO、BAF、BocD−fmk、Y−VAD−cmk、YVAD−アルデヒド、YVAD、DEVD−アルデヒド、DEVD、Ac−Try−Val−Ala−Asp−アルデヒド、crmA、Ac−YVAD−cmk、Ac−YVAD−fmk、CPP、z−DEVD−fmk及びアンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビターよりなる群から選択する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた急性心筋梗塞患者の死亡率を低下させる方法であって、その患者に、インテグリンに結合し或はインテグリンの生成及び/又は活性をブロックする化合物を投与することを含む当該方法。
【請求項52】
化合物が、抗インテグリン抗体である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを受けた急性心筋梗塞患者の死亡率を低下させる方法であって、その患者に、接着分子に結合し或は該分子の生成及び/又は活性をブロックする化合物を投与することを含む当該方法。
【請求項54】
化合物が、白血球の表面に結合する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
化合物が、好中球の表面に結合する、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
化合物が、抗接着分子抗体である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
化合物を、抗cd11a抗体、抗cd11b抗体及び抗cd18抗体よりなる群から選択する、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを施与し、このステントは、補体成分に結合し或は該成分の生成及び/又は活性をブロックする化合物を含む被覆を含む。
【請求項59】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを施与し、このステントは、インテグリンに結合し或はインテグリンの生成及び/又は活性をブロックする化合物を含む被覆を含む。
【請求項60】
化合物が、抗インテグリン抗体である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを施与し、このステントは、接着分子に結合し或は該分子の生成及び/又は活性をブロックする化合物を含む被覆を含む。
【請求項62】
化合物が、白血球の表面に結合する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
化合物が、好中球の表面に結合する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
化合物が、抗接着分子抗体である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
化合物を、抗cd11a抗体、抗cd11b抗体及び抗cd18抗体よりなる群から選択する、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを施与し、このステントは、抗アポトーシス化合物を含む被覆を含む。
【請求項67】
抗アポトーシス化合物が、カスパーゼインヒビターである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
カスパーゼインヒビターを、z−VAD−DCB、z−DEVD−fmk、遺伝子p35、z−VAD−fmk、Z−Asp−DCB、MMPSI、Z−IETD−fmk、z−LEHD−fmk、Ac−DEVD−cmk、アセチル−DEVD−CHO、BAF、BocD−fmk、Y−VAD−cmk、YVAD−アルデヒド、YVAD、DEVD−アルデヒド、DEVD、Ac−Try−Val−Ala−Asp−アルデヒド、crmA、Ac−YVAD−cmk、Ac−YVAD−fmk、CPP、z−DEVD−fmk及びアンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビターよりなる群から選択する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
抗アポトーシス化合物を、ニコランジル、一酸化窒素、インスリン様成長因子I及びホスファチジルイノシトール3キナーゼよりなる群から選択する、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
急性心筋梗塞の治療方法であって、下記を含む当該方法:
経皮経管冠動脈形成術に関連してステントを施与し、このステントは、抗炎症性化合物を含む被覆を含む。
【請求項71】
抗炎症性化合物が、補体インヒビターである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
補体インヒビターを、a)補体成分C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−5a、C−6、C−7、C−8、C−9、因子D、因子B、因子P、MBL、MASP−1、又はMASP−2に向けられた抗体;及びb)天然の又は可溶性形態のCR1、LEX−CR1、MCP、DAF、CD59、因子H、コブラ毒因子、FUT−175、コンプレスタチン、又はK76COOH2よりなる群から選択する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
抗炎症性化合物が、補体成分C5の補体成分C5a及びC5bへの変換を直接又は間接に減少させる抗体である、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
抗体が、少なくとも一つの抗体−抗原結合部位を含む抗体であって、該抗体は、ヒトの補体成分C5への特異的結合を示し、該特異的結合は、ヒトの補体成分C5のアルファ鎖を標的とし、かかる抗体は、1)ヒトの体液における補体活性化を阻害し;2)精製したヒト補体成分C5のヒト補体成分C3又はヒト補体成分C4への結合を阻害し;及び3)C5aに関するヒト補体活性化生成物に特異的に結合しない、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
補体インヒビターが、C5b−9複合体を形成する成分に特異的に結合する、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
抗炎症性化合物が、NSAIDである、請求項70に記載の方法。


【公表番号】特表2006−516978(P2006−516978A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500995(P2006−500995)
【出願日】平成16年1月6日(2004.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/001189
【国際公開番号】WO2004/062578
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】