説明

恒温型圧電発振器

【課題】感温素子および加熱手段を用いて周囲の温度変化に対する周波数の安定化を図るようにした恒温型圧電発振器を提供する。
【解決手段】恒温型水晶発振器1において、基板40の凹部42の凹底部分には、複数の第1の加熱用素子50が接合され、この凹部42の開口部側には水晶振動子30が接合されている。第1の加熱用素子50と水晶振動子30との間には放熱性樹脂51が、第1の加熱用素子50および水晶振動子30に密着させて設けられ、これにより、第1の加熱用素子50と水晶振動子30とは熱的に結合されている。基板40の水晶振動子30が接合された一方の主面とは異なる他方の主面側には、感温素子60、発振用素子70、および温度制御用素子80などの回路素子が接合されている。基板40は、ベース基板121に複数立設された金属ピン5a〜5dに支持されている。ベース基板121には、カバー体129が被せられるように接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数制御デバイスなどとして使用される圧電発振器に関し、特に、加熱用素子および感温素子を用いて周囲の温度変化に対する周波数の安定化を図るようにした恒温型圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器や伝送通信機器に用いる周波数制御デバイスである水晶発振器などの圧電発振器として、周辺環境の温度変化に影響されることなく高安定な周波数を出力することが可能な恒温型圧電発振器が従来から知られている。また、近年、これらの分野では、各種機器に対して小型、軽量であることが求められてきているため、それに伴って恒温型圧電発振器についても小型、軽量化が市場から求められている。
このような要求に応える小型の恒温型圧電発振器として、例えば、特許文献1に、パッケージ内に設けた基板に、圧電振動子、加熱用素子、感温素子、および発振回路を配置したパッケージタイプの恒温型圧電発振器が紹介されている。
【0003】
特許文献1に記載の圧電発振器(水晶発振器)は、圧電発振器用のパッケージ内に設けられた基板の例えば周縁に沿って加熱用素子(加熱手段)を設け、その加熱用素子により囲まれる領域に、圧電振動子、感温素子、および集積回路からなる発振回路部などが配置されている。
ここで、加熱用素子としては、例えば帯状の抵抗発熱層からなるヒーターが用いられ、また、圧電振動子として、圧電振動子用のパッケージ内に圧電振動片が封止された所謂SMD(Surface Mount Devise:表面実装部品)タイプの圧電振動子(水晶振動子)が用いられて、それぞれ小型、薄型化に効果を奏している。そして、圧電発振器用のパッケージの上側に金属からなるリッド(蓋体)が接合されることにより、圧電発振器用のパッケージ内に圧電振動子が封止された恒温型圧電発振器が構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−14208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の恒温型圧電発振器では、基板に対して圧電振動子外周面の一主面の略全面が接触した状態で接合されているので、圧電振動子の熱が基板に漏洩されやすい構造となっている。また、加熱用素子から基板を介して圧電振動子に熱を伝えて加熱する態様となっていることから加熱効率がよくないので、消費電力が増大したり、安定した温度制御ができない虞があった。
また、上記のような小型のSMDタイプの水晶振動子を用いた恒温型圧電発振器においては、容積の大きい圧電振動子では問題にならなかった熱的なダメージによる周波数ずれなどが問題になる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
〔適用例1〕本適用例にかかる恒温型圧電発振器は、パッケージ内に設けられた基板と、前記基板に接合された表面実装型の圧電振動子と、第1の加熱用素子と、感温素子と、温度制御用素子と、発振用素子と、を有する恒温型圧電発振器であって、前記第1の加熱用素子が前記基板に設けられた凹部内に配置され、前記圧電振動子が、前記凹部の開口部において前記圧電振動子の外面のうちの一主面と前記第1の加熱用素子とを近接または接触あるいは接合させた態様で前記基板に接合されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、凹部内に設けられた加熱用素子と近接または接触あるいは接合させた態様で圧電振動子が基板に接合されているので、圧電振動子と基板との接触面積が小さく抑えられた状態で、加熱用素子の熱が圧電振動子に効率よく伝導される加熱構造が実現できる。
また、凹部内に加熱用素子が設けられているので、加熱用素子による圧電振動子の加熱構造の薄型化が図れる。
したがって、圧電振動子から基板への熱の漏洩が抑えられ、効率的で安定した加熱構造を有することにより、動作の安定した小型の恒温型圧電発振器を提供することができる。
【0009】
〔適用例2〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、前記圧電振動子と前記第1の加熱用素子との間に、放熱性樹脂を配置させた状態で前記圧電振動子と前記第1の加熱用素子とが接合されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、基板の凹部における加熱用素子の接合高さのばらつきが生じた場合でも、放熱性樹脂により加熱用素子と圧電振動子との確実な熱的結合をはかることができるので、加熱用素子の温度を圧電振動子に効率よく伝える加熱構造を実現することが可能になる。
【0011】
〔適用例3〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、前記圧電振動子の前記一主面とは異なる外面に、第2の加熱用素子が接触または接合させるように配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、圧電振動子の複数の面に加熱用素子が配置されるので、より効率的に圧電振動子を加温することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、恒温型圧電発振器の一実施形態としての恒温型水晶発振器について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1〜図3は、本実施形態にかかる恒温型水晶発振器を模式的に説明するものであり、図1は上側からみた平面図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、底面側からみた平面図である。なお、図1では、恒温型水晶発振器の内部の構成を説明する便宜上、恒温型水晶発振器の外形をなすモールド樹脂の一部を切り欠いて図示している。
また、図4は、本実施形態の恒温型水晶発振器に用いられる圧電振動子としての水晶振動子を説明するものであり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。なお、(a)において、水晶振動子の内部の構成を説明する便宜上、水晶振動子の上部に接合されたリッド29の一部を切り欠いて図示している。
また、図5は、本実施形態の恒温型水晶発振器に用いられる基板を模式的に説明するものであり、(a)は底面側からみた平面図、(b)は、(a)のB−B線断面図である。なお、(a)において、ハッチングが施されている部位があるが、それは電極端子部分を判り易くするためのものであり断面を示すものではない。
【0015】
〔水晶振動子〕
まず、恒温型水晶発振器1に備えられた水晶振動子30について説明する。
図4に示すように、本実施形態の恒温型水晶発振器1には、振動子用パッケージ20内に圧電振動片としての水晶振動片10が接合されて封止された所謂表面実装型(SMDタイプ)の水晶振動子30が用いられている。
SMDタイプの水晶振動子30は小型、薄型化が進んでいるので、恒温型水晶発振器1の小型、薄型化を図るのに有利である。また、表面実装部品として規格化されているSMDタイプの水晶振動子30は、例えば、基板に接合した水晶振動片を筒状のキャップで覆うことにより封止するタイプの水晶振動子のように、外部接続用のリード線を外部基板の接続端子形状に合わせて切断したり成形したりする必要がなく、外部基板への搭載の自動化も図りやすいので、実装工程の簡略化や低コスト化に有利である。
【0016】
図4(a)において、本実施形態の水晶振動片10は、矩形平板状に成形された水晶基板の一方の主面の略中央に、駆動用の電極である励振電極15が設けられ、水晶基板の一端側近傍に設けられた外部接続電極16aに接続されている。これと同様に、水晶基板の他方の主面には、励振電極15の対向電極である励振電極(励振電極15の下方に隠れて図示されず)が設けられ、水晶基板の一端側近傍の外部接続電極16aと異なる領域に設けられた外部接続電極16bに接続されている。
【0017】
なお、励振電極15や外部接続電極16a,16bなどの電極は、水晶基板(水晶ウェハ)をエッチングして水晶振動片10の外形を形成した後に、蒸着またはスパッタリングにより、例えばニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を下地層として、その上に例えば金(Au)による金属膜を成膜し、その後フォトリソグラフィを用いてパターニングすることにより形成できる。
【0018】
振動子用パッケージ20は、略矩形の平板状の第1層基板21と、その第1層基板21上に順次積層された略矩形フレーム状の第2層基板22、第3層基板23、およびシールリング28を有している。このような構成により、振動子用パッケージ20には、第1層基板21の上面側を凹底部分として第2層基板22および第3層基板23側に開口された凹部が形成されている。
【0019】
振動子用パッケージ20の凹部の凹底部分となる第1層基板21上に段差を形成する第2層基板22の棚部には、水晶振動片10が接合される複数の振動片接続端子26a,26bが設けられている。また、図4(b)に示すように、振動子用パッケージ20の外面における外底面となる第1層基板21の下面側には、外部実装基板と実装される複数の外部接続端子25a,25bが設けられている。これらの各振動片接続端子26a,26bや、外部接続端子25a,25bは、第1層基板21に形成された図示しない引き回し配線またはスルーホールなどの層内配線により、それぞれ対応する端子同士が接続されている。
【0020】
なお、振動子用パッケージ20の第1層基板21、第2層基板22、および第3層基板23は、セラミックス絶縁材料などからなる。また、振動子用パッケージ20に設けられた振動片接続端子26a,26bや外部接続端子25a,25b、あるいはそれらを接続する配線パターンまたは層内配線パターンなどは、一般に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属配線材料をセラミックス絶縁材料上にスクリーン印刷して焼成し、その上にニッケル(Ni)、金(Au)などのめっきを施すことにより形成される。
【0021】
水晶振動片10は、その水晶振動片10の一端側近傍に設けられた外部接続電極16a,16bと、振動子用パッケージ20の第2層基板22上に設けられた対応する振動片接続端子26a,26bとを位置合わした状態で、例えば導電性接着剤95などの接合部材により接合されている。これにより、水晶振動片10は、振動子用パッケージ20と接合された外部接続電極16a,16b側の反対側を自由端として第1層基板21と接触しないように隙間を空けた状態で片持ち支持されている。
なお、導電性接着剤95としては、一般に、ポリイミド、シリコン系、またはエポキシ系などの樹脂に、銀(Ag)フィラメント、またはニッケル(Ni)粉を混入したものが使用される。また、水晶振動片10を接合する接合部材は導電性接着剤95に限らず、半田などの他の接合部材を用いることもできる。
【0022】
水晶振動片10が接合された振動子用パッケージ20の第3層基板23上には、蓋体としてのリッド29が接合されている。本実施形態では、金属製のリッド29が、鉄−ニッケル(Fe−Ni)合金などをフレーム状に型抜きして形成されたシールリング28を介してシーム溶接されている。これにより、振動子用パッケージ20の凹部内に接合された水晶振動片10が気密に封止されている。
【0023】
〔恒温型水晶発振器〕
次に、上記に説明したSMDタイプの水晶振動子30を備えた本実施形態の恒温型水晶発振器1について説明する。
図1〜図3において、恒温型水晶発振器1は、基板40に接合された水晶振動子30と、発振回路を構成する発振用素子70と、第1の加熱用素子50や感温素子60などとともに温度制御回路を構成する温度制御用素子80とが、ベース基板121およびカバー体129からなるパッケージ120内に収納されてなる。
【0024】
まず、基板40について詳細に説明する。
図5に示すように、基板40は、例えばガラスエポキシ樹脂などからなる基材41の一方の主面に凹部42が形成されている。凹部42の凹底部分には第1の加熱用素子50(図中、第1の加熱用素子50の搭載位置を破線にて示す)が接合される複数対の加熱用素子接続端子47が設けられている。本実施形態では、四つの第1の加熱用素子50に対応する四対の加熱用素子接続端子47が設けられた例を図示している。
【0025】
また、凹部42近傍の基材41上には、水晶振動子(30)が接合される振動子接続端子43が設けられている。
また、平面視で略矩形状の基板40のコーナー部分近傍には、恒温型水晶発振器(1)におけるパッケージ120内で基板40を支持する金属ピン(5a〜5d)が挿設される複数のピン孔45a〜45dが設けられている。
【0026】
なお、図示はしないが、基板40の凹部42が設けられた一方の主面とは異なる他方の主面側には、感温素子60、発振用素子70、温度制御用素子80などの回路素子が接合される回路素子接続端子が設けられている。これらの回路素子接続端子、および、上記加熱用素子接続端子47や振動子接続端子43などの接続端子は、端子間配線や基材41内に形成された層内配線などにより対応する端子同士が接続され、基板40に回路配線が形成されている。
【0027】
図1〜図3に戻り、恒温型水晶発振器1において、基板40の凹部42の凹底部分には、複数の第1の加熱用素子50が接合されている。具体的には、第1の加熱用素子50の図示しない端子部と、基板40の対応する加熱用素子接続端子47が位置合わせされ、図示しない半田や導電性接着剤などの接合部材により電気的な接続をはかりながら接合されている。
なお、第1の加熱用素子50としては、比較的高い抵抗値を有するチップ抵抗素子や、チップタイプのパワートランジスターなどの発熱素子を用いることができる。
【0028】
第1の加熱用素子50が接合された基板40の凹部42の開口部側の面には、水晶振動子30が接合されている。具体的には、水晶振動子30の外面における外底面に設けられた外部接続端子25a,25bと、基板40の対応する振動子接続端子43とが位置合わせされ、図示しない半田や導電性接着剤などの接合部材により電気的な接続をはかりながら接合されている。
また、水晶振動子30は、基板40の振動子接続端子43と接合された外部接続端子25a,25bの近傍以外は凹部42上に配置され、基板40と接触する部分が振動子用パッケージ20の縁部に限られることで、例えば、水晶振動子30の外底面の全面を基板40に接触させるように水晶振動子30を基板40に搭載した場合よりも基板40と水晶振動子30との接点が少なくなり、水晶振動子30の熱の基板40への漏洩が抑えられる構造となっている。
【0029】
第1の加熱用素子50と水晶振動子30の外面における一主面との間には、例えばシリコン樹脂などの放熱性樹脂51が、第1の加熱用素子50および水晶振動子30の一主面である外底面に密着させて設けられている。これにより、第1の加熱用素子50と水晶振動子30とは接合されて熱的に結合されるので、第1の加熱用素子50により水晶振動子30を効率よく加熱することが可能になる。なお、上述の第1の加熱用素子50や水晶振動子30の形状のばらつきがあっても、第1の加熱用素子50と水晶振動子30の熱的な結合が図れるのであれば、第1の加熱用素子50と水晶振動子30とを単に接触させた状態であっても構わない。ただし、放熱性樹脂51を用いる本実施携帯によれば、第1の加熱用素子50や水晶振動子30の形状のばらつき、また、基板40への第1の加熱用素子50や水晶振動子30の接合姿勢のばらつきなどの影響、あるいは、接着性が弱い放熱性樹脂51を用いたことなどにより、第1の加熱用素子50と水晶振動子30とを十分に密着させることが困難な場合でも、第1の加熱用素子50と水晶振動子30との熱的な結合を確実に図ることができる。
【0030】
なお、第1の加熱用素子50と水晶振動子30との位置関係は、上述したような放熱性樹脂51を介して接合または単に接触させた状態に限らず、第1の加熱用素子50と水晶振動子30とが近接させて配置された構成とした場合でも、本実施形態の恒温型水晶発振器1における安定した加熱構造としての一定の効果を奏する。例えば、放熱性樹脂51が、その一部を第1の加熱用素子50に密着され、水晶振動子30とは所定の隙間を設けて配置された場合であっても、その第1の加熱用素子50と水晶振動子30との隙間が僅かで両者が近接させて配置されていれば、放熱性樹脂51を介した第1の加熱用素子50からの輻射熱により水晶振動子30を所定の温度に加温することが可能である。
あるいは、例えば、放熱性樹脂51の無い構成を想定したとき、第1の加熱用素子50と水晶振動子30との接合または接触がなされていない場合であっても、第1の加熱用素子50と水晶振動子30との隙間が僅かで両者が近接して配置されていれば、第1の加熱用素子50からの輻射熱により水晶振動子30を所定の温度に加温することが可能である。
いずれにしても、第1の加熱用素子50と水晶振動子30とが隙間を有さずに熱的に結合されていた方が熱伝達効率の観点から好ましく、また、単に接触させた状態でなく接合された態様で熱的に結合されている方がより望ましいことは言うまでもない。
【0031】
基板40の水晶振動子30が接合された一方の主面とは異なる他方の主面側には、感温素子60、発振用素子70、および温度制御用素子80などの回路素子が接合されている。具体的には、感温素子60、発振用素子70、および温度制御用素子80などの回路素子それぞれの端子部(図示せず)と、上記に説明した基板40の対応する回路素子接続端子(図示せず)とが、図示しない半田や導電性接着剤、あるいはホンディングワイヤーなどの接合部材を用いて電気的な接続をはかりながら接合される。
【0032】
なお、感温素子60としては、温度上昇に伴って比抵抗が比較的大きく変化する、例えば、p型半導体酸化物などからなるSMDタイプのサーミスター(Thermistor)素子を用いることができる。
また、発振用素子70や温度制御用素子80としては、発振回路または温度制御回路が形成された専用あるいは汎用の半導体回路素子である、所謂ICチップを用いることができる。
【0033】
上記構成の基板40において、温度制御用素子80により制御された電力を第1の加熱用素子50に供給すると、第1の加熱用素子50のジュール熱は放熱性樹脂51を介して効率よく水晶振動子30に伝播される。また、感温素子60によって水晶振動子30直下の基板40の温度を直接的に検出して、その温度データを温度制御用素子80にフィードバックすることにより、第1の加熱用素子50への供給電力を制御する。
【0034】
水晶振動子30、第1の加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、および温度制御用素子80などの回路素子が接合された基板40は、ベース基板121に複数立設された金属ピン5a〜5dに支持されている。具体的には、基板40のコーナー部分近傍に設けられたピン孔45a〜45d(図5を参照)に、ベース基板121に立設された対応する金属ピン5a〜5dが挿し込まれた状態で固定されている。
【0035】
複数の金属ピン5a〜5dは、各種回路素子が接合された基板40を支持するとともに、基板40とベース基板121との電気的な接続に供し、基板40とベース基板121とは接続されている。また、ベース基板121のパッケージ120の外底面となる側の面には、恒温型水晶発振器1と外部基板とを接合するための複数の実装端子125a〜125dが設けられている(図3を参照)。これら実装端子125a〜125dは、引き回し配線またはスルーホールなどの層内配線により対応する金属ピン5a〜5dと接続されている。図3に示す本実施形態では、金属ピン5aと実装端子125a、金属ピン5bと実装端子125b、金属ピン5cと実装端子125c、金属ピン5dと実装端子125dが、それぞれ対応して接続されている。
【0036】
ベース基板121には、カバー体129が被せられるように接合されている。具体的には、例えば、カバー体129の開口端面に設けられた図示しない爪部が、ベース基板121の外周に設けた孔(図示せず)に嵌入されて接合される。これにより、基板40に接合された第1の加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、温度制御用素子80などの回路素子、および水晶振動子30が、ベース基板121とカバー体129とからなるパッケージ120内に収容された恒温型水晶発振器1が構成される。
【0037】
上記実施形態の恒温型水晶発振器1では、基板40の凹部42内に第1の加熱用素子50を配置し、その第1の加熱用素子50と水晶振動子30とを放熱性樹脂51により熱的に結合させた態様で基板40に水晶振動子30を接合した。
【0038】
これにより、水晶振動子30と基板40との接触面積が軽減できるので、水晶振動子30から基板40への熱の漏洩を抑制しながら、第1の加熱用素子50により水晶振動子30を効率よく加熱することができる。
さらに、例えば凹部42の開口部の一部が露出するように水晶振動子30を基板40上に搭載した構成とすれば、凹部42内にこもる熱を開口部から放熱することも可能である。このような構成は、加熱と放熱とがバランスよく抑制できるので、水晶振動子30の温度を所望の温度に速やかに収束させることができる。
【0039】
また、水晶振動子30と第1の加熱用素子50との間に、放熱性樹脂51を配置させることにより、水晶振動子30と第1の加熱用素子50と熱的な結合をはかっているので、基板40の凹部42における第1の加熱用素子50の接合高さのばらつきが生じ、第1の加熱用素子50の接合面が水晶振動子30の外底面との間に隙間が生じた場合でも、放熱性樹脂51がその隙間を埋めるので第1の加熱用素子50と水晶振動子30との確実な熱的結合を図ることができる。
【0040】
また、基板40の凹部42内に第1の加熱用素子50が配置され、その第1の加熱用素子50と水晶振動子30とが縦配置された構成となっているので、恒温型水晶発振器1の、特に平面サイズの小型化を図ることができる。
【0041】
したがって、効率的に、且つ、安定した水晶振動子30の温度保持をはかることが可能となるで、周囲の温度変化に影響されることなく安定した周波数特性を有する小型の恒温型水晶発振器1を提供することができる。
【0042】
上記実施形態で説明した恒温型水晶発振器1は、以下の変形例として実施することも可能である。
【0043】
(変形例1)
上記実施形態の恒温型水晶発振器1は、水晶振動子30の基板と対応する面と反対側の面に、さらに加熱用素子を配置することによって、より加熱効率を向上させ安定した温度保持が可能な恒温型水晶発振器として提供することもできる。
【0044】
図6(a)は、本変形例の恒温型水晶発振器を底側からみて模式的に説明する平面図であり、(b)は、(a)のD−D線断面図である。
なお、図6(a)では、恒温型水晶発振器の内部の構成を説明する便宜上、恒温型水晶発振器の底面となるベース基板の一部を切り欠いて図示している。
また、本変形例の恒温型水晶発振器の構成のうち、水晶振動子の基板と対向する面と反対側の面にも加熱用素子を配置すること以外は上記実施形態と同じであり、上記実施形態と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図6において、恒温型水晶発振器101は、上記実施形態の恒温型水晶発振器1と同様に、基板140に接合された水晶振動子30、発振用素子70、第1の加熱用素子50、感温素子60、温度制御用素子80が、パッケージ120内に収納されてなる。
第1の加熱用素子50は、基板140の一方の主面に形成された凹部42の凹底部分に接合されている。第1の加熱用素子50が接合された基板140の凹部42の開口部側には、水晶振動子30が接合されている。第1の加熱用素子50と水晶振動子30との間には、放熱性樹脂51が、第1の加熱用素子50および水晶振動子30に密着させて設けられている。
基板140の他方の主面側には、感温素子60、発振用素子70、および温度制御用素子80などの回路素子が接合されている。
【0046】
本変形例の恒温型水晶発振器101の一方の主面側には、水晶振動子30の基板140と対向する面とは異なる面側に、第2の加熱用素子150が配置されている。第2の加熱用素子150は、放熱性樹脂151などにより水晶振動子30と熱的な結合をはかりながら接合されている。また、第2の加熱用素子150と基板140に設けられた接続端子155とは、例えばリード線などの接続配線153により接続され、第2の加熱用素子150は基板140の温度制御回路の一部となっている。
【0047】
水晶振動子30、第1の加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、温度制御用素子80などの回路素子、および第2の加熱用素子150が搭載されてなる基板140は、ベース基板121に複数立設された金属ピン5a〜5dに支持されている。また、ベース基板121のパッケージ120の外底面となる側の面には、金属ピン5a〜5dに対応して接続された実装端子125a〜125dが設けられている。
【0048】
そして、ベース基板121には、カバー体129が被せられるように接合され、ベース基板121から立設された基板140に接合された第1の加熱用素子50および第2の加熱用素子150、感温素子60、発振用素子70、温度制御用素子80などの各種回路素子、あるいは水晶振動子30が、ベース基板121とカバー体129とからなるパッケージ120内に収容された恒温型水晶発振器101が構成される。
【0049】
上記変形例1の恒温型水晶発振器101によれば、基板140の凹部42内に接合された第1の加熱用素子50に加えて、第2の加熱用素子150が接合された状態で配置されることにより、水晶振動子30を所望の温度により早く加温することができるとともに、安定した恒温状態を保持し易くなる。
なお、第2の加熱用素子150や水晶振動子30の形状にばらつきがあっても、第2の加熱用素子150と水晶振動子30との熱的な結合が図れるのであれば、第2の加熱用素子150と水晶振動子30とを単に接触させた状態であっても構わない。
また、第2の加熱用素子150と水晶振動子30とが、上述したように接合または単に接触させた状態に配置されるのに限らず、隙間を有して近接して配置させた構成とした場合でも、第2の加熱用素子150と水晶振動子30との隙間が僅かで両者が近接して配置されていれば、第2の加熱用素子150からの輻射熱により水晶振動子30を所定の温度に加温することが可能である。
ただし、第2の加熱用素子150と水晶振動子30とが隙間を有さずに熱的に結合されていた方が熱伝達効率の観点から好ましく、また、単に接触させた状態でなく接合された態様で熱的に結合されている方がより望ましいことは言うまでもない。
【0050】
(変形例2)
上記実施形態および変形例1で説明した恒温型水晶発振器1,101は、内部を気密に封止するパッケージ構造とすることによって、より信頼性の高い恒温型水晶発振器を提供することができる。
図7は、本変形例の恒温型水晶発振器を模式的に説明する断面図であり、図2および図6(b)の恒温型水晶発振器1,101と同じ断面を示している。
なお、本変形例の恒温型水晶発振器の構成のうち、パッケージの構成以外は上記実施形態および変形例1と同じであり、上記実施形態および変形例1と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図7において、恒温型水晶発振器201は、上記実施形態の恒温型水晶発振器1と同様に、基板40に接合された水晶振動子30、発振用素子70、第1の加熱用素子50、感温素子60、および温度制御用素子80を有している。第1の加熱用素子50は、基板40の一方の主面に形成された凹部42の凹底部分に接合されている。第1の加熱用素子50が接合された基板40の凹部42の開口部側には、水晶振動子30が接合されている。第1の加熱用素子50と水晶振動子30との間には、放熱性樹脂51が、第1の加熱用素子50および水晶振動子30に密着させて設けられている。
基板40の他方の主面側には、感温素子60、発振用素子70、および温度制御用素子80などの回路素子が接合されている。
【0052】
第1の加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、温度制御用素子80などの回路素子、および水晶振動子30が搭載されてなる基板40は、例えば抵抗溶接用の金属ベース221を絶縁貫通して植設された複数の金属ピン(気密端子)105a,105bに支持されている。複数の金属ピン105a,105bの金属ベース221から外側に出た部分は、ピン型(リード型)の実装端子となる。
そして、金属ベース221に、カバー体としての金属からなるカバー体129を抵抗溶接することによって、基板40に接合された第1の加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、温度制御用素子80などの各種回路素子、および水晶振動子30が、金属ベース221とカバー体129とからなるパッケージ220内に気密封止収容された恒温型水晶発振器201が構成される。
【0053】
この構成によれば、基板40に接合された第1の加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、温度制御用素子80などの各種回路素子、および水晶振動子30が、パッケージ220内に密閉封止されて外部環境から遮断されるので、経年劣化特性が良好となり高信頼性を有する恒温型水晶発振器201を提供することができる。
【0054】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態および変形例では、第1の加熱用素子50あるいは第2の加熱用素子150と水晶振動子30との間に、放熱性樹脂51,151を介して熱的な結合を図ったが、放熱性樹脂51,151を介在させない構成としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態および変形例では、圧電振動片として水晶振動片10を用いた水晶振動子30を搭載した恒温型水晶発振器1,101,201について説明した。これに限らず、水晶以外に、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ほう酸リチウム(Li247)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウム、五酸化タンタル(Ta25)などの薄膜圧電材料を積層させて構成された圧電材料からなる圧電振動片を用いることもできる。
【0057】
また、水晶振動子30を構成する振動子用パッケージ20は、上記実施形態で説明した積層構造を有するものに限らず、機械加工などにより一体化した形のものを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】恒温型圧電発振器の実施形態としての恒温型水晶発振器を上側からみて模式的に説明する平面図。
【図2】実施形態の恒温型水晶発振器を模式的に説明する図1のA−A線断面図。
【図3】実施形態の恒温型水晶発振器を底面側からみて模式的に説明する平面図。
【図4】(a)は、圧電振動子としての水晶振動子を模式的に説明する平面図、(b)は、(a)のC−C線断面図。
【図5】(a)は、実施形態の恒温型水晶発振器に用いる基板を底面側からみて模式的に説明する平面図、(b)は、(a)のB−B線断面図。
【図6】(a)は、変形例1の恒温型水晶発振器を上側からみて模式的に説明する平面図、(b)は、(a)のD−D線断面図。
【図7】恒温型水晶発振器の変形例2を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0059】
1,101,201…恒温型圧電発振器としての恒温型水晶発振器、5a〜5d…金属ピン、10…圧電振動片としての水晶振動片、15…励振電極、16a,16b…外部接続電極、20…振動子用パッケージ、25a,25b…外部接続端子、30…圧電振動子としての水晶振動子、40,140…基板、41…基材、42…凹部、43…振動子接続端子、45a〜45d…ピン孔、47…加熱用素子接続端子、50…第1の加熱用素子、51,151…放熱性樹脂、60…感温素子、70…発振用素子、80…温度制御用素子、120,220…パッケージ、121…ベース基板、125a〜125d…実装端子、129…カバー体、150…第2の加熱用素子、153…接続配線、155…接続端子、221…金属ベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ内に設けられた基板と、
前記基板に接合された表面実装型の圧電振動子と、第1の加熱用素子と、感温素子と、温度制御用素子と、発振用素子と、を有する恒温型圧電発振器であって、
前記第1の加熱用素子が前記基板に設けられた凹部内に配置され、
前記圧電振動子が、前記凹部の開口部において前記圧電振動子の外面のうちの一主面と前記第1の加熱用素子とを近接または接触あるいは接合させた態様で前記基板に接合されていることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温型圧電発振器であって、
前記圧電振動子と前記第1の加熱用素子との間に放熱性樹脂を配置させ前記圧電振動子と前記第1の加熱用素子とが熱的に結合されていることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の恒温型圧電発振器であって、
前記圧電振動子の前記一主面とは異なる外面に、第2の加熱用素子が近接または接触あるいは接合させて配置されていることを特徴とする恒温型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−177732(P2010−177732A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15055(P2009−15055)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】