説明

悪性新生物の診断および処置

【課題】原発性悪性中枢神経系(CNS)新生物(特に神経芽細胞腫)は脳の攻撃的かつ広範囲な浸潤および抗癌処置への耐性に起因して非常に致命的である。CNS癌ならびに他の癌タイプの根底にある病原機構の解明と腫瘍特異的治療アプローチおよび診断方法を提供する。
【解決手段】哺乳動物由来の体液をヒトアスパルチル(アスパラギニル)β−ヒドロキシラーゼ(HAAH)ポリペプチドに結合する抗体と接触させ哺乳動物における悪性新生物を診断、およびHAAHを阻害することにより悪性新生物を処置する。腫瘍細胞をHAAHアンチセンス核酸と接触させ腫瘍増殖を阻害する。哺乳動物において悪性新生物を診断するための方法に関し、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)β−ヒドロキシラーゼ(HAAH)ポリペプチドに結合する抗体と抗原−抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させるおよび該抗原−抗体複合体を検出する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、1999年11月8日に出願された特許出願、米国出願番号09/4
36,184号に対する優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府支援研究に関する声明)
本発明は、国立衛生研究所認可CA−35711、AA−02666、AA−
02169、およびAA11431による米国政府支持のもとでなされた。本政
府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
(発明の背景)
原発性悪性中枢神経系(CNS)新生物(特に、神経膠芽細胞腫)は、脳の攻
撃的かつ広範な浸潤および抗癌処置への耐性に起因して非常に致死的である。C
NS癌ならびに他の癌タイプの根底にある病原機構の解明が進行しているが、腫
瘍特異的治療アプローチおよび診断方法は、大いに捕らえどころがなかった。
【発明の開示】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳動物由来の体液を、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)β−
ヒドロキシラーゼ(HAAH)ポリペプチドに結合する抗体を、抗原−抗体複合
体を形成するのに十分な条件下で接触させ、そしてこの抗原−抗体複合体を検出
することによる、哺乳動物における悪性新生物を診断するための方法を特徴とす
る。このようにして検出される悪性新生物は、内胚葉組織に由来する新生物、例
えば、結腸癌、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、および胆管の癌を包含する。中枢神経系
(CNS)の新生物(例えば、ニューロン細胞および神経膠細胞起源の両方の原
発性悪性CNS新生物ならびに転移性CNS新生物)もまた検出される。患者由
来組織サンプル(例えば、固形腫瘍の生検)ならびに体液(例えば、CNS由来
体液、血液、血清、尿、唾液、痰、肺滲出液、および腹水)は、HAAH特異的
抗体と接触される。
【0005】
アッセイフォーマットはまた、悪性疾患の予後のために使用される時間的デー
タを生成するために有用である。哺乳動物の悪性新生物の予後のための方法は、
(a)哺乳動物由来の体液を、HAAHポリペプチドに結合する抗体と、抗原−
抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させる工程、およびこの抗原−抗
体複合体を検出する工程;(b)この複合体の量を定量し、体液中のHAAHの
レベルを決定する工程;および(c)体液中のHAAHのレベルを、HAAHの
正常コントロールレベルと比較する工程によって実施される。経時的なHAAH
のレベルの増大は、疾患の進行性の悪化、および従って有害な予後を示す。
【0006】
本発明はまた、HAAHに結合する抗体を包含する。この抗体は、好ましくは
、HAAHのカルボキシ末端触媒ドメインの部位に結合する。あるいは、この抗
体は、細胞の表面に露出されるエピトープに結合する。この抗体は、ポリクロー
ナル抗血清またはモノクローナル抗体である。本発明は、インタクトなモノクロ
ーナル抗体のみならず、免疫学的に活性な抗体フラグメント(例えば、Fabま
たは(Fab)2フラグメント);操作された単鎖Fv分子;またはキメラ分子
(例えば、ある抗体(例えばマウス起源の)の結合特異性、および別の抗体(例
えば、ヒト起源の)の残りの部分を含む抗体)もまた包含する。好ましくは、こ
の抗体は、FB50、5C7、5E9、19B、48A、74A、78A、86
A、HA238A、HA221、HA 239、HA241、HA329、また
はHA355のようなモノクローナル抗体である。それらのモノクローナル抗体
と同じエピトープに結合する抗体もまた、本発明の範囲内にある。
【0007】
HAAH特異的イントラボディ(intrabody)は、標的細胞(例えば
、腫瘍細胞)の内部で発現される組換え単鎖HAAH特異的抗体である。このよ
うなイントラボディは、内因性細胞内HAAHに結合し、そしてHAAH酵素活
性を阻害するか、またはHAAHが細胞内リガンドに結合することを妨害する。
HAAH特異的イントラボディは、細胞内シグナル伝達を阻害し、そして結果と
して、HAAHを過剰発現する腫瘍の増殖を阻害する。
【0008】
哺乳動物における腫瘍の診断のためのキットは、HAAH特異的抗体を含む。
診断アッセイキットは、標準的な2抗体結合フォーマットで優先的に処方される
。ここでは、1つのHAAH特異的抗体が、患者サンプルにおけるHAAHを捕
捉し、そして別のHAAH特異的抗体が、捕捉されたHAAHを検出するために
使用される。例えば、この捕捉抗体は、固相(例えば、アッセイプレート、アッ
セイウェル、ニトロセルロースメンブレン、ビーズ、ディップスティック、また
は溶出カラムのコンポーネント)に固定化される。二次抗体(すなわち、検出抗
体)は、代表的には、検出可能標識(例えば、比色剤または放射性同位体)でタ
グ化される。
【0009】
哺乳動物における腫瘍増殖を阻害する方法もまた、本発明の範囲内にある。こ
の方法は、哺乳動物に、HAAHの発現または酵素活性を阻害する化合物を投与
することによって行われる。好ましくは、この化合物は、実質的に純粋な核酸分
子(例えば、HAAHアンチセンスDNA)であり、その配列は、HAAHのコ
ード配列に相補的である。HAAHの発現は、哺乳動物細胞(例えば、腫瘍細胞
)を、HAAHアンチセンスDNAまたはRNA(例えば、合成HAAHアンチ
センスオリゴヌクレオチド)と接触させることにより阻害される。アンチセンス
の配列は、HAAH遺伝子のコードまたは非コード領域に相補的である。例えば
、この配列は、HAAH遺伝子の5’非翻訳領域におけるヌクレオチド配列に相
補的である。哺乳動物細胞においてHAAH発現を阻害するHAAHアンチセン
スオリゴヌクレオチドの例は、配列番号10、11、または12を含むオリゴヌ
クレオチドを包含する。HAAHアンチセンス核酸は、HAAHを過剰発現する
神経膠芽細胞腫細胞または他の腫瘍細胞に導入される。標的細胞におけるアンチ
センス核酸のHAAH転写物への結合は、細胞によるHAAH産生の減少を生じ
る。用語「アンチセンス核酸」とは、mRNAの一部に相補的であり、そしてm
RNAにハイブリダイズし、そしてこの翻訳を妨害する核酸(RNAまたはDN
A)を意味する。好ましくは、アンチセンスDNAは、5’調節配列またはHA
AH mRNAのコード配列の5’部分(例えば、シグナルペプチドをコードす
る配列またはHAAH遺伝子のエキソン1内の配列)に相補的である。アンチセ
ンスDNAを細胞に導入するための標準的な技術が使用され得る。これらは、ア
ンチセンスDNAが、アンチセンスRNAが転写されるテンプレートである技術
を包含する。この方法は、HAAHの発現がアップギュレートされる(例えば、
細胞の悪性形質転換の結果として)腫瘍を処置するものである。オリゴヌクレオ
チドの長さは、少なくとも10ヌクレオチドであり、天然に生じるHAAH転写
物と同程度の長さであり得る。好ましくは、この長さは、10ヌクレオチドと5
0ヌクレオチドとの間(両数値を含む)である。より好ましくは、この長さは、
10ヌクレオチドと20ヌクレオチドとの間(両数値を含む)である。
【0010】
「実質的に純粋なDNAまたはRNA」とは、この核酸が、本発明のDNAが
由来する生物の天然に生じるゲノムではHAAH遺伝子に隣接している遺伝子を
含まないことを意味する。従って、この用語は、例えば、ベクター、自律複製プ
ラスミドもしくはウイルス、またはその天然部位以外の部位で原核生物もしくは
真核生物のゲノムDNAに取り込まれるか;あるいは他の配列と独立した別個の
分子(例えば、cDNA、または、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ消化に
よって生成されたゲノムもしくはcDNAフラグメント)として存在する組換え
核酸を包含する。それはまた、さらなるポリペプチド配列をコードするハイブリ
ッド遺伝子の一部である組換え核酸(例えば、キメラポリペプチドをコードする
核酸(例えば、細胞傷害性ポリペプチドに連結された抗体フラグメントをコード
する核酸))を包含する。あるいは、HAAH発現は、リボザイム、またはHA
AHプロモーター配列へのFosまたはJunの結合を阻害する化合物を投与す
ることにより阻害される。
【0011】
HAAHの酵素活性を阻害する化合物は、哺乳動物における腫瘍増殖を阻害す
るために有用である。HAAHの酵素活性とは、ポリペプチドの上皮増殖因子(
EGF)様ドメインの水酸化を意味する。例えば、EGF様ドメインは、コンセ
ンサス配列CX7CX4CX10CXCX8C(配列番号1)を有する。HAAHヒ
ドロキシラーゼ活性は、細胞内で阻害される。例えば、HAAHのドミナントネ
ガティブ変異体(またはこのような変異体をコードする核酸)が投与される。こ
のドミナントネガティブHAAH変異体は、天然に生じるHAAH配列のヒスチ
ジンの第一鉄の鉄結合部位を、非鉄結合アミノ酸に変更する変異を含み、それに
よりHAAHのヒドロキシラーゼ活性を廃止する。変異される(例えば、欠失ま
たは置換される)ヒスチジンは、HAAHのカルボキシ末端触媒ドメイン中に位
置する。例えば、この変異は、ネイティブHAAH配列のアミノ酸650〜70
0の間(例えば、Hisモチーフ、配列番号2の下線配列)に位置する。例えば
、変異は、配列番号2の残基671、675、679、または690にある。H
AAH特異的イントラボディはまた、HAAHに結合し、そして細胞内HAAH
酵素活性を阻害する(例えば、HAAHの触媒ドメイン内のエピトープに結合す
ることにより)のに有用である。他の化合物(例えば、L−ミモシン(mimo
sine)またはヒドロキシピリドン)は、HAAHヒドロキシラーゼ活性を阻
害するために、腫瘍部位に直接、または全身的に投与される。
【0012】
(表1:HAAHのアミノ酸配列)
【0013】
【表1】

(配列番号2;GENBANK受託番号S83325;Hisモチーフに下線
を引く;触媒ドメイン内の保存された配列は、太字で示す)。
【0014】
例えば、HAAH水酸化を阻害する化合物は、HAAHリガンドに結合するが
、細胞内シグナルを伝達しないポリペプチド、またはHAAHの触媒部位に変異
を含むポリペプチドである。このようなポリペプチドは、天然に生じるHAAH
アミノ酸配列またはそれらのフラグメントに少なくとも50%同一であり、そし
てEGF様反復配列を含む基質のHAAH水酸化を阻害する能力を有するアミノ
酸配列を含む。より好ましくは、このポリペプチドは、配列番号2に対して、少
なくとも75%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは少なくと
も95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0015】
実質的に純粋なHAAHポリペプチドまたはHAAH由来ポリペプチド(例え
ば、変異HAAHポリペプチド)は、好ましくは、このポリペプチドをコードす
る組換え核酸の発現によって、またはタンパク質を化学合成することによって、
得られる。ポリペプチドまたはタンパク質は、それが、その天然状態でこれに付
随する夾雑物(タンパク質および他の天然に生じる有機分子)と分離されている
とき、実質的に純粋である。代表的には、このポリペプチドは、それが、調製に
おけるタンパク質の少なくとも60重量%を占めるとき、実質的に純粋である。
好ましくは、調製におけるタンパク質は、重量基準で、少なくとも75%、より
好ましくは、少なくとも90%、および最も好ましくは、少なくとも99%のH
AAHである。純度は、任意の適切な方法(例えば、カラムクロマトグラフィー
、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析)によって測定される
。従って、実質的に純粋なポリペプチドは、真核生物に由来するがE.coli
もしくは別の原核生物、またはこのポリペプチドが由来した以外の真核生物にお
いて産生される組換えポリペプチドを包含する。
【0016】
このようなHAAHまたはHAAH由来ポリペプチドをコードする核酸分子も
また、本発明の範囲内にある。
【0017】
(表2:HAAH cDNA配列)
【0018】
【表2】

(配列番号3;GENBANK受託番号S83325;開始メチオニンをコード
するコドンに下線を引く)。
【0019】
腫瘍増殖を阻害する方法はまた、NOTCHポリペプチドのHAAH水酸化を
阻害する化合物を投与する工程を包含する。例えば、この化合物は、NOTCH
ポリペプチドにおけるEGF様システインリッチ反復配列(例えば、コンセンサ
ス配列CDXXXCXXKXGNGXCDXXCNNAACXXDGXDC(配
列番号4)を含む配列)の水酸化を阻害する。EGF様システインリッチ反復配
列を含むポリペプチドは、内因性NOTCHの水酸化をブロックするために投与
される。
【0020】
HAAHを過剰発現する腫瘍の増殖はまた、インスリンレセプター基質(IR
S)シグナル伝達経路を介するシグナル伝達を阻害する化合物を投与することに
よって阻害される。好ましくは、この化合物は、IRSリン酸化を阻害する。例
えば、この化合物は、配列番号5の残基46、465、551、612、632
、662、732、941、989、または1012に結合し、そしてリン酸化
を阻害するペプチドまたは非ペプチド化合物である。化合物は、ポリペプチド(
例えば、IRSリン酸化部位(例えば、Glu/Tyr部位)をブロックするポ
リペプチド)を包含する。抗体(例えば、リン酸化部位を含むIRSのカルボキ
シ末端ドメインに結合する抗体)は、IRSリン酸化をブロックし、そして結果
としてこの経路に沿ったシグナル伝達をブロックする。IRSリン酸化の阻害は
、順に、細胞増殖の阻害に至る。IRSリン酸化を阻害する他の化合物は、ビタ
ミンDアナログEB 1089およびワートマニン(Wortmannin)を
包含する。
【0021】
HAAH過剰産生腫瘍細胞は、腫瘍細胞の細胞内および表面上の両方でHAA
Hを発現することが示された。従って、腫瘍細胞を殺傷する方法は、このような
腫瘍細胞をHAAH特異的抗体に連結された細胞傷害剤と接触させることより行
われる。HAAH特異的抗体(抗体フラグメント、または細胞外HAAHに結合
するリガンド)は、腫瘍細胞の表面にキメラ分子を指向させ、この細胞傷害剤が
、この抗体が結合される腫瘍細胞を損傷または殺傷させることを可能にする。モ
ノクローナル抗体は、HAAHのエピトープ(例えば、細胞の表面上もしくはH
AAHの触媒部位に露出されたエピトープ)に結合する。細胞傷害性組成物は、
非腫瘍細胞に比較して腫瘍細胞を優先的に殺傷する。
【0022】
HAAHを過剰発現する腫瘍の増殖を阻害する抗腫瘍剤を同定するためのスク
リーニング方法もまた、本発明の範囲内にある。候補化合物がHAAH酵素活性
を阻害するか否かを決定するために使用されるスクリーニング方法は、以下の工
程を包含する:(a)HAAHポリペプチド(例えば、HAAHのカルボキシ末
端触媒部位を含むポリペプチド)を提供する工程;(b)EGF様ドメインを含
むポリペプチドを提供する工程;(c)HAAHポリペプチドまたはEGF様ポ
リペプチドを、候補化合物と接触させる工程;および(d)工程(b)のEGF
様ポリペプチドの水酸化を決定する工程。候補化合物の存在下でのこの化合物の
不在下に比較した水酸化の減少は、この化合物が、NOTCHのようなタンパク
質におけるEGF様ドメインのHAAH水酸化を阻害することを示す。
【0023】
NOTCHのHAAH活性化を阻害する抗腫瘍剤は、(a)HAAHを発現す
る細胞を提供する工程;(b)この細胞を候補化合物と接触させる工程;および
(c)この細胞の核への活性化NOTCHの転移を測定する工程によって同定さ
れる。転移は、NOTCHの110kDa活性化フラグメントに結合する抗体の
ような試薬を使用することによって測定される。候補化合物の存在下でのこの化
合物の不在下に比較した転移の減少は、この化合物が、NOTCHのHAAH活
性化を阻害し、それによりNOTCH媒介シグナル伝達およびHAAH過剰発現
腫瘍細胞の増殖を阻害することを示す。
【0024】
本明細書中に記載のヌクレオチドおよびアミノ酸比較は、Lasergene
ソフトウェアパッケージ(DNASTAR,Inc.,Madison,WI)
を用いて実施された。使用されるMegAlignモジュールは、Clusta
l V方法(Higginsら、1989,CABIOS 5(2):151−
153)であった。使用されるパラメーターは、ギャップペナルティー10、ギ
ャップ長さペナルティー10であった。
【0025】
ハイブリダイゼーションは、標準的な技術(例えば、Ausubelらに記載
の技術(Current Protocols in Molecular B
iology,John Wiley & Sons, 1989))を用いて
実施される。「高いストリンジェンシー」とは、高温および低塩濃度(例えば、
0.1×SSCの塩濃度で65℃での洗浄条件)によって特徴付けられる核酸ハ
イブリダイゼーションおよび洗浄条件をいう。「低」から「中程度の」ストリン
ジェンシーとは、低温および高塩濃度(例えば、1.0×SSCの塩濃度で60
℃未満での洗浄条件)によって特徴付けられるDNAハイブリダイゼーションお
よび洗浄条件をいう。例えば、高いストリンジェンシー条件は、50%ホルムア
ミドの存在下の42℃でのハイブリダイゼーション;2×SSCおよび1%SD
Sの存在下での65℃での第一の洗浄;続いて、0.1%×SSCの存在下での
65℃での第二の洗浄を包含する。HAAH遺伝子配列に対して約50%配列同
一性を有するDNA配列を検出するために適したより低いストリンジェンシー条
件は、例えば、ホルムアミドの不在下での約42℃でのハイブリダイゼーション
;42℃、6×SSC、および1%SDSでの第一の洗浄;ならびに50℃、6
×SSC、および1%SDSでの第二の洗浄によって検出される。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、以下の好ましい実施形態の説明、および特許
請求の範囲から明らかである。
【0027】
(詳細な説明)
HAAHは、コラーゲン生合成において鍵となる役割を演じるプロリルおよび
リジルヒドロキシラーゼの(α−ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼファミ
リーに属するタンパク質である。この分子は、第一鉄の鉄の存在下でいくつかの
タンパク質のEGF様ドメインにおけるアスパラギン酸またはアスパラギン残基
を水酸化する。これらのEGF様ドメインは、保存されたモチーフを含む。この
モチーフは、タンパク質(例えば、凝固因子、細胞外細胞間質タンパク質、LD
Lレセプター、NOTCHホモログ、またはNOTCHリガンドホモログ)にお
ける反復配列を形成する。
【0028】
α−ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼであるアスパルチル(アスパラギ
ニル)β−ヒドロキシラーゼ(AAH)は、種々のタンパク質のEGF様ドメイ
ンにおける1つのアスパラギン酸またはアスパラギン残基を特異的に水酸化する
。ヒトAspH((hAspH))をコードする4.3kb cDNAは、形質
転換細胞における2.6kbおよび4.3kb転写物とハイブリダイズし、そし
てより大きな転写物の推定アミノ酸配列は、約85kDaのタンパク質をコード
する。インビボでの転写および翻訳、ならびにウェスタンブロット分析の両方と
も、触媒性C末端の翻訳後切断から生じ得る56kDaタンパク質もまた示す。
【0029】
AAHの生理的機能は、ビタミンK依存性凝血タンパク質におけるアスパラギ
ン酸の翻訳後β水酸化である。しかしながら、いくつかの悪性新生物におけるA
AHの豊富な発現、および多くの正常細胞における低いレベルのAAHは、悪性
におけるこの酵素の役割を示す。AAH遺伝子はまた、栄養膜細胞層において高
度に発現されるが、胎盤の合胞体栄養細胞層においてはあまり発現されない。栄
養膜細胞層は、胎盤移植を媒介する侵襲性細胞である。ヒト胆管癌、肝細胞癌、
結腸癌、および乳癌におけるAAH発現レベルの増大は、侵襲性または転移性の
病変に主に関連した。さらに、AAHの過剰発現は、DNA合成の増大および細
胞増殖を厳密には反映しない。なぜなら、高レベルのAAH免疫反応性が100
%の胆管癌において観察されたが、胆管の再生または非新生物性増殖と関連した
ヒトまたは実験的疾患プロセスにおいてはそうではなかったからである。AAH
過剰発現および付随する高レベルのβヒドロキシラーゼ活性は、形質転換新生物
細胞の侵襲性増殖に至る。HAAH発現の増大の検出は、遺伝子産物を過剰発現
するとして特徴付けられている癌タイプの早期かつ信頼性ある診断に有用である

【0030】
(悪性腫瘍の診断)
HAAHは、正常非癌性細胞に比較して、内胚葉起源の多くの腫瘍およびCN
S腫瘍の少なくとも95%において過剰発現される。患者由来組織サンプル(例
えば、固体組織または体液)におけるHAAH遺伝子産物の増大は、標準的な方
法(例えば、ウェスタンブロットアッセイ、またはELISAのような定量アッ
セイによって)を用いて実施される。例えば、HAA特異的抗体を用いる標準的
な競合ELISAフォーマットが、患者HAAHレベルを定量するために使用さ
れる。あるいは、捕捉抗体として第一の抗体および検出抗体として第二のHAA
H特異的抗体を用いるサンドイッチELISAが使用される。
【0031】
HAAHを検出する方法は、体液の成分を固体基材(例えば、マイクロタイタ
ープレート、ビーズ、ディップスティック)に結合されたHAAH特異的抗体と
接触させる工程を包含する。例えば、この固体基材は、体液の患者由来サンプル
中に浸漬され、洗浄され、そしてこの固体基材は、試薬と接触されて、この固体
基材に存在する免疫複合体の存在を検出する。
【0032】
試験サンプルにおけるタンパク質は、固体基材上に固定化される(例えば、結
合される)。タンパク質を固体基材に共有結合的または非共有結合的に結合する
ための方法および手段は、当該分野において公知である。固体表面の性質は、ア
ッセイフォーマットに依存して変動し得る。マイクロタイターウェルにおいて実
施されるアッセイについては、固体表面は、マイクロタイターウェルまたはカッ
プの壁である。ビーズを用いるアッセイについては、固体表面は、ビーズの表面
である。ディップスティック(すなわち、繊維または紙のような有孔性または繊
維性材料から作製された固形物)を用いるアッセイにおいては、この表面は、デ
ィップスティックが作製された材料の表面である。有用な固体支持体の例は、ニ
トロセルロース(例えば、メンブレンまたはマイクロタイターウェル形態で)、
ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはマクロタイターウェル)、ポリスチレン
ラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート)、ポリビニリジ
ンフルオライド(IMMULONTMとして公知)、ジアゾ化紙、ナイロンメンブ
レン、活性化ビーズ、およびプロテインAビーズを包含する。抗体を含む体支持
体は、代表的には、試験サンプルとの接触後、そして結合された免疫複合体の検
出前に洗浄される。試験サンプルとの抗体のインキュベーション後、検出可能標
識による免疫複合体の検出が行われる。例えば、この標識は、酵素、蛍光、化学
発光、放射能、または染料である。免疫複合体からのシグナルを増幅するアッセ
イもまた当該分野において公知であり、このようなアッセイとして、例えば、ビ
オチンおよびアビジンを利用するアッセイが挙げられる。
【0033】
HAAH検出試薬(例えば、抗体)は、キットの形態でパッケージングされる
。これは、1つ以上のHAAH特異的抗体、コントロール処方物(陽性および/
または陰性)、および/または検出可能標識を含む。アッセイは、当該分野にお
いて公知の標準的な2抗体サンドイッチアッセイフォーマットの形態であり得る

【0034】
(HAAH特異的抗体の産生)
抗HAAH抗体は、当該分野において周知の技術によって得られた。このよう
な抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルである。ポリクローナル抗体は
、標準的な方法(例えば、Ghoseら、Methods in Enzymo
logy, Vol. 93, 326−327, 1983に記載の方法によ
り)を用いて得られた。HAAHポリペプチド、またはそれらの抗原性フラグメ
ントは、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはげっ歯類の抗血清においてポリクローナ
ル抗体の産生を刺激するための免疫原として使用された。免疫原として有用なポ
リクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方の産生のための抗原性ポリペ
プチドは、HAAH触媒ドメインを含むポリペプチドを包含する。例えば、免疫
原性ポリペプチドは、全長成熟HAAHタンパク質またはカルボキシ末端触媒ド
メインを含むHAAHフラグメント(例えば、配列番号2のHisモチーフを含
むHAAHポリペプチド)である。
【0035】
本明細書中に開示した抗体と同じエピトープに結合する抗体は、当該分野で公
知の標準的な方法(例えば、競合結合アッセイ)を用いて同定される。
【0036】
モノクローナル抗体は、標準的な技術によって得られた。10μgの精製組換
えHAAHポリペプチドは、完全フロイントアジュバント中でマウスに腹腔内投
与され、次いで最初の接種の3〜5ヶ月後に、静脈内で(尾静脈に)ブーストを
1回行った。抗体産生ハイブリドーマは、標準的な方法を用いて作製された。H
AAHポリペプチドについて高度に特異的である抗体を産生するハイブリドーマ
を同定するために、ハイブリドーマは、免疫に使用した同じポリペプチド免疫原
を用いてスクリーニングされた。HAAH結合活性を有するとして同定された抗
体はまた、以下に記載の酵素アッセイを使用してHAAH触媒活性を阻害する能
力についてスクリーニングされる。好ましくは、この抗体は、少なくとも約10
8リットル/molの結合親和力およびより好ましくは、少なくとも約109リッ
トル/molの親和力を有する。
【0037】
モノクローナル抗体は、当該分野において公知の方法によってヒト化される。
例えば、所望の結合特異性を有するMAbは、商業的にヒト化され得る(Sco
tgene,Scotland;Oxford Molecular,Palo
Alto,CA)。
【0038】
HAAH特異的イントラボディは、以下のようにして産生される。適切なモノ
クローナル抗体を産生するハイブリドーマの同定後、抗体をコードするDNAが
クローニングされる。単鎖HAAH特異的抗体をコードするDNA(ここで、重
鎖および軽鎖可変ドメインがフレキシブルなリンカーペプチドによって分離され
る)が、公知の方法(例えば、Marascoら、1993,Proc. Na
tl. Acad.Sci. USA 90:7889−7893およびMar
ascoら、1997,Gene Therapy 4:11−15)を用いて
発現ベクターにクローニングされる。このような構築物は、例えば、抗体の細胞
内産生のための標準的な遺伝子送達技術を用いて、細胞に導入される。細胞内抗
体(すなわち、イントラボディ(intrabody))が、HAAHによるシ
グナル伝達を阻害するために使用される。HAAHのカルボキシ末端触媒ドメイ
ンに結合するイントラボディは、EGF様標的配列を水酸化するHAAHの能力
を阻害する。
【0039】
腫瘍細胞の表面でHAAHの細胞表面露出エピトープに結合するHAAH特異
的抗体(またはそのフラグメント)を連結する方法は、公知の方法を用いて、公
知の細胞傷害剤(例えば、リシンまたはジフテリア毒素)に連結される。
【0040】
(悪性腫瘍を処置する方法)
HAAHを過剰発現するとして特徴付けられた腫瘍(例えば、内胚葉起源の腫
瘍またはCNS腫瘍)を有する患者は、HAAHアンチセンス核酸を投与するこ
とによって処置される。
【0041】
アンチセンス療法は、肝細胞癌、胆管癌、神経膠芽細胞腫、および神経芽細胞
腫を罹患する患者においてHAAHの発現を阻害するために使用される。例えば
、HAAHアンチセンス鎖(RNAまたはDNAのいずれか)は、mRNA転写
物に結合し得る形態で細胞に直接的に導入される。あるいは、一旦標的細胞内に
あると、適切なアンチセンスmRNAに転写される配列を含むベクターが、投与
され得る。標的mRNAにハイブリダイズするアンチセンス核酸は、通常一本鎖
のmRNA転写物と会合し、それにより翻訳および従ってタンパク質の発現を妨
害することにより、遺伝子によりコードされるポリペプチド産物の産生を減少ま
たは阻害する。例えば、プロモーター(例えば、組織特異的または腫瘍特異的プ
ロモーター)を含むDNAは、DNA配列(アンチセンステンプレート)(これ
は、アンチセンスRNAに転写される)に作動可能に連結される。「作動可能に
連結される」とは、コード配列および調節配列(すなわち、プロモーター)が、
適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が調節配列に結合されたときに遺
伝子発現を可能にするように接続されることを意味する。
【0042】
HAAH mRNAの種々の部分に相補的なオリゴヌクレオチドは、標準的な
方法に従って、腫瘍細胞におけるHAAHの産生を減少させるその能力について
、インビトロで試験された(例えば、FOCUS肝細胞癌(HCC)細胞株を用
いて)。候補アンチセンス組成物と接触された細胞においてHAAH遺伝子産物
の、候補組成物の不在下で培養された細胞に比較した減少は、HAAH特異的抗
体または他の検出戦略を用いて検出される。インビトロでの細胞に基づくアッセ
イまたは無細胞アッセイにおいてHAAHの産生を減少させる配列は、次いで、
悪性新生物を有する動物におけるHAAH産生の減少を確認するために、ラット
またはマウスにおいてインビボで試験される。
【0043】
アンチセンス療法は、標準的なベクターおよび/または遺伝子送達系によって
アンチセンス核酸を患者に投与することによって実施される。適切な遺伝子送達
系は、リポソーム、レセプター媒介送達系、裸のDNA、およびウイルスベクタ
ー(例えば、とりわけ、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、
およびアデノ随伴ウイルス)を包含し得る。HAAH産生の減少は、IRSシグ
ナル伝達経路を介するシグナル伝達の減少を生じる。治療用核酸組成物は、薬学
的に受容可能なキャリアにおいて処方される。治療用組成物はまた、上記のよう
な遺伝子送達系を含み得る。薬学的に受容可能なキャリアは、動物への投与のた
めに適切な生物学的に適合性のビヒクルである:例えば、生理食塩水。化合物の
療有効量は、医学的に所望とされる結果(例えば、HAAH遺伝子産物の産生の
減少または処置動物における腫瘍増殖の減少)を生じ得る量である。
【0044】
非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋内、および腹腔内送達経路)は、核酸
またはHAAH阻害ペプチドまたは非ペプチド化合物を送達するために使用され
得る。CNS腫瘍の処置のために、脳脊髄液への直接注入が有用である。血液脳
関門は、癌患者において補償され得、全身的に投与された薬物が関門を通ってC
NSに通過することを可能にする。治療用化合物のリポソーム処方物もまた、血
液脳関門の通過を促進し得る。
【0045】
任意の一患者のための投与量は、多くの要因(患者の大きさ、体表面積、年齢
、投与される特定の核酸、性、投与時間および経路、全体的な健康、および同時
に投与される他の薬物を含む)に依存する。核酸の静脈内投与のための投与量は
、およそ106〜1022コピーの核酸分子である。
【0046】
リボザイム療法もまた、癌患者においてHAAH遺伝子発現を阻害するために
使用される。リボザイムは、特異的mRNAに結合し、次いでそれを予め決定さ
れた切断点で切断し、それによって転写物を破壊する。これらのRNA分子は、
当該分野で公知の方法に従って、HAAH遺伝子の発現を阻害するために使用さ
れる(Sullivanら、1994,J.Invest.Derm.103:
85S−89S;Czubaykoら、1994,J.Biol.Chem.2
69:21358−21363;Mahieuら、1994,Blood 84
:3758−65;Kobayashiら、1994, Cancer Res
.54:1271−1275)。
【0047】
(NOTCHシグナル伝達の活性化)
NOTCHシグナル伝達は、AAHを高度に発現する細胞において活性化され
る。図14Aは、ウェスタンブロットを用いることによる110kDa NOT
CHフラグメントの存在を示す。酵素活性AAHの過剰発現は、100kDaの
切断された活性NOTCH−1の提示によって示される(レーン1、偽DNAト
ランスフェクトクローン;レーン2、クローン7;およびレーン3、クローン8
)。対して、NOTCH−2は活性化されなかった。AAHを発現するクローン
において、偽DNAトランスフェクトクローンに比較した全長Jaggedリガ
ンドの発現の増強があった。チューブリンは、タンパク質ローディングのための
内部コントロールとして使用された。
【0048】
Hes−1(公知の下流エフェクター遺伝子)の発現は、NOTCHシグナル
伝達によって活性化される(図14B)。AAH発現クローンのみが、転写因子
としてNotch発現を活性化し、続いて競合RT−PCRによって明らかにさ
れるように、Hes−1遺伝子発現を上方調節する。下のほうのパネルは、内部
コントロールとして働くGAPDIIのRT−PCR産物である。図14Cは、
ヒトNOTCH−1(hNOTCH−1)およびJagged−1の発現を示し
、ここでIRS−1シグナル伝達はドミナントネガティブ変異体(DhIRS−
1)によって減少される。このような細胞は、下方調節(downregula
tion)AAH発現を示し、そしてウェスタンブロット分析によるNOTCH
−1およびJaggedレベルの平行した減少を示す。チューブリンは、タンパ
ク質ローディングについての内部コントロールとして使用された。
【0049】
(HAAH酵素活性を阻害する化合物を同定する方法)
アスパルチル(アスパラギニル)β−ヒドロキシラーゼ(hydroxyla
seydroxylase)(AAH)活性は、インビトロまたはインビボで測
定される。例えば、HAAHは、EGF様ポリペプチドドメインのアスパルチル
およびアスパラギル残基のβ炭素の翻訳後修飾を触媒する。ヒドロキシラーゼ活
性を阻害する化合物を同定するためのアッセイは、化合物の不在下(または予め
決定されたコントロール値)での平行反応と比較して候補化合物が存在する酵素
反応における水酸化のレベルを比較することにより実施される。試験管において
実施される標準的なヒドロキシラーゼアッセイは、当該分野で公知である(例え
ば、Lavaissiereら、1996,J.Clin.Invest.98
:1313−1323;Jiaら、1992,J.Biol.Chem.267
:14322−14327;Wangら、1991,J.Biol.Chem.
266:14004−14010;またはGronkeら、1990,J.Bi
ol.Chem.265:8558−8565)。ヒドロキシラーゼ活性はまた
、96ウェルマイクロタイタープレートフォーマットにおいて二酸化炭素を用い
て測定される(14CO2捕捉アッセイ)(Zhangら、1999,Anal.
Biochem.271:137−142)。これらのアッセイは、容易に自動
化され、そしてヒドロキシラーゼ阻害活性を有する化合物を同定するための候補
化合物の高処理能スクリーニングに適する。
【0050】
NOTCHのHAAH活性化を阻害する候補化合物は、HAAHを発現するか
または過剰発現する細胞(例えば、FOCUS HCC細胞)において活性化N
OTCHの減少を検出することにより同定される。細胞は、候補化合物の存在下
で培養される。平行培養物が、候補化合物の不在下でインキュベートされる。こ
の化合物がNOTCHのHAAH活性化を阻害するか否かを評価するために、細
胞の核への活性化NOTCHの転移が測定される。転移は、細胞の核においてN
OTCHの110kDa活性化フラグメントを検出することにより測定される。
活性化フラグメントは、活性化の際に大きな(およそ300kDaの)膜貫通N
OTCHタンパク質から切断される。NOTCH転移を測定する方法は、公知で
ある(例えば、Songら、1999,Proc.Natl.Acad.Sci
.U.S.A.96:6959−6963またはCapobiancoら、19
97,Mol.Cell Biol.17:6265−6273に記載の方法)
。候補化合物の不在下に比較した候補化合物の存在下の転移の減少は、この化合
物が、NOTCHのHAAH活性化を阻害し、それにより、NOTCH媒介シグ
ナル伝達およびHAAH過剰発現腫瘍細胞の増殖を阻害することを示す。
【0051】
IRSのリン酸化を阻害する化合物についてのスクリーニングの方法は、候補
化合物の存在および不在下でIRS発現細胞をインキュベートし、そしてこの細
胞におけるIRSリン酸化レベルを評価することにより、実施される。化合物の
不在下に比較した、化合物の存在下で培養した細胞におけるリン酸化の減少は、
この化合物が、IRS−1リン酸化および結果としてHAAH過剰発現腫瘍の増
殖を阻害することを示す。あるいは、このような化合物は、当該分野で公知のイ
ンビトロリン酸化アッセイ(例えば、ポリ(Glu/Tyr)のような合成基質
のリン酸化を測定したもの)において同定される。
【0052】
(実施例1:HAAHの発現増大は、悪性形質転換と関連する)
HAAHは、形質転換関連タンパク質においてEGF様ドメインを水酸化する
高度に保存された酵素である。HAAH遺伝子は、多くの癌タイプ(ヒト肝細胞
癌および胆管癌を含む)において過剰発現される。HAAH遺伝子発現は、胆管
癌に比較して、ヒト疾患およびラットモデルの両方において胆管増殖の間に検出
不能であることが見出された。NIH−3T3細胞におけるHAAHの過剰発現
は、悪性表現型の生成と関連し、そして酵素活性は、細胞形質転換のために必要
とされることが見出された。以下に記載のデータは、HAAHの過剰発現が胆上
皮細胞の細胞形質転換に連結されることを示す。
【0053】
ヒト肝細胞起源の形質転換悪性細胞において特異的に過剰発現される分子を同
定するために、FOCUS肝細胞癌(HCC)細胞株を、悪性表現型と関連した
タンパク質を特異的または優先的に認識するモノクローナル抗体(mAb)を生
成する免疫原として使用した。HepG2 HCC細胞由来のλGT11 cD
NA発現ライブラリーをスクリーニングし、そしてFOCUS細胞株に対して産
生されるHAAH特異的mAbが、HAAH cDNAによりコードされるタン
パク質のエピトープを認識することが見いだされた。HAAH酵素は、いくつか
の異なるヒト形質転換細胞株および腫瘍組織において隣接するヒト組織対応物に
比較して上方調節(upregulate)されることが見いだされた。異なる
ヒト悪性組織における過剰発現されたHAAH酵素は、触媒的に活性であること
が見出された。
【0054】
HAAH遺伝子発現を、増殖胆管において、およびNIH 3T3細胞におい
て試験した。悪性表現型の生成におけるその役割を、形質転換病巣の形成、足場
非依存性増殖の指標としてソフトアガーにおける増殖、およびヌードマウスにお
ける腫瘍形成によって測定した。形質転換表現型の誘導における酵素活性の役割
を、ヒドロキシラーゼ活性を廃する触媒部位における変異を有するcDNA構築
物を用いることによって測定した。この結果は、HAAH遺伝子の発現の増加が
、胆管の悪性形質転換と関連することを示した。
【0055】
以下の材料および方法を使用して、以下に記載するデータを生成した。
【0056】
(抗体)
FB50モノクローナル抗体を、FOCUS HCC細胞でBalb/Cマウ
スを細胞免疫することによって生成した。モノクローナル抗デング熱ウイルス抗
体を非関連コントロールとして使用した。HBOH2モノクローナル抗体を、5
2kDa組換えHAAHポリペプチドに対して生成した。これは、マウスおよび
ヒトタンパク質由来のβヒドロキシラーゼの触媒ドメインを認識する。ポリクロ
ーナル抗HAAH抗体は、ラットヒドロキシラーゼタンパク質と交差反応する。
コントロール抗体抗Erk−1をSanta Cruz Biotechnol
ogy,Inc.,CAから購入した。西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した
ヒツジ抗マウス抗血清およびロバ抗ウサギ抗血清を、Amersham,Arl
ington Heights,ILから入手した。
【0057】
(構築物)
マウス全長AAH構築物(pNH376)および触媒活性が廃止された部位指
向性変異構築物(pNH376−H660)を、真核生物発現ベクターpcDN
A3(Invitrogen Corp.,San Diego, CA)にク
ローニングした。全長ヒトAAHを、原核生物発現ベクターpBC−SK+(S
tratagene,La Jolla,CA)にクローニングした。全長ヒト
AAH(GENBANK受託番号S83325)をpcDNA3ベクターのEc
oRI部位にサブクローニングした。
【0058】
(胆管増殖の動物モデル)
ラットを、グループ9を除いて各々3匹の動物の9つの別個の群に分けた。グ
ループ9は5匹のラットを含んだ。グループ1は、非手術コントロール群であり
、グループ2は、偽操作手術コントロールであった。残りのグループは、肝臓内
胆管増殖を誘導するために総胆管結紮(ligation)を受け、そして表3
に示すように6、12、24、48時間、および4、8および16日目に評価し
た。動物をCO2で窒息させ、そして肝臓サンプルを左側葉および中葉から採取
し、2%パラホルムアルデヒド中に固定化し、そしてパラフィン包埋した。肝臓
サンプル(5m)を切断し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色して、肝臓内
胆管増殖を評価した。免疫組織化学を、ラットタンパク質と交差反応するポリク
ローナル抗HAAH抗体を用いて実施し、タンパク質発現のレベルを決定した。
【0059】
(原発性硬化性胆管炎(PSC)と関連した胆管増殖)
肝臓生検サンプルを、PSCおよび関連胆管増殖を有する7個体から得た。こ
れらの個体を、標準的な胃腸肝臓(gastroenterohepatolo
gical)プロトコルに従って評価した。患者は、22〜46歳であり、そし
て男性が4人、女性が3人であった。4人は、炎症性腸疾患を伴った(3人が潰
瘍性大腸炎であり、そして1人がクローン大腸炎(Crohn’s colit
is)である)。患者は全て、放射線医学評価(腹部超音波検査および内視鏡的
逆行性胆道膵管造影を含む)を受け、肝臓外胆管閉塞の診断を除いた。組織切片
を、パラフィン包埋ブロックから調製し、胆管増殖についてヘマトキシリンおよ
びエオシン染色によって評価した。HAAHの発現を、HAAH特異的モノクロ
ーナル抗体(例えばFB50)を用いて免疫組織化学によって決定した。
(免疫組織化学)
肝臓組織切片(5μm)を、キシレン中で脱パラフィンし、そして等級化アル
コール(graded alcohol)中で再水和した。内因性ペルオキシダ
ーゼ活性を、60%メタノール中での0.6% H22での30分処理によって
クエンチした。内因性ビオチンを、アビジン−ビオチンブロッキング溶液(Ve
ctor Laboratories,Burlingame,CA)とのイン
キュベーションによってマスキングした。FB50mAb(PSCサンプルにつ
いて)およびポリクローナル抗HAAHヒドロキシラーゼ抗体(ラット肝臓サン
プルについて)を、4℃で一晩、加湿チャンバーにおいてスライドに添加した。
免疫組織化学染色を、色素原としてジアミノベンジジン(DAB)を有するVe
ctastain Kitsを用いる標準的なアビジン−ビオチン西洋ワサビペ
ルオキシダーゼ複合体(ABC)法を用いて、製造者の指示書(Vector
Laboratories,Inc.,Burlingame,CA)に従って
実施した。組織切片をヘマトキシリンで対比染色し、次いでエタノール中で脱水
した。切片を、胆管増殖およびHAAHタンパク質発現について光学顕微鏡によ
って試験した。胆管癌および胎盤のパラフィン切片を、陽性コントロールとして
使用し、そして肝臓脂肪症サンプル(hepatosteatosis sam
ples)を、陰性コントロールとして使用した。抗体結合特異性についてのコ
ントロールに、隣接切片を、一次抗体の不在下で、またはデング熱ウイルスに対
する非関連抗体を用いて免疫染色した。組織免疫反応性についての陽性コントロ
ールとして、全ての標本の隣接切片を、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロ
ゲナーゼに対するモノクローナル抗体を用いて免疫染色した。
【0060】
(ウェスタンブロット分析)
細胞溶解物を、プロテアーゼインヒビターを含む標準的な放射性免疫沈降アッ
セイ(RIPA)緩衝液において調製した。溶解物中のタンパク質の総量をBi
o−Rad比色アッセイ(Bio Rad,Hercules,CA)、続いて
10%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PA
GE)によって決定し、PVDFメンブレンに転写し、そして、二次抗体として
の西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された一次ヒツジ抗マウスおよびロバ抗ウ
サギ抗血清としてのFB50、HBOH2、抗Erk−1(タンパク質ローディ
ングについての内部コントロールとして使用)を使用するウェスタンブロット分
析に供した。抗体結合を、増強された化学発光試薬(SuperSignal,
Pierce Chemical Company,Rockford,IL)
およびフィルムオートラジオグラフィーで検出した。免疫反応性のレベルを、N
IH画像ソフトウェアを用いる体積デンシトメトリーによって測定した。
【0061】
(酵素活性アッセイ)
AAH活性を、標準的な方法(例えば、Jiaら、1992,J.Biol.
Chem.267:14322−14327;Wangら、1991,J.Bi
ol.Chem.266:14004−14010;またはGronkeら、1
990,J.Biol.Chem.265:8558−8565に記載の方法)
に従って、14C標識α−ケトグルタレートが14C含有CO2を放出するドメイン
を水酸化する基質としてウシプロテインSの第一のEGF様ドメインを用いて細
胞溶解物中で測定した。インキュベーションを、48μgの粗細胞抽出タンパク
質および75μM EGF基質を含む最終容量40μlで、37℃で30分間実
施した。
【0062】
(細胞トランスフェクション研究)
NIH−3T3細胞を、10%熱不活化胎仔ウシ血清(FCS;Sigma
Chemical Co.,St.Louis,MO)、1%L−グルタミン、
1%非必須アミノ酸および1%ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO
BRL,Life Technologies,Inc.,Grand Isl
and,NY)を補充した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Medi
atech、Washington,DC)中で培養した。サブコンフルエント
なNIH−3T3細胞(3×105細胞/60mmディッシュ)を、以下のプラ
スミドの1つ(10μg)でトランスフェクトした;1)非組換えpcDNA3
ベクター(Invitrogen Corp.,San Diego,CA)(
陰性コントロールとして);2)pNH376−H660(その触媒ドメインを
変異させそしてCMVプロモーター駆動のpcDNA3ベクターにクローニング
した、マウスAAH cDNA);3)pNH376(pcDNA3ベクターに
クローニングした野生型マウスAAH cDNA);4)pCDHH(pcDN
A3ベクターにクローニングした野生型ヒトAAH cDNA);または5)p
LNCX−UP1(v−SrcオンコジーンをコードするcDNA)(ポジティ
ブコントロール)。細胞を、製造業者(5 Prime−3 Prime, I
nc.,Boulder,CO)の指示書に従って、リン酸カルシウムトランス
フェクションキットを用いてトランスフェクトした。細胞トランスフェクション
効率の比較を、これらの種々の構築物で評価した。この手順のために、トランス
フェクション後48時間で得たコンフルエントなプレートを分けて、12個の別
々の6cmディッシュに再播種した。これらの内の6個は、400μg/mlの
G−418(GIBCO BRL,Life Technologies,In
c.,Grant Island,NY)を含有する培地の存在下で増殖させた
。G−418耐性病巣の数を、トランスフェクション後14日目に測定し、そし
てトランスフェクション効率における任意の変動性について補正するために使用
した。
【0063】
(形質転換アッセイ)
NIH−3T3細胞を、これらの種々の構築物でトランスフェクトし、そして
上記のように48時間後にコンフルエントに到達させた。各6cmディッシュを
分け、そして12個の異なる6cmディッシュに播種した。このうち6個を、ト
ランスフェクション効率を検出するためにG−418の存在下で増殖させ、他の
6個を、G418を含まない完全培地中で、4日毎に培地交換を行って増殖させ
た。形質転換病巣の数を、G−418を含まないこれらのプレートにおいてカウ
ントし、そして1μgのトランスフェクトしたDNAあたりの形質転換病巣とし
て表した。
【0064】
(足場非依存性細胞増殖アッセイ)
限界希釈技術(平底96ウェルプレートの1ウェルあたり0.15細胞)を、
ウエスタンブロット分析およびヒドロキシラーゼ活性の酵素アッセイによって測
定されるような、異なるレベルのHAAH活性を有する細胞クローンを単離する
ために、G−418中で増殖させたトランスフェクト体に対して行った。クロー
ン化した細胞株(1.0×104細胞)を、0.4%低融点アガロース(Sea
Plaque GTG Agarose;FMC Bioproducts,R
ockland,Maine)を含む完全培地中に懸濁し、0.53%低融点ア
ガロースを含む完全培地からなるボトムアガー混合物上に重層した。各クローン
を、3連でアッセイした。クローンを、これらの条件下で藩種し、そして10日
後、病巣のサイズ(陽性の増殖>0.1mm 直径)および数を測定した。
【0065】
(ヌードマウスにおける腫瘍形成能)
この足場非依存性増殖アッセイで評価したクローンと同じクローンを、ヌード
マウスに注射し、そして腫瘍形成について観察した。腫瘍形成能を、各4グルー
プの10匹の動物(Charles River Labs.,Wilming
ton,MA)を用いて評価した。グループ1には、偽DNAで安定にトランス
フェクトした1×107細胞を与え、グループ2〜4には、pNH376で安定
にトランスフェクトしそして種々のレベルのマウスHAAHタンパク質を発現す
るクローンの、1×107細胞を与えた。ヌードマウスを、標準的な動物施設中
、無病原体条件下で維持した。腫瘍細胞接種の30日後、動物を、イソフルオラ
ン(isofluorane)(Acrranc,Anaquest,NJ)を
含むチャンバを使用して屠殺し、そして腫瘍を注意深く取り出し、重量を測定し
た。
【0066】
(胆管増殖の動物モデル)
総胆管の結紮後、肝臓内胆管増殖が、48時間で明らかになった。総胆管結紮
後8日および16日に得た組織サンプルは、表3に示されるように過剰な胆管の
増殖を示した。
【0067】
【表3】

免疫組織化学的染色では、いかなる時間での増殖中の胆管中にHAAHの存在
を検出できなかった。偽性の外科的コントロール由来の胆管におけるHAAH発
現の分析もまた陰性であったが、全てのサンプルは、グリセルアルデヒド3−リ
ン酸デヒドロゲナーゼに対するコントロール抗体との陽性の免疫反応性を示した
。従って、胆管増殖は、この標準的な動物モデル系においてHAAH発現の増加
に関連しなかった。
【0068】
(PSCにおけるHAAH発現)
PSCを有する患者由来の肝臓生検標本は、管周辺(periductal)
線維症を伴う胆管増殖および形成異常を示さない単核炎症細胞浸潤を示した。H
AAH特異的モノクローナル抗体を用いて免疫染色した隣接切片は、増殖中の胆
管における検出可能なHAAH免疫反応性を有さなかった。対照的に、同じ抗体
をおよび検出試薬を使用して同時に免疫染色した胆管癌の切片は、ほとんど全て
の腫瘍細胞においてHAAHの免疫反応性の強力なレベルを示したが、胆管癌の
隣接切片は、デング熱ウイルスに対するモノクローナル抗体でネガティブな免疫
染色反応を示した。これらの知見は、HAAH発現が、肝臓内胆管の非癌性細胞
増殖よりもむしろ悪性の形質転換と関連することを示す。
【0069】
(NIH−3T3細胞のHAAH関連形質転換)
マウスおよびヒトのAAH遺伝子、ならびに酵素活性を有さないマウスAAH
変異体構築物の形質転換能力を、偽DNA(ネガティブコントロール)およびv
−Src(ポジティブコントロール)をトランスフェクトしたNIH−3T3細
胞に対して比較した。マウスAAHの形質転換能力は、図1に示されるように、
ベクターDNAコントロールの能力の2〜3倍であることが見出された。このヒ
ト遺伝子の形質転換能力は、マウスAAHで観察された能力よりも高かった(そ
れぞれ、32±1.5 対 13±2.6個の形質転換病巣)。マウスおよびヒ
トのAAHをトランスフェクトした細胞は、大きい病巣を形成し、これは、v−
Srcをトランスフェクトした線維芽細胞の病巣と類似する。対して、ベクター
DNAをトランスフェクトした細胞において時折はるかに小さい病巣が観察され
、これは、線維芽細胞株の接触阻害を示す。酵素活性を有さない変異体pNH3
76−H660構築物を使用して行った並行実験は、形質転換活性を全く示さな
かった。この知見は、HAAHの酵素活性が、このHAAH遺伝子によって示さ
れる形質転換活性に必要であることを示す。
【0070】
(足場非依存性細胞増殖アッセイ)
マウスAAH構築物での一過的トランスフェクション後、いくつかの異なる形
質転換病巣を、希釈クローニング実験のために単離し、異なるレベルのHAAH
遺伝子発現を有する安定にトランスフェクトされた細胞クローンを確立した。9
個の異なるクローン化した細胞株を、さらなる研究のために選択した。HAAH
タンパク質の発現レベルを、ウエスタンブロット分析によって測定した。クロー
ン7および18は、HAAHタンパク質発現の穏やかな増加を有し、ソフトアガ
ー中に大きいコロニーを形成した(図2)。抗Erk−1モノクローナル抗体で
のこの同じ膜の免疫ブロットによって示されるように、全てのレーンにおいてタ
ンパク質ロード量は等価であった。タンパク質発現の増加は、図3に示されるよ
うな、酵素活性の増加に関連した。これらのクローンがソフトアガー中での足場
非依存性の細胞増殖を示す能力を、図3に示す。HAAH遺伝子発現の増加を有
する全3個のクローンは、偽DNA単独をトランスフェクトしたクローンと比較
して、足場非依存性の細胞増殖を示した。
【0071】
(ヌードマウスにおける腫瘍形成)
HAAH遺伝子発現の増加を有するこの3個のクローンを、ヌードマウスにお
いて腫瘍を形成する能力について評価した。クローン18を与えたマウスにおけ
る腫瘍サイズを、偽DNAをトランスフェクトしたクローンと比較した。クロー
ン7、16および18は、このアッセイにおいて高度に形質転換され、そしてそ
れぞれ、2.5、0.9および1.5グラムの平均重量を有する大きい腫瘍を生
じた(図4)。これらのデータは、HAAHの過剰発現が、インビボでの悪性の
表現型の誘導および維持に寄与することを示す。
【0072】
(高レベルのHAAH発現は悪性の指標である)
HAAH発現が、細胞交替の増加よりもむしろ悪性に関連するか否かを決定す
るために、胆管増殖の2つのモデルを研究した。この動物モデルにおいて、総胆
管の連結は、広範な肝臓内胆管増殖を誘導したが、表3に示されるように、これ
らの実験条件下でのHAAH遺伝子発現は見られなかった。PSCは、肝臓内お
よび肝臓外の胆管の破壊ならびに増殖に関連する自己免疫肝臓疾患であるので、
同様に、HAAH遺伝子発現を、胆管増殖に関連するヒト疾患モデルにおいて評
価した。PSCは、前悪性疾患であり、そして罹患した個体の有意な割合が、結
果的に胆管癌を発症する。しかし、広範な胆管増殖の存在下でのHAAH遺伝子
発現の増加についての証拠は存在しなかった。
【0073】
HAAHタンパク質レベルが、胆管癌において上昇し、そして正常または増殖
中の胆管において上昇しないことが確認されたので、悪性表現型の発生における
HAAHの役割を研究した。HAAH遺伝子を、NIH−3T3細胞にトランス
フェクトし、そして細胞変化(例えば、形質転換病巣の形成の増加、ソフトアガ
ー中のコロニー増殖、および悪性形質転換に関連するヌードマウスにおける腫瘍
形成)を評価した。全長のマウスおよびヒトのAAH遺伝子を、発現構築物にク
ローニングし、そしてNIH−3T3細胞に一過的にトランスフェクトした。偽
DNAをトランスフェクトしたコントロールと比べて、形質転換病巣の数の増加
が、マウスおよびヒトのAAH遺伝子をトランスフェクトした細胞において検出
された。トランスフェクション効率を制御した後の、この形質転換病巣の数の増
加は、v−Src遺伝子をトランスフェクトした細胞(ポジティブコントロール
として使用した)と比較して高くなかった。HAAH遺伝子の酵素活性は、悪性
表現型に必要とされた。なぜなら、触媒部位を欠く変異体構築物は、形質転換特
性を有さなかったからである。HAAHタンパク質レベルおよび酵素活性におけ
る穏やかな増加を有する、いくつかの安定なトランスフェクト体およびクローン
化NIH−3T3細胞株を確立した。このような細胞株を、ソフトアガー中に置
き、この悪性表現型の別の特性として、足場非依存性の細胞増殖を試験した。全
ての細胞株が、偽DNAトランスフェクトコントロールと比較して、ソフトアガ
ー中で増殖し、そしてHAAH遺伝子発現の細胞レベルと形成されたコロニーの
数およびサイズとの間に、ポジティブな相関が存在した。これらのクローン化し
た細胞株のうち3つが、ヌードマウスにおいて腫瘍を形成した。HAAH発現の
増加を有する3つ全ての細胞株は、形質転換表現型の別の周知の特徴としての大
きい腫瘍の発達によって示されるように、腫瘍形成性であった。
【0074】
HAAHの過剰発現によって誘導される細胞変化が、酵素機能に関連するか否
かを決定するために、部位特異的変異誘発をこの遺伝子に導入した。この変異誘
発は、マウスHAAHの鉄イオン結合部位である660番目のヒスチジンをリジ
ンに変化し、これによって、このマウスHAAHのヒドロキシラーゼ活性を消失
させた。HAAHにおける対応する変異を、HAAHヒドロキシラーゼ活性を阻
害するためのドミナントネガティブ変異体として使用した。このpNH376−
H660構築物は、形質転換活性を有さず、これは、過剰発現によって誘導され
るこの悪性表現型の細胞変化が、このタンパク質の酵素活性に依存することを示
す。
【0075】
Notchレセプターおよびそれらのリガンドは、β−水酸化についての推定
コンセンサス配列を含む、N末端領域中のいくつかのEGF様ドメインを有する
。Notchリガンドは、Notchシグナル伝達経路の重要なエレメントであ
り、このリガンドとのNotchの相互作用は、両分子のEGF様ドメインによ
って生じる。HAAHによるβ−水酸化の標的であるEGF様ドメインの、アス
パラギン酸残基またはアスパラギン残基に及ぼされる点変異は、下流のシグナル
伝達経路の活性化に関与するカルシウム結合およびタンパク質−タンパク質相互
作用を減少する。HAAHの過剰発現およびHAAHによるNotchタンパク
質の水酸化は、悪性に寄与する。腫瘍増殖は、HAAHによるNotchタンパ
ク質の水酸化を減少することによって阻害される。
【0076】
本明細書中に示されるデータは、高レベルのHAAH発現が、悪性形質転換に
関連するという証拠である。NIH−3T3細胞におけるHAAH cDNAの
発現の増加は、形質転換病巣の数の増加、足場非依存性増殖、およびヌードマウ
ス中の腫瘍形成によって表される、形質転換表現型を誘導した。さらに、インタ
クトなHAAH酵素が、HAAH関連形質転換に必要とされることが見出された
。従って、内因性HAAHの酵素活性または発現の20%程度の少ない阻害だけ
で、治療的利点を付与する。例えば、臨床的利点は、未処理の癌細胞または正常
な非癌性細胞に関連するレベルと比較した、HAAH阻害性化合物の投与後の5
0%〜70%のHAAHの発現または活性の阻害によって達成される。
【0077】
HAAHは、転写レベルで調節される。HAAHの発現および酵素活性におけ
るほんの穏やかな増加が、細胞の形質転換に必要とされた。これらは、HAAH
の遺伝子発現および酵素活性の増加が、形質転換表現型の発生または維持に寄与
すること、およびHAAH遺伝子の転写の減少またはHAAH遺伝子産物の酵素
活性の減少が、悪性の減少を導くことを示す。従って、HAAH転写は、HAA
Hプロモーター配列へのFosおよび/またはJun(HAAH転写を調節する
エレメント)の結合を減少する化合物を投与することによって阻害される。
【0078】
HAAHは、胆管上皮の悪性形質転換を伴って上方調節され、そしてHAAH
免疫反応性が、腫瘍細胞表面膜上で検出可能であるので、HAAHはまた、細胞
傷害剤を標的化する(例えば、腫瘍細胞の表面上に発現されるHAAHに結合す
る化合物への、細胞傷害剤の連結によって)ための分子でもある。生物学的液体
(例えば、胆汁)または細胞(微細なニードルでの吸引によって得られる)のい
ずれかにおけるHAAHタンパク質レベルのアッセイは、ヒト胆管癌の診断マー
カーである。
【0079】
(実施例2:AAHの発現ならびに悪性CNS新生物の増殖および浸潤)
AAHは、癌腫および栄養膜細胞において豊富に発現されるが、ほとんどの正
常細胞(CNS起源の細胞を含む)においては豊富に発現されない。高レベルの
AAH発現が、16個の神経膠芽細胞腫のうちの15個、9個の退形成型乏突起
膠腫のうちの8個、および12個の未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)のうち
の12個において観察された。高レベルのAAH免疫反応性は、腫瘍の中央部よ
りもむしろ浸潤中の縁部分で主に局在される。二重標識免疫組織化学的染色は、
AAHとテネイシン(AAH酵素活性の基質)との間の相互関係を実証した。ホ
ルボールエステルミリステートまたはレチノイン酸で処理し、ニューライト伸長
および侵襲性増殖を刺激したPNET2ニューロン細胞株は、高レベルのAAH
発現を示し、一方、H22誘導性のニューライト収縮が、AAHの下方調節を生
じた。ヒトAAH cDNAを安定に過剰発現したPNET2ニューロン細胞は
、PCNAおよびBcl−2のレベルを増加し、そしてp21/Waf1および
p16のレベルを減少し、これは、AAH過剰発現が、病理学的細胞増殖、細胞
周期進行、およびアポトーシスに対する耐性の増強を生じることを示唆する。さ
らに、AAHトランスフェクト体に観察されたp16のレベルの減少は、AAH
過剰発現が、新生物細胞の侵襲性の増殖の増強を付与することを示す。なぜなら
、このp16遺伝子の欠失または下方調節は、神経膠芽細胞腫のより攻撃的かつ
侵襲性のインビボ増殖と相関するからである。増加されたAAH免疫反応性は、
原発性悪性CNS新生物の浸潤中の縁部分で検出され、これは、腫瘍侵襲性にお
けるHAAHの役割をさらに示す。
【0080】
以下の材料および方法を使用して、以下に記載のデータを作成した。
【0081】
(原発性ヒト悪性CNS新生物におけるAAH免疫反応性の分析)
AAH免疫反応性を、神経膠芽細胞腫(N=16)、退形成型乏突起膠腫(N
=9)、および未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET;テント上神経芽細胞腫(N
=3)および髄芽細胞腫(N=9))の外科的切除標本において試験した。これ
らの組織病理学的切片を再評価して、標準的判断基準を使用してその診断を確か
めた。それぞれの生存固形腫瘍または隣接するインタクトな組織を有する腫瘍の
サンプルを含むブロックからのパラフィン切片を、研究した。正常な成体の死後
の脳(n=4)由来の切片を、ネガティブコントロールとして含んだ。AAH免
疫反応性を、HAAH特異的モノクローナル抗体を使用して検出した。免疫反応
性は、色素原として3−3’ジアミノベンジジン(DAB)(24)および対比
染色としてヘマトキシリンを使用する、アビジン−ビオチン西洋ワサビペルオキ
シダーゼ複合体法(Vector ABC Elite Kit;Vector
Laboratories,Burlingame,CA)によって明らかに
した。
【0082】
テネイシンおよびラミニンは、おそらく、これらの分子内のEGF様反復の存
在に起因して、AAHについての基質である。二重免疫染色研究を行い、テネイ
シンまたはラミニンと共にAAHを同時局在化した。AAH免疫反応性を、色素
原としてDABを用いるABC法によって検出し、そしてテネイシンまたはラミ
ニンの免疫反応性を、基質としてBCIP/NBTを用いるアビジン−ビオチン
アルカリホスファターゼ複合体法(Vector Laboratories,
Burlingame,CA)によって検出した。ポジティブコントロールおよ
びネガティブコントロールとして、隣接切片を、神経膠原線維酸性タンパク質(
GFAP)およびB型肝炎表面抗原に対するモノクローナル抗体を用いて免疫染
色した。全ての標本を、同じ抗体希釈度および免疫検出試薬を用いて、バッチ免
疫染色した。
【0083】
(細胞株および培養条件)
AAH発現が、悪性新生物の浸潤性増殖と共に生じる、ニューライト(糸状足
(filopodia))伸長(出芽)によって調節されるか否かを決定するた
めに、研究を行った。ヒトPNET2 CNS由来およびSH−Sy5yの神経
芽細胞腫細胞を培養し、そして0、1、2、3、5または7日目に100nMの
ホルボール12−エステル13−アセテートまたは10μMのレチノイン酸で刺
激して、出芽を誘導した。さらに、AAH発現に際するニューライト収縮の効果
を試験するために、サブコンフルエントな培養物を、低濃度(10〜40μM)
のH22で24時間処理した。両方の研究について、AAH発現を、HAAH特
異的抗体を使用するウエスタンブロット分析によって評価した。
【0084】
(PNET2 AAHトランスフェクトクローンの作製)
全長ヒトAAH cDNA(配列番号3)を、pcDNA3.1哺乳動物発現
ベクターに連結した。この発現ベクターにおいて、遺伝子発現は、CMVプロモ
ーターの制御下にある(Invitrogen Corp.,San Dieg
o,CA)。PNET2細胞を、Cellfectin試薬(Gibco BR
L,Grand Island,NY)を使用して、pHAAHまたはpcDN
A3(ネガティブコントロール)のいずれかでトランスフェクトした。ネオマイ
シン耐性クローンを選択し、構成的レベルのAAHタンパク質発現が、ウエスタ
ンブロット分析によって検出した場合に、コントロール(pcDNA3)と比較
して少なくとも2倍増加したか否かを研究した。AAHの過剰発現が、その形質
転換表現型を調節する遺伝子の発現をどれほど変更するかを決定するために、増
殖細胞核抗原(PCNA)、p53、p21/Waf1、Bcl−2およびp1
6のレベルを、AAH(N=5)およびpcDNA3(N=5)を安定にトラン
スフェクトしたクローンのサブコンフルエントな培養物由来の細胞溶解調製物に
おいて測定した。PCNAを、細胞増殖のマーカーとして使用した。p53、p
21/Waf1、およびBcl−2のレベルを、AAHを過剰発現する細胞が、
細胞周期進行へのより高い傾向があり、かつアポトーシスに対するより高い耐性
を有するか否かを決定するために試験した。p16のレベルを、AAH過剰発現
が、腫瘍侵襲性における役割を有するか否かを決定するために評価した。
【0085】
(ウエスタンブロット分析)
10cm2ディッシュにおいて増殖させた細胞を、溶解し、そしてプロテアー
ゼおよびホスファターゼのインヒビターを含有する標準的な放射免疫沈降アッセ
イRIPA緩衝液中に均質化した。不溶性細片を除去するためにサンプルを12
,000×gで10分間の遠心分離した後に収集した上清を、ウエスタンブロッ
ト分析に使用した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce Che
mical Co.,Rockford,IL)を使用して測定した。60μg
のタンパク質を含むサンプルを、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲ
ル(SDS−PAGE)中で電気泳動し、そしてウエスタンブロット分析に供し
た。二連のブロットを、個々の抗体でプローブした。免疫反応性を、西洋ワサビ
ペルオキシダーゼ結合体化IgG(Pierce Chemical Co.,
Rockford,IL)で検出し、そして化学発光試薬で増強した。タンパク
質発現のレベルを定量するために、不飽和オートラジオグラフを、NIH Im
ageソフトウエアバージョン1.6を使用する容量デンシトメトリー(vol
ume densitometry)に供した。pHAAHとpcDNA3をト
ランスフェクトした細胞間の統計学的比較を、スチューデントT検定を使用して
行った。
【0086】
(抗体)
FOCUS肝細胞癌細胞に対して作製したHAAH特異的モノクローナル抗体
を使用して、AAH免疫反応性を検出した。テネイシンおよび神経膠原線維酸性
タンパク質に対するモノクローナル抗体、ならびにラミニンに対するウサギポリ
クローナル抗体を、Sigma Co.(St.Louis,MO)から購入し
た。ヒトp16に対するウサギポリクローナル抗体を、Santa Cruz
Biotechnology Inc.(Santa Cruz.CA)から購
入した。B型肝炎表面抗原に対する5C3ネガティブコントロールモノクローナ
ル抗体を、組換えタンパク質を使用して作製し、そしてネガティブコントロール
として使用した。
【0087】
(原発性悪性脳腫瘍におけるAAH免疫反応性)
神経膠芽細胞腫16のうち15、未分化乏突起細胞腫9のうち8、そしてPN
ETの12全てにおいて、AAH免疫反応性を検出した。AAH免疫反応性は、
細胞質、核および細胞突起に局在した。AAH免疫反応性の組織分布は、腫瘍と
インタクトな脳との間の界面に局在した強力な標識化に著しく、そして腫瘍の中
央部分内の免疫反応性の目立って低いレベルであった。高いレベルのAAH免疫
反応性はまた、軟膜下の領域、軟膜、フィルヒョー−ロバン血管周囲腔隙に分布
した新形成細胞において、および実質組織に浸潤した新形成細胞の個体または小
集団において、観察された。対照的に、AAH免疫反応性は、正常な脳では検出
されなかった。有糸分裂における核の密度(1〜5%)は、腫瘍の中央部分およ
び末端部分において類似していたので、AAH免疫反応性の分布は、DNA合成
と厳密には関連していないようである。
【0088】
(神経膠芽細胞腫におけるAAHとテネイシン免疫反応性との間の関係)
テネイシンは、悪性神経膠腫において発現された細胞外細胞間質関連抗原であ
る。テネイシンは、分子内に、HAAH水酸化の基質である、EGF様ドメイン
を含む。悪性脳腫瘍におけるテネイシン免疫反応性に関してAAHを局在化する
ため、二重標識免疫組織化学染色を実施し、ここで褐色色素原(brown c
hromogen)(DAB)、およびテネイシン、青色色素原(blue c
hromogen)(BCIP/NBT)を用いてAAHを検出した。隣接部位
を同様に二重標識して、CNS中に発現された細胞外細胞間質分子を含む別のE
GFドメインであるラミニンを用いてAAHを同時局在化した。血管周囲結合組
織において、および内皮細胞のグロメルロイド(glomeruloid)増殖
に関連して、テネイシン免疫反応性の強力なレベルが観察された。二重標識試験
によって、高レベルのAAHが、低テネイシンまたは検出不能なテネイシンと関
連しており、そして低レベルのAAHが、豊富なテネイシン免疫反応性を関連し
ているような、AAHとテネイシンの免疫反応性の間の相反する関係が実証され
た。ラミニンはまた、分子内のEGF反復に起因してAAH酵素活性の基質であ
るようであるが、二重標識試験では、腫瘍全体を通じて、そして腫瘍とインタク
トな組織との間の界面でごく低いレベルのラミニン免疫反応性が示された。
【0089】
(PMAまたはRAで処理したニューロン細胞株におけるAAHの分析)
ニューライト出芽/糸状仮足伸長は、新生物のニューロン細胞の侵襲性の増殖
を特徴付ける。PMAは、ニューライト出芽に関与するプロテインキナーゼCシ
グナル伝達経路を活性化する。レチノイン酸はそれ自体のレセプターに結合し、
そしてリガンド−レセプター複合体は、核に移動し、ここでニューライト成長に
関与する標的遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域に存在する特定のコンセ
ンサス配列に結合する。PNET2細胞およびSH−Sy5y細胞の両方とも、
PMA(60〜120nM)またはレチノイン酸(5〜10μM)での処理によ
って出芽するように誘導され得る。図5A〜Dは、代表的なウエスタンブロット
のオートラジオグラフィーからのデータを示す;棒グラフは、3つの実験から得
た結果の平均±S.D.に相当する。FB50抗体を用いたウエスタンブロット
分析により、約85kDaの分子量を有するタンパク質に相当する二重のバンド
を検出した。未処理のPNET2細胞は、比較的低レベルのAAH免疫反応性を
有した(図5A)が、未処理のSH−Sy5y細胞は、容易に検出されるAAH
発現を有した(図5B)。未処理のPNET2細胞は、粗い、短い半径方向細胞
突起を有する多角形の形態を示したが、SH−Sy5y細胞は、わずかに伸長さ
れ、細く尖った突起を自ら伸長した。両方の細胞株とも、RA(図5Aおよび5
B)またはPMA(図5C)のいずれかの刺激およびニューライト伸長後、AA
H免疫反応性のレベルにおいて、時間依存性の増大を表した。PNET2細胞に
おいては、RAまたはPMAに対する暴露の24時間後少なくとも2倍までAA
Hタンパク質のレベルが増大し、そして試験の7日間を通じて高いレベルのAA
Hが維持された。SH−Sy5y細胞においては、AAH発現において、RA刺
激またはPMA刺激の増大が、より漸増的に生じ、そして処理の7日後に最高で
あった(図5B)。
【0090】
ニューライト収縮に対するAAH発現の効果を試験するため、PNET2およ
びSH−Sy5y細胞を低濃度(8〜40μM)のH22で処理した。40μM
までのH22に対する暴露の24時間後、ほとんどの細胞は、生きていた(トリ
パンブルー色素排除)が、それらは、ニューライトの収縮および丸まりを示した
。FB50抗体を用いるウエスタンブロット分析により、AAHタンパク質のレ
ベルにおけるH22の用量依存性の減少が実証された(図5D)。
【0091】
(PNET2細胞におけるAAH過剰発現の効果)
悪性の表現型に対するAAH過剰発現の役割を直接評価するため、CMVプロ
モーター(pHAAH)の制御下で遺伝子発現を有するヒト全長cDNAを用い
てPNET2細胞を安定にトランスフェクトした。ネオマイシン耐性pcDNA
3偽(mock)クローンに対して少なくとも2倍高いレベルのAAH免疫反応
性を有するネオマイシン耐性クローンを研究した。悪性新生物の攻撃的な挙動は
、DNA合成の増大、細胞周期進行、アポトーシスに対する耐性、および侵襲的
増殖に関連しているので、AAHの構成的な過剰発現に関連する表現型の変化が
、PCNA、p21/Waf1,p53,Bcl−2、およびp16に関して特
徴づけられた。PCNAを、DNA合成および細胞増殖の係数として用いた。p
21/Waf1は細胞周期のインヒビターである。p53腫瘍抑制遺伝子の発現
は、アポトーシスの前に増大するが、bcl−2は、アポトーシスを阻害し、そ
して神経細胞の生存を増強する。p16は、しばしば、悪性新生物に対する浸潤
においてダウンレギュレートされるかまたは変異されるかのいずれかである癌抑
制遺伝子である。
【0092】
5つのpHAAHおよび5つのpcDNA3のクローンを研究した。PHAA
HトランスフェクトしたクローンにおけるAAH発現のレベルの上昇を、ウエス
タンブロット分析(図6)およびノーザンブロット分析により確認した。70〜
80%コンフルエントになった培養物由来の細胞溶解物を用いたウエスタンブロ
ット分析により、pHAAHトランスフェクト細胞におけるAAH発現(約85
kDa;p<0.05)の構成的に増大したレベルがPCNA(約35kDa;
p<0.01)およびBcl−2(約25kDa;p<0.05)の有意に増大
したレベル、ならびにp21/Waf1(約21kDa;p<0.001)およ
びp16(約16kDa;p<0.001)の減少したレベルに関連することが
実証された(図6)。しかし、pHAAH安定トランスフェクト体はまた、より
高いレベルの野生型p53(約53〜55kDa)を示した。安定なトランスフ
ェクト体におけるAAH発現(85kDaタンパク質)は、わずか75〜100
%までしか増大しなかったが、p16およびp21/Waf1のレベルは、はっ
きり減少し、そしてPCNAは、2倍近くまで増大した(図6)。
【0093】
(AAH発現の増大は、悪性CNA新生物の増殖および侵襲の指標である)
本明細書に記載されるデータは、AAH過剰発現が、診断ツール(これによっ
てニューロン細胞起源および神経膠細胞起源の両方の原発性悪性CNS新生物を
同定する)であることを実証する。免疫組織化学染色研究により、AAH過剰発
現が、固形腫瘍と正常組織との間の境界において、ならびに軟膜下領域、軟膜、
血管周囲腔、および実質組織に分布した新生物細胞への浸潤において、主に検出
可能であることが実証された。インビトロ実験において、AAH遺伝子発現がニ
ューライト(糸状仮足)伸長および侵襲で調節され、そしてニューライト収縮で
ダウンレギュレートされることが実証された。さらに、AAH cDNAで安定
にトランスフェクトされたPNET2細胞は、PCNAおよびbcl−2の増大
を示し、そしてWaf1/p21およびp16発現の減少を示した。従って、A
AH過剰発現は、細胞増殖および細胞周期進行を促進するか、アポトーシスを阻
害するか、または腫瘍細胞侵襲を増強する他の遺伝子の発現を調節することによ
ってCNS細胞のトランスフォームされた表現型に寄与する。
【0094】
このデータは、PNET2細胞およびSH−Sy5y細胞において、ただし正
常な脳にはない、容易に検出可能なAAH mRNA転写物(4.3kBおよび
2.6kB)およびタンパク質(85kDaおよび50〜56kDa)を実証し
た。これに対して、高レベルのAAH免疫反応性が、研究された悪性の原発性C
NS由来新生物中において37のうち35で観察された、一方、4つの正常なコ
ントロールの脳は、検出可能なAAH免疫反応性を有さなかった。浸潤する周辺
での、そして一般には腫瘍の中央部にはない、高レベルAAH免疫反応性の存在
は、AAH過剰発現がCNS新生物の侵襲的増殖に関与することを示す。AAH
発現または酵素活性を減少する化合物の投与は、AAHを過剰発現するCNS腫
瘍の増殖、ならびに他の組織型へのCNS腫瘍の転移を阻害する。
【0095】
AAH酵素は、多数のタンパク質のEGFドメインを水酸化する。テネイシン
(悪性神経膠腫において大量に発現される細胞外細胞間質分子)は、EGF様ド
メインを含む。テネイシンは腫瘍細胞侵襲を促進するので、神経膠芽細胞腫にお
けるテネイシンの大量の発現は、悪性神経膠細胞新生物中のEGFまたはEGF
様レセプターの高頻度の過剰発現に対する腫瘍細胞増殖の増強の自己分泌機構を
示す。テネイシンの機能的ドメインの分析は、このファミリーの分子の分裂促進
効果が、フィブロネクチンドメインによって大きく媒介されること、およびEG
F様ドメインが増殖、細胞突起伸長、および細胞間質侵襲を阻害することを示し
た。従って、AAHによるEGF様ドメインの水酸化は、腫瘍細胞侵襲における
重要な調節要因を示す。
【0096】
二重標識免疫組織学的染色研究によって、腫瘍の周辺に存在する高レベルのA
AH免疫反応性が、低レベルのテネイシンと関連しており、そして低レベルのA
AHが、しばしば高レベルのテネイシンと関連しているような、AAHとテネイ
シンの免疫反応性の間の相反する関係が実証された。これらの関係は、テネイシ
ンのEGF様ドメインのAAH水酸化が、テネイシンタンパク質の免疫反応性を
変更すること、およびそうした場合、隣接する正常組織および血管周囲腔への悪
性CNS新生物の侵襲的増殖を促進することを示した。
【0097】
PMAまたはレチノイン酸でニューライト伸長を受けるように、または低用量
のH22への暴露によってニューライト収縮を受けるように、誘導されたPNE
T2およびSH−Sy5y神経細胞において、AAH免疫反応性を試験した。A
AH発現は、PMA誘導またはレチノイン酸誘導によるニューライト(糸状仮足
)伸長によって、はっきりと増大し、そしてH22誘導性ニューライト収縮およ
び細胞の丸まりにより阻害された。ニューライトまたは糸状仮足の伸長および細
胞外細胞間質への付着は、CNSにおける腫瘍細胞侵襲に必要である。テネイシ
ンのEGF様ドメインは、発生の間、細胞間質へのニューライトおよびグリア細
胞の増殖を阻害する。
【0098】
トランスフォームされた表現型に対するAAH過剰発現の役割を直接評価する
ため、DNA合成、細胞周期進行、アポトーシス、および腫瘍侵襲で調節された
遺伝子を、ヒトAAH cDNAを安定に過剰発現する神経細胞クローン中で試
験した。PCNA免疫反応性の増大およびWaf1/p21免疫反応性の減少の
知見は、AAHの過剰発現が、細胞増殖および細胞周期進行を増強することを示
した。さらに、Bcl−2発現の増大の知見は、AAH過剰発現がアポトーシス
に対する細胞の耐性の増大によって、形質転換された表現型に寄与することを示
した。AAHを過剰発現した細胞におけるより高レベルのp53という明らかに
矛盾した知見は、未熟な神経細胞における高レベルの野生型p53が、アポトー
シスではなくニューライト成長(侵襲)に関連しているという観察によって説明
される。p16のレベルは(正常細胞に比べて)減少したか、またはAAHを構
成的に過剰発現した細胞において実質的に検出不能であった;p16遺伝子の欠
失変異体は、侵襲的増殖およびより迅速な悪性新生物(CNS起源のものを含む
)の進行に関連していた。これらのデータは、p16発現がAAHによって調節
されることを示す。
【0099】
(実施例3:HAAH産生の増大およびIRS媒介シグナル伝達)
IRS−1媒介シグナル伝達経路は、隣接する無関係の肝臓組織に比べ、ヒト
HCC腫瘍の95%において活性化される。HAAHは、このシグナル伝達経路
に関与する下流エフェクター遺伝子である。HAAH遺伝子アップレギュレーシ
ョンは、免疫組織化学染色およびウエスタンブロット分析によって表されるよう
に、HCC腫瘍におけるIRS−1の過剰発現に密接に関連している。高レベル
のHAAHタンパク質が、正常な肝細胞および胆管に比して、HCCおよび胆管
癌において発現される。これらの腫瘍の両方とも、免疫組織化学染色によって、
IRS−1の高レベルの発現を示す。IRS−1のC末端短縮型ドミナントネガ
ティブ変異体で安定にトランスフェクトしたFOCUS HCC細胞クローン(
インスリンおよびIGF−1刺激シグナル伝達をブロックする)は、肝臓におけ
るHAAH遺伝子発現の顕著な減少に関連していた。対照的に、IRS−1を過
剰発現するトランスジェニックマウスは、ウエスタンブロット分析により、HA
AH遺伝子発現の増大を実証する。無血清培地におけるFOCUS HCC細胞
のインスリン刺激(20および40U)および16時間後の血清枯渇により、H
AAH遺伝子発現のアップレギュレーションが実証された。これらのデータは、
HAAH遺伝子発現が、IRS−1シグナル伝達経路の下流エフェクターである
ことを示す。
【0100】
(実施例4:悪性表現型の特徴に対するHAAH発現レベルの効果)
NIH 3T3細胞におけるIRS−1の過剰発現は、形質転換を誘導する。
全長マウスHAAH構築物を、pcDNA3真核生物発現ベクター中にクローニ
ングした。第二のマウス構築物は、部位指向性変異によって触媒活性を廃したH
AAHをコードした。全長ヒトHAAH cDNAをpcDNA3発現ベクター
、および形質転換活性のためのポジティブコントロールとして用いられたv−s
rcをコードするプラスミド中にクローニングした。ヌードマウスにおいて、N
IH 3T3細胞のトランスフェクション、トランスフェクション効率のコント
ロール、HAAH酵素活性のアッセイ、病巣形成の分析による形質転換、足場非
依存性細胞増殖アッセイ、および腫瘍形成能の分析のためには、標準的方法を用
いた。このデータは、HAAHの過剰発現が悪性の表現型の生成に関連すること
を示した。
【0101】
表4:酵素的に活性なHAAHの過剰発現は悪性腫瘍を示す。
【0102】
【表4】

a.酵素的に活性なHAAH
b.P<0.01(偽および変異マウスHAAHに比して)
c.P<0.01(偽に比して)
d.クローン18は、約2倍まで、ヒトHAAHを過剰発現する、安定なクロー
ニングされたNIH 3T3細胞株である。
e.クローン16は、約50%までヒトHAAHを過剰発現する、安定なクロー
ニングされたNIH 3T3細胞株である。
【0103】
これらのデータは、HAAHの過剰発現が形質転換された病巣の形成に関連す
ることを示す。酵素的活性は、細胞性の形質転換が生じるのに必要である。ヒト
HAAH遺伝子発現の増大を伴うクローニングされたNIH 3T3細胞株は、
ヌードマウスにおける固体腫瘍と同様に増殖する。HAAHは、IRS−1シグ
ナル伝達経路の下流エフェクター遺伝子である。
【0104】
(実施例5:HAAH遺伝子発現の阻害)
FOCUS HCC細胞株(ここからヒトHAAH遺伝子が最初にクローニン
グされた)は、正常肝臓において見出されるレベルよりも約3〜4倍高いレベル
のHAAH発現レベルを有する。HAAHアンチセンス構築物を作成するため、
全長ヒトHAAH cDNAを、G418耐性遺伝子を含むレトロウイルスベク
ター中に反対方向に挿入し、そしてアンチセンスRNAをこの細胞中で産生した
。また、より短いHAAHアンチセンス核酸(例えば、HAAH遺伝子のエキソ
ン1に対応する核酸)も用いてHAAH発現を阻害する。
【0105】
FOCUS細胞をこのベクターで感染させて、ウエスタンブロット分析により
HAAHのレベルを決定した。HAAH遺伝子発現の減少を観察した。コントロ
ールとして、これもまた反対方向に挿入された、非関連緑色(グリーン)蛍光タ
ンパク質(nonrelevant Green Fluorescent P
rotein)(GFP)を含有する、レトロウイルスで感染させた細胞の増殖
速度および形態学的外観(図8)。細胞(HAAHアンチセンス構築物を保有す
る)は、細胞質対核の比における増大により特徴付けられる形態学の実質的な変
化を示し、そしてこのことは培養における正常な成体肝細胞を連想させる細胞形
状の変化を仮定する。HAAHレベルが減少している細胞は、図8に示されるよ
うに、アンチセンス(GFP)を発現するレトロウイルス感染細胞(コントロー
ル)よりも実質的に遅い速度で増殖する。HAAH遺伝子発現の減少は、より分
化した非癌性の「肝細胞様」の表現型に関連していた。HAAHアンチセンス配
列の発現を用いて腫瘍増殖速度を阻害する。HAAH細胞レベルの減少は、トラ
ンスフォームされた病巣の形成の低下により特徴付けられる表現型、ソフトアガ
ーにおける低レベル増殖または足場非依存性増殖がないこと、光学顕微鏡および
位相差顕微鏡により決定される分化した肝細胞の形態学的特徴、を生じ、そして
腫瘍形成を生じない(ヌードマウスへの細胞の接種により試験した場合)。
【0106】
(実施例6:AAHアンチセンスオリゴヌクレオチドによるAAH発現の阻害

AAH遺伝子発現を阻害するオリゴヌクレオチドを、標準的な方法を用いて設
計し、そして合成した。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド(20マー)
を設計してAAH mRNAの5’領域に結合し、そしてAUG開始コドンと重
複させた(表5)。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、それらがAUG(メチ
オニン)コドンの「A」から上流(前)に開始する1(位置−1)、6(位置−
6)、または11(位置−11)ヌクレオチド配列に相補的であるように選択し
た。さらに、位置−3で開始するセンスオリゴヌクレオチドを作成した。
【0107】
表5:例示的オリゴヌクレオチド分子の配列
位置(−1)
5’CAT TCT TAC GCT GGG CCA TT3’(配列番号1
0)
位置(−6)
5’TTA CGC TGG GCC ATT GCA CG3’(配列番号1
1)
位置(−11)
5’CTG GGC CAT TGC ACG GTC CG3’(配列番号1
2)
センス
5’ATC ATG CAA TGG CCC AGC GTA A3’(配列
番号13)
図10は、AAG遺伝子の領域(これに、表5に記載されるアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドが結合する)を示す。全てのオリゴヌクレオチドを、MacVe
ctor6.5.3ソフトウェアを用いて設計した。
【0108】
試験したAAHアンチセンスオリゴヌクレオチドは、AAH遺伝子発現を阻害
することが見出された。インビトロ無細胞転写翻訳アッセイ(TNT Quic
k Coupled System)を用い、ヒトAAH cDNA(pHAA
H)を用いてAAHタンパク質を合成した。反応混合物中に含まれたウサギ赤血
球溶解物を用いてインビトロ翻訳を達成した。反応緩衝液、RNAポリメラーゼ
、アミノ酸混合物、およびリボヌクレアーゼインヒビター(RNAsin)の存
在下で[35S]メチオニンを用いて、翻訳された産物を標識した。この産物をS
DS−PAGEにより、続いてオートラジオグラフィーによって分析した。ルシ
フェラーゼ(Luc)発現プラスミドをポジティブコントロールとして用いた。
第二レーンおよび第三レーンにおいて、約85kD AAHタンパク質の合成を
示す(AAH、矢印)。ここで、mRNAを生成するため、テンプレートとして
1または2μgのプラスミド、およびT7 DNA依存性RNAポリメラーゼプ
ライマー/プロモーターを用いた。100×または1000×過剰のアンチセン
スオリゴヌクレオチドプライマーの添加により、AAHタンパク質合成の漸増的
に増大する程度の阻害を得たが、同じ量のセンスオリゴヌクレオチドの封入は、
AAHタンパク質合成には影響を有さなかった。さらなる試験により、アンチセ
ンスオリゴヌクレオチドのみによる、AAHタンパク質合成の完全な阻害が実証
された。さらに、試験した3つのアンチセンスオリゴヌクレオチド全てを用いて
、遺伝子発現の効果的な阻害が観察された。図11は、AAHアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドのインビトロ転写/翻訳分析の結果を示し、そして試験したアン
チセンスオリゴヌクレオチドがHAAH RNAの翻訳、およびHAAHタンパ
ク質の引き続くタンパク質合成をブロックすることを示す。
【0109】
AAH遺伝子発現の阻害をまた細胞において試験した。図11は、Micro
titer In situ Luminescence Quantific
ation(MILQ)Assayの結果を示し、そしてアンチセンスオリゴヌ
クレオチド含有細胞の実際の効果を実証する。HAAH遺伝子発現の実際の減少
を、細胞の培養培地にアンチセンスオリゴヌクレオチドを単に添加することによ
り検出した。MILQアッセイは、RNA抽出の必要性なしに、培養細胞におけ
るインサイチュハイブリダイゼーション結合を定量する。MILQアッセイを用
いて、競合的アンチセンス結合阻害を研究し、mRNAにハイブリダイズしたア
ンチセンスプローブがSh−SySy神経芽細胞腫内で内因性に発現したことを
例証した。この図では、特定の未標識アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて
、FITC−標識化した位置6のアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害を示す
。結合の最小阻害は、非関連オリゴヌクレオチドで観察された。未標識特異的オ
リゴヌクレオチドは、FITC結合体化した位置6プローブにより指定された結
合部位に効率的に競合し得たが、非関連プローブは、同じ分子濃度で有意に少な
い阻害を示した。FITCに対する西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化抗体を
用いて、結合したプローブ(FITC標識した)を検出し、そしてルミネセンス
(発光)試薬を用いて結合抗体を検出した。発光単位を細胞密度について補正し
たが、現実には随意である。これらのデータは、細胞が周囲の環境からアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドを効率的に取り入れること、そしてこの取り入れられた
オリゴヌクレオチドがHAAH遺伝子発現を効率的かつ特異的に阻害することを
示す。
【0110】
HAAH遺伝子発現の阻害は、細胞をHAAHアンチセンスのホスホロチオエ
ート誘導体と接触させることによって強化される。当該分野で周知の方法を用い
てホスホロチオエートアンチセンス誘導体を作成する。図13は、SH−SyS
Y神経芽細胞腫細胞へのアンチセンス(位置6)オリゴヌクレオチド遺伝子送達
に起因するAAH遺伝子発現の阻害を示す。MILQアッセイを用いて、アンチ
センスオリゴヌクレオチド遺伝子送達から生じる遺伝子発現を測定する。細胞を
AAH位置6アンチセンスDNAと接触させ、そして当該分野で公知の方法(例
えば、MICEアッセイ(de la Monteら、1999,Biotec
hniques))を用いて、AAHタンパク質発現を測定して、これがオリゴ
ヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって阻害されるか否かを決定した
。MICEアッセイを用いて、タンパク質を抽出する必要なしに培養細胞中で免
疫反応性を測定するかまたはゲル電気泳動を実施する。このアッセイは、ウエス
タンブロット分析よりも感受性である。MICEアッセイを用いて、非関連(ラ
ンダム)オリゴヌクレオチド配列、特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド(位
置6)、およびホスホロチオエート位置6アンチセンスオリゴヌクレオチドでト
ランスフェクトした細胞においてAAH免疫反応性を評価した。このオリゴヌク
レオチドのホスホロチオエート化学修飾は、細胞内部でのDNAの安定性をより
大きくすることが見出された。なぜなら、イオウ基は、ホスホロチオエート結合
および細胞核で通常生じる分解からDNAを保護するからである。アンチセンス
AAHオリゴヌクレオチド(位置6)トランスフェクションは、AAH免疫反応
性のレベルの減少を生じた。そしてホスホロチオエート連結位置6アンチセンス
オリゴヌクレオチドを用いて、AAH遺伝子発現を阻害する効果は、ランダムオ
リゴヌクレオチドでトランスフェクトした細胞において観察されたレベルにかな
り比例した。ホスホロチオエート連結アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた
AAH発現のより効果的な阻害は、mRNAに対する有効な結合の保持とあわせ
た、分子のより大きい安定性に起因するようであった
(実施例7:ヒトIRS−1変異体)
HCC細胞株におけるHAAHのインスリン/IGF−1刺激発現。プレクス
トリン(plextrin)およびホスホトリオシン(PTB)ドメインにおい
て変異したドミナントネガティブIRS−1 cDNA、ならびに分子のC末端
に位置するGrb2、SypおよびPI3K結合モチーフを構築した。ヒトIR
S−1変異体構築物を生成して、HAAH遺伝子発現がIRS−1増殖因子シグ
ナル伝達カスケードの活性化によりどのように上方調節されるかを評価した。h
IRS−1分子のC末端における特定の変異は、Grb2,SypおよびPI3
KのようなSH2エフェクタータンパク質に結合する種々のドメインを廃した。
ヒトIRS−1タンパク質は、ラットIRS−1タンパク質と同様に、それぞれ
、897YVNI(以下、表5に下線を付している)および1180YIDL(
以下、表5に下線を付している)の同じGrb2およびSyp結合モチーフを含
む。hIRS−1の変異体は、これらのモチーフにおいて、以下のプライマーを
請うオリゴヌクレオチド指向性変異誘発の使用によって、TTTコドン(フェニ
ルアラニン)でのTATコドン(チロシン)の置換により構築した:(それぞれ
、5’―GGGGGAATTTGTCAATA−3’(配列番号8)および5’
−GAATTTGTTAATATTG−3’(配列番号9))。hIRS−1(
野生型)および変異体(チロシン897〜フェニルアラニンおよびチロシン11
80〜フェニルアラニン)のcDNAをpBK−CMV発現ベクター中にサブク
ローニングして、hIRS−1−wt、897F、ΔGrb2)、1180F、
およびΔSypと名付けた。
【0111】
表6:ヒトIRS−1アミノ酸配列
【0112】
【化1】

(配列番号5;GENBANK登録番号JS0670;プレケストリンドメイン
は、11〜113残基にまたがる(包括的);リン酸結合残基は配列番号5の4
6、465、551、612、632、662、732、941、989、また
は1012を含む)。
【0113】
表7:ヒトIRS−1 cDNA
【0114】
【化2】



(配列番号6;GENBANK登録番号NM005544)。
【0115】
制限酵素NheIおよびEcoRIを用いて1180Fの同じ領域による89
7Fをコードする3’配列の置換によってチロシン897および1180の二重
変異体を構築し、そしてこの構築物を897F1180FまたはΔGrb2ΔS
ypと呼んだ。発現プラスミドは、CMVプロモーター(hIRS−1−wt、
ΔGrb2、ΔSyp,ΔGrb2、ΔSypおよびpBK−CMV(偽))の
コントロール下であり、そしてMluI制限酵素によりポリAシグナル配列の3
’末端で直線化され、次に精製された。類似のアプローチを用いて、613位置
と942位置でチロシン残基をフェニルアラニンに変化し、二重PI3K変異体
構築物(ΔPI3K)を作製した。hIRS−1変異体は、PCRによってC末
端に付加されたFLAGエピトープ(DYKDDDDK(配列番号6)+終止コ
ドン)を有する。このストラテジーにより、安定にトランスフェクトした細胞株
において、「野生型」hIRS−1から変異体タンパク質を識別することが可能
になる。この変異体を用いてIRSシグナル伝達経路と下流エフェクター遺伝子
としてのHAAHの活性化との間の連絡を規定し、そしてHAAH過剰発現によ
り特徴付けられる腫瘍の増殖を阻害するこの経路に沿う伝達を阻害する化合物を
同定する。リン酸化反応部位に結合するかまたはその部位でリン酸化反応を阻害
する抗体または他の化合物を用いて、シグナル伝達を阻害し、これによりHAA
過剰発現腫瘍の増殖を阻害する。
【0116】
他の実施形態は添付の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、種々のアスパルチル(アスパラギニル)β−ヒドロキシラーゼ(AAH)cDNAによるNIH−3T3細胞の一過性トランスフェクションにより誘導されたコロニー形成を示す棒グラフである。コロニー形成を、10g DNAによる一過性トランスフェクションによって誘導した。対して、酵素活性を有さない変異体マウスAAH構築物は、形質転換活性を有さない。データは、形質転換病巣平均数±SEMとして示す。
【図2】図2は、種々のマウスAAH安定トランスフェクト細胞クローンにより産生されたタンパク質のウェスタンブロットアッセイのデンシトメトリー分析の結果を示す棒グラフである。クローン7および18において、HAAH遺伝子発現の穏やかな増加があり、クローン16においては、より低い程度であったが過剰発現があった。
【図3】図3A〜Bは、HAAH酵素活性に比較したHAAH安定トランスフェクトクローンにより示されたソフトアガーにおけるコロニー形成を示す棒グラフである。図3Aは、クローン7、16、および18におけるマウスAAH酵素活性の測定を示し、そして図3Bは、クローン7、16、および18により示されたコロニー形成を示す。データは、播種10日後のコロニー平均数±SEMとして示す。HAAH酵素活性において穏やかな増大があった(これは、タンパク質発現と相関した)3つのクローンは全て、足場非依存性増殖を示した。
【図4】図4は、マウスAAHを過剰発現するトランスフェクトクローンを注射したヌードマウスにおける腫瘍形成を示す棒グラフである。腫瘍増殖は、30日後に評価した。クローン7、16、および18を注射したマウスにおいて観察された平均腫瘍重量を偽DNAトランスフェクトクローンに対して比較した。HAAHを過剰発現するクローンを注射した全ての動物は、腫瘍を発達させた。
【図5】図5A〜Dは、腫瘍細胞侵襲の間に生じるようなニューライト成長(neurite outgrowth)を誘導するためにレチノイン酸(図5A、5B)およびホルボールエステルミリステート(PMA;図5C)で処置したPNET2(図5A、5C)およびSH−Sy5y(図5B)細胞におけるAAH発現の増大を示す棒グラフである。細胞を、0、1、2、3、4、または7日間、10Mレチノイン酸または100nM PMAで処理した。細胞溶解物を、HAAH特異的モノクローナル抗体を用いてウェスタンブロット分析によって分析し、85kDa AAHタンパク質を検出した。免疫反応性のレベルは、体積デンシトメトリー(任意単位)によって測定した。このグラフは、3つの別個の実験から得られた結果の平均±S.D.を示す。図5Dにおいては、PNET2細胞を、ニューライト収縮を誘導するために致死下濃度のH22で24時間処理した。細胞の90%より多くの生存度が、トリパンブルー染料排除によって示された。同様の結果が、SH−Sy5y細胞について観察された。
【図6】図6は、抗アポトーシス分子(Bcl−2)、細胞周期有糸分裂インヒビター分子(p16およびp21/Waf1)、および増殖分子(増殖細胞核抗原;PCNA)のレベルに関するAAH過剰発現の効果を示す棒グラフである。PNET2ニューロン細胞をAAHをコードする全長ヒトcDNA(pHAAH)または空ベクター(pcDNA)で安定にトランスフェクトした。AAH遺伝子発現は、CMVプロモーターの制御下にあった。ウェスタンブロット分析を、70〜80パーセントのコンフルエントである培養物から調製した細胞溶解物を用いて実施した。タンパク質ローディングは、各レーンにおいて等価であった。反復ブロットを、異なる抗体を用いてプローブした。棒グラフは、3つの実験において測定したタンパク質発現レベルの平均S.D.を示す。全ての差異は、スチューデントT検定分析によって統計学的に有意である(P<0.01〜P<0.001)。
【図7】図7は、IRS−1シグナル伝達経路の成分を示す図である。
【図8】図8は、GFPを発現するコントロールに比較したアンチセンスHAAH発現細胞において生じた増殖曲線を示す線グラフである。
【図9】図9は、hIRS−1タンパク質の機能的ドメインおよび点変異体の構造的構成を示す図である。全ての変異体および「野生型」hIRS−Iタンパク質構築物は、C末端にFLAG(F)エピトープ(DYKDDDDK;配列番号7)を含む。PHおよびPTBは、それぞれ、プレックストリン(pleckstrin)相同性領域およびホスホチロシン結合領域を示す。
【図10】図10は、AAH cDNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが結合する位置を示す図である。示した位置は、AAH cDNAのAUG開始部位に対してである。
【図11】図11は、アンチセンスオリゴヌクレオチドDNA分子によるAAH遺伝子発現の阻害を示す電気泳動ゲルの写真である。
【図12】図12は、神経芽細胞腫細胞におけるAAHアンチセンスオリゴヌクレオチド結合を示す線グラフである。
【図13】図13は、神経芽細胞腫細胞へのAAHアンチセンスオリゴヌクレオチド送達の結果としてのAAH遺伝子発現の阻害を示す棒グラフである。
【図14】図14Aは、NOTCHタンパク質のウェスタンブロットアッセイ発現の写真である。図14Bは、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により測定されるようなHes−1遺伝子発現を示す電気泳動ゲルの写真である。図14Cは、IRS−1シグナル伝達が減少する条件下でのNOTCH−1およびJagged−1の発現を示すウェスタンブロットアッセイの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において悪性新生物を診断するための方法であって
、該哺乳動物由来の体液を、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)β−ヒドロキ
シラーゼ(HAAH)ポリペプチドに結合する抗体と、抗原−抗体複合体を形成
するのに十分な条件下で接触させる工程、および該抗原−抗体複合体を検出する
工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記新生物が内胚葉組織に由来する、請求項1に記載の方法

【請求項3】
前記新生物が、結腸癌、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、および胆管
の癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記新生物が中枢神経系(CNS)の癌である、請求項1に
記載の方法。
【請求項5】
前記体液が、CNS由来体液、血液、血清、尿、唾液、痰、
肺滲出液、および腹水からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方
法。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体がFB50である、請求項6に記載
の方法。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体が、5C7、5E9、19B、48
A、74A、78A、86Aからなる群から選択される、請求項6に記載の方法

【請求項9】
哺乳動物の悪性新生物の予後のための方法であって、
(a)該哺乳動物由来の体液を、HAAHポリペプチドに結合する抗体と、抗
原−抗体複合体を形成するのに十分な条件下で接触させる工程、および該抗原−
抗体複合体を検出する工程;
(b)複合体の量を定量し、該体液におけるHAAHレベルを決定する工程;
および
(c)該体液におけるHAAHレベルを、正常コントロールHAAHレベルと
比較する工程であって、ここで経時的なHAAHレベルの増加が有害な予後を示
す、工程
を包含する、方法。
【請求項10】
哺乳動物における腫瘍増殖を阻害する方法であって、該哺
乳動物に、HAAHの発現を阻害する化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記化合物が、HAAHアンチセンス核酸である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記HAAHアンチセンス核酸が10〜50ヌクレオチド
の長さである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記HAAHアンチセンス核酸の前記配列が、HAAH遺
伝子の5’非翻訳領域である核酸配列に対して相補的である、請求項10に記載
の方法。
【請求項14】
前記HAAHアンチセンス核酸の配列が、5’CAT T
CT TAC GCT GGG CCA TT 3’(配列番号10)を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記HAAHアンチセンス核酸の配列が、5’TTA C
GC TGG GCC ATT GCA CG 3’(配列番号11)を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記HAAHアンチセンス核酸の配列が、5’CTG G
GC CAT TGC ACG GTC CG 3’(配列番号12)を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物がリボザイムである、請求項10に記載の方法

【請求項18】
前記腫瘍が内胚葉組織に由来する、請求項10に記載の方
法。
【請求項19】
前記腫瘍が、結腸癌、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、および胆管
の癌からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍がCNSの腫瘍である、請求項10に記載の方法

【請求項21】
HAAHアンチセンス核酸であって、ここで該核酸が、H
AAH遺伝子の配列に相補的である配列を含む、核酸。
【請求項22】
HAAHアンチセンス核酸であって、ここで該核酸が、H
AAH遺伝子の非コード配列に相補的である配列を含む、核酸。
【請求項23】
HAAHアンチセンス核酸であって、ここで該核酸が、H
AAH遺伝子の5’非翻訳領域の配列に相補的である配列を含む、核酸。
【請求項24】
前記HAAHアンチセンス核酸の配列が、5’CAT T
CT TAC GCT GGG CCA TT 3’(配列番号10)を含む、
請求項23に記載の核酸。
【請求項25】
前記HAAHアンチセンス核酸の配列が、5’TTA C
GC TGG GCC ATT GCA CG 3’(配列番号11)を含む、
請求項23に記載の核酸。
【請求項26】
前記HAAHアンチセンス核酸の配列が、5’CTG G
GC CAT TGC ACG GTC CG 3’(配列番号12)を含む、
請求項23に記載の核酸。
【請求項27】
哺乳動物における腫瘍増殖を阻害する方法であって、該哺
乳動物に、HAAHの酵素活性を阻害する化合物を投与する工程を包含する、方
法。
【請求項28】
前記酵素活性がヒドロキシラーゼ活性である、請求項27
に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物がHAAHのドミナントネガティブ変異体であ
る、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記HAAHのドミナントネガティブ変異体が、HAAH
の触媒ドメインにおける変異を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物がHAAH特異的イントラボディである、請求
項27に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物がL−ミモシンである、請求項27に記載の方
法。
【請求項33】
前記化合物がヒドロキシピリドンである、請求項27に記
載の方法。
【請求項34】
哺乳動物における腫瘍増殖を阻害する方法であって、該哺
乳動物に、IRSシグナル伝達経路を介するシグナル伝達を阻害する化合物を投
与する工程を包含する、方法。
【請求項35】
前記化合物が、IRSリン酸化を阻害する、請求項34に
記載の方法。
【請求項36】
前記化合物が、HAAHプロモーター配列へのFosまた
はJunの結合を阻害する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物における腫瘍増殖を阻害する方法であって、該哺
乳動物に、NOTCHポリペプチドのHAAH水酸化を阻害する化合物を投与す
る工程を包含する、方法。
【請求項38】
前記化合物が、NOTCHポリペプチドにおけるEGF様
反復配列の水酸化を阻害する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
腫瘍細胞を殺傷する方法であって、該腫瘍細胞を、HAA
H特異的抗体に連結された細胞傷害剤と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項40】
HAAHのエピトープに結合するモノクローナル抗体。
【請求項41】
前記エピトープが、HAAHの触媒部位内にある、請求項
40に記載の抗体。
【請求項42】
前記モノクローナル抗体が、5C7、5E9、19B、4
8A、74A、78A、86Aからなる群から選択される、請求項40に記載の
抗体。
【請求項43】
前記モノクローナル抗体が、HA238A、HA221、
HA239、HA241、HA329、またはHA355からなる群から選択さ
れる、請求項40に記載の抗体。
【請求項44】
HAAHのエピトープに結合するモノクローナル抗体を含
む組成物であって、該抗体は、細胞傷害剤に連結されており、ここで該組成物が
、非腫瘍細胞に比較して腫瘍細胞を優先的に殺傷する、組成物。
【請求項45】
哺乳動物における腫瘍の診断のためのキットであって、請
求項29に記載の抗体を含む、キット。
【請求項46】
前記抗体が、固相に固定化される、請求項45に記載のキ
ット。
【請求項47】
前記固相が、アッセイプレート、アッセイウェル、ニトロ
セルロースメンブレン、ビーズ、ディップスティック、および溶出カラムのコン
ポーネントからなる群から選択される、請求項45に記載のキット。
【請求項48】
候補化合物がHAAH酵素活性を阻害するか否かを決定す
る方法であって、
(a)HAAHポリペプチドを提供する工程;
(b)EGF様ドメインを含むポリペプチドを提供する工程;
(c)該HAAHポリペプチドまたは該NOTCHポリペプチドを、該候補化
合物と接触させる工程;
(d)工程(b)の該ポリペプチドの水酸化を決定する工程であって、該候補
化合物の存在下における水酸化の該化合物の不在下における水酸化と比較した減
少が、該化合物がHAAH酵素活性を阻害することを示す、工程
を包含する、方法。
【請求項49】
候補化合物がNOTCHのHAAH活性化を阻害するか否
かを決定する方法であって、
(a)HAAHを発現する細胞を提供する工程;
(b)該細胞を、該候補化合物と接触させる工程;および
(c)該細胞の核への活性化NOTCHの転移を測定する工程であって、該化
合物の存在下における転移の該化合物の不在下における転移と比較した減少が、
該化合物がNOTCHのHAAH活性化を阻害することを示す、工程
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−292486(P2008−292486A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132974(P2008−132974)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【分割の表示】特願2001−536582(P2001−536582)の分割
【原出願日】平成12年11月8日(2000.11.8)
【出願人】(500430718)
【Fターム(参考)】