説明

情報システム

【課題】車両運転者に対して時間変化に伴う状況に基づいたリスクを適切に報知する情報システムを提供する。
【解決手段】情報システムは、車両を運転する運転者の運転適正診断項目に係る点数データを記憶する運転適正診断項目点数データ記憶手段と、運転者が居住する区画データを記憶する居住地データ記憶手段と、前記点数データと、前記区画データとに基づいて、運転者の平均の点数データを算出する平均点数データ算出手段と、車両が走行する道路データと道路周辺の区画データとを記憶する地図データ記憶手段と、運転者の平均の点数データと、前記区画データとを対応づけたリスクマップデータを作成するリスクマップデータ作成手段と、前記リスクマップデータを配信する運転適正診断項目データ配信手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上の流動的に変化するリスク情報をマッピングしたダイナミックリスクマップを提供したり、活用したりする情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、ハイブリッドカーやトラックなどの車両は、移動手段として、そして物流の要として欠かすことのできないものであり、現在の我々の日常生活に利便性を与えてくれるものである一方、事故などのリスク要因を内包しているものである。そこで、車両に関連して、未然に事故を防止するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2007−240433号公報)には、子供などの要保護者を事故から守る目的とした地図情報データベースに収められている危険情報データベースと、要保護者データベースの情報を照合し安全経路を誘導することによって、事故などのリスクを回避する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2005−289357号公報)には、住宅密集地域等の歩行者が多い地域を安全運転地域データベースとして安全運転が行われるように運転支援することによって、リスク回避を図る技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−240433号公報
【特許文献2】特開2005−289357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両が通行する道路上のリスクは、通行する様々な車両に依存して、時々刻々変化していくものである。しかしながら、特許文献1、特許文献2のいずれに記載の発明も、地図情報、或いは地域データなどといったそれぞれの場所に特有であり静的で時間変動のない情報に基づいて、危険度や安全度などを決定するものであった。このため、従来の技術では、車両運転者に対して、時間変化に伴い変動する状況に基づいた道路上リスクを適切に報知することができない、という問題があった。また、道路上リスクを適切に報知することができないため、車両運転者は適切なリスク回避措置などとることができない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、運転者の運転適正診断項目に係る点数データを記憶する運転適正診断項目点数データ記憶手段と、運転者が居住するものと登録された居住地データを記憶する居住地データ記憶手段と、居住地の区画を地図データとして記憶する地図データ記憶手段と、前記居住地データに基づいて、前記居住地の所定区画内に登録される居住地の区画と前記運転適正診断項目に係る点数データとを対応づけたリスクマップデータを作成するリスクマップデータ作成手段と、を有することを特徴とする情報システムである。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の情報システムにおいて、前記リスクマップデータ作成手段は、所定区画内に居住する運転者の平均の点数データである平均点数データを算出し、前記平均点数データと前記所定区画とを対応づけてリスクマップデータを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の情報システムによれば、車両運転者に対して、所定の区画における時間変化に伴う状況に基づいたリスクを適切に報知することができるようになる。また、本発明の情報システムによれば、リスクを適切に報知することができるようになるために、車両運転者は適切なリスク回避措置などをとることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る情報システムの概念を説明する図である。図1において、1は通信回線網、10、10’、10’’、10’’’は車両、20はライフログデータ収集装置、20aはテレビ、20bはテレビ用リモコン、20cはパーソナルコンピュータ、20dは携帯端末、30はダイナミックリスクマップ管理システム、31はメインシステム、32はライフログデータベース、33は点数推定用データベース、34は運転適正診断項目点数データベース、35は地図情報(道路データ)データベース、37は居住地データベースをそれぞれ示している。
【0010】
通信回線網1はインターネット通信網、携帯電話通信網、公衆回線網、WANやLANなどの通信網全般であり、各装置を周知の通信プロトコルによって接続して、それぞれの装置間を通信可能とするインフラストラクチャーである。
【0011】
本実施形態に係る情報システムにおいては、車両10、10’、10’’、10’’’の運転者に対して、道路上のリスクマップを提示することを一つの目的としている。本発明に係る情報システムにおいては、このようなリスクマップは時々刻々変化するものであるので、特にダイナミックリスクマップと称することもある。
【0012】
本発明に係る情報システムにおける「リスク」は、各々の車両を運転する運転者の運転適正に基づいている。例えば、運転適正が優れている運転者が運転する車両が走行する道路は、リスクの低い道路、ということとなり、運転適正が劣っている運転者が運転する車両が走行する道路は、リスクの高い道路、ということとなる。
【0013】
上記のような運転適正を数値化するときにおいて、本発明では「運転適正診断項目」という概念を用いることとする。本実施形態においては運転適正診断項目の項目として「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の4項目に細分類する例について説明しているが、このような項目については任意の自然数に設定することができる。また、本実施形態に係る情報システムでは、「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の4つの運転適正診断項目について、各々の運転者に対して点数付けを行うことによって、各々の運転者の運転適正の物差しとするようになっている。なお、項目数が増えれば、より詳細なリスク情報を運転者に提供することができるようになるものの、運転中に参照するには煩雑となるため、本実施形態では運転適正診断項目を4つに項目分けしている。
【0014】
ダイナミックリスクマップ管理システム30は、車両10、10’、10’’、10’’’・・・を運転する運転者の運転適正診断項目の点数データを収集しておき、各車両の位置情報を取得した上で、この位置情報と点数データとを関連づけたダイナミックリスクマップデータを作成して、当該データを各車両10、10’、10’’、10’’’・・・に配信する機能を概略有している。
【0015】
車両10、10’、10’’、10’’’・・・は、上記のようにダイナミックリスクマップデータの配信を受ける一方で、自らの位置データと、車両の操作履歴などに係るライフログデータとをダイナミックリスクマップ管理システム30側に送信する。
【0016】
また、ライフログデータは、運転者が車両運転外で用いる装置である、テレビ20aやそのテレビ用のリモコン20b、パーソナルコンピュータ20cや携帯端末20dなどの各装置からも取得される。本実施形態においては、テレビ20a、テレビ用リモコン20b、パーソナルコンピュータ20c、携帯端末20dなど、ライフログデータを取得可能な装置を総称してライフログデータ収集装置20と呼ぶこととする。
【0017】
少なくとも車両10、10’、10’’、10’’’及びライフログデータ収集装置20は、通信回線網1を介してダイナミックリスクマップ管理システム30とデータ通信可能に構成されている。通信回線網1としては従来周知のものを適宜用いることができる。
【0018】
ダイナミックリスクマップ管理システム30はサーバーなどの汎用の情報処理システムに所定のプログラムを組み込むことにより実現することが可能であり、少なくともCPUなどを有するメインシステム31と、このメインシステム31によって処理される諸情報が記憶・蓄積されるライフログデータベース32、点数推定用データベース33、運転適正診断項目点数データベース34、地図情報(道路データ)データベース35、居住地データベース37の各データベースから構成されている。
【0019】
ライフログデータベース32は、運転者毎のライフログデータを記憶するデータベースであり、ダイナミックリスクマップ管理システム30が、各運転者による車両の操作履歴や、各々のライフログデータ収集装置20から随時情報を収集して、更新されるように構成されている。具体的なライフログデータ例について図2を参照しつつ説明する。図2は本発明の実施の形態に係る情報システムにおけるライフログデータ収集例を説明する図である。図2(A)は車両10から取得可能なライフログデータ例を示しており、図2(B)はテレビ20a、テレビ用リモコン20bから取得可能なライフログデータ例を示している。
【0020】
図2(A)に示すように、例えば車両10からは、「アクセル操作量履歴」、「ブレーキ操作量履歴」、「ハンドル操作量履歴」、「シフトレバー操作履歴」、「走行経路履歴」、「ABS作動履歴」などのライフログデータを取得する。このような車両操作等に関連するライフログデータは、運転適正診断項目の「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の各項目を推定するために非常に有効なデータとなる。また、図2(B)に示すように、テレビ20aからは「視聴番組履歴」、「視聴コマーシャル履歴」、テレビ用リモコン20bからは「操作ボタン種別履歴」、「単位時間当たり操作量履歴」などのライフログデータを取得する。テレビ20aの「視聴番組履歴」、「視聴コマーシャル履歴」などからは例えば、チャンネル切り替えの頻度などがわかり、これに基づいて、運転適正診断項目の各項目を推定することができる。また、テレビ用リモコン20bの「操作ボタン種別履歴」、「単位時間当たり操作量履歴」などからも、チャンネルの切り替え態様などを分析することができ、これから運転適正診断項目の各項目を推定する。
【0021】
点数推定用データベース33は、ライフログデータベース32に保存されている各運転者のライフログデータから、運転適正診断項目の「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の各項目の点数の推定を行うために用いられるデータが記憶されるデータベースである。図3は本発明の実施の形態に係る情報システムにおける点数推定用データベースによる点数推定イメージを示す図である。本実施形態では、図3に示すように「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の各項目について、5点満点方式で各運転者の評点するように構成されるが、この評点のためにライフログデータベース32に保存されている各運転者のライフログデータが用いられる。
【0022】
運転適正診断項目点数データベース34は、運転者毎の運転適正診断項目の点数データを記憶するデータベースであり、より具体的には、個々の運転者毎に「運動能力」、「性
格」、「社会性」、「運転マナー」の4項目について評点されたものが記憶されている。なお、運転適正診断項目の点数データは、ライフログデータベース32に保存されている各運転者のライフログデータから、推定するようにしてもよいし、予め、運転適正診断項目の評価用テストを運転者に受けてもらい、このテスト結果を点数データとして保存するようにしてもよい。
【0023】
地図情報(道路データ)データベース35は、道路データ、区画データなどが記憶されているデータベースである。このような地図情報(道路データ)データベース35には、道路データの他に、施設情報などの他のデータを含むものであっても構わない。また、前記の区画データとしては、行政区画に基づいた区画分けによって作成された区画データが用いられるが、区画データの区画分けの仕方としては任意のものを用いることが可能である。なお、道路データとしては、交差点(ノード)から交差点(ノード)までの区間を一つの道路区間として記憶する形態のデータが好ましい。また、地図情報(道路データ)データベース35は、居住地としての区画データを地図データとして記憶している。
【0024】
居住地データベース37は、どの運転者がどの区画に居住するものとして登録されているかを記憶するデータベースである。所定の区画においては、当該区画の居住者が運転を行っている確率が非常に高く、従って当該区画の居住者の運転適正診断項目の点数の概要を、車両運転者に報知することで、リスクを適切に報知することができるようになる。本発明では、このような報知を行うための基本情報として、この居住地データベース37に記憶される情報が用いられる。
【0025】
なお、居住地データベース37に登録されている運転者の運転適正診断項目の点数は、取得されるライフログデータによって随時更新されていくものであり、本発明の情報システムでは、所定の区画における時間変化に伴う状況に基づいたリスクを運転者に報知するものであるということができる。
【0026】
居住地データベース37には、運転者が居住するものと登録された居住地データが記憶されており、これは地図情報(道路データ)データベース35の区画データとは異なるものであるが、ただ、該居住地データにも、区画毎で運転者データが管理されるようになっている。
【0027】
次に、各車両10、10’、10’’、10’’’・・・に搭載されるシステムの概要について説明する。図4は本発明の実施の形態に係る情報システムで用いる車両のブロック構成の一例を示す図である。図4において、100はECU、200は車両情報取得部、210はアクセル操作量センサ、220はブレーキ操作量センサ、230はハンドル操作量センサ、240はシフトレバー操作センサ、250はアンチロックブレーキングシステム、300は運転者情報取得部、310は運転者撮像装置、320は登録運転者データベース、600はインターフェイス部、610はディスプレイ、620はタッチパネル、630はスピーカ、800はナビゲーションシステム部、810はナビゲーションシステム、820は地図データベース、830は走行経路履歴データベースをそれぞれ示している。
【0028】
ECU100はエレクトロニックコントロールユニットの略であり、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構である。ECU100は、図示されているECU100と接続される各構成と協働・動作する。また、ECU100は、本発明の情報システムにおける種々の車両側制御処理は、ECU100内のROMなどの記憶手段に記憶保持されるプログラムやデータに基づいて実行されるものである。
【0029】
車両情報取得部200は、車両10に関連する情報などを取得する構成であり、少なくとも
アクセルの開度を取得するアクセル操作量センサ210、ブレーキの踏み込み量を検出するブレーキ操作量センサ220、ハンドルの操作量をセンシングするハンドル操作量センサ230、シフトレバー操作を検出するシフトレバー操作センサ240、アンチロックブレーキングシステムの動作状況を取得するアンチロックブレーキングシステム250が設けられている。なお、車両情報取得部200としては、その他の運転者による操作(例えば、ヘッドライトの操作など)を検出する構成を設けるようにしてもよい。
【0030】
運転者情報取得部300は、車両10の運転者情報を取得するための構成であり、運転者撮像装置310及び登録運転者データベース320とからなっている。運転者情報取得部300では、運転者撮像装置310が車両運転席に座する者の顔画像を取得し、これを画像解析し登録運転者データベース320に対して照会し運転者を特定する。
【0031】
インターフェイス部600は、車両10の運転席部に設けられ、運転者に対し車両10に係る情報などを提供したり、或いは運転者に対して所定のワーニングを行ったりするための構成である。
【0032】
インターフェイス部600におけるディスプレイ610は液晶などの表示装置であり、このディスプレイ610に文字・図形情報等を表示することによって、運転者に対して視覚的に所定の情報を報知することを可能とする。タッチパネル620は、ディスプレイ610を覆うようにして設けられており、運転者の操作によりシステムに対して入力を可能とする入力デバイスとして機能する。また、インターフェイス部600は、スピーカ630も含んでおり、必要に応じて運転者に対して、音声による案内や警告を行い得るようになっている。
【0033】
ナビゲーションシステム部800は、ナビゲーションシステム810やこのナビゲーションシステム810が参照する地図情報などのナビゲーションシステム用の地図データベース820と、さらに走行経路履歴データベース830とからなっている。ナビゲーションシステム810は、GPS衛星からのGPS信号を受信して自らの位置を計算するGPS測位部を用いることによって、車両の現在位置情報を取得することができる。本発明の情報システムにおいては、位置情報を取得することができれば、このようなGPS測位法によらずとも、その他の測位法を用いることができるものである。
【0034】
本発明の情報システムの地図データベース820には、道路情報、施設情報などが記憶されており、例えば、ナビゲーションシステム810が、運転者に対して、目的地となる施設の案内を行ったり、運転者が指定入力した目的地までの距離、ルートなどを求めたり、目的地に到着する時刻を求めたりするのに利用される。また、運転者はナビゲーションシステム810によって提案されたルートを設定することでナビゲーションシステム810から適宜ルートに係るアドバイスを受けることができるようになっている。このようなナビゲーションシステム810に関連する地図データベース820の処理動作についてはいずれも従来周知の技術を用いることができる。また、走行経路履歴データベース830は、車両10が走行したルートのログを記憶するデータベースである。
【0035】
以上のように説明した車両10、10’、10’’、10’’’に搭載されるシステム、及びダイナミックリスクマップ管理システム30及びライフログデータ収集装置20の3者の構成によって、本実施形態に係る情報システムを実現することができる。
【0036】
次に、以上のように構成される本実施形態に係る情報システムの制御・処理について説明する。まず、車両側の種々のデータ取得処理について説明する。図5は本発明の実施形
態に係る情報システムの車両側処理のフローチャートを示す図である。図5において、ステップS100で、車両側情報収集処理を開始すると、次にステップS101に進み、運転者情報取得部300によって車両の運転者を特定する。ダイナミックリスクマップ管理システム30では、このステップで特定された運転者に基づいて、運転適正診断項目点数データベース34が参照されたり、ライフログデータベース32が更新されたりする。
【0037】
次にステップS102に進み、ナビゲーションシステム部800によって、車両位置データの取得が行われ、さらに続くステップS103では、ライフログデータの収集が行われる。このステップでも、ライフログデータとは、車両情報取得部200におけるアクセル操作量センサ210で取得されるアクセル操作量データであり、ブレーキ操作量センサ220で取得されるブレーキ操作量データであり、ハンドル操作量センサ230で取得されるハンドル操作量データであり、シフトレバー操作センサ240で取得されるシフトレバー操作データであり、アンチロックブレーキングシステム250で取得される動作状況データである。
【0038】
続くステップS104では、ステップS101乃至ステップS103で取得されたデータを、通信回線網1を介してダイナミックリスクマップ管理システム30に送信する。ステップS105では、車両のエンジン(不図示)などが停止されたか否かが判定される。このステップでの判定結果がYESであるときにはステップS106に進み車両側情報収集処理を終了し、NOであるときにはステップS101に戻りループする。
【0039】
次に、ダイナミックリスクマップ管理システム30側での制御・処理について説明する。図6は本発明の実施形態に係る情報システムのダイナミックリスクマップ管理システムにおける処理のフローチャートを示す図である。ステップS200で、ダイナミックリスクマップ管理システム処理が開始されると、続いてステップS201に進み、運転者位置情報収集処理のサブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、どの運転者がどこを走行しているのかに係る情報を収集する。
【0040】
ステップS202では、それぞれの運転者の運転適正診断項目(「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の各項目)の点数データの収集処理のサブルーチンが実行される。そして、ステップS203で、ダイナミックリスクマップデータの作成処理サブルーチンが実行され、ステップS204で、作成されたダイナミックリスクマップデータの配信処理サブルーチンが実行される。ダイナミックリスクマップ管理システム30では、基本的には、以上のステップS201乃至ステップ204の各サブルーチン処理が繰り返し実行されるようになっている。
【0041】
次に、ダイナミックリスクマップ管理システム30で実行される各サブルーチン処理についてより詳しく説明する。図7は本発明の実施形態に係る情報システムにおける運転者位置情報収集処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図7において、ステップS300で運転者位置情報収集処理のサブルーチンが開始すると、続いてステップS302に進む。ステップS302乃至ステップS203では、全ての運転者の位置情報を収集するループが実行される。このループにおいて、ステップS302では、ダイナミックリスクマップ管理システム30が各車両から送信されてきたデータに基づいて各車両の位置を特定する。ステップS303で、全運転者の位置情報収集ループが終了すると、次にステップS304に進み、メインルーチンにリターンする。
【0042】
次に、運転適正診断項目収集処理サブルーチンについて説明する。図8は本発明の実施形態に係る情報システムにおける運転適正診断項目点数データ収集処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図8において、ステップS400で、運転適正診断項目の各項目の点数データを収集するサブルーチン処理が開始されると、続いてステップS40
1に進む。ステップS401乃至ステップS409では、道路上の全ての運転者の情報を収集するループが実行される。
【0043】
このループの間には、ステップS402で、特定された運転者のライフログデータが存在するか否かが判定される。ステップS402の判定結果がYESであるときにはステップS403に進み、NOであるときにはステップS406に進む。
【0044】
ステップS403では、該当運転者のライフログデータをライフログデータベース32から取得し、ステップS404では、点数推定用データベース33を用いて、運転適正診断の「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の4項目の点数データをライフログデータから推定・取得する。続く、ステップS405では、推定された各項目点数データによって、運転適正診断項目点数データベース34を更新する。
【0045】
ステップS402の判定結果がNOであるときに進むステップS406では、運転適正診断項目の評価用テストのテスト結果が存在する否かが判定される。ステップS406の判定結果がYESであるときには、ステップS407に進み、評価用テスト結果に基づく、運転適正診断の「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の4項目の点数データを取得する。また、ステップS406の判定結果がNOであるときには、ステップS408で、当該運転者のデータを無効データとする。
【0046】
ステップSS409で、全運転者の情報収集ループが終了すると、次にステップS410に進み、メインルーチンにリターンする。
【0047】
次に、ダイナミックリスクマップデータ作成処理サブルーチンについて説明する。図9は本発明の実施形態に係る情報システムにおけるダイナミックリスクマップデータ作成処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0048】
図9において、ステップS500で、ダイナミックリスクマップデータを作成するサブルーチン処理が開始されると、ステップS501に進む。ステップS501乃至ステップS506は全ての区画に対するダイナミックリスクマップデータを作成するループであり、全ての区画について処理が終わると、当該ループを抜けるようになっている。
【0049】
ステップS501乃至ステップS506のループにおいて、まずステップS502では、対象となる区画内に居住する運転者情報を居住地データベース37から取得する。また、次のステップS503では、ステップS502で得られた運転者の点数データを運転適正診断項目点数データベース34から取得する。
【0050】
ステップS504では、当該周辺区間データに登録される居住者N人(n=1,2,…,N)に対して、「運動能力」の点数データP1の平均点数データP1avg、「性格」の点
数データP2の平均点数データP2avg、「社会性」の点数データP3の平均点数データP3avg、「運転マナー」の点数データP4の平均点数データの4項目の点数データP4avgを算
出する。
このような区画の平均点数データの算出には、以下のような式によって求めることができる。
1avg=(P11+P12+・・P1n)/N
2avg=(P21+P22+・・P2n)/N
3avg=(P31+P32+・・P3n)/N
4avg=(P41+P42+・・P4n)/N
続く、ステップS505では、区画の平均点数データ(P1avg,P2avg,P3avg,P4avg)と、区画データとを対応付けたデータ(ダイナミックリスクマップデータ)を作成す
る。所定の区画においては、当該区画の居住者が運転を行っている確率が非常に高く、従って当該区画の居住者の運転適正診断項目の点数の概要を、車両運転者に報知することで、リスクを適切に報知することができるようになる。従った、本発明に係る情報システムでは、上記のような区画の平均点数データ(P1avg,P2avg,P3avg,P4avg)と、区画データとを対応付けたデータ(ダイナミックリスクマップデータ)を作成し、活用しようとするものである。
【0051】
ステップS506で、全ての区画に対するダイナミックリスクマップデータ作成が終了すると、ループを抜けて、ステップS507に進み、元のルーチンにリターンする。
【0052】
次に、ダイナミックリスクマップデータ配信処理サブルーチンについて説明する。図10は本発明の実施形態に係る情報システムにおけるダイナミックリスクマップデータ配信処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図10において、ステップS600でダイナミックリスクマップデータ配信処理のサブルーチンが開始すると、続いてステップS602に進む。ステップS602乃至ステップS603では、全ての車両へのダイナミックリスクマップデータを配信するループが実行される。このループにおいて、ステップS602では、それぞれの車両に対して、当該車両が存在する周辺の区画のダイナミックリスクマップデータを配信する。ステップS603で、全車両へのデータ配信ループが終了すると、次にステップS604に進み、メインルーチンにリターンする。
【0053】
次に、ダイナミックリスクマップ管理システム30から配信されたダイナミックリスクマップデータを車両側が受信したときの処理について説明する。図11は本発明の実施形態に係る情報システムの車両側情報提示処理のフローチャートを示す図である。
【0054】
図11において、ステップS700で、車両側情報提示処理が開始されると、続いてステップS701に進み、ダイナミックリスクマップ管理システム30から車両周辺の道路のダイナミックリスクマップデータを受信する。そして、ステップS702では、ディスプレイ610にダイナミックリスクマップデータを表示する処理を実行する。このような処理に伴うディスプレイ表示例の一つについて図13を参照して説明する。
【0055】
図12は本発明の実施形態に係る情報システムにおける車両側システムのディスプレイ表示画面例を示す図である。先に説明したように、ダイナミックリスクマップデータは、区画毎の平均点数データと、道路区間データとが対応付けられたデータであり、平均点数データ(P1avg,P2avg,P3avg,P4avg)と、区画データとが、ペアになった形式のデータである。
【0056】
このようなデータをディスプレイ610に表示する方法については種々考えられるが、本実施形態においては図12に示すように、区画毎(ここでは、行政区画「東京都C区S1丁目」、「東京都C区S2丁目」、「東京都C区S3丁目」、「東京都C区S4丁目」毎)の平均点数データ(P1avg,P2avg,P3avg,P4avg)を棒グラフ化して、ビジュアライズするようにしている。すなわち、図12に示すように、道路区間毎に「運動能力」、「性格」、「社会性」、「運転マナー」の4項目に係る平気点数データがグラフ表示され、それぞれの区画における居住者(車両運転者と同一である確率は大)の運転適正診断項目の概略(平均)を把握することができるようになっている。
【0057】
これにより、ダイナミックリスクマップデータの配信を受けてディスプレイ610表示した車両運転者は、ある区画Aでは、社会性の点数データが高い区画(すなわち、社会性の点数データが高い車両運転者が多い区画)であるためリスクが少ないであろうということが推測できたり、また、別の区画Bでは、運転マナーの点数データが低い区画(すなわ
ち、運転マナーの点数データが低い車両運転者が多い区画)であるためリスクが少ないで
あろうということが推測できたりすることができるようになる。
【0058】
このように本実施形態に係る情報システムによれば、車両運転者に対して、所定の区画における時間変化に伴う状況に基づいたリスクを適切に報知することができるようになる。また、本実施形態に係る情報システムによれば、リスクを適切に報知することができるようになるために、車両運転者は適切なリスク回避措置などをとることができるようになる。
【0059】
なお、運転者の運転適正診断項目の点数は、取得されるライフログデータによって随時更新されていくものであり、本発明の情報システムでは、所定の区画における時間変化に伴う状況に基づいたリスクを運転者に報知するものであるということができる。
【0060】
ステップS703では、車両のエンジン(不図示)などが停止されたか否かが判定される。このステップでの判定結果がYESであるときにはステップS704に進み車両側情報提示処理を終了し、NOであるときにはステップS701に戻りループする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る情報システムの概念を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る情報システムにおけるライフログデータ収集例を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る情報システムにおける点数推定用データベースによる点数推定イメージを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る情報システムで用いる車両のブロック構成の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る情報システムの車両側処理のフローチャートを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る情報システムのダイナミックリスクマップ管理システムにおける処理のフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る情報システムにおける運転者位置情報収集処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る情報システムにおける運転適正診断項目点数データ収集処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る情報システムにおけるダイナミックリスクマップデータ作成処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る情報システムにおけるダイナミックリスクマップデータ配信処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る情報システムの車両側情報提示処理のフローチャートを示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る情報システムの車両側情報提示処理のフローチャートを示す図である。本発明の実施形態に係る情報システムにおける車両側システムのディスプレイ表示画面例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・通信回線網、10、10’、10’’、10’’’・・・車両、20・・・ライフログデータ収集装置、20a・・・テレビ、20b・・・テレビ用リモコン、20c・・・パーソナルコンピュータ、20d・・・携帯端末、30・・・ダイナミックリスクマップ管理システム、31・・・メインシステム、32・・・ライフログデータベース、33・・・点数推定用データベース、34・・・運転適正診断項目点数データベース、35・・・地図情報(道路データ)データベース、37・・・居住地データベース、100・・・ECU、200・・・車両情報取得部、210・・・アクセル操作量センサ、220
・・・ブレーキ操作量センサ、230・・・ハンドル操作量センサ、240・・・シフトレバー操作センサ、250・・・アンチロックブレーキングシステム、300・・・運転者情報取得部、310・・・運転者撮像装置、320・・・登録運転者データベース、600・・・インターフェイス部、610・・・ディスプレイ、620・・・タッチパネル、630・・・スピーカ、800・・・ナビゲーションシステム部、810・・・ナビゲーションシステム、820・・・地図データベース、830・・・走行経路履歴データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の運転適正診断項目に係る点数データを記憶する運転適正診断項目点数データ記憶手段と、
運転者が居住するものと登録された居住地データを記憶する居住地データ記憶手段と、
居住地の区画を地図データとして記憶する地図データ記憶手段と、
前記居住地データに基づいて、前記居住地の所定区画内に登録される居住地の区画と前記運転適正診断項目に係る点数データとを対応づけたリスクマップデータを作成するリスクマップデータ作成手段と、
を有することを特徴とする情報システム。
【請求項2】
前記リスクマップデータ作成手段は、所定区画内に居住する運転者の平均の点数データである平均点数データを算出し、前記平均点数データと前記所定区画とを対応づけてリスクマップデータを作成することを特徴とする請求項1に記載の情報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−152615(P2010−152615A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329628(P2008−329628)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】