説明

情報伝送装置

【課題】1つの軌道回路に複数の列車が在線することを検知して地上と各列車間で連続して情報を授受するとともにノイズ電流の影響を低減する。
【解決手段】情報伝送路1を、レール6を複数区間に分割して、各区間の片側のレール6Lと直流阻止コンデンサ8及びトランス7の2次コイルが直列に接続された閉回路で構成して、地上装置2から送信した信号電流のレベルを列車の車軸短絡の影響を受けずにほぼ一定にし、車上装置4の受信レベル変動を少なくして地上装置2から送信している列車制御情報を安定して受信する。この情報伝送路1のレール6Lに送信している信号電流は左右のレール6L,6Rが車軸短絡されても列車の後方まで流れるから、一つの軌道回路に複数の列車を在線させることができ、列車の高密度運転を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地上と列車の間で情報を授受する情報伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車の位置を検知して列車を制御するためにレールを電気回路の一部とする軌道回路が広く用いられている。軌道回路はレールを所望の長さに区分し、図6に示すように、区分した各軌道回路1T〜3Tの列車進出側に設けた送信器22によりレール6L,6Rに信号電流Isを送信し、各軌道回路1T〜3Tに列車3が在線しないときは、レール6L,6Rに送信している信号電流Isを各軌道回路1T〜3Tの列車進入側に設けた受信器23により受信している。例えば軌道回路2Tに列車3が進入すると左右のレール6L,6Rが車軸16により短絡されて送信器22bから送信している信号電流Isを受信器23で検出しなくなり、軌道回路2Tに列車3が進入したことを検知する。また、送信器22からレール6L,6Rに制限速度などの情報を有するATC信号を送信し、このレール6L,6Rに流れるATC信号を列車3に設けた受電器を介して車上受信器で受信して列車3の速度を制限速度以下に制御している。
【0003】
また、軌道回路で境界にレール絶縁をしない無絶縁軌道回路で列車が進入したことを明確に検知するため、特許文献1に示すように、3巻線の変成器の一次側の逆巻にした2個のコイルでそれぞれ左右のレールの一定長さによる電圧降下を検出して、レールに流れる信号電流の変化を検出して軌道回路の境界を明確にしている。
【0004】
この左右のレールが車軸短絡したことにより軌道回路に列車が進入したことを検知する方法は、送信器からレールに送信した信号電流は車軸の後方には流れず、列車が在線する軌道回路に後続列車が進入した場合、後続列車が進入したことを検知できないとともに後続列車に情報を送信することができないため、1つの軌道回路を一閉そく区間として一列車だけ進入させるようにしている。このため列車の高密度運転ができないという短所があった。
【0005】
このレールの車軸短絡による影響を受けずに地上と列車の間で情報を授受する情報伝送装置が特許文献2や特許文献3に開示されている。特許文献2に示された情報伝送装置は、2本のレールを長手方向に離れた2点を短絡線で互いに短絡し、短絡線の中点をトランスのコイルを介して互いに接続してレールと短絡線及びコイルで閉回路を形成し、トランスの他方のコイルを地上装置に接続して、車上の受電器が短絡点間のレールと電磁結合しているときに地上と車上間で情報の伝送を行うようにしている。
【0006】
特許文献3に示された情報伝送装置は、隣接する2つの線路の一方の線路の1本のレールと他方の線路の1本のレールを利用して軌道回路を構成し、隣接する2つの線路を走行する列車と情報を授受するようにしている。
【特許文献1】実開平5−76940号公報
【特許文献2】特公平3−19820号公報
【特許文献3】特許第3197915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示された情報伝送装置は、2本のレールの短絡線で短絡された一定区間においてのみ地上と列車で情報の伝送を行うため、地上と列車の間で連続して情報を授受することはできなかった。
【0008】
また、車軸短絡により閉回路を構成する軌道回路では,図6に示すように、信号電流Isが左右のレールで互いに反対方向に流れ、帰線電流等のノイズ電流Inは左右のレールで同じ方向に流れるため、ノイズ電流を車上の受電器で打ち消すことができるが、2本のレールと短絡線及びコイルで閉回路を形成すると、レールの短絡点の間に流れる信号電流は2本のレールで同じ方向に流れノイズ電流の影響を大きく受けてしまい、伝送誤り率が高くなってしまう。
【0009】
また、特許文献2に示された情報伝送装置は2つの線路が隣接している場合にのみ適用できるとともにノイズ電流の影響を低減することはできなかった。
【0010】
この発明は、このような問題を解消し、1つの軌道回路に複数の列車が在線することを検知して地上と各列車間で連続して情報を授受するとともにノイズ電流の影響を低減した情報伝送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の情報伝送装置は、情報伝送路と地上装置と、列車に搭載された車上装置とを有し、情報伝送路は、レールを複数区間に分割して、各区間の片側のレールと直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルが直列に接続された閉回路からなり、地上装置は、情報伝送路のトランスの1次コイルに接続された送信器と受信器とを有し、送信器は列車制御情報を含む信号を情報伝送路に送信し、受信器は車上装置から情報伝送路に送信された列車状態情報を含む信号を受信し、車上装置は、送信器と受信器とを有し、送信器は列車状態情報を含む信号を送受信コイルから情報伝送路に送信し、受信器は情報伝送路に送信されている列車制御情報を含む信号を送受信コイルから受信することを特徴とする。
【0012】
前記地上装置の処理装置は、隣接する地上装置の処理装置と列車状態情報を相互に伝送し、受信器で受信した列車状態情報と列車進行方向に隣接する地上装置の処理装置から伝送された列車状態情報から先行列車位置情報とレールを分割した境界位置情報を含む列車制御情報を生成して前記送信器に出力し、車上装置の処理部は、受信器で受信した列車制御情報に基づき列車の制限速度を算出して速度制御部に出力するとともに自列車位置と列車番号及び進行方向を含む列車状態情報を生成して前記送信器に出力する。
【0013】
前記情報伝送路は、レールを複数区間に分割した各区間の左右のレールに対して直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルを直列に接続した閉回路からなると良い。
【0014】
また、前記情報伝送路は、レールを複数区間に分割した各区間の左右のレールに対してそれぞれ直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルを直列に接続した2回路の閉回路で構成することが望ましい。
【0015】
さらに、前記情報伝送路の2回路の閉回路に一方に列車制御情報を送信し、他方に列車状態情報を送信すると良い。
【0016】
また、前記地上装置の送信器は列車制御情報をスペクトラム拡散変調して送信し、前記車上装置の送信器は列車状態情報をスペクトラム拡散変調して送信することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、情報伝送路を、レールを複数区間に分割して、各区間の片側のレールと直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルが直列に接続された閉回路で構成することにより、地上装置から送信した信号電流のレベルを列車の車軸短絡の影響を受けずにほぼ一定にすることができ、車上装置の受信レベル変動を少なくして地上装置から送信している列車制御情報を安定して受信することができる。
【0018】
また、情報伝送路のレールに送信している信号電流は左右のレールが車軸短絡されても列車の後方まで流れるから、一つの軌道回路に複数の列車を在線させることができ、列車の高密度運転を行うことができるとともに一つの軌道回路に在線した複数の列車で情報を授受することができる。
【0019】
さらに、情報伝送路を、レールを複数区間に分割した各区間の左右のレールに対して直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルを直列に接続した閉回路で構成することにより、列車制御情報や列車状態情報を含む信号電流を安定して送受信することができ、信頼性を向上することができる。
【0020】
また、情報伝送路を、レールを複数区間に分割した各区間の左右のレールに対してそれぞれ直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルを直列に接続した2回路の閉回路で構成することにより、地上と列車間で情報を2チャンネルで送信することができ信頼性を向上することができる。
【0021】
さらに、地上装置の送信器と車上装置の送信器は情報をスペクトラム拡散変調して送信することにより雑音の影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1はこの発明の情報伝送装置の構成を示すブロック図である。図に示すように、情報伝送装置は、軌道回路1T〜4T毎に設けられた情報伝送路1a〜1dと地上装置2a,2bと、列車3a,3bに搭載された車上装置4と送受信コイル5とを有する。情報伝送路1は、左右のレール6L,6Rのいずれいずれか一方、例えばレール6Lを軌道回路1T〜4T毎に分割し、直列に接続されたトランス7a〜7cの2次コイルと直流阻止コンデンサ8をそれぞれ分割したレール6Lの両境界に接続して軌道回路1T〜4Tのレール6Lとトランス7の2次コイル及び直流阻止コンデンサ8で閉回路を構成している。地上装置2aはトランス7aの1次コイルに接続された軌道回路1T用の送信器9aと受信器10aと、トランス7bの1次コイルに接続された軌道回路2T用の送信器9bと受信器10bと処理装置11aを有し、地上装置2bはトランス7cの1次コイルに接続された軌道回路3T用の送信器9cと受信器10cと、トランス7dの1次コイルに接続された軌道回路4T用の送信器9dと受信器10dと処理装置11bを有する。送信器9は列車制御情報を含む信号を情報伝送路1に送信し、受信器10は車上装置4から情報伝送路1に送信された列車状態情報を含む信号を受信する。処理装置11は隣接する地上装置2の処理装置11と条件連絡回路12で連結され、列車状態情報を相互に伝送し、列車制御情報を送信器9に出力し、受信器10で受信した列車状態情報を入力する。
【0023】
車上装置4a,4bは、それぞれ送信器13と受信器14及び処理部15とを有する。送信器13は列車状態情報を含む信号を送受信コイル5から情報伝送路1に送信し、受信器14は情報伝送路1に送信されている列車制御情報を含む信号を送受信コイル5から受信する。処理部15は受信器14で受信した列車制御情報に基づき列車3の制限速度を算出して速度制御部(不図示)に出力するとともに自列車の列車状態情報を送信器13に出力する。
【0024】
この情報伝送装置の地上装置2aで情報伝送路1a,1bに列車制御情報を送信して車上装置4a,4bで受信して列車3a,3bの速度を制御するときの処理を説明する。
【0025】
処理装置11aは送信器9aに先行列車位置情報と情報伝送路1aの列車進入側のレール境界C1の位置情報及び軌道回路1Tの識別番号を含む列車制御情報を出力し、送信器9bにも先行列車位置情報と情報伝送路1bの列車進入側のレール境界C2の位置情報及び軌道回路2Tの識別番号を含む列車制御情報を出力する。送信器9aは入力した列車制御情報で変調された信号電流をトランス7aの1次コイルに送り、トランス7aの2次コイルから情報伝送路1aに信号電流I1を送信し、送信器9bは入力した列車制御情報で変調された信号電流をトランス7bの1次コイルに送り、トランス7bの2次コイルから情報伝送路1bに信号電流I2を送信する。情報伝送路1aに送信された信号電流I1はトランス7aの2次コイルから直流阻止コンデンサ8を通ってレール境界C2からレール境界C1に向けてレール6Lを流れ、情報伝送路1bに送信された信号電流I2はトランス7bの2次コイルから直流阻止コンデンサ8を通ってレール境界C3からレール境界C2に向けて流れる。
【0026】
軌道回路1Tに進入した列車3aの車上装置4aの受信器14は、情報伝送路1aのレール6Lに送信されている信号電流I1を送受信コイル5aを介して受信し、受信した信号電流I1から列車制御情報を抽出して処理部15に送る。処理部15は送られている列車制御情報に有する列車進入側のレール境界C1の位置情報と軌道回路1Tの識別番号を検出すると軌道回路1Tに列車3aが進入したと判定し、レール境界C1の位置情報に速度発電機からの信号を積算して列車3aの現在位置を算出し、算出した現在位置と列車制御情報に有する先行列車位置情報により先行列車3bまでの距離を算出して列車3aの減速性能に応じた制限速度を算出して出力する。また、軌道回路2Tに在線する列車3bの車上装置4bの受信器14は、情報伝送路1bのレール6Lに送信されている信号電流I2を送受信コイル5bを介して受信し、受信した信号電流I2から列車制御情報を抽出して処理部15に送る。処理部15は送られた列車制御情報に基づき列車3bの制限速度を算出して出力する。
【0027】
この車上装置4a,4bで受信するレール6Lに送信されている信号電流I1,I2は列車3a,3bの車軸16a,16bによる短絡の影響を受けずにほぼ一定であるから車上装置4a,4bの受信レベル変動を少なくすることができ、地上装置2a,2bから送信している列車制御情報を安定して受信することができる。
【0028】
また、情報伝送路1a,1bのレール6Lに送信している信号電流I1,I2はレール6L,6Rが車軸16a,16bで短絡されても列車3a,3bの後方まで流れるから、列車3bが在線する情報伝送路1bに送信器9bから送信する信号電流I2に列車3aと列車3bに送信する列車制御情報を例えば時分割で送信することにより、列車3bが在線する軌道回路2Tに列車3aが進入しても、列車3aで信号電流I2を受信することができ、1つの軌道回路2Tに複数の列車3a,3bを在線させることができ、列車3の高密度運転を行うことができる。
【0029】
次に車上装置4a,4bから地上装置2aに列車状態情報を送信するときの処理を説明する。
【0030】
軌道回路1Tに進入している列車3aの車上装置4aの処理部15は、算出した自列車位置と列車番号及び進行方向を含む列車状態情報を送信器13に逐次出力する。送信器13は入力した列車状態情報で変調された信号電流It1を送受信コイル5aからレール6Lに送信する。レール6Lに送信された信号電流It1は情報伝送路1aのレール境界C2から直流阻止コンデンサ8とトランス7aの2次コイルに流れる。このトランス7aの2次コイルに流れる信号電流をトランス7aの1次コイルを介して地上装置2aの受信器10aで受信し、受信した信号電流It1から列車状態情報を抽出して処理装置11aに出力する。処理装置11aは入力した列車3aの列車状態情報を列車進行方向の後方の地上装置に条件連絡回路12を介して送る。また、軌道回路2Tに進入している列車3bの車上装置4bも同様にして信号電流It2を送受信コイル5bから情報伝送路1bのレール6Lに送信し、送信された信号電流It2を地上装置2aの受信器10bで受信して列車3bの列車状態情報を処理装置11aで処理する。
【0031】
このようにしてレール6Lを使用して地上装置2aと車上装置4a,4bとの間で情報を授受することができる。
【0032】
また、前記説明では1本のレール6Lを使用して地上装置2と車上装置4との間で情報を授受する場合について説明したが、図2に示すように、左右のレール6L,6Rを電線で接続して同じ信号電流を送信しても良い。このように左右のレール6L,6Rに同じ信号電流を送信することにより列車制御情報や列車状態情報の伝送の安定性を向上することができる。
【0033】
また、図2に示すように、軌道回路2Tに列車3aと列車3bが在線する場合は、情報伝送路1bのレール6Lに例えば列車3bの車上装置4bから送信した信号電流It2を列車3aの車上装置4aで受信することにより、列車3間で情報の授受を行うことができる。
【0034】
この情報伝送路1a,1bに流れる信号電流I1,I2と信号電流It1,It2はレール6Lの一方向に流れ、帰線電流と同一方向になり、帰線電流等の雑音の影響を受ける。この雑音に耐えて伝送速度を下げることなしに同等以上の符号誤り率を確保するため、レール6Lに流す信号電流を耐雑音性能に優れたスペクトラム拡散方式にすることが望ましい。
【0035】
さらに、図3に示すように、左右のレール6L,6Rに異なる信号電流を送信しても良い。この場合、レール6Lを使用した情報伝送路1aL〜1dLとレール6Rを使用した情報伝送路1aR〜1dRを設け、地上装置2aには軌道回路1Tの情報伝送路1aLと軌道回路2Tの情報伝送路1bLと信号電流を授受する送信器9と受信器10と、軌道回路1Tの情報伝送路1aRと軌道回路2Tの情報伝送路1bRと信号電流を授受する送信器9と受信器10とを設け、地上装置2bには軌道回路3Tの情報伝送路1cLと軌道回路4Tの情報伝送路1dLと信号電流を授受する送信器9と受信器10と、軌道回路3Tの情報伝送路1dRと軌道回路2Tの情報伝送路1dRと信号電流を授受する送信器9と受信器10を設け、車上装置4にも情報伝送路1aL〜1dLと信号電流を授受する送信器13と受信器14と、情報伝送路1aR〜1dRと信号電流を授受する送信器13と受信器14を設けて、左右のレール6L,6Rに異なる信号電流を流すようにしても良い。この場合、図3に示すように、地上装置2a,2bから情報伝送路1aL〜1dLと情報伝送路1aR〜1dRに異なる周波数fと周波数fで異なる拡散符号PN1〜6で変調した信号電流を送信し、車上装置4a,4bからは地上装置2a,2bと異なる周波数fと異なる拡散符号PN3〜5で変調した信号電流を送信することにより、地上と列車3間で多くの情報を安定して送受信することができる。
【0036】
また、図3に示すように、軌道回路2Tに列車3aと列車3bが在線して、地上装置2aから列車3aと列車3bに列車制御情報を送信する場合、地上装置2aから送信する信号を時分割して複数のタイムスロットに分けることにより、複数の列車3a,3bに列車制御情報を伝送することができる。この場合、接続を確立する際には、列車3a,3bの固有番号や列車番号による振り分け、列車追跡、乱数の使用などによる衝突防止を図ることができる。
【0037】
また、左右のレール6L,6Rに異なる信号電流を送信するから、図4に示すように情報伝送路1aL〜1dLと情報伝送路1aR〜1dRが重なり合うようにしても良い。このように情報伝送路1aL〜1dLと情報伝送路1aR〜1dRを重なり合わせることにより、軌道回路1T〜4Tの境界で無信号状態になることの解消や接続確立に必要な時間の確保及び同期状態の維持を図ることができる。
【0038】
前記説明では情報伝送路1aL〜1dLと情報伝送路1aR〜1dRに列車制御情報を含む信号電流と列車状態情報を含む信号電流を送信する場合について説明したが、いずれか一方、例えば情報伝送路1aL〜1dLに列車制御情報を含む信号電流を送信し、他方の情報伝送路1aR〜1dRに列車状態情報を含む信号電流を送信しても良い。このように列車制御情報を含む信号電流と列車状態情を含む信号電流を異なる情報伝送路で送信することにより、地上装置2と車上装置4で安定して情報を送受信することができる。
【0039】
また、鉄道の線路には、駅や車両所などに分岐器が設けられる。この分岐器を含む個所の軌道回路は絶縁を挿入して構成している。そこで例えば図5に示すように、1番線と2番線と3番線に分岐した線路の分岐器が存在する個所でトレグレールの部分に信号電流を通すためのレールボンド20を接続し、クロッシングの部分に分岐線側と基準線側を絶縁するレール絶縁21を設け、1番線と2番線と3番線の左右のレールL,Rで異なる信号電流を流す情報伝送路1を構成することにより、インピーダンスボンドを使用しない、いわゆる無絶縁軌道回路を実現することができる。また、伝送する情報が少なく、左右のレールL,Rで同じ信号電流を流すとすれば、レールボンド20及びレール絶縁21をなくすことができ、無絶縁化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の情報伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第2の情報伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第3の情報伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図4】第4の情報伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第5の情報伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来に軌道回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
1;情報伝送路、2;地上装置、3;列車、4;車上装置、5;送受信コイル、
6;レール、7;トランス、8;直流阻止コンデンサ、9;送信器、10;受信器、
11;処理装置、12;条件連絡回路、13;送信器、14;受信器、
15;処理部、16;車軸、20;レールボンド、21;レール絶縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報伝送路と地上装置と、列車に搭載された車上装置とを有し、
前記情報伝送路は、レールを複数区間に分割して、各区間の片側のレールと直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルが直列に接続された閉回路からなり、
前記地上装置は、前記情報伝送路のトランスの1次コイルに接続された送信器と受信器とを有し、前記送信器は列車制御情報を含む信号を前記情報伝送路に送信し、前記受信器は前記車上装置から前記情報伝送路に送信された列車状態情報を含む信号を受信し、
前記車上装置は、送信器と受信器とを有し、前記送信器は列車状態情報を含む信号を送受信コイルから前記情報伝送路に送信し、前記受信器は前記情報伝送路に送信されている列車制御情報を含む信号を送受信コイルから受信することを特徴とする情報伝送装置。
【請求項2】
前記地上装置の処理装置は、隣接する地上装置の処理装置と列車状態情報を相互に伝送し、前記受信器で受信した列車状態情報と列車進行方向に隣接する地上装置の処理装置から伝送された列車状態情報から先行列車位置情報とレールを分割した境界位置情報を含む列車制御情報を生成して前記送信器に出力し、
前記車上装置の処理部は、前記受信器で受信した列車制御情報に基づき列車の制限速度を算出して速度制御部に出力するとともに自列車位置と列車番号及び進行方向を含む列車状態情報を生成して前記送信器に出力する請求項1記載の情報伝送装置。
【請求項3】
前記情報伝送路は、レールを複数区間に分割した各区間の左右のレールに対して直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルを直列に接続した閉回路からなる請求項1又は2記載の情報伝送装置。
【請求項4】
前記情報伝送路は、レールを複数区間に分割した各区間の左右のレールに対してそれぞれ直流阻止コンデンサ及びトランスの2次コイルを直列に接続した2回路の閉回路からなる請求項1又は2記載の情報伝送装置。
【請求項5】
前記情報伝送路の2回路の閉回路に一方に列車制御情報を送信し、他方に列車状態情報を送信する請求項4記載の情報伝送装置。
【請求項6】
前記地上装置の送信器は列車制御情報をスペクトラム拡散変調して送信し、前記車上装置の送信器は列車状態情報をスペクトラム拡散変調して送信する請求項1乃至5のいずれかに記載の情報伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−290585(P2008−290585A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138497(P2007−138497)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】