説明

情報表示装置、情報表示方法、情報表示プログラムおよび情報表示プログラムを格納した記録媒体

【課題】自転車走行や徒歩時などにおいて、適切な移動可能な範囲を示すエリアを算出、表示することができる情報表示装置、情報表示方法、情報表示プログラムおよび情報表示プログラムを格納した記録媒体を提供する。
【解決手段】サーバ部30で、端末部10から設定された散策時間から残り時間を算出し、走行情報と身体情報と環境情報から使用者の疲労度を考慮した残り時間における走行可能距離を算出し、その走行可能距離から移動可能エリアを算出して、端末部10でその移動可能エリアを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自転車などの移動体で散策する際に、予め設定した所定時間内で出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を表示する情報表示装置、情報表示方法、情報表示プログラムおよび情報表示プログラムを格納した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自転車や徒歩などで、明確な目的地を定めずに散策をすることがあるが、この場合、思ったよりも遠くまで来てしまい、自宅などの出発地に戻るのが予定していた時間をオーバーしてしまうことがある。
【0003】
この種の問題に応用できそうな技術として、例えば特許文献1に記載の車載用ナビゲーション装置がある。特許文献1に記載の車載用ナビゲーション装置は、主に自動車を対象として、地図情報に基づいて経路探索を行い、現在地からの所定時間または残燃料に基づいて到達可能範囲を算出して表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3385657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された車載用ナビゲーション装置は、主に自動車を対象としており、当該文献に記載されたノード・リンク情報に基づいて算出されたコストで到達可能範囲(移動可能エリア)を規定することは自転車走行や徒歩の場合は不適切である。それは、自転車走行や徒歩の場合は、狭い路地やあぜ道、あるいは公園などを横切ったり、建物を通り抜けたりして自動車が走行するノード・リンクに乗らずに移動することが可能である場合や、自動車専用道など自転車や歩行者が通行できないノード・リンクが存在するためである。そのため、特許文献1に記載された車載用ナビゲーション装置を自転車走行や徒歩に適用すると、上記の点を考慮してコストを算出する必要があり、処理量が膨大かつ複雑になってしまうという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献1に記載された車載用ナビゲーション装置は、自動車などの動力により移動する移動体を対象としており、自転車走行や徒歩といった人力による移動時に発生する使用者の疲労という点が考慮されていない。人力による移動時には一般的に出発からの移動距離に応じて疲労が蓄積し、単位時間当たりの移動速度や移動距離が徐々に低下するため、特許文献1に記載された車載用ナビゲーション装置のように単に時間で到達可能範囲を規定することは不適切である。
【0007】
そこで、本発明は、例えば、自転車走行や徒歩時などにおいて、適切な移動可能な範囲を示すエリア情報を算出、表示することができる情報表示装置、情報表示方法、情報表示プログラムおよび情報表示プログラムを格納した記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の情報表示装置は、時間を設定する時間設定手段と、前記時間設定手段により設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を算出するエリア算出手段と、前記エリア算出手段が算出したエリア情報を表示する表示手段と、を備えた情報表示装置であって、前記時間設定手段により設定された時間の現時点における残り時間を算出する残時間算出手段を備え、前記エリア算出手段が、前記使用者の疲労度と、前記残時間算出手段が算出した残り時間と、に基づいて前記エリア情報を逐次算出することを特徴としている。
【0009】
請求項7に記載の情報表示方法は、時間を設定する時間設定ステップと、前記時間設定ステップで設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を算出するエリア算出ステップと、前記エリア算出ステップが算出したエリア情報を表示する表示ステップと、を備えた情報表示方法であって、前記時間設定ステップで設定された時間の現時点における残り時間を算出する残時間算出ステップを備えるとともに、前記エリア算出ステップは、前記使用者の疲労度と、前記残時間算出ステップで算出した残り時間と、に基づいて前記エリア情報を逐次算出することを特徴としている。
【0010】
請求項8に記載の情報表示プログラムは、時間を設定する時間設定手段と、前記時間設定手段により設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を算出するエリア算出手段と、前記エリア算出手段が算出したエリア情報を表示する表示手段と、としてコンピュータを機能させる情報表示プログラムであって、前記時間設定手段により設定された時間の現時点における残り時間を算出する残時間算出手段として前記コンピュータを機能させるとともに、前記エリア算出手段が、前記使用者の疲労度と、前記残時間算出手段が算出した残り時間と、に基づいて前記エリア情報を逐次算出することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例にかかるナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】図1に示されたナビゲーション装置の端末部の動作を示したフローチャートである。
【図3】図1に示されたナビゲーション装置のサーバ部の動作を示したフローチャートである。
【図4】図1に示されたナビゲーション装置の端末部における表示例を示した説明図である。
【図5】自転車の走行時間と走行速度との関係と、自転車の走行時間と積算走行距離との関係と、の一例を示したグラフである。
【図6】図1に示されたナビゲーション装置の端末部における移動可能エリアの表示の変化を示した説明図である。
【図7】図5のグラフの一部拡大図である。
【図8】図5のグラフの一部拡大図である。
【図9】本発明の第2の実施例にかかるナビゲーション装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかる情報表示装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる情報表示装置は、エリア算出手段が、使用者の疲労度と、残時間算出手段が算出した時間設定手段に設定された時間の現時点における残り時間と、に基づいて時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を逐次算出するので、疲労を考慮して時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を算出することができ、自転車走行や徒歩時などにおいて、設定した時間内に戻ることが可能な適切な範囲を示すエリア情報を算出、表示することができる。
【0013】
また、周辺の環境情報を取得する周辺環境取得手段と、使用者の身体情報を取得する身体情報取得手段と、出発地からの使用者の移動距離を算出する移動距離算出手段と、をさらに備え、エリア算出手段が、移動距離算出手段により算出された使用者の移動距離に応じて疲労度を設定し、当該設定した疲労度、残り時間に加えて、周辺環境情報取得手段が取得した周辺環境情報および身体情報取得手段が取得した身体情報のうち少なくともいずれか1つに基づいてエリア情報を逐次算出してもよい。このようにすることにより、疲労度を走行距離で設定し、さらに、気温、天候、風向などの周辺環境や、使用者の心拍数などの体調も考慮してエリア情報を算出することができ、より時間内に出発地に戻ることが可能な範囲の算出精度を向上させることができる。
【0014】
また、エリア算出手段が、算出したエリア情報に対して予め定めた所定の係数を乗じて当該エリア情報が示す範囲を縮小してもよい。このようにすることにより、実際の道路の形状などを考慮したより適切な散策する時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を算出することができる。
【0015】
また、表示手段が、エリア情報が示す範囲を径方向に複数に区切り、各区域を互いに異なる色で表示してもよい。このようにすることにより、例えば、出発地を中心とした場合に、出発地から離れるにしたがって色が変わるため、直感的に距離的な余裕を把握することができる。
【0016】
また、使用者の現在地を取得する現在地取得手段をさらに備え、表示手段が、現在地取得手段が取得した現在地がエリア情報が示す範囲の外周に近づいた場合は、当該範囲の外周に近づいたことを通知する情報を表示してもよい。このようにすることにより、時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を越えそうになったことを使用者に通知することができる。
【0017】
また、使用者が、現在地取得手段が取得した現在地がエリア情報が示す範囲外に移動した場合は、当該範囲を越えたことを報知する報知手段をさらに備えてもよい。このようにすることにより、時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を越えた場合には、使用者に報知して当該範囲内に戻るよう促すことができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態にかかる情報表示方法は、エリア算出ステップで、使用者の疲労度と、残時間算出手段が算出した時間設定ステップで設定された時間の現時展示おける残り時間と、に基づいて時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリアを逐次するので、疲労を考慮して時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を算出することができ、自転車走行や徒歩時などにおいて、設定した時間内に戻ることが可能な適切な範囲を示すエリア情報を算出、表示することができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態にかかる情報表示プログラムは、エリア算出手段が、使用者の疲労度と、残時間算出手段が算出した時間設定手段に設定された時間の現時点における残り時間と、に基づいて時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を逐次算出するので、疲労を考慮して時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を算出することができ、自転車走行や徒歩時などにおいて、設定した時間内に戻ることが可能な適切な範囲を示すエリア情報を算出、表示することができる。
【0020】
また、上述した情報表示プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例1】
【0021】
本発明の第1の実施例にかかる情報表示装置としてのナビゲーション装置1を図1乃至図8を参照して説明する。ナビゲーション装置1は図1に示すように、端末部10と、サーバ部30と、から構成されている。端末部10は例えば自転車のハンドルなどに取り付けられ、自転車で出発して再度出発地に戻るまでの時間(散策時間)の設定を行ったり、自転車のペダルの回転数や走行速度などの走行情報、使用者の心拍数などの身体情報および自転車の周囲の気温や風向などの環境情報をサーバ部30へ送信したり、サーバ部30から送信されてきた移動可能エリア情報を表示する。サーバ部30は、事業所などに設置されたコンピュータなどで構成され、端末部10から設定された散策時間や、走行情報、身体情報および環境情報から使用者の疲労度に応じた移動可能エリアを逐次算出して端末部10へ逐次送信する。
【0022】
また、図1に記載のナビゲーション装置1の構成は、一例でありこれに限られるものではない。図1は、ナビゲーション装置1が備える各構成部を端末部10とサーバ部30とに分けて備えてもよいことを示しており、例えば、サーバ部30を構成する一部を、端末部10が備えることとしてもよいし、逆に端末部10を構成する一部をサーバ部30が備えることとしてもよい。
【0023】
端末部10は、GPS受信部11と、現在地・日時算出部12と、操作部13と、走行情報受信部14と、制御部15と、通信部16と、身体情報受信部17と、環境情報受信部18と、表示部19と、スピーカ20と、を備えている。
【0024】
GPS受信部11は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星から、緯度及び経度情報や時間情報等の測位用データを含む電波を定期的に受信して現在地・日時算出部12に出力する。なお、現在地を検出する手段としてはGPSに限らず、自立センサ(角速度センサ)などを用いてもよいし、日時を算出するために時計機能を内蔵してもよい。
【0025】
現在地取得手段としての現在地・日時算出部12は、GPS受信部11が受信した測位用データから、現在地の座標(緯度、経度)および日時を算出し、現在地の座標および日時を制御部15へ出力する。
【0026】
時間設定手段としての操作部13は、複数のボタン等の入力手段で構成されている。そして、操作部13は、表示部19に表示されている画面に基づいて本ナビゲーション装置1の操作を行い、その操作情報が制御部15に出力される。本実施例では特に散策時間の設定操作が行われる。なお、操作部13はタッチパネルで構成してもよい。
【0027】
走行情報受信部14は、本端末部10が取り付けられた自転車の走行情報としてペダルの回転数と走行速度を受信し、制御部15へ出力する。ペダルの回転数は、例えばロータリエンコーダを用いた光学式のセンサを用いて検出すればよい。走行速度は、例えば自転車の車輪の回転数を検出してその回転数と予め設定された車輪径から算出すればよい。
【0028】
制御部15は、端末部10の全体制御を司り、操作部13から入力された操作情報を通信部16へ送信するとともに、通信部16が受信した移動可能エリア情報を表示部19へ出力する。
【0029】
通信部16は、サーバ部30の通信部31と無線通信を行う。通信部16は、操作部13から入力された操作情報をサーバ部30へ送信するとともに、サーバ部30から送信される移動可能エリア情報を受信して制御部15へ出力する。
【0030】
身体情報取得手段としての身体情報受信部17は、本ナビゲーション装置1が取り付けられている自転車に乗車する使用者の心拍数などの身体情報を受信し、制御部15へ出力する。心拍数は、例えば使用者の胸部などの取り付けられたセンサから心拍を検出して計測する周知の構成を用いればよい。
【0031】
周辺環境情報取得手段としての環境情報受信部18は、本ナビゲーション装置1が取り付けられている自転車の周囲の気温、風向、天候などの環境情報を受信し、制御部15へ出力する。これらの環境情報は、温度計、風向計などのセンサなどで取得してもよいし、例えば天候などは使用者が操作部13から入力してもよい。或いはサーバ部30が直接外部の気象情報提供用のコンピュータからネットワーク経由で取得するようにしてもよい(つまり、周辺環境情報取得手段は端末部10に設けられなくてもよい)。
【0032】
表示手段、報知手段としての表示部19は、例えば液晶ディスプレイなどで構成され、操作する際のインタフェース画面や、移動可能エリア情報などが表示される。また、現在地が移動可能エリア情報が示す範囲を超えてしまった場合は、メッセージ等を表示して報知する。
【0033】
報知手段としてのスピーカ20は、操作する際のガイダンス音声や操作時の確認音等を出力する。また、現在地が移動可能エリア情報が示す範囲を超えてしまった場合は、警告音等を発して報知する。
【0034】
サーバ部30は、通信部31と、エリア算出部32と、残時間算出部33と、地図情報格納部34と、を備えている。
【0035】
通信部31は、端末部10の通信部16と無線通信を行う。端末部10から送信される操作情報(散策時間)および走行情報、身体情報、環境情報をエリア算出部32と残時間算出部33に出力するとともに、エリア算出部32で算出された移動可能エリア情報を端末部10へ出力する。
【0036】
エリア算出手段、移動距離算出手段としてのエリア算出部32は、通信部31を介して送信されてきた操作情報および走行情報、身体情報、環境情報に基づいて、疲労度に応じた移動可能な範囲を算出して、移動可能エリア情報として通信部31を介して端末部10へ送信する。この移動可能エリア情報とは端末部10から送信されてきた散策時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を示す情報である。また、エリア算出部32は、地図情報格納部34から移動可能エリア情報を表示するために必要な範囲の地図情報を読み出して、移動可能エリア情報とともに端末部10へ送信する。
【0037】
残時間算出手段としての残時間算出部33は、端末部10から設定された散策時間に対する残り時間を算出し、エリア算出部32に出力する。
【0038】
地図情報格納部34は、地図情報が格納され、エリア算出部32から必要な範囲の地図情報が読み出される。
【0039】
次に、上述した構成のナビゲーション装置1の動作を図2および図3を参照して説明する。図2は、端末部10の動作を示したフローチャートである。図2に示したフローチャートは制御部15で実行される。
【0040】
まず、時間設定ステップとしてのステップS101において、散策時間を設定してステップS102に進む。本ステップでは例えば、表示部19の画面上で散策時間を入力し、その操作情報を制御部15が通信部16を介してサーバ部30へ送信する。
【0041】
次に、ステップS102において、端末部10を搭載した自転車で走行を開始してステップ103に進む。
【0042】
次に、ステップS103において、走行情報をサーバ部30へ送信開始してステップS104に進む。本ステップ以降、走行情報受信部14で受信した走行情報(走行速度)は所定時間間隔などで逐次サーバ部30へ出力される。
【0043】
次に、ステップS104において、身体情報をサーバ部30へ送信開始してステップS105に進む。本ステップ以降、身体情報受信部17で受信した身体情報(心拍数)は所定時間間隔などで逐次サーバ部30へ出力される。
【0044】
次に、ステップS105において、環境情報をサーバ部30へ送信開始してステップS106に進む。本ステップ以降、環境情報受信部18で受信した環境情報(気温、風向、天候)は所定時間間隔などで逐次サーバ部30へ出力される。なお、環境情報は、変化の頻度が高くないために変化した場合のみ送信するようにしてもよい。
【0045】
次に、ステップS106において、サーバ部30から移動可能エリア情報を受信したか否かを判断し、受信した場合(Yの場合)はステップS107に進み、受信していない場合(Nの場合)は本ステップで待機する。
【0046】
次に、表示ステップとしてのステップS107において、サーバ部30から受信した移動可能エリア情報を表示部19に表示してステップS108に進む。この際に、現在地・日時算出部12で算出された現在地も合わせて表示する。図4に表示例を示す。図4において、Aが移動可能エリア情報が示す範囲(移動可能エリア)を示し、移動可能エリアAの中心に出発地が位置している。また、図4の場合は走行開始前であるため、現在地も出発地と同じ位置に表示されている。なお、図4には図示していないが表示部19には地図が表示され、その地図上に移動可能エリアAや出発地および現在地が重ねられている。この地図情報も移動格納エリア情報とともにサーバ部30から送信される。
【0047】
次に、ステップS108において、走行終了か否かを判断し、終了の場合(Yの場合)は本フローチャートを終了し、終了でない場合(Nの場合)はステップS106に戻る。
【0048】
図3は、サーバ部30の動作を示したフローチャートである。図3に示したフローチャートはエリア算出部32で実行される。
【0049】
まず、ステップS201において、散策時間が設定済みか否かを判断し、設定済みである場合(Yの場合)はステップS202に進み、設定済みでない場合(Nの場合)は本ステップで待機する。本ステップでは図2のステップS101で散策時間が設定されたかを判断している。
【0050】
次に、残時間算出ステップとしてのステップS202において、設定された散策時間から残りの時間(残時間)の算出を開始してステップS203に進む。本ステップでは、残時間算出部33に対して残時間の算出を開始させている。
【0051】
次に、ステップS203において、走行情報を端末部10から受信開始してステップS204に進む。本ステップ以降、端末部10から所定時間間隔などで逐次送信されてくる走行情報を逐次受信する。
【0052】
次に、ステップS204において、身体情報を端末部10から受信開始してステップS205に進む。本ステップ以降、端末部10から所定時間間隔などで逐次送信されてくる身体情報を逐次受信する。
【0053】
次に、ステップS205において、環境情報を端末部10から受信開始してステップS206に進む。本ステップ以降、端末部10から所定時間間隔などで逐次送信されてくる環境情報を逐次受信する。
【0054】
次に、移動距離算出ステップとしてのステップS206において、走行距離(移動距離)を算出してステップS207に進む。走行距離は、端末部10から受信した走行情報の走行速度と、走行時間から算出し、積算する。また、走行距離は、走行速度ではなくペダルの回転数から算出してもよい。ペダルの回転数は1分あたりの回転数で示されるため、予め車輪径の情報を取得しておくことで、車輪径とペダル回転数と走行時間から算出することが可能である。あるいは、GPSの位置情報を定期的に取得して走行距離を算出してもよい。
【0055】
次に、エリア算出ステップとしてのステップS207において、移動可能エリアを算出してステップS208に進む。本ステップでは、ステップS206で算出した走行距離と、ステップS202で算出が開始された残時間と、ステップS204、S205で受信が開始された身体情報と環境情報からナビゲーション装置1が搭載されている自転車(利用者)が移動可能なエリア(範囲)を算出する。
【0056】
移動可能エリアの算出方法について図5を参照して説明する。図5は、自転車の走行時間と積算走行距離との関係(カーブtd)と、自転車の走行時間と走行速度との関係(カーブts)と、の一例を示したグラフである。図5に示したように、これらのカーブは使用者の疲労によって徐々に変化が緩やかになる。つまり、走行時間が長くなるに従って、疲労の影響で積算走行距離の増分は徐々に少なくなり、走行速度も徐々に遅くなる。これは、換言すると、積算走行距離が大きくなるにしたがって、単位距離当たりの移動時間が長くなることを意味する。例えば、散策時間を60分と設定すると、図5の場合走行可能距離(移動可能エリアの直径)は約16kmとなるが、散策時間を120分と設定すると、走行可能距離は約28.5kmとなり、走行可能距離は時間設定に正比例しない。本実施例では、このような予め疲労度が加味されたカーブがテーブルまたは数式モデルなどで予めエリア算出部32に格納されている。即ち、カーブtdの接線の傾きが疲労度に相当し、接線の傾きが大きいほど疲労度が小さく(疲労していない)、傾きが小さいほど疲労度が大きく(疲労している)なることを意味している。また、以降の説明ではカーブtdを用いるが、カーブtsを用いてもよい。つまり、カーブtd、tsのうちいずれかが格納されていればよい。そして、走行が開始されると、図5に基づいて走行可能距離を逐次算出し移動可能エリアを算出している。
【0057】
図5の場合は、疲労度の説明を分かり易くするために走行時間(積算走行距離)のみが影響するようなモデルで説明したが、本実施例では、それに加えて、環境情報と身体情報も加味している。例えば、気温や風向などによっては疲労の蓄積度は異なるはずであり、また、体調によっても疲労の蓄積度は変化するはずである。したがってこれらの情報を取得して複数のカーブを予め設定したり、数式モデルであれば所定の係数を乗じたりして加味することで、より移動可能エリアの算出精度を高めることができる。さらに、カーブや数式モデルは、使用者の日頃の走行実績に基づいて変更してもよい。
【0058】
次に、ステップS208において、ステップS207で算出された移動可能エリアを端末部10に送信してステップS209に進む。
【0059】
次に、ステップS209において、走行終了か否かを判断し、終了の場合(Yの場合)は本フローチャートを終了し、終了でない場合(Nの場合)はステップS206に戻る。
【0060】
本フローチャートのステップS206〜S209を繰り返すことで、移動可能エリアを逐次算出し、端末部10へ逐次送信することができる。また、走行距離や移動可能エリアは端末部10から逐次受信する走行情報、身体情報、環境情報と散策時間の残り時間に応じて変化する。
【0061】
ここで、上述したナビゲーション装置1の具体的な動作例を図6ないし図8を参照して説明する。図6は、端末部10における移動可能エリアの表示の変化を示した図であり、図7および図8は、図5に示したグラフの一部を拡大した図である。
【0062】
図6の左側は、出発時(スタート時)の状態を示している。つまり、図4と同一である。但し、図6では、散策時間を120分と設定し、図5より走行可能距離が28.5kmなので、移動可能エリアAは、出発地を中心として半径14.25kmの円となる。そして、図6右上は走行をスタートして30分後に8.5km移動していた場合の表示である。この場合、図7に示すように30分で8.5kmはカーブtdに略沿っているので、残り90分の走行可能距離は20kmと推測でき、移動可能エリアAは出発地を中心として半径10kmの円となる。
【0063】
一方、図6の右下は走行をスタートして30分後に3km移動していた場合の表示である。この場合、図8に示すように30分で3kmはカーブtdに沿っておらず、カーブtdに当てはめると、10分走行した場合となる。つまり、疲労度としてはカーブtdのモデルで10分走行したのと同程度であるといえる。そのため、残り90分の走行可能距離は22kmと推測でき、移動可能エリアAは出発地を中心として半径11kmの円となる。
【0064】
なお、図6の右上の場合も右下の場合も時間経過に伴って徐々に変化するのであって、例えば30分後にいきなり変化するものではない。また、移動可能エリアAは、基本的に時間経過によって縮小するが、例えば身体情報で予め想定したよりも心拍が増加しない場合であれば拡大することもある。
【0065】
本実施形態によれば、サーバ部30で、端末部10から設定された散策時間から残り時間を算出し、走行情報と身体情報と環境情報から使用者の疲労度を考慮した残り時間における走行可能距離を算出し、その走行可能距離から移動可能エリアを算出して、端末部10でその移動可能エリアを表示するので、疲労を考慮して移動可能なエリアを算出することができ、自転車走行や徒歩時などにおいて、適切なエリアを算出、表示することができる。
【0066】
なお、上述した実施例では算出した走行可能距離を移動可能エリアの直径としていたが、実際は道路の形状により真っ直ぐ進行することは少ないため、走行可能距離に1未満の所定の係数を乗じた値を移動可能エリアとして実際の道路状況に合わせるようにしてもよい。即ち、予め定めた所定の係数を乗じてエリア情報を示す範囲を縮小している。
【0067】
また、移動可能エリアの表示は、図4や図6のように単に円を示したり、円の中を着色したりするだけでなく、例えば同心円状に複数に区切って色を変更してもよい。即ち、移動可能エリアを径方向に複数に区切り、各区域を互いに異なる色で表示している。また、現在地が移動可能エリアの外周に近づいた場合は、その旨をメッセージや円の中の色を変更するなどして使用者に通知してもよい。さらに、移動可能エリアを越えてしまった場合は、表示部19やスピーカ20を用いて使用者に報知してもよい。
【0068】
なお、上述した実施例では、端末部10とサーバ部30とで構成していたが、端末部10で行っていた散策時間の設定を他のパソコンやスマートフォンなどで行うように構成してもよい。散策時間の設定時においては、設定画面は端末部10に表示されるものの設定された散策時間に基づく処理自体はサーバ部30内部でなされるので、端末部10に限らずパソコンやスマートフォンからサーバ部30にアクセスして行っても構わない。
【実施例2】
【0069】
次に、本発明の第2の実施例にかかるナビゲーション装置1´を図9を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施例では、端末部10とサーバ部30に分かれていたものを一つに纏めた点が第1の実施例と異なる。即ち、図1から通信部16、31を削除し、制御部15にエリア算出部32と残時間算出部33が接続される。
【0071】
本実施例によれば、全ての機能を内蔵しているので、外部との通信部は自身の現在地を算出するためのGPS受信部11のみとなる。そのために、外部との通信状況に左右されずに移動可能エリアの算出、表示が可能となる。
【0072】
なお、上述した実施例では、移動可能エリアを正円で表示したが、出発地と現在地の2つを焦点とする楕円で表してもよい。また、出発地を中心としたが、現在地を中心として表示してもよい。
【0073】
また、上述した実施例では、自転車の搭載するナビゲーション装置1で説明したが、それに限らず、歩行者が持つ携帯端末などに適用してもよい。この場合、歩行速度はあらかじめ設定した歩幅と歩数から求めてもよいし、GPSによる位置測定から歩行速度や歩行距離を求めてもよい。
【0074】
また、上述した実施例では、移動可能エリアを算出する際に環境情報と身体情報を加味していたが、いずれか一方のみを加味して算出するようにしてもよいし、これらは加味せずに、積算走行距離に基づいた疲労度のみ(図5のみ)で算出してもよい。
【0075】
また、上述したナビゲーション装置1または1´の現在地・日時算出部12と、操作部13と、走行情報受信部14と、制御部15と、通信部16と、身体情報受信部17と、環境情報受信部18と、エリア算出部32と、残時間算出部33と、をコンピュータで動作するプログラムとして構成することで、本発明を情報表示プログラムとして構成することができる。なお、上述した第1の実施例に示したように端末部10とサーバ部30とに分かれて構成する場合は、勿論2つのコンピュータにそれぞれの機能(端末部10、サーバ部30)を実現するようなプログラムとすればよい。
【0076】
前述した実施例によれば、以下のナビゲーション装置1、情報表示方法および情報表示プログラムが得られる。
【0077】
(付記1)時間を設定する操作部13と、操作部13により設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示す移動可能エリアを算出するエリア算出部32と、エリア算出部32が算出した移動可能エリアを表示する表示部19と、を備えたナビゲーション装置1であって、
操作部13に設定された時間の現時点における残り時間を算出する残時間算出部33を備え、
エリア算出部32が、使用者の疲労度と、残時間算出部33が算出した残り時間と、に基づいて移動可能エリアを逐次算出し、表示部19が逐次表示を更新することを特徴とするナビゲーション装置1。
【0078】
(付記2)時間を設定するステップS101と、ステップS101に設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示す移動可能エリアを算出するステップS207と、ステップS207が算出した移動可能エリアを表示するステップS107と、を備えた情報表示方法であって、
ステップS101で設定された時間の現時点における残り時間を算出するステップS202を備えるとともに、
ステップ207は、使用者の疲労度と、ステップS202で算出した残り時間と、に基づいて移動可能エリアを逐次算出し、ステップS107が逐次表示を更新することを特徴とする情報表示方法。
【0079】
(付記3)時間を設定する操作部13と、操作部13により設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示す移動可能エリアを算出するエリア算出部32と、エリア算出部32が算出した移動可能エリアを表示する表示部19と、としてコンピュータを機能させる情報表示プログラムであって、
操作部13に設定された時間の現時点における残り時間を算出する残時間算出部33としてコンピュータを機能させるとともに、
エリア算出部32が、使用者の疲労度と、残時間算出部33が算出した残り時間と、に基づいて移動可能エリアを逐次算出し、表示部19が逐次表示を更新することを特徴とする情報表示プログラム。
【0080】
これらのナビゲーション装置1、情報表示方法および情報表示プログラムによれば、疲労を考慮して散策する時間内に出発地に戻ることが可能な範囲を算出することができ、自転車走行時において、設定した時間内に戻ることが可能な適切なエリアを算出、表示することができる。
【0081】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
1、1´ ナビゲーション装置(情報表示装置)
11 GPS受信部
12 現在地・日時算出部(現在地取得手段)
13 操作部(時間設定手段)
14 走行情報受信部
17 身体情報受信部(身体情報取得手段)
18 環境情報受信部(周辺環境情報取得手段)
19 表示部(表示手段、報知手段)
20 スピーカ(報知手段)
32 エリア算出部(エリア算出手段、移動距離算出手段)
33 残時間算出部(残時間算出手段)
S101 散策時間設定(時間設定ステップ)
S107 移動可能エリア情報表示(表示ステップ)
S202 残時間算出開始(残時間算出ステップ)
S206 走行距離算出(移動距離算出ステップ)
S207 移動可能エリア算出(エリア算出ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間を設定する時間設定手段と、前記時間設定手段により設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を算出するエリア算出手段と、前記エリア算出手段が算出したエリア情報を表示する表示手段と、を備えた情報表示装置であって、
前記時間設定手段により設定された時間の現時点における残り時間を算出する残時間算出手段を備え、
前記エリア算出手段が、前記使用者の疲労度と、前記残時間算出手段が算出した残り時間と、に基づいて前記エリア情報を逐次算出することを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
周辺の環境情報を取得する周辺環境取得手段と、
前記使用者の身体情報を取得する身体情報取得手段と、
前記出発地からの前記使用者の移動距離を算出する移動距離算出手段と、をさらに備え、
前記エリア算出手段が、前記移動距離算出手段により算出された前記使用者の移動距離に応じて前記疲労度を設定し、当該設定した疲労度、前記残り時間に加えて、前記周辺環境情報取得手段が取得した前記周辺環境情報および前記身体情報取得手段が取得した前記身体情報のうち少なくともいずれか1つに基づいて、前記エリア情報を逐次算出することを特徴とする請求項1に記載の情報表示装置。
【請求項3】
前記エリア算出手段が、算出した前記エリア情報に対して予め定めた所定の係数を乗じて当該エリア情報が示す範囲を縮小することを特徴とする請求項1または2に記載の情報表示装置。
【請求項4】
前記表示手段が、前記エリア情報が示す範囲を径方向に複数に区切り、各区域を互いに異なる色で表示することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の情報表示装置。
【請求項5】
前記使用者の現在地を取得する現在地取得手段をさらに備え、
前記表示手段が、前記現在地取得手段が取得した前記現在地が前記エリア情報の示す範囲の外周に近づいた場合は、当該範囲の外周に近づいたことを通知する情報を表示することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の情報表示装置。
【請求項6】
前記使用者が、前記現在地取得手段が取得した前記現在地が前記エリア情報の示す範囲外に移動した場合は、当該範囲を越えたことを報知する報知手段をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の情報表示装置。
【請求項7】
時間を設定する時間設定ステップと、前記時間設定ステップで設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を算出するエリア算出ステップと、前記エリア算出ステップが算出したエリア情報を表示する表示ステップと、を備えた情報表示方法であって、
前記時間設定ステップで設定された時間の現時点における残り時間を算出する残時間算出ステップを備えるとともに、
前記エリア算出ステップは、前記使用者の疲労度と、前記残時間算出ステップで算出した残り時間と、に基づいて前記エリア情報を逐次算出することを特徴とする情報表示方法。
【請求項8】
時間を設定する時間設定手段と、前記時間設定手段により設定された時間内に使用者が出発地に戻ることが可能な範囲を示すエリア情報を算出するエリア算出手段と、前記エリア算出手段が算出したエリア情報を表示する表示手段と、としてコンピュータを機能させる情報表示プログラムであって、
前記時間設定手段により設定された時間の現時点における残り時間を算出する残時間算出手段として前記コンピュータを機能させるとともに、
前記エリア算出手段が、前記使用者疲労度と、前記残時間算出手段が算出した残り時間と、に基づいて前記エリア情報を逐次算出することを特徴とする情報表示プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の情報表示プログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−181175(P2012−181175A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46113(P2011−46113)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】