説明

情報記録媒体および情報読取り装置

【課題】偽造を一層困難ならしめた情報記録媒体を提供し、併せて、この情報記録媒体か
ら、秘匿情報を確実に解読することのできる読取り装置を提供する。
【解決手段】情報記録媒体は、散乱反射層12上に形成され、凹凸によって形成された互いに平行する複数の溝パターンが設けられた配向層13と、配向層13上に設けられ、液晶分子を有し該液晶分子が複数の溝パターンに沿って配向し固定された像形成層とを含んで構成され、配向層13が複数の領域に分割され、この複数の領域の配列により秘匿情報を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード、パスポート、証書、有価証券などのセキュリティ媒体の偽造防止を目的とした情報記録にかかり、特に、液晶を用いて記録されたような、肉眼では視認できない画像に秘匿情報を保持した情報記録媒体と、この情報記録媒体に記録された秘匿情報を機械的に読取り、その真正性を識別するための秘匿情報読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からカードには、平面状の基板表面に回折格子を有する微小な回折格子要素(ドット)を画素として複数個配置することにより得られる回折格子パターンを有する、ディスプレイなどの情報記録媒体が多く使用されている。
これらの複数個の回折格子要素は、照明光の照明に基づく回折光が空間上の同一の集光点に集光するようにその格子間隔及び格子角度が設定されている2個以上の回折格子要素群の組合せにより、所定の秘匿情報がパターン化されるような方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
より具体的には、この回折格子パターンは、複数の微小な回折格子要素に分割されていると共に、各回折格子要素の回折格子におけるピッチ、空間周波数、さらには各回折格子要素の並べ方を適宜変化させ、さらに回折格子要素表面の回折格子の方向を回折格子要素毎に変化させてなるものである。
【0004】
しかし、上述のような方法によれば、情報を記録した回折格子は肉眼で回折光を観察することができてしまうため、情報が記録してあることを判別できなくするためには、回折格子の大きさを微小なものとする必要があり、また、情報を記録した部分を隠蔽するには回折格子パターンの配列を考慮する必要がある。
そこで、情報を記録した部分を隠蔽した情報記録媒体として、コレステリック液晶と偏光フィルター等を用いて、肉眼では観察されないパターンを、偏光フィルターを介して観察することで、対象物を識別する方法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開2006−155292号公報
【特許文献2】特開平11−42875号公報
【特許文献3】特開2000−211300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなコレステリック液晶と偏光フィルターを用いた情報記録媒体では、以下のような問題がある。
すなわち、このようなコレステリック液晶によりパターンを記録する方法では、1種類の液晶材料を用いる場合には、液晶のある部分とない部分での二値による情報の記録となり、偏光フィルターによりコードを確認できれば情報の読取りは比較的容易となりセキュリティ性は低下してしまう。
【0006】
また、異なる回転方向の偏光をもった2種類の液晶材料を用いて情報を記録する場合には、液晶のない部分と右回転の偏光部分と、左回転の偏光部分を組み合わせた情報の記録が可能となるが、この場合には、記録するパターンを液晶の印刷、または塗布により行うため、異なる種類の液晶を微小な領域で精度良く塗り分けることが困難となる。
すなわち、多くの情報を記録するには、記録する領域が大きくなり、単純なパターンを組み合わせた記録方法となるため、記録した情報が判別しやすく、容易に偽造することが可能となってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、液晶材料を用いて微小な領域に多くの情報を記録することが可能であり、目視では所定の秘匿情報を記録した領域を判別することが困難であって、より一層高度な偽造防止効果を奏し、確実に記録情報の読取りを行うことが可能である、情報記録媒体及び情報記録媒体に記録された情報を読取る装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明の情報記録媒体は、入射した光の偏光性を維持しつつ散乱性を付与して反射する散乱反射層と、前記散乱反射層上に設けられ液晶分子を所望の方向に配向させる配向層と、前記配向層上に設けられ、液晶分子を有し該液晶分子が前記配向層によって配向されることで視認可能な潜像を形成する像形成層とを備え、前記配向層は、前記潜像を構成する複数の単位像要素に対応した大きさの複数の領域に分割された複数の単位配向要素で構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の情報記録媒体において、前記配向層は光透過性を有し、前記単位配向要素は前記像形成層との界面に凹凸によって形成された互いに略平行する複数の溝からなる溝パターンを有し、前記単位配向要素に入射する光は偏光性を維持した状態で前記像形成層に射出されることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2記載の情報記録媒体において、前記単位配向要素の厚さ方向で前記溝パターンが形成された面と反対の面は平面で形成され、前記単位配向要素の平面方向に基準線を延在して設け、この基準線に対して前記複数の溝の長手方向がなす角度を格子角度とした場合、前記複数の単位配向要素は互いに異なった角度の格子角度を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3何れか1項に記載の情報記録媒体において、前記複数の単位配向要素は、互いに異なる厚さを有することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項2記載の情報記録媒体において、前記溝パターンは回折格子または指向性拡散パターンで構成されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1記載の情報記録媒体において、前記散乱反射層が微小な凹凸を有する金属反射膜もしくは微小な凹凸を有する一層または多層の誘電体膜であることを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1記載の情報記録媒体において、前記像形成層は光透過性を有し、該像形成層に入射する光は偏光性を維持した状態で射出することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項1または7記載の情報記録媒体において、前記像形成層が光重合性のネマティック液晶からなり、前記液晶分子が前記溝パターンの溝に沿って配向したのち、重合によって配向が固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項9の発明は、請求項1記載の情報記録媒体において、前記像形成層の前記配向層と反対の面に形成され、前記像形成層の表面を保護する保護層を有することを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1記載の情報記録媒体において、前記像形成層と前記配向層は光透過性を有し、前記散乱反射層と前記配向層の間に着色層が設けられ、前記着色層の色と前記像形成層から射出する色の組み合わせにより情報を記録したことを特徴とする。
【0013】
請求項11の発明は、情報読取り装置であって、請求項1乃至10に何れか1項に記載の情報記録媒体と、前記情報記録媒体に照明光を照射する照明手段と、前記像形成層の像を読取るための偏光子と、前記複数の領域の配列を検知する検知手段と、前記検知手段によって検知した情報に基づいて情報を読取る手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項12の発明は、請求項11記載の情報読取り装置において、前記検知手段は、前記情報記録媒体が延在する仮想平面に対して傾斜した方向から偏光子を介して観察した際に現れる、前記複数の領域の像の色を検知するように構成されていることを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項11記載の情報読取り装置において、前記情報を読取る手段は、前記情報記録媒体が延在する仮想平面に対して傾斜した方向から偏光子を介して観察した際に現れる、前記複数の領域の像の色を前記検知手段で検知し、かつ、その状態を維持しつつ前記情報記録媒体を前記仮想平面と直交する仮想軸回りに回転させ前記像の色の変化と回転角度情報を前記検知手段で検知し、前記検知した色の変化と回転角度情報に基づいて情報を読取るように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項14の発明は、請求項11記載の情報読取り装置において、前記照明手段は複数個有し、前記偏光子は直線偏光板であり、前記直線偏光板は前記情報記録媒体と前記複数の照明手段との中間に複数配置され、前記複数の直線偏光板の透過軸角度が異なり、前記検知手段と前記情報記録媒体との中間に直線偏光板が配置されていることを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項14記載の情報読取り装置において、前記照明手段は2つ有し、前記情報記録媒体と前記2つの照明手段との中間に前記直線偏光板が2つ配置され、前記直線偏光板の透過軸角度が直交し、前記検知手段と前記情報記録媒体との中間に配置した直線偏光板の透過軸角度が、前記情報記録媒体と前記2つの照明手段との中間に配置された前記直線偏光板のうち1つの透過軸角度と等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、液晶分子が配向層により配向することにより、目視では所定の秘匿情報を記録した領域を判別することが困難な情報記録媒体を提供できる。
また、請求項2の発明によれば、配向層の配向方向をより精度良く複雑なのもとすることができ、微小な領域に多くの情報を記録することが可能となり、一層高度な偽造防止効果をもった情報記録媒体を提供できる。
【0017】
また、請求項3の発明によれば、配向に複雑な格子角度からなる複数の溝パターンを用いることが可能であり、格子角度が異なることで観察する色が異なるため、情報を記録した領域を判別することがより一層困難となり、より一層高度な偽造防止効果をもった情報記録媒体を提供できる。
また、請求項4の発明によれば、単位配向要素の膜厚が互いに異なることで、その上に形成される像形成層の厚みが異なり、結果、観察する色が異なることになるため、複数の溝パターンの格子角度による情報記録に加え、より複雑な記録方法とすることが可能になるとともに、情報を記録した領域を判別することがより一層困難となり、さらに一層高度な偽造防止効果をもった情報記録媒体を提供できる。
【0018】
また、請求項5の発明によれば、回折格子の作成プロセスにより複数の溝パターンを作成可能となるため、高精度で複雑な複数の溝パターンを安定して作成することが可能となる。
また、請求項6の発明によれば、偏光子を介したときに読取りできる像が明るくなり、色のコントラストも良くなり、安定した情報読取りが可能となる。
また、請求項7の発明によれば、偏光子を介したときに読取りできる像が明るくなり、色のコントラストも良くなることから、安定した情報読取りが可能となる。
【0019】
また、請求項8の発明によれば、複数の溝パターンからなる配向層に、液晶分子により潜像形成層を形成することができ、ネマティック液晶の配向と偏光子により、従来にはない色の表現が可能になり、この色を用いて情報を記録することで、さらに一層高度な偽造防止効果をもった情報記録媒体を提供できる。
また、請求項9の発明によれば、保護層により液晶層の劣化や傷付を抑えることが可能となり、より確実で安定した情報読取りが可能な情報記録媒体を提供できる。
また、請求項10の発明によれば、着色層の色と像形成層の射出する色を用いることにより、従来にはない色による情報記録を実現することができ、より一層高度な偽造防止効果をもった情報記録媒体を提供できる。
【0020】
また、請求項11の発明によれば、像形成層に記録した配列から確実に記録した情報の読取りを行うことが可能な情報読取り装置を提供できる。
また、請求項12の発明によれば、像形成層の像の色の組み合わせから、記録した情報を読取ることが可能な情報読取り装置を提供できる。
また、請求項13の発明によれば、像形成層の回転することで射出する色の組み合わせから、記録した情報を読取ることが可能となり、より一層高度なセキュリティ性をもった情報読取り装置を提供できる。
【0021】
また、請求項14の発明によれば、複数の直線偏光板の透過軸角度の領域を、直線偏光板または情報記録媒体を回転することなく、検知することが可能となり、より一層高度なセキュリティ性をもった情報読取り装置を提供できる。
また、請求項15の発明によれば、直交した直線偏光板の透過軸角度を切替えて検知することで、直線偏光板または情報記録媒体を回転することなく、高速で確実に検知することが可能となり、より一層高度なセキュリティ性をもった情報読取り装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における情報記録媒体の層構成の一例を示す断面図である。
【0023】
図1に示す情報記録媒体は、基材11と、この基材11上に設けられた散乱反射層12と、この散乱反射層12上に積層され、液晶分子を所望の方向に配向させる配向層13と、この配向層13上に形成され液晶分子を有する像形成層14を備え、配向層13の像形成層14との界面には、凹凸によって形成された互いに略平行する複数の溝パターン15が形成されており、像形成層14の液晶分子が前記複数の溝パターン15に沿って配向されることで像形成層14の方向から偏光フィルムを介して観察した時のみ視認可能な潜像を形成するようになっている。
【0024】
ここで、基材11としては、情報を光学的に読取る際に、基材を透過させて読取りを行わないため、光を透過する必要がなく、このため複屈折などを考慮する必要もなく、比較的安価な材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることが可能である。
【0025】
散乱反射層12は、入射する光の偏光性を略維持し、散乱性を付与して反射させるものである。すなわち、偏光を乱さない金属反射膜に微小な凹凸を形成することにより散乱性が付与される。
このような散乱性金属反射層は、たとえば、微小な表面凹凸構造にアルミニウム等の金属を蒸着することによって得られる。つまり基材11の表面に微細な凹凸構造の加工を施し、アルミニウム等の金属を蒸着して作製する。
【0026】
また、散乱反射層12は、微小な凹凸を有する一層または多層の誘電体膜であってもよい。すなわち、この場合、散乱反射層12は、偏光を乱さない一層または多層の誘電体膜に微小な凹凸によって散乱性を付与することで提供される。
このような散乱性誘電体層は、たとえば、微小な表面凹凸構造に硫化亜鉛等の高屈折率材料とフッ化マグネシウム等の低屈折率材料を多層蒸着することによって得られる。
【0027】
配向層13の像形成層14との界面には、長手方向が揃いかつ前記長手方向と交差する方向に平行に配列した複数の凹部と凸部によって形成された複数の溝パターン15が設けられている。
この場合、配向層13に形成される複数の溝パターン15は、回折格子などのように格子状の溝を持った構造で、回折格子のように周期的な構造であってもよく、また、ラビング処理などにより形成された凹凸または、指向性拡散パターンのようにある程度ランダムであってもよい。
ただし、指向性拡散パターンとは、格子状の溝構造の長手方向がある程度ランダムでありながらも平均的には一方向に配置されている構造のことである。
この長手方向の角度のばらつきとしては、5度以下であり、望ましくは3度以下である。
【0028】
また、配向層13に形成される複数の溝パターン15としては、ピッチが0.1〜10μm、深さが0.05〜1μmであることが望ましい。
また、配向層13に形成される複数の溝パターン15の凹凸の断面形状は、この実施の形態では三角波形状を呈する場合について説明したが、これに限らず、正弦波形状、方形波形状、矩形波形状、台形波形状、鋸波形状などでも良い。
【0029】
次に、液晶材料からなる像形成層14は、配向層13上に形成すると、液晶分子は、配向層13の複数の溝パターンの凹凸に沿って配向し、紫外線ランプ等で光照射することにより重合されて固定される。なお、液晶材料としては、光重合タイプのネマティック液晶が望ましい。
このときの配向方向は、溝方向と液晶分子の長軸方向が一致するような配向となっている。このように液晶分子が複数の溝パターンの凹凸に沿って配向することで、像形成層14の方向から直線偏光フィルムを介して観察したときにのみ視認可能な潜像を形成することができる。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態における情報記録媒体の複数の溝パターンの構成例を示す平面図である。
この図2において、情報記録媒体20の配向層13は、前記潜像を構成する複数の単位像要素に対応した大きさの複数の領域に分割された微小な複数の単位配向要素(格子要素)21〜25で構成されている。この単位配向要素21〜25は基板表面(図示せず)に配置されることにより構成される。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態における情報記録媒体の配向層の単位配向要素の一例を示す平面図である。
各単位配向要素21は、図3に示すように、長手方向が揃いかつ前記長手方向と交差する方向に規則的に配列した複数の溝パターンKからなる格子で構成され、平面形状は正方形又は方形をしており、正方形の一辺、又は方形の長辺の長さHとしては1mm以下(例えば、0.5mm)である。
なお、各単位配向要素21の平面形状は正方形又は方形に限らず、円形又は楕円形でも良い。この場合、円形の直径、又は楕円形の長径は、例えば1mm以下である。
ここで、前記単位配向要素21が延在する平面上に延在する基準線Lに対して、複数の溝パターンの長手方向がなす角度を格子角度θとし、複数の溝パターンの間隔を格子間隔hとする。
したがって、図2に示す情報記録媒体20の単位配向要素22、単位配向要素23、単位配向要素24、単位配向要素25の格子角度θは、それぞれ、45°、135°、90°、0°の4種類の格子角度となっている。また、これら格子要素の格子間隔hは、すべて等しい値となっている。
【0032】
次に、情報記録媒体20の配向層13(図1に示す)上に、光重合タイプのネマティック液晶材料を塗布すると、液晶分子は、配向層13の複数の溝パターン15の溝に沿って配向し、紫外線ランプ等で光照射することにより重合されて固定され像形成層14が形成される。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態における情報記録媒体を、偏光子を用いて観察した場合の一例を示す平面図である。ここでは、前述したように液晶材料からなる像形成層14を形成した情報記録媒体20を、直線偏光フィルム41を介して情報記録媒体20に対してほぼ垂直方向から観察した状態を示す。直線偏光フィルム41の透過軸の方向としては、透過軸方向42としている。
【0034】
ここで、液晶は格子角度θに沿って配向するため、情報記録媒体20の単位配向要素24、単位配向要素25は、その配向角度θがそれぞれ、90°、0°であり、単位配向要素24の配向角度は直線偏光フィルム41の透過軸方向42と45°で交差し、同じく、単位配向要素25の配向角度も透過軸方向42と45°で交差することになる。
このような情報記録媒体20をほぼ垂直方向から観察した場合、単位配向要素24、単位配向要素25の各領域は互いに観察可能で、ほぼ同じ色で観察される。この理由を以下に説明する。
【0035】
図5は、本発明の実施の形態における情報記録媒体を、偏光子を用いて観察した場合の一例を示す断面図である。
図5に示すように、直線偏光フィルム41に白色光を入射光51として入射させる。これにより、直線偏光フィルム41を透過した直線偏光は、像形成層14および配向層13を透過して、配向層13と散乱反射層12のとの界面で反射される。ここで白色光とは、すべての波長の単位波長幅当たりの光のエネルギーが等しい連続スペクトル光をさす。
ここで、散乱反射層12は表面に微細な凹凸構造の加工を施してあるため、この反射光は散乱反射光となり、再度配向層13および像形成層14を透過する。
【0036】
像形成層14は、配向層13に設けられた複数の溝パターン15によって液晶分子が配向しているために異方性を備えている。従って、直線偏光フィルム41を透過して直線偏光となった光は像形成層14の液晶を透過するときに一定の位相差が与えられ、その波長により円偏光、あるいは楕円偏光となる。
この円偏光/楕円偏光は偏光性を保ったまま散乱反射層12で反射され、再度像形成層14の液晶を透過するときにも、さらに位相差が与えられる。そして、直線偏光フィルム41を透過することができる成分のみが情報記録媒体20から射出光52として射出し観察することができる。
【0037】
例えば、理論上、像形成層14の液晶を往路と復路で透過した際に、それぞれπ/2の位相差を与えられた特定の波長(像形成層14の液晶の透過によって与えられる位相差が1/4波長に一致する特定の波長)は、情報記録媒体20から射出する際に直線偏光フィルム41の透過軸方向42と直交する偏光面を有する直線偏光となってしまうため、この直線偏光フィルム41を透過することができない。
【0038】
ところで、液晶中を通る光線の内、偏光方向を異にする二つの光線間の位相差(リターデーション)Reは、下記式(1)より明らかなように、液晶の膜厚dと、複屈折Δnに依存する。
Re=Δnd・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ここで、Δn=ne−noである。
neは液晶分子の配向方向についての屈折率である異常光線屈折率、noは液晶分子の配向方向と直交する短軸方向についての屈折率である常光線屈折率である。
液晶層を一対の直線偏光フィルムで挟み、各偏光フィルムの透過軸方向を液晶の配向方向と45°の角度をなすように配置した場合、Ioを入射光の強度、λはその波長とすると、透過光強度Iは、下記式(2)で表すことができる。
I=Io×sin(Re×π/λ)・・・・・・・・・・・・・(2)
式(2)から明らかなように、入射する光の波長が変化すると、直線偏光フィルムを透過する光量が異なり、様々な波長を含む白色光を入射すると、各波長で射出する強度が異なるため、透過光のスペクトルが変化することになる。
【0039】
また、リターデーションReが変化しても、透過光のスペクトルが変化する。
つまり、直線偏光フィルムの透過軸方向と液晶の配向方向が変化した場合と、液晶の膜厚もしくは液晶内を透過する光路長が変化した場合にも、透過光のスペクトルが変化する。
このことから、情報記録媒体20に対してほぼ垂直方向から観察した場合に、単位配向要素24、単位配向要素25の各領域は、液晶による透過光のスペクトルの変化により互いに観察可能で、また、どちらの領域も直線偏光フィルム41の透過軸方向42と45°で交差しているため、これらの領域ではリターデーションReは等しくなり、ほぼ同じ色、例えば灰色で観察される。
【0040】
ところで、情報記録媒体20を直線偏光フィルム41がない状態で観察した場合には、偏光のない白色光は、像形成層14および配向層13を透過して、配向層13と散乱反射層12のとの界面で反射され、散乱反射層12の表面の微細な凹凸構造の加工により、この反射光は散乱反射光となり、再度配向層13および像形成層14を透過して情報記録媒体20から射出する。
ここで、入射した白色光は像形成層14の液晶を透過する際にいくらかの位相差(リターデーション)を与えられるが、人間の目ではこの位相差を知覚することはできない。
従って、情報記録媒体20から射出した色を観察すると、本来の散乱反射層12を白色光で観察した色とほぼ等しい色で観察され、銀白色に見えることになる。
【0041】
次に、情報記録媒体20の単位配向要素22、単位配向要素23の各領域については、液晶の配向角度θが、それぞれ、45°、135°である。また、単位配向要素22の配向角度は直線偏光フィルム41の透過軸方向42と等しく、単位配向要素23の配向角度は透過軸方向42と直交している。
【0042】
直線偏光フィルム41の透過軸方向42は、単位配向要素22の液晶の遅軸に平行であるため、液晶に入射する直線偏光成分は、同じ複屈折の液晶層を同じ光路長進行するため、リターデーションを与えられない。
同様に透過軸方向42は、単位配向要素23の液晶の速軸に平行であるため、液晶に入射する直線偏光成分は、同じ複屈折の液晶層を同じ光路長進行するため、リターデーションを与えられない。
従って、情報記録媒体20の単位配向要素22、単位配向要素23の各領域から射出した色を観察すると、本来の散乱反射層12を白色光で観察した色とほぼ等しい色で観察され、銀白色に見えることになる。
【0043】
以上説明したように、情報記録媒体20に対してほぼ垂直方向から観察した場合に、単位配向要素24、単位配向要素25の各領域は灰色で観察され、単位配向要素22、単位配向要素23の各領域は銀白色で観察される。
このため、図2に示した配向角度の配列とした情報記録媒体20を、直線偏光フィルム41により観察した場合、図4に示すように観察できる領域の配列により、「A」という文字を表すことができる。
この実施の形態では、情報記録媒体20は、4種類の配向角度からなる、縦6個、横6個の36個の単位配向要素が基板表面に配置され、文字が構成されている。
【0044】
このように、異なる配向角度の、複数の領域の配列により、秘匿情報を記録しておくことで、通常の白色光下では情報を記録してある領域を認識できず、直線偏光フィルムを介してこの領域を観察することで、記録した秘匿情報をデータとして読取ることが可能となる。
また、記録する秘匿情報としては、例えば一般的な2次元コード等を用いて記録したり、さらに、秘匿情報の二値データである「1」または「0」などの信号を、予め決められた独自の規則、方法により秘匿情報を空間的配列に変換するようにして構成することで、より一層高度な偽造防止効果をもたせることが可能となる。
【0045】
図6は本発明の実施の形態における情報記録媒体を、偏光子を用いて傾斜して観察した場合の一例を示す平面図である。
ここでは、前述したように液晶材料からなる像形成層14を形成した情報記録媒体20を、直線偏光フィルム41を介して情報記録媒体20に対して傾斜した方向から観察した状態を示す。直線偏光フィルム41の透過軸の方向としては、透過軸方向42としている。
ここで、情報記録媒体20の各領域の配向方向の構成は、図4に示した構成と同じにし、観察する傾斜方向は配向方向0°方向を軸として傾斜した方向とする。
【0046】
図6に示すように、情報記録媒体20に対して傾斜した方向から観察した場合、格子要素24、格子要素25の各領域は、その配向角度θが、それぞれ90°、0°であり、どちらの領域も直線偏光フィルム41の透過軸方向42と45°で交差しているため、液晶によるリターデーションが発生する。
また、図5に示すように直線偏光フィルム41に白色光を入射光51として入射させ、これを透過した直線偏光は、像形成層14および配向層13を透過し、配向層13と散乱反射層12のとの界面で反射される。
このとき、観察方向が傾斜方向であるため、観察する光は射出光53を観察することになるため、ほぼ垂直方向から観察した場合より、液晶を透過する光路長が長くなり、リターデーションが大きくなる。
このことから、ほぼ垂直方向から観察した場合より、傾斜して観察した場合の方が、各波長でのリターデーションによる強度への影響が大きくなり、より濃い色を呈することになる。
【0047】
また、単位配向要素24は液晶分子の長軸方向から観察したことになり、単位配向要素25は液晶分子の短軸方向から観察したことになり、これにより、傾斜して観察した場合、単位配向要素24と単位配向要素25の複屈折性の変化が互いに異なることになり、それぞれ異なった色で観察される。例えば、単位配向要素24は赤色、単位配向要素25は緑色となる。
また、情報記録媒体20の単位配向要素22、単位配向要素23の各領域から射出した色を傾斜した方向から観察した場合には、ほぼ垂直方向から観察した場合と同様に、各領域ではリターデーションを与えられないため、本来の散乱反射層12を白色光で観察した色とほぼ等しい色で観察され、銀白色に見えることになる。
【0048】
以上説明したように、情報記録媒体20に対して傾斜した方向から観察した場合に、単位配向要素24は赤色、単位配向要素25は緑色で観察され、単位配向要素22、単位配向要素23の各領域は銀白色で観察される。
このため、図2に示した配向角度の配列とした情報記録媒体20を、直線偏光フィルム41により傾斜した方向から観察した場合には、図6に示すように観察できる領域の配列により、「A」という文字を表すことができ、色については赤と緑が市松(交互に配置された)柄となる。
このように、傾斜した方向から観察することで、秘匿情報を複数の色で記録することが可能となり、この色の情報を読取ることで記録する情報量をより多くすることができ、さらに一層高度な偽造防止効果をもたせることが可能となる。
【0049】
次に、本発明にかかる情報読取り装置の実施の形態について、図7を参照して説明する。
図7は、本実施の形態における情報読取り装置の概略構成図である。
この情報読取り装置は、図7に示すように、情報記録媒体20の上面に、像を読取るための偏光子としての直線偏光フィルム41を配置し、照明光を照射する照明手段としての光源71を設け、複数の領域の配列を検知する検知手段としての撮像装置72を設け、検知手段によって検知した情報に基づいて、情報を読取る手段としての情報読取装置73を備えて構成される。
【0050】
光源71としては、白色光の光源とし、たとえばハロゲンランプ、発光ダイオード、蛍光管などで、点光源であても面光源であっても構わない。また、空間上の配置としては、情報記録媒体20の読取り面の全面を照射できる距離で、観察位置を情報記録媒体20に対して傾斜した位置から観察することから、情報記録媒体20の表面反射による光源71の正反射光が、撮像装置72に直接入射しないように考慮する必要がある。
【0051】
撮像装置72はとしては、CCDカメラなどを用いて、画像として撮像する。ここでは色を判断するためカラーのカメラの必要がある。照明光源71により照明された情報記録媒体20は、直線偏光フィルム41を介して観察され、撮像装置72により撮像し、撮像した画像データを情報読取装置73に入力し、画像解析などの手段によって、記録してあるデータより秘匿情報を読取ることができる。
【0052】
ここで、情報記録媒体20の配向角度の配列としては図2に示したものとし、直線偏光フィルム41の配置方向としては透過軸方向42の方向とする。これにより、撮像装置72により撮像される画像としては、単位配向要素24は赤色、単位配向要素25は緑色で撮像され、単位配向要素22、単位配向要素23の各領域は銀白色で撮像されることになる。
このことから、撮像装置72が撮像する画像は、図7に示すように観察できる領域の配列により、「A」という文字(横方向で図示)を表すことができ、色については赤と緑が市松(交互に配置された)柄となる。
次に、撮像装置72で撮像した画像データを情報読取装置73に入力し、各々の領域の表示の有無とその色を判断し、その位置情報から記録してある情報を読み出す様にすることができる。これにより、単純な二値画像による2次元コードよりさらに複雑な情報記録方式を提案することができる。
【0053】
図8は、本発明にかかる情報読取り装置の他の例を示す概略構成図である。
この情報読取り装置は、図8に示すように、情報記録媒体20と、照明光を照射する照明手段としての光源80と81を設け、光源80と81の前面には、直線偏光フィルム82と83をそれぞれ配置し、複数の領域の配列を検知する検知手段としての撮像装置84を設け、撮像装置84の前面には直線偏光フィルム85を設け、検知手段によって検知した情報に基づいて、情報を読取る手段としての情報読取装置86を備えて構成される。
【0054】
ここで、直線偏光フィルム82の透過軸は、透過軸方向87方向とし、直線偏光フィルム83の透過軸は、透過軸方向88方向とする。ここで透過軸方向87と透過軸方向88は直交している。
また、直線偏光フィルム85の透過軸は、透過軸方向89方向とし、透過軸方向88と等しく、また、情報記録媒体20の格子要素25の配向方向となす角度は45°としている。
【0055】
また、情報記録媒体20の配向角度の配列は図2に示した場合と同じにし、光源81を点灯し、光源80を消灯すると、撮像装置84により撮像される画像としては、単位配向要素24は赤色、単位配向要素25は緑色で撮像され、単位配向要素22、単位配向要素23の各領域は銀白色で撮像されることになる。
これは、図7で示した読取り方法で撮像した場合と同等な偏光状態となっている。
【0056】
次に、光源80を点灯し、光源81を消灯すると、撮像装置84により撮像される画像としては、単位配向要素24は緑色、単位配向要素25は赤色で撮像され、単位配向要素22、単位配向要素23の各領域は黒で撮像されることになる。
これは、図7で示した読取り方法では、直線偏光フィルム41を透過する光は往路と復路で同じ透過軸を通過するが、光源80で照明する場合は、往路である照明光の偏光方向は前面に配置した直線偏光フィルム82の透過軸である、透過軸方向87方向となり、復路となる偏光方向は撮像装置84の前面に配置した直線偏光フィルム85の透過軸である透過軸方向89の方向となり、この場合には、往路と復路の偏光方向が直交した状態となっている。
【0057】
つまり、ここでは液晶から射出してきた光の偏光方向の光は、直線偏光フィルム85を通過することができず、図7で示した読取り方法では、白色で撮像された単位配向要素22、単位配向要素23の各領域は黒で撮像される。
また、単位配向要素24、単位配向要素25の領域では透過できるスペクトル成分の分布が、直線偏光フィルム85を透過しないことになり、スペクトル分布が反転することになる。
このため、図7で示した読取り方法では、緑色であったものが赤色となり、赤色であったものが緑色で撮像されることになる。
これらの色変化の挙動を用いて、撮像した画像で色を判断し、点灯している光源を切替えることで、色反転が起きる領域を確認して、真偽判定を行うようにすることで、より複雑な情報記録方式を提案することができる。
【0058】
次に、本発明にかかる情報記録媒体の製造方法について説明する。
配向層に形成する複数の溝パターンを作製する方法としては、回折格子の作製方法を用いることができる。まず、原盤を製造する。原盤は、基材上にレジストを塗布し、このレジスト層を多数の領域に区分して、その領域ごとにレジスト層表面に回折格子の凹凸を設ける。この凹凸は、周知のレーザー光による二光束干渉法または電子線描画法によって可能である。
【0059】
二光束干渉法による場合には、前記レジストとしてフォトレジストを使用し、電子線描画法による場合にはEBレジストを使用する必要がある。
なお、この凹凸は、情報記録媒体の配向方向を構成するものであるから、予めその配向方向を設計する必要がある。
そして、得られた原盤から、その表面の凹凸を反転する工程を繰り返し、実用版を製造する。この実用版は、前記原盤の凹凸を正確に反映したものである。
【0060】
一方、基材上に散乱性金属反射層を形成する。基材には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスティックフィルムを用い、表面に微小な凹凸構造を付与し、アルミニウム等の金属により、反射層を真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって設ける。
【0061】
次に、配向層となる樹脂を塗布する。この樹脂としては透明性の高い樹脂が好ましく、例えば、アクリル系樹脂が使用できる。
そして、前記実用版を熱圧して、その表面の凹凸を配向層に転写することで複数の溝パターンを成形する。
次に、この配向層表面に光重合タイプのネマティック液晶材料を塗布し、複数の溝パターンに液晶分子を配向させ、さらに紫外線ランプ等で光照射することにより重合させて固定することで情報記録媒体を得ることができる。
【0062】
上述したように、本実施の形態に係る情報記録媒体においては、上記のような作用により、液晶材料を用いて微小な領域に、多くの情報を記録することが可能であり、目視では所定の秘匿情報を記録した領域を判別することが困難であって、より一層高度な偽造防止効果を奏し、確実に記録情報の読取りを行うことが可能である、情報記録媒体、及び情報記録媒体に記録された情報を安定して読取る装置を提供することができる。
【0063】
また、本発明においては、複数の単位配向要素21〜25を互いに異なる厚さにすることができる。
このように単位配向要素の厚さを異ならしめることにより、その上に形成される像形成層の厚みが変化し、光路長が変化するため、観察する色が異なることになる。従って、複数の溝パターンの格子角度による情報記録に加え、より複雑な記録方法とすることが可能になるとともに、情報を記録した領域を判別することがより一層困難となり、さらに一層高度な偽造防止効果をもった情報記録媒体を提供できる。
【0064】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態における情報記録媒体の層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における情報記録媒体の複数の溝パターンの構成例を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態における情報記録媒体の配向層の格子要素の一例を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態における情報記録媒体を、偏光子を用いて観察した場合の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における情報記録媒体を、偏光子を用いて観察した場合の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における情報記録媒体を、偏光子を用いて傾斜して観察した場合の一例を示す平面図である。
【図7】本発明にかかる情報読取り装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明にかかる情報読取り装置の他の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
K……溝パターン、H……長辺の長さ、h……格子間隔、θ……格子角度、11……基材、12……散乱反射層、13……配向層、14……像形成層、20……情報記録媒体、21、22、23、24、25……単位配向要素、41……直線偏光フィルム、42……透過軸方向、51……入射光、52、53……射出光、71、80、81……光源、72、84……撮像装置、73、86……情報読取装置、82、83、85……直線偏光フィルム、87、88、89……透過軸方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光の偏光性を維持しつつ散乱性を付与して反射する散乱反射層と、
前記散乱反射層上に設けられ液晶分子を所望の方向に配向させる配向層と、
前記配向層上に設けられ、液晶分子を有し該液晶分子が前記配向層によって配向されることで視認可能な潜像を形成する像形成層とを備え、
前記配向層は、前記潜像を構成する複数の単位像要素に対応した大きさの複数の領域に分割された複数の単位配向要素で構成されている、
ことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記配向層は光透過性を有し、前記単位配向要素は前記像形成層との界面に凹凸によって形成された互いに略平行する複数の溝からなる溝パターンを有し、前記単位配向要素に入射する光は偏光性を維持した状態で前記像形成層に射出されることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記単位配向要素の厚さ方向で前記溝パターンが形成された面と反対の面は平面で形成され、前記単位配向要素の平面方向に基準線を延在して設け、この基準線に対して前記複数の溝の長手方向がなす角度を格子角度とした場合、前記複数の単位配向要素は互いに異なった角度の格子角度を有していることを特徴とする請求項2記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記複数の単位配向要素は、互いに異なる厚さを有することを特徴とする請求項1乃至3何れか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記溝パターンは回折格子または指向性拡散パターンで構成されていることを特徴とする請求項2記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記散乱反射層が微小な凹凸を有する金属反射膜もしくは微小な凹凸を有する一層または多層の誘電体膜であることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記像形成層は光透過性を有し、該像形成層に入射する光は偏光性を維持した状態で射出することを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記像形成層が光重合性のネマティック液晶からなり、前記液晶分子が前記溝パターンの溝に沿って配向したのち、重合によって配向が固定されていることを特徴とする請求項1または7記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記像形成層の前記配向層と反対の面に形成され、前記像形成層の表面を保護する保護層を有することを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記像形成層と前記配向層は光透過性を有し、前記散乱反射層と前記配向層の間に着色層が設けられ、前記着色層の色と前記像形成層から射出する色の組み合わせにより情報を記録したことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項11】
請求項1乃至10に何れか1項に記載の情報記録媒体と、
前記情報記録媒体に照明光を照射する照明手段と、
前記像形成層の像を読取るための偏光子と、
前記複数の領域の配列を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて情報を読取る手段を備える、
ことを特徴とする情報読取り装置。
【請求項12】
前記検知手段は、前記情報記録媒体が延在する仮想平面に対して傾斜した方向から偏光子を介して観察した際に現れる、前記複数の領域の像の色を検知するように構成されていることを特徴とする請求項11記載の情報読取り装置。
【請求項13】
前記情報を読取る手段は、前記情報記録媒体が延在する仮想平面に対して傾斜した方向から偏光子を介して観察した際に現れる、前記複数の領域の像の色を前記検知手段で検知し、かつ、その状態を維持しつつ前記情報記録媒体を前記仮想平面と直交する仮想軸回りに回転させ前記像の色の変化と回転角度情報を前記検知手段で検知し、前記検知した色の変化と回転角度情報に基づいて情報を読取るように構成されていることを特徴とする請求項11記載の情報読取り装置。
【請求項14】
前記照明手段は複数個有し、前記偏光子は直線偏光板であり、前記直線偏光板は前記情報記録媒体と前記複数の照明手段との中間に複数配置され、前記複数の直線偏光板の透過軸角度が異なり、前記検知手段と前記情報記録媒体との中間に直線偏光板が配置されていることを特徴とする請求項11記載の情報読取り装置。
【請求項15】
前記照明手段は2つ有し、前記情報記録媒体と前記2つの照明手段との中間に前記直線偏光板が2つ配置され、前記直線偏光板の透過軸角度が直交し、前記検知手段と前記情報記録媒体との中間に配置した直線偏光板の透過軸角度が、前記情報記録媒体と前記2つの照明手段との中間に配置された前記直線偏光板のうち1つの透過軸角度と等しいことを特徴とする請求項14記載の情報読取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−299130(P2008−299130A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145834(P2007−145834)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】