情報読取用撮像装置
【課題】情報読取用撮像装置における画像処理の処理時間を短縮し、かつ所望のフィルタ処理を実現できるようにすることである。
【解決手段】液晶パネル22は、撮影対象物27からの光の入射範囲を制限する絞り部22aと、絞り部22aで入射範囲が制限された入射光に対して、位置より異なる透過特性を与えるフィルタ部22bを有する。制御部23は、液晶パネル22の個々の画素のオン時間とオフ時間を制御して、位置による異なる透過率特性を持つ光学フィルタを実現する。
【解決手段】液晶パネル22は、撮影対象物27からの光の入射範囲を制限する絞り部22aと、絞り部22aで入射範囲が制限された入射光に対して、位置より異なる透過特性を与えるフィルタ部22bを有する。制御部23は、液晶パネル22の個々の画素のオン時間とオフ時間を制御して、位置による異なる透過率特性を持つ光学フィルタを実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物から情報を読み取るための情報読取用撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の媒体に印刷された情報を読み取るために撮像装置が用いられる。図1及び図2は、紙などの媒体に印刷されたバーコード等の情報を読み取る撮像装置11の光学系の構成を示す図である。
【0003】
図1及び図2に示すように撮像装置11は、絞り12と、レンズ13(またはレンズモジュール16)と、イメージセンサ14とを有する。
撮影対象物15で反射された光は、絞り12により光路が制限され、レンズ13を通りイメージセンサ14で受光される。
【0004】
媒体に印刷された情報を撮像装置11により読み取る場合には、レンズ13とイメージセンサ14との距離を調整し、結像面をイメージセンサ14の表面に合致させることで鮮明な画像を取得するようにしている。
【0005】
しかしながら、鮮明な画像は情報量が多い反面、媒体の表面の凹凸などによる信号の変化が、本来の画像信号に対してノイズとして重畳されるという問題点がある。
図3(A)、(B)は、撮影対象物15の一例を示す図である。図3(A)に示すような紙などに印刷された画像を撮像装置11で読み取る場合には、紙面の細かい凹凸による信号の変化が、本来の画像信号にノイズとして乗ってしまう。
【0006】
図3(B)に示すような、手のひら内部の静脈を読み取る場合にも、静脈の周囲の体組織からの散乱光がノイズとして本来の画像信号に乗ってしまう、そのため、ローパスフィルタ(LPF)処理等の演算を施してノイズを除去する必要があった。
【0007】
図4(A)は、撮影対象物の任意のライン(例えば、図3(A)のラインA)のノイズが重畳された画像信号を示し、図4(B)は、ローパスフィルタ(LPF)処理によりそのノイズを除去した後の画像信号を示している。
【0008】
図5は、従来の撮像装置のイメージセンサ14の出力を示す図である。図5は、撮影対象物体上の任意の1点に対するイメージセンサ14の任意の画素の出力信号のレベルの分布(点像分布)を示しており、鮮明な画像が得られるよう結像面がセンサ面に合致しているため、出力信号のレベルの分布は、実質的に1画素(中心画素)に集中した波形となる。
【0009】
上述したように、撮像装置11で取得される画像を鮮明にすればするほど、媒体表面の凹凸などにより画像信号に高周波のノイズが乗ってしまう。
そこで、従来は、イメージセンサ14から出力される画像信号に対してローパスフィルタ処理の演算を施し高周波のノイズを除去していた。
【0010】
図6(A)、(B)は、ローパスフィルタ処理で用いられるガウスフィルタと移動平均フィルタの演算行列を示す図である。
図6(A)の3×3の演算行列の場合について説明すると、注目画素Q(a,b)は、左上の取得画素P(a−1,b+1)に「0.063」を乗算した値と、1つ上の取得画素P(a,b+1)に「0.125」を乗算した値と、右上の取得画素P(a+1,b+
1)に「0.063」を乗算した値と、左隣の取得画素P(a−1,b)に「0.125」を乗算した値と、取得画素P(a,b)に「0.25」を乗算した値と、右隣の取得画素P(a+1,b)に「0.125」を乗算した値と、左下の取得画P(a−1,b−1)に「0.063」を乗算した値と、1つ下の取得画素P(a,b−1)に「0.125」を乗算した値と、右下の取得画素P(a+1,b−1)に「0.063」を乗算した値の総和として算出される。
【0011】
上記の演算を各画素について行うことでガウスフィルタ処理を施した画像信号を得ることができる。
図6(B)の演算行列も同様であり、注目画素とその周辺の画素に対して、図6(B)に示す演算行列の値を乗算することで、移動平均フィルタ処理を施した画像信号を得ることができる。
【0012】
しかしながら、上記の演算行列を用いたローパスフィルタ処理は、撮像装置で読み取った全画素に対して演算行列の要素数分(例えば、3×3の行列であれば、9回)の演算を行う必要があり、画素数が多い場合には、画像処理の処理時間が長くなるという問題点があった。
【0013】
特許文献1には、CCD撮像素子の前面に光透過率の変化するフィルタ手段を設け、CCCD撮像素子の撮像面に照射される映像光のレベルに応じてフィルタ手段を制御することが記載されている。フィルタ手段として透過型液晶パネルを使用することが記載されている。
【0014】
特許文献2には、光透過率の制御可能なフィルタ素子が多数配列されたフィルタパネルを、電子カメラの光反応素子の前方に配置し、フィルタパネルの任意の部位のフィルタ素子の光透過率を低下させることで、撮影対象物の高輝度部の影響を除去することが記載されている。フィルタパネルは、多数の液晶表示素子で構成されることが記載されている。
【0015】
特許文献3には、入射される1画面の光をn個に分割し、分割した各々の光をn倍に拡大した光をCCDで電気信号に変換し、変換後の信号を1画面の信号に復元することが記載されている。
【0016】
特許文献2には、液晶表示素子の光透過率を部分的に変化させることが記載されているが、その目的は、撮影対象物の高輝度部位によりCCD撮像素子が飽和するのを防止するためのものである。
【特許文献1】特開平6−70225号公報
【特許文献2】特開平6−70225号公報
【特許文献3】特許第3150502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、情報読取用撮像装置において、画像処理の処理時間を短縮し、画像に対して所望のフィルタ処理を施すことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の情報読取用撮像装置は、絞りにより光の入射範囲が制限された入射光に対して、位置により異なる透過率特性を与える透過型空間光変調素子と、前記透過型空間光変調素子の透過率特性を制御する制御部と、レンズと、イメージセンサとを有し、前記レンズの結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるように前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整し、前記透過型空間光変調素子により、位置により異なる透過率特性が与えられた光が前記受光面において所定範囲に広がるようにした。
【0019】
この情報読取用撮像装置によれば、画像処理の処理時間を短縮できると共に、画像に対して光学的に所望のローパスフィルタ処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、情報読取用撮像装置における画像処理の処理時間を短縮できると共に、画像に対して光学的に所望のローパスフィルタ処理を施すことができる。また、画像処理の処理時間を短縮することができるので、例えば、比較的処理速度の遅い安価なCPU等を使用して装置のコストを低減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図7は、第1の実施の形態の情報読取用撮像装置21の構成を示す図である。以下で説明する各実施の形態の情報読取用撮像装置は、1次元または2次元バーコードを読み取るバーコードリーダ、指紋、静脈等を読み取る生体認証装置等に用いることができる。
【0022】
情報読取用撮像装置21は、透過型液晶パネル(透過型液晶装置)22と、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間を制御する制御部23と、レンズ24と、イメージセンサ25とを有する。透過型液晶パネル22は、透過型空間光変調素子(SLM:Spatial Light Modulator)として用いられる。
【0023】
透過型液晶パネル(以下、液晶パネルと呼ぶ)22は、撮影対象物27からの光の入射範囲を制限する絞り部22aと、絞り部22aで入射範囲が制限された入射光に対して位置より異なる透過特性を与えるフィルタ部22bを有する。
【0024】
絞り部22aは、液晶パネル22の周囲の画素をオフ状態にして光を遮蔽しても良いし、液晶パネル22の外周部を金属、樹脂等の遮蔽板で覆っても良い。また、絞り部22aと液晶パネル22を別の部品とし、絞りの開口部に液晶パネル22を挿入する構造にしても良い。
【0025】
制御部23は、CPU等からなり、液晶パネル22の個々の画素(液晶表示素子)のオン時間とオフ時間を制御して、位置による異なる透過率特性を持つ光学フィルタを実現する。
【0026】
イメージセンサ25は、受光面がレンズ24の結像面(結像位置)26より奥側(レンズ24から見て)にくるように配置されている。
図7において、撮影対象物27からの光は広がりながら液晶パネル22に入射する。撮影対象物27の各点の広がり持った光(これを光束と呼ぶ)は、絞り部22aによりレンズ24に入射する光の範囲が制限される。そして、絞り部22aにより入射範囲が制限された光がフィルタ部22bを通過する際に、フィルタ部22bが入射光に対して位置により異なる透過率特性を与えることから、光束の中心から外に向かって所望の特性(例えば、ガウス分布)で光量が連続的に変化する光となる。
【0027】
この光束は、結像面26で結像した後、イメージセンサ25の受光面に向かって広がり、受光面において所定範囲の広がりを持った像となる。これは、結像面26がイメージセンサ25の受光面の奥側(または手前側)になるように、レンズ24とイメージセンサ25の距離が調整されているからである。イメージセンサ25の受光面における像の広がりは、注目画素と近傍の画素にかけて必要なため、光束の中心に対して直径3画素以上の円形の範囲である。
注目画素とその近傍画素の濃度置に対し、注目画素の新しい濃度値を得るために、例えば上記光量分布が直径3画素の場合には、図6(A)に示す3×3ガウスフィルタの演算を代替えできる。逆に7×7、9×9の強度の大きいLPF演算を代替えするためには、上記光量分布は、それぞれ直径7画素、9画素とすればよい。
【0028】
上述した第1の実施の形態は、液晶パネル22の各画素のオン時間、オフ時間を制御することで、液晶パネル22が位置により異なる透過率特性を持つようにする。そして、レンズ24の結像面26がイメージセンサ25の受光面の奥側(または手前側)にくるように調整することで、イメージセンサ25の各画素の出力特性が、各画素を中心として所望の光量分布を有するようにできる。すなわち、液晶パネル22の透過率特性をローパスフィルタの特性にすることで、イメージセンサ25の出力信号に対してローパスフィルタ処理を光学的に施すことができる。
【0029】
従って、従来のようにイメージセンサ25の出力信号に対してローパスフィルタ演算を施す必要が無くなるので、画像処理の処理時間を大幅に短縮できる。画像の処理時間を短縮することができるので、リアルタイム処理が必要なバーコードリーダや生体認証装置に処理速度の遅い安価なCPU等を使用できる。これにより装置のコストを低減できる。
【0030】
また、液晶パネル22のオン時間、オフ時間を変化させることで、あるいは階調制御により透過率特性を変更し、任意のローパスフィルタ特性を得ることができる。
また、第1の実施の形態は、液晶パネル22のフィルタ特性をリアルタイム制御することができるので、同一の撮影対象物27に対する複数回の撮影で、それぞれ異なる特性のローパスフィルタ処理を施すことができ、より高精度の信号処理が可能になる。あるいは、液晶パネル22の全画素をオン状態にして移動平均フィルタを施した画像を取得することもできる。
【0031】
図8は、第2の実施の形態の情報読取用撮像装置31の構成を示す図である。この第2の実施の形態は、レンズからイメージセンサ25に向かう光が光軸と平行となる像側テレセントリック光学系において、結像面26をイメージセンサ25の手前側(図8において、イメージセンサ25の垂直方向上側)に設定した場合の例である。
【0032】
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置31の光学系は、レンズ32、33、34、35と液晶パネル22からなるレンズモジュール36を有する。
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置31も、光学系が複数のレンズからなる点、イメージセンサ25に入射する光が光軸と平行である点を除けば、第1の実施の形態と同じである。
【0033】
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置31も、レンズ35の結像面26が、イメージセンサ25の受光面の手前側(図8のイメージセンサ25の垂直上方向)となるようにイメージセンサ25を配置してある。これにより、撮影対象物27の各点の反射光はイメージセンサ25の受光面で一定範囲に広がり、かつイメージセンサ25の各画素の入射光量は液晶パネル22の透過率特性により制限されたものとなる。
【0034】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、液晶パネル22の個々の画素のオン時間、オフ時間を制御することで、撮影対象物27からの光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。従って、イメージセンサ25の出力信号に対してローパスフィルタ演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。また、液晶パネル22の各画素のオン時間、オフ時間を変化させて透過率特性を変更することで任意特性のローパスフィルタを光学的に実現できる。
【0035】
また、第2の実施の形態は、光学系が像側テレセントリックとなっているので、レンズ35とイメージセンサ25との距離を変化させてイメージセンサ25上の像の広がりを調整する際に、すなわち、ローパスフィルタの強さ(ノイズ除去レベルの大きさ)を調整する際に、イメージセンサ25の出力画像の大きさが変化しない。従って、画像サイズを一定にしてローパスフィルタの強さのみを単独で調整できるという効果もある。
【0036】
図9は、第3の実施の形態の情報読取用撮像装置41の構成を示す図である。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と基本的には同じであり、異なる点は、結像面26がイメージセンサ25の奥側(レンズ35から見て)にくるようにした点である。
【0037】
この第3の実施の形態は、上述した第2の実施の形態と同様に、イメージセンサ25に入射する光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができるので、ローパスフィルタ演算が不要となり、画像処理に要する時間を短縮できる。
【0038】
図10は、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間を制御する場合のオン・オフパターンとオン時間を示す図である。以下、液晶パネル22が6×6の画素を有する場合を例に取り説明する。
【0039】
この例では、液晶パネル22の透過率特性をガウス分布にするために4種類のオン・オフパターンを定義している。
図10に示す、オン・オフパターン(a)は、全画素を全てオン状態にする駆動パターンである。このオン・オフパターン(a)で、時間0≦t<t1の間、液晶パネル22が駆動される。時間t1は、例えば、全露光時間の1/6である。
【0040】
オン・オフパターン(b)は、四隅の画素をオフ、中央部の画素をオン状態にする駆動パターンである。このオン・オフパターン(b)で時間t1≦t<t2の間、液晶パネル22が駆動される。時間t2は、例えば、全露光時間の3/6である。
【0041】
オン・オフパターン(c)は、オン・オフパターン(b)より、さらに周辺部の画素をオフ状態にする駆動パターンである。このオン・オフパターン(c)で、時間t2≦t<t3の間、液晶パネル22が駆動される。時間t3は、例えば、全露光時間の5/6である。
【0042】
オン・オフパターン(d)は、中央部の4画素をオン状態にし、他の画素をオフ状態にする駆動パターンである。このオン・オフパターン(d)で、時間t3≦t<t4の間、液晶パネル22が駆動される。
【0043】
上記のようなオン・オフパターンで予め決められた時間、液晶パネル22を駆動することで、図10に示すようなガウス分布のオン時間(全露光時間に対するオン時間の比)の特性が得られる。図10のオン時間の特性の縦軸は、液晶パネル22の中心画素のオン時間を100パーセントとしたときの各画素のオン時間の比率を示している。
【0044】
図10は、液晶パネル22のオン・オフパターンの一例を示したものであり、液晶パネル22のオン時間、オフ時間を制御するためのパターンは、これら4種類のパターンに限定されるものではない。液晶パネル22の画素数も6×6画素以外の任意の画素数で良い。実際には、数百×数百画素の液晶パネル22を用い、オン・オフパターンも数十種類にすることで、任意の傾きを持ったローパスフィルタを実現できる。
【0045】
次に、上記のオン・オフパターンを用いて液晶パネル22をデューティ制御する場合について図11のフローチャートを参照して説明する。
露光を開始し(図11、S11)、時間0≦t<t1の間、オン・オフパターン(a)で液晶パネル22を駆動する(S12)。
【0046】
露光開始からの時間tがt1に達したなら、液晶パネル22の駆動パターンをオン・オフパターン(b)に切り換える(S13)。そして、時間t1≦t<t2の間、オン・オフパターン(b)で液晶パネル22を駆動する(S14)。
【0047】
露光開始からの時間tがt2に達したなら、液晶パネル22の駆動パターンをオン・オフパターン(c)に切り換える(S15)。そして、時間t2≦t<t3の間、オン・オフパターン(c)で液晶パネル22を駆動する(S16)。
【0048】
露光開始からの時間tがt3に達したなら、液晶パネル22の駆動パターンをオン・オフパターン(d)に切り換える(S17)。そして、時間t3≦t<t4の間、オン・オフパターン(d)で液晶パネル22を駆動する(S18)。露光開始からの時間tがt4に達したなら、露光を終了する(S19)。
【0049】
上述したデューティ制御により、液晶パネル22の各画素のオン時間として、図10に示すような特性が得られる。液晶パネル22の中央の画素のオン時間が最も長く、周辺に行くほどオン時間が短くなる特性となっている。
【0050】
絞りの開口部に配置された液晶パネル22を、図10に示すようなオン時間特性となるようにデューティ制御することで、撮影対象物27の各点の光束は、液晶パネル22を通過する際にガウス分布の特性が与えられる。その結果、図12に示すように、イメージセンサ25の任意の注目点において、中心画素の光量が最も多く、その周囲の画素の光量が次第に少なくなる特性、すなわちガウス分布の特性となる。このような光量分布は、イメージセンサ25の各画素について得られるので、イメージセンサ25の入射光に対してガウス分布のローパスフィルタ処理を光学的に施すことができる。
【0051】
上述した実施の形態では、液晶パネル22の各画素のオン時間、オフ時間を制御することで、光の透過率特性を変化させているが、階調制御により透過率を変化させても良い。
図13は、階調制御を行った場合の液晶パネル22の駆動状態を示す図である。中央の画素の階調を明るくして透過率を高くし、周辺の画素の階調を暗くして透過率を低くすることで、デューティ制御する場合と同様に任意のローパスフィルタ特性を実現できる。
【0052】
ここで、上述した第1〜第3の実施の形態の動作を、図14及び図15を参照して説明する。以下、図8の像側テレセントリックの光学系を有する情報読取用撮像装置31を例に取り説明する。
【0053】
図14(A)に示すように、撮影対象物27のA点で反射した光は広がりながらレンズ32、33に入射し、液晶パネル22の絞り部22aで光路が制限される。液晶パネル22は、例えば、ガウス分布の透過率特性を有するようにオン時間とオフ時間が制御されているので、A点で反射され、液晶パネル22のフィルタ部22bを通過した光は、光束の中心の光の透過率が最も高く、周辺に行くほど透過率が低くなる。液晶パネル22を通過した光は、レンズ34、35により光軸と平行な光に変換され、結像面26で結像した後、イメージセンサ25の受光面で所定範囲(例えば、半径10画素の範囲)に広がる。
【0054】
図14(B)は、イメージセンサ25の各画素の入射光量の分布を示している。例えば、撮影対象物27のA点の反射光は、イメージセンサ25の対応する画素とその周囲の画素に入射する。A点の反射光については、光束の中心の光が入射する中心画素の入射光量が最も多く、中心画素から離れるほど入射光量が減少するガウス分布を示す。
【0055】
撮影対象物27のA点の隣の点の反射光については、イメージセンサ25の隣の中心画素の入射光量が最も多く、中心画素から離れるほど入射光量が減少するガウス分布を示す。以下、同様にイメージセンサ25の各画素の入射光量は、図14(B)に示すようなガウス分布を持つ。説明のため,この中の任意の画素列を抜き出して図15に示す。
【0056】
撮影対象物27のA点からの光は、イメージセンサ25の対応する画素aと隣接する複数の画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・に、液晶パネル22の透過率特性で決まる光量分布で入射する。同時に、隣接する画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・を中心画素として入射する光の一部が画素aにも入射する。これにより、光学的な畳み込みが行われることになる。これは、イメージセンサ25の出力信号に対する畳み込み演算により行っていたローパスフィルタ演算処理を光学的に代替したことを意味する。
【0057】
上記のように撮影対象物27の各点からの光は、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間により決まる透過率特性により光量が制限されてイメージセンサ25に入射するので、例えば、液晶パネル22の透過率特性をガウス分布の特性とした場合、イメージセンサ25に入射する光に対してガウス分布を持つローパスフィルタ処理を光学的に施すことができる。なお、イメージセンサ25に入射する光が広がる所定範囲は、直径3画素の範囲に限らない。
【0058】
上述した情報読取用撮像装置21、31、41によれば、撮影対象物27から入射する光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。これにより、イメージセンサ25の画像信号に対してローパスフィルタ演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。また、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間を変化させることで任意の特性のローパスフィルタを実現できる。
【0059】
ここまでの説明では、簡単のために液晶パネル22の透過率分布をガウス分布とし、また結果として得られるイメージセンサ25上の点像の光量分布もガウス分布としてきた。しかし、一般的にはベースとなる光学系そのものが固有の光量分布を有しているため、この2つの分布は必ずしも一致しない。したがってイメージセンサ25上の光量分布を正確にガウス分布とするためには、ベースとなる光学系固有の分布を相殺するように液晶パネル22の透過率分布を予め調整しておく必要がある。以下、図16(A)、(b)を参照して詳細に説明する。
【0060】
図16(A)は、6×6画素の液晶パネル22の構成を示し、図16(B)は、液晶パネル22の各画素のオン時間(全露光時間に対するオン時間の比)と、イメージセンサ25の注目画素とその周囲の画素のエネルギー分布を示す図である。
【0061】
液晶パネル22は、例えば、4隅の画素が光の入射範囲を制限する絞り部22aであり、中央部の画素が、光の透過率を制御するフィルタ部22bである。
図16(B)の縦軸は、液晶パネル22の画素のオン時間(全露光時間に対するオン時間の比)と、イメージセンサ25の画素のエネルギー(露光量)を示す。また、横軸は、液晶パネル22の中心からの距離r(mm)と、イメージセンサ25の注目画素中心からの距離(画素数)を示している。
【0062】
図16(B)に実線で示すグラフは、液晶パネル22の中心から周辺の画素のオン時間の変化を示している。図16(B)の例では、液晶パネル22の中心画素がオン時間が最も長く、中心から離れるほどオン時間は短くなっている。
【0063】
図16(B)の点線のグラフは、絞りの開口部に液晶パネル22が無い場合(あるいは
、液晶パネル22のフィルタ部22bの全画素がオンの場合)と、絞りの開口部に液晶パネル22が挿入されていて、液晶パネル22の各画素をデューティ制御する場合のイメージセンサ25のA’点とその周辺の画素のエネルギー分布を示している。
【0064】
図16(B)に点線で示すA’点エネルギー分布(液晶パネル無し)は、結像面26をイメージセンサ25の受光面の手前側(または奥側)にずらしてピントをぼかした状態で、絞りの開口部に液晶パネル22が無い場合のイメージセンサ25の注目画素のエネルギー分布を示している。この場合、絞りで入射範囲が制限された光が、そのままイメージセンサ25に入射するので、注目画素(A’点の画素)を中心とする所定範囲の画素のエネルギー分布は台形状となるが、一般的にはレンズ中心部より周辺部の方が集光量が少ない(暗い)ため完全な台形とはならず、図16(B)に点線で示すように距離rが大きくなるにつれて光量が低下するような分布となる(なお、このままでもローパスフィルタ効果は得られるが、台形状の特性のローパスフィルタに限定される)。
【0065】
これに対して、図16(B)に点線で示すA’点エネルギー分布(液晶パネル有り)は、結像面26をイメージセンサ25の受光面の手前側(または奥側)にずらしてピントをぼかした状態で、絞りの開口部に配置した液晶パネル22の個々の画素のオン時間とオフ時間を制御した場合のイメージセンサ25の注目画素とその周囲の画素のエネルギー分布を示している。
【0066】
イメージセンサ25の出力は、各画素に入射する光量と露光時間の積に比例するので、液晶パネル22の各画素のオン時間を制御することで、例えば、図16(B)に点線で示すA’点エネルギー分布(液晶パネル有り)が得られる。
【0067】
イメージセンサ25の出力画像に施すべきローパスフィルタ処理が、図16(B)に点線で示すA’点エネルギー分布(液晶パネル有り)である場合には、その目的とするA’点エネルギー分布(液晶パネル有り)を、A’点エネルギー分布(液晶パネル無し)で除した結果が、液晶パネル22の各画素のオン時間の特性を現すものとなる。図16(B)に実線で示す液晶パネル22の各画素のオン時間を適切に決めれば、イメージセンサ25の注目画素周囲の光量分布を任意の分布、例えば、ガウス分布にすることができる。
【0068】
従って、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間を制御することで、イメージセンサ25に入射する光に対して光学的に任意のローパスフィルタ処理を施すことができる。
【0069】
図17は、第4の実施の形態の液晶パネル22の駆動方法の説明図である。第4の実施の形態は、液晶パネル22の特定の画素をオフ状態にして特異点除去フィルタを実現するものである。
【0070】
図17は、液晶パネル22が10×10の画素からなる場合の駆動例を示している。液晶パネル22の中央の4画素を通過した光が、イメージセンサ25の中央の1画素に入射する。この場合、液晶パネル22の中央の4画素を常にオフ状態にし、中央の6×6画素の内で中央の4画素を除いた画素を全てオン状態にし、周辺の画素は全てオフ状態にする。
【0071】
図18は、液晶パネル22を上記のように駆動したときのイメージセンサ25の露光光量を示す図である。
液晶パネル22の中心の4画素をオフ状態にし、その周囲の画素をオン状態にすることで、イメージセンサ25の中心画素aの露光光量を0%にし、その周囲の画素の露光光量を100%にすることができる。このときのイメージセンサ25の出力は、中心画素aの
位置の画像を除いたものとなり、液晶パネル22は、画像の特定の箇所に乗っているノイズを除去する特異点除去フィルタとして機能する。
【0072】
図19は、特異点除去フィルタの演算行列を示す図である。イメージセンサ25の出力信号に対して特異点除去フィルタの処理を施すためには、従来技術では、図19に示すような演算行列を用いた演算を、中心画素aとその周辺の画素に対して行う必要があり、演算処理に時間がかかっていた。
【0073】
上述した第4の実施の形態では、液晶パネル22の特定の画素をオフ状態にし、その周囲の画素をオン状態にすることで、任意の特異点除去フィルタを実現することができる。この特異点除去フィルタは、液晶パネル22に入射する光に対して光学的に行われるので、特異点除去のフィルタ演算が不要となり、画像処理の演算時間を短縮できる。
【0074】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、例えば、以下のように構成しても良い。
(1)上述した実施の形態は、撮影画像に対してガウス分布特性のローパスフィルタ処理を施す場合について説明したが、ガウス分布以外のローパスフィルタ特性を施す場合にも適用できる。透過型空間光変調素子として透過型液晶装置以外の他の素子を用いても良い。
(2)像側テレセントリック光学系に限らず、複数のレンズからなる光学系にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】撮像光学系の構成を示す図である。
【図2】撮像光学系の他の構成を示す図である。
【図3】撮影対象物の一例を示す図である。
【図4】ノイズが重畳された画像信号とLPF処理後の画像信号を示す図である。
【図5】従来の撮像装置のイメージセンサの出力を示す図である。
【図6】ガウスフィルタと移動平均フィルタの演算行列を示す図である。
【図7】第1の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図9】第3の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図10】液晶パネルのオン・オフパターンとオン時間を示す図である。
【図11】液晶パネルのデューティ制御処理のフローチャートである。
【図12】イメージセンサの露光光量を示す図である。
【図13】階調制御を行った場合の液晶パネルの駆動状態を示す図である。
【図14】実施の形態の動作説明図である。
【図15】イメージセンサの任意の画素列の入射光量を示す図である。
【図16】液晶パネルのオン時間とイメージセンサのエネルギー分布を示す図である。
【図17】第4の実施の形態の液晶パネルの駆動方法の説明図である。
【図18】イメージセンサの露光光量を示す図である。
【図19】特異点除去フィルタの演算行列を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
21、31、41 情報読取用撮像装置
22 液晶パネル
23 制御部
24、32、33、34、35 レンズ
25 イメージセンサ
26 結像面
27 撮影対象物
36 レンズモジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物から情報を読み取るための情報読取用撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の媒体に印刷された情報を読み取るために撮像装置が用いられる。図1及び図2は、紙などの媒体に印刷されたバーコード等の情報を読み取る撮像装置11の光学系の構成を示す図である。
【0003】
図1及び図2に示すように撮像装置11は、絞り12と、レンズ13(またはレンズモジュール16)と、イメージセンサ14とを有する。
撮影対象物15で反射された光は、絞り12により光路が制限され、レンズ13を通りイメージセンサ14で受光される。
【0004】
媒体に印刷された情報を撮像装置11により読み取る場合には、レンズ13とイメージセンサ14との距離を調整し、結像面をイメージセンサ14の表面に合致させることで鮮明な画像を取得するようにしている。
【0005】
しかしながら、鮮明な画像は情報量が多い反面、媒体の表面の凹凸などによる信号の変化が、本来の画像信号に対してノイズとして重畳されるという問題点がある。
図3(A)、(B)は、撮影対象物15の一例を示す図である。図3(A)に示すような紙などに印刷された画像を撮像装置11で読み取る場合には、紙面の細かい凹凸による信号の変化が、本来の画像信号にノイズとして乗ってしまう。
【0006】
図3(B)に示すような、手のひら内部の静脈を読み取る場合にも、静脈の周囲の体組織からの散乱光がノイズとして本来の画像信号に乗ってしまう、そのため、ローパスフィルタ(LPF)処理等の演算を施してノイズを除去する必要があった。
【0007】
図4(A)は、撮影対象物の任意のライン(例えば、図3(A)のラインA)のノイズが重畳された画像信号を示し、図4(B)は、ローパスフィルタ(LPF)処理によりそのノイズを除去した後の画像信号を示している。
【0008】
図5は、従来の撮像装置のイメージセンサ14の出力を示す図である。図5は、撮影対象物体上の任意の1点に対するイメージセンサ14の任意の画素の出力信号のレベルの分布(点像分布)を示しており、鮮明な画像が得られるよう結像面がセンサ面に合致しているため、出力信号のレベルの分布は、実質的に1画素(中心画素)に集中した波形となる。
【0009】
上述したように、撮像装置11で取得される画像を鮮明にすればするほど、媒体表面の凹凸などにより画像信号に高周波のノイズが乗ってしまう。
そこで、従来は、イメージセンサ14から出力される画像信号に対してローパスフィルタ処理の演算を施し高周波のノイズを除去していた。
【0010】
図6(A)、(B)は、ローパスフィルタ処理で用いられるガウスフィルタと移動平均フィルタの演算行列を示す図である。
図6(A)の3×3の演算行列の場合について説明すると、注目画素Q(a,b)は、左上の取得画素P(a−1,b+1)に「0.063」を乗算した値と、1つ上の取得画素P(a,b+1)に「0.125」を乗算した値と、右上の取得画素P(a+1,b+
1)に「0.063」を乗算した値と、左隣の取得画素P(a−1,b)に「0.125」を乗算した値と、取得画素P(a,b)に「0.25」を乗算した値と、右隣の取得画素P(a+1,b)に「0.125」を乗算した値と、左下の取得画P(a−1,b−1)に「0.063」を乗算した値と、1つ下の取得画素P(a,b−1)に「0.125」を乗算した値と、右下の取得画素P(a+1,b−1)に「0.063」を乗算した値の総和として算出される。
【0011】
上記の演算を各画素について行うことでガウスフィルタ処理を施した画像信号を得ることができる。
図6(B)の演算行列も同様であり、注目画素とその周辺の画素に対して、図6(B)に示す演算行列の値を乗算することで、移動平均フィルタ処理を施した画像信号を得ることができる。
【0012】
しかしながら、上記の演算行列を用いたローパスフィルタ処理は、撮像装置で読み取った全画素に対して演算行列の要素数分(例えば、3×3の行列であれば、9回)の演算を行う必要があり、画素数が多い場合には、画像処理の処理時間が長くなるという問題点があった。
【0013】
特許文献1には、CCD撮像素子の前面に光透過率の変化するフィルタ手段を設け、CCCD撮像素子の撮像面に照射される映像光のレベルに応じてフィルタ手段を制御することが記載されている。フィルタ手段として透過型液晶パネルを使用することが記載されている。
【0014】
特許文献2には、光透過率の制御可能なフィルタ素子が多数配列されたフィルタパネルを、電子カメラの光反応素子の前方に配置し、フィルタパネルの任意の部位のフィルタ素子の光透過率を低下させることで、撮影対象物の高輝度部の影響を除去することが記載されている。フィルタパネルは、多数の液晶表示素子で構成されることが記載されている。
【0015】
特許文献3には、入射される1画面の光をn個に分割し、分割した各々の光をn倍に拡大した光をCCDで電気信号に変換し、変換後の信号を1画面の信号に復元することが記載されている。
【0016】
特許文献2には、液晶表示素子の光透過率を部分的に変化させることが記載されているが、その目的は、撮影対象物の高輝度部位によりCCD撮像素子が飽和するのを防止するためのものである。
【特許文献1】特開平6−70225号公報
【特許文献2】特開平6−70225号公報
【特許文献3】特許第3150502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、情報読取用撮像装置において、画像処理の処理時間を短縮し、画像に対して所望のフィルタ処理を施すことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の情報読取用撮像装置は、絞りにより光の入射範囲が制限された入射光に対して、位置により異なる透過率特性を与える透過型空間光変調素子と、前記透過型空間光変調素子の透過率特性を制御する制御部と、レンズと、イメージセンサとを有し、前記レンズの結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるように前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整し、前記透過型空間光変調素子により、位置により異なる透過率特性が与えられた光が前記受光面において所定範囲に広がるようにした。
【0019】
この情報読取用撮像装置によれば、画像処理の処理時間を短縮できると共に、画像に対して光学的に所望のローパスフィルタ処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、情報読取用撮像装置における画像処理の処理時間を短縮できると共に、画像に対して光学的に所望のローパスフィルタ処理を施すことができる。また、画像処理の処理時間を短縮することができるので、例えば、比較的処理速度の遅い安価なCPU等を使用して装置のコストを低減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図7は、第1の実施の形態の情報読取用撮像装置21の構成を示す図である。以下で説明する各実施の形態の情報読取用撮像装置は、1次元または2次元バーコードを読み取るバーコードリーダ、指紋、静脈等を読み取る生体認証装置等に用いることができる。
【0022】
情報読取用撮像装置21は、透過型液晶パネル(透過型液晶装置)22と、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間を制御する制御部23と、レンズ24と、イメージセンサ25とを有する。透過型液晶パネル22は、透過型空間光変調素子(SLM:Spatial Light Modulator)として用いられる。
【0023】
透過型液晶パネル(以下、液晶パネルと呼ぶ)22は、撮影対象物27からの光の入射範囲を制限する絞り部22aと、絞り部22aで入射範囲が制限された入射光に対して位置より異なる透過特性を与えるフィルタ部22bを有する。
【0024】
絞り部22aは、液晶パネル22の周囲の画素をオフ状態にして光を遮蔽しても良いし、液晶パネル22の外周部を金属、樹脂等の遮蔽板で覆っても良い。また、絞り部22aと液晶パネル22を別の部品とし、絞りの開口部に液晶パネル22を挿入する構造にしても良い。
【0025】
制御部23は、CPU等からなり、液晶パネル22の個々の画素(液晶表示素子)のオン時間とオフ時間を制御して、位置による異なる透過率特性を持つ光学フィルタを実現する。
【0026】
イメージセンサ25は、受光面がレンズ24の結像面(結像位置)26より奥側(レンズ24から見て)にくるように配置されている。
図7において、撮影対象物27からの光は広がりながら液晶パネル22に入射する。撮影対象物27の各点の広がり持った光(これを光束と呼ぶ)は、絞り部22aによりレンズ24に入射する光の範囲が制限される。そして、絞り部22aにより入射範囲が制限された光がフィルタ部22bを通過する際に、フィルタ部22bが入射光に対して位置により異なる透過率特性を与えることから、光束の中心から外に向かって所望の特性(例えば、ガウス分布)で光量が連続的に変化する光となる。
【0027】
この光束は、結像面26で結像した後、イメージセンサ25の受光面に向かって広がり、受光面において所定範囲の広がりを持った像となる。これは、結像面26がイメージセンサ25の受光面の奥側(または手前側)になるように、レンズ24とイメージセンサ25の距離が調整されているからである。イメージセンサ25の受光面における像の広がりは、注目画素と近傍の画素にかけて必要なため、光束の中心に対して直径3画素以上の円形の範囲である。
注目画素とその近傍画素の濃度置に対し、注目画素の新しい濃度値を得るために、例えば上記光量分布が直径3画素の場合には、図6(A)に示す3×3ガウスフィルタの演算を代替えできる。逆に7×7、9×9の強度の大きいLPF演算を代替えするためには、上記光量分布は、それぞれ直径7画素、9画素とすればよい。
【0028】
上述した第1の実施の形態は、液晶パネル22の各画素のオン時間、オフ時間を制御することで、液晶パネル22が位置により異なる透過率特性を持つようにする。そして、レンズ24の結像面26がイメージセンサ25の受光面の奥側(または手前側)にくるように調整することで、イメージセンサ25の各画素の出力特性が、各画素を中心として所望の光量分布を有するようにできる。すなわち、液晶パネル22の透過率特性をローパスフィルタの特性にすることで、イメージセンサ25の出力信号に対してローパスフィルタ処理を光学的に施すことができる。
【0029】
従って、従来のようにイメージセンサ25の出力信号に対してローパスフィルタ演算を施す必要が無くなるので、画像処理の処理時間を大幅に短縮できる。画像の処理時間を短縮することができるので、リアルタイム処理が必要なバーコードリーダや生体認証装置に処理速度の遅い安価なCPU等を使用できる。これにより装置のコストを低減できる。
【0030】
また、液晶パネル22のオン時間、オフ時間を変化させることで、あるいは階調制御により透過率特性を変更し、任意のローパスフィルタ特性を得ることができる。
また、第1の実施の形態は、液晶パネル22のフィルタ特性をリアルタイム制御することができるので、同一の撮影対象物27に対する複数回の撮影で、それぞれ異なる特性のローパスフィルタ処理を施すことができ、より高精度の信号処理が可能になる。あるいは、液晶パネル22の全画素をオン状態にして移動平均フィルタを施した画像を取得することもできる。
【0031】
図8は、第2の実施の形態の情報読取用撮像装置31の構成を示す図である。この第2の実施の形態は、レンズからイメージセンサ25に向かう光が光軸と平行となる像側テレセントリック光学系において、結像面26をイメージセンサ25の手前側(図8において、イメージセンサ25の垂直方向上側)に設定した場合の例である。
【0032】
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置31の光学系は、レンズ32、33、34、35と液晶パネル22からなるレンズモジュール36を有する。
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置31も、光学系が複数のレンズからなる点、イメージセンサ25に入射する光が光軸と平行である点を除けば、第1の実施の形態と同じである。
【0033】
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置31も、レンズ35の結像面26が、イメージセンサ25の受光面の手前側(図8のイメージセンサ25の垂直上方向)となるようにイメージセンサ25を配置してある。これにより、撮影対象物27の各点の反射光はイメージセンサ25の受光面で一定範囲に広がり、かつイメージセンサ25の各画素の入射光量は液晶パネル22の透過率特性により制限されたものとなる。
【0034】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、液晶パネル22の個々の画素のオン時間、オフ時間を制御することで、撮影対象物27からの光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。従って、イメージセンサ25の出力信号に対してローパスフィルタ演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。また、液晶パネル22の各画素のオン時間、オフ時間を変化させて透過率特性を変更することで任意特性のローパスフィルタを光学的に実現できる。
【0035】
また、第2の実施の形態は、光学系が像側テレセントリックとなっているので、レンズ35とイメージセンサ25との距離を変化させてイメージセンサ25上の像の広がりを調整する際に、すなわち、ローパスフィルタの強さ(ノイズ除去レベルの大きさ)を調整する際に、イメージセンサ25の出力画像の大きさが変化しない。従って、画像サイズを一定にしてローパスフィルタの強さのみを単独で調整できるという効果もある。
【0036】
図9は、第3の実施の形態の情報読取用撮像装置41の構成を示す図である。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と基本的には同じであり、異なる点は、結像面26がイメージセンサ25の奥側(レンズ35から見て)にくるようにした点である。
【0037】
この第3の実施の形態は、上述した第2の実施の形態と同様に、イメージセンサ25に入射する光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができるので、ローパスフィルタ演算が不要となり、画像処理に要する時間を短縮できる。
【0038】
図10は、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間を制御する場合のオン・オフパターンとオン時間を示す図である。以下、液晶パネル22が6×6の画素を有する場合を例に取り説明する。
【0039】
この例では、液晶パネル22の透過率特性をガウス分布にするために4種類のオン・オフパターンを定義している。
図10に示す、オン・オフパターン(a)は、全画素を全てオン状態にする駆動パターンである。このオン・オフパターン(a)で、時間0≦t<t1の間、液晶パネル22が駆動される。時間t1は、例えば、全露光時間の1/6である。
【0040】
オン・オフパターン(b)は、四隅の画素をオフ、中央部の画素をオン状態にする駆動パターンである。このオン・オフパターン(b)で時間t1≦t<t2の間、液晶パネル22が駆動される。時間t2は、例えば、全露光時間の3/6である。
【0041】
オン・オフパターン(c)は、オン・オフパターン(b)より、さらに周辺部の画素をオフ状態にする駆動パターンである。このオン・オフパターン(c)で、時間t2≦t<t3の間、液晶パネル22が駆動される。時間t3は、例えば、全露光時間の5/6である。
【0042】
オン・オフパターン(d)は、中央部の4画素をオン状態にし、他の画素をオフ状態にする駆動パターンである。このオン・オフパターン(d)で、時間t3≦t<t4の間、液晶パネル22が駆動される。
【0043】
上記のようなオン・オフパターンで予め決められた時間、液晶パネル22を駆動することで、図10に示すようなガウス分布のオン時間(全露光時間に対するオン時間の比)の特性が得られる。図10のオン時間の特性の縦軸は、液晶パネル22の中心画素のオン時間を100パーセントとしたときの各画素のオン時間の比率を示している。
【0044】
図10は、液晶パネル22のオン・オフパターンの一例を示したものであり、液晶パネル22のオン時間、オフ時間を制御するためのパターンは、これら4種類のパターンに限定されるものではない。液晶パネル22の画素数も6×6画素以外の任意の画素数で良い。実際には、数百×数百画素の液晶パネル22を用い、オン・オフパターンも数十種類にすることで、任意の傾きを持ったローパスフィルタを実現できる。
【0045】
次に、上記のオン・オフパターンを用いて液晶パネル22をデューティ制御する場合について図11のフローチャートを参照して説明する。
露光を開始し(図11、S11)、時間0≦t<t1の間、オン・オフパターン(a)で液晶パネル22を駆動する(S12)。
【0046】
露光開始からの時間tがt1に達したなら、液晶パネル22の駆動パターンをオン・オフパターン(b)に切り換える(S13)。そして、時間t1≦t<t2の間、オン・オフパターン(b)で液晶パネル22を駆動する(S14)。
【0047】
露光開始からの時間tがt2に達したなら、液晶パネル22の駆動パターンをオン・オフパターン(c)に切り換える(S15)。そして、時間t2≦t<t3の間、オン・オフパターン(c)で液晶パネル22を駆動する(S16)。
【0048】
露光開始からの時間tがt3に達したなら、液晶パネル22の駆動パターンをオン・オフパターン(d)に切り換える(S17)。そして、時間t3≦t<t4の間、オン・オフパターン(d)で液晶パネル22を駆動する(S18)。露光開始からの時間tがt4に達したなら、露光を終了する(S19)。
【0049】
上述したデューティ制御により、液晶パネル22の各画素のオン時間として、図10に示すような特性が得られる。液晶パネル22の中央の画素のオン時間が最も長く、周辺に行くほどオン時間が短くなる特性となっている。
【0050】
絞りの開口部に配置された液晶パネル22を、図10に示すようなオン時間特性となるようにデューティ制御することで、撮影対象物27の各点の光束は、液晶パネル22を通過する際にガウス分布の特性が与えられる。その結果、図12に示すように、イメージセンサ25の任意の注目点において、中心画素の光量が最も多く、その周囲の画素の光量が次第に少なくなる特性、すなわちガウス分布の特性となる。このような光量分布は、イメージセンサ25の各画素について得られるので、イメージセンサ25の入射光に対してガウス分布のローパスフィルタ処理を光学的に施すことができる。
【0051】
上述した実施の形態では、液晶パネル22の各画素のオン時間、オフ時間を制御することで、光の透過率特性を変化させているが、階調制御により透過率を変化させても良い。
図13は、階調制御を行った場合の液晶パネル22の駆動状態を示す図である。中央の画素の階調を明るくして透過率を高くし、周辺の画素の階調を暗くして透過率を低くすることで、デューティ制御する場合と同様に任意のローパスフィルタ特性を実現できる。
【0052】
ここで、上述した第1〜第3の実施の形態の動作を、図14及び図15を参照して説明する。以下、図8の像側テレセントリックの光学系を有する情報読取用撮像装置31を例に取り説明する。
【0053】
図14(A)に示すように、撮影対象物27のA点で反射した光は広がりながらレンズ32、33に入射し、液晶パネル22の絞り部22aで光路が制限される。液晶パネル22は、例えば、ガウス分布の透過率特性を有するようにオン時間とオフ時間が制御されているので、A点で反射され、液晶パネル22のフィルタ部22bを通過した光は、光束の中心の光の透過率が最も高く、周辺に行くほど透過率が低くなる。液晶パネル22を通過した光は、レンズ34、35により光軸と平行な光に変換され、結像面26で結像した後、イメージセンサ25の受光面で所定範囲(例えば、半径10画素の範囲)に広がる。
【0054】
図14(B)は、イメージセンサ25の各画素の入射光量の分布を示している。例えば、撮影対象物27のA点の反射光は、イメージセンサ25の対応する画素とその周囲の画素に入射する。A点の反射光については、光束の中心の光が入射する中心画素の入射光量が最も多く、中心画素から離れるほど入射光量が減少するガウス分布を示す。
【0055】
撮影対象物27のA点の隣の点の反射光については、イメージセンサ25の隣の中心画素の入射光量が最も多く、中心画素から離れるほど入射光量が減少するガウス分布を示す。以下、同様にイメージセンサ25の各画素の入射光量は、図14(B)に示すようなガウス分布を持つ。説明のため,この中の任意の画素列を抜き出して図15に示す。
【0056】
撮影対象物27のA点からの光は、イメージセンサ25の対応する画素aと隣接する複数の画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・に、液晶パネル22の透過率特性で決まる光量分布で入射する。同時に、隣接する画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・を中心画素として入射する光の一部が画素aにも入射する。これにより、光学的な畳み込みが行われることになる。これは、イメージセンサ25の出力信号に対する畳み込み演算により行っていたローパスフィルタ演算処理を光学的に代替したことを意味する。
【0057】
上記のように撮影対象物27の各点からの光は、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間により決まる透過率特性により光量が制限されてイメージセンサ25に入射するので、例えば、液晶パネル22の透過率特性をガウス分布の特性とした場合、イメージセンサ25に入射する光に対してガウス分布を持つローパスフィルタ処理を光学的に施すことができる。なお、イメージセンサ25に入射する光が広がる所定範囲は、直径3画素の範囲に限らない。
【0058】
上述した情報読取用撮像装置21、31、41によれば、撮影対象物27から入射する光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。これにより、イメージセンサ25の画像信号に対してローパスフィルタ演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。また、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間を変化させることで任意の特性のローパスフィルタを実現できる。
【0059】
ここまでの説明では、簡単のために液晶パネル22の透過率分布をガウス分布とし、また結果として得られるイメージセンサ25上の点像の光量分布もガウス分布としてきた。しかし、一般的にはベースとなる光学系そのものが固有の光量分布を有しているため、この2つの分布は必ずしも一致しない。したがってイメージセンサ25上の光量分布を正確にガウス分布とするためには、ベースとなる光学系固有の分布を相殺するように液晶パネル22の透過率分布を予め調整しておく必要がある。以下、図16(A)、(b)を参照して詳細に説明する。
【0060】
図16(A)は、6×6画素の液晶パネル22の構成を示し、図16(B)は、液晶パネル22の各画素のオン時間(全露光時間に対するオン時間の比)と、イメージセンサ25の注目画素とその周囲の画素のエネルギー分布を示す図である。
【0061】
液晶パネル22は、例えば、4隅の画素が光の入射範囲を制限する絞り部22aであり、中央部の画素が、光の透過率を制御するフィルタ部22bである。
図16(B)の縦軸は、液晶パネル22の画素のオン時間(全露光時間に対するオン時間の比)と、イメージセンサ25の画素のエネルギー(露光量)を示す。また、横軸は、液晶パネル22の中心からの距離r(mm)と、イメージセンサ25の注目画素中心からの距離(画素数)を示している。
【0062】
図16(B)に実線で示すグラフは、液晶パネル22の中心から周辺の画素のオン時間の変化を示している。図16(B)の例では、液晶パネル22の中心画素がオン時間が最も長く、中心から離れるほどオン時間は短くなっている。
【0063】
図16(B)の点線のグラフは、絞りの開口部に液晶パネル22が無い場合(あるいは
、液晶パネル22のフィルタ部22bの全画素がオンの場合)と、絞りの開口部に液晶パネル22が挿入されていて、液晶パネル22の各画素をデューティ制御する場合のイメージセンサ25のA’点とその周辺の画素のエネルギー分布を示している。
【0064】
図16(B)に点線で示すA’点エネルギー分布(液晶パネル無し)は、結像面26をイメージセンサ25の受光面の手前側(または奥側)にずらしてピントをぼかした状態で、絞りの開口部に液晶パネル22が無い場合のイメージセンサ25の注目画素のエネルギー分布を示している。この場合、絞りで入射範囲が制限された光が、そのままイメージセンサ25に入射するので、注目画素(A’点の画素)を中心とする所定範囲の画素のエネルギー分布は台形状となるが、一般的にはレンズ中心部より周辺部の方が集光量が少ない(暗い)ため完全な台形とはならず、図16(B)に点線で示すように距離rが大きくなるにつれて光量が低下するような分布となる(なお、このままでもローパスフィルタ効果は得られるが、台形状の特性のローパスフィルタに限定される)。
【0065】
これに対して、図16(B)に点線で示すA’点エネルギー分布(液晶パネル有り)は、結像面26をイメージセンサ25の受光面の手前側(または奥側)にずらしてピントをぼかした状態で、絞りの開口部に配置した液晶パネル22の個々の画素のオン時間とオフ時間を制御した場合のイメージセンサ25の注目画素とその周囲の画素のエネルギー分布を示している。
【0066】
イメージセンサ25の出力は、各画素に入射する光量と露光時間の積に比例するので、液晶パネル22の各画素のオン時間を制御することで、例えば、図16(B)に点線で示すA’点エネルギー分布(液晶パネル有り)が得られる。
【0067】
イメージセンサ25の出力画像に施すべきローパスフィルタ処理が、図16(B)に点線で示すA’点エネルギー分布(液晶パネル有り)である場合には、その目的とするA’点エネルギー分布(液晶パネル有り)を、A’点エネルギー分布(液晶パネル無し)で除した結果が、液晶パネル22の各画素のオン時間の特性を現すものとなる。図16(B)に実線で示す液晶パネル22の各画素のオン時間を適切に決めれば、イメージセンサ25の注目画素周囲の光量分布を任意の分布、例えば、ガウス分布にすることができる。
【0068】
従って、液晶パネル22の各画素のオン時間とオフ時間を制御することで、イメージセンサ25に入射する光に対して光学的に任意のローパスフィルタ処理を施すことができる。
【0069】
図17は、第4の実施の形態の液晶パネル22の駆動方法の説明図である。第4の実施の形態は、液晶パネル22の特定の画素をオフ状態にして特異点除去フィルタを実現するものである。
【0070】
図17は、液晶パネル22が10×10の画素からなる場合の駆動例を示している。液晶パネル22の中央の4画素を通過した光が、イメージセンサ25の中央の1画素に入射する。この場合、液晶パネル22の中央の4画素を常にオフ状態にし、中央の6×6画素の内で中央の4画素を除いた画素を全てオン状態にし、周辺の画素は全てオフ状態にする。
【0071】
図18は、液晶パネル22を上記のように駆動したときのイメージセンサ25の露光光量を示す図である。
液晶パネル22の中心の4画素をオフ状態にし、その周囲の画素をオン状態にすることで、イメージセンサ25の中心画素aの露光光量を0%にし、その周囲の画素の露光光量を100%にすることができる。このときのイメージセンサ25の出力は、中心画素aの
位置の画像を除いたものとなり、液晶パネル22は、画像の特定の箇所に乗っているノイズを除去する特異点除去フィルタとして機能する。
【0072】
図19は、特異点除去フィルタの演算行列を示す図である。イメージセンサ25の出力信号に対して特異点除去フィルタの処理を施すためには、従来技術では、図19に示すような演算行列を用いた演算を、中心画素aとその周辺の画素に対して行う必要があり、演算処理に時間がかかっていた。
【0073】
上述した第4の実施の形態では、液晶パネル22の特定の画素をオフ状態にし、その周囲の画素をオン状態にすることで、任意の特異点除去フィルタを実現することができる。この特異点除去フィルタは、液晶パネル22に入射する光に対して光学的に行われるので、特異点除去のフィルタ演算が不要となり、画像処理の演算時間を短縮できる。
【0074】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、例えば、以下のように構成しても良い。
(1)上述した実施の形態は、撮影画像に対してガウス分布特性のローパスフィルタ処理を施す場合について説明したが、ガウス分布以外のローパスフィルタ特性を施す場合にも適用できる。透過型空間光変調素子として透過型液晶装置以外の他の素子を用いても良い。
(2)像側テレセントリック光学系に限らず、複数のレンズからなる光学系にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】撮像光学系の構成を示す図である。
【図2】撮像光学系の他の構成を示す図である。
【図3】撮影対象物の一例を示す図である。
【図4】ノイズが重畳された画像信号とLPF処理後の画像信号を示す図である。
【図5】従来の撮像装置のイメージセンサの出力を示す図である。
【図6】ガウスフィルタと移動平均フィルタの演算行列を示す図である。
【図7】第1の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図9】第3の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図10】液晶パネルのオン・オフパターンとオン時間を示す図である。
【図11】液晶パネルのデューティ制御処理のフローチャートである。
【図12】イメージセンサの露光光量を示す図である。
【図13】階調制御を行った場合の液晶パネルの駆動状態を示す図である。
【図14】実施の形態の動作説明図である。
【図15】イメージセンサの任意の画素列の入射光量を示す図である。
【図16】液晶パネルのオン時間とイメージセンサのエネルギー分布を示す図である。
【図17】第4の実施の形態の液晶パネルの駆動方法の説明図である。
【図18】イメージセンサの露光光量を示す図である。
【図19】特異点除去フィルタの演算行列を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
21、31、41 情報読取用撮像装置
22 液晶パネル
23 制御部
24、32、33、34、35 レンズ
25 イメージセンサ
26 結像面
27 撮影対象物
36 レンズモジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞りにより光の入射範囲が制限された入射光に対して、位置により異なる透過率特性を与える透過型空間光変調素子と、
前記透過型空間光変調素子の透過率特性を制御する制御部と、
レンズと、
イメージセンサとを有し、
前記レンズの結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるように前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整し、前記透過型空間光変調素子により、位置により異なる透過率特性が与えられた光が前記受光面において所定範囲に広がるようにした情報読取用撮像装置。
【請求項2】
前記透過型空間光変調素子は透過型液晶装置であり、撮影対象物からの光の入射範囲を制限する絞り部と、入射範囲が制限された入射光に対して位置により異なる透過率特性を与えるフィルタ部を有する請求項1記載の情報読取用撮像装置。
【請求項3】
前記透過型空間光変調素子は透過型液晶装置であり、影撮影対象物からの光の入射範囲を制限する絞りの開口部に配置されている請求項1記載の情報読取用撮像装置。
【請求項4】
前記透過型空間光変調素子は透過型液晶装置であり、
前記制御部は、前記透過型液晶装置のフィルタ部の透過率特性がローパスフィルタ特性となるように、前記透過型液晶装置の各画素が光を透過させるオン期間と光を透過させないオフ期間を制御する請求項1、2または3記載の情報読取用撮像装置。
【請求項5】
前記透過型空間光変調素子は透過型液晶装置であり、
前記制御部は、前記透過型液晶装置のフィルタ部の透過率特性がローパスフィルタ特性となるように、前記透過型液晶装置の各画素を階調制御する請求項1、2または3記載の情報読取用撮像装置。
【請求項6】
前記結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるようにしたときの前記イメージセンサの受光面における像の広がりが、直径3画素以上となるように、前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整した請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報読取用撮像装置。
【請求項7】
前記透過型空間光変調素子の透過率特性はガウス分布を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報読取用撮像装置。
【請求項8】
前記透過型空間光変調素子は、前記撮影対象物とレンズとの間に配置されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の情報読取用撮像装置。
【請求項9】
前記レンズは、複数のレンズからなる光学系であり、前記透過型空間光変調素子は前記複数のレンズの間に配置されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の情報読取用撮像装置。
【請求項1】
絞りにより光の入射範囲が制限された入射光に対して、位置により異なる透過率特性を与える透過型空間光変調素子と、
前記透過型空間光変調素子の透過率特性を制御する制御部と、
レンズと、
イメージセンサとを有し、
前記レンズの結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるように前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整し、前記透過型空間光変調素子により、位置により異なる透過率特性が与えられた光が前記受光面において所定範囲に広がるようにした情報読取用撮像装置。
【請求項2】
前記透過型空間光変調素子は透過型液晶装置であり、撮影対象物からの光の入射範囲を制限する絞り部と、入射範囲が制限された入射光に対して位置により異なる透過率特性を与えるフィルタ部を有する請求項1記載の情報読取用撮像装置。
【請求項3】
前記透過型空間光変調素子は透過型液晶装置であり、影撮影対象物からの光の入射範囲を制限する絞りの開口部に配置されている請求項1記載の情報読取用撮像装置。
【請求項4】
前記透過型空間光変調素子は透過型液晶装置であり、
前記制御部は、前記透過型液晶装置のフィルタ部の透過率特性がローパスフィルタ特性となるように、前記透過型液晶装置の各画素が光を透過させるオン期間と光を透過させないオフ期間を制御する請求項1、2または3記載の情報読取用撮像装置。
【請求項5】
前記透過型空間光変調素子は透過型液晶装置であり、
前記制御部は、前記透過型液晶装置のフィルタ部の透過率特性がローパスフィルタ特性となるように、前記透過型液晶装置の各画素を階調制御する請求項1、2または3記載の情報読取用撮像装置。
【請求項6】
前記結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるようにしたときの前記イメージセンサの受光面における像の広がりが、直径3画素以上となるように、前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整した請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報読取用撮像装置。
【請求項7】
前記透過型空間光変調素子の透過率特性はガウス分布を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報読取用撮像装置。
【請求項8】
前記透過型空間光変調素子は、前記撮影対象物とレンズとの間に配置されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の情報読取用撮像装置。
【請求項9】
前記レンズは、複数のレンズからなる光学系であり、前記透過型空間光変調素子は前記複数のレンズの間に配置されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の情報読取用撮像装置。
【図2】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図14】
【図17】
【図19】
【図1】
【図3】
【図5】
【図7】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図18】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図14】
【図17】
【図19】
【図1】
【図3】
【図5】
【図7】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図18】
【公開番号】特開2010−86292(P2010−86292A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254856(P2008−254856)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】
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