説明

感光性ポリアミド酸及びこれを含有する感光性組成物

【課題】耐熱性に優れ、溶媒、モノマーへの溶解性や、他のポリマー、オリゴマーへの相溶性に優れ、硬化物の耐熱性、接着性、および電気特性が良好な、種々の分野で有用な硬化性樹脂を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される、構造式末端に感光性基を有するポリアミド酸。
【化1】


(式(1)中R1は4価の有機基を表し、R2は2価の有機基を表す。Xは水素原子又は(メタ)アクリル基を含有する有機基を表す。nは平均重合度であって1〜100の正数を表す。又、複数ある基Xのうち少なくとも1個は(メタ)アクリル基を有する有機基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性を有する新規なポリアミド酸、これを含有する感光性組成物、それを用いたワニスとフィルム、該ワニスをパターニングすることにより得られる像およびその硬化物、さらには該感光性を有するポリアミド酸の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル基等を有する感光性の樹脂は、コーティング剤、印刷インキ、塗料、接着剤、レジスト材料、封止剤、製版材料や、絶縁材料等、種々の分野に有用な材料であり、特にレジスト材料の分野では(メタ)アクリル基およびカルボキシル基等アルカリ現像可能な官能基を有するものが、単独あるいは組成物として用いられている。一方、ポリアミド酸は、ワニス等での加工性が良く、硬化して得られるポリイミドは柔軟で高耐熱な重合物として注目されている。こうしたポリアミド酸は、構造中にカルボキシル基を多く持ち、アルカリに可溶であるが、レジスト材料に用いるためには感光性を付与する必要があり、構造中のカルボキシル基の一部を(メタ)アクリル基やエポキシ基等で修飾したポリアミド酸や、アクリル系モノマー、多官能アクリレートや、エポキシ基を有する化合物を配合した感光性組成物などが開発されている。例えば、ポリアミド酸の両末端をカルボキシル基誘導体とし、該カルボキシル基誘導体をエチレン性不飽和基を有する官能基で修飾した特許文献1、ポリアミド酸中のカルボキシル基のうち所定の割合でエチレン性不飽和結合を有するように製造法に工夫を施した特許文献4、末端カルボキシ基誘導体をエチレン性不飽和基を有する官能基で修飾し更にポリアミド酸中のカルボキシル基のうち所定の割合でエチレン性不飽和基を有する特許文献3、ポリアミド酸と両末端(メタ)アクリル基を有するポリアミドとを混合した特許文献2等が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平8−82931号公報
【特許文献2】特開平11−217414号公報
【特許文献3】特開2001−19847号公報
【特許文献4】特開2002−3602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリアミド酸中のカルボキシル基を所定の割合で(メタ)アクリル基やエポキシ基等で修飾するのは困難であり、例えば、触媒や重合禁止剤等を添加した複雑な系で、100℃以上の比較的高温の反応温度が必要である。また、感光性化合物を配合した感光性組成物は、パターニング時にポリアミド酸の存在により感光性化合物が機能しなかったり、現像時に感光性の部分でポリアミド酸が溶出したりするといった問題がある。
本発明は、比較的穏和な条件でポリアミド酸に所定量の感光性基を修飾(導入)し、光開始剤と組み合わせることにより良好なパターニング特性を示し、現像時の溶出を抑えた、特にレジスト分野で有用な感光性樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究の結果、良好なパターニング特性を示し、現像時に感光性の部分で溶出するポリアミド酸がほとんど無く、特にレジスト分野で極めて有用なポリアミド酸、さらには触媒や重合禁止剤等を加えることなく穏和な条件でポリアミド酸に所定の割合で(メタ)アクリル基を修飾(導入)する方法を見いだし、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)下記式(1)で表される感光性ポリアミド酸、
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1)中、R1は4価の有機基を表し、R2は2価の有機基を表す。Xは水素原子又は下記式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
(式(2)中、R3はO、S、N、P、F、Cl、BrおよびSiを有してもよい炭素数1〜5の2価の有機基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表す。)で表される(メタ)アクリル基を有する有機基を表す。nは平均重合度であって1〜100の正数を表す。又、X基のうち少なくとも1個は上記式(2)の基である。))
(2)Rが、下記式(4)
【0011】
【化3】

【0012】
(式(4)中、R5はO、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の有機基のうち一種以上を、R6は直接結合又は、O、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の二価有機基のうち一種以上を表し、a、b、c、dは平均置換基数であってaおよびdは0〜2、bは0〜4、cは0〜3の正数を表す。)で表される芳香族残基のうちの一種である(1)に記載の感光性ポリアミド酸、
(3)R2が、下記式(5)
【0013】
【化4】

【0014】
(式(5)中、R5、R6は前記と同じ意味であり、e、f、gは平均置換基数であってeおよびgは0〜4、d及びfは0〜6の正数を表す。)で表される芳香族残基のうち一種である(1)又は(2)に記載の感光性ポリアミド酸、
(4)(1)乃至(3)の何れか一項に記載の感光性ポリアミド酸と光重合開始剤を含有する感光性組成物、
(5)(4)に記載の感光性組成物を溶剤に溶解してなるワニス、
(6)(4)に記載の感光性組成物又は請求項5に記載のワニスをシート状に加工したフィルム、
(7)(4)に記載の感光性組成物又は請求項5に記載のワニスを用いパターニングして得られる像、
(8)(7)に記載の像を硬化して得られる硬化物、
(9)下記式(3)
【0015】
【化5】

【0016】
(式(3)中、R1、R2、nは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)で表される末端アミノ基ポリアミド酸に、アミノ基と付加反応し得る官能基と(1)に記載の式(2)で示される基を有する化合物を反応させることを特徴とする(1)に記載の感光性ポリアミド酸の製造法、
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構造の末端に感光性基を有する感光性ポリアミド酸、感光性組成物は、耐熱性に優れ、溶媒、モノマーへの溶解性や、他のポリマー、オリゴマーへの相溶性にも優れ、光硬化が容易であり、レジスト材料として有用である。また、感光性基を比較的穏和な条件で、かつ付加反応により導入するため、副反応による不溶解分や、イオン性不純物等、副成物の発生がほとんどなく、電気材料分野で極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の感光性のポリアミド酸は、末端に感光性基として(メタ)クリル基を有し、式(1)で表される。
【0019】
【化7】

【0020】
式(1)において、Xは水素原子又は下記式(2)
【0021】
【化8】

【0022】
(式(2)中、R3はO、S、N、P、F、Cl、BrおよびSiを含有してもよい炭素数1〜5の2価の有機基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。)で表される(メタ)アクリル基を有する有機基を表す。なおこの場合、すべてのX基のうちの少なくとも1個は式(2)で表される基である。nは平均重合度であって1〜100の正数を表す。)
式(2)におけるR3はO、S、N、P、F、Cl、BrおよびSiを含有してもよい炭素数1〜5の2価の有機基であれば特に制限はないが、下記式(6)
【0023】
【化9】

【0024】
で表される部分構造のうち一種以上が好ましい。
又式(1)において、R1は4価の有機基を表す。Rとしては、下記式(4)
【0025】
【化10】

【0026】
(式(4)中R5はO、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の有機基のうち一種以上を、R6は直接結合又は、O、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の二価有機基のうち一種以上を表し、a、b、c、dは平均置換基数であってaおよびdは0〜2、bは0〜4、cは0〜3の正数を表す。)で表される芳香族残基のうちの一種であるのが好ましい。式(4)において、好ましいR5としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖および分岐状アルキル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロプロピル基等の直鎖および分岐状ハロアルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が挙げられ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全て同一であるものが好ましい。また、好ましいRとしては、直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−NH−、−(CH21〜6−、−C(CH32−、−C(CF32−、等が挙げられ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全て同一であるものが好ましい。
好ましいR1基としては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、メチレンジフタル酸無水物、イソプロピリデンジフタル酸無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物等の残基が挙げられ、中でもピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の残基が特に好ましい。(ここで残基とは、これらの化合物から4個のカルボキシル基を除いた残りの基をいう。)
更に、式(1)において、R2は2価の有機基を表す。R2としては、下記式(5)
【0027】
【化11】

【0028】
(式(5)中、R5、R6は前記と同じ意味であり、e、f、gは平均置換基数であってeおよびgは0〜4、d及びfは0〜6の正数を表す。)で表される芳香族残基のうち一種以上であるのが好ましい。
式(5)において、好ましいR5としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖および分岐状アルキル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロプロピル基等の直鎖および分岐状ハロアルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が挙げられ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全て同一であるものが好ましい。また、好ましいRとしては、直接結合、−O−、−CO−、−SO2−、−NH−、−(CH21〜6−、−C(CH32−、−C(CF32−、等が挙げられ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全て同一であるものが好ましい。
2の好ましい具体例としては、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、ジアミノメシチレン、ジアミノデュレン、ジアミノアゾベンゼン、ジアミノナフタレン、ジアミノビフェニル、ジアミノジメトキシビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジメチルジフェニルエーテル、メチレンジアニリン、メチレンビス(メチルアニリン)、メチレンビス(ジメチルアニリン)、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、イソプロピリデンジアニリン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアニリン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメチルベンゾフェノン、ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジメチルジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルホキシド、ジアミノフルオレンの残基挙げられ、中でもジアミノジフェニルエーテル、メチレンジアニリンの残基が特に好ましい。(ここで残基とは、各化合物において2個のアミノ基を除いた残りの基をいう。)
【0029】
本発明の構造式末端に感光性基を有するポリアミド酸は、前記式(3)の末端アミノ基ポリアミド酸(式(3)におけるR、R、nは前記と同じ意味である。)に、アミノ基と付加反応し得る官能基(例えば、グリシジル基、イソアネート基等)と(メタ)アクリル基とを有する化合物を例えば付加反応させることによってえられるものである。アミノ基と付加反応し得る官能基と(メタ)アクリル基を有する化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製:カレンズMOI(商品名))、(メタ)アクリル酸グリシジルオキシエチル等が挙げられる。
【0030】
式(3)で示される末端にアミノ基を有するポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、ジアミン過剰のモル比で反応させることによって得られる。
【0031】
ここで使用しうるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、メチレンジフタル酸無水物、イソプロピリデンジフタル酸無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物などが挙げられるが、中でもピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0032】
又、使用しうるジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、ジアミノメシチレン、ジアミノデュレン、ジアミノアゾベンゼン、ジアミノナフタレン等のベンゼン又はナフタレン系ジアミン;ジアミノビフェニル、ジアミノジメトキシビフェニル等のビフェニル系ジアミン;ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジメチルジフェニルエーテル等のフェニルエーテル系ジアミン;メチレンジアニリン、メチレンビス(メチルアニリン)、メチレンビス(ジメチルアニリン)、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、イソプロピリデンジアニリン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアニリン等のフェニルメタン系ジアミン;ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系ジアミン;ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジメチルジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルホキシドや、ジアミノフルオレンなどが挙げられ、中でもフェニルエーテル系ジアミン又はフェニルメタン系ジアミンが好ましく、ジアミノジフェニルエーテル又はメチレンジアニリンが特に好ましい。
また、これらのジアミン類はテトラカルボン酸二無水物に対して、102モル%以上で使用するのが好ましい。
【0033】
前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミンとの反応は通常不活性溶媒中で行われるが、使用しうる不活性溶媒としてはテトラカルボン酸二無水物およびジアミンと実質的に反応せず、かつテトラカルボン酸二無水物とジアミン、さらには得られるポリアミド酸を良好に溶解させる性質を有する溶媒であることが好ましい。この様な溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルイミダゾリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジンのような非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の無極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグライム、トリグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジオキサンや、トリオキサンなど、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。なかでもN−メチル−2−ピロリドンあるいはN,N−ジメチルアセトアミド単独、又はN−メチル−2−ピロリドンとN,N−ジメチルアセトアミドとからなる混合溶媒が好ましい。これら溶媒の使用量は、使用するジアミン0.1モルに対して、通常50〜1,000ml、好ましくは100〜500mlである。
【0034】
反応の終点は反応液の粘度測定によって確認出来る。例えば、回転粘度計により10〜10000PZa・sの粘度を示したら反応の終点とする。終点における粘度は原料の種類、使用量によって変わる。
【0035】
次に、本発明の構造式末端に感光性基を有するポリアミド酸の製造方法について、より具体的に説明する。
尚、本発明においては、末端アミノ基ポリアミド酸を合成する工程と、これからの構造末端に感光性基を有するポリアミド酸を得る工程は連続して同じ溶媒中で実施するのが好都合である。
まず、前記不活性溶媒に前記ジアミンの所定量を仕込み、次いで窒素などの不活性雰囲気下で撹拌しながら、所定量のテトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、反応させることによりポリアミド酸を得ることができる。末端アミノ基とするため、仕込むジアミンの量は、添加するテトラカルボン酸二無水物に対し、102モル%以上、好ましくは110〜130モル%である。反応温度は通常0〜100℃、好ましくは30〜70℃である。テトラカルボン酸二無水物の添加時間は10分〜6時間、添加後の反応時間は通常30分〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0036】
更に、上記末端アミノ基ポリアミド酸溶液に、アミノ基と付加反応し得る官能基と(メタ)アクリル基とを有する化合物を滴下等により添加し、付加反応させることにより本発明の構造式末端に感光性基を有するポリアミド酸を得ることができる。この場合、ハイドロキノンやメトキノン等の重合禁止剤や、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等の反応触媒を添加しても良い。アミノ基と付加反応し得る官能基と(メタ)アクリル基とを有する上記化合物の量は、アミノ基に対し、100〜120%当量、好ましくは102〜110%当量である。反応温度は通常20〜120℃、好ましくは50〜80℃である。反応時間は通常30分〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
反応の終点は、使用した各原料の残存量をガスクロマトグラフイー等により測定することにより確認される。また生成物の構造は反応液に貧溶媒を加え、目的物を析出させNMR測定等の機器分析を行うことにより確認される。
【0037】
本発明の感光性組成物は、構造式末端に感光性基を有するポリアミド酸と光重合開始剤とを含む重合性組成物であり、構造式末端に感光性能基を有するポリアミド酸を5重量%以上と、光重合開始剤を0.01重量%以上とを含有する混合体、混合溶液、反応体、変性体や、反応液であれば特に制限はなく、熱重合開始剤、増感剤、(メタ)アクリル基を有するモノマー、オリゴマーや、他のオリゴマー、ポリマー等を添加したものや、マレイン酸無水物や琥珀酸無水物等の酸無水物を、添加あるいは反応させたものであってもよい。
【0038】
本発明の感光性組成物を溶剤に溶解してなる本発明のワニスは、前記感光性組成物を溶剤で液状形態にしたものであり、溶剤は前記構造式末端に感光性基を有するポリアミド酸を合成するときに用いた溶媒が好ましい。このワニスには、場合によっては、種々の添加剤を加えることができ、例えば、有機又は無機顔料、染料、カブリ防止剤、退色防止剤、ハレーション防止剤、蛍光増白剤、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤、静電防止剤、消泡剤、流動調整剤、イミド化触媒、促進剤、脱水剤、遅延剤、光安定剤、光触媒、防かび剤、抗菌剤、低誘電体、導電体、磁性体や、熱分解性化合物等が添加出来る。
本発明のワニスにおける本発明の感光性組成物の含有量は10〜50重量%であるのが好ましい。
【0039】
本発明のフイルムは本発明の感光性組成物又はワニスをシート状に加工したもので、該フィルムは、前記ワニス等を平面又はフィルム支持体上に塗工し、加熱乾燥等により得られ、(メタ)アクリル基が完全に重合、硬化していない構造式末端に感光性基を有するポリアミド酸を有する固形分を、支持体より剥がすことなどにより得られる。この場合加熱乾燥の条件は使用した溶媒により適宜選択される。
【0040】
本発明の像は、例えば次のようにして作成される。まず、本発明の感光性組成物又はワニスを塗布したのち乾燥して得られた塗膜又はフィルムにフォトマスクを介して紫外線等を照射し、露光部の感光性基を重合せしめる。次いで現像処理、リンス処理を行い未露光部を除去する。このようにして得られた像は加熱閉環することによりポリイミド硬化物となる。加熱閉環はオーブン等により行われ、通常300〜500℃で加熱することにより行われる。この加熱閉環は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましく、通常1〜3時間程度加熱が行われる。尚、現像処理は、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いて常法により行うことが出来る。又、リンス処理は水、水と有機溶媒(例えば、メチルアルコール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類)の混合液などにより1〜数回洗浄する方法で行われる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
温度計、環流冷却器、粉末添加口、窒素導入口、攪拌装置のついた500mLの反応器に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル69.87g(0.349モル)と、N−メチル−2−ピロリドン104.0g、N,N−ジメチルアセトアミド222.0gを仕込み、乾燥窒素を流し、撹拌しながら反応器内が30℃以下となるよう、バスで冷却した。その後、反応器内を撹拌し40℃以下に保ち、ピロメリット酸二無水物57.09g(0.262モル)を1時間で添加し、さらに一晩反応させた。
次に、得られた末端アミノ基ポリアミド酸溶液を室温で撹拌しながら、メタクリル酸グリシジル24.81g(0.175モル)を30分で滴下し、その後、反応器内が60℃になるまで加熱し、さらに8時間反応させた。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、本発明の構造末端に重合性官能基を有するポリアミド酸を含む反応溶液を得た。この反応溶液100gを水350gに添加して析出した樹脂を蒸留水で洗浄し乾燥し、ポリアミド酸を得た。得られたポリアミド酸をFT−IR及びNMRにより分析を行うことにより次の構造式を有することが確認された。又、この反応溶液からは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びピロメリット酸二無水物はほぼ完全に消費されていることを確認した。
【0043】
【化12】

【0044】
実施例2
実施例1で得られた末端に重合性官能基を有するポリアミド酸の溶液に対して1.0重量%の光重合開始剤(イルガキュアー369:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)を添加し、溶解するまで撹拌し、本発明のワニスを得た。
【0045】
実施例3
実施例2で得られたワニスをガラス基板上にバーコーター(No.40)を用いて塗布し、100℃で10分乾燥させ、ガラス基板を除きシート状に加工された本発明のフイルム(厚さ12μm)を得た。
【0046】
実施例4
実施例3で得られたフイルム上にテストパターンの形成されたフォトマスクを密着せしめコンタクトアライナーを用いて高圧水銀灯により紫外線を照射した。
その後このフイルムを5重量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して現像し、蒸留水で十分洗浄したのちイソプロパノール/エタノール(重量比1/1)の混合液で洗浄し、100℃で10分乾燥し、明瞭な像の形成されたフィルムを得た。
【0047】
実施例5
実施例4で得られた像の形成されたフィルムをガラス基板上にクリップで固定し、窒素置換したイナートオーブン(ヤマト製 DN4101)中において、100℃から350℃迄およそ2時間で昇温し、350℃で1時間保持した後冷却し、本発明の硬化物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される感光性ポリアミド酸。
【化1】

(式(1)中、R1は4価の有機基を表し、R2は2価の有機基を表す。Xは水素原子又は下記式(2)
【化2】

(式(2)中、R3はO、S、N、P、F、Cl、BrおよびSiを有してもよい炭素数1〜5の2価の有機基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表す。)で表される(メタ)アクリル基を有する有機基を表す。nは平均重合度であって1〜100の正数を表す。又、複数ある基Xのうち少なくとも1個は上記式(2)の基である。)
【請求項2】
が、下記式(4)
【化3】

(式(4)中、R5はO、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の有機基のうち一種以上を、R6は直接結合又は、O、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数1〜6の二価有機基のうち一種以上を表し、a、b、c、dは平均置換基数であってaおよびdは0〜2、bは0〜4、cは0〜3の正数を表す。)で表される芳香族残基のうちの一種である請求項1に記載の感光性ポリアミド酸。
【請求項3】
2が、下記式(5)
【化4】


(式(5)中、R5、R6は前記と同じ意味であり、e、f、gは平均置換基数であってeおよびgは0〜4、d及びfは0〜6の正数を表す。)で表される芳香族残基のうち一種である請求項1又は請求項2に記載の感光性ポリアミド酸。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の感光性ポリアミド酸と光重合開始剤を含有する感光性組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性組成物を溶剤に溶解してなるワニス。
【請求項6】
請求項4に記載の感光性組成物又は請求項5に記載のワニスをシート状に加工したフィルム。
【請求項7】
請求項4に記載の感光性組成物又は請求項5に記載のワニスを用いパターニングして得られる像。
【請求項8】
請求項7に記載の像を硬化して得られる硬化物。
【請求項9】
下記式(3)
【化5】

(式(3)中、R1、R2、nは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)で表される末端アミノ基ポリアミド酸に、アミノ基と付加反応し得る官能基と請求項1に記載の式(2)で示される基を有する化合物を反応させることを特徴とする請求項1に記載の感光性ポリアミド酸の製造法。

【公開番号】特開2006−193691(P2006−193691A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9161(P2005−9161)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】