説明

感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】優れたアルカリ現像性を有し、難燃性及び絶縁信頼性に優れた硬化膜を形成可能であり、且つ、基板上に硬化膜を形成した際の基板の反りの発生及び反発力の増大を十分に抑制することが可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、(B)エチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)リン含有化合物及び(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、(A)ポリウレタン化合物の二重結合当量が600〜2000g/molである、感光性樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造業界では従来、プリント配線板上にソルダーレジストを形成することが行われている。このソルダーレジストは、実装部品をプリント配線板に接合するためのはんだ付け工程において、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ役割を有している他、実装部品接合後のプリント配線板の使用時においては導体層の腐食を防止したり導体層間の電気絶縁性を保持したりする永久マスクとしての役割も有している。
【0003】
ソルダーレジストの形成方法としては、例えば、プリント配線板の導体層上に熱硬化性樹脂をスクリーン印刷する方法が知られている。しかし、このような方法ではレジストパターンの高解像度化に限界があるため、近年のプリント配線板の高密度化に対応させることが困難になってきている。
【0004】
そこで、レジストパターンの高解像度化を達成するために、フォトレジスト法が盛んに用いられるようになってきている。このフォトレジスト法は、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を形成し、この感光性樹脂組成物層を所定パターンの露光により硬化させ、未露光部分を現像により除去して所定パターンの硬化膜を形成するものである。
【0005】
また、かかる方法に使用される感光性樹脂組成物は、作業環境保全、地球環境保全の点から、炭酸ナトリウム水溶液等の希アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型のものが主流になってきている。このような感光性樹脂組成物としては、例えば、下記特許文献1に記載の液状レジストインキ組成物や、下記特許文献2に記載の感光性熱硬化性樹脂組成物等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平1−141904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、各種工業製品の火災に対する難燃化の規制が厳しくなっており、プリント配線板等に使用される材料も例外ではない。難燃化する方法としては、材料中にハロゲン系化合物、アンチモン系化合物、リン系化合物、ホウ素系化合物、無機充填剤等を添加する方法が一般的に知られている。
【0008】
しかし、最近では、環境問題、人体に対する安全性問題への関心の高まりと共に、非公害性、低有毒性、安全性へと重点が移り、単に燃えにくいだけでなく、有害ガス及び発煙性物質の低減が要望されつつある。これを受けて、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を使用しない難燃基板が既に開発・実用化され始めている。
【0009】
しかしながら、上記のような難燃基板上に、上記特許文献1及び2に記載されているような従来の感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成すると、十分な難燃性(UL94 V−0)を確保することができなくなってしまうことが本発明者らの検討により判明している。
【0010】
また、近年の電子機器の小型化薄型化に伴い、難燃性とともに、部品実装時の基板の反り、反発力の低減の要求が多くなっている。これに対し、難燃性に優れた感光性樹脂組成物であっても、形成される硬化物の可撓性や絶縁信頼性(耐HAST性)が充分ではないことがある。
【0011】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れたアルカリ現像性を有し、難燃性及び絶縁信頼性に優れた硬化膜を形成可能であり、且つ、基板上に硬化膜を形成した際の基板の反りの発生及び反発力の増大を十分に抑制することが可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このような感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するポリウレタン化合物と、リン含有化合物とを感光性樹脂組成物に含有させることで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、(B)エチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)リン含有化合物及び(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、(A)ポリウレタン化合物の二重結合当量が600〜2000g/mol以下である感光性樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(E)成分を含有することにより、希アルカリ水溶液による現像が可能となるとともに、該感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜の難燃性及び絶縁信頼性を高い水準で満足させることができ、更に部品実装時の基板の反り及び反発力を抑制できる。本発明の感光性樹脂組成物によれば、十分な難燃性を有する硬化膜を高解像度で効率よく形成することが可能となる。
【0015】
また、本発明の感光性樹脂組成物によれば、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を含まずに硬化膜の難燃性を十分高いものとすることができることから、例えば、プリント配線板の環境負荷や毒性を低減することが可能となる。特に、本発明の感光性樹脂組成物を非ハロゲン系或いは非アンチモン系の難燃基板に適用する場合、上記の効果が更に有効に奏される。
【0016】
また、上記感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を向上する観点から、(A)ポリウレタン化合物の酸価は、25〜100mgKOH/gであることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物において、(C)リン含有化合物が、下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩を含むと、感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜の難燃性をより向上することができる。また、上記ホスフィン酸塩は加水分解され難い構造であり、電気絶縁性を低下させるイオン性不純物の発生を有効に防止することができるため、硬化膜の絶縁信頼性をより向上させることができる。
【0018】
【化1】


[式(1)中、A及びBは各々独立に、直鎖状の若しくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属を示し、mは1〜4の整数を示す。]
【0019】
感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の難燃性及び可とう性を両立する観点から、感光性樹脂組成物中のリン含有量は、1.5〜5.0質量%であることが好ましい。
【0020】
本発明は、支持体と、該支持体上に形成された上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える感光性エレメントを提供する。
【0021】
かかる感光性エレメントによれば、上記感光性樹脂組成物層を備えることにより、優れたアルカリ現像性を有し、難燃性及び絶縁信頼性に優れた硬化膜を形成可能であり、且つ、基板上に硬化膜を形成した際の基板の反りの発生及び反発力の増大を十分に抑制することが可能となる。また、本発明の感光性エレメントによれば、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を用いることなく十分な難燃性を有することから、低環境負荷、低毒性、高解像度のプリント配線板の効率的な生産が可能となる。
【0022】
本発明はまた、上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、感光性樹脂組成物層の露光部以外の部分を現像により除去する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法を提供する。
【0023】
本発明は更に、上記本発明のレジストパターンの形成方法により、基板上に永久マスクを形成する工程を有する、プリント配線板の製造方法を提供する。
【0024】
上記レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法によれば、本発明の感光性樹脂組成物を用いているため、難燃性、可とう性及び絶縁信頼性に優れ、且つ、反りが抑制された永久マスク(ソルダーレジスト)等の硬化膜を効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、優れたアルカリ現像性を有し、難燃性及び絶縁信頼性に優れた硬化膜を形成可能であり、且つ、基板上に硬化膜を形成した際の基板の反りの発生及び反発力の増大を十分に抑制することが可能な感光性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0028】
[感光性樹脂組成物]
先ず、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、(B)エチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)リン含有化合物及び(E)熱硬化剤とを含有するものである。以下、本実施形態の感光性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0029】
<(A)成分>
(A)成分は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物であり、二重結合当量が600〜2000g/molである。すなわち、(A)成分は、希アルカリ水溶液に可溶な骨格を有する重合性のポリウレタン化合物である。(A)成分としては、例えば、(a)ジグリシジル化合物及び(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、(b)ジイソシアネート化合物と、(c)カルボキシル基を有するジオール化合物と、を反応させて得られるポリウレタン化合物を用いることができる。
【0030】
上記ポリウレタン化合物は、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物(以下、「原料エポキシアクリレート」という)、ジイソシアネート化合物(以下、「原料ジイソシアネート」という)及び、ジオール化合物(以下、「原料ジオール」という)を原料成分として得られる。まず、これらの原料成分について説明する。
【0031】
原料エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物等に(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0032】
原料ジイソシアネートとしては、イソシアナト基を2つ有する化合物であれば特に制限なく適用できる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、N−アシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナン−ジイソシアネートメチル等が挙げられる。
【0033】
原料ジオールは、分子内に、水酸基を2つ有するとともに、カルボキシル基を有している化合物である。水酸基としては、イソシアネートとの反応性の高いアルコール性水酸基であることが好ましい。このようなジオール化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が例示できる。
【0034】
また、原料ジオールとして上記以外のジオール化合物をさらに組み合わせて適用することも可能である。上記以外のジオール化合物を組み合わせることで、(A)成分の酸価や二重結合当量を容易に調節することが可能である。
【0035】
次に、上述した原料成分を用いてポリウレタン化合物を製造する工程の例について説明する。
【0036】
すなわち、ポリウレタン化合物の製造工程では、まず、原料エポキシアクリレート及び原料ジオールを、原料ジイソシアネートと反応させる。かかる反応においては、主に、原料アクリレートにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアナト基との間、及び、原料ジオールにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアナト基との間で、いわゆるウレタン化反応が生じる。この反応により、例えば、原料エポキシアクリレートに由来する構造単位と、原料ジオールに由来する構造単位とが、原料ジイソシアネートに由来する構造単位を介して交互に又はブロック的に重合されたような中間体が生じる。
【0037】
次に、このような中間体と原料エポキシとを反応させて、ポリウレタン化合物を得る。この反応では、主に中間体におけるジオール化合物に由来するカルボキシル基と、原料エポキシの有するエポキシ基との間でいわゆるエポキシカルボキシレート化反応が生じる。このようにして得られるポリウレタン化合物は、例えば、上述した中間体から形成される主鎖と、原料エポキシアクリレートや原料エポキシに由来するエチレン性不飽和基を含む側鎖とを備えるものとなる。
【0038】
上述したポリウレタン化合物の製造工程では、中間体を得る工程において、原料エポキシアクリレート、原料ジオール及び原料ジイソシアネート以外に、これらとは異なるジオール化合物を更に添加してもよい。これにより、得られるポリウレタン化合物の主鎖構造を変えることが可能となり、後述する酸価等の特性を所望の範囲に調整できる。また、上述した各工程では、適宜、触媒等を用いてもよい。
【0039】
上述のポリウレタン化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0040】
【化2】

【0041】
式(2)中、R11は原料エポキシアクリレートの残基を示し、R12は原料イソシアネートの残基を示し、R13は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R14は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。
【0042】
11としては、例えば、ビス(4−オキシフェニル)−メタン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビスフェノールA型又はビスフェノールF型骨格、ノボラック骨格及びフルオレン骨格が挙げられる。R12としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、テトラメチルキシリレン、ジフェニルメチレン、ヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、ジシクロヘキシルメチレン及びイソホロンが挙げられる。また、炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基及びアミル基が挙げられる。
【0043】
上記一般式(2)のような構造を有するポリウレタン化合物を感光性樹脂組成物に含有させることによって、アルカリ現像性、難燃性、可とう性(耐折曲げ性・低反り・低反発力)をより向上することができる。
【0044】
(A)成分の二重結合当量は600〜2000g/molであり、700〜1500g/molであることが好ましく、800〜1200g/molであることがより好ましい。(A)成分の二重結合当量が600g/mol以上であることで、可とう性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られ、2000g/mol以下であることで、絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られる
【0045】
(A)成分の二重結合当量は、下記方法で測定したヨウ素価の値により求めることができる。
【0046】
<ヨウ素価の測定方法>
測定試料であるポリウレタン化合物を0.25〜0.35gの範囲で精秤し、200mLのヨウ素フラスコに入れ、30mLのクロロホルムを添加して完全に溶解する。該溶液に、Wijs試薬(三塩化ヨウ素7.9g及びヨウ素8.2gをそれぞれ200〜300mL氷酢酸に溶解後、両液を混合して1Lとする)をホールピペットで正確に20mL加え、次いで2.5%酢酸第二水銀氷酢酸溶液10mLを添加後、20分間暗所に放置して反応を完結させる。上記溶液に新しく調製した20%KI溶液を5mL添加し、1%澱粉溶液を指示薬として用い、0.1N−Na標準液で滴定する。同時に空試験も行って、以下の式によりヨウ素価Yを計算し、ヨウ素価より二重結合当量を算出できる。
ヨウ素価Y=(A−B)×f×1.27/S
二重結合当量(g/mol)=100×254/Y
A:空試験に要した0.1N−Na標準液の量(mL)
B:本試験に要した0.1N−Na標準液の量(mL)
f:0.1N−Na標準液の力価
S:試料の重量(g)
【0047】
(A)成分の酸価は、25〜100mgKOH/gであることが好ましく、45〜90mgKOH/gであることがより好ましく、55〜80mgKOH/gであることがさらに好ましい。(A)成分の酸価が25mgKOH/g以上であることで、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性が良好となり、優れた解像度が得られ易くなり、酸価が100mgKOH/g以下であることで、可とう性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られる易くなる。
【0048】
(A)成分の酸価は、以下の方法により測定することができる。まず、(A)成分としての樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、滴定結果より下記式(3)により酸価を算出する(式中、Vfはフェノールフタレインの滴定量(mL)を示し、Wpは(A)成分としての樹脂溶液の重量(g)を示し、Iは(A)成分としての樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。)。
酸価(mgKOH/g)=10×Vf×56.1/(Wp×I) (3)
【0049】
(A)成分の重量平均分子量は、感光性樹脂組成物の成膜性、硬化膜の耐クラック性及び耐HAST性を向上する観点から、2000〜30000であることが好ましく、3000〜25000であることがより好ましい。
【0050】
(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値により求めることができる。なお、GPCにおける測定の条件は以下のとおりである。
カラム:Gelpack GL−R440+GL−R450+GL−R400M
流量:2.05mL/分
濃度:120mg/5mL
注入量:200μL
溶離液:THF
【0051】
(A)成分としては、市販のものを利用することができ、例えば、UN−5507(根上工業社製、商品名)、UXE−3052、UXE−3063(日本化薬社製、商品名)等が入手可能である。
【0052】
感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の難燃性及び可とう性を良好に発現する観点から、感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、5〜90質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量が5質量%より少ないと、難燃性が低下する傾向があり、90質量%より多いと、希アルカリ水溶液による現像が困難になる傾向がある。
【0053】
<(B)成分>
(B)成分である重合性モノマーは、分子内に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である。このような重合性モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられる。これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が例示可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。
【0055】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートプロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CHCHO−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CHCH(CH)O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0060】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニルが挙げられる。上記のα,β−不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
ウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
(B)成分の含有量は、解像性及び難燃性の観点から、感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量が、1〜30質量%であることが好ましく、4〜25質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量が1質量%より少ない場合は実装時の基板の反り及び反発力を抑制しにくくなる傾向があり、30質量%より多い場合は難燃性が低下する傾向がある。
【0064】
<(C)成分>
(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヘラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1,2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
(C)成分は、感度及び解像度を良好にする観点から、アクリジン誘導体を含むことが好ましく、中でも1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンを含むことがより好ましい。1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンは、「N−1717」(旭電化工業(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0066】
(C)成分の含有量は、光感度の観点から、感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量が、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましい。
【0067】
<(D成分>
(D)成分である、リン含有化合物は下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩を含むことが好ましい。
【0068】
【化3】

【0069】
ここで、一般式(1)中、A及びBは各々独立に、直鎖状若しくは分枝状の炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、中でも直鎖状又は分枝状の炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の金属を示し、中でもAlであることが好ましい。mは1〜4の整数を示す。
【0070】
A及びBの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基等が挙げられ、中でもメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0071】
また、上記一般式(2)で表されるホスフィン酸塩の80質量%以上は、感光性樹脂組成物及び感光性エレメントに用いた際の信頼性の見地から、その粒子径が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが特に好ましい。粒子径が小さくなることで、感光性樹脂組成物の解像性が向上するとともに、塗膜外観がより良好になる傾向がある。
【0072】
上記のホスフィン酸塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記ホスフィン酸塩は市販品として購入することもでき、例えば、EXOLIT OP 930、EXOLIT OP 935、EXOLIT OP 940(いずれもクラリアント社製、商品名)を用いることもできる。
【0073】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(D)成分として、更にリン酸エステルを含有することもできる。これにより、硬化膜の難燃性を更に向上することができ、リン酸エステルが可塑剤として働くため、硬化膜の可とう性が更に向上することができる。リン酸エステルの具体例としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、1,3−ジヒドロキシベンゼン・トリクロロホスフィン重縮合物のフェノール縮合物、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン・トリクロロホスフィンオキシド重縮合物のフェノール縮合物等が挙げられる。これらは市販のものを入手可能であり、例えば、TPP、TCP、TXP、CDP、XDP、CR−733S、CR−741、CR−747(いずれも大八化学社製、商品名)、PFR、FP−600及びFP−700(いずれもアデカ社製、商品名)等が挙げられる。
【0074】
感光性樹脂組成物中のリン含有量は、1.5〜5.0質量%であると好ましく、2.0〜4.5質量%であるとさらに好ましい。リン含有量が1.5質量%より少ないと、難燃性が低下する傾向があり、5.0質量%より多いと硬化膜の耐折性が低下する傾向がある。よって、(D)成分は、上記リン含有量の範囲になるように感光性樹脂組成物に含有させることが好ましい。
【0075】
<(E)成分>
(E)成分である熱硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性の化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型三級脂肪酸変性ポリオールエポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル類、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等のジグリシジルアミン類等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して使用してもよい。
【0076】
また、(E)成分である熱硬化剤として、潜在性の熱硬化剤であるブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。ブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジシソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0077】
硬化膜の難燃性及び絶縁信頼性の観点から、感光性樹脂組成物中の(E)成分の含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、8〜25質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量が30質量%より多いと、難燃性が低下する傾向があり、5質量%より少ないと、実装時における基板の反りや反発性が生じ易くなる傾向がある。
【0078】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤若しくはp−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料若しくは二酸化チタン等の無機顔料、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム若しくは硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、消泡剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料或いはイメージング剤などを含有させることができる。これらの成分は、感光性樹脂組成物中の含有量として、各々0.01〜20質量%程度含有させることが好ましい。また、上記の成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
更に、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液として塗布することができる。
【0080】
なお、本実施形態における(A)〜(E)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中に含まれる固形分としての含有量であり、感光性樹脂組成物中の各含有量を算出する際には上記溶剤の含有量は考慮しないものとする。
【0081】
(感光性エレメント)
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性エレメント1は、支持体10上に感光性樹脂組成物層14が積層された構造を有する。感光性樹脂組成物層14は、上述した本発明の感光性樹脂組成物からなる層である。
【0082】
支持体10としては、例えば、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属プレートや、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルム等を用いることができる。支持体の厚みは、1μm〜100μmであることが好ましい。
【0083】
感光性樹脂組成物層14は、上記本発明の感光性樹脂組成物を液状レジストとして支持体10上に塗布することで形成することができる。
【0084】
塗布の方法としては、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の方法が挙げられる。また、溶剤の除去は例えば加熱により行うことができ、その場合の加熱温度は約70℃〜150℃であると好ましく、加熱時間は約5分間〜約30分間であると好ましい。
【0085】
このようにして形成された感光性樹脂組成物層14中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下であることが好ましい。
【0086】
また、感光性樹脂組成物層14の厚みは、用途により異なるが、溶剤を除去した後の厚みが1μm〜100μm程度であることが好ましい。
【0087】
感光性エレメント1においては、必要に応じて、感光性樹脂組成物層14の支持体側と反対側の面F1を保護フィルム(図示せず)で被覆していてもよい。
【0088】
保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムが挙げられる。また、保護フィルムは、低フィッシュアイのフィルムであることが好ましく、保護フィルムと感光性樹脂組成物層14との間の接着力は、保護フィルムを感光性樹脂組成物層14から剥離しやすくするために、感光性樹脂組成物層14と支持体10との間の接着力よりも小さいことが好ましい。
【0089】
感光性エレメント1は、支持体10と感光性樹脂組成物層14との間、及び/又は、感光性樹脂組成物層14と保護フィルムとの間に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層又は保護層を更に備えていてもよい。
【0090】
感光性エレメント1は、例えば、そのままの平板状の形態で、又は感光性樹脂組成物層の一方の面に(保護されず露出している面に)保護フィルムを積層して、円筒状などの巻芯に巻きとり、ロール状の形態で貯蔵することができる。巻芯としては、従来用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。貯蔵時には、支持体が最も外側になるように巻き取られることが好ましい。また、ロール状に巻き取られた感光性エレメント(感光性エレメントロール)の端面には、端面保護の観点から端面セパレータを設置することが好ましく、加えて耐エッジフュージョンの観点から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、感光性エレメント1を梱包する際には、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0091】
(レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法)
本発明のレジストパターンの形成方法は、上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、感光性樹脂組成物層の露光部以外の部分(未露光部)を現像により除去する現像工程と、を有する方法である。ここで、基板としては、フレキシブルプリント配線板等が挙げられる。
【0092】
基板上への感光性樹脂組成物層の積層は、例えば、感光性樹脂組成物を、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、カーテンコート法、静電塗装法等の方法で10〜200μmの膜厚で基板上に塗布し、塗膜を60〜110℃で乾燥させることで行うことができる。
【0093】
また、上記感光性エレメント1を用いて基板上への感光性樹脂組成物層の積層を行ってもよい。その場合の積層方法としては、感光性エレメント1が保護フィルムを備える場合には保護フィルムを除去した後、感光性樹脂組成物層14を70℃〜130℃程度に加熱しながら基板に0.1MPa〜1MPa程度(1kgf/cm〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着する方法等が挙げられる。かかる積層工程は減圧下で行ってもよい。感光性樹脂組成物層14が積層される基板の表面は、通常金属面であるが、特に制限されない。
【0094】
このようにして基板上に積層された感光性樹脂組成物層に対して、ネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化させる。この際、感光性エレメント1を用いて感光性樹脂組成物層14を積層した場合には、感光性樹脂組成物層14上に支持体10が存在することになるが、この支持体10が活性光線に対して透明である場合には、支持体10を通して活性光線を照射することができ、支持体10が活性光線に対して遮光性を示す場合には、支持体10を除去した後に感光性樹脂組成物層14に活性光線を照射する。
【0095】
活性光線の光源としては、従来公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、レーザー直接描画露光法等も用いることができる。
【0096】
露光部の形成後、露光部以外の感光性樹脂組成物層(未露光部)を現像により除去することで、レジストパターンが形成される。かかる未露光部の除去方法としては、感光性樹脂組成物層14上に支持体10が存在する場合にはオートピーラー等で支持体10を除去し、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウェット現像、あるいはドライ現像等で未露光部を除去して現像する方法等が挙げられる。ウェット現像に用いるアルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすると好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調整される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
【0097】
次に、現像後の処理として露光部を後露光(紫外線露光)及び/又は後加熱によって十分に硬化させて硬化膜を得る。後露光は、1〜5J/cmの露光量で行うことが好ましい。後加熱は、100〜200℃で30分〜12時間行うことが好ましい。
【0098】
本発明のプリント配線板の製造方法は、上記本発明のレジストパターンの形成方法により、基板上に永久マスクを形成する工程を含む方法である。こうして形成される永久マスクは、フレキシブルプリント配線板に要求される十分な可とう性を有しているとともに、現像性、密着性、耐PCT性、耐電食性及び耐熱衝撃性にも優れ、且つ、反りが十分に抑制されている。そのため、この永久マスクは、プリント配線板におけるソルダーレジストや層間絶縁膜等として有効に機能する。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
まず、表1に示す各成分をそこに示す固形分の配合比(重量基準)で混合することにより感光性樹脂組成物溶液を得た。
【0101】
なお、表1中の各成分は下記のとおりである。
【0102】
(A−1)成分は、二重結合当量900g/mol及び酸価57.2mgKOH/gのポリウレタン化合物(日本化薬社製、商品名「UXE−3063」)であり、(A−2)成分は、二重結合当量600g/mol及び酸価58.2mgKOH/gのポリウレタン化合物(日本化薬社製、商品名「UXE−3052」)であり、(A−3)成分:二重結合当量1076g/mol及び酸価78mgKOH/gのポリウレタン化合物(根上工業社製、商品名「UN−5507」)である。
【0103】
(A’−1)成分は、二重結合当量550g/mol及び酸価57.8mgKOH/gのポリウレタン化合物(日本化薬社製、商品名「UXE−3044」)であり、(A’−2)成分は、二重結合当量15000g/mol及び酸価28.9mgKOH/gのポリウレタン化合物(共栄社社製、商品名「UF−TC455」)である。これらは、(A)成分には該当しないポリウレタン化合物である。
【0104】
(B)成分は、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのメタクリル酸エステル(日立化成工業社製、商品名「FA−321M」)である。
【0105】
(C)成分は、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン(旭電化工業社製、商品名「N−1717」)である。
【0106】
(D)成分は、ホスフィン酸塩(クラリアント社製、商品名「EXOLIT OP 935」、リン含有量=23質量%)である。
【0107】
(E)成分は、液状タイプビスフェノール型エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名「YDF−170」)である。
【0108】
【表1】

【0109】
[感光性エレメントの作製]
次いで、上記感光性樹脂組成物の溶液を、それぞれ別の支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製、商品名「G2−16」)上に、均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成し、それを熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、25μmであった。
【0110】
続いて、感光性樹脂組成物層の支持層と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ社製、商品名「NF−13」)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性エレメントを得た。
【0111】
[評価用積層体の作製]
18μm厚の銅箔をポリイミド基材に積層したフレキシブルプリント配線板用基板(ニッカン工業社製、商品名「F30VC1」)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。
【0112】
このフレキシブルプリント配線板用基板上に連続式真空ラミネータ(日立化成工業株式会社製、商品名「HLM−V570」)を用いて、ヒートシュー温度100℃、ラミネート速度0.5m/分、気圧4000Pa以下、圧着圧力0.3MPaの条件の下、得られた感光性エレメントを、ポリエチレンフィルムを剥離しつつ感光性樹脂組成物層を銅箔側にして積層し、評価用積層体を得た。
【0113】
[光感度の評価]
得られた上記評価用積層体上に、ネガとしてストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールを密着させ、オーク製作所社製HMW−201GX型露光機を使用して、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。続いて、常温で一時間静置して、PETフィルムを剥離した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を15秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。光感度を評価する数値として、上記エネルギー量を用いた。この数値が低いほど、光感度が高いことを示す。結果を表2に示す。
【0114】
[解像度の評価]
ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを評価用積層体上に密着させ、上述した露光機を用いて、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。続いて、常温で一時間静置して、PETフィルムを剥離した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を15秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。ここで、解像度は、現像処理によって矩形のレジスト形状が得られたライン幅間のスペース幅の最も小さい値(単位:μm)により評価した。この値が小さいほど、解像度に優れていることを示す。結果を表2に示す。
【0115】
[評価用FPCの作製]
ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、評価用ネガとして配線パターンを有するフォトツールとを評価用積層体上に密着させ、上述した露光機を使用して、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、該積層体上のPETフィルムを剥離し、光感度評価の場合と同様の現像液及び現像条件でスプレー現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、カバーレイを形成した評価用FPCを得た。
【0116】
[可撓性(耐折性)の評価]
上述のようにして得られた評価用FPCを、ハゼ折りにより180°折り曲げを繰り返して行い、その際のカバーレイにおけるクラックが発生するまでの回数を顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、5回以上折り曲げてもカバーレイにクラックが認められないものは「A」とし、クラックが発生するまでの回数が2〜5回のものは「B」とし、クラックが発生するまでの回数が2回以下のものは「C」とした。結果を表2に示す。
【0117】
[難燃性の評価]
銅箔張積層板(新日鐵化学社製、商品名「エスパネックスMB」のシリーズ)の銅箔をエッチングにより除去して厚さ25μmのPIフィルムを得た。次いで、そのPIフィルムの両面にそれぞれ、連続式真空ラミネータ(日立化成工業社製、商品名「HLM−V570」)を用いて、ヒートシュー温度100℃、ラミネート速度0.5m/分、気圧4000Pa以下、圧着圧力0.3MPaの条件の下、上述の感光性エレメントを、ポリエチレンフィルムを剥離しつつ感光性樹脂組成物層をPIフィルム側にして積層して積層体を得た。
【0118】
次に、オーク製作所社製HMW−201GX型露光機を使用して、上記感光性エレメントのそれぞれの感光性樹脂組成物層の露光を、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となる上記エネルギー量で行った。続いて、常温で1時間静置して、ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層体から剥離した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を積層体に15秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。
【0119】
次いで、160℃で60分間加熱処理を行うことにより、カバーレイを形成した難燃性評価用サンプルを得た。この難燃性評価用サンプルついて、UL94規格に準拠した薄材垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0又はVTM−1と表した。結果を表2に示す。
【0120】
[反りの評価]
評価用FPCを、一定のサイズ(20mm×25mm)にカットし、260℃のホットプレート上に60秒間放置した後に、カバーレイが形成された面が下側になるようにして、水平な基準面上に置いた。この際、評価用FPCに反りが生じている場合は、カバーレイが形成された面(下面)が基準面から上方に浮いた状態になるので、基準面から下面までの距離が最も長い部分のその距離を測定した。この距離が3mm以下のものはA、3〜10mmのものはB、円筒状になるものはCと評価した。
【0121】
[反発性(スティフネス性)の評価]
評価用FPCを、一定のサイズ(30mm×25mm)にカットして試験片を作製し、JIS L 1096の曲げ反発性のA法(ガーレ法)に準拠して、ガーレー式スティフネステスター(テスター産業社製)を用いて反発性(スティフネス性)を測定した。この測定において、試験片が振子から離れる時の目盛の読み(RG、単位:mgf)を反発性の値とした。この値が小さいほど、低反発であることを示す。
【0122】
「耐めっき性の評価」
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(日立化成工業社製、商品名「E−679」)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗した後、乾燥した。このプリント配線板用基板上に連プレス式真空ラミネータ(名機製作所製、商品名「MVLP−500」)を用いて、プレス熱板温度60℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒間、気圧4KPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。
【0123】
ラミネート後の評価用積層体を、常温(25℃)で1時間静置した後、上記評価用積層体の上から、格子状のパターンを有するネガマスクを密着させ、オーク製作所社製HMW−201GX型露光機を使用して、上記感光性エレメントの感光性樹脂組成物層の露光を、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となる上記エネルギー量で行った。それぞれの評価用積層体に照射したエネルギー量は表2中に記載した。
【0124】
露光後、評価用積層体上のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像を行った。これにより、感光性樹脂組成物層が硬化されてなるパターンを形成した。続いて、160℃で60分間加熱処理を行うことにより、プリント配線板用基板上にカバーレイを形成した評価用基板を得た。
【0125】
上記評価用基板に対し、無電解ニッケルめっき(上村工業社製、商品名「ニムデンNPR−4」)を施し(15分間処理)、更に無電解金めっき(上村工業社製、商品名「ゴブライトTAM−54」)を施した(10分間処理)。
【0126】
このようにしてめっきが施された評価用基板に対し、カバーレイ底部へのめっき液の染み込み、並びに、基板からのカバーレイの浮き及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイ底部への染み込みが認められず、カバーレイの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「C」とした。また、ソルダーレジスト底部へ僅かに染み込みが認められるものの実用上全く問題ないものは実施例間での差を明らかにするために「B」とした。
【0127】
「はんだ耐熱性の評価」
上記「耐めっき性」試験と同様にして得られたカバーレイを有する評価用基板を用い、以下のようにしてはんだ耐熱性の評価を行った。すなわち、評価用基板に対し、ロジン系フラックス(タムラ化研社製、商品名「MH−820V」)を塗布した後、288℃のはんだ浴中に10秒間浸漬するはんだ処理を行った。
【0128】
このようにしてはんだめっきを施された評価用基板上のカバーレイのクラック発生状況、並びに、基板からのカバーレイの浮き程度及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察した。その結果を、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイのクラックの発生が認められず、カバーレイの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「B」とした。
【0129】
「HAST耐性の評価」
まず、12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(日立化成工業社製、商品名「E−679」)の銅表面を、エッチングによりライン/スペースが50μm/50μmのくし型電極に加工した。これを、評価用配線板とした。
【0130】
この評価用配線板におけるくし型電極上に、上記「耐めっき性」試験と同様にしてレジストの硬化物からなるカバーレイを形成し、これを評価用基板とした。この評価用基板を、130℃/85%/6Vの条件で超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に100時間晒した。試験後、各評価用基板におけるマイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイに大きなマイグレーションが発生しなかったものは「A」とし、大きくマイグレーションが発生したものは「C」とした。マイグレーションとは、銅電極からソルダーレジストへ銅が溶出し、析出することにより、電極周辺のソルダーレジストの変色や絶縁抵抗の低下が起こる現象である。
【0131】
【表2】

【0132】
表2から明らかなように、実施例1〜4の感光性樹脂組成物によれば、十分な光感度及び解像度が得られることが確認された。また、実施例1〜4の感光性樹脂組成物から形成された硬化膜を備える積層板は、十分な難燃性(VTM−0)、耐めっき性、はんだ耐熱性及び耐HAST性を有していることが確認された。更に、実施例1〜4の感光性樹脂組成物を用いることによって、反り及び反発力が十分に低減されたFPCが得られることがわかった。
【符号の説明】
【0133】
1…感光性エレメント、10…支持体、14…感光性樹脂組成物層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、(B)エチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)リン含有化合物及び(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)ポリウレタン化合物の二重結合当量が600〜2000g/molである、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリウレタン化合物の酸価が、25〜100mgKOH/gである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)リン含有化合物が、下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】


[式(1)中、A及びBは各々独立に、直鎖状の若しくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属を示し、mは1〜4の整数を示す。]
【請求項4】
リン含有量が、1.5〜5.0質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、
前記感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、
前記感光性樹脂組成物層の前記露光部以外の部分を現像により除去する現像工程と、
を有するレジストパターンの形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のレジストパターンの形成方法により、基板上に永久マスクを形成する工程を有する、プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−215771(P2012−215771A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81871(P2011−81871)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】