説明

感光性樹脂組成物、感光性樹脂積層体、レジストパターン形成方法及び導体パターン製造方法

【課題】感度、解像度及び密着性に優れ、ドライフィルム保存時の脱色が起こらず、かつアルカリ性水溶液によって現像しうる感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】(a)カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子:20〜80質量%、(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマー:5〜60質量%、(c)光重合開始剤:0.1〜20質量%、及び(d)分子内にグリシジル基を2つ有する特定構造のアルキレンオキシド化合物:0.10〜1.0質量%を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性水溶液によって現像可能なネガ型の感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を支持体上に積層してなる感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いて基板上にレジストパターンを形成する方法、及び該レジストパターンの用途に関する。本発明は、さらに詳しくは、プリント配線板の製造、フレキシブルプリント配線板の製造、ICチップ搭載用リードフレーム(以下、リードフレームという)の製造、メタルマスク製造等の金属箔精密加工、BGA(ボールグリッドアレイ)及びCSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージ製造、TAB(Tape Automated Bonding)及びCOF(Chip On Film:半導体ICをフィルム状の微細配線板上に搭載したもの)に代表されるテープ基板の製造、半導体バンプの製造、並びにフラットパネルディスプレイ分野におけるITO電極、アドレス電極、電磁波シールド等の部材の製造に好適なレジストパターンを与える感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板は一般的にはフォトリソグラフィー法によって製造されている。フォトリソグラフィー法とは、感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、パターン露光して該感光性樹脂組成物の露光部を重合硬化(ネガ型の場合)又は現像液に対して可溶化(ポジ型の場合)させるとともに未露光部(ネガ型の場合)又は露光部(ポジ型の場合)を現像液で除去して基板上にレジストパターンを形成し、エッチング又はめっき処理を施して導体パターンを形成した後、該レジストパターンを該基板上から剥離除去することによって、基板上に導体パターンを形成する方法をいう。
【0003】
上記のフォトリソグラフィー法においては、通常、感光性樹脂組成物を基板上に塗布するに際し、感光性樹脂組成物の溶液を基板に塗布して乾燥させる方法、又は支持体、感光性樹脂組成物からなる層(以下、「感光性樹脂層」ともいう。)、及び必要により保護層、を順次積層した感光性樹脂積層体(以下、「ドライフィルムレジスト」ともいう。)を基板に積層する方法のいずれかが使用される。そして、プリント配線板の製造においては、後者のドライフィルムレジストが使用されることが多い。
【0004】
ネガ型のドライフィルムレジストを用いてプリント配線板を製造する方法について、以下に簡単に述べる。
【0005】
まず、ドライフィルムレジストが保護層、例えば、ポリエチレンフィルムを有する場合には、感光性樹脂層からこれを剥離する。次いで、ラミネーターを用いて基板、例えば、銅張積層板の上に、該基板、感光性樹脂層、支持体の順序になるよう、感光性樹脂層及び支持体を積層する。次いで、配線パターンを有するフォトマスクを介して、該感光性樹脂層を超高圧水銀灯が発するi線(365nm)等の紫外線で露光することによって、露光部分を重合硬化させる。次いでポリエチレンテレフタレート等からなる支持体を剥離する。次いで、弱アルカリ性を有する水溶液等の現像液により感光性樹脂層の未露光部分を溶解又は分散除去して、基板上にレジストパターンを形成させる。次いで、形成されたレジストパターンを保護マスクとして公知のエッチング処理、又はパターンめっき処理を行う。最後に、該レジストパターンを基板から剥離して導体パターンを有する基板、すなわちプリント配線板を製造する。
【0006】
近年のプリント配線板における配線間隔の微細化に伴い、ドライフィルムレジストには高解像性及び高密着性の要求が増してきている。また生産性向上の観点から高感度化も求められている。一方で、露光方式も用途に応じ多様化しており、レーザーによる直接描画によりフォトマスクを不要とする、マスクレス露光が近年急激な広がりを見せている。マスクレス露光の光源としては波長350〜410nmの光、特にi線又はh線が用いられる場合が多い。従って、これらの波長域の光源に対して高感度のレジストパターンを形成できることが重要視されている。
【0007】
このようなマスクレス露光用の感光性樹脂組成物は、従来のものに比べて、感度、解像度、及び密着性を同時に向上させることが困難である。さらに、色相の保存安定性及びラミネート後の経時安定性が低く、脱色及び発色等の色相安定性の低下、高温化及び長時間の保存による感度変化が発生するという問題もある。
【0008】
特許文献1では、高感度化と高解像度化との両立のために、オキセタン化合物を添加した感光性樹脂組成物が記載されている。
【0009】
特許文献2には、色相の保存安定性を向上させるため、エポキシ基を少なくとも1つ有する化合物を含有する光重合可能な混合物が記載されている。
【0010】
特許文献3及び4には、それぞれ、1つのエポキシ基と少なくとも1つの不飽和結合、及び、少なくとも1つの脂環式エポキシ基を有する化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物が、エッチング耐性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3765272号公報
【特許文献2】特開平1―161001号公報
【特許文献3】特開平10−161308号公報
【特許文献4】特開平10−198027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1に記載される感光性樹脂組成物は光酸発生剤を含むため色相の保存安定性に乏しく、マスクレス露光方式においては満足のいく感度を発現できない。特許文献2に記載される混合物もまたマスクレス露光方式において満足のいく感度は発現できず、更に解像性も良好ではない。特許文献3及び4に記載される感光性樹脂組成物においてはエポキシ化合物の添加量が多いことからマスクレス露光方式においては満足のいく感度を発現できない。
【0013】
上記のような理由から、ドライフィルムレジスト用の感光性樹脂組成物として、高感度及び高解像度であるとともに密着性に優れ、かつドライフィルム溶液及びドライフィルム保存時の優れた色相安定性、及びラミネート後の経時安定性を与える感光性樹脂組成物が望まれている。
【0014】
本発明は、感度、解像度、及び密着性に優れ、ドライフィルム保存時の脱色が起こらず、かつアルカリ性水溶液によって現像しうるネガ型の感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いて基板上にレジストパターンを形成する方法、及び該レジストパターンの用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、本発明の次の構成によって達成することができる。
【0016】
[1] (a)カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子:20〜80質量%、(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマー:5〜60質量%、(c)光重合開始剤:0.1〜20質量%、及び(d)下記一般式(I):
【化1】

[式中:
Xは、酸素原子、又は式−O−X1−O−で表される基であり、式中X1は炭素数1〜100の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、炭素数3〜10の脂環式アルキレン基、及び炭素数5〜20のアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの炭化水素基を含有する2価基であり、該炭化水素基はハロゲン原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子で置換されていてもよく;
1及びR2は、各々独立に炭素数2〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、かつ複数存在する場合のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、異なる場合、−(R1−O)−及び−(R2−O)−の繰り返し単位の配列はブロックでもランダムでもよく;そして
m及びnは、各々独立に0〜50の整数であり、かつm+nは1〜50の整数である。]
で表されるアルキレンオキシド化合物:0.10〜1.0質量%を含有する、感光性樹脂組成物。
[2] 上記一般式(I)で表されるアルキレンオキシド化合物が、下記一般式(II):
【化2】

[式中:
1及びR2は、各々独立に炭素数2〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、かつ複数存在する場合のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、異なる場合、−(R1−O)−及び−(R2−O)−の繰り返し単位の配列はブロックでもランダムでもよく;そして
m及びnは、各々独立に0〜50の整数であり、かつm+nは1〜50の整数である。]
で表される化合物である、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 該(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマーが、下記一般式(III):
【化3】

[式中:
3及びR4は、各々独立にH又はCH3であり;
Aは、C24であり、Bは、C36であり、−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列はランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合−(A−O)−及び−(B−O)−のいずれがビスフェノールA基側でもよく;
r及びsは、各々独立に1〜29の整数であり、かつr+sは2〜30の整数であり;そして
x及びyは、各々独立に0〜29の整数であり、かつx+yは0〜30の整数である。]
で表される光重合可能な不飽和化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 支持体と、該支持体上に積層された、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層とを有する、感光性樹脂積層体。
[5] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を用いて基板の上に感光性樹脂層を形成するラミネート工程、
該感光性樹脂層を露光する露光工程、及び
該露光後の感光性樹脂層における未露光部を現像液で除去することによってレジストパターンを形成する現像工程
を順に含む、レジストパターン形成方法。
[6] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を用いて、金属板又は金属皮膜絶縁板である基板の上に感光性樹脂層を形成するラミネート工程、
該感光性樹脂層を露光する露光工程、
該露光後の感光性樹脂層における未露光部を現像液で除去することによってレジストパターンを形成する現像工程、及び
該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程
を順に含む、導体パターンの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、感度、解像度、及び密着性に優れ、色相の保存安定性が良く、かつアルカリ性水溶液によって現像しうるネガ型の感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いて基板上にレジストパターンを形成する方法、及び該レジストパターンの用途を提供する。本発明は、例えばプリント配線板の製造、リードフレームの製造、半導体パッケージの製造、及び平面ディスプレイの製造に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0019】
<感光性樹脂組成物>
本発明の一態様は、(a)カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子(以下、「(a)アルカリ可溶性高分子」ともいう):20〜80質量%、(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマー(以下、「(b)付加重合性モノマー」ともいう):5〜60質量%、(c)光重合開始剤:0.1〜20質量%、及び(d)下記一般式(I):
【0020】
【化4】

【0021】
[式中:
Xは、酸素原子、又は式−O−X1−O−で表される基であり、式中X1は炭素数1〜100の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、炭素数3〜10の脂環式アルキレン基、及び炭素数5〜20のアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの炭化水素基を含有する2価基であり、該炭化水素基はハロゲン原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子で置換されていてもよく;
1及びR2は、各々独立に炭素数2〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、かつ複数存在する場合のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、異なる場合、−(R1−O)−及び−(R2−O)−の繰り返し単位の配列はブロックでもランダムでもよく;そして
m及びnは、各々独立に0〜50の整数であり、かつm+nは1〜50の整数である。]
で表されるアルキレンオキシド化合物(以下、「(d)アルキレンオキシド化合物」ともいう):0.10〜1.0質量%含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0022】
(a)アルカリ可溶性高分子
(a)アルカリ可溶性高分子はカルボキシル基を含有する。(a)アルカリ可溶性高分子は、典型的には、カルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む、カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600、かつ重量平均分子量が5,000〜500,000の熱可塑性共重合体である。
【0023】
(a)アルカリ可溶性高分子中のカルボキシル基は、感光性樹脂組成物がアルカリ水溶液からなる現像液及び剥離液に対して現像性及び剥離性を有するために必要である。酸当量は、100〜600が好ましく、より好ましくは250〜450である。溶媒又は感光性樹脂組成物中の他の成分、特に後述する(b)付加重合性モノマーとの相溶性を確保するという観点から100以上が好ましく、また、現像性及び剥離性を維持するという観点から600以下であることが好ましい。ここで、酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する熱可塑性共重合体の質量(グラム)をいう。なお、酸当量の測定は、タイトレーター(例えば平沼レポーティングタイトレーター(COM−555))を用い、0.1mol/LのNaOH水溶液で電位差滴定法により行われる。
【0024】
熱可塑性共重合体の重量平均分子量は、5,000〜500,000であることが好ましい。ドライフィルムレジストの厚みを均一に維持し、現像液に対する耐性を得るという観点から5,000以上が好ましく、また、現像性を維持するという観点から500,000以下が好ましい。より好ましくは、上記重量平均分子量は、20,000〜100,000である。本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン(例えば昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)の検量線を用いて測定した重量平均分子量を意味する。該重量平均分子量は、例えば、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して、以下の条件で測定することができる。
示差屈折率計:RI−1530
ポンプ:PU−1580
デガッサー:DG−980−50
カラムオーブン:CO−1560
カラム:順にKF−8025、KF−806M×2、KF−807
溶離液:THF
【0025】
熱可塑性共重合体は、後述する第一の単量体の1種以上と後述する第二の単量体の1種以上とからなる共重合成分を共重合させて得られることが好ましい。
【0026】
第一の単量体は、分子中にカルボキシル基を含有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルが挙げられる。中でも、特に(メタ)アクリル酸が好ましい。ここで、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを示す。以下同様である。
【0027】
第二の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体が挙げられる。中でも、特にメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、及びベンジル(メタ)アクリレート、が好ましい。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物中に含有される(a)アルカリ可溶性高分子の量(但し、感光性樹脂組成物固形分総量に対してである。以下、特別に規定される場合以外は、含有各成分において同じ。)は、20〜80質量%の範囲であり、好ましくは、25〜70質量%の範囲である。この量は、アルカリ現像性を維持するという観点から20質量%以上であり、また、露光によって形成されるレジストパターンがレジストとしての性能を十分に発揮するという観点から80質量%以下である。
【0029】
(b)付加重合性モノマー
(b)付加重合性モノマーは、エチレン性不飽和基を有することによって付加重合性を有するモノマーである。高解像性及び耐エッジフューズ性の観点から、(b)付加重合性モノマーは、下記一般式(III):
【0030】
【化5】

【0031】
[式中:
3及びR4は、各々独立にH又はCH3であり;
Aは、C24であり、Bは、C36であり、−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列はランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合−(A−O)−及び−(B−O)−のいずれがビスフェノールA基側でもよく;
r及びsは、各々独立に1〜29の整数であり、かつr+sは2〜30の整数であり;そして
x及びyは、各々独立に0〜29の整数であり、かつx+yは0〜30の整数である。]
で表される光重合可能な不飽和化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0032】
上記一般式(III)において、r及びsは、硬化膜の柔軟性及びテンティング性の観点からそれぞれ1以上であることが好ましく、解像度の観点からそれぞれ29以下であることが好ましい。またr+sは、硬化膜の柔軟性及びテンティング性の観点から2以上であることが好ましく、解像度の観点から30以下であることが好ましい。一方、x及びyは、解像度の観点からそれぞれ29以下であることが好ましく、x+yは、解像度の観点から30以下であることが好ましい。r、s、x及びyのより好ましい範囲は、r及びsがそれぞれ2以上18以下、x及びyがそれぞれ18以下である。
【0033】
上記一般式(III)で表される化合物において、r+s+x+yは、硬化膜の柔軟性及びテンティング性の観点から2以上であることが好ましく、解像度の観点から40以下であることが好ましい。
【0034】
上記一般式(III)で表される光重合可能な不飽和化合物の具体例としては、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(例えば新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−200)、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(例えば新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−500)、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均6モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドとを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均15モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドとを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレートが挙げられる。
【0035】
上記一般式(III)で表される光重合可能な不飽和化合物の感光性樹脂組成物中の含有量は、感度の観点から、3質量%以上が好ましく、耐エッジフューズ性の観点から70質量%以下が好ましい。上記含有量は、より好ましくは10〜65質量%、さらに好ましくは15〜55質量%である。
【0036】
(b)付加重合性モノマーとして使用できる、上記一般式(III)で表される化合物以外の例としては、少なくとも1つの末端エチレン性不飽和基を有する公知の化合物が挙げられる。
【0037】
(b)付加重合性モノマーのより具体的な例として、例えば、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(例えば日本触媒化学製、商品名OE−A 200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジアクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等のウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物中に含有される(b)付加重合性モノマーの量は、5〜60質量%の範囲であり、より好ましい範囲は15〜60質量%である。この量は、硬化不良、及び現像時間の遅延を抑えるという観点から5質量%以上であり、また、コールドフロー、及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から60質量%以下である。
【0039】
(c)光重合開始剤
(c)光重合開始剤としては感光性樹脂の分野で一般的に用いられる光重合開始剤を使用できる。感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量は、0.1〜20質量%である。上記含有量は、感度の観点から0.1質量%以上であり、解像度の観点から20質量%以下である。好ましい含有量は、0.1〜15質量%であり、0.1〜10質量%が更に好ましい。(c)光重合開始剤は1種類単独で使用してもよいし2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(c)光重合開始剤の好ましい例としては、N−アリールアミノ酸が挙げられる。N−アリールアミノ酸の例としては、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等が挙げられる。中でも、N−フェニルグリシンが特に好ましい。その他、本発明における(c)光重合開始剤として、上記のN−アリールアミノ酸とヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(以下、トリアリールイミダゾリル誘導体の二量体、又はトリアリールイミダゾリル二量体ともいう)とを併用することもできる。トリアリールイミダゾリル二量体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体(以下、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビスイミダゾール、ともいう)、2,2’,5−トリス−(o−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4’,5’−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4−ビス−(o−クロロフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4,5−トリス−(o−クロロフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−ビス−4,5−(3,4−ジメトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3−ジフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,5−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、及び2,2’−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体が挙げられる。特に、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体は解像性及び硬化膜の強度に対して高い効果を有する光重合開始剤であり、好ましく用いられる。
【0041】
また、9−フェニルアクリジン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ビス(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,11−ビス(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン等のアクリジン誘導体も本発明における(c)光重合開始剤の例として好適に用いられる。
【0042】
更に上記以外で(c)光重合開始剤として使用できる化合物としては、例えば、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、及び3−クロロ−2−メチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾイン等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸との組み合わせ、並びに1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾインオキシム、及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類が挙げられる。
【0043】
なお、上述のチオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸との組み合わせとしては、例えばエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、2−クロルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、及びイソプロピルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせが挙げられる。
【0044】
また、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体と芳香族ケトン類との組み合わせが好ましい。
【0045】
また、ピラゾリン化合物を含有することも、本発明の好ましい実施形態である。ピラゾリン化合物としては、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン及び1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリンが好ましい。
【0046】
(d)アルキレンオキシド化合物
(d)アルキレンオキシド化合物は、分子内にグリシジル基を2つ含み、下記一般式(I):
【0047】
【化6】

【0048】
[式中:
Xは、酸素原子、又は式−O−X1−O−で表される基であり、式中X1は炭素数1〜100の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、炭素数3〜10の脂環式アルキレン基、及び炭素数5〜20のアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの炭化水素基を含有する2価基であり、該炭化水素基はハロゲン原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子で置換されていてもよく;
1及びR2は、各々独立に炭素数2〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、かつ複数存在する場合のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、異なる場合、−(R1−O)−及び−(R2−O)−の繰り返し単位の配列はブロックでもランダムでもよく;そして
m及びnは、各々独立に0〜50の整数であり、かつm+nは1〜50の整数である。]
で表される。本発明においては、上記の(d)アルキレンオキシド化合物による酸の捕捉作用によって、ドライフィルムレジストの保存時の着色が効果的に防止されて色相の良好な保存安定性が得られるとともに、良好な解像性が得られる。
【0049】
一般式(I)中のXは、酸素原子、又は、上記式−O−X1−O−で表されるような、両末端が酸素原子置換された炭化水素鎖である。上記式−O−X1−O−におけるX1−は、溶解性の観点から、炭素数1〜100の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、炭素数3〜10の脂環式アルキレン基、及び炭素数5〜20のアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの炭化水素基を含有する2価基である。上記Xとしては、解像度の観点から、酸素原子、ビスフェノールAの水酸基から水素を除いた2価基(以下、ビスフェノールA型基ともいう)、及び水添ビスフェノールAの水酸基から水素を除いた2価基(以下、水添ビスフェノールA型基ともいう)が特に好ましく、ビスフェノールA型基が最も好ましい。
【0050】
一般式(I)中のXがビスフェノールA型基であるアルキレンオキシ化合物は、具体的には下記一般式(II):
【0051】
【化7】

【0052】
[式中:
1及びR2は、各々独立に炭素数2〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、かつ複数存在する場合のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、異なる場合、−(R1−O)−及び−(R2−O)−の繰り返し単位の配列はブロックでもランダムでもよく;そして
m及びnは、各々独立に0〜50の整数であり、かつm+nは1〜50の整数である。]
で表される。
【0053】
一般式(I)中のR1及びR2は、各々独立に炭素数2〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、複数存在する場合のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、異なる場合、−(R1−O)−及び−(R2−O)−の繰り返し単位の配列はブロックでもランダムでもよい。
【0054】
上記R1及びR2としては、解像度の観点から、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ネオペンチル基、及びヘキサメチレン基が特に好ましい。
【0055】
解像度の観点から、上記m及びnは各々独立に0〜50の整数であり、かつm+nは1〜50の整数である。感光性樹脂組成物の製造に適した粘度という観点から、m+nは1〜20の整数であることが好ましく、解像度の観点から1〜10の整数であることがさらに好ましい。
【0056】
(d)アルキレンオキシド化合物の好ましい例としては、Xが酸素原子の場合、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト40E)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト100E)、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト200E)、ペンタエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘプタエチレングリコールジグリシジルエーテル、オクタエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト400E)、デカエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト70P)、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト200P)、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘプタプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト400P)、オクタプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、デカプロピレングリコールジグリシジルエーテル、
【0057】
テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ジテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘプタテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、オクタテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ1モル及び2モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ1モル及び3モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ1モル及び4モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ1モル及び5モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ1モル及び9モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ2モル及び1モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ2モル及び2モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ2モル及び3モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ2モル及び4モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ2モル及び5モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ2モル及び8モルずつ含有するジグリシジルエーテル、
【0058】
エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ3モル及び1モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ3モル及び2モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ3モル及び3モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ3モル及び4モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ3モル及び5モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ3モル及び7モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ5モル及び1モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ5モル及び2モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ5モル及び3モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ5モル及び4モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ5モル及び5モルずつ含有するジグリシジルエーテル、
【0059】
エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ6モル及び1モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ6モル及び2モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ6モル及び3モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ6モル及び4モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ7モル及び1モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ7モル及び2モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ7モル及び3モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ8モル及び1モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ8モル及び2モルずつ含有するジグリシジルエーテル、エチレングリコールとプロピレングリコールとをそれぞれ9モル及び1モルずつ含有するジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト1500NP)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト1600)等が挙げられる。
【0060】
また、XがビスフェノールA型基の場合の(d)アルキレンオキシド化合物の好ましい例としては、ビスフェノールA−プロピレンオキシド 2モル付加物ジグリシジルエーテル(例えば共栄社化学(株)製エポライト3002)、ビスフェノールA−プロピレンオキシド 4モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−プロピレンオキシド 6モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−プロピレンオキシド 8モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−プロピレンオキシド 10モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−エチレンオキシド 2モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−エチレンオキシド 4モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−エチレンオキシド 6モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−エチレンオキシド 8モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−エチレンオキシド 10モル付加物ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0061】
Xが水添ビスフェノールA型基の場合の(d)アルキレンオキシド化合物の好ましい例としては、水添ビスフェノールA−エチレンオキシド 2モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−エチレンオキシド 4モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−エチレンオキシド 6モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−エチレンオキシド 8モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−エチレンオキシド 10モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−プロピレンオキシド 2モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−プロピレンオキシド 4モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−プロピレンオキシド 6モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−プロピレンオキシド 8モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−プロピレンオキシド 10モル付加物ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0062】
本発明における感光性樹脂組成物中の上記(d)アルキレンオキシド化合物の含有量は、0.10〜1.0質量%の範囲であり、より好ましい範囲は0.20〜0.50質量%である。上記含有量は、ドライフィルムレジストの色相の保存安定性を確保し、良好な解像性を得るという観点から0.10質量%以上であり、好ましくは0.20質量%以上である。また十分な感度を得るという観点から1.0質量%以下であり、好ましくは0.50質量%以下である。
【0063】
(その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(a)アルカリ可溶性高分子、(b)付加重合性モノマー、(c)光重合開始剤、及び(d)アルキレンオキシド化合物を必須成分とするが、それ以外にも必要に応じて添加剤,例えば下記の様な変色剤、染料、可塑剤、酸化防止剤、有機ハロゲン化合物、及び安定化剤(ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類からなる群から選ばれる1種以上の化合物等)を含有できる。
【0064】
変色剤としては、ロイコ染料及びフルオラン染料が挙げられる。ロイコ染料としては、例えばロイコクリスタルバイオレット、ロイコマラカイトグリーン等が挙げられる。
【0065】
感光性樹脂組成物中の変色剤の含有量としては、良好な着色性(すなわち発色性)が認識できるようにする観点から0.01質量%以上が好ましく、色相安定性の観点及び良好な画像特性を得る観点から5質量%以下が好ましい。
【0066】
染料としては、例えば、ベイシックグリーン1[633−03−4](例えば、Aizen Diamond Green GH、商品名、保土谷化学工業製)、マラカイトグリーンしゅう酸塩[2437−29−8](例えばAizen Malachite Green、商品名、保土谷化学工業製)、ブリリアントグリーン[633−03−4]フクシン[632−99−5]メチルバイオレット[603−47−4]、メチルバイオレット2B[8004−87−3]クリスタルバイオレット[548−62−9]メチルグリーン[82−94−0]、ビクトリアブルーB[2580−56−5]、ベイシックブルー7[2390−60−5](例えば、Aizen Victoria Pure Blue BOH、商品名、保土谷化学工業製)、ローダミンB[81−88−9]、ローダミン6G[989−38−8]、ベイシックイエロー2[2465−27−2]等が挙げられ、中でもベイシックグリーン1、マラカイトグリーンしゅう酸塩、及びベイシックブルー7が好ましい。
【0067】
感光性樹脂組成物中の染料の含有量は、好ましくは0.001〜0.3質量%の範囲であり、より好ましくは0.01〜0.12質量%の範囲である。上記含有量は、良好な着色性が認識できるようにする観点から0.001質量%以上であることが好ましく、感度維持の観点から0.3質量%以下であることが好ましい。
【0068】
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル等のグリコール・エステル類、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルフォン酸アミド、p−トルエンスルフォン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、及びアセチルクエン酸トリ−n−ブチルが挙げられる。
【0069】
感光性樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは、1〜20質量%である。上記含有量は、現像時間の遅延を抑え、硬化膜に柔軟性を付与するという観点から0.1質量%以上であることが好ましく、また、硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から50質量%以下であることが好ましい。
【0070】
酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルフォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名:TPP)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名2112)、トリス(モノノニルフェニル)フォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名:1178)、及びビス(モノノニルフェニル)−ジノニルフェニルフォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名:329K)が挙げられる。
【0071】
感光性樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.01〜0.8質量%の範囲であり、より好ましくは、0.01〜0.3質量%の範囲である。上記含有量が0.01質量%以上である場合、感光性樹脂組成物の色相安定性に優れる効果が良好に発現し、感光性樹脂組成物の露光時における感度が良好である。また、上記含有量が0.8質量%以下である場合、発色性が抑えられることで色相安定性が良好であるとともに密着性も良好である。
【0072】
有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンジル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、及びクロル化トリアジン化合物が挙げられ、中でも特にトリブロモメチルフェニルスルフォンが好ましく用いられる。感光性樹脂組成物中の有機ハロゲン化合物の含有量は、好ましくは0.01〜3質量%である。
【0073】
安定化剤としては、感光性樹脂組成物の熱安定性及び/又は保存安定性を向上させるための、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類からなる群から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0074】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミンが挙げられる。
【0075】
また、ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、及びビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0076】
また、カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0077】
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類の、感光性樹脂組成物中の合計含有量は、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。上記合計含有量は、感光性樹脂組成物に良好な保存安定性を付与するという観点から0.01質量%以上が好ましく、また、感度を良好に維持するという観点から3質量%以下が好ましい。
【0078】
<感光性樹脂組成物調合液>
本発明の感光性樹脂組成物は、これに溶媒を添加して形成した感光性樹脂組成物調合液として用いてもよい。好適な溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、並びにメタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。感光性樹脂組成物調合液の粘度が25℃で500〜4000mPa・secとなるように、溶媒を感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0079】
<感光性樹脂積層体>
本発明の別の態様は、支持体と、該支持体上に積層された、上述の本発明に係る感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層とを有する感光性樹脂積層体を提供する。本発明の感光性樹脂積層体は、感光性樹脂層と該層を支持する支持体とに加え、必要により、感光性樹脂層の支持体形成側と反対側の表面に保護層を有していても良い。
【0080】
支持体としては、露光光源から放射される光を透過する透明なものが望ましい。このような支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、及びセルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムとしては、必要に応じ延伸されたものも使用可能である。ヘーズは5以下のものが好ましい。フィルムの厚みは、薄い方が画像形成性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要から、10〜30μmのものが好ましく用いられる。
【0081】
また、感光性樹脂積層体に用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について、支持体よりも保護層の方が充分小さく容易に剥離できることである。例えば、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルム等が保護層として好ましく使用できる。また、例えば特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることができる。保護層の膜厚は10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0082】
本発明の感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚みは、好ましくは、5〜100μm、より好ましくは、7〜60μmである。厚みが薄いほど解像度は向上し、また、厚いほど膜強度が向上するので、用途に応じて適宜選択することができる。
【0083】
支持体、感光性樹脂層、及び必要により、保護層を順次積層して、本発明の感光性樹脂積層体を作製する方法としては、従来知られている方法を採用することができる。
【0084】
例えば、感光性樹脂層を形成するために用いる感光性樹脂組成物を、前述の感光性樹脂組成物調合液にしておき、まず支持体上にバーコーター又はロールコーターを用いて塗布して乾燥させ、支持体上に該感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層する。次いで、必要により、該感光性樹脂層上に保護層を積層することにより感光性樹脂積層体を作製することができる。
【0085】
<レジストパターン形成方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明の感光性樹脂積層体を用いて基板の上に感光性樹脂層を形成するラミネート工程、該感光性樹脂層を露光する露光工程、及び該露光後の感光性樹脂層における未露光部を現像液で除去することによってレジストパターンを形成する現像工程を順に含む、レジストパターン形成方法を提供する。本発明の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを形成する具体的な方法の一例を示す。
【0086】
まず、ラミネート工程において、ラミネーターを用いて基板上に感光性樹脂層を形成する。具体的には、感光性樹脂積層体が保護層を有する場合には保護層を剥離した後、ラミネーターで感光性樹脂層を基板表面に加熱圧着しラミネートする。基板の材質としては銅、SUS、ガラス、ITO等が挙げられる。この場合、感光性樹脂層は基板表面の片面だけにラミネートしても良いし、必要に応じて両面にラミネートしても良い。この時の加熱温度は一般的に40〜160℃である。また、該加熱圧着を2回以上行うことにより、得られるレジストパターンの基板に対する密着性が向上する。この時、圧着には二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用しても良いし、基板と感光性樹脂層との積層物を何回か繰り返してロールに通し圧着しても良い。
【0087】
次に、露光工程において、露光機を用いて感光性樹脂組成物を活性光に露光する。露光は必要ならば支持体を剥離した後行うことができる。フォトマスクを通しての露光の場合、露光量は、光源照度及び露光時間より決定され、光量計を用いて測定しても良い。
【0088】
露光工程においては、マスクレス露光方法を用いてもよい。マスクレス露光においてはフォトマスクを使用せず基板上に直接描画装置によって露光する。光源としては波長350〜410nmの半導体レーザー又は超高圧水銀灯等が用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御され、この場合の露光量は、露光光源の照度及び基板の移動速度によって決定される。
【0089】
次に、現像工程において、露光後の感光性樹脂層における未露光部を、現像装置を用いて現像液により除去する。露光後、感光性樹脂層上に支持体がある場合にはこれを除く。続いてアルカリ水溶液からなる現像液を用いて未露光部を現像除去し、レジスト画像を得る。アルカリ水溶液としては、Na2CO3、又はK2CO3等の水溶液が好ましい。これらは感光性樹脂層の特性に合わせて選択されるが、0.2〜2質量%の濃度のNa2CO3水溶液が一般的である。該アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。なお、現像工程における該現像液の温度は、20〜40℃の範囲で一定温度に保つことが好ましい。
【0090】
上述の工程によってレジストパターンが得られるが、場合によっては、さらに100〜300℃の加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、更なる耐薬品性向上が可能となる。加熱には、熱風、赤外線、又は遠赤外線等の方式の加熱炉を用いることができる。
【0091】
<導体パターンの製造方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明の感光性樹脂積層体を用いて、金属板又は金属皮膜絶縁板である基板の上に感光性樹脂層を形成するラミネート工程、該感光性樹脂層を露光する露光工程、該露光後の感光性樹脂層における未露光部を現像液で除去することによってレジストパターンを形成する現像工程、及び該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程を順に含む、導体パターンの製造方法を提供する。すなわち、本発明の導体パターンの製造方法は、基板として金属板又は金属皮膜絶縁板を用い、上述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後に、以下の導体パターン形成工程を経ることにより実施される。導体パターン形成工程においては、上述したような方法でレジストパターンが形成された基板において、現像により露出した基板表面(例えば銅面)に公知のエッチング法又はめっき法を用いて導体パターンを形成する。
【0092】
さらに、本発明は例えば以下のような用途において好適に適用される。
【0093】
<プリント配線板の製造>
なお、本発明に従い上記のような方法で導体パターンを製造した後、レジストパターンを、現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液により基板から剥離する剥離工程を更に行うことにより、所望の配線パターンを有するプリント配線板を得ることができる。プリント基板の製造においては、基板として好ましくは銅張積層板又はフレキシブル基板を用いる。剥離用のアルカリ水溶液(以下、「剥離液」ともいう。)について特に制限はないが、2〜5質量%の濃度の、NaOH又はKOHの水溶液が一般的に用いられる。剥離液には少量の水溶性溶媒を加えることが可能である。剥離工程における該剥離液の温度は、40〜70℃の範囲であることが好ましい。
【0094】
<リードフレームの製造>
基板として銅、銅合金、又は鉄系合金等の金属板を用い、前述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後に以下の工程を経ることにより、リードフレームを製造できる。まず、現像により露出した基板をエッチングして導体パターンを形成する工程を行う。その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離する剥離工程を行って、所望のリードフレームを得る。
【0095】
<凹凸パターンを有する基材の製造>
本発明のレジストパターン形成方法によって形成されるレジストパターンは、サンドブラスト工法により基板に加工を施す時の保護マスク部材として使用することができる。このときの基板としては、ガラス、シリコンウエハー、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、セラミック、サファイア、金属材料等が挙げられる。これら基板上に、前述のレジストパターン形成方法と同様の方法によって、レジストパターンを形成する。その後、形成されたレジストパターン上からブラスト材を吹き付け目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、基板上に残存したレジストパターン部分をアルカリ剥離液等で基板から除去する剥離工程を経て、基板上に微細な凹凸パターンを有する基材を製造できる。上記のサンドブラスト処理工程に用いるブラスト材としては公知のものを使用でき、例えばSiC,SiO2、Al23、CaCO3、ZrO、ガラス、ステンレス等の粒径2〜100μm程度の微粒子が用いられる。
【0096】
<半導体パッケージの製造>
基板としてLSIとしての回路形成が終了したウェハを用いて、これに前述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後に、以下の工程を経ることによって、半導体パッケージを製造できる。まず、現像により露出した開口部に銅、はんだ等の柱状のめっきを施して、導体パターンを形成する工程を行う。その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離する剥離工程を行って、更に、柱状めっき以外の部分の薄い金属層をエッチングにより除去する工程を行うことにより、所望の半導体パッケージを得る。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例1〜8及び比較例1〜5の評価用サンプルの作製方法並びに得られたサンプルについての評価方法及び評価結果について示す。
【0098】
1.評価用サンプルの作製
実施例1〜8及び比較例1〜5における感光性樹脂積層体は次のようにして作製した。
【0099】
<感光性樹脂積層体の作製>
表2に示す化合物を表1に示す組成割合(単位は質量部)で配合し、よく攪拌、混合して調製した感光性樹脂組成物溶液を、支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で3分間乾燥させて感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは30μmであった。
【0100】
なお表1及び2に示す組成において、MEKとはメチルエチルケトンを示し、表1におけるP−1〜P−3の質量部は、固形分量である。
【0101】
次いで、感光性樹脂層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない側の表面上に、保護層として22μm厚のポリエチレンフィルムを張り合わせて感光性樹脂積層体を得た。
【0102】
<色相安定性評価用感光性樹脂積層体サンプルの作製>
表2に示す化合物を表1に示す組成割合(単位は質量部)で配合し、よく攪拌、混合して調製した感光性樹脂組成物溶液を、温度40℃で3日間保存した後、支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にバーコーターを用いて均一に塗布した。これを95℃の乾燥機中で3分間乾燥させて感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは30μmであった。
【0103】
次いで、感光性樹脂層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない側の表面上に、保護層として22μm厚のポリエチレンフィルムを張り合わせて色相安定性評価用の感光性樹脂積層体サンプルを得た。
【0104】
<基板整面>
感度、解像度、密着性、及び色相安定性を評価するための基板としては、35μm圧延銅箔を積層した1.2mm厚の銅張積層板を用い、表面を湿式バフロール研磨(スリーエム(株)製、スコッチブライト(登録商標)HD#600、2回通し)した。
【0105】
<ラミネート>
感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、整面して60℃に予熱した銅張積層板にホットロールラミネーター(旭化成(株)製、AL−70)により、ロール温度105℃でラミネートした。エアー圧力は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
【0106】
<露光>
(直接描画式露光方法)直接描画式露光装置(日本オルボテック株式会社製、Paragon9000、主波長355nm)により露光した。
【0107】
<現像>
ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用いて30℃の1質量%Na2CO3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を最小現像時間の2倍の時間で溶解除去した。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を最小現像時間とした。
【0108】
2.評価方法
2.1 感度評価
上記<ラミネート>の後15分経過した基板を用い、ストーファー21段ステップタブレットをマスクとして上記露光機を用いて25mJ/cm2の露光量にて露光した。その後、上記<現像>で記載した方法によって現像し、そのときの残膜限界段数を、感度の指標として以下の基準に従って評価した。
○:最高残膜段数が7段以上。
△:最高残膜段数が6段以上7段未満。
×:最高残膜段数が6段未満。
【0109】
2.2 解像性評価
上記<ラミネート>の後15分経過した解像度評価用基板を、露光部と未露光部との幅が1:1の比率のラインパターンマスクを通して露光した。最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスク幅を解像度の値とし、解像性を下記のようにランク分けした。
○:解像度の値が20μm以下。
△:解像度の値が20μmを超え、24μm以下。
×:解像度の値が24μmを超える。
【0110】
2.3 色相安定性評価(600nmにおける透過率の差)
感光性樹脂積層体からポリエチレンフィルムを剥がし、UV−visスペクトロメーター(島津製作所(株)製、UV−240)を用いて、波長600nmの光の透過率を測定した。この際、スペクトロメーターのリファレンス側に該感光性樹脂積層体に用いたのと同じポリエチレンテレフタレートフィルムを入れて、ポリエチレンテレフタレートフィルム由来の透過率をキャンセルした。
【0111】
温度40℃で3日間保存した後の感光性樹脂組成物溶液を用いて作製した感光性樹脂積層体の色相安定性評価用サンプルと、保存前の感光性樹脂組成物溶液を用いて作製した感光性樹脂積層体の透過率とを比較し、その差により下記の様にランク分けした。
○:600nmにおける透過率の差が±5%未満。
△:600nmにおける透過率の差が±5%以上±10%未満。
×:600nmにおける透過率の差が±10%以上。
【0112】
2.4 評価結果
実施例1〜8及び比較例1〜5の評価結果を表1に示す。
【0113】
表1の評価結果から明らかなように、実施例1〜8は比較例1〜5に比べ、感度、解像性、及び密着性に優れることが明らかにされた。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、プリント配線板の製造、ICチップ搭載用リードフレーム製造、メタルマスク製造等の金属箔精密加工、BGA、又はCSP等のパッケージの製造、COFやTAB等テープ基板の製造、半導体バンプの製造、ITO電極やアドレス電極、電磁波シールド等フラットパネルディスプレイの隔壁を製造する方法に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子:20〜80質量%、(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマー:5〜60質量%、(c)光重合開始剤:0.1〜20質量%、及び(d)下記一般式(I):
【化1】

[式中:
Xは、酸素原子、又は式−O−X1−O−で表される基であり、式中X1は炭素数1〜100の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、炭素数3〜10の脂環式アルキレン基、及び炭素数5〜20のアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの炭化水素基を含有する2価基であり、該炭化水素基はハロゲン原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子で置換されていてもよく;
1及びR2は、各々独立に炭素数2〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、かつ複数存在する場合のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、異なる場合、−(R1−O)−及び−(R2−O)−の繰り返し単位の配列はブロックでもランダムでもよく;そして
m及びnは、各々独立に0〜50の整数であり、かつm+nは1〜50の整数である。]
で表されるアルキレンオキシド化合物:0.10〜1.0質量%を含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記一般式(I)で表されるアルキレンオキシド化合物が、下記一般式(II):
【化2】

[式中:
1及びR2は、各々独立に炭素数2〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、かつ複数存在する場合のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、異なる場合、−(R1−O)−及び−(R2−O)−の繰り返し単位の配列はブロックでもランダムでもよく;そして
m及びnは、各々独立に0〜50の整数であり、かつm+nは1〜50の整数である。]
で表される化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマーが、下記一般式(III):
【化3】

[式中:
3及びR4は、各々独立にH又はCH3であり;
Aは、C24であり、Bは、C36であり、−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列はランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合−(A−O)−及び−(B−O)−のいずれがビスフェノールA基側でもよく;
r及びsは、各々独立に1〜29の整数であり、かつr+sは2〜30の整数であり;そして
x及びyは、各々独立に0〜29の整数であり、かつx+yは0〜30の整数である。]
で表される光重合可能な不飽和化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
支持体と、該支持体上に積層された、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層とを有する、感光性樹脂積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を用いて基板の上に感光性樹脂層を形成するラミネート工程、
該感光性樹脂層を露光する露光工程、及び
該露光後の感光性樹脂層における未露光部を現像液で除去することによってレジストパターンを形成する現像工程
を順に含む、レジストパターン形成方法。
【請求項6】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を用いて、金属板又は金属皮膜絶縁板である基板の上に感光性樹脂層を形成するラミネート工程、
該感光性樹脂層を露光する露光工程、
該露光後の感光性樹脂層における未露光部を現像液で除去することによってレジストパターンを形成する現像工程、及び
該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程
を順に含む、
導体パターンの製造方法。

【公開番号】特開2012−203165(P2012−203165A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67204(P2011−67204)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】