説明

感光性樹脂組成物及びその塗膜硬化物

フッ素原子含有基とケイ素原子含有基とエチレン性二重結合とを含む樹脂(A1)と、ラジカル開始剤(B)と、分子内に3個以上のエチレン性二重結合を有するアルカリ可溶の感光性樹脂(D)とを含む感光性樹脂組成物。また、フッ素原子含有基とエチレン性二重結合とを含む樹脂(A2)と、ケイ素原子含有基とエチレン性二重結合とを含む樹脂(A3)と、ラジカル開始剤(B)と、分子内に3個以上のエチレン性二重結合を有するアルカリ可溶の感光性樹脂(D)とを含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、感光性樹脂組成物及びその塗膜硬化物に関する。
【背景技術】
従来より、半導体集積回路(IC)、液晶ディスプレイ(LCD)用薄膜トランジスタ(TFT)回路等の回路製造用のマスクを作成するために感光性樹脂組成物が用いられており、より微細なパターン構造を形成することのできる感光性樹脂組成物が要求されている。
一方、感光性樹脂組成物は、LCDや有機ELディスプレイ等のITO電極形成のためのレジスト材料、層間絶縁膜、回路保護膜、カラーフィルタ用隔壁材、有機ELディスプレイ用隔壁材等の永久膜形成材料としても注目されている。例えば、カラーフィルタの製造においては、微小画素内にインクを噴射塗布するインクジェット法が提案されているが、画素パターンの形成は感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィーにより行われ、感光性樹脂組成物の塗膜硬化物が画素間の隔壁として利用されている。
インクジェット法において、隣り合う画素間におけるインクの混色等が起こるのを防止するために、隔壁は水や有機溶剤等のインク溶剤をはじく性質、いわゆる「撥インク性」を有することが要求されている。さらに画素内をわずかに外れて隔壁上に噴射されたインクが目的の画素内に収まるために、隔壁は「インク転落性」を有することが要求されている。
また、各画素に複数のインクを注入し塗り分けるためには、一のインク溶剤が付着した後も撥インク性、インク転落性を維持している性質、すなわち「撥インク性・インク転落性の持続性」を隔壁は有することが要求されている。
さらに、感光性樹脂組成物を塗装してフォトリソグラフィー工程を経て画素パターンの隔壁を形成させた後、インクを注入する前に、画素内の基材表面の汚れを除去することがある。例えば、低圧水銀灯やエキシマUV等の紫外線の照射や、光アッシング処理等により基材表面を洗浄する工程(以下、洗浄工程と呼ぶ。)が挙げられる。この洗浄工程の後も撥インク性、インク転落性を維持している性質、すなわち「UV照射後の撥インク性・インク転落性」を隔壁は有することが要求されている。
特開平8−176504号公報(請求項1)には、(成分1)パーフルオロアルキル基含有α、β−不飽和単量体と、ポリシロキサン鎖含有α、β−不飽和単量体と、水酸基含有α、β−不飽和単量体とを必須成分として反応させて得られる重合体の水酸基に、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基含有単量体のイソシアネート基を付加反応させた構造の(メタ)アクリロイル基を有する共重合体と、(成分2)分子中に(メタ)アクリロイル基又はビニル基のいずれかの基を含有する炭化水素系モノマーを含有してなる被覆剤が開示されている。
特開平11−279243号公報(請求項4、段落0035)には、(成分3)ケイ素原子を有するエチレン性不飽和単量体を含む不飽和単量体成分の共重合体から生成され、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基とケイ素原子を有して成る紫外線硬化性樹脂と、(成分4)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(成分5)光重合開始剤と、(成分6)希釈剤と、(成分7)フッ素系界面活性剤等のレベリング剤とを含有する組成物が開示されている。
しかし、特開平8−176504号公報(請求項1)に記載の被覆剤における炭化水素モノマーは、露光部分と未露光部分とのアルカリ溶解度に差がつきにくく、当該被覆剤からは微細なパターン形成が困難であった。また、特開平11−279243号公報(請求項4、段落0035)に記載のフッ素系界面活性剤等のレベリング剤は感光性基を有しておらず、当該組成物は撥インク性の持続性が不足していた。
【発明の開示】
本発明は、撥インク性、インク転落性、それらの持続性、基材密着性に優れた塗膜硬化物を形成することができ、さらには微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、下記の手段を提供するものである。
(第一の感光性樹脂組成物)
樹脂(A1)と、ラジカル開始剤(B)と、アルカリ可溶の感光性樹脂(D)と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。但し、樹脂(A1)及びアルカリ可溶の感光性樹脂(D)はそれぞれ以下のものを表す。
樹脂(A1)は、下記式1で表される基(a)と、下記式2で表される基(b)と、エチレン性二重結合(d)とを有する。
−CFXR ・・・式1
(式中、Xは水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示し、Rはフッ素原子又は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(但し、前記アルキル基はエーテル性の酸素原子を有するものを含む。)を示す。)
−(SiR−O)−SiR ・・・式2
(式中、R、Rは独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、nは1〜200の整数を示す。)
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)は、酸性基(c)と、分子内に3個以上のエチレン性二重結合(d)とを有し、かつ上記式1で表される基(a)及び上記式2で表される基(b)を有しない。
(第二の感光性樹脂組成物)
樹脂(A2)と、樹脂(A3)と、ラジカル開始剤(B)と、アルカリ可溶の感光性樹脂(D)と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。但し、樹脂(A2)、樹脂(A3)及びアルカリ可溶の感光性樹脂(D)はそれぞれ以下のものを表す。
樹脂(A2)は、下記式1で表される基(a)と、エチレン性二重結合(d)とを有し、かつ下記式2で表される基(b)を有しない。
樹脂(A3)は、下記式2で表される基(b)と、エチレン性二重結合(d)とを有し、かつ下記式1で表される基(a)を有しない。
−CFXR ・・・式1
(式中、Xは水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示し、Rはフッ素原子又は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(但し、前記アルキル基はエーテル性の酸素原子を有するものを含む。)を示す。)
−(SiR−O)−SiR ・・・式2
(式中、R、Rは独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、nは1〜200の整数を示す。)
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)は、酸性基(c)と、分子内に3個以上のエチレン性二重結合(d)とを有し、かつ上記式1で表される基(a)及び上記式2で表される基(b)を有しない。
樹脂(A1)は本発明の第一の感光性樹脂組成物から形成される塗膜硬化物に撥インク性及びインク転落性を付与する。樹脂(A2)及び樹脂(A3)は本発明の第二の感光性樹脂組成物から形成される塗膜硬化物に撥インク性及びインク転落性を付与する。
樹脂(A1)又は樹脂(A2)における式1で表される基(a)は、主に形成される塗膜硬化物に撥インク性を付与する。
樹脂(A1)又は樹脂(A3)における式2で表される基(b)は、主に極性の高いインクに対する優れたインク転落性を塗膜硬化物に付与する。また、UV照射に対する耐性は、式1で表される基(a)は比較的低いが、式2で表される基(b)は優れている。したがって、式2で表される基(b)が存在することにより、UV照射による基(a)の劣化を抑制し、UV照射後の撥インク性を持続することができる。
樹脂(A1)、(A2)、(A3)はエチレン性二重結合(d)を有している。したがって、光照射により樹脂(A1)、(A2)、(A3)は感光性樹脂組成物の他の構成成分と共有結合するので塗膜硬化物に固定され、撥インク性の持続性及びインク転落性の持続性が高くなる。
式1で表される基(a)、式2で表される基(b)は表面移行性を有しているので、プリベーク(塗膜の乾燥)の際に樹脂(A1)、(A2)、(A3)は空気界面の塗膜表面近傍に移行する。したがって、少量の樹脂の添加であっても、塗膜硬化物表面に充分な撥インク性、インク転落性を付与できる。
さらに、プリベークの際に樹脂(A1)、(A2)、(A3)が空気界面の塗膜表面近傍に移行することによって、基材付近の樹脂(A1)、(A2)、(A3)の濃度が相対的に減少するので、塗膜硬化物の基材密着性の低下を防止できる。
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)は主に感光性樹脂に現像性を付与し、分子内に3個以上のエチレン性二重結合を有するため、露光部分と未露光部分とのアルカリ溶解度に差がつきやすく、より少ない露光量での微細なパターン形成を可能にする。
本発明によれば、撥インク性、インク転落性、それらの持続性、基材密着性に優れた塗膜硬化物を形成することができ、さらには微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書の化合物名において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。同様に、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
本明細書において、特に説明しない場合、%は質量%を表す。
本発明の第一の感光性樹脂組成物において使用される樹脂(A1)について説明する。
樹脂(A1)は、下記式1で表される基(a)と、下記式2で表される基(b)と、エチレン性二重結合(d)とを有する。
−CFXR ・・・式1
(式中、Xは水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示し、Rはフッ素原子又は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(但し、前記アルキル基はエーテル性の酸素原子を有するものを含む。)を示す。)
−(SiR−O)−SiR ・・・式2
(式中、R、Rは独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、nは1〜200の整数を示す。)
式1で表される基(a)中のRが、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基である場合、前記アルキル基はフッ素原子以外の他のハロゲン原子に置換された水素原子を含んでいてもよく、他のハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。また、エーテル性の酸素原子は、アルキル基の炭素−炭素結合間に存在してもよく、結合末端に存在してもよい。
式1で表される基(a)の具体例としては、
−CF、−CFCF、−CFCHF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CF11CF、−(CF15CF、−CFO(CFCFO)CF (pは0〜8)、−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFCF (pは0〜4)、−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFCF (pは0〜5)
が挙げられる。
式1で表される基(a)としては、パーフルオロアルキル基又は水素原子1個を含むポリフルオロアルキル基であることが好ましく、パーフルオロアルキル基が特に好ましい(ただし、前記アルキル基は、エーテル性酸素原子を有するものを含む。)。これによって、樹脂(A1)は良好な撥インク性を奏する。また、式1で表される基(a)の全炭素数は15以下であることが好ましい。これにより、樹脂(A1)は良好な撥インク性、特に撥有機溶剤性を奏する。また本発明の樹脂(A1)を式1で表される基(a)を有する単量体と他の共重合成分である単量体との共重合によって合成する場合に両単量体の相溶性が良好となる。
式2において、R、Rはシロキサン単位毎に同一でも異なっていてもよい。樹脂(A1)が優れたインク転落性を奏することから、R、Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はフェニル基であることがより好ましく、すべてのシロキサン単位のR、Rがメチル基であることが特に好ましい。また、Rが有機基である場合、窒素原子、酸素原子等が含まれていてもよく、Rは水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基であることが好ましい。nは1〜100の整数であることが好ましい。
エチレン性二重結合(d)としては、例えば、アクリル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基等の付加重合性の不飽和基等が挙げられる。それらの基の水素原子の一部またはすべてが、炭化水素基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、メチル基が好ましい。
樹脂(A1)は、酸性基(c)を有することが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の現像性が良好になるので、より微細なパターン形成が可能となる。
酸性基(c)としては、カルボキシル基、スルホン酸基、及びフェノール性水酸基の群から選ばれる少なくとも1つの酸性基又はその塩が挙げられる。
樹脂(A1)は、式1で表される基(a)を有する単量体、式2で表される基(b)を有する単量体及び反応部位を有する単量体(好ましくは、酸性基(c)を有する単量体)を共重合させてなる重合体の前記反応部位に、エチレン性二重結合(d)を有する化合物を反応させて得られる重合体であることが好ましい。
式1で表される基(a)を有する単量体としては、
CH=CRCOOR[a]、
CH=CRCOORNRSO[a]、
CH=CRCOORNRCO[a]、
CH=CRCOOCHCH(OH)R[a]、
CH=CRCR=CF[a]
CF=CFO[a]
等が挙げられる。ただし、Rは水素原子又はメチル基を、Rは単結合又は炭素数1〜6の2価有機基を、Rは炭素数1〜6の2価有機基を、[a]は式1で表される基(a)を、それぞれ示す。
、Rの具体例としては、CH、CHCH、CH(CH)、CHCHCH、C(CH、CH(CHCH)、CHCHCHCH、CH(CHCHCH)、CH(CHCH、CH(CHCH(CH)等が挙げられる。Rは単結合であってもよい。
式1で表される基(a)を有する単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式2で表される基(b)を有する単量体としては、
CH=CHCOOR[b]
CH=C(CH)COOR[b]等が挙げられる。ただし、Rは単結合又は炭素数1〜6の2価有機基を、[b]は式2で表される基(b)を表す。
の具体例としては、単結合、CH、CHCH、CH(CH)、CHCHCH、C(CH、CH(CHCH)、CHCHCHCH、CH(CHCHCH)、CH(CHCH、CH(CHCH(CH)等が挙げられる。
式2で表される基(b)を有する単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性基(c)を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、もしくはそれらの塩が挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−2−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、もしくはそれらの塩等が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する単量体としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。またこれらのベンゼン環の1個以上の水素原子が、メチル、エチル、n−ブチル等のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基に置換された化合物等が挙げられる。
反応部位を有する単量体としては、水酸基を有する単量体、エチレン性二重結合を有する酸無水物、カルボキシル基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体等が挙げられる。
エチレン性二重結合(d)の樹脂(A1)への導入方法としては、
(1)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にエチレン性二重結合(d)を有する酸無水物を反応させる方法、
(2)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にイソシアネート基を有する単量体を反応させる方法、
(3)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に塩化アシル基を有する単量体を反応させる方法、
(4)エチレン性二重結合を有する酸無水物をあらかじめ共重合させ、後に水酸基を有する単量体を反応させる方法、
(5)カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にエポキシ基を有する単量体と反応させる方法、
(6)エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にカルボキシル基を有する単量体を反応させる方法、が挙げられる。
樹脂(A1)は、式1で表される基(a)を有する単量体、式2で表される基(b)を有する単量体及び酸性基(c)を有する単量体以外の単量体(その他の単量体)に基づく単量体単位を有していてもよい。
その他の単量体としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、共役ジエン類が挙げられる。これらの化合物には、官能基が含まれていてもよく、例えば水酸基、カルボニル基、アルコキシ基等が挙げられる。特に(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類が、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の耐熱性に優れるので好ましい。
樹脂(A1)は、式1で表される基(a)を有する単量体を式2で表される基(b)を有する単量体等と共重合させる他に、反応部位を有する重合体の反応部位に、式1で表される基(a)を有する化合物を反応させる各種変性方法によって製造することにより、式1で表される基(a)を導入することもできる。
そのような各種変性方法としては、
(1)エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にカルボキシル基、アミノ基又はメルカプト基のいずれかを有し片末端に基(a)を有する化合物を反応させる方法、
(2)アミノ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にカルボキシル基又はエポキシ基を有し片末端に基(a)を有する化合物を反応させる方法、
(3)カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端にエポキシ基、アミノ基又は塩化シリル基のいずれかを有し片末端に基(a)を有する化合物を反応させる方法、
(4)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に片末端に塩化シリル基を有し片末端に基(a)を有する化合物を反応させる方法、が挙げられる。
樹脂(A1)は、式2で表される基(b)を有する単量体を式1で表される基(a)を有する単量体等と共重合させる他に、反応部位を有する重合体の反応部位に、式2で表される基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法によって製造することにより、式2で表される基(b)を導入することもできる。
反応部位を有する重合体に式2で表される基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法は、上記の式1で表される基(a)の導入について述べた各種変性方法と同様である。
樹脂(A1)は、酸性基(c)を有する単量体を式1で表される基(a)を有する単量体、式2で表される基(b)を有する単量体等と共重合させる他に、例えば、(1)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に酸無水物を反応させる方法、(2)エチレン性二重結合を有する酸無水物をあらかじめ共重合させ、後に水酸基を有する化合物を反応させる方法により、酸性基(c)としてカルボキシル基を導入することができる。
樹脂(A1)は、式1で表される基(a)を有する重合開始剤を使用する方法や式2で表される基(b)を有する重合開始剤を使用する方法によっても製造することもできる。
式2で表される基(b)を有する重合開始剤としては、開始剤分子主鎖中に2価のポリシロキサン構造を有する基が含まれていてもよいし、開始剤分子の末端部分または側鎖に1価のポリシロキサン構造を有する基が含まれていてもよい。開始剤分子主鎖中に2価のポリシロキサン構造を有する基が含まれている開始剤としては、2価のポリシロキサン構造を有する基とアゾ基とを交互に有する化合物等が挙げられる。市販品としては、VPS−1001、VPS−0501(以上、和光純薬工業社製)が挙げられる。
樹脂(A1)は、例えば、各単量体を溶媒に溶解して必要に応じて加熱し、重合開始剤を加えて反応させる方法によって合成できる。該反応においては、必要に応じて連鎖移動剤を存在させるのが好ましい。単量体、重合開始剤、溶剤および連鎖移動剤は連続して添加しても良い。
樹脂(A1)におけるフッ素原子含有量は、1〜30%が好ましく、より好ましくは3〜25%である。当該範囲であると樹脂(A1)は、形成される塗膜硬化物の表面張力を下げる効果に優れ、塗膜硬化物に高い撥インク性を付与する。また、塗膜が白濁することなく感光性樹脂組成物の現像性が良好であり、塗膜硬化物と基材との密着性が高くなる。
樹脂(A1)におけるケイ素原子の含有量は、0.1〜25%が好ましく、より好ましくは0.5〜20%である。当該範囲であると樹脂(A1)は、塗膜硬化物に良好なインク転落性を付与し、感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
樹脂(A1)は、分子内に3個以上100個以下のエチレン性二重結合を有することが好ましい。より好ましくは5個以上40個以下である。この範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
樹脂(A1)の酸価は10〜200(mgKOH/g)であることが好ましく、20〜130(mgKOH/g)であることがより好ましい。当該範囲であると樹脂(A1)のアルカリ溶解性、感光性樹脂組成物の現像性が良好である。
樹脂(A1)において、その他の重合単位の割合は90%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
樹脂(A1)の数平均分子量は、1000以上20000未満が好ましく、2000以上12000未満がより好ましい。当該範囲であると、露光によるコントラストの変化が大きく、光に対する感度が高くなる一方、現像液に対する溶解性が高く、非露光部における溶解残渣の発生を防止できるという利点がある。
樹脂(A1)の感光性樹脂組成物の全固形分における割合は、0.01〜50%が好ましく、0.05〜30%がより好ましく、0.05〜20%が特に好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好であり、形成される塗膜硬化物は良好な撥インク性、インク転落性を奏し、塗膜硬化物の基材密着性が良好となる。
本発明の第二の感光性樹脂組成物において使用される樹脂(A2)及び樹脂(A3)について説明する。
樹脂(A2)は、下記式1で表される基(a)と、エチレン性二重結合(d)とを有し、かつ下記式2で表される基(b)は有しない。
樹脂(A3)は、下記式2で表される基(b)と、エチレン性二重結合(d)とを有し、かつ下記式1で表される基(a)は有しない。
−CFXR ・・・式1
(式中、Xは水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示し、Rはフッ素原子又は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(但し、前記アルキル基はエーテル性の酸素原子を有するものを含む。)を示す。)
−(SiR−O)−SiR ・・・式2
(式中、R、Rは独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、nは1〜200の整数を示す。)
式1で表される基(a)中のRが、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基である場合、前記アルキル基はフッ素原子以外の他のハロゲン原子に置換された水素原子を含んでいてもよく、他のハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。また、エーテル性酸素原子は、アルキル基の炭素−炭素結合間に存在してもよく、結合末端に存在してもよい。
式1で表される基(a)の具体例としては、
−CF、−CFCF、−CFCHF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CF11CF、−(CF15CF、−CFO(CFCFO)CF (pは0〜8)、−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFCF (pは0〜4)、−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFCF (pは0〜5)
が挙げられる。
式1で表される基(a)としては、パーフルオロアルキル基又は水素原子1個を含むポリフルオロアルキル基であることが好ましく、パーフルオロアルキル基が特に好ましい(ただし、前記アルキル基は、エーテル性酸素原子を有するものを含む。)。これによって、樹脂(A2)は良好な撥インク性を奏する。また、式1で表される基(a)の全炭素数は15以下であることが好ましい。これにより、樹脂(A2)は良好な撥インク性、特に撥有機溶剤性を奏する。また本発明の樹脂(A2)を式1で表される基(a)を有する単量体と他の共重合成分である単量体との共重合によって合成する場合に両単量体の相溶性が良好となる。
式2において、R、Rはシロキサン単位毎に同一でも異なっていてもよい。樹脂(A1)が優れたインク転落性を奏することから、R、Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はフェニル基であることがより好ましく、すべてのシロキサン単位のR、Rがメチル基であることが特に好ましい。また、Rが有機基である場合、窒素原子、酸素原子等が含まれていてもよく、Rは水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基であることが好ましい。nは1〜100の整数であることが好ましい。
エチレン性二重結合(d)としては、例えば、アクリル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基等の付加重合性の不飽和基等が挙げられる。それらの基の水素原子の一部またはすべてが、炭化水素基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、メチル基が好ましい。
樹脂(A2)又は樹脂(A3)は、酸性基(c)を有することが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の現像性が良好になるので、より微細なパターン形成が可能となる。
酸性基(c)としては、カルボキシル基、スルホン酸基、及びフェノール性水酸基の群から選ばれる少なくとも1つの酸性基又はその塩が挙げられる。
樹脂(A2)は、式1で表される基(a)を有する単量体及び反応部位を有する単量体(、好ましくは、酸性基(c)を有する単量体)を共重合させてなる重合体の前記反応部位に、エチレン性二重結合(d)を有する化合物を反応させて得られる重合体であることが好ましい。また、樹脂(A3)は、式2で表される基(b)を有する単量体及び反応部位を有する単量体(、好ましくは、酸性基(c)を有する単量体)を共重合させてなる重合体の前記反応部位に、エチレン性二重結合(d)を有する化合物を反応させて得られる重合体であることが好ましい。
式1で表される基(a)を有する単量体としては、
CH=CRCOOR[a]、
CH=CRCOORNRSO[a]、
CH=CRCOORNRCO[a]、
CH=CRCOOCHCH(OH)R[a]、
CH=CRCR=CF[a]
CF=CFO[a]
等が挙げられる。ただし、Rは水素原子又はメチル基を、Rは単結合又は炭素数1〜6の2価有機基を、Rは炭素数1〜6の2価有機基を、[a]は式1で表される基(a)を、それぞれ示す。
、Rの具体例としては、CH、CHCH、CH(CH)、CHCHCH、C(CH、CH(CHCH)、CHCHCHCH、CH(CHCHCH)、CH(CHCH、CH(CHCH(CH)等が挙げられる。Rは単結合であってもよい。
式1で表される基(a)を有する単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式2で表される基(b)を有する単量体としては、
CH=CHCOOR[b]
CH=C(CH)COOR[b]等が挙げられる。ただし、Rは単結合又は炭素数1〜6の2価有機基を、[b]は式2で表される基(b)を表す。
の具体例としては、単結合、CH、CHCH、CH(CH)、CHCHCH、C(CH、CH(CHCH)、CHCHCHCH、CH(CHCHCH)、CH(CHCH、CH(CHCH(CH)等が挙げられる。
式2で表される基(b)を有する単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性基(c)を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、もしくはそれらの塩が挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−2−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、もしくはそれらの塩等が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する単量体としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。またこれらのベンゼン環の1個以上の水素原子が、メチル、エチル、n−ブチル等のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基に置換された化合物等が挙げられる。
反応部位を有する単量体としては、水酸基を有する単量体、エチレン性二重結合を有する酸無水物、カルボキシル基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体等が挙げられる。
エチレン性二重結合(d)の樹脂(A2)又は樹脂(A3)への導入方法としては、
(1)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にエチレン性二重結合(d)を有する酸無水物を反応させる方法、
(2)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にイソシアネート基を有する単量体を反応させる方法、
(3)水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に塩化アシル基を有する単量体を反応させる方法、
(4)エチレン性二重結合を有する酸無水物をあらかじめ共重合させ、後に水酸基を有する単量体を反応させる方法、
(5)カルボキシル基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にエポキシ基を有する単量体と反応させる方法、
(6)エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にカルボキシル基を有する単量体を反応させる方法、が挙げられる。
樹脂(A2)又は樹脂(A3)は、式1で表される基(a)を有する単量体、式2で表される基(b)を有する単量体又は酸性基(c)を有する単量体以外の単量体(その他の単量体)に基づく単量体単位を有していてもよい。
その他の単量体としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、共役ジエン類が挙げられる。これらの化合物には、官能基が含まれていてもよく、例えば水酸基、カルボニル基、アルコキシ基等が挙げられる。特に(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類が、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の耐熱性に優れるので好ましい。
樹脂(A2)又は樹脂(A3)は、例えば、各単量体を溶媒に溶解して必要に応じて加熱し、重合開始剤を加えて反応させる方法によって合成できる。該反応においては、必要に応じて連鎖移動剤を存在させるのが好ましい。単量体、重合開始剤、溶剤および連鎖移動剤は連続して添加しても良い。
樹脂(A2)におけるフッ素原子含有量は、5〜30%が好ましく、より好ましくは10〜25%である。当該範囲であると樹脂(A2)は、形成される塗膜硬化物の表面張力を下げる効果に優れ、塗膜硬化物に高い撥インク性を付与する。また、塗膜が白濁することなく感光性樹脂組成物の現像性が良好であり、塗膜硬化物と基材との密着性が高くなる。
樹脂(A3)におけるケイ素原子の含有量は、0.1〜30%が好ましく、より好ましくは0.5〜25%である。塗膜硬化物に良好なインク転落性を付与し、感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
樹脂(A2)又は樹脂(A3)は、分子内に3個以上100個以下のエチレン性二重結合を有することが好ましい。より好ましくは5個以上40個以下である。この範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
樹脂(A2)又は樹脂(A3)の酸価は10〜200(mgKOH/g)であることが好ましく、20〜130(mgKOH/g)であることがより好ましい。当該範囲であると樹脂(A2)又は樹脂(A3)のアルカリ溶解性、感光性樹脂組成物の現像性が良好である。
樹脂(A2)又は樹脂(A3)において、その他の重合単位の割合は90%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
樹脂(A2)又は樹脂(A3)の数平均分子量は、1000以上20000未満が好ましく、2000以上12000未満がより好ましい。当該範囲であると、露光によるコントラストの変化が大きく、光に対する感度が高くなる一方、現像液に対する溶解性が高く、非露光部における溶解残渣の発生を防止できるという利点がある。
樹脂(A2)又は樹脂(A3)の感光性樹脂組成物の全固形分における割合は、それぞれ、0.01〜20%が好ましく、0.1〜10%がより好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好であり、形成される塗膜硬化物は良好な撥インク性、インク転落性を奏し、塗膜硬化物の基材密着性が良好となる。
次に、ラジカル開始剤(B)について説明する。ラジカル開始剤(B)は、光によりラジカルを発生する化合物である。
ラジカル開始剤(B)としては、例えば、ベンジル、ジアセチル、メチルフェニルグリオキシレート、9,10−フェナンスレンキノン等のα−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2′−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミノ安息香酸類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物、アシルホスフィンオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。
特に、上記アミノ安息香酸類、上記ベンゾフェノン類等は、その他のラジカル開始剤と共に用いられて、増感効果を発現することがある。また、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族アミン類も同じくラジカル開始剤と共に用いられて、増感効果を発現することがある。
ラジカル開始剤(B)の感光性樹脂組成物の全固形分における割合は、0.1〜50%が好ましく、0.5〜30%がより好ましい。この範囲であると現像性が良好である。
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)について説明する。アルカリ可溶の感光性樹脂(D)は、酸性基(c)と、分子内に3個以上のエチレン性二重結合(d)とを有し、かつ上記式1で表される基(a)及び上記式2で表される基(b)を有しない。
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)は、感光性樹脂組成物の現像性及び感光性樹脂組成物から形成される塗膜硬化物の基材密着性を向上させる。酸性基(c)、エチレン性二重結合(d)は、樹脂(A1)又は樹脂(A2)において説明したものと同様である。
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)の例としては、酸性基(c)を有する単量体、反応部位を有する単量体を共重合させてなる重合体の前記反応部位に、エチレン性二重結合(d)を有する化合物を反応させて得られる重合体(D1)、エチレン性二重結合(d)を導入したノボラック樹脂(D2)が挙げられる。
前記重合体(D1)は、樹脂(A1)又は樹脂(A2)において説明したのと同様の単量体の種類、製法によって得られる。重合体(D1)は、酸性基(c)を有する単量体、反応部位を有する単量体以外の単量体(その他の単量体)に基づく単量体単位を有していてもよい。その他の単量体の種類は、樹脂(A1)又は樹脂(A2)において説明したのと同様である。
エチレン性二重結合(d)を導入したノボラック樹脂(D2)について説明する。
ノボラック樹脂は、フェノール類をアルデヒド類と重縮合して得られるものであり、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂等が挙げられる。特に、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂から得られる感光性樹脂は、現像により未露光部分を除去した後の基材表面のインクに対する濡れ性が良好であり好ましい。
上記ノボラック樹脂に、エチレン性二重結合(d)を導入する方法としては、例えば、(1)フェノール性水酸基の一部をエポキシ基を有する単量体と反応させる方法、(2)フェノール性水酸基の一部またはすべてをエピクロロヒドリンと反応させて、ノボラック樹脂にエポキシ基を導入した後に、該エポキシ基とカルボキシル基を有する単量体を反応させる方法が挙げられる。なお、この反応で生成した水酸基と酸無水物とを反応させ、分子内にさらにカルボキシル基を導入してもよい。
エチレン性二重結合(d)を導入したノボラック樹脂(D2)の市販品としては、KAYARAD PCR−1069、K−48C、CCR−1105、CCR−1115、TCR−1025、TCR−1064、TCR−1286、ZFR−1122、ZFR−1124、ZFR−1185(以上、日本化薬社製)等が挙げられる。
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)は、分子内に3個以上のエチレン性二重結合を有するため、露光部分と未露光部分とのアルカリ溶解度に差がつきやすく、より少ない露光量での微細なパターン形成が可能となる。分子内のエチレン性二重結合の数は好ましくは6個以上である。
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)の酸価は、10〜400(mgKOH/g)が好ましく、50〜300(mgKOH/g)がより好ましい。この範囲であるとアルカリ溶解性、現像性が良好である。
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)の数平均分子量は、500以上20000未満が好ましく、2000以上15000未満がより好ましい。この範囲であるとアルカリ溶解性、現像性が良好である。
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)の感光性樹脂組成物の全固形分における割合は、5〜80%が好ましく、10〜50%がより好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好である。
感光性樹脂組成物は、さらに、ラジカル架橋剤(C)を含むことが好ましい。これにより、光照射による感光性樹脂組成物の硬化を促進して比較的短時間での硬化が可能となる。
ラジカル架橋剤(C)は、2個以上のエチレン性二重結合(d)を有し、かつ酸性基(c)を有しない。ただし、ラジカル架橋剤(C)は、上記樹脂(A1)、樹脂(A2)又は樹脂(A3)以外の化合物であり、樹脂が上記樹脂(A1)、樹脂(A2)、樹脂(A3)又はラジカル架橋剤(C)のいずれにも該当する場合には、そのような樹脂は本発明においては樹脂(A1)、樹脂(A2)又は樹脂(A3)のいずれかとみなす。
酸性基(c)及びエチレン性二重結合(d)は、樹脂(A1)又は樹脂(A2)において説明したのと同様である。
具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル架橋剤(C)の感光性樹脂組成物の全固形分における割合は、5〜70%が好ましく、10〜50%がより好ましい。この範囲であると現像性が良好である。
感光性樹脂組成物においては、アミノ樹脂、エポキシ化合物、オキサゾリン基化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である熱架橋剤(E)を使用することが好ましい。これにより、塗膜硬化物の耐熱性を向上させることができる。
アミノ樹脂としては、メラミン系化合物、グアナミン系化合物、尿素系化合物等のアミノ基の一部もしくはすべてをヒドロキシメチル化した化合物、または該ヒドロキシメチル化した化合物の水酸基の一部もしくはすべてをメタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール等でエーテル化した化合物、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
エポキシ基化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル類、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート等のグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール等のグリシジルアミン類、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
オキサゾリン化合物としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等の重合性単量体の共重合体を挙げることができる。
感光性樹脂組成物においては、シランカップリング剤(F)を使用することが好ましい。これにより、塗膜硬化物と基材との密着性が向上する。
シランカップリング剤(F)の具体例としては、テトラエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、POA鎖含有トリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
感光性樹脂組成物においては、希釈剤(G)を使用することができる。
希釈剤(G)の具体例としては、例えばエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類、メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等、n−ブタン、n−ヘキサン等の鎖式炭化水素、シクロヘキサン等の環式飽和炭化水素、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて硬化促進剤、着色剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、紫外線吸収剤等を使用することができる。着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料、メタリック顔料等が例示される。
着色剤を混合した感光性樹脂組成物は、遮光用塗膜の形成材料として使用できる。例えばカラーフィルター用隔壁材としては、RGBの発光色のコントラストを高めるため黒色の塗膜を形成できる感光性樹脂組成物が適用される。
黒色となる着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色金属酸化物顔料が好ましい。また、赤、青、緑、紫、黄、シアン、マゼンタ等から選ばれる2種以上の有機顔料を混合し、黒色化した組み合わせも好ましい。
カーボンブラックとしては、ランプブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。チタンブラックとは、チタンの酸化または二酸化チタンの還元により得られるもので、Ti2u−1(uは、1以上の数)で表される少なくとも1種である。黒色金属酸化物顔料としては、銅、鉄、クロム、マンガン、コバルトの酸化物が挙げられる。前記金属酸化物から選ばれる少なくとも2種以上の複合金属酸化物も好ましい。例えば、銅−クロムの酸化物、銅−クロム−マンガンの酸化物、銅−鉄−マンガンの酸化物又はコバルト−鉄−マンガンの酸化物等が挙げられる。
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料が、赤の顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ピロロ・ピロール系顔料、アントラキノン系顔料等が、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料、紫の顔料としては、ジオキサジンバイオレット、ファストバイオレットB、メチルバイオレットイーキ、インダントレンブリリアントバイオレット、黄の顔料としては、テトラクロロイソインドリノン系顔料、ハンザイロー系顔料、ベンジジンエロー系顔料、アゾ系顔料、シアンの顔料としては無金属フタロシアニン、メロシアニン、マゼンタの顔料としては、ジメチルキナクリドン、チオインジゴなどが挙げられる。
顔料は、分散剤(例えば、ポリカプロラクトン系化合物、長鎖アルキルポリアミノアマイド系化合物等。)と共にサンドミル、ロールミル等の分散機によって分散され、その後、感光性樹脂組成物に加えてもよい。粒径は、1μm以下が好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
次に、感光性樹脂組成物を用いた画素パターン形成方法(フォトリソグラフィー)について説明する。
まず、公知の塗膜形成方法によって、基材の表面に感光性樹脂組成物の塗膜を形成する。
基材としては、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、各種ガラス板、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフイン等、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリイミドの熱可塑性プラスチックシート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱硬化性プラスチックシート等を挙げることができる。特に、耐熱性の点からガラス板、ポリイミド等の耐熱性プラスチックが好ましく用いられる。
塗膜の形成方法としては、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法などが挙げられる。
次に、塗膜は乾燥(以下、プリベークと呼ぶ。)される。プリベークすることによって、溶剤が揮発し、流動性のない塗膜が得られる。プリベーク条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは50〜120℃、10〜2000秒間程度の幅広い範囲で使用できる。
次に、加熱された塗膜に所定パターンのマスクを介して露光を行う。使用される光は、100〜600nmの範囲に分布を有する電磁波が好ましく、具体的には可視光、紫外線、遠紫外線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー等のレーザー光等が挙げられる。但し、波長の短い光を照射する場合、そのエネルギーが強いため、照射時間によっては、露光された部分の組成物材料が分解する可能性がある。したがって、紫外線波長以上の光であることが好ましく、そのような光源としては、露光装置用途に汎用的に広く用いられている超高圧水銀灯が挙げられる。通常は、5〜1000mJ/cmの露光量の範囲で露光される。
その後、現像液により現像し、未露光部分を除去する。現像液としては、例えば無機アルカリ類、アミン類、アルコールアミン類、第四級アンモニウム塩等のアルカリ類からなるアルカリ水溶液を用いることができる。
現像時間は、30〜180秒間が好ましい。また現像方法は液盛り法、ディッピング法などのいずれでもよい。現像後、流水洗浄を行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、基材上の水分を除去する。続いて、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、好ましくは120〜250℃で、5〜90分間加熱処理(以下、ポストベーク処理という。)をすることによって、パターンが形成される。
上記のフォトリソグラフィー工程を経て画素パターンの隔壁を形成させた後、画素内の基材表面の汚れを除去することがある。例えば、低圧水銀灯やエキシマUV等の短波長紫外線の照射や、光アッシング処理等により基材表面を洗浄する工程が挙げられる。光アッシング処理とはオゾンガス存在下、短波長紫外線を照射する処理である。前記短波長紫外線とは、100〜300nmの波長にメインピークを有する光である。
このように、本発明の感光性樹脂組成物は、それ自体はアルカリ可溶性であり、光照射によりラジカル開始剤(B)からラジカルが発生し、主として樹脂(A1)、又は樹脂(A2)と樹脂(A3)、アルカリ可溶の感光性樹脂(D)が架橋され硬化し、アルカリ現像によって光の照射されていない部分が除去されるネガ型レジストとして使用できる。
樹脂(A2)と樹脂(A3)とを含む第二の感光性樹脂組成物は、樹脂(A1)を含む第一の感光性樹脂組成物よりも、撥インク性、インク転落性において優れる傾向にある。その理由は定かではないが、以下のように推察される。基(a)及び基(b)は、塗膜表面に配向する性質を持つが、基(a)及び基(b)が同一分子内に存在する第一の感光性樹脂組成物よりも、基(a)、基(b)が別個の分子に存在する第二の感光性樹脂組成物の方が、分子鎖の自由度が高く、表面に基(a)及び基(b)がより配向しやすいと考えられる。
樹脂(A2)と樹脂(A3)とを含む第二の感光性樹脂組成物は、樹脂(A1)を含む第一の感光性樹脂組成物よりも、塗膜硬化物のUV照射後の撥インク性において優れる傾向がある。その理由は定かではないが、以下のように推察される。式1で表される基(a)のUV照射による劣化を抑制するため、塗膜の表面において、UV照射に対する耐性に優れる式2で表される基(b)が基(a)の近傍に存在することが好ましいところ、基(a)及び基(b)が同一分子内に存在する第一の感光性樹脂組成物よりも、基(a)、基(b)が別個の分子に存在する第二の感光性樹脂組成物の方が、分子鎖の自由度が高く、塗膜表面の配向が望ましい状態になると考えられる。
分子鎖の自由度の観点から、塗膜表面の配向がより望ましい状態になると考えられるため、樹脂(A1)を含む第一の感光性樹脂組成物がさらに樹脂(A2)を含むこと、又は、さらに樹脂(A1)を含む第一の感光性樹脂組成物が樹脂(A3)を含むことは好ましい態様である。
撥インク性は、水およびキシレンの接触角で見積もることができ、水の接触角は80度以上が好ましく、90度以上がより好ましく、100度以上が特に好ましい。また、キシレンの接触角は30度以上が好ましく、35度以上がより好ましく、40度以上が特に好ましい。
インク転落性は、水およびキシレンの転落角で見積もることができ、水の転落角は35度以下が好ましく、25度以下がより好ましい。また、キシレンの転落角は30度以下が好ましく、20度以下がより好ましい。
また、上記の本発明の感光性樹脂組成物は、優れたアルカリ溶解性、現像性を有するので、微細なパターンを形成することが可能である。具体的には100μ以下のパターン形成に好ましく用いられ、50μm以下のパターン形成により好ましく用いられる。
【実施例】
以下に、合成例および実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、これにより本発明は限定されない。例1〜10が実施例であり、例11〜13が比較例である。なお、以下において、特に断らない限り、部および%は質量基準である。また、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりポリスチレンを標準物質として測定した値である。
各例において用いた略号の化合物を以下に示す。
C4FMA:CH=C(CH)COOCHCH(CF
C6FMA:CH=C(CH)COOCHCH(CF
C8FA:CH=CHCOOCHCH(CF
X−174DX:ジメチルシリコーン鎖含有メタクリレート(信越化学社製、商品名X−22−174DX)
X−8201:ジメチルシリコーン鎖含有メタクリレート(信越化学社製、商品名X−24−8201)
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
N−MAA:N−ヒドロキシメチルアクリルアミド
MMA:メチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IBMA:イソボルニルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
V−70:2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、商品名 V−70)
DSH:n−ドデシルメルカプタン
2−ME:2−メルカプトエタノール
MOI:2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
AC:アクリロイルクロライド
TEA:トリエチルアミン
ECA:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート
MIBK:メチルイソブチルケトン
CCR−1115:クレゾールノボラック樹脂(日本化薬社製、商品名CCR−1115、固形分60%、一分子あたりのエチレン性二重結合数≒10)
サイクロマーP:感光性樹脂(ダイセル化学社製、サイクロマーP(ACA)250、固形分46%)
IR907:ラジカル開始剤(チバ−ガイギー社製、IRGACURE−907)
IR369:ラジカル開始剤(チバ−ガイギー社製、商品名IRGACURE−369)
DEAB:4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
ITX:イソプロピルチオキサンソン(Ward Blenkinsop社製、商品名Quantacure ITX)
DETX−S:イソプロピルチオキサンソン(日本化薬社製、商品名DETX−S)
D310:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(日本化薬社製、商品名 KAYARAD D−310)
M325:メチルエーテル化メラミン樹脂(三井サイアナミッド社製、商品名 サイメル325)
NW−100LM:メチルエーテル化メラミン樹脂(三和ケミカル社製、商品名ニカラックNW−100LM)
157S65:ビスフェノールAノボラック型(ジャパンエポキシレジン社製、商品名エピコート157S65)
KBM403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名 KBM−403)
DEGDM:ジエチレングリコールジメチルエーテル
CB:カーボンブラック(平均粒径=120nm、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液、固形分20%)
[樹脂(A1)、樹脂(A2)、樹脂(A3)、感光性樹脂(D1)の合成]
[合成例1]
撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトンの555.0g、C8FAの24.0g、X−8201の96.0g、MAAの48.0g、IBMAの72.0g、連鎖移動剤DSHの9.7gおよび重合開始剤V−70の3.0gを仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、重合体の溶液を得た。該重合体の数平均分子量は5000であった。得られた重合体のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、重合体の240gを得た。
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量300mLのガラス製フラスコに、重合体の100g、ECAの21.2g、メチルイソブチルケトンの100gを仕込み、撹拌しながら、50℃で48時間重合させ、樹脂(A1−1)の溶液を得た。該樹脂(A1−1)の数平均分子量は7000であった。得られた樹脂(A1−1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、樹脂(A1−1)の120gを得た。
[合成例2]
樹脂(A1−1)において、原料の配合を表1のように変更したほかは同様の重合反応により、重合体を得た。
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量300mLのガラス製フラスコに、重合体の100g、MOIの41.7g、DBTDLの0.17g、BHTの2.1gおよびアセトンの100gを仕込み、撹拌しながら、30℃で18時間重合させ、樹脂(A1−2)の溶液を得た。該樹脂(A1−2)の数平均分子量は9800であった。得られた樹脂(A1−2)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、樹脂(A1−2)の140gを得た。
[合成例3]
樹脂(A1−1)において、原料の配合を表1のように変更したほかは同様の重合反応により、重合体を得た。
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量300mLのガラス製フラスコに、重合体の100g、ACの17.9g、TEAの20.0gおよびアセトンの100gを仕込み、撹拌しながら、30℃で18時間重合させ、樹脂(A1−3)の溶液を得た。該樹脂(A1−3)の数平均分子量は9400であった。得られた樹脂(A1−3)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、塩酸1%水溶液にて洗浄し、次いで石油エーテルにて再沈精製し、真空乾燥し、樹脂(A1−3)の110gを得た。
[合成例4〜14]
樹脂(A1−1)において、原料の配合を表1、2のように変更したほかは同様の重合反応により、重合体を得た。
樹脂(A1−1)〜(A1−3)において、原料の配合を表1、2のように変更したほかは同様の変性反応により、樹脂(A1−4)、(A1−5)、樹脂(A2−1)〜(A2−4)、樹脂(A3−1)〜(A3−3)、樹脂(D1−1)、(D1−2)を得た。
なお、表1、2に、原料の配合量から計算される、各樹脂のフッ素原子の含有量、ケイ素原子の含有量、1分子中のエチレン性二重結合の数、酸価の理論値を示した。
[感光性樹脂組成物の評価]
表3、4に示す割合で、樹脂(A1)、樹脂(A2)、樹脂(A3)、ラジカル開始剤(B)、感光性樹脂(D)、ラジカル架橋剤(C)、熱架橋剤(E)、シランカップリング剤(F)、希釈剤(H)および必要に応じその他成分を配合して例1〜13の感光性樹脂組成物を得た。
ガラス基材上にスピンナーを用いて、感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で2分間ホットプレート上でプリベークし、膜厚3.0μmの塗膜を形成した。次に、塗膜にマスク(ライン/スペース=20μm/20μm)を接触させ、超高圧水銀灯により150mJ/cm照射した。未露光部分を0.1%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に40秒間未露光部分を水により洗い流し、乾燥させた。次いで、ホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、パターンが形成されたガラス基材を得た。これについて、現像性、基材密着性、撥インク性、撥インク性の持続性、UV照射後の撥インク性、インク転落性、インク転落性の持続性、UV照射後のインク転落性を以下に示す方法で測定、評価した。
[現像性]
ライン/スペースのパターンが形成できたものを○、形成できなかったものについては×とした。
[基材密着性]
JIS K 5400記載の碁盤目テープ法により評価した。塗板をカッターにて、2mm間隔でます目の数が25個となるように、碁盤目状に傷を付けた。次に粘着テープを貼り、剥がした後の塗膜の付着状態を目視により、ます目が剥がれなかったものを○、ます目が殆ど剥がれたものを×として評価した。
[撥インク性]
撥インク性は、ガラス基材に形成された塗膜硬化物表面の水およびキシレンの接触角(度)により評価した。接触角とは、固体と液体が接触する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度で定義した。この角度が大きいほど塗膜の撥インク性が優れることを意味する。水の接触角80度以上を○、80度未満を×と表記した。キシレンの接触角30度以上を○、30度未満を×と表記した。
[撥インク性の持続性]
ガラス基材に形成された塗膜硬化物をキシレンを染み込ませたガーゼで10回軽くこすった後の水およびキシレンの接触角により評価した。
[UV照射後の撥インク性]
低圧水銀灯を光源として使用し、2分間UVを照射した後の水およびキシレンの接触角により評価した。
[インク転落性]
インク転落性は、水平に保持したガラス基材に形成された塗膜硬化物表面に50μLの水または10μLのキシレンを滴下し、ガラス基材の一辺を持ち上げて徐々に傾けていき、水滴またはキシレン滴が落下し始めたときのガラス基材表面と水平面との角度を転落角(度)により評価した。この角度が小さいほど塗膜のインク転落性が優れることを意味する。水の転落角35度以下を○、35度超を×と表記した。キシレンの転落角30度以下を○、30度超を×と表記した。
[インク転落性の持続性]
ガラス基材に形成された塗膜硬化物をキシレンを染み込ませたガーゼで10回軽くこすった後の水およびキシレンの転落角により評価した。
[UV照射後のインク転落性]
低圧水銀灯を光源として使用し、2分間UVを照射した後の水およびキシレンの転落角により評価した。




【産業上の利用可能性】
本発明の感光性樹脂組成物は、インクを弾く性質が必要とされる用途に適用できる。例えば、液晶ディスプレイ用カラーフィルター又は有機ELディスプレイ等の隔壁の形成、半導体装置又は電気回路における配線パターン形成用の隔壁の形成に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A1)と、ラジカル開始剤(B)と、アルカリ可溶の感光性樹脂(D)と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。但し、樹脂(A1)及びアルカリ可溶の感光性樹脂(D)はそれぞれ以下のものを表す。
樹脂(A1)は、下記式1で表される基(a)と、下記式2で表される基(b)と、エチレン性二重結合(d)とを有する。
−CFXR ・・・式1
(式中、Xは水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示し、Rはフッ素原子又は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(但し、前記アルキル基はエーテル性の酸素原子を有するものを含む。)を示す。)
−(SiR−O)−SiR ・・・式2
(式中、R、Rは独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、nは1〜200の整数を示す。)
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)は、酸性基(c)と、分子内に3個以上のエチレン性二重結合(d)とを有し、かつ上記式1で表される基(a)及び上記式2で表される基(b)を有しない。
【請求項2】
樹脂(A1)におけるフッ素原子含有量は1〜30%であり、樹脂(A1)の感光性樹脂組成物の全固形分における割合は0.01〜50%である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂(A1)におけるケイ素原子含有量は0.1〜25%である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂(A1)は、酸性基(c)をさらに有する請求項1、2又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂(A2)と、樹脂(A3)と、ラジカル開始剤(B)と、アルカリ可溶の感光性樹脂(D)と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。但し、樹脂(A2)、樹脂(A3)及びアルカリ可溶の感光性樹脂(D)はそれぞれ以下のものを表す。
樹脂(A2)は、下記式1で表される基(a)と、エチレン性二重結合(d)とを有し、かつ下記式2で表される基(b)を有しない。
樹脂(A3)は、下記式2で表される基(b)と、エチレン性二重結合(d)とを有し、かつ下記式1で表される基(a)を有しない。
−CFXR ・・・式1
(式中、Xは水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示し、Rはフッ素原子又は水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(但し、前記アルキル基はエーテル性の酸素原子を有するものを含む。)を示す。)
−(SiR−O)−SiR ・・・式2
(式中、R、Rは独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、nは1〜200の整数を示す。)
アルカリ可溶の感光性樹脂(D)は、酸性基(c)と、分子内に3個以上のエチレン性二重結合(d)とを有し、かつ上記式1で表される基(a)及び上記式2で表される基(b)を有しない。
【請求項6】
樹脂(A2)におけるフッ素原子含有量は5〜30%であり、樹脂(A2)の感光性樹脂組成物の全固形分における割合は0.01〜20%である請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂(A3)におけるケイ素原子含有量は0.1〜30%であり、樹脂(A3)の感光性樹脂組成物の全固形分における割合は0.01〜20%である請求項5又は6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂(A2)は、酸性基(c)をさらに有する請求項5、6又は7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂(A3)は、酸性基(c)をさらに有する請求項5、6、7又は8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
ラジカル架橋剤(C)をさらに含む請求項1〜9のいずれかひとつに記載の感光性樹脂組成物。
但し、ラジカル架橋剤(C)は、2個以上のエチレン性二重結合(d)を有し、かつ酸性基(c)を有しない。
【請求項11】
アミノ樹脂、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である熱架橋剤(E)をさらに含む請求項1〜10のいずれかひとつに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかひとつに記載の感光性樹脂組成物より得られる塗膜硬化物。

【国際公開番号】WO2004/079454
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503097(P2005−503097)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002732
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】