説明

感光性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】光感度に優れ、得られた硬化物は密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性等に優れた感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)とアルコール性水酸基を有する飽和モノカルボン酸化合物(b)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート樹脂の水酸基に、エチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)を反応させて得られる不飽和基含有樹脂(A)又は該不飽和基含有樹脂(A)の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる酸変性不飽和基含有樹脂(A’)、並びに該樹脂、光重合開始剤(B)及び反応性架橋剤(C)を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック若しくはフィルム基板のハードコート材料、カラーフィルター用のカラーレジスト等に使用でき、特に現像が可能で、その硬化物が表面硬度、密着性、ハンダ耐熱性、無電解金メッキ耐性等が要求されるプリント基板製造の際のソルダーマスク用途に適する感光性樹脂組成物、及びその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソルダーマスクは、プリント基板に部品をハンダ付けする時に目的の部位以外の所へのハンダの付着を避けること及びプリント基板上の回路の保護を目的とし、電気絶縁性、耐熱性、密着性、耐化学薬品性等の諸特性が要求されるインキである。初期には、メラミン系の加熱硬化型ソルダーレジストインキが使用されていたが、その後、耐熱性、硬度、密着性、耐化学薬品性等に優れたエポキシ系の加熱硬化型ソルダーレジストインキが開発されるに至り、高信頼性を重要視するコンピュータ関係等の産業機器用プリント基板においては、その主流となっている。
【0003】
一方、民生用プリント基板に用いられるソルダーレジストインキには作業性と生産性が要求されるため、エポキシ樹脂をアクリレート化し、更に、酸変性させたアルカリ水溶液現像可能な紫外線硬化型のソルダーレジストインキがエポキシ系の加熱硬化型のソルダーレジストインキに代わりその主流となっている。最近のエレクトロニクス機器類の小型化、高機能化、省資源化、低コスト化等により、産業用プリント基板においても回路パターン密度の精度向上要求が高くなり、写真現像型のソルダーマスクの開発が進められている。特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂若しくはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸とを反応させて得られた樹脂を使用した組成物が記載されている。
【0004】
これらの組成物は、プリント基板上に塗布され、加熱処理(ソフトベーク処理)を施された後、マスクパターンを密着させ紫外線を一括照射される。次いで、適当なアルカリ水溶液にて現像することにより、紫外線未照射部が除去されパターン化される。近年プリント基板の多様化により、マスクを使用する紫外線一括照射方式からマスクを使用しないレーザー光源を用いた直描型へと変化してきており、組成物に対しては、より高感度化が求められてきている。
【0005】
特許文献4には核体数が4以上のノボラック型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを得るための反応中又は反応後にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する鎖延長剤を用いる方法、あるいは、(メタ)アクリル酸とエポキシ基の反応により生成した水酸基と反応し得る官能基を2個以上有する鎖延長剤を用いる方法にて高分子化させ高感度化を目指した樹脂組成物が記載されている。しかしながら、鎖延長剤による高分子化はしばしばゲル化を起こし、品質の安定化や組成物のポットライフ(保存安定性)という面で課題が残る。
【0006】
【特許文献1】特公平7−67008号公報
【特許文献2】特公平7−17737号公報
【特許文献3】特許第2598346号公報
【特許文献4】特許第2894167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の樹脂の多くがエポキシ樹脂に不飽和基含有モノカルボン酸をあらかじめ反応させている。そのため、不飽和基の重合を抑制するためフェノール系の熱重合禁止剤を添加し反応を進行させているが、それでもフェノール基とグリシジル基の反応や熱による不飽和基の重合反応を避けるため、反応温度を130℃以下に抑える必要があり、樹脂製造に時間がかかるという欠点がある。
【0008】
プリント基板は携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上をめざして、更なる高精度・高密度化が求められており、それに伴いソルダーマスクへの要求も増々高度となり、密着性、耐熱性、無電解金メッキ耐性等についても、より高い性能が要求されている。しかしながら、現在市販されているソルダーマスクではこれらの要求に十分に対応できていない。
【0009】
本発明の目的は、今日のプリント基板の高機能に対応し得る微細な画像が作製可能な活性エネルギー線に対する感光性に優れ、現像によりパターン形成できると共に、得られる硬化膜がソルダーマスクに要求される諸特性を満足する樹脂組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前述の課題を解決するため、鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の(1)〜(9)に関する。
(1)分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)とアルコール性水酸基を有する飽和モノカルボン酸化合物(b)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート樹脂の水酸基に、エチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)を反応させて得られる不飽和基含有樹脂(A)。
(2)上記(1)に記載の不飽和基含有樹脂(A)の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる酸変性不飽和基含有樹脂(A’)。
【0011】
(3)上記(1)に記載の不飽和基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)及び反応性架橋剤(C)を含有する感光性樹脂組成物。
(4)上記(2)に記載の酸変性不飽和基含有樹脂(A’)、光重合開始剤(B)及び反応性架橋剤(C)を含有する感光性樹脂組成物。
(5)更に、硬化剤(D)を含有する上記(3)又は(4)に記載の感光性樹脂組成物。
【0012】
(6)上記(3)〜(5)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
(7)硬化物が光による超微細加工ができるフォトリソグラフ法を用いてパターニングされた硬化物である上記(6)に記載の硬化物。
(8)上記(6)又は(7)に記載の硬化物の層を有する基材。
(9)上記(8)に記載の基材を有する物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の不飽和基含有樹脂(A)、酸変性不飽和基含有樹脂(A’)及びそれを用いた感光性樹脂組成物は、感光性に優れ、現像によりパターン形成できると共に密着性、耐熱性、無電解金メッキ耐性等の性能が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の不飽和基含有樹脂(A)は、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)とアルコール性水酸基を有する飽和モノカルボン酸化合物(b)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート樹脂の水酸基に、エチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)を反応させて得られる。即ち、本発明の不飽和基含有樹脂(A)は、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と、熱による重合反応を起こすエチレン性不飽和基を含まず分子中に1個以上のアルコール性水酸基を有する飽和モノカルボン酸化合物(b)とを反応(以下第一反応という)させ、次いで、グリシジル基とカルボキシル基の反応により生成したアルコール性水酸基及び化合物(b)により導入されたアルコール性水酸基に分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)を反応(以下第二反応という)させることにより得られる。
【0015】
第一反応は、熱重合を起こす官能基が存在しないため反応温度を140℃〜150℃まで上げられ、反応時間を短くすることができ、又、第二反応であるアルコール性水酸基とイソシアネート基の反応は、極めて反応性が高い反応なので室温〜80℃で進み、熱による不飽和基の重合を効率よく抑制することができ、得られる樹脂やこれを用いる樹脂組成物の安定性を高めることができる。
【0016】
本発明の不飽和基含有樹脂(A)の製造に用いられる分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)としては、特にエポキシ当量が100〜900g/当量のエポキシ化合物(a)が望ましい。エポキシ当量が100g/当量未満の場合、得られる不飽和基含有樹脂(A)の分子量が小さくなり成膜が困難となりやすい。又、エポキシ当量が900g/当量を超える場合、エチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)の導入率が低くなり感光性が低下することがある。
【0017】
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0018】
該フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−770(大日本インキ化学工業(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル製)、エピコート154(油化シェルエポキシ(株)製)、EPPN−201、RE−306(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
該クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−695(大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(いずれも日本化薬(株)製)、UVR−6650(ユニオンカーバイド製)、ESCN−195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0019】
該トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、EPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H(いずれも日本化薬(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル製)、エピコートE1032H60(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。
該ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンEXA−7200(大日本インキ化学工業(株)製)、TACTIX−556(ダウ・ケミカル製)等が挙げられる。
【0020】
該ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001(いずれも油化シェルエポキシ(株)製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド製)、D.E.R−331(ダウ・ケミカル製)、YD−8125(東都化成製)、NER−1202、NER−1302(いずれも日本化薬(株)製)等のビスフェノール−A型エポキシ樹脂、UVR−6490(ユニオンカーバイド製)、YDF−8170(東都化成製)、NER−7403、NER−7604(いずれも日本化薬(株)製)等のビスフェノール−F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
該ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC−3000、NC−3000−L、NC−3000−H、NC−3000−FH、NC−3100(いずれも日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX−4000(油化シェルエポキシ(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL−6121(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。
該ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−880(大日本インキ化学工業(株)製)、エピコートE157S75(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。
【0022】
該ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えば、NC−7000(日本化薬(株)製)、EXA−4750(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
該脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0023】
該テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂としては、例えば、GTR−1800、GTR−2250(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
該複素環式エポキシ樹脂としては、例えば、TEPIC(日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0024】
本発明の不飽和基含有樹脂(A)の製造に用いられるアルコール性水酸基を有する飽和モノカルボン酸化合物(b)としては、分子中に1個以上のアルコール性水酸基を有する飽和モノカルボン酸化合物であれば特に制限無く用いることができ、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシカルボン酸類が挙げられる。特に好ましくは、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。
【0025】
第一反応は、無溶剤若しくは水酸基を有しない有機溶媒中で行うことができ、該有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、コハク酸ジアルキル(例えば、コハク酸ジメチル等)、アジピン酸ジアルキル(例えば、アジピン酸ジメチル等)等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤、更には、後述する反応性架橋剤(C)等から選ばれる水酸基を有しない化合物等の、単独又は混合有機溶媒が挙げられる。
【0026】
反応時には酸化反応を抑えるため酸化防止剤を加えることが好ましく、該酸化防止剤の使用量は反応物に対して0.05〜10重量%程度が好ましい。該酸化防止剤としては2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0027】
又、反応は無触媒でも進行するが反応を促進させるために触媒を使用してもよく、該触媒の使用量は反応物に対して0.01〜10重量%程度が好ましい。該触媒としては、例えば、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨージド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、2−エチルへキサン酸クロム、オクタン酸クロム、2−エチルへキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、オクタン酸ジルコニウム、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド等が挙げられる。
反応温度は80〜180℃であり、又、反応時間は好ましくは3〜60時間である。
【0028】
本発明の不飽和基含有樹脂(A)は、前述のエポキシカルボキシレート樹脂にエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)を反応させる第二反応により得られる。
【0029】
該モノイソシアネート化合物(c)としては分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物であれば特に制限無く用いることができ、例えば、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、水添化ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等の単官能若しくは多官能不飽和基含有モノアルコール化合物又はこれらのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等による変性物等の不飽和基含有モノアルコール化合物とをイソシアネート基が残存するように反応させて得られる半ウレタン化合物等が挙げられる。
【0030】
第二反応は第一反応後に続けて行なうことが好ましい。第一反応後、前述のエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)を所定量加え、室温〜100℃の温度で行えばよい。反応は無触媒でも進行するが、反応を促進させるために触媒を使用してもよく、該触媒の使用量は反応物に対して0.001〜10重量%程度が好ましい。該触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
【0031】
又、反応時には熱重合反応を抑えるため熱重合禁止剤を加えることが好ましく、該熱重合禁止剤の使用量は反応物に対して0.05〜10重量%程度である。該熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0032】
又、本発明の酸変性不飽和基含有樹脂(A’)は前述した不飽和基含有樹脂(A)の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる。該多塩基酸無水物(d)の添加量としては、最大でエポキシ化合物(a)のグリシジル基とモノカルボン酸化合物(b)のカルボキシ基の反応により生成するアルコール性水酸基及びモノカルボン化合物(b)により導入されたアルコール性水酸基の総当量からモノイソシアネート化合物(c)の当量を差し引いた当量であるが、固形分酸価が40〜160mg・KOH/gとなる計算量を仕込むことが好ましい。固形分酸価が40mg・KOH/g未満の場合、本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液現像性が著しく低下し、最悪の場合、現像できなくなる。又、固形分酸価が160mg・KOH/gを越える場合、現像性が高くなりすぎパターニングができなくなることがある。
本発明において固形分酸価とは、該樹脂1g中のカルボン酸の酸性を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、又、本発明において酸価とは該樹脂を含む溶液1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、JIS K0070に準じて、通常の中和滴定法により測定される。又、溶液中の該樹脂の濃度がわかれば、溶液の酸価から固形分酸価を計算して求めることもできる。
【0033】
該多塩基酸無水物(d)としては、例えば、分子中に酸無水物の構造を有する化合物であればすべて用いることができるが、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等に優れる無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ−1,3−ジカルボン酸無水物等が特に好ましい。 又、反応は触媒を使用することが好ましく該触媒としては、例えば、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。反応温度としては、例えば、60〜120℃であり、又、反応時間は好ましくは2〜12時間である。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物は、前述の不飽和基含有樹脂(A)又は酸変性不飽和基含有樹脂(A’)と光重合開始剤(B)及び反応性架橋剤(C)を含有する。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される光重合開始剤(B)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類等が挙げられる。
【0036】
これらは、単独又は2種以上の混合物として使用でき、更に、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体等の反応促進剤等と組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される反応性架橋剤(C)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)と多塩基酸無水物(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等)の反応物であるハーフエステル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノ又はポリグリシジル化合物(例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等)と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等をあげることができる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物には、硬化剤(D)を含有させてもよい。該硬化剤(D)としては、例えば、エポキシ化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。該硬化剤(D)は光硬化後の樹脂塗膜に残存するカルボキシ基や水酸基と加熱により反応し、更に強固な薬品耐性を有する硬化塗膜を得ようとする場合に特に好ましく用いられる。
【0039】
該硬化成分(D)としてのエポキシ化合物としては、前述の分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)と同様な化合物が挙げられる。
【0040】
該硬化成分(D)としてのオキサジン化合物としては、例えば、B−m型ベンゾオキサジン、P−a型ベンゾオキサジン、B−a型ベンゾオキサジン(いずれも四国化成工業(株)製)が挙げられる。
【0041】
更に必要に応じて各種の添加剤、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレー等の充填剤、アエロジル等のチキソトロピー付与剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン等の着色剤、シリコーン、フッ素系のレベリング剤や消泡剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤等を組成物の諸性能を高める目的で添加することができる。
【0042】
不飽和基含有樹脂(A)又は酸変性不飽和基含有樹脂(A’)、光重合開始剤(B)及び反応性架橋剤(C)からなる本発明の感光性樹脂組成物中の各成分の含有割合は、感光性組成物の不揮発分を100重量%とした場合、(A)又は(A’)成分は10〜90重量%、(B)成分は0.5〜30重量%、(C)成分は5〜40重量%が好ましい。
【0043】
更に硬化剤(D)を含有する場合は、不飽和基含有樹脂(A)又は酸変性不飽和基含有樹脂(A’)、光重合開始剤(B)、反応性架橋剤(C)の各成分の含有割合は、感光性組成物の不揮発分を100重量%とした場合、(A)又は(A’)成分は10〜80重量%、(B)成分は0.5〜30重量%、(C)成分は5〜30重量%、(D)成分は5〜30重量%が好ましい。
【0044】
なお、前述の硬化剤(D)は、予め感光性樹脂組成物に混合してもよいが、プリント基板への塗布前に混合して用いることもできる。即ち、前述の(A)又は(A’)成分を主体とした主剤溶液と、硬化剤(D)を主体とした硬化剤溶液の二液型に配合し、使用に際してこれらを混合して用いる方法である。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物が支持フィルムと保護フィルムでサンドイッチされたドライフィルム型のソルダーマスクとしても用いることができる。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物(液状又はフィルム状)は、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路やプリント基板用のソルダーマスク、カバーレイ等のレジスト材料として有用である他、カラーフィルター、印刷インキ、封止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
【0047】
本発明の硬化物は、紫外線等の活性エネルギー線照射により前述の本発明の樹脂組成物を硬化させたものである。紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化は、常法により行うことができる。例えば、紫外線や可視光線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)、青色レーザー(半導体レーザー)等の光発生装置を用いればよい。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物は、フォトリソグラフ法を用いてパターニングされた硬化物を含み、例えば、レジスト膜、ビルドアップ工法用の層間絶縁材や光導波路としてプリント基板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光部品に利用される。本発明には硬化物の層を有する基材も含まれる。硬化物層の膜厚は0.5〜160μm程度で、1〜100μm程度が好ましい。
又、これらの基材を有する物品としては、例えば、コンピューター、家電製品、携帯機器等が挙げられ、これらの物品も本発明に含まれる。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物を使用したプリント基板は、例えば、次のようにして得られる。必要により溶剤で希釈した液状の感光性樹脂組成物を使用する場合、プリント基板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により0.5〜160μmの膜厚で塗布し、塗膜を通常50〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で乾燥させ、塗膜を形成する。その後、ネガフィルム等の露光パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接又は間接に紫外線等の活性エネルギー線を通常10〜2000mJ/cm程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等により現像する。必要に応じて更に紫外線を照射し、次いで通常100〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で加熱処理をすることにより、耐金メッキ性に優れ、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性等の諸特性を満足する永久保護膜を有するプリント基板が得られる。
【0050】
上記の現像液としては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤又はこれらの2種以上の混合溶剤、あるいは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液や水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでない。
【0052】
合成例1 エチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)の合成
攪拌装置をつけた1Lフラスコ中に2−ヒドロキシプロピルアクリレート286.3g(2.2モル)及び反応触媒としてジブチル錫ジラウレートを0.005%仕込み、攪拌しながら60℃の温度で3官能イソシアネート化合物であるデュラネート TLA−100(商品名:旭化成ケミカルズ製;ヘキサメチレンジイソシアネート3量体)を504.6g(1.0モル)を反応液が80℃を超えないように滴下した。その後80℃の温度で4時間反応させ、分子中に2個のエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物を得た。この化合物をc−1とする(理論分子量:764.9)。
【0053】
合成例2 エチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)の合成
攪拌装置をつけた1Lフラスコ中にペンタエリスリトールトリアクリレート328.1g(1.1モル)を仕込み、攪拌しながら60℃の温度で2官能イソシアネート化合物であるイソホロンジイソシアネートを222.3g(1.0モル)を反応液が80℃を超えないように滴下した。その後、80℃の温度で6時間反応させ、分子中に3個のエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物を得た。この化合物をc−2とする(理論分子量:520.6)。
【0054】
実施例1 不飽和基含有樹脂(A)の合成
攪拌装置及び還流装置を施した2Lフラスコ中に、反応溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを354.1g、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)としてのEOCN−104S(商品名:日本化薬(株)製;o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量220g/当量)を220g(1.0当量)仕込み、60℃の温度でエポキシ樹脂を溶解させた。次いで、この溶液にアルコール性水酸基を有する飽和モノカルボン酸化合物(b)としてのジメチロールプロピオン酸を134.1g(1.0モル)仕込み分散させた。徐々に温度を上げ還流下(約145℃)で約36時間反応させた。反応が進行するに従いジメチロールプロピオン酸は消失し、反応終了時には完全に透明の溶液となった。
【0055】
室温に冷却後、この反応溶液に反応溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート302.3gを加え、更に、熱重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを0.5重量%となるように加え、温度が60℃を超えないように、エチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)としてのカレンズMOI(商品名:昭和電工製;2−イソシアナトエチルメタクリレート)302.3g(2.00モル)を徐々に滴下した。滴下終了後、60℃の温度で2時間、更に、80℃の温度で赤外吸収スペクトルによりイソシアネート基が消失するまで反応させ、本発明の不飽和基含有樹脂(A)を50重量%含む溶液を得た。この溶液を(A−1)とする。
【0056】
実施例2 不飽和基含有樹脂(A)の合成
実施例1におけるエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)としてのカレンズMOIに代えて、カレンズAOI(商品名:昭和電工製;2−イソシアナトエチルアクリレート)を1.5モル用いて実施例1と同様に行い、本発明の不飽和基含有樹脂(A)を50重量%含む溶液を得た。この溶液を(A−2)とする。
【0057】
実施例3 不飽和基含有樹脂(A)の合成
実施例1におけるエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)としてのカレンズMOIに代えて、合成例1で得られたc−1化合物を1.0モル用いて実施例1と同様に行い、本発明の不飽和基含有樹脂(A)を50重量%含む溶液を得た。この溶液を(A−3)とする。
【0058】
実施例4 不飽和基含有樹脂(A)の合成
実施例1におけるエチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)としてのカレンズMOIに代えて、合成例2で得られたc−2化合物を1.0モル用いて実施例1と同様に行い、本発明の不飽和基含有樹脂(A)を50重量%含む溶液を得た。この溶液を(A−4)とする。
【0059】
実施例5 不飽和基含有樹脂(A)の合成
実施例1における分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)としてのEOCN−104Sに代えて、NC−3000−H(商品名:日本化薬(株)製;ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量280g/当量)を280g(1.0当量)用いて実施例1と同様に行い、本発明の不飽和基含有樹脂(A)を50重量%含む溶液を得た。この溶液を(A−5)とする。
【0060】
実施例6 不飽和基含有樹脂(A)の合成
実施例1における分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)としてのEOCN−104Sに代えて、多官能ビスフェノール−A型エポキシ樹脂(エポキシ当量330g/当量)を330g(1.0当量)用いて実施例1と同様に行い、本発明の不飽和基含有樹脂(A)を50重量%含む溶液を得た。この溶液を(A−6)とする。
【0061】
実施例7 酸変性不飽和基含有樹脂(A’)の合成
実施例1で得られた(A−1)溶液に、有機溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを106.5g、多塩基酸無水物(d)としてのテトラヒドロ無水フタル酸を106.5g(0.7モル)仕込んだ。更に、反応触媒としてのジメチルアミノピリジンを0.2重量%となるように加えた後、100℃で4時間反応させて本発明の酸変性不飽和基含有樹脂(A’)を50%含む溶液を得た。この溶液を(A’−1)とする。溶液酸価から算出した固形分酸価は55mg・KOH/gであった。
【0062】
実施例8 酸変性不飽和基含有樹脂(A’)の合成
実施例2で得られた(A−2)溶液に、有機溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを121.7g、多塩基酸無水物(d)としてのテトラヒドロ無水フタル酸を121.7g(0.8モル)仕込んだ。更に、反応触媒としてのジメチルアミノピリジンを0.2重量%となるように加えた後、100℃で4時間反応させて本発明の酸変性不飽和基含有樹脂(A’)を50%含む溶液を得た。この溶液を(A’−2)とする。溶液酸価から算出した固形分酸価は70mg・KOH/gであった。
【0063】
比較合成例
攪拌装置、還流管をつけた1Lフラスコ中に、反応溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを125.2g、分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物として、エポキシ当量:220g/当量のオルソクレゾールグリシジルエーテル化合物を220.0g、分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物としてアクリル酸(分子量:72.06)を72.1g、熱重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを1.3g、及び反応触媒としてトリフェニルホスフィンを1.3g仕込み、120℃の温度で反応液の酸価が3mg・KOH/g以下になるまで反応させた。このときの反応時間は15時間であった。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを89.0g、多塩基酸無水物(d)としてテトラヒドロ無水フタル酸(分子量:152.15)を105.7g加え、110℃の温度で4時間反応させ、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を65%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を比較樹脂(A’’)とする。
【0064】
実施例9〜16、比較例1
前記実施例1〜8で得られた樹脂(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)、(A−5)、(A−6)、(A’−1)、(A’−2)又は比較例で得られた比較樹脂(A’’)を表1に示す配合割合で混合し、必要に応じて3本ロールミルで混練して感光性樹脂組成物を得た。これをバーコート法により15〜25μmの厚さになるように銅回路プリント基板に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で60分乾燥させた。室温に冷却後、脱脂綿を塗膜に付着させタック性の試験を行った。次いで、パターンの描画されたマスクフィルムを密着させ、紫外線露光装置(USHIO製:500Wマルチライト)を用いて、紫外線を照射した。次に現像液として、(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)、(A−5)、(A−6)を用いた場合はメチルイソブチルケトンとイソプロピルアルコール(70:30、容量比)の混合溶液を用い、(A’−1)、(A’−2)、(A’’)を用いた場合は2%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を用いて120秒間スプレー(スプレー圧:0.2MPa)現像を行った。洗浄後、150℃の熱風乾燥器で60分間熱処理を行い本発明の硬化物を得た。
【0065】
[表1]
実施例 9 10 11 12 13
A−1 84.5
A−2 84.5
A−3 84.5
A−4 84.5
A−5 84.5
架橋剤(C)
DPHA 12.7 12.7
TMPTA 12.7 12.7
UX−5000 12.7
光重合開始剤(B)
Irg.907 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7
DETX−S 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4
添加剤
BYK−354 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4
【0066】
実施例 14 15 16
比較例 1
A−6 84.5
A’−1 38.5
A’−2 38.5
A’’ 38.5
架橋剤(C)
DPHA 12.7
UX−5000 6.2 6.2 6.2
光重合開始剤(B)
Irg.907 1.7 4.2 4.2 4.2
DETX−S 0.4 0.4 0.4 0.4
硬化剤(D)
TEPIC 8.2 8.2 8.2
充填剤
メラミン 0.6 0.6 0.6
SiO 6.0 6.0 6.0
BaSO 13.2 13.2 13.2
顔料 0.5 0.5
添加剤
BYK−354 0.4 0.6 0.6 0.6
KS−66 0.6 0.6 0.6
濃度調整用溶媒
PGMEA 20.8 20.8 20.8
【0067】

DPHA 日本化薬(株)製 アクリレートモノマー
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
TMPTA 日本化薬(株)製 アクリレートモノマー
トリメチロールプロパントリアクリレート
UX−5000 日本化薬(株)製 6官能ウレタンアクリレート
Irg.907 チバスペシャリティーケミカルズ製
2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1
−プロパノン
DETX−S 日本化薬(株)製
2,4−ジエチルチオキサントン
TEPIC 日産化学(株)製 エポキシ樹脂
トリグリシジルイソシアヌレート
SiO 龍森製 シリカ クリスタライト5X
BaSO 堺化学製 硫酸バリウム B−30
BYK−354 ビックケミー製 レベリング剤
KS−66 信越化学(株)製 消泡剤
PGMEA プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0068】
性能試験は光感度、表面光沢、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性を行なった。それらの結果を表2に示す。なお、試験方法及び評価方法は次のとおりである。
(光感度)コダック製ステップタブレットNo.2(21段)を通して、塗膜に紫外線を照射する。
現像後のステップ段数を感度とした。
(表面光沢)200mJ/cmの紫外線を照射し、150℃の乾燥機で40分加熱処理を行う。得られた塗膜をエタノールに60秒間浸漬させ、乾燥後の硬化膜を観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・曇りが全く見られない
×・・・・若干の曇りが見られる
【0069】
(密着性)200mJ/cmの紫外線を照射し、150℃の乾燥機で40分加熱処理を行う。硬化膜をJIS K5400に準じて、試験片に1mmのごばん目を100個作りセロテープ(登録商標)によりピーリング試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、次の基準で評価した。
○・・・・剥れのないもの
×・・・・剥離するもの
(鉛筆硬度)200mJ/cmの紫外線を照射し、150℃の乾燥機で40分加熱処理を行う。得られた塗膜をJIS K5400に準じて評価を行った。
【0070】
(耐溶剤性)200mJ/cmの紫外線を照射し、150℃の乾燥機で40分加熱処理を行う。得られた塗膜をイソプロピルアルコールに室温で30分間浸漬する。外観に異常がないか確認した。
○・・・・曇りが全く見られない
×・・・・若干の曇りが見られる
(耐酸性)200mJ/cmの紫外線を照射し、150℃の乾燥機で40分加熱処理を行う。得られた塗膜を10%塩酸水溶液に室温で30分浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・塗膜にフクレや剥離があるもの
【0071】
(耐熱性)200mJ/cmの紫外線を照射し、150℃の乾燥機で40分加熱処理を行う。得られた塗膜にロジン系フラックスを塗布し260℃の半田槽に5秒間浸漬した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返した。室温まで放冷した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・塗膜にフクレや剥離のあるもの
(耐金メッキ性)200mJ/cmの紫外線を照射し、150℃の乾燥機で40分加熱処理を行う。得られた塗膜を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミット製、Metex L−5Bの20vol%水溶液)に3分間浸漬した後、水洗し、次いで、14.4重量%の過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間浸漬した後、水洗し、更に10vol%硫酸水溶液に室温で試験基板を1分間浸漬した後水洗した。次に、この基板を30℃の触媒液(メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に7分間浸漬し、水洗し、85℃のニッケルメッキ液(メルテックス製、メルプレートNi−865Mの20vol%水溶液、pH4.6)に20分間浸漬し、ニッケルメッキを行った後、10vol%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬し、水洗した。次いで、試験基板を95℃の金メッキ液(メルテックス製、オウロレクトロレスUP15vol%とシアン化金カリウム3vol%の水溶液、pH6)に10分間浸漬し、無電解金メッキを行った後、水洗し、更に60℃の温水で3分間浸漬し、水洗し、乾燥した。得られた無電解金メッキ評価基板にセロテープ(登録商標)を付着し、剥離したときの状態を観察した。
○・・・・全く異常が無いもの
×・・・・若干剥がれが観られたもの
【0072】
[表2]
実施例 9 10 11 12 13 14 15 16
比較例 1
評価項目
タック性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
光感度 12 13 14 14 10 14 13 14 7
表面光沢 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×
密着性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×
鉛筆硬度 8H 8H 8H 8H 7H 5H 8H 8H 8H
耐溶剤性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
耐酸性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×
耐熱性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
耐金メッキ性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
【0073】
表2の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物は光感度が高感度であり、その硬化膜も密着性、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性等に優れているので、特にプリント基板用感光性樹脂組成物に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物(a)とアルコール性水酸基を有する飽和モノカルボン酸化合物(b)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート樹脂の水酸基に、エチレン性不飽和基を有するモノイソシアネート化合物(c)を反応させて得られる不飽和基含有樹脂(A)。
【請求項2】
請求項1に記載の不飽和基含有樹脂(A)の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる酸変性不飽和基含有樹脂(A’)。
【請求項3】
請求項1に記載の不飽和基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)及び反応性架橋剤(C)を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の酸変性不飽和基含有樹脂(A’)、光重合開始剤(B)及び反応性架橋剤(C)を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、硬化剤(D)を含有する請求項3又は4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
【請求項7】
硬化物が光による超微細加工ができるフォトリソグラフ法を用いてパターニングされた硬化物である請求項6に記載の硬化物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の硬化物の層を有する基材。
【請求項9】
請求項8に記載の基材を有する物品。

【公開番号】特開2008−74938(P2008−74938A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255121(P2006−255121)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】