説明

感光性組成物、該組成物を用いた画像記録材料、及び平版印刷版の作製方法

【課題】安価な短波半導体レーザの発振波長に対し高感度であり、保存安定性にも優れた感光性組成物、該組成物を用いた画像形成材料及び平版印刷版の作成方法を提供する。
【解決手段】(A)特定の構造を持つビイミダゾール型化合物、(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素、及び、(C)重合性化合物を含有する感光性組成物、及び該組成物を用いた画像形成材料及び平版印刷版の作成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の作製方法に関する。特に、短波半導体レーザに対する感度が高く、保存安定性及びセーフライト適性にも優れた平版印刷版原版を現像液で処理する、平版印刷版の感光性組成物とそれを用いる画像記録材料、画像記録方法、平版印刷版及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版原版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するPS版が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。
近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及し、それに対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザ光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すことなく、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が望まれ、これに適応した印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
【0003】
このような走査露光可能な平版印刷版を得る方式の一つとして、親水性表面を有する支持体上に、インク受容性の樹脂層領域を形成する方式が採用されている。これは、支持体上に、走査露光により硬化してインク受容性領域を形成するネガ型の感光層を設けてなる材料であって、感光スピードに優れた光重合性組成物を用いた構成が提案され、既に実用化されているものもある。このような構成の平版印刷版原版は、現像処理が簡便であり、さらに解像度、着肉性、耐刷性、耐汚れ性に優れるといった望ましい刷版、印刷性能を有する。
【0004】
前記光重合性組成物は、基本的にはエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と光重合開始系、及び、所望によりバインダー樹脂を含有し、走査露光により、光開始系が光吸収し、活性ラジカル等の活性種を生成して重合性化合物の重合反応を生起、進行させることにより露光領域を硬化させて画像形成するものである。
このような走査露光可能な光重合性組成物においては、感光性に優れた光開始系が種々開示されている(例えば、非特許文献1、2参照)。これらに記載の光開始系は、露光光源としてArレーザ(488nm)やFD−YAGレーザ(532nm)のような長波長の可視光源を用いた、従来のCTPシステムに適用された場合には、光源の出力が十分高くない現状においては充分な感度が得られず、さらなる高速露光に適合し得る高感度の開始系が望まれている。
【0005】
一方、近年、例えば、InGaN系の材料を用い、350nmから450nm域で連続発振可能な半導体レーザが実用段階となっている。これらの短波光源を用いた走査露光システムは、半導体レーザが構造上、安価に製造できるため、十分な出力を有しながら、経済的なシステムを構築できるといった長所を有する。さらに、従来のFD−YAGやArレーザを使用するシステムに比較して、より明るいセーフライト下での作業が可能な、短波長領域に感光性を有する平版印刷版原版が使用できる。しかしながら、このような350nmから450nmの短波長領域において走査露光に十分な感度を有する光開始系は知られていないのが現状である。
これを受けて本願出願人は、この短波長領域において高感度な増感色素を含む感光性組成物を提案したが(例えば、特許文献1参照)、これらの増感色素などを包含する光開始
系のさらなる高感度化が望まれている。
【0006】
さらに、例えば、非特許文献3及び4に記載されているように、感度の高い光開始系を得ることは、広く、イメージング分野において、なお切望される技術である。増感色素と開始剤とからなる光開始系は、開始剤の選択により、上記活性ラジカルの他、酸、塩基を発生することができ、例えば、光造形、ホログラフィー、カラーハードコピーといった画像形成や、フォトレジスト等の電子材料製造分野、インクや塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料用途に利用される。これらの産業分野においては、開始剤の分解を効率良く引き起こすため目的で、光吸収性、増感能に優れた増感色素を見いだすことが切望されている。
【0007】
これらの光重合性組成物からなる感光層を有する平版印刷版原版は、高感度であることと、経時における保存安定性が優れることが重要である。さらに近年、感光層中の成分を現像処理工程において析出させない(現像カスフリー)ことが重要となり、従来のアルカリ現像(pHが10〜14)に加え、pHが2から10の現像液で処理する製版方法が提案されている。すなわち平版印刷版原版の高感度化及び保存安定性の向上のみならず、良好な現像性という課題が加わり、新たな技術が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−309977号公報
【非特許文献1】ブルース エム.モンロウら(Bruce M.Monroe et al.)著、Chemical Reviews」、93、435(1993)
【非特許文献2】アール.エス.デヴィドソン(R.S.Davidson)著、Journal of Photochemistry and Biology A:Chemistry」、73、81(1993)
【非特許文献3】ジェー.ピー.ファウシャー(J.P.Faussier)著、Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications、Rapra Review vol.9、Report、Papra Technology(1998)
【非特許文献4】エム.ツノオカら(M.Tsunooka et al.)著、Prog.Polym.Sci.、21、1(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特に安価な短波半導体レーザの350nmから450nmの発振波長に対し高感度であり、例えばCTPシステムに適合する走査露光用の平版印刷版原版を用いて、作業性、現像性(現像カスフリー)に優れた平版印刷版用感光性組成物とそれを用いる画像記録材料、画像記録方法、平版印刷版及びその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、一般式(I)で表される特定の構造を有するビイミダゾール型化合物を含む新規な光開始系が高い感光性を与え、特に350nmから450nm付近において高感度であり、かつ現像性も優れていることを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
〔1〕(A)下記一般式(I)で表される構造を持つビイミダゾール型化合物、
(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素、及び、
(C)重合性化合物
を含有する感光性組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(I)中、R〜Rは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、のうちのいずれかを表し、R〜Rのうち少なくとも2つは、COOR7基、SO38基、PO39基、OH基、及びOCOR10基から選択される置換基を有するアリール基またはヘテロアリール基である。R7〜R10はそれぞれ独立に、水素原子でない一価の原子団を表す。)
〔2〕 増感色素(B)が、クマリン色素、スチリル色素、シアニン色素、メロシアニン色素から選ばれることを特徴とする、〔1〕に記載の感光性組成物。
〔3〕 支持体上に、〔1〕または〔2〕に記載の感光性組成物を含有する感光層を有する画像記録材料。
〔4〕 支持体上に、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の感光性組成物を含有する感光層を有する画像記録材料に対し、450nmより短波長のレーザ光源を用いて走査露光を行う画像記録方法。
〔5〕 支持体上に、〔1〕または〔2〕に記載の感光性組成物を含有する感光層を有する平版印刷版。
〔6〕 支持体、(A)下記一般式(I)で表される構造を持つビイミダゾール型化合物、
(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素、
(C)重合性化合物、及び
(D−1)アルカリ可溶性バインダーポリマー
を含有する感光層、保護層をこの順に有する平版印刷版原版を、波長が350から450nmのレーザーで露光した後、pHが10から14の現像液の存在下、保護層及び非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【0014】
【化2】

【0015】
(一般式(I)中、R〜Rは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、のうちのいずれかを表し、R〜Rのうち少なくとも2つは、COOR7基、SO38基、PO39基、OH基、及びOCOR10基から選択される置換基を有するアリール基またはヘテロアリール基である。R7〜R10はそれぞれ独立に、水素原子でない一価の原子団を表す。)
〔7〕 支持体、(A)下記一般式(I)で表される構造を持つビイミダゾール型化合物
(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素、
(C)重合性化合物、及び
(D−2)酸価が0.3meq/g以下の疎水性バインダーポリマー
を含有する感光層、保護層をこの順に有する平版印刷版原版を、波長が350から450nmのレーザーで露光した後、pHが2〜10の現像液の存在下、保護層及び非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【0016】
【化3】

【0017】
(一般式(I)中、R〜Rは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、のうちのいずれかを表し、R〜Rのうち少なくとも2つは、COOR7基、SO38基、PO39基、OH基、及びOCOR10基から選択される置換基を有するアリール基またはヘテロアリール基である。R7〜R10はそれぞれ独立に、水素原子でない一価の原子団を表す。)
【0018】
本発明の作用機構は明確ではないが、前記一般式(I)で表されるビイミダゾール型化合物は、350nm〜850nmに吸収極大波長λmax、特に350nmから450nmに吸収極大波長λmax、を持つ増感色素との組み合わせに対し高感度である。これは、該増感色素が安価な短波半導体レーザの発振波長の照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、この光吸収による電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱などが、一般式(I)で表されるビイミダゾール型化合物に作用して、化学変化を生起させてラジカル、酸又は塩基を生成させる。さらに、ここで生成されたラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種は、反応する重合性化合物に発色、消色、重合などの不可逆的な変化を生じさせる。このような化合物のなかでも好ましい、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物を用いることで、硬化反応が開始、進行し、露光領域を硬化させる。このため、本発明の感光性組成物を使用することで、短波半導体レーザによる走査露光に十分な感度を有し、かつ黄色灯下での安定性に優れ、明るいセーフライト下でも取り扱い可能であるという利点を有する。従って、この感光性組成物において、付加重合性化合物を含有するものを感光層として用いた平版印刷版原版は、高感度で記録可能であり、セーフライト安定性に優れた印刷性能を示すものと考えられる。
また、本発明の特定構造を有するビイミダゾール型化合物を含有する感光性組成物は現像性に優れることが分かっている。その要因としては、親水性置換基(OH、OCOR、COOR等)を増感色素構造近傍に持つため、アルカリ現像液はもとより、弱酸性領域における水溶液に対してもその溶解量を高く保てるため、色素析出、カスの生成を抑え、現像性の向上に影響しているものと考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による平版印刷版は、安価な短波半導体レーザの350nmから450nmの発振波長に対し特に高感度であり、保存安定性にも優れており、例えばCTPシステムに適合する走査露光用の、作業性、現像性に優れた平版印刷版原版が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感光性組成物は、下記(A)〜(C)成分を含有することを特徴としている。(A)一般式(I)で表される構造を有するビイミダゾール型化合物
(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素、及び
(C)重合性化合物
【0021】
また、本発明の好ましい平版印刷版原版は、支持体、
(A)一般式(I)で表される構造を持つビイミダゾール型化合物、
(B)350nm〜850nmに吸収極大λmaxを持つ増感色素、及び
(C)重合性化合物、及び(D)アルカリ可溶性バインダーポリマー、又は酸価が0.3meq/g以下の疎水性バインダーポリマーを含有する感光層、保護層をこの順に有する。
【0022】
以下、本発明の感光性組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
(A)下記一般式(I)で表される構造を持つビイミダゾール型化合物
【0023】
【化4】

【0024】
(一般式(I)中、R〜Rは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、のうちのいずれかを表し、R〜Rのうち少なくとも2つは、COOR7基、SO38基、PO39基、OH基、及びOCOR10基から選択される置換基を有するアリール基またはヘテロアリール基である。R7〜R10はそれぞれ独立に、水素原子でない一価の原子団を表す。)
【0025】
一般式(I)で表される構造を有するビイミダゾール型化合物(以下、本発明のビイミダゾール型化合物または特定開始剤と称する場合がある)は、その親水性により、アルカリ現像液への可溶性/弱酸性水溶液への可溶性を兼ね備えており、現像工程において現像カスとならない大きな特徴を持つ。
【0026】
本発明のビイミダゾール型化合物は、25℃の現像液(pH=4.5又は11.95に調整された水溶液)に対する溶解量が100(mg/l)以上であることが好ましい。この溶解量は200(mg/l)以上であることがより好ましく、300(mg/l)以上であることがさらに好ましい。
25℃の現像液(pH=4.5に調整された水溶液)に対する溶解量を100(mg/l)以上とするには、置換基として、加水分解性のアセチル基、エステル基などに加え、水酸基が好ましい。
25℃の現像液(pH=11.95に調整された水溶液)に対する溶解量を100(mg/l)以上とするには、置換基として、非加水分解性基が好ましく、水酸基が好ましい。
本発明のビイミダゾール型化合物のアルカリ水溶液(pH=11.95)に対する溶解量、弱酸性水溶液(pH=4.5)に対する溶解量は、以下のようにして求めることができる。
【0027】
pH規定されたアルカリ水溶液としては、25℃の現像液(pH=11.95に調整された水溶液)を用いる。使用される添加剤としては、KOH、NaOH、K2CO3、KHCO3等が挙げられるが、本発明における塩基はこれに限定されることなく、水溶液のpHを10.0〜14.0に調整できるもの全てを含む。
【0028】
pH規定された弱酸性水溶液としては、25℃の現像液(pH=4.5に調整された水溶液)を用いる。使用される添加剤としては、リン酸、クエン酸、EDTA4Na塩、スルホン酸塩などが挙げられるが、本発明における添加剤はこれに限定されることなく、水溶液のpHを2.0〜10.0に調整できるもの全てを含む。
【0029】
本発明における(A)特定開始剤及び(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素との組み合わせによる光開始系は、高い光分解効率を持ち、非常に高い感光性を示す。一般に、増感色素/開始剤からなる光開始系の増感機構は(a)増感色素の電子励起状態から開始剤への電子移動反応に基づく、開始剤の還元的分解、(b)開始剤から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤の酸化的分解、(c)増感色素の電子励起状態から開始剤へのエネルギー移動に基づく、開始剤の電子励起状態からの分解、といった経路が知られるが、本発明の特定開始剤は、これら何れのタイプの増感反応をも優れた効率で引き起こすことがわかった。
【0030】
なお、本発明の特定開始剤が高感度な要因としては、高効率の色素蛍光消光(ケイ光および/またはリン光)を示すことから、一つの可能性として、上記部分構造を有する本発明の特定開始剤は、増感色素の反応効率が高いのではないかと考えている。その他の可能性として、一般式(I)で表される部分構造が、増感反応初期過程(電子移動等)の効率化や、さらに、開始剤の分解にいたる後続反応の効率化に寄与している可能性もある。
【0031】
本発明に用いられる特定開始剤において、R〜Rのとしてのアリール基またはヘテロアリール基が、COOR2基、SO33基、PO34基、OH基、及びOCOR5基等の親水性置換基を持つため、主成分が水であるpHが2〜7、又は10〜14の弱酸性/アルカリ水溶液に対する親和性が高く、そのことが色素析出、カスの生成を抑え、現像性の向上に寄与していると考えられる。
【0032】
更に、一般式(I)で表される特定開始剤は、下記一般式(II)で表される構造が好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
一般式(II)中、m、nは0〜4で選ばれる整数であり、R11〜R16は水素原子または一価の非金属原子団を表す。
但し、R11〜R16のうちの少なくとも2つは、COOR2基、SO33基、PO34基、OH基及びOCOR5基から選ばれる置換基(ここで、R2、R3、R4及びR5は、それ
ぞれ独立に、一価の非金属原子団を表す。)である。すなわち、一般式(II)で表される構造において、COOR2基、SO33基、PO34基、OH基及びOCOR5基から選ばれる置換基を有するベンゼン環が少なくとも2つ存在する。
【0035】
さらに、特定開始剤は、下記一般式(III)で表される構造であることがより好ましい。
【0036】
【化6】

【0037】
一般式(III)中、R17〜R19は、それぞれ独立に、水素原子または一価の非金属原子団を表し、Xはハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子、沃素原子、臭素原子)を表す。但し、R17〜R19及びXとして、COOR2基、SO33基、PO34基、OH基、及びOCOR5基から選ばれる置換基(ここで、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立に、一価の非金属原子団を表す。)が少なくとも2つ存在する。
【0038】
以下に、上記の一般式(I)〜(III)について更に詳細に説明する。
一般式(I)中、R〜Rは置換基を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0039】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
【0040】
ヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、または多環芳香族環から誘導される基が用いられ、特に好ましいヘテロアリール基中のヘテロアリール環の例としては、例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン等が挙げられ、これらは、さらにベンゾ縮環しても良く、また置換基を有していてもよい。
【0041】
〜Rとしてのアリール基またはヘテロアリール基が有しても良い置換基として、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基またはアミノ基又はアルコキシ基を有するアリール基、ハロゲン原子等が挙げられ、より好ましくはアルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。特に好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基が挙げられ、好ましいハロゲン原子としてはフッ素、塩素が挙げられる。
【0042】
7〜R10の一価の原子団として、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル基等が挙げられる。
加水分解性の観点から、炭素数は少ないのが好ましく、メチル、エチル基が好適であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0043】
一般式(II)において、R11〜R16が一価の非金属原子団をあらわすとき、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基、チオアルキル、チオアルコキシ、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0044】
更に、R11〜R16の好ましい例について具体的に述べる。好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0045】
置換アルキル基の置換基としては、1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。
【0046】
また、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
【0047】
ヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、または多環芳香族環から誘導される基が用いられ、特に好ましいヘテロアリール基中のヘテロアリール環の例としては、例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン等が挙げられ、これらは、さらにベンゾ縮環しても良く、また置換基を有していてもよい。
【0048】
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エ
チニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
これら置換アルキル基における置換基のうち、更により好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、アルキルホスホナト基、モノアリールホスホノ基、アリールホスホナト基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキリデン基(メチレン基等)が挙げられる。
【0049】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
【0050】
上記置換基とアルキレン基を組み合わせることにより得られるR11〜R16として好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトプロピル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0051】
11〜R16における好ましいアルコキシ基としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、および環状のアルコキシ基を挙げることができ、アルコキシ基上に存在する置換基としては、前述のアルキル基上の置換基と同じものをあげることができる。また、その具体例としてはメトキシ基、エトキシ基が挙げられ、特に好ましくはメトキシ基である。
【0052】
11〜R16における好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0053】
11〜R16における好ましい置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、1価の非金属原子団の基を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。
【0054】
なお、R11及びR12の好ましい例としては、ハロゲン原子が挙げられ、より好ましくはオルト置換であり、更に好ましくは塩素原子であることが挙げられる。この構造を持つ特定開始剤は、塩素原子の立体障害により、構造的に電子受容面積が大きくなることが知られており、特に高感度となる。この高感度化効果はハロゲン原子が該アリール基のオルト位に置換されたとき特に顕著であり、化合物選定において重要な要件である。
【0055】
本発明における、その骨格上に親水性基を有する特定開始剤は、現像液中において析出することなく溶解状態を保つことができる。親水性基としてはヒドロキシル基、ヒドロキシカーボネート基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基が好ましく、弱酸性水溶液においてより好ましくはヒドロキシル基、アルカリ水溶液においてより好ましくはヒドロキシカーボネート基、カルボン酸エステル基である。ヒドロキシル基はアルカリ水溶液中においてもよく溶解するが、その親水性ゆえに平版印刷版の耐水性が若干低下する傾向を持つ。このため、アルカリ系においてはヒドロキシル基よりも、それ自体が加水分解性基で保護されたヒドロキシカーボネート基、加水分解により水溶性となるカルボン酸エステル等がより好ましいと言える。
【0056】
前述の親水性基を用いると、本発明の平版印刷版の作成方法においては、現像液に多量の感光層成分が溶けこんだ際においても、開始剤成分が現像液から析出し、現像機を汚す
、又は現像カスとなり版面劣化を起こすことがない。すなわち,機器のメンテナンスにかかる負荷を最小限におさえ、コストダウンするとともに作業性をも効率化することができ,非常に有用である。
【0057】
以下に、本発明のビイミダゾール型化合物の好ましい具体例(例示化合物I−1〜例示化合物I−24)を示すが、これらに限定されるものではない。
【0058】
【化7】

【0059】
【化8】

【0060】
一般式(I)で表される化合物の合成方法について述べる。
【0061】
〔例示化合物(I−1)の合成〕
フェリシアン化カリウム3.7g、水酸化カリウム3.1g、水70ml、トルエン40mlを混合後、固体がなくなるまで室温で撹拌した。その後、下記、化合物(I’-1)を3.8g加えオイルバスを80℃に加熱し、還流下で4時間撹拌した。
還流下で4時間撹拌した反応液を放冷した後、水100mlを加えトルエンで抽出したトルエンでなる有機槽を塩化ナトリウム水溶液、ついで水で洗浄した。洗浄後、この有機相を濃縮すると赤灯色油状物が得られた。得られた液体をメタノールで再結晶し、目的の例示化合物(I−1)、2.9gを得た。
【0062】
【化9】

【0063】
他のビイミダゾール型化合物についても、出発物質、添加する化合物等を適宜、選択することで、同様に合成することができる。
【0064】
本発明の感光性組成物は、本発明のビイミダゾール型化合物を、感光性組成物の全固形分に対して、0.5〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0065】
本発明においては、前記特定のビイミダゾール型化合物に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の公知の光重合開始剤、熱重合開始剤などを選択して併用することができる。これらの併用可能な重合開始剤としては、例えば、対カチオン部にカルボン酸構造を有しない公知のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジドなどが挙げられる。
【0066】
併用し得る重合開始剤として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものを挙げることができる。
【0067】
他の重合開始剤を併用する場合、これらの含有量は、前記特定のビイミダゾール型化合物の50質量%以下とすることが好ましい。
本発明において用いられるラジカル発生剤(前記特定のビイミダゾール型化合物および必要により併用される開始剤)は、極大吸収波長が500nm以下であることが好ましく、さらに400nm以下であることが好ましい。
【0068】
(B)増感色素
本発明の感光性組成物に用いられる増感色素は、350〜850nmに吸収ピーク(極大吸収波長)を有することが好ましい。このような増感色素としては、分光増感色素、光源の光を吸収して光重合開始剤と相互作用する以下に示す染料あるいは顔料があげられる。
好ましい分光増感色素または染料としては、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン
、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類、例えば(アントラキノン)、スクアリウム類、例えば(スクアリウム)等が挙げられる。
【0069】
より好ましい分光増感色素又は染料の例としては特公平37−13034号公報記載のスチリル系色素、特開昭62−143044号公報記載の陽イオン染料、特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩、特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物、特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類、特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンテン染料、特開平2−226148号及び特開平2−226149号各公報記載のアクリジン類、特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類、特公昭46−42363号公報記載のシアニン類、特開平2−63053号公報記載のベンゾフラン色素、特開平2−85858号、特開平2−216154号各公報記載の共役ケトン色素、特開昭57−10605号公報記載の色素。特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体、特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素、特開昭62−31844号、特開昭62−31848号、特開昭62−143043号各公報記載のキサンテン系色素、特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン、特公昭61−9621号公報記載のメロシアニン色素、特開平2−179643号公報記載の色素。特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素、特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素、特開昭59−89303号公報記載のメロシアニン色素、特開平8−129257号記載のメロシアニン色素、特開平8−334897号記載のベンゾピラン系色素、等を挙げることができる。
【0070】
その他、増感色素として特に以下の赤外線吸収剤(染料或いは顔料)も好適に使用される。
好ましい前記染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号各公報等に記載されているシアニン染料、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0071】
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、さらに、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号各公報に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や、特公平5−13514号、同5−19702号各公報に記載されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0072】
また、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料、欧州特許第916513A2号明細書に記載のフタロシアニン系染料も好ましい染料として挙げることができる。
【0073】
さらに、特願平10−79912号明細書に記載のアニオン性赤外線吸収剤も、好適に
使用することができる。
ここで、アニオン性赤外線吸収剤とは、実質的に赤外線を吸収する色素の母核にカチオン構造がなく、アニオン構造を有するものを示す。例えば、(b1)アニオン性金属錯体、(b2)アニオン性カーボンブラック、(b3)アニオン性フタロシアニン、さらに(b4)下記一般式Aで表される化合物などが挙げられる。これらのアニオン性赤外線吸収剤の対カチオンは、プロトンを含む一価の陽イオン、あるいは多価の陽イオンである。
【0074】
一般式A [G-−M−Gm+
【0075】
ここで、(b1)アニオン性金属錯体とは、実質的に光を吸収する錯体部の中心金属および配位子全体でアニオンとなるものを示す。
【0076】
(b2)アニオン性カーボンブラックは、置換基としてスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸基等のアニオン基が結合しているカーボンブラックが挙げられる。これらの基をカーボンブラックに導入するには、カーボンブラック便覧第三版(カーボンブラック協会編、1995年4月5日、カーボンブラック協会発行)第12頁に記載されるように、所定の酸でカーボンブラックを酸化する等の手段をとればよい。
【0077】
(b3)アニオン性フタロシアニンは、フタロシアニン骨格に、置換基として、先に(b2)の説明において挙げたアニオン基が結合し、全体としてアニオンとなっているものを示す。
【0078】
次に、前記(b4)一般式Aで表される化合物について、詳細に説明する。前記一般式A中、Ga-はアニオン性置換基を表し、Gbは中性の置換基を表す。Xm+は、プロトンを
含む1〜m価のカチオンを表し、mは1ないし6の整数を表す。Mは共役鎖を表し、この共役鎖Mは置換基や環構造を有していてもよい。共役鎖Mは、下記式で表すことができる。
−(C(−R)=C(−R))−C(−R)=
【0079】
前記式中、R1、R2,R3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ア
ルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基を表し、これらは互いに連結して環構造を形成していてもよい。nは、1〜8の整数を表す。
【0080】
また、カチオン性赤外線吸収剤、非イオン性赤外線吸収剤も好ましく使用できる。
【0081】
他の染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、ジインモニウム染料、アミニウム染料、スクワリリウム色素、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0082】
また、増感色素として使用することができる顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。例えば、顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリド
ン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0083】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。
表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。前記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0084】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmであるのが好ましく、0.05μm〜1μmであるのがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmであるのが特に好ましい。
【0085】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0086】
本発明における増感色素のさらにより好ましい例としては、上述の特公昭61−9621号公報記載のメロシアニン色素、特開平2−179643号公報記載のメロシアニン色素、特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素、特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素、特開昭59−89303号公報記載のメロシアニン色素、特願平6−269047号公報記載のメロシアニン色素及び特開平8−334897記公報載のベンゾピラン系色素を挙げることができる。及び上述の特開平11−209001号記載の赤外線吸収剤を挙げることができる。
本発明における増感色素も単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。さらに本発明の光重合性組成物には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えても良い。
【0087】
これらの増感色素のどの構造を用いるか、単独で使用するか2種以上併用するか、添加量はどうか、といった使用方法の詳細は、最終的な感材の性能設計に合わせて適宜設定できる。
例えば、増感色素を2種以上併用することで、感光性組成物層への相溶性を高めることができる。増感色素の選択は、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用することにより、色素の添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ平版印刷版用原版に用いた場合、その感光層の膜物性の点からも有利である。該感光層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜設定する。
比較的薄い膜厚で使用する平版印刷版としての使用に際しては、増感色素の添加量は、感光層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。平版印刷版として利用する場合には、これは、通常、感光層成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0088】
本発明における増感色素に関しては、さらに、平版印刷版用原版とした場合、その感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素と
、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させる事で、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの色素の不要な析出抑制を行うことができる。
【0089】
さらに、本発明の感光性組成物を用いて平版印刷版用原版とした場合、その感光層の好ましい使用様態である、(アルカリ)水系現像液への処理適性を高める目的に対しては、親水性部位(カルボキシル基並びにそのエステル、スルホン酸基並びにそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基もしくは極性基)の導入が有効である。特にエステル型の親水性基は、該感光層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、かつ、現像液中では、加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。その他、例えば、該感光層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために適宜置換基を導入することができる。例えば、ある種の感光系では、アリール基やアリル基等の不飽和結合が相溶性向上に非常に有効である場合があり、また、分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入することで、結晶析出が著しく抑制できる。また、ホスホン酸基やエポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、金属や金属酸化物等の無機物への密着性を向上させる事ができる。そのほか、目的に応じ、増感色素のポリマー化等の方法も利用できる。
上記した増感色素の中でも、上記一般式(I)で表される構造を有するイミダゾール型化合物との高感度な開始系を形成することができる増感色素として、クマリン色素、スチリル色素、シアニン色素、メロシアニン色素から選択される増感色素がより好ましい。
【0090】
これらの増感色素のどの構造を用いるか、単独で使用するか2種以上併用するか、添加量はどうか、といった使用法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて適宜設定できる。
例えば、増感色素を2種以上併用することで、感光性組成物層への相溶性を高めることができる。増感色素の選択は、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用する事により、色素の添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ平版印刷版用原版に用いた場合、その感光層の膜物性の点からも有利である。該感光層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。
【0091】
但し、例えば5μm以上の厚い膜を硬化せしめる目的に対しては、低い吸光度の方がかえって硬化度をあげられる場合もある。比較的薄い膜厚で使用する平版印刷版としての使用に際しては、増感色素の添加量は、感光層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。平版印刷版として利用する場合には、これは、通常、感光層成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0092】
(C)重合性化合物
本発明における感光層に用いる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、一般的には、ラジカル又は酸の少なくともいずれかによって付加重合反応を起こす化合物である。
このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの共重合体ならびにそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0093】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0094】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0095】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0096】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−19
6231号の各公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0097】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0098】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0099】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
【0100】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0101】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0102】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。 感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との
相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体や後述の保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0103】
上記の重合性化合物は、感光層の全固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も配慮される。
【0104】
<(D)バインダーポリマー>
本発明の感光性組成物を、その好ましい実施形態である平版印刷版用原版の感光層への適用に際しては、前述の光重合開始系および付加重合性化合物の他にさらにバインダーポリマーを使用することが好ましい。本発明で感光性組成物に含有させるバインダーポリマーは、感光層の皮膜形成剤として機能するポリマーであり、線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どれを使用しても構わない。
このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子が好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0105】
さらに、バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性をもたせることができる。
バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
【0106】
ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程で高分子バインダーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(1)〜(3)で表される官能基が特に好ましい。
【0107】
【化10】

【0108】
上記一般式(1)において、Rl〜R3はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表すが、R1としては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。また、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキ
シル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0109】
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはN(R12)−を表し、R12は、水素原子、または1価の有機基を表す。ここで、R12は、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0110】
ここで、導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0111】
【化11】

【0112】
上記一般式(2)において、R4〜R8は、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表すが、R4〜R8は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
【0113】
導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。また、Yは、酸素原子、硫黄原子、またはN(R12)−を表す。R12は、一般式(1)のR12の場合と同義であり、好ましい例も同様である。
【0114】
【化12】

【0115】
上記一般式(3)において、R9としては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が
高いことから好ましい。R10、R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0116】
ここで、導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R13)−、または置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R13としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
上記の中でも、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル酸共重合体およびポリウレタンがより好ましい。
【0117】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0118】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
また、平版印刷版原版の製版工程において感光層の非画像部が良好に除去されるよう、用いられるバインダーポリマーは現像処理の態様に対応して適宜選択される。下記に詳細を記す。
【0119】
(D−1)アルカリ可溶性バインダーポリマー
現像処理がアルカリ現像液を用いて行われる態様においては、バインダーポリマーはアルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が好ましく使用される。特にpHが10以上のアルカリ現像液を用いる場合には、アルカリ可溶性バインダーが好適に用いられる。
アルカリ水に可溶性である為に、アルカリ可溶性基を有することが好ましい。
アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基、スルホンアミド基、イミノ基、スルホン酸基、燐酸基を挙げることができる。重合体中におけるアルカリ可溶性基は、アルカリ溶解性および耐刷性の観点から、0.2meq/g以上6.0meq/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5meq/g以上4.0meq/g以下、最も好ましくは、1.0meq/g以上3.5meq/g以下である。
【0120】
以下、アルカリ可溶性基について詳細に説明する。
バインダーポリマーへのカルボキシル基の導入法としては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸・フマル酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物をハーフエステル化したモノマー、不飽和二重結合を有する酸無水物をハーフアミド化したモノマー、カルボキシフェニルメタアクリルアミド、カルボキシフェニルアクリルアミド、カルボキシスチレン、アクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、特開2000−330265号公報記載の一般式(b)などを重合させることにより得ることができる。一般式(b)において、R 1 及びR 2 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、又はそれらの塩を表す。R 3 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表す。Xは、2価の連結基を表し、例えば置換基を有してもよいアルキレン基又はフェニレン基等が好適に挙げられる。Yは置換基を有してもよい2価の芳香族基を表し、例えば、置換基を有してもよいフェニレン基又はナフチレン基等が好適に挙げられる。
【0121】
フェノール性ヒドロキシル基の導入法としては、ヒドロキシフェニルメタアクリルアミド、ヒドロキシフェニルアクリルアミド、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニルマレイミド、特開2000−330265号公報記載の一般式(a)のモノマーを共重合させることにより得ることができる。一般式(a)において、R 1 及びR 2 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、又はそれらの塩を表す。R 3
は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表す。Xは、2価の連結基を表し、例えば置換基を有してもよいアルキレン基又はフェニレン基等が好適に挙げられる。Yは置換基を有してもよい2価の芳香族基を表し、例えば、置換基を有してもよいフェニレン基又はナフチレン基等が好適に挙げられる。
【0122】
スルホンアミド基の導入方法としては特開2000−330265号公報記載の一般式(c)のモノマー,特開平11−218914号公報記載の構造式(I)〜(V)のモノマー、具体的には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドなどをあげることができる。一般式(c)において、R 1 及びR 2 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、又はそれらの塩を表す。R 3 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を表す。Xは、2価の連結基を表し、例えば置換基を有してもよいアルキレン基又はフェニレン基等が好適に挙げられる。Yは置換基を有してもよい2価の芳香族基を表し、例えば、置換基を有してもよいフェニレン基又はナフチレン基等が好適に挙げられる。
【0123】
イミノ基の導入方法としてはN−(p−トルエンスルホニル)メタアクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミドなどを共重合させることにより得ることができる。スルホン酸基としてはスチレンスルホン酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、燐酸基としてはホスマーM、ホスマーPEなど(ユニケミカル(株)製)の燐酸あるいはその塩を有するモノマーを共重合させることにより得ることができる。
以上アルカリ可溶性基において好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基、イミノ基であり、特に好ましくはカルボキシル基である。以上のアルカリ可溶性基は重合により導入してもよいし、高分子反応により導入してもよい。
さらに、アルカリ可溶性バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、上記のように架橋性をもたせることができる。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい

アルカリ可溶性バインダーポリマーの含有量は、感光層の全固形分に対して、通常5〜90質量%であり、10〜70質量%であるのが好ましく、10〜60質量%であるのがより好ましい。この範囲内で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
【0124】
(D−2)酸価が0.3meq/g以下の疎水性バインダーポリマー
製版工程における現像処理が、pH2〜10の現像液を用いて行われる態様においては、酸価が0.3meq/g以下の疎水性バインダーポリマーが好ましく用いられる。
酸価が0.3meq/g以下の疎水性バインダーポリマーとしては、非水溶性ポリマーが好ましく用いられる。さらに、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基を実質的に含有しないものが好ましい。疎水性バインダーポリマーの酸価はポリマー1gあたりの酸含率を化学当量数で表したものである。疎水性バインダーポリマーの酸価は好ましくは、0.1meq/g以下である。
すなわち、疎水性バインダーポリマーは、pH2〜10の水溶液に対し不溶であることが好ましい。疎水性バインダーポリマーのpH2〜10の水溶液に対する溶解量は、0.5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下である。このような疎水性バインダーポリマーを用いることによって、感光層の膜強度、耐水性および着肉性が向上して、耐刷性の向上が得られる。
【0125】
疎水性バインダーポリマーとしては、本発明の平版印刷版の性能を損なわない限り、好ましくは、上記範囲であれば、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。
このような疎水性バインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子が好ましい。なかでも、アクリル樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。より具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルまたはアラルキルエステルと(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基(−COOR)のRに−CH2CH2O−単位または−CH2CH2NH−単位を含む(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が特に好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好ましいアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基であり、メチル基がより好ましい。好ましい(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。
【0126】
さらに、疎水性バインダーポリマーについても、画像部の皮膜強度を向上するために、前述のように架橋性をもたせることができる。
疎水性バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
【0127】
また、水溶液に対する現像性向上という観点からバインダーポリマーは親水的であることが好ましく、さらに耐刷性向上という観点からバインダーポリマーは感光層中に含まれる重合性化合物と相溶性が良いことが重要であり、すなわち親油的であることが好ましい。このような見地から本発明では、現像性と耐刷性を向上させるため疎水性バインダーポリマー中に親水性基と親油性基とを共重合させることも有効である。親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、エチレンオキシ基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシエチル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
【0128】
疎水性バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1
万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
疎水性バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0129】
疎水性バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
疎水性バインダーポリマーの含有量は、感光層の全固形分に対して、通常5〜90質量%であり、10〜70質量%であるのが好ましく、10〜60質量%であるのがより好ましい。この範囲内で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
【0130】
(共増感剤)
ある種の添加剤を用いることで、感光層の感度をさらに向上させることができる。そのような化合物を、本発明では共増感剤という。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。すなわち、先述の光重合開始系の光吸収により開始される光反応、と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、過酸化物、酸化剤、還元剤等)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(a)還元されて活性ラジカルを生成しうるもの、(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうるもの、(c)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用するもの、に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
【0131】
(a)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
酸素−酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
フェロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。
【0132】
(b)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
【0133】
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等が挙げられる。
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0134】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類をあげることができる。
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0135】
(c)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、もしくは連鎖移動剤として作用する化合物
ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、もしくは連鎖移動剤として作用する化合物としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等が挙げられる。
【0136】
これらの共増感剤のより具体的な例は、例えば、特開平9−236913号公報中に、感度向上を目的とした添加剤として、多く記載されている。以下に、その一部を例示するが、本発明はこれらに限定されるものはない。
【0137】
【化13】

【0138】
これらの共増感剤に関しても、先の増感色素と同様、さらに、平版印刷版原版の感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素、開始剤、重合性化合物その他のラジカル発生パートとの結合、親水性部位の導入、相溶性向上、結晶析出抑制のための置換基導入、密着性を向上させる置換基導入、ポリマー化等の方法が利用できる。これらの共増感剤は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。使用量はエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物100質量部に対し0.05〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは3〜50質量部の範囲が適当である。
【0139】
(マイクロカプセル)
本発明においては、上記の感光層構成成分および後述のその他の構成成分を感光層に含有させる方法として、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の一部をマイクロカプセルに内包させて感光
層に添加することができる。その場合、各構成成分はマイクロカプセル内および外に、任意の比率で含有させることが可能である。
【0140】
感光層構成成分をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、上記の非水溶性高分子に導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0142】
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0143】
(その他の感光層成分)
本発明の感光層には、さらに、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。以下、それらについて説明する。
【0144】
(界面活性剤)
本発明において、感光層には、現像性の促進および塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン
類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0146】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0147】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0148】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0149】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0150】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、感光層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜7質量%であるのがより好ましい。
【0151】
(着色剤)
本発明では、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#
312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
【0152】
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、感光層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合が好ましい。
【0153】
(焼き出し剤)
本発明の感光層には、焼き出し画像生成のため、酸またはラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0154】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p',p"−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0155】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミ
ノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0156】
酸またはラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、感光層固形分に対して0.01〜15質量%の割合である。
【0157】
(重合禁止剤)
本発明の感光層には、感光層の製造中または保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、感光層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0158】
(高級脂肪酸誘導体等)
本発明の感光層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0159】
(可塑剤)
本発明の感光層は可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。可塑剤の含有量は、感光層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
【0160】
(無機微粒子)
本発明の感光層は、画像部の硬化皮膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、感光層中に安定に分散して、感光層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、感光層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0161】
(低分子親水性化合物)
本発明の感光層は、現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有することができる。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩や、テトラエチルアミン塩酸塩等の有機4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0162】
本発明の感光層には上記以外に、たとえば共増感剤を含有することができる。
【0163】
(感光層の形成)
本発明の感光層は、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、塗布して形成される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の感光層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散、または溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0164】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲内で、良好な感度と感光層
の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0165】
〔保護層〕
本発明の平版印刷版原版には、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、感光層上に保護層(酸素遮断層)が設けられる。本発明に用いられる保護層は25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(mL/m2・day)であることが好ましい。酸素透過性Aが1.0(mL/m2・day)未満で極端に低い場合は、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。逆に、酸素透過性Aが20(mL/m2・day)を超えて高すぎる場合は感度の低下を招く。酸素透過性Aは、より好ましくは1.5≦A≦12(mL/m2・day)、更に好ましくは2.0≦A≦10.0(mL/m2・day)の範囲である。また、保護層に望まれる特性としては、上記酸素透過性以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。この様な保護層に関する工夫が従来なされており、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0166】
保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0167】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。ポリビニルアルコールの具体例としては加水分解度が71〜100モル%、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。好ましい態様としてはポリビニルアルコールの保護層中の含有率が20〜95質量%、より好ましくは、30〜90質量%である。
【0168】
また、公知の変性ポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、更にはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0169】
ポリビニルアルコールと混合して使用する成分としてはポリビニルピロリドンまたはその変性物が酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましく、保護層中の含有率が3.5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
【0170】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。上記ポリビニルアルコール(PVA)等の(共)重合体の分子量は、2000〜1000万の範囲のものが使用でき、好ましくは2万〜300万範囲のものが適当である。
【0171】
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を(共)重合体に対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を高分子化合物バインダーに対して数質量%添加することができる。
【0172】
また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。すなわち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の感光層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改良すべく種々の提案がなされている。例えば米国特許出願番号第292,501号、米国特許出願番号第44,563号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0173】
さらに、本発明の平版印刷版原版における保護層には、酸素遮断性や感光層表面保護性を向上させる目的で、無機質の層状化合物を含有させることも好ましい。
ここで無機質の層状化合物とは、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式
A(B,C)2-5410(OH,F,O)2
〔ただし、AはK,Na,Caの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、りん酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0174】
上記雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母および鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3 (AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5 Si410)F2等の非膨潤性雲母、およびNaテトラシリリックマイカNaMg2.5 (Si410)F2、NaまたはLiテニオライト(Na,Li)Mg2 Li(Si4 10)F2、モンモリロナイト系のNaまたはLiヘクトライト(Na,Li)1/8 Mg2 /5Li1/8 (Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0175】
本発明においては、上記の無機質の層状化合物の中でも、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、この膨潤性合成雲母や、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘度鉱物類等は、10
〜15A程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に層間の陽イオンがLi+ 、Na+ の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイトおよび膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明において有用であり、特に膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
【0176】
本発明で使用する無機質の層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0177】
本発明で使用する無機質の層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0178】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0179】
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計の量が上記の質量比であることが好ましい。
【0180】
次に、保護層に用いる無機質層状化合物の一般的な分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に無機質層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
【0181】
この保護層塗布液には、上記無機質層状化合物の他に、塗布性を向上させための界面活性剤や皮膜の物性改良のための水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。さらに、この塗布液には、感光層との密着性、塗布液の経時安定性を向
上するための公知の添加剤を加えてもよい。
【0182】
このように調製された保護層塗布液を、支持体上に形成された感光層の上に塗布し、乾燥して保護層を形成する。塗布溶剤はバインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書または特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が挙げられる。
【0183】
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.05〜10g/m2 の範囲であることが好ましく、無機質の層状化合物を含有する場合には、0.1〜0.5g/m2の範囲であることがさらに好ましく、無機質の層状化合物を含有しない場合には、0.5〜5g/m2の範囲であることがさらに好ましい。
【0184】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状な親水性支持体であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0185】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0186】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
【0187】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および感光層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0188】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0189】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0190】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変るので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温度5〜70℃、電流密度5〜60A/d m2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2 であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2 であるのがより好ましい。この範囲内で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0191】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号や特開2001−322365号の公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理は、これらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
【0192】
封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔、熱水による封孔処理でも可能である。
なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。
【0193】
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0194】
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリック
スを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0195】
また、本発明の支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
【0196】
支持体は、例えば、アルミニウム板の場合、その表面の中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲内で、感光層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲内で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
【0197】
〔下塗り層〕
本発明の平版印刷版原版においては、支持体上に重合性基を含有する化合物の下塗り層を設けることが好ましい。下塗り層が用いられるときは、感光層は下塗り層の上に設けられる。下塗り層は、露光部においては支持体と感光層との密着性を強化し、また、未露光部においては、感光層の支持体からの剥離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。
下塗り層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物などが好適に挙げられる。特に好ましい化合物として、メタクリル基、アリル基などの重合性基とスルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基などの支持体吸着性基を有する化合物が挙げられる。重合性基と支持体吸着性基に加えてエチレンオキシド基などの親水性付与基を有する化合物も好適な化合物として挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0198】
〔バックコート層〕
支持体に表面処理を施した後または下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 4 、Si(OC2 5 4 、Si(OC3 7 4 、Si(OC4 9 4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0199】
<製版方法>
本発明に係る平版印刷版原版の製版プロセスにおいては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。このような加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上、感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは、全面露光を行なうことも有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行なうことが好ましい。温度が高すぎると、非画像部領域における所望されない硬化反応が生起する等の問題を生じるおそれがある。一方、現像後の加熱には非常に強い条件を
利用することができる。通常は200〜500℃の範囲加熱処理を行なう。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる。
【0200】
本発明に係る平版印刷版原版の露光方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。光源の波長は特に限定されないが、300nm〜850nmのものが好ましく利用される。さらに350nmから450nmものが好ましく利用され、具体的にはInGaN系半導体レーザが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。また、本発明の感光層成分は、高い水溶性のものを使用することで、中性の水や弱アルカリ水に可溶とすることもできるが、このような構成の平版印刷版は印刷機上に装填後、機上で露光−現像といった方式を行なうこともできる。
【0201】
350〜450nmの入手可能なレーザ光源としては以下のものを利用することができる。
ガスレーザとして、Arイオンレーザ(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザ(356nm、351nm、10mW〜1W)、He−Cdレーザ(441nm、325nm、1mW〜100mW)、固体レーザとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm、10mW)、半導体レーザ系として、KNbO3リング共振器(430nm、30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)その他、パルスレーザとしてN2レーザ(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)などが利用できる。
特にこの中でAlGaInN半導体レーザ(市販InGaN系半導体レーザ400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
【0202】
また走査露光方式の平版印刷版露光装置としては、露光機構として内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式があり、光源としては上記光源の中でパルスレーザ以外のもの全てを利用することができる。現実的には感材感度と製版時間の関係で、以下の露光装置が特に好ましい。
・内面ドラム方式でガスレーザあるいは固体レーザ光源を1つ使用するシングルビーム露光装置
・フラットベッド方式で半導体レーザを多数(10個以上)使用したマルチビームの露光装置
・外面ドラム方式で半導体レーザを多数(10個以上)使用したマルチビームの露光装置
【0203】
以上のようなレーザ直描型の平版印刷版においては、一般に感材感度X(J/cm2)、感材の露光面積S(cm2)、レーザ光源1個のパワーq(W)、レーザ本数n、全露光時間t(s)との間に式(eq1)が成立する。
X・S=n・q・t (eq1)
【0204】
i)内面ドラム(シングルビーム)方式の場合
レーザ回転数f(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)の間には一般的に式(eq2)が成立する。
f・Z・t=Lx (eq2)
【0205】
ii)外面ドラム(マルチビーム)方式の場合
ドラム回転数F(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/
cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に式(eq3)が成立する。
F・Z・n・t=Lx (eq3)
【0206】
iii)フラットベッド(マルチビーム)方式の場合
ポリゴンミラーの回転数H(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に式(eq4)が成立する。
H・Z・n・t=Lx (eq4)
【0207】
実際の印刷版に要求される解像度(2560dpi)、版サイズ(A1/B1、副走査長42inch)、20枚/1時間程度の露光条件と本発明の平版印刷版原版の感光特性(感光波長感度:約0.1mJ/cm2)を上記式に代入することで、本発明の平版印刷版原版においては半導体レーザのマルチビーム露光方式との組み合わせがより好ましいことが理解できる。さらに操作性、コスト等を掛け合わせることにより外面ドラム方式の半導体レーザマルチビーム露光装置との組み合わせが最も好ましいことになる。
【0208】
また、本発明の平版印刷版原版に対するその他の露光光線としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視および紫外の各種レーザランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等も使用できる
【0209】
〔現像〕
本発明における平版印刷版原版を画像露光した後、現像液により保護層及び非露光部の感光層を除去し、親水性支持体表面に画像を形成することができる。
【0210】
本発明において好適に用いられる現像液は、(1)pHが10以上のもの、(2)pHが2〜10の水溶液のもの、の2つに分けられる。
上記したように、(1)の現像液を用いる場合には、感光層に用いられるバインダーポリマーとしてアルカリ可溶性バインダーを用いることが好ましく、(2)の現像液を用いる場合には、酸価が0.3meq/g以下の疎水性バインダーポリマーを用いることが好ましい。
本発明において好適に用いられるpHが10以上の現像液について説明する。
pHが10以上の現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミン又はジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ溶液の濃度が0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%になるように添加される。
また、このようなアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やべンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号明細書及び同第3615480号明細書に記載されているものを挙げることができる。
pHが10以上の現像液は、取扱い性と現像性の両立の観点からpHが10〜14の範囲のものが好ましく、さらにはpHが11〜13の範囲のものが好ましい。
【0211】
本発明において好適に用いられるもう一つの現像液は、pHが2〜10の水溶液である。例えば、水単独または水を主成分(水を60質量%以上含有)とする水溶液が好ましく、特に、一般的に公知な湿し水と同様組成の水溶液、界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系等)を含有する水溶液や、水溶性高分子化合物を含有する水溶液が好まし
い。特に、界面活性剤と水溶性高分子化合物の両方を含有する水溶液が好ましい。現像液のpHは、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは4〜7である。
上記(1)及び(2)の現像液各々に含有することができる成分について、下記に詳述する。
【0212】
本発明の現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0213】
本発明における現像液に用いられるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0214】
本発明における現像液に用いられるノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
これらノニオン性界面活系剤は、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。本発明においては、ソルビトールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステルがより好ましい。
【0215】
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、本発明の現像液に使用するノニオン系界面活性剤としては、HLB(Hydorophile−Lipophile
Balance)値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。さらに、現像液中に含有するノニオン性界面活性剤の比率は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
またアセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコン系等の界面活性剤も同様に使用することができる。
本発明の現像液に使用する界面活性剤としては、抑泡性の観点から、ノニオン性界面活性剤が特に好適である。
【0216】
また、本発明の現像液に用いられる水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)およびその変性体、プルラン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0217】
上記大豆多糖類は、公知ものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0218】
上記変性澱粉も、公知のものが使用でき、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉を酸または酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
【0219】
水溶性高分子化合物は2種以上を併用することもできる。水溶性高分子化合物の現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量
%である。
【0220】
また、本発明の現像液には、有機溶剤を含有しても良い。含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)あるいはガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、あるいはハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
【0221】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0222】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能であり、現像液に、有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
【0223】
本発明の現像液には上記の他に、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有することができる。
【0224】
防腐剤としては、フェノールまたはその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。
【0225】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
【0226】
消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系界面活性剤のHLBが5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤が好ましい。
その中で乳化分散型および可溶化等がいずれも使用できる。
【0227】
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形で用いることもできる。
【0228】
無機酸および無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。
【0229】
上記の現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液および現像補充液として用いることができ、後述の自動処理機に適用することが好ましい。自動処理機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。本発明の平版印刷版の製版方法においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0230】
本発明におけるpH2〜10の水溶液による現像処理は、現像液の供給手段および擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像記録後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号、特開昭60−59351号各公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像記録後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。なかでも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機
が特に好ましい。
【0231】
本発明に好ましく使用できる回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体の腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。 上記回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチックまたは金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報や、特開平3−100554号公報記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属またはプラスチックの溝型材を芯となるプラスチックまたは金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
また、ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、および、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は、20〜400μm、毛の長さは、5〜30mmのものが好適に使用できる。
さらに、回転ブラシロールの外径は、30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は、0.1〜5m/secが好ましい。
また、回転ブラシロールは、2本以上の複数本用いることが好ましい。
【0232】
本発明に用いる回転ブラシロールの回転方向は、本発明の平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、図12に例示した自動処理機のように、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが、同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが、逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感熱層の除去が、さらに確実となる。さらに、回転ブラシロールを、ブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0233】
上記現像液の温度は、任意の温度で使用できるが、好ましくは10℃〜50℃である。
【0234】
なお、本発明において、擦り処理後の平版印刷版を、引き続いて、水洗、乾燥処理、不感脂化処理することも任意に可能である。不感脂化処理では、公知の不感脂化液を用いることができる。
【0235】
その他、本発明の平版印刷版原版からの平版印刷版の製版プロセスとしては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。この様な加熱により、該感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは全面露光を行うことも有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。温度が高すぎると、非画像部迄がかぶってしまう等の問題を生じる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は200〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる。
【0236】
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来知られているPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、CL-1、CL-2、CP、CN-4、CN、CG-1、PC-1、SR、IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0237】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0238】
〔支持体の作製〕
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0239】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0240】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
このようにして得た支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0241】
更に、下記下塗り液をバー塗布した後、80℃、10秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量が10mg/mになるよう塗布し、下塗り層を有する支持体を作製した。
【0242】
<下塗り液>
・下記の下塗り化合物(1) 0.017g
【0243】
【化14】

【0244】
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
【0245】
〔実施例1〜15及び比較例1〜4〕
〔平版印刷版原版(1)〜(15)及び比較平版印刷版原版(1)〜(4)の作製〕
上記の下塗り層を付与した支持体上に、下記組成の感光層塗布液(1)をバー塗布した
後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.1g/m2の感光層を形成し、この上に下記組成よりなる保護層塗布液(1)を、乾燥塗布量が0.75g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃、70秒で間乾燥して実施例1の平版印刷版原版(1)を作製した。
同様に実施例2〜15及び比較例1〜4の平版印刷版原版(2)〜(15)及び比較平版印刷版原版(1)〜(4)を作製した。
【0246】
<感光層塗布液(1):アルカリ可溶性バインダー系>
(開始系:表−1に記載)
・開始剤 0.2g
・増感色素 0.1g
・共増感剤 0.3g
(重合系)
・バインダーポリマー(表−1に記載) 3.0g
・重合性化合物 6.2g
イソシアヌール酸EO変性ジアクリレート
(東亜合成(株)製アロニックスM−215)
・ロイコクリスタルバイオレット 0.2g
・下記のフッ素系界面活性剤(1) 0.1g
【0247】
【化15】

【0248】
・下記のマイクロカプセル分散液 25.0g
・メチルエチルケトン 35.0g
・1−メトキシー2−プロパノール 35.0g
【0249】
(マイクロカプセル分散液の調製)
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、イソシアヌール酸EO変性ジアクリレート(東亜合成(株)製アロニックスM−215)4.15g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、20質量%になるように蒸留水を用いて希釈してマイクロカプセル分散液を得た。平均粒径は0.25μmであった。
<保護層塗布液(1)>
・下記雲母分散液 13.0g
・ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500) 1.3g
・2−エチルヘキシルスルホコハク酸ソーダ 0.2g
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1))分子量7万 0.05g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.05g
・水 133g
【0250】
(雲母分散液の調製)
水368gに合成雲母(「ソマシフME−100」:コープケミカル社製、アスペクト比:1000以上)の32gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)0.5μmになる迄分散し、雲母分散液を得た。
【0251】
〔実施例16〜30及び比較例5〜8〕
〔平版印刷版原版(16)〜(30)及び比較平版印刷版原版(5)〜(8)の作製〕
上記感光層塗布液(1)を下記組成の感光層塗布液(2)に変更した以外は、平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、平版印刷版原版(16)〜(30)及び比較平版印刷版原版(5)〜(8)を作製した。
【0252】
<感光層塗布液(2):疎水性バインダーポリマー>
(開始系:表−2に記載)
・開始剤 0.2g
・増感色素 0.1g
・共増感剤 0.3g
(重合系)
・バインダーポリマー(表−2に記載) 3.0g
・重合性化合物 6.2g
イソシアヌール酸EO変性ジアクリレート
(東亜合成(株)製アロニックスM−215)
・ロイコクリスタルバイオレット 0.2g
・下記のフッ素系界面活性剤(1) 0.1g
【0253】
【化16】

【0254】
・上記のマイクロカプセル分散液 25.0g
・メチルエチルケトン 35.0g
・1−メトキシー2−プロパノール 35.0g
【0255】
〔平版印刷版原版の評価〕
平版印刷版原版(1)〜(30)及び比較用平版印刷版原版(1)〜(8)を用いて、下記のようにして露光、現像を行い、感度、現像性、保存安定性を評価した。
【0256】
(感度評価)
平版印刷版原版上に、富士写真フイルム(株)製の富士ステップガイド(△D=0.15で不連続に透過光学濃度が変化するグレースケール)を密着させ、キセノンランプを光源とし、短波半導体レーザへの露光適性を見積もる目的で、光学フィルターとしてケンコーBP−40を用い、400nmのモノクロミックな光で所定の露光エネルギーとなるように露光を行った。
【0257】
露光後の平版印刷版原版を、下記組成の現像液を用い、自動現像処理機にて現像処理した。自動現像処理機は、回転ブラシロールを2本有し、平版印刷版原版が最初に接する1
本目の回転ブラシロールは、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径90mmのブラシロールで、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.94m/sec)させ、2本目の回転ブラシロールは、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径60mmのブラシロールで、搬送方向と反対方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.63m/sec)させた。平版印刷版原版の搬送速度は100cm/minであった。
現像液は、循環ポンプによりスプレーパイプからシャワーリングして、版面に供給した。現像液のタンク容量は、10リットルであった。
【0258】
(実施例1〜15及び比較例1〜4に使用した現像液)
下記組成からなるpH11.95の水溶液
・水酸化カリウム 0.2g
・1Kケイ酸カリウム 2.4g
(SiO2/K2O=1.9)
・下記化合物(1) 5.0g
・エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩 0.1g
・水 91.3g
【0259】
【化17】

【0260】
(実施例16〜30及び比較例5〜8に使用した現像液(pH:約5))
・水 100g
・ベンジルアルコール 1g
・ポリオキシエチレンナフチルエーテル 1g
(オキシエチレン平均数n=13)
・ジオクチルスルホコハク酸エステルナトリウム塩 0.5g
・アラビアガム 1g
・エチレングリコール 0.5g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム塩 0.05g
【0261】
得られた平版印刷版において、画像が完全に除去されるグレースケールの最高の段数を読み取り、その露光エネルギー量を求め、クリア感度(mJ/cm2)を算出した。露光エネルギー量が小さい程、高感度であると評価する。結果を表1に示す。
【0262】
(現像性評価)
平版印刷版原版に対して、露光装置として、FUJIFILM Electronic
Imaging Ltd製Violet半導体レーザーセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー405nm±10nm発光/出力30mW)を用い、露光量90μJ/cm、解像度2438dpiで、富士写真フイルム製FMスクリーンTAFFETA20により35%の平網を描画した。その後、上記感度評価における現像工程と同様にして、平版印刷版原版100m2分を現像処理した後、自動現像処理機への開始剤成分の析出を目視により評価した。明らかな析出は×、判断が難しいレベルを△、析出なしを○
とし、結果を表1に示す。
【0263】
(保存安定性の評価)
平版印刷版原版を、製造直後(条件i)及び60℃、10日の強制条件下で保存後(条件ii)、上記感度評価と同様にして露光、現像し、各々クリア感度を求めた。条件iのクリア感度と条件iiのクリア感度の相違をクリア感度比(条件ii/条件i)と定義した。この値が1に近いほど、経時無しの平版印刷版原版と強制経時後の平版印刷版原版における画像形成感度に変化が小さいことを示し、保存安定性が高いと言える。結果を表1に示す。
【0264】
また、開始剤のpH11.95の水溶液に対する溶解量は、以下の様にして測定した。
メチルエチルケトン2ml中に対し特定量の開始剤を溶解させ、そこへpH11.95に調製された25℃の水溶液を98ml投入した。1時間攪拌した後、ミクロフィルターを用いてろ過した。このろ液をさらに5倍希釈した後、常法によりUV測定を行い、その吸収強度から溶解量を算出し、pH11.95の水溶液1リットル当たりの溶解量に換算した。結果を表1に示す。
【0265】
また、開始剤のpH4.5の水溶液に対する溶解量は、以下の様にして測定した。
メチルエチルケトン2ml中に対し特定量の化合物を溶解させ、そこへpH4.5に調製された25℃の水溶液を98ml投入した。1時間攪拌した後、ミクロフィルターを用いてろ過した。このろ液をさらに5倍希釈した後、常法によりUV測定を行い、その吸収強度から溶解量を算出し、pH4.5の水溶液1リットル当たりの溶解量に換算した。結果を表2に示す。
【0266】
【表1】

【0267】
表−1より、本発明に用いられる開始剤は、比較例の化合物にくらべ圧倒的に高いアルカリ溶解性を示し、現像カス成分を発生しないことが分かる。また実施例1、2より、アルカリ現像系においては水酸基を保護した置換基にてより高感度となることが分かる。さらに実施例8に対し、実施例12〜15を比較することで、イミダゾールのN−N間に存在する炭素原子に対し連結されたフェニル基の置換基としては塩素原子が好ましく、また
置換位はオルトが好ましいことが分かる。
【0268】
【表2】

【0269】
表−2より、本発明に用いられる開始剤は、比較例の化合物にくらべ、弱酸性水溶液に対する高い溶解性を示し、現像カス成分を発生しにくいことが分かる。
またアルカリ現像系と大きく異なる点として、水溶液が弱酸性であるためカルボニル系官能基を加水分解する力がなく、水酸基をアセチル基で保護したもの(実施例16、17等)は、アルカリ現像では全くカスが発生しないことと比較すると若干のカス発生が確認できる。これはカルボン酸エステル系化合物においても同様である(加水分解できないため、カス成分となりうることが推定される。)それでも、比較例で示される化合物よりは溶解性は改善されており、全体としては良好な結果を与える。
このことから、弱酸性現像を行う場合、化合物に付与する置換基としては水酸基が好ましいことが分かった。
【0270】
表1及び表2において開始系で用いた本発明に係る開始剤は、いずれも前記例示化合物として示したものである。また、増感色素H−1、開始剤T−1〜T−4、共増感剤R−1及びバインダーポリマーP−1〜P−5の構造は以下に示す通りである。なお、比較例に用いた下記の開始剤T−1〜T−4は本発明に用いる開始剤の範囲外の化合物である。
【0271】
【化18】

【0272】
<疎水性バインダーポリマー>
下記P−1、P−2、P−3、P−4の重量平均分子量は、それぞれ、8万、7万、10万、9万である。
【0273】
【化19】

【0274】
【化20】

【0275】
なお、P−1〜P−4の酸価は0.3meq/g以下である。
【0276】
【化21】

【0277】
<アルカリ可溶性バインダーポリマー>
P−6:アリルメタクリレート/メタクリル酸/N−イソプロピルアクリルアミド共重合体(共重合モル比67/13/20)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表される構造を持つビイミダゾール型化合物、
(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素、及び
(C)重合性化合物
を含有する感光性組成物。
【化1】

(一般式(I)中、R〜Rは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、のうちのいずれかを表し、R〜Rのうち少なくとも2つは、COOR7基、SO38基、PO39基、OH基、及びOCOR10基から選択される置換基を有するアリール基またはヘテロアリール基である。R7〜R10はそれぞれ独立に、水素原子でない一価の原子団を表す。)
【請求項2】
増感色素(B)が、クマリン色素、スチリル色素、シアニン色素、メロシアニン色素から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
支持体上に、請求項1または2に記載の感光性組成物を含有する感光層を有する画像記録材料。
【請求項4】
支持体上に、請求項1〜3のいずれかに記載の感光性組成物を含有する感光層を有する画像記録材料に対し、450nmより短波長のレーザ光源を用いて走査露光を行う画像記録方法。
【請求項5】
支持体上に、請求項1または2に記載の感光性組成物を含有する感光層を有する平版印刷版原版。
【請求項6】
支持体、(A)下記一般式(I)で表される構造を持つビイミダゾール型化合物、
(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素、
(C)重合性化合物、及び
(D−1)アルカリ可溶性バインダーポリマー
を含有する感光層、保護層をこの順に有する平版印刷版原版を、波長が350から450nmのレーザーで露光した後、pHが10から14の現像液の存在下、保護層及び非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【化2】

(一般式(I)中、R〜Rは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、のうちのいずれかを表し、R〜Rのうち少なくとも2つは、
COOR7基、SO38基、PO39基、OH基、及びOCOR10基から選択される置換基を有するアリール基またはヘテロアリール基である。R7〜R10はそれぞれ独立に、水素原子でない一価の原子団を表す。)
【請求項7】
支持体、(A)下記一般式(I)で表される構造を持つビイミダゾール化合物型化合物
(B)350nm〜850nmに吸収極大波長λmaxを持つ増感色素、
(C)重合性化合物、及び
(D−2)酸価が0.3meq/g以下の疎水性バインダーポリマー
を含有する感光層、保護層をこの順に有する平版印刷版原版を、波長が350から450nmのレーザーで露光した後、pHが2〜10の現像液の存在下、保護層及び非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【化3】

(一般式(I)中、R〜Rは、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、のうちのいずれかを表し、R〜Rのうち少なくとも2つは、COOR7基、SO38基、PO39基、OH基、及びOCOR10基から選択される置換基を有するアリール基またはヘテロアリール基である。R7〜R10はそれぞれ独立に、水素原子でない一価の原子団を表す。)

【公開番号】特開2008−64786(P2008−64786A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239322(P2006−239322)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】