説明

感光性組成物およびそれに用いる新規化合物

【課題】 作業性、経済性に優れたCTPシステムに適合する走査露光用の平版印刷版原版の感光層として有用な、安価な短波半導体レーザの発振波長に対し高感度で、広く350nmから450nmの波長に対し高感度な新規な光開始系を用いた感光性組成物を提供する。また、前記短波半導体レーザの発振波長に対し高感度な感光性組成物に用いうる新規な色素化合物を提供する。
【解決手段】(A)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る増感色素と、
(B)ラジカル、酸あるいは塩基を生成しうる開始剤化合物と、
(C)ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種によって物理的あるいは化学的特性が不可逆的に変化する化合物、
を含有する感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光により高感度で硬化する感光性組成物及びそれに用いる新規な色素化合物に関し、詳細には、デジタル信号に基づいた走査露光により画像形成しうる平版印刷版原版の感光層として有用な感光性組成物、及び、それに用いられる光熱変換能に優れた新規な色素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するPS版が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。
近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及し、それに対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザ光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すことなく、直接印刷版を製造するコンピュータ トゥ プレート(CTP)技術が望まれ、これに適応した印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
【0003】
このような走査露光可能な平版印刷版を得る方式の一つとして、親水性表面を有する支持体上に、インク受容性の樹脂層領域を形成する方式が採用されている。これは、支持体上に、走査露光により硬化してインク受容性領域を形成するネガ型の感光層を設けてなる材料であって、感光スピードに優れた光重合系組成物を用いた構成が提案され、既に実用化されているものもある。このような構成の平版印刷版原版は、現像処理が簡便であり、さらに解像度、着肉性、耐刷性、汚れ性に優れるといった望ましい刷版、印刷性能を有する。
【0004】
前記光重合性組成物は、基本的にはエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と光重合開始系、及び、所望によりバインダー樹脂を含有し、走査露光により、光開始系が光吸収し、活性ラジカル等の活性種を生成して重合性化合物の重合反応を生起、進行させることにより露光領域を硬化させて画像形成するものである。
このような走査露光可能な光重合性組成物においては、感光性に優れた光開始系が種々開示されている(例えば、非特許文献1、2参照。)。これらに記載の光開始系は、露光光源としてArレーザー(488nm)やFD−YAGレーザー(532nm)のような長波長の可視光源を用いた、従来のCTPシステムに適用された場合には、光源の出力が十分高くない現状においては充分な感度得られず、さらなる高速露光に適合し得る高感度の開始系が望まれている。
【0005】
一方、近年、例えば、InGaN系の材料を用い、350nmから450nm域で連続発振可能な半導体レーザが実用段階となっている。これらの短波光源を用いた走査露光システムは、半導体レーザが構造上、安価に製造できるため、十分な出力を有しながら、経済的なシステムを構築できるといった長所を有する。さらに、従来のFD−YAGやArレーザを使用するシステムに比較して、より明るいセーフライト下での作業が可能な、短波長領域に感光性を有する感光材料が使用できる。しかしながら、このような350nmから450nmの短波長領域において走査露光に十分な感度を有する光開始系は知られていないのが現状である。
これを受けて、この短波長領域において高感度な増感色素を含む感光性組成物が提案されているが(特許文献1参照。)、これらの増感色素などを包含するさらなる光開始系の高感度化が望まれている。
【0006】
さらに、例えば、非特許文献3及び4に記載されるように、感度の高い光開始系を得ることは、広く、イメージング分野において、なお切望される技術である。増感色素と開始剤化合物とからなる光開始系は、開始剤化合物の選択により、上記活性ラジカルの他、酸、塩基を発生することができ、例えば、光造形、ホログラフィー、カラーハードコピーといった画像形成や、フォトレジスト等の電子材料製造分野、インクや塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料用途に利用される。これらの産業分野においては、開始剤化合物の分解を効率良く引き起こすため目的で、光吸収性、増感能に優れた増感色素を見いだすことが切望されている。
【0007】
【非特許文献1】ブルース・エム・モンロー(Bruce M. Monroe)ら著、ケミカル・レビュー(Chemical Revue)、1993年、第93巻、p.435−448
【非特許文献2】アール・エス・デビッドソン(R. S. Davidson)著、ジャーナル・オブ・フォトケミストリー・アンド・バイオロジー・エー・ケミストリー (Journal of Photochemistry and Biology A :Chemistry)、1993年、第73巻、p.81−96
【非特許文献3】ジェーピーファウザー(J. P. Faussier), "光開始重合の理論と応用" (Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications), ラプラ・レビュー (Rapra Review) , 1998年、第9巻, ラプラ・テクノロジィー (Rapra Technology)
【非特許文献4】エム ツノーカら(M. Tsunooka et al), プログレッシブ・ポリマー・サイエンス (Prog. Polym. Sci.), 1996年、第21巻, 第1頁
【特許文献1】特開2000−258910公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記課題を考慮した本発明の目的は、作業性、経済性に優れたCTPシステムに適合する走査露光用の平版印刷版原版の感光層として有用な、安価な短波半導体レーザの発振波長に対し高感度で、広く350nmから450nmの波長に対し高感度な新規な光開始系を用いた感光性組成物を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、前記短波半導体レーザの発振波長に対し高感度な感光性組成物に用いうる新規な色素化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する増感色素と開始剤化合物とからなる新規な光開始系が高い感光性を与え、特に350nmから450nm付近において高感度であることを見いだし、本発明を完成した。すなわち、本発明の目的は、下記の手段によって達成された。
【0010】
(1)(A)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る増感色素、
(B)ラジカル、酸あるいは塩基を生成しうる開始剤化合物、及び、
(C)ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種によって物理的あるいは化学的特性が不可逆的に変化する化合物、
を含有する感光性組成物。
【0011】
(2)上記(1)における増感色素が下記一般式(I)または一般式(II)で表わされることを特徴とする、(1)記載の感光性組成物
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
式(I)中、R1およびR2は、独立に、置換あるいは無置換の、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表わす。R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子または1価の置換基を表わす。L1、L2およびL3は、独立に、置換基を有していても良いメチン基を表わす。mは0以上の整数を表わす。A1は、置換あるいは無置換の、芳香族基またはヘテロ環基を表わす。
式(II)中、R21およびR22は、独立に、置換あるいは無置換の、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表わす。R23、R24、R25及びR26は、各々独立に、水素原子または1価の置換基を表わす。L21およびL22は、独立に、置換基を有していても良いメチン基を表わす。nは0以上の整数を表わす。A21は、置換あるいは無置換の、芳香族基またはヘテロ環基を表わす。
但し、一般式(I)および一般式(II)は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る構造を有する。
【0015】
(3)一般式(I)および一般式(II)において、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る構造が下記一般式(III)で表わされることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の感光性組成物。
【0016】
【化3】

【0017】
RaおよびRbは、独立に、水素原子、または、置換あるいは無置換の、アルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表わす。Xは酸化に伴いC−X結合が開裂してCラジカルおよび脱離フラグメントXを生じることができる置換基を表わす。
【0018】
(4) 一般式(I)または一般式(II)で表わされる化合物。
【0019】
(5) 開始剤化合物がヘキサアリールビスイミダゾール類であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0020】
(6) ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種によって物理的あるいは化学的特性が不可逆的に変化する化合物が、エチレン性不飽和二重結合を有する不可重合性化合物である上記(1)〜(3)または(5)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0021】
(7) 上記(1)、(2)、(3)、(5)または(6)に記載の感光性組成物を450nm以下の波長を有するレーザー光で露光することを特徴とする光重合方法。
【0022】
本発明の作用機構は明確ではないが、本発明の増感色素は、350nmから450nmの波長に対し高感度であり、安価な短波半導体レーザの発振波長の照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、この光吸収による電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱などが、併存する開始剤化合物に作用して開始剤化合物に化学変化を生起させてラジカル、酸或いは塩基を生成させる。さらに、ここで生成されたラジカル、酸または塩基のうちの少なくともいずれか1種によって、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種によって物理的或いは化学的特性が不可逆的に変化する化合物に発色、消色、重合などの不可逆的な変化を生じさせる。このような化合物のなかでも好ましい、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物を用いることで、硬化反応が開始、進行し、露光領域を硬化させる。このため、本発明の感光性組成物を使用することで、短波半導体レーザによる走査露光に十分な感度を有し、また、紫外線領域には極大吸収を有しないことから、白灯下での安定性に優れ、明るい蛍光灯などの下でも取り扱い可能であるという利点を有する。従って、この感光性組成物において、付加重合性化合物を含有するものを感光層として用いた平版印刷版原版は、高感度で記録可能であり、セーフライト安定性に優れ、所望されない非画像部の汚れの発生が抑制されており、優れた印刷性能を示すものと考えられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の感光性組成物は、InGaNのような短波長の半導体レーザによる走査露光に適した十分な感度を有し、かつ、耐刷性・汚れ性・安定性に優れた平版印刷版原版の感光層として有用である。また、本発明の増感色素は、前記感光性組成物に用いられる光開始系に応用することで、前記短波半導体レーザの発振波長に対し高感度でラジカル、酸、塩基を発生しうるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感光性組成物は、(A)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る増感色素と、(B)ラジカル、酸或いは塩基を生成しうる開始剤化合物と、(C)ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種によって物理的或いは化学的特性が不可逆的に変化する化合物と、を含有するが、これらのうち、(A)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る増感色素と、(B)ラジカル、酸或いは塩基を生成しうる開始剤化合物とで、この感光性組成物の光開始系を構成する。この系においては、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る増感色素の光吸収により生じる電子励起状態による、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用により開始剤化合物が化学変化を起こし、ラジカル、酸或いは塩基を生成する。
【0025】
まず、この光開始系について説明する。
本発明の光開始系に有用な、(A)特定構造を有する増感色素の特徴の1つは、350nmから450nm域に特に優れた吸収特性を有することにある。さらに(A)本発明の1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る増感色素は、種々の(B)開始剤化合物の分解を効率良く引き起こし、非常に高い感光性を示す。一般に、増感色素/開始剤化合物からなる光開始系の増感機構は(a)増感色素の
電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(b)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(c)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解、といった経路が知られるが、本発明の増感色素は、これら何れのタイプの増感反応をも優れた効率で引き起こすことがわかった。
【0026】
本発明者は、高感度を得るためには増感色素が1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る構造を有していることが非常に重要であることを見いだしたが、その作用機構は明らかではない。本発明の増感色素は高強度の発光(ケイ光および/またはリン光)スペクトルを示す。このことから、一つの可能性として、上記部分構造を有する本発明の増感色素は励起状態の寿命が比較的長いため、開始剤化合物との反応の効率化に作用していることが考えられる。その他の可能性として、増感色素の部分構造が、増感反応初期過程(電子移動等)の効率化や、さらに、開始剤化合物分解にいたる後続反応の効率化に寄与している可能性もある。
【0027】
本発明の増感色素は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物であることが特徴である。これらの化合物として好ましくは、次のタイプ1、タイプ2から選ばれる化合物である。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0028】
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、特開平11−102044号、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0029】
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開2003-114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開2003-114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開2003-114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開2003-114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開2003-114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開2003-75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開2003-75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特開2004-239943号に記載の一般式(1)と同義)、または化学反応式(1)(特開2004-245929号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特開2004-245929号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれら
の化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0030】
【化4】

【0031】
一般式(1)及び(2)中、RED1、RED2は還元性基を表す。R1は炭素原子(C)とRED1とともに5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、もしくはヘキサヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。R2、R3、R4は水素原子または置換基を表す。Lv1、Lv2は脱離基を表す。EDは電子供与性基を表す。
【0032】
【化5】

【0033】
一般式(3)、(4)及び(5)中、Z1は窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。R5、R6、R7、R9、R10、R11、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は水素原子または置換基を表す。R20は水素原子または置換基を表すが、R20がアリール基以外の基を表すとき、R16、R17は互いに結合して芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成する。R8、R12はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、m2は0〜4の整数を表す。Lv3、Lv4、Lv5は脱離基を表す。
【0034】
【化6】

【0035】
一般式(6)および(7)中、RED3、RED4は還元性基を表す。R21〜R30は水素原子または置換基を表す。Z2は−C(R111)(R112)−、−NR113−、または−O−を表す。 R111、R112はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。R113は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
【0036】
【化7】

【0037】
一般式(8)中、RED5は還元性基でありアリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基を表す。R31は水素原子または置換基を表す。Xはアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。Lv6は脱離基でありカルボキシ基もしくはその塩または水素原子を表す。
【0038】
【化8】

【0039】
一般式(9)で表される化合物は脱炭酸を伴う2電子酸化が起こった後に、さらに酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(9)中、R32、R33、Z3は化学反応式(1)中のものと同義である。Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。
【0040】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開2003-140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特開2004-245929号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特開2004-245929号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0041】
【化9】

【0042】
一般式(10)中、RED6は1電子酸化される還元性基をあらわす。YはRED6が1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。QはRED6とYを連結する連結基を表す。
【0043】
【化10】

【0044】
一般式(11)で表される化合物は酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(11)中、R32、 R33、Z3、Z4は化学反応式(1)中のものと同義である。
【0045】
本発明において用いることができる色素はいかなるものでも良いが、好ましくは以下に挙げた色素である。
例えば、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げられる。
【0046】
これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F. M. Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊)、デー・エム・スターマー(D. M. Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」第18章、第14節、第482から515頁(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊)、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds) 2nd. Ed. vol. IV, part B」第15章、第369から422頁(エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社、ニューヨーク、1977刊)、などに記載されている。
【0047】
本発明の増感色素は、一般式(I)および一般式(II)で表わされることが好ましい。続いて、本発明の一般式(I)および一般式(II)で表わされる化合物について詳細に説明する。
一般式(I)において、R1およびR2は置換あるいは無置換のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表わす。アルキル基の例として、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。アリール基の例として、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。ヘテロ環基の例として、ピリジル基、モルホリノ基が挙げられる。
【0048】
これらは任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては1価の置換基(以下Rと表わす)が挙げられる。1価の置換基Rの例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
更に詳しくは、Rは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5も
しくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の
置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
また、置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0049】
1およびR2は互いに結合して環を形成しても良い。形成する環としてはR1、R2および窒素原子と一緒になって5、6または7員環を形成する場合が好ましい。形成した環はさらに置換基を有していても良い。置換基としては上記の1価の置換基Rが挙げられる。
【0050】
1およびR2として好ましくは、アルキル基、アリール基である。より好ましくはアルキル基である。
【0051】
3、R4、R5およびR6は水素原子または1価の置換基を表わす。1価の置換基としては上記の1価の置換基Rが挙げられる。
【0052】
3、R4、R5およびR6として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。より好ましくは水素原子、アルキル基である。さらに好ましくは水素原子である。
【0053】
3とR4、R5とR6は互いに結合して環を形成しても良い。形成する環としては、R3、R4およびそれらが結合している2個の炭素原子と一緒になって5、6または7員環を形成する場合が好ましい。R5とR6で環を形成する場合も同様である。形成した環はさらに置換基を有していても良い。置換基としては上記の1価の置換基Rが挙げられる。
【0054】
一般式(I)において、R1とR3が互いに結合して環を形成しても良い。形成する環としては、R1、R3およびそれらが結合している窒素原子と2個の炭素原子と一緒になって5、6または7員環を形成する場合が好ましい。R2とR5で環を形成する場合も同様である。
形成した環はさらに置換基を有していても良い。置換基としては上記の1価の置換基Rが挙げられる。
【0055】
1、L2、L3は置換基を有していても良いメチン基を表わす。L1、L2、L3上の置換基としては、上述の1価の置換基Rが挙げられる。L1、L2、L3上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。好ましくはアルキル基である。L1、L2、L3として好ましくは無置換のメチン基である。
異なるL上の置換基同士が結合して環を形成してもよい。また、L1、L2またはL3上の置換基とR4またはR6が結合して環を形成してもよい。さらに、L1、L2またはL3上の置換基とA1が結合して環を形成してもよい。
【0056】
mは0以上の整数を表わす。好ましくは0である。
mが2以上の整数の場合に、繰り返されるL2とL3は同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0057】
1は置換あるいは無置換の芳香族基またはヘテロ環基を表わす。芳香族基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基などが挙げられる。
これらはさらに任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては上述の1価の置換基Rが挙げられる。
【0058】
ヘテロ環基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環または多環ヘテロ環から誘導される基である。ヘテロ環基を構成するヘテロ環の例として、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリン、ジヒドロフラン、ジヒドロチオフェン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、チアゾリジン、イミダゾリン、オキサゾリン、チアゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾリジン、イソチアゾリジン、ピラゾリン、イソオキサゾリン、イソチアゾリン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、モルホリン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジンなどが挙げられる。
【0059】
これらは任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては上述の1価の置換基Rおよび2価の置換基が挙げられる。2価の置換基の例として=O、=NR、=S、=CR2が挙げられる(ここでRは1価の置換基を表わし、上述の1価の置換基が例として挙げられる)。
これらはさらに環上の置換基同士で結合して、縮合ヘテロ環を形成してもよい。縮合ヘテロ環の例としては、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、などが挙げられる。これらの縮合環上にさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述の1価の置換基Rおよび2価の置換基の例が挙げられる。
【0060】
但し、一般式(I)および一般式(II)において、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る構造が下記一般式(III)で表わされることが好ましい。
一般式(III)において、RaおよびRbは水素原子または置換あるいは無置換のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表わす。置換あるいは無置換のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基の例としては、上述の置換基の例が挙げられる。
【0061】
RaおよびRbは互いに結合して環を形成しても良い。形成する環としてはRa、Rbおよび炭素原子と一緒になって5、6または7員環を形成する場合が好ましい。形成した環はさらに置換基を有していても良い。置換基としては上記の1価の置換基Rが挙げられる。
RaおよびRbとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。より好ましくは水素原子またはアルキル基である。
【0062】
Xは酸化に伴いC−X結合が開裂してCラジカルおよび脱離フラグメントXを生じることができる置換基を表わす。Xの例としては、CO2-M、SiR’3、SnR’3、GeR’3、B-Ar3Mが挙げられる。ここでR’は置換あるいは無置換のアルキル基を表わし、Arは置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Mは分子全体の電荷を調整するために必要なカチオンを表わす。
R’として好ましくはメチル基、エチル基である。特に好ましくはメチル基である。
Arとして好ましくはフェニル基、ナフチル基である。特に好ましくはフェニル基である。
【0063】
Mとして好ましくは、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム
イオン(N+R”4)である。特に好ましくはアンモニウムイオンである。ここでR”は水素原子または1価の置換基を表わす。1価の置換基としては上記の1価の置換基Rが挙げられる。窒素原子と結合している4個のR”はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。R”として好ましくは置換あるいは無置換のアルキル基である。R”は互いに結合して環を形成してもよい。環を形成したN+R”4の例としては、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ジアザビシクロウンデセニウムイオン(DBU-H+)などが挙げられる。
+R”4として好ましくは、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ジアザビシクロウンデセニウムイオンである。特に好ましくはテトラエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオンである。
Xとして好ましくはCO2-+Et4、CO2-+HEt3、SiMe3である。
【0064】
続いて一般式(II)について説明する。
21およびR22は置換あるいは無置換のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表わす。R21およびR22の例としては、一般式(I)におけるR1およびR2と同じである。好ましい例も同じである。
23、R24、R25、R26は水素原子または1価の置換基を表わす。R23、R24、R25、R26の例としては、一般式(I)におけるR3、R4、R5、R6と同じである。好ましい例も同じである。
【0065】
21およびL22は置換基を有していても良いメチン基を表わす。L21およびL22の上の置換基例としては、一般式(I)における。L1、L2およびL3の場合と同じである。好ましい例も同じである。また、L21とL22上の置換基同士が結合して環を形成してもよい。また、L21またはL22上の置換基とR24またはR26が結合して環を形成してもよい。さらに、L21またはL22上の置換基とA21が結合して環を形成してもよい。
【0066】
nは0以上の整数を表わす。好ましくは0および1である。特に好ましくは1である。
【0067】
21は5また6員環のヘテロ環基を表わす。A21の例としては、一般式(I)におけるA1の場合と同じである。好ましい例も同じである。
【0068】
一般式(I)においてL1とA1の結合およびmが1以上のときのL2=L3結合、および一般式(II)においてnが1以上のときのL21=L22結合は、二重結合であるため幾何異性体が存在するが、E体およびZ体のいずれの構造であってもよいし、任意の割合の混合物であってもよい。
【0069】
一般式(I)または(II)で表わされる化合物は、その置かれた環境によって互変異性体を取り得る。本発明においては代表的な形の一つで記述しているが、本発明の記述と異なる互変異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0070】
本発明の化合物は、同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0071】
本発明の増感色素の例としては、特開平11−102044号に記載の化合物例INV 1〜INV 4や、以下に示す一般式(I)および一般式(II)で表わされる化合物の例などが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0072】
【化11】

【0073】
【化12】

【0074】
【化13】

【0075】
【化14】

【0076】
【化15】

【0077】
【化16】

【0078】
【化17】

【0079】
【化18】

【0080】
【化19】

【0081】
本発明の増感色素は、以下の成書や特許、文献に記載の方法を参考にして合成すること
ができる。ケー・ベンカタラマン(K. Venkataraman)編「ザ・ケミストリー・オブ・シンセティック・ダイズ(The Chemistry of Synthetic Dyes)」第1巻〜第8巻(アカデミック・プレス(Academic Press)社−ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、1952年〜1978年刊)。エフ・エム・ハーマー(F. M. Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊)。デー・エム・スターマー(D. M. Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley
& Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊)。「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds) 2nd. Ed. vol. IV, part B」(エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社、ニューヨーク、1977刊)。大河原信他著“機能性色素”(講談社サイエンティフィク、1992年刊)。日本化学会編「実験化学講座第4版 第19巻」(丸善、1992年刊)。特開2003−221517号、特開平10−204085号、特開平6−192309号、特公昭59−28329号、特公昭51−7488号、米国特許第4147552号、英国特許867592号、J. Chem. Soc. 1964, 5472、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1975, 568、Pharmazie 1997, 52, 739、Helv. Chim. Acta. 1971, 54, 980、Indian J. Chem. 1965, 358、J. Phys. Chem. A 1999,
103, 9626、J. Heterocycl. Chem. 1986, 23, 1347、J. Drug. Res. 1972, 4, 123、Chem. Pharm. Bull. 1973, 21, 1914、Synthesis 1997, 87、J. Am. Chem. Soc. 1941, 63, 3203、Zhur. Obshchei. Khim. 1956, 26, 2891。
【0082】
前記本発明に用いられる増感色素に関しては、さらに、感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの色素の不要な析出抑制を行うことができる。
また、増感色素と後述する開始剤化合物におけるラジカル発生能を有する部分構造(例えば、ハロゲン化アルキル、オニウム、過酸化物、ビイミダゾール、オニウム、ビイミダゾール等の還元分解性部位や、ボレート、アミン、トリメチルシリルメチル、カルボキシメチル、カルボニル、イミン等の酸化解裂性部位)との結合により、特に開始系の濃度の低い状態での感光性を著しく高めることができる。
【0083】
さらに、本発明の感光性組成物を好ましい使用様態である平版印刷版原版の感光層として用いる場合には、アルカリ系、或いは、水系の現像液への処理適性を高める目的に対しては、親水性部位(カルボキシル基並びにそのエステル、スルホン酸基並びにそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基もしくは極性基)の導入が有効である。特にエステル型の親水性基は、感光層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、かつ、現像液中では、加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。
その他、例えば、感光層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために適宜置換基を導入することができる。例えば、ある種の感光系では、アリール基やアリル基等の不飽和結合が相溶性向上に非常に有効である場合があり、また、分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入することで、結晶析出が著しく抑制できる。また、ホスホン酸基やエポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、金属や金属酸化物等の無機物への密着性を向上させることができる。そのほか、目的に応じ、増感色素のポリマー化等の方法も利用できる。
【0084】
本発明に用いる増感色素としては、本発明の特徴である増感色素を少なくとも一種用い
ればよく、本発明の増感色素の特徴を有する限りにおいて、例えば、先に述べた修飾を施したものなど、どのような構造の色素を用いるか、単独で使用するか2種以上併用するか、添加量はどうか、といった使用法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて適宜設定できる。例えば、増感色素を2種以上併用することで、感光層への相溶性を高めることができる。
増感色素の選択は、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用することにより、色素の添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ感光層の膜物性の点からも有利である。
なお、本発明においては、前記(A)の特定の増感色素に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて他の汎用の増感色素を併用することもできる。
【0085】
感光層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。例えば、吸光度が0.1以下の低い領域では感度が低下する。また、ハレーションの影響により低解像度となる。但し、例えば5μm以上の厚い膜を硬化させる目的に対しては、このような低い吸光度の方がかえって硬化度を上げられる場合もある。また、吸光度が3以上のような高い領域では、感光層表面で大部分の光が吸収され、より内部での硬化が阻害され、例えば印刷版として使用した場合には膜強度、基板密着性の不十分なものとなる。
例えば、本発明の感光性組成物を比較的薄い膜厚で使用する平版印刷版原版の感光層に使用する場合には、増感色素の添加量は、感光層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。吸光度は前記増感色素の添加量と感光層の厚みとにより決定されるため、所定の吸光度は両者の条件を制御することにより得られる。感光層の吸光度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの感光層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に記録層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の感光層として利用する場合には、増感色素の添加量は、通常、感光層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0086】
次に、本発明の感光性組成物における光開始系の第2の必須成分である、(B)開始剤化合物について説明する。
(B)開始剤化合物
本発明における開始剤化合物は増感色素の電子励起状態に起因する電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用をうけて、化学変化を生じ、ラジカル、酸、及び塩基からなる群より選択される少なくとも1種を生成する化合物である。
以下、このようにして生じたラジカル、酸、塩基を単に活性種と呼ぶ。これらの化合物が存在しない場合や、開始剤化合物のみを単独で用いた場合には、実用上十分な感度が得られないが、前記、増感色素と、活性化合物を併用する一つの態様として、これらを、適切な化学的方法(増感色素と、開始剤化合物との化学結合による連結等)によって単一の化合物として利用することも可能である。
【0087】
通常これらの、開始剤化合物の多くは、次の(1)から(3)に代表される初期化学プロセスをへて、活性種を生成するものと考えられる。即ち、(1)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(2)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(3)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解、である。個々の開始剤化合物が(1)から(3)のど
のタイプに属するかに関しては、曖昧な場合も多いが、本発明における、増感色素の大きな特徴は、これら何れのタイプの開始剤化合物と組み合わせても非常に高い増感効果を示すことにある。
【0088】
本発明における開始剤化合物としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、 Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).やR. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A: Chemistry, 73. 81 (1993). J. P.
Faussier " Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications" :Rapra Review
vol. 9, Report, Rapra Technology (1998年). M. Tsunooka et al., Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996).などの文献に記載されている多数の化合物を使用することができる。また、前記(1)、(2)の機能を有する他の化合物群としては、さらに、F. D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990). G. G. Maslak, Topicsin Current Chemistry, 168, 1 (1993年). H. B. Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990). I. D. F. Eaton et al., JACS, 102, 3298 (1980).等に記載されているような、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群もまた、開始剤化合物として使用できる。
【0089】
以下、好ましい開始剤化合物の具体例に関し、(a)還元されて結合解裂を起こし活性種を生成するもの、(b)酸化されて結合解裂を起こし活性種を生成しうるもの、(c)その他のものに分類して説明するが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては通説がない場合も多く、本発明はこれらの反応機構に関する記述に制限を受けるものではない。
【0090】
(a)還元されて結合解裂を起こし活性種を生成するもの。
炭素−ハロゲン結合結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性種を発生すると考えられる(例えば、Polymer Preprints, Jpn., 41 (3) 542 (1992).に記載れている)。活性種としては、ラジカル、酸を発生しうる。具体的には、例えば、ハロメチル−s−トリアジン類の他、M. P. Hutt, E. F. ElslagerおよびL. M. Merbel著Journal of Heterocyclic chemistry, 7, 511 (1970).に記載される合成方法により当業者が容易に合成しうるハロメチルオキサジアゾール類、また、ドイツ特許2641100号,同3333450号,同3021590号、同3021599号に記載される化合物等が好適に使用できる。
【0091】
窒素−窒素結合もしくは、含窒素ヘテロ環−含窒素ヘテロ環結合を有する化合物:還元的に結合解裂を起こす(例えば、J. Pys. Chem., 96, 207 (1992).に記載されている)。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。生成する活性種はロフィンラジカルであり、必要に応じ水素供与体との併用で、ラジカル連鎖反応を開始するほか、ロフィンラジカルによる酸化反応を用いた画像形成も知られる(J. Imaging Sci.,
30, 215 (1986).に記載される)。
【0092】
酸素−酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる(例えば、Polym. Adv. Technol., 1, 287 (1990).に記載されている)。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。活性種としてラジカルを発生しうる。
【0093】
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性種を発生すると考えられる(例えば、J. Photopolym. Sci. Technol., 3, 149 (1990).に記載されている)。具体的には例えば、欧州特許104143号,米国特許4837124号,特開平2−150848号,特開平2−96514号に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号,同233567号,同297443号,同297442号,同279210号,同422570号,米国特許3902144号,同4933377号,同
4760013号,同4734444号,同2833827号に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許第4,743,528号、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特公昭46−42363号等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号,同52−14279号記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0094】
活性エステル類:スルホン酸やカルボン酸のニトロベンジルエステル類、スルホン酸やカルボン酸とN-ヒドロキシ化合物(N−ヒドロキシフタルイミドやオキシム等)とのエステル類、ピロガロールのスルホン酸エステル類、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル類等は還元的に分解しうる。活性種としては、ラジカル、酸、を発生しうる。具体的な、スルホン酸エステル類の例としては、欧州特許0290750号、同046083号,同156153号,同271851号、同0388343号,米国特許3901710号,同4181531号,特開昭60−198538号,特開昭53−133022号に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672,同84515号,同199672,同044115号,同0101122号,米国特許4618564,同4371605号,同4431774号、特開昭64−18143号,特開平2−245756号,特開平4−365048号記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号,特開昭59−174831号に記載される化合物等が挙げられ、さらに、例えば下記に示すような化合物が挙げられる。
【0095】
【化20】

【0096】
(式中、Arは置換されてもよい芳香族基、脂肪族基を表す。)
【0097】
また、活性種として塩基を生成することも可能であり、例えば下記のような化合物群が知られる。
フェロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的には例えば、特開平1−304453号、特開平1−152109号に開示されている。
【0098】
【化21】

【0099】
(式中、Rは置換されてもよい脂肪族基、芳香族基を表す。)
ジスルホン類:還元的にS−S結合解裂を起こし酸を発生しうる。例えば特開昭61−166544に記載されるようなジフェニルジスルホン類が知られる。
【0100】
(b)酸化されて結合解裂を起こし活性種を生成するもの。
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる(例えば、J. Am. Chem. Soc., 112, 6329 (1990).に記載される)。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
【0101】
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる(例えば、J. Am. Chem. Soc., 116, 4211 (1994).に記載される)。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等が挙げられる。
【0102】
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0103】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類を挙げることができる。
【0104】
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0105】
(c)増感機構は明確ではないが、開始剤化合物として機能しうる化合物
その他増感機構は明確ではないが、開始剤化合物として機能しうるものも多く、これらもまた、本発明において開始剤化合物として用いうる。例えば、チタノセン化合物、フェロセン化合物等の有機金属化合物や芳香族ケトン、アシルフォスフィン、ビスアシルフォスフィン類等が挙げられ、活性種として、ラジカルあるいは酸を発生しうる。
【0106】
以下、本発明に使用される開始剤化合物のうち、感度や安定性に特に優れる好ましい化
合物群を具体的に例示する。
(1)ハロメチルトリアジン類
ハロメチルトリアジン類としては、下記式[II]で表される化合物が挙げられる。特にラジカル発生、酸発生能に優れる。
【0107】
【化22】

【0108】
前記式[II]中、Xはハロゲン原子を表す。Y1は−CX3、−NH2、−NHR1’、−NR12、−OR1’を表す。ここでR1’はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。またR1は−CX3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表す。
このような化合物の具体例としては、例えば、若林ら著、Bull. Chem. Soc. Japan, 42,2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2' ,4' −ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許第1388492 号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許第3337024 号明細書記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0109】
【化23】

【0110】
【化24】

【0111】
また、F. C. Schaefer等による J. Org. Chem.,29,1527(1964)記載の化合物、例えば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。
さらに特開昭62−58241号記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0112】
【化25】

【0113】
【化26】

【0114】
さらに特開平5−281728号記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0115】
【化27】

【0116】
(3)ボレート塩化合物
下記式[III]で表されるボレート塩類はラジカル発生能に優れる。
【0117】
【化28】

【0118】
前記式[III]中、R51、R52、R53およびR54は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、または置換もしくは無置換の複素環基を示し、R51、R52、R53およびR54はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R51、R52、R53およびR54のうち、少なくとも1つは置換または無置換のアルキル基である。Z+はアルカリ金属カチオンまたは第4級アンモニウムカチオンを示す。
【0119】
上記R51〜R54のアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくはフェニル基)、ヒドロキシ基、下記の基、
【0120】
【化29】

【0121】
(ここでR55、R56は独立して水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、またはアリール基を示す。)、−COOR57(ここでR57は水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、またはアリール基を示す。)、−COOR58または−OR59(ここでR58は炭素数1〜14のアルキル基、またはアリール基を示す。)を置換基として有するものが含まれる。
【0122】
上記R51〜R54のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの1〜3環のアリール基が含まれ、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に前述の置換アルキル基の置換基、または炭素数1〜14のアルキル基を有するものが含まれる。
【0123】
上記R51〜R54のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖、分枝、環状のものが含まれ、置換アルケニル基の置換基としては、前記の置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。
【0124】
上記R51〜R54のアルキニル基としては、炭素数2〜28の直鎖または分枝のものが含まれ、置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。
【0125】
また、上記R51〜R54の複素環基としてはN、SおよびOの少なくとも1つを含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられ、この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。さらに置換基として前述の置換アリール基の置換基として挙げたものを有していてもよい。
【0126】
式[III]で示される化合物例としては具体的には米国特許第3567453号、同4343891号、ヨーロッパ特許第109772号、同109773号に記載されている化合物および以下に示すものが挙げられる。
【0127】
【化30】

【0128】
(4)ヘキサアリールビイミダゾール類
安定性に優れ、高感度なラジカル発生が可能である。具体的には、2,2' −ビス(o−クロロフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラフェニルビイミダゾール、2,2' −ビス(o−ブロモフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラフェニルビイミダゾール、2,2' −ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラフェニルビイミダゾール、2,2' −ビス(o−クロロフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2' −ビス(o,o' −ジクロロフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラフェニルビイミダゾール、2,2' −ビス(o−ニトロフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラフェニルビイミダゾール、2,2' −ビス(o−メチルフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラフェニルビイミダゾール、2,2' −ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4' ,5,5' −テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0129】
(5)オニウム塩化合物
周期律表の15(5B)、16(6B)、17(7B)族元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Iのオニウム化合物は感度にすぐれた開始剤化合物である、特にヨードニウム塩やスルホニウム塩、とりわけ、ジアリールヨードニウム、
トリアリールスルホニウム塩化合物は感度と保存安定性の両方の観点で極めて優れている。酸、および/またはラジカルの発生が可能であり、これらは目的に応じて、使用条件を適宜選択することで使い分けることができる。具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0130】
【化31】

【0131】
【化32】

【0132】
【化33】

【0133】
【化34】

【0134】
(6)有機過酸化物
有機過酸化物型の開始剤化合物を用いる場合、活性種としてラジカルの発生を非常に高感度で行うことができる。
本発明に使用される開始剤化合物(化合物(B))の他の例である(6)「有機過酸化物」としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシオクタノエート、t−ブチル
パーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチル過酸化マレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、3,3' ,4,4' −テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0135】
これらの中で、3,3' ,4,4' −テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' ,4,4' −テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0136】
(7)チタノセン化合物
開始剤化合物に好適なチタノセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号等の各公報に記載のチタノセン化合物を挙げることができる。
【0137】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン、
【0138】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチルアセチルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−メチルアセチルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチルプロピオニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチル−(2,2−ジメチルブタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(2,2−ジメチルブタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ペン
チル−(2,2−ジメチルブタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル)−(2,2−ジメチルブタノイル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−メチルブチリルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−メチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0139】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチルシクロヘキシルカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチルイソブチリルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチルアセチルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2,2,5,5−テトラメチル−1,2,5−アザジシロリジニ−1−イル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(オクチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−トリルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−ドデシルフェニルスルホニルアミド)フェニル〕チタン、
【0140】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−(1−ペンチルヘプチル)フェニルスルホニルアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(エチルスルホニルアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−((4−ブロモフェニル)−スルホニルアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−ナフチルスルホニルアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(ヘキサデシルスルホニルアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−メチル−(4−ドデシルフェニル)スルホニルアミド)フェニル〕チタン、
【0141】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−メチル−4−(1−ペンチルヘプチル)フェニル)スルホニルアミド)〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−(4−トリル)−スルホニルアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(ピロリジン−2,5−ジオニ−1−イル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3,4−ジメチル−3−ピロリジン−2,5−ジオニ−1−イル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(フタルイミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−イソブトキシカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(エトキシカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−((2−クロロエトキシ)−カルボニルアミノ)フェニル〕チタン、
【0142】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(フェノキシカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3−フェニルチオウレイド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3−ブチルチオウレイド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3−フェニルウレイド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3−ブチルウレイド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N,N−ジアセチルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3,3−ジメチルウレイド)フェニル〕チタン、
【0143】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(アセチルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(ブチリルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(デカノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(オクタデカノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(イソブチリルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−エチルヘキサノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−メチルブタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(ピバロイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0144】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2,2−ジメチルブタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−エチル−2−メチルヘプタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(シクロヘキシルカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3−フェニルプロパノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−クロロメチル−2−メチル−3−クロロプロパノイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0145】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3,4−キシロイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−エチルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2,4,6−メシチルカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−フェニルプロピル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−エチルヘプチル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ〕フェニルチタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソブチル−(4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソブチルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0146】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルメチルピバロイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(オクソラニ−2−イルメチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−エチルヘプチル)−2,2−ジメチルブタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−フェニルプロピル−(4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(オクソラニ−2−イルメチル)−(4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(4−トルイルメチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0147】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(4−トルイルメチル)−(4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−トルイ
ル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−(4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2,4−ジメチルペンチル)−2,2−ジメチルブタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2,4−ジメチルペンチル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0148】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−((4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2,2−ジメチル−3−エトキシプロパノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2,2−ジメチル−3−アリルオキシプロパノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−アリルアセチルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−エチルブタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルメチルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0149】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルメチル−(4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソプロピルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−フェニルプロピル)−2,2−ジメチルペンタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルメチル−2,2−ジメチルペンタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0150】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)−2,2−ジメチルペンタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソプロピル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−フェニルプロピル)ピバロイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−メトキシエチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、
【0151】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−(4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−メトキシエチル)−(4−トルイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(4−メチルフェニルメチル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−メトキシエチル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタ
ン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルメチル−(2−エチル−2−メチルヘプタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、
【0152】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−(2−エチル−2−メチルブタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシル−2,2−ジメチルペンタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(オクソラニ−2−イルメチル)−2,2−ジメチルペンタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシル−(2−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3,3−ジメチル−2−アゼチジノニ−1−イル)フェニル〕チタン、
【0153】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−イソシアナトフェニル)チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチル−(4−トリルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−(4−トリルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−トリルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソブチル−(4−トリルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイル)アミノ)フェニル〕チタン、
【0154】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−フェニルプロパノイル)−2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルメチル−(2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソブチル−(2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(2−クロロメチル−2−メチル−3−クロロプロパノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(ブチルチオカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(フェニルチオカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、
【0155】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−イソシアナトフェニル)チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチル−(4−トリルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−(4−トリルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−トリルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソブチル−(4−トリルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−フェニルプロパノイル)−2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイル)アミノ)フェニル〕チ
タン、
【0156】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルメチル−(2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソブチル−(2,2−ジメチル−3−クロロプロパノイル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(2−クロロメチル−2−メチル−3−クロロプロパノイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(ブチルチオカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(フェニルチオカルボニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−2,2−ジメチルブタノイル)アミノ)フェニル〕チタン、
【0157】
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチルアセチルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチルプロピオニルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(トリメチルシリルペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−2,2−ジメチルプロパノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−メトキシエチル)−トリメチルシリルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルヘキシルジメチルシリルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−エチル−(1,1,2,−トリメチルプロピル)ジメチルシリルアミノ)フェニル〕チタン、
【0158】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3−エトキシメチル−3−メチル−2−アゼチオジノニ−1−イル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3−アリルオキシメチル−3−メチル−2−アゼチジノニ−1−イル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(3−クロロメチル−3−メチル−2−アゼチジノニ−1−イル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−2,2−ジメチルプロパノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(5,5−ジメチル−2−ピロリジノニ−1−イル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(6,6−ジフェニル−2−ピペリジノニ−1−イル)フェニル〕チタン、
【0159】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2,3−ジヒドロ−1,2−ベンジソチアゾロ−3−オン(1,1−ジオキシド)−2−イル)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ヘキシル−(2−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−イソプロピル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(4−メチルフェニルメチル)−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(4−メチルフェニルメチル)−(2−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、
【0160】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−ク
ロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)−4−トリル−スルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−オキサヘプチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロアセチルアミノ)フェニル〕チタン、
【0161】
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−クロロベンゾイル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−クロロベンゾイル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,7−ジメチル−7−メトキシオクチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0162】
好ましい開始剤化合物としては、ハロメチルトリアジン類、ヘキサアリールビイミダゾール類、チタノセン化合物が挙げられ、特に好ましくはヘキサアリールビイミダゾール類が挙げられる。
【0163】
以上述べた開始剤化合物に関しても、先の増感色素と同様、さらに、感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素や、付加重合性不飽和化合物その他の開始剤化合物パートとの結合、親水性部位の導入、相溶性向上、結晶析出抑制のための置換基導入、密着性を向上させる置換基導入、ポリマー化等の方法が利用できる。
【0164】
これらの開始剤化合物の使用法に関しても、先述の増感色素同様、感材の性能設計により適宜、任意に設定できる。例えば、2種以上併用することで、感光層への相溶性を高めることができる。
開始剤化合物の使用量は通常多い方が感光性の点で有利であり、感光層成分100質量部に対し、0.5〜80質量部、好ましくは1〜50質量部の範囲で用いることで十分な感光性が得られる。
【0165】
本発明の感光性組成物における第3の必須成分「(C) 開始剤化合物より生成したラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種によって物理的或いは化学的特性が不可逆的に変化する化合物」は上述の光開始系の光反応により生じた、活性種の作用により、その物理的もしくは化学的特性が不可逆的に変化して、硬化反応、発色、消色反応などが生じる化合物であり、このような性質を有するものであれば特に制限なく任意のものを使用でき、例えば、上述の開始系に挙げた化合物自身がそのような性質を有する場合も多い。
光開始系から生成したラジカル、酸、および/または塩基により、変化する(C)化合物の特性としては、例えば、吸収スペクトル(色)、化学構造、分極率等の分子的な物性や、溶解性、強度、屈折率、流動性、粘着性、等の材料的な物性の変化を含む。
【0166】
例えば、成分(C)重合性化合物として、pH指示薬のように、pHによって吸収スペクトルの変化する化合物を用い、開始系から酸または塩基を発生させれば、露光部のみ色
調を変化させることができ、このような組成物は画像形成材料として有用である。同様に、(C)として、酸化・還元や求核付加反応により吸収スペクトルが変化する化合物を用いた場合、開始系から生成するラジカルによる酸化、還元等を引き起こし画像形成が可能である。そのような例は、例えば、J. Am. Chem. Soc., 108, 128 (1986年)、J. Imaging. Soc., 30, 215(1986年)、Israel. J. Chem., 25, 264 (1986年)に開示されている。
【0167】
なかでも、(C)化合物として、(C−1)ラジカル、酸、および/または塩基により反応する重合性化合物(以下、適宜、重合性化合物と称する)、具体的には、付加重合または、重縮合可能な化合物を用い、開始系と組み合わせることにより、光硬化性樹脂、あるいはネガ型フォトポリマーを形成可能である。また、このような組成物は平版印刷版原版のネガ型感光層としても有用である。
【0168】
このような(C)成分としては、ラジカル重合性化合物(エチレン性不飽和結合を有する化合物等)やカチオン重合性化合物(エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、メチロール化合物等)、アニオン重合性化合物(エポキシ化合物等)が用いられ、そのような例は、例えば、フォトポリマー懇話会編、フォトポリマーハンドブック、工業調査会刊(1989)や、高分子、第45巻,786(1996)等に記載される。また、(C)としてチオール化合物を用い、光ラジカル発生系と組み合わせた組成物も良く知られる。
【0169】
(C)として酸分解性の化合物を用い、光酸発生剤と組み合わせることも有用である。例えば、側鎖や、主鎖が酸で分解する高分子を用い、光により溶解性や親疎水性等を変化させる材料は光分解型感光性樹脂、ポジ型フォトポリマーとして広く実用されている。そのような具体例は例えば、ACS. Symp. Ser. 242, 11 (1984)、特開昭60−3625号、米国特許第5102771号,同5206317号,同5212047号,特開平4−26850号,特開平3−1921731号,特開昭60−10247号,特開昭62−40450号等が挙げられる。
【0170】
以下には本発明の感光性組成物の主要な用途の一つである、高感度な平版印刷版原版を得る目的に対し特に優れた(C)化合物である付加重合性化合物を用いた場合を例に挙げ、より詳しく述べる。
【0171】
(C−1)付加重合性化合物
本発明に使用される好ましい(C)化合物である、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナト基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類と
の置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0172】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0173】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0174】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0175】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0176】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0177】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0178】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(V)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0179】
CH2=C(R)COOCH2CH(R’)OH (V)
(ただし、R及びR’は、H又はCH3を示す。)
【0180】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0181】
さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた感光性組成物を得ることができる。
【0182】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0183】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述のオー
バーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。感光層中の付加重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、感光層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感光層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、付加重合性化合物は、感光層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0184】
成分(C)として、前記(C−1)重合性化合物以外のものを用いる場合の含有量は、目的とする特性変化或いは用いられる化合物により最適な量を適宜選択しうるが、一般的には、酸化・還元や吸核付加反応により吸収スペクトルが変化する化合物を用いた場合、組成物の全固形分中10〜80質量%程度であることが好ましい。
【0185】
(D)バインダーポリマー
本発明の感光性組成物の好ましい実施形態である平版印刷版原版の感光層への適用に際しては、感光性組成物には膜性向上などの観点から、さらにバインダーポリマーを使用することが好ましい。
バインダーポリマーとしては線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どのような化合物を使用しても構わないが、好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とする水あるいは弱アルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0186】
特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体および〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体は、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される、酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
また、特開平11−171907号記載のアミド基を有するバインダーは優れた現像性と膜強度を併せもち、好適である。
【0187】
さらに、この他に水溶性線状有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリ
エーテル等も有用である。これらの線状有機高分子重合体は全組成物中に任意な量を混和させることができる。しかし90質量%を超える場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えない。好ましくは30〜85質量%である。また光重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機高分子重合体は、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。好ましい実施様態においてバインダーポリマーは実質的に水不要でアルカリに可溶なものが用いられる。そうすることで、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いないかもしくは非常に少ない使用量に制限できる。このような使用法においてはバインダーポリマーの酸価(ポリマー1g当たりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は画像強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は重量平均分子量で3000から50万の範囲であり、より好ましくは、酸価が0.6〜2.0meq/g、重量平均分子量が1万から30万の範囲である。
【0188】
(E)その他の成分
本発明の感光性組成物には、さらにその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
(E−1)共増感剤
ある種の添加剤(以後、共増感剤という)を用いることで、感度をさらに向上させる事ができる。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、熱重合開始剤により開始される光反応、と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(a)還元されて活性ラジカルを生成しうるもの、(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうるもの、(c)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用するもの、に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
【0189】
(a)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
酸素一酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
フエロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。
【0190】
(b)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等があげられる。
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたもの
が、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0191】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類をあげる事ができる。
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等をあげる事ができる。
【0192】
(c)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、もしくは連鎖移動剤として作用する化合物:例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンする事によりラジカルを生成しうる。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等があげられる。
【0193】
これらの共増感剤のより具体的な例は、例えば、特開平9−236913号公報中に、感度向上を目的とした添加剤として、多く記載されており、それらを本発明においても適用することができる。以下に、その一部を例示するが、本発明はこれらに限定されるものはない。なお、下記式中、−TMSはトリメチルシリル基を表す。
【0194】
【化35】

【0195】
これらの共増感剤に関しても、先の増感色素と同様、さらに、感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素や開始剤化合物、付加重合性不飽和化合物その他のパートとの結合、親水性部位の導入、相溶性向上、結晶析出抑制のための置換基導入、密着性を向上させる置換基導入、ポリマー化等の方法が利用で
きる。
これらの共増感剤は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。使用量はエチレン性不飽和二重結合を有する化合物100質量部に対し0.05〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは3〜50質量部の範囲が適当である。
【0196】
(E−2)重合禁止剤
また、本発明においては以上の基本成分の他に感光性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、平版印刷版用原版とする場合、支持体等への塗布後の乾燥の過程でその感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0197】
(E−3)着色剤等
さらに、本発明の感光性組成物を平版印刷版用原版に用いる場合、その感光層の着色を目的として染料もしくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させる事ができる。着色剤としては、多くの染料は光重合系感光層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては例えばフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料および顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0198】
(E−4)その他の添加剤
さらに、本発明の感光性組成物を平版印刷版用原版に用いる場合、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、その他可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0199】
可塑剤としては例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0200】
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熟架橋剤等の添加もできる。
その他、感光層と支持体との密着性向上や、未露光感光層の現像除去性を高めるための添加剤、中間層を設ける事を可能である。例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物の添加や下塗りにより、密着性が向上し、耐刷性を高める事が可能であり、一方ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーの添加や下塗りにより、非画像部の現像性が向上し、汚れ性の向上が可能となる。
【0201】
平版印刷版原版を作製するために、本発明の感光性組成物を支持体上に塗布して感光層
を形成する際には、種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N―ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0202】
前記感光層の支持体への塗布量は、感光層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性等の影響を考慮し、用途に応じ適宜選択することが望ましい。塗布量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の感光性組成物の好ましい使用態様である走査露光用平版印刷版原版の感光層としての塗布量は、一般的には、乾燥後の質量で約0.lg/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0203】
なお、本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の感光層として用いる際には、感度と保存安定性の観点から、増感色素として一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を用い、開始剤化合物としてヘキサアリールビイミダゾール類を組み合わせた開始系を用いることが好ましく、これらからなる開始系と(C−1)付加重合性化合物とを含有する態様が特に好ましい。
【0204】
(支持体)
本発明の感光性組成物を用いた平版印刷版原版を得るには上記感光層を、表面が親水性の支持体上に設けることが望ましい。親水性の支持体としては、従来公知の、平版印刷版に使用される親水性支持体を限定なく使用することができる。使用される支持体は寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。これらは、樹脂フィルムや金属板などの単一成分のシートであっても、2以上の材料の積層体であってもよく、例えば、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム、異種のプラスチックフィルム同志の積層シート等が含まれる。また、これらの表面に対し、必要に応じ親水性の付与や、強度向上、等の目的で適切な公知の物理的、化学的処理を施してもよい。
【0205】
特に好ましい支持体としては、紙、ポリエステルフィルムまたはアルミニウム板が挙げられ、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板は特に好ましい。また、特公昭48−18327号に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアル
ミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0206】
好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にはアルミニウムがラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0207】
また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、粗面化(砂目立て)処理、珪酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、あるいは陽極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0208】
さらに、粗面化したのちに珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理されたアルミニウム板が好ましく使用できる。特公昭47−5125号に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理したのちに、アルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものが好適に使用される。陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、硼酸等の無機酸、もしくは蓚酸、スルファミン酸等の有機酸またはそれらの塩の水溶液または非水溶液の単独または二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
支持体の親水化処理としては、米国特許第3658662号に記載されているようなシリケート電着も有効である。特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理および珪酸ソーダ処理を組合せた表面処理も有用である。また、特開昭56−28893号に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレイン、陽極酸化処理さらに珪酸ソーダ処理を順に行ったものも好適である。
【0209】
さらに、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。
さらに特開平7−159983号に開示されているようなラジカルによって付加反応を
起こし得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
その他好ましい例として、任意の支持体上に表面層として耐水性の親水性層を設けたものも上げることができる。このような表面層としては例えば米国特許第3055295号や、特開昭56−13168号記載の無機顔料と結着剤とからなる層、特開平9−80744記載の親水性膨潤層、特表平8−507727記載の酸化チタン、ポリビニルアルコール、珪酸類からなるゾルゲル膜等を挙げることができる。
これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる感光性組成物の有害な反応を防ぐため、かつ感光層の密着性向上等のために施されるものである。
【0210】
(保護層)
本発明の感光性組成物を走査露光用平版印刷版原版に用いる場合、重合性の化合物を含む感光層の上に、必要に応じて保護層を設ける事ができる。このような平版印刷版原版は、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、さらに、露光に用いる光の透過性が良好で、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できる事が望ましい。
【0211】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3、458、311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いる事がよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られていが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。特に、ポリビニルアルコールに対しポリビニルピロリドンを15〜50質量%の範囲で置き換えた混合物が保存安定性の観点から好ましい。
【0212】
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、分子量が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA一CS、PVA―CST、PVA一HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0213】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を新油性の重合層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害に
より膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。
【0214】
これに対し、これら2層間の接着性を改すべく種々の提案がなされている。たとえば米国特許第292、501号、米国特許第44、563号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジヨンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、重合層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用する事ができる。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。
【0215】
さらに、保護層に他の機能を付与する事もできる。例えば、露光に使う光(例えば、赤外線レーザならば波長760〜1200nm)の透過性に優れ、かつ露光に係わらない波長の光を効率良く吸収しうる、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性をさらに高める事ができる。
【0216】
本発明の感光性組成物を用いた平版印刷版原版を製版し、平版印刷版とする際には、通常、以下に詳述する露光処理(画像露光)を施した後、現像液で感光層の未露光部を除去し、画像を形成する。これらの感光性組成物を平版印刷版の作製に使用する際の好ましい現像液としては、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミンまたはジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ溶液の濃度が0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%になるように添加される。
【0217】
また、このようなアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号および同第3615480号に記載されているものを挙げることができる。
さらに、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0218】
ここで用いられる特に好ましい現像液としては、特開2002−202616公報に記載の、下記一般式(VI)式で表される非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3〜30mS/cmの電導度を有する現像液が挙げられる。
A−W 一般式(VI)
(前記一般式(VI)中、AはA−HのlogPが1.5以上の疎水性有機基を表し、WはW−HのlogPが1.0未満の非イオン性の親水性有機基を表す。)
【0219】
logPとは、C.Hansch,A.Leo,“Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology”,J.Wile&Sons,(1979年)記載の疎水性パラメータとして一般的に使用されるものであり、目的とする分子(A−H及びW−H)のオクタノール/水2層系に対して、各層に分配される割合から算出した平衡濃度比Pの対数として定義される。
ここでは、一般式(VI)中のA,Wの各基を特定する指標として使用しており、A,W各有機基に便宜的に水素原子結合させた、A−H、W−H構造に対して、A.K.Chose、et.al.J.Comput.Chem.9,80(1988).記載の方法に
基づき、既知データより計算し、求めたものである。
【0220】
具体的には、構造としては、有機基A、Wは互いに異なり、上述のlogPを満足する、一価の有機残基を表す。より好ましくは、互いに同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良く、かつ、不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル基、カルボキシラート基、スルホ基、スルホナト基、置換スルフィニル基、置換スルホニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、シアノ基、ニトロ基を表す。
【0221】
上記置換基を有していても良く、かつ、不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、および置換アルキニル基が挙げられる。
【0222】
これらのアルキル基、置換アルキル基としては、先にR1、R2、R3の好ましい具体例として挙げたものを同様に挙げることができる。
また、ここで、これらの置換基における、アルキル基としては炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルへキシル基、2−メチルへキシル基、シクロへキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0223】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、エトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基などを挙げることができる。
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基、等があげられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基、フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0224】
上述のアシル基(R4CO−)としては、R4が水素原子及び上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリル
オキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルブチル基、エトキシカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルメチル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルフェニルメチル基、トリクロロメチルカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、
【0225】
ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノへキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロへニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、及び、下記官能基等を挙げることができる。
【0226】
【化36】

【0227】
アリール基としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0228】
置換アリール基は、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、(水素原子以外の)1価の非金属原子団の基を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。
これらの、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル
基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、等をあげることができる。
【0229】
アルケニル基としては、前記導入可能な置換基において説明したアルケニル基と同様のものを挙げることができる。置換アルケニル基は、置換基がアルケニル基の水素原子と置き換わり結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方、アルケニル基は上述のアルケニル基を用いることができる。好ましい置換アルケニル基の例としては、下記構造で示すもの等を挙げることができる。
【0230】
【化37】

【0231】
アルキニル基としては、前記導入可能な置換基において説明したアルキニル基と同様のものを挙げることができる。置換アルキニル基は、置換基がアルキニル基の水素原子と置き換わり、結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方、アルキニル基は上述のアルキニル基を用いることができる。
【0232】
ヘテロ環基とは、ヘテロ環上の水素を1つ除した一価の基及びこの一価の基からさらに水素を1つ除し、上述の置換アルキル基における置換基が結合してできた一価の基(置換ヘテロ環基)である。好ましいヘテロ環の例としては、下記構造で示すものが挙げられる

【0233】
【化38】

【0234】
【化39】

【0235】
【化40】

【0236】
置換オキシ基(R5O−)としては、R5が水素を除く一価の非金属原子団であるものを用いることができる。好ましい置換オキシ基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ墓、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基を挙げる事ができる。これらにおけるアルキル基、ならびにアリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基ならびに、アリール基、置換アリール基として示したものを挙げる事ができる。
【0237】
また、アシルオキシ基におけるアシル基(R6CO−)としては、R6が、前述のアルキル基、置換アルキル基、アリール基ならびに置換アリール基のものを挙げることができる。これらの置換基の中では、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、アリールスルホキシ基、がより好ましい。好ましい置換オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ墓、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、カルボキシエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、エトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、モルホリノエトキシ基、モルホリノプロピルオキシ基、アリロキシエトキシエトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフチルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ等が挙げられる。
【0238】
置換チオ基(R7S−)としてはR7が水素を除く一価の非金属原子団のものを使用でき
る。好ましい置換チオ基の例としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アシルチオ基を挙げることができる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができ、アシルチオ基におけるアシル基(R6CO−)のR6は前述のとおりである。これらの中ではアルキルチオ基、ならびにアリールチオ基がより好ましい。好ましい置換チオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、エトキシエチルチオ基、カルボキシエチルチオ基、メトキシカルボニルチオ基等が挙げられる。
【0239】
置換アミノ基(R8NH−,(R9)(R10)N−)としては、R8、R9、R10が水素を除く一価の非金属原子団のものを使用できる。置換アミノ基の好ましい例としては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド墓、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基が挙げられる。
【0240】
これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができ、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基におけるアシル基(R6CO−)のR6は前述のとおりである。これらのうち、より好ましいものとしては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、が挙げられる。好ましい置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、フェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アセチルアミノ基等が挙げられる。
【0241】
置換カルボニル基(R11−CO−)としては、R11が一価の非金属原子団のものを使用できる。置換カルボニル基の好ましい例としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。これらのうち、より好ましい置換カルボニル基としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、があげられ、更により好ましいものとしては、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基ならびにアリーロキシカルボニル基が挙げられる。好ましい置換カルボニル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、N−メチルカルバモイル基、N−フェニルカ
ルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基等が挙げられる。
【0242】
置換スルフィニル基(R12−SO−)としてはR12が一価の非金属原子団のものを使用できる。好ましい側としては、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。これらのうち、より好ましい例としてはアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、が挙げられる。このような置換スルフィニル基の具体例としては、ヘキシルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基、トリルスルフィニル基等が挙げられる。
【0243】
置換スルホニル基(R13−SO2−)としては、R13が一価の非金属原子団のものを使用できる。より好ましい例としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を挙げることができる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。このような、置換スルホニル基の具体例としては、ブチルスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0244】
スルホナト基(−SO3-)は前述のとおり、スルホ基(−SO3H)の共役塩基陰イオン基を意味し、通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種、のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0245】
カルボキシラート基(−CO2-)は前述のとおり、カルボキシル基(CO2H)の共役塩基陰イオン基を意味し、通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム頼(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0246】
置換ホスホノ基とはホスホノ基上の水酸基の一つもしくは二つが他の有機オキソ基によって置換されたものを意味し、好ましい例としては、前述のジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、アルキルアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、モノアリールホスホノ基が挙げられる。これらの中ではジアルキルホスホノ基、ならびにジアリールホスホノ基がより好ましい。このような具体例としては、ジエチルホスホノ基、ジブチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基等が挙げられる。
【0247】
ホスホナト基(−PO32-、−PO3-)とは前述のとおり、ホスホノ基(−PO32)の、酸第一解離もしくは、酸第二解離に由来する共役塩基陰イオン基を意味する。通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類:アジニウム類、等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0248】
置換ホスホナト基とは前述の置換ホスホノ基のうち、水酸基を一つ有機オキソ基に置換したものの共役塩基陰イオン基であり、具体例としては、前述のモノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))の共
役塩基を挙げることができる。通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類、等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0249】
前記式(I)中、A及びWの各構造における好ましい具体例を挙げれば、Aが芳香族を含有する有機基、Wがポリオキシアルキレン基を含有する非イオン性の有機基である。
【0250】
なお、A及びWの構造を明確にするため、A−HおよびW−Hで表される具体例を以下に示す。
【0251】
【化41】

【0252】
【化42】

【0253】
また、前記一般式(VI)で表される非イオン性化合物の具体例(Y−1〜Y−22)を以下に示す。
【0254】
【化43】

【0255】
【化44】

【0256】
【化45】

【0257】
前記一般式(VI)で表される非イオン性化合物として、さらに好ましいものとしては、下記式(I−A)または(I−B)で示されるものが挙げられる。
【0258】
【化46】

【0259】
上記式中、R10、R20は、Hまたは炭素数1〜100の炭化水素基であり、n、mは0〜100の整数(ただし、n及びmは同時に0ではない)である。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、さらにこれらの炭化水素基がエーテル結合、エステル結合またはアミド結合で結合したものも含む。
より好ましいR10、R20としては、Hまたは炭素数1〜100の直鎖または分岐鎖アルキル基が挙げられる。また、R10、R20は基:R30−X−(R30は炭素数1〜100の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、Xは−O−、−OCO−、−COO−、−NHCO−
、または−CONH−を表す)を表してもよい。
より好ましくはR10、R20は水素原子、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖アルキル基または基:R30−X−(R30は炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、Xは−O−、−OCO−、−COO−、−NHCO−、または−CONH−)である。
【0260】
一般式(I−A)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
一般式(I−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエ−テル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙げられる。
【0261】
前記一般式(I−A)および(I−B)の化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数は、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数は、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部はランダムでもブロックの共重合体でもよい。
前記一般式(I−A)および(I−B)で示されるノニオン芳香族エーテル系活性剤は、単独または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0262】
本発明において、前記一般式(V)で示される非イオン性化合物は、現像液中0.1〜15質量%、好ましくは1.0〜8.0質量%添加することが効果的である。添加量が少なすぎると、現像性低下および感光層成分の溶解性低下を招き、逆に多すぎると、印刷版の耐刷性を低下させる。
【0263】
本発明に係る平版印刷版原版の製版プロセスにおいては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。このような加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上、感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは、全面露光を行うことも有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。温度が高すぎると、非画像部領域における所望されない硬化反応が生起する等の問題を生じるおそれがある。一方、現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は200〜500℃の範囲加熱処理を行なう。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる。
【0264】
本発明に係る走査露光用平版印刷版原版の露光方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。望ましい、光源の波長は350nmから450nmであり、具体的にはInGaN系半導体レーザが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。また、本発明の感光層成分は、高い水溶性のものを使用することで、中性の水や弱アルカリ水に可溶とすることもできるが、このような構成の平版印刷版は印刷機上に装填後、機上で露光−現像といった方式を行うこともできる。
【0265】
350〜450nmの入手可能なレーザー光源としては以下のものを利用することができる。
ガスレーザーとして、Arイオンレーザー(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザー(356nm、351nm、10mW〜1W)、He−Cdレーザー(441nm、325nm、1mW〜100mW)、固体レーザーとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm、10mW)、半導体レーザー系として、KNbO3リング共振器(
430nm、30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)その他、パルスレーザーとしてN2レーザー(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)などが利用できる。
特にこの中でAlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
【0266】
また走査露光方式の平版印刷版露光装置としては、露光機構として内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式があり、光源としては上記光源の中でパルスレーザー以外のもの全てを利用することができる。現実的には感材感度と製版時間の関係で、以下の露光装置が特に好ましい。
・内面ドラム方式でガスレーザーあるいは固体レーザー光源を1つ使用するシングルビーム露光装置
・フラットベッド方式で半導体レーザーを多数(10個以上)使用したマルチビームの露光装置
・外面ドラム方式で半導体レーザーを多数(10個以上)使用したマルチビームの露光装置
【0267】
以上のようなレーザー直描型の平版印刷版においては、一般に感材感度X(J/cm2)、感材の露光面積S(cm2)、レーザー光源1個のパワーq(W)、レーザー本数n、全露光時間t(s)との間に式(eq1)が成立する。
X・S=n・q・t − (eq1)
【0268】
i)内面ドラム(シングルビーム)方式の場合レーザー回転数f(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)の間には一般的に式(eq2)が成立する。
f・Z・t=Lx − (eq2)
ii)外面ドラム(マルチビーム)方式の場合ドラム回転数F(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に式(eq3)が成立する。
F・Z・n・t=Lx − (eq3)
iii)フラットベッド(マルチビーム)方式の場合ポリゴンミラーの回転数H(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に式(eq4)が成立する。
H・Z・n・t=Lx − (eq4)
【0269】
実際の印刷版に要求される解像度(2560dpi)、版サイズ(A1/B1、副走査長42inch)、20枚/1時間程度の露光条件と本発明の感光性組成物の感光特性(感光波長、感度:約0.1mJ/cm2)を上記式に代入することで、本発明の感材においては半導体レーザーのマルチビーム露光方式との組み合わせがより好ましいことが理解できる。さらに操作性、コスト等を掛け合わせることにより外面ドラム方式の半導体レーザーマルチビーム露光装置との組み合わせが最も好ましいことになる。
【0270】
また、本発明の感光性組成物に対するその他の露光光線としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視および紫外の各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等も使用できる。
【0271】
本発明による感光性組成物の用途としては、先に詳述した走査露光用平版印刷版原版の感光層の他、光硬化樹脂の用途として知られる広範な分野に制限なく適用できる。例えば、必要に応じカチオン重合性化合物と併用した液状の感光性組成物に適用することで、高感度な光造形用材料が得られる。また、光重合にともなう、屈折率の変化を利用し、ホログラム材料とすることもできる。光重合に伴う、表面の粘着性の変化を利用して様々な転写材料(剥離感材、トナー現像感材等)にも応用できる。マイクロカプセルの光硬化にも適用できる。フォトレジスト等の電子材料製造、インクや塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料にも応用できる。
【実施例】
【0272】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0273】
<合成例>
例示化合物25の合成
N-メチル-N-(トリメチルシリル)メチル-p-アミノベンズアルデヒド1gと3-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルイミノオキサゾリジン-4-オン1.19gをTHF10mlに溶解し、カリウムt−ブトキシド0.25gを加え、外設温度60℃で2時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷してから水を加えて、反応生成物を酢酸エチルで抽出した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、得られた結晶を乾燥することで、例示化合物25を1.3g得た(収率62%)。
質量分析スペクトル467(M+)。
1H NMR(CDCl3) d 0.10(s, 9H), 1.15-1.87 (m, 18H), 2.22-2.37 (m, 2H), 2.95(s, 2H), 3.00(s, 3H), 3.70-3.80(br, 1H), 4.00-4.10(m, 1H), 6.40(s, 1H), 6.63(d, J=6.8Hz, 2H), 7.53(d, J=6.8Hz, 2H)。
以下の実施例で使用した他の化合物についても、同様にして合成した。
【0274】
<実施例1〜13、比較例1〜7>
(支持体の調製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板を10質量%水酸化ナトリウムに60℃で25秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20質量%硝酸で中和洗浄し、次いで水洗した。これを正弦波の交番波形電流を用いて1質量%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続いて1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で5秒間浸漬後30質量%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20質量%硫酸水溶液中、電流密度2A/dm2において、陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように、2分間陽極酸化処理した。その表面粗さを測定したところ、0.3μm (JIS B0601によるRa表示)であった。
このように処理された基板の裏面に下記のゾル−ゲル反応液をバーコーターで塗布し100℃で1分間乾燥し、乾燥後の塗布量が70mg/m2のバックコート層を設けた支持体を作成した。
【0275】
(ゾル−ゲル反応液)
テトラエチルシリケート 50質量部
水 20質量部
メタノール 15質量部
リン酸 0.05質量部
【0276】
上記成分を混合、撹拌すると約5分で発熱が開始した。60分間反応させた後、以下に示す液を加えることによりバックコート塗布液を調製した。
【0277】
ピロガロールホルムアルデヒド縮合樹脂(分子量2000) 4質量部
ジメチルフタレート 5質量部
フッ素系界面活性剤 0.7質量部
(N−ブチルペルフルオロオクタン/スルホンアミドエチルアクリレート/ポリオキシエチレンアクリレート共重合体:分子量2万)
メタノールシリカゾル 50質量部
(日産化学工業(株)製,メタノール30質量%)
メタノール 800質量部
【0278】
(感光層の調製)
このように処理されたアルミニウム支持体上に、下記組成の感光性組成物を乾燥塗布量が1.3g/m2となるように塗布し、80℃2分間乾燥させ感光層を形成した。
【0279】
(感光性組成物)
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.5g
アリルメタクリレート/メタクリル酸/N−イソプロピルアミド共重合体
(共重合モル比70/12/18) 2.0g
光重合開始系 (用いた化合物、含有量は表1中に記載)
・増感色素 Xg
・開始剤化合物 Yg
・共増感剤 Zg
フッ素系ノニオン界面活性剤(F−177P) 0.03g
熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
メチルエチルケトン 20g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g
顔料分散物 2.0g
【0280】
(顔料分散物の組成)
・Pigment Blue 15:6 15質量部
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 10質量部
(共重合モル比83/17)
・シクロヘキサノン 15質量部
・メトキシプロピルアセテート 20質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
【0281】
(保護層の形成)
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版を得た。
【0282】
〔感度の評価〕
このように得られた平版印刷版原版上に、富士写真フイルム(株)製の富士ステップガイド(△D=0.15で不連続的に透過光学濃度が変化するグレースケール)を密着させ、光学フィルターを通したキセノンランプにより既知の露光エネルギーとなるように露光を行った。
その後、下記組成の現像液に25℃、10秒間浸漬し、現像を行い、画像が完全に除去される最高の段数を読み、その露光エネルギー量を求め、感度を算出した(単位、mJ/cm2)。エネルギー量が小さい程、高感度であると評価する。短波半導体レーザへの露光適性を見積もる目的で、光学フィルターとしてケンコーBP−40を用い、400nm
のモノクロミックな光で露光を行った。結果を表1に示す。
【0283】
(現像液)
下記組成からなるpH12.0の水溶液
・水酸化カリウム 0.2g
・1Kケイ酸カリウム 2.4g
(SiO2/K2O=1.9)
・下記化合物 5.0g
・エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩 0.1g
・水 91.3g
【0284】
【化47】

【0285】
【表1】

【0286】
なお、表1において光重合開始系で用いた本発明に係る増感色素の構造は前記例示化合物と同様である。また、開始剤化合物(A−1)〜(A−10)及び共増感剤(C−1)
〜(C−3)の構造は以下に示す通りである。比較例に用いた下記増感色素(DR−1)〜(DR−3)は本発明の範囲外の色素化合物である。下記式中、Tsはトシル基を表す。
【0287】
【化48】

【0288】
【化49】

【0289】
【化50】

【0290】
表1に明らかなように本発明の感光性組成物を感光層に用いた平版印刷版原版はいずれも高感度で画像形成可能であり、この光開始系が実用上十分な感度を示すことがわかった。一方、増感色素のみ、開始剤化合物のみを用いた比較例1〜3は画像形成せず、また、開始剤化合物と本発明の範囲外である増感色素とを組合せた光開始系を用いた比較例4〜7の平版印刷版原版は、実用上充分な感度が得られないことが明らかであった。実施例1〜13からは本発明の感光性組成物は、その増感機構によらず広い範囲のものが適用できることがわかる。さらに、実施例5、10および13と比較例4〜7との比較により、本発明の増感色素が高感度を示す構造上の特徴が、前記一般式(1)または一般式(2)で示される構造にあることが示唆される。
【0291】
<実施例14〜27及び比較例8>
実施例1〜13で用いた支持体に、以下の手順で中間層、感光層、保護層を順次形成し
、平版印刷版原版を作製した。
(中間層の塗設)
支持体表面上に、フェニルホスホン酸の塗布量が20mg/m2となるようにように、下記の(A)の組成の塗布液を調製し、ホイラーにて180rpmの条件で塗布後、80℃で30秒間乾燥させて中間層を形成した。
【0292】
(中間層塗布液A)
フェニルホスホン酸 0.07g〜1.4g
メタノール 200g
【0293】
(感光層の塗設)
上記中間層を設けた支持体上に、下記組成の感光性組成物を調製し、塗布量が1.3g/m2になるように、ホイラーで塗布し、100℃で1分間乾燥させて感光層を形成した。
【0294】
(感光性組成物)
付加重合性化合物(表2中に記載の化合物) 1.6g
バインダーポリマー(表2中に記載の化合物) 2.0g
増感色素(表2中に記載の化合物) 0.15g
開始剤化合物(表2中に記載の化合物) 0.2g
共増感剤(表2中に記載の化合物) 0.3g
顔料分散物 2.0g
熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
フッ素系界面活性剤 0.02g
(大日本インキ化学工業(株)製、メガファックF−177)
メチルエチルケトン 20.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0g
【0295】
(顔料分散物の組成)
・Pigment Blue 15:6 15質量部
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 10質量部
(共重合モル比83/17)
・シクロヘキサノン 15質量部
・メトキシプロピルアセテート 20質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
【0296】
(保護層の形成)
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版を得た。
【0297】
(平版印刷版原版の露光)
上記のようにして得られた平版印刷版原版を、光源として400nmの単色光を用い、版面露光エネルギー密度200μJ/cm2となるように露光パワーを調節し、ベタ画像露光および175線/インチ、1%刻みで1から99%となる網点画像露光を行った。
【0298】
(現像/製版)
富士写真フイルム(株)製自動現像機LP−850に所定の現像液(表2中に記載)と富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP−2Wをそれぞれ仕込み現像液温度30℃
、現像時間18秒の条件で露光済みの版を現像/製版し、平版印刷版を得た。
【0299】
(耐刷性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(N)を使用した。印刷を継続しながらベタ画像部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数によって耐刷性を調べた。数字が多いほど耐刷性がよいと評価する。
【0300】
(網点耐刷性強制試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(N)を使用した。印刷開始から5000枚目に富士写真フイルム(株)製PSプレートクリーナーCL−2を印刷用スポンジにしみこませ、網点部を拭き、版面のインキを洗浄した。その後、10,000枚印刷を行い、印刷物における網点の版飛びの有無を目視で観察した。
【0301】
(汚れ性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(S)を使用して印刷を行ない、得られた印刷物を観察し、非画像部(未露光部)の汚れ性の状態を目視で評価した。
【0302】
(表2中の付加重合性化合物)
(M−1):ペンタエルスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製;NKエステルA−TMMT)
(M−2):グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製;UA101H)
【0303】
(表2中のバインダーポリマー)
(B−1):アリルメタクリレート/メタクリル酸/N−イソプロピルアクリルアミド
(共重合モル比67/13/20)
NaOH滴定により求めた実測酸価1.15meq/g
GPC測定より求めた重量平均分子量13万
(B−2):アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合モル比83/17)
NaOH滴定により求めた実測酸価1.55meq/g
GPC測定より求めた重量平均分子量12.5万
(B−3):下記ジイソシアネートとジオールの縮重合物であるポリウレタン樹脂
・4、4’−ジフェニルメタンジイソイソシネート(MDI)
・ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)
・ポリプロピレングリコール、重量平均分子量1000(PPG1000)
・2、2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニックアシッド(DMPA)
〔共重合モル比(MDI/HMDI/PPG1000/DMPA)
40/10/15/35〕
NaOH滴定により求めた実測酸価1.05meq/g
GPC測定より求めた重量平均分子量4.5万
【0304】
(表2中の現像液)
(DV−1)
下記組成からなるpH10の水溶液
・モノエタノールアミン 0.1 質量部
・トリエタノールアミン 1.5 質量部
・下記式1の化合物 4.0 質量部
・下記式2の化合物 2.5 質量部
・下記式3の化合物 0.2 質量部
・水 91.7 質量部
【0305】
(DV−2)
下記組成からなるpH10の水溶液
・炭酸水素ナトリウム 1.2 質量部
・炭酸ナトリウム 0.8 質量部
・下記式1の化合物 3.0 質量部
・下記式2の化合物 2.0 質量部
・下記式3の化合物 0.2 質量部
・水 92.8 質量部
【0306】
(DV−3)
下記組成からなるpH13の水溶液
・1Kケイ酸カリウム 3.0 質量部
・水酸化カリウム 1.5 質量部
・下記式3の化合物 0.2 質量部
・水 95.3 質量部
【0307】
(DV−4)
実施例1〜13で用いたpH12の前記現像液
【0308】
【化51】

【0309】
(ここでRはHまたはC49であり、nは約4(平均値)である。)
【0310】
【表2】

【0311】
表2から明らかなように、本発明の感光性組成物を感光層として用いた実施例14〜27の平版印刷版原版はいずれも、走査露光により高い生産性をもって製版可能な条件、即ち、非常に低エネルギーの露光条件によっても、優れた平版印刷版を提供しうることがわかった。一方、本発明に係る増感色素を用いない、比較例8の平版印刷版原版では、実用可能な平版印刷版は得られなかった。
【0312】
(実施例28)
感光層に用いた感光性組成物において、光開始系を下記のような組成に変え、感光層の膜厚を1.5g/m2に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例28の平版印刷版原版を調製した。
(光開始系)
増感色素(例示化合物25) 0.1g
開始剤化合物(A−1) 0.08g
共増感剤(C−2) 0.2g
【0313】
(露光/現像)
得られた平版印刷版原版に対し、400nmの単色光を用い、露光エネルギー密度0.25mJ/cm2となる条件で、走査露光を行った。次に、版を100℃で、10秒間加熱後、実施例1と同様の条件で現像処理を実施したところ、視認性に優れた、青色の画像を有する平版印刷版が得られた。
【0314】
(平版印刷版の評価)
得られた平版印刷版を用い、ハイデルベルグ社KOR−D機を用い、オフセット印刷を実施したところ、画像濃度優れ、非画像部に汚れのない優れた画質の印刷物を5万枚以上得ることができた。
【0315】
(実施例29)
実施例28で得られた平版印刷版原版を露光前に黄色灯下に1時間さらした後、実施例28と全く同様に製版・印刷を実施した。実施例28と全く同様の良好な結果が得られた。
【0316】
(実施例30)
実施例29において黄色灯下に1時間さらした平版印刷版原版を、湿度65%、45℃の強制保存条件下で3日間保存後、実施例29と同様に、製版・印刷を実施した。実施例29と同様の良好な結果が得られた。
【0317】
(実施例31)
PETフイルム上に下記組成からなる感光性組成物を用いた感光層を塗布量1.5g/m2となるように塗設した。
(感光性組成物)
バインダー樹脂(ポリメチルメタクリレート) 90質量%
増感色素(例示化合物25) 1.5質量%
開始剤化合物A−6 5.0質量%
酸消色染料 2.0質量%
(ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩)
【0318】
得られた青色の感光材料を、メタルハライドランプにて、30秒間露光を行った。青色が完全に消色し、淡黄色の透明フイルムに変化した。このように、本開始系の酸発生機能を利用して、本発明の感光性組成物を、変色機能を利用した画像形成材料として応用することができた。
【0319】
(実施例32)
開始剤化合物をA−7に変えた以外は実施例31と同様の操作を行った。実施例31と同様に、露光領域における色素の光消色が認められた。
【0320】
(実施例33)
開始剤化合物をA−8に変えた以外は実施例31と同様の操作を行った。実施例31と同様に、露光領域における色素の光消色が認められた。
【0321】
(実施例34)
PETフイルム上に下記組成からなる感光性組成物を用いた感光層を塗布量1.5g/m2となるように塗設した。
(感光性組成物)
バインダー樹脂(ポリメチルメタクリレート) 91質量%
増感色素(例示化合物25) 1.3質量%
開始剤化合物A−6 7.7質量%
酸化発色染料(ロイコクリスタルバイオレット) 2.0質量%
【0322】
得られた淡黄色透明の感光材料をメタルハライドランプで30秒間露光を行ったところ、鮮やかな青色に発色した。これは、本開始系のラジカル生成によるロイコ色素の酸化発色と考えられる。このように、本開始系の酸発生能を利用して、本発明の感光性組成物を、変色機能を利用した画像形成材料として応用することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る増感色素、
(B)ラジカル、酸あるいは塩基を生成しうる開始剤化合物、及び、
(C)ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種によって物理的あるいは化学的特性が不可逆的に変化する化合物、
を含有する感光性組成物。
【請求項2】
該増感色素が下記一般式(I)または一般式(II)で表わされる増感色素であることを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
【化1】

【化2】

式(I)中、R1およびR2は、独立に、置換あるいは無置換の、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表わす。R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子または1価の置換基を表わす。L1、L2およびL3は、独立に、置換基を有していても良いメチン基を表わす。mは0以上の整数を表わす。A1は、置換あるいは無置換の、芳香族基またはヘテロ環基を表わす。
式(II)中、R21およびR22は、独立に、置換あるいは無置換の、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表わす。R23、R24、R25及びR26は、各々独立に、水素原子または1価の置換基を表わす。L21およびL22は、独立に、置換基を有していても良いメチン基を表わす。nは0以上の整数を表わす。A21は、置換あるいは無置換の、芳香族基またはヘテロ環基を表わす。
但し、一般式(I)および一般式(II)は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る構造を有する。
【請求項3】
一般式(I)および一般式(II)において、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る構造が下記一般式(III)で表わされることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性組成物。
【化3】

RaおよびRbは、独立に、水素原子、または、置換あるいは無置換の、アルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基を表わす。Xは酸化に伴いC−X結合が開裂してCラジカルおよび脱離フラグメントXを生じることができる置換基を表わす。
【請求項4】
一般式(I)または一般式(II)で表わされる化合物。
【化4】

【化5】

式(I)中、R1およびR2は、独立に、置換あるいは無置換の、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表わす。R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子または1価の置換基を表わす。L1、L2およびL3は、独立に、置換基を有していても良いメチン基を表わす。mは0以上の整数を表わす。A1は、置換あるいは無置換の、芳香族基またはヘテロ環基を表わす。
式(II)中、R21およびR22は、独立に、置換あるいは無置換の、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表わす。R23、R24、R25及びR26は、各々独立に、水素原子または1価の置換基を表わす。L21およびL22は、独立に、置換基を有していても良いメチン基を表わす。nは0以上の整数を表わす。A21は、置換あるいは無置換の、芳香族基またはヘテロ環基を表わす。
但し、一般式(I)および一般式(II)は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る構造を有する。

【公開番号】特開2007−25057(P2007−25057A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204535(P2005−204535)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】