説明

感光性組成物

【課題】 酸発生剤とフォトレジストの主成分である酸解離基を有するポリマーとの相溶性が悪いという問題点を伴うことがなく、良好なパターンを得ることができる感光性組成物を提供する。
【解決手段】重合体ではない多価フェノールに下記式(1)で表される有機基が導入された感光性多価フェノール誘導体を有機溶媒に溶解させた溶液とする。
【化1】


(式(1)において、R1は直鎖もしくは分岐の炭素数2〜9の2価の有機基であり、R2〜R5はそれぞれ独立に水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基であり、R6及びR7はそれぞれ独立に有機基であり、R6とR7とは一緒になって2価の有機基を形成していてもよい。X-は陰イオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディープUV、電子線、X線又はEUV(極端紫外線)等の活性放射線の照射により容易に分解して酸を発生する光酸発生剤、特に化学増幅型フォトレジスト材料として有用な感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、例えば、DRAM等に代表される高集積回路素子では、一層の高密度化、高集積化、あるいは高速化の要望が高い。それに伴い、各種電子デバイス製造分野では、ハーフミクロンオーダーの微細加工技術の確立、例えば、微細パターン形成のためのフォトリソグラフィー技術開発に対する要求がますます厳しくなっている。フォトリソグラフィー技術において、パターンの微細化を図る手段の一つとして、フォトレジストのパターン形成の際に使用する活性放射線(露光光)の波長を短くする方法がある。ここで、縮小投影露光装置の解像度(R)はレイリーの式R=k・λ/NA(ここでλは露光光の波長、NAはレンズの開口数、kはプロセスファクター。)で表されるため、レジストのパターン形成の際に使用する活性放射線(露光光)の波長λを短波長化することにより解像度を向上させることができる。
【0003】
短波長に適したフォトレジストとして、化学増幅型のものが提案されている(特許文献1参照)。化学増幅型フォトレジストの特徴は、含有成分である光酸発生剤から露光光の照射によりプロトン酸が発生し、このプロトン酸が露光後の加熱処理によりレジスト樹脂等のポリマーと酸触媒反応を起こすことであり、現在開発されているフォトレジストの大半は、化学増幅型である。
【0004】
このような化学増幅型フォトレジスト用の光酸発生剤として、種々のスルホニウム塩が知られている。しかしながら、従来のスルホニウム塩系の光酸発生剤はフォトレジストの主成分である酸解離基(酸で解離・分解する基)を有するポリマーとの相溶性が悪い等の問題点がある。当然のことながら、その問題点に起因して、その光酸発生剤を含んでいるフォトレジストに活性放射線でパターン露光した場合、得られるパターン形状が所望の形状にならない等悪影響を及ぼすという問題が生じる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4491628号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、酸発生剤とフォトレジストの主成分である酸解離基を有するポリマーとの相溶性が悪いという問題点を伴うことがなく、良好なパターンを得ることができる感光性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、重合体ではない多価フェノールに光酸発生剤としての機能を有する構造が導入されている特定の感光性多価フェノール誘導体を有機溶媒に溶解させることにより、上記の課題が解決できることを見出し本発明に到達した。
【0008】
かかる本発明の第1の態様は、重合体ではない多価フェノールに下記式(1)で表される有機基が導入された感光性多価フェノール誘導体を有機溶媒に溶解させた溶液であることを特徴とする感光性組成物にある。
【0009】
【化1】

(式(1)において、R1は直鎖もしくは分岐の炭素数2〜9の2価の有機基であり、R2〜R5はそれぞれ独立に水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基であり、R6及びR7はそれぞれ独立に有機基であり、R6とR7とは一緒になって2価の有機基を形成していてもよい。X-は陰イオンを表す。)
【0010】
本発明の第2の態様は、下記式(2)で表される基及び下記式(3)で表される基のうち少なくとも一方が前記感光性多価フェノール誘導体に導入されていることを特徴とする第1の態様に記載の感光性組成物にある。
【0011】
【化2】

(式(2)において、R8は直鎖、環状もしくは分岐の炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜30の芳香族基を表す。)
【0012】
【化3】

【0013】
本発明の第3の態様は、前記重合体ではない多価フェノールの分子量が1000未満であることを特徴とする第1又は2の態様に記載の感光性組成物にある。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記重合体ではない多価フェノールが、下記式(A)〜(F)の何れかであることを特徴とする第1〜3の何れかの態様に記載の感光性組成物にある。
【0015】
【化4】

(式(A)において、R11〜R13はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。a1〜f1は、a1+b1≦5、c1+d1≦5、e1+f1≦5、a1+c1+e1≧1を満たす0以上の整数である。)
【0016】
【化5】

(式(B)において、R21〜R24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。a2〜h2は、a2+b2≦5、c2+d2≦5、e2+f2≦5、g2+h2≦5、a2+c2+e2+g2≧1を満たす0以上の整数である。Zは、単結合、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
【0017】
【化6】

(式(C)において、R31は水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基で、R32〜R34はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。a3〜f3は、a3+b3≦5、c3+d3≦5、e3+f3≦5、a3+c3+e3≧1を満たす0以上の整数である。)
【0018】
【化7】

(式(D)において、R41、R42はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐もしくは脂環式の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。a4〜d4は、a4+b4≦5、c4+d4≦5、a4+c4≧1を満たす0以上の整数である。Wは、CO、SO2又はエーテル結合を表す。)
【0019】
【化8】

(式(E)において、R51〜R58はそれぞれ独立に、水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜12の有機基であり、R51とR52、R53とR54、R55とR56、R57とR58が脂環式の環を形成してもよい。R59〜R63はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。p、q、rは0又は1であり、a5〜j5は、a5+b5≦5、c5+d5≦5、e5+f5≦4、g5+h5≦4、i5+j5≦4、a5+c5+e5+g5+i5≧2を満たす0以上の整数である。)
【0020】
【化9】

(式(F)において、R71〜R74は炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
【0021】
本発明の第5の態様は、前記X-で表される陰イオンが、下記式(4)で表される陰イオンであることを特徴とする第1〜4の何れかの態様に記載の感光性組成物にある。
【0022】
【化10】

(式(4)において、k、m及びnはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。mが0の場合、kは1〜8の整数、nは2k+1であり、式(4)はパーフルオロアルキルスルホネートイオンである。nが0の場合、kは1〜15の整数、mは1以上の整数であり、式(4)はアルキルスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン又はアルキルベンゼンスルホネートイオンである。m及びnがそれぞれ独立に1以上の整数の場合、kは1〜10の整数であり、式(4)はフッ素置換ベンゼンスルホネートイオン、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオン又はフッ素置換アルキルスルホネートイオンである。)
【0023】
本発明の第6の態様は、前記X-で表される陰イオンが、下記式(5)で表されるビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンであることを特徴とする第1〜4の何れかの態様に記載の感光性組成物にある。
【0024】
【化11】

(式中、pは1〜8の整数を表す。)
【0025】
本発明の第7の態様は、前記X-で表される陰イオンが、下記式(6)で表される陰イオンであることを特徴とする第1〜4の何れかの態様に記載の感光性組成物にある。
【0026】
【化12】

【0027】
本発明の第8の態様は、前記X-で表される陰イオンが、Cl-、Br-、I-、BF4-、AsF6-、SbF6-又はPF6-であることを特徴とする第1〜4の何れかの態様に記載の感光性組成物にある。
【発明の効果】
【0028】
本発明の感光性組成物は、光酸発生剤としての機能を有する構造と酸解離基とを有する特定の感光性多価フェノール誘導体を含有した感光性組成物なので、酸発生剤を必要とせず、酸発生剤と酸解離基を有するポリマーとの相溶性が悪いという問題点を伴うことがなく、良好な形状のパターンを得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感光性組成物は、特定の感光性多価フェノール誘導体を有機溶媒に溶解した溶液である。この感光性組成物が含有する感光性多価フェノール誘導体は、重合体ではない多価フェノールに上記式(1)で表される有機基が導入された化合物である。そしてこの上記式(1)で表される有機基は、スルホニウム塩由来の光酸発生剤としての機能を有する構造と、酸解離基としての機能を併せ持つ有機基である。したがって、上記式(1)で表される有機基が多価フェノールに導入された感光性多価フェノール誘導体は、光酸発生剤としての機能を有する構造と酸解離基とを有するため、有機溶媒に溶解させることにより酸発生剤を含有させずに単独で化学増幅型の感光性組成物とすることができる。よって、本発明の感光性組成物は、酸発生剤と酸解離基を有するポリマーとの相溶性が悪いという問題点を伴うことがなく、良好な形状のパターンを形成することができる。この感光性多価フェノール誘導体は、それ自体ではアルカリ現像液に対して不溶又は極めて難溶であるが、活性放射線で露光すると、上記式(1)で表される有機基から酸が発生し、その酸の作用により、上記式(1)で表される有機基が解離(分解)して、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する。
【0030】
なお、上記式(1)で表される有機基が導入される多価フェノールは重合体ではなく、繰返し単位を有さない。そして、その多価フェノールの分子量は、好ましくは1000未満、さらに好ましくは800未満である。また、感光性多価フェノール誘導体の分子量は、好ましくは2000未満、さらに好ましくは1500未満である。パターンを形成した際に、ラインエッジラフネスが良好になるからである。
【0031】
式(1)において、R1は直鎖もしくは分岐の炭素数2〜9の有機基を表す。R2〜R5はそれぞれ独立に水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基である。R6及びR7はそれぞれ独立に有機基である。この有機基の例として、直鎖、分岐もしくは脂環式の構造のアルキル基が挙げられる。また、有機基の例として、炭素環式アリール基や複素環式アリール基が挙げられる。好ましい有機基は炭素環式アリール基であり、特に好ましい有機基はフェニル基、メチルフェニル基及びt−ブチルフェニル基である。上記の炭素環式アリール基や複素環式アリール基は、炭素数1〜30の置換基を有するものであってもよい。炭素数1〜30の置換基としては、炭素数1〜30の有機基又はアルコキシ基が好ましい。置換基である炭素数1〜30の有機基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びアダマンチル基等の脂環式アルキル基や、フェニル基及びナフチル基等のアリール基が挙げられる。また、置換基である炭素数1〜30のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基及び1−アダマンチルオキシ基等が挙げられる。また、R6及びR7は、互いに結合して環を形成してもよく、この場合には、上記炭素骨格を含む2価の有機基:−R6−R7−となる。このような2価の有機基としては、例えばR6及びR7が飽和炭素骨格を有してつながった炭素数3〜9の脂環式アルキル基があげられる。その脂環式アルキル基のうち好ましいものの例として、テトラメチレン基及びペンタメチレン基等のポリメチレン基等が挙げられる。一般に、2価の有機基−R6−R7−がSとともに形成する環は、好ましくは4員環〜8員環、より好ましくは5員環〜6員環を構成するとよい。
【0032】
また、本発明の感光性組成物が含有する感光性多価フェノール誘導体は、上記式(1)で表される有機基以外にも、上記式(2)で表される基や上記式(3)で表される基が導入されていてもよい。活性放射線の露光により上記式(1)で表される有機基から発生した酸の作用により、上記式(2)で表される基や上記式(3)で表される基が解離(分解)するため、式(2)で表される基や式(3)で表される基を多価フェノールに導入することにより、感光性組成物のアルカリ現像液に対する溶解性を調整することができる。式(2)で表される基や式(3)で表される基を導入する割合は、多価フェノールに対してそれぞれ5〜30mol%が好ましい。
【0033】
式(2)において、R8は、直鎖、環状もしくは分岐の炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜30の芳香族基を表す。それらのアルキル基及び芳香族基のうち好ましいものは、脂環式アルキル基及び炭素環式アリール基であり、特に好ましいものとして、エチル基、シクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基、フェニル基、ナフチル基及びジフェニルメチル基が挙げられる。上記の炭素環式アリール基は、炭素数1〜24の置換基を有するものであってもよい。炭素数1〜24の置換基としては、炭素数1〜24の有機基又はアルコキシ基が好ましい。置換基である炭素数1〜24の有機基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びアダマンチル基等の脂環式アルキル基や、フェニル基及びナフチル基等のアリール基が挙げられる。また、置換基である炭素数1〜24のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基及び1−アダマンチルオキシ基等が挙げられる。
【0034】
重合体ではない多価フェノールとして、例えば、上記式(A)〜(F)で表される化合物が挙げられる。上記式(A)〜(F)で表される重合体ではない多価フェノールにおいて、R11〜R13、R21〜R24、R32〜R34、R41〜R42及びR59〜R63は、それぞれ独立して、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。特に好ましい有機基として、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0035】
式(B)のZは、単結合、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜20の2価の有機基を表す。有機基としては、メチレン、エチレン、プロピレン及びイソプロピレン等の直鎖の有機基や、下記式(Z−1)〜式(Z−4)で表される脂環式又は芳香族の2価の有機基等が挙げられる。芳香族基は、置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜12の直鎖又は脂環式のアルキル基が挙げられる。
【0036】
【化13】

【0037】
式(C)のR31は水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基であり、式(D)のWは、CO、SO2又はエーテル結合である。式(E)のR51〜R58はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐の炭素数1〜12の有機基であり、R51とR52、R53とR54、R55とR56、R57とR58が脂環式の環を形成してもよい有機基を表し、特に好ましい有機基として、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。また、p、q、rは0又は1を表す。式(F)のR71〜R74はそれぞれ独立に炭素数2〜9のアルキル基を表す。
【0038】
式(A)において、a1〜f1は、a1+b1≦5、c1+d1≦5、e1+f1≦5、a1+c1+e1≧1を満たす0以上の整数である。式(B)において、a2〜h2は、a2+b2≦5、c2+d2≦5、e2+f2≦5、g2+h2≦5、a2+c2+e2+g2≧1を満たす0以上の整数である。式(C)において、a3〜f3は、a3+b3≦5、c3+d3≦5、e3+f3≦5、a3+c3+e3≧1を満たす0以上の整数である。式(D)において、a4〜d4は、a4+b4≦5、c4+d4≦5、a4+c4≧1を満たす0以上の整数である。式(E)において、a5〜j5は、a5+b5≦5、c5+d5≦5、e5+f5≦4、g5+h5≦4、i5+j5≦4、a5+c5+e5+g5+i5≧2を満たす0以上の整数である。
【0039】
式(1)において、X-で表される陰イオンは特に限定されず、従来から光酸発生剤に用いられている陰イオンとすることができる。陰イオンの例として、上記式(4)で表される陰イオン、上記式(5)で表される陰イオン及び上記式(6)で表される陰イオン(シクロ1,3−パーフルオロプロパンジスルホンイミドイオン)が挙げられる。また、その他のX-で表される陰イオンとしては、Cl-、Br-及びI-等のハロゲン化物イオンや、BF4-(テトラフルオロボレートイオン)、AsF6-(ヘキサフルオロアルセネートイオン)、SbF6-(ヘキサフルオロアンチモネートイオン)及びPF6-(ヘキサフルオロホスフェートイオン)等のフッ素化物イオン等の無機陰イオンが挙げられる。
【0040】
式(4)において、k、m及びnはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。mが0の場合には、kは1〜8の整数、nは2k+1であり、式(4)はパーフルオロアルキルスルホネートイオンである。好適なパーフルオロアルキルスルホネートイオンの例として、CF3 SO3- (トリフルオロメタンスルホネートイオン)、C49SO3-(ノナフルオロブタンスルホネートイオン)及びC817SO3-(ヘプタデカフルオロオクタンスルホネートイオン)等が挙げられる。
【0041】
また、式(4)において、nが0の場合には、kは1〜15の整数、mは1以上の整数であり、式(4)はアルキルスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン又はアルキルベンゼンスルホネートイオンである。アルキルスルホネートイオンの場合には、mは2k+1で示される。好適なアルキルスルホネートイオンの例として、CH3SO3-(メタンスルホネートイオン)、C25SO3-(エタンスルホネートイオン)、C919SO3-(1−ノナンスルホネートイオン)等や、橋架け環式アルキルスルホネートイオン、例えば、10−カンファースルホネートイオン等が挙げられる。また、好適なアルキルベンゼンスルホネートイオンの例として、4−メチルベンゼンスルホネートイオンや2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネートイオン等が挙げられる。
【0042】
さらに、式(4)において、m及びnがそれぞれ独立に1以上の整数の場合には、kは1〜10の整数であり、式(4)はフッ素置換ベンゼンスルホネートイオン、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオン又はフッ素置換アルキルスルホネートイオンである。好適なフッ素置換ベンゼンスルホネートイオンの例として、2−フルオロベンゼンスルホネートイオン、4−フルオロベンゼンスルホネートイオン、2,4−ジフルオロベンゼンスルホネートイオン及びペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等が挙げられる。また、好適なフッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオンの例として、2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネートイオン、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネートイオン、2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネートイオン及び3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネートイオン等が挙げられる。さらに、好適なフッ素置換アルキルスルホネートイオンの例として、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネートイオンが挙げられる。
【0043】
式(5)で表される陰イオンは、ビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンであり、式中、pは1〜8の整数である。好適なビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンの例として、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン及びビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミドイオン等が挙げられる。
【0044】
以上説明した本発明の感光性組成物が含有する感光性多価フェノール誘導体は、活性放射線(例えば、ディープUV、電子線、X線、EUV)の照射により効率よく酸を発生する光酸発生剤としての機能を有する構造と、この酸発生剤から発生した酸で解離(分解)しうる基を有するため、有機溶媒に溶解させることにより容易に化学増幅型の感光性組成物とすることができる。したがって、酸発生剤とフォトレジストの主成分である酸解離基を有するポリマーとの相溶性が悪いという問題を生じずに、良好な形状のパターンを得ることができるという効果を奏する。
【0045】
感光性多価フェノール誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記式(A)〜(F)で表される多価フェノールと、下記式(11)で表される化合物とを反応させることにより製造することができる。以下に製造方法の一例を示す。
【0046】
まず、下記反応式に示すように、メタンスルホン酸(CH3SO3H)中で、五酸化ニリン(P25)を触媒として、式(7)で表される化合物にジアルキルスルホキシドを反応させ、式(8)で表される化合物(メタンスルホン酸塩)を得る。なお、ジアルキルスルホキシドは、ジアルキルスルフィドを過酸化水素で酸化することにより容易に得ることができる。また、触媒である五酸化ニリンは、式(7)で表される化合物1モルに対して、0.1〜3.0モル、好ましくは0.5〜1.5モル用いる。メタンスルホン酸は、式(7)で表される化合物1モルに対して、1〜10モル、好ましくは4〜6モル用いる。反応温度は、通常0〜50℃、好ましくは10〜30℃であり、反応時間は、通常1〜15時間、好ましくは3〜8時間である。反応終了後、水を添加することにより反応を停止させる。
【0047】
【化14】

【0048】
次に、下記反応式に示すように、式(8)で表される化合物のCH3SO3-をX-で塩交換する。なお、下記反応式中、M+は一価の金属イオンを表す。具体的には、式(8)で表される化合物の水溶液に、X-、例えば、上記式(4)、式(5)又は式(6)を含む各種酸H+-あるいは塩M+-を、式(7)で表される化合物1モルに対して1〜2モル、好ましくは1.05〜1.2モルを加える。反応溶媒としては、塩素系溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム等を用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜50℃、好ましくは20〜30℃である。反応終了後、水層を分離し、更に有機層を水で洗浄する。洗浄終了後、適当な再結晶溶媒で結晶化させることにより、式(9)で表される化合物を得る。なお、式(8)で表される化合物を生成した後反応溶液にヨウ化カリウムを加え、式(9)で表される化合物をヨウ素イオンに塩交換することにより固体として取り出し、精製後、精製物についてX-で塩交換してもよく、また精製物について、スルホン酸エステルを用いてヨウ素イオンを塩交換してもよい。
【0049】
【化15】

【0050】
その後、下記反応式に示すように、式(9)で表される化合物と式(10)で表される化合物とを用いて脱ハロゲン化水素反応を行わせることにより、式(11)で表される化合物を得ることができる。なお、下記反応式中YはCl及びBr等のハロゲン原子を表す。具体的には、例えば、極性溶媒中で炭酸カリウム(K23)等の塩基性触媒の存在下で式(9)で表される化合物と式(10)で表される化合物を反応させる。反応温度は通常60〜90℃とする。反応終了後、溶媒を留去することにより、式(11)で表される化合物を得ることができる。なお、式(7)〜式(11)の化合物は、市販されているものを用いることもできる。
【0051】
【化16】

【0052】
この式(11)で表される化合物と式(A)〜(F)で表される多価フェノールとを有機溶媒中において酸性触媒下で反応させると、式(A)〜(F)で表される多価フェノールの−OHと式(11)で表される化合物の二重結合部位が反応して、上記式(1)で表される有機基が導入された感光性多価フェノール誘導体を製造することができる。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸及びトリフルオロ酢酸等を用いることができる。有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,3―ジオキソラン、1,3―ジオキサン等のエーテル類やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類を用いることができる。
【0053】
また、式(2)で表される基は、式(A)〜(F)で表される多価フェノールに、下記式(12)で表されるビニルエーテルを、1,3−ジオキソランやプロピレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒中において酸性触媒の存在下で付加反応させることにより導入することができる。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸及びトリフルオロ酢酸等を用いることができる。
【0054】
【化17】

(R8は直鎖、環状もしくは分岐の炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜30の芳香族基を表す。)
【0055】
また、式(3)で表される基は、下記式(13)で表されるジ−t−ブチルジカーボネートと式(A)〜(F)で表される多価フェノールとを、1,3−ジオキソラン等の有機溶媒中において塩基性触媒存在下で反応させることにより導入することができる。塩基性触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン及び4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。なお、上記式(11)で表される化合物と、上記式(12)で表される化合物や下記式(13)で表される化合物と、式(A)〜(F)で表される多価フェノールとを反応させる順番は特に限定されず、また、同時に反応させてもよい。
【0056】
【化18】

【0057】
ここで、式(A)〜(F)で表される多価フェノールの具体例としては、下記式(a−1)〜(a−8)、(b−1)〜(b−32)、(c−1)〜(c−56)、(d−1)〜(d−21)、(e−1)〜(e−196)及び(f−1)〜(f−15)に表される多価フェノールが挙げられる。
【0058】
【化19】

【0059】
【化20】

【0060】
【化21】

【0061】
【化22】

【0062】
【化23】

【0063】
【化24】

【0064】
【化25】

【0065】
【化26】

【0066】
【化27】

【0067】
【化28】

【0068】
【化29】

【0069】
【化30】

【0070】
【化31】

【0071】
【化32】

【0072】
【化33】

【0073】
【化34】

【0074】
【化35】

【0075】
【化36】

【0076】
【化37】

【0077】
【化38】

【0078】
【化39】

【0079】
【化40】

【0080】
【化41】

【0081】
【化42】

【0082】
【化43】

【0083】
これらの上記式(A)〜式(F)で表される多価フェノールに、式(11)で表される化合物を反応させると、それぞれ下記式(I)〜(VI)で表される感光性多価フェノール誘導体が製造できる。
【0084】
【化44】

(式中D11〜D13は互いに独立で、少なくとも1個は上記式(1)で表される基であり、残りは水素原子、上記式(2)で表される基又は上記式(3)で表される基である。その他の記号は、式(A)におけるものと同様である。)
【0085】
【化45】

(式中D21〜D24は互いに独立で、少なくとも1個は上記式(1)で表される基であり、残りは水素原子、上記式(2)で表される基又は上記式(3)で表される基である。その他の記号は、式(B)におけるものと同様である。)
【0086】
【化46】

(式中D31〜D33は互いに独立で、少なくとも1個は上記式(1)で表される基であり、残りは水素原子、上記式(2)で表される基又は上記式(3)で表される基である。その他の記号は、式(C)におけるものと同様である。)
【0087】
【化47】

(式中D41及びD42は互いに独立で、少なくとも1個は上記式(1)で表される基であり、残りは水素原子、上記式(2)で表される基又は上記式(3)で表される基である。その他の記号は、式(D)におけるものと同様である。)
【0088】
【化48】

(式中D51〜D55は互いに独立で、少なくとも1個は上記式(1)で表される基であり、残りは水素原子、上記式(2)で表される基又は上記式(3)で表される基である。その他の記号は、式(E)におけるものと同様である。)
【0089】
【化49】

(式中D71〜D78は互いに独立で、少なくとも1個は上記式(1)で表される基であり、残りは水素原子、上記式(2)で表される基又は上記式(3)で表される基である。その他の記号は、式(F)におけるものと同様である。)
【0090】
以上説明した感光性多価フェノール誘導体を有機溶媒に溶解したものが、本発明の感光性組成物である。有機溶媒としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類及びプロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類が挙げられる。また、有機溶媒には塩基、例えばアミン類を含有させてもよい。有機溶媒に溶解させる上記感光性多価フェノール誘導体の量は、その感光性多価フェノール誘導体が溶解可能な範囲で適宜選択することができるが、通常は3〜30重量%となるように溶解させることが好ましい。
【0091】
また、本発明の感光性組成物は、露光により上記式(1)で表される有機基から生じた酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光領域での好ましくない化学反応を抑制する作用等を有するいわゆる酸拡散制御剤を含有することが好ましい。酸拡散制御剤としては、露光や加熱により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。また、酸拡散制御剤の使用量は、感光性多価フェノール誘導体に対し、通常、0.005〜20重量%である。使用量が多いとレジストとしての感度や現像性が低下する傾向があり、また、少ないとレジストとしての解像度、プロセス安定性等の改善効果が不充分となるためである。
【0092】
また、本発明の感光性組成物には、必要に応じて、界面活性剤、増感剤、消泡剤等の各種添加剤を含有させてもよい。
【0093】
この本発明の感光性組成物からレジストパターンを形成する際には、感光性組成物を、スピンコーティング、流延塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハ等の基板の上に塗布することにより、レジスト膜を形成し、必要に応じ予め加熱処理を行った後、所定のパターンを有するマスクを介して露光する。その際に用いる活性放射線は、パターンの微細度及び感光性組成物の感度等に応じて、ディープUV、電子線、X線又はEUV(極端紫外線)等を適宜選択すればよい。また、露光量等の露光条件は、組成物の配合組成、各添加剤の種類等に応じて適宜選択すればよい。露光後に加熱処理を行うことが好ましく、その加熱条件は、組成物の配合組成、各添加剤の種類等により適宜選択すればよい。次いで、パターン露光されたレジスト膜を、アルカリ現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成することができる。アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水、モノ−、ジ−あるいはトリ−アルキルアミン類、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン等のアルカリ性化合物を、通常、1〜5重量%の濃度となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を用いた場合には、一般に現像後水洗を行う。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(合成例1)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩)の合成
【0095】
【化50】

【0096】
五酸化二リン9.30gとジフェニルスルホキシド25.7gとをメタンスルホン酸120gに溶解した後、フェノール18.0gを加えて室温で15時間攪拌した。30℃以下の温度を保ちながら水を390g滴下し、t−ブチルメチルエーテル130gで3回水層を洗浄した後、メチルイソブチルケトン130g及びパーフルオロブタンスルホン酸カリウム47.2gを加えて2時間攪拌した。攪拌を止め、分離した水層を取り除いた後、0.1重量%アンモニア水溶液130gを加え攪拌した。次に有機層を純水で洗浄し、これを分離した水層のpHが7になるまで繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩60.5gを得た。
【0097】
この4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩52.2g、炭酸カリウム18.0g、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン1.05gをジメチルスルホキシド26.1gに溶解した。その後クロロエチルビニルエーテルを13.9g添加し80℃まで昇温した。15時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を100g加え、ヘキサン100gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン209g、水260gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで純水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、油状の物質69.9gを得た。この物質は、1H−NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩であることを確認した。
1H−NMR (400 MHz,CDCl3)δ4.05−4.08(m,3H),4.24(d,J=7.4,2.4 Hz,1H),4.31−4.33(m,2H),6.49(dd,J=14.4,7.4 Hz,1H),7.24(d,J=6.8 Hz,2H),7.64−7.74(m,12H)
【0098】
(合成例2)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシエトキシ3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩)の合成
【0099】
【化51】

【0100】
五酸化二リン4.65gとビス(4−t−ブチルフェニル)スルホキシド20.0gとをメタンスルホン酸60gに溶解した後、2,6−キシレノール11.6gを加えて室温で15時間攪拌した。30℃以下の温度を保ちながら水を200g滴下し、t−ブチルメチルエーテル65gで3回水層を洗浄した後、メチルイソブチルケトン65g及びパーフルオロブタンスルホン酸カリウム23.6gを加えて2時間攪拌した。攪拌を止め、分離した水層を取り除いた後、0.1重量%アンモニア水溶液65gを加え攪拌した。次に有機層を純水で洗浄し、これを分離した水層のpHが7になるまで繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩35.4gを得た。
【0101】
この4−ヒドロキシ3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩28.6g、炭酸カリウム8.10g、及びN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン0.46gをジメチルスルホキシド142gに溶解した。その後クロロエチルビニルエーテルを6.08g添加し80℃まで昇温した。19時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を20.9g加え、ヘキサン85.1gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン226g、水141gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで純水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、褐色油状の物質27.4gを得た。この物質は、1H−NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシエトキシ3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩であることが確認された。
1H−NMR (400 MHz,CDCl3)δ1.35(s,18H),2.36(s,6H),4.02−4.08(m,3H),4.12−4.14(m,2H),4.25(d,J=14.3,6.1Hz,1H),6.50(dd,J=14.3,6.6 Hz,1H),7.35(s,2H),7.59−7.75(m,8H)
【0102】
(合成例3)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシオクトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩)の合成
【0103】
【化52】

【0104】
8−クロロ−1−オクタノール1.23g、炭酸ナトリウム0.47g、ジ−μ−クロロビス[η−シクロオクタジエンイリジウム(I)]0.47g、及び酢酸ビニル1.31gをトルエン6.15gに加え100℃で4時間攪拌した。室温まで冷却後、溶媒を留去し、溶媒としてヘキサンとジクロロメタン(体積比2:1)の混合溶媒を用いたカラムクロマトグラフィで精製することにより、無色透明液体の8−クロロオクチルビニルエーテル1.16gを得た。
【0105】
合成例1と同様にして得られた4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩2.67gと炭酸カリウム0.78g、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン0.05gとをジメチルスルホキシド13.3gに溶解した。その後8−クロロオクチルビニルエーテル1.05gを添加し80℃まで昇温した。15時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を13.3g加え、ヘキサン7.96gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン10.6g、水10gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで純水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、褐色油状の物質2.53gを得た。この物質は、1H−NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシオクトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩であることが確認された。
1H−NMR (400MHz,CDCl3)δ1.36−1.47(m,8H),1.64−1.67(m,2H),1.78−1.83(m,2H),3.67(t,J=6.6Hz,2H),3.96(dd,J=6.8,2.0Hz,1H),4.04(t,J=6.6Hz,2H).4.16(dd,J=14.4,2.0Hz,1H),6.46(dd,J=14.4,6.8Hz,1H),7.16−7.19(m,2H),7.65−7.76(m,12H)
【0106】
(合成例4)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム シクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩)の合成
【0107】
【化53】

【0108】
五酸化二リン5.13gとジフェニルスルホキシド14.6gとをメタンスルホン酸69gに溶解した後、フェノール10.2gを投入し室温で15時間攪拌した。30℃以下の温度を保ちながら水を220g滴下し、t−ブチルメチルエーテル73gで3回水層を洗浄した後、ジクロロメタン130g及びシクロ1,3−パーフルオロプロパンジスルホンイミドカリウム塩26.3gを投入し2時間攪拌した。攪拌を止め、分離した水層を取り除いた後、0.1重量%アンモニア水溶液65gを加え攪拌した。次に有機層を純水で洗浄し、これを分離した水層のpHが7になるまで繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、褐色油状の4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム シクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩35.3gを得た。
【0109】
この4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム シクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩32.1g、炭酸カリウム11.2g、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン0.67gをジメチルスルホキシド164gに溶解した。その後クロロエチルビニルエーテルを8.65g添加し80℃まで昇温した。15時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を80g加え、ヘキサン40gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン120g、水260gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで純水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、油状の物質29.1gを得た。この物質は、1H−NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム シクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩であることが確認された。
1H−NMR (400 MHz,CDCl3)δ4.05−4.08(m,3H),4.24(d,J=7.4,2.4Hz,1H),4.31−4.33(m,2H),6.49(dd,J=14.4,7.4Hz,1H),7.24(d,J=6.8Hz,2H),7.64−7.74(m,12H)
【0110】
(合成例5)
下記式で表される化合物(4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩)の合成
【0111】
【化54】

【0112】
五酸化二リン2.56gとジフェニルスルホキシド7.32gとをメタンスルホン酸35gに溶解した後、フェノール5.28gを投入し室温で15時間攪拌した。30℃以下の温度を保ちながら水を100g滴下し、t−ブチルメチルエーテル30gで3回水層を洗浄した後、ジクロロメタン60g及びビス(パーフルオロメタンスルホン)イミドカリウム塩12.8gを投入し2時間攪拌した。攪拌を止め、分離した水層を取り除いた後、0.1重量%アンモニア水溶液30gを加え攪拌した。次に有機層を純水で洗浄し、これを分離した水層のpHが7になるまで繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、褐色油状の4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩17.7gを得た。
【0113】
この4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩16.0g、炭酸カリウム4.7g、及びN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン0.33gをジメチルスルホキシド80gに溶解した。その後クロロエチルビニルエーテルを3.66g添加し80℃まで昇温した。15時間撹拌し、反応液を30℃以下に冷却した。濾過により固形分を取り除いた後、水を40g加え、ヘキサン30gを用いて水層を3回洗浄した。ジクロロメタン60g、水120gを加え攪拌し、ジクロロメタン層に目的物を抽出した。分離した水層のpHが7になるまで純水で有機層の洗浄を繰り返した。ロータリーエバポレーターで溶剤を留去することにより、油状の物質14.4gを得た。この物質は、1H−NMR及びイオンクロマトグラフィによる測定結果から、4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩であることが確認された。
1H−NMR (400 MHz,CDCl3)δ4.05−4.08(m,3H),4.24(d,J=7.4,2.4Hz,1H),4.31−4.33(m,2H),6.49(dd,J=14.4,7.4Hz,1H),7.24(d,J=6.8 Hz,2H),7.64−7.74(m,12H)
【0114】
(実施例1)
下記式(14)で表される感光性多価フェノール誘導体1の合成
【0115】
【化55】

【0116】
窒素雰囲気下、式(a−1)で表される多価フェノール5.00gと合成例1で得られた4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩1.03gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gに溶解し、共沸脱水で系中の水分を低減した。次いで、1−アダマンチルビニルエーテル1.95gを添加し、トリフルオロ酢酸18μLを添加して、30℃で3時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、25gの酢酸エチル及び25gの純水で分液水洗を行った。水洗を3回繰り返し、溶媒を減圧留去後、カラムクロマトグラフィで精製し、粘性のある化合物5.75gを得た。1H−NMRの結果から、D11〜D13がH、上記式(15)で表される基及び上記式(16)で表される基の何れかである上記式(14)で表される感光性多価フェノール誘導体が得られ、上記式(16)で表される酸発生剤基の導入率が13.5mol%、上記式(15)で表される1−(1−アダマンチルオキシ)エチル基の導入率が17.2mol%であることが確認された。
【0117】
(実施例2)下記式(17)で表される感光性多価フェノール誘導体2の合成
【0118】
【化56】

【0119】
窒素雰囲気下、式(b−29)で表される多価フェノール10.0gと合成例5で得られた4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム ビス(パーフルオロメタンスルホン)イミド塩1.69gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに溶解し、共沸脱水で系中の水分を低減した。次いで、シクロヘキシルビニルエーテル1.68gと1,3−ジオキソラン50gを添加し、トリフルオロ酢酸65μLを添加して、30℃で3時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、50gの酢酸エチル及び50gの純水で分液水洗を行った。水洗を3回繰り返し、溶媒を減圧留去後、カラムクロマトグラフィで精製し、粘性のある化合物10.4gを得た。1H−NMRの結果から、D21〜D24がH、上記式(18)で表される基及び上記式(19)で表される基の何れかである上記式(17)で表される感光性多価フェノール誘導体が得られ、上記式(19)で表される酸発生剤基の導入率は17.0mol%、上記式(18)で表される1−シクロヘキシルオキシエチル基の導入率は18.5mol%であることが確認された。
【0120】
(実施例3)下記式(20)で表される感光性多価フェノール誘導体3の合成
【0121】
【化57】

【0122】
窒素雰囲気下、式(c−3)で表される多価フェノール5.00gと合成例4で得られた4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム シクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミド塩0.87gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gに溶解し、共沸脱水で系中の水分を低減した。次いで、シクロヘキシルビニルエーテル0.90gを添加し、トリフルオロ酢酸15μLを添加して、30℃で1時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、25gの酢酸エチル及び25gの純水で分液水洗を行った。水洗を3回繰り返し、溶媒を減圧留去後、カラムクロマトグラフィで精製し、粘性のある化合物5.08gを得た。1H−NMRの結果から、D31〜D33がH、上記式(21)で表される基及び上記式(22)で表される基の何れかである上記式(20)で表される感光性多価フェノール誘導体が得られ、上記式(22)で表される酸発生剤基の導入率は13.1mol%、上記式(21)で表される1−シクロヘキシルオキシエチル基の導入率は17.4mol%であることが確認された。
【0123】
(実施例4)下記式(23)で表される感光性多価フェノール誘導体4の合成
【0124】
【化58】

【0125】
窒素雰囲気下、式(d−15)で表される多価フェノール5.00gと合成例3で得られた4−ビニロキシオクトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩2.55gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gに溶解し、共沸脱水で系中の水分を低減した。次いで、トリフルオロ酢酸30μLを添加して、30℃で1時間撹拌した。反応後、N,N−ジメチルアミノピリジン0.11gを添加し、50重量%ジ−t−ブチルジカーボネートのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液5.40gを反応液に滴下した。同温度で12時間撹拌後、50gの酢酸エチル及び50gの純水で分液水洗を行った。水洗を3回繰り返し、溶媒を減圧留去後、カラムクロマトグラフィで精製し、粘性のある化合物6.40gを得た。1H−NMRの結果から、D41及びD42がH、上記式(24)で表される基及び上記式(25)で表される基の何れかである上記式(23)で表される感光性多価フェノール誘導体が得られ、上記式(25)で表される酸発生剤基の導入率は16.9mol%、上記式(24)で表されるt−ブチルカルボニルオキシ基の導入率は18.8mol%であることが確認された。
【0126】
(実施例5)下記式(26)で表される感光性多価フェノール誘導体5の合成
【0127】
【化59】

【0128】
窒素雰囲気下、式(e−91)で表される多価フェノール5.00gと合成例2で得られた4−ビニロキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニルジ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩1.85gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gに溶解し、共沸脱水をした。次いで、エチルビニルエーテル0.86gを添加し、トリフルオロ酢酸21μLを添加して、30℃で3時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、50gの酢酸エチル及び50gの純水で分液水洗を行った。水洗を3回繰り返し、溶媒を減圧留去後、カラムクロマトグラフィで精製し、粘性のある化合物5.78gを得た。1H−NMRの結果から、D51〜D53がH、上記式(27)で表される基及び上記式(28)で表される基の何れかである上記式(26)で表される感光性多価フェノール誘導体が得られ、上記式(28)で表される酸発生剤基の導入率は16.5mol%、上記式(27)で表される1−エトキシエチル基の導入率は17.8mol%であることが確認された。
【0129】
(実施例6)下記式(29)で表される感光性多価フェノール誘導体6の合成
【0130】
【化60】

【0131】
窒素雰囲気下、式(f−2)で表される多価フェノール5.00gと合成例1で得られた4−ビニロキシエトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホン酸塩0.81gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gと1,3−ジオキソラン50gの混合溶媒に溶解し、共沸脱水をした。次いで、エチルビニルエーテル0.45gを添加し、トリフルオロ酢酸34μLを添加して、30℃で3時間撹拌した。反応後、アンモニア水で中和し、溶媒を留去した。その後、濃縮液を50gの酢酸エチル及び50gの純水で分液水洗を行った。水洗を3回繰り返し、溶媒を減圧留去後、カラムクロマトグラフィで精製し、粘性のある化合物4.88gを得た。1H−NMRの結果から、D71〜D78がH、上記式(30)で表される基及び上記式(31)で表される基の何れかである上記式(29)で表される感光性多価フェノール誘導体が得られ、上記式(31)で表される酸発生剤基の導入率は14.8mol%、上記式(30)で表される1−エトキシエチル基の導入率は16.8mol%であることが確認された。
【0132】
<キセノンランプを用いた露光による評価>
(フォトレジストの調製とブレークスルータイム測定)
実施例1で得た感光性多価フェノール誘導体1を100重量部と、トリエタノールアミン30重量部とを、プロピレングリコールモノメチルアセテート1000重量部に溶解し、フィルター(PTFEフィルター)でろ過してポジ型フォトレジスト溶液を調製した。このレジスト溶液を、シリコンウエハ(直径:4インチ)上にスピンコートし、120℃で90秒間プレベークし、膜厚300nmのレジスト膜を得た。このレジスト膜をキセノンランプ(波長:248nm)により露光し、次いで110℃で90秒間ポストベーク(露光後加熱)を行った。その後、23℃で現像液(2.38重量%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(TMAH)の水溶液)を用いて、ブレークスルータイムを測定した。なお、ブレークスルータイムとは、一定のエネルギーを照射した後、現像により残膜が皆無になる秒数(s)である。
【0133】
この結果、ブレークスルータイムは、露光量が100mJでは12.1秒、500mJの場合では3.0秒であった。したがって、実施例1で得た感光性多価フェノール誘導体1は、キセノンランプによる露光により、その感光性多価フェノール誘導体における式(1)で表される構造部分から酸が発生し、この酸により式(1)で表される基と式(2)で表される基又は式(3)で表される基とがそれぞれ解離(分解)し、現像液に対して難溶解性から可溶性になったことが判った。
【0134】
また、感光性多価フェノール誘導体1の代わりに実施例2〜6で得た感光性多価フェノール誘導体2〜6を用いて、上記と同様の方法によりポジ型フォトレジスト溶液を調製し、レジスト膜を得て、露光、ポストベーク、現像を行い、ブレークスルータイムを測定した。その結果、表1に示すように、ブレークスルータイムは、露光量100mJでは12±2秒(s)の範囲内、500mJでは3±1秒(s)の範囲内であった。したがって、感光性多価フェノール誘導体2〜6も、キセノンランプによる露光により、その感光性多価フェノール誘導体における式(1)で表される構造部分から酸が発生し、この酸により式(1)で表される基と式(2)で表される基又は式(3)で表される基とがそれぞれ解離(分解)し、現像液に対して難溶解性から可溶性になったことが判った。
【0135】
【表1】

【0136】
<電子描画装置での評価>
(フォトレジストの調製と塗布)
実施例1で得た感光性多価フェノール誘導体1を100重量部とトリフェニルシリルアミン40重量部とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2000重量部に溶解し、0.1μmのメンブレンフィルターでろ過してポジ型フォトレジスト溶液を調製した。このレジスト溶液を、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハ(4インチ)上にスピンコートし、ホットプレートを用いて120℃で90秒間加熱して膜厚100nmの均一な薄膜を作製した。同様に、実施例2〜6で得た感光性多価フェノール誘導体2〜6を用いてポジ型フォトレジスト溶液を調製し製膜した。
加速電圧50keVの電子線描画装置を用いて、上記で形成したフォトレジスト薄膜に照射した。照射後に90℃で加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)2.38重量%水溶液中に23℃にて30秒間浸漬し、純水でリンスして乾燥した。得られたパターンを下記の方法で評価した。
【0137】
(感度)
得られたパターンの断面を側長走査型電子顕微鏡(CD−SEM)で観察した。50nmライン(ラインアンドスペースの比は1:1)を解像することができる最小照射エネルギーを感度とした。
【0138】
(ラインエッジラフネス)
上記感度の下で作成したラインパターンの1.5μm長における任意の30点のライン幅を、CD−SEMにより測定し、そのバラツキの標準偏差を3倍したものをもってラインエッジラフネス(LER)とした。このラフネスの値が小さいほど平滑であることを意味する。
上記実施例1のフォトレジストを、加速電圧50keVの電子線描画装置で露光し50nmのラインアンドスペースのパターンを作成した。その際の感度は14.4μC/cm2、LERは3.1nmであり、良好なパターンが形成された。実施例2〜6のフォトレジストでは、感度は13〜18μC/cm2でLERは3.5〜6.2nmであり、良好なパターンが形成された。
【0139】
<極端紫外線(EUV)を用いた露光による評価>
(フォトレジストの調製と塗布)
実施例1で得た感光性多価フェノール誘導体1を100重量部と、トリフェニルシリルアミン50重量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2000重量部に溶解し、0.1μmのメンブレンフィルターでろ過してポジ型フォトレジスト溶液を調製した。このレジスト溶液をヘキサメチルジシラザン処理の施されたシリコンウエハ(直径:4インチ)上にスピンコートし、ホットプレートを用いて120℃で90秒間加熱して膜厚80nmの均一なフォトレジスト薄膜を作製した。
【0140】
(感度測定)
大型放射光施設SPring−8の直線加速器から入射した1GeVの加速電子を用いてニュースバル蓄積リングの偏向電磁石で発生させたシンクロトロン放射光を、Mo/Si多層膜反射で波長13.5nmに単色した極端紫外線(EUV)を、露光光に用いた。このEUVを、上記で形成したフォトレジスト薄膜に照射し、90℃で15秒間熱処理後、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)2.38重量%水溶液中に23℃にて30秒間浸漬させた。次に、純水でリンス後、乾燥後の膜厚を、Nanometrics社製の非接触型膜厚測定で測定した。この操作を、露光量の設定水準を多水準として種々行い、レジスト残膜厚が0になるときの露光量をEth感度として求めた。この結果、Eth感度は1.9mJ/cm2であり、本発明の感光性組成物で形成したフォトレジストの感度が極めて良好であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体ではない多価フェノールに下記式(1)で表される有機基が導入された感光性多価フェノール誘導体を有機溶媒に溶解させた溶液であることを特徴とする感光性組成物。
【化1】

(式(1)において、R1は直鎖もしくは分岐の炭素数2〜9の2価の有機基であり、R2〜R5はそれぞれ独立に水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基であり、R6及びR7はそれぞれ独立に有機基であり、R6とR7とは一緒になって2価の有機基を形成していてもよい。X-は陰イオンを表す。)
【請求項2】
下記式(2)で表される基及び下記式(3)で表される基のうち少なくとも一方が前記感光性多価フェノール誘導体に導入されていることを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
【化2】

(式(2)において、R8は直鎖、環状もしくは分岐の炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜30の芳香族基を表す。)
【化3】

【請求項3】
前記重合体ではない多価フェノールの分子量が1000未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記重合体ではない多価フェノールが、下記式(A)〜(F)の何れかであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の感光性組成物。
【化4】

(式(A)において、R11〜R13はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。a1〜f1は、a1+b1≦5、c1+d1≦5、e1+f1≦5、a1+c1+e1≧1を満たす0以上の整数である。)
【化5】

(式(B)において、R21〜R24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。a2〜h2は、a2+b2≦5、c2+d2≦5、e2+f2≦5、g2+h2≦5、a2+c2+e2+g2≧1を満たす0以上の整数である。Zは、単結合、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
【化6】

(式(C)において、R31は水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜3の有機基で、R32〜R34はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。a3〜f3は、a3+b3≦5、c3+d3≦5、e3+f3≦5、a3+c3+e3≧1を満たす0以上の整数である。)
【化7】

(式(D)において、R41、R42はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐もしくは脂環式の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。a4〜d4は、a4+b4≦5、c4+d4≦5、a4+c4≧1を満たす0以上の整数である。Wは、CO、SO2又はエーテル結合を表す。)
【化8】

(式(E)において、R51〜R58はそれぞれ独立に、水素原子又は直鎖もしくは分岐の炭素数1〜12の有機基であり、R51とR52、R53とR54、R55とR56、R57とR58が脂環式の環を形成してもよい。R59〜R63はそれぞれ独立に、水素原子、又は、直鎖、分岐、脂環式もしくは芳香族の炭素数1〜12の有機基又はアルコキシ基を表す。p、q、rは0又は1であり、a5〜j5は、a5+b5≦5、c5+d5≦5、e5+f5≦4、g5+h5≦4、i5+j5≦4、a5+c5+e5+g5+i5≧2を満たす0以上の整数である。)
【化9】

(式(F)において、R71〜R74は炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記X-で表される陰イオンが、下記式(4)で表される陰イオンであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の感光性組成物。
【化10】

(式(4)において、k、m及びnはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。mが0の場合、kは1〜8の整数、nは2k+1であり、式(4)はパーフルオロアルキルスルホネートイオンである。nが0の場合、kは1〜15の整数、mは1以上の整数であり、式(4)はアルキルスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン又はアルキルベンゼンスルホネートイオンである。m及びnがそれぞれ独立に1以上の整数の場合、kは1〜10の整数であり、式(4)はフッ素置換ベンゼンスルホネートイオン、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオン又はフッ素置換アルキルスルホネートイオンである。)
【請求項6】
前記X-で表される陰イオンが、下記式(5)で表されるビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の感光性組成物。
【化11】

(式中、pは1〜8の整数を表す。)
【請求項7】
前記X-で表される陰イオンが、下記式(6)で表される陰イオンであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の感光性組成物。
【化12】

【請求項8】
前記X-で表される陰イオンが、Cl-、Br-、I-、BF4-、AsF6-、SbF6-又はPF6-であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の感光性組成物。

【公開番号】特開2008−191413(P2008−191413A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25990(P2007−25990)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【出願人】(000222691)東洋合成工業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】