説明

感圧接着シート

【課題】所定形状に簡易に成形することができるとともに、成形後から使用時までの保存が容易であり、優れた接着力および高温における優れた保持力を有する感圧接着シートを提供すること。
【解決手段】
カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、可塑剤と、金属炭酸塩とを含有する接着組成物からなり、接着剤組成物が湿気硬化することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着シート、詳しくは、各種部材の接着に用いられる感圧接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感圧接着シートは、各種部材の接着に広く用いられている。
【0003】
例えば、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸をトルエン中で重合させることにより調製される感圧性接着剤溶液に、酸化カルシウムを配合し、その後、塗布および乾燥により形成された接着剤フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸を酢酸エチル中で重合させることにより調製される重合体ベース溶液に、イソシアネート系架橋剤を配合して、感圧性接着剤組成物を得、その後、塗布および乾燥により形成された接着剤層が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
特許文献1で提案される接着剤フィルムまたは特許文献2で提案される接着剤層は、使用時には、各種部材に貼り合わされ、続いて、湿気加湿されることにより、接着力を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−113562号公報
【特許文献2】特開平5−25450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の接着剤フィルムまたは特許文献2の接着剤層は、形成後から使用前までは、湿気硬化を防止すべく、それらを密封する必要があり、手間がかかるという不具合がある。
【0008】
また、特許文献2の接着剤層では、イソシアネート系架橋剤が配合されているので、硬化時に発泡する場合がある。
【0009】
一方、環境負荷を低減する観点から、特許文献2の感圧性接着剤組成物を、酢酸エチルを用いることなく調製し、フィルム状に成形することも検討される。しかし、その場合には、成形時に感圧性接着剤組成物が硬化してしまうという不具合がある。
【0010】
本発明の目的は、所定形状に簡易に成形することができとともに、成形後から使用時までの保存が容易であり、優れた接着力および高温における優れた保持力を有する感圧接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の感圧接着シートは、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、可塑剤と、金属炭酸塩とを含有する接着組成物からなり、前記接着剤組成物が湿気硬化することにより得られることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の感圧接着シートは、下記のゲル分率が、30質量%以上であることが好適である。
【0013】
ゲル分率:前記感圧接着シートをトルエンに24時間浸漬したときの、浸漬前の前記感圧接着シートの質量に対する、トルエン不溶分の乾燥質量の百分率
また、本発明の感圧接着シートでは、前記接着組成物は、シート状に成形された後、加湿されることにより得られることが好適である。
【0014】
また、本発明の感圧接着シートでは、前記接着組成物は、無溶剤で調製された後、シート状に成形されることが好適である。
【0015】
また、本発明の感圧接着シートでは、カルボキシル基が、前記カルボキシル基含有ポリマー中に0.1〜10質量%含有されていることが好適である。
【0016】
また、本発明の感圧接着シートでは、前記カルボキシル基含有ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体45〜90質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10質量%と、シアノ基含有ビニル単量体5〜50質量%とを含有する単量体組成物を重合することにより得られることが好適である。
【0017】
また、本発明の感圧接着シートでは、前記接着組成物が、さらに、粘着付与剤を含有することが好適である。
【0018】
また、本発明の感圧接着シートでは、前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウムであることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の感圧接着シートによれば、所定形状に簡易に成形することができるとともに、その成形後から使用時までの保存が容易であり、接着対象に対して優れた接着力および高温における優れた保持力を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の感圧接着シートは、接着剤組成物を湿気硬化させることにより得ることができる。
【0021】
本発明において、接着剤組成物は、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、可塑剤と、金属炭酸塩とを含有している。
【0022】
カルボキシル基含有ポリマーとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、アクリルポリマーなどをカルボキシル変性したポリマー(ゴムまたは樹脂)が挙げられ、好ましくは、カルボキシル変性されたアクリルポリマーが挙げられる。
【0023】
カルボキシル変性されたアクリルポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体((メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタアクリルをいう。以下同じ。)と、カルボキシル基含有ビニル単量体とを含有する単量体組成物を重合することにより得られる。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなど、炭素数2〜12の直鎖または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルなどの炭素数2〜4の直鎖または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0025】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸、例えば、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0026】
また、単量体組成物には、上記した単量体と共重合可能な単量体を含有することができ、そのような単量体としては、例えば、反応性官能基含有ビニル単量体、多官能ビニル単量体などが挙げられる。好ましくは、反応性官能基含有ビニル単量体が挙げられる。
【0027】
反応性官能基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニルモノマー、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−4ヒドロキシブチルなどのヒドロキシル基含有ビニル単量体、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル単量体、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基含有ビニル単量体、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有ビニル単量体、例えば、(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニル単量体、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミドなどのマレイミド系のイミド基含有ビニル単量体などが挙げられる。好ましくは、シアノ基含有ビニル単量体が挙げられる。
【0028】
多官能ビニル単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
単量体組成物は、アクリル酸アルキルエステル単量体、例えば、45〜99.9質量%、好ましくは、90〜99質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体、例えば、0.1〜55質量%、好ましくは、1〜10質量%とを含有している。また、単量体組成物に共重合可能な単量体を含有する場合には、例えば、55質量%未満の割合で含有する。
【0030】
また、単量体組成物に、共重合可能な単量体としてシアノ基含有ビニルモノマーを含有させる場合には、単量体組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を、例えば、45〜90質量%、好ましくは、70〜85質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体を、例えば、0.1〜10質量%、好ましくは、0.5〜7質量%と、シアノ基含有ビニル単量体を、例えば、5〜50質量%、好ましくは、10〜25質量%とを含有している。
【0031】
アクリルポリマーの重合方法は、公知の方法でよく、例えば、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などを、適宜選択することができる。
【0032】
また、アクリルポリマーの重合では、公知の重合開始剤、反応溶媒、連鎖移動剤、乳化剤などを、必要により、適宜用いることができる。なお、アクリルポリマーの重合において、反応溶媒を用いた場合には、反応後、蒸留などの方法により反応溶媒を留去する。
【0033】
これらカルボキシル基含有ポリマーには、カルボキシル基が、例えば、0.1〜10質量%、好ましくは、0.5〜5.0質量%含有されている。
【0034】
カルボキシル基の含有量が上記した範囲に満たないと、接着組成物を十分に湿気硬化させることができず、感圧接着シートの物性(接着力または保持力など)が低下する場合がある。カルボキシル基の含有量が上記した範囲を超過すると、湿気硬化速度が高くなる一方、カルボキシル基含有ポリマーのガラス転移点(Tg)が過度に高くなり、そのため、カルボキシル基含有ポリマーが常温で過度に硬くなる場合がある。
【0035】
可塑剤としては、カルボキシル基含有ポリマーを可塑化できれば特に限定されず、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤などが挙げられる。
【0036】
フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチル錫ラウレート(DOTL)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートなどのフタル酸エステルが挙げられる。
【0037】
脂肪酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルアジぺート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジぺート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルなどのアジピン酸エステルが挙げられる。
【0038】
また、可塑剤としては、例えば、高級アルコール(例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなど)、乾性油類や動植物油類(例えば、パラフィン類(パラフィン系オイルなど)、ワックス類、ナフテン類、アロマ類、アスファルト類、アマニ油など)、石油系オイル類、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類(例えば、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなど)なども挙げられる。
【0039】
これら可塑剤は、単独または2種以上併用することができる。また、可塑剤としては、好ましくは、脂肪酸系可塑剤が挙げられ、さらに好ましくは、アジピン酸エステルが挙げられる。
【0040】
可塑剤は、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、例えば、10〜300質量部、好ましくは、25〜150質量部の配合割合で配合される。
【0041】
可塑剤の配合割合が上記した範囲に満たないと、感圧接着シートの接着力が低下する場合がある。また、可塑剤の配合割合が上記した範囲を超過すると、接着組成物のゲル分率(後述)が所望の範囲にあらず、保持力(後述)が低下する場合がある。
【0042】
金属炭酸塩としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの第2族元素(周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版(1989))における第2族元素)の炭酸塩、例えば、炭酸亜鉛などの第12族元素(周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版(1989))における第12族元素)の炭酸塩、例えば、炭酸第一マンガン、炭酸第一鉄、炭酸第一コバルト、炭酸ニッケル、炭酸第二銅などの遷移元素の炭酸塩などが挙げられる。好ましくは、第2族元素の炭酸塩、さらに好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0043】
金属炭酸塩が第2族元素の炭酸塩であれば、容易に金属イオンを発生させることができ、金属炭酸塩の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基とのイオン結合により、架橋を形成することができる。
【0044】
そのため、上記した金属炭酸塩は、湿気硬化の硬化剤(あるいは架橋硬化剤)とされる。
【0045】
金属炭酸塩は、カルボキシル基含有ポリマーの種類や、カルボキシル基の含有量に応じて、適宜配合され、具体的には、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、例えば、3〜200質量部、好ましくは、10〜180質量部、さらに好ましくは、25〜100質量部の配合割合で配合される。
【0046】
金属炭酸塩の配合割合が上記した範囲未満であると、接着組成物のゲル分率(後述)が所望の範囲にならず、所望の物性(接着力または保持力など)を得ることができない場合がある。また、金属炭酸塩の配合割合が上記した範囲を超過すると、その超過分に応じた物性の向上を得ることができない場合がある。
【0047】
また、本発明の接着組成物には、必要により、粘着付与剤を配合することもできる。
【0048】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジンエステル類、テルペン系樹脂(例えば、テルペン−芳香族系液状樹脂、ポリテルペン樹脂など)、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂(例えば、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂など)、フェノール樹脂などが挙げられる。好ましくは、クマロン樹脂が挙げられる。
【0049】
粘着付与剤は、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、例えば、200質量部以下、好ましくは、1〜100質量部の配合割合で配合される。
【0050】
接着組成物に粘着付与剤が配合されていれば、感圧接着シートに粘着性を付与して、接着対象に対する感圧接着シートの密着性を向上させることができる。
【0051】
また、本発明の接着組成物には、必要により、充填剤、顔料、老化防止剤、難燃剤などの公知の添加剤を、適宜配合することができる。
【0052】
充填剤としては、例えば、中空ビーズなどの中空充填剤、例えば、加熱発泡ビーズなどの発泡性充填剤、例えば、タルクなど、上記した金属炭酸塩以外の無機充填剤などが挙げられる。好ましくは、中空充填剤、発泡性充填剤が挙げられる。
【0053】
充填剤が中空充填剤または発泡性充填剤であれば、感圧接着シートの見掛け密度を低下させることができ、感圧接着シートを軽量化することができる。
【0054】
そして、接着剤組成物を調製するには、カルボキシル基含有ポリマー、可塑剤、金属炭酸塩、必要により、粘着付与剤および添加剤を上記した配合割合で配合して、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などを用いて混合(混練)する。つまり、接着剤組成物を混練物として調製する。
【0055】
また、上記した接着剤組成物の調製は、例えば、無溶剤、つまり、酢酸エチル、トルエンなどの溶剤を用いることなく、実施する。
【0056】
接着剤組成物を無溶剤で調製すれば、感圧接着シートを所望の形状(例えば、比較的厚いシート状)に容易に成形することができるとともに、環境負荷を低減することができる。
【0057】
また、混練温度は、例えば、80〜160℃、好ましくは、100〜140℃である。
【0058】
また、上記の混練は、上記した各成分または混練物が、湿気と接触しないように、例えば、乾燥気体中で実施する。
【0059】
続いて、混練物を、例えば、プレス機、押出機、カレンダーロールなどの成形機により圧延して、シート状に成形する。これによって、接着組成物がシート状に成形される。なお、接着剤組成物をシート状に成形する際には、接着剤組成物の両面または片面に、不織布または基板などの基材を配置することもできる。
【0060】
シート状の接着組成物の厚みは、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.5〜5mmである。
【0061】
上記した成形後、シート状の接着組成物を湿気硬化させる。
【0062】
シート状の接着組成物を湿気硬化させるには、シート状の接着組成物を加湿させる。詳しくは、シート状の接着組成物を、常湿雰囲気下、具体的には、例えば、常温、常湿雰囲気下で、例えば、1時間〜30日間、好ましくは、10時間〜7日間、放置する。なお、常温および常湿とは、JIS Z8703に記載され、具体的には、5〜35℃、および、45〜85RH%である。
【0063】
また、シート状の接着組成物は、例えば、高湿雰囲気下、具体的には、例えば、40〜95℃の温度で、85RH%を超過し、98RH%以下の高湿雰囲気下で、例えば、1分間〜100時間、好ましくは、10分間〜24時間放置することにより、加湿させることもできる。
【0064】
上記した接着組成物の加湿は、例えば、接着組成物を恒温高湿器などに投入することにより実施する。
【0065】
上記した加湿によって、接着剤組成物が周囲の湿気を吸収して、金属炭酸塩の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基との間でイオン結合が形成されることにより、接着剤組成物が湿気硬化する。
【0066】
上記した接着剤組成物の湿気硬化によって、本発明の感圧接着シートを得る。
【0067】
得られた感圧接着シート(湿気硬化後の接着組成物)は、表面にタック性(粘着性)を有している。
【0068】
また、感圧接着シートの下記のゲル分率は、例えば、30質量%以上、好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、70質量%であり、通常、99質量%以下である。
【0069】
ゲル分率:感圧接着シートをトルエンに24時間浸漬したときの、浸漬前の感圧接着シートの質量に対する、トルエン不溶分(後の実施例の評価方法で詳述する。)の乾燥質量の百分率
ゲル分率が上記した範囲に満たない場合には、接着組成物の湿気硬化が不十分であり、感圧接着シートの接着性が低下する場合がある。
【0070】
また、感圧接着シート(湿気硬化後の接着組成物)の厚みは、例えば、0.1〜10mm、好ましくは、0.5〜5mmである。
【0071】
その後、感圧接着シートを接着対象に貼着し、感圧接着シートを介して複数の接着対象(例えば、感圧接着シートが貼着された接着対象、および、感圧接着シートが貼着されていない接着対象)を接着することができる。
【0072】
そして、本発明の感圧接着シートは、所定形状、具体的には、所望の厚み(具体的には、厚手)のフィルム状に、簡易に成形することができる。
【0073】
また、本発明の感圧接着シートは、その成形後から使用時までの保存が容易であり、接着対象に対して優れた接着力および高温における優れた保持力を発現することができる。
【実施例】
【0074】
以下に、製造例、実施例、および、比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
実施例1
アクリル酸ブチル85質量部、アクリル酸2質量部およびアクリロニトリル15質量部からなる単量体組成物を重合して、カルボキシル変性されたアクリルポリマーA(カルボキシル基含有ポリマー、カルボキシル基含有量1.2質量%、固形分100%)を得た。
【0076】
アクリルポリマーA、アジピン酸エステル(ポリサイザーP−103、DIC社製)および炭酸カルシウムを、表1に示す配合割合で配合し、ミキシングロールを用いて120℃で混練して、接着組成物を調製した。
【0077】
調製した接着剤組成物をプレス機により圧延し、厚み1mmのシート状に成形した。
【0078】
その後、シート状の接着組成物を、50℃、92RH%の恒温高湿器に投入して、12時間放置して、接着組成物を湿気硬化させることにより、感圧接着シートを得た。
【0079】
実施例2〜4および比較例1
各成分を、表1に示す配合割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
【0080】
実施例5
アクリル酸ブチル85質量部、アクリル酸6質量部およびアクリロニトリル15質量部からなる単量体組成物を重合して、カルボキシル変性されたアクリルポリマーB(カルボキシル基含有ポリマー、カルボキシル基含有量3.5質量%、固形分100%)を得た。
【0081】
アクリルポリマーB、アジピン酸エステル(ポリサイザーP−103、DIC社製)および炭酸カルシウムを、表1に示す配合割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
【0082】
比較例2
各成分を、表1に示す配合割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、接着組成物の調製を試みた。
【0083】
しかし、混練中に接着組成物が硬化したため、感圧接着シートを得ることができなかった。
【0084】
比較例3および4
各成分を、表1に示す配合割合で配合して、常温で攪拌して混合することにより、接着組成物のトルエン溶液を調製した。
【0085】
次いで、接着組成物のトルエン溶液を基材の表面に塗布し、100℃で乾燥して接着組成物からなるフィルムを形成し、かかるフィルムを、50℃、92RH%の恒温高湿器に投入して、12時間放置して、接着組成物を湿気硬化させることにより、厚み0.05mmの比較例3の感圧接着シート、および、厚み1mmの比較例4の感圧接着シートを得た。
【0086】
しかし、比較例4の感圧接着シートは発泡していた。
【0087】
評価方法
1. 接着力の測定
実施例1〜5および比較例1、3で得られた感圧接着シートの冷間圧延鋼板に対する接着力を、JIS K6854−3(接着剤−はく離接着強度試験方法−第3部:T形はく離、1999年)に準拠して測定した。その結果を表1に示す。
【0088】
なお、測定に用いた感圧接着シートおよび冷間圧延鋼板の大きさは、ともに25×150mmであった。
2. 保持力の測定
実施例1〜5および比較例1、3で得られた感圧接着シートの保持力を下記の方法により測定した。
【0089】
すなわち、感圧接着シートを25×25mmに切断し、厚み0.8mm、25×150mmの冷間圧延鋼板(一方)の中央に貼着し、その感圧接着シートを別の冷間圧延鋼板(他方。一方の冷間圧延鋼板と同一サイズ。)に貼着することにより、2枚の冷間圧延鋼板を感圧接着シートにより接着した。
【0090】
その後、一方の冷間圧延鋼板を固定して、他方の冷間圧延鋼板に300gのおもりを取り付け、80℃の条件で垂下した。そして、他方の冷間圧延鋼板が落下するまでの時間を測定した。その結果を表1に示す。
3. ゲル分率の測定
実施例1〜5および比較例1、3で得られた感圧接着シートのゲル分率(トルエン不溶分)を測定した。
【0091】
すなわち、感圧接着シート(約0.2g)を秤量し、次いで、酢酸エチル(50g)に24時間浸漬した。その後、これらを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶分を、乾燥後、秤量した。そして、浸漬前の感圧接着シートの質量に対する、トルエン不溶分の乾燥質量の百分率(=(トルエン不溶分の乾燥質量)/(浸漬前の感圧接着シートの質量)×100)を算出した。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
なお、表1中、接着組成物の配合処方欄の数値は、特段の記載がない限り、各成分の配合質量部数を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、
可塑剤と、
金属炭酸塩と
を含有する接着組成物からなり、
前記接着剤組成物が湿気硬化することにより得られることを特徴とする、感圧接着シート。
【請求項2】
下記のゲル分率が、30質量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の感圧接着シート。
ゲル分率:前記感圧接着シートをトルエンに24時間浸漬したときの、浸漬前の前記感圧接着シートの質量に対する、トルエン不溶分の乾燥質量の百分率
【請求項3】
前記接着組成物は、シート状に成形された後、加湿されることにより得られることを特徴とする、請求項1または2に記載の感圧接着シート。
【請求項4】
前記接着組成物は、無溶剤で調製された後、シート状に成形されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の感圧接着シート。
【請求項5】
カルボキシル基が、前記カルボキシル基含有ポリマー中に0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の感圧接着シート。
【請求項6】
前記カルボキシル基含有ポリマーが、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体45〜90質量%と、
カルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10質量%と、
シアノ基含有ビニル単量体5〜50質量%と
を含有する単量体組成物を重合することにより得られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の感圧接着シート。
【請求項7】
前記接着組成物が、さらに、粘着付与剤を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の感圧接着シート。
【請求項8】
前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の感圧接着シート。

【公開番号】特開2011−246600(P2011−246600A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120965(P2010−120965)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】