説明

慢性便秘の患者におけるテガセロドの有効性を同定するためのバイオマーカー

薬理遺伝学を、慢性便秘を有する患者のテガセロド(Zelmac(登録商標)/Zelnorm(登録商標))に対する応答で、選択的な候補遺伝子における多型の効果を評価するために使用した。解析により、6個の遺伝子(HTR4、HTR3B、MLN、AQP3、SLC12A2、SCNN1A)において12個の一塩基多型(SNP)を同定し、それらは、処置の4週後、テガセロドに対する少なくとも60%の応答率および5またはそれ以上のオッズ比(偽薬と比較して)と関連していた。同定した遺伝子は、セロトニンシグナリング、分泌および運動性を含む幅広い異なった機能を示しており、そのすべてが、消化管の正常な機能を維持するのに重要である。よって、本データは、慢性便秘が上記の同定した遺伝子の変異型(そのすべてが、テガセロドを用いた処置に対してよく応答する)に関連した、さまざまな病態生理学的メカニズムにより生じうることを示唆している。これらの変異型を有しない患者は、偽薬と比較して処置に対する有意な応答を示さず、このことは、慢性便秘が病態生理学的メカニズムによるものではなく、むしろ環境またはおそらく心理学的要因によるものであることを示している。これらの変異型を有する患者は、また、偽薬に応答する可能性は低く、このことは再び、これらの変異型が真の病態生理学と関連していることを示唆している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、インビトロでの組織試料の分析試験、およびより特には、テガセロドを用いた処置に対してより応答しそうである慢性便秘を有する個体を同定するための、遺伝的多型の局面に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
慢性便秘の蔓延はかなり一般的であり、それ以外は健康な集団の10-20%にわたると、最大で見積もられている。Higgins & Johanson、Am. J. Gastroenterol. 99:750-9 (2004); Talley et al., Am. J. Gastroenterol. 98: 1107-11 (2003)。米国だけでも、便秘により250万人が医師を訪れる。Sonnenburg & Koch、Dig. Disc. Sci. 34: 606-11 (1989)。慢性便秘には、遅通過(slow-transit)便秘、骨盤底機能障害、機能性便秘および便秘型過敏性腸症候群(C-IBS)を含む多くのサブタイプが存在する。Prather、Rev. Gastroenterol. Disorders、4: S11-16 (2004)。症状は、サブタイプに依存して変わり得るが、一般にそれらは、持続した緊張症状、固いまたは塊の多い便、および不完全な排出感と関連する不定期な腸運動(<3/週)を含む。Thompson et al., Gut 45 (suppl II): 43-7 (1999)。
【0003】
テガセロド(Zelnorm(登録商標)/Zelmac(登録商標); HTF919)は、2002年7月に便秘型過敏性腸症候群(C-IBS)の短期間の軽減のために、2004年8月に慢性便秘への適応のために、米食品医薬品局(FDA)により認可された。テガセロドは、セロトニン(5-HT4)受容体(HTR4)のアゴニストとして作用するアミノグアニジンインドール化合物であり、いくつかの動物モデルで、消化器(GI)管を通してプロモタイル薬(promotile drug)として作用することが証明されている。Pfannkuche HJ et al., Neurogastroenterol. Motil. 7: 280 (1995); Grider JR et al., Gastroenterology; 115:370-80 (1998)。テガセロドはまた、健常人(Degen L et al., Aliment Pharmacol. Ther. 15 (11):1745-51 (2001))、IBS-Cを有する患者(Prather CM et al., Gastroenterology; 118 (3):463-8 (2000))および慢性便秘を有する患者(Johanson et al., Clin. Gastroenterol. Hepatol. 2: 796-805 (2004))で、結腸通過時間を有意に増加させることが示された。腸運動における効果に加えて、5-HT4受容体アゴニストが、セロトニン(Kellum JM et al., Am. J. Physiol. 277: G515-G520 (1999))および動物モデルでの内臓感覚(Schikowski A et al., Neurogastroenterol. Motil. 14: 221-227 (2002); Coelho AM et al., Gastroenterol. 118 (4、suppl.2): A835; Yu S et al., Neurogastroenterol. Motil. 13: 445 (2001))に対して効果を有する証拠がある。
【0004】
しかしながら、すべての患者が、偽薬と比べてテガセロドに対する有意な応答を示すわけではない。北および南アメリカ全域の慢性便秘患者に対する最近の研究は、偽薬に対する25%と比較してテガセロドに対する43%の応答率を証明した。Johanson et al., Clin. Gastroenterol. Hepatol. 2: 796-805 (2004)。これまでのところ、ある患者が応答しない理由について理解できていない。したがって、いかにしてテガセロドが作用しているのかに関して、当分野でさらなる洞察の必要がある。さらに、慢性便秘または他の消化器疾患における同定した遺伝子の重要性のより深い理解が、消化器障害を処置するのによりずっと有効な新規治療の開発につながるであろう。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
本発明は、これらの要求に答える。本発明は、いかにテガセロドが作用するかについて、深い理解を効果的に提供し、そして、慢性便秘の処置のためにより効果的な治療を提供する。1つの局面では、本発明は、ある患者における慢性便秘が診断的に同定できる疾患であることを示している。慢性便秘は、そのすべてが、テガセロドを用いた処置によく応答する、いくつかの遺伝子(HTR4、HTR3B、AQP3、MLN、SLC12A2、SCNN1A、TPH)の変異型に関する様々な病態生理学的メカニズムから生じ得る。興味深いことに、診断的に同定できる、本発明のバイオマーカー遺伝子における変異型を有する患者は、また、偽薬には応答しない傾向があり、再び、これらの変異型が真の病態生理に関係していることを示唆している。他の局面では、本発明は、これらのバイオマーカー変異型を有さないある患者は、処置に対して、偽薬の場合と比べて有意な応答は示さず、このことは、それらの慢性便秘が生理学的なメカニズムによるものではなく、むしろ、環境または場合によっては心理学的要因によるものであり得ることを示している。
【0006】
1つの態様では、本発明は、選択された患者集団での慢性便秘の処置のための医薬の製造のための、テガセロドの使用を提供し、ここで患者集団は、患者によるテガセロドの効果のために1個またはそれ以上のバイオマーカーに基づいて選択される。これらのバイオマーカーは6個の同定された遺伝子の一塩基多型(SNP)である:5-HT4受容体遺伝子(HTR4;配列番号1-6); 5-HT3受容体サブユニットB遺伝子(HTR3B;配列番号7);モチリン遺伝子(MLN;配列番号8);アクアポリン3水チャネル遺伝子(AQP3;配列番号9);ナトリウム/カリウム/クロライド共輸送体1(NKCC1)としても知られる、溶質運搬遺伝子ファミリー12メンバーA2(SLC12A2;配列番号10-11);および、アミロライド-感受性上皮性ナトリウムチャネルαサブユニット(ENaCα)としても知られる、非電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニット遺伝子(SCNN1A;配列番号12)。テガセロドに対するより高い応答率と関連した全12個のSNPを、これら6個の遺伝子全てから同定した。テガセロドの効果を示すこれら12個のSNPの1個またはそれ以上を含むプロファイルを有する患者を、選択された“高応答”患者集団に含むものとして同定した。
【0007】
別の態様では、本発明は、他の選択された患者集団での慢性便秘の処置のための医薬の製造のための、テガセロドの使用を提供し、ここで、この患者集団は患者によるテガセロドの有効性に関する他のバイオマーカーに基づいて選択される。この態様では、マーカーは、上記パラグラフで同定した6個の遺伝子における多型およびトリプトファンヒドロキシラーゼ1遺伝子(TPH1;配列番号13-14)における2個の多型である。この態様では、テガセロドの効果を示すこれらのSNPの1個またはそれ以上を含むプロファイルを有する患者を、選択された“高応答”患者集団に含むものとして同定した。
【0008】
他の態様では、本発明は、個体のバイオマーカー遺伝子のSNPプロファイルに基づいて、偽薬を用いた処置よりもテガセロドを用いた処置により応答しやすい、慢性便秘を有する個体を同定する方法を提供する。ある態様では、個体は脊椎動物である。特定の態様では、脊椎動物はほ乳類である。より特定の態様では、ほ乳類はカニクイザルまたはヒトのような霊長類である。
【0009】
本発明はまた、対象の慢性便秘を処置する方法を提供する。方法は、最初に、本発明のバイオマーカー遺伝子における対象のSNPプロファイルを取得することを含む。本発明のバイオマーカー遺伝子における対象のSNPプロファイルがテガセロドによる処置の有効性の予測であるならば、テガセロドを対象の慢性便秘を処置するために対象に投与する。本明細書で使用するとき、薬剤または薬物の患者または患者への投与は、自己投与および他者投与を含む。治療及び診断の側面を含むそのような方法は、多くの当業者によって“セラノスティック(theranostic)”と呼ばれている。
【0010】
本発明はまた、処置すべき対象に発現したバイオマーカーの解析に基づいて、テガセロドによる消化器障害の処置のために臨床試験に含む対象を決定する方法を提供する。消化器障害は、慢性便秘、便秘型過敏性腸症候群、機能性消化不良、胃食道逆流疾患、および糖尿病性胃疾患を含む。既知のバイオマーカーSNPプロファイルとの比較により、対象が適当なテガセロド処置レジメンに感受性であることをそのバイオマーカーSNPプロファイルが示しているとき、対象を臨床試験に含んでもよい。逆に、対象のSNPプロファイルがテガセロド処置の有効性の指標であるプロファイルと類似していないとき、対象を臨床試験から除外してもよい。
【0011】
本発明はまた、テガセロドの投与が指示される状態の、処置効果を決定するための臨床解析、キットおよび試薬を提供する。ある態様では、キットは、ハイブリダイゼーションによりバイオマーカー遺伝子のSNPプロファイルを決定するための試薬を含む。他の態様では、キットは、ポリメラーゼ連鎖反応により、バイオマーカー遺伝子のSNPプロファイルを決定するための試薬を含む。
【0012】
図の簡単な説明
図1は、処置の4週間後に、“高応答”ジェノタイプの存在の関数として応答率を示している棒グラフである。応答=1つまたはそれ以上の完全自発腸運動(CSBM)の平均増加/基底にわたる週;少なくとも7日間の処置をした包括解析(ITT)白人;12個のSNPは元の12個の高応答性SNPを含む;14個のSNPはさらに2個のTPH1 SNPを含む;(%)は、それぞれのカテゴリーにおける、ジェノタイプ分類された集団の割合を示す。
【0013】
図2は、処置の4週間後に、“高応答”ジェノタイプの存在の関数としてオッズ比を示している1組のエラーバーである。12個のSNPは元の12個の高応答性SNPを含む;14個のSNPはさらに2個のTPH1 SNPを含む;ボックスはオッズ比を表し、線は95%信頼区間を表す。
【0014】
図3は、HTR4ゲノム領域にわたってジェノタイプ分類したSNPの位置および連鎖不均衡の決定の図面である。上記のパネルは、最初に、HTR4遺伝子のゲノム領域の多くにわたる12個のSNPを選択したことを示している。ボックスは、テガセロドに対する平均的な応答よりもより高い応答と関連したSNPを示している。十分な質のジェノタイプを産生せず、そのため、応答の評価に利用されなかった2個のSNPアッセイ(SNP-3802およびSNP-3803)を強調している。下のパネルは、HTR4に対する10個の十分なジェノタイプアッセイ間の連鎖不均衡(LD)を示している。下の左の事象は、SNP間の連鎖不均衡の程度を示しており(より高い値は、強いLDを示している)、上の右の事象は、SNP間の相対的な距離(塩基対で)を示している。テガセロドに対するより高い応答性を示した6個のSNP(SNP 1746、3754、3753、3743、3756、および3747)が、お互いの間で、特に、これらのSNPの最初の4個(1746、3754、3753、および3743)で、高い程度の連鎖不均衡(>0.6(最初の4個はLD>0.8))を示していることは注目すべきである。
【0015】
図4は、5-HT4受容体の構造を示しており、関連線により示された異なる5-HT4 受容体エキソン中のオルタナティブスプライシングの可能性を図式により示している。ボックスはエキソンを表し、一方でイントロンは、太線として示している。エキソン4と5の間の点線は、mRNAの中にエキソンhを含むスプライシングを表しており、一方で、破線の後のスプライス事象は、エキソンhを除外する。エキソン5下流では、C末端エキソンの異なった組合せを、あらゆるスプライシングバリエントについて種々の形式の線を用いて描写する。C末端バリエントeおよびfを、エキソンg内の2個のオルタナティブスプライス受容サイトに基づいて作製する。
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
慢性便秘を有する患者のテガセロド(Zelmac(登録商標)/Zelnorm(登録商標);HTF919)に対する応答に関して、選択候補遺伝子での多型の効果を評価するために、薬理遺伝学を用いた。薬物標的(5-HT4受容体、HTR4)、セロトニン経路、溶質移動および腸運動性に関する23個の遺伝子で全55個の一塩基多型(SNP)が、臨床試験に登録した対象について評価された。解析は、包括解析(ITT)集団で、高投与テガセロド(6 mgを1日に2回)または偽薬を用いて少なくとも7日間の処置を完結した白人のみに限定した。解析の結果は、6個の遺伝子[HTR4(5-HT4受容体遺伝子;配列番号1-6;以下の配列表を参照)、HTR3B(5-HT3受容体サブユニットB遺伝子;配列番号7)、MLN(モチリン遺伝子;配列番号8)、AQP3(アクアポリン3水チャネル遺伝子;配列番号9)、SLC12A2(溶質運搬遺伝子ファミリー12メンバーA2;ナトリウム/カリウム/クロライド共輸送体1;NKCC1;配列番号10-11)、SCNN1A(非電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニット遺伝子;ENaCα;配列番号12)]で12個のSNPを同定し、処置の4週間後に、テガセロドに対する少なくとも60%の応答率および5またはそれ以上のオッズ比(偽薬と比較して)を証明した。これを、それぞれ、テガセロドおよび偽薬に対して46%および25%(2.6のオッズ比)の全体的な平均応答率と比較した。1つの態様として、これら12個の“高応答”SNPを用いて、我々は、12個のSNPの少なくとも1個を有する個体(集団のおよそ50%)が、偽薬と比較してテガセロドに対する有意に高い応答性を示す(62%対23%、オッズ比=5.4)ことを発見した。これは、12個のSNPを1つも有しない患者と対照的で、これらの患者は、偽薬と比較してテガセロドに対する応答性に有意な差を示さなかった(31%対27%、オッズ比=1.3)。
【0017】
さらに、TPH1(トリプトファンヒドロキシラーゼ1;配列番号13-14;以下の配列表を参照)に2個のSNPを含む第2の14個のSNP態様では、これらの14個のSNPのいずれも有しない32%の集団は、偽薬と比較してテガセロドに対する応答性に有意な差を示さなかった(32%対30%応答、オッズ比=1.1)。これらの14個のSNPの少なくとも1個を有する68%の集団は、14個のSNP態様を用いて見られたものよりは低い程度ではあるが、偽薬と比較してテガセロドに対する有意に高い応答性を示す(53%対22%、オッズ比=4.1)ことが証明された。
【0018】
これらの発見に基づいて、慢性便秘は、上記の同定した遺伝子の変異型(そのすべてはテガセロドを用いた処置に対し、よい応答を示す)に関連したさまざまな病態生理学的メカニズムにより生じる。これらの変異型を有しない患者は、偽薬で行ったときより有意な処置に対する応答性を示さず、このことは、それらの慢性便秘が病態生理学的なメカニズムによるものではなく、むしろ、環境または場合によっては心理学的要因によるものであることを示している。興味深いことにこれらの変異型を有する患者は、偽薬には応答しない傾向があり、再び、これらの変異型が真の病態生理に関係していることを示唆している。
【0019】
ここで同定した多型は、また、例えば便秘型過敏性腸症候群、機能性消化不良、胃食道逆流疾患、および糖尿病性胃疾患のような他の消化器障害に対しても関連があり得る。
【0020】
定義:
本明細書で使用するとき、“病状”は、限定するものではないが、処置が望まれる1個またはそれ以上の身体的および/または心理学的兆候として顕れる何らかの状態または疾患を含み、以前および新規に同定した疾患ならびに他の障害を含む。
【0021】
“臨床応答”なる用語は、以下のいずれかまたはすべてを意味する:応答、非応答および逆応答(すなわち副作用)の量的測定。
【0022】
処置に対する臨床応答とジェノタイプまたはハプロタイプの間の相関を推測するために、ジェノタイプまたはハプロタイプのデータを、処置を受けた個体集団(今後“臨床集団”)によって示された臨床応答に関して取得する。この臨床データを、すでに行われている臨床試験の結果を解析すること、および/または1個またはそれ以上の新たな臨床試験を計画し実行することによって取得し得る。
【0023】
“臨床試験”なる用語は、特定の処置に対する応答の臨床データを集めるために計画した全ての調査研究を意味し、非限定的に、フェーズI、フェーズIIおよびフェーズIII臨床試験を含む。患者集団の定義および対象の登録のために標準法を使用する。
【0024】
好ましくは、臨床集団に含まれる個体は、興味ある病状の存在に対して段階的である。この潜在的な患者の格付けには、標準的な物理試験または1個またはそれ以上の研究室試験を使用できる。あるいは、患者の格付けは、ハプロタイプ対と疾患感受性または重篤度の間に強い相関がある状況のためにハプロタイピングを使用することができる。
【0025】
興味ある治療処置を試験集団のそれぞれの個体に投与し、処置に対するそれぞれの個体応答を1個またはそれ以上の先に決定した基準を用いて測定する。多くの場合に、試験集団は広範な応答を示し、治験医はさまざまな応答により形成された応答群(例えば、低、中、高)の数を選ぶことを考慮している。さらに、試験集団におけるそれぞれの個体の遺伝子は、ジェノタイプ分類および/またはハプロタイプ分類され、それは処置を投与する前または後になされ得る。
【0026】
本明細書で使用するとき、“SNP核酸”は、個体または個体群の間でそれ以外は同一のヌクレオチド配列内で変わり得るヌクレオチド(よって、アレルとして存在する)を含む核酸配列である。そのようなSNP核酸は、好ましくは、長さが約15から約500ヌクレオチドである。SNP核酸は、染色体の一部であり、またはそれらは、例えば、PCRまたはクローニングを介したそのような染色体の一部の増幅による染色体の一部の正確なコピーであり得る。SNP核酸は、今後、“SNP”と単純化して呼ぶ。本発明によるSNPプローブは、SNP核酸に相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0027】
“相補的な”なる用語は、ワトソンとクリックの言葉の意味で、オリゴヌクレオチドの長さを通して相補的であることを意味している。
【0028】
本明細書で使用するとき、“多型”なる用語は、集団の1%を超える頻度で存在する、何らかの配列変異型を意味する。配列変異型は、有意に1%を超える頻度、例えば、5%または10%またはそれ以上の頻度で存在し得る。また、その用語は、個体において多型サイトで観察された、配列変異型のことを言うのに使用し得る。多型は、ヌクレオチド置換、挿入、欠失およびマイクロサテライトを含み、必要はないが、遺伝子発現またはタンパク質機能に検出できる差異を生じ得る。
【0029】
“ジェノタイプ”なる用語は、個体における相同染色体対上の座での1個またはそれ以上の多型サイトで発見された、ヌクレオチド塩基対の相ではない(unphased)5'から3'配列を意味する。本明細書で使用するとき、ジェノタイプは、完全ジェノタイプおよび/またはサブジェノタイプを含む。
【0030】
“ポリヌクレオチド”なる用語は、全てのRNAまたはDNAを意味し、非修飾または修飾RNAまたはDNAであり得る。ポリヌクレオチドは、非限定的に、1本鎖および2本鎖DNA(1本鎖および2本鎖領域の混合物であるDNA)、1本鎖および2本鎖RNA(1本鎖および2本鎖領域の混合物であるRNA)、およびハイブリッド分子(1本鎖またはより典型的には2本鎖、もしくは1本鎖および2本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含む)を含む。さらに、ポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAもしくはRNAおよびDNAの両方を含む3本鎖領域のことを言う。ポリヌクレオチドなる用語は、また、1個またはそれ以上の修飾された塩基を含むDNAまたはRNAおよび安定性または他の理由のために修飾されたバックボーンを有するDNAまたはRNAを含む。
【0031】
本明細書で使用するとき、“遺伝子”なる用語は、RNA産物の制御された生合成に関するすべての情報(プロモーター、エキソン、イントロン、および発現を制御する他の非翻訳領域を含む)を含む、DNAの断片を意味する。
【0032】
本明細書で使用するとき、“座”なる用語は、遺伝子または身体的もしくは表現的特徴に相当する、染色体またはDNA分子上の位置を意味する。
【0033】
本明細書で使用するとき、“ポリペプチド”なる用語は、お互いに、ペプチド結合または修飾性ペプチド結合、すなわちペプチドイソスターにより結合した、2個またはそれ以上のアミノ酸を含む任意のポリペプチドを意味する。ポリペプチドは、通常、ペプチド、グリコペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短鎖、および一般に、タンパク質と呼ばれる長鎖の両方を言う。ポリペプチドは、20個の遺伝子によってコードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。ポリペプチドは、例えば、翻訳後プロセッシングのような自然の過程か、または当業者に既知の化学的修飾技術により修飾されたアミノ酸配列を含む。そのような修飾は、基本的な教科書、より詳細なモノグラフおよび多量の研究文献に十分記載されている。
【0034】
“多型サイト”なる用語は、少なくとも2個の他の配列が集団で発見される、座内の位置を意味し、その最も頻繁なものは99%を超えない頻度を有する。
【0035】
“段階的な”なる用語は、座における2個またはそれ以上の多型サイトのヌクレオチド対の配列に適用するとき、座の1コピー上のそれらの多型サイトに存在するヌクレオチドの組合せは既知であることを意味する。
【0036】
1塩基多型。ヒトゲノムにおける塩基変化は、主に、1塩基多型(“SNP”)からなり、残り(remainder)は短少直列リピート(マイクロサテライトを含む)、長直列リピート(ミニサテライト)、および他の挿入ならびに欠失である。SNPは、ゲノム中の1つの位置におけるヌクレオチド変異性の発生であり、そこではヒト集団において、2個の塩基の交換が適当な頻度(すなわち>1%)で起こる。SNPは、遺伝子内またはゲノムの遺伝子間の領域で起こり得る。
【0037】
SNPは、種のいくつかのメンバーが非突然変異配列(すなわち、元々のアレル)を有し、一方で、他のメンバーが突然変異配列(すなわち、変異型または突然変異アレル)を有し得る、多型の存在のために“アレル”であると言われる。最も単純な場合には、1個の突然変異配列のみが存在し、多型は2アレルであると言われる。他の突然変異の発生は、3アレル多型などを生じることができる。SNPは、ゲノムに渡って広く存在しており、遺伝子の機能を変えるSNPは、直接、表現型変化に関与し得る。SNPは、それらの普及と幅広さのために、ヒトの病状に関与する遺伝子の位置を特定するための重要な道具である可能性を有する。例えば、2,227SNPをDNA領域の2.3メガベース領域にわたってマッピングしている予備的研究を開示した、Wang et al., Science 280: 1077-1082 (1998)を参照のこと。
【0038】
1個のヌクレオチド多型と特定の表現型の間の関連は、SNPが表現型の原因となることを必ずしも示していないか、または必要としない。かわりに、関連は、単に、SNPとある表現型に対して実際に責任があるそれらの遺伝的要因の間のゲノム近似性によるものであり得、その結果、SNPと該遺伝的要因は、しばしば一緒に観察される。よって、SNPは、“真の”機能的変異型を有する連鎖不均衡(LD)であり得る。また、アレル関連として知られるLDは、ゲノムの2つの異なった位置のアレルが期待以上により高い関連があるとき、存在する。
【0039】
よって、SNPは、特定の表現型を生じる突然変異の近傍に存在することにより価値を有する、マーカーとして使用し得る。
【0040】
疾患と関連のあるSNPは、また、それらが位置している遺伝子の機能に直接的な影響を有し得る。配列変異型はアミノ酸変化を生じるか、またはエキソン-イントロンスプライシングを変え、それによって、直接、関連のあるタンパク質の機能を修飾するか、もしくは、それは制御領域に存在し、発現のサイクルまたはmRNAの安定性を変え得る。例えば、Nowotny et al., Current Opinions in Neuobiology 11:637-641 (2001)を参照のこと。
【0041】
多くの一般的な障害を発症するリスクおよびこれらの状態の処置のために使用する医薬の代謝が、内在するゲノム変化により重大な影響を受けることが(何らかの1個のバリアントの影響は小さいが)、ますます明らかになってきている。したがって、SNPと臨床表現型との関連は、(1)SNPが機能的に表現型に関与し得るか、または(2)表現型を生じるゲノム上のSNPの位置の近くに他の突然変異があり得ることを示している。第2の可能性は、DNAの大きな断片が継承され、近くにあり、そして十分に分離されたリコンビナント現象が欠如しているために、マーカーが連鎖不均衡(LD)であり得るという点で、遺伝生物学に基づく。
【0042】
SNPの同定と特徴づけ。1本鎖構造多型(SSCP)解析、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)によるヘテロ2本鎖解析、直接DNAシークエンシングおよびコンピューター法(Shi et al., Clin. Chem. 47:164-172 (2001)を参照)を含む多くの異なった技術を、SNPを同定し特徴づけるのに使用できる。公開データベースにおける配列情報の豊富さのおかげで、コンピューターツールを使用して、ある遺伝子の提供された配列(cDNAまたはゲノム配列)を独立して並べることにより、インシリコでSNPを同定することができる。Cox et al., Hum Mutal 2001,17:141-150。
【0043】
最も一般的なSNPタイピング法は、現在のところ、ハイブリダイゼーション、プライマー伸張、および切断法を含む。これらの方法のそれぞれは、適当な検出系と繋げなければならない。検出技術は、蛍光偏光(Chan et al., Genome Res. 9:492-499 (1999)を参照)、ピロホスファターゼ解放の発光検出(ピロシークエンシング)、(Ahmadiian et al., Anal. Biochem. 280:103-10 (2000)を参照)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)-に基づく切断アッセイ、DHPLC、および質量分析を含む(Shi、Clin. Chem. 47:164-172 (2001)および米国特許第6,300,076B1号を参照)。SNPを検出し特徴づける他の方法は、米国特許第6,297,018B1号および第6,300,063B1号に記載された方法である。上記引用文献の開示は、それらの全体を引用により本明細書の一部とする。
【0044】
特に好ましい態様では、多型の検出をINVADER(商標)技術(Third Wave Technologies Inc. Madison、Wisconsin、USAから利用できる)により達成できる。このアッセイでは、特異的な上流の“インベーダー”オリゴヌクレオチドおよび部分的に重複する下流のプローブは、相補的なDNA鋳型に結合するとき、一緒に、特異的な構造を形成する。この構造は、切断酵素(Cleavase enzyme)により特異的なサイトで認識、切断され、その結果、プローブオリゴヌクレオチドの5'フラップの解放を生じる。その後、この断片は、反応混合物に含まれる合成二次標的および二次蛍光標識シグナルプローブの観点から、“インベンダー”オリゴヌクレオチドとして役立つ。この結果、切断酵素による二次シグナルプローブの特異的切断を生じる。蛍光シグナルは、蛍光共鳴エネルギー移動が可能な色素分子で標識したこの二次プローブが切断されると発生する。切断は、重複DNA配列またはフラップにより形成された構造と比較して、厳格な必須要件を有し、それ故、下流のDNA鎖の切断サイトの直ぐ上流にある一塩基対ミスマッチを、特異的に検出するために使用できる。Ryan D et al., Molecular Diagnosis 4(2): 135-144 (1999)およびLyamichev V et al.. Nature Biotechnology 17: 292-296 (1999)を参照のこと。また、米国特許第5,846,717号および第6,001,567号を参照のこと(それらの開示の全体を、引用により本明細書の一部とする)。
【0045】
本発明のジェノタイピングオリゴヌクレオチドを、例えば上述したような、SNPタイピング法を実行するのに使用する。本発明のいくつかの態様は、同時に2個またはそれ以上の多型サイトでのヌクレオチドの同定検索を行うために、2個またはそれ以上の異なって標識されたジェノタイピングオリゴヌクレオチドを含む。また、プライマー組成は、多型サイトを含む2個またはそれ以上の領域の同時のターゲッティングおよび増幅が可能となるように、2個またはそれ以上のアレル特異的プライマー対を含み得ることが考慮される。
【0046】
本発明のジェノタイピングオリゴヌクレオチドを、マイクロチップ、ビーズ、またはガラススライドのような固相表面上に固定または合成してもよい(例えば、WO 98/20020およびWO 98/20019を参照)。そのような固定化ジェノタイピングオリゴヌクレオチドを、非限定的に、プローブハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸張アッセイを含む、さまざまな多型検出アッセイで使用し得る。本発明の固定化ジェノタイピングオリゴヌクレオチドは、同時に複数の遺伝子での多型に対して、素早くDNA試料をスクリーニングするために設計された、オリゴヌクレオチドの秩序アレイを含み得る。
【0047】
本発明のアレル特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、特定のSNPの1個のヌクレオチドのみに相補的な、3'末端ヌクレオチド、または、好ましくは、3'の最後から2番目のヌクレオチドを有し、それによって、そのヌクレオチドを含むアレルが存在する場合に限り、ポリメラーゼ仲介伸張プライマーとして作用する。コード鎖または非コード鎖にハイブリダイズするアレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プライマーは、本発明により考慮されている。遺伝子多型を検出するためのASOプライマーを、当業者に既知の技術を用いて開発できる。
【0048】
本発明の他のジェノタイピングオリゴヌクレオチドは、本明細書で同定した多型サイトの内1個の、1から数ヌクレオチド下流に位置する標的領域にハイブリダイズする。そのようなオリゴヌクレオチドは、本明細書で記載した多型の1個を検出するためのポリメラーゼ仲介プライマー伸張法に役立ち、したがって、そのようなジェノタイピングオリゴヌクレオチドは、本明細書では、“プライマー伸張オリゴヌクレオチド”と呼ばれている。好ましい態様では、プライマー伸張オリゴヌクレオチドの3'末端は、多型サイトにすぐ隣接した場所にあるヌクレオチドに相補的なデオキシヌクレオチドである。
【0049】
ジェノタイピングおよびハプロタイピング。本発明のオリゴヌクレオチド組成物およびキットは、個体の遺伝子をジェノタイピングするおよび/またはハプロタイピングする方法に役立つ。“ジェノタイプ”および“ハプロタイプ”なる用語は、本明細書に記載した多型サイトの1個またはそれ以上に存在する、それぞれ、ヌクレオチド対またはヌクレオチドを含むジェノタイプまたはハプロタイプを意味し、所望により、また、遺伝子の1個またはそれ以上のさらなる多型サイトに存在する、ヌクレオチド対もしくはヌクレオチドを含む。さらなる多型サイトは、現在既知の多型サイトまたは今後発見されるであろうサイトであってよい。
【0050】
本発明のジェノタイピング法の1つの態様は、個体から興味ある遺伝子の2コピーまたはその断片を含む、核酸混合物を単離し、2つのコピーの1個またはそれ以上の多型サイトでヌクレオチド対の同定を決定することを含む。当業者に容易に理解されるように、個体の遺伝子の2“コピー”は同じアレル、または、異なったアレルであり得る。特に好ましい態様では、ジェノタイピング法は、それぞれの多型サイトでヌクレオチド対の同定を決定することを含む。
【0051】
典型的には、核酸混合物を個体から採取した生物学的試料、例えば、血液試料または組織試料から単離する。適当な組織試料は、全血、唾液、涙、尿、糞便物質、汗、口腔標本、皮膚および髪を含む。核酸混合物は、ゲノムDNA、mRNA、またはcDNAからなり得、後者の2つの場合には、生物学的試料は、遺伝子が発現している器官から取得しなければならない。さらに、mRNAまたはcDNA調製物を、イントロンまたは5'および3'非翻訳領域に位置する多型を検出するのに使用しないことは、当業者により理解されている。遺伝子断片が単離されれば、それはジェノタイプ分類すべき多型サイトを含むはずである。
【0052】
本発明のハプロタイピング法の1つの態様は、個体から興味ある遺伝子の2コピーのうち1個のみまたはその断片を含む核酸分子を単離し、そのコピーの1個またはそれ以上の多型サイトでヌクレオチドの同定を決定することを含む。核酸を、遺伝子の2コピーまたは断片を分離することができる任意の方法を使用して単離し得る。当業者が容易に理解するように、全ての個々のクローンは、個体に存在する2個の遺伝子コピーのうち1個に関するハプロタイプ情報を提供するのみである。個体の他のコピーに対するハプロタイプ情報を望むならば、さらなるクローンを調べる必要がある。典型的には、少なくとも5個のクローンを、個体における遺伝子の両方のコピーをハプロタイプする、90%以上の可能性を有するために調べるべきである。特に好ましい態様では、それぞれの多型サイトでのヌクレオチドが同定される。
【0053】
好ましい態様では、ハプロタイプ対は、個体に存在する遺伝子のそれぞれのコピーにおける1個またはそれ以上の多型サイトで、ヌクレオチドの段階的な配列を同定することにより個体について決定される。特に好ましい態様では、ハプロタイピング法は、遺伝子のそれぞれのコピーにおけるそれぞれの多型サイトで、ヌクレオチドの段階的配列を同定することを含む。遺伝子の両方のコピーをハプロタイプするとき、同定段階は、好ましくは、分離容器内に入れた遺伝子のそれぞれのコピーで行われる。しかしながら、2個のコピーが異なったタグで標識されているか、または、それ以外の方法で別々に区別できるか同定できるならば、ある場合には、同じ容器で該方法を行うことができる。例えば、もし、遺伝子の第1および第2のコピーが、それぞれ異なった第1および第2の蛍光染料で標識されており、そして第3の異なった蛍光染料で標識したアレル特異的オリゴヌクレオチドを多型サイトをアッセイするのに使用するならば、第1および第3の染料の組合せを検出することは、第1の遺伝子コピーの多型を同定することであり、一方、第2および第3の染料の組合せを検出することは、第2の遺伝子コピーの多型を同定することである。
【0054】
ジェノタイピングおよびハプロタイピング法の両方で、多型サイトでのヌクレオチド(またはヌクレオチド対)の同定を、多型サイトを含む標的領域を直接、遺伝子の1個または両方のコピーもしくはその断片から増幅し、増幅した領域を古典的な方法でシークエンシングすることにより、決定し得る。1個のヌクレオチドのみが、そのサイトでホモ接合体である個体の多型サイトで検出され、一方、2個の異なったヌクレオチドは、個体がそのサイトでヘテロ接合体であれば、検出されることは、当業者により容易に理解される。プラス型同定として既知の、または、引用によりマイナス型同定と言われる多型は、直接同定し得る。例えば、SNPが対照集団においてグアニンおよびシトシンであることが既知であるところでは、サイトは、すべての個々のホモ接合体のそのサイトでグアニンまたはシトシンであるか、または、個体がそのサイトでヘテロ接合体であれば、グアニンとシトシンの両方であることを肯定的に決定し得る。あるいは、そのサイトは、グアニンではなく(そして、よってシトシン/シトシン)またはシトシンではない(そして、よってグアニン/グアニン)ことを否定的に決定し得る。
【0055】
さらに、本発明の任意の多型サイトに存在するアレルの同定を、興味あるそれらのサイトとの連鎖不均衡で他の多型サイトをジェノタイピングすることにより、間接的に決定し得る。上記した通り、1個のサイトで特定の変異型の存在が、第2のサイトで他の変異型の存在を示しているならば、2個のサイトは連鎖不均衡であると言われる。Stevens, JC, Mol. Diag. 4:309-317 (1999)を参照のこと。本発明の多型サイトと連鎖不均衡な多型サイトは、同じ遺伝子の領域または他のゲノム領域に位置し得る。本明細書に記載した新規多型サイトと連鎖不均衡な多型サイトをジェノタイピングすることは、多型サイトでのアレルの同定を検出するために、非限定的に、上記の方法のいずれかにより行い得る。
【0056】
標的領域を、非限定的に、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)(米国特許第4,965,188号)、リガーゼ鎖反応(LCR)(Barany et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193 (1991);公開PCT特許出願WO 90/01069)、およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landegren et al., Science 241:1077-1080 (1988))を含む、任意のオリゴヌクレオチド指向増幅法を用いて増幅し得る。そのような方法でプライマーまたはプローブとして役立つオリゴヌクレオチドは、特異的に、多型サイトを含むか、または隣接する核酸領域にハイブリダイズするべきである。典型的には、オリゴヌクレオチドは、長さが10乃至35ヌクレオチド、好ましくは、長さが15乃至30ヌクレオチドである。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは、20乃至25ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドの正確な長さは、当業者により普通に考えられ、実行される、多くの要因に依存している。
【0057】
転写に基づく増幅系(米国特許第5,130,238号;EP 329,822;米国特許第5,169,766号、公開PCT特許出願WO 89/06700)および等温法(Walker et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:392-396, 1992)を含む、他の既知の核酸増幅手順を、標的領域を増幅するために使用し得る。
【0058】
標的領域における多型は、当業者に既知のいくつかのハイブリダイゼーションに基づく方法の1つを用いて、増幅の前後でアッセイし得る。典型的には、アレル特異的オリゴヌクレオチドを、そのような方法を行うことで利用する。アレル特異的オリゴヌクレオチドは、異なった標識プローブ対として使用し得る(対の1個のメンバーは、標的配列の1個の変異型と完全なマッチを示し、他のメンバーは、異なった変異型と完全なマッチを示す)。ある態様では、2個以上の多型サイトは、1組のアレル特異的オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド対を使用して、すぐに検出し得る。好ましくは、組のメンバーは、検出される多型サイトのそれぞれにハイブリダイズするとき、お互いに、5℃以内、より好ましくは、2℃以内の融点を有する。
【0059】
アレル特異的オリゴヌクレオチドの標的ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションは、溶液中、両方の存在を用いて行い得るか、または、そのようなハイブリダイゼーションは、オリゴヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチドが固相支持体に共有または非共有的に結合しているとき、行い得る。連結は、例えば、抗体-抗原相互作用、ポリ-L-Lys、ストレプトアビジンまたはアビジン-ビオチン、塩橋、疎水性相互作用、化学結合、UV架橋、ベーキング(baking)などにより仲介し得る。アレル特異的オリゴヌクレオチドは、直接、固相支持体上で合成するか、または、合成後、固相支持体に連結し得る。本発明の検出法での使用に適当な固相支持体は、シリコン、ガラス、プラスチック、紙などからなる基質を含み、それらは、例えば、ウェル(96-ウェルプレートのような)、スライド、シート、膜、繊維、チップ、皿、およびビーズに形作られ得る。固相支持体は、アレル特異的オリゴヌクレオチドまたは標的核酸の固定化を促進するための、処理、被覆または誘導体化し得る。
【0060】
個体の遺伝子に対するジェノタイプまたはハプロタイプを、また、例えば、WO 95/11995に記載したような核酸アレイおよびサブアレイに対する1個または両方の遺伝子のコピーを含む、核の試料のハイブリダイゼーションにより決定し得る。アレイは、ジェノタイプまたはハプロタイプに含まれるそれぞれの多型サイトを表す、一連のアレル特異的オリゴヌクレオチドを含む。
【0061】
多型の同定は、また、非限定的に、E. coli mutSタンパク質のような、ヌクレオチドミスマッチを認識するリボプローブ(Winter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:7575 (1985); Meyers et al., Science 230:1242 (1985))およびタンパク質(Modrich P. Ann. Rev. Genet. 25:229-253 (1991))を用いたRNase保護法を含む、ミスマッチ検出技術を用いて決定し得る。あるいは、変異型アレルを、1本鎖DNA高次構造多型(SSCP)解析(Orita et al., Genomics 5:874-879 (1989); Humphries et al., in Molecular Diagnosis of Genetic Diseases, R. Elles, ed., pp. 321-340 (1996))または変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Wartell et al., Nucl. Acids Res. 18:2699-2706, (1990); Sheffield et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:232-236 (1989))により同定できる。
【0062】
ポリメラーゼ仲介プライマー伸張法は、また、多型を同定するために使用し得る。いくつかのそのような方法は、特許および科学文献に記載されており、“Genetic Bit Analysis”法(WO 92/15712)およびリガーゼ/ポリメラーゼ仲介genetic bit analysis (米国特許第5,679,524号)を含む。関連する方法は、WO 91/02087、WO 90/09455、WO 95/17676および米国特許第5,302,509号および第5,945,283号に開示している。多型を含む伸張プライマーは、米国特許第5,605,798号に記載した質量分析により検出し得る。他のプライマー伸張法は、アレル特異的PCRである。Ruafio et al., Nucl. Acids Res. 17:8392 (1989); Ruafio et al., Nucl. Acids Res. 19, 6877-6882 (1991); WO 93/22456; Turki et al., J. Clin. Invest. 95:1635-1641 (1995))を参照のこと。さらに、複数の多型サイトは、WO 89/10414に記載した通り、アレル特異的プライマーの組を用いて同時に核酸の複数の領域を増幅することにより、調査し得る。
【0063】
他の局面では、本発明は、遺伝子の変化の型にしたがって対象を分類するのに役立つSNPプローブを提供する。本発明によるSNPプローブは、古典的なアレル選別法でSNP間を識別するオリゴヌクレオチドである。
【0064】
ある好ましい態様では、本発明のこの局面に記載したオリゴヌクレオチドは、SNP核酸の1個のアレルに相補的であり、SNP核酸の他のアレルのいずれにも相補的でない。本発明のこの態様に記載したオリゴヌクレオチドは、様々な方法で、SNP間の区別をすることができる。例えば、ストリンジエントなハイブリダイゼーション条件下では、適当な長さのオリゴヌクレオチドが、他のいずれでもなく、1個のSNPにハイブリダイズする。オリゴヌクレオチドは、放射性標識または蛍光標識で標識し得る。あるいは、適当な長さのオリゴヌクレオチドは、PCRのためのプライマーとして使用でき、ここで、3'末端ヌクレオチドは、他のいずれのアレルでもなく、SNPを含む1個のアレルに相補的である。この態様では、PCRによる増幅の存在または非存在が、SNPのハプロタイプを決定する。
【0065】
本発明のゲノムおよびcDNA断片は、本明細書で同定した少なくとも1個の新規多型サイトを含み、少なくとも10ヌクレオチドの長さを有し、遺伝子の全長まで及び得る。好ましくは、本発明による断片は、長さが100乃至3000ヌクレオチドであり、より好ましくは、長さが200乃至2000ヌクレオチドであり、最も好ましくは、長さが500乃至1000ヌクレオチドである。
【0066】
本発明の多型サイトを記載するとき、便宜上、遺伝子のセンス鎖を引用する。しかしながら、当業者が認識するとき、遺伝子を含む核酸分子は相補的な2本鎖分子であり得、よって、センス鎖の特定のサイトの引用は、相補的なアンチセンス鎖の相当するサイトのことでもあり得る。よって、一方の鎖の同じ多型サイトを引用し、オリゴヌクレオチドを多型サイトを含む標的領域での一方の鎖に特異的にハイブリダイズするように設計し得る。したがって、本発明はまた、本明細書に記載したゲノム変異型のセンス鎖に相補的な1本鎖ポリヌクレオチドを含む。
【0067】
集団ジェノタイプおよびハプロタイプを決定すること。本発明は、ある集団における、特定のジェノタイプまたはハプロタイプの頻度を決定する方法を提供する。方法は、集団のそれぞれのメンバーに存在する遺伝子に関する、ジェノタイプまたはハプロタイプを決定し(ここで、ジェノタイプまたはハプロタイプは、遺伝子の多型サイトの1個またはそれ以上で検出される、ヌクレオチド対またはヌクレオチドを含む)、ジェノタイプおよびハプロタイプが集団で見られる頻度を計算することを含む。集団は、対照集団、家族集団、同性集団、集団の群、または特色集団(例えば、病状または治療処置に対する応答のような興味ある特色を示す個体の集団)であってよい。
【0068】
本発明の他の局面では、対照集団で見られたジェノタイプおよび/またはハプロタイプに関する頻度データは、特色とジェノタイプまたはハプロタイプ間の関連を同定する方法で使用される。特色は、非限定的に、疾患に対する感受性または処置に対する応答を含む、任意の検出可能表現型であり得る。方法は、対照集団において、興味のあるジェノタイプまたはハプロタイプの頻度に関するデータを取得すること、および、該特色を示す集団におけるジェノタイプまたはハプロタイプの頻度に対するデータを比較することを含む。対照および特色集団の一方または両方の頻度データは、上記した方法の1つを用いて、集団におけるそれぞれの個体のジェノタイピングまたはハプロタイピングにより取得され得る。特色集団のハプロタイプは、直接、または、あるいは、上記した方法をハプロタイプする予測的なジェノタイプにより決定され得る。
【0069】
方法の好ましい態様では、特色は、疾患に対する感受性、疾患の重篤度、疾患の段階または薬物に対する応答である。そのような方法は、有効性測定、薬物動態学的測定、および副作用測定を含む、ジェノタイプと処置結果の間の関連に関して可能性がある、あらゆる遺伝薬理学的適用に関して、診断試験および治療処置の開発に適用できる。
【0070】
他の好ましい方法の態様では、興味のある特徴は、ある治療的処置に対して患者が示した臨床応答であり、例えば、薬物標的への応答または病状に対する治療的処置への応答である。
【0071】
他の態様では、対照および/または特色集団に関する頻度データは、書面または電子形式であり得る、以前決定した頻度データにアクセスすることによって取得する。例えば、頻度データは、コンピューターによりアクセスできるデータベースに存在し得る。頻度データを取得したら、対照または特色集団における興味あるジェノタイプまたはハプロタイプの頻度を比較する。好ましい態様では、集団内で観察されたすべてのジェノタイプおよび/またはハプロタイプの頻度を比較する。遺伝子に関する特定のジェノタイプまたはハプロタイプが、対照集団よりも特色集団において、統計的に有意な量でより多い頻度であるならば、その後、特色は、ジェノタイプまたはハプロタイプと関連があると予想される。
【0072】
好ましい態様では、異なった人種地理学的集団のハプロタイプ頻度データは、それらが、ハーディワインベルグ均衡と一致しているか否かを決定するのに調べられる。D.L. Hartl et al., Principles of Population Genomics、第3版(Sinauer Associates、Sunderland、MA、1997)。ハーディワインベルグ均衡は、ハプロタイプ対H1/H2の発見の頻度は、もしH1 ≠ H2ならばPH-W (H1/H2) = 2p(H1) p (H2)、および、もしH1 = H2ならばPH-W (H1/H2) = p (H1) p (H2)であることを規定している。観察されるのと期待されるハプロタイプ頻度との間の統計的に有意な差は、集団グループにおける著しい同系交配、遺伝子の強い選択圧、試料の偏り、および/またはジェノタイピング過程におけるエラーを含む、1個またはそれ以上の要因によるものである。ハーディワインベルグ均衡からの大きな逸脱が、人種地理学的集団で観察されるならば、その集団における個体の数を、逸脱が試料の偏りによるものか否かを調べるために増やすことができる。より大きい試料サイズが、観察されるおよび期待されるハプロタイプ対頻度の間の差を減らさないならば、そのときは、例えば、CLASPER System(商標)技術(米国特許第5,866,404号)、SMD、またはアレル特異的広範囲PCR (Michalotos-Beloin et al., Nucl Acids Res 24:4841-4843 (1996))のような直接のハプロタイピング法を用いて、個体をハプロタイピングすることを考えてもよい。
【0073】
ハプロタイプ対を予測するこの方法の1つの態様では、本発明の方法は、以下の解析を行うことを含む。最初、可能性があるハプロタイプ対のそれぞれを、対照集団におけるハプロタイプ対と比較する。一般に、対照集団におけるハプロタイプ対の1個のみが、可能性があるハプロタイプ対に適合し、その対は個体に割り当てられる。時々、対照ハプロタイプ対で表される1個のハプロタイプのみが、個体の可能性があるハプロタイプ対と一致し、そのような場合には、個体は、考えられるハプロタイプ対から既知のハプロタイプを減することによって得られる、この既知のハプロタイプおよび新しいハプロタイプを含むハプロタイプ対を割り当てられる。稀な場合には、対照集団におけるハプロタイプは、考えられるハプロタイプ対と一致しないか、あるいは、複数の対照ハプロタイプ対は、考えられるハプロタイプ対と一致する。そのような場合には、個体は、好ましくは、例えば、上記で記載したような、直接分子ハプロタイピング法を用いてハプロタイプ分類される。
【0074】
好ましい態様では、ジェノタイプ/表現型相関を何度も刺激し、有意な値を計算するボンフェローニ補正および/またはブートストラッピング法を用いた、分散分析(ANOVA)試験の使用により統計解析が行われる。多くの多型を解析するとき、計算は、偶然発見され得る有意な相関を補正するために行い得る。本発明の方法で使用する統計的方法に関して、Statistical Methods in Biology、第3版、Bailey NTJ、(Cambridge Univ. Press、1997); Introduction to Computational Biology、Waterman MS (CRC Press, 2000)およびBioinformatics, Baxevanis AD & Ouellette BFF editors (John Wiley & Sons, Inc., 2001)を参照のこと。
【0075】
本発明の他の態様では、興味あるジェノタイプまたはハプロタイプと連鎖不均衡である検出可能なジェノタイプまたはハプロタイプを、代理マーカーとして使用し得る。他のジェノタイプと連鎖不均衡であるジェノタイプを、特定の遺伝子のジェノタイプまたはハプロタイプが、対照集団よりも潜在的な代理マーカージェノタイプを証明する集団において、より頻度が高いか否かを決定することにより発見し得る。頻度が、統計的に有意であるならば、その後、マーカージェノタイプはそのジェノタイプまたはハプロタイプを予測し、代理マーカーとして使用できる。
【0076】
ジェノタイプまたはハプロタイプと処置に対する対象応答の間の相関。臨床および多型データの両方を特定の対象から取得した後、個々の応答およびジェノタイプまたはハプロタイプ量との間の相関を創造する。相関はいくつかの方法で産出し得:1つの方法では、個体をジェノタイプまたはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)(または多型集団と言われる)により分け、その後、それぞれの多型集団のメンバーにより示された臨床応答の平均および標準偏差を計算する。
【0077】
処置に対する臨床応答とジェノタイプまたはハプロタイプの間の相関を推測するために、処置を受けた個体群(以下、“臨床集団”と呼ぶ)により示される、臨床応答に関するデータを取得する必要がある。この臨床データは、すでに行われている臨床試験の結果を解析することにより取得し得、および/または、臨床データを1個またはそれ以上の新規臨床試験を計画し実行することにより取得し得る。
【0078】
それから、これらの結果を、多型群間の臨床応答で観察される何らかの変化が統計的に有意であるか否かを決定するために解析する。使用し得る統計解析法は、L.D. Fisher & G. vanBelle, Biostatistics: A Methodology for the Health Sciences(Wiley-lnterscience、New York1993)に記載している。この解析はまた、遺伝子のどの多型サイトが、最も有意な表現型の差異に関与しているかの回帰計算を含み得る。
【0079】
ハプロタイプ量および臨床応答の間の相関を発見する第2の方法は、誤差最小最適化アルゴリズム(error-minimizing optimization algorithms)予測モデルを使用し、そのうちの1個は遺伝学的アルゴリズムである(R. Judson, Genetic Algorithms and Their Uses in Chemistry in Reviews in Computational Chemistry, Vol. 10, pp. 1- 73、K.B. Lipkowitz and D.B. Boyd, eds. (VCH Publishers、New York、1997)。同時アニーリング(Press et al., Numerical Recipes in C: The Art of Scientific Computing、Ch. 10 (Cambridge University Press、Cambridge) 1992)、神経ネットワーク(E. Rich & K. Knight, Artificial Intelligence、第2版、Ch. 10 (McGraw-Hill、New York、1991)、標準勾配降下法(Press et al., supra Ch. 10)、または他の広範囲もしくは局所的な最適化法(上記のJudsonの記載を参照)もまた、使用できる。
【0080】
相関はまた、臨床データにおけるどれくらい多くの分散が、遺伝子における多型サイトの異なった一部分により説明されるかを決定する分散分析(ANOVA)技術を用いて解析し得る。ANOVAは、応答変数が、測定できる1個またはそれ以上の特色または変数により引き起こされるか、あるいは、それらと相関があるかに関しての仮説を検証するために使用する(Fisher & vanBelle、上述、Ch. 10)。本明細書で提供する実施例で、オッズ比および95%信頼限界、ロジスティク回帰、ANCOVA、およびフィッシャーの直接確率検定を決定するために、この特定の研究における主要な統計解析を、マンテル・ヘンツェル検定を用いて行った。
【0081】
上述の解析から、ジェノタイプまたはハプロタイプ内容の関数として臨床応答を予測する数学モデルは、当業者により容易に構築し得る。
【0082】
臨床応答と遺伝子に関するジェノタイプまたはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)間の関連の同定は、個体が処置に応答するか、または応答しないか、あるいは、低いレベルで応答するためにより多くの処置(すなわち、多量の薬物)を必要とし得るかを決定するための診断法を設計する土台になり得る。これらの本発明の診断法は、いくつかの形態の1個を取り得る:例えば、直接DNA試験(すなわち、遺伝子の多型サイトの1個またはそれ以上をジェノタイピングすることまたはハプロタイピングすること)、血清検査、または身体検査測定。診断結果および内在するジェノタイプまたはハプロタイプの間の十分な相関があることが、唯一必要である。好ましい態様では、この診断法は、上記した予測的ハプロタイピング法を使用する。
【0083】
コンピューターは、本発明の方法を実行するのに関与した、任意のまたはすべての統計的、数学的操作を実行し得る。さらに、コンピューターは、プログラムを実行し得る。さらに、コンピューターは、ディスプレイ装置に示される図(または、画面)を作るプログラムを実行し得、ユーザーは、染色体位置、遺伝子構造、および遺伝子ファミリー、遺伝子発現データ、多型データ、遺伝学的配列データ、および臨床集団データ(例えば、1個またはそれ以上の集団に関する人種地理学的起源、臨床応答、ジェノタイプ、およびハプロタイプに関するデータ)を含む、遺伝子およびそのゲノム変異型に関する大量の情報を見て解析するために、相互作用することができる。本明細書で記載する多型データは、相関的なデータベースの一部として蓄積し得る(例えば、オラクルデータベースまたは1組のASCII フラットファイルの1例)。これらの多型データをコンピューターのハードドライブに保存し得、または、例えば、CD-ROMもしくはコンピューターによりアクセスできる1個またはそれ以上の他の記憶装置に保存し得る。例えば、ネットワークによるコンピューターを用いたコミュニケーションで、データを1個またはそれ以上のデータベースに保存し得る。
【0084】
他の態様では、本発明は、個体の遺伝子をハプロタイピングするおよび/またはジェノタイピングするための方法、組成物、およびキットを提供する。組成物は、特異的に、多型サイトを含む1個またはそれ以上の標的領域、または多型サイトに隣接した領域にハイブリダイズするように設計された、オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーを含む。本明細書に記載された新規多型サイトで、個体のジェノタイプまたはハプロタイプを構築するための方法および組成物は、タンパク質の発現および機能に影響する疾患の病因において、多型の効果を研究するのに役立ち、遺伝子産物を標的とする薬物に対する個体の応答性を予測するのに役立つ。
【0085】
本発明はまた、遺伝子に関して決定された多型データを蓄積し示すための、コンピューターシステムを提供する。コンピューターシステムは、コンピュータープロセッシングユニット、ディスプレイ、および多型データを含んだデータベースを含む。多型データは、対照集団における特定の遺伝子のために同定した、多型、ジェノタイプおよびハプロタイプを含む。好ましい態様では、コンピューターシステムは、進化的関係にしたがって組織されたハプロタイプを示す、ディスプレイを産生することができる。
【0086】
発現レベルの評価。RT-PCR(実時間定量的PCR)は、遺伝子発現レベル、例えば、本発明の遺伝子(SNPおよび興味のある多型を含むもの)の発現レベルを評価する1つの方法である。RT-PCRアッセイは、mRNA鎖を含むRNA鎖からのDNA鎖合成を触媒する、RNA逆転写酵素を利用する。結果物のDNAを特異的に検出、定量し得、およびこの過程を特異的mRNA種のレベルを決定するために使用し得る。これを行う1つの方法は、TAQMAN(商標)(PE Applied Biosystems、Foster City、California、USA)であり、下記により詳細に記載している。
【0087】
細胞の転写状態を測定する他の方法は、例えば、二重制限酵素消化をフェイジングプライマー(phasing primer)と結合する方法、または、確定したmRNA端に最も近いサイトを有する制限断片を選択する方法により、電気泳動解析のために、限定した複雑性の制限断片のプールを産生することを含む(例えば、Zabeau et al.により1992年9月24日に出願されたEP 0 534858 A1を参照)。例えば、Prashar & Weissman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(2) 659-663 (1996)を参照のこと。また、他の方法は、統計的に、例えば、十分な塩基、例えば、複数のcDNAのそれぞれで、それぞれのcDNAを単離するために、定義されたmRNA末端経路様式と比較して既知の位置に作製する20-50塩基をシークエンシングすること、および、例えば、9-10塩基の短タグをシークエンシングすることにより、試料cDNAプールを産生することを含む。例えば、Velculescu, Science 270: 484-487 (1995)を参照のこと。
【0088】
遺伝子発現産物の標準的な制御レベルを、異なったコントロール群での遺伝子発現を測定することにより決定する。その後、コントロール群の遺伝子発現レベルを、ある対象での遺伝子発現産物の測定したレベルと比較する。この遺伝子発現産物は、その特定のジェノタイプ群またはそのジェノタイプ群のポリペプチド遺伝子発現産物と関連した特徴的なmRNAである。その後、対象を、測定したレベルがある群のコントロールのレベルと比較していかに類似しているかに基づいて、特定のジェノタイプ群に分類または指定する。
【0089】
当業者が理解しているように、この決定をすることに関してある程度の不確かさがある。したがって、
【0090】
よって、この過程は、さまざまな可能性の程度と共に、どの集団に特異的な患者を置くべきかを決定するのを可能にし、ジェノタイプ集団へのそのような割り当ては、その後、個体が置かれるべきリスク区分を決定するだろう。
【0091】
mRNAレベルおよびポリペプチド遺伝子発現産物のレベルを検出および測定する方法は当業者に既知であり、ヌクレオチドマイクロアレイ、および質量分析および/または抗体検出ならびに定量技術を含むポリペプチド検出法の使用を含む。また、Tom Strachan & Andrew Read、Human Molecular Genetics、第2版.(John Wiley and Sons、Inc. Publication、NY、1999)を参照。
【0092】
他の側面の測定。本発明の様々な態様では、転写状態以外の、例えば、翻訳状態、活性状態または混合した側面のような生物学的状態の側面を、薬物および経路応答を取得するために測定することができる。
【0093】
翻訳状態測定。本発明の遺伝子によってコードされたタンパク質の発現を、検出可能標識または二次標識をしたプローブにより検出することができる。一般に、プローブは発現タンパク質を認識する抗体である。
【0094】
“抗体”なる用語は、非限定的に、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体および抗体断片がタンパク質に結合するのに十分な生物学的に機能的な抗体断片を含む。
【0095】
開示した遺伝子の1個によりコードされたタンパク質に対する抗体の産生のために、さまざまな宿主動物を、ポリペプチドまたはその部分を用いた注射により免役し得る。そのような宿主動物は、非限定的に、ウサギ、マウス、およびラットを含み得る。さまざまなアジュバントを、非限定的に、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル;リソレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyols)、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような界面活性剤;ならびに、例えば、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)およびコリネバクテリアのような潜在的に役立つヒトアジュバントを含む宿主種に依存して、免疫学的応答を増加させるために使用し得る。
【0096】
ポリクローナル抗体は、抗原、例えば、標的遺伝子産物またはその抗原機能由来物で免役した、動物血清由来の抗体分子の不均一な集団である。ポリクローナル抗体の産生のために、宿主動物、例えば、上記で記載したような動物を、また、上記で記載した通りアジュバントで補完して、コードタンパク質またはその部分を用いた注射により免役し得る。
【0097】
特定の抗原に対する抗体の均一な集団であるモノクローナル抗体(mAb)を、継続した細胞株の培養により抗体分子の産生を提供する、任意の技術によって取得してもよい。これらは、非限定的に、KohlerとMilsteinのハイブリドーマ技術Nature 256: 495-497 (1975);および米国特許第4,376,110号; Kosbor et al.のヒトB細胞ハイブリドーマ技術、Immunol. Today 4: 72 (1983);Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030 (1983);およびEBVハイブリドーマ技術、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy pp. 77-96 (Alan R. Liss, Inc., 1985)を含む。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびその任意のサブクラスを含む、任意の免疫グロブリンクラスであってよい。この発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養しうる。インビボでのmAbの高力価の産生により、これは、現在好まれる産生の方法になる。
【0098】
さらに、適当な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を適当な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングすることにより、“キメラ抗体”の産生のために開発した技術を使用できる(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855 (1984); Neuberger et al., Nature 312: 604-608 (1984);およびTakeda et al., Nature 314: 452-454 (1985)を参照)。キメラ抗体は、例えば、マウスmAb由来の可変または超可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域のような、異なった部分が異なった動物種に由来する分子である。
【0099】
あるいは、1本鎖抗体の産生のために記載した技術(米国特許第4,946,778号;Bird、Science 242:423-426(1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988);およびWard et al., Nature 334: 544-546(1989))を、異所的に発現する遺伝子1本鎖抗体を産生するのに適用できる。1本鎖抗体を、Fv領域の重および軽鎖断片をアミノ酸橋により結合し、1本鎖ポリペプチドを生じることにより形成する。
【0100】
“ヒト化抗体”を産生するために使用する技術を、タンパク質、断片またはその誘導体に対する抗体を産生するのに適用する。そのような技術は、米国特許第5,932,448号;第5,693,762号;第5,693,761号;第5,585,089号;第5,530,101号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,661,016号;および第5,770,429号に開示している。
【0101】
特異的エピトープを認識する抗体断片を、既知の技術により産生し得る。例えば、そのような断片は、非限定的に、抗体分子のペプシン消化により産生できるF(ab')2断片およびF(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより産生できるFab断片を含む。あるいは、Fab発現ライブラリーは、望むべき特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速で容易な同定を可能にするために構築し得る(Huse et al., Science 246: 1275-1281 (1989)を参照)。
【0102】
その後、既知のタンパク質がある試料中に発現している程度を、上述した抗体を利用する免疫アッセイ法により決定する。そのような免疫アッセイ法は、非限定的に、ドットブロッティング、ウエスタンブロッティング、競合的および非競合的タンパク質結合アッセイ、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫組織化学法、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)、および共通に使用され、広く科学および特許文献に記載され、多くは市販で使用できる他の方法を含む。
【0103】
特に、好ましくは、検出を容易にするために、多くの変形が存在するサンドイッチELISAがあり、そのすべては本発明の方法およびアッセイで使用することを意図している。例えば、典型的な順方向アッセイでは、非標識抗体を固相基質に固定し、抗体-抗原2元複合体の形成を可能にするのに十分な時間、適当なインキュベーション後、試料を結合分子との接触を通して試験する。この点で、検出可能シグナルを誘導できるレポーター分子で標識した2次抗体を添加し、抗体-抗原-標識抗体の三重複合体の形成が可能となる十分な時間インキュベートする。何らかの未反応物質を洗い流し、抗原の存在をシグナルの観察により決定するか、または、既知の量の抗原を含むコントロール試料との比較により定量し得る。順方向アッセイでの変形は、試料と抗体の両方を同時に、結合した抗体に添加する同時アッセイ、または標識した抗体および試験すべき試料を最初に結合させ、インキュベートし、非標識表面結合抗体を添加する逆方向(reverse)アッセイを含む。これらの技術は当業者に既知であり、小さな改変の可能性は容易に明らかである。本明細書で使用するとき、“サンドイッチ”アッセイは、2サイト技術に基づいた全ての変法を包含することを意図する。本発明の免疫アッセイに関しては、標識した抗体が、興味のある遺伝子により発現しているタンパク質に特異的な抗体でなければならないことが唯一の限定的な因子である。
【0104】
この型のアッセイで最も一般的に使用されるレポーター分子は、フルオロフォア含有分子または放射性ヌクレオチド含有分子のどちらかの酵素である。酵素免疫アッセイ(EIA)の場合には、通常、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩により、酵素を二次抗体に結合する。しかしながら、容易に認識されるように、当業者に既知である広くさまざまな異なったライゲーション技術が存在する。共通に使用される酵素は、とりわけ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含む。特異的酵素と共に用いられる基質は、一般に、相当する酵素による加水分解で検出可能な色変化の産生のために選択される。例えば、p-ニトロフェニルホスファターゼは、アルカリホスファターゼ共役体との使用に適当であり;ペルオキシダーゼ共役体のためには、1,2-フェニルエンジアミンまたはトルイジンが共通に使用される。また、上記した発色基質よりも蛍光産物を産生する蛍光性基質を使用することも可能である。適当な基質を含む溶液を、その後、第三次複合体に添加する。基質は、二次抗体に結合した酵素と反応し、定性的視覚シグナルを与え、さらに、通常は、分光光度法で定量し得、血清に存在するタンパク質の量の評価を与える。
【0105】
あるいは、フルオルセインおよびローダミンのような蛍光性化合物を、それらの結合能力を変えることなしに、化学的に抗体に結合し得る。特定の波長の光を用いた照明により活性化されるとき、フルオロクローム-標識抗体は、分子の興奮状態を含む光エネルギーを吸収し、その後、特徴的な長波長で光を放出する。放出は、光学顕微鏡を用いて、視覚的に検出可能な、特徴的な色として現れる。免疫蛍光およびEIA技術は、当業者にとって非常に既知であり、特に、本方法のために好ましい。しかしながら、放射性同位体、化学発光法または生物発光分子のような他のレポーター分子は、また、使用し得る。必要とされる使用に適合させるように手順を変える方法は、当業者にとって容易に明らかである。
【0106】
本発明の遺伝子の翻訳状態の測定は、また、いくつかのさらなる方法にしたがって行い得る。例えば、タンパク質の全ゲノムモニタリング、すなわち、上記の“プロテオーム” (Goffeau et al.)を、結合サイトが、固定化された、好ましくは、細胞ゲノムによりコードされた多量のタンパク質種に特異的なモノクローナル抗体を含む、マイクロアレイを構築することにより実行できる。好ましくは、抗体は、コードされたタンパク質の相当な断片に対して、または少なくとも興味のある生物学的ネットワークモデルを試験するか、または確認するのに適切なタンパク質に対して存在する。モノクローナル抗体を作製する方法は、既知である。例えば、Harlow & Lane、Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor、NY、1988)を参照のこと(すべての目的のために、その全体を本明細書の一部とする)。好ましい態様では、モノクローナル抗体を、細胞のゲノム配列に基づいて設計した合成ペプチド断片に対して作製する。そのような抗体アレイを用いて、細胞からのタンパク質をアレイに接触させ、そして、それらの結合を当業者に既知のアッセイでアッセイする。
【0107】
タンパク質は、二次元ゲル電気泳動法により分離できる。二次元ゲル電気泳動法は当業者に既知であり、典型的には、一次元の等電点電気泳動、その後、二次元のSDS-PAGE電気泳動を含む。例えば、Hames et al., Gel Electrophoresis of Proteins: A Practical Approach (IRL Press、NY、1990); Shevchenko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 14440-14445 (1996); Sagliocco et al., Yeast 12: 1519-1533 (1996);およびLander, Science 274: 536-539 (1996)を参照。その結果生じた電気泳動図は、質量分析技術、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングおよびイムノブロット解析、ならびに内部およびN末端マイクロシークエンシングを含む多くの技術により解析できる。これらの技術を用いて、例えば、薬物に曝された酵母細胞、または、例えば、特異的遺伝子の欠失または過剰発現により修飾された細胞を含む、特定の生理学的条件下で産生されるあらゆるタンパク質の、重要な区画を同定することが可能である。
【0108】
体液または組織における遺伝子のポリペプチド(タンパク質)発現産物の検出を、多型の存在、不存在を決定するために使用でき、ポリペプチド発現産物の相対的なレベルを、多型が、ホモ接合体またはヘテロ接合体状態で存在するか否か(故に、個体のリスクカテゴリー)を決定するために使用できる。
【0109】
生物学的状態の他の局面に基づく態様。mRNA量以外の細胞内構成物をモニターすることは、現在のところある技術的困難を伴うが、細胞機能の特徴に関連するタンパク質の活性を測定し、本発明の態様がそのような測定に基づいていることは、この発明の方法を使用する当業者には明らかである。活性測定は、特定の活性を特徴づけるのに適当な、任意の機能的、生化学的または物理的手段により行うことができる。活性が化学転換を含むところでは、細胞内タンパク質を天然の基質に接触させ、転換速度を測定する。活性が、多量体ユニットでの関連、例えば、活性化DNA結合複合体とDNAとの関連を含む場合には、関連したタンパク質の量または転写したmRNAの量のような関連の二次的結果が測定できる。また、例えば、細胞周期制御のような機能的な活性のみが知られている場合には、機能の能力が観察できる。しかしながら、知られるおよび測定されるとき、タンパク質活性の変化は、本発明の方法により解析した応答データを形成する。
【0110】
他の非限定的な態様では、応答データを、細胞の生物学的状態の混合した局面で形成し得る。応答データを、例えば、あるmRNA量の変化、あるタンパク質量の変化およびあるタンパク質活性の変化から構築できる。
【0111】
マーカーとしての核酸およびタンパク質の検出。特定の態様では、マーカーに相当するmRNAのレベルを、当業者に既知の方法を用いた生物学的試料のインサイチュおよびインビトロ形式により決定できる。“生物学的試料”なる用語は、対象から単離された組織、細胞、生物学的液体およびその単離物、ならびに、対象中に存在する組織、細胞および液体を含むことを意図する。多くの発現検出法は、単離したRNAを用いる。インビトロ方法のために、mRNAの単離に対して選択しないmRNA単離技術を細胞からのRNAの精製のために利用できる。例えば、Ausubel et al., Ed., Curr. Prot. Mol. Biol.(John Wiley & Sons、NY、1987-1999)を参照のこと。さらに、多くの数の組織試料を、例えば、1段階RNA単離工程(米国特許第4,843,155号)のように当業者に既知の技術を用いて、容易に加工できる。
【0112】
単離したmRNAを、非限定的に、サザンまたはノーザン解析、PCR解析およびプローブアッセイを含むハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイに使用することができる。mRNAレベルの検出のための1つの好ましい診断方法は、単離したmRNAを、検出されるべき遺伝子によってコードされたmRNAにハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、完全長cDNAまたはその部分、例えば、少なくとも長さが、7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであり、本発明のマーカーをコードしたmRNAまたはゲノムDNAにストリンジエントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分である。本発明の診断アッセイでの使用のための他の適当なプローブは、本明細書に記載している。mRNAのプローブとのハイブリダイゼーションは、問題のマーカーが発現していることを示している。
【0113】
1つの形式では、例えば、単離したmRNAをアガロースゲルに流し、mRNAをゲルから、例えば、ニトロセルロースのような膜にトランスファーすることにより、mRNAを固相表面に固定し、プローブと接触させる。他の形式では、例えば、Affymetrix gene chip arrayで、プローブを固相表面に固定し、mRNAをプローブと接触させる。当業者は、容易に、既知のmRNA検出法を、本発明のマーカーによってコードされたmRNAレベルの検出での使用のために適用できる。
【0114】
試料中の本発明のマーカーに相当するmRNAのレベルを決定する他の方法は、核酸増幅過程、例えば、RT-PCR(実験態様は、米国特許第4,683,202号(1987)でMullisが説明している;上記した、リガーゼ連鎖反応、Barany (1991); 自立配列複製、Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874-1878 (1990); 転写増幅系、Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173-1177 (1989); Q-Beta Replicase、Lizardi et al., Biol. Technology 6: 1197 (1988); ローリングサークル複製、米国特許第5,854,033号(1988); または、当業者に既知の技術を用いた増幅分子の検出によって後を追われる任意の他の核酸増幅法を含む。これらの検出スキームは、そのような分子が非常に少ない数で存在するならば、とりわけ核酸分子の検出に役立つ。本明細書で使用するとき、増幅プライマーは、遺伝子の5'または3'領域にアニールでき(それぞれ、プラスおよびマイナス鎖、または逆も同様である)、間に短い領域を含む1対の核酸分子であると定義される。一般に増幅プライマーは、長さが約10-30 ヌクレオチドで、長さが約50-200 ヌクレオチドの領域が側面にある。適当な条件下、適当な試薬を用いて、そのようなプライマーは、プライマーの側面のヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
【0115】
インサイチュ方法のために、mRNAを検出前に細胞から単離する必要はない。そのような方法では、細胞または組織試料は、既知の組織学的方法を用いて調製/加工する。それから、試料を担体、典型的にはガラススライドに固定し、その後、マーカーをコードしているmRNAにハイブリダイズすることができるプローブと接触させる。
【0116】
マーカーの絶対的な発現レベルに基づいて決定する代わりとして、マーカーの標準化した発現レベルに基づいて決定をし得る。発現レベルを、マーカーの発現とマーカーではない遺伝子(例えば、構成的に発現しているハウスキーピング遺伝子)の発現とを比較することにより、マーカーの絶対的な発現レベルを補正することにより標準化する。標準化のための適当な遺伝子は、例えば、アクチン遺伝子または上皮細胞特異的遺伝子のような、ハウスキーピング遺伝子を含む。この標準化により、ある試料、例えば、患者試料中の発現レベルと他の試料とを比較するか、または異なった起源からの試料間の比較ができるようになる。
【0117】
あるいは、発現レベルは、相対的な発現レベルとして提供できる。マーカーの相対的な発現レベルを決定するために、問題の試料の発現レベルを決定するより前に、マーカーの発現レベルを標準対疾患生物学的試料の10個またはそれ以上の試料、好ましくは、50個またはそれ以上の試料で決定する。多くの試料で解析したそれぞれの遺伝子の平均発現レベルを決定し、マーカーの基底発現レベルとして使用する。試験試料で決定したマーカーの発現レベル(絶対的な発現レベル)を、その後、そのマーカーで取得した平均発現値で割る。これは、相対的な発現レベルを提供する。
【0118】
好ましくは、基底決定で使用する試料は、多型を有しない対象由来である。細胞起源の選択は、相対的な発現レベルの使用に依存している。正常な組織で見られる発現を平均発現値として使用することは、解析したマーカーが(正常細胞に対して)特異的であるか否かを評価するのを助ける。さらに、より多くのデータが蓄積するにつれ、平均発現値を改訂し、蓄積したデータに基づいて改良した相対的発現値を提供できる。
【0119】
ポリペプチドの検出。本発明の他の態様では、マーカーに相当するポリペプチドを検出する。本発明のポリペプチドの好ましい検出剤は、本発明のマーカーに相当するポリペプチドに結合できる抗体であり、好ましくは、検出可能な標識を有する抗体である。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくは、モノクローナルである。インタクト抗体またはその断片、例えば、FabまたはF(ab')2を使用できる。プローブまたは抗体に関して“標識した”なる用語は、検出可能物質をプローブまたは抗体に結合する(すなわち、物理的に結合する)ことによるプローブまたは抗体の直接標識、および直接標識した他の試薬を用いた反応によるプローブまたは抗体の間接標識を包含することを意図する。間接標識の例は、蛍光標識二次抗体および蛍光標識ストレプトアビジンで検出できる、ビオチンを用いたDNAプローブのエンド標識を使用する一次抗体の検出を含む。
【0120】
個体からのタンパク質を、当業者に既知の技術を用いて単離することができる。使用するタンパク質単離法は、例えば、前掲の、Harlow & Lane(1988)に記載している。
【0121】
試料がある抗体に結合するタンパク質を含んでいるか否かを決定するのに、さまざまな形式を使用することができる。そのような形式の例は、非限定的に、EIA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット解析およびELISAを含む。当業者は、容易に、細胞が本発明のマーカーを発現しているか否か、および血液または他の体組織におけるその特異的ポリペプチド発現産物の相対的な濃度を決定するのに使用する、既知のタンパク質/抗体検出法を適用できる。
【0122】
1つの形式では、抗体または抗体断片を、発現しているタンパク質を検出するために、例えば、ウエスタンブロットまたは免疫蛍光技術のような方法で使用できる。そのような使用では、一般に、抗体またはタンパク質を固相に固定することが好ましい。適当な固相支持体または担体は、抗原または抗体に結合できる任意の支持体を含む。既知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩およびマグネタイトを含む。
【0123】
当業者は、抗体または抗原を結合するための多くの他の適当な担体を知っており、本発明の使用のためにそのような支持体を適合させることができる。例えば、患者細胞から単離したタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動で流し、例えば、ニトロセルロースのような固相支持体に固定する。支持体をその後、適当な緩衝液で洗浄し、その後、検出可能標識抗体で処理する。固相支持体を、その後、緩衝液で2回洗浄し、未結合抗体を除去する。それから、固相支持体の結合標識の量を古典的な手段により検出し、この測定値を、血液または他の体組織におけるタンパク質のレベルまたは濃度に翻訳する。
【0124】
キット。本発明はまた、生物学的試料、例えば、非限定的に、血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、排泄物、脳脊髄液、腹水(acitic fluid)または血液を含む任意の体液中、および体組織の生検試料を含む任意の体液中に、本発明のマーカーに相当するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットを包含する。例えば、キットは、生物学的試料中のポリペプチドまたは本発明のマーカーに相当するポリペプチドをコードするmRNAを検出できる標識化合物または試薬、および試料中のポリペプチドまたはmRNAの量を決定する手段、例えば、ポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAに結合するポリペプチドまたはオリゴヌクレオチドプローブに結合できる抗体を含むことができる。キットはまた、キットを用いて取得した結果を解釈するための指示も含む。
【0125】
他の態様では、本発明は、分離した容器にパックした少なくとも2個のジェノタイプオリゴヌクレオチドを含む、キットを提供する。キットはまた、分離した容器にパックした、例えば、ハイブリダイゼーションバッファーのような他の構成要素を含む(ここでは、オリゴヌクレオチド、プローブとして使用する)。あるいは、オリゴヌクレオチドを標的領域を増幅するために使用する場合には、キットは、分離した容器にパックした、ポリメラーゼおよび、PCRの場合の様な、ポリメラーゼが介在するプライマー伸張を最適化した反応緩衝液を含み得る。
【0126】
好ましい態様では、そのようなキットは、さらにDNA試料収集手段を含み得る。
【0127】
特に、ジェノタイピングプライマー組成物は、少なくとも2組のアレル特異的プライマー対を含み得る。好ましくは、2個のジェノタイピングオリゴヌクレオチドは、分離した容器にパックされる。
【0128】
抗体-基盤キットに関して、キットは、例えば、1)例えば、固相に結合していて、マーカーまたは本発明に相当するポリペプチドに結合する一次抗体;および所望により;2)ポリペプチドか一次抗体に結合し、検出可能な標識を抱合している異なった抗体である二次抗体、を含む。
【0129】
オリゴヌクレオチドに基づくキットに関して、キットは、例えば、1)例えば、本発明のマーカーに相当するポリペプチドをコードする核酸にハイブリダイズする、検出可能な標識オリゴヌクレオチドのような、オリゴヌクレオチド;または2)本発明のマーカーに相当する核酸分子を増幅するのに役立つ1対のプライマーを含むことができる。
【0130】
キットはまた、例えば、緩衝剤、保存剤またはタンパク質安定化剤を含む。キットはさらに、検出可能標識、例えば、酵素または基質を検出するために必要な要素を含ことができる。キットはまた、コントロール試料、または、アッセイし、試験試料と比較できる一連のコントロール試料を含むことができる。キットのそれぞれの構成物を個々の容器に同封することができ、さまざまな容器のすべてが、キットを用いて行ったアッセイの結果を解釈するための指示と共に、単一パッケージ中にあることができる。
【0131】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様をより十分に例証するために提供している。これらの実施例は、添付した請求項に定義した通りである本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0132】
実施例1
慢性便秘を有する患者におけるテガセロドに対する応答の遺伝薬理学的解析
導入。臨床試験を、処置の最初の4週の間、完全な自発的腸運動(CSBM)を測定することにより、テガセロド(Zelmac(登録商標)/Zelnorm(商標))の効果を評価するために、1日2回、6 mg(12 mg/日)または1日2回、2 mg(4 mg/日)対偽薬で行った。二次的な目的は、全体の12週処置期間の間のCSBMの数、排便習慣、下剤の使用、および安全性ならびに耐容性の問題を評価することを含んだ。臨床試験設計は、薬剤なしの2週の基本期間、12週の無作為、二重盲検、偽薬対照処置期間、および治験薬なしの4週の退薬期間で構成された。臨床試験の一部として、DNAは、薬剤標的および疾患原因論と関連する遺伝学的多型を評価するために、遺伝薬理学的な解析のためのスクリーニング期間に患者から収集された。
【0133】
挿入/欠失多型の2個の主なクラスは、SLC6A4遺伝子に関して、イントロン2で1個およびプロモーター領域で他の1個で特徴づけられる。SLC6A4は、また、SERTまたはHTTとして知られる、セロトニン輸送遺伝子である。Camilleriおよび同僚は、SLC6A4プロモーター挿入/欠失多型が、セロトニン5-HT3受容体アンタゴニストアロセトロンを用いた処置後の結腸輸送応答と関連していることを報告した。Camilleri M et al., Gastroenterology; 123 (2):425-32 (2002)。我々は、セロトニン輸送プロモーター多型のC16(長い)アレルに関する個体のホモ接合体が、偽薬と比較してテガセロドに対するより強い応答を示す傾向があることを発見した。C16-C16に関する全体の応答率は、テガセロドで48%、偽薬で21%(OR=3.51、95% CI: 1.67-7.41)であり、C14-C14ホモ接合体では、テガセロドで45%、偽薬で27%(OR=2.3、95%CI: 0.93-5.69)であり、そして、C14-C16ヘテロ接合体では、テガセロドで43%、偽薬で28%(OR=1.95; 95%CI: 1.12-3.41)であった。特定の処置集団の中で、応答率間および異なったジェノタイプ間で、統計的に有意な差はなかった。
【0134】
この研究では、23個の新しい候補遺伝子で全55個の単一ヌクレオチド多型(SNP)を評価した(完全なリストのために表1を参照)。これらは、薬物標的(HTR4)および5-HT3受容体サブユニットHTR3AおよびHTR3Bに多くのSNPを含む。セロトニン合成に関連する遺伝子(TPH、TDO2)および下流のセロトニンシグナル(CALCAまたはCGRP1)ならびにモチリン (MLN)のような腸運動性および腸分泌(SLC12A2、AQP3、SCNN1A)に関連する遺伝子を、また評価した。
表1 候補遺伝子リスト
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0135】
試料。全1348人の患者が、包括解析(ITT)集団として無作為化された。これらの患者からの血液試料は、患者スクリーニングのときに採取され、DNAをPUREGENE(商標) DNA Isolation Kit (D-50K)を用いて抽出した。これらのうち、738人の無作為化された患者からの試料が、評価された55個のSNPのうち少なくとも半分に関して、十分な質のジェノタイプデータを有した。
【0136】
臨床的評価。主な効果は、完全自発性腸運動(CSBM)の数により測定する(そこで、“完全な”は完全な排便の感覚を生じ、“自発的な”は下剤を24時間以内に使用しないことを示す腸運動のことを言う)。評価された主要効果評価項目は、処置の4週後、基底を超えた1 CSBM/週またはそれ以上のCSBM/週の増加であった。このジェノタイピング研究で評価された二次的評価項目はRESP12であり、処置の12週後、基底を超えた1CSBM/週またはそれ以上のCSBM/週の増加であった。これらの基準を満たし、処置を少なくとも7日間遂行すれば、その患者を応答者として分類した。さらなる二次的効果評価は、例えば、12週の処置後、厄介な便秘、厄介な腹部痛、および排便習慣での満足度のような、毎週、毎日の評価に基づいて評価された(解析のための共変として、基底値を用いて)。
【0137】
ジェノタイピング。23個の候補遺伝子のうち全61個の多型が、解析のために選択された。ジェノタイピングを、たいていのアッセイでは、TaqMan(登録商標)技術を用いて行い、一方で、少数のアッセイでは、Third Wave Technologies Invader アッセイ技術を用いて社内で行った(すべての評価されたSNPに関して、アッセイ識別番号について表2を参照)。ジェノタイプ分類された61個のSNPのうち55個が、さらなる評価における使用のための十分な質の、多型ジェノタイプを生みだした。
表2 評価した候補遺伝子のアッセイ識別番号
【表5】

ABI = Applied Biosystems Inc.; TWT = Third Wave Technologies
【0138】
統計解析。統計解析をSASバージョン8.2(The SAS Institute、Cary、NC、USA)を用いて行った。解析法は、p<0.05と設定した有意と共に、オッズ比および95%信頼区間を決定するために、フィッシャーの直接確率検定、共分散解析(ANCOVA)、ロジスティック回帰およびマンテル・ヘンツェル統計量を含む。連鎖不均衡の計算は、Abecasis & Cookson, Bioinformatics 16: 182-3 (2000)に記載した、GOLD(連鎖不均衡の図形概観)法を用いて行った。
【0139】
人口統計比較。表3は、全体の臨床試験における患者およびこのジェノタイプ解析に含まれる患者の人口統計分析結果を表している。分布は、ジェノタイプ集団および全患者集団の間で類似している。人種によるジェノタイプの比較は、55個のSNPのうち39個が人種によるジェノタイプ分布に有意な差を有することを証明した(p<0.05フィッシャーの直接確率検定)。これらの結果に基づいて、次のジェノタイプ解析における人種の交絡効果を妨げるために、全患者のほぼ90%を占める白人集団に、解析を限定することに決めた。さらに、解析はまた、少なくとも7日間、テガセロドまたは偽薬で処置した包括解析患者に限定した(全患者数635人)。
表3 患者ジェノタイプの人口統計
【表6】

ITT =包括解析; N =患者数; Trt =処置
【0140】
全体の応答率の比較。表4は、我々がジェノタイプデータを有している(すべての人種および白人のみ)、全体の患者集団および患者のサブグループの両方のために、偽薬と比較してテガセロド6-mg、1日2回に関する主要効果評価項目(4週後、基底を超える1 CSBM/週またはそれ以上のCSBM/週平均増加)に対する全体の応答を表している。あらゆる場合に、統計的に有意な差は、男性および高齢者集団で見られなかったが、テガセロドで処置された個体は、偽薬で処置した個体と比較して、より高い応答率を報告した。応答は、6-mg、1日2回投与量で見られたものより少なかったが、これは、また、テガセロドの低い投与量(2-mg、1日2回)でも見られた。さらなる解析は、6-mg、1日2回テガセロド処置および偽薬処置患者のみの間で比較することに限定された。
表4 処置の4週後のテガセロド6-mg(1日2回)対偽薬に対する応答率、全患者およびジェノタイプ患者間の比較
【表7】

Teg-6 =テガセロド6mg(1日2回); Plac =偽薬; CI =信頼区間; ITT =包括解析; M+F =男性および女性
【0141】
テガセロド6mg(1日2回)に対する全体の応答率は、我々のジェノタイプ集団に関して、偽薬での25%に対して46%であった(少なくとも7日間処置した白人)。偽薬と比較して、ある処置に対して肯定的な応答を成し遂げる可能性を示している計算したオッズ比は、2.6と等しかった(95% CI: 1.7 4.0)。これらの値は、高く、統計的に有意であり、全体として臨床試験で計算した値と同定であった(表4を参照)。応答率は患者集団の間で類似していたが、男性および高齢者における応答は例外であり、ジェノタイプ分類したサブ集団でいくらか高いように見えた。同様の結果は、表5で提供した通り、下記の12週処置で見られた。
表5 処置の12週後のテガセロド6mg(1日2回)対偽薬に対する応答率、全患者およびジェノタイプ患者間の比較
【表8】

Teg-6 =テガセロド6mg(1日2回); Plac =偽薬; CI =信頼区間; ITT =包括解析; M+F =男性および女性
【0142】
主要効果評価項目:処置の4週後の応答。最初の中間解析として、フィッシャーの直接確率検定をジェノタイプの機能としての応答を評価するために行った。これは、6mg(1日に2回)テガセロドおよび偽薬処置群の両方について、別々になされた。この基準のみを用いて、有意な関連が、テガセロド処置群に関する薬物標的(HTR4)における4個のSNP、ナトリウムチャネルSCNN1Aにおける1個のSNP、およびNa-K-2Cl共輸送SLC12A2における2個のSNPに関して見られた(表6参照)。さらなるトリプトファン2,3-ジオキシダーゼ(TDO2)遺伝子(SNP 3746)におけるSNPは、また、テガセロド群での有意なp-値を証明した(p<0.01)。統計的に有意な関連は、偽薬処置群内で見られなかった。
表6 処置の4週後、偽薬と比較してテガセロド6mg(1日2回)に対する異なった応答を証明している、12個のSNPに関するジェノタイプの関数としての応答
【表9】

応答=基底を超える1 CSBM/週またはそれ以上のCSBM/週平均増加; 少なくとも7日の処置を有するITT白人; PG ID = 独特の内部SNP識別名; T6 =テガセロド6mg(1日2回); P =偽薬; CI =信頼区間; Pop.の%=そのジェノタイプを有する集団のパーセント; p-値: R x geno = それぞれの処置集団内のジェノタイプによる応答率間の有意な差を試験するためのp-値(p-値のどれもが、複数の試験に関して調節されていないことに注意);最良の応答を証明するジェノタイプを太字で示している。
【0143】
我々はまた、オッズ比により決定される通り、テガセロドに対する平均応答より高く、テガセロドおよび偽薬処置された患者の間の差を最大化するSNPを同定できるか否かを調ることを望んだ。テガセロドに対する少なくとも60%応答率の遮断、および5かそれ以上のオッズ比を用いて、我々は、処置の4週後、これらの基準に合う55個のSNPのうち12個のSNPを同定した。これらの“高応答性”SNPは、薬物標的HTR4に6個、HTR3Bに1個、Na-K-2Cl共輸送(SLC12A2)に2個、アクアポリンチャネルAQP3に1個、モチリン (MLN)に1個および電位非依存性NaチャネルSCNN1Aに1個を含んでいた(表6参照)。テガセロドに対する高い応答率を示すことに加えて、遺伝子の4個(AQP3、HTR3B、MLNおよびSLC12A2)に関する“高応答性”ジェノタイプが、また、偽薬処理個体で低い応答率に対する傾向を示すことに注目するのは、興味深い。
【0144】
あらゆる場合に、テガセロドに対する平均応答よりもより高い応答を示した、主要でないホモ接合体ジェノタイプであり、それぞれの個体のSNPに関しては、これは、集団の6-18%のみを占めた。潜在的な“高応答性”の数を増やす目的で、個体を2個の群に分けることによりさらなる評価を行った: これらの“高応答性”SNPの1個またはそれ以上を有する群およびいずれも有さない群。このモデルにしたがって、およそ患者の半分が、12個の同定したSNPのうちの少なくとも1個の存在のために、潜在的な“高応答性”として標識され、一方で、他の半分は、SNPを有さず、それ故、同様に応答しないことが予期された。この12個のSNPモデルを用いた解析の結果は、性および年齢による分析結果と共に、表7で提供している。
表7 処置の4週後のジェノタイプによる応答、年齢や性別により12個の“高応答性”SNPの1個またはそれ以上を有する個体、およびSNPのいずれも有しない個体の比較
【表10】

応答=基底を超える1 CSBM/週またはそれ以上のCSBM/週平均増加; 少なくとも7日の処置を有するITT白人; PG ID = 独特の内部SNP識別名; T6 =テガセロド6-mg(1日2回); P =偽薬; CI =信頼区間; Pop.の%=そのジェノタイプを有する集団のパーセント; p-値: R x geno = それぞれの処置集団内のジェノタイプによる応答率間の有意な差を試験するためのp-値(p-値のどれもが、複数の試験について調節されていないことに注意);最良の応答を証明するジェノタイプを太字で示している。p-値は、モデルを得るために使用した同じデータを用いて計算されているので、偏りがある可能性があることに注意。
【0145】
このモデルを用いて、我々は、12個のSNPの1個またはそれ以上を有するジェノタイプ分類された集団の52%が、偽薬での23%と比較して62%のテガセロドに対する全体の応答率を有することが分かる(5.4のオッズ比(95%CI: 3.0-9.9))。これは、偽薬と比較してテガセロドで有意に異なった応答率を示さない(それぞれ、27%および31%)、12個のSNPのいずれも有しない患者とは対照的であった(1.3のオッズ比(95% CI: 0.7-2.3))。我々がまた、少なくとも12個のSNPのうち1個を有し、全体としては治験で証明できなかった、男性集団および高齢者集団の個体に関してテガセロドに対する有意な応答を証明できたことに注目するのは、特に興味深かった。
【0146】
上記した6個の遺伝子に加えて、興味深く思われた、さらなる1個の候補遺伝子(TPH1;トリプトファンヒドロキシラーゼ)があった。表8で示したように、この遺伝子に関する2個のアッセイのそれぞれからの1個のジェノタイプは(SNP-1756に関してGGおよびSNP-3784に関してTT)、>5のオッズ比を有した。これは、主に、テガセロドに対する平均応答よりずっと高いのとは反対に、15-16%の低い偽薬応答率のためである。しかしながら、また、反対のアレルに関する個体のホモ接合体が、偽薬と比較してテガセロドに対する応答率が有意に異なっているのに注目することは興味深い。また、上記した12個の“高応答性”とは違って、TPH1に関しては、より良い全体的な応答を示した(集団の35-36%を表す)、主要なホモ接合体アレルである。元の12個の“高応答性” SNPまたはさらに2個のTPH1 SNPの包含により、存在または非存在によって分類された応答率およびオッズ比の比較を、それぞれ、図1および図2に示している。
表8 処置の4週後、TPH1遺伝子のジェノタイプによる応答
【表11】

応答=基底を超える1 CSBM/週またはそれ以上のCSBM/週平均増加; 少なくとも7日の処置をしたITT白人; PG ID = 独特の内部SNP識別名; T6 =テガセロド6mg(1日2回); P =偽薬; CI =信頼区間; Pop.の%=そのジェノタイプを有する集団のパーセント; p-値: R x geno = それぞれの処置集団内のジェノタイプによる応答率間の有意な差を試験するためのp-値(p-値のどれもが、複数の試験について調節されていないことに注意); 14個のSNPは、元の12個のSNPプラス2個のTPH1 SNPを含んでいる;最良の応答を証明するジェノタイプを太字で示している。p-値は、モデルを得るために使用した同じデータを用いて計算されているので、偏りがある可能性があることに注意。
【0147】
さらに2個のTPH SNPを包含すると、元の12個の“高応答性” SNPと比較して、14個のSNPの少なくとも1個を有するそれらの個体のテガセロドに対する全体の応答は減少するが、その区分の患者の割合を68%まで増やす。それに加えて、さらに、処置および偽薬の間の応答率の差を、SNPのいずれも有しない個体について32%に減らし、故に、見かけの“非応答性”集団をより良く定義する。
【0148】
二次効果評価項目:処置の12週後の応答。上記したのと同じ比較を、処置の12週間後、基底を超えた週1回以上のCSBの平均増加の二次効果評価項目を用いて行った。12人の“高応答性”SNPに関する結果を、表9で提供しており、12個のSNPのうち少なくとも1個を有するかまたは有しない個体の比較を用いた結果を、表10で提供している。
表9 処置の12週後、偽薬と比較してテガセロド6mg(1日2回)に対する異なった応答を証明している、12個のSNPに関するジェノタイプの関数としての応答
【表12】

応答=基底を超える週1回以上のCSBMの平均増加; 少なくとも7日の処置をしたITT白人; PG ID = 独特の内部SNP識別名; T6 =テガセロド6mg(1日2回); P =偽薬; CI =信頼区間; Pop.の%=そのジェノタイプを有する集団のパーセント; p-値: R x geno = それぞれの処置集団内のジェノタイプによる応答率間の有意な差を試験するためのp-値(p-値のどれもが、複数の試験に関して調節されていないことに注意);最良の応答を証明するジェノタイプを太字で示している。
表10 処置の12週後のジェノタイプによる応答、年齢や性別により12個の“高応答性”SNPの1個またはそれ以上を有する個体、およびSNPのいずれも有しない個体の比較
【表13】

応答=基底を超える週1回以上のCSBMの平均増加; 少なくとも7日の処置をしたITT白人; PG ID = 独特の内部SNP識別名; T6 =テガセロド6-mg(1日2回); P =偽薬; CI =信頼区間; Pop.の%=そのジェノタイプを有する集団のパーセント; p-値: R x geno = それぞれの処置集団内のジェノタイプによる応答率間の有意な差を試験するためのp-値(p-値のどれもが、複数の試験のために調節されていないことに注意);最良の応答を証明するジェノタイプを太字で示している。p-値は、モデルを得るために使用した同じデータを用いて計算されているので、偏りある可能性があることに注目しなさい。
【0149】
一般に、結果が統計的に有意ではないが(理由ははっきりしていない)、12週での結果は、処置の4週間後に見られるものに類似している。薬物標的HTR4のための“高応答性”ジェノタイプが、テガセロド-処置患者(>60%)について平均よりも高いままであり、このことは、また同様に、偽薬処置個体の平均応答率(30-40%)よりずっと高い値と同時に起こることに注目するのは、興味深かった。4週応答に関して、AQP、MLN、およびSLC12A2 “高応答性”ジェノタイプは、テガセロドに対する平均的な応答よりも高いことに加えて、平均的な偽薬応答率よりも低いことを証明し続けた。この偽薬に対する低い応答は、表11で証明した通り、再び、同様に、2個のTPH1 SNPに関して見られる。
表11 処置の12週後、TPH遺伝子のジェノタイプによる応答
【表14】

応答=基底を超える1 CSBM/週またはそれ以上のCSBM/週平均増加; 少なくとも7日の処置を有するITT白人; PG ID = 独特の内部SNP識別名; T6 =テガセロド6-mg(1日2回); P =偽薬; CI =信頼区間; Pop.の%=そのジェノタイプを有する集団のパーセント; p-値: R x geno = それぞれの処置集団内のジェノタイプによる応答率間の有意な差を試験するためのp-値(p-値のどれもが、複数の試験について調節されていないことに注意); 14個のSNPは、元の12個のSNPプラス2個のTPH1 SNPを含んでいる;最良の応答を証明するジェノタイプを太字で示している。p-値は、モデルを得るために使用した同じデータを用いて計算されているので、偏りがある可能性があることに注目しなさい。
【0150】
ロジスティック回帰による解析。さらなる解析を、処置および“高応答性”ジェノタイプ状態に加えて、性および年齢を考慮するために、ロジスティックリモデルを用いて行った。これらの処置の4週または12週後の解析の結果は、12個のSNPまたは14個のSNPモデルを用いて、表12に提供している。これらのモデルのそれぞれにおける年齢および性の包含は、応答に対する有意な効果を有するように思われないが、ジェノタイプ状態と処置の組合せは、結果に対して非常に顕著な効果を有し、これは処置のみよりもずっと大きい。この効果は、14個のSNPすべてを用いたモデルと比較して、もとの12個の“高応答性” SNPを含んだモデルを用いて、わずかに有意である。
表12 “高応答性”ジェノタイプ分類、性別、年齢、および処置を用いた応答のロジスティック回帰解析
【表15】

TRTC =処置区分(テガセロド6mg(1日2回)または偽薬); SEX1C =性別; AGECAT =年齢区分(<または>= 65)、HR_12SNPS = 12個の“高応答性” SNPの1個またはそれ以上の存在または非存在による区分化; HR_14SNPS = 7遺伝子の全14個のSNPの存在による区分化; * =2つのパラメーター間の相互作用; Pr > ChiSq =カイ二乗検定と関連するp-値 (p<0.05ならば、有意な効果)
【0151】
さらなる二次評価項目。上記の評価に加えて、5個のさらなる二次評価項目が、毎週、毎日、評価された。これらは、排便習慣、厄介な便秘、厄介な腹部膨満、厄介な腹部痛、および全体的な便秘軽減に関する、毎週の満足の変化を含んだ。表13は、処置の12週の終わりで、これらのパラメーターの全体の変化を比較した解析の結果(テガセロド6mg、1日2回対偽薬)、およびそれらが、12個の“高応答性”SNPの1個またはそれ以上を有するか否かを提供している。ANCOVAモデルを、量的な共変としてこれらの評価の基底値を用いて適用した。
【0152】
テガセロドを用いた処置は、組み合わせたあらゆる患者に関して、偽薬と比較してよりよい結果を生じた(値が低い値いほど、よい応答を示す)。“高応答性”ジェノタイプにより評価されるとき、12個のSNP (“T6対P: 0 SNP”)のいずれも有しない個体に関して処置の差はなかった。しかしながら、12個のSNPの1個またはそれ以上を有する個体は、5個の評価したすべてに関して(“T6対P: >=1 SNP”)、偽薬よりもテガセロドに対する有意により高い応答を証明した。また、テガセロド処置集団の中で、厄介な便秘、全体的な便秘の軽減、および排便習慣を含む全体の満足度に関して、12個のSNPのうち少なくとも1個を有するか、または有さない個体間の結果に有意な差があった。“高応答性”SNPの1個またはそれ以上を有するかまたは有さない個体間の基本スコアに、有意な差はなかった。よって、これらのデータは、CSBMの数に基づいた、主要効果評価項目のために見られる異なった応答と一致している。
表13 処置の12週後、毎週、毎日評価のANCOVA解析;処置および12個の“高応答性” SNPの1個またはそれ以上の存在による比較
【表16】

LS =最小二乗平均; N =観察数; Teg-6 =テガセロド6mg(1日2回)
【0153】
アレル頻度。表14は、白人の対照パネルのABIによって与えられたマイナーアレル頻度と比較して、ジェノタイプされた白人集団の12個の“高応答性”SNPのマイナーアレル頻度を示す。これらは、慢性便秘集団と対照試料の間のアレル頻度でいずれも大きな差はないように思われる。
表14 12個の“高応答性” SNPに関するアレル頻度
【表17】

ABI ref = Applied Biosystems Inc.参照資料からのマイナーアレル頻度; Cauc =白人; E2302 = 現在のジェノタイピング研究(CHTF919E2302); N/A =白人集団のために利用できない。
【0154】
連鎖不均衡の評価。12個の“高応答性”SNPのうち6個が、薬物標的HTR4の中に位置している。これらのSNPのすべては、ゲノムDNAのほぼ100 kbに渡って、イントロン領域に位置している(図3を参照)。さらなる解析は、これら6個のSNPのすべてが、非常に密接した連鎖不均衡である(4個のSNP(1746、3754、3753および3743)に関して>0.8のD'値、およびSNP3756および3747に関して>0.6のD'値を有する)ことを証明した(図3を参照)。Na-K-2Cl共輸送SLC12A2に関する2個の“高応答性”SNPが、また、2個のTPH1 SNPと同様に、お互いに非常に密接なLDであった。
【0155】
偽薬と比較してテガセロドに対する異なった応答性と関連した遺伝子の詳細。最初のSNP“高応答性”ジェノタイプモデルは、全6個の異なる遺伝子に存在する12個のSNPに基づいた: HTR4に6個、SLC12A2に2個およびHTR3B、MLN、AQP3ならびにSCNN1Aのそれぞれに1個。第2の14個のSNPモデルは、TPH1遺伝子中にさらに2個のSNPを含んだ。さらに、便秘またはテガセロドに対する応答における考え得る役割と共に、これらの遺伝子のそれぞれに関する詳細を以下に論じる。
【0156】
HTR4:5-HT4受容体(薬物標的)。HTR4はアデニル酸シクラーゼと結合した7回膜貫通ドメインGタンパク質共役受容体であり、それは、消化管および脳のような多くの他の組織を通して広く分布している。発現5-HT4受容体のいくつかの変異型は、遺伝子の5'末端に主に位置する、多くの異なったエキソンの二者択一のスプライシングのため同定された(図、4参照)。膜貫通ドメイン4と5の間の14個のアミノ酸挿入をコードしたエキソンhは例外だが、二者択一スプライシングエキソンa-gは、C末端ドメインだけが異なっているタンパク質を生じる。Bender E et al., Neurochem. 74(2): 478-89 (2000)。異なったHTR4スプライス変異型は、異なった組織特異性および異なった生理学的活性を示すことを証明している。Bender E et al., Neurochem. 74(2): 478-89 (2000); Blondel O et al., J Neurochem. 70(6):2252-61 (1998); Claeysen S et al., Mol Pharmacol; 55: 910-920 (1999)
【0157】
参照として図4を用いて、6個の“高応答”HTR4 SNPは以下の場所に位置している: SNP 3753、3743、3756、および3747は、イントロン1でのエキソン2の下流に位置する;SNP 3754は、エキソン3と4の間に位置する;およびSNP 1746は、エキソン4と5の間でエキソンhの上流に位置する。これらのSNPのいずれも、コード領域または直接にスプライスサイトに位置していないが、それらが、まだ同定されていない機能的重要性を有する他のSNPと共に、近接LDに存在することはあり得る。これらのSNP(図3を参照)間の広大な領域の連鎖不均衡のために、この提案された機能的SNPがどこに位置するのかを予測することはできない。位置に依存して、多くの機能的な重要性、例えば、全体の発現に影響する遺伝子のプロモーター領域における変化;どのスプライスバリエントが発現するかに影響するスプライスサイトにおける変化;またはおそらく、発現したタンパク質の活性に影響するタンパク質のアミノ酸配列における変化があり得る。さらなる研究が、もしあるならば、これらのシナリオのどれが本当であるのかを決定するのに必要である。
【0158】
HTR3B:5-HT3受容体B。HTR3Bは、ニコチン性アセチルコリン(nAch)、GABAAおよびグリシン受容体を含むリガンド依存性チャネルのCys-ループファミリーメンバーである、5-HT3受容体サブユニットB遺伝子をコードしている。Reeves DC & Lummis SC、Mol. Membr. Biol. 19: 1126 (2002)。少なくとも3個の異なった5-HT3受容体サブユニットが既知であり(A、BおよびC)、機能的な受容体はこれらのサブユニットの内、5個を一緒に含むオリゴマーである(普通は、AとBの組合せ)。しかしながら、5-HT3Aサブユニットのみからなる機能的ホモ5量体型受容体もまた記載されている。それぞれのサブユニットは、チャネル孔がM2ドメインにより形成される証拠を有する4回膜貫通ドメインからなる。この受容体は、相対的に非選択的陽イオンチャネルとして作用し、神経において活性化後、素速い脱分極応答を生じる。
【0159】
HTR3Bにおける1個のSNPが、ジェノタイプ分類されており(SNP 3755)、テガセロドに対する異なった応答と関連していた。SNPは、エキソン5でミスセンス突然変異をコードしており、その結果、細胞外N末端ドメインに位置するアミノ酸位置129で、チロシンからセリンへのアミノ酸変化を生じる。5-HT3A受容体サブユニットの細胞外ドメインにおけるいくつかのチロシン残基が、リガンド結合またはチャネルのゲーティングおよび受容体アセンブリーならびに構造で重要な役割を果たすことを、研究は証明している。Price KL & Lummis SC、J Biol Chem. 279(22):23294-301 (2004)。このSNPはまた、膜貫通ドメインをコードしている遺伝子の3'領域と不均衡な高結合を示す(SNP Browser Version 1.0、Applied Biosystems Inc.)。
【0160】
MLN:モチリン。モチリンは、消化管収縮のレギュレーターとして作用する小腸の内分泌細胞から主に分泌されるペプチドホルモンである。ヒトモチリン(MLN)遺伝子は、5個のエキソンからなり、22アミノ酸モチリンホルモンペプチド、25アミノ酸シグナルペプチド、およびC末端モチリン関連ペプチド(MAP)を含む、115アミノ酸のプレプロホルモンをコードしている。エキソン2および3は、シグナルペプチドおよび22アミノ酸モチリンペプチドをコードし、一方で、C末端MAPは、主にエキソン3および4によってコードされる。Daikh DI et al., DNA. 8(8):615-21 (1989)。現在の解析で高応答と関連したモチリン SNP (SNP 1783)は、プレプロホルモンのアミノ酸位置15でバリンをアラニンに置換したミスセンス突然変異である。これは、活性化モチリンペプチドに対して、遺伝子のシグナルペプチド領域の11位に突然変異を置く。興味深いのは、この多型が種に渡って保存されていることである。Depoortere I et al., Peptides. 18(10):1497-503 (1997)。シグナルペプチド配列における変化は、タンパク質の細胞内局在に影響し、それは、活性化モチリンペプチドの分泌に影響するか、またはおそらく、完全に前駆体からの活性化ペプチドの適当な分離を妨げる。血漿中の分泌モチリンの変えられたレベルは、また、特発性便秘[Sjolund K et al., Scand J Gastroenterol. 21(8):914-8 (1986)]および遅通過便秘[Peracchi M et al., Scand J Gastroenterol. 34(1):25-8 (1999)]を有する患者で観察される。モチリンシグナルペプチド多型間の関連は、炎症性腸疾患を有する患者で報告された。Annese V et al., Dig. Dis. Sci. 43(4): 715-9 (1998)。しかしながら、関連する血漿モチリンレベルは、報告されていなかった。
【0161】
AQP3:アクアポリン3。アクアポリン3(AQP3)は、水チャネルのアクアポリンファミリーのメンバーである。液体分泌および吸収は、胃腸管の主要な機能であり、上皮を透過して水を輸送する能力を有するアクアポリンは、この過程で重要な役割を果たす。AQP3は、胃腸管、腎臓、肝臓、膵臓、肺、末梢白血球、脾臓および前立腺を含む、多くの組織で発現している。Ishibashi K et al., Genomics 27:352-354 (1995)。水チャネル機能に加えてアクアポリン3は、尿素やグリセロールのような非イオン性小溶質の輸送を、わずかながら促進することが分かった。直腸において、AQP3は、糞便脱水の量を制御するのに重要な役割を果たし得、それ故、慢性便秘に関連した症状の1つである排泄物の固さまたは柔らかさに影響する。Kierbel A et al., Pflugers Arch. 440(4):609-18 (2000)。
【0162】
AQP3遺伝子は、およそ6 kbにわたる6個のエキソンからなる(コード領域は、6個のエキソンのそれぞれに分布している)。Inase N et al., J. Biol. Chem. 270(30):17913-6 (1995)。より高いテガセロド応答と関連したAQP3 SNP(SNP 1838)は、イントロン1に位置している。まだ同定していないエキソン1の領域の近くの機能的SNPと連鎖しているだろうが、このSNPと関連した機能的重要性はない。遺伝子の長さにそって示された連鎖不均衡はほとんどないので、エキソン5およびイントロン5のスプライスジャンクションに位置する、既知の機能的突然変異と関連していそうにない。Roudier N et al., J Biol Chem. 277(48):45854-9 (2002)。この突然変異は、非機能的タンパク質をコードしている翻訳遺伝子で未成熟ストップコドンを生じる。興味深いのは、このアレル(AQP3null)に関するホモ接合体である個体は、赤血球細胞で減少したグリセロール輸送を示し、少なくとも正常な状態の下では、このAQP3の欠損に関連する他に報告された臨床症候はなかった。
【0163】
SLC12A2: Na-K-2Cl共輸送体1(NKCC1)。SLC12A2は、電気的に中性な方法で細胞膜を通して、ナトリウム、カリウムおよびクロライドを共輸送する、溶質運搬ファミリーのメンバーである。このNa-K-2Cl共輸送体はまた、NKCC1として知られ、さまざまな細胞型(上皮および非上皮の両方)で発現している。Russell JM, Physiol Rev 80:211276 (2000)。大腸のような上皮細胞では、NKCC1は、側底部膜に位置し、主に、細胞に頂端部から分泌されるクロライドを提供する役目を果たす。上皮性Cl分泌は、腸管の液体組成に大きな影響を与える、粘膜表面水和を説明する。非上皮性細胞においてNKCC1タンパク質は、細胞容積を制御する重要なプレイヤーとして作用する。Lytle C,. J. Biol. Chem 272:1506915077 (1997)。
【0164】
NKCC1は、もともと、サメ直腸腺からクローニングされ[Xu J-C et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:22012205 (1994)]、その後すぐに、ヒト遺伝子が大腸由来細胞株からクローニングされた。Payne JA et al., J Biol Chem. 270(30):17977-85 (1995)。発現したタンパク質は、細胞内NおよびC末端ドメインの側面に並んだ、12回膜貫通ドメインを有する1212アミノ酸からなる。Hebert SC et al., Pflugers Arch. 447(5):580-93 (2004)。NKCC1遺伝子の欠損と直接関連したヒト疾患は存在しないが、この遺伝子の突然変異は、マウスにおける難聴[Dixon MJ et al., Hum. Mol. Genet. 8(8):1579-84 (1999)]および精子形成の失敗[Pace AJ et al., J. Clin. Invest. 105(4):441-50 (2000)]と関連がある。ここで、我々は、この遺伝子で、テガセロドに対するより高い応答性と関連した、2個のSNPを同定した:SNP 3801はイントロン2に位置しており、そして、SNP 1842は3' UTRにおいて遺伝子の反対の端に位置している。
【0165】
SCNN1A:非電位依存性ナトリウムチャネルα。SCNN1Aは、通常、上皮性ナトリウムチャネルまたはENaCとして知られている、非電位依存性アミロライド-感受性ナトリウムチャネルのαサブユニットをコードしている。このチャネルは、遠位結腸でのナトリウム吸収に関する主要な経路の1つであり、よって、腸の液体組成を維持するのに重要な役割を果たす。αサブユニットのみが、ナトリウムを運ぶ機能的なチャネルを形成することができるが、インビボにおいて機能的なチャネルは、α、βおよびγサブユニットの組合せからなる。
【0166】
SCNN1A遺伝子は、エキソン2で始まりエキソン13で終わるコード領域を有する、染色体12p13上の17 kb にわたる13個のエキソンからなる。Ludwig M et al., Hum Genet. 102(5):576-81 (1998)。“高応答性”SNP 3806は、SCNN1A遺伝子のイントロン5の真ん中近くに位置している。再び、全体の遺伝子にそって高い程度の連鎖不均衡があり、故に、原因SNPは、どこにでもある。興味深いのは、また、5'末端の近くに1個、および3'末端の近くに1個ジェノタイプされた2個の他のSCNN1A SNPが、また、テガセロドに対するいくらか高い応答性を示し(オッズ比>3.5)、SNP 3806を有するLDであった。SCNN1A遺伝子における突然変異の多くは、主に、腎臓での効果により、ヒト疾患と関連している。いくつかのアレル変異体は、いくつかの異なったファミリーで、I型常染色体劣性偽性低アルドステロン症と関連している。(OMIM #600228:ナトリウムチャネル非電位性1αサブユニットのエントリーを参照;SCNN1A http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/dispomim.cgi?id=600228)。おそらく、腎臓における低レベルのナトリウム再吸収のために、高血圧とSCNN1AにおけるSNPとの間にまた関係が作られた。Iwai N et al., J. Am. Soc. Nephrol. 13:80-85 (2002)。またアルドステロン制御下にある遠位結腸でのこのナトリウムチャネルの突然変異の効果は、確かに、腸における液体および電解質のバランスに悪影響を生じた。
【0167】
TPH1:トリプトファンヒドロキシラーゼ1。トリプトファンヒドロキシラーゼは、セロトニン合成における律速酵素であり、トリプトファンの5-ヒドロキシトリプトファン(5-HT)へのモノオキシゲネーションを触媒し、それは次に、セロトニンを形成するために脱カルボキシル化される。TPH1は、主に、腸クロム親和性細胞を含む末梢に発現しており、最近単離したTPH2遺伝子は、優勢に、脳に発現している。Walther DJ et al., Science 299(5603):76 (2003)。セロトニンは、因果的に、気分制御に関する複数の中枢神経側面に、および、睡眠、不安、アルコール依存症、薬物乱用、食物摂取、および性的行動を制御することに関与しており、一方で、末梢組織では、セロトニンは、血管緊張、腸運動性、一次止血、および細胞仲介免疫応答を制御するのに関与している。Veenstra-VanderWeele J、Anderson GM & Cook EH Jr., Eur J Pharmacol. 410(2-3):165-181 (2000)。
【0168】
2個のTPH1 SNPは>5.0のオッズ比と関連しており、それは主に、テガセロド集団でのずっと高い応答率とは対照的に、偽薬集団でのより低い応答のためである。これらの2個のSNPは、イントロン1(SNP 1756)およびイントロン5(SNP 3784)に位置しており、それ自身が機能的な突然変異を引き起こすとは信じられていない。この全体の遺伝子は、強い連鎖不均衡にあり、そこで再び、同定したSNPが、遺伝子内の任意の場所に位置している機能的SNPと連鎖している。多くの研究は、混合した結果を有するTPH1多型および自殺または他の気分障害のリスクを評価した。レビューのためにArango V et al., J. Psychiatr. Res. 37(5): 375-86 (2003)を参照。これらの研究で評価されたSNPは、コード領域に位置していなかった。Arango et al.は、機能的なSNPは、まだ同定されていないと報告している。TPH1ジェノタイプと腸障害の関連に関しては、ほとんど報告されていなかったが、Coatesおよび同僚による最近の研究は、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群優勢便秘(constipation predominant) (IBS-C)および炎症性腸症候群 優勢白色下痢(diarrhoea predominant) (IBS-D)を有する患者でTPH1メッセンジャーRNAの有意な減少があったことに注目している。Coates MD et al., Gastroenterology. 126(7):1657-64 (2004)。
【0169】
結論。この薬理遺伝学的解析の目的は、5-HT4および5-HT3受容体、セロトニン、腸内分泌または運動性に関連する候補遺伝子における多型が、慢性便秘を有する患者でのテガセロド処置に対する異なった応答と関連しているか否かを評価することであった。ジェノタイプによる応答の比較は、処置に対する異なった応答、すなわち、処置の4週間後の>60%のテガセロド6mg(1日2回)に対する応答率および5またはそれ以上のオッズ比(偽薬と比較して)と関連する6個の遺伝子における12個のSNPを同定した(表6を参照)。これを、テガセロドおよび偽薬で、それぞれ、46%および25%(2.6のオッズ比を有する)の平均的な全体の応答率と比較した。1つの態様として、これら12個の“高応答性”SNPを用いて、我々は、12個のSNP(集団のおよそ50%)のうち少なくとも1個を有する個体が、偽薬と比較してテガセロドに対する有意に高い応答性(62%対23%、オッズ比= 5.4)を示すことを発見した。これは、12個のSNPのいずれも有さず、偽薬と比較してテガセロドに対する応答(31%対27%、オッズ比= 1.3)で有意な差を示さなかった、残りのおよそ50%の患者とは対照的である。12個のSNPモデルを用いた結果は、個体のジェノタイプレベルで見られるいくつかの差はあったが、処置の12週間後においても類似していた。
【0170】
患者を分類するために14個のSNPからのジェノタイプを用いた第2の態様は、また、さらに非応答集団を定義するのに役立つことが分かった。元の12個の“高応答”SNPに加えてTPH1遺伝子から2個のSNPを含むこの態様では、我々は、14個のSNPのいずれも有しない患者の32%が、それぞれ、テガセロドおよび偽薬に対して32%および30%の応答率を示す(オッズ比は、1.1)ことを明らかにする。しかしながら、このモデルを用いることは、14個のSNPのうち少なくとも1個を有する患者の68%に関して、テガセロドに対する全体の応答率を、53%のみに減少させる(12個のSNPモデルを用いて見られる、62%の応答率よりも低い)。
【0171】
同定した遺伝子は、そのすべてが消化管の正常な機能を維持するのに重要であるが、幅広い異なった機能を示す。セロトニン受容体HTR4およびHTR3Bは、主に、セロトニンの標的であり、よって、運動性、腸内分泌および内臓感受性を含む、この重要な神経伝達の下流の効果を仲介する。セロトニンの合成における律速酵素であるTPH1は、また、これらのセロトニン仲介制御機能において明らかに重要な役割を有する。溶質輸送は、消化管での水および電解質の均衡を維持するのに必要であり、よって、腸分泌および吸収において重要な効果を持つことができる。同定した3個の遺伝子は、溶質輸送で重要な役割を果たす:SLC12A2(NKCC1)は、塩化物の分泌に関する主な輸送経路の1つである;SCNN1A(ENaCα)は、ナトリウムの吸収において重要である:およびAQP3は、水およびグリセロールの輸送において重要な役割を果たす。最後に、モチリン(MLN)は、消化管の運動性を制御することが分かっている重要な消化管ホルモンの1つである。
【0172】
これらの発見に基づいて、慢性便秘は、上記の同定した遺伝子の変異型(そのすべてはテガセロドを用いた処置に対し、よい応答を示す)に関連したさまざまな病態生理学的メカニズムにより生じる。これらの変異型を有さない患者は、偽薬で行ったときと比べて、処置に対する有意な応答を示さず、このことは、それらの慢性便秘が病態生理学的なメカニズムによるものではなく、むしろ、環境または場合によっては心理学的要因によるものであることを示している。興味深いことにこれらの変異型を有する患者は、偽薬には応答しない傾向があり、再び、これらの変異型が真の病態生理に関係していることを示唆している。
【0173】
それぞれ個々の出版、特許または特許出願を、それらの全体をすべての目的のために、特別におよび個々に、引用により本明細書の一部とすることを示すのと同じ程度に、本明細書に引用したすべての引用文献を、それらの全体をすべての目的のために、引用により本明細書の一部とする。
【0174】
本発明は、本願に記載した特定の態様に限定するものではなく、それは、本発明の個々の側面の1つの例示であることを意図している。本発明の多くの修飾や変形は、その精神や範囲から離れることなく、当業者に明らかである通り、為すことができる。本明細書に列挙したものに加えて、本発明の範囲内の機能的に同等な方法および装置は、前述の記載から当業者に明らかである。そのような修飾および変形は、添付の請求項の範囲内にあることを意図する。本発明は、そのような請求項が権利化される同等物の十分な範囲と共に、添付の請求項によってのみ制限されるべきである。
配列
【表18】

【0175】
【表19】

【表20】

【表21】

【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、処置の4週間後に、“高応答”ジェノタイプの存在の関数として応答率を示している棒グラフである。応答=1つまたはそれ以上の完全自発腸運動(CSBM)の平均増加/基底にわたる週;少なくとも7日間の処置をした包括解析(ITT)白人;12個のSNPは元の12個の高応答性SNPを含む;14個のSNPはさらに2個のTPH1 SNPを含む;(%)は、それぞれのカテゴリーにおける、ジェノタイプ分類された集団の割合を示す。
【図2】図2は、処置の4週間後に、“高応答”ジェノタイプの存在の関数としてオッズ比を示している1組のエラーバーである。12個のSNPは元の12個の高応答性SNPを含む;14個のSNPはさらに2個のTPH1 SNPを含む;ボックスはオッズ比を表し、線は95%信頼区間を表す。
【図3】図3は、HTR4ゲノム領域にわたってジェノタイプ分類したSNPの位置および連鎖不均衡の決定の図面である。上記のパネルは、最初に、HTR4遺伝子のゲノム領域の多くにわたる12個のSNPを選択したことを示している。ボックスは、テガセロドに対する平均的な応答よりもより高い応答と関連したSNPを示している。十分な質のジェノタイプを産生せず、そのため、応答の評価に利用されなかった2個のSNPアッセイ(SNP-3802およびSNP-3803)を強調している。下のパネルは、HTR4に対する10個の十分なジェノタイプアッセイ間の連鎖不均衡(LD)を示している。下の左の事象は、SNP間の連鎖不均衡の程度を示しており(より高い値は、強いLDを示している)、上の右の事象は、SNP間の相対的な距離(塩基対で)を示している。テガセロドに対するより高い応答性を示した6個のSNP(SNP 1746、3754、3753、3743、3756、および3747)が、お互いの間で、特に、これらのSNPの最初の4個(1746、3754、3753、および3743)で、高い程度の連鎖不均衡(>0.6(最初の4個はLD>0.8))を示していることは注目すべきである。
【図4】図4は、5-HT4受容体の構造を示しており、関連線により示された異なる5-HT4 受容体エキソン中のオルタナティブスプライシングの可能性を図式により示している。ボックスはエキソンを表し、一方でイントロンは、太線として示している。エキソン4と5の間の点線は、mRNAの中にエキソンhを含むスプライシングを表しており、一方で、破線の後のスプライス事象は、エキソンhを除外する。エキソン5下流では、C末端エキソンの異なった組合せを、あらゆるスプライシングバリエントについて種々の形式の線を用いて描写する。C末端バリエントeおよびfを、エキソンg内の2個のオルタナティブスプライス受容サイトに基づいて作製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された患者集団での慢性便秘の処置のための医薬の製造におけるテガセロドの使用であって、ここで、該患者集団が患者に存在するバイオマーカー遺伝子の遺伝的多型に基づいて選択され、該遺伝的多型が慢性便秘の処置におけるテガセロドの有効性を示す、使用。
【請求項2】
(a)個体に存在する2遺伝子のコピーに関して、多型遺伝子座でのヌクレオチド対の同一性を決定すること、および、
(b)遺伝子の該領域における多型サイトでのヌクレオチド対が、個体が慢性便秘に対するテガセロドを用いた処置に対して応答性があることを示しているならば、個体を“高”応答群に指定すること、
を含む、消化器障害を有する個体のテガセロドを用いた処置に対する応答性を決定する方法。
【請求項3】
消化器障害が便秘型過敏性腸症候群(C-IBS)、機能性消化不良、胃食道逆流疾患、および糖尿病性胃疾患からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)1個またはそれ以上の遺伝子からの遺伝子座で慢性便秘の処置におけるテガセロドの有効性を示す対象のジェノタイプを取得し(ここで、該遺伝子は、5-HT4受容体遺伝子(HTR4); 5-HT3受容体サブユニットB遺伝子(HTR3B);モチリン遺伝子(MLN);アクアポリン3水チャネル遺伝子(AQP3);ナトリウム/カリウム/クロライド共輸送体1(NKCC1)としても知られる、溶質運搬遺伝子ファミリー12メンバーA2(SLC12A2);および、アミロライド-感受性上皮性ナトリウムチャネルαサブユニット(ENaCα)としても知られる、非電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニット遺伝子(SCNN1A)からなる群から選択される)、そして
(b)(i)対象のジェノタイプが、慢性便秘の処置におけるテガセロドの有効性を示すならば、対象にテガセロドを投与するか、または(ii)対象のジェノタイプが、慢性便秘の処置におけるテガセロドの有効性を示さないならば、対象に他の治療を投与する、
の工程を含む、対象における慢性便秘を処置するための方法。
【請求項5】
慢性便秘が便秘型過敏性腸症候群(C-IBS)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
HTR4遺伝子が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6のヌクレオチド配列からなる群から選択される配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
HTR3B遺伝子が、配列番号7のヌクレオチド配列からなる群から選択される配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
MLN遺伝子が、配列番号8のヌクレオチド配列からなる群から選択される配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
AQP3遺伝子が、配列番号9のヌクレオチド配列からなる群から選択される配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
SLC12A2遺伝子が、配列番号10および配列番号11のヌクレオチド配列からなる群から選択される配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
SCNN1A遺伝子が、配列番号12のヌクレオチド配列からなる群から選択される配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
(a)1個またはそれ以上の遺伝子からの遺伝子座で慢性便秘の処置におけるテガセロドの有効性を示す対象のジェノタイプを取得し(ここで、該遺伝子は、5-HT4受容体遺伝子(HTR4); 5-HT3受容体サブユニットB遺伝子(HTR3B);モチリン遺伝子(MLN);アクアポリン3水チャネル遺伝子(AQP3);ナトリウム/カリウム/クロライド共輸送体1(NKCC1)としても知られる、溶質運搬遺伝子ファミリー12メンバーA2(SLC12A2);および、アミロライド-感受性上皮性ナトリウムチャネルαサブユニット(ENaCα)としても知られる、非電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニット遺伝子(SCNN1A);およびトリプトファンヒドロキシラーゼ1遺伝子(TPH1)からなる群から選択される)、そして
(b)(i)対象のジェノタイプが、慢性便秘の処置におけるテガセロドの有効性を示すならば、対象にテガセロドを投与するか、または(ii)対象のジェノタイプが、慢性便秘の処置におけるテガセロドの有効性を示さないならば、対象に他の治療を投与する、
工程を含む、対象における慢性便秘を処置するための方法。
【請求項13】
慢性便秘が便秘型過敏性腸症候群(C-IBS)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
TPH1遺伝子が、配列番号13および配列番号14のヌクレオチド配列からなる群から選択される配列を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
遺伝子のハプロタイプと消化管疾患特色の間の相関を同定する方法であって、消化管疾患特色を示す集団でのハプロタイプの頻度を対照集団でのハプロタイプの頻度と比較することを含み、ここで、対照集団よりも消化管疾患特色集団においてハプロタイプの高い頻度が、ハプロタイプが消化管疾患特色と関連していることを示す、方法(ここで、遺伝子は、5-HT4受容体遺伝子(HTR4); 5-HT3受容体サブユニットB遺伝子(HTR3B);モチリン遺伝子(MLN);アクアポリン3水チャネル遺伝子(AQP3);ナトリウム/カリウム/クロライド共輸送体1(NKCC1)としても知られる、溶質運搬遺伝子ファミリー12メンバーA2(SLC12A2);および、アミロライド-感受性上皮性ナトリウムチャネルαサブユニット(ENaCα)としても知られる、非電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニット遺伝子(SCNN1A);およびトリプトファンヒドロキシラーゼ1遺伝子(TPH1)からなる群から選択される)。
【請求項16】
薬物活性の標的としての、5-HT4受容体遺伝子(HTR4); 5-HT3受容体サブユニットB遺伝子(HTR3B);モチリン遺伝子(MLN);アクアポリン3水チャネル遺伝子(AQP3);ナトリウム/カリウム/クロライド共輸送体1(NKCC1)としても知られる、溶質運搬遺伝子ファミリー12メンバーA2(SLC12A2);アミロライド-感受性上皮性ナトリウムチャネルαサブユニット(ENaCα)としても知られる、非電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニット遺伝子(SCNN1A);およびトリプトファンヒドロキシラーゼ1遺伝子(TPH1)からなる群から選択される遺伝子の遺伝子産物の使用であって、ここで、該使用は、
(a)該薬物を、慢性便秘のためのテガセロドを用いた処置に対して高応答性を示す選択遺伝子の領域における多型サイトで、ヌクレオチド対を有するポリヌクレオチドによってコードされた最初の遺伝子産物と接触させ;
(b)該最初の遺伝子産物に関する薬物活性を同定し;
(c)該薬物を、慢性便秘のためのテガセロドを用いた処置に対して低応答性を示す選択遺伝子の領域における多型サイトで、ヌクレオチド対を有するポリヌクレオチドによってコードされた2番目の遺伝子産物と接触させ;
(d)該2番目の遺伝子産物に関する薬物活性を同定し;
(e)工程(b)で同定した活性および工程(d)で同定した活性間の類似性および差異を同定する、
工程を含む、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−526775(P2008−526775A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549702(P2007−549702)
【出願日】平成18年1月3日(2006.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/000022
【国際公開番号】WO2006/074127
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】