説明

成形品の製造方法及び製造装置

【課題】成形品(例えば型取り用型)の製造において、成形型内に注入する液体材料(例えばゴム材料)内の気泡を確実に除去する。
【解決手段】原型1及び裏打ち部材2の間に形成された成形空間の最下部と樋状容器4との間を連通路20により接続し、樋状容器4内に取り付けた開閉部材5により連通路20を閉じた状態に設定する。樋状容器4に所要量の液状のゴム材料Gを注入して一旦滞留させた後、開閉部材5により連通路20を開いた状態に設定してゴム材料Gを重力の作用により成形空間内に流入させ、成形空間内にゴム材料Gを充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原型に液体材料を注入して成形する成形品の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料又は金属材料を、原型を用いて様々な成形品を製造する方法が実用化されている。成形品の一例として、例えば、タイヤ成形用金型の鋳造方法において、タイヤのトレッド部のパターンを形成した原型にサイプを形成するための原型用ブレードを取り付け、ブレードを取り付けた原型を転写した型取り用ゴム型を製造することが行われている。なお、型取り用型にゴム型が用いられる理由は、ゴム型には適度な弾性が有り、成形品脱型時に抜き勾配が逆になるいわゆるアンダーカット形状が存在していても、成形品の成形が可能であり、かつ、その形状転写精度が高いからである。
【0003】
型取り用ゴム型の成形では、液状のゴム材を用いて成形(注型成形)による加工方法が採用されている。
図5は、従来の型取り用ゴム型の製造方法における各工程を説明する図である。
図5を参照して、従来の型取り用ゴム型のうち、とくにサイプを備えたタイヤの成形用金型の鋳造製作に用いるゴム型(型取り用ゴム型)について説明する。
まず、原型100にサイプ成形のための原型用ブレード100aを取り付ける。図5Aに示すように、この原型用ブレード100aの取り付けは原型100の溝100b(図7参照)に植え込むか又は貼り付ける。図5Bは原型100に原型用ブレード100aを取り付けた状態を示す断面図である。続いて、図5Cに示すように、原型用ブレード100aを付けた原型100を型取り用ゴム型110に転写する。次に、転写した型取り用ゴム型110を外し、原型用ブレード100aで成形された溝に、図5Dに示すように、金型ブレード110aを改めて植え込む。続いて、図5Eに示す鋳型転写を行う。この鋳型転写の際に、型取り用ゴム型110に取り付けた金型ブレード110aが鋳型120に移り、金型ブレード110a付き鋳型120(崩壊性鋳型)が得られる。
【0004】
図5Fはこの鋳型120を脱型した状態を示す断面図である。
続いて、図5Gに示すように、修正工具125で鋳型120のバリを取る鋳型仕上げを行う。次に、図5Hに示すように鋳型120を乾燥して焼成し、図5Iに示すように、この鋳型120を用いて成形型130を鋳造する。この成形型130を鋳造する際に、金型ブレード110aは成形型130に移り、図5Jに示すように型バラシを行い、図5Kに示す金型ブレード110aを取り付けた成形型130が得られる。
【0005】
上述したタイヤ成形用金型の鋳造方法において、次に型取り用ゴム型の転写工程について図6を参照して説明する。
先ず原型用ブレード100a付きの原型100を準備する。この原型100に注入するゴム材料については、主材及び硬化剤等を所定の配合割合で調合した後撹拌して減圧脱泡したものを準備する。原型100にゴム材料を注入するには、まず、原型用ブレード100aを取り付けた原型100の周囲に枠体101を密着させて液漏れしないように固定し、原型100の上面において枠体101に囲まれて形成された空間にゴム材料Gを注入する。
【0006】
ゴム材料Gは原型100の上面に隙間なく充填されていくが、注入の際に巻き込まれた空気が気泡Bとなってゴム材料Gの内部に形成される(図6A)。ゴム材料Gが注入された原型100は、減圧装置の減圧チャンバ102内にセットされて減圧脱泡処理が行われ、ゴム材料G内の気泡Bが除去される(図6B)。減圧脱泡処理後、裏打ち部材103が枠体101に嵌め込まれて原型100の上方にセットされる(図6C)。裏打ち部材103には、多数の空気抜き孔103aが貫通して形成されており、原型100と裏打ち部材103との間のキャビティ内の空気を空気抜き孔103aから抜きながら、ゴム材料Gをキャビティ内に充満した状態に設定してゴム材を硬化させる(図6D)。
【0007】
その際に、空気抜き孔103aから抜き切れない空気が空気溜りCとして裏打ち部材103の下面に残留する。ゴム材料Gの硬化後、原型100から枠体101を取り外して裏打ち部材103と硬化したゴム材料が一体化した型取り用ゴム型110を脱型する(図6E)。こうして型取り用ゴム型110が成形される(図6F)。
【0008】
ところで、従来の型取り用ゴム型110の製造では、減圧脱泡後に裏打ち部材103をセットするため、成形された型取り用ゴム型110内に空気溜りCが残留することが避けられず、型取り用ゴム型110の寸法不良の原因となるおそれがある。また、原型用ブレード100aは、図7に示すように、原型用ブレード100aを原型100に形成された溝100bに植え込んだり、図8に示すように、原型用ブレード100aを原型100の表面に貼り付けている。そのため、原型用ブレード100aの取付箇所に微小な隙間が形成されて、その隙間に注入した液状のゴム材料が差し込むように進入する。
【0009】
例えば図7に示すように、原型用ブレード100aを植え込む場合には、原型100に形成された溝100bと原型用ブレード100aとの間の微小な隙間(図7A(3))にゴム材が進入し、原型用ブレード100aに対応して形成された型取り用ゴム型110の溝100bの周囲にゴムバリ100cが突出するように形成される(図7B(1)、(2))。
なお、図7A(1)は原型用ブレード用100aを原型100の溝100bに植え込む前の状態、図7A(2)は同植え込んだ状態を示す図であり、図7A(3)は同植え込んだ状態の断面図である。また、図7B(1)は原型用ブレード100aを原型100の溝100bに植え込んだ状態においてゴムバリ100cが発生している状態を、図7B(2)は型取り用ゴム型110におけるゴムバリ100cの発生状態を示す図である。
【0010】
また、図8に示すように、原型用ブレード100aを原型100に貼り付ける場合にも、原型用ブレード100aの周囲の微小隙間(微小凹み)にゴム材料が進入して、ゴムバリ110cが形成される。脱型後にこうしたゴムバリ110cを手作業により除去しなければならず、生産効率を低下させる要因となっている。
なお、図8A(1)は原型用ブレード100aを原型100に貼り付ける前の状態、図8A(2)は同貼り付けた状態を示す図であり、図8(3)は同貼り付けた状態の断面図である。また、図8B(1)は原型用ブレード100aを原型100に貼り付けた状態においてゴムバリ110cが発生している状態を、図8B(2)は型取り用ゴム型110におけるゴムバリ110cの発生状態を示す図である。
【0011】
なお、以下で説明する本発明の成形品の製造方法における成形方法と類似した方法として、ソリッドタイヤ等のローラ状体を製造する場合において、成形金型を傾斜した状態に設定し、成形金型内の円柱状キャビティの最頂部近傍に形成した注入孔より液体材料を注入すると共に、注入孔のエアー逃がし孔が両側に1箇所ずつ設けられ、液体材料を重力により円柱状キャビティ内にエアーを逃がしながら充填して硬化させるようにした成形方法が知られている(特許文献1)。
【0012】
しかし、特許文献1には、上述したブレードを取り付けてサイプのような複雑な形状に成形するものではなく、これによっては精度の高い成形を行うことは困難である。
【0013】
また、別の従来例として、鋳造用鋳型のキャビティ内に複数の湯道部を介してキャビティから押湯部分に順次溶湯の充填を行う重力鋳造方法において、湯道部を遮蔽板等で遮断して溶湯の湯経路を変更するようにした成形方法が知られている(特許文献2参照)。
この成形方法は、充填された溶湯量を湯量検出手段により検出し、湯量検出手段の検出値に基づき、制御装置を介して遮断手段により製品部分近傍の湯道部を遮断し、湯道部から枝湯道部に溶融金属の給湯経路を変更して製品部のキャビティ内及び押湯部に充填するものであって、これにより溶融金属は湯道部からの給湯が絶たれ、枝湯道部から製品部のキャビティ内に流れ込むことになる。そのため、充填された溶湯は製品部のキャビティから押湯部に徐々に充填されることになり、石膏型の「オーバーヒート現象」が防止され、製品不良を防止して品質の安定化が図れるというものである。
しかし、特許文献2に記載された成形方法は、上述した従来のゴム型の成形に伴うバリの形成などの課題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−127161号公報
【特許文献2】特開2008−93729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、成形型に注入する液体材料内の気泡を確実に除去することのできる成形品の製造方法及びその製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、成形型内の成形空間に液体材料を注入して重力により充填することで成形品を製造する成形品の製造方法であって、前記成形空間の最下部近傍に滞留部を接続する連通路を閉じた状態に設定する工程と、前記滞留部に所要量の前記液体材料を注入して滞留させる工程と、その後前記連通路を開いて前記液体材料を重力により前記成形空間に流入させて充填する工程と、を有する成形品の製造方法である。
また、本発明は、液体材料を充填する成形空間が内部に形成された成形型と、前記液体材料を所要量注入して滞留させる滞留部と、前記成形空間の最下部近傍に前記滞留部を接続する連通路と、前記連通路を開閉する開閉手段とを備えている成形品の製造装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、注入する液体材料を滞留部に一旦滞留させて液体材料内の気泡を除去した後、液体材料を成形型内の成形空間に流入させるようにしているので、液体材料内の気泡を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である成形品の製造装置に関する平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本実施形態の成形品の製造方法の各工程に関する説明図である。
【図4】さらに簡略化した成形品の製造方法を説明する図である。
【図5】従来の型取り用ゴム型の製造方法における各工程を説明する図である。
【図6】従来の型取り用ゴム型の転写工程を説明する図である。
【図7】従来の原型に原型用ブレードを植え込む場合のバリの出方を説明する図である。
【図8】従来の原型に原型用ブレードを貼り付ける場合のバリの出方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態である成形品の製造装置に関する平面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。この実施形態は、成形品としてタイヤ成形用金型の製造に用いる型取り用ゴム型の成形を行う装置である。
成形型は、原型1及び裏打ち部材2を、所定間隔を空けて配置して周囲を枠体3により密着固定して構成されている。原型1の裏打ち部材2に対向する型面には、タイヤのトレッド面の一部に対応する形状に形成されて、トレッド面の幅方向に形成される複数のサイプに対応するように原型用ブレード10が突出するように取り付けられている。原型用ブレード10は、成形型のトレッド面の上下に配列され、上側の原型用ブレード10は原型1内に植え込んで取り付けられており、下側の原型用ブレード10は原型1の型面に貼り付けて取り付けられている。
【0020】
裏打ち部材2の原型1に対向する型面には、ゴム材との密着性を向上させるためにリング状のアンカー部材21が突出するように取り付けられている。裏打ち部材2の下面には、原型1に向かって段差状の溝が形成されており、この溝と枠体3との間に連通路20が形成されている。
裏打ち部材2の外側には、液体材料(ここではゴム材料)を注入して滞留させる樋状容器4が設けられている。樋状容器4は、上方の開口部40が成形型よりも上方に突出して拡張するように形成されており、開口部40の下方には断面矩形状の管状部41が延設されている。管状部41の外側面は裏打ち部材2の外面に密着しており、管状部41の下端部は枠体3に密着固定されている。
【0021】
管状部41の下端部は、裏打ち部材2の外面に接する側面が一部切り欠かれて連通路20と接続している。そのため、樋状容器4に注入されたゴム材料は、外漏れせずに連通路20に流入して成形型内に導入されるようになっている。管状部41の裏打ち部材2側の内側面には帯状の板材からなる開閉部材5が取り付けられている。開閉部材5は管状部41の内側面に沿って上下方向に移動可能に取り付けられており、開閉部材5を下方に移動させて下端部が枠体3の表面に当接した状態では連通路20が閉じられた状態に設定されて液体材料が流入せず、開閉部材5を上方に移動させた状態では、連通路20が開いた状態に設定されて液体材料が流入する。
【0022】
成形型は、原型1及び裏打ち部材2の対向する型面の間に成形空間が形成されており、原型1の型面のトレッド面の幅方向が上下方向となるように支持台6の上面に設置されている。成形型内の成形空間は、その最下部近傍において連通路20と接続しており、そのため連通路20からゴム材料が成形空間内に最下部から流入してその液面が次第に上昇するように充填されていく。
【0023】
枠体3の上部には、原型1及び裏打ち部材2の成形空間に沿って空気抜き孔30が形成されており、成形空間内に液体材料が最下部から流入された場合に、空気抜き孔30から成形空間内の空気が排出されて抜けるようになっている。支持台6は、複数の支持脚部7を備えており、各支持脚部7には高さ調整を行う調整機構が設けられている。そのため、各支持脚部7の高さを適宜調整することで、支持台6の上面に設置した成形型を鉛直方向に対して前傾状に傾斜した状態に設定することができる。
【0024】
なお、支持台6の傾斜状態を調整する機構としては、支持台6を支持する軸を設けて軸を揺動させるようにしてもよく、上述した機構に限定されない。
本実施形態のように、成形型を前傾状に傾斜させることで、成形型の型面と流入する液体材料の液面との間の空気は型面を伝って外部に逃げ空気溜りが生じないように液体材料を充填することができる。
したがって、充填時の空気溜りの形成を防止することができる。
【0025】
以上で説明した実施形態では、連通路20を裏打ち部材2の下面に形成しているが、原型1の下面に形成してもよく、また成形空間の最下部に接続しているのであれば、それ以外の箇所に設けることもでき、特に前記実施形態に限定されない。
連通路20を開閉する開閉部材についても、連通路20に対して出入可能に設けたゲートや弁部材等の公知の手段を用いて連通路20を開閉するようにしてもよく、こうした開閉手段についても特に限定されない。
【0026】
樋状容器についても、裏打ち部材2の外側以外の箇所に配置してもよく、液状材料を一旦滞留させて重力の作用により成形空間にゴム材料を充填することができる容器形状で連通路に接続可能であれば使用することができる。
なお、裏打ち部材2の型面にアンカー部材21が設けられているが、アンカー部材21の代わりに予め接着剤を塗布しておくことでゴム材との密着性を高めるようにすることもできる。
【0027】
図3は、本実施形態に係る成形品の製造方法(注型成形方法)による製造工程に関する説明図である。まず、図5で説明した従来の方法と同様に、ゴム材の原料であるウレタン系材料、ポリサルファイド系材料等の主材及び硬化剤等の公知の材料を所定の配合割合で調合した後撹拌して減圧脱泡し、液状のゴム材料を準備する。成形型は、原型1の型面であるトレッド面がわずかに上向き(前傾状)になるように支持台6を傾斜させた状態に調整する。開閉部材5は下方に移動させて連通路20を閉じた状態に設定した後、準備したゴム材料Gを樋状容器4に注入する(図3A)。注入するゴム材料Gの量は、成形空間を充填するのに必要な量に、空気抜き孔30とほぼ同じ高さの位置まで樋状容器4内に充填するのに必要な量を加えた量に設定しておくとよい。
【0028】
ゴム材料を注入する際には、ゴム材料Gが開閉部材5の側面を伝うように流し込むことで、注入したゴム材料Gに気泡が巻き込まれるのを極力回避することができる。注入されたゴム材料Gは、開閉部材5を伝って樋状容器4の下端に到達するが、開閉部材5により連通路20が閉じた状態となっているため、樋状容器4内に滞留していく。
【0029】
その際に、ゴム材料G内に巻き込まれた気泡があったとしても、樋状容器4内に滞留した状態で所定時間放置しておくことで、気泡が次第に分離浮上して樋状容器4の開口部から外部に放出される。また、ゴム材料G内に気泡が残留した場合でもゴム材料Gの上部に気泡が分離浮上して集まり、ゴム材料Gの下部には気泡が残留しない状態となる。このように上部に気泡が集まった場合で減圧脱泡の処理を行えば、ゴム材料Gから気泡を簡単かつ確実に除去することができる。
【0030】
また、仮にゴム材料G内に気泡が残留していても、後述するように、成形空間内に充填される樋状容器4内の下部に滞留したゴム材料Gに気泡が含まれていなければよく、その場合には減圧脱泡処理が不要となって簡単な成形方法による成形型品、例えば型取りゴム型の製造を実現することができる。
【0031】
次に、樋状容器4に所要量のゴム材料Gを注入して気泡を除去した後開閉部材5を上方に移動させて連通路20を開いた状態に設定する(図3B)。連通路20を開くことで、樋状容器4内に滞留しているゴム材料Gが連通路20内に導入されて、成形空間の最下部から内部に流入する。この場合、ゴム材料Gは重力の作用により成形空間内に連続して流入し、成形空間内にゴム材料Gが充填されていくにしたがって、成形空間内のゴム材料Gの液面は次第に上昇していく。その際に、原型1のトレッド面がわずかに上向きに(前傾状に)なるよう設定されているため、ゴム材料Gの液面が上昇するに伴いトレッド面の溝等のエアーが逃げ、空気溜りが生じることはない。即ち、トレッド面の溝等の凹凸面が下向きになっていると、凹凸面と上昇する液面との間に空気溜りが生じやすくなるが、予め成形型を傾斜した状態に設定して凹凸面を上向きにしておくことで、このような空気溜りの発生を防止することができる。
【0032】
また、ゴム材料Gの液面上昇に伴い成形型の傾斜状態を変化させて空気溜りの発生を防止することもできる。この場合には、枠体3としてアクリル板等の透明な板状体を用い、成形空間内を上昇するゴム材料Gの液面を肉眼で観察しながら空気溜りを発生しないように成形型の傾斜状態を調整することで、空気溜りの発生を確実に防止することができる。
【0033】
以上のように、成形空間内ではゴム材料Gの流入に伴って次第に液面が上昇していき、空気抜き孔30から成形空間内の空気が排出されていく。そして、空気抜き孔30までゴム材料Gの液面が上昇して漏出したときに樋状容器4内のゴム材料Gの液面とほぼ同じ高さの位置となる。これによって、ゴム材料Gの成形空間内への流入が停止し、ゴム材料Gの充填が完了する(図3C)。
【0034】
この場合、原型1の型面のトレッド面の幅方向が上下方向となるように設定されているので、サイプに対応して取り付けられた原型用ブレード10が上下方向に沿うように配列されるため、ゴム材料Gの液面が上昇してきた場合でも原型用ブレード10の周辺に空気溜りが生じることなくゴム材料Gが充填される。
【0035】
また、ゴム材料Gを一旦滞留させて気泡を除去した後成形空間内にゴム材料Gを充填しているので、ゴム材料Gの充填後に減圧脱泡処理を行う必要がなくなる。そのため、図5に示す従来技術のように、ゴム材料Gの充填後に減圧脱泡処理することでブレードの周囲の微小な隙間にゴム材料Gが差し込むように進入してゴムバリが形成されることがなく、成形後にゴムバリを除去する処理が不要となって生産効率の向上を図ることができる。
【0036】
成形空間内にゴム材料Gを充填した後、従来の図5D〜Fに示す処理と同様に、充填したゴム材料を硬化させ、ゴム材料の硬化後原型1から枠体3を取り外して裏打ち部材2と硬化したゴム材料が一体化した型取り用ゴム型を脱型する。これによって気泡を内蔵しておらずゴムバリの発生のないゴム型が得られる。
【0037】
図4は、さらに簡略化した成形品の製造方法に関する説明図である。この方法では、成形型を前倒状に傾斜した状態に設定しておき、成形空間の上方に開口した開口部に直接ゴム材料Gを注入するようにしている。注入する際には、原型1の型面にゴム材料Gが伝い落ちながら流れ込むようにすれば、注入時にゴム材料Gに気泡が巻き込まれるのを極力回避してゴム材料Gを充填することができる。また、巻き込まれた気泡についてもゴム材料Gの液面が上昇している間に分離浮上するようになり、気泡の残留を極力抑えることが可能となる。
【実施例】
【0038】
図1に示す成形品の製造装置を用い、タイヤ成形用金型の成形に使用する型取り用ゴム型を成形した。原型1として合成木材を用い、表面にタイヤのトレッド面に対応する形状を形成し、複数のサイプに対応するステンレス製の原型用ブレードを取り付けた。裏打ち部材2として非発泡石膏を用いて一方の側面に型面を形成したものを使用した。ゴム材料としてポリサルファイド系の公知の材料を使用した。連通路を幅20mmで高さ8mmとなるように形成し、成形型の前傾傾斜角度を15度に設定した。液状のゴム材料は、主材と硬化剤と調合して2分間撹拌後、減圧チャンバ(0.005〜0.01MPa)内で約2分減圧脱泡処理し大気圧に戻して約1分沈静化したものを用いた。
【0039】
樋状容器に所要量のゴム材料を注入して滞留させた状態で約5分放置した後、開閉部材を上方に移動させて連通路から成形空間内にゴム材料を流入させて充填した。その後充填したゴム材料を硬化させて脱型し、型取り用ゴム型を成形した。得られた型取り用ゴム型は、気泡の内蔵や空気溜りによる欠陥がなく、原型用ブレードの周囲に対応する箇所にゴムバリの発生もなかった。型取り用ゴム型への形状転写も正確に形成されており、高品質の型取り用ゴム型を得ることができた。
【0040】
比較のため、図5に示す従来の成形工程により型取り用ゴム型を成形した。原型の上面にゴム材料を注入した後、実施例と同様の減圧脱泡処理を行って、裏打ち部材をセットして型取り用ゴム型を成形したが、原型用ブレードの周囲に対応する箇所に厚み0.02mm〜0.05mmのゴムバリが形成され、ゴムバリの除去作業に約1時間を要した。
【符号の説明】
【0041】
1・・・原型、2・・裏打ち部材、3・・・枠体、4・・・樋状容器、5・・・開閉部材、6・・・支持台、7・・支持脚部、10・・・原型用ブレード、20・・・連通路、21・・・アンカー部材、30・・・空気抜き孔、40・・・開口部、41・・・管状部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型内の成形空間に液体材料を注入して重力により充填することで成形品を製造する成形品の製造方法であって、
前記成形空間の最下部近傍に滞留部を接続する連通路を閉じた状態に設定する工程と、
前記滞留部に所要量の前記液体材料を注入して滞留させる工程と、
その後前記連通路を開いて前記液体材料を重力により前記成形空間に流入させて充填する工程と、
を有する成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された成形品の製造方法であって、
前記成形型を傾斜させて前記成形型の型面と流入する前記液体材料の液面との間に空気溜りが生じないように前記液体材料を充填する工程、
を有する成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された成形品の製造方法において、
前記成形品は型取り用ゴム型であり、かつ前記液体材料はゴム材料であって、
前記成形型は、タイヤのトレッド面の一部に対応する形状を有するとともにトレッド面の幅方向に形成される複数のサイプに対応する突起部を備えている、成形品の製造方法。
【請求項4】
液体材料を充填する成形空間が内部に形成された成形型と、
前記液体材料を所要量注入して滞留させる滞留部と、
前記成形空間の最下部近傍に前記滞留部を接続する連通路と、
前記連通路を開閉する開閉手段と
を備えている成形品の製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載された成形品の製造装置であって、
前記成形型を傾斜させる傾斜手段を備えている成形品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−49141(P2013−49141A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186801(P2011−186801)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】