説明

成形良否判定方法および成形良否判定装置

【課題】金型内の樹脂流路に設置した圧力センサが検出する金型内圧プロファイルを用いた射出成形品の成形良否判定装置および成形良否判定方法を得る。
【解決手段】金型内ランナに設置した圧力センサが検出する金型内圧プロファイルにおいて、演算部が、射出工程33から保圧工程35に移行する時の金型内圧のピークが有する保圧工程35側の裾野のアンダシュートP1の発生有無を検出し、判定部が、アンダシュートP1が検出されない場合の成形品を良品と判定し、アンダシュートP1が検出された場合の成形品を不良品と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形による成形品の成形良否判定方法および成形良否判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金型を用いた射出成形により樹脂を精密成形する場合には、成形品の良品・不良品を、成形機の成形終了時点における射出装置の最前進位置から算出する最小クッション量、成形品部分の金型の最大圧力値(ピーク圧)等を勘案して判定していた。
金型内の圧力検出値を用いた不良品の検出方法として広く知られたものには、例えば、成形品部分の金型のピーク圧を予め設定した圧力目標値と比較する方法がある。この判定により、ショートショットの発生した成形品を検出できる。
他方、ピーク圧ではなく樹脂充填開始後の金型の成形品部分における圧力検出値を用いた不良品の検出方法が、例えば特許文献1に開示されている。成形状態の監視区間を、樹脂の充填開始後の金型内の成形圧力が上昇していく期間に複数設定し、圧力センサ付エジェクタピンを用いて、金型内の樹脂成形品の成形圧力を測定する。そして、監視区間における成形圧力と予め設定した圧力目標値とを比較して、成形品が良品か不良品かを判定する。
【0003】
【特許文献1】特開2002−86500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の成形良否判定方法は以上のように構成されているので、金型内のピーク圧を用いた場合には、成形品自体にかかる圧力は瞬時にピーク圧に到達することに起因して、圧力測定誤差が生じやすい。さらに、成形品が微細で、樹脂の流路であるランナおよびスプルの容積より成形品の容積が小さくなる場合は、検出圧力自体が小さくなり圧力測定誤差が増大してしまう。そのため、成形良否判定の精度が低いという課題があった。
【0005】
また、成形品が微細で、金型の成形品部分の面積が圧力センサの圧力感受面積より小さい場合には、圧力測定誤差が大きくなる。これは、圧力センサの測定誤差の大きさが、圧力感受面積の大きさに反比例するためである。このため、圧力センサを金型の成形品部分に設置しても、圧力測定誤差が大きくなり、成形良否判定の精度は低い。また、1次成形部品間の接合部の隙間に、1次成形部品に対して接着力を持つ2次成形樹脂を射出成形する一体成形の場合には、金型の成形品部分が小さいために圧力センサを金型の成形品部分に設置することは困難である。このような場合には、流路に圧力センサを設置し、その圧力検出値を用いて成形良否判定を行うことが考えられる。しかし、従来の成形良否判定方法は、樹脂充填中の成形品自体にかかる圧力検出値を用いて成形良否判定を行うため、流路部分の圧力検出値をそのまま適用することはできない。
また、成形品の形状が複雑であるために金型にゲートを複数設け、複数箇所から樹脂を充填する場合には、圧力センサは設置された付近のゲートから充填される樹脂の圧力を主に検出する。一方、圧力センサから離れたゲートから充填される樹脂の圧力は検出されにくく、成形品全体の成形状態を検知することは困難であった。従って、複雑な形状の成形品の成形良否判定を行う場合に圧力センサを金型の成形品部分に設置しても、圧力検出値が成形状態を示す代表値になりにくく、成形良否判定の精度が低いという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、金型に設置された圧力センサが検出する金型内圧の経時変化を用いた射出成形品の成形良否判定方法および成形良否判定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る成形良否判定方法は、金型に設置された圧力センサを用いて検出された金型内圧の経時変化について、射出ステップから保圧ステップへ移行した直後の金型内圧が、良品成形時の金型内圧に比べて小さい場合の成形品を不良品と判定する判定ステップを備えたものである。
【0008】
この発明に係る成形良否判定方法は、金型に設置された圧力センサを用いて金型内圧の経時変化を検出する圧力検出ステップと、圧力検出ステップで検出された金型内圧の経時変化について、射出ステップから保圧ステップへ移行した直後に最低圧力値を示した後の金型内圧の経時変化の傾きを算出する演算ステップと、演算ステップで算出された金型内圧の傾きと基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定ステップとを備えたものである。
【0009】
この発明に係る成形良否判定方法は、金型に設置された圧力センサを用いて金型内圧の経時変化を検出する圧力検出ステップと、圧力検出ステップで検出された金型内圧の経時変化について、射出ステップから保圧ステップへ移行した後、所定の圧力値到達時点から所定時間経過時点までの金型内圧を積分して積分値を算出する演算ステップと、演算ステップで算出された金型内圧の積分値と基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定ステップとを備えたものである。
【0010】
この発明に係る成形良否判定方法は、金型に設置された圧力センサを用いて金型内圧の経時変化を検出する圧力検出ステップと、圧力検出ステップで検出された金型内圧の経時変化について、射出ステップから保圧ステップへ移行した直後の最低圧力値が基準範囲内か否かによって成形品の成形良否を判定する判定ステップとを備えたものである。
【0011】
この発明に係る成形良否判定装置は、金型への樹脂充填時における金型内圧の経時変化を検出する圧力検出部と、金型に樹脂を充填するために射出部が樹脂を射出する射出工程から、金型の成形品部分に充填された樹脂を射出部が加圧する保圧工程へ移行した直後の金型内圧が、良品成形時の金型内圧に比べて小さい場合の成形品を不良品と判定する判定部とを備えたものである。
【0012】
この発明に係る成形良否判定装置は、金型に樹脂を充填するために射出部が樹脂を射出する射出工程から、金型の成形品部分に充填された樹脂を射出部が加圧する保圧工程へ移行した直後に最低圧力値を示した後の金型内圧の経時変化の傾きを算出する演算部と、演算部で算出された金型内圧の傾きと基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定部とを備えたものである。
【0013】
この発明に係る成形良否判定装置は、金型への樹脂充填時における金型内圧の経時変化を圧力センサを用いて検出する圧力検出部と、金型に樹脂を充填するために射出部が樹脂を射出する射出工程から、金型の成形品部分に充填された樹脂を射出部が加圧する保圧工程へ移行した後、所定の圧力値到達時点から所定時間経過時点までの金型内圧を積分して積分値を算出する演算部と、演算部で算出された金型内圧の積分値と基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定部とを備えたものである。
【0014】
この発明に係る成形良否判定装置は、金型に樹脂を充填するために射出部が樹脂を射出する射出工程から、金型の成形品部分に充填された樹脂を射出部が加圧する保圧工程へ移行した直後の最低圧力値が基準範囲内か否かによって成形品の成形良否を判定する判定部とを備えたものである。
【0015】
この発明に係る成形良否判定装置は、圧力検出部が、金型の成形品部分に樹脂を充填するための流路に設置され、流路部分の金型内圧を検出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、金型に設置された圧力センサを用いて検出された金型内圧の経時変化について、射出ステップから保圧ステップへ移行した直後の金型内圧が、良品成形時の金型内圧に比べて小さい場合の成形品を不良品と判定する判定ステップを備えるようにしたので、射出成形される成形品を高精度に成形良否判定することが可能な成形良否判定方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る射出成形された光電センサの斜視図である。本実施の形態では、光電センサを一体成形する例を用いて、シール部1の成形良否判定の方法を説明する。図1(a)に示す光電センサは、シール部1、受投光部2、ケース3a,3b,3c,3d、ねじ4a,4b、コード5および図示しない内部部品から構成される。図1(b)は、シール部1を射出成形する前の、1次成形品を組み立てた状態を示す斜視図である。この組立状態の1次成形品を金型内に設置し、金型と溝10からなる空間に樹脂が充填されることにより、シール部1が成形される。この実施の形態1は、一体成形方式で樹脂を金型に充填する射出成形品を成形する場合を例にとり、成形良否判定方法および成形良否判定装置を説明するが、一体成形方式の射出成形品の成形良否判定に限定するものではなく、通常の射出成形品の成形良否判定に用いることもできる。
図2は、この発明の実施の形態1に係る成形良否判定装置の構造を示す説明図である。成形良否判定装置は、成形機(図示せず)の射出部27から射出された樹脂が流れる流路であるスプル21,ランナ22a,22bおよびゲート23a,23b、成形品が射出成形される部分の金型である成形品部分20、ランナ22内の圧力を測定する圧力センサ24(圧力検出部)、圧力センサ24で検出された成形工程の金型内圧プロファイルを用いて、成形良否判定を行うための判定値を算出する演算部25、演算部25で算出された判定値を用いて成形良否を判定する判定部26を有する。成形機の射出部27については、射出成形のために通常使用される射出部と同様の射出部を用いればよく、ここでの詳細な説明は省略する。この図2において、成形品部分20のキャビティを形成している金型と1次成形品は図示していない。
【0018】
以下では、シール部1の射出成形について説明する。
図1(b)に示す受投光部2、ケース3、コード5および内部部品がねじ4により固定されて組み立てられた状態の1次成形品が、成形機(図示せず)の金型内に配置される。1次成形品の各部の接合面には、シール部1を射出成形するための樹脂を流し込む溝10が設けられている。金型と溝10で囲まれた成形品部分20の金型に熱可塑性の樹脂が充填され、シール部1が一体成形される。図2において、成形機の射出部27により溶融樹脂が射出されると、樹脂はスプル21へ流し込まれ、ランナ22a,ランナ22bに分岐し、ゲート23a,23bから成形品部分20の金型に充填される。成形品部分20に樹脂を充填することで、シール部1を射出成形し、シール部1と1次成形品との接合面を全て接着する。
射出成形中、圧力センサ24がランナ22内の樹脂圧力を測定し、金型内圧プロファイルを出力する。
【0019】
図3は、この発明の実施の形態1に係る金型内圧プロファイルを示すグラフである。図3において、縦軸はランナ22の金型内圧を、横軸は時間をそれぞれ示す。金型内圧31,32は、圧力センサ24によって測定された射出成形中におけるランナ22の金型内圧の経時変化である。これら金型内圧の経時変化の曲線を金型内圧プロファイルと呼ぶこととする。
成形工程は、樹脂の射出速度を制御して、金型に樹脂を充填する射出工程33と、金型の成形品部分20に充填された樹脂の圧力を一定に保つ保圧工程35とからなる。通常、射出工程33の時間は、射出部27が規定量の樹脂を射出する速度により決定される。実施の形態1では、規定量の樹脂が1秒間で射出され、その後、保圧工程35に切り替わる。射出工程33から保圧工程35へと移行する時点を保圧切替点34と呼ぶ。射出工程33で充填された樹脂は、温度が低下していくに従い収縮するため、保圧工程35では収縮に伴う分を射出部27が補充する。補充のために、射出部27の樹脂を射出する圧力である射出圧力が一定に制御されている。
【0020】
図3に示す射出工程33において、射出部27により樹脂が射出されると、スプル21を経由してランナ22に樹脂が流れ込む。樹脂が流れ込むことにより、ランナ22の金型内圧31,32が急上昇する。金型に規定量の樹脂が射出されると、保圧切替点34で射出工程33から保圧工程35に射出部27の制御が切り替わる。この保圧切替点34において、金型内圧31,32はピークを示し、その直後に所定の圧力まで急激に低下する。実施の形態1では射出部27からの樹脂の射出圧力を所定値に設定し、所定値となるよう射出圧力が保圧制御されているため、結果的にランナ22の金型内圧31,32が略60barで保圧される。その後、樹脂が冷え固まるにつれて、射出部27からの圧力が伝わりにくくなり、略2秒の時点を過ぎると金型内圧31,32が低下していく。
【0021】
成形良否判定は、圧力センサ24を用いて測定された金型内圧プロファイルに基づいて行う。この実施の形態1で判定する不良品とは、主にショートショットによる不良である。
良品が成形される成形工程では、射出工程33から保圧工程35に移行する時の金型内圧31のピークが有する保圧工程35側の裾野は、略60barで一定となり、平坦な状態となる。その後、樹脂が冷え固まるにつれて、金型内圧31は低下していく。
【0022】
一方、不良品が成形される成形工程では、射出工程33から保圧工程35に移行する時の金型内圧32のピークが有する保圧工程35側の裾野に、凹状のアンダシュートP1が発生する。アンダシュートP1の発生は、樹脂の充填後に発生する成形品部分20からの逆流の影響であるショック圧が小さいことが原因となっている。ショック圧が小さいということは、金型内で樹脂の未充填もしくは圧力不足が発生しているということであり、成形品部分20の金型に樹脂が完全に入りきっていない現象であるショートショットが起きたと判断できる。つまり、金型内圧プロファイルにアンダシュートP1が存在する場合の成形品は不良品と判定することができる。
保圧工程35では、射出部27が樹脂を追加補充しているため、金型内圧32はアンダシュートP1発生直後に略60barまで上昇する。その後、樹脂が冷え固まるにつれて、金型内圧32は低下していく。
【0023】
以下では、成形良否判定装置の動作について説明する。図4は、この発明の実施の形態1に係る成形良否判定装置の動作を示すフローチャートである。
圧力センサ24は、成形工程におけるランナ22内の金型内圧を測定し、金型内圧プロファイルとして出力する(ステップST41)。出力された金型内圧プロファイルを、演算部25が微分し、極値を算出する。演算部25は算出した極値を判定値として判定部26に出力する(ステップST42)。
【0024】
判定部26は、判定値を用いてランナ22の金型内圧プロファイルに発生するアンダシュートP1を検出する。判定部26では、金型内圧プロファイルにアンダシュートP1が発生している場合に算出される極小値を判定値として用いることとする。判定部26は、予め設定してある基準値を、演算部25から出力された判定値と比較する(ステップST43)。基準値は、良品成形時に測定された金型内圧プロファイルに基づき、成形良否が判定できるように設定された値とする。
判定部26にて、判定値が基準値より大きい場合(ステップST43“Yes”)、成形品が良品と判定される(ステップST44)。反対に、判定値が基準値以下の場合(ステップST44“No”)、成形品が不良品と判定される(ステップST45)。このように、ランナ22の金型内圧プロファイルに発生するアンダシュートP1を検出することにより、ショートショットが起きた不良品を精度よく判定することができる。
【0025】
上述の成形良否判定方法および成形良否判定装置では、成形品にショートショットが発生することに起因した不良を判定する。他方、樹脂の過充填に起因した不良を判定する場合は、凹状のアンダシュートP1の代わりに、凸状のオーバシュートを検出する構成とすればよい。具体的には、金型内圧プロファイルを用いて演算部25が算出した凸状のオーバシュートに相当する極大値(判定値)を、判定部26が予め設定された基準値と比較する。オーバシュートを検出するための判定値に、極値に代えて金型内圧の平均値、標準偏差、積分値等を用いる場合にも、判定部26が、良品成形時の金型内圧の平均値、標準偏差、積分値等の基準値と判定値とを比較すればよい。比較の結果、判定値が基準値より大きい場合の成形品を不良品と判定する。
なお、前記の判定方法に限らず、射出工程33後のピーク圧力が所定の基準値よりも大きい場合を過充填として判定することもできる。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、成形工程における金型内圧を検出し、この金型内圧の経時変化を検出する圧力センサ24と、射出工程33から保圧工程35へ移行した直後の金型内圧が、良品成形時の金型内圧に比べて小さい場合の成形品を不良品と判定する判定部とを備えるようにしたので、射出成形される成形品を高精度に成形良否判定することが可能な成形良否判定方法および成形良否判定装置を得ることができる。
【0027】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、成形良否を判定するために、金型内圧プロファイルにおいて保圧切替点直後に発生するアンダシュートを検出し、射出工程から保圧工程へ移行した直後の金型内圧が良品成形時の金型内圧に比べて小さい場合の成形品を不良品と判定する構成とした。この実施の形態2では、その他の成形良否判定方法について、図1−3を援用して説明する。
【0028】
以下では、成形良否判定装置の動作について説明する。上記実施の形態1同様に、圧力センサ24は、成形工程におけるランナ22内の金型内圧を測定し、金型内圧プロファイルとして出力する。演算部25は、出力された金型内圧プロファイルを微分する、あるいは金型内圧プロファイルの適当な2点の値から計算する等によって、保圧切替点34直後に検出される最低圧力後の金型内圧の経時変化に対する傾きを算出する。そして、演算部25が算出した傾きを判定値として判定部26に出力する。
【0029】
判定部26は、判定値を用いてランナ22の金型内圧プロファイルに発生するアンダシュートを検出する。判定部26では、予め設定してある基準値を、演算部25から出力された判定値と比較する。この基準値は、アンダシュートが発生した金型内圧プロファイルから算出される傾きは大きな正の値となり、一方、アンダシュートが発生しない金型内圧プロファイルから算出される傾きは0またはわずかな正負の値となる。これに基づき、成形良否が判定できるように基準値を設定すればよい。
判定部26にて、判定値が基準値より小さい場合、成形品が良品と判定される。反対に判定値が基準値以上の場合、成形品が不良品と判定される。
【0030】
図5は、この発明の実施の形態2に係る金型内圧プロファイルを用いた成形良否判定方法の1例を示すグラフである。図5において図3と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
図5において、射出工程33から保圧工程35に切り替わった直後の良品成形時の金型内圧31から算出された傾き(矢印36)に比べ、不良品成形時の金型内圧32から算出された傾き(矢印37)が大きくなる。成形良否判定装置は、これらの傾きに基づいて成形品の成形良否を判定する。
【0031】
上述の傾き以外を判定値に用いる成形良否判定方法であってもよい。例えば、演算部25が算出する判定値に、保圧切替点34後、所定の圧力に到達した時点から所定時間経過までの金型内圧プロファイルの面積を用いる構成であってもよい。図6に示すように、射出工程33から保圧工程34に切り替わった後、所定の圧力(例えば60bar)に到達した時点から所定時間(例えば1秒)経過までの良品成形時の金型内圧31および不良品成形時の金型内圧32からそれぞれ面積(積分値)を算出する。この例では、演算部25が積分する等して、60barの直線と金型内圧31の60bar以下の曲線とで囲まれた面積38、および、60barの直線と金型内圧32の60bar以下の曲線とで囲まれた面積39をそれぞれ算出する。判定部26は、面積である判定値と予め設定した基準値とを比較し、基準値以下の判定値の場合に良品と判定すればよい。
【0032】
また、例えば、演算部25が保圧切替点34直後の最低圧力を検出し、最低圧力値を判定値として用いる構成であってもよい。この構成の場合には、判定部26が、最低圧力値である判定値が所定の判定範囲内にあるか否かで判定する。最低圧力値が、図7に示す良品圧力範囲40内にある金型内圧31は良品と判定され、不良品圧力範囲41内にある金型内圧32は不良品と判定される。
【0033】
上述の成形良否判定方法および成形良否判定装置では、成形品にショートショットが発生することに起因した不良を判定する。他方、樹脂の過充填に起因した不良を判定する場合は、凹状のアンダシュートの代わりに、凸状のオーバシュートを検出する構成とすればよい。具体的には、金型内圧プロファイルを用いて演算部25が算出した凸状のオーバシュートに相当する傾き(判定値)を、判定部26が予め設定された基準値と比較する。オーバシュートを検出するための判定値に、傾きに代えて金型内圧の面積、最低圧力値等を用いる場合にも、判定部26が、良品成形時の金型内圧の面積である基準値、良品圧力範囲等と判定値とをそれぞれ比較すればよい。
なお、前記の判定方法に限らず、射出工程33後のピーク圧力が所定の基準値よりも大きい場合を過充填として判定することもできる。
【0034】
以上のように、この実施の形態2によれば、金型内圧の経時変化を検出する圧力センサ24と、射出工程33から保圧工程35へ移行した直後に最低圧力値を示した後の金型内圧の経時変化の傾きを算出する演算部25と、金型内圧の傾きと基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定部26とを備えるようにした。
または、射出工程33から保圧工程35へ移行した後、所定の圧力値到達時点から所定時間経過時点までの金型内圧を積分して積分値を算出する演算部25と、金型内圧の積分値と基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定部26とを備えるようにした。
または、射出工程33から保圧工程35へ移行した直後の最低圧力値が基準範囲内か否がによって成形良否を判定する判定部26を備えるようにした。
このような構成にすることによって、射出成形される成形品を高精度に成形良否判定することが可能な成形良否判定方法および成形良否判定装置を得ることができる。
【0035】
さらに、上述の実施の形態1および2によれば、圧力センサ24が、金型の成形品部分20に樹脂を充填するためのランナ22に設置され、流路部分の金型内圧を検出するようにした。このことにより、成形品が微細なために圧力センサ24の圧力感受面積が成形品部分の金型より大きく、圧力センサ24を成形品部分20の金型に設置できない場合、一体成形方式のために圧力センサ24を成形品部分20の金型に設置できない場合等に、圧力センサ24を成形品部分20に直接設置することなく成形不良を判定することができる。
【0036】
なお、上述の実施の形態1および2では、樹脂を充填するゲート23を2つ設ける構成であるが、この構成に限定するものではなく、成形品の形状に合わせて適切なゲート数を設ける構成であればよい。成形品の形状が複雑であるために金型にゲート23を複数設け、複数箇所から樹脂を充填する場合、圧力センサ24を成形品部分20に設置すると、圧力センサは設置された付近のゲートから充填される樹脂の圧力しか検出できず、圧力センサから離れたゲートから充填される樹脂の圧力を検出できない。従って、圧力センサ24の成形品部分20における金型内圧プロファイルは、成形品全体の成形状態を表す代表値になりにくい。一方、この実施の形態1および2のように圧力センサ24をスプル21またはランナ22に設置すれば、圧力センサ24の金型内圧プロファイルが成形品全体の成形状態を表す代表値となるため、高精度に成形良否判定を行うことが可能となる。
【0037】
また、上述の実施の形態1および2では、圧力センサ24をランナ22bに設置する構成であったが、圧力センサ24は、金型内圧の測定誤差による変動が少なく、かつ、成形良否判定が行える程度に明瞭な金型内圧プロファイルが検出される位置であれば、金型のどの部分に設置する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態1に係る射出成形された光電センサの斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る成形良否判定装置の構造を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る金型内圧プロファイルを示すグラフである。
【図4】この発明の実施の形態1に係る成形良否判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態2に係る金型内圧プロファイルを用いた成形良否判定方法の1例を示すグラフである。
【図6】この発明の実施の形態2に係る金型内圧プロファイルを用いた成形良否判定方法のその他の1例を示すグラフである。
【図7】この発明の実施の形態2に係る金型内圧プロファイルを用いた成形良否判定方法のその他の1例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
20 成形品部分、21 スプル(流路)、22a,22b ランナ(流路)、23a,23b ゲート、24 圧力センサ(圧力検出部)、25 演算部、26 判定部、27 射出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に樹脂を充填する射出ステップと、当該金型の成形品部分に充填された当該樹脂を加圧する保圧ステップとからなる成形ステップを経て成形される成形品の成形良否判定方法において、
前記金型に設置された圧力センサを用いて検出された金型内圧の経時変化について、前記射出ステップから前記保圧ステップへ移行した直後の前記金型内圧が、良品成形時の金型内圧に比べて小さい場合の成形品を不良品と判定する判定ステップを備えたことを特徴とする成形良否判定方法。
【請求項2】
金型に樹脂を充填する射出ステップと、当該金型の成形品部分に充填された当該樹脂を加圧する保圧ステップとからなる成形ステップを経て成形される成形品の成形良否判定方法において、
前記金型に設置された圧力センサを用いて金型内圧の経時変化を検出する圧力検出ステップと、
前記圧力検出ステップで検出された前記金型内圧の経時変化について、前記射出ステップから前記保圧ステップへ移行した直後に最低圧力値を示した後の金型内圧の経時変化の傾きを算出する演算ステップと、
前記演算ステップで算出された前記金型内圧の傾きと基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定ステップとを備えたことを特徴とする成形良否判定方法。
【請求項3】
金型に樹脂を充填する射出ステップと、当該金型の成形品部分に充填された当該樹脂を加圧する保圧ステップとからなる成形ステップを経て成形される成形品の成形良否判定方法において、
前記金型に設置された圧力センサを用いて金型内圧の経時変化を検出する圧力検出ステップと、
前記圧力検出ステップで検出された前記金型内圧の経時変化について、前記射出ステップから前記保圧ステップへ移行した後、所定の圧力値到達時点から所定時間経過時点までの金型内圧を積分して積分値を算出する演算ステップと、
前記演算ステップで算出された金型内圧の積分値と基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定ステップとを備えたことを特徴とする成形良否判定方法。
【請求項4】
金型に樹脂を充填する射出ステップと、当該金型の成形品部分に充填された当該樹脂を加圧する保圧ステップとからなる成形ステップを経て成形される成形品の成形良否判定方法において、
前記金型に設置された圧力センサを用いて金型内圧の経時変化を検出する圧力検出ステップと、
前記圧力検出ステップで検出された前記金型内圧の経時変化について、前記射出ステップから前記保圧ステップへ移行した直後の最低圧力値が基準範囲内か否かによって成形品の成形良否を判定する判定ステップとを備えたことを特徴とする成形良否判定方法。
【請求項5】
金型への樹脂充填時における金型内圧の経時変化を検出する圧力検出部と、
前記金型に樹脂を充填するために射出部が当該樹脂を射出する射出工程から、当該金型の成形品部分に充填された当該樹脂を当該射出部が加圧する保圧工程へ移行した直後の前記金型内圧が、良品成形時の金型内圧に比べて小さい場合の成形品を不良品と判定する判定部とを備えた成形良否判定装置。
【請求項6】
金型への樹脂充填時における金型内圧の経時変化を圧力センサを用いて検出する圧力検出部と、
前記金型に樹脂を充填するために射出部が当該樹脂を射出する射出工程から、当該金型の成形品部分に充填された当該樹脂を当該射出部が加圧する保圧工程へ移行した直後に最低圧力値を示した後の金型内圧の経時変化の傾きを算出する演算部と、
前記演算部で算出された前記金型内圧の傾きと基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定部とを備えた成形良否判定装置。
【請求項7】
金型への樹脂充填時における金型内圧の経時変化を圧力センサを用いて検出する圧力検出部と、
前記金型に樹脂を充填するために射出部が当該樹脂を射出する射出工程から、当該金型の成形品部分に充填された当該樹脂を当該射出部が加圧する保圧工程へ移行した後、所定の圧力値到達時点から所定時間経過時点までの金型内圧を積分して積分値を算出する演算部と、
前記演算部で算出された金型内圧の積分値と基準値とを比較して成形品の成形良否を判定する判定部とを備えた成形良否判定装置。
【請求項8】
金型への樹脂充填時における金型内圧の経時変化を圧力センサを用いて検出する圧力検出部と、
前記金型に樹脂を充填するために射出部が当該樹脂を射出する射出工程から、当該金型の成形品部分に充填された当該樹脂を当該射出部が加圧する保圧工程へ移行した直後の最低圧力値が基準範囲内か否かによって成形品の成形良否を判定する判定部とを備えた成形良否判定装置。
【請求項9】
圧力検出部は、金型の成形品部分に樹脂を充填するための流路に設置され、当該流路部分の金型内圧を検出することを特徴とする請求項5から請求項8のうちのいずれか1項記載の成形良否判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−137073(P2009−137073A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313691(P2007−313691)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】