説明

成膜基板の製造方法及び成膜基板の製造装置

【課題】基板の成膜領域に非成膜部分が発生するのを回避することができる成膜基板の製造方法及び成膜基板の製造装置を提供すること。
【解決手段】基板10のうち成膜粒子の照射方向に対する基板保持部材4の影Sがこの非成膜領域10bに重なると共に成膜領域10aには重ならないように基板保持部材4を配置して当該基板保持部材4によって基板の非成膜領域10bを保持した状態で成膜粒子を照射するので、成膜粒子の照射時に、基板10の成膜領域10aが基板保持部材4の影になるのを防止することができ、成膜粒子が基板保持部材4によって遮られるのを回避することができる。これにより、基板の成膜領域10aに非成膜部分が発生するのを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜基板の製造方法及び成膜基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、携帯電話の表示部やプロジェクタのライトバルブなど、様々な分野で用いられている。液晶装置は、一般に、一対の基板に液晶層が狭持された構成になっている。一対の基板の液晶層側には、それぞれ液晶層内の液晶分子の配向を規制する配向膜が設けられている。配向膜の材料としては、有機化合物や無機化合物を用いることが可能である。
【0003】
プロジェクタのライトバルブとして用いられる液晶装置には、プロジェクタ光源から強い光が照射される。有機化合物は無機化合物に比べて耐光性が低い、すなわち、強い光を受けると劣化しやすいという性質がある。このため、ライトバルブとして用いられる液晶装置には無機化合物からなる配向膜を設ける開発が行われている。
【0004】
無機化合物の配向膜を形成する手法としては、斜め蒸着方式、イオンビームスパッタ方式と呼ばれる技術が知られている。いずれも、成膜分子を板面に対して低角度で基板に照射し、当該基板上に無機化合物の柱状構造体を成長させる技術である。液晶分子の配向はこの柱状構造体によって規制されることになる。
【0005】
上記方式により配向膜を形成する際には、基板がずれないように当該基板の周縁部を保持部材(ホルダー)によって保持し、この保持状態で成膜するのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平5−94267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、成膜分子が基板に対して斜めに入射される成膜方法においては、基板を保持している保持部が成膜粒子を遮ってしまい、基板の被成膜面上に膜の形成されない部分が発生してしまうという問題があった。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、基板の成膜領域に非成膜部分が発生するのを回避することができる成膜基板の製造方法及び成膜基板の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る成膜基板の製造方法は、基板を基板保持部で保持した状態で、前記基板に所定方向から成膜粒子を照射して前記基板の所定領域に薄膜を形成する成膜基板の製造方法であって、前記所定方向に対する前記基板保持部の影が前記所定領域以外の領域に重なると共に前記所定領域には重ならないように前記基板保持部を配置して当該基板保持部によって前記基板のうち前記所定領域以外の領域を保持し、前記基板を保持した状態で前記成膜粒子を照射することを特徴とする。
本発明によれば、基板のうち成膜粒子の照射方向である所定方向に対する基板保持部の影がこの所定領域以外の領域に重なると共に所定領域には重ならないように基板保持部を配置して当該基板保持部によって基板のうち所定領域以外の領域を保持した状態で成膜粒子を照射するので、成膜粒子の照射時に、基板の所定領域が基板保持部の影になるのを防止することができ、成膜粒子が基板保持部によって遮られるのを回避することができる。これにより、基板の所定領域に非成膜部分が発生するのを回避することができる。
【0008】
上記の成膜基板の製造方法は、前記基板を複数配列すると共に、前記所定方向に対する前記基板保持部の影の位置に応じた間隔で前記基板を配置することを特徴とする。
本発明によれば、基板を複数配列すると共に、所定方向に対する基板保持部の影の位置に応じた間隔で基板を配置するので、基板を複数配列して成膜する場合であっても、それぞれの基板の所定領域(成膜領域)が基板保持部の影になるのを防止することができ、成膜粒子が基板保持部によって遮られるのを回避することができる。これにより、基板の所定領域に非成膜部分が発生するのを回避することができる。
【0009】
本発明に係る成膜基板の製造装置は、基板に所定方向から成膜粒子を照射して前記基板の所定領域に薄膜を形成する成膜基板の製造装置であって、前記基板の前記所定領域以外の領域を保持する基板保持部を有し、前記所定方向に対する前記基板保持部の影が前記所定領域以外の領域に重なると共に前記所定領域には重ならないように前記基板保持部が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、基板の所定領域以外の領域を保持する基板保持部を有し、成膜粒子の照射方向である所定方向に対する基板保持部の影が前記所定領域以外の領域に重なると共に所定領域には重ならないように基板保持部が設けられているので、当該装置を用いて成膜粒子を照射する際には、基板の所定領域が基板保持部の影になるのを防止することができ、成膜粒子が基板保持部によって遮られるのを回避することができる。これにより、基板の所定領域に非成膜部分が発生するのを回避することができる。
【0010】
上記の成膜基板の製造装置は、前記基板を複数配置可能であり、前記複数の基板のそれぞれに対応する前記基板保持部が設けられており、前記所定方向に対する前記基板保持部の影の位置に応じた間隔で前記基板が配置可能になっていることを特徴とする。
本発明によれば、基板を複数配置可能であり、複数の基板のそれぞれに対応する基板保持部が設けられており、所定方向に対する基板保持部の影の位置に応じた間隔で基板が配置可能になっているので、基板を複数配列して成膜する場合であっても、それぞれの基板の所定領域が基板保持部の影になるのを防止することができ、成膜粒子が基板保持部によって遮られるのを回避することができる。これにより、基板の所定領域に非成膜部分が発生するのを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る成膜基板の製造装置(成膜装置)1の構成を示す図である。成膜装置1は、イオンビームスパッタ方式と呼ばれる手法によって基板10の成膜領域(所定領域)10aに薄膜を形成する装置である。この薄膜としては、例えば液晶装置の配向膜などが挙げられる。成膜装置1は、基板10を載置するステージ2と、基板10にイオンビームを供給するイオンビーム供給源3と、ターゲット5とを有している。ターゲット5は、基板10の表面に成膜する薄膜の構成材料からなる。
【0012】
図2は、ステージ2の構成を示す平面図である。図1及び図2に示すように、ステージ2は、載置面2aが矩形になっており基板10を複数載置することができる程度の面積を有する基板載置台である。ステージ2には、基板10がマトリクス状に載置されるようになっている。
【0013】
図1に示すように、イオンビーム供給源3から照射されたイオンビームがターゲット5に衝突し、衝突のエネルギーによってターゲット5を構成する分子がスパッタリングされ、スパッタリングされた分子が基板10に照射されて成膜するようになっている。図2中矢印で示すように、載置面2aに配列される基板10の中心線に対して角度α(約5°程度)傾いた方向(所定方向)であると共に、図1に示すように載置面2aに対して角度β(45°)以下の仰角方向から照射する。
【0014】
図3は、ステージ2の載置面2aの一部の構成を示す平面図である。
図2及び図3に示すように、ステージ2の載置面2aには、基板10を保持する基板保持部材(基板保持部)4が設けられている(ただし、図2には1行目のみ示している)。基板保持部材4は、基板保持部材4は、基板10のイオンビームの照射方向に交差する方向の端部、ここでは各基板10に対して図中左上及び右下の角部にそれぞれ設けられている。
【0015】
基板保持部材4は、軸部4aと保持部4bとを有している。軸部4aは、基板10の角部に重なる位置に設けられている。保持部4bは、平面視矩形に設けられており、軸部4aを支点として基板面に平行な方向に回動可能に設けられている。軸部4aに対する径方向が保持部4bの長手方向となっており、回動方向が保持部4bの短手方向となっている。図2及び図3に、成膜粒子の照射方向に対して形成される基板保持部材4の影Sを破線で示した。
【0016】
基板10の中央部が成膜領域10aであり、基板10の周縁部が非成膜領域10bである。非成膜領域10bには薄膜が形成されないようになっている。この基板10は、行方向にはステージ2の一辺2bにほぼ平行に配列されるようになっている。基板10の1行目に対して2行目は、各基板10が成膜粒子の照射方向側(図中左側)に一定のピッチでずれるように配置される。同様に、2行目に対して3行目は、各基板10が図中左側に一定のピッチでずれるように配置される。このように、n行目に対して(n+1)行目が、図中左側に一定のピッチでずれるように配置されるようになっている。この配置は、基板保持部材4の影Sの位置に応じて適宜調節可能になっている。すなわち、保持部4bによって基板10を保持したときに、影Sが基板10の非成膜領域10bに重なると共に成膜領域10aに重ならないように基板10を配置することが可能になっている。
【0017】
次に、上記の成膜装置1を用いて基板10に成膜する方法を説明する。
まず、基板10をステージ2にマトリクス状に載置する。基板の角部が上記の基板保持部材4の軸部4aに一致するように配置する。
次に、基板保持部材4の保持部4bを回動させ、図4に示すように、保持部4bの長手方向が基板10の一辺に沿うように基板10の非成膜領域10bを保持する。成膜粒子の照射方向に対する基板保持部材4の影Sは、基板10の非成膜領域10b内に重なっているが、基板10の成膜領域10aには重なっていない。
【0018】
この状態で、イオンビーム供給源3から成膜粒子を基板10に照射する。このとき、基板10の中心線に対して約5°程度傾いた方向であって、基板10に対して仰角が45°以下となる方向から成膜粒子を照射すると、基板10の成膜領域10aには、照射方向に傾斜した柱状構造体が形成されることになる。
【0019】
このように、本実施形態によれば、基板10のうち成膜粒子の照射方向に対する基板保持部材4の影Sがこの非成膜領域10bに重なると共に成膜領域10aには重ならないように基板保持部材4を配置して当該基板保持部材4によって基板の非成膜領域10bを保持した状態で成膜粒子を照射するので、成膜粒子の照射時に、基板10の成膜領域10aが基板保持部材4の影になるのを防止することができ、成膜粒子が基板保持部材4によって遮られるのを回避することができる。これにより、基板の成膜領域10aに非成膜部分が発生するのを回避することができる。
【0020】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、保持部4bの長手方向が基板10の一辺に沿うように基板10の非成膜領域10bを保持する旨説明したが、これに限られることは無く、例えば図5に示すように、長手方向が成膜粒子の照射方向に沿うように保持部4bが基板10を保持するようにしても構わない。この場合、成膜粒子の照射方向に対する基板保持部材4の影Sは保持部4bの長手方向のみに形成され、保持部4bの短手方向に広がらないこととなり、影Sの範囲を狭くすることができる。これにより、基板10の間隔を狭くすることができ、より多くの基板10を一度に成膜することが可能となる。
【0021】
また、上記実施形態では、イオンビーム供給源3からターゲット5にイオンビームを照射することによって成膜粒子を基板10に照射する構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図6に示すような蒸着装置30を用いて基板10に斜方蒸着する構成であっても構わない。
【0022】
この場合、蒸着源31として上記の薄膜を構成する材料を配置し、基板10を蒸着源31の上方に傾けて配置する。上記と同様、蒸着分子の蒸着方向(Y1)が基板10の中心線に対して角度α2(約5°程度)傾いた方向であると共に、基板面に対して角度β2(45°)以下の方向となるように基板10を傾けるようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る成膜装置の成膜装置の一部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る成膜装置の成膜装置の一部の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係る成膜基板の製造方法を示す工程図。
【図5】本発明に係る他の成膜基板の製造方法を示す工程図。
【図6】本発明に係る他の成膜装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0024】
1…成膜装置 2…ステージ 2a…載置面 2b…一辺 3…イオンビーム供給源 4…基板保持部材 4a…軸部 4b…保持部 10…基板 10a…成膜領域 10b…非成膜領域 30…蒸着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を基板保持部で保持した状態で、前記基板に所定方向から成膜粒子を照射して前記基板の所定領域に薄膜を形成する成膜基板の製造方法であって、
前記所定方向に対する前記基板保持部の影が前記所定領域以外の領域に重なると共に前記所定領域には重ならないように前記基板保持部を配置して当該基板保持部によって前記基板のうち前記所定領域以外の領域を保持し、
前記基板を保持した状態で前記成膜粒子を照射する
ことを特徴とする成膜基板の製造方法。
【請求項2】
前記基板を複数配列すると共に、前記所定方向に対する前記基板保持部の影の位置に応じた間隔で前記基板を配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜基板の製造方法。
【請求項3】
基板に所定方向から成膜粒子を照射して前記基板の所定領域に薄膜を形成する成膜基板の製造装置であって、
前記基板の前記所定領域以外の領域を保持する基板保持部を有し、
前記所定方向に対する前記基板保持部の影が前記所定領域以外の領域に重なると共に前記所定領域には重ならないように前記基板保持部が設けられている
ことを特徴とする成膜基板の製造装置。
【請求項4】
前記基板を複数配置可能であり、前記複数の基板のそれぞれに対応する前記基板保持部が設けられており、
前記所定方向に対する前記基板保持部の影の位置に応じた間隔で前記基板が配置可能になっている
ことを特徴とする請求項3に記載の成膜基板の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−106336(P2008−106336A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292423(P2006−292423)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】