説明

成膜方法、成膜装置及びこれを用いた薄膜モジュール並びに多層薄膜モジュール

【課題】金属性薄膜を簡単な製造設備で安価に製造することが出来、光電変換特性に富んだ導電性薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】貯室33内にある金属化合物(金属単体を含む;以下同様)の溶液をノズル3から噴霧する際に、前記ノズル3とステージ2との間に高電圧を印加する事で、アバランシェ増倍現象によって帯電させた液滴微粒子を生成する。これを飛翔させて基板上に膜層を形成し、この膜層に光、熱などのエネルギーを付加して結晶化させる。この場合に、金属及び/又は金属化合物は、その分子量が500以下であり、原溶液の溶融粘度は、25℃の環境下で0.3mPa・s乃至10mPa・sで、モル濃度が0.0001乃至0.1モル/リットルであることを特徴とする。これによってノズルから噴霧された金属化合物の液滴微粒子は非繊維状粒子の状態で基板に堆積され、微粒子状態で結晶化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜型多層モジュールの成膜方法とその製造装置に係わり、金属又は金属化合物の溶融原料をノズルから基板上に噴射し、その噴霧液に高電圧を印加して帯電させた液滴微粒子で薄膜形成する成膜方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に太陽電池などとして使用されている光電特性を備えた導電性モジュールは、バルク型太陽電池と薄膜型太陽電池が知られている。前者のバルク型太陽電池は、バルク状結晶層を製造し、それをスライス加工してからパネルを製造しているため、効率が良い代わりに形状的制約と製造コスト上の制約が知られている。形状的制約は膜層がバルク成形のためハード(硬質)で厚い膜層となり、その形状も自由に形作れない。またコスト上の制約は大型な製造装置が必要となり製造コストが高価となる。
【0003】
後者の薄膜型太陽電池は、シリコン系、CIS系、色素増感、有機半導体などが知られているが、それぞれ製造方法が確立されていない。特に量産化安定性と変換効率に種々の改善があるとされている。
【0004】
また、液晶などの表示装置は、透明基板の上に電極を形成し、この電極モジュールを薄膜で形成することも知られている。従来このような表示装置の透明電極は例えばスパッタリング法で成膜形成している。このため、スパッタ装置などの製造設備が大型で高価となり、同時に成膜方法に高度の製造ノウハウが必要とされている。
【0005】
そこで最近、薄膜の成膜方法としてエレクトロスピニング法を利用した方法が提案されるに至っている。このエレクトロスピニング法は製造設備が比較的簡単で安価に製造できることが期待されている。例えば特許文献1には導電性高分子材料(ビニル系高分子)をエレクトロスピニング法によってナノファイバー化し基板上に堆積する方法が提案されている。また特許文献2にはエレクトロスピニング法を利用した色素増感型太陽電池の製造方法が提案されている。
【0006】
このように従来知られているエレクトロスピニング法を用いた導電性の成膜方法は、いずれも有機高分子の材料をナノファイバー化する方法であり、ノズルに高電圧を印加して高分子原料の溶液を滴下して微細繊維形状に変化した原材料を基板上に堆積させて成膜する方法が特許文献1などに提案されている。これを太陽電池或いは表示蔵置に応用する場合には導電性膜層が有機高分子で構成されているため耐久性、特に温度その他の環境によって劣化する問題がある。
【0007】
また、エレクトロスピニング法を用いて導電性薄膜を形成する方法が例えば特許文献3に提案されている。同公報には導電性金属材を溶融してノズルから噴霧して繊維状にナノファイバー化して基板に堆積する方法が提案されている。この方法は前述の高分子原料と同様に無機物の原溶液をナノファイバー化して基板上に堆積して成膜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−330624号公報
【特許文献2】特開2006−331790号公報
【特許文献3】特開2006−328578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように光電特性を有する導電性薄膜を作成する場合に、従来の太陽電池のようにバルク型成膜では、装置設備が大型となり、製造コストが高くなる問題が知られている。そしてこの膜層を用いた太陽電池は形状特性に制約があり、大型となる問題が知られている。
【0010】
そこで太陽電池或いは表示装置の透明電極の薄膜モジュールを比較的安価に製造することが求められる。この場合従来は、前掲特許文献2、3に開示されているように有機半導体、或いは色素増感型半導体で、いずれも有機高分子を原材料としている。このため導電性薄膜が有機高分子材料で生成されるため、耐久性に問題があり内部に封止する電解液漏れなど耐久性に問題がある。これと同時に光電変換効率が低く例えば太陽電池として屋外に設置する場合には問題があるとされている。
【0011】
また前掲特許文献3にはエレクトロスピニング法を用いて金属化合物をナノファイバー化する方法が提案されている。同文献には導電性金属化合物をナノファイバー化する繊維状金属化合物とその製造方法が開示されている。しかし金属化合物をどのような条件で液状化してナノファイバー化するのか開示されていない。仮にこのような金属化合物をナノファイバー化して例えば基板上に成膜しても太陽電池、或いは表示装置として使用する場合には光電変換特性(効率)に問題が生ずる。これは繊維状の金属化合物を基板に堆積して成膜すると膜成分の密度(結晶密度)が粗く(単位面積当たりの総表面積が小さい)、また電極層との密着性など耐久性に問題が生ずる。
【0012】
図6(b)は、従来のエレクトロスピニング法を用いた成膜方法を示すモデル図である。ノズル90から液状化した原溶液91(特許文献1、2のものは有機化合物、特許文献3のものは無機化合物)を滴下し、このノズル90に高電圧を印加して液滴粒子に所定の高電圧を帯電する。一方基板92にはノズル90と逆電位を印加して液滴粒子を吸引する。この過程でヒータによってノズル90を加熱して基板92に到達する粒子を基板に堆積する。この過程で液滴粒子は微細なファイバー(ナノファイバー)に結晶化され基板に堆積して膜形成する。このような成膜方法ではノズルで滴下する原溶液を均一な電位に帯電することが難しく、同時に滴下する粒子の大きさがバラつくため微細で均一な膜を形成することが出来ない問題がある。
【0013】
本発明は、金属性薄膜を簡単な製造設備で安価に製造することが出来、光電変換特性に富んだ導電性薄膜の成膜方法の提供をその課題としている。
更に、本発明は製造コストが安価であり、耐久性と光電変換特性に富んだ薄膜モジュール及び多層薄膜モジュールの提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するため本発明は、金属化合物(金属単体を含む;以下同様)の溶液をノズルに高電圧を印加してアバランシェによって帯電させた液滴微粒子を飛翔させて基板上に膜層を形成し、この膜層に光、熱などのエネルギーを付加して結晶化させる。この場合に、金属及び/又は金属化合物は、その分子量が500以下であり、原溶液の溶融粘度は、25℃の環境下で0.3mPa・s乃至10mPa・sで、モル濃度が0.0001乃至0.1モル/リットルであることを特徴としている。
【0015】
これによってノズルから噴霧された金属化合物の液滴微粒子は非繊維状粒子の状態で基板に堆積され、非晶粒子の状態で膜層を形成した後、基板上に照射した熱、光などのエネルギーで水分成分が蒸発除去され無機化合物が結晶化されることとなる。従って基板上には微細な結晶構造で金属性成膜が形成され、光電変換特性に富み、同時に耐久性に富んだ導電性薄膜が形成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、基板上に高電圧を帯びさせた金属又は金属化合物から成る液滴微粒子を非晶状態(非繊維状粒子)で基板上に堆積し、この基板上で水分蒸発させて結晶化するものであるから次の効果を奏する。
【0017】
ノズルから飛翔した原溶液の微粒子は非繊維状の非晶状態で基板に膜層を形成するから結晶化したナノファイバー状態で基板に膜層を形成するものに比べ、極めて微細な粒子構造で膜層を形成することが可能であり、この膜層に熱又は光を照射して結晶化するため、原溶液に含まれる水分やアルコール分は基板上で直ちに蒸発し、無機元素は基板温度の作用のもとで結晶格子を形成するため高密度の結晶膜を得ることが出来る。
【0018】
更に、本発明は液滴微粒子のサイズ、基板への液滴微粒子の供給速度、基板温度等の成長条件を最適化することにより高品質で結晶サイズの大きな多結晶膜や配向した多結晶膜が得られる。
基板に照射するエネルギーの最適化によって高品質で結晶サイズの大きな多結晶膜や配向した多結晶膜を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わる導電性薄膜の製造装置の全体構成の説明図。
【図2】本発明に係わる導電性薄膜の製造方法の製造工程を示す説明図。
【図3】本発明に係わる導電性薄膜の製造方法の製造工程を示す説明図。
【図4】本発明に係わる導電性薄膜の製造方法におけるグリッドの構成を示す説明図であり、(a)は笠状グリッドの実施形態を、(b)は円筒状グリッドの実施形態を(c)はグリッドによる成膜形成の状態を示す説明図。
【図5】(a)は噴射ノズルの配列を示す斜視図であり、(b)は本発明に係わる太陽電池の構成を示す説明図。
【図6】(a)は薄膜モジュールの構造図であり、(b)は従来のエレクトロスピニングによる成膜方法を示すモデル説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図示の本発明の好適な実施の態様に基づいて本発明を詳述する。まず本発明に係わる導電性薄膜の製造装置、成膜方法及びこれを用いた多層モジュール、太陽電池の順に説明する。
【0021】
[導電性薄膜の製造装置]
図1は本発明に係わる導電性薄膜の成膜方法に使用する製造装置Aである。この製造装置Aはチェンバ1と、このチェンバ内に配置されたステージ2と、原溶液タンク4と、噴射ノズル3と、電源供給ユニット5とから構成されている。
【0022】
チェンバ1は、通常の無塵作業室で合っても良いが、より安定した結晶構造の膜層を得るためには、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N2)などのガスを充填する。図示11はガスタンクであり、外部ボンベからチェンバ1内に供給される。尚チェンバ1内には空気を所定圧力、所定温室で供給する構想であっても良い。
【0023】
ステージ2は、導電性薄膜を形成する透明基板25をセットするテーブルで構成されている。このステージ2は後述する噴射ノズル3と所定間隔(Lk)で位置付けられ、ノズル中心からの法線(図1にXで示す)とテーブル平面(セット面21)が直角となるように配置されている。上記ステージ2には基板25を載置するセット面21が設けられ、図示しないチャッキング機構で固定するようになっている。
【0024】
またステージ2にはセットした基板25を加熱する加熱手段22が配置(例えば埋設)されている。この加熱手段22は伝熱ヒータ、高周波加熱ユニットなどで構成され、セット面21に固定された基板25に熱エネルギーを付与する。この加熱手段22で基板表面(成膜面)の温度を所定温度に設定できる。つまり加熱手段22には図示しない温度制御装置(例えば制御CPU)に連結され、基板表面温度を検出して所定温度に保持するように制御する。
【0025】
上記基板25は、青板ガラスなどのガラス材、或いは合成樹脂ブレートなど用途目的に応じて選択された素材で、所定の形状に構成されている。この基板25は前述のステージ2のセット面21に固定される。
【0026】
上記噴射ノズル3はチェンバ1内に配置され、ステージ2との間に所定間隔Lk隔てた位置に1つ若しくは複数配置される。この噴射ノズル3はステージ2にセットされた基板25に原溶液を安定した条件で滴下するためノズル3は原溶液タンク4と供給パイプ41で連結されている。この原溶液タンク4と供給パイプ41との間には昇圧ポンプなどの圧力調整装置(不図示)が配置されている。この噴射ノズル3は内部に原溶液を貯蔵する貯室33と、これに連なる針状先端部34とから構成されている。貯室33には原溶液タンク4が供給パイプ41で連結されている。そして貯室33には図示しない吐出量調整機構(ディスペンサ)が内蔵されている。
【0027】
また上記噴射ノズル3の先端は針状先端部34で構成され、この先端部には高電圧電極35と加熱ヒータ36が設けられている。そして先端から噴霧する原溶液を所定温度に昇温し、所定電圧に帯電させるようになっている。この電源供給ユニット5は、ステージ2と噴射ノズル3との間に高電圧を印加する。これと共に噴射ノズル3の針状先端部34に埋設した加熱ヒータ36に電源を供給して温度上昇させる。またステージ2の加熱手段22に電源を供給してステージ2にセットした基板25を所定温度に昇温する。図示の装置はステージ2を接地し、噴射ノズル先端からの噴霧原液をプラス帯電するように設定している。このため電源供給ユニット5は高電圧発生器とそのコントローラで構成されている。そしてコントローラには図示しない温度センサが結線されている。
【0028】
上記噴射ノズル3に印加する電圧の最適条件について説明すると、ノズル口から滴下する液滴粒子をアバランシェによって所定電圧に印加する。このため、図示のものは印加電圧を10kV以上で30kV以下に設定してある。
【0029】
[爆裂グリッドの構成説明]
上述した噴射ノズル3の周囲に網目形状のグリッドを配置し、噴射ノズル3から基板25に飛翔する液滴粒子をグリッドで微細化することも可能であり、その構成を図4に従って説明する。
【0030】
図4(a)に示す噴射ノズル3の針状先端部34には網目形状のグリッド6Bがフード状に被冠されている。このグリッド6Bは規則模様又は不規則模様の格子パターン、多穴ハニカムパターンなどに形成されこの穴の直径(間隔)は、100μm以下が好ましい。
そして針状先端部34の周囲に笠状の三角錐形形状に構成されている。
【0031】
また図4(b)に示す噴射ノズル3の周囲には網目形状のグリッド6Cがフード状に被冠されている。このグリッド6Cは規則模様又は不規則模様の格子パターン、多穴ハニカムパターンなどで円筒形状に構成されている。
【0032】
上述のように噴射ノズル3の周囲に配置された網目形状のグリッド6B、6Cはノズル3から基板25に飛翔される液滴粒子が図4(c)に示すようにグリッドに衝突して互いに爆裂して微細化される。そしてこの微細化された粒子は基板上に堆積され膜層を形成する。この場合のグリッド材質としては、錆びにくい低抵抗な金属及び金属合金が好ましく、ステンレスやニッケル、ステンレス上に金や銀をめっきしたもの・主材質ニッケルと銅、鉄、モルブデン等の合金であるハステロイ、インコネル・モネルなどで形成する。
【0033】
[導電性薄膜の製造方法]
次に図2及び図3に基づいて本発明に係わる導電性薄膜の製造方法について説明する。図示の製造工程は太陽電池52の製造工程を示し、I-III-VI族化合物、II-VI族化合物、III-VI族化合物或いはIII-VI族化合物で成膜する工程を含んでいる。以下順次その工程について説明する。
【0034】
ガラス洗浄(工程1)
基板材料、例えば青板ガラスなどの材料を用途に応じた形状に形成し、その成膜面を洗浄する。これは従来知られた工程であり、用途に応じて選択した素材で所定形状の基板25を作成し、これを洗浄する。この基板25は通常、ガラスなどの透明絶縁性板で構成され、扁平形状の平面板に形成される。
【0035】
裏面電極形成(工程2)
基板25の裏面に電極を形成する。基板25上に裏面電極27を例えばモリブデン(Mo)などで形成する。これは従来知られた工程であり、基板25の裏面にモリブデンなどで薄膜(電膜)を形成する。この電膜は本発明の成膜方法によらず、電着などの方法を用いる。
【0036】
電極パターニング形成(工程3)
上記基板25に形成した裏面電極27をスリッタでカットしてパターン電極を形成する。このパターニング工程は既に広く知られているのでその説明を省く。
【0037】
金属膜層形成(工程4)
そこで本発明はパターン電極(裏面電極)27を形成した基板25に金属(金属化合物)の薄膜を形成する。これは図1に基づいて説明したように薄膜形成する。図示のものは基板25上にCu-In-Ga-S系I-III-VI族化合物、Zn-Se系II-VI族化合物、In-As系III-V族化合物、透明電極用II-VI族等の化合物、Cu-Zn-Sn-S系I-II-IV-VI族化合物の薄膜を形成する場合を示す。
【0038】
このため例えばCuCl、InCl、N−Nジメチルセレン化尿素、(NHCS、ZnCl2などI-III-VI族化合物、III-V族化合物、II-VI族化合物、III-VI族化合物のいずれか1つを含む原材料を、超純水及び/又はメタノールなどのアルコール類で溶融する。この原溶液は少なくとも水又は、アルコール類のいずれか1つを含む混合または、独立した金属化合物の溶液である。
【0039】
この場合、水又はアルコールの含有量を、全体の90重量%以上で構成し、その溶融粘度は0.3mPa・s乃至10mPa・sでモル濃度が0.0001乃至0.1モル/リットルに設定する。これによって非繊維状粒子状態でノズルから原材料を飛翔させることが可能となる。
【0040】
メカニカルパターニング形成(工程5)
上述のように形成した基板25上の薄膜層をスリッタでカットしてバッファ層29と金属膜層28を一括分割する。
【0041】
n型透明電極層形成(工程6)
基板25上に導電性薄膜を形成した後、この薄膜の上に透明電極30を積層形成する。この透明電極30は例えばZnO,Alをスパッタリング或いは有機化学CVAによって形成する。これは既に知られた工程でありその説明を省く。
【0042】
メカニカルパターニング形成(工程7)
上記のように基板25上に裏面電極27と導電性膜27xと透明電極30を積層形成し、メカニカルパターニング(機械的スクライブなど)で出力線を形成する。更にその上に封止用ガラスを積層させ光はこの封止用ガラス16の上から入射するように構成する。
【0043】
そこで本発明の金属膜層28の形成について説明する。本発明は基板(太陽電池の場合は裏電極層27)25上に金属若しくは金属化合物の導電性薄膜27xを形成することを特徴としている。この導電性薄膜27xは図1で説明した製造装置Aによって形成する。
【0044】
[導電性薄膜モジュール及び太陽電池の説明]
図6(a)は上述の成膜方法で形成した薄膜モジュール50を示す。このモジュール50は透明基板(ガラス、プラスチックスなど)51の上に透明電極層52を形成する。そしてメカニカルパターニングで電極52a、52bを形成する。この透明電極層52の上に透明層53、コーティング層54を形成する。
【0045】
上記透明電極層52は、InSnOx、ZnOなどの金属化合物を、超純水及び/又はメタノールで溶解して、粘度0.3mPa・s乃至10mPa・sで、モル濃度が0.0001乃至0.1モル/リットルの原溶液を形成する。そしてこの原溶液を透明基板51上に飛翔させて液滴微粒子の状態で堆積させる。そして所定厚さの膜層を形成した後、この基板に200℃〜400℃の熱を付加して結晶化する。これによって導電性薄膜が形成され、この導電層をメカニカルパターニングして薄膜モジュール50を作成する。
【0046】
図5(b)は太陽電池モジュール55を示し、56はフレームであり、57はこのフレーム56に複数配列された太陽電池を示す。図示58はパネル電極である。そしてこのモジュールには図2に基づいて説明した金属膜層が(前述の工程4)が形成されている。またこの太陽電池モジュール55は透明電極層(前述の工程6;n型透明電極層形成)を前述の透明電極層52で構成することも可能である。つまり、導電性金属膜層と透明電極層の両方若しくはその一方をエレクトロスピニング法で形成する。
【符号の説明】
【0047】
A 製造装置
1 チェンバ
2 ステージ
3 噴射ノズル
4 原溶液タンク
5 電源ユニット
6 グリッド
6B フード状グリッド
6C 円筒形状グリッド
11 不活性ガスタンク
21 セット面
22 加熱手段
25 基板
27 裏面電極
27x 導電性薄膜
28 金属膜層
29 バッファ層
33 貯室
34 針状先端部
35 高電圧電極
36 加熱ヒータ
41 供給パイプ
50 薄膜モジュール
51 透明基板
52 透明電極層
53 透明層
54 コーティング層
55 太陽電池モジュール
56 フレーム
57 太陽電池
58 パネル電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属及び/又は金属化合物の原溶液をノズルに高電圧を印加してアバランシェによって帯電させた液滴微粒子を飛翔させて基板上に膜層を形成し、次いでこの膜層に光、熱などのエネルギーを付加して基板上で結晶化させる方法であって、
前記金属及び/又は金属化合物は、その分子量が500以下であり、
前記原溶液の溶融粘度は、
25℃の環境下で0.3mPa・s乃至10mPa・sであり、
モル濃度が0.0001乃至0.1モル/リットルで、
あることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記金属及び/又は金属化合物は、I-III-VI族化合物、I-II-IV-VI族化合物、III-V族化合物、II-VI族化合物、III-VI族化合物のいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
基板と、
前記基板と距離を隔てて配置されたノズルと、
前記ノズルに金属及び/又は金属化合物の溶液を供給するタンクと、
前記ノズルに高電圧を印加する電源手段と、
を備え、
前記タンクには、
分子量が500以下で、
その溶融粘度が0.3乃至10mPa・s(25℃の環境下)で、
そのモル濃度が0.0001〜0.1モル/リットルで、
ある金属及び/又は金属化合物の原溶液が充填されていることを特徴とする導電性薄膜の製造装置。
【請求項4】
前記基板と前記ノズルとの間にグリッドが配置され、
このグリッドは、前記ノズルの周囲に笠状に被冠した略々三角錐形状に構成され、
前記ノズルからの液状粒子と前記グリッドとの電位差で衝突電離させ微細化することを特徴とする請求項3に記載の導電性薄膜の製造装置。
【請求項5】
前記電源手段は、
前記ノズルに印加する電圧が、20kV乃至30kVであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導電性薄膜の製造装置。
【請求項6】
透明基板上に形成した導電性薄膜層を有する薄膜モジュールであって、
前記導電性薄膜層は請求項1又は2に記載の成膜方法で形成されていることを特徴とする薄膜モジュール。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に形成した少なくとも一対の対向電極と、
前記一対の対向電極間に形成した導電性薄膜層と、
を備え、
前記対向電極と前記導電性薄膜層は少なくとも一方が請求項1又は2に記載の成膜方法で形成されていることを特徴とする多層薄膜モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−14775(P2011−14775A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158747(P2009−158747)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(306022454)新電元センサ−デバイス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】