説明

成膜方法および成膜装置

【課題】膜を緻密にすることができる成膜方法を提供することを課題とする。また、均質な膜を形成することができる成膜方法を提供することを課題とする。そして、これらの成膜方法や成膜装置を適用して発光素子を作製することで、寿命が長く発光効率の高い発光素子を得る。
【解決手段】有機化合物211が充填された蒸発源210を有する成膜室200内において、基板保持手段201に基板202を固定する。次に、この有機化合物211を気化させる。図において212は気化している有機化合物を表す。さらにここで、有機化合物を気化させて蒸着している最中に、気化している有機化合物212に対してレーザビーム203を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を含む薄膜の成膜方法及び成膜装置に関する。特にエレクトロルミネセンス素子の成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電圧を印加することで発光するEL(Electro luminescence)素子の開発が盛んである。EL素子は、有機化合物を発光させる有機EL素子と無機化合物を発光させる無機EL素子に大別されるが、いずれもLEDのような発光デバイスと異なり大面積の面状光源を形成できるため、フラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
しかしながら、無機EL素子は一般に、信頼性や寿命に優れているものの、印加電圧が高く、また発光輝度が低いというデメリットも有している。一方、有機EL素子は一般に、低い電圧で発光し、高い発光輝度も達成できるが、輝度を上げると寿命が短くなるというトレード・オフがあり、応用範囲を狭める要因ともなっている。また、発光効率に関してもまだ十分ではない。
【0004】
これらの問題点を克服するために、例えば無機EL素子においては、エキシマレーザ光の照射によるアニール処理工程を導入することによって、高い輝度特性を得る試みがなされている(特許文献1参照)。
【0005】
また有機EL素子においては、光反応性基を有する有機材料を蒸着した後、光照射を行うことで該有機材料を架橋させ、高温における素子寿命を改善した例などが報告されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、これらの発光素子の発光輝度、発光効率、寿命は、未だフラットパネルディスプレイを作製できるレベルに到達しておらず、さらなる特性の向上が望まれている。特に、有機EL素子における寿命と発光効率の向上は急務であると言える。
【特許文献1】特開2000−357586号公報
【特許文献2】特開2001−303038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの有機EL素子は、蒸着法を用いて有機化合物を基板上に成膜することにより形成されるが、通常の蒸着においては、気化している有機分子は基板上で熱エネルギーを失い、凍結される(固化する)。したがって、エネルギーの失い方に大きなばらつきがあると、有機分子の堆積の仕方が乱雑となり、緻密な膜の形成が困難であると考えられる。無機化合物を蒸着法により堆積する場合も同様である。
【0008】
しかしながら、膜の緻密性は、発光素子の長寿命化のためには重要なファクターであると考えられるため、膜を緻密にする新たな蒸着法の開発が望まれる。
【0009】
また、有機EL素子における発光層の構成として、ホスト材料中に発光物質をゲスト材料として分散する手法がよく用いられているが、このような発光層を蒸着法により形成する場合、通常はホスト材料とゲスト材料を異なる蒸発源から同時に蒸発させて堆積させる共蒸着法が用いられる。この時、ゲスト材料はホスト材料中で均一に分散することにより、効率良く発光することができる。
【0010】
しかしながら、ゲスト材料が成膜時に凝集してしまうと、濃度消光と呼ばれる現象により発光効率が低下してしまう。したがって、ゲスト材料を均一に分散し、均質な膜を形成できる蒸着法が望まれる。
【0011】
そこで本発明では、膜を緻密にすることができる成膜方法を提供することを課題とする。また、均質な膜を形成することができる成膜方法を提供することを課題とする。
【0012】
また本発明では、膜を緻密にすることができる成膜装置を提供することを課題とする。また、均質な膜を形成することができる成膜装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、発光素子を形成する物質を蒸着法により基板上に成膜する際に、気化している該物質にレーザビームを照射しながら該物質を成膜することにより、課題を解決できることを見出した。成膜する物質は限定されるものではないが、該物質が有機化合物である場合、通常の蒸着法では膜を緻密化することが困難であるため特に有効である。
【0014】
したがって本発明の構成は、有機化合物が充填された蒸発源を有する成膜室内において、基板保持手段に基板を固定し、前記有機化合物を気化させ、気化している前記有機化合物にレーザビームを照射しながら、前記有機化合物を前記基板上に堆積させる成膜方法である。
【0015】
また、この時、レーザビームが基板にも照射されると、基板の材質によっては発熱し、基板上に該物質が堆積されない(再蒸発してしまう)場合がある。そこで本発明者らは、該基板の一表面と略平行にレーザビームを照射して該基板にレーザビームが照射されにくいようにすることにより、この問題点を克服できることを見出した。これはレーザビームの直進性を利用したものであり、直進性の低い通常の光ではこの問題点を克服することは困難である。さらに、成膜する物質は限定されるものではないが、蒸発温度が一般的に低い有機化合物を成膜する際には、基板の発熱を防ぐことのできる本手法が非常に有効である。
【0016】
したがって、本発明のより好ましい構成は、有機化合物が充填された蒸発源を有する成膜室内において、基板保持手段に基板を固定し、前記有機化合物を気化させ、気化している前記有機化合物に前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを照射しながら、前記有機化合物を前記基板上に堆積させる成膜方法である。
【0017】
さらに、上述したような本発明の成膜方法は、複数の有機化合物を同時に気化させ、それら複数の有機化合物が混合された膜を形成する共蒸着時において、特に有効である。したがって本発明の構成は、それぞれ異なる複数の有機化合物が充填された複数の蒸発源を有する成膜室内において、基板保持手段に基板を固定し、前記複数の有機化合物を同時に気化させ、気化している前記複数の有機化合物にレーザビームを照射しながら、前記複数の有機化合物を前記基板上に堆積させる成膜方法である。
【0018】
このような共蒸着時においても、先に述べた理由と同様の理由で、レーザビームが基板に照射されにくいことが好ましい。したがって本発明の構成は、それぞれ異なる複数の有機化合物が充填された複数の蒸発源を有する成膜室内において、基板保持手段に基板を固定し、前記複数の有機化合物を同時に気化させ、気化している前記複数の有機化合物に前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを照射しながら、前記複数の有機化合物を前記基板上に堆積させる成膜方法である。
【0019】
なお、以上で述べたような成膜方法において、レーザビームの波長は有機化合物を励起できる波長であることが好ましい。蒸着する有機化合物が複数(すなわち共蒸着時)である場合には、該レーザビームの波長はその複数の有機化合物のいずれかを励起できる波長であればよい。また、レーザビームの波長は分子運動を促進するよう、赤外光領域であってもよい。
【0020】
ところで、上述したような本発明の成膜方法を実現できる成膜装置に関しても、本発明の構成と言える。特に、先に述べたように、基板の一表面と略平行にレーザビームを照射して該基板にレーザビームが照射されにくいようにすることにより、該基板が発熱しないように設計された成膜装置は、本発明の特徴的な構成となる。したがって本発明の他の構成は、有機化合物を充填した蒸発源と、基板の一表面若しくは少なくともその一部を露出させ保持する基板保持手段と、を内部に備えた成膜室と、前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、を有し、前記レーザビーム照射手段は、前記蒸発源と前記基板保持手段との間に前記レーザビームが照射されるように設けられている成膜装置である。なお、本明細書において、略平行とは、多少のずれを含みつつ平行な場合を指す。したがって、レーザビームの照射によって、基板が加熱されない範囲において、平行な方向からずれても良い。
【0021】
また本発明の構成は、有機化合物を充填した蒸発源と、基板の一表面若しくは少なくともその一部を露出させ保持する基板保持手段と、を内部に備えた成膜室と、前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、を有し、前記レーザビーム照射手段は、前記蒸発源から気化した前記有機化合物に前記レーザビームが照射されるように設けられている成膜装置である。
【0022】
さらに、本発明の成膜装置において、成膜室にはレーザビームを透過する光導入窓を設置し、またレーザビーム照射手段は成膜室の外に設置し、レーザビームが前記光導入窓を透過して成膜室内を照射するような構成が好ましい。このような構成とすることで、レーザビーム照射手段の有機化合物による汚染を容易に防ぐことができる。また、成膜室の構成が複雑になることがなく、従来用いられている成膜室をそのまま転用できるというメリットもある。したがって本発明の構成は、有機化合物を充填した蒸発源と、基板の一表面若しくは少なくともその一部を露出させ保持する基板保持手段と、を内部に備えた成膜室と、前記成膜室に設けられた光導入窓と、前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを前記光導入窓から前記成膜室内に照射するレーザビーム照射手段と、を有し、前記レーザビーム照射手段は、前記蒸発源と前記基板保持手段との間に前記レーザビームが照射されるように設けられている成膜装置である。
【0023】
また本発明の構成は、有機化合物を充填した蒸発源と、基板の一表面若しくは少なくともその一部を露出させ保持する基板保持手段と、を内部に備えた成膜室と、前記成膜室に設けられた光導入窓と、前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを前記光導入窓から前記成膜室内に照射するレーザビーム照射手段と、を有し、前記レーザビーム照射手段は、前記蒸発源から気化した前記有機化合物に前記レーザビームが照射されるように設けられている成膜装置である。
【0024】
なお、以上で述べた成膜装置において、レーザビームの波長は有機化合物を励起できる波長であることが好ましい。蒸着する有機化合物が複数(すなわち共蒸着時)である場合には、該レーザビームの波長はその複数の有機化合物のいずれかを励起できる波長であればよい。また、レーザビームの波長は分子運動を促進するよう、赤外光領域であってもよい。
【0025】
また、前記レーザビーム照射手段のレーザ光源として、具体的には、Arレーザ、Krレーザ、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、KGWレーザ、KYWレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、Yレーザ、YVOレーザ、セラミックスレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ等を好ましく用いることができる。
【0026】
また、上述した本発明の成膜装置においては、成膜室内におけるレーザビームの反射を防止して安全性を高めるために、前記レーザビームの照射端に前記レーザを吸収する受光板が設けられていることが好ましい。
【0027】
なお、上述したような本発明の成膜方法は、複数の有機化合物を同時に気化させ、それら複数の有機化合物が混合された膜を形成する共蒸着時において特に有効であるため、本発明の成膜装置においては、蒸発源が複数設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明を実施することにより、成膜時に膜を緻密にすることができる。また、均質な膜を形成することができる。
【0029】
また本発明を実施することにより、膜を緻密にすることができる成膜装置が得られる。また、均質な膜を形成することができる成膜装置が得られる。
【0030】
さらに、本発明の成膜方法や成膜装置を発光素子の作製に適用することで、寿命の長い発光素子を得ることができる。また、発光効率の高い発光素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本実施形態では、本発明の成膜方法および成膜装置についてより詳細に説明する。なお、本発明の成膜方法および成膜装置は、課題を解決する手段の項でも述べた通り有機化合物を成膜する場合に特に有効であるので、以下では有機化合物を成膜する場合を例に説明する。
【0032】
(実施形態1)
本実施形態1では、本発明の成膜方法について、膜を緻密にするという本発明の主旨の観点から説明する。
【0033】
まず、膜の緻密性と発光素子の寿命との関連性について説明する。先にも述べた通り、膜の緻密性は発光素子の長寿命化のためには重要なファクターであると考えられるが、それは以下のような理由による。
【0034】
第一には、膜が緻密でない場合、発光素子の駆動中に有機分子が移動しやすいという問題がある。有機分子の位置が駆動中に(すなわち経時的に)移動すれば、キャリアバランスも経時的に変化する。また、キャリアバランスが変化すると、投入電力に対する出力すなわち発光効率が低下する。したがって、有機分子の経時的な移動は最終的に、発光効率の経時的な低下へと繋がり、このことが輝度劣化として認識されるのである。第二に、膜が緻密でない場合、不純物も経時的に移動しやすくなるが、発光の妨げとなる不純物(酸素、水、駆動中に反応によって生じた物質、など)が発光層に移動していくことにより、やはり発光効率の経時的な低下へと繋がる。
【0035】
図1は、基板100上に堆積された有機分子101により有機化合物膜110が形成されている様子を表した模式図である。先に述べた通り、通常の蒸着の場合、気化している有機分子は基板上で熱エネルギーを失って凍結される(固化する)が、エネルギーの失い方に大きなばらつきがあると、有機分子101の堆積の仕方が乱雑となる。したがってこの場合、図1(A)に示すように、有機化合物膜110中に間隙120が生じてしまう。すなわち、通常の蒸着では、図1(B)のような間隙のない緻密な膜の形成が困難である。
【0036】
そこで本発明者らは、基板上に有機化合物を蒸着する際に、基板に到達する前の気化している有機化合物にレーザビームを照射することを考案した。この本発明の成膜方法とその原理について、図2を用いて以下に説明する。
【0037】
本発明の成膜方法においては、まず、有機化合物211が充填された蒸発源210を有する成膜室200内において、基板保持手段201に基板202を固定する(図2(A))。次に、この有機化合物211を気化させる(図2(B))。図2中、212は気化している有機化合物を表す。なお、有機化合物を気化させる手段は、抵抗加熱法や誘導加熱法など如何なる手段を用いてもよい。さらにここで、有機化合物を気化させて蒸着している最中に、気化している有機化合物212に対してレーザビーム203を照射する(図2(C))。なおこの時、図2に示す通り、レーザビーム203は、基板が加熱されないよう基板の一表面と略平行となるように照射することが好ましいが、基板の材質によっては加熱されない場合もあるため、これに限定されることはない。
【0038】
図2において、レーザビーム203の波長が有機化合物211を励起できる波長である場合、気化している有機化合物212はレーザビーム203によって励起され、エネルギーを得た状態となる。この時、レーザビーム203は均質かつ高密度なエネルギー密度を有するため、レーザビーム203が照射された気化している有機化合物212は、いずれの分子も均一なエネルギーを得ることになる。その結果、気化している有機化合物212が基板202上で熱エネルギーを失って凍結される(固化する)過程において、その熱エネルギーの失い方も各分子で均一となり、間隙のない緻密な膜204が形成される。
【0039】
この時、気化している有機化合物212が励起状態のまま(すなわち高いエネルギーを有する状態のまま)基板202上に達すると、より緻密な膜が形成できるため好ましい。例えば、後の実施形態3で述べるような燐光性化合物は励起寿命が1μ秒程度であるが、分子量が1000程度の有機化合物が250℃程度で蒸発して真空蒸着される場合、その1μ秒の間に該有機化合物が真空中で飛翔できる距離は0.1mm程度である。したがって、図2において、レーザビーム203と基板202との距離は0.01mm以上0.1mm以下が好ましい。
【0040】
ただし、気化している有機化合物212は、必ずしも励起状態のまま基板202上に達する必要はない。なぜならば、励起状態が失活する際に、得たエネルギーの一部は分子運動を活性化し、熱エネルギーに変換されるためである。したがってこの場合も、各分子は均一なエネルギーを有するまま基板202上に到達することができる。
【0041】
なお、熱エネルギーへの変換という観点では、レーザビーム203の波長が赤外光領域の場合、気化している有機化合物212の分子運動は活性化され、該気化している有機化合物212は熱エネルギーを得た状態となるため好ましい。
【0042】
以上のようにして、本発明の成膜方法を適用することにより緻密な膜を形成することができる。なお、上述したような有機化合物211を励起できる波長のレーザビームのレーザ光源としては、紫外光領域や可視光領域の波長のレーザが挙げられ、窒素レーザ(337nm)や、YVOレーザの第2高調波(532nm)などを用いることができる。また、赤外光領域の波長のレーザビームのレーザ光源としては、炭酸ガスレーザなどが挙げられる。
【0043】
(実施形態2)
本実施形態2では、本発明の成膜方法について、均質な膜を形成するという本発明の主旨の観点から説明する。
【0044】
まず、膜の均一性と発光素子の発光効率との関連性について説明する。先にも述べた通り、膜の均一性は発光素子の高効率化のためには重要なファクターであると考えられるが、それは以下のような理由による。すなわち、先にも述べたことであるが、共蒸着法を用いて発光材料であるゲスト材料をホスト材料中に分散する際に、ゲスト材料が凝集してしまうと、濃度消光と呼ばれる現象により発光効率が低下してしまうためである。
【0045】
図3は、基板300上に堆積されたホスト材料の分子301とゲスト材料の分子302により有機化合物膜310が形成されている様子を表した模式図である。通常の蒸着の場合、気化している有機分子は基板上で熱エネルギーを失って凍結される(固化する)が、エネルギーの失い方に大きなばらつきがあると、有機分子の堆積の仕方が乱雑となる。その結果、図3(A)に示すように、有機化合物膜310中にゲスト材料の分子302の凝集体320が生じてしまう。すなわち、通常の蒸着では、図3(B)のような凝集体のない均質な膜の形成が困難である。
【0046】
そこで本発明者らは、基板上に共蒸着法により異なる有機化合物を同時に蒸着する際に、基板に到達する前の気化している有機化合物にレーザビームを照射することを考案した。この本発明の成膜方法とその原理について、図4を用いて以下に説明する。
【0047】
本発明の成膜方法においては、まず、それぞれ異なる複数の有機化合物(本実施形態においては、ホスト材料411とゲスト材料421の2種類である)が充填された複数の蒸発源(本実施形態においては、ホスト材料411の蒸発源410と、ゲスト材料421の蒸発源420の2つである)を有する成膜室400内において、基板保持手段401に基板402を固定する(図4(A))。次に、ホスト材料411とゲスト材料421を同時に気化させる(図4(B))。図2中、412は気化しているホスト材料、422は気化しているゲスト材料を表す。なお、有機化合物を気化させる手段は、抵抗加熱法や誘導加熱法など如何なる手段を用いてもよい。さらにここで、共蒸着している最中に、気化しているホスト材料412および気化しているゲスト材料422に対してレーザビーム403を照射する(図4(C))。なおこの時、図4に示す通り、レーザビーム403は、基板が加熱されないよう基板の一表面と略平行となるように照射することが好ましいが、基板の材質によっては加熱されない場合もあるため、これに限定されることはない。
【0048】
図4において、レーザビーム403の波長がホスト材料411またはゲスト材料421を励起できる波長である場合、気化しているそれら有機化合物のいずれかまたは両方は、レーザビーム403によって励起され、エネルギーを得た状態となる。以下、本実施形態2においては、ゲスト材料421が励起される場合について説明するが、本発明においてはホスト材料とゲスト材料のいずれが励起される場合も同様の効果が得られるため、これに限定されることはない。
【0049】
レーザビーム403は均質かつ高密度なエネルギー密度を有するため、レーザビーム403が照射された気化しているゲスト材料422は、いずれの分子も均一なエネルギーを得ることになる。その結果、気化しているゲスト材料422が基板202上で熱エネルギーを失って凍結される(固化する)過程において、その熱エネルギーの失い方も各分子で均一となる。本実施形態のような場合、ゲスト材料の周辺にホスト材料が存在しているため、凍結時にゲスト材料は単独で膜を形成することがない。すなわち、ホスト材料中にゲスト材料が均一に分散されることになり、均質な膜404が形成される。なお、図4(B)に示したように、気化しているゲスト材料422が仮に会合状態423を形成していたとしても、高密度のエネルギーを有するレーザビームの照射により会合状態423は解消され、やはり均質な膜404が得られる。
【0050】
なお、実施形態1で述べた内容と同様の理由で、図4において、レーザビーム403と基板402との距離は0.01mm以上0.1mm以下が好ましいが、必ずしもこれに限定されることはない。また、実施形態1で述べた内容と同様の理由で、レーザビーム403は赤外光領域の波長を有していてもよい。レーザ光源に関しても実施形態1で述べたものと同様なものを用いることができる。
【0051】
(実施形態3)
本実施形態に係る本発明の成膜装置について、図5と図6を用いて説明する。なお図5は該成膜装置の構成を説明する側面図、図6は同平面図であり、以下の説明では両図を参照する。
【0052】
本実施形態に係る成膜装置は、成膜時の温度を上げることなく、薄膜を堆積する下地構造、若しくは堆積する薄膜自体を劣化させずに、緻密な薄膜、または、歪みや欠陥の少ない均質な薄膜を形成することを目的として構成されている。特に蒸発温度や耐熱温度の低い有機薄膜を堆積するのに適した成膜装置である。
【0053】
図5及び図6において示す成膜装置は、真空排気系に接続される成膜室10を備えている。成膜室10には、基板ステージ12、蒸発源16、真空排気系に接続する排気口18などが備えられている。基板ステージ12には基板保持手段が付加されていても良い。基板保持手段は、基板30を固定する基板チャック31、被膜を形成する領域に開口部を形成したシャドーマスク32を固定するマスクチャック33を含む。すなわち、基板保持手段は、基板30の一表面若しくは少なくともその一部を蒸発源に対して露出させ保持するように構成されている。基板チャック31、マスクチャック33は先端のツメにより、基板30やシャドーマスク32の端部を機械的に保持するものである。その他に、電磁的作用により基板30やシャドーマスク32を保持するものを適用しても良い。
【0054】
基板ステージ12の基板保持手段により、薄膜を堆積する基板30は、概略平面状態を保って保持され、蒸発源16と対向配置される。成膜室10には、この基板30と略平行にレーザビームを入射させる光導入窓14aが備えられている。すなわち、薄膜の堆積表面に入射しないように、成膜室10の中にレーザビームを導入する光導入窓14aが備えられている。
【0055】
成膜室10の中に導入するレーザビームは、蒸発源16から蒸発若しくは昇華してくる蒸着材料に作用させるものである。そのために、レーザビームの照射方向と、蒸着材料の飛散方向とが交差するように蒸発源16と光導入窓14aを配置する。勿論、光導入窓14aの配置は前述の関係を保つために一義的に決められるものではなく、レーザビームに対する反射板などを利用して任意に配置することができる。
【0056】
レーザビームが通過する位置と基板30との距離は、実施形態1で述べた理由から、0.01mm以上0.1mm以下が好ましい。
【0057】
蒸着材料の飛散方向と交差するようにレーザビームを成膜室10に導入するため、レーザビームのビーム形状は、図6で示すように、基板30の薄膜堆積表面と平行な方向に広がっていることが好ましい。すなわち、蒸発源16と基板ステージ12との間に、基板30の一表面と略平行にレーザビームを照射するレーザビーム照射手段は、レーザ光源22、光学系23を含んでいる。また、成膜室10に備えられる光導入窓14aも付加的な要素として組み合わされている。そのために、レーザ光源22から放射されるレーザビームを整形する光学系23を設けることが好ましい。光学系23は、レーザ光源22と光導入窓14aの間に設けるが、成膜室10内に設けても良い。
【0058】
光学系23の構成は、一例として、レーザ光源22側からビームエキスパンダ24、ビームホモジナイザ26を組み合わせたものを適用することができる。ビームエキスパンダ24は、凹シリンドリカルレンズ36(若しくは凹レンズ)と凸シリンドリカルレンズ38(若しくは凸レンズ)を組み合わせたものであり、これにより、レーザ光源22から放射されるレーザビームのビーム幅を広げることができる。また、ビームホモジナイザ26は、例えばTEM00モードで発振してガウス分布を持つレーザビームのエネルギー密度分布を均一化するためのものである。そのため、ビームホモジナイザ26としては、凸シリンドリカルレンズアレイ40と凹シリンドリカルレンズアレイ42を組み合わせたものを適用することができる。それにより、基板30の薄膜堆積表面と平行な方向のレーザビームのエネルギー密度分布を均一化することができる。
【0059】
レーザ光源22としては、可視光領域から赤外光領域の波長の光を放射可能なものが好ましく、気体レーザ、固体レーザなどを適用することができる。例えば、YVOレーザの基本波(1.06μm)、第2高調波(532nm)、炭酸ガスレーザの基本波(10.6μm)などを適用することができる。また、気体レーザとしては、例えば、Arレーザ、Krレーザ、COレーザなどを適用することができる。固体レーザとしては、例えば、YAGレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、KGWレーザ、KYWレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、Yレーザ、YVOレーザなどを適用することができる。また、YAGレーザ、Yレーザ、GdVOレーザ、YVOレーザなどはセラミックスレーザとも呼ばれる。金属蒸気レーザとしてはヘリウムカドミウムレーザ等が挙げられる。
【0060】
また、連続的にエネルギーを供給することができる点で連続発振レーザをレーザ光源22として用いることが好ましいが、繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることも可能である。蒸発分子が励起してから基底状態に戻るまでの時間よりもレーザのパルス間隔が短ければ、薄膜の堆積表面に連続して励起分子のフラックスを与えることができる。
【0061】
成膜室10に入射したレーザビームは受光板28に照射されるようにしている。受光板28は必須ではないが、光吸収体を用いてレーザビームの散乱を防止するようにしても良い。また、受光板28として光反射体を用い、レーザビームを成膜室10に再入射させても良い。その他に、光センサを設けてレーザビーム強度を検知し、レーザ光源22の出力を制御するようにしても良い。
【0062】
また、図5と図6において示す光導入窓14aと同等なものを複数個成膜室10に設け、複数本のレーザビームを導入して成膜を行うようにしても良い。
【0063】
蒸発源16は、Tiなどの金属製のボート、セラミックス製の坩堝などを用いた抵抗加熱方式、電子ビーム加熱方式などを適用することができる。またクヌーセンセルを適用して分子ビームを制御するようにしても良い。
【0064】
複数の蒸着材料を用いて共蒸着する場合には、蒸発源16を複数個設ければ良い。また、蒸発源16と基板ステージ12の間にはシャッタ20を設け、蒸着材料が基板30に飛着するタイミングを制御できるようにしても良い。成膜時における成膜室10の圧力は蒸着が可能な圧力範囲であれば良く、減圧下に限定されない。好ましくは10−5Paから10−1Pa程度とすれば良い。
【0065】
また、基板30に均一性良く薄膜を形成するために基板30若しくは蒸発源16、または基板30と蒸発源16の双方を移動可能に配置して、例えばラスタースキャンをするように成膜を行っても良い。このような構成にすることで、フラットパネルディスプレイのマザーガラスとして、第6世代の1500mm×1800mm、第7世代の1870mm×2200mm、第8世代の2160mm×2400mmの外寸を持つガラス基板でも容易に成膜を行うことができる。
【0066】
このように、本実施形態に係る成膜装置によれば、レーザビームを蒸発分子に照射して成膜を行うことにより、当該蒸発分子が励起若しくは活性化され、緻密な薄膜、または、歪みや欠陥の少ない均質な薄膜を形成することができる。
【0067】
(実施形態4)
本実施形態では、本発明の成膜方法や成膜装置を適用して作製できる発光素子を例示する。以下では、図7を用いて説明する。
【0068】
図7は、本発明の成膜方法や成膜装置により作製できる発光素子の素子構造を示した図である。発光素子は、第1の電極701と第2の電極702との間に、発光物質を含む層703が設けられている。本実施形態では、第1の電極701が陽極として、第2の電極702が陰極として機能する場合を例示する。また、発光物質を含む層703が、正孔注入層711、正孔輸送層712、発光層713、電子輸送層714、電子注入層715から構成されている場合を例示するが、本発明ではこの構成に限定されることはなく、他の素子構造を適用してもよい。
【0069】
実施形態1〜3で述べたような本発明の成膜方法や成膜装置は、正孔注入層711、正孔輸送層712、発光層713、電子輸送層714、電子注入層715のいずれの層を形成する場合にも用いることができる。すなわち、以下で述べる具体的な物質を、実施形態1〜3で述べたような本発明の成膜方法や成膜装置により蒸着することにより、寿命の長い発光素子を得ることができる。また、特に発光層713に本発明を適用することで、発光効率の高い発光素子を得ることができる。ただし、蒸着される物質は、以下に述べる物質に限定されることはなく、他の様々な物質を用いることができる。
【0070】
正孔注入層711を構成する物質としては、モリブデン酸化物(MoOx)やバナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タングステン酸化物(WOx)、マンガン酸化物(MnOx)等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPC)等のフタロシアニン系の化合物や、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:m−MTDATA)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)のような芳香族アミン化合物も用いることができる。また、上述した物質と、該物質に対して電子受容性を示す物質とを共蒸着することによっても正孔注入層711を形成することができる。電子受容性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(F−TCNQ)などを代表的に用いることができる。なお、正孔注入層711は、上述した物質を混合もしくは積層して構成することもできる。
【0071】
正孔輸送層712を構成する物質としては、先に述べたNPB、TPD、DFLDPBiなどの芳香族アミン化合物を代表的には用いることができる。なお、正孔輸送層712は、上述した物質を混合もしくは積層して構成することもできる。
【0072】
電子輸送層714を構成する物質としては、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などの金属錯体の他、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などを用いることができる。なお、電子輸送層714は、上述した物質を混合もしくは積層して構成することもできる。
【0073】
電子注入層715を構成する物質としては、上述した電子輸送層714を構成できる物質の他、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を用いることができる。
【0074】
発光層713に用いる発光物質としては、例えばクマリン6やクマリン545Tなどのクマリン誘導体、N,N’−ジメチルキナクリドンやN、N’−ジフェニルキナクリドンなどのキナクリドン誘導体、N−フェニルアクリドンやN−メチルアクリドンなどのアクリドン誘導体、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,10−ジフェニルアントラセン、ルブレン、ペリフランテン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)などの縮合芳香族化合物、4−ジシアノメチレン−2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−6−メチル−4H−ピランなどのピラン誘導体、4−(2,2−ジフェニルビニル)トリフェニルアミンなどのアミン誘導体などが挙げられる。また、燐光性化合物を用いることもでき、ビス{2−(p−トリル)ピリジナト}イリジウム(III)アセチルアセトナートやビス{2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト}イリジウム(III)アセチルアセトナート、ビス{2−(4、6−ジフルオロフェニル)ピリジナト}イリジウム(III)ピコリナート、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウムなどのイリジウム錯体、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン−白金錯体などの白金錯体、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリントリス(2−テノイルトリフルオロアセトナト)ユーロピウム(III)などの希土類錯体などが挙げられる。
【0075】
また、上述した発光物質をゲスト材料としてホスト材料中に分散して発光層713を構成してもよい。この場合、発光層713は、ゲスト材料とホスト材料を共蒸着することによって形成することができる。発光物質を分散させるためのホスト材料としては、上述した正孔輸送層712を構成する物質や電子輸送層714を構成する物質等、各種のものを用いることができる。具体的には例えば、上述したNPB、Alqなどの他、2,3−ビス(4−トリフェニルアミノ)キノキサリン(略称:TPAQn)、2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリン(略称:BPAPQ)等が挙げられる。具体的には、発光物質よりもLUMO準位が高く、HOMO準位が低い物質を用いることができる。また、発光物質を分散させるためのホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。
【0076】
なお、発光層713は、必ずしも単層とする必要はなく、上述した構成を積層して構成することもできる。
【0077】
第1の電極701を構成する物質について特に限定はないが、本実施形態のように陽極として機能する際は仕事関数の大きい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO)、または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化インジウム酸化亜鉛(IZO)の他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。なお、第1の電極701は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0078】
第2の電極702を構成する物質について特に限定はないが、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0079】
なお、発光素子は、第1の電極701および第2の電極702のいずれか一方もしくは両方を、透光性を有する電極とする必要がある。
【実施例1】
【0080】
本実施例では、本発明の成膜方法を用いた発光素子の作製例を例示する。なお、説明のために図7に用いた符号を引用する。
【0081】
まず、インジウム錫珪素酸化物膜が、110nmの膜厚で成膜されたガラス基板を用意する。インジウム錫珪素酸化物膜の表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺を絶縁膜で覆う。なお、インジウム錫珪素酸化物膜は発光素子の陽極として機能する第1の電極701である。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、多孔質樹脂のブラシを用いて基板表面を洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行う。
【0082】
次に、インジウム錫珪素酸化物膜が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定する。なお、該真空蒸着装置としては、成膜室の壁面に光導入窓を有する真空蒸着装置を用いる。
【0083】
真空装置内を10−4Paに減圧した後、下記構造式(i)で表されるNPBと酸化モリブデン(VI)とを、NPB:酸化モリブデン(VI)=4:1(質量比)となるように共蒸着することにより、正孔注入層711を形成する。膜厚は120nmとする。なお、酸化モリブデンは、NPBに対して電子受容性を示す物質として添加したものである。次に、NPBを10nm蒸着することにより、正孔輸送層712を形成する。
【0084】
次に、波長532nmのグリーンレーザ(コヒーレント社製、Verdi−V10)を、基板表面と略平行となるように光導入窓から成膜室内に照射しながら、発光層713を形成する。発光層713は、まず、下記構造式(ii)で表されるAlqと下記構造式(iii)で表される(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(略称:Ir(Fdpq)(acac))とを、Alq:Ir(Fdpq)(acac)=1:0.10(質量比)となるように共蒸着し、次いで下記構造式(iv)で表されるBPAPQとIr(Fdpq)(acac)とを、BPAPQ:Ir(Fdpq)(acac)=1:0.10(質量比)となるように共蒸着することにより形成する。この時、AlqとIr(Fdpq)(acac)とを含む層、およびBPAPQとIr(Fdpq)(acac)とを含む層は、いずれも12.5nmの膜厚で形成する。なお、Ir(Fdpq)(acac)は、レーザの波長である532nmに吸収帯が存在する。
【0085】
次に、レーザの照射を終了し、Alqを12.5nm蒸着し、さらに下記構造式(v)で表されるBPhenを30nm蒸着することにより、電子輸送層714を形成する。さらに電子輸送層714上に、フッ化リチウム(LiF)を1nm蒸着し、電子注入層715を形成する。最後に、陰極として機能する第2の電極702としてアルミニウムを200nm成膜し、発光素子を得ることができる。
【0086】
【化1】

【実施例2】
【0087】
本実施例では、本発明の発光素子を有する発光装置について説明する。
【0088】
本実施例では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明する。本実施例では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図8を用いて説明する。なお、図8(A)は、発光装置を示す上面図、図8(B)は図8(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0089】
なお、図8(B)の引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0090】
次に、断面構造について図8(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0091】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0092】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより絶縁物614を形成する。
【0093】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0094】
第1の電極613上には、発光物質を含む層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。第1の電極613および第2の電極617の少なくとも一方は透光性を有しており、発光物質を含む層616からの発光を外部へ取り出すことが可能である。
【0095】
なお、第1の電極613、発光物質を含む層616、第2の電極617の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。具体的には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着(EB蒸着)法等の真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0096】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0097】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0098】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0099】
本実施例の発光装置は、実施形態で示した発光素子を有する。実施形態で示した発光素子は、低駆動電圧で動作が可能である。また、高い発光効率を実現することができる。よって、消費電力を低減された発光装置を得ることができる。
【0100】
また、本実施例の発光装置は、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、発光装置の作製コストを低減することができる。また、発光装置の軽量化、駆動回路部分の小型化が可能である。
【実施例3】
【0101】
本実施例では、実施例2に示す発光装置をその一部に含む本発明の電子機器について説明する。本実施例の電子機器は、本発明の成膜方法又は成膜装置を用いて作製した発光素子を有する。よって、駆動電圧の低減された発光素子を有するため、消費電極の低減された電子機器を提供することが可能である。
【0102】
本発明の発光装置を用いて作製された電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図9に示す。
【0103】
図9(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置において、表示部9103は、本発明の成膜方法又は成膜装置を用いて作製した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特性を有している。その発光素子で構成される表示部9103も同様の特性を有するため、本発明に係るテレビ装置は画質の劣化が少なく、低消費電力化が図られている。このような特性により、テレビ装置において、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、筐体9101や支持台9102の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るテレビ装置は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、それにより住環境に適合した製品を提供することができる。
【0104】
図9(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングマウス9206等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、本発明の成膜方法又は成膜装置を用いて作製した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特性を有している。その発光素子で構成される表示部9203も同様の特性を有するため、本発明に係るコンピュータは画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特性により、コンピュータにおいて、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9201や筐体9202の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るコンピュータは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、環境に適合した製品を提供することができる。
【0105】
図9(C)は本発明に係る携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アンテナ9408等を含む。この携帯電話において、表示部9403は、本発明の成膜方法又は成膜装置を用いて作製した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特性を有している。その発光素子で構成される表示部9403も同様の特性を有するため、本発明に係る携帯電話は画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特性により、携帯電話において、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9401や筐体9402の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係る携帯電話は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0106】
図9(D)は本発明の係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラにおいて、表示部9502は、本発明の成膜方法又は成膜装置を用いて作製した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特性を有している。その発光素子で構成される表示部9502も同様の特性を有するため、本発明に係るカメラは画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特性により、カメラにおいて、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9501の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るカメラは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【実施例4】
【0107】
本実施例では、実施例1で発光素子の材料として用いた、2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリン(略称:BPAPQ)の合成方法を具体的に例示する。
【0108】
[ステップ1;2,3−ビス(4−ブロモフェニル)キノキサリンの合成]
窒素雰囲気下で、4,4’−ジブロモベンジル30.0g(81.5mmol)とo−フェニレンジアミン9.00g(83.2mmol)のクロロホルム溶液(200mL)を80℃で3時間加熱し、還流した。反応溶液を室温まで冷却した後、反応溶液を水で洗浄した。水層をクロロホルムで抽出し、有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄し、更に有機層を硫酸マクネシウムで乾燥した。その後、ろ過、濃縮を行い、目的物である2,3−ビス(4−ブロモフェニル)キノキサリンの白色固体を33g、収率92%で得た。ステップ1の合成スキームを下記(d−1)に示す。
【0109】
【化2】

【0110】
[ステップ2;N−(4−ビフェニル)−N−フェニルアミンの合成]
窒素雰囲気下で、4−ブロモビフェニル20.0g(85.8mmol)、アニリン16.0g(172mmol)、酢酸パラジウム0.19g(0.858mmol)、炭酸カリウム23.7(172mmol)のキシレン懸濁液(157mL)にトリ−tert−ブチルホスフィン(10%ヘキサン溶液)5.2g(2.5mmol)を加え、120℃で10時間還流した。反応終了後、反応混合物を水で洗浄し、水層をトルエンで抽出した。トルエン層と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、濃縮し、残渣をシカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製し、濃縮し、N−(4−ビフェニル)−N−フェニルアミンの白色固体を13.5g、収率64%で得た。ステップ2の合成スキームを下記(d−2)に示す。
【0111】
【化3】

【0112】
[ステップ3;BPAPQの合成]
窒素雰囲気下で、2,3−ビス(4−ブロモフェニル)キノキサリン5.0g(11.4mmol)、N−(4−ビフェニル)−N−フェニルアミン6.1g(25.0mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.33g(0.58mmol)、tert−ブトキシナトリウム5.5g(56.8mmol)のトルエン懸濁液(80mL)にトリ―tertブチルホスフィン(10%ヘキサン溶液)1.2g(0.58mmol)を加え、80℃で7時間加熱した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出物をろ過した。ろ物を再度トルエンに溶解し、この溶液をセライト、フロリジール、アルミナを用いてろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をクロロホルム―ヘキサンで再結晶することで、BPAPQの黄色固体を8.1g、収率78%で得た。ステップ3の合成スキームを下記(d−3)に示す。
【0113】
【化4】

【0114】
なお、BPAPQのプロトン核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果は以下のとおりであった。
H−NMR(300MHz,CDCl);δ=8.16−8.13(m,2H),7.75−7.72(m,2H),7.58−7.04(m,36H)
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】基板上に堆積された有機分子により有機化合物の膜が形成されている様子を表した模式図。
【図2】本発明に係る成膜方法とその原理を説明する図。
【図3】基板上に堆積されたホスト材料の分子とゲスト材料の分子により有機化合物の膜が形成されている様子を表した模式図。
【図4】本発明に係る成膜方法とその原理を説明する図。
【図5】実施形態3に係る成膜装置の構成を説明する図。
【図6】実施形態3に係る成膜装置の構成を説明する図。
【図7】実施形態4に係る発光素子の素子構造を示した図。
【図8】実施例2の発光装置を説明する図。
【図9】実施例3の電子機器を説明する図。
【符号の説明】
【0116】
10 成膜室
12 基板ステージ
14a 光導入窓
14b 光導入窓
16 蒸発源
18 排気口
20 シャッタ
22 レーザ光源
23 光学系
24 ビームエキスパンダ
26 ビームホモジナイザ
28 受光板
30 基板
31 基板チャック
32 シャドーマスク
33 マスクチャック
36 凹シリンドリカルレンズ
38 凸シリンドリカルレンズ
40 凸シリンドリカルレンズアレイ
42 凹シリンドリカルレンズアレイ
100 基板
101 有機分子
110 有機化合物膜
120 間隙
200 成膜室
201 基板保持手段
202 基板
203 レーザビーム
204 緻密な膜
210 蒸発源
211 有機化合物
212 有機化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物が充填された蒸発源を有する成膜室内において、
基板保持手段に基板を固定し、
前記有機化合物を気化させ、
気化している前記有機化合物にレーザビームを照射しながら、前記有機化合物を前記基板上に堆積させる成膜方法。
【請求項2】
有機化合物が充填された蒸発源を有する成膜室内において、
基板保持手段に基板を固定し、
前記有機化合物を気化させ、
気化している前記有機化合物に前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを照射しながら、前記有機化合物を前記基板上に堆積させる成膜方法。
【請求項3】
それぞれ異なる複数の有機化合物が充填された複数の蒸発源を有する成膜室内において、
基板保持手段に基板を固定し、
前記複数の有機化合物を同時に気化させ、
気化している前記複数の有機化合物にレーザビームを照射しながら、前記複数の有機化合物を前記基板上に堆積させる成膜方法。
【請求項4】
それぞれ異なる複数の有機化合物が充填された複数の蒸発源を有する成膜室内において、
基板保持手段に基板を固定し、
前記複数の有機化合物を同時に気化させ、
気化している前記複数の有機化合物に前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを照射しながら、前記複数の有機化合物を前記基板上に堆積させる成膜方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、
前記レーザビームの波長が、前記有機化合物を励起できる波長である成膜方法。
【請求項6】
請求項3または請求項4において、
前記レーザビームの波長が、前記複数の有機化合物のいずれかを励起できる波長である成膜方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記レーザビームの波長が、赤外光領域の波長である成膜方法。
【請求項8】
有機化合物を充填した蒸発源と、
基板の一表面若しくは少なくともその一部を露出させ保持する基板保持手段と、
を内部に備えた成膜室と、
前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、
を有し、
前記レーザビーム照射手段は、前記蒸発源と前記基板保持手段との間に前記レーザビームを照射するように設けられている成膜装置。
【請求項9】
有機化合物を充填した蒸発源と、
基板の一表面若しくは少なくともその一部を露出させ保持する基板保持手段と、
を内部に備えた成膜室と、
前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを照射するレーザビーム照射手段と、
を有し、
前記レーザビーム照射手段は、前記蒸発源から気化した前記有機化合物に前記レーザビームを照射するように設けられている成膜装置。
【請求項10】
有機化合物を充填した蒸発源と、
基板の一表面若しくは少なくともその一部を露出させ保持する基板保持手段と、
を内部に備えた成膜室と、
前記成膜室に設けられた光導入窓と、
前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを前記光導入窓から前記成膜室内に照射するレーザビーム照射手段と、
を有し、
前記レーザビーム照射手段は、前記蒸発源と前記基板保持手段との間に前記レーザビームを照射するように設けられている成膜装置。
【請求項11】
有機化合物を充填した蒸発源と、
基板の一表面若しくは少なくともその一部を露出させ保持する基板保持手段と、
を内部に備えた成膜室と、
前記成膜室に設けられた光導入窓と、
前記基板の一表面と略平行となるようなレーザビームを前記光導入窓から前記成膜室内に照射するレーザビーム照射手段と、
を有し、
前記レーザビーム照射手段は、前記蒸発源から気化した前記有機化合物に前記レーザビームを照射するように設けられている成膜装置。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11のいずれか一項において、
前記レーザビームの波長が、前記有機化合物を励起できる波長である成膜装置。
【請求項13】
請求項8乃至請求項11のいずれか一項において、
前記レーザビームの波長が、赤外光領域の波長である成膜装置。
【請求項14】
請求項8乃至請求項11のいずれか一項において、
前記レーザビーム照射手段のレーザ光源として、Arレーザ、Krレーザ、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、KGWレーザ、KYWレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、Yレーザ、YVOレーザ、セラミックスレーザ、ヘリウムカドミウムレーザから選ばれるいずれか一のレーザ発振器が適用されている成膜装置。
【請求項15】
請求項8乃至請求項14のいずれか一項において、
前記レーザビームの照射端に、前記レーザビームを吸収する受光板が設けられている成膜装置。
【請求項16】
請求項8乃至請求項14のいずれか一項において、
前記蒸発源が複数設けられている成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−224417(P2007−224417A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14404(P2007−14404)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】