説明

成膜方法および成膜装置

【課題】膜の厚さムラを低減できる成膜方法および成膜装置を提供することにある。
【解決手段】成膜中に金属基板B1の電位を測定し、この測定結果に基づいてエアロゾルの吹き付け条件を調整する。このようにすれば、吹き付けられているエアロゾルZの状態をリアルタイムで把握し、吹き付け操作の途中であっても基板電位を測定してその結果をエアロゾルZの吹き付け条件にフィードバックして、膜厚を均一化することができる。また、吹き付け中の金属基板B1の電位を一定とすれば一定の厚さの膜が得られることから、金属基板B1の電位を指標として吹き付け条件を調整することにより、所望の厚さの膜を容易に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインクジェットプリンタのプリンタヘッド等に用いられる圧電アクチュエータ等の製造方法として、エアロゾルデポジション法(AD法)と呼ばれるものがある。これは、圧電材料の微粒子を気体中に分散させたもの(エアロゾル)をノズルから基板表面に向けて噴射させ、微粒子を基板上に衝突・堆積させることにより圧電膜を形成させるものである(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−152360公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のような方法では、成膜中の配管の目詰まりや粉体の消費による減少等によって、ノズルからの材料粒子の噴出量にはムラが生じることがある。このような場合には、形成される圧電膜の厚さにもムラが生じ、膜の圧電特性に悪影響を与える。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、膜の厚さムラを低減できる成膜方法および成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、膜の厚さムラを低減できる成膜方法および成膜装置を開発すべく鋭意研究してきたところ、エアロゾル吹き付け中の基板の電位と形成される膜の膜厚とが相関性を有することを見出した。
【0006】
エアロゾルの吹き付け条件によって基板の電位が変化するメカニズムは、必ずしも明らかではないが、(i)材料粒子が基板に衝突して粉砕する際に電子が飛び出し基板に当たること、(ii)エアロゾル中で帯電した材料粒子が基板に衝突する際に静電気がリークすること、によるものと推測される。すなわち、基板の電位の変化は基板に衝突する粒子の数、および衝突速度と相関しているものと考えられる。したがって、基板の電位を指標としてエアロゾルの吹き付け条件を調整することによって、膜の厚さムラを低減し、所望の厚さの膜を形成することが可能になる。本発明は、かかる新規な知見に基づいてなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、キャリアガスに材料粒子を分散させてエアロゾルを発生させるエアロゾル発生工程と、前記エアロゾルを前記噴射ノズルから噴出させて前記基板に吹き付けることにより前記材料粒子を前記基板上に付着させて膜を形成する膜形成工程と、を含む成膜方法であって、前記膜形成工程が、前記エアロゾルを前記基板へ吹き付けつつ前記基板の電位を測定する電位測定工程と、前記電位測定工程によって得られた測定結果に基づいて前記エアロゾルの吹き付け条件を調整する調整工程と、を含むものである。
【0008】
また、本発明の別の成膜方法は、キャリアガスに材料粒子を分散させてエアロゾルを発生させるエアロゾル発生工程と、前記エアロゾルを前記噴射ノズルから噴出させて前記基板に吹き付けることにより前記材料粒子を前記基板上に付着させて膜を形成する膜形成工程と、を含む成膜方法であって、前記膜形成工程が、前記基板とは別に設けた検査用基板に前記エアロゾルを吹き付けつつ前記検査用基板の電位を測定する仮成膜工程と、前記仮成膜工程によって得られた測定結果に基づいて前記エアロゾルの吹き付け条件が予め定めた本成膜条件に合致するか否かを判定する判定工程と、前記本成膜条件に従って前記基板に前記エアロゾルを吹き付ける本成膜工程と、を含むものである。
【0009】
調整工程において調整するエアロゾルの吹き付け条件としては、例えば噴射ノズル−基板間距離、基板に対するエアロゾルの吹き付け角度、あるいはエアロゾル濃度が挙げられる。
特に、容器に収容された材料粒子にキャリアガスを吹き付けつつ、この容器に加振装置による振動を加えてエアロゾルを発生させる機構を備えたものでは、振動の振動数またはキャリアガスの流量を調整することにより、容易にエアロゾル濃度を調整することができる。
【0010】
本発明に用いられる基板としては、例えば金属基板等の導電性基板の他、電気抵抗が測定可能な材質のものであれば使用可能であり、シリコン基板、半導体基板等も使用できる。
また、粒子は帯電するものであれば良く、セラミックス(例えばPZT、アルミナ)等の無機粉体、または樹脂等の有機粉体を使用できる。
また、キャリアガスとしてはエアロゾルデポジション法に通常に用いられるものであれば特に制限はなく、例えばヘリウム、窒素、酸素、空気等が使用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板の電位を測定することにより、吹き付けられているエアロゾルの状態をリアルタイムで把握できる。したがって、吹き付け操作の途中であっても基板電位を測定してその結果をエアロゾルの吹き付け条件にフィードバックし、膜厚を均一化することができる。また、吹き付け中の基板の電位を一定とすれば一定の厚さの膜が得られることから、基板の電位を指標として吹き付け条件を調整することにより、所望の厚さの膜を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1を参照しつつ詳細に説明する。
図1には、本発明を具体化した成膜装置1を示す。この成膜装置1は、材料粒子Mをキャリアガスに分散させてエアロゾルZを形成するエアロゾル発生部10、およびエアロゾルZを噴射ノズル23から噴出させて金属基板B1に付着させるための成膜チャンバ20を備えている。
【0013】
エアロゾル発生部10には、内部に材料粒子Mを収容可能なエアロゾル室11(本発明の容器に該当する)と、このエアロゾル室11に取り付けられてエアロゾル室11を振動する超音波加振装置12とが備えられている。エアロゾル室11には、キャリアガスを導入するためのガスボンベGがガス供給管14(本発明の第1のガス供給部に該当する)を介して接続されている。ガス供給管14の先端はエアロゾル室11内部において底面付近に位置し、材料粒子M中に埋没するようにされている。キャリアガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスや空気、酸素等を使用することができる。なお、ガス供給管14には、ガスボンベGからエアロゾル室11に供給されるキャリアガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ15A(本発明の第1のバルブ部に該当する)が設けられている。
また、このエアロゾル室11には、エアロゾル供給管13(本発明のエアロゾル送出経路に該当する)の一方の端部が挿入されている。
【0014】
成膜チャンバ20には、基板を取り付けるためのステージ21と、このステージ21の下方に設けられた噴射ノズル23が備えられている。噴射ノズル23は、全体として上下に開口した円筒状に形成されており、上側の開口部は、スリット状の噴出口23Aとされている。また、下側の開口部はエアロゾル供給管13の他方の端部に接続されており、エアロゾル室11内のエアロゾルZがエアロゾル供給管13を通って噴射ノズル23に供給されるようになっている。なお、このエアロゾル供給管13からは、流量調整管16(本発明の第2のガス供給部に該当する)が分岐しており、この流量調整管16はガスボンベGに接続されている。なお、流量調整管16には、ガスボンベGからエアロゾル供給管13に流入するキャリアガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ15B(本発明の第2のバルブ部に該当する)が設けられている。
【0015】
ステージ21は絶縁性の材料により矩形板状に形成されており、ステージ移動機構22によって水平姿勢で天井から吊り下げられて、下面側に金属基板B1を保持することができるようになっている。ステージ移動機構22は、図示しない制御装置からの指令に応じて駆動されるものであり、ステージ21をその板面と平行な面内において移動させる。これにより、噴射ノズル23を金属基板B1に対して相対的に移動させることが可能とされている。
【0016】
ステージ21に取り付けられる金属基板B1には、この金属基板B1の電位を測定するための電圧計24(本発明の電位測定機構に該当する)が接続されている。この電圧計24は、コントローラ25(本発明のバルブ制御部に該当する)に接続されている。コントローラ25は、エアロゾル発生部10に接続されており、電圧計24による金属基板B1の電位の測定結果に基づいて、超音波加振装置12、およびマスフローコントローラ15A、15Bを制御する。これらのコントローラ25、超音波加振装置12、およびマスフローコントローラ15A、15Bが本発明のエアロゾル濃度制御機構を構成する。
【0017】
また、この成膜チャンバ20には、ブースターポンプ26およびロータリーポンプ27が接続されており、その内部を減圧できるようにされている。
【0018】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用および効果について説明する。
【0019】
成膜装置1を用いて材料粒子Mの膜を形成する際には、まず、金属基板B1をステージ21にセットする。次いで、エアロゾル室11の内部に材料粒子Mを投入する。材料粒子Mとしては、例えば圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を使用することができる。
【0020】
そして、ガスボンベGからガス供給管14を介してエアロゾル室11内部にキャリアガスを導入し、そのガス圧で材料粒子Mを舞い上がらせる。それとともに、超音波加振装置12によってエアロゾル室11を振動することで、材料粒子Mとキャリアガスとを混合してエアロゾルZを発生させる(エアロゾル発生工程)。
【0021】
続いて、成膜チャンバ20内をブースターポンプ26およびロータリーポンプ27により減圧する。すると、エアロゾル室11と成膜チャンバ20との間の差圧により、エアロゾル室11内のエアロゾルZが高速に加速しつつエアロゾル供給管13に吸い込まれ、噴射ノズル23から噴出される。噴出したエアロゾルZに含まれる材料粒子Mは金属基板B1に衝突して固着し、圧電膜を形成する。このとき、ステージ移動機構22によってステージ21を動かすことで金属基板B1に対する噴射ノズル23の相対位置を少しずつずらしながらエアロゾルZの吹き付けを行うことによって、金属基板B1の全面にわたって膜を形成する(膜形成工程)。このとき、金属基板B1に接続された電圧計24により、エアロゾルZが吹き付けられている状態での金属基板B1の電位を計測する。
【0022】
電圧計24により計測された電位のデータはコントローラ25に送られ、コントローラ25により電位の変化がモニタリングされる。コントローラ25では、受信した電位のデータの変化に応じてエアロゾル発生部10に指示を送り、エアロゾルZの濃度を調整する。例えば、吹き付けを継続すると、エアロゾル室11内の材料粒子Mが消費されて減ることにより、エアロゾルZの濃度が低下する。この場合、コントローラ25は超音波加振装置12を制御して発せられる振動周波数を増大させるか、あるいは、ガス供給管14側のマスフローコントローラ15Aを制御してエアロゾル室11へ供給されるキャリアガスの流量を増大させるか、その両方を行う。このようにすれば、凝集した材料粒子Mが粉砕されて微細化することによりキャリアガス中に巻き上げられる量が増大し、エアロゾルZの濃度が維持される。
【0023】
なお、流量調整管16側のマスフローコントローラ15Bは、コントローラ25により、ガス供給管14側のマスフローコントローラ15Aの流量の変動に応じて、2台のマスフローコントローラ15A、15Bから吐出されるキャリアガスの流量の合計が常に一定となるように制御される。ここで、エアロゾル室11に供給されるキャリアガスの流量が変動すると、噴射ノズル23から噴出されるエアロゾルZの流量が変動し、材料粒子Mの衝突エネルギーも変動してしまう。しかし、本実施形態のようにエアロゾル室11から噴射ノズル23へのエアロゾル供給経路(エアロゾル供給管13)にもキャリアガスを供給し、両者に供給されるキャリアガス量の合計が常に一定となるように調整することによって、噴射ノズル23から噴出されるエアロゾルZの流量を変えることなくエアロゾルZの濃度を調整することができる。
【0024】
金属基板B1に衝突した後のエアロゾルは、ブースターポンプ26およびロータリーポンプ27の吸引力によって成膜チャンバ20の外部へ排出される。
【0025】
以上のように本実施形態によれば、金属基板B1の電位を測定することにより、吹き付けられているエアロゾルZの状態をリアルタイムで把握できる。したがって、吹き付け操作の途中であっても基板電位を測定してその結果をエアロゾルZの吹き付け条件にフィードバックし、膜厚を均一化することができる。また、吹き付け中の金属基板B1の電位を一定とすれば一定の厚さの膜が得られることから、金属基板B1の電位を指標として吹き付け条件を調整することにより、所望の厚さの膜を容易に形成することができる。
【0026】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図2を参照しつつ説明する。
本実施形態の成膜装置30には、成膜チャンバ20内においてステージ21の側方に、検査用基板31が設置されている。この検査用基板31はステンレス等の導電性材料により形成されたものであって、電位測定のための電圧計24が接続されている。また、噴射ノズル23は、この検査用基板31−ステージ21間を移動可能とされている。その余の構成は第1実施形態と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
本実施形態の成膜装置30を用いて成膜を行う場合には、まず、本成膜用の基板B2を第1実施形態と同様にステージ21にセットする。なお、本実施形態では第1実施形態と異なり、本成膜用の基板B2については基板電位の測定を行わないため、この基板B2の材質に特に制限はなく、電気抵抗が測定可能な材質のものでなくても構わない。
次に、第1実施形態と同様にして、エアロゾル発生部10でエアロゾルZを発生させる(エアロゾル発生工程)。
【0028】
続いて、噴射ノズル23を検査用基板31の下方に移動させる。そして、成膜チャンバ20内をブースターポンプ26およびロータリーポンプ27により減圧し、エアロゾル室11内のエアロゾルZを噴射ノズル23から噴出させ、検査用基板31に吹き付ける(仮成膜工程)。このとき、検査用基板31に接続された電圧計24により、エアロゾルZが吹き付けられている状態での検査用基板31の電位を計測する。
【0029】
電圧計24により計測された電位のデータはコントローラ25に送られ、コントローラ25により電位の変化がモニタリングされる。コントローラ25では、受信した電位のデータの変化に応じてエアロゾル発生部10に指示を送り、検査用基板31の電位の測定値が所定の基準値となるよう、エアロゾル濃度を調整する。エアロゾル濃度の調整は、第1実施形態と同様に、超音波加振装置12から発せられる超音波の振動周波数を変化させ、あるいはガス供給管14側のマスフローコントローラ15Aを制御してガスボンベGからエアロゾル室11内部へ供給されるキャリアガスの流量を変化させることにより行うことができる。なお、流量調整管16側のマスフローコントローラ15Bは、第1実施形態と同様に、2台のマスフローコントローラ15A、15Bから吐出されるキャリアガスの流量の合計が常に一定となるように制御される。
【0030】
電圧計24による検査用基板31の電位の測定値が所定の基準値に達したら、エアロゾルZの吹き付け条件が所望の状態になったと判定する(判定工程)。なお、この基準値としては、あらかじめ試験成膜を行って膜厚と基板電位との関係を調べておき、所望の厚さの膜が形成されたときの基板電位を採用すれば良い。
【0031】
次いで、噴射ノズル23をステージ21の下方へ移動させて、判定工程により判定された吹き付け条件で基板B2への吹き付けを行い、膜を形成させる(本成膜工程)。
【0032】
以上のように本実施形態によれば、あらかじめ検査用基板31への仮成膜工程によってエアロゾル濃度を調整してから、基板Bへの本成膜を行うので、成膜操作ごとの成膜条件のばらつきを抑制して膜の厚さムラを防ぎ、品質の均質化を図ることができる。また、検査用基板31の基板電位を指標として吹き付け条件を調整することで、望みの厚さの膜を容易に得ることができる。
【0033】
[試験例]
以下、試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
<試験例1>
基板としては、長さ30mm、幅15mm、厚さ0.2mmのSUS430基板を用いた。また、材料粒子としてはアルミナ(昭和電工製 160SG−3)を用いた。
塩化ビニル粘着テープ上に基板を貼り付けて固定し、この基板に電圧計を接続した。この基板の表面に、上記第1実施形態と同様の構成の成膜装置を用いて成膜を行った。成膜は、電圧計により基板電圧をモニタリングしつつ、噴射ノズルを基板の長さ方向に沿って複数回往復走査しながら材料粒子のエアロゾルを吹き付けることにより行った。キャリアガスとしてはヘリウムガスを使用し、ガス供給管側、流量調整管側の2台のマスフローコントローラによってキャリアガスの流量を制御することにより、2台のマスフローコントローラから吐出されるキャリアガスの流量の合計が常に一定となるように調整した。またノズルスキャン速度を50mm/min、ノズル−基板間距離を12mm、成膜チャンバ内の気圧を100Pa、噴出ノズルからのエアロゾルガス流量を8.6L/minとした。なお、電圧計としては株式会社キーエンス製 データ収拾システム NR1000を、マスフローコントローラとしては株式会社堀場エスペック製 マスフローコントローラ SEC−E50を用いた。
成膜後、形成された膜の厚さを株式会社東京精密製 サーフコム 1400Dにより測定した。
【0035】
表1には、試験を行った3つのサンプルについての基板電圧、膜厚の測定値、走査往復回数、2台のマスフローコントローラ(ガス供給管側をA、流量調整管側をBとする)から吐出されるキャリアガスの流量、および一往復走査当たりの膜厚(膜厚の測定値を往復走査回数で除した値)を示した。また、図3〜図5には、3つのサンプルについての成膜中の基板電圧の推移を示すチャートをそれぞれ示した。
【0036】
【表1】

【0037】
<試験例2>
試験例1と同様の条件で成膜を行った。
表2には、試験を行った8つのサンプルについての基板電圧、膜厚の測定値、走査往復回数、2台のマスフローコントローラ(ガス供給管側をA、流量調整管側をBとする)から吐出されるキャリアガスの流量、および一往復走査当たりの膜厚(膜厚の測定値を往復走査回数で除した値)を示した。また、基板電圧と一往復走査当たりの膜厚との関係を示すグラフを図6に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
上記試験例1および試験例2より、基板電圧と一往復走査当たりの膜厚とがほぼ直線的な相関関係にあることが分かった。
【0040】
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。その他、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
(1)第1実施形態においては基板として金属基板B1を用いたが、基板の材質は金属でなくてもよく、例えばシリコンであっても構わない。
【0041】
(2)上記各実施形態では、コントローラ25はエアロゾル発生部10に接続され、電圧計24による金属基板B1または検査用基板31の電位の測定結果に基づいて、超音波加振装置12から発せられる超音波の振動周波数、およびエアロゾル室11に供給されるキャリアガスの流量を調整していたが、例えばコントローラが噴射ノズルに接続され、金属基板B1または検査用基板31の電位の測定結果に基づいて噴射ノズル−基板間距離・基板に対するエアロゾルの吹き付け角度等を調整するようにされていても良い。
【0042】
(3)上記各実施形態では、エアロゾル室11を振動させるために超音波加振装置12を備えているが、エアロゾル室11を振動させるものであれば、超音波によらない加振装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態の成膜装置の全体概略図
【図2】第2実施形態の成膜装置の全体概略図
【図3】試験例1におけるサンプル1についての成膜中の基板電圧の推移を示すチャート
【図4】試験例1におけるサンプル2についての成膜中の基板電圧の推移を示すチャート
【図5】試験例1におけるサンプル3についての成膜中の基板電圧の推移を示すチャート
【図6】試験例2における基板電圧と一往復走査当たりの膜厚との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0044】
1、30…成膜装置
10…エアロゾル発生部
11…エアロゾル室(容器)
12…超音波加振装置(エアロゾル濃度制御機構)
13…エアロゾル供給管(エアロゾル送出経路)
14…ガス供給管(第1のガス供給部)
15A…マスフローコントローラ(第1のバルブ部、エアロゾル濃度制御機構)
15B…マスフローコントローラ(第2のバルブ部、エアロゾル濃度制御機構)
16…流量調整管(第2のガス供給部)
23…噴射ノズル
24…電圧計(電位測定機構)
25…コントローラ(バルブ制御部、エアロゾル濃度制御機構)
B1…金属基板(基板)
M…材料粒子
Z…エアロゾル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガスに材料粒子を分散させてエアロゾルを発生させるエアロゾル発生工程と、
前記エアロゾルを噴射ノズルから噴出させて基板に吹き付けることにより前記材料粒子を前記基板上に付着させて膜を形成する膜形成工程と、を含む成膜方法であって、
前記膜形成工程が、
前記エアロゾルを前記基板へ吹き付けつつ前記基板の電位を測定する電位測定工程と、
前記電位測定工程によって得られた測定結果に基づいて前記エアロゾルの吹き付け条件を調整する調整工程と、
を含むものである成膜方法。
【請求項2】
前記調整工程において調整する前記吹き付け条件が前記噴射ノズルと前記基板との距離または前記基板に対する前記エアロゾルの吹き付け角度である、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記調整工程において調整する前記吹き付け条件が前記エアロゾルの濃度である、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記エアロゾル発生工程が、容器に収容された前記材料粒子に前記キャリアガスを吹き付けつつ前記容器に振動を加えて前記キャリアガスに前記材料粒子を分散させるものであって、
前記調整工程において前記振動の振動数および/または前記キャリアガスの流量を調整することで前記エアロゾルの濃度を調整する、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
キャリアガスに材料粒子を分散させてエアロゾルを発生させるエアロゾル発生工程と、
前記エアロゾルを噴射ノズルから噴出させて基板に吹き付けることにより前記材料粒子を前記基板上に付着させて膜を形成する膜形成工程と、を含む成膜方法であって、
前記膜形成工程が、
前記基板とは別に設けた検査用基板に前記エアロゾルを吹き付けつつ前記検査用基板の電位を測定する仮成膜工程と、
前記仮成膜工程によって得られた測定結果に基づいて前記エアロゾルの吹き付け条件が予め定めた本成膜条件に合致するか否かを判定する判定工程と、
前記本成膜条件に従って前記基板に前記エアロゾルを吹き付ける本成膜工程と、
を含むものである成膜方法。
【請求項6】
材料粒子を収容可能な容器と、前記容器にキャリアガスを供給する第1のガス供給部と、を備えて前記材料粒子が前記キャリアガスに分散されたエアロゾルを発生させるエアロゾル発生部と、
前記エアロゾル発生部と接続されて前記エアロゾルを被処理材に向けて噴射する噴出ノズルと、
前記被処理材の電位を測定する電位測定機構と、
前記電位測定機構によって測定された電位の値に基づいて前記エアロゾル発生部において発生するエアロゾルの濃度を制御するエアロゾル濃度制御機構と、
を備える成膜装置。
【請求項7】
前記エアロゾル濃度制御機構が、前記第1のガス供給部に備えられて前記容器への前記キャリアガスの流量を調整する第1のバルブ部と、前記第1のバルブ部の開度を制御するバルブ制御部と、を備えるものである、請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記エアロゾル発生部と前記噴出ノズルとを接続するエアロゾル送出経路にキャリアガスを供給する第2のガス供給部が設けられるとともに、
前記エアロゾル濃度制御機構が、
前記第1のガス供給部に備えられて前記容器への前記キャリアガスの流量を調整する第1のバルブ部と、
前記第2のガス供給部に備えられて前記エアロゾル送出経路への前記キャリアガスの流量を調整する第2のバルブ部と、
前記第1のバルブ部および前記第2のバルブ部の開度を制御するバルブ制御部と、を備えるものである、請求項6に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−308748(P2007−308748A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137781(P2006−137781)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】