説明

成膜方法および発光装置の作製方法

【課題】所望の領域の材料のみが成膜されることを可能にし、微細パターンの形成を可能にすることを目的とする。また、成膜に要する時間を短縮し、生産性を向上させることを目的とする。
【解決手段】一方の面に、光吸収層と、光吸収層に接して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された面と、第2の基板の被成膜面とを対向させ、第1の基板の他方の面側から周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を照射し、光吸収層と重なる位置にある材料層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の被成膜面に成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法およびその成膜方法を用いた発光装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型軽量、高速応答性、直流低電圧駆動などの特徴を有する有機化合物を発光体として用いた発光素子は、次世代のフラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。特に、発光素子をマトリクス状に配置した表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、視野角が広く視認性が優れる点に優位性があると考えられている。
【0003】
発光素子の発光機構は、一対の電極間にEL層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔がEL層の発光中心で再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に緩和する際にエネルギーを放出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励起状態を経ても可能であると考えられている。
【0004】
発光素子を構成するEL層は、少なくとも発光層を有する。また、EL層は、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などを有する積層構造とすることもできる。
【0005】
また、EL層を形成するEL材料は低分子系(モノマー系)材料と高分子系(ポリマー系)材料に大別される。一般に、低分子系材料は蒸着法を用いて成膜され、高分子系材料はインクジェット法やスピンコート法などを用いて成膜されることが多い。
【0006】
蒸着法の場合に用いられる蒸着装置は、基板ホルダに基板を設置し、EL材料、つまり蒸着材料を封入したルツボ(または蒸着ボート)と、ルツボ内のEL材料を加熱するヒーターと、昇華するEL材料の拡散を防止するシャッターとを有している。そして、ヒーターにより加熱されたEL材料が昇華し、基板に成膜される。このとき、均一に成膜を行うために、被成膜基板を回転させ、さらに、300mm×360mmの大きさの基板でも、基板とルツボとの間の距離は1m程度離す必要がある。よって、処理する基板が大型化した場合には、蒸着装置もそれ以上に大型化する必要があるため、蒸着法を用いて成膜できる基板の大きさには、現実的には限界があると考えられる。
【0007】
また、蒸着法で、赤、緑、青の発光素子を用いてフルカラーの表示装置を作製することを考えた場合、基板と蒸発源との間に、基板と接してシャドーマスクが設置され、このマスクを介して塗り分けが実現される。
【0008】
しかしながら、フルカラーの表示装置を作製するために用いるシャドーマスクは、開口部を精密に作製する必要があるため、非常に薄くなっている。よって、基板の大型化に従い、シャドーマスクを大型化すると、シャドーマスクがたわみ、開口部の大きさが変化するなどの問題が生じていた。また、シャドーマスクの画素部に対応する領域にシャドーマスクの強度を補強する手段を導入することは難しいため、大面積の表示領域を作製する場合には、補強手段の適用も困難となる。
【0009】
また、表示装置の高精細化(画素数の増大)に伴う各表示画素ピッチの微細化への要望はより高まっており、さらにシャドーマスクが薄くなる傾向にある。
【0010】
一方、インクジェット法やスピンコート法などの湿式法は、基板が大型化した場合にも対応が可能であるが、均一な膜を形成することが困難である。また、湿式法を用いる場合には、EL材料を含む組成物または溶液を塗布した後、焼成し溶媒を除去する必要がある。よって、EL材料を含む層を積層する場合には、塗布する工程と焼成する工程を繰り返す必要があり、非常に時間を要する。また、インクジェット法などの湿式法を用いて積層する場合、既に形成されている層が溶解しない溶媒を用いて成膜しなければならず、用いる材料の選択肢や積層構造の選択肢が限られてしまう。用いる材料の選択肢や積層構造の選択肢が限られてしまうと、発光素子の性能(発光効率や寿命など)が大きく制限されてしまう。よって、優れた構成の発光素子であっても発光装置に応用できないなど、発光装置の性能の向上にとって大きな障害となってしまう。
【0011】
これに対して、レーザ熱転写により、発光素子のEL層を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、支持基板上に、低反射層と高反射層から構成される光熱変換層と、転写層を有する転写用基板について記載されている。このような転写用基板にレーザ光を照射することにより、転写層を素子作製用基板に転写することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−309995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の転写用基板では、基板の片側に高反射層および低反射層が積層して形成されている。そのため、高反射層を用いたとしても、ある程度の熱の吸収が考えられるため、レーザ光の熱量が大きいときに、低反射層上の転写層だけでなく、高反射層上の転写層も転写されてしまう可能性がある。
【0014】
また、特許文献1の図3に記載された構成では、[0041]段落にも記載されているように、低反射層と高反射層との間に隙間がないようにしなければならず、高精度のパターニングが必要となる。
【0015】
また、特許文献1の図7に記載された構成では、低反射層をパターニングしておき、その後全面に高反射層を形成し、その後、転写層を形成している。この構成では、レーザ光を吸収し加熱された低反射層からの熱は、高反射層を介して転写層に伝わる構成となっているため、所望の転写層だけでなく、その周りの転写層も転写されてしまう可能性がある。
【0016】
よって、本発明の一態様は、所望の領域の材料のみが成膜されることを可能にし、微細パターンの形成を可能にすることを目的とする。
【0017】
また、本発明の一態様は、成膜に要する時間を短縮し、生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様は、一方の面に、光吸収層と、光吸収層に接して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された面と、第2の基板の被成膜面とを対向させ、第1の基板の他方の面側から周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を照射し、光吸収層と重なる位置にある材料層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の被成膜面に成膜することを特徴とする成膜方法である。
【0019】
また、本発明の一態様は、上記の成膜方法を用いた発光装置の作製方法である。よって、本発明の一は、一方の面に、光吸収層と、光吸収層に接して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、第1の基板の材料層が形成された面と、第1の電極が形成された第2の基板の一方の面とを対向させ、第1の基板の他方の面側から周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を照射し、光吸収層と重なる位置にある材料層の一部を選択的に加熱し、材料層の一部を第2の基板の第1の電極上に成膜することを特徴とする発光装置の作製方法である。
【0020】
また、上記構成における光吸収層は、光に対する反射率が70%以下であることを特徴とする。なお、光吸収層の膜厚は、10nm以上600nm以下であることを特徴とする。また、光吸収層は、金属窒化物、金属、カーボンのいずれかを含むことを特徴とする。
【0021】
なお、上記構成において、光吸収層が島状に形成されていることを特徴とする。または、ストライプ状に形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、上記構成において、材料層は有機化合物からなることが好ましい。なお、材料層が、発光性材料またはキャリア輸送性材料の一方または両方を含む場合も本発明に含めることとする。また、材料層は、湿式法により形成されることが好ましい。
【0023】
また、上記構成において、レーザ光は線状または矩形状に成形されていることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、発光素子を有する発光装置だけでなく、発光装置を有する電子機器も範疇に含めるものである。従って、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0025】
本発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また、所望の領域のみに成膜することが可能であるため、微細パターンの形成が可能となる。
【0026】
また、本発明を適用することにより、微細パターンの形成が可能となるため、高精細な発光装置を作製することができる。
【0027】
また、本発明を適用することにより、成膜に要する時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一態様の成膜用基板及び成膜方法を説明する図。
【図2】本発明の一態様の成膜用基板及び成膜方法を説明する図。
【図3】本発明の一態様の成膜用基板及び成膜方法を説明する図。
【図4】本発明の一態様の成膜方法について説明する図。
【図5】本発明の一態様の成膜方法について説明する図。
【図6】成膜装置について説明する図。
【図7】本発明の一態様の成膜方法について説明する図。
【図8】本発明の一態様の成膜方法について説明する図。
【図9】発光素子について説明する図。
【図10】パッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図11】パッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図12】アクティブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図13】電子機器を示す図。
【図14】電子機器を示す図。
【図15】実施例を説明する図。
【図16】実施例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発の一態様の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる場合がある。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る成膜用基板および成膜用基板を用いた成膜方法の一態様について説明する。なお、本実施の形態では、成膜用基板を用いて発光素子のEL層を形成する場合について説明する。本明細書では、成膜したい材料が設けられており、かつ、被成膜基板に成膜を行うために用いる基板を、以下では成膜用基板と記す。
【0031】
図1(A)に成膜用基板の一例を示す。図1(A)に示すように、支持基板である第1の基板101上に光吸収層102が形成されている。光吸収層102は、被成膜基板上に成膜したい領域に対応するようにパターン形成されている。図1(A)においては、光吸収層102は、開口部106を有するように形成されている。そして、光吸収層102上には、被成膜基板上に成膜する材料を含んでいる材料層103が形成されている。図1(A)においては、材料層103は、第1の基板101の全面に形成されている。
【0032】
なお、本発明において、材料層103の材料を成膜する際、第1の基板101に照射された光が第1の基板101を透過する必要があることから、第1の基板101は、光の透過率が高い基板であることが好ましい。つまり、照射する光としてレーザ光を用いた場合、第1の基板101には、レーザ光を透過させる基板を用いることが好ましい。また、熱伝導率が低い材料であることが好ましい。熱伝導率が低いことにより、照射された光から得られる熱を効率よく成膜に用いることができる。第1の基板101としては、例えば、ガラス基板、石英基板などを用いることができる。ガラス基板や石英基板などは、フィルム基板などよりも不純物(水分など)が吸着または付着しにくい。よって、成膜する際に不純物の混入を防ぐことができる。
【0033】
光吸収層102は、成膜の際に照射された光を吸収する層である。よって、光吸収層102は、照射する光に対して低い反射率を有し、高い吸収率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には、光吸収層102は、照射される光に対して、70%以下の反射率を示すことが好ましい。
【0034】
光吸収層102には、種々の材料を用いることができる。例えば、窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン、窒化タングステンなどの金属窒化物、チタン、モリブデン、タングステンなどの金属、カーボンなどを用いることができる。なお、照射される光の波長に応じて、光吸収層102に好適な材料の種類が変化することから、適宜材料を選択する必要がある。また、光吸収層102は一層に限らず複数の層により構成されていてもよい。例えば、金属と金属窒化物の積層構造としてもよい。
【0035】
なお、光吸収層102は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法などにより形成することができる。
【0036】
また、光吸収層102の膜厚は、材料によって異なるが、照射した光が透過しない膜厚とすることで、照射した光を無駄にすることなく熱に変換することができる。よって、10nm以上2μm以下の膜厚であることが好ましい。また、光吸収層の膜厚が薄い方がより小さいエネルギーの光で光吸収層全体を加熱することができる。よって、光吸収層102の膜厚は、10nm以上600nm以下の膜厚であることがより好ましい。例えば、波長532nmの光を照射した場合、光吸収層102の膜厚を50nm以上200nm以下の膜厚とすることにより、照射した光を効率良く吸収して発熱させることができる。
【0037】
なお、光吸収層102は、材料層103に含まれる材料の成膜可能温度(材料層103に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板へ成膜される温度)まで加熱できるのであれば、照射する光の一部が透過してもよい。
【0038】
材料層103は、被成膜基板上に成膜する材料を含んで形成される層である。そして、成膜用基板に光を照射することにより、材料層103に含まれる材料が加熱され、材料層103に含まれる材料の少なくとも一部が被成膜基板上に成膜される。材料層103が加熱されると、材料層103に含まれる材料の少なくとも一部が気化する、もしくは、材料層103の少なくとも一部に熱変形が生じ、その結果応力が変化するために膜が剥がれ、被成膜基板上に成膜されると考えられる。
【0039】
なお、材料層103に含まれる材料としては、成膜することが可能な材料であれば、有機化合物、無機化合物にかかわらず、種々の材料を用いることができる。本実施の形態で示すように発光素子のEL層を形成する場合には、EL層を形成する成膜可能な材料を用いる。例えば、EL層を構成する発光性材料、キャリア輸送性材料、キャリア注入性材料などの有機化合物の他、キャリア注入層や発光素子の電極などに用いられる金属酸化物、金属窒化物、ハロゲン化金属、金属単体といった無機化合物を用いることもできる。なお、EL層を形成する成膜可能な材料の詳細については、実施の形態5において詳述するので、それを参考にすることとし、ここでの説明は省略する。
【0040】
また、材料層103は、複数の材料を含んでいてもよい。また、材料層103は、単層でもよいし、複数の層が積層されていてもよい。従って、材料を含む層を複数積層することにより、共蒸着することも可能である。なお、材料層103が積層構造を有する場合には、第1の基板側に成膜可能な温度の低い材料を含むように積層することが好ましい。このような構成とすることにより、積層構造を有する材料層103による成膜を効率良く行うことができる。
【0041】
なお、材料層103としては、成膜の際に照射される光の吸収率が低い材料を用いることが好ましい。光の吸収率が低いことにより、照射された光により、所望の領域以外の材料層が加熱されることを抑制することができる。また、材料層に含まれる材料が光を吸収し、分解することを抑制することができる。また、材料層103に含まれる材料は、照射する光によって分解しない材料であることが好ましい。
【0042】
また、材料層103は、種々の方法により形成される。例えば、湿式法であるスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、又は印刷法等を用いることができる。また、乾式法である真空蒸着法、スパッタリング法等を用いることができる。
【0043】
湿式法を用いて材料層103を形成する場合には、所望の材料を溶媒に溶解あるいは分散させ、溶液あるいは分散液を調整すればよい。溶媒は、材料を溶解あるいは分散させることができ、且つ材料と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、或いはクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、或いはキシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、或いは炭酸ジエチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、或いはジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、或いはジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、又は水等を用いることができる。また、これらの溶媒複数種を混合して用いてもよい。湿式法を用いることにより、材料の利用効率を高めることができ、製造コストを低減させることができる。
【0044】
なお、材料層103によって被成膜基板上に形成される膜の膜厚および均一性を制御する場合には、材料層103の膜厚および均一性は制御される必要がある。しかし、被成膜基板上に形成される膜の膜厚および均一性に影響しないのであれば、材料層103は必ずしも均一の層である必要はない。例えば、微細な島状に形成されていてもよいし、凹凸を有する層状に形成されていてもよい。
【0045】
次に、図1(B)に示すように、第1の基板101の一方の面であって、光吸収層102、および材料層103が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板107を配置する。第2の基板107は、成膜処理により所望の層が成膜される被成膜基板である。なお、ここでは、成膜用基板を用いて発光素子のEL層を形成する場合について説明するため、第2の基板107上には、発光素子の一方の電極となる第1の電極108、および絶縁物109が形成されている。そして、第1の基板101と第2の基板107とを至近距離、具体的には第1の基板101上の材料層103の表面と、第2の基板107表面との距離dを、0mm以上2mm以下、好ましくは0mm以上0.05mm以下、さらに好ましくは0mm以上0.03mm以下となるように近づけて対向させる。特に、0μm以上3μm以下となるようにすることが望ましい。
【0046】
なお、距離dは、第1の基板101上の材料層103の表面と、第2の基板107表面との距離で定義する。従って、第2の基板107上に何らかの層(例えば、電極として機能する導電層や隔壁として機能する絶縁物等)が形成されている場合、距離dは、第1の基板101上の材料層103の表面と、第2の基板107上に形成された層の最表面との距離で定義する。ただし、第1の基板101上の材料層103の表面や、第2の基板107上に形成された層の最表面が凹凸を有する場合における距離dは、第1の基板101上の材料層103の表面と、第2の基板107上に形成された層の最表面との間の最も短い距離で定義することとする。
【0047】
次に、図1(C)に示すように第1の基板101の裏面(光吸収層102および材料層103が形成されていない面)側から光110を照射する。このとき、第1の基板101上に形成された光吸収層102に照射された光は吸収されるが、材料層103に照射された光は透過する。そして、光吸収層102が吸収した光を熱に変換し、その熱を、光吸収層102に接する領域の材料層103に含まれる材料に与えることにより、材料層103に含まれる材料の少なくとも一部を、第2の基板107上に形成された第1の電極108上に成膜する。これにより、第2の基板107上に発光素子のEL層111が形成される。
【0048】
照射する光としては、周波数10MHz以上、かつ、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を用いる。このように周波数が非常に大きく、パルス幅が非常に小さいレーザ光を用いることにより、光吸収層102における熱変換が効率よく行われ、材料を効率よく加熱することができる。
【0049】
また、レーザ光の波長は特に限定されず、様々な波長のレーザ光を用いることができる。例えば、355、515、532、1030、1064nmなどの波長のレーザ光を用いることができる。
【0050】
また、レーザ光には、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、上記固体レーザから発振される第2高調波や第3高調波、さらに高次の高調波を用いることもできる。なお、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、出力が比較的に安定している利点を有している。
【0051】
また、レーザスポットの形状は、線状または矩形状とすることが好ましい。線状または矩形状とすることにより、処理基板にレーザ光を効率よく走査することができる。よって、成膜に要する時間(タクトタイム)が短くなり、生産性が向上する。
【0052】
また、本発明では、照射された光源からの光による輻射熱を利用するのではなく、光源からの光を吸収した光吸収層102が材料層103に熱を与えることが特徴である。よって、光が照射された部分の光吸収層102から、基板などを介して面方向に熱が伝わることにより、所望の領域外に材料層103の範囲が広がることのないように、光の照射時間は短くすることが好ましい。また、材料層103に光が照射されることによる材料の分解を抑制するため、光の照射時間は短いことが好ましい。
【0053】
また、光照射による成膜は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。従って、成膜室内を5×10−3Pa以下、好ましくは10−6Pa以上10−4Pa以下の雰囲気とすることが好ましい。
【0054】
本発明で用いる周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光は、短時間のレーザ光の照射が可能であるため、熱の拡散を抑制することができ、微細なパターンの成膜が可能となる。また、周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光は、高出力が可能であるため、大面積を一度に処理することができ、成膜に要する時間を短縮することができる。よって、生産性を向上させることができる。
【0055】
また、図2(A)には、第1の基板101と第2の基板107との距離dが0mmの場合について示す。つまり、第1の基板101上に形成された材料層103と、第2の基板107上に形成された層のうちの最表層である絶縁物109とが接する場合について示す。このように距離dを小さくすることで、図2(B)に示すように光を照射した際に、第2の基板107上に成膜される膜の形状を精度良く形成することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、被成膜基板である第2の基板107上に第1の電極108が形成されており、第1の電極108上に成膜する場合について示したが、第1の電極108上にすでにEL層の一部が形成されている場合についても、本発明を適用することができる。例えば、第1の電極108上にEL層の一部(正孔注入層、正孔輸送層など)が形成された第2の基板107を用いて、本発明の成膜方法を適用して発光層を形成することができる。フルカラーの発光装置を作製する場合には、発光層を作り分ける必要があるため、本発明の成膜方法を用いることにより容易に発光層を作り分けることができる。また、精度良く発光層を作り分けることができる。
【0057】
なお、被成膜基板上に、すでに有機化合物などの熱安定性が低い材料が成膜されている場合には、すでに成膜されている膜に熱が伝わらないように、第1の基板101上の材料層103と第2の基板107の被成膜面が接しないようにすることが好ましい。
【0058】
また、本実施の形態では、第2の基板107が、第1の基板101の上方に位置する場合を図示したが、本発明はこれに限定されない。基板の設置する向きは適宜設定することができる。なお、第1の基板101を湿式法により形成する場合には、第1の基板101を湿式法で形成した後に反転させる必要がなくなるため、第1の基板101の上方に第2の基板107を配置することが好ましい。
【0059】
本発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また、所望の領域のみに成膜することが可能であるため、微細パターンの形成が可能となる。
【0060】
また、本発明を適用することにより、微細パターンの形成が可能となるため、高精細な発光装置を作製することができる。
【0061】
また、本発明に係る成膜用基板は光吸収層および材料層を設ければよいため、成膜用基板の作製が容易である。また構成がシンプルであるため、成膜用基板を作製するためのコストを低くすることができる。
【0062】
また、本発明に係る成膜用基板において、光吸収層と接しているのは、材料層と支持基板であるため、成膜用基板に光を照射した際に、光吸収層から面方向への熱の拡散を抑制することができる。よって、所望のパターン以外に成膜されてしまうボケを抑制することができる。特に、支持基板として熱伝導率の低い材料を用いることにより、成膜パターンのボケをさらに抑制することができる。
【0063】
また、本発明の成膜方法は、あらかじめ材料層を形成した成膜用基板を用意しておき、成膜用基板を入れ替えることによって、被成膜基板に次々と成膜することができる。よって、本発明を適用することにより、発光装置の製造などに要する時間(タクトタイム)を短くし、生産性を向上させることができる。
【0064】
また、一度成膜に用いた成膜用基板は、材料層を除去し、再度新しい材料層を形成することにより、複数回使用することができる。よって、発光装置の作製におけるコストを削減することができる。本発明に係る成膜用基板は、支持基板として、ガラス基板や石英基板を用いている。これらの基板は、フィルム基板などよりも不純物(水分など)が吸着または付着しにくい。よって、本発明に係る成膜用基板は再利用に好適である。
【0065】
また、本発明は、湿式法を用いてEL層を形成する場合とは異なり、すでに形成された層の溶解性等を考慮する必要がないため、成膜する材料の種類の選択肢が広がる。また、積層する層の数についても自由に設定できる。よって、所望の材料を用いて、所望の積層構造の発光装置を作製することができる。特に、基板が大型化した場合において、用いる材料の種類や積層構造を自由に設計できるということは、発光装置の性能を向上させる点において、重要である。
【0066】
また、本発明は、成膜用基板と被成膜基板との距離が小さい状態で成膜する。よって、成膜用基板上に設けられた材料層の多くが被成膜基板上に成膜されるため、材料の利用効率が高い。よって、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜用基板と被成膜基板との距離が小さい状態で成膜するため、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを容易にすることができる。
【0067】
また、本発明では、光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を一括して成膜することが可能となる。よって、発光装置の製造に要する時間(タクトタイム)を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0068】
また、本発明を適用することにより、第1の基板上に形成された材料層の膜厚を制御することによって、被成膜基板である第2の基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができる。つまり、第1の基板上に形成された材料層に含まれる材料を全て成膜することにより第2の基板上に形成される膜が所望の膜厚となるように予め材料層の膜厚が制御されているため、第2の基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よって、膜厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0069】
また、本発明を適用することにより、第1の基板上に形成された材料層103に含まれる材料を均一に成膜することができる。また、材料層103が複数の材料を含む場合でも、材料層103と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板である第2の基板上に成膜することができる。従って、本発明に係る成膜方法は、気化する温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、共蒸着のようにそれぞれ蒸着レートを制御する必要がない。そのため、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0070】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示した成膜用基板とは異なる構成の成膜用基板を用いて成膜する方法について、図3を用いて説明する。
【0071】
図3(A)に示す構造は、第1の基板101上に、それぞれ膜厚の異なる光吸収層102A、102B、及び102Cが形成されている。そして、光吸収層に接するように材料層103が形成されている。図3(A)においては、材料層103は、第1の基板101の全面に形成されている。
【0072】
図3(A)において、光吸収層102Aは照射される光が透過しない膜厚である。このとき、光吸収層102Aは照射された光のx%を吸収するとする。光吸収層102Bは光吸収層102Aよりも薄く、照射される光が一部透過する膜厚である。よって、光吸収層102Bは光吸収層102Aよりも吸収率が低くなり、照射された光のy%(ただしx>y)を吸収する。光吸収層102Cは光吸収層102Bよりもさらに薄く、照射される光が一部透過する膜厚である。よって、光吸収層102Cは光吸収層102Bよりもさらに吸収率が低くなり、照射された光のz%(ただしx>y>z)を吸収する。つまり、光吸収層102A、102B、102Cはそれぞれ、照射される光の吸収率が異なる。
【0073】
このような構成の成膜用基板を用い、図3(B)に示すように第1の基板101と第2の基板107を対向させ、成膜したい領域と光吸収層とが対応するように配置する。そして、図3(C)に示すように、第1の基板101側から光を照射すると、光吸収層102A、102B、及び102Cの膜厚に応じて、膜厚の異なるEL層111A、111B、及び111Cが成膜される。
【0074】
つまり、照射される光が透過しない(照射される光のx%を吸収する)膜厚である光吸収層102Aは、吸収した光を全て熱に変換し、その熱を材料層103に伝える。光吸収層102Bは、照射された光のうち、一部を透過し、y%(ただしx>y)を吸収し、熱に変換する。よって、光吸収層102Bで生じた熱量は、光吸収層102Aよりも少ない熱量となり、その結果、材料層103に与えられる熱量も小さくなり、成膜される材料の量も少なくなる。そのため、成膜されたEL層111Bの膜厚はEL層111Aの膜厚よりも小さくなる。
【0075】
また、光吸収層102Cは、照射された光のうち、一部を透過し、z%(ただしx>y>z)を吸収し、熱に変換する。よって、光吸収層102Cで生じた熱量は、光吸収層102Bよりもさらに少ない熱量となり、その結果、材料層103に与えられる熱量もさらに小さくなり、成膜される材料の量も少なくなる。そのため、成膜されたEL層111Cの膜厚はEL層111Bの膜厚よりもさらに小さくなる。
【0076】
よって、光吸収層102A、102B、及び102Cの膜厚を変化させることにより、一回の成膜工程において、膜厚の異なる膜を成膜することができる。つまり、成膜工程を増やさずに、異なる膜厚の膜を成膜することができる。また、材料層103の膜厚を変化させることなく、成膜される膜の膜厚を制御することができる。また、照射する光の強度を変化させることなく、成膜される膜の膜厚を制御することができる。よって、成膜される膜の膜厚の制御を容易に行うことができる。
【0077】
よって、発光装置を作製する際に、本実施の形態に示す成膜方法を用いることで、成膜工程を増やさずに、各発光色の発光素子において共通に用いられる層の膜厚を異ならせることができる。より具体的には、各発光色の発光素子において共通に用いられる正孔注入層や正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層を成膜する際に、各発光色の発光素子において、膜厚を異ならせることができる。例えば、フルカラーの発光装置の場合、光学設計を考慮すると、発光波長によって発光領域と反射電極との間の距離の最適値は異なる。しかしながら、各発光色によって、発光層と反射電極との間の層を作り分けることは成膜工程が増えるため、発光装置の製造にかかる時間が増えてしまう。また、発光装置の製造コストも大きくなってしまう。
【0078】
本実施の形態に示す成膜法を用いることにより、同じ材料が含まれ、異なる膜厚の層を一回の成膜工程で成膜できる。そのため、工程数を減らすことができ、発光装置の製造コストを低減することができる。また、発光装置の製造にかかる時間(タクトタイム)を低減することができる。
【0079】
また、本実施の形態に示す成膜方法を用いることにより、複数の発光素子を有する発光装置において、各発光色の発光素子の構造を最適化することが容易にできる。例えば、フルカラーの発光装置を作製する際に、マイクロキャビティー効果が得られるように、RGBの各発光素子において、EL層の膜厚が異なるように形成することが容易にできる。
【0080】
本発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また、所望の領域のみに成膜することが可能であるため、微細パターンの形成が可能となる。
【0081】
また、本発明を適用することにより、微細パターンの形成が可能となるため、高精細な発光装置を作製することができる。
【0082】
また、本発明に係る成膜用基板は光吸収層および材料層を設ければよいため、成膜用基板の作製が容易である。また構成がシンプルであるため、成膜用基板を作製するためのコストを低くすることができる。
【0083】
また、本発明に係る成膜用基板において、光吸収層と接しているのは、材料層と支持基板であるため、成膜用基板に光を照射した際に、光吸収層から面方向への熱の拡散が抑制することができる。よって、所望のパターン以外に成膜されてしまうボケを抑制することができる。特に、支持基板として熱伝導率の低い材料を用いることにより、成膜パターンのボケをさらに抑制することができる。
【0084】
また、本発明の成膜方法は、あらかじめ材料層を形成した成膜用基板を用意しておき、成膜用基板を入れ替えることによって、被成膜基板に次々と成膜することができる。よって、本発明を適用することにより、発光装置の製造などの要する時間(タクトタイム)を短くし、生産性を向上させることができる。
【0085】
また、一度成膜に用いた成膜用基板は、材料層を除去し、再度新しい材料層を形成することにより、複数回使用することができる。よって、発光装置の作製におけるコストを削減することができる。本発明に係る成膜用基板は、支持基板として、ガラス基板や石英基板を用いている。これらの基板は、フィルム基板などよりも不純物(水分など)が吸着または付着しにくい。よって、本発明に係る成膜用基板は再利用に好適である。
【0086】
また、本発明は、湿式法を用いてEL層を形成する場合とは異なり、すでに形成された層の溶解性等を考慮する必要がないため、成膜する材料の種類の選択肢が広がる。また、積層する層の数についても自由に設定できる。よって、所望の材料を用いて、所望の積層構造の発光装置を作製することができる。特に、基板が大型化した場合において、用いる材料の種類や積層構造を自由に設計できるということは、発光装置の性能を向上させる点において、重要である。
【0087】
また、本発明は、成膜用基板と被成膜基板との距離が小さい状態で成膜する。よって、成膜用基板上に設けられた材料層の多くが被成膜基板上に成膜されるため、材料の利用効率が高い。よって、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜用基板と被成膜基板との距離が小さい状態で成膜するため、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを容易にすることができる。
【0088】
また、本発明では、光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を一括して成膜することが可能となる。よって、発光装置の製造に要する時間(タクトタイム)を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0089】
また、本実施の形態では、第2の基板107が、第1の基板101の上方に位置する場合を図示したが、本発明はこれに限定されない。基板の設置する向きは適宜設定することができる。なお、第1の基板101を湿式法により形成する場合には、第1の基板101を湿式法で形成した後に反転させる必要がなくなるため、第1の基板101の上方に第2の基板107を配置することが好ましい。
【0090】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0091】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2で説明した成膜用基板を複数用いて、発光素子のEL層を形成することにより、フルカラー表示が可能な発光装置の作製方法について説明する。
【0092】
実施の形態1および実施の形態2では、1回の成膜工程で、被成膜基板である第2の基板上に形成された複数の電極上には、全て同一の材料からなるEL層を形成する場合について示したが、本実施の形態では、第2の基板上に形成された複数の電極上には、3種類の発光の異なるEL層のいずれかが形成される場合について説明する。
【0093】
まず、実施の形態1および実施の形態2に示した成膜用基板を用意する。例えば、図1(A)に示した成膜用基板を3枚用意する。それぞれの成膜用基板には、発光の異なるEL層を形成するための材料層が形成されている。具体的には、赤色発光を示すEL層(EL層(R))を形成するための材料を含む材料層(R)を有する第1の成膜用基板と、緑色発光を示すEL層(EL層(G))を形成するための材料を含む材料層(G)を有する第2の成膜用基板と、青色発光を示すEL層(EL層(B))を形成するための材料を含む材料層(B)を有する第3の成膜用基板とを用意する。
【0094】
また、実施の形態1において図1(B)に示した複数の第1の電極を有する被成膜基板を1枚用意する。なお、被成膜基板上の複数の第1の電極は、その端部が絶縁物で覆われているため、発光領域は、第1の電極の一部であって、絶縁物と重ならずに露呈している領域に相当する。
【0095】
まず、1回目の成膜工程として、図1(B)と同様に被成膜基板と第1の成膜用基板とを重ね、位置合わせをする。なお、被成膜基板には、位置合わせ用のマーカを設けることが好ましい。また、第1の成膜用基板にも位置合わせ用のマーカを設けることが好ましい。なお、第1の成膜用基板には、光吸収層が設けられているため、位置合わせのマーカ周辺の光吸収層は予め除去しておくことが好ましい。また、第1の成膜用基板には、材料層(R)が設けられているため、位置合わせのマーカ周辺の材料層(R)も予め除去しておくことが好ましい。
【0096】
そして、第1の成膜用基板の裏面(図1に示す光吸収層102および材料層103が形成されていない面)側から光を照射する。光吸収層が、照射された光を吸収して材料層(R)に熱を与えることで、材料層(R)に含まれる材料を加熱し、被成膜基板上の一部の第1の電極上にEL層(R)を形成する。そして、1回目の成膜を終えたら、第1の成膜用基板は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0097】
次いで、2回目の成膜工程として、被成膜基板と第2の成膜用基板とを重ね、位置合わせをする。第2の成膜用基板には、1回目の成膜時で使用した第1の成膜用基板とは1画素分ずらして光吸収層が形成されている。
【0098】
そして、第2の成膜用基板の裏面(図1に示す光吸収層102および材料層103が形成されていない面)側から光を照射する。光吸収層が、照射された光を吸収して材料層(G)に熱を与えることで、材料層(G)に含まれる材料を加熱し、被成膜基板上の一部であって、1回目の成膜でEL層(R)が形成された第1の電極のとなりの第1の電極上にEL層(G)が形成する。そして、2回目の成膜を終えたら、第2の成膜用基板は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0099】
次いで、3回目の成膜工程として、被成膜基板と第3の成膜用基板とを重ね、位置合わせをする。第3の成膜用基板には、1回目の成膜時で使用した第1の成膜用基板とは2画素分ずらして光吸収層が形成されている。
【0100】
そして、第3の成膜用基板の裏面(図1に示す光吸収層102および材料層103が形成されていない面)側から光を照射する。この3回目の成膜を行う直前の様子が図4(A)の上面図に相当する。なお、図4(A)において、光吸収層上に形成されている材料層は省略している。図4(A)において、光吸収層401は島状に形成されており、開口部402を有する。そして、被成膜基板の第3の成膜用基板の光吸収層401と重なる領域には、第1の電極が形成されている。なお、図4(A)中に点線で示した領域の下方には、既に1回目の成膜により形成されたEL層(R)411と2回目の成膜により形成されたEL層(G)412が位置している。
【0101】
そして、3回目の成膜により、EL層(B)413が形成される。成膜用基板に照射された光は、光吸収層が形成されていない領域(開口部402)においては吸収されず、材料層を透過する。一方、光吸収層401が形成された領域では、光吸収層401が照射された光を吸収し、材料層(B)に熱を与えることで、材料層(B)に含まれる材料を加熱し、被成膜基板上の一部であって、2回目の成膜でEL層(G)412が形成された第1の電極のとなりの第1の電極上にEL層(B)413が形成される。3回目の成膜を終えたら、第3の成膜用基板は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0102】
こうしてEL層(R)411、EL層(G)412、EL層(B)413を一定の間隔をあけて同一の被成膜基板上に形成することができる。そして、これらの層上に第2の電極を形成することによって、発光素子を形成することができる。
【0103】
以上の工程で、同一基板上に異なる発光を示す発光素子が形成されることにより、フルカラー表示が可能な発光装置を形成することができる。
【0104】
図4では、成膜用基板に形成された光吸収層401の形状を矩形とした例を示したが、特に限定されず、ストライプ状としても良い。ストライプ状とした場合、同じ発光色となる発光領域の間にも成膜が行われるが、絶縁物414の上に形成されるため、絶縁物414と重なる部分は発光領域とはならない。
【0105】
また、画素の配列も特に限定されず、図5(A)に示すように、1つの画素形状を多角形、例えば六角形としてもよく、EL層(R)511、EL層(G)512、EL層(B)513を配置してフルカラーの発光装置を実現させることもできる。なお、図5(A)に示す多角形の画素を形成するために、図5(B)に示す多角形の光吸収層501を有する成膜用基板を用いて成膜すればよい。
【0106】
本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また、微細なパターン形成が可能となり、所望のパターン以外へ成膜されてしまうボケを抑制することができる。よって、高精細な発光装置を得ることができる。
【0107】
本発明の発光装置の作製方法は、あらかじめ材料層を形成した成膜用基板を用意しておき、成膜用基板を入れ替えることによって、被成膜基板に次々と成膜することができる。よって、本発明を適用することにより、発光装置の製造に要する時間(タクトタイム)を短くし、生産性を向上させることができる。
【0108】
また、一度成膜に用いた成膜用基板は、材料層を除去し、再度新しい材料層を形成することにより、複数回使用することができる。よって、発光装置の作製におけるコストを削減することができる。本発明に係る成膜用基板は、支持基板として、ガラス基板や石英基板を用いている。これらの基板は、フィルム基板などよりも不純物(水分など)が吸着または付着しにくい。よって、本発明に係る成膜用基板は再利用に好適である。
【0109】
また、本発明は、湿式法を用いてEL層を形成する場合とは異なり、すでに形成された層の溶解性等を考慮する必要がないため、成膜する材料の種類の選択肢が広がる。また、積層する層の数についても自由に設定できる。よって、所望の材料を用いて、所望の積層構造の発光装置を作製することができる。特に、基板が大型化した場合において、用いる材料の種類や積層構造を自由に設計できるということは、発光装置の性能を向上させる点において、重要である。
【0110】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明を適用することにより、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可能である。よって、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを簡便にすることができる。
【0111】
また、本発明では、光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を一括して成膜することが可能となる。よって、発光装置の製造に要する時間(タクトタイム)を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0112】
本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、成膜用基板に形成される材料層の膜厚を制御することによって、被成膜基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができる。つまり、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる材料を全て成膜することにより被成膜基板上に形成される膜が所望の膜厚となるように予め材料層の膜厚が制御されているため、被成膜基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よって、膜厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0113】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明を適用することにより、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる材料を均一に成膜することができる。また、材料層が複数の材料を含む場合でも、材料層と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板上に成膜することができる。従って、本発明に係る成膜方法は、気化する温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0114】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、実施の形態2で示した成膜用基板を用いた場合、同じ材料が含まれ、異なる膜厚の層を一回の成膜工程で成膜できる。よって、実施の形態2で示した成膜用基板を用いることにより、成膜工程を増やさずに、各発光色の発光素子において共通に用いられる層の膜厚を異ならせることができる。より具体的には、各発光色の発光素子において共通に用いられる正孔注入層や正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層を成膜する際に、各発光色の発光素子において、膜厚を異ならせ、最適化することができる。そのため、発光装置の性能(効率、色再現性など)を向上させることができる。例えば、フルカラーの発光装置を作製する際に、マイクロキャビティー効果が得られるように、RGBの各発光素子において、EL層の膜厚が異なるように形成することが容易にできる。
【0115】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0116】
(実施の形態4)
本実施の形態では、成膜用基板にレーザを照射させることにより成膜を行う成膜装置の例およびレーザを照射する方法について説明する。
【0117】
図6は、成膜装置の概要の一例を示す上面図である。図6に示す成膜装置は、ロード室701と、該ロード室と連結する共通室702と、該共通室に連結する複数の処理室711〜718を有している。各処理室は共通室702とゲート弁731〜738を介してそれぞれ連結されている。
【0118】
図6に示す成膜装置は、共通室702において被成膜基板に成膜を行う構成であるので、水分などが混入しないように、真空排気手段を設け、真空排気して共通室702を真空にしておくことが好ましい。共通室702の内壁に用いる材料としては、その表面積を小さくすることで酸素や水等の不純物の吸着性を小さくすることができるので、電解研磨を施して鏡面化させたアルミニウムやステンレス(SUS)等を内部壁面に用いる。これにより、共通室702内部の真空度を10−4Pa〜10−6Paの範囲に維持することができる。また、気孔がきわめて少なくなるように処理されたセラミックス等の材料を内部部材に用いる。なお、これらは、中心線平均粗さが3nm以下となる表面平滑性を有するものが好ましい。
【0119】
また、共通室702のメンテナンスのため、不活性ガス(窒素など)を導入して共通室内を大気圧にする不活性ガス導入系と連結されている。
【0120】
また、共通室702には、レーザ光源から射出されたレーザ光を共通室内部に導入するための窓820を下部に有している。
【0121】
ここで成膜時における窓820とレーザ発振装置803との位置関係を示す模式図を図7に示す。
【0122】
まず、第2の基板801である被成膜基板をロード室701からゲート弁730を介して共通室702に搬入し、第2の基板801の被成膜面が下になるように配置する。ロード室には、ゴミの付着を低減するため、第2の基板801の被成膜面が下になるように基板カセットなどに複数枚セットされる。第2の基板801を予め真空ベークを行うことが好ましいため、ロード室に真空ベーク機構を具備させる。第2の基板に付着している水分などを除去するための真空ベーク室をロード室701と共通室702との間に設置することが好ましい。
【0123】
また、予め選択的に設けられた光吸収層814と、第1の材料層815とを有する第1の基板832を第2の基板801と対向して間隔dを維持して配置する。光吸収層814は、耐熱性金属を用いることが好ましく、例えばチタンやタングステンやタンタルやモリブデンなどを用い、単層またはそれらの積層を用いることができる。ここでは金属窒化物である窒化チタンを用いる。図7においては光吸収層814の形状はライン形状とした例を示したが特に限定されず、ドット状であってもよいし、第2の基板に設けられた第1の電極の形状と同じ形状でもよい。なお、第1の基板832の第1の材料層が設けられた面を上となるようにし、第2の基板801の被成膜面と対向させる。位置合わせ手段により第2の基板801と第1の基板832は位置合わせ(アライメント)が行われ、一定の間隔d、好ましくは5mm以下をあけて保持する。
【0124】
また、第2の基板801には予め複数の第1の電極が設けられているが、さらに第1の電極間を電気的に絶縁するための隔壁となる絶縁物が設けられている場合には、絶縁物と第1の材料層815を接触させて配置してもよい。
【0125】
また、一定の間隔dに保持したまま、一対の基板を移動させてレーザ光を走査する。ここでは、基板移動手段により、長方形の窓の長辺方向または短辺方向に一対の基板を移動させる。ここでは基板を移動してレーザ光を走査する例を示すが、特に限定されず、基板を固定し、レーザ光を移動させて走査を行ってもよい。
【0126】
また、第1の基板832には、光吸収層814と同じ材料で位置マーカ812が設けられており、位置マーカ812を認識するための撮像素子808によって走査の基準位置を認識させる。CCDなどの撮像素子808の視野を遮らないような装置構成とすることが好ましい。なお、第1の基板の下方からの認識となるため、補助するための照明光を第1の基板832に照射してもよい。撮像素子808は、窓820を介して位置マーカ812を認識している例を示したが特に限定されず、別途窓を設けてもよいし、チャンバー内部に撮像素子を設ける構成としてもよい。
【0127】
射出されるレーザ光はレーザ発振装置803から出力され、ビーム形状を矩形状とするための第1の光学系804と、整形するための第2の光学系805と、平行光線にするための第3の光学系806とを通過し、反射ミラー807で光路が第1の基板832に対して垂直となる方向に曲げられる。その後、光透過する窓820及び第1の基板832にレーザビームを通過させて、レーザビームを光吸収層814に照射する。窓820をレーザビーム幅と同じまたはそれより小さいサイズとしてスリットとして機能させることもできる。
【0128】
レーザ発振装置803は、周波数10MHz以上、かつ、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を射出する。レーザ光の波長は特に限定されず、様々な波長のレーザ光を用いることができる。例えば、355、515、532、1030、1064nmなどの波長のレーザ光を用いることができる。また、レーザ光には、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いる。また、上記固体レーザから発振される第2高調波や第3高調波、さらに高次の高調波を用いることもできる。なお、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、出力が比較的に安定している利点を有している。
【0129】
また、レーザスポットの形状は、線状または矩形状とすることが好ましい。線状または矩形状とすることにより、処理基板にレーザ光を効率よく走査することができる。よって、成膜に要する時間(タクトタイム)が短くなり、生産性が向上する。
【0130】
また、制御装置816は、一対の基板を移動させる基板移動手段も制御できるように連動させることが好ましい。さらに、制御装置816は、レーザ発振装置803も制御できるように連動させることが好ましい。さらに、制御装置816は、位置マーカ812を認識するための撮像素子808を有する位置アライメント機構と連動させることが好ましい。
【0131】
レーザ光の走査が終わると、第1の基板832においては、光吸収層814と重なる第1の材料層815が消失し、対向して配置されていた第2の基板801に選択的に成膜が行われる。なお、第1の基板832において、光吸収層814と重ならない第1の材料層815は残存したままである。レーザ光の走査を終えた第1の基板832は回収し、残存した第1の材料層を除去すれば、再度使用することができる。
【0132】
次いで、積層を行う手順を、図6を用いて説明する。例えば、第1の基板832に設けられた第1の材料層を加熱することによって第2の基板の第1の電極上に得られる層が正孔注入層である場合、上述した手順でレーザ光の走査を行って第2の基板801に選択的に正孔注入層を形成した後、予め第2の材料層が形成された第3の基板833と第2の基板801とを位置合わせを行い、一定の間隔で保持する。この位置合わせは、第1の基板と第2の基板とを位置合わせする装置と同一装置を用いて行う。同じ位置合わせ装置を用いるため、位置ズレを抑えることができる。
【0133】
共通室702に連結した処理室711は、第1の基板上に第1の材料層を成膜する成膜処理室とする。また、共通室702に連結した処理室712は、第3の基板833に第2の材料層を成膜する成膜処理室とする。第3の基板833にも第2の材料層と基板面との間に光吸収層を設ける。第3の基板833に設けられた第2の材料層を加熱することによって第2の基板の正孔注入層と重なる位置に得られる層は正孔輸送層とする。
【0134】
なお、共通室702には搬送ロボットアームなどの搬送ユニット720、721が設けられており、第2の基板や第1の基板などを搬送する搬送ユニットを用いて、共通室と各処理室との間の搬送を行う。
【0135】
第3の基板833と第2の基板801とを位置合わせを行った後、レーザ光の走査を行い、第2の基板の正孔注入層と重なる位置に正孔輸送層が積層される。なお、第3の基板833において、光吸収層と重ならない第2の材料層は残存したままである。レーザ光の走査を終えた第3の基板は回収し、残存した第2の材料層を除去すれば、再度使用することができる。
【0136】
以上の手順で積層を行うことができる。正孔注入層の成膜終了と、正孔輸送層の成膜開始の間の時間を短縮したい場合、共通室にレーザ光の走査を終えた第1の基板を一時的に置いておく場所、例えば基板カセットなどを設けておけば、正孔注入層が露呈している時間を短縮することができる。第1の基板と第3の基板をほぼ同時に共通室に搬入しておき、1回目のレーザ光の走査を行い、レーザ光の走査を終えた第1の基板を基板カセットに移動し、予め搬入されている第3の基板を第2の基板と位置合わせを行って2回目のレーザ光の走査を行うことができる。この場合、2層の成膜処理間に共通室のゲート弁の開閉が行われないため、共通室の真空度を維持し、不純物の汚染も防止できる。
【0137】
さらに、フルカラーの発光装置を作製するため、赤色発光層、緑色発光層、及び青色発光層をそれぞれ間隔を空けて選択的に成膜する。この手順を、図8を用いて説明する。
【0138】
上述した工程により、第1の基板832と第3の基板833を用いて2回のレーザ走査を行うことで、第2の基板801に設けられた第1の電極821に正孔注入層823、及び正孔輸送層824が積層される。なお、第2の基板801には第1の電極821の端部を覆い、隣り合う第1の電極間の絶縁性を確保するための隔壁822が設けられる。
【0139】
この第2の基板801と第4の基板834の位置合わせを行い、第4の基板834と第2の基板801を対向して配置し、一定の基板間隔を保持したまま3回目のレーザ走査を行う途中の断面模式図が図8(A)に相当する。
【0140】
第4の基板834には予め、選択的に形成された光吸収層604と、第3の材料層605が形成されている。この第3の材料層605は、処理室713で第4の基板834に成膜を行い、共通室に搬入される。
【0141】
図8(A)に示すように、レーザ光840の照射により、第3の材料層605が部分的に加熱され、正孔輸送層824と重なる位置に赤色の発光層825が選択的に成膜される。
【0142】
次いで、レーザ光の走査を終えた第4の基板834を移動し、第2の基板801と第5の基板835の位置合わせを行い、第5の基板835と第2の基板801を対向して配置する。そして、一定の基板間隔を保持したまま4回目のレーザ走査を行う途中の断面模式図が図8(B)に相当する。
【0143】
第5の基板835には予め、選択的に形成された光吸収層614と、第4の材料層615が形成されている。この第4の材料層615は、処理室714で第5の基板835に成膜を行い、共通室に搬入される。
【0144】
図8(B)に示すように、レーザ光840の照射により、第4の材料層615が部分的に加熱され、正孔輸送層824と重なる位置に緑色の発光層826が選択的に成膜される。
【0145】
次いで、レーザ光の走査を終えた第5の基板835を移動し、第2の基板801と第6の基板836の位置合わせを行い、第6の基板836と第2の基板801を対向して配置する。そして、一定の基板間隔を保持したまま5回目のレーザ走査を行う途中の断面模式図が図8(C)に相当する。
【0146】
第6の基板836には予め、選択的に形成された光吸収層624と、第5の材料層625が形成されている。この第5の材料層625は、処理室715で第6の基板836に成膜を行い、共通室に搬入される。
【0147】
図8(C)に示すように、レーザ光840の照射により、第5の材料層625が部分的に加熱され、正孔輸送層824と重なる位置に青色の発光層827が選択的に成膜される。
【0148】
以上の手順で、赤色発光層、緑色発光層、及び青色発光層をそれぞれ間隔を空けて選択的に成膜することができる。
【0149】
発光層の成膜終了と、次の発光層の成膜開始の間の時間を短縮したい場合、共通室にレーザ光の走査を終えた第4の基板、第5の基板、及び第6の基板を一時的に置いておく場所、例えば基板カセットなどを設けておけば、各発光層が露呈している時間を短縮することができる。第4の基板、第5の基板、及び第6の基板をほぼ同時に共通室に搬入しておき、3回目のレーザ光の走査を行い、レーザ光の走査を終えた第4の基板を基板カセットに移動し、予め搬入されている第5の基板を第2の基板と位置合わせを行って4回目のレーザ光の走査を行うことができる。さらに、レーザ光の走査を終えた第5の基板を基板カセットに移動し、予め搬入されている第6の基板を第2の基板と位置合わせを行って5回目のレーザ光の走査を行うことができる。この場合、3層の成膜処理間に共通室のゲート弁の開閉が行われないため、共通室の真空度を維持し、不純物の汚染も防止できる。
【0150】
この後、第6の材料層が形成された第7の基板837を用いて、6回目のレーザ走査を行い、それぞれの発光層に重なる電子輸送層を選択的に形成する。この第6の材料層は、処理室716で第7の基板837に成膜を行い、共通室に搬入される。
【0151】
さらに第7の材料層が形成された第8の基板838を用いて、7回目のレーザ走査を行い、電子輸送層に重なる電子注入層を選択的に形成する。この第7の材料層は、処理室717で第8の基板838に成膜を行い、共通室に搬入される。
【0152】
勿論、電子輸送層の成膜終了と、次の電子注入層の成膜開始の間の時間を短縮したい場合、共通室にレーザ光の走査を終えた第7の基板837及び第8の基板838を一時的に置いておく場所、例えば基板カセットなどを設けておけば、各発光層が露呈している時間を短縮することができる。
【0153】
被成膜基板とは異なる基板に予め成膜した材料層をレーザ光で加熱する成膜方法は、成膜に必要な量を制限し、従来の抵抗加熱法よりも蒸発する材料の量を少なく抑えているため、成膜を行う共通室に複数の搬送ロボットや位置合わせ手段や基板移動手段などを設置することができる。また、被成膜基板とは異なる基板に予め成膜した材料層をレーザ光で加熱する成膜方法は、異なる発光層を同一の処理室で成膜しても異なる発光材料が混ざることを防止することができる。
【0154】
また、第1および第3乃至第8の基板を一時的に置いておく場所、例えば基板カセットなどを設けておけば、第2の基板を共通室に搬入する際、ほぼ同時に共通室内に第1および第3乃至第8の基板を搬入することができる。成膜しようとする層と同じ枚数の基板を用意すれば、短時間に成膜を行うことができる。
【0155】
次いで、上述した積層を行った第2の基板に第2の電極を形成することで、少なくとも第1の電極と第2の電極とそれらの間に発光層を有する発光素子を作製する。なお、第2の電極は、スパッタ法または電子ビーム法などを用いて成膜を行う。この第2の電極の形成も共通室で行うことが好ましく、スパッタ法を用いる場合、共通室にはさらにプラズマ発生手段を有し、スパッタリングターゲットと、材料ガスを導入する手段を設ける。また、第2の電極形成時に窓820に成膜されるのを防ぐためのシャッター機構を設けておくことが好ましい。
【0156】
また、処理室718にスパッタターゲットをストックしておき、第2の電極の形成前に共通室にターゲットを移動し、共通室でスパッタ成膜を可能とする構成としてもよい。その場合、共通室にターゲットを移動させる手段を設ける。
【0157】
また、第2の電極を形成した後、搬送ユニット721を用いてゲート弁740を介し受渡室703へ搬入し、さらにゲート弁741を介して封止室704に搬送する。封止室704で封止を終えた基板は、ゲート弁742を介してアンロード室705に搬送され、成膜装置外に取り出すことができる。以上の手順で発光素子(EL素子とも呼ぶ)を作製することができる。
【0158】
また、ここでは第1の電極と第2の電極の間に設けるEL層を5層、即ち、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の積層とする例を示したが、特に限定されず、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の積層としてもよく、実施者が発光材料や発光効率などを考慮して適宜設計すればよい。
【0159】
また、処理室718は、レーザ光照射後の基板をストックするためのストック室としてもよい。処理室718は、レーザ光照射後の基板をストックするためのストック室とし、第2の電極を形成した第2の基板を受渡室703に搬入すると同時に、レーザ光照射後の基板を共通室702から搬出して処理室718に移動させることが好ましい。こうすることによって共通室に搬入される次の第2の基板への成膜がスムーズに行える。
【0160】
また、処理室718は、レーザ照射前の第1および第3乃至第8の基板をストックしておくストック室としてもよい。
【0161】
また、上記手順では、共通室で第2の電極を形成する例を示したが、処理室718を第2の電極形成のための成膜処理室としてもよい。
【0162】
なお、図6では共通室に搬送ユニットを2つしか図示していないが、特に限定されず、第1および第3乃至第8の基板を効率よく搬送するためにさらに増設してもよい。また、処理室711〜718内に搬送ユニットを設けてもよい。
【0163】
また、図6ではロード室701から基板を入れ、アンロード室705から搬出する成膜装置となっているが、特に限定されず、各処理室711〜717にゲート弁を介してロード室を設けてもよい。光吸収層を設けた基板(第1および第3乃至第8の基板)を各処理室に設けられたロード室から搬入してもよい。
【0164】
また、各処理室711〜717でスピンコート法などにより塗布法で材料層の成膜を行う場合、焼成を行うためのベーク室を共通室と処理室の間に設けることが好ましい。スピンコート法はフェイスアップ方式で材料層の成膜が行われ、基板を反転することなく、共通室に搬入し、第2の基板と位置合わせが行えるため、作業効率がよい。
【0165】
また、各処理室711〜717で蒸着法などのフェイスダウン方式で材料層の成膜を行う場合、搬送ユニットに反転機構を具備させればよいが、処理室718に基板反転ユニットを設け、反転室として機能させてもよい。
【0166】
このような成膜装置を用い、発光装置を作製することが可能である。本実施の形態で示した成膜装置を用い、あらかじめ材料層を形成した成膜用基板を用意しておき、成膜用基板を入れ替えることによって、被成膜基板に次々と成膜することができる。よって、成膜に要する時間(タクトタイム)を短くし、生産性を向上させることができる。
【0167】
また、本発明を適用することより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能となる。また、微細なパターン形成が可能となり、所望のパターン以外へ成膜されてしまうボケを抑制することができる。よって、高精細な発光装置を得ることができる。
【0168】
また、本発明は、湿式法を用いてEL層を形成する場合とは異なり、すでに形成された層の溶解性等を考慮する必要がないため、成膜する材料の種類の選択肢が広がる。また、積層する層の数についても自由に設定できる。よって、所望の材料を用いて、所望の積層構造の発光装置を作製することができる。特に、基板が大型化した場合において、用いる材料の種類や積層構造を自由に設計できるということは、発光装置の性能を向上させる点において、重要である。
【0169】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明を適用することにより、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可能である。よって、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを簡便にすることができる。
【0170】
また、本発明では、光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を一括して成膜することが可能となる。よって、発光装置の製造に要する時間(タクトタイム)を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0171】
また、本発明では、成膜用基板に形成される材料層の膜厚を制御することによって、被成膜基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができるため、被成膜基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よって、膜厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0172】
また、本発明を適用することにより、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる材料を均一に成膜することができる。また、材料層が複数の材料を含む場合でも、材料層と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板上に成膜することができる。従って、本発明に係る成膜方法は、気化する温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0173】
また、実施の形態2で示した成膜用基板を用いて発光装置を作製した場合、同じ材料が含まれ、異なる膜厚の層を一回の成膜工程で成膜できる。よって、成膜工程を増やさずに、各発光色の発光素子において共通に用いられる層の膜厚を異なるようにし、光学設計を最適化することができる。そのため、発光装置の性能(効率、色純度など)を向上させることができる。
【0174】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0175】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明を適用して、発光素子および発光装置を作製する方法について説明する。
【0176】
本発明を適用して、例えば、図9(A)、(B)に示す発光素子を作製することができる。図9(A)に示す発光素子は、基板901上に第1の電極902、発光層913のみで形成されたEL層903、第2の電極904が順に積層して設けられている。第1の電極902及び第2の電極904のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極から注入される正孔及び陰極から注入される電子がEL層903で再結合して、発光を得ることができる。本実施の形態において、第1の電極902は陽極として機能する電極であり、第2の電極904は陰極として機能する電極であるとする。
【0177】
また、図9(B)に示す発光素子は、図9(A)のEL層903が複数の層が積層された構造である場合を示しており、具体的には、第1の電極902側から正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915が順次設けられている。なお、EL層903は、図9(A)に示すように少なくとも発光層913を有していれば機能するため、これらの層を全て設ける必要はなく、必要に応じて適宜選択して設ければよい。
【0178】
図9に示す基板901には、絶縁表面を有する基板または絶縁基板を適用する。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板又はサファイヤ基板等を用いることができる。
【0179】
また、第1の電極902および第2の電極904は、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0180】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。その他、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0181】
また、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金等を用いることができる。その他、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(アルミニウム、マグネシウムと銀との合金、アルミニウムとリチウムの合金)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0182】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。また、第1の電極902および第2の電極904は、単層膜に限らず、積層膜で形成することもできる。
【0183】
なお、EL層903で発光する光を外部に取り出すため、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方、または両方が光を通過するように形成する。例えば、インジウム錫酸化物等の透光性を有する導電材料を用いて形成するか、或いは、銀、アルミニウム等を数nm乃至数十nmの厚さとなるように形成する。また、膜厚を薄くした銀、アルミニウムなどの金属薄膜と、ITO膜等の透光性を有する導電材料を用いた薄膜との積層構造とすることもできる。
【0184】
なお、本実施の形態で示す発光素子のEL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914又は電子注入層915)は、実施の形態1および実施の形態2で示した成膜方法を適用して形成することができる。また、電極を実施の形態1および実施の形態2で示した成膜方法を適用して形成することもできる。
【0185】
例えば、図9(A)に示す発光素子を形成する場合、実施の形態1で示した成膜用基板の材料層を、EL層903を形成する材料で形成し、この成膜用基板を用いて基板901上の第1の電極902上にEL層903を形成する。そして、EL層903上に第2の電極904を形成することにより、図9(A)に示す発光素子を得ることができる。
【0186】
発光層913としては種々の材料を用いることができる。例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0187】
発光層913に用いることのできる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0188】
発光層913に用いることのできる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0189】
また、発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いることもできる。発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いることにより、発光層の結晶化を抑制することができる。また、発光性の高い物質の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0190】
発光性の高い物質を分散させる物質としては、発光性の高い物質が蛍光性化合物の場合には、蛍光性化合物よりも一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。また、発光性の高い物質が燐光性化合物の場合には、燐光性化合物よりも三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。
【0191】
発光層913に用いるホスト材料としては、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)などの他、4,4’−ジ(9−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)などが挙げられる。
【0192】
また、ドーパント材料としては、上述した燐光性化合物や蛍光性化合物を用いることができる。
【0193】
発光層913として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いる場合には、成膜用基板上の材料層として、ホスト材料とゲスト材料とを混合した層を形成すればよい。または、成膜用基板上の材料層として、ホスト材料を含む層とドーパント材料を含む層とが積層した構成としてもよい。このような構成の材料層を有する成膜用基板を用いて発光層913を形成することにより、発光層913は発光材料を分散させる物質(ホスト材料)と発光性の高い物質(ドーパント材料)とを含み、発光材料を分散させる物質(ホスト材料)に発光性の高い物質(ドーパント材料)が分散された構成となる。なお、発光層913として、2種類以上のホスト材料とドーパント材料を用いてもよいし、2種類以上のドーパント材料とホスト材料を用いてもよい。また、2種類以上のホスト材料及び2種類以上のドーパント材料を用いてもよい。
【0194】
また、図9(B)に示す発光素子を形成する場合には、EL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、および電子注入層915)のそれぞれの層を形成する材料で形成された材料層を有する実施の形態1および実施の形態2で示した成膜用基板を各層毎に用意し、各層の成膜毎に異なる成膜用基板を用いて、実施の形態1および実施の形態2で示した方法により、基板901上の第1の電極902上にEL層903を形成することができる。そして、EL層903上に第2の電極904を形成することにより、図9(B)に示す発光素子を得ることができる。なお、この場合には、EL層903の全ての層に実施の形態1および実施の形態2で示した方法を用いることもできるが、一部の層のみに実施の形態1および実施の形態2で示した方法を用いても良い。
【0195】
例えば、正孔注入層911としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0196】
また、正孔注入層911として、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層を用いることができる。正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、キャリア密度が高く、正孔注入性に優れている。また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層を、陽極として機能する電極に接する正孔注入層として用いることにより、陽極として機能する電極材料の仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0197】
正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層は、例えば、正孔輸送性の高い物質を含む層と電子受容性を示す物質を含む層とが積層された材料層を有する成膜用基板を用いることにより形成することができる。
【0198】
正孔注入層911に用いる電子受容性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族から第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0199】
正孔注入層911に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、正孔注入層に用いる正孔輸送性の高い物質としては、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、正孔注入層911に用いることのできる正孔の輸送性の高い物質を具体的に列挙する。
【0200】
例えば、正孔注入層911に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等を用いることができる。また、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0201】
正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0202】
また、正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0203】
また、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0204】
なお、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0205】
これら正孔輸送性の高い物質を含む層と、電子受容性を示す物質を含む層とが積層された材料層を有する成膜用基板を用いることで、正孔注入層911を形成することができる。電子受容性を示す物質として金属酸化物を用いた場合には、成膜用基板の支持基板上に正孔輸送性の高い物質を含む層を形成した後、金属酸化物を含む層を形成することが好ましい。金属酸化物は、正孔輸送性の高い物質よりも蒸着可能温度が高い場合が多いためである。このような構成の成膜用基板とすることにより、正孔輸送性の高い物質と金属酸化物とを効率良く成膜することができる。また、成膜した膜において局所的な濃度の偏りを抑制することができる。また、正孔輸送性の高い物質と金属酸化物の両方を溶解させるまたは分散させる溶媒は種類が少なく、混合溶液を形成しにくい。よって、湿式法を用いて混合層を直接形成することは困難である。しかし、本発明の成膜方法を用いることにより、正孔輸送性の高い物質と金属酸化物とを含む混合層を容易に形成することができる。
【0206】
また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、正孔注入性だけでなく、正孔輸送性も優れているため、上述した正孔注入層911を正孔輸送層として用いてもよい。
【0207】
また、正孔輸送層912は、正孔輸送性の高い物質を含む層であり、正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0208】
電子輸送層914は、電子輸送性の高い物質を含む層であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ01)バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0209】
また、電子注入層915としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を用いることができる。さらに、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属が組み合わされた層も使用できる。例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属を組み合わせた層を用いることは、第2の電極904からの電子注入が効率良く起こるためより好ましい。
【0210】
なお、EL層903は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層と、発光層とを適宜組み合わせて構成すればよい。
【0211】
EL層903で得られた発光は、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極である。第1の電極902のみが透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902を通って基板901側から取り出される。また、第2の電極904のみが透光性を有する電極である場合、光は第2の電極904を通って基板901と逆側から取り出される。第1の電極902および第2の電極904がいずれも透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902および第2の電極904を通って、基板901側および基板901と逆側の両方から取り出される。
【0212】
なお、図9では、陽極として機能する第1の電極902を基板901側に設けた構成について示したが、陰極として機能する第2の電極904を基板901側に設けてもよい。
【0213】
また、EL層903の形成方法としては、実施の形態1および実施の形態2で示した成膜方法を用いればよく、他の成膜方法と組み合わせてもよい。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。乾式法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。また、湿式法としては、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、又は印刷法などが挙げられる。
【0214】
本実施の形態に係る発光素子は、本発明を適用したEL層の形成が可能である。よって、本発明を適用することで、発光素子を構成するEL層を容易に形成することができると共に、発光素子を有する発光装置を容易に作製することができる。
【0215】
また、本発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することができるため、優れた性能の発光装置を生産性良く作製することができる。
【0216】
また、本発明を適用することにより、微細なパターン形成が可能であり、所望のパターン以外へ成膜されてしまうボケを抑制することができるため、高精細の発光装置を作製することができる。
【0217】
また、本発明は、湿式法を用いてEL層を形成する場合とは異なり、すでに形成された層の溶解性等を考慮する必要がないため、成膜する材料の種類の選択肢が広がる。また、積層する層の数についても自由に設定できる。よって、所望の材料を用いて、所望の積層構造の発光装置を作製することができる。
【0218】
また、本発明を適用することにより、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可能であるため、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを簡便にすることができる。
【0219】
また、本発明では、光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を一括して成膜することが可能となる。よって、発光装置の製造に要する時間(タクトタイム)を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0220】
また、本発明では、成膜用基板に形成される材料層の膜厚を制御することによって、被成膜基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができるため、被成膜基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よって、膜厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0221】
また、本発明を適用することにより、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる材料を均一に成膜することができる。また、材料層が複数の材料を含む場合でも、材料層と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板上に成膜することができる。従って、本発明に係る成膜方法は、気化する温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0222】
また、実施の形態2で示した成膜用基板を用いて発光装置を作製した場合、同じ材料が含まれ、異なる膜厚の層を一回の成膜工程で成膜できる。よって、成膜工程を増やさずに、各発光色の発光素子において共通に用いられる層の膜厚を異なるようにし、光学設計を最適化することができる。そのため、発光装置の性能(効率、色純度など)を向上させることができる。
【0223】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0224】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5で説明した発光素子を用いて形成される発光装置について説明する。
【0225】
まず、パッシブマトリクス型の発光装置について、図10、図11を用いて説明することとする。
【0226】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)の発光装置は、ストライプ状(帯状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交するように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯することになる。
【0227】
図10(A)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図10(A)中の鎖線A−A’で切断した断面図が図10(B)であり、鎖線B−B’で切断した断面図が図10(C)である。
【0228】
基板1001上には、下地絶縁層として絶縁層1004を形成する。なお、下地絶縁層が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層1004上には、ストライプ状に複数の第1の電極1013が等間隔で配置されている。また、第1の電極1013上には、各画素に対応する開口部を有する隔壁1014が設けられ、開口部を有する隔壁1014は絶縁材料(感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、またはSOG膜(例えば、アルキル基を含むSiOx膜))で構成されている。なお、各画素に対応する開口部が発光領域1021となる。
【0229】
開口部を有する隔壁1014上に、第1の電極1013と交差する互いに平行な複数の逆テーパ状の隔壁1022が設けられる。逆テーパ状の隔壁1022はフォトリソグラフィ法に従い、未露光部分がパターンとしてポジ型感光性樹脂を用い、パターンの下部がより多くエッチングされるように露光量または現像時間を調節することによって形成する。
【0230】
開口部を有する隔壁1014及び逆テーパ状の隔壁1022を合わせた高さは、EL層及び第2の電極1016の膜厚より大きくなるように設定する。これにより、複数の領域に分離されたEL層、具体的には赤色発光を示す材料で形成されたEL層(R)(1015R)、緑色発光を示す材料で形成されたEL層(G)(1015G)、青色発光を示す材料で形成されたEL層(B)(1015B)と、第2の電極1016とが形成される。なお、複数に分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。
【0231】
第2の電極1016は、第1の電極1013と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の隔壁1022上にもEL層及び第2の電極1016を形成する導電層の一部が形成されるが、EL層(R)(1015R)、EL層(G)(1015G)、EL層(B)(1015B)、及び第2の電極1016とは分断されている。なお、本実施の形態におけるEL層は、少なくとも発光層を含む層であって、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、又は電子注入層等を含んでいてもよい。
【0232】
ここでは、EL層(R)(1015R)、EL層(G)(1015G)、EL層(B)(1015B)を選択的に形成し、3種類(赤(R)、青(G)、緑(B))の発光が得られるフルカラー表示可能な発光装置を形成する例を示している。なお、EL層(R)(1015R)、EL層(G)(1015G)、EL層(B)(1015B)は、それぞれ互いに平行なストライプパターンで形成されている。これらのEL層を形成するには、上記実施の形態1および実施の形態2に示す成膜方法を適用すればよい。
【0233】
また、必要であれば、封止缶や封止のためのガラス基板などの封止材を用いて封止する。ここでは、封止基板としてガラス基板を用い、シール材などの接着材を用いて基板と封止基板とを貼り合わせ、シール材などの接着材で囲まれた空間を密閉している。密閉された空間には、充填材や、乾燥した不活性ガスを充填する。また、発光装置の信頼性を向上させるために、基板と封止材との間に乾燥材などを封入してもよい。乾燥材によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。また、乾燥材としては、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることが可能である。なお、他の乾燥材として、ゼオライトやシリカゲル等の物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0234】
ただし、発光素子を覆って接する封止材が設けられ、十分に外気と遮断されている場合には、乾燥材は、特に設けなくともよい。
【0235】
次に、図10に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPCなどを実装した場合の上面図を図11に示す。
【0236】
図11において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0237】
ここで、図10における第1の電極1013が、図11の走査線1103に相当し、図10における第2の電極1016が、図11のデータ線1102に相当し、逆テーパ状の隔壁1022が隔壁1104に相当する。データ線1102と走査線1103の間にはEL層が挟まれており、領域1105で示される交差部が画素1つ分となる。
【0238】
なお、走査線1103は配線端で接続配線1108と電気的に接続され、接続配線1108が入力端子1107を介してFPC1109bに接続される。また、データ線1102は入力端子1106を介してFPC1109aに接続される。
【0239】
また、必要であれば、射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0240】
なお、図11では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、本発明は特に限定されず、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0241】
また、ICチップを実装させる場合、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG方式によりそれぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装してもよい。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側ICは、シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。また、片側に一つのICを設けた例を説明しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0242】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の例について、図12を用いて説明する。なお、図12(A)は発光装置を示す上面図であり、図12(B)は図12(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板1210上に設けられた画素部1202と、駆動回路部(ソース側駆動回路)1201と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)1203と、を有する。画素部1202、駆動回路部1201、及び駆動回路部1203は、シール材1205によって、素子基板1210と封止基板1204との間に封止されている。
【0243】
また、素子基板1210上には、駆動回路部1201、及び駆動回路部1203に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線1208が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)1209を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0244】
次に、断面構造について図12(B)を用いて説明する。素子基板1210上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース側駆動回路である駆動回路部1201と、画素部1202が示されている。
【0245】
駆動回路部1201はnチャネル型TFT1223とpチャネル型TFT1224とを組み合わせたCMOS回路が形成される例を示している。なお、駆動回路部を形成する回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、画素部が形成された基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、画素部が形成された基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0246】
また、画素部1202はスイッチング用TFT1211と、電流制御用TFT1212と電流制御用TFT1212の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された第1の電極1213とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極1213の端部を覆って絶縁物1214が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。
【0247】
また、上層に積層形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物1214の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物1214の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物1214の上端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物1214として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができ、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン等、の両者を使用することができる。
【0248】
第1の電極1213上には、EL層1200及び第2の電極1216が積層形成されている。なお、第1の電極1213をITO膜とし、第1の電極1213と接続する電流制御用TFT1212の配線として窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層膜、或いは窒化チタン膜、アルミニウムを主成分とする膜、窒化チタン膜との積層膜を適用すると、配線としての抵抗も低く、ITO膜との良好なオーミックコンタクトがとれる。なお、ここでは図示しないが、第2の電極1216は外部入力端子であるFPC1209に電気的に接続されている。
【0249】
EL層1200は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とする。第1の電極1213、EL層1200及び第2の電極1216との積層構造で、発光素子1215が形成されている。
【0250】
また、図12(B)に示す断面図では発光素子1215を1つのみ図示しているが、画素部1202において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部1202には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0251】
さらにシール材1205で封止基板1204を素子基板1210と貼り合わせることにより、素子基板1210、封止基板1204、およびシール材1205で囲まれた空間1207に発光素子1215が備えられた構造になっている。なお、空間1207には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材1205で充填される構成も含むものとする。
【0252】
なお、シール材1205にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板1204に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0253】
以上のようにして、本発明を適用して発光装置を得ることができる。アクティブマトリクス型の発光装置は、TFTを作製するため、1枚あたりの製造コストがパッシブマトリクス型の発光装置に比べ高くなりやすいが、本発明を適用することで、発光装置の製造コストの低減を図ることができる。
【0254】
本発明を適用することで、発光素子を構成するEL層を容易に形成することができると共に、発光素子を有する発光装置を容易に作製することができる。
【0255】
また、本発明を適用することにより、平坦でムラのない膜を成膜することができるため、優れた性能の発光装置を生産性良く作製することができる。
【0256】
また、本発明を適用することにより、微細なパターン形成が可能であり、所望のパターン以外へ成膜されてしまうボケを抑制することができるため、高精細の発光装置を作製することができる。
【0257】
また、本発明は、湿式法を用いてEL層を形成する場合とは異なり、すでに形成された層の溶解性等を考慮する必要がないため、成膜する材料の種類の選択肢が広がる。また、積層する層の数についても自由に設定できる。よって、所望の材料を用いて、所望の積層構造の発光装置を作製することができる。
【0258】
また、本発明を適用することにより、所望の材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可能であるため、材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜室内壁に材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを簡便にすることができる。
【0259】
また、本発明では、光源として高出力のレーザ光を用いることができるため、大面積を一括して成膜することが可能となる。よって、発光装置の製造に要する時間(タクトタイム)を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0260】
また、本発明では、成膜用基板に形成される材料層の膜厚を制御することによって、被成膜基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができるため、被成膜基板上に成膜する際の膜厚モニターは不要となる。よって、膜厚モニターを利用した成膜速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0261】
また、本発明を適用することにより、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる材料を均一に成膜することができる。また、材料層が複数の材料を含む場合でも、材料層と同じ材料をほぼ同じ重量比で含有する膜を被成膜基板上に成膜することができる。従って、本発明に係る成膜方法は、気化する温度の異なる複数の材料を用いて成膜する場合でも、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、所望の異なる材料を含む層を容易に精度良く成膜することができる。
【0262】
また、実施の形態2で示した成膜用基板を用いて発光装置を作製した場合、同じ材料が含まれ、異なる膜厚の層を一回の成膜工程で成膜できる。よって、成膜工程を増やさずに、各発光色の発光素子において共通に用いられる層の膜厚を異なるようにし、光学設計を最適化することができる。そのため、発光装置の性能(効率、色純度など)を向上させることができる。
【0263】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0264】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明を適用して作製した発光装置を用いて完成させた様々な電子機器について、図13を用いて説明する。
【0265】
本発明に係る発光装置を適用した電子機器として、テレビジョン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)、照明器具などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図13に示す。
【0266】
図13(A)は表示装置であり、筐体8001、支持台8002、表示部8003、スピーカー部8004、ビデオ入力端子8005等を含む。本発明を用いて形成される発光装置をその表示部8003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、コンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上および製造効率向上、また、発光装置の性能の向上を図ることができるので、表示装置の製造における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価な表示装置を提供することができる。
【0267】
図13(B)はコンピュータであり、本体8101、筐体8102、表示部8103、キーボード8104、外部接続ポート8105、ポインティングデバイス8106等を含む。なお、コンピュータは、本発明を用いて形成される発光装置をその表示部8103に用いることにより作製される。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上および製造効率向上、また、発光装置の性能の向上を図ることができるので、コンピュータの製造における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価なコンピュータを提供することができる。
【0268】
図13(C)はビデオカメラであり、本体8201、表示部8202、筐体8203、外部接続ポート8204、リモコン受信部8205、受像部8206、バッテリー8207、音声入力部8208、操作キー8209、接眼部8210等を含む。なお、ビデオカメラは、本発明を用いて形成される発光装置をその表示部8202に用いることにより作製される。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上および製造効率向上、また、発光装置の性能の向上を図ることができるので、ビデオカメラの製造における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価なビデオカメラを提供することができる。
【0269】
図13(D)は卓上照明器具であり、照明部8301、傘8302、可変アーム8303、支柱8304、台8305、電源8306を含む。なお、卓上照明器具は、本発明を用いて形成される発光装置を照明部8301に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上および製造効率向上、また、発光装置の性能の向上を図ることができるので、卓上照明器具の製造における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価な卓上照明器具を提供することができる。
【0270】
ここで、図13(E)は携帯電話であり、本体8401、筐体8402、表示部8403、音声入力部8404、音声出力部8405、操作キー8406、外部接続ポート8407、アンテナ8408等を含む。なお、携帯電話は、本発明を用いて形成される発光装置をその表示部8403に用いることにより作製される。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上および製造効率向上、また、発光装置の性能の向上を図ることができるので、携帯電話の製造における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価な携帯電話を提供することができる。
【0271】
また、図14も携帯電話であり、図14(A)が正面図、図14(B)が背面図、図14(C)が展開図である。本体1401は、電話と携帯情報端末の双方の機能を備えており、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な所謂スマートフォンである。
【0272】
本体1401は、筐体1402及び筐体1403の二つの筐体で構成されている。筐体1402には、表示部1404、スピーカー1405、マイクロフォン1406、操作キー1407、ポインティングデバイス1408、カメラ用レンズ1409、外部接続端子1410、イヤホン端子1411等を備え、筐体1403には、キーボード1412、外部メモリスロット1413、カメラ用レンズ1414、ライト1415等を備えている。また、アンテナは筐体1402内部に内蔵されている。
【0273】
また、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
【0274】
表示部1404には、上記実施例に示される表示装置を組み込むことが可能であり、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。表示部1404と同一面上にカメラ用レンズ1409を備えているため、テレビ電話が可能である。また、表示部1404をファインダーとし、カメラ用レンズ1414及びライト1415で静止画及び動画の撮影が可能である。スピーカー1405、及びマイクロフォン1406は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生等が可能である。
【0275】
操作キー1407では、電話の発着信、電子メール等の簡単な情報入力、画面のスクロール、カーソル移動等が可能である。更に、重なり合った筐体1402と筐体1403(図14(A))は、スライドし、図14(C)のように展開し、携帯情報端末として使用できる。この場合、キーボード1412、ポインティングデバイス1408を用い円滑な操作が可能である。外部接続端子1410はACアダプタ及びUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電及びコンピュータ等とのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット1413に記録媒体を挿入しより大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0276】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能等を備えたものであってもよい。
【0277】
なお、上述した携帯電話は、本発明を用いて形成される発光装置をその表示部1404に用いることにより作製される。本発明を適用することで、主に発光装置の成膜工程における材料の利用効率向上および製造効率向上、また、発光装置の性能の向上を図ることができるので、携帯電話の製造における製造コストの低減、および生産性の向上を図ることができ、安価な携帯電話を提供することができる。
【0278】
以上のようにして、本発明に係る発光装置を適用して電子機器や照明器具を得ることができる。本発明に係る発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0279】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0280】
本実施例では、本発明の成膜方法に用いる成膜用基板にレーザ光を照射したときの熱分布について計算を行った。計算に用いたモデルを図15(A)および図16(A)に示す。なお、計算では2次元モデルとして計算を行った。
【0281】
図15(A)に示すモデルは、本発明の成膜方法に用いる成膜用基板である。ガラス基板3101(厚さ0.7mm)上に、光吸収層3102(窒化チタン膜100nm上にチタン膜100nmが積層)が形成されている2次元モデルを採用した。なお、光吸収層の幅は21.5μmとした。
【0282】
図16(A)に示すモデルは、比較として用いた比較成膜用基板である。ガラス基板4101(0.7mm)上に反射層4103としてアルミニウム(Al)を200nm、光吸収層4102としてチタン(Ti)を200nm積層した2次元モデルを採用した。なお、反射層の開口部の幅は21.5μmとした。
【0283】
計算条件を以下に示す。
計算ツール ANSYS
使用メッシュ 3節点三角形フリーメッシュ 最小メッシュ長 0.05μm
熱伝導特性が温度依存であるので非線形解析(ニュートン法)を使用
非線形収束判定値 L2ノルム 1.0e−4以下
基板移動速度 1000mm/sec
レーザパワー 12W
レーザスポットのサイズ 10μm× 1000μm
光吸収層の光吸収率 64.9%
非定常解析における時間刻み 0.125μs
【0284】
ガラス0.7mm,チタン200nmからなる薄膜に波長532nmのレーザ光を与えた場合、光学計算の手法の一つであるMATRIX法を用いると、レーザエネルギーの64.96%を吸収する結果が求まる。吸収されたレーザのエネルギーが全て発熱に変換されるとすると、
単位時間発熱量=(単位時間レーザエネルギー)×0.6496
となり、レーザ照射によって発熱するチタンの領域上で体積一様に発熱量を分布させた。計算に使用したパラメータは表1に示す。初期温度は27℃一様とし、境界条件は全て断熱境界とした。計算の収束上、ガラス基板最下点の1点を27℃に固定した。
【0285】
【表1】

【0286】
計算結果を図15(B)および図16(B)に示す。図15(B)および図16(B)には、レーザ光照射終了時(照射時間10ns)の表面温度を示した。なお、2次元モデルは3次元モデルと異なり、紙面に垂直な方向に熱が拡散しないモデルであるため、実際の温度よりも高く算出される傾向がある。
【0287】
反射層を設けない図15(A)に示すモデルの方が、図16(A)に示す比較モデルよりも光吸収層での低温の温度勾配領域が少なく、高温部領域が広い分布になっている。図16(A)に示す比較モデルでは、横方向(面方向)に熱が拡散していたが、図15(A)に示すモデルでは、熱が遮断され、光吸収層に蓄えられる構造となっている。よって、光吸収層内での温度勾配が少なく、光吸収層と外部との温度差が顕著に現れている。つまり、光吸収層が形成されている転写部と光吸収層が形成されていない非転写部の温度差が顕著に現れているため、比較モデルよりも成膜パターンのボケが抑制されると考えられる。そのため、本発明を適用することにより、より高精細な発光装置を作製できる。
【符号の説明】
【0288】
101 第1の基板
102 光吸収層
102A 光吸収層
102B 光吸収層
102C 光吸収層
103 材料層
106 開口部
107 第2の基板
108 第1の電極
109 絶縁物
110 光
111 EL層
111A EL層
111B EL層
111C EL層
401 光吸収層
402 開口部
411 EL層(R)
412 EL層(G)
413 EL層(B)
414 絶縁物
501 光吸収層
511 EL層(R)
512 EL層(G)
513 EL層(B)
604 光吸収層
605 材料層
614 光吸収層
615 材料層
624 光吸収層
625 材料層
701 ロード室
702 共通室
703 受渡室
704 封止室
705 アンロード室
711 処理室
712 処理室
713 処理室
714 処理室
715 処理室
716 処理室
717 処理室
718 処理室
720 搬送ユニット
721 搬送ユニット
730 ゲート弁
731 ゲート弁
733 ゲート弁
740 ゲート弁
741 ゲート弁
742 ゲート弁
801 第2の基板
803 レーザ発振装置
804 第1の光学系
805 第2の光学系
806 第3の光学系
807 反射ミラー
808 撮像素子
812 位置マーカ
814 光吸収層
815 材料層
816 制御装置
820 窓
821 第1の電極
822 隔壁
823 正孔注入層
824 正孔輸送層
825 発光層
826 発光層
827 発光層
832 第1の基板
833 第3の基板
834 第4の基板
835 第5の基板
836 第6の基板
837 第7の基板
838 第8の基板
840 レーザ光
901 基板
902 第1の電極
903 EL層
904 第2の電極
911 正孔注入層
912 正孔輸送層
913 発光層
914 電子輸送層
915 電子注入層
1001 基板
1004 絶縁層
1013 第1の電極
1014 隔壁
1016 第2の電極
1021 発光領域
1022 隔壁
1102 データ線
1103 走査線
1104 隔壁
1105 領域
1106 入力端子
1107 入力端子
1108 接続配線
1109a FPC
1109b FPC
1200 EL層
1201 駆動回路部(ソース側駆動回路)
1202 画素部
1203 駆動回路部(ゲート側駆動回路)
1204 封止基板
1205 シール材
1207 空間
1208 配線
1209 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
1210 素子基板
1211 スイッチング用TFT
1212 電流制御用TFT
1213 第1の電極
1214 絶縁物
1215 発光素子
1216 第2の電極
1223 nチャネル型TFT
1224 pチャネル型TFT
1401 本体
1402 筐体
1403 筐体
1404 表示部
1405 スピーカー
1406 マイクロフォン
1407 操作キー
1408 ポインティングデバイス
1409 カメラ用レンズ
1410 外部接続端子
1411 イヤホン端子
1412 キーボード
1413 外部メモリスロット
1414 カメラ用レンズ
1415 ライト
3101 ガラス基板
3102 光吸収層
4101 ガラス基板
4102 光吸収層
4103 反射層
8001 筐体
8002 支持台
8003 表示部
8004 スピーカー部
8005 ビデオ入力端子
8101 本体
8102 筐体
8103 表示部
8104 キーボード
8105 外部接続ポート
8106 ポインティングデバイス
8201 本体
8202 表示部
8203 筐体
8204 外部接続ポート
8205 リモコン受信部
8206 受像部
8207 バッテリー
8208 音声入力部
8209 操作キー
8210 接眼部
8301 照明部
8302 傘
8303 可変アーム
8304 支柱
8305 台
8306 電源
8401 本体
8402 筐体
8403 表示部
8404 音声入力部
8405 音声出力部
8406 操作キー
8407 外部接続ポート
8408 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に、光吸収層と、前記光吸収層に接して形成された材料層と、を有する第1の基板を用い、
前記第1の基板の前記材料層が形成された面と、第2の基板の被成膜面とを対向させ、
前記第1の基板の他方の面側から周波数10MHz以上、パルス幅100fs以上10ns以下のレーザ光を照射し、前記光吸収層と重なる位置にある前記材料層の一部を選択的に加熱し、前記材料層の一部を前記第2の基板の被成膜面に成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記光吸収層は、光に対する反射率が70%以下であることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記光吸収層の膜厚は、10nm以上600nm以下であることを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記光吸収層は、金属窒化物、金属、カーボンのいずれかを含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記光吸収層が島状に形成されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記光吸収層がストライプ状に形成されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記材料層は、湿式法により形成されることを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記材料層は有機化合物からなることを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記レーザ光は線状または矩形状に成形されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一に記載の成膜方法を用い、
前記材料層の一部を、前記第2の基板の被成膜面上に形成されている第1の電極上に成膜することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記材料層は、発光性材料またはキャリア輸送性材料の一方または両方を含むことを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−228135(P2009−228135A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38836(P2009−38836)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】