説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】反応律速領域で成膜反応を起こさせることによって,アスペクト比が大きなコンタクトホールであっても,より薄くてカバレッジの良好なチタン膜を成膜し,コンタクトホールの抵抗を低減する。
【解決手段】 基板Wを載置するサセプタ112と,処理ガスを処理室111内に供給するシャワーヘッド120と,プラズマを生成するための高周波を所定のパワーでシャワーヘッドに供給する高周波電源143と,処理室内を排気して所定の圧力に減圧する排気装置152と,チタン膜の成膜処理に適用しようとする成膜ガスの流量が,成膜処理の反応律速領域に入るように,還元ガスの流量,処理室内の圧力,高周波パワーのいずれかを変えることによって,前記反応律速領域を制御する制御部190とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体ウエハ,FPD(Flat Panel Display)基板,液晶基板,太陽電池用基板などの被処理基板上に所定の膜を成膜する成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSトランジスタなどの半導体デバイスでは,配線層と基板,配線層と配線層などの接続構造を有する。具体的には例えば図17に示すように,Si基板(Siウエハ)のp/n不純物拡散層(拡散層)10と第1配線との間にはコンタクトホール20が形成され,第1配線と第2配線との間にはビアホール30が形成される。このようなコンタクトホール20およびビアホール30には,タングステンや銅などの金属が埋め込まれ,Si基板や配線層が電気的に接続される。近年では,この金属の埋め込みに先立って,コンタクトホール20およびビアホール30にTi/TiN積層膜などのバリア層を成膜し,バリア層22,32が形成される。
【0003】
従来,このようなTi膜やTiN膜の形成には,物理的蒸着(PVD)法が用いられてきた。ところが,半導体デバイスの微細化および高集積化が進んだ今日においては,コンタクトホールやビアホールのアスペクト比(口径と深さの比)が極めて大きくなっている。このため,バリア層の形成にはステップカバレッジのよい化学的蒸着(CVD)法が多く採用されている。
【0004】
ところで,拡散層10とコンタクトホール20内の金属とのコンタクト抵抗を下げるためには,例えばバリア層22と拡散層10との間にTiSi膜(チタンシリサイド膜)などの合金層12を介在させて,バリア層22と拡散層10との界面における仕事関数を調節することにより,その仕事関数差に基づくショットキー障壁を低くすることが望ましい。
【0005】
このようなTiSi膜の形成には例えばプラズマCVD法を用いることができる。この方法では,原料ガスとしてTiClを用いるとともに,還元ガスとしてHガス等を用いて,温度650℃程度でTi膜を成膜し,同時にその一部をSi基板と反応させ自己整合的に合金層12を形成する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−049142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,従来は上述したようなTi膜を成膜する場合には,特許文献1のように成膜レートを高めて成膜効率を上げるために,還元ガスに対する成膜ガスの流量比を少なくしていたため(特許文献1では流量比0.01程度),Ti膜の成膜反応はTiClガスが供給されると,それとともに反応が進行する供給律速領域で成膜反応が起こっていた。
【0008】
すなわち,供給律速領域では成膜ガスの流量比を上げるほど成膜レートも大きくなる。これに対して,一般的に反応律速領域では,成膜反応が温度に律速されるため,供給した成膜ガスがすべて反応することはなく,成膜効率は著しく低下する。
【0009】
しかしながら,従来のような供給律速領域での成膜反応は,基板表面付近で成膜反応が起こり,そこで成膜ガスが消費されるので,コンタクトホールのホール径が小さく,アスペクト比が大きくなるほど,底部までなかなか届き難くなる。特に近年ではコンタクトホールやビアホールのアスペクト比(口径と深さの比)が益々大きくなっているので,そのようなコンタクトホールの底部の膜厚は基板表面の膜厚に比して薄くなってしまい,カバレッジが悪化するという問題がある。
【0010】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,反応律速領域で成膜反応を起こさせることによって,アスペクト比が大きなコンタクトホールであっても,より薄くてカバレッジの良好なチタン膜を成膜することができ,コンタクトホール底部の抵抗を低減できる成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,処理室内にチタン含有成膜ガスと還元ガスを含む処理ガスを供給してプラズマを生成することによって,被処理基板上にチタン膜を成膜する方法であって,前記チタン膜の成膜処理に適用しようとする前記成膜ガスの流量が,前記成膜処理の反応律速領域に入るように,前記還元ガスの流量,前記処理室内の圧力,前記プラズマを生成するために電極に印加する高周波パワーのいずれかを変えることによって,前記反応律速領域を制御することを特徴とする成膜方法が提供される。
【0012】
この場合,上記還元ガス流量を増加することによって,前記成膜処理の反応律速領域の境界となる前記原料ガスの流量が大きくなるように制御するようにしてもよい。また,上記処理室内圧力を増加することによって,前記成膜処理の反応律速領域の境界となる前記原料ガスの流量が大きくなるように制御するようにしてもよい。さらに,上記高周波パワーを増加することによって,前記成膜処理の反応律速領域の境界となる前記原料ガスの流量が大きくなるように制御してもよい。
【0013】
また,上記成膜ガスの流量は,前記還元ガス流量に対する前記成膜ガスの流量比が13sccm/100sccm以上55sccm/100sccm以下となる範囲で設定することが好ましい。また,上記成膜ガスの流量は,前記還元ガス流量に対する前記成膜ガスの流量比が13sccm/100sccm以上45.6sccm/100sccm以下となる範囲で設定してもよく,還元ガス流量に対する前記成膜ガスの流量比が45.6sccm/100sccm以上55sccm/100sccm以下となる範囲で設定してもよい。
【0014】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,処理室内にチタン含有成膜ガスと還元ガスを含む処理ガスを供給してプラズマを生成することによって,被処理基板上にチタン膜を成膜する方法であって,前記成膜ガスの流量,前記還元ガスの流量,前記処理室内の圧力,前記プラズマを生成するために電極に印加する高周波パワーを含む前記成膜処理の処理条件によって決定された前記成膜処理の反応律速領域で前記成膜ガスと還元ガスとを反応させることによって,前記被処理基板上にチタン膜を形成することを特徴とする成膜方法が提供される。
【0015】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,処理室内にチタン含有成膜ガスと還元ガスを含む処理ガスを供給してプラズマを生成することによって,コンタクトホールが形成された被処理基板上にチタン膜を成膜する成膜装置であって,前記被処理基板を載置するサセプタと,前記処理ガスを処理室内に供給するシャワーヘッドと,前記サセプタとの間にプラズマを生成するための高周波を所定のパワーで前記シャワーヘッドに供給する高周波電源と,前記処理室内を排気して所定の圧力に減圧する排気装置と,前記チタン膜の成膜処理に適用しようとする前記成膜ガスの流量が,前記成膜処理の反応律速領域に入るように,前記還元ガスの流量,前記処理室内の圧力,前記高周波パワーのいずれかを変えることによって,前記反応律速領域を制御する制御部と,を備えることを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,反応律速領域で成膜反応を起こさせることができるので,アスペクト比が大きなコンタクトホールであっても,より薄くてカバレッジの良好なチタン膜を成膜することができ,コンタクトホールの抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態にかかる成膜装置の構成を示す断面図である。
【図2A】同実施形態にかかる成膜処理を説明するための工程図である。
【図2B】同実施形態にかかる成膜処理を説明するための工程図である。
【図3】供給律速モードでアスペクトの大きいコンタクトホールにTi膜を成膜した場合のカバレッジを説明するための観念図である。
【図4】反応律速モードでアスペクトの大きいコンタクトホールにTi膜を成膜した場合のカバレッジを説明するための観念図である。
【図5】Si膜上にTi膜を成膜した場合におけるTiClガスの流量と成膜レートとの関係をグラフにした図である。
【図6】SiO膜上にTi膜を成膜した場合におけるTiClガスの流量と成膜レートとの関係をグラフにした図である。
【図7】反応律速領域のHガス流量依存性を評価する実験結果を示す図である。
【図8】図7に示すHガスの流量と反応律速領域の境界のTiClガスの流量との関係を示す図である。
【図9】反応律速領域の処理室内圧力依存性を評価する実験結果を示す図である。
【図10】図9に示す処理室内圧力と反応律速領域の境界のTiClガスの流量との関係を示す図である。
【図11】反応律速領域のRFパワー依存性を評価する実験結果を示す図である。
【図12】図11に示すRFパワーと反応律速領域の境界のTiClガスの流量との関係を示す図である。
【図13】TiClガスの流量と成膜したTi膜の比抵抗との関係をグラフにした図である。
【図14】図6に示すHガス流量30sccm,RFパワー500Wの場合の成膜レートのグラフと図13に示す比抵抗のグラフを重ねた図である。
【図15】実際にコンタクトホールにTi膜を成膜した場合の実験結果を示す図である。
【図16】図15に示す各部(上部,側部,下部)の部分拡大図である。
【図17】半導体デバイスの配線構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
(成膜装置)
本発明の実施形態にかかる成膜方法を実施可能な成膜装置の構成例を図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態にかかる成膜装置の概略構成を示す図である。ここでの成膜装置100は,プラズマCVD(PECVD:plasma−enhanced chemical vapor deposition)によって被処理基板としてのSi基板W上にTi膜を成膜するプラズマCVD装置として構成した場合を例に挙げる。
【0020】
図1に示すように成膜装置100は,気密に構成された略円筒状の処理容器により構成される処理室(チャンバ)111を備える。処理室111内にはSi基板Wを水平に支持するためのサセプタ112がその中央下部に設けられた円筒状の支持部材113により支持された状態で配置されている。このサセプタ112はAlN等のセラミックスからなり,その外縁部にはSi基板Wをガイドするためのガイドリング114が設けられている。
【0021】
また,サセプタ112にはヒータ115が埋め込まれており,このヒータ115はヒータ電源140から給電されることによりSi基板Wを所定の温度に加熱する。すなわち,ヒータ115とヒータ電源140は温度調整手段を構成する。サセプタ112には,下部電極116がヒータ115の上に埋設されており,下部電極116は例えば接地されている。
【0022】
処理室111の天壁111Aには,絶縁部材119を介してシャワーヘッド120が設けられている。このシャワーヘッド120は,大別すると,上方のベース部材121と,このベース部材121の下方に取り付けられたシャワープレート122から構成されている。ベース部材121には,シャワーヘッド120を加熱するヒータ123が埋設されている。このヒータ123にはヒータ電源141が接続されている。制御部は,ヒータ電源141によってヒータ123を制御することによってシャワーヘッド120を所定温度に加熱制御する。
【0023】
シャワープレート122には処理室111内にガスを吐出する多数の吐出孔124が形成されている。各吐出孔124は,ベース部材121とシャワープレート122の間に形成されるガス拡散空間125に連通している。ベース部材121の中央部には処理ガスをガス拡散空間125に供給するためのガス導入ポート126が設けられている。ガス導入ポート126は,後述するガス供給手段130の混合ガス供給ライン138に接続されている。
【0024】
ガス供給手段130は,Ti化合物ガスであるTiClガスを供給するTiClガス供給源131,Arガスを供給するArガス供給源132,還元ガスであるHガスを供給するHガス供給源133を有している。
【0025】
そして,TiClガス供給源131にはTiClガス供給ライン131Lが接続されており,Arガス供給源132にはArガス供給ライン132Lが接続されており,Hガス供給源133にはHガス供給ライン133Lが接続されている。各ガスライン131L〜133Lにはそれぞれマスフローコントローラ(MFC)131C〜133Cおよびこのマスフローコントローラ131C〜133Cを挟んで2つのバルブ131V〜133Vが設けられている。
【0026】
ガス混合部137は,上記のプロセスガスを混合してシャワーヘッド120に供給する機能を有するものであり,そのガス流入側には,各ガスライン131L〜133Lを介してプロセスガス供給源131〜133が接続されており,そのガス流出側には混合ガス供給ライン138を介してシャワーヘッド120が接続されている。
【0027】
プロセス時には,TiClガス,Arガス,Hガスの中から選択された一種類のガスまたは複数のガスの混合ガスが,シャワーヘッド120のガス導入ポート126とガス拡散空間125を経由して,複数の吐出孔124から処理室111内に導入される。
【0028】
このように本実施形態にかかるシャワーヘッド120は,プロセスガスを予め混合して処理室111内に供給するいわゆるプリミックスタイプで構成されているが,各プロセスガスを独立して処理室111内に供給するポストミックスタイプで構成されるようにしてもよい。
【0029】
シャワーヘッド120には,整合器142を介して高周波(RF)電源143が接続されており,成膜の際にこの高周波電源143からシャワーヘッド120に例えば450kHzの高周波(RF)を供給することにより,シャワーヘッド120および下部電極116の間に高周波電界が生じ,処理室111内に供給されたプロセスガスがプラズマ化し,Ti膜が形成される。
【0030】
処理室111の底壁111Bの中央部には円形の穴117が形成されており,底壁111Bにはこの穴117を覆うように下方に向けて突出する排気室150が設けられている。排気室150の側面には排気管151が接続されており,この排気管151には排気装置152が接続されている。そしてこの排気装置152によって処理室111内を所定の真空圧力まで減圧できる。
【0031】
サセプタ112には,Si基板Wを支持して昇降させるための複数(例えば3本)の支持ピン(リフトピン)160がサセプタ112の表面に対して突没可能に設けられ,これら支持ピン160は支持板161に固定されている。そして,支持ピン160は,エアシリンダ等の駆動機構162により支持板161を介して昇降される。処理室111の側壁111Cには,Si基板Wの搬入出を行うための搬入出口118と,この搬入出口118を開閉するゲートバルブGが設けられている。
【0032】
これら支持ピン160はSi基板Wを処理室111に搬出入するときに昇降させる。具体的には,Si基板Wを処理室111内に搬入するときは,支持ピン160を上昇させる。そして,図示しない搬送アームによってSi基板Wを搬入出口118から搬入して支持ピン160に載せる。次いで支持ピン160を下降してSi基板Wをサセプタ112上に載置する。また,Si基板Wを処理室111から搬出するときは,支持ピン160を上昇させてSi基板Wを持ち上げる。そして,図示しない搬送アームによってSi基板Wを受け取り,搬入出口118から搬出する。
【0033】
成膜装置100には,制御部(全体制御装置)190が接続されており,この制御部190によって成膜装置100の各部が制御されるようになっている。また,制御部190には,オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや,成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる操作部192が接続されている。
【0034】
さらに,制御部190には,成膜装置100で実行される各種処理(Si基板Wに対する成膜処理など)を制御部190の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などが記憶された記憶部194が接続されている。
【0035】
記憶部194には,例えば複数の処理条件(レシピ)で用いるデータが記憶されている。このうち処理条件については,成膜装置100の各部を制御する制御パラメータ,設定パラメータなどの複数のパラメータ値をまとめたものである。各処理条件は例えば成膜ガス,還元ガス等の流量比,処理室111内の圧力,高周波パワーなどのパラメータ値を有する。
【0036】
なお,これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部194の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0037】
制御部190は,操作部192からの指示等に基づいて所望のプログラム,処理条件を記憶部194から読み出して各部を制御することで,成膜装置100での所望の処理を実行する。また,操作部192からの操作により処理条件を編集できるようになっている。
【0038】
(成膜処理)
次に,このような本実施形態にかかる成膜装置100により実行される成膜処理について説明する。図2A,図2Bは,本実施形態にかかる成膜処理を説明するための工程図である。成膜装置100は,例えば図2Aに示すような膜構造を有するSi基板200に対して処理を行う。Si基板200は,Si基材202上にSiO膜などの層間絶縁膜204を形成し,エッチングによりコンタクトホール205を形成し,コンタクトホール205の底部にSi表面203を露出させたものである。
【0039】
ここでは,図2Aに示すような層間絶縁膜204上及びコンタクトホール205内にTi膜を形成するとともに,コンタクトホール205の底部のSi表面203上にTiSi膜(Tiシリサイド膜)を形成する場合を例に挙げる。本実施形態にかかる成膜装置100は,図2Aに示すようなSi基板200を搬入してTi膜の成膜処理を実行する。
【0040】
先ず,処理室111内にSi基板200が搬入されてサセプタ112上に載置されると,ゲートバルブGが閉じられ,ヒータ115,123によってサセプタ112とシャワーヘッド120が所定の温度に加熱される。そして,処理室111内を排気装置152によって所定の真空圧力に減圧する。
【0041】
この状態で図2Aに示すように,TiClガスなどのTi含有成膜ガスと,Hガスなどの還元ガスを供給して,高周波電源143によりシャワーヘッド120に所定の高周波を所定のパワーで供給してプラズマを生成する。これにより成膜ガスと還元ガスとを反応させて,Si基板200上にTi膜を形成する。こうして,図2Bに示すように,Si表面203および層間絶縁膜204の表面にはTi膜206が成膜される,一方,Si表面203の表面すなわちコンタクトホール205の底部では,堆積したTiが下地のSi表面203のSiと珪化反応(シリサイド化)して,自己整合的にTiSi膜207が形成される。
【0042】
ところで,このようにプラズマを生成してTi膜を生成する場合に,還元ガス(ここではHガス)を過剰に導入すると,還元ガスに対するTiClガスの流量比が低下する。このため,Ti膜の成膜反応はTiClガスが供給されると,それとともに反応が進行する所謂供給律速モード(transfer limited mode)での反応が主となる。
【0043】
供給律速モードでの成膜反応は,基板表面付近で成膜反応が起こり,そこでTiClガスが消費されるので,コンタクトホール205のホール径が小さく,アスペクト比が大きくなるほど,底部までなかなか届き難くなる。このため,図3に示すようにコンタクトホール205のホール径が小さく,アスペクト比が大きい場合には,コンタクトホール205の底部の膜厚は基板表面の膜厚に比して薄くなってしまい,カバレッジが悪化するという問題がある。
【0044】
このため,本発明者らは,Hガスを減少させるとともにTiClガスの流量を増大させて,Hガスに対するTiClガスの流量比を増大してみたところ,Ti膜は図4に示すように,コンタクトホール205の底部の膜厚は基板表面の膜厚とほぼ同様になり,カバレッジが改善した。
【0045】
これは,TiClガスの流量比を増大させることで,Ti膜の成膜反応はTiClガスの供給よりも成膜反応の方が進行する所謂反応律速モード(reaction limited mode)での反応が主となっているからと考えられる。
【0046】
この場合,もし供給律速モードから反応律速モードに切り替わる境界のTiClガスの流量比が分かれば,TiClガスの流量をその境界の流量以上にすることで常にカバレッジのよい反応律速モードで成膜反応を起こさせることができる。そこで,供給律速モードから反応律速モードに切り替わる境界のTiClガスの流量比を求める実験を行った。
【0047】
先ず,Si膜を表面全体に形成したベア基板のSi膜上にTi膜を成膜する実験を行った結果について説明する。Si膜のベア基板を用いたのは,コンタクトホール205の底部のSi表面203上での成膜反応を評価するためである。この実験では,処理ガスとしては,還元ガスであるHガスの流量を100sccmに固定し,TiClガスの流量を12sccm〜80sccmの間で変化させてTi膜の成膜処理を行って成膜レートを求めた。
【0048】
図5にこの実験の結果を示す。図5は縦軸に成膜レートをとり,横軸にTiClガスの流量をとって,Si膜上にTi膜を成膜した場合におけるTiClガスの流量と成膜レートとの関係をグラフにしたものである。なお,この実験による他の処理条件は,下部電極116の温度を550℃,シャワーヘッド120の温度を420℃,処理室111内の圧力を666Paとし,TiClガスとHガスの他に2000sccmのArガスを供給し,シャワーヘッド120に450kHzの高周波(RF)を800Wのパワーで供給してプラズマを生成して,30秒間成膜処理を行った。
【0049】
図5に示す実験結果によれば,供給律速モードから反応律速モードに切り替わる境界のTiClガスの流量は,25.3sccmであることが分かる。すなわち,TiClガスの流量比が境界流量25.3sccm以下の領域は供給律速モードによる反応領域である供給律速領域となる。そして,TiClガスの流量が境界流量25.3sccm以上の領域は反応律速モードによる反応領域である反応律速領域となる。この反応律速領域の境界流量をHガスに対するTiClガスの流量比(TiClガスの流量/Hガスの流量)で表すと,25.3sccm/100sccmとなる。
【0050】
供給律速領域では,Ti膜の成膜レートはTiClガスの流量を大きくするほど増大し,境界流量25.3sccmで成膜レートが最大となる。一方,反応律速領域では,Ti膜の成膜レートはTiClガスの流量を大きくするほど減少する。さらにTiClガスの流量を大きくすると,減少が緩やかになる。これによれば,TiClガスの流量が過剰になると飽和傾向になることが分かる。
【0051】
次に,SiO膜を表面全体に形成したベア基板のSiO膜上にTi膜を成膜する実験を行った結果について説明する。SiO膜のベア基板を用いたのは,基板表面及びコンタクトホール205の開口部表面や内壁部表面を構成する層間絶縁膜204上での成膜反応を評価するためである。ここでは,Si膜のベア基板を用いたときと同様の処理条件でTi膜を成膜した。
【0052】
図6にこの実験の結果を示す。図6は縦軸に成膜レートをとり,横軸にTiClガスの流量をとって,SiO膜上にTi膜を成膜した場合におけるTiClガスの流量と成膜レートとの関係をグラフにしたものである。なお,図6のグラフには,図5に示すグラフを重ねて示している。
【0053】
図6における点線グラフは,Si膜上のTi膜の成膜結果より予測されるSiO膜上のTi膜の成膜結果を示したものである。通常のプラズマCVDによるTi膜の成膜では,成膜温度によってSi膜上とSiO膜上との成膜レートに一定の変化があることが知られている。基板温度が高温になると,Si膜上ではTi膜成膜時にHガスによるTiの還元反応と同時に基板のSiによるTiの還元反応も起こるため,Si膜上の成膜レートはSiO膜上の成膜レートよりも大きくなる。
【0054】
また,Si膜上では,基板のSiによるTiの還元反応と同時に,そのSiとTiのシリサイド化反応も並行して進行するが,これらの反応速度は基板温度によって決定されるため,基板温度が一定であれば成膜速度比も一定となる。このため,SiO膜上の成膜レートのグラフは,Si膜上の成膜レートのグラフから予測できる。本実験では,SiO膜上の成膜レートの予測値をSi膜上の成膜レートの実測値の2/3倍として計算し,図6にSiO膜上の成膜レートの予測グラフ(点線グラフ)として示している。
【0055】
図6に示す実験結果によれば,SiO膜上においてもSi膜上と同様に,供給律速モードから反応律速モードに切り替わる境界のTiClガスの流量は,25.3sccmであることが分かる。すなわち,TiClガスの流量が境界流量25.3sccm以下の領域は供給律速モードによる反応領域である供給律速領域となる。そして,TiClガスの流量が境界流量25.3sccm以上の領域は反応律速モードによる反応領域である反応律速領域となる。
【0056】
また,SiO膜上においてもSi膜上と同様に,供給律速領域では,Ti膜の成膜レートはTiClガスの流量を大きくするほど増大し,境界流量25.3sccmで成膜レートが最大となる。一方,反応律速領域では,Ti膜の成膜レートはTiClガスの流量を大きくするほど減少する。さらにTiClガスの流量を大きくすると,減少が緩やかになる。これによれば,SiO膜上においてもTiClガスの流量が過剰になると飽和傾向になることが分かる。
【0057】
ところが,SiO膜上の成膜レートの実測グラフは,TiClガスの流量が12〜40sccmの領域では予測グラフとほぼ一致するのに対して,TiClガスの流量が40sccmを超える領域,すなわち飽和傾向にある領域では,実測グラフの方が予測グラフよりも低くなっていることが分かる。
【0058】
これは,TiClガスの流量の増加に伴って,Ti膜の成膜反応とともにTi膜のエッチング反応が同時に起こっているからであると考えられる。図6の実験によれば,TiClガスの流量が境界流量45.6sccm以上の領域で,エッチング反応が成膜反応と同時に起こっていることになる。このエッチング反応ありの境界流量をHガスに対するTiClガスの流量比(TiClガスの流量/Hガスの流量)で表すと,45.6sccm/100sccmとなる。
【0059】
以下,このような成膜反応とエッチング反応について,SiO膜上の反応とSi膜上の反応と比較しながら,より詳細に説明する。SiO膜上のTi膜成膜では,気相中でプラズマのアシストによって分解されたTiClガスが基板表面で還元ガスであるHガスやHラジカルと熱エネルギにより反応してTi膜が成膜される。ところが,成膜されたTi膜はTiClガスが分解して発生したClガスやClラジカルによって,Cl+Ti→TiClxの反応が起こるため,成膜と同時にエッチング反応も起こっていると考えられる。
【0060】
これに対して,Si膜上のTi膜成膜では,分解されたTiClxガスが基板表面でHガスやHラジカルの還元ガス,熱エネルギによってSiと反応し,Tiシリサイド(TiSix)を形成する。このシリサイド化反応によって形成されたTiシリサイドは,Ti原子とSi原子とが強固に結合しているため,TiClガスが分解して発生したClガスやClラジカルとは反応できず,エッチング反応は起こらない。
【0061】
こうして,図6に示すTiClガスの流量が境界流量45.6sccm以上の領域では,TiClガスの流量の増加に伴って気相中にTiClガスが分解して発生したClガスやClラジカルの濃度が高くなり,積極的にエッチング反応が起こった結果として,SiO膜上の成膜レートの実測グラフは,予測グラフよりも低くなったものと考えられる。
【0062】
なお,上述のようにTiClガスの流量を大きくすると,SiO膜上では成膜反応と同時にエッチング反応が起こるのに対して,Si膜上ではエッチング反応は起こらないため,TiClガスの流量を大きくしても,Si膜上はエッチングによるダメージを受けないことが分かる。
【0063】
以上によれば,図6に示す反応律速領域にTiClガスの流量が入るようにすることで,ホール径が小さく,アスペクトの大きなコンタクトホール205であっても,Ti膜のカバレッジを大幅に改善できることが分かる。
【0064】
すなわち,反応律速領域では,基板温度が反応の律速過程となるので,基板表面近傍でTiClガスが消費されてコンタクトホール205内でのTiClガスの流量が減少しても成膜レートが変化しない。このため,コンタクトホール205内に供給律速領域の場合よりも良好なカバレッジのTi膜を形成することができ,しかもコンタクトホール205の底部のSi表面203上には供給律速領域の場合よりも厚いTi膜を成膜することができる。
【0065】
さらに,図6に示す反応律速領域のうちエッチング反応ありの領域にTiClガスの流量が入るようにすることで,コンタクトホール205の底部のSi表面203上にさらに厚いTi膜を成膜することができる。すなわち,エッチング反応ありの領域では,基板表面を構成するSiO膜などの層間絶縁膜204上では成膜反応とエッチング反応とが同時に起こるのに対して,コンタクトホール205の底部のSi表面203上ではエッチング反応が起こらない。このため,相対的に基板表面に形成されるTi膜よりも,コンタクトホール205の底部のSi表面203に形成されるTi膜の方を厚くすることができる。
【0066】
ところで,上述したTi膜成膜反応における供給律速領域と反応律速領域との境界のTiClガスの流量は,TiClガスの流量以外の処理条件を変えることで調整できる。これによれば,Ti膜成膜反応の反応律速領域をTiClガスの流量以外の処理条件によって制御することができる。
【0067】
具体的にはHガスなどの還元ガスの流量,処理室111内の圧力,高周波電源143のRFパワーによって反応律速領域を制御できるので,その実験結果について以下に説明する。なお,図6でも説明したように,供給律速領域と反応律速領域の境界はSi膜上にTi膜を成膜する場合も,SiO膜上にTi膜を成膜する場合と同様であるため,以下の実験ではSiO膜のベア基板を用いて,SiO膜上にTi膜を成膜した。
【0068】
(反応律速領域のHガス流量依存性)
先ず,反応律速領域のHガス流量依存性を評価する実験を行った結果について説明する。この実験では,Hガスの流量を30sccm〜100sccmの間で変化させて,それぞれのHガスの流量で図6の場合と同様にベア基板のSiO膜上にTi膜の成膜処理を行って成膜レートを求めた。なお,他の処理条件は図5に示す実験のときと同様である。
【0069】
図7,図8にこの実験結果を示す。図7は,縦軸に成膜レートをとり,横軸にTiClガスの流量をとって,Hガスの流量を30sccm,40sccm,50sccm,100sccmにしたときの成膜レートのグラフをそれぞれ重ねて示したものである。図8は,縦軸に反応律速領域の境界のTiClガスの流量をとり,横軸にHガスの流量をとって,これらの関係をまとめたものである。図8の反応律速領域の境界のTiClガスの流量は,図7において成膜レートがピークのときのTiClガスの流量である。
【0070】
図7,図8の実験結果によれば,Hガスの流量の増加に伴って,反応律速領域の境界のTiClガスの流量も比較的大きく増加する傾向があることが分かる。これによれば,Hガスの流量を増加することによって,反応律速領域の境界のTiClガスの流量が増加するように制御できる。
【0071】
(反応律速領域の処理室内圧力依存性)
次に,反応律速領域の処理室内圧力依存性を評価する実験を行った結果について説明する。この実験では,RFパワー1000Wのときに処理室111内の圧力を400Pa,500Pa,666Paに変化させて,それぞれの圧力でTiClガスの流量を12sccm〜80sccmの間で変化させて図6の場合と同様にベア基板のSiO膜上にTi膜の成膜処理を行って成膜レートを求めた。また,RFパワー800Wのときに処理室111内の圧力を500Pa,666Paに変化させて上記と同様の成膜処理を行って成膜レートを求めた。なお,他の処理条件は図5に示す実験のときと同様である。
【0072】
図9,図10にこの実験結果を示す。図9は,縦軸に成膜レートをとり,横軸にTiClガスの流量をとって,各成膜処理での成膜レートのグラフを重ねて示したものである。図10は,縦軸に反応律速領域の境界のTiClガスの流量をとり,横軸に処理室内圧力をとって,これらの関係をまとめたものである。図10の反応律速領域の境界のTiClガスの流量は,図9において成膜レートがピークのときのTiClガスの流量である。
【0073】
図9,図10の実験結果によれば,処理室内圧力の増加に伴って,反応律速領域の境界のTiClガスの流量も僅かではあるが増加する傾向があることが分かる。これによれば,処理室内圧力を増加することによっても,反応律速領域の境界のTiClガスの流量が増加するように制御できる。
【0074】
(反応律速領域のRFパワー依存性)
次に,反応律速領域のRFパワー依存性の評価する実験を行った結果について説明する。
この実験では,Hガスの流量を100sccmに固定して,高周波電源143のRFパワーを500W,800W,1000W,1200Wに変化させて図6の場合と同様にベア基板のSiO膜上にTi膜の成膜処理を行って成膜レートを求めた。また,Hガスを30sccmに固定して,RFパワーを500W,800Wに変化させて上記の場合と同様にベア基板のSiO膜上にTi膜の成膜処理を行って成膜レートを求めた。なお,他の処理条件は図5に示す実験のときと同様である。
【0075】
図11,図12にこの実験結果を示す。図11は,縦軸に成膜レートをとり,横軸にTiClガスの流量をとって,各成膜処理での成膜レートのグラフを重ねて示したものである。図12は,縦軸に反応律速領域の境界のTiClガスの流量をとり,横軸にRFパワーをとって,これらの関係をまとめたものである。図12の反応律速領域の境界のTiClガスの流量は,図11において成膜レートがピークのときのTiClガスの流量である。
【0076】
図11,図12の実験結果によれば,Hガスの流量が大きい場合(100sccm)のみならず,Hガスの流量が小さい場合(30sccm)でも,RFパワーの増加に伴って,反応律速領域の境界のTiClガスの流量も比較的大きく増加する傾向があることが分かる。これによれば,RFパワーを増加することによっても,反応律速領域の境界のTiClガスの流量が増加するように制御できる。
【0077】
このように,TiClガスの流量以外の処理条件例えばHガスの流量,処理室内圧力,RFパワーによってTi膜成膜反応の反応律速領域を制御することができる。さらにこれらの処理条件によって図6に示すエッチング反応ありの領域も制御できる。
【0078】
そこで,本実施形態にかかるTi膜の成膜処理では,この成膜処理に適用しようとするTiClガスの流量が反応律速領域やエッチング反応ありの領域に入るように,TiClガスの流量以外の処理条件を変えることによって反応律速領域やエッチング反応ありの領域を制御する。これにより,常に反応律速領域で成膜処理を行うことができるので,アスペクト比の大きなコンタクトホールが形成されていても,常にカバレッジのよいTi膜を形成することができる。
【0079】
ところで,反応律速領域やエッチング反応ありの領域で成膜処理を行うためには,単にTiClガスの流量を増加すればよいとも考えられる。ところが,TiClガスの流量が多すぎると,成膜したTi膜の比抵抗が上昇してしまうという問題があることが分かった。このため,比抵抗が上昇しない範囲でTiClガスの流量を増加させる必要がある。
【0080】
ここで,TiClガスの流量と成膜したTi膜の比抵抗との関係についての実験を行った結果を図13に示す。この実験では,処理室内圧力を500Pa,RFパワーを1000Wとし,それ以外の処理条件は図5の場合と同様にして,ベア基板のSi膜上にTi膜の成膜処理を行い,それによって形成されたTi膜の比抵抗を測定した。
【0081】
図13は縦軸に比抵抗をとり,横軸にTiClガスの流量をとって,TiClガスの流量と成膜したTi膜の比抵抗との関係をグラフにしたものである。これによれば,TiClガスの流量が55sccmを超えたところで,比抵抗が上昇し始める。
【0082】
以上の実験結果を踏まえて,Ti膜成膜処理において,最も適切なTiClガスの流量の実用範囲について図面を参照しながら説明する。図14は,上述した実験のうち反応律速領域の境界のTiClガスの流量が最も小さかった13sccmとなる成膜レートのグラフ(図11)と,比抵抗のグラフ(図13)とを重ねて表したものである。
【0083】
これによれば,TiClガスの流量の実用範囲は,流量比(TiClガスの流量/Hガスの流量)で表すと,13sccm/100sccm〜55sccm/100sccmの範囲で定めることによって,カバレッジのよいTi膜を成膜することができる。また,コンタクトホール205の底部を厚くしたい場合はエッチング反応ありの領域である45.6sccm/100sccm〜55sccm/100sccmの範囲で定めることが好ましく,エッチング反応を進行させたくない場合は,13sccm/100sccm〜45.6sccm/100sccmの範囲で定めることが好ましい。
【0084】
次に,実際にコンタクトホールにTi膜を成膜した場合の実験結果を図15,図16に示す。図15は,図6に示す場合においてTiClガスの流量を12sccmとして供給律速領域で成膜した場合と,TiClガスの流量を40sccmとして反応律速領域かつエッチングありの領域で成膜した場合についてコンタクトホール全体を示す図である。図16は,図15に示すコンタクトホールの上部(Top),側部(Side),底部(Bottom)の拡大図である。下記表1は,図15,図16に示す各部の膜厚とカバレッジをまとめたものである。
【0085】
【表1】

【0086】
表1によれば,図6に示す反応律速領域の場合(ここではさらにエッチングありの領域でもある)には,コンタクトホールの底部の厚みが供給律速領域の場合に比して,69%から207.3%と大幅に改善されていることが分かる。
【0087】
また,コンタクトホールの側壁への成膜も,供給律速領域の場合は上部から下部にかけて膜厚が減少している。これに対して,反応律速領域の場合は上部から下部にかけて膜厚がほぼ一定となっており,供給律速領域の場合に比してカバレッジが改善されている。これによれば,コンタクトホール内では上部から下部にかけてほぼ同等の成膜レートで成膜できていることが分かる。
【0088】
さらに,基板表面の膜厚についても,反応律速領域の場合は,供給律速領域の場合に比して12.4nmから5.1nmと薄くなっている。これによれば,基板表面でのエッチング反応が進行していることが分かる。この基板表面の厚みを薄くすることができることによって,コンタクトホール側壁へのカバレッジも大幅に改善することができる。
【0089】
これにより,このTi膜成膜処理の後に実行されるバリア膜(例えばTiN膜)やコンタクトプラグ用膜(例えばタングステン膜)をカバレッジよく形成することができる。さらに,コンタクトホール側壁にも十分な厚さのTi膜が形成されるので,バリア膜を形成せずにTi膜上に直接コンタクトプラグ用膜を形成することも可能となり,ひいてはスループットを向上することができ,製造コストも低下することができる。
【0090】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は,半導体ウエハ,FPD基板,液晶基板,太陽電池用基板などの被処理基板上に所定の膜を成膜する成膜方法及び成膜装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
100 成膜装置
111 処理室
111A 天壁
111B 底壁
111C 側壁
112 サセプタ
113 支持部材
114 ガイドリング
115 ヒータ
116 下部電極
117 円形の穴
118 搬入出口
119 絶縁部材
120 シャワーヘッド
121 ベース部材
122 シャワープレート
123 ヒータ
124 吐出孔
125 ガス拡散空間
126 ガス導入ポート
130 ガス供給手段
131〜133 各ガス供給源
131C〜133C マスフローコントローラ
131V〜133V バルブ
131L〜133L 各ガス供給ライン
137 ガス混合部
138 混合ガス供給ライン
140,141 ヒータ電源
142 整合器
143 高周波電源
150 排気室
151 排気管
152 排気装置
160 支持ピン
161 支持板
162 駆動機構
190 制御部
192 操作部
194 記憶部
200,W Si基板
202 Si基材
203 Si表面
204 層間絶縁膜
205 コンタクトホール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内にチタン含有成膜ガスと還元ガスを含む処理ガスを供給してプラズマを生成することによって,コンタクトホールが形成された被処理基板上にチタン膜を成膜する方法であって,
前記チタン膜の成膜処理に適用しようとする前記成膜ガスの流量が,前記成膜処理の反応律速領域に入るように,前記還元ガスの流量,前記処理室内の圧力,前記プラズマを生成するために電極に印加する高周波パワーのいずれかを変えることによって,前記反応律速領域を制御することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記還元ガス流量を増加することによって,前記成膜処理の反応律速領域の境界となる前記原料ガスの流量が大きくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記処理室内圧力を増加することによって,前記成膜処理の反応律速領域の境界となる前記原料ガスの流量が大きくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記高周波パワーを増加することによって,前記成膜処理の反応律速領域の境界となる前記原料ガスの流量が大きくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記成膜ガスの流量は,前記還元ガス流量に対する前記成膜ガスの流量比が13sccm/100sccm以上55sccm/100sccm以下となる範囲で設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項6】
前記成膜ガスの流量は,前記還元ガス流量に対する前記成膜ガスの流量比が13sccm/100sccm以上45.6sccm/100sccm以下となる範囲で設定したことを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記成膜ガスの流量は,前記還元ガス流量に対する前記成膜ガスの流量比が45.6sccm/100sccm以上55sccm/100sccm以下となる範囲で設定したことを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
【請求項8】
処理室内にチタン含有成膜ガスと還元ガスを含む処理ガスを供給してプラズマを生成することによって,コンタクトホールが形成された被処理基板上にチタン膜を成膜する方法であって,
前記成膜ガスの流量,前記還元ガスの流量,前記処理室内の圧力,前記プラズマを生成するために電極に印加する高周波パワーを含む前記成膜処理の処理条件によって決定された前記成膜処理の反応律速領域で前記成膜ガスと還元ガスとを反応させることによって,前記被処理基板上にチタン膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
処理室内にチタン含有成膜ガスと還元ガスを含む処理ガスを供給してプラズマを生成することによって,コンタクトホールが形成された被処理基板上にチタン膜を成膜する成膜装置であって,
前記被処理基板を載置するサセプタと,
前記処理ガスを処理室内に供給するシャワーヘッドと,
前記サセプタとの間にプラズマを生成するための高周波を所定のパワーで前記シャワーヘッドに供給する高周波電源と,
前記処理室内を排気して所定の圧力に減圧する排気装置と,
前記チタン膜の成膜処理に適用しようとする前記成膜ガスの流量が,前記成膜処理の反応律速領域に入るように,前記還元ガスの流量,前記処理室内の圧力,前記高周波パワーのいずれかを変えることによって,前記反応律速領域を制御する制御部と,
を備えることを特徴とする成膜装置。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−72475(P2012−72475A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219947(P2010−219947)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】