説明

成膜装置および成膜方法

【課題】 放電初期状態のバッチ間差を保証して、所定の組成の膜を効率よく形成することができる成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】 本発明の成膜方法は、チャンバ内にスパッタリングガスおよび反応ガスを供給して所定の真空度に保ち、チャンバ内に設けられ、ターゲット保持部により基板に対向して保持された金属ターゲットに電圧を印加してスパッタリングを行い基板に所定の膜を形成するものである。ターゲット保持部には、金属ターゲットが基板と対向する側の反対側にマグネットが移動可能に設けられている。マグネットは基板と金属ターゲットとが対向する方向に移動手段により移動される。チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、金属ターゲットの電圧を測定し、かつ放電の検出を開始し、その電圧が所定の電圧で放電が生じるようにマグネットを移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応ガス雰囲気でスパッタリングを行い、所定の組成の膜を形成する成膜装置および成膜方法に関し、特に、放電初期状態のバッチ間差を保証して、所定の組成の膜を効率よく形成することができる成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、金属化合物の膜を形成する場合、真空チャンバ内に、形成する金属化合物の膜の組成を得るための反応ガスを含んだ雰囲気下、例えば、酸化物を形成する場合には酸素、窒化物を形成する場合には窒素を含んだ雰囲気下で、さらにアルゴンガス(Arガス)を導入し、金属ターゲットに、例えば、直流電圧を印加して放電させて、イオン化したアルゴンガスを金属ターゲットに衝突させて、金属ターゲットから飛び出した金属原子と反応ガスとを反応させて、化合物を得て、金属化合物の膜を形成する反応性スパッタと呼ばれる方法が用いられている。
【0003】
反応ガスは、金属ターゲットとの反応性に富むため、放電中に導入する反応ガス比を上げていくと、ある反応ガス比で、金属ターゲットの表面が化合物被膜で覆われる。
Si、Al、Tiなどの金属と化合物とでは抵抗が大きく異なり、またスパッタ率にも大きな差がある。
このため、図3に示す反応ガス量と放電電圧との特性曲線100(以下、単に放電特性曲線100という)のように、反応ガス比を上げると放電電圧が急降下するとともに、金属ターゲットの表面が化合物皮膜で覆われるため、成膜速度も非常に遅くなる。
金属ターゲットの表面が金属状態でのスパッタを金属モード(mode)のスパッタといい、金属ターゲットの表面が化合物で覆われた状態を化合物モード(mode)のスパッタという。
【0004】
金属モードでは、成膜速度は速いものの、反応度が低い。また、金属モードでは、形成される膜は、化合度が低く金属に近い組成を有し、不活性ガスでのスパッタで得られる完全な金属膜に似て着色されている。
一方、化合物モードでは、ターゲット表面が完全な化合物になっているのをスパッタするため形成される膜は透明であるものの、酸化された表面は硬く、スパッタ率が低いため、成膜速度が遅い。
そこで、透明な化合物の膜(無機膜)を速い成膜速度で得るために、金属モードの領域Amと化合物モードの領域Aoとの間の遷移領域Atで成膜を行う方法がある。
この遷移領域Atに、着色する膜組成と透明な膜が得られる組成との変化点γがあり、この変化点γよりも化合物モード側の放電電圧を成膜電圧とすると、透明な化合物を形成することができる。
しかし、遷移領域Atにおいては、変化点γを境に、放電特性曲線100内での位置が僅かに変動するだけで、成膜速度、または形成される膜の組成が著しく変化し、膜の着色程度も著しく変化するため、成膜プロセスの大きな不安定化要因となっている。
このようなことから、放電電圧の値を常に一定に保つ様に、反応性ガスの導入量を制御する方式が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の反応性スパッタリング工程の調整法は、反応性スパッタリング工程の電力消費を定める両方の要因である動作電圧または動作電流のうちの一方の要因により定められる、物理的な特性曲線上の動作点を、すなわち、陰極電圧ないし動作電流の強さとスパッタリング装置の反応気体流との関係を示す特性曲線上の動作点を、処理室の中へ導びかれる反応気体の調量により設定調整して一定に保持するものである。
また、特許文献1は、例えば、動作電圧(放電電圧)の値により定められる、スパッタリング装置の動作点を、処理室の中へ導びかれる反応気体たとえばOにより設定調整して一定にまたは近似的に一定に維持するものでもある。
【0006】
しかし、金属ターゲットの削れの進行により磁場強度が変わると、例えば、図4(a)に示す放電特性曲線100が、図4(b)に示す放電特性曲線102のように変化する。この場合、金属モードの放電電圧がαからαに変動し、これに伴い遷移領域Atも変動し、更には変化点γも変動する。
また、金属ターゲットの削れ進行以外にも、防着板の表面状態、真空チャンバ内の残留ガスなど日々の装置の状態によっても、図5に示すように、放電電圧特性は変動する。この場合、変化するのは、主に、図5において◆で示す金属モードにおける放電電圧であり、図5において□で示す化合物モードにおける放電電圧はほぼ一定である。
このため、特許文献1のように、反応気体の量を制御して、放電電圧値を常に一定に保っても、放電特性曲線100上での成膜時における動作電圧が変動してしまい、連続稼動均一性、または再現性が得られない膜が形成されてしまう。
これに対しても、マグネットの位置を制御することで、成膜時間に従って放電特性曲線が変化しても、同じ位置で成膜する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2のスパッタ装置は、マグネトロンカソードのタ−ゲットと、LCD基板が載置されるアノード電極と、タ−ゲットの裏面に配置されたマグネットとを有するものであり、タ−ゲットとアノード電極間のプラズマ空間のプラズマ密度をプラズマモニタでモニタリングし、プラズマモニタの測定データの基づいて制御装置によりマグネット位置調整手段を駆動し、マグネットにより発生される磁場の強さを金属ターゲット消耗の度合いに応じて金属ターゲットとマグネット間距離を調整し、均一な膜を再現するようにしたものである。
このマグネット位置調整手段は、マグネットを金属ターゲットに対して上下方向へ調節可能な距離制御機構と、マグネットを金属ターゲットに対して傾きを作るマグネット揺動機構と、マグネット揺動機構と距離制御機構を含むマグネット機構全体を水平移動させる水平移動機構とからなり、各々の機構は制御装置により制御されるモータにより駆動されるものである。
【0008】
【特許文献1】特開平5−78836号公報
【特許文献1】特開平11−335830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2においては、一度連続稼動してしまえば有効である。しかしながら、ターゲットまたは防着板交換といった作業が入れば、初期の放電特性曲線が変動してしまうため、バッチ間の再現性に対しては保証ができない。
【0010】
また、真空雰囲気の成膜室(真空チャンバ)内で、スパッタリングによって、長尺な基板(ウェブ状の基板)に連続的に成膜を行う成膜装置として、例えば、ドラムに対面して、金属ターゲットを配置したロールツーロール型の成膜装置が用いられる。
このロールツーロール型の成膜装置では、ドラムの所定領域に基板を巻き掛けてドラムを回転することにより、基板を所定の成膜位置に位置して長手方向に搬送しつつ、ドラムと金属ターゲットとの間にアルゴンガスおよび反応ガスを導入し、金属ターゲットに直流電圧を印加して放電させプラズマを発生させて、イオン化されたアルゴンガスを金属ターゲットに衝突させて、金属ターゲットから飛び出した金属原子と反応ガスとを反応させて、基板の表面に金属化合物の膜を形成するものである。
【0011】
このロールツーロール型の成膜装置では、長尺な基板のドラムに対する架け替え作業など、成膜室状態に影響がある作業がなされれば、初期の放電特性曲線が変動するため、バッチ間の再現性に対しては保証ができないという問題点がある。
以上のように、成膜中の放電電圧を一定にすることは知られているものの、放電初期状態のバッチ間差を保証するものはなく、現在、放電初期状態のバッチ間差を保証するものが求められている。
特に、酸化アルミニウム膜(AlOx膜)を成膜する場合、反応ガス量の変化に対して得られる膜の組成の変化が大きく、膜質のみならず、成膜速度も大きく影響を受けるため、生産効率の点でも、放電初期状態のバッチ間差を保証するための解決策が求められている。
【0012】
また、ロールツーロール型の成膜装置による連続成膜では、放電電圧特性曲線の変化が分っている場合を除いて、成膜速度の維持と、組成の維持のため、放電電圧特性曲線における透明/着色変化点からずれていないか途中で確認する必要がある。
この場合、通常、ロールで基板を搬送したまま電圧を上げるか、または下げて着色の有無を確認して、成膜のための放電電圧の値を設定し直している。
この放電電圧の値の設定作業は、面倒な上に、放電電圧の値の設定作業をしている間に、基板に成膜された着色部位は捨てることとなる。また、インラインの透過計などの設備が成膜装置になければ、この放電電圧値の調整は人が確認して行うため、感応的なものとなり、放電電圧値の調整により、かえって品質を狂わすことになりかねないという問題点もある。
【0013】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、初期状態のバッチ間差を保証して、所定の組成の膜を効率よく形成することができる成膜装置および成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、反応ガスを供給してスパッタリングを行い基板に所定の膜を形成する成膜装置であって、チャンバと、前記チャンバ内にスパッタリングガスを供給するスパッタリングガス供給部と、前記チャンバ内に前記反応ガスを供給する反応ガス供給部と、前記チャンバ内を所定の真空度にする真空排気部と、前記チャンバ内に設けられ、前記基板を保持するステージと、前記チャンバ内に設けられ、前記ステージに対向して、金属ターゲットを保持するターゲット保持部と、前記ターゲット保持部の、前記金属ターゲットが前記ステージと対向する側の反対側に、前記ステージと前記金属ターゲットとが対向する方向に移動可能に設けられたマグネットと、前記マグネットを前記ステージと前記金属ターゲットとが対向する方向に移動させる移動手段と、前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加する電源部と、前記金属ターゲットの電圧を測定する電圧測定部と、前記チャンバ内の放電を検出する放電検出部と、前記チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、前記電源部により前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、前記電圧測定部により前記金属ターゲットの電圧を測定するとともに、前記放電検出部による放電の検出を開始し、前記金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させる制御部とを有することを特徴とする成膜装置を提供するものである。
【0015】
また、本発明の第2の態様は、反応ガスを供給してスパッタリングを行い基板に所定の膜を形成する成膜装置であって、所定の搬送経路で、長尺の基板を搬送する第1の搬送手段と、チャンバと、前記チャンバ内に設けられ、前記基板の搬送方向と直交する方向に回転軸を有し、前記第1の搬送手段により搬送された基板が、表面の所定の領域に巻き掛けられる回転可能なドラムと、所定の搬送経路で、前記ドラムに巻き掛けられた基板を搬送する第2の搬送手段と、前記チャンバ内を所定の真空度にする真空排気部と、前記チャンバ内にスパッタリングガスを供給するスパッタリングガス供給部と、前記チャンバ内に前記反応ガスを供給する反応ガス供給部と、前記チャンバ内に設けられ、前記ドラムに対向して、金属ターゲットを保持するターゲット保持部と、前記ターゲット保持部の、前記金属ターゲットが前記ステージと対向する側の反対側に、前記ステージと前記金属ターゲットとが対向する方向に移動可能に設けられたマグネットと、前記マグネットを前記ステージと前記金属ターゲットとが対向する方向に移動させる移動手段と、前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加する電源部と、前記金属ターゲットの電圧を測定する電圧測定部と、前記チャンバ内の放電を検出する放電検出部と、前記チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、前記電源部により前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、前記電圧測定部により前記金属ターゲットの電圧を測定するとともに、前記放電検出部による放電の検出を開始し、前記金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させる制御部とを有することを特徴とする成膜装置を提供するものである。
【0016】
本発明においては、前記移動手段による前記マグネットの移動は、前記基板に膜を形成する前、または前記基板への膜の形成中に行うことが好ましい。
さらに、本発明においては、前記基板に形成する膜は、酸化アルミニウム膜であることが好ましい。
さらにまた、本発明においては、前記基板と前記金属ターゲットとの間に、出入り自在に設けられたシャッターを有し、前記シャッターは、前記制御部により前記放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させるときに、前記基板と前記金属ターゲットとの間に配置されることが好ましい。
【0017】
本発明の第3の態様は、チャンバ内にスパッタリングガスおよび反応ガスを供給して所定の真空度に保ち、前記チャンバ内に設けられ、ターゲット保持部により基板に対向して保持された金属ターゲットに電圧を印加してスパッタリングを行い前記基板に所定の膜を形成する成膜方法であって、前記ターゲット保持部の、前記金属ターゲットが前記基板と対向する側の反対側にマグネットが移動可能に設けられ、前記マグネットは前記基板と前記金属ターゲットとが対向する方向に移動手段により移動されるものであり、前記チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、前記金属ターゲットの電圧を測定するとともに、前記チャンバ内の放電の検出を開始し、前記金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させることを特徴とする成膜方法を提供するものである。
【0018】
本発明においては、前記移動手段による前記マグネットの移動は、前記基板に膜を形成する前、または前記基板への膜の形成中に行うことが好ましい。
また、本発明においては、前記基板に形成する膜は、酸化アルミニウム膜であることが好ましい。
さらに、本発明においては、前記チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、前記金属ターゲットの電圧を測定するとともに、前記チャンバ内の放電の検出を開始し、前記金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させる際、前記基板と前記金属ターゲットとの間にシャッターを配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の成膜装置および成膜方法によれば、チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、ターゲット削れの進行、防着板の表面状態、または真空チャンバ内の残留ガスなど日々の装置の状態によって、反応ガスがない状態で放電する電圧が変化しても、マグネットの位置を変えることにより、所定の電流または電力で、すなわち、一定の電圧で、常に放電を生じる状態とすることができる。
ここで、反応ガスを用いて所定の膜を形成する場合、所定の膜を形成するための反応ガス量と放電電圧とを、例えば、反応ガスがない状態における放電電圧に基づいて、所定の成膜速度で成膜されるような成膜条件を設定している。このため、反応ガスがない状態における放電電圧が変化してしまうと、成膜に適した成膜条件であっても、必ずしも所定の成膜速度で、所定の組成を有する膜を形成することができない。しかしながら、本発明の成膜装置および成膜方法によれば、反応ガスがない状態における放電電圧が一定となるようにしているため、設定した成膜条件が、所定の膜が形成されない条件となることがなく、所定の成膜速度で、効率よく所定の組成を有する膜を形成することができる。
【0020】
しかも、本発明の成膜装置および成膜方法によれば、成膜装置を稼働させて、例えば、ターゲット削れの進行、または基板の交換、ターゲットの交換、もしくは防着板の交換などにより、防着板の表面状態、または真空チャンバ内の残留ガスなどの装置状態に変動が生じ、反応ガスがない状態での放電電圧が変動しても、その変動を抑制することができる。このため、成膜する基板のバッチが変わっても、反応ガスがない状態での放電電圧を一定の電圧にすることができ、所定の成膜条件で基板に成膜した場合、バッチに依らず、所定の組成を有する膜を形成することができる。
さらには、本発明では、チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、金属ターゲットの電圧を測定するとともに、チャンバ内の放電の検出を開始し、金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるようにマグネットを移動手段により移動させるだけであるため、効率よく放電電圧の変動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の成膜装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
【0022】
図1に示す本発明の第1の実施形態に係る成膜装置10は、真空チャンバ20内で、例えば、シリコンウエハなどの基板24の表面24aに、反応性スパッタリング法を用いて、化合物の膜を形成する装置である。
成膜装置10は、基本的に、下方にステージ22が設けられ、このステージ22に対向して金属ターゲット30を保持するターゲットフォルダ(ターゲット保持部)29が設けられている真空チャンバ20と、この真空チャンバ20に配管28を介して設けられた真空排気部26と、電源部32と、電圧測定部33と、ターゲットフォルダ29の金属ターゲット30がステージ22と対向する側の反対側(金属ターゲット30の裏面30b側)で、かつターゲットフォルダ29に保持された金属ターゲット30と整合する位置に設けられたマグネット34を収納するマグネット収納部36と、このマグネット34を、ステージ22と金属ターゲット30とが対向する方向H(以下、対向方向Hという)に移動させる駆動部38と、制御部40と、スパッタガス供給部42と、反応ガス供給部46と、プラズマ検出器(放電検出部)50とを有する。また、成膜装置10は、上記以外にも、成膜する基板24の周囲に、防着板など、一般的なスパッタリング装置が備えるものを有する。
成膜装置10においては、真空チャンバ20内の金属ターゲット30の表面30aの下方の空間がプラズマの発生空間Spとなる。
【0023】
真空チャンバ20は、例えば、ステンレスなど、各種の真空チャンバで利用されている材料を用いて構成されている。
ステージ22は、基板24を保持するものであり、例えば、基板24を水平方向および垂直方向に移動させることができるものである。
【0024】
真空排気部26は、真空チャンバ20内を排気して所定の真空度に保つものであり、ドライポンプおよびターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有するものである。また、真空チャンバ20には、内部の圧力を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられている。
なお、真空チャンバ20の到達真空度には、特に限定はなく、実施する成膜方法等に応じて、十分な真空度を保てればよい。この真空排気部26は、制御部40により制御される。
【0025】
ターゲットフォルダ29は、凹部を有し、この凹部に金属ターゲット30が嵌め込まれ、金属ターゲット30を保持するものである。また、ターゲットフォルダ29は、例えば、ボルトなどで金属ターゲット30を固定するものであってもよい。
金属ターゲット30は、形成する膜の原料となるものであり、基板24の表面24aに形成する膜の組成に応じた金属により形成されている。例えば、SiO膜を形成する場合、金属ターゲット30は、Siにより形成される。この金属ターゲット30は、一般的なスパッタリングに用いられるものである。
【0026】
電源部32は、金属ターゲット30に所定の電流または電力を印加するものである。電源部32は、直流電圧または交流電圧を発生させる機能を有し、直流電圧または交流電圧を調節して、金属ターゲット30に所定の電流または電力を印加するものである。
例えば、電源部32は、直流電圧、高周波電圧、または直流パルス電圧(DCパルス電圧)を所定の電圧で発生させるものである。この電源部32は、例えば、公知のDCスパッタリング装置、RFスパッタリング装置またはDCパルススパッタリング装置で利用されている各種電源を用いることができる。
【0027】
電圧測定部33は、金属ターゲット30の電圧を測定するものである。電源測定部33は、金属ターゲット30の電圧を測定できるものであれば、特に限定されるものでない。また、電圧測定部33は、制御部40に接続されており、この制御部40に、測定した電圧の値を出力する。
【0028】
マグネット34は、プラズマ放電を高密度に維持するために設けられるものであり、金属ターゲット30の表面30aに一定の磁力を発生させる。このマグネット34は、金属ターゲット30の裏面30b側に、この金属ターゲット30と整合する位置に設けられている。マグネット34は、例えば、平板状に構成されているものであり、金属ターゲット30の裏面30b側に平行に設置されている。このマグネット34は、公知のマグネトロンスパッタリング装置で利用されているマグネットが用いられる。
【0029】
マグネット収納部36は、マグネット34を対向方向Hに移動可能に収納するものである。このマグネット収納部36は、マグネット34を対向方向Hに移動させる移動機構(図示せず)を備えている。
この移動機構は、例えば、マグネット34に取り付けられたブラケットに送りネジを取り付け、この送りネジに雌ネジ部を備えた保持部材が取り付けられたものである。
【0030】
駆動部38は、例えば、モータを備えており、このモータに、移動機構の送りネジが接続されている。この駆動部36は、制御部40からの指示信号に基づいてモータが回転されて、マグネット34を対向方向Hに移動させて、マグネット34と真空チャンバ20との距離dを変えることができる。すなわち、金属ターゲット30とマグネット34との距離を変えることができる。この距離dを変えることにより、金属ターゲット30の表面30aに作用する磁力を変えることができる。すなわち、プラズマの発生空間Spに作用する磁力を変えることができる。
【0031】
制御部40は、後述するように、直流電圧または交流電圧を調節して電源部32により、金属ターゲット30に、常に予め設定した所定の電流または電力を印加して、金属ターゲット30の電圧を測定するとともに、後述するプラズマ検出器50によるプラズマの発生の検出を開始して、金属ターゲット30の電圧が、所定の電圧の値になるように駆動部38により、マグネット34と真空チャンバ20との距離d、すなわち、マグネット34と金属ターゲット30との距離を調節させるものである。これ以外にも、制御部40は、本実施形態の成膜装置10のスパッタガス供給部42、反応ガス供給部46など、他の機器を制御するものである。
【0032】
スパッタガス供給部42は、配管44を介して、真空チャンバ20内に、アルゴンガス等のスパッタガスを供給するものである。このスパッタガス供給部42は、アルゴンガスなどのスパッタガスが充填されたボンベ(図示せず)、およびマスフローコントローラ(図示せず)、または流量調節用バルブ(図示せず)などを有するものであり、配管44に、マスフローコントローラ、または流量調節用バルブを介してボンベが接続されている。
【0033】
反応ガス供給部46は、配管48を介して、真空チャンバ20内に、形成する膜の組成に応じた反応ガスを供給するものであり、酸化膜を形成する場合には、酸素ガスを供給し、窒化膜を形成する場合には、窒素ガスを供給するものである。この反応ガス供給部46は、酸素ガス、または窒素ガスなどの反応ガスが充填されたボンベ(図示せず)、およびマスフローコントローラ(図示せず)、または流量調節用バルブ(図示せず)などを有するものであり、配管48に、マスフローコントローラ、または流量調節用バルブを介してボンベが接続されている。
【0034】
プラズマ検出器50は、プラズマ発生空間Spにおけるプラズマの発生の有無を検出するものである。このプラズマ検出器50は制御部40に接続されており、制御部40には、このプラズマ検出器50からのプラズマの検出信号が入力される。このため、制御部40においては、プラズマ発生の有無を検知することができる。なお、プラズマ検出器50に限定されるものではなく、単に、放電を検出できるものであってもよい。
【0035】
本発明の成膜装置において、基板24は、シリコンウエハなど、特に限定されるものではなく、反応性スパッタリングにより膜の形成が可能な各種の基板が全て利用可能である。また、基板24は、成膜前は、例えば、真空チャンバ20に接続されたロードロックチャンバ(図示せず)に収納されている。
【0036】
本実施形態の成膜装置10においては、ステージ22(基板24)と、金属ターゲット30との間に、出入り自在にシャッター(図示せず)を設けてもよい。このシャッターは、ステージ22および基板24に膜が形成されないようにするためのものであり、金属ターゲット30から飛び出す金属原子を遮蔽する。シャッターは、例えば、金属ターゲット30と相似形状に形成されており、かつ金属ターゲット30よりも面積を大きく形成されている。また、シャッターは、水平方向に移動可能に構成されており、成膜時には、例えば、基板24の上方から退避している。
なお、シャッターには、金属原子が付着するため、その付着した金属原子を、例えば、プラズマ、薬品などを用いて取り除く除去部を有することが好ましい。
【0037】
図3の特性曲線100に示すように、金属モードの領域Amと化合物モードAoとの遷移領域Atのうち、透明な膜組成域と着色する膜組成域との変化点γよりも化合物モード側で、成膜を常に行い、化合物膜が得られる成膜速度が速い領域で成膜することが良い。そこで、成膜条件としては、所定の膜を形成するための反応ガス量と放電電圧とを、特性曲線100を作成し、例えば、反応ガスがない状態における放電電圧に基づいて、化合物では、成膜速度が低下するため、所定の成膜速度で成膜されるように成膜条件を設定している。この特性曲線100は、上述の図4(b)および図5に示すように、成膜装置10の使用状況、装置内部の清浄度、または部品の交換などにより、特に金属モードの領域Amが変動してしまうものである。
【0038】
本実施形態の成膜装置10においては、他のバッチの成膜時に、金属ターゲット30に、化合物などが付着していることがあり、通常、基板24に膜を形成する前に、金属ターゲット30について、反応ガスを用いることなく、アルゴンガス等の不反応ガスを用いた金属スパッタを行う。なお、この金属スパッタは、金属ターゲット30をクリーニングするためであり、成膜するためのものではなく、金属モードにおけるスパッタリングとは異なるものである。
この金属ターゲット30のクリーニングのための不反応ガスを用いた金属スパッタ時には、スパッタガスと同様のアルゴンガスを用いて金属スパッタを行う。このとき、金属ターゲット30に、放電電流および放電電力の一方を、一定にして印加すれば、そのときの金属ターゲットの電圧値が金属モードの領域Amでの電圧値である。上述のように、ターゲット削れの進行などの成膜装置10の使用状況、防着板の表面状態などの装置内部の清浄度、真空チャンバ20内の残留ガス、または部品の交換などにより変動した値となっている。この変動した放電電圧値を、所定の電圧の値にするように駆動部38により、マグネット34と真空チャンバ20との距離d、すなわち、マグネット34と金属ターゲット30との距離を調節すれば、成膜開始時の放電特性曲線は、基板毎のバッチに依らず一定となり、バッチ間の差をなくすことができる。これにより、バッチ間差を保証することができる。
【0039】
次に、本実施形態の成膜装置10の成膜方法について説明する。
本実施形態の成膜装置10の成膜方法においては、所定の膜を形成するための成膜条件が予め設定されており、さらには、放電電圧を一定にするための金属スパッタの条件が設定されている。
本成膜方法においては、先ず、真空チャンバ20内を真空排気部26により排気する。
その後、スパッタガス供給部42から、不反応ガスとして、例えば、アルゴンガスを配管44を介して、真空チャンバ20内に導入し、金属スパッタの条件に基づいて、真空排気部26により真空チャンバ20内を所定の真空度にする。
【0040】
次に、直流電圧または交流電圧を調節して電源部32により、金属ターゲット30に所定の電流または電力を印加させる。これにより、プラズマが発生し、金属ターゲット30をクリーニングするため、不反応ガスを用いた金属スパッタがなされる。このとき、電圧測定部33により、金属ターゲット30の電圧を測定するとともに、プラズマ検出器50によるプラズマの発生の検出を開始する。そして、プラズマ(放電)が検出されると、プラズマの検出信号が制御部40に出力されるとともに、そのときの金属ターゲット30の電圧の値も電圧測定部33から制御部40に出力される。
ここで、制御部40においては、電源部32から金属ターゲット30に、所定の電流または電力を印加し、金属ターゲット30の電圧が、所定の電圧の値になるように駆動部38により、マグネット34と真空チャンバ20との距離d、すなわち、マグネット34と金属ターゲット30との距離を変えていき、金属ターゲット30の電圧が所定の電圧の値になるまで距離dを順次変える。このように、制御部40は、距離dを調節させて、金属ターゲット30のクリーニング時における放電電圧を一定にする。
【0041】
上述の金属ターゲット30のクリーニングのための不反応ガスを用いた金属スパッタを実施した後、例えば、ロードロックチャンバに収納しておいた基板24が、搬送アームなどの所定の搬送手段により真空チャンバ20内のステージ22上に移送され、基板24がステージ22に設置される。
次に、設定された成膜条件に基づいて、スパッタガスとして、アルゴンガスを所定の量供給するとともに、反応ガス供給部46から配管48を介して、真空チャンバ20内に反応ガスを所定の量供給する。この場合、設定された成膜条件に基づいて、真空排気部26により、真空チャンバ20内は、例えば、1Pa以下の成膜圧力に保持されている。
【0042】
次に、電源部32から、設定された成膜条件に基づいて、予め設定された直流電圧を金属ターゲット30に印加し、プラズマを生成させる。このプラズマにより、金属ターゲット30から金属原子が飛び出し、反応ガスと反応して金属化合物となり、金属化合物として基板24の表面24aに付着し、金属化合物の膜が形成される。
このように、金属化合物を成膜する場合、成膜電圧は、変化点γよりも小さく、例えば、AlOx膜を成膜する場合、放電特性曲線100の遷移領域Atの0〜40%である。
【0043】
本実施形態において、例えば、基板24の表面24aに、SiO膜を形成する場合、金属ターゲット30に、シリコン製のものを用い、反応ガスに酸素ガスを用いる。シリコン原子が金属ターゲット30から飛び出し、酸素ガスと反応して、SiO原子となり、SiO膜が形成される。
また、基板24の表面24aに、Al膜を形成する場合、金属ターゲット30に、アルミニウム製のものを用い、反応ガスに酸素ガスを用いる。アルミニウム原子が金属ターゲット30から飛び出し、酸素ガスと反応して、Al原子となり、Al膜が形成される。
さらには、SiN膜を形成する場合、金属ターゲット30に、シリコン製のものを用い、反応ガスに窒素ガスを用いる。シリコン原子が金属ターゲット30から飛び出し、窒素ガスと反応して、SiN原子となり、SiN膜が形成される。
【0044】
このようにして、順次、基板24の表面24aに膜を形成する。そして、1つのバッチの基板の成膜が終了した後、別のバッチの基板に成膜する場合、再度、制御部40においては、電源部32で直流電圧または交流電圧を調節させて電源部32から金属ターゲット30に所定の電流または電力を印加させて、金属ターゲット30の電圧が所定の値になるように駆動部38によりマグネット34と金属ターゲット30との距離を変え、金属ターゲット30の電圧が所定の値になるまで距離dを順次変えさせる。そして、金属ターゲット30のクリーニング時における放電電圧を一定にする。この状態で、別のバッチの基板に、所定の成膜条件で成膜する。
【0045】
本実施形態の成膜装置10および成膜方法においては、金属ターゲット30のクリーニングのための不反応ガスを用いた金属スパッタ時の放電電圧を一定にしているため、放電特性曲線100を一定の形状とすることができる。これにより、図5に示すように、使用状態により日々変動する金属モードにおける放電電圧の変動を抑制することができ、ひいては、金属モードにおける放電電圧を一定にすることができる。
このため、図4(a)に示す放電特性曲線100に示す金属モードの領域Amにおける放電電圧αが、図4(b)に示す放電特性曲線102のように、放電電圧αと変動することが抑制される。
例えば、図4(a)に示す放電特性曲線100において、変化点γにおける放電電圧が、化合物が得られる最大の成膜速度の放電電圧であり、この変化点γの放電電圧が成膜条件であるとき、図4(b)に示す放電特性曲線102に変動した場合には、成膜条件での放電電圧が、図4(b)の放電特性曲線102における金属モードの領域Amの放電電圧αとなる。このため、設定された成膜条件のままの状態で、成膜をした場合、本来、金属化合物の膜が形成されるはずが、金属の膜が形成されてしまう。
本発明においては、上述の理由から、放電特性曲線100を一定の形状とすることができるため、バッチが変わっても、このようなことがない。このため、成膜速度、組成および透明度(着色の程度)などの膜質について、バッチに依らず、バッチ毎に一定のものとすることができ、所定の成膜速度で、効率よく生産性が高く、品質についても、常に所定の組成を有する金属化合物を得ることができる。このように、バッチ間の品質を保証しつつ、所定の組成を有する膜を、所定の成膜速度で形成することができる。
【0046】
また、本実施形態の成膜装置10および成膜方法においては、Al膜を形成する場合、Al膜は放電電圧の僅かな変動でも、成膜速度、組成および透明度(着色の程度)などの膜質が大きく変動してしまう。しかしながら、本実施形態の成膜装置10においては、放電電圧を一定にし、放電特性曲線100を一定の形状とすることができるため、放電電圧の変動の影響を受けやすいAl膜の形成に、特に有効である。
【0047】
また、本実施形態の成膜装置10および成膜方法において、成膜条件が10−2Pa台前半と圧力が低い場合、すなわち、真空度が高い場合、金属モードでは、放電が起こらないため、放電電圧は概算で求めている。このため、図5に示すような日々の使用に伴う変動による僅かな変化を、従来では、検知することができない。
しかしながら、本実施形態の成膜装置10および成膜方法においては、成膜条件とは異なる金属スパッタの条件で、金属ターゲット30のクリーニングのための不反応ガスを用いた金属スパッタ時の放電電圧を一定にすることができるため、成膜時の圧力が10−2Pa台前半と低い場合でも、放電特性曲線100を一定の形状とすることができる。このため、図5に示すような日々の使用に伴う変動による誤差の影響(僅かな変化)を抑制することができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
なお、本実施形態においては、図1に示す第1の実施形態の成膜装置と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図2に示すように、本実施形態の成膜装置12は、第1の実施形態の成膜装置10(図1参照)に比して、長尺の基板Z(ウェブ状の基板Z)に連続で成膜を行う装置である点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施例の成膜装置10と同様の構成であり、その詳細な説明は省略する。
【0050】
本実施形態の成膜装置12は、磁気記録媒体の製造、光学膜の製造、またはガスバリアフィルムの製造等に利用されるものである。
成膜装置12は、基本的に、長尺な基板Zを供給する供給室52と、長尺な基板Zの表面Zfに膜を形成する成膜室(チャンバ)54と、膜が形成された長尺な基板Zを巻き取る巻取り室56と、真空排気部26と、制御部40とを有する。この制御部40により、成膜装置12のスパッタガス供給部42、反応ガス供給部46など、他の機器も制御される。また、成膜装置12は、上記以外にも、成膜する基板Zの周囲に、防着板など、一般的なスパッタリング装置が備えるものを有する。
また、成膜装置12においては、供給室52と成膜室54とを区画する壁58a、および成膜室54と巻取り室56とを区画する壁58bには、基板Zが通過するスリット状の開口58cが形成されている。
【0051】
成膜装置12においては、供給室52、成膜室54および巻取り室56には、真空排気部26が配管28を介して接続されている。この真空排気部26により、供給室52、成膜室54および巻取り室56の内部が所定の真空度にされる。
真空排気部26は、供給室52、成膜室54および巻取り室56を排気して所定の真空度に保つものである。また、供給室52、成膜室54および巻取り室56には、それぞれ内部の圧力を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられている。
なお、真空排気部26による供給室52、成膜室54および巻取り室56の到達真空度には、特に限定はなく、実施する成膜条件等に応じて、十分な真空度を保てればよい。この真空排気部26は、制御部40により制御される。
【0052】
供給室52は、長尺な基板Zを供給する部位であり、基板ロール60、およびガイドローラ62が設けられている。
基板ロール60は、長尺な基板Zを連続的に送り出すものであり、例えば、反時計回りに基板Zが巻回されている。
基板ロール60は、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータによって基板ロール60が基板Zを巻き戻す方向rに回転されて、本実施形態では、時計回りに回転されて、基板Zが連続的に送り出される。
【0053】
ガイドローラ62は、基板Zを所定の搬送経路で成膜室54に案内するものである。このガイドローラ62は、公知のガイドローラにより構成される。
本実施形態の成膜装置12においては、ガイドローラ62は、駆動ローラまたは従動ローラでもよい。また、ガイドローラ62は、基板Zの搬送時における張力を調整するテンションローラとして作用するローラであってもよい。
【0054】
本発明の成膜装置において、基板Zは、特に限定されるものではなく、反応性スパッタリングによる膜の形成が可能な各種の基板が全て利用可能である。基板Zとしては、例えば、PETフィルム等の各種の樹脂フィルム、またはアルミニウムシートなどの各種の金属シート等を用いることができる。
【0055】
巻取り室56は、後述するように、成膜室54で、表面Zfに膜が形成された基板Zを巻き取る部位であり、巻取りロール72、およびガイドローラ70が設けられている。
【0056】
巻取りロール72は、成膜された基板Zをロール状に、例えば、時計回りに巻き取るものである。
この巻取りロール72は、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータにより巻取りロール72が回転されて、成膜済の基板Zが巻き取られる。
巻取りロール72においては、モータによって基板Zを巻き取る方向Rに回転されて、本実施形態では、時計回りに回転されて、成膜済の基板Zを連続的に、例えば、時計回りに巻き取る。
【0057】
ガイドローラ70は、先のガイドローラ62と同様、成膜室54から搬送された基板Zを、所定の搬送経路で巻取りロール72に案内するものである。このガイドローラ70は、公知のガイドローラにより構成される。なお、供給室52のガイドローラ62と同様に、ガイドローラ70も、駆動ローラまたは従動ローラでもよい。また、ガイドローラ70は、テンションローラとして作用するローラであってもよい。
【0058】
成膜室54は、真空チャンバとして機能するものであり、基板Zを搬送しつつ連続的に、基板Zの表面Zfに、反応性スパッタリングによって膜を形成する部位である。
成膜室54は、例えば、ステンレスなど、各種の真空チャンバで利用されている材料を用いて構成されている。
【0059】
成膜室54には、2つのガイドローラ64、66と、ドラム68と、シャッター74と、ターゲットフォルダ29と、金属ターゲット30と、プラズマ検出器50とが設けられている。
また、成膜室54には、配管44を介してスパッタガス供給部42が接続されており、配管48を介して反応ガス供給部46が接続されている。
【0060】
ガイドローラ64と、ガイドローラ66とは、所定の間隔を設けて対向して、平行に配置されており、また、ガイドローラ64およびガイドローラ66は、基板Zの搬送方向Dに対して、その長手方向を直交させて配置されている。
【0061】
ガイドローラ64は、供給室52に設けられたガイドローラ62から搬送された基板Zをドラム68に搬送するものである。このガイドローラ64は、例えば、基板Zの搬送方向Dと直交する方向(以下、軸方向という)における基板Zの長さ(以下、基板Zの幅という)よりも長さが長い。
なお、基板ロール60、ガイドローラ62、ガイドローラ64により、本発明の第1の搬送手段が構成される。
【0062】
ガイドローラ66は、ドラム68に巻き掛けられた基板Zを巻取り室56に設けられたガイドローラ70に搬送するものである。このガイドローラ66は、例えば、軸方向における基板Zの幅よりも長さが長い。
なお、ガイドローラ66、ガイドローラ70、巻取りロール72により、本発明の第2の搬送手段が構成される。
また、ガイドローラ64、ガイドローラ66は、供給室52に設けられたガイドローラ62と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0063】
ドラム68は、ガイドローラ64と、ガイドローラ66との間の空間hの下方に設けられている。
このドラム68は、表面に基板Zが巻き掛けられて、搬送方向Dに基板Zを搬送するものであり、回転可能なものである。ドラム68は、その長手方向を、ガイドローラ64およびガイドローラ66の長手方向に対して平行にして配置されている。また、ドラム68は、例えば、軸方向における基板Zの幅よりも長さが長い。
【0064】
図2に示すように、ターゲットフォルダ29は、凹部を有し、その凹部に金属ターゲット30が嵌め込まれ、その表面30aをドラム68に向けて金属ターゲット30を保持するものである。この金属ターゲット30と、ドラム68とは所定の隙間が設けられている。この金属ターゲット30は、例えば、平面視長方形の平板状に形成されている。
シャッター74は、ドラム68(基板Z)と、金属ターゲット30との間に、出入り自在に設けられている。このシャッター74は、ドラム68(基板Z)に膜が形成されないようにするためのものであり、金属ターゲット30から飛び出す金属原子を遮蔽する。シャッター74は、例えば、平面視長方形の平板状に形成されており、広い側の表面74aをドラム68に向けて配置されている。このシャッター74は、金属ターゲット30よりも面積を大きく形成されており、水平方向Mに移動可能に構成されている。シャッター74は、成膜時には、例えば、プラズマ検出器50の上方に移動して退避している。
なお、シャッター74には、金属原子が付着するため、その付着した金属原子を、例えば、プラズマ、薬品などを用いて取り除く除去部を有することが好ましい。
【0065】
ターゲットフォルダ29の金属ターゲット30がドラム68と対向する側の反対側(金属ターゲット30の裏面30b側)には、この金属ターゲット30と整合する位置に設けられたマグネット34を収納するマグネット収納部36と、このマグネット34を対向方向Hに移動させる駆動部38とが設けられている。このマグネット収納部36には、マグネット34を対向方向Hに移動させて、真空チャンバ20とマグネット34との距離dを変えることができる移動機構(図示せず)が設けられている。
成膜装置12においては、成膜室54内の金属ターゲット30の表面30aの上方の空間がプラズマの発生空間Spとなり、基板Zがドラム68に巻き掛けられた状態で、ドラム68が回転して、基板Zが搬送方向Dに搬送されつつ、基板Zの表面Zfに膜が形成される。
【0066】
次に、本実施形態の成膜装置12の成膜方法について説明する。
本実施形態の成膜装置12の成膜方法においても、シャッター74を金属ターゲット30の上方に配置させて行う以外は、第1の実施形態の成膜装置10と同様に、金属スパッタの条件で、金属ターゲット30をクリーニングするための不反応ガスを用いた金属スパッタを行う。
このとき、第1の実施形態と同様に、電圧測定部33により、金属ターゲット30の電圧を測定するとともに、プラズマ検出器50によるプラズマの発生の検出を開始する。そして、プラズマ(放電)が検出されると、プラズマの検出信号が制御部40に出力されるとともに、そのときの金属ターゲット30の電圧の値も電圧測定部33から制御部40に出力される。制御部40においては、電源部32から金属ターゲット30に所定の電流または電力を印加し、金属ターゲット30の電圧が所定の値になるように駆動部38により、マグネット34と真空チャンバ20との距離d、すなわち、マグネット34と金属ターゲット30との距離を変えさせていき、金属ターゲット30の電圧が所定の値になるまで距離dを順次変えさせる。
このようにして、距離dを調節することにより、金属ターゲット30のクリーニング時における放電電圧を一定にする。
【0067】
本実施形態の成膜装置12の成膜方法は、供給室52から成膜室54を経て巻取り室56に至る所定の経路で、供給室52から巻取り室56まで長尺な基板Zを通して搬送しつつ、成膜室54において、基板Zに膜を形成する。
成膜装置12においては、上述の金属ターゲット30のクリーニングのための不反応ガスを用いた金属スパッタを実施した後、シャッター74を、水平方向Mに移動させて、ドラム68の下方から退避させる。
【0068】
そして、長尺な基板Zが、例えば、反時計回り巻回された基板ロール60からガイドローラ62を経て、成膜室54に搬送される。成膜室54においては、ガイドローラ64、ドラム68、ガイドローラ66を経て、巻取り室56に搬送される。巻取り室56においては、ガイドローラ70を経て、巻取りロール72に、長尺な基板Zが巻き取られる。長尺な基板Zを、この搬送経路で通した後、供給室52、成膜室54および巻取り室56の内部を真空排気部26により排気する。
そして、スパッタガス供給部42から配管44を介して、真空チャンバ20内にスパッタガスとして、アルゴンガスを供給するとともに、反応ガス供給部46から配管48を介して、真空チャンバ20内に反応ガスを供給する。この場合、成膜室54は、真空排気部26により、所定の真空度に保たれる。
【0069】
次に、電源部32から、予め設定された成膜条件に基づく、例えば、直流電圧を金属ターゲット30に印加し、放電させてプラズマを発生させる。このプラズマにより、金属ターゲット30から金属原子が飛び出し、反応ガスと反応して化合物となり、化合物として基板Zの表面に付着し、化合物の膜が形成される。
順次、長尺な基板Zが反時計回り巻回された基板ロール60をモータにより時計回りに回転させて、長尺な基板Zを連続的に送り出し、ドラム68が回転して、ガイドローラ66、およびガイドローラ70を経て、巻取りローラ72に、長尺な基板Zが巻き取られつつ、金属ターゲット30から飛び出した金属原子が反応ガスと反応して化合物となり、化合物として、基板Zの表面に付着して、長尺な基板Zの表面Zfに連続的に膜が形成される。
【0070】
このようにして、順次、基板Zの表面Zfに膜を形成する。そして、基板ロール60に巻回された長尺の基板Zの成膜が終了した後、基板ロール60に巻回された別の長尺の基板、すなわち、基板ロール60に巻回された別の長尺の基板(別のバッチの基板)に成膜する場合、再度、制御部40において、電源部32から金属ターゲット30に設定電圧を印加して、駆動部38により、マグネット34と真空チャンバ20との距離d、すなわち、マグネット34と金属ターゲット30との距離を変えさせ、プラズマ検出器50によりプラズマが検出されるまで距離dを順次変えさせる。金属ターゲット30のクリーニング時における放電電圧を一定にする。この状態で、基板ロール60に巻回された別の長尺の基板(別のバッチの基板)に成膜をする。
【0071】
本実施形態の成膜装置12および成膜方法においては、使用状態により日々変動する金属モードにおける電圧の変動を抑制することができ、ひいては、金属モードにおける放電電圧を一定にすることができる。このため、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態の成膜装置12および成膜方法においては、長尺な基板Zを用いた場合、成膜状態を確認するために、基板Zの一部に成膜した場合、長尺な基板Zに品質が悪い部分を含む可能性が高い。しかしながら、本実施形態においては、シャッター74をドラム68の下方の位置させて、マグネット34の位置を調整しているため、基板Zの表面Zfに確認のための成膜をすることがない。このため、長尺な基板Zに、品質が悪い部分が含まれることがなく、品質が優れたものを得ることができる。
【0072】
さらに、本実施形態の成膜装置12および成膜方法においては、第1の実施形態の成膜装置10と同様に、成膜条件とは異なる金属スパッタの条件で、金属ターゲット30のクリーニングのための不反応ガスを用いた金属スパッタ時の放電電圧を一定にすることができるため、成膜条件が、10−2Pa台前半と圧力が低い場合でも、放電特性曲線100を一定の形状とすることができる。この場合においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、Al膜の形成に、特に有効である。
【0073】
また、本実施形態においては、成膜前に、金属ターゲット30をクリーニングするための不反応ガスを用いた金属スパッタを行っているが、これに限定されるものではない。例えば、基板Zについて一定時間ごとに、ドラム68と金属ターゲット30との間にシャッター74を配置させて、反応ガスの供給を停止し、金属モードにしてマグネット34の位置調整を行うようにしてもよい。
【0074】
なお、いずれの実施形態においても、金属スパッタにより設定した放電電圧の値が成膜中の経時変化する。すなわち、特性曲線上の金属モードにおける放電電圧が経時変化する。この経時変化について予め測定しておき、使用時間などに対するマグネット34の位置を予め算出しておく。そして、使用時間などに応じてマグネット34を位置変えて、金属スパッタにより設定した放電電圧が一定に保つような機構を備えていてもよい。これにより、安定した品質の膜を形成することができる。
【0075】
さらには、いずれの実施形態においても、成膜前に、金属ターゲット30のクリーニングするための金属スパッタにより放電電圧が一定となるようにマグネット34の位置を調整したが、これに限定されるものではない。放電電圧を一定にするマグネット34の位置調整は、例えば、各バッチ放電開始時であってもよい。なお、バッチ放電開始時は、金属ターゲット30のクリーニングを兼ねてもよい。
また、放電電圧を一定にするマグネット34の位置調整は、基板への成膜中でもよい。例えば、成膜中に、金属ターゲットそのものの金属を使い、金属モードで成膜することがあれば、そのときに、マグネット34の位置を調整して放電電圧を一定にするようにしてもよい。
【0076】
また、いずれの実施形態においても、例えば、AlOx膜を成膜する場合、396nmの波長の強度が、化合物モード(mode)〜金属モード(mode)で大きく変化するため、この波長の光の強度を一定にするように、酸素量を制御する方法を用いてもよい。このような酸素量を制御する方法は、通称、PEM制御(プラズマエミッションモニター制御)と呼ばれている。
特に、AlOx膜は、酸素との反応性が非常に鋭いため、幅が広いターゲットを用いた場合、幅方向の両端部における微妙な酸素供給量の過不足で、遷移域内の放電ポイントが両端で異なる。これにより、形成するAlOx膜の膜厚分布、または形成するAlOx膜の着色傾斜が起きることがある。このため、さらに、いずれの実施形態においても、発光検知器と、酸素供給ノズルを、ターゲットの幅方向に複数個設けて、各位置での発光検知器の発光を制御することにより、形成するAlOx膜の膜厚分布、または形成するAlOx膜の着色傾斜を抑制するようにしてもよい。
【0077】
以上、本発明の成膜装置について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
【図3】縦軸に放電電圧をとり、横軸に反応ガス量をとって、反応ガス量と放電電圧との特性曲線を示すグラフである。
【図4】(a)は、縦軸に放電電圧をとり、横軸に反応ガス量をとって、反応ガス量と放電電圧との特性曲線の一例を示すグラフであり、(b)は、縦軸に放電電圧をとり、横軸に反応ガス量をとって、反応ガス量と放電電圧との特性曲線が変動した例を示すグラフである。
【図5】縦軸に放電電圧をとり、横軸に稼働日数をとって、金属モードおよび化合物モードにおけるターゲットを交換してからの放電電圧の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
10、12 成膜装置
20 真空チャンバ
22 ステージ
24、Z 基板
26 真空排気部
30 金属ターゲット
34 マグネット
36 マグネット収納部
40 制御部
42 スパッタガス供給部
46 反応ガス供給部
50 プラズマ検出器
52 供給室
54 成膜室
56 巻取り室
60 基板ロール
62,64,66,70 ガイドローラ
72 巻取りロール
74 シャッター
D 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスを供給してスパッタリングを行い基板に所定の膜を形成する成膜装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内にスパッタリングガスを供給するスパッタリングガス供給部と、
前記チャンバ内に前記反応ガスを供給する反応ガス供給部と、
前記チャンバ内を所定の真空度にする真空排気部と、
前記チャンバ内に設けられ、前記基板を保持するステージと、
前記チャンバ内に設けられ、前記ステージに対向して、金属ターゲットを保持するターゲット保持部と、
前記ターゲット保持部の、前記金属ターゲットが前記ステージと対向する側の反対側に、前記ステージと前記金属ターゲットとが対向する方向に移動可能に設けられたマグネットと、
前記マグネットを前記ステージと前記金属ターゲットとが対向する方向に移動させる移動手段と、
前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加する電源部と、
前記金属ターゲットの電圧を測定する電圧測定部と、
前記チャンバ内の放電を検出する放電検出部と、
前記チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、前記電源部により前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、前記電圧測定部により前記金属ターゲットの電圧を測定するとともに、前記放電検出部による放電の検出を開始し、前記金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させる制御部とを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
反応ガスを供給してスパッタリングを行い基板に所定の膜を形成する成膜装置であって、
所定の搬送経路で、長尺の基板を搬送する第1の搬送手段と、
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、前記基板の搬送方向と直交する方向に回転軸を有し、前記第1の搬送手段により搬送された基板が、表面の所定の領域に巻き掛けられる回転可能なドラムと、
所定の搬送経路で、前記ドラムに巻き掛けられた基板を搬送する第2の搬送手段と、
前記チャンバ内を所定の真空度にする真空排気部と、
前記チャンバ内にスパッタリングガスを供給するスパッタリングガス供給部と、
前記チャンバ内に前記反応ガスを供給する反応ガス供給部と、
前記チャンバ内に設けられ、前記ドラムに対向して、金属ターゲットを保持するターゲット保持部と、
前記ターゲット保持部の、前記金属ターゲットが前記ステージと対向する側の反対側に、前記ステージと前記金属ターゲットとが対向する方向に移動可能に設けられたマグネットと、
前記マグネットを前記ステージと前記金属ターゲットとが対向する方向に移動させる移動手段と、
前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加する電源部と、
前記金属ターゲットの電圧を測定する電圧測定部と、
前記チャンバ内の放電を検出する放電検出部と、
前記チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、前記電源部により前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、前記電圧測定部により前記金属ターゲットの電圧を測定するとともに、前記放電検出部による放電の検出を開始し、前記金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させる制御部とを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
前記移動手段による前記マグネットの移動は、前記基板に膜を形成する前、または前記基板への膜の形成中に行う請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記基板に形成する膜は、酸化アルミニウム膜である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記基板と前記金属ターゲットとの間に、出入り自在に設けられたシャッターを有し、前記シャッターは、前記制御部により前記放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させるときに、前記基板と前記金属ターゲットとの間に配置される請求項1〜4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
チャンバ内にスパッタリングガスおよび反応ガスを供給して所定の真空度に保ち、前記チャンバ内に設けられ、ターゲット保持部により基板に対向して保持された金属ターゲットに電圧を印加してスパッタリングを行い前記基板に所定の膜を形成する成膜方法であって、
前記ターゲット保持部の、前記金属ターゲットが前記基板と対向する側の反対側にマグネットが移動可能に設けられ、前記マグネットは前記基板と前記金属ターゲットとが対向する方向に移動手段により移動されるものであり、
前記チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、前記金属ターゲットの電圧を測定するとともに、前記チャンバ内の放電の検出を開始し、前記金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させることを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
前記移動手段による前記マグネットの移動は、前記基板に膜を形成する前、または前記基板への膜の形成中に行う請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記基板に形成する膜は、酸化アルミニウム膜である請求項6または7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記チャンバ内にスパッタリングガスだけを供給し、この状態で、前記金属ターゲットに所定の電流または電力を印加させたとき、前記金属ターゲットの電圧を測定するとともに、前記チャンバ内の放電の検出を開始し、前記金属ターゲットの電圧が所定の電圧で放電が生じるように前記移動手段により前記マグネットを移動させる際、前記基板と前記金属ターゲットとの間にシャッターを配置する請求項6〜8のいずれか1項に記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−84618(P2009−84618A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254355(P2007−254355)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】