説明

成膜装置および該成膜装置に用いる筒状陰極での異常放電発生防止方法

【課題】冷陰極材料に用いた場合にその冷陰極のIV特性を改善できる炭素膜を成膜することができる成膜装置を提供すること。
【解決手段】真空成膜室6と、この真空成膜室6内に配置され内部に直流プラズマを発生し当該内部に配置した基板(導電性ワイヤ)10表面に成膜するための筒状陰極8とを備え、上記直流プラズマによりガスが分解して成膜が行われる過程で筒状陰極8に周期的にパルス状正電圧V2を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放射型冷陰極材料としての炭素膜を成膜する成膜装置および該成膜装置に用いる筒状陰極での異常放電発生防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電界放射は電界集中により電子が真空に放射される現象であり、この電界放射により電子放出を行う電界放射型冷陰極(以下、冷陰極)材料として例えばカーボンナノチューブ(CNT)が近年注目を集めその開発が進められてきている。CNTは、極めて細長く高アスペクト比のために冷陰極材料とした場合、電界放射特性に優れた冷陰極を得ることができるとされている。
【0003】
電界放射特性(電流電圧(IV)特性)とは、陽極と冷陰極との間に電圧Vを印加して冷陰極から電界放射する際の、電圧Vと電界放射電流(エミッション電流)Iとの関係を示す曲線により示される特性であり、電界放射を開始する電圧(閾値)や、上記曲線の傾きや形状で特徴づけられる。
【0004】
このような冷陰極を蛍光体付きの陽極に対向配置し、冷陰極と陽極との間に電圧を印加して冷陰極から電界放射により電子を放出させ、この放出した電子を蛍光体に加速衝突させて蛍光体を励起発光させる冷陰極蛍光ランプがある。
【0005】
この蛍光体の発光には所定量の電子放出が必要である。この電子放出量を示すエミッション電流を縦軸に、陽陰極間の電圧を横軸にして示す電流電圧(IV)特性曲線は冷陰極の電子放出性能を示している。CNTの場合、上記IV特性曲線の傾きが緩やかに立ち上がってくる。そのため、CNTでは蛍光体が発光を開始させるためのエミッション電流を得るのに必要な電圧Vは高くなる。
【0006】
そこで、より低い印加電圧Vで蛍光体を発光開始させることができるIV特性を提供する冷陰極用の炭素膜の実現が望まれている。
【0007】
本出願人は、CNTよりもIV特性に優れた冷陰極用の炭素膜を導電性ワイヤ等の基板表面に成膜する技術を開発してきている。以下に説明する成膜装置は本出願人が開発したものである。
【0008】
以下、図4を参照して説明すると、この成膜装置1は、ガス導入系2と真空排気系4とを備えた真空成膜室6と、真空成膜室6内部に配置された筒状陰極8とを有する。この筒状陰極8の周壁は螺旋状(コイル状)をなしている。筒状陰極8の内部空間には成膜対象である基板として導電性ワイヤ10が配置される。筒状陰極8は、その内部空間にプラズマを閉じ込め状態で生成する。この意味で筒状陰極8は、プラズマ閉じ込め型陰極と称することができる。
【0009】
筒状陰極8は直流電源12の負極に接続されている。この直流電源12の正極は接地される。導電性ワイヤ10は交流電源14で通電加熱されかつ直流電源16により直流バイアスが印加されるようになっている。
【0010】
以上の構成を備えた成膜装置1において、真空排気系4で真空成膜室6内を減圧しかつガス導入系2から炭素膜成膜用ガスを導入し、直流電源12からの直流負電圧を筒状陰極8に印加すると、筒状陰極8の内部空間にプラズマ18が閉じ込め状態で発生する。これにより、筒状陰極8内に導入した炭素膜成膜用ガスが分解され、その分解した炭素成分が筒状陰極8内に配置した導電性ワイヤ10の表面に成膜されるようになっていた。
【0011】
しかしながら、真空成膜室6内の真空圧は1000〜2000Paの範囲に制限されていた。この制限は、真空圧が2000Paを超えると、筒状陰極8から異常放電が発生し、導電性ワイヤ10表面に炭素膜が成膜されなかったり、成膜されてもその膜質が劣化する原因となるからであった。
【0012】
異常放電の発生について本出願人が研究したところ、プラズマ発生により分解された炭素物質は導電性ワイヤ10だけでなく筒状陰極8表面にも付着しやすくなる。この筒状陰極8に付着した炭素物質はアモルファス状の炭素物質であるために、電荷がチャージアップしやすく、その電荷のチャージアップ量が一定値を超えたときに放電することが原因していたと考えられる。
【0013】
そのため、真空圧は本出願人が実験した所に拠れば上記異常放電発生を防止するには真空圧を2000Pa以下に制限する必要があった。真空圧を低くすると、導電性ワイヤ10表面に成膜条件が制約されると共にIV特性に優れた冷陰極材料に適した炭素膜を成膜することができなくなる。
【特許文献1】特開平10−223128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明により解決すべき課題は、真空圧を高めても異常放電が発生しないようにして炭素膜の成膜条件の範囲を拡大しかつその炭素膜を冷陰極材料に用いた場合にIV特性が改善された冷陰極を提供できる成膜装置および該成膜装置に用いる筒状陰極での異常放電発生防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による成膜装置は、真空成膜室内に配置した筒状陰極に直流負電圧を印加しその内部にプラズマを閉じ込め状態で生成して真空成膜室に導入した炭素膜成膜用のガスを分解することにより当該筒状陰極内部に配置した基板表面に炭素膜を成膜する成膜装置であって、上記直流負電圧を印加して生成したプラズマにより上記ガスが分解して上記成膜が行われる過程で、パルス状正電圧を筒状陰極に繰り返し印加して該筒状陰極に付着した炭素物質に帯電する電荷を中和することにより、上記電荷のチャージアップによる異常放電の発生を防止可能としたことを特徴とするものである。
【0016】
上記筒状陰極の形状は、特に限定しないが、両端のいずれか一方が開口していれば周壁は閉鎖していてもよいが、好ましくは周壁の一部に開口を有する。周壁の形状(パターン)には周壁に多数の開口を有する形状として、螺旋状、メッシュ状、柵状、格子状、等を含む。これら形状は筒状陰極内部に配置した基板表面に均等に炭素膜を成膜するうえで好ましい。
【0017】
上記炭素物質は抵抗値が高く導電性が低い炭素物質である。
【0018】
筒状陰極は両端開口、一端開口他端側閉鎖の筒体を含む。筒状陰極の断面形状は特に限定しないが、基板形状がワイヤ状の場合、円形が好ましい。
【0019】
基板の形状は特に限定しないが、平面状やワイヤ状を例示することができる。例えばワイヤ状基板に炭素膜を成膜してワイヤ状冷陰極を形成する場合、内面に蛍光体付き陽極を形成したガラス管内部にこのワイヤ状冷陰極を配置した冷陰極蛍光ランプを構成することができる。
【0020】
パルス状正電圧を筒状陰極に繰り返し印加する趣旨には、周期的な繰り返しに限定するものではなく、不定期な繰り返しも含むものである。
【0021】
上記の場合、1周期内における上記パルス状正電圧の印加期間が上記直流負電圧の印加期間より短い期間として該パルス状正電圧を周期的に繰り返し印加することが好ましい。この印加により、電荷のチャージアップによる異常放電の発生を、基板表面に対する炭素膜成膜に影響を及ぼさずに、効果的に防止できるようになる。
【0022】
上記の場合、所定周波数における各周期内で上記直流負電圧の印加期間に対して上記パルス状正電圧の印加期間を上記帯電した電荷をパルス状正電圧の印加で中和できる期間にデューティ制御することが好ましい。
【0023】
上記デューティ制御は周波数を制御することにより行ってもよいし、あるいは、周波数同一の場合ではパルス状正電圧の印加期間を変更することにより行ってもよい。この場合、パルス状正電圧の形状をデューティ制御に含むことができる。
【0024】
上記所定周波数が、1kHz〜20kHzであり、上記所定周波数における1周期内でパルス状正電圧の1回の印加期間が、5μs〜200μsであることが好ましい。
【0025】
ただし、このパルス状正電圧の大きさは上記帯電した電荷を中和できる大きさであれば、特に限定しないが、好ましくは、+100V〜+300Vであり、より好ましくは+100V〜+250Vであり、最適には約200Vである。勿論、パルス状正電圧の大きさが+100V以下、+250V以上であっても、上記帯電した電荷を中和できる大きさであれば本発明に含む。
【0026】
この場合、パルス状正電圧の形状は特に限定しないが、矩形波形ではなく頂点角度が例えば形状表現として数度程度の鋭角三角形状であれば、電圧ゼロVから正方向に立ち上がり、最大値に達してから負方向に立ち下がるので、その印加期間は例えばゼロV近傍では5μs程度であり、例えば上記最適な最大高さ200V近傍では1〜2μs程度になっている。
【0027】
したがって、上記パルス状正電圧の形状が上記鋭角三角形状であれば、パルス状正電圧の印加期間は5μs〜200μsにおいて最短の印加期間である5μsは電圧ゼロV近傍の印加期間である。
【0028】
パルス状正電圧の形状がほぼ完全な矩形形状であれば、上記印加期間はその立ち上がりから立ち下りまでのパルス幅相当期間となる。
【0029】
パルス状正電圧の印加期間はこのパルス状正電圧により上記帯電した電荷を中和できればよいので、直流負電圧の印加期間と比較して極めて短く設定することができ、実質、直流負電圧を連続印加して直流プラズマ成膜を行うことができるようになっている。
【0030】
以上から、本発明の成膜装置によると、直流プラズマにより上記ガスが分解して上記成膜が行われる過程で所定周波数における各周期内で上記直流負電圧の印加期間に対して当該筒状陰極にパルス状正電圧を短い印加期間で印加するので、基板への成膜に影響を及ぼさずに、プラズマにより成膜する過程で抵抗が高く導電性が低い炭素物質が筒状陰極に付着しこの付着した炭素物質に電荷がチャージアップしてもパルス状正電圧で電荷中和し、結果として電荷チャージアップによる異常放電が発生しないように制御することができる。そのため、本発明の成膜装置では真空成膜室内を高真空圧に制御して基板表面に炭素膜の成膜を実施することができるようになり、成膜された炭素膜を冷陰極材料とする冷陰極のIV特性を向上することができる。
【0031】
本発明による成膜装置用筒状陰極での異常放電発生防止方法は、真空成膜室内に配置した筒状陰極に直流負電圧を印加し、その内部にプラズマを閉じ込め状態で生成して、真空成膜室に導入した炭素膜成膜用のガスを分解することにより、当該筒状陰極内部に配置した基板表面に炭素膜を成膜する過程で、パルス状正電圧を筒状陰極に繰り返し、好ましくは周期的に印加して該筒状陰極に付着した上記炭素膜より導電性が低く抵抗が高い炭素物質に帯電する電荷を中和することにより、上記電荷のチャージアップによる異常放電の発生を防止する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、成膜圧力範囲を高くしても筒状陰極から異常放電が発生することなく炭素膜を成膜することができる。その結果、本発明では、成膜圧力範囲を高くして炭素膜を成膜し、その成膜した炭素膜を冷陰極材料に用いた場合にIV特性が改善された冷陰極を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る成膜装置を説明する。図1に実施の形態の成膜装置を示す。図1において図4と同一の部分には同一の符号を付し、同一の符号に係る部分の説明は簡略する。
【0034】
実施の形態では、直流電源12に代えて、パルス電圧生成部20を備える。パルス電圧生成部20は、図2で示すように、所定の周波数範囲における各周期T内で筒状陰極8に直流負電圧V1を第1印加期間T1印加すると共にパルス状正電圧V2を第2印加期間T2印加するようになっている。
【0035】
パルス電圧生成部20は、パルス電源で構成することができるが、これに限定するものではない。上記直流負電圧V1、パルス状正電圧V2を出力制御することができればよい。また、パルス電圧生成部20は、上記周波数における周期T、上記印加期間T1,T2を可変制御することができようになっている。
【0036】
筒状陰極8はその周壁の形状が一例として螺旋状になっているものを用いる。筒状陰極8はその両端が一例として開口したものを用いている。
【0037】
図2中にはT,T1,T2は説明の都合で電圧ゼロVを基準に示している。
【0038】
パルス状正電圧V2は、直流負電圧V1に対して上記周波数における各周期Tごとにデューティ制御して周期的に繰り返して筒状陰極8に印加されるようになっている。この周期T内でパルス状正電圧V2のパルス幅をμsオーダーに設定することにより、導電性ワイヤ10表面には直流負電圧V1が実質、導電性の炭素膜が連続成膜するよう印加される。
【0039】
上記所定の周波数は好ましくは1kHz〜20kHz、より好ましくは1kHz〜3kHzの周波数範囲であり、最適には約2kHzである。
【0040】
また、好ましくは第2印加期間T2は5μs〜200μsであり、より好ましくは10μs〜30μsであり、最適には約20μsである。
【0041】
また、好ましくは直流負電圧は−550V〜−700Vであり、より好ましくは−550V〜650Vであり、最適には約600Vである。
【0042】
また、好ましくはパルス状正電圧は、+100V〜+300Vであり、より好ましくは+100V〜+250Vであり、最適には約200Vである。
【0043】
筒状陰極8に対する電圧の印加条件において導電性ワイヤ10表面への炭素膜の成膜過程を説明する。まず、真空成膜室6内を減圧しかつガス導入系2から炭素膜成膜用ガスの一例としてCH4(メタンガス)とH2(水素ガス)とを導入し、筒状陰極8にパルス電圧生成部20の生成電圧を印加する。
【0044】
この生成電圧は図2で示す電圧である。図2で示す電圧のうち、第1印加期間T1に印加する直流負電圧V1により、筒状陰極8内部にプラズマ18が発生する。このプラズマ18により、導入ガスが分解されて、筒状陰極8内部に配置された導電性ワイヤ10の表面に炭素膜が成膜される。
【0045】
この炭素膜は、カーボンナノウォール、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、針状炭素膜等を含む。炭素膜の成膜条件には、炭素膜成膜用のガス、例えば炭素系のガスの流量、キャリアガスの流量、導電性ワイヤ10の温度、真空成膜室6内の圧力、等があり、これらを種々に定めることにより、目的とする炭素膜を成膜することができる。
【0046】
一方、この第1印加期間T1における成膜過程で筒状陰極8の外周面にプラズマで分解された導電性が低く抵抗が高い炭素物質が付着してくるようになると、この炭素物質には負電荷がチャージアップされてくる。
【0047】
そして、第1印加期間T1に続く第2印加期間T2では、パルス状正電圧V2が筒状陰極8に印加されるので、上記筒状陰極8の外周面に付着している炭素物質にチャージアップしている負電荷はこのパルス状正電圧V2により電荷中和される。その結果、筒状陰極8からは従来のようにチャージアップ電荷により異常放電が発生しなくなる。
【0048】
以上説明したように、この実施の形態では、直流プラズマ18により上記ガスが分解して導電性ワイヤ10の表面に炭素膜の成膜が行われる過程で筒状陰極8に周期的にパルス状正電圧V2を印加するので、プラズマ18により炭素膜が成膜される過程で高抵抗の炭素物質が筒状陰極8に付着しこの付着した炭素物質に電荷がチャージアップしてもパルス状正電圧V2で電荷中和され、チャージアップが解消される結果として電荷チャージアップによる異常放電が発生しなくなる。
【0049】
そのため、本実施の形態では、真空成膜室6内を高真空圧に制御することができるようになり、成膜された炭素膜を冷陰極材料とする冷陰極のIV特性を向上することができる。
【0050】
図3に真空成膜室6内の圧力を1500Pa(図中×印)、2000Pa(図中△印)、8000Pa(図中□印)で制御して炭素膜を導電性ワイヤ10表面に成膜し、この導電性ワイヤ10を冷陰極としてこれを陽極と対向配置した場合のIV特性曲線A,B,Cを示す。
【0051】
IV特性曲線A,Bは筒状陰極8に直流負電圧V1として−600Vを印加し、パルス状正電圧V2は印加していない。
【0052】
IV特性曲線Cは周波数2kHz、第1印加期間T1に直流負電圧V1として−600Vを印加し、第2印加期間T2は20μsとしパルス状正電圧V2として+200Vを印加したときの曲線である。
【0053】
これらのIV特性曲線A,B,Cが示すように、圧力1500Pa(図中×印)で成膜した炭素膜で冷陰極を構成した場合のIV特性は電圧2.2VでIV特性曲線Aが立ち上がり、圧力2000Pa(図中△印)で成膜した炭素膜で冷陰極を構成した場合のIV特性は電圧1.8VでIV特性曲線Bが立ち上がり、圧力8000Pa(図中□印)で成膜した炭素膜で冷陰極を構成した場合のIV特性は電圧1.4VでIV特性曲線Cが立ち上がる。
【0054】
すなわち、パルス状正電圧V2を周期的に印加することにより、真空成膜室6内の圧力を高く制御しても筒状陰極8から異常放電が発生しなくなるので、真空成膜室6内圧力を高く制御することによりIV特性に優れた炭素膜を成膜することができるようになった。
【0055】
以上、実施の形態では、筒状陰極8内に発生したプラズマにより真空成膜室6に導入したガスが分解して導電性ワイヤ10の表面に炭素膜の成膜が行われる過程で、筒状陰極8に周期的にパルス状正電圧V2を印加することにより、筒状陰極8側から異常放電が発生することなく真空成膜室6内の圧力を高く制御することが可能となり、冷陰極材料としてIV特性に優れた炭素膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る成膜装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は筒状陰極に印加する電圧の波形を示す図である。
【図3】図3は筒状陰極内の圧力を高低に制御して炭素膜を成膜した場合、その成膜した炭素膜を冷陰極材料とした冷陰極のIV特性を比較して示す図である。
【図4】図4は従来の成膜装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
2 ガス導入系
4 真空排気系
6 真空成膜室
8 筒状陰極
10 導電性ワイヤ(基板、成膜対象)
20 パルス電圧生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空成膜室内に配置した筒状陰極に直流負電圧を印加し、その内部にプラズマを閉じ込め状態で生成して、真空成膜室に導入した炭素膜成膜用のガスを分解することにより、当該筒状陰極内部に配置した基板表面に炭素膜を成膜する成膜装置であって、
上記直流負電圧を印加して生成したプラズマにより上記ガスが分解して上記成膜が行われる過程で、パルス状正電圧を筒状陰極に繰り返し印加して該筒状陰極に付着した炭素物質に帯電する電荷を中和することにより、上記電荷のチャージアップによる異常放電の発生を防止可能とした、ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
1周期内における上記パルス状正電圧の印加期間を上記直流負電圧の印加期間より短い期間として該パルス状正電圧を周期的に繰り返し印加する、ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
所定周波数における各周期内で上記直流負電圧の印加期間に対して上記パルス状正電圧の印加期間を、上記帯電した電荷をパルス状正電圧の印加で中和できる期間にデューティ制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
上記所定周波数が、1kHz〜20kHzであり、上記所定周波数における1周期内でパルス状正電圧の1回の印加期間が、5μs〜200μsである、ことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
真空成膜室内に配置した筒状陰極に直流負電圧を印加し、その内部にプラズマを閉じ込め状態で生成して、真空成膜室に導入した炭素膜成膜用のガスを分解することにより、当該筒状陰極内部に配置した基板表面に炭素膜を成膜する過程で、パルス状正電圧を筒状陰極に繰り返し印加して該筒状陰極に付着した炭素物質に帯電する電荷を中和することにより、上記電荷のチャージアップによる異常放電の発生を防止する、ことを特徴とする成膜装置用筒状陰極での異常放電発生防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−144249(P2008−144249A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335934(P2006−335934)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(504224371)ダイヤライトジャパン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】