説明

成膜装置の制御方法及び成膜装置

【課題】コンタミネーションの発生を抑制するとともに所望の特性を有した素子を形成する成膜装置の制御方法及び成膜装置を提供する。
【解決手段】積層体を構成する正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び積層体上に形成される陰極層を、それぞれ独立したプロセスチャンバー12Pa〜12Peによって形成するようにするとともに、プロセスチャンバー12Pa〜12Peでの各層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極層)の形成が同時に終了するように、各蒸着用セルからの蒸着材料の蒸着レートを調整した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置の制御方法及び成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高輝度、高視野角等の観点から発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子を利用した表示装置が注目されている。一般に、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という)は、陽極と陰極との間に有機発光層を挟持した構造をなしている。そして、有機EL素子は、その両極間に電力を供給することで、キャリア(正孔及び電子)を注入すると、そのキャリア(正孔及び電子)が発光層にて再結合するが、その際に生成されるエキシトンが励起状態から基底状態に遷移する過程にてそのエネルギーギャップに応じた波長の光を出射するものである。
【0003】
この種の有機EL素子は、陽極と陰極との間に、発光層以外に正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層といった層を挿入することで発光効率を向上することが知られている。従って、一般的には、陽極と陰極との間は、上記した発光層以外に正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層といった層が複数積層された積層体となっている。
【0004】
ところで、上記有機EL素子は、積層体を構成する材料の観点から高分子系有機EL素子と低分子系有機EL素子とに大別される。低分子系有機EL素子は、真空薄膜形成技術を利用した蒸着法によって各正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層をそれぞれ順次成膜することで積層体を形成するのが知られている。具体的には、1つの真空チャンバーにて各層を順次蒸着するようにしたものと、複数のチャンバーを独立して備え各チャンバーにて各層を形成するようにしたものとがある。1つの真空チャンバーで各層を蒸着するようにした場合では、チャンバー内に各種の層の材料を収納するので、所定の層を形成中に他の層の材料が混入する、所謂コンタミネーションが発生してしまう虞がある。
【0005】
これに対して、各層毎に独立したチャンバーで形成するようにした場合では、前述したようなコンタミネーションの発生はないので、歩留まりを向上させることができる(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−8902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記積層体を構成する発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層といった各層は、寿命及び輝度等の観点からそれぞれ最適な膜厚で設計されている。従って、各層毎に成膜時間(蒸着時間)が異なる。このため、各層毎に独立したチャンバーで形成するようにした場合では、所定の層を形成した後に、次に形成される層のためのチャンバーが使用中である場合、そのチャンバーが空くまで待機しなければならない。
【0007】
一方、最近、各層の待機時間と有機EL素子の寿命との関係が検討され、その結果、図6に示すように、正孔輸送層については、その待機時間が長くなるのに従って有機EL素子の寿命が短くなるということが分かった。このため、各層毎に独立したチャンバーで形成するようにした場合では、上記のようなコンタミネーションは発生しないものの、待機時間によって寿命が所望の時間に達しない場合が生じてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、コンタミネーションの発生を抑制するとともに所望の特性を有した素子を形成する成膜装置の制御方
法及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の成膜装置の制御方法は、第1層を形成するための第1のチャンバーと、第2層を形成するための第2のチャンバーとを少なくとも備え、前記第1のチャンバーにて前記第1層を形成した後に前記第2のチャンバーにて前記第1層上に前記第2層を形成する成膜装置の制御方法において、前記第1のチャンバーにて前記第1層の形成が終了したときに、前記第2のチャンバーにて前記第2層の形成を終了しているように、前記第1のチャンバーでの前記第1層の成膜速度及び前記第2のチャンバーでの前記第2層の成膜速度の少なくともどちらか一方を制御するようにした。
【0010】
これによれば、第1のチャンバーにて第1層の形成が終了した時点では、第2のチャンバーでは第2層の形成を終了している。従って、第2のチャンバー内を空けて第1のチャンバーにて形成された第1層上に第2層を形成することができる状態にしておくことが可能となる。この結果、第1層を形成した後の第2層を形成するまでの待機時間を無くすことができることから、電子素子の生産性を向上させることができる。また、例えば、前記待機時間が第1層の特性に影響を与える場合では、待機時間を無くすことができることからその形成した第1層の特性の変化を抑制することができる。
【0011】
この成膜装置の制御方法において、前記第1層は、前記第2層に比べて前記第1層の形成後から前記第2層が形成されるまでの待機時間によって特性が変化する膜であってもよい。
【0012】
これによれば、待機時間によって特性が変化しやすい膜に対する待機時間が無くなる。従って、待機時間による特性の変化を無くすことができる。
この成膜装置において、前記第1の膜は、有機EL素子の正孔輸送層であり、前記第2層は、前記有機EL素子の発光層であってもよい。
【0013】
これによれば、成膜装置は、正孔輸送層上に発光層を積層した構造を備えた、例えば、有機EL素子を形成するための装置であって、その成膜装置の第1のチャンバーでは正孔輸送層が形成され、第2のチャンバーでは発光層が形成される。従って、正孔輸送層の待機時間を無くすことができるので、正孔輸送層の特性の変化を小さくすることができる。この結果、寿命向上した有機EL素子を形成することができる。
【0014】
この成膜装置の制御方法において、前記発光層の膜厚は、前記正孔輸送層の膜厚に比べて厚く、前記発光層の成膜速度は、前記正孔輸送層の成膜速度に比べて速くてもよい。
これによれば、第1のチャンバーでの正孔輸送層の形成が終了した時点で、第2のチャンバーでの発光層の形成が終了している。従って、正孔輸送層の形成後、直ちに第2のチャンバーでの発光層の形成が可能となるので、正孔輸送層の待機時間を無くすことができる。この結果、正孔輸送層の特性の変化を小さくすることができることから、寿命向上した有機EL素子を製造することができる。
【0015】
本発明の成膜装置は、第1層を形成するための第1のチャンバーと、第2層を形成するための第2のチャンバーとを少なくとも備え、前記第1のチャンバーにて前記第1層を形成した後に前記第2のチャンバーにて前記第1層上に前記第2層を形成する成膜装置において、前記第1のチャンバーにて前記第1層の形成が終了したときに、前記第2のチャンバーにて前記第2層の形成が終了しているように、前記第1のチャンバーでの前記第1層の成膜速度及び前記第2のチャンバーでの前記第2層の成膜速度の少なくともどちらか一方を制御するようにした。
これによれば、第1のチャンバーにて第1層の形成が終了した時、第2のチャンバーで
は第2層の形成をすでに終了させるように、第1層の成膜速度及び第2層の成膜速度を管理することで、第1層の形成が終了後に直ちに第2のチャンバーにて第1層上に第2層を形成することができる状態にしておくことが可能となる。この結果、第1層を形成した後の第2層を形成するまでの待機時間を無くすことができることから、電子素子の生産性を向上させることができる。また、例えば、前記待機時間が第1層の特性に影響を与える場合では、待機時間を無くすことができることからその形成した第1層の特性の変化を抑制することができる。
【0016】
この成膜装置において、前記制御装置は、前記第1のチャンバーにて前記第1層の形成が終了したときに、前記他のチャンバーにて前記第2層の形成を終了しているように、前記第1のチャンバーでの前記第1層の成膜速度及び前記第2のチャンバーでの前記第1層の成膜速度の少なくともどちらか一方を制御するようにしてもよい。
【0017】
これによれば、第1のチャンバーにて第1層の形成が終了した時点では、第2のチャンバーでは第2層の形成を終了している。従って、第2のチャンバー内を空けて第1のチャンバーにて形成された第1層上に第2層を形成することができる状態にしておくことが可能となる。この結果、第1層を形成した後の第2層を形成するまでの待機時間を無くすことができることから、電子素子の生産性を向上させることができる。また、例えば、前記待機時間が第1層の特性に影響を与える場合では、待機時間を無くすことができることからその形成した第1層の特性の変化を抑制することができる。
【0018】
この成膜装置において、前記第1層は、前記第2層に比べて前記第1層の形成後から前記第2層が形成されるまでの待機時間によって特性が変化する膜であってもよい。
これによれば、待機時間によって特性が変化しやすい膜に対する待機時間が無くなる。従って、待機時間による特性の変化を無くすことができる。
【0019】
この成膜装置において、前記第1層は、正孔輸送層であり、前記第2層は、発光層であってもよい。
これによれば、成膜装置は、正孔輸送層上に発光層を積層した構造を備えた、例えば、有機EL素子を形成するための装置であって、その成膜装置の第1のチャンバーでは正孔輸送層が形成され、第2のチャンバーでは発光層が形成される。従って、正孔輸送層の待機時間を無くすことができるので、正孔輸送層の特性の変化を小さくすることができる。この結果、寿命向上した有機EL素子を形成することができる。
【0020】
この成膜装置において、前記発光層の膜厚は、前記正孔輸送層の膜厚に比べて厚く、前記発光層の成膜速度は、前記正孔輸送層の膜厚に比べて速くてもよい。
これによれば、第1のチャンバーでの正孔輸送層の形成が終了した時点で、第2のチャンバーでの発光層の形成が終了している。従って、正孔輸送層の形成後、直ちに第2のチャンバーでの発光層の形成が可能となるので、正孔輸送層の待機時間を無くすことができる。この結果、正孔輸送層の特性の変化を小さくすることができることから、寿命向上した有機EL素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る成膜装置について図面を参照しながら説明する。図1において、成膜装置10は、搬送チャンバー11と該搬送チャンバー11の周囲に配設された7つの真空チャンバー12とを備えた枚葉式クラスター型真空装置であって、有機EL素子の発光層を含む積層体、及び陰極層を形成するための成膜装置である。
【0022】
搬送チャンバー11は、各真空チャンバー12とゲートバルブGBを介して連結されている。7つの真空チャンバー12のうち2つのチャンバーを搬入用ロードロックチャンバ
ー12La及び搬出用ロードロックチャンバー12Lbとし、他の5つのチャンバー12をプロセスチャンバー12Pa〜12Peとしている。搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬出用ロードロックチャンバー12Lbとは隣接して配設されている。また、成膜装置10は、制御装置Cを備え、該制御装置Cにて各チャンバー11,12の駆動が統括制御されるようになっている。
【0023】
搬入用ロードロックチャンバー12La及び搬出用ロードロックチャンバー12Lbには、ウェハカセット14a,14bが設けられている。搬入用ロードロックチャンバー12Laのウェハカセット14aには、処理前のウェハWが収納され、搬出用ロードロックチャンバー12Lbのウェハカセット14bには、処理後のウェハWが収納されるようになっている。
【0024】
ここで、処理前のウェハWは、図3(a),(b)に示すように、ガラス基板S上に、公知の方法によって格子状に形成された隔壁Waを備えるとともに、その隔壁Waによって升の目状に区画形成された各領域Z内に画素電極Dを備えた基板である。一方、処理後のウェハWは、図3(c)に示すように、画素電極D上に積層体Mと陰極層Nとが形成されたウェハである。本実施形態の積層体Mは、正孔注入層M1、第1層としての正孔輸送層M2、第2層としての発光層M3、電子輸送層M4が順次積層された構成をしている。尚、正孔注入層M1は膜厚d1が600Åであり、正孔輸送層M2は膜厚d2が200Åであり、発光層M3は膜厚d3が400Åであり、電子輸送層M4は膜厚d4が200Åである。また、陰極層Nは膜厚d5が1200Åである。
【0025】
また、図1に示すように、第1〜第5のプロセスチャンバー12Pa〜12Peは、それぞれ、蒸着用チャンバーであって、排気装置、蒸着用セル及びステージ等を備えている。第1のプロセスチャンバー12Paは、正孔注入層M1を蒸着形成するためのチャンバーであり、第1のチャンバーとしての第2のプロセスチャンバー12Pbは、正孔輸送層M2を蒸着形成するためのチャンバーである。また、第2のチャンバーとしての第3のプロセスチャンバー12Pcは、発光層M3を蒸着形成するためのチャンバーであり、第4のプロセスチャンバー12Pdは、電子輸送層M4を蒸着形成するためのチャンバーである。さらに、第5のプロセスチャンバー12Peは、陰極層Nを蒸着形成するためのチャンバーである。そして、各プロセスチャンバー12Pa〜12Peは、図1中反時計回り方向に第1のプロセスチャンバー12Pa→第2のプロセスチャンバー12Pb→第3のプロセスチャンバー12Pc→第4のプロセスチャンバー12Pd→第5のプロセスチャンバー12Peの順に配設されている。
【0026】
図2は、第1のプロセスチャンバー12Paの概略構成を説明するための図である。図2に示すように、プロセスチャンバー12Paは、真空容器K内にステージ15、蒸着用セル16、真空計17、膜厚計18、排気装置P、第1及び第2のシャッタ19a,19bを備えている。ステージ15は、第1及び第2のシャッタ19a,19bを介して蒸着用セル16に相対向する位置に配設され、その蒸着用セル側の側面にウェハWを図示しないピン等によって固定可能に載置するようになっている。蒸着用セル16は、蒸着材料(第1のプロセスチャンバー12Paにあっては正孔注入層材料)20を加熱して昇華或いは蒸発させるためのものであって、外部に設けられた電流源(図示略)から供給される電流によって加熱されるようになっている。
【0027】
真空計17は、チャンバー12Pa内の真空計を測定するものであって、例えば公知の電離真空計である。また、真空計17は、その計測結果に応じた電気信号を制御装置Cに出力するようになっている。膜厚計18は、蒸着用セル16から昇華或いは蒸発する蒸着材料(正孔注入層材料)20の量を測定するものであって、例えば、公知の水晶振動子である。膜厚計18は、その水晶振動子の振動数に応じた電気信号を制御装置Cに出力する
ようになっている。
【0028】
排気装置Pは、例えば、ターボ分子ポンプであって、制御装置Cによってその駆動タイミングが制御されるようになっている。第1及び第2のシャッタ19a,19bは、それぞれ独立してその開閉が制御されるようになっている。そして、第1及び第2のシャッタ19a,19bが共に開くことで蒸着用セル16から昇華或いは蒸発した蒸着材料(正孔注入層材料)20がステージ15上のウェハWに付着する。つまり、第1及び第2のシャッタ19a,19bが共に開いたタイミングで正孔注入層M1の形成が開始される。また、第1及び第2のシャッタ19a,19bのうちどちらか一方が閉じることで、該シャッタによって蒸着材料(正孔注入層材料)20がウェハWに付着されなくなるので、そのタイミングで正孔注入層M1の形成が終了する。
【0029】
また、第1のシャッタ19aを閉じ第2のシャッタ19bを開いた状態で、蒸着用セル16に投入する電流の電流値を調整することで、ウェハW上に正孔注入層材料を付着させずに、単位時間あたりに蒸着用セル16から昇華或いは蒸発する正孔注入層材料20の量(即ち、蒸着レート)を調整することができる。本実施形態では、単位時間あたりにウェハW(基板S)上に正孔注入層材料20が1Å/sの速度で形成されるように正孔注入層材料20の蒸着レートが設定されている。
【0030】
尚、第1のプロセスチャンバー12Pa以外の他のプロセスチャンバー12Pb〜12Peについても同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。また、本実施形態では、第2のプロセスチャンバー12Pbでは、正孔輸送層材料が0.33Å/sの速度で形成されるように正孔輸送層材料の蒸着レートが設定され、第3のプロセスチャンバー12Pcでは、発光層材料が0.67Å/sの速度で形成されるように発光層材料の蒸着レートが設定されている。また、第4のプロセスチャンバー12Pdでは、電子輸送層材料が0.33Å/sの速度で形成されるように電子輸送層材料の蒸着レートが設定され、第5のプロセスチャンバー12Peでは、陰極層材料が2Å/sの速度で形成されるように陰極層材料の蒸着レートが設定されている。
【0031】
図1に示すように、搬送チャンバー11には、ロボットBが内設され、ウェハWを各チャンバー12に搬入・搬出できるようになっている。本実施形態のロボットBは、先端部にウェハ保持部Baを有した多関節型ロボットであって、制御装置Cによって駆動制御されるように設定されている。
【0032】
制御装置Cは、メモリCmを備えている。メモリCmには、各プロセスチャンバー12Pa〜12Peでの各層(正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3、電子輸送層M4及び陰極層N)の形成が同じタイミングで終了するように、各層M1〜N毎にその成膜速度を制御するための制御プログラムが記憶されている。具体的には、正孔注入層M1の蒸着レート(成膜速度)が1Å/sとなるように第1のプロセスチャンバー12Paの蒸着用セル16に投入される電流の電流値を設定するための設定値が記憶され、所定のタイミングで読み込まれその設定値に応じた信号が電流源に供給する。
【0033】
また、正孔輸送層M2の蒸着レート(成膜速度)が0.33Å/sとなるように第2のプロセスチャンバー12Pbの蒸着用セル16に投入される電流の電流値を設定するための設定値が記憶され、所定のタイミングで読み込まれその設定値に応じた信号が電流源に供給する。さらに、発光層M3の蒸着レート(成膜速度)が0.67Å/sとなるように第3のプロセスチャンバー12Pcの蒸着用セル16に投入される電流の電流値を設定するための設定値が記憶され、所定のタイミングで読み込まれその設定値に応じた信号が電流源に供給する。さらにまた、電子輸送層M4の蒸着レート(成膜速度)が0.33Å/sとなるように第4のプロセスチャンバー12Pdの蒸着用セル16に投入される電流の
電流値を設定するための設定値が記憶され、所定のタイミングで読み込まれその設定値に応じた信号が電流源に供給する。また、陰極層Nの蒸着レート(成膜速度)が2Å/sとなるように第5のプロセスチャンバー12Peの蒸着用セル16に投入される電流の電流値を設定するための設定値が記憶され、所定のタイミングで読み込まれその設定値に応じた信号が電流源に供給する。
【0034】
このように、各プロセスチャンバー12Pa〜12Peでの成膜開始のタイミングを同時にすることにより、正孔注入層M1(膜厚d1=600Å)、正孔輸送層M2(膜厚d2=200Å)、発光層M3(膜厚d3=400Å)、電子輸送層M4(膜厚d4=200Å)、陰極層N(膜厚d5=600Å)の成膜時間を全て約600sで同時に終了することになる。換言すると、所定のチャンバーにて所定の層の形成が終了した時、その次のチャンバーでは該層上に形成される層の形成が終了することになる。
【0035】
また、制御装置Cは、ロボットBの動作プログラムを記憶している。ロボットBは、ウェハWを搬入用ロードロックチャンバー12Laから取り出し、その取り出したウェハWを順次第1のプロセスチャンバー12Pa→第2のプロセスチャンバー12Pb→第3のプロセスチャンバー12Pc→第4のプロセスチャンバー12Pd→第5のプロセスチャンバー12Pe→搬出用ロードロックチャンバー12Lbに搬送する。
次に、上記のように構成された成膜装置10の作用について図1及び図4〜図5に従って説明する。
まず、図1に示すように、各ゲートバルブGBを閉じ、その状態で各排気装置を駆動させて搬送チャンバー11、搬入用ロードロックチャンバー12La、搬出用ロードロックチャンバー12Lb及び第1〜第5のプロセスチャンバー12Pa〜12Pe内の雰囲気を所望の真空度にする。尚、この時点では、各第1〜第5のプロセスチャンバー12Pa〜12Peには、ウェハWは配設されていない。
【0036】
そして、各チャンバー11,12La,12Lb,12Pa〜12Peが所望の真空度に到達すると、制御装置Cから制御信号が供給されて搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開くとともに前記制御装置Cに記憶された動作プログラムに従ってロボットBが駆動する。そして、該ロボットBによって搬入用ロードロックチャンバー12Laのウェハカセット14aに収納された処理前のウェハWが1枚取り出され、搬送チャンバー11内に移動される。
【0037】
続いて、制御装置Cから制御信号が供給されて搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられ、その後、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開かれる。その後、動作プログラムに従ってロボットBによって取り出されたウェハWが第1のプロセスチャンバー12Paのステージ15に載せられて処理位置に配置する。このとき、ウェハWの隔壁Waが形成された面を第1のシャッタ19a側に向くようにステージ15に載せる。
【0038】
次に、制御装置Cから制御信号が供給されて第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じる。そして、第1のプロセスチャンバー12Pa内の真空度が所望の値に到達すると、前記制御装置Cに記憶された制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され第1のプロセスチャンバー12Pa内の蒸着用セル16が加熱される。その後、蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、正孔注入層M1の成膜が開始する。このとき、正孔注入層M1は、1Å/sの成膜速度にて形成される。
【0039】
正孔注入層M1の成膜が開始して約600s経過すると、制御装置Cから制御信号が供
給されて、第1及び第2のシャッタ19a,19bが閉じられる。この結果、正孔注入層M1の成膜が終了し、図4(a)に示すように、ウェハWの画素電極D上には約600Åの膜厚d1の正孔注入層M1が形成される。続いて、前記制御プログラムに従って制御装置Cから制御信号が供給されて、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記動作プログラムに従ってロボットBが第1のプロセスチャンバー12PaからウェハWを取り出し、搬送チャンバー11内に搬入する。その後、前記制御プログラムに従って制御装置Cから制御信号が供給されて、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じ、続いて、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。
【0040】
続いて、前記動作プログラムに従ってロボットBが、正孔注入層M1が形成されたウェハWを第2のプロセスチャンバー12Pbに搬入しステージ15に載せて処理位置に配置する。その後、制御装置Cから制御信号が供給されて、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBがともに閉じる。
【0041】
次に、前記制御プログラムに従って制御装置Cから制御信号が供給されて、搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。その後、前記動作プログラムに従ってロボットBが駆動され搬入用ロードロックチャンバー12Laのウェハカセット14aに収納された処理前のウェハWを新たに1枚取り出し、その処理前のウェハWを搬送チャンバー11に搬入し、その後、搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBを閉じる。続いて、制御装置Cから制御信号が供給されて、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBによってその新たな処理前のウェハWが第1のプロセスチャンバー12Paのステージ15に載せられる。そして、前記制御プログラムに従って制御装置Cから制御信号が供給されて、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じる。
そして、第2のプロセスチャンバー12Pb内の真空度が所望の値に到達すると、前記制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され第2のプロセスチャンバー12Pb内の蒸着用セル16が設定された温度になるまで加熱される。その後、その蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、昇華或いは蒸発した正孔輸送層材料が先に形成された正孔注入層M1上全面に堆積されて正孔輸送層M2の成膜が開始する。このとき、正孔輸送層M2は、0.33Å/sの成膜速度にて形成される。
【0042】
また、同時に、第1のプロセスチャンバー12Paについても同様に、第1のプロセスチャンバー12Pa内の各真空度が所望の値に到達すると、前記制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され第1のプロセスチャンバー12Pa内の蒸着用セル16が設定された温度になるまで加熱される。その後、その蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、前記と同様に、昇華或いは蒸発した正孔注入層材料がウェハW上全面に堆積され正孔注入層M1の成膜が開始する。このとき、正孔注入層M1は、1Å/sの成膜速度にて形成される。
【0043】
尚、第1のプロセスチャンバー12Pa及び第2のプロセスチャンバー12Pbの各層M1,M2の成膜が開始されるタイミングはほぼ同時である。
そして、第1及び第2のプロセスチャンバー12Pa,12Pbでの各層M1,M2の成膜が開始して約600s経過すると、制御装置Cから制御信号が供給されて、第1のプロセスチャンバー12Pa及び第2のプロセスチャンバー12Pb内の各第1及び第2のシャッタ19a,19bが閉じられる。この結果、各層M1,M2の成膜が同時に終了す
る。そして、第1のプロセスチャンバー12Paでは、ウェハWの画素電極D上に約600Åの膜厚の正孔注入層M1が形成され、第2のプロセスチャンバー12Pbでは、図4(b)に示すように、正孔注入層M1上に約200Åの膜厚の正孔輸送層M2が形成される。
【0044】
次に、前記制御プログラムに従って制御装置Cから制御信号が供給されて、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記動作プログラムに従ってロボットBが、第2のプロセスチャンバー12Pbから正孔輸送層M2が形成されたウェハWを取り出し、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉られる。続いて、前記制御装置Cから制御信号が供給されて、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記ロボットBによって、正孔輸送層M2が形成されたウェハWを第3のプロセスチャンバー12Pcに搬入しステージ15に載せて処理位置に配置する。その後、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0045】
続いて、前記制御装置Cから制御信号が供給されて、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記動作プログラムに従ってロボットBが、第1のプロセスチャンバー12Paから正孔注入層M1が形成されたウェハWを取り出し、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続いて、前記制御装置Cから制御信号が供給されて、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記ロボットBによって、正孔注入層M1が形成されたウェハWを第2のプロセスチャンバー12Pbに搬入しステージ15に載せて処理位置に配置する。その後、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0046】
次に、前記制御プログラムに従って制御装置Cから制御信号が供給されて、搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、前記ロボットBによって搬入用ロードロックチャンバー12Laのウェハカセット14aに収納された処理前のウェハWを新たに1枚取り出す。そして、その処理前のウェハWを搬送チャンバー11に搬入する。その後、搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続いて、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBによって新たな処理前のウェハWが第1のプロセスチャンバー12Paのステージ15に載せられる。そして、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じる。
その後、第3のプロセスチャンバー12Pc内の真空度が所望の値に到達すると、前記制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され第3のプロセスチャンバー12Pc内の蒸着用セル16が設定された温度になるまで加熱される。その後、その蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、昇華或いは蒸発した発光層材料が先に形成された正孔輸送層M2上全面に堆積されて発光層M3の成膜が開始する。このとき、正孔輸送層M2は、0.67Å/sの成膜速度にて形成される。
【0047】
また、同時に、第1及び第2のプロセスチャンバー12Pa,12Pbについても前記と同様に、所望の真空度に到達すると、前記制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され蒸着用セル16が設定された温度になるまで加熱される。その後、その蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、前記と同様に、第1の
プロセスチャンバー12Paでは正孔注入層M1の成膜が開始する。このとき、正孔注入層M1は、1Å/sの成膜速度にて形成される。また、第2のプロセスチャンバー12Pbでは正孔輸送層M2の成膜が開始する。このとき、正孔輸送層M2は、0.33Å/sの成膜速度にて形成される。
【0048】
尚、第1〜第3のプロセスチャンバー12Pa,12Pb,12Pbの各層M1,M2,M3の成膜が開始されるタイミングはほぼ同時である。
そして、第1〜第3のプロセスチャンバー12Pa,12Pb,12Pcでの成膜が開始して約600s経過すると、制御装置Cからの制御信号に従って各プロセスチャンバー12Pa〜12Pc内の各第1及び第2のシャッタ19a,19bが閉じられる。この結果、各層M1,M2,M3の成膜が同時に終了する。そして、第3のプロセスチャンバー12Pcでは、図4(c)に示すように、正孔輸送層M2上に約400Åの膜厚の発光層M3が形成される。また、前記と同様に、第1のプロセスチャンバー12Paでは、ウェハW上に約600Åの膜厚の正孔注入層M1が形成され、第2のプロセスチャンバー12Pbでは、正孔注入層M1上に約200Åの膜厚の正孔輸送層M2が形成される。
【0049】
次に、前記制御プログラムに従って制御装置Cから制御信号が供給されて、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記動作プログラムに従ってロボットBが、第3のプロセスチャンバー12Pcから発光層M3が形成されたウェハWを取り出し、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉られる。続いて、前記制御装置Cから制御信号が供給されて、第4のプロセスチャンバー12Pdと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記ロボットBによって、発光層M3が形成されたウェハWを第4のプロセスチャンバー12Pdに搬入しステージ15に載せて処理位置に配置する。その後、第4のプロセスチャンバー12Pdと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0050】
次に、前記制御信号が供給されて、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが第2のプロセスチャンバー12Pbから正孔輸送層M2が形成されたウェハWを取り出し、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続いて、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが、正孔輸送層M2が形成されたウェハWを第3のプロセスチャンバー12Pcに搬入しステージ15に載せる。その後、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0051】
次に、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが第2のプロセスチャンバー12Pbから正孔輸送層M2が形成されたウェハWを取り出して、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続いて、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが、正孔輸送層M2が形成されたウェハWを第3のプロセスチャンバー12Pcに搬入しステージ15に載せる。その後、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0052】
次に、搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが搬入用ロードロックチャンバー12Laの処理前のウェハWを新たに1枚取り出して、搬送チャンバー11に搬入する。そして、搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続
いて、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが、その新たな処理前のウェハWを第1のプロセスチャンバー12Paに搬入しステージ15に載せる。その後、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
その後、第4のプロセスチャンバー12Pd内の真空度が所望の値に到達すると、前記制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され第4のプロセスチャンバー12Pd内の蒸着用セル16が設定された温度になるまで加熱される。その後、その蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、昇華或いは蒸発した電子輸送層材料が先に形成された発光層M3上全面に堆積されて電子輸送層M4の成膜が開始する。このとき、電子輸送層M4は、0.33Å/sの成膜速度にて形成される。
【0053】
また、同時に、第1〜第3のプロセスチャンバー12Pa〜12Pcについても前記と同様に、所望の真空度に到達すると、前記制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され蒸着用セル16が設定された温度になるまで加熱される。その後、その蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、前記と同様に、第1のプロセスチャンバー12Paでは、昇華或いは蒸発した正孔注入層材料がウェハW上全面に各画素電極Dを覆うように堆積されて正孔注入層M1の成膜が開始する。このとき、正孔注入層M1は、1Å/sの成膜速度にて形成される。また、第2のプロセスチャンバー12Pbでは、昇華或いは蒸発した正孔輸送層材料が先に形成した正孔注入層M1上に堆積されて正孔輸送層M2の成膜が開始する。このとき、正孔輸送層M2は、0.33Å/sの成膜速度にて形成される。さらに、第3のプロセスチャンバー12Pcでは、昇華或いは蒸発した発光層材料が先に形成した正孔輸送層M2上に堆積されて発光層M3の成膜が開始する。このとき、発光層M3は、0.67Å/sの成膜速度にて形成される。
【0054】
尚、第1〜第4のプロセスチャンバー12Pa,12Pb,12Pc、12Pdの各層M1,M2,M3、M4の成膜が開始されるタイミングはほぼ同時である。
そして、第1〜第4のプロセスチャンバー12Pa〜12Pdでの成膜が開始して約600s経過すると、制御装置Cからの制御信号に従って各プロセスチャンバー12Pa〜12Pd内の各第1及び第2のシャッタ19a,19bが閉じられる。この結果、各層M1〜M4の成膜が同時に終了する。そして、第4のプロセスチャンバー12Pdでは、図5(a)に示すように、発光層M3上に約200Åの膜厚の電子輸送層M4が形成される。また、前記と同様に、第1のプロセスチャンバー12Paでは、ウェハWの画素電極D上に約600Åの膜厚の正孔注入層M1が形成され、第2のプロセスチャンバー12Pbでは、正孔注入層M1上に約200Åの膜厚の正孔輸送層M2が形成される。また、第3のプロセスチャンバー12Pcでは、正孔輸送層M2上に約400Åの膜厚の発光層M3が形成される。
【0055】
次に、前記制御プログラムに従って制御装置Cから制御信号が供給されて、第4のプロセスチャンバー12Pdと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記動作プログラムに従ってロボットBが、第4のプロセスチャンバー12Pdから電子輸送層M4が形成されたウェハWを取り出し、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第4のプロセスチャンバー12Pdと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉られる。続いて、前記制御装置Cから制御信号が供給されて、第5のプロセスチャンバー12Peと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開く。そして、前記ロボットBによって、電子輸送層M4が形成されたウェハWを第5のプロセスチャンバー12Peに搬入しステージ15に載せて処理位置に配置する。その後、第5のプロセスチャンバー12Peと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0056】
次に、前記制御信号が供給されて、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが第3のプロセスチャンバー12Pcから発光層M3が形成されたウェハWを取り出し、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続いて、第4のプロセスチャンバー12Pdと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが、発光層M3が形成されたウェハWを第4のプロセスチャンバー12Pdに搬入しステージ15に載せる。その後、第4のプロセスチャンバー12Peと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0057】
次に、前記制御信号が供給されて、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが第2のプロセスチャンバー12Pbから正孔輸送層M2が形成されたウェハWを取り出し、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続いて、第3のプロセスチャンバー12Pcと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが、正孔輸送層M2が形成されたウェハWを第3のプロセスチャンバー12Pcに搬入しステージ15に載せる。その後、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0058】
次に、第1のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが第1のプロセスチャンバー12Paから正孔注入層M1が形成されたウェハWを取り出して、搬送チャンバー11に搬入する。そして、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続いて、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが、正孔注入層M1が形成されたウェハWを第2のプロセスチャンバー12Pbに搬入しステージ15に載せる。その後、第2のプロセスチャンバー12Pbと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
【0059】
次に、搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが搬入用ロードロックチャンバー12Laの処理前のウェハWを新たに1枚取り出して、搬送チャンバー11に搬入する。そして、搬入用ロードロックチャンバー12Laと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。続いて、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが開き、ロボットBが、その新たな処理前のウェハWを第1のプロセスチャンバー12Paに搬入しステージ15に載せる。その後、第1のプロセスチャンバー12Paと搬送チャンバー11との間のゲートバルブGBが閉じられる。
その後、第5のプロセスチャンバー12Pe内の真空度が所望の値に到達すると、前記制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され第5のプロセスチャンバー12Pe内の蒸着用セル16が設定された温度になるまで加熱される。その後、その蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、昇華或いは蒸発した陰極層材料が先に形成された電子輸送層M4上全面に堆積されて陰極層Nの成膜が開始する。このとき、陰極層Nは、2Å/sの成膜速度にて形成される。
【0060】
また、同時に、第1〜第4のプロセスチャンバー12Pa〜12Pdについても前記と同様に、所望の真空度に到達すると、前記制御プログラムに従って予め調整された電流値の電流が電流源から供給され蒸着用セル16が設定された温度になるまで加熱される。その後、その蒸着用セル16が設定された温度になると、制御装置Cから制御信号が供給されて第1及び第2のシャッタ19a,19bが開く。この結果、前記と同様に、第1のプロセスチャンバー12Paでは、ウェハW上に正孔注入層M1の成膜が開始する。このと
き、正孔注入層M1は、1Å/sの成膜速度にて形成される。また、第2のプロセスチャンバー12Pbでは、正孔注入層M1上に正孔輸送層M2の成膜が開始する。このとき、正孔輸送層M2は、0.33Å/sの成膜速度にて形成される。さらに、第3のプロセスチャンバー12Pcでは、正孔輸送層M2上に発光層M3の成膜が開始する。このとき、発光層M3は、0.67Å/sの成膜速度にて形成される。さらにまた、第4のプロセスチャンバー12Pdでは、発光層M3上に電子輸送層M4の成膜が開始する。このとき、電子輸送層M4は、0.33Å/sの成膜速度にて形成される。
【0061】
尚、第1〜第5のプロセスチャンバー12Pa〜12Peの各層M1〜M4,Nの成膜が開始されるタイミングはほぼ同時である。
そして、第1〜第5のプロセスチャンバー12Pa〜12Peでの成膜が開始して約600s経過すると、制御装置Cから制御信号が供給されて、各プロセスチャンバー12Pa〜12Pe内の各第1及び第2のシャッタ19a,19bが閉じられる。この結果、各層M1〜M4,Nの成膜が同時に終了する。そして、第5のプロセスチャンバー12Peでは、図5(b)に示すように、電子輸送層M4上に約1200Åの膜厚の陰極層Nが形成される。また、前記と同様に、第1のプロセスチャンバー12Paでは、約600Åの膜厚の正孔注入層M1が形成され、第2のプロセスチャンバー12Pbでは、約200Åの膜厚の正孔輸送層M2が形成される。また、第3のプロセスチャンバー12Pcでは、約400Åの膜厚の発光層M3が形成される。さらに、第4のプロセスチャンバー12Pdでは、約200Åの膜厚の電子輸送層M4が形成される。
【0062】
その後、制御装置Cから制御信号が供給されて、第1〜第5のプロセスチャンバー12Pa〜12Peと搬送チャンバー11との間の各ゲートバルブGBがそれぞれ開く。そして、前記動作プログラムに従ってロボットBが第5のプロセスチャンバー12Peのステージ15から陰極層Nが形成されたウェハWを取り出し、搬出用ロードロックチャンバー12Lbのウェハカセット14bに収納する。その後、直ちに、ロボットBが第4のプロセスチャンバー12Pdのステージ15から電子輸送層M4が形成されたウェハWを取り出し、第5のプロセスチャンバー12Peのステージ15に載せる。また、ロボットBが第3のプロセスチャンバー12Pcのステージ15から発光層M3が形成されたウェハWを取り出し、第4のプロセスチャンバー12Pdのステージ15に載せる。また、その後、直ちに、ロボットBが第2のプロセスチャンバー12Pbのステージ15から正孔輸送層M2が形成されたウェハWを取り出し、第3のプロセスチャンバー12Pcのステージ15に載せる。また、その後、直ちに、ロボットBが第1のプロセスチャンバー12Paのステージ15から正孔注入層M1が形成されたウェハWを取り出し、第2のプロセスチャンバー12Pbのステージ15に載せる。さらに、その後、直ちに、ロボットBが搬入用ロードロックチャンバー12Laから処理前のウェハWを新たに1枚取り出し、第1のプロセスチャンバー12Paのステージ15に載せる。
【0063】
以下、上記のようにして、処理前のウェハWを、第1のプロセスチャンバー12Pa→第2のプロセスチャンバー12Pb→第3のプロセスチャンバー12Pc→第4のプロセスチャンバー12Pd→第5のプロセスチャンバー12Peの順に搬入して各層M1,M2,M3,M4,Nを形成する。そして、その後、搬出用ロードロックチャンバー12Lbに収納する。このようにすることで、処理前のウェハW上に積層体M及び陰極層Nを形成することができた。
【0064】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、各プロセスチャンバー12Pa〜12Peでの層(正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3、電子輸送層M4及び陰極層N)の形成が同時に終了するように、各蒸着用セル16からの蒸着材料の蒸着レートを調整した。従って、所定のプロセスチャンバー12Pa〜12Peでの層の形成が終了したら、直ちに、次の層を
形成することが可能となることから、各層の待機時間を無くすことができる。
(2)本実施形態によれば、正孔輸送層M2を形成した後に直ちに発光層M3を形成することができる。正孔輸送層M2は、その待機時間によって特性が変化しやすい膜であるが、その待機時間が無くなるので、正孔輸送層M2の待機時間による特性の変化を小さくすることができる。この結果、有機EL素子の寿命を向上させることができる。
(3)本実施形態によれば、成膜装置10は、搬送チャンバー11の周囲にゲートバルブGBによってそれぞれ独立した5つのプロセスチャンバー12Pa〜12Peとを備えた。そして、その各プロセスチャンバー12Pa〜12Peによって正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3、電子輸送層M4及び陰極層Nを形成するようにした。従って、各層を形成する最中に他の層の蒸着材料が入り込むことはないので、高品質の有機EL素子の積層体M及び陰極層Nを形成することができる。
【0065】
尚、この発明は、以下のように変更して具体化することもできる。
・上記実施形態では、各プロセスチャンバー12Pa〜12Peでの層(正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3、電子輸送層M4及び陰極層N)の形成が同時に終了するように調整した各蒸着用セル16からの蒸着材料の蒸着レートを制御装置Cに記憶させた。これを、各チャンバーPa〜12Peに設けられた膜厚計18を参照しながら、その時々で、蒸着用セル16に投入する電流の電流値を調整するようにすることで、層(正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3、電子輸送層M4及び陰極層N)の形成が同時に終了するようにしてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、各プロセスチャンバー12Pa〜12Peでの層(正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3、電子輸送層M4及び陰極層N)の形成が同時に終了するようにしたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、所定のプロセスチャンバーでの所定の層の形成が終了した時点で、その次に形成される層を形成するプロセスチャンバーが使用可能となるように前記所定の蒸着レートよりも速くなるように、次に形成される層の蒸着材料の蒸着レートを調整するようにしてもよい。要は、各層が終了した時点で、その次に形成される層のためのプロセスチャンバー12Pa〜12Peが使用可能な状態であればよい。
【0067】
・上記実施形態では、積層体Mは、正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3、電子輸送層M4で構成した。そして、成膜装置10は、各正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3及び電子輸送層M4と、さらに該積層体M上に形成される陰極層Nを形成するための合計5つのプロセスチャンバー12Pa〜12Peを備えていた。本発明はこれに限定されない。たとえば、4つのプロセスチャンバー12Pa〜12Pdを備え、正孔注入層M1、正孔輸送層M2、発光層M3及び電子輸送層M4を形成し、陰極層Nを別の装置によって形成するようにしてもよい。要は、待機時間によってその特性が変化しやすい層(上記実施形態では、正孔輸送層M2)を有した積層体を形成する場合、上記成膜装置10を使用するようにすればよい。
【0068】
・上記実施形態では、成膜装置10を有機EL素子の積層体M及び陰極層Nの形成に適用したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、トランジスタや太陽電池といった他の電子素子の形成に使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】成膜装置の全体構成を説明するための図。
【図2】プロセスチャンバーの構成を説明するための図。
【図3】(a)は、処理前のウェハの上面図、(b)は、処理前のウェハの拡大断面図、(c)は、処理後のウェハの拡大断面図。
【図4】(a)は、第1のプロセスチャンバーにて正孔注入層が形成された図、(b)は、第2のプロセスチャンバーにて正孔輸送層が形成された図。
【図5】(a)は、第3のプロセスチャンバーにて発光層が形成された図、(b)は、第4のプロセスチャンバーにて電子輸送層が形成された図、(c)は、第5のプロセスチャンバーにて陰極層が形成された図。
【図6】正孔輸送層と待機時間との相関を示すグラフ。
【符号の説明】
【0070】
C…制御装置、M2…第1層としての正孔輸送層、M3…第2層としての発光層、10…成膜装置、12Pb…第1のチャンバーとしての第2のプロセスチャンバー、12Pc…第2のチャンバーとしての第3のプロセスチャンバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層を形成するための第1のチャンバーと、第2層を形成するための第2のチャンバーとを少なくとも備え、前記第1のチャンバーにて前記第1層を形成した後に前記第2のチャンバーにて前記第1層上に前記第2層を形成する成膜装置の制御方法において、
前記第1のチャンバーにて前記第1層の形成が終了したときに、前記第2のチャンバーにて前記第2層の形成が終了しているように、前記第1のチャンバーでの前記第1層の成膜速度及び前記第2のチャンバーでの前記第2層の成膜速度の少なくともどちらか一方を制御するようにしたことを特徴とする成膜装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置の制御方法において、
前記第1層は、前記第2層に比べて前記第1層の形成後から前記第2層が形成されるまでの待機時間によって特性が変化する膜であることを特徴とする成膜装置の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置の制御方法において、
前記第1層は、有機EL素子の正孔輸送層であり、
前記第2層は、前記有機EL素子の発光層であることを特徴とする成膜装置の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜装置の制御方法において、
前記発光層の膜厚は、前記正孔輸送層の膜厚に比べて厚く、
前記発光層の成膜速度は、前記正孔輸送層の成膜速度に比べて速いことを特徴とする成膜装置の制御方法。
【請求項5】
第1層を形成するための第1のチャンバーと、第2層を形成するための第2のチャンバーとを少なくとも備え、前記第1のチャンバーにて前記第1層を形成した後に前記第2のチャンバーにて前記第1層上に前記第2層を形成する成膜装置において、 前記第1のチャンバーにて前記第1層の形成が終了したときに、前記第2のチャンバーにて前記第2層の形成が終了しているように、前記第1のチャンバーでの前記第1層の成膜速度及び前記第2のチャンバーでの前記第2層の成膜速度の少なくともどちらか一方を制御するようにしたことを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項5に記載の成膜装置において、
前記第1層は、前記第2層に比べて前記第1層の形成後から前記第2層が形成されるまでの待機時間によって特性が変化する層であることを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項6に記載の成膜装置において、
前記第1層は、有機EL素子の正孔輸送層であり、
前記第2層は、前記有機EL素子の発光層であることを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項7に記載の成膜装置において、
前記発光層の膜厚は、前記正孔輸送層の膜厚に比べて厚く、
前記発光層の成膜速度は、前記正孔輸送層の成膜速度に比べて速いことを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−211286(P2007−211286A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31984(P2006−31984)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】