成膜装置及び成膜方法
【課題】凹凸構造を有する基板表面の膜厚分布の改善を図ることができる成膜装置及び成膜方法を提供すること。
【解決手段】本発明の成膜装置1は、被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板Wを成膜対象とし、ステージ3と、成膜源4と、検出部10と、成膜源制御部16とを具備する。成膜源4は、成膜材料Tから成膜粒子を生成させ、ステージ3に支持された基板Wに第2の方向から成膜粒子を照射する。検出部10は、ステージ3の回転角度を検出する。成膜源制御部16は、検出部10の検出結果に基づいて、第1の方向と、第2の方向を被成膜面に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度となり、第1の方向と第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように成膜源4を制御する。
【解決手段】本発明の成膜装置1は、被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板Wを成膜対象とし、ステージ3と、成膜源4と、検出部10と、成膜源制御部16とを具備する。成膜源4は、成膜材料Tから成膜粒子を生成させ、ステージ3に支持された基板Wに第2の方向から成膜粒子を照射する。検出部10は、ステージ3の回転角度を検出する。成膜源制御部16は、検出部10の検出結果に基づいて、第1の方向と、第2の方向を被成膜面に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度となり、第1の方向と第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように成膜源4を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸構造を有する基板の表面に均一に薄膜を形成することが可能な成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板の表面(以下、被成膜面)に均一な膜厚で薄膜を形成するための成膜装置が種々提案されている。例えば下記特許文献1には、被成膜面に対して斜め方向に対向するように配置されたスパッタリングターゲットと、基板ホルダを基板の中心の回りに回転させるホルダモータとを有し、基板を回転させながら、蒸着粒子を被成膜面に斜め方向から入射させるスパッタ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−103026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成のスパッタ装置は、平坦な被成膜面を有する基板に対しては、良好な膜厚分布で成膜することが可能であるものの、凹凸構造のある被成膜面を有する基板に対しては、良好な膜厚分布で成膜することができないという問題がある。これは、凹凸構造の各領域によってスパッタリングターゲットに対向する角度が異なり、被成膜速度が異なるからである。基板を回転させても、被成膜面上の一点とスパッタリングターゲットとの距離が変動するために、凹凸構造の各領域における被成膜速度を均一化することはできない。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、凹凸構造を有する基板表面の膜厚分布の改善を図ることができる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る、被成膜面を有し上記記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜するため成膜装置は、ステージと、成膜源と、検出部と、成膜源制御部とを具備する。
上記ステージは、上記基板を支持し、上記被成膜面に垂直な軸の回りに回転する。
上記成膜源は、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から上記成膜粒子を照射する。
上記検出部は、上記ステージの回転角度を検出する。
上記成膜源制御部は、上記検出部の検出結果に基づいて、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように上記成膜源を制御し、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、成膜速度が上記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように上記成膜源を制御する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜するため成膜装置は、ステージと、成膜源と、検出部と、成膜源制御部とを具備する。
上記ステージは、上記基板を支持し、上記被成膜面に垂直な軸の回りに回転する。
上記成膜源は、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から上記成膜粒子を照射する。
上記検出部は、上記ステージの回転角度を検出する。
上記ステージ制御部は、上記検出部の検出結果に基づいて、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、回転速度が第1の回転速度となるように上記ステージを制御し、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、回転速度が上記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように上記ステージを制御する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜する成膜方法は、ステージに上記基板を載置して上記被成膜面に垂直な軸の周りに上記ステージを回転させる。
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させる。
成膜源制御部に、上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように上記成膜源を制御させ、上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となるときは、成膜速度が上記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように上記成膜源を制御させる。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜する成膜方法は、ステージに上記基板を載置して上記被成膜面に垂直な軸の周りに上記ステージを回転させる。
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させる。
ステージ制御部に、上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、回転速度が第1の回転速度となるように上記ステージを制御させ、上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となるときは、回転速度が上記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように上記ステージを制御させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るスパッタ装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に係るスパッタ装置のチャンバを上面方向からみた斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係るスパッタ装置が成膜対象とする基板を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るスパッタ装置のスパッタカソードと基板の位置関係を示す概念図である。
【図5】第1の実施形態に係るスパッタ装置における、基板の回転角度と第1の方向の関係を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態に係るスパッタ装置の電源制御部による印加電圧の制御の一例を示すグラフである。
【図7】第1の実施形態に係るスパッタ装置の電源制御部による印加電圧の制御の一例を示すグラフである。
【図8】第1の実施形態に係るスパッタ装置の電源制御部による印加電圧の制御の一例を示すグラフである。
【図9】第1の実施形態に係るスパッタ装置の動作を説明する上で、基板上に設定した点の位置を示す平面図である。
【図10】第1の実施形態に係るスパッタ装置が成膜対象とする基板の凹凸構造を示す図である。
【図11】比較例に係る成膜方法で成膜した場合の、基板上の位置及び領域毎の積層膜厚を示す表である。
【図12】第1の実施形態に係るスパッタ装置を用いて成膜した場合の、基板上の位置及び領域毎の積層膜厚を示す表である。
【図13】第2の実施形態に係るスパッタ装置の概略構成図である。
【図14】第2の実施形態に係るスパッタ装置の駆動源制御部によるステージ回転速度の制御の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る、被成膜面を有し、上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜するため成膜装置は、ステージと、成膜源と、検出部と、成膜源制御部とを具備する。
上記ステージは、上記基板を支持し、上記被成膜面に垂直な軸の回りに回転する。
上記成膜源は、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から上記成膜粒子を照射する。
上記検出部は、上記ステージの回転角度を検出する。
上記成膜源制御部は、上記検出部の検出結果に基づいて、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように上記成膜源を制御し、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、成膜速度が上記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように上記成膜源を制御する。
【0012】
凹凸構造が形成された基板上の一点についてみると、第1の方向と第3の方向が垂直である場合、その凹凸構造の照射源に対向する領域(以下、対向領域)は照射源に対する角度(以下、照射角度)が鈍角であるために照射源から成膜粒子の照射密度が多い。これに対し、そのその裏側の領域(以下、背面領域)は凹凸構造の陰になり、あるいは照射角度が鋭角であるために成膜粒子の照射密度が少ない。このため、第1の方向と第3の方向が垂直である場合は対向領域と背面領域で被成膜速度(領域毎の成膜される速度)が大きく異なることとなる。一方、第1の方向と第3の方向が平行となる場合、凹凸構造の領域によっては照射角度が異ならないため、成膜粒子の照射密度は同等であり、被成膜速度も同等となる。ここで、本実施形態では、成膜源制御部が、検出部により検出されたステージの回転角度、即ち、第1の方向と第3の方向の交差角度に基づいて成膜源を制御し、成膜速度(成膜源が成膜する速度)を変動させる。これにより、凹凸構造の領域によって被成膜速度が大きく異なる状況(即ち、第1の方向と第3の方向が垂直)の場合には成膜速度自体が低減され、形成される膜厚が小さくなる。凹凸構造の領域によって被成膜速度が同等の状況(即ち第1の方向と第3の方向が平行)の場合には成膜速度が低減されることなく、均等に成膜される。この繰り返しで成膜することにより、成膜速度を変動させることなく成膜した場合に比べて膜厚分布を改善することが可能である。
【0013】
上記成膜源は、スパッタリングカソードと、上記スパッタリングカソードに印加電圧を供給する電圧供給部とを含み、上記成膜源制御部は上記電圧供給部を制御することで成膜速度を制御してもよい。
【0014】
この構成によれば、スパッタリングターゲットに印加する電圧を増減することにより、成膜速度を制御することが可能である。成膜速度の制御手法は電圧の制御に限られないが、電圧は応答性よく制御することが可能であるため好適である。
【0015】
上記成膜源制御部は、上記第1の方向と上記第3の方向の交差角度が0°以上45°未満のときは上記印加電圧を第1の電圧とし、上記交差角度が45°以上90°未満のときは上記印加電圧を上記第1の電圧より低い第2の電圧としてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1の方向と第3の方向の交差角度が平行もしくは平行に近いときには成膜速度を速くし、第1の方向と第3の方向の交差角度が垂直もしくは垂直に近いときには成膜速度を遅くすることが可能である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜するため成膜装置は、ステージと、成膜源と、検出部と、成膜源制御部とを具備する。
上記ステージは、上記基板を支持し、上記被成膜面に垂直な軸の回りに回転する。
上記成膜源は、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から上記成膜粒子を照射する。
上記検出部は、上記ステージの回転角度を検出する。
上記ステージ制御部は、上記検出部の検出結果に基づいて、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、回転速度が第1の回転速度となるように上記ステージを制御し、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、回転速度が上記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように上記ステージを制御する。
【0018】
本実施形態では、ステージ制御部が、検出部により検出されたステージの回転角度、即ち、第1の方向と第3の方向の交差角度に基づいてステージを制御し、被成膜速度を変動させる。これにより、凹凸構造の領域によって被成膜速度が大きく異なる状況(即ち、第1の方向と第3の方向が垂直)の場合には形成される膜厚が小さくなる。凹凸構造の領域によって被成膜速度が同等の状況(即ち第1の方向と第3の方向が平行)の場合には均等に成膜される。この繰り返しで成膜することにより、ステージの回転速度を変動させることなく成膜した場合に比べて膜厚分布を改善することが可能である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜する成膜方法は、ステージに上記基板を載置して上記被成膜面に垂直な軸の周りに上記ステージを回転させる。
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させる。
成膜源制御部に、上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように上記成膜源を制御させ、上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となるときは、成膜速度が上記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように上記成膜源を制御させる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜する成膜方法は、ステージに上記基板を載置して上記被成膜面に垂直な軸の周りに上記ステージを回転させる。
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させる。
ステージ制御部に、上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、回転速度が第1の回転速度となるように上記ステージを制御させ、上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となるときは、回転速度が上記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように上記ステージを制御させる。
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るスパッタ装置について説明する。
【0022】
[スパッタ装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスパッタ装置1の概略構成図である。本実施の形態において、スパッタ装置1は、DC(Direct Current)スパッタ装置であるものとするがこれには限られず、AC(alternating current)スパッタ、RF(Radio Frequency)スパッタ、マグネトロンスパッタ等の他の方式のものであってもよい。
【0023】
スパッタ装置1は、チャンバ2を備えている。チャンバ2の内部には、基板Wを支持するためのステージ3と、スパッタカソード4が設置されている。概略的には、スパッタ装置1は、チャンバ2内のステージ3上に載置された基板Wの表面に、スパッタカソード4から成膜粒子を照射し、成膜する装置である。以下、基板Wの成膜される面を被成膜面とする。
【0024】
チャンバ2は図示しない真空排気装置を介して所定の真空度にまで減圧されることが可能である。スパッタ装置1は、チャンバ2の内部にアルゴンガス等、あるいは酸素、窒素等の反応性ガスを導入するためのガス導入ノズル(図示略)を備えている。上記ガス導入ノズルは、チャンバ2の所定位置に取り付けられている。
【0025】
ステージ3は、内部に加熱源5を有するホットプレートで構成されている。この加熱源5は、ステージ3上に載置された基板Wを所定温度に加熱する。上記所定温度としては、例えば、20℃から500℃の範囲の一定温度とされる。加熱源5は、例えば抵抗加熱方式の加熱源が適用される。
【0026】
ステージ3は、絶縁性材料(例えばPBN:パイロリティックボロンナイトライド)で構成されており、その表面近傍の内部には静電チャック用電極11が適宜の位置に適宜の個数設置されている。これにより、基板Wをステージ3の表面に密着させて基板温度の面内均一化を図るようにしている。
【0027】
ステージ3は、金属(例えばアルミニウム)製の台座6の上に設置される。台座6はその下面中心部に、基板Wの被成膜面に対して垂直な方向に伸びる回転軸7が取り付けられており、モータ等の駆動源8を介して回転可能に構成されている。回転軸7は、軸受機構(図示略)及び磁性流体シール等のシール機構9を介してチャンバ2の底壁に取り付けられている。また、駆動源8には、駆動源8の回転駆動角度、即ちステージ3の回転角度を検出するための検出部10が接続されている。なお、検出部10は、回転軸7に直接設けられ、回転軸7の回転角度を検出するものであってもよい。検出部10によって検出されたステージ3の回転角度は、後述する電源制御部16に入力される。
【0028】
台座6の内部には図示せずとも冷却媒が循環する冷却ジャケットが設けられており、ステージ3を所定温度(例えば−40℃から0℃)に冷却することが可能である。この冷却媒の導入・導出管路17は、加熱源用配線12、静電チャック用配線13等とともに回転軸7の内部に設置されている。この回転軸7の内部には更に、ステージ3の温度を測定する図示しない熱電対等の測温手段に接続される測温用配線14が設置されている。
【0029】
さらに、本実施形態のスパッタ装置1には、チャンバ2の内壁面への成膜材料の付着を防止するための防着板や、基板Wに磁性膜を成膜する場合に磁性膜の磁化方向を制御するためのマグネットが設けられてもよい。
【0030】
スパッタカソード4は、ターゲットTを含み、スパッタカソード4に印加電圧を供給する電源15に接続されている。また、電源15には、電源15がスパッタカソード4に供給する電圧を制御する電源制御部16が接続されている。電源制御部16による制御を受けて電源15がスパッタカソード4に印加電圧を供給すると、チャンバ2に導入されているスパッタガス(例えばAr)がイオン化してターゲットTに衝突し、ターゲットTの材料(以下、ターゲット材)が弾き出されて成膜粒子となる。成膜粒子は運動エネルギーをもって飛翔し、基板Wの被成膜面に付着する。即ち、スパッタカソード4によって成膜粒子が生成され、基板Wに対して照射される。電源制御部16が印加電圧を制御することにより、上記ガスイオンの衝突速度及び衝突頻度が増減し、成膜速度(スパッタカソード4の基板W上に成膜する速度)を変動させることができる。
【0031】
ターゲット材の種類は特に限定されない。例えば、MRAM(Magnetic Random Access Memory)、PRAM(Phase change Random Access Memory)等の抵抗変化素子の作製においては、当該素子の少なくとも1つの機能層を構成する強磁性材料あるいは反強磁性材料を用いることができる。具体的には、Ni−Fe、Co−Fe、Pt−Mn、Ge−Sb−Te、Tb−Sb−Fe−Co系材料などが挙げられる。
【0032】
また、磁性多層膜素子における絶縁層や保護層、導電層を構成する材料のターゲット材が用いられていてもよく、例えば、Cu、Ru、Ta、Al等、作製される素子の種類に応じてターゲット材を選定することができる。また、チャンバ2内に酸素や窒素等の反応性ガスを導入して酸化膜や窒化膜を成膜することも可能である。
【0033】
図2は、チャンバ2を上面方向からみた斜視図である。同図に示すように、スパッタカソード4は、成膜粒子の照射方向が基板Wの被成膜面に対して斜め方向となるように、具体的には、ターゲットTが基板Wの被成膜面と斜め方向から対向するように配置される。なお、成膜粒子はターゲットTからある程度拡散して放出されるが、ターゲットTの被スパッタ面に対して垂直方向を成膜粒子の照射方向(後述する、「第2の方向」)とする。
【0034】
[基板について]
本実施形態に係るスパッタ装置1が成膜対象とする基板Wについて説明する。
図3(a)は基板Wを示す斜視図であり、図3(b)は基板Wの拡大図である。また、図3(c)は基板Wの模式的な断面図である。これらの図において、被成膜面上の直交する2方向をX方向及びY方向とし、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。これらの図に示すように、基板Wには、その被成膜面上の一方向に沿って複数の凹凸構造sが形成されている。この被成膜面上の一方向を「第1の方向」とし、X方向に一致するものとする。なお、これらの図に示す凹凸構造sは便宜上の大きさであり、実際には例えばミクロンオーダーの大きさが想定される。また、凹凸構造sは、被成膜面の全域に形成されていなくてもよく、少なくとも一部に形成されていればよい。基板Wの形状も円板状に限られない。また、基板Wには、基板Wをステージ3上に搬送するロボット等が基板Wの向きを確認するためのノッチ(切り欠き)Nが形成されている。ここでは、ノッチNは、ノッチNと基板Wの中心を結ぶ線が第1の方向と直交する位置に設けられるものとする。なお、ノッチNとしてオリエンテーションフラットを用いてもよい。
【0035】
これらの図に示すように、凹凸構造sは第1の方向に沿って一様に形成された凹凸状の構造であり、凹凸構造sによって被成膜面は、微細なレベルにおいてはX−Y平面に対する角度が異なる複数の領域に分けることができる。被成膜面のうち、凹凸構造sの上面及び凹凸構造sの間にあたるX−Y平面に平行な領域を平坦領域a1、凹凸構造sの一方の側面にあたりX−Y平面に対して傾斜する領域を第1側面領域a2、凹凸構造sの他方の側面にあたりX−Y平面に対して傾斜する領域を第2側面領域a3とする。ここでは、第1側面領域a2が凹凸構造sのノッチN側であり、第2側面領域a3がノッチNの反対側に位置するものとする。第1側面領域a2及び第2側面領域a3の傾斜角度は任意であり、例えばX−Y平面に対して垂直であってもよい。このような構造を有する基板として例えば、GMR(Giant ManetoResistance:巨大磁気抵)素子を作製するための基板が想定される。
【0036】
[スパッタカソードと基板の位置関係]
スパッタカソード4と基板Wの位置関係について説明する。図4(a)及び図4(b)はこれらの位置関係を示す概念図である。図4(a)は斜視図であり、図4(b)は基板Wの被成膜面に垂直な方向からみた平面図である。上述のように、基板WはX−Y平面上の被成膜面を有し、凹凸構造sはX方向である第1の方向(図中のd1)に沿って形成されている。また、スパッタカソード4の被成膜面に対する成膜粒子の照射方向は、被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向(図中のd2)である。ここで、第2の方向を被成膜面と同一面、即ちX―Y平面に投影(Z成分を0)した方向を第3の方向(図中のd3)とする。X−Y平面における、第1の方向と第3の方向が交差する角度を「交差角度」とする。図4(a)及び図4(b)に示す状態では、交差角度は90°である。
【0037】
[成膜装置の動作]
以上のように構成されたスパッタ装置1の動作について説明する。
まず、基板搬送ロボット等によりステージ3に基板Wが載置される。この際、基板Wに形成されたノッチNが基準とされ、所定の向きで基板Wが載置される。ここでは図4(b)に示すように、ノッチNがスパッタカソード4側になるように配置されるものとする。
【0038】
チャンバ2内が真空排気された後、スパッタガスが導入される。また、加熱源5により基板Wが所定の温度まで加熱される。これらの準備が完了すると、駆動源8によって回転軸7が回転駆動され、ステージ3上に載置された基板Wが回転する。この際、検出部10によって基板Wの回転角度が検出される。
【0039】
電源制御部16によって制御された電源15によって基板WとターゲットTの間に電圧が印加され、イオン化したスパッタガスによるターゲットTのスパッタが開始される。スパッタにより生成したターゲット材の粒子(成膜粒子)は基板Wに向かって照射され、基板Wの被成膜面上に成膜される。
【0040】
ここで、電源制御部16が、検出部10によって検出された基板Wの回転角度に応じて電源15のターゲットTへの印加電圧を制御する。図5(a)〜(d)は基板Wの回転角度と上記第1の方向の関係を示す模式図である。基板Wが上記の向きに配置されているため、これらの図に示すように、基板Wの回転角度が0°(図5(a))及び180°(図5(c))のときに第1の方向と第3の方向は直交し、基板Wの回転角度が回転角度が90°(図5(b))及び270°(図5(d))のときに第1の方向と第3の方向は平行となる。
【0041】
図6は、電源制御部16の印加電圧の制御の一例を示すグラフである。同図に示すように、電源制御部16はステージ3(基板W)の回転角度が0°以上45°未満のときは印加電圧を電圧Aとし、基板Wの回転角度が45°以上135°未満のときは印加電圧を電圧Aより高い電圧Bとする。同様に、回転角度が135°以上225°未満及び315°以上360°未満のときは電圧A、回転角度が225°以上315°未満のときは電圧Bとする。なお、詳細は後述するが、電圧Aと電圧Bは、例えば、電圧Bのときの成膜速度に対して電圧Aのときの成膜速度が22%となるような関係とすることができる。
【0042】
上記電圧の制御は、第1の方向と第3の方向の交差角度で規定すると以下のようになる。即ち、交差角度が0°以上45°未満のときは印加電圧を電圧Bとし、45°以上90°未満のときは電圧Aとする。
【0043】
電源制御部16の制御による印加電圧の波形は、図6に示す矩形波に限られず、回転角度が0°及び180°のときに電圧Aとなり、90°及び270°のときは電圧Aとなる波形とすることができる。例えば、図7に示す三角波、図8に示す正弦波とすることも可能である。また、交差角度が回転角度が90°のときと270°のときのみ電圧を印加するパルス波であってもよい。
【0044】
このように電源制御部16が、電源15がターゲットTに印加する電圧を制御することにより、成膜速度が変動する。具体的には、印加電圧が電圧Bである場合は、電圧Aである場合に比べてスパッタガスイオンの衝突速度及び衝突頻度が高く、成膜速度が速くなる。なお、成膜速度を変動させる手法は印加電圧の制御に限られないが、印加電圧は応答性よく制御することが可能であるため好適である。
【0045】
[電圧制御による効果]
以上のように電源制御部16が、電源15がターゲットTに印加する電圧を制御することによる効果について説明する。説明のために、複数の点を有する基板Wをモデルとして設定する。図9は基板W上に設定した点P1、P2、P3、P4及びP5の位置を示す平面図である。なお、図9において凹凸構造sの図示は省略する。点P1は基板Wの中心点、点P2は基板Wの外周付近のノッチN近傍の点、点P3は点P2から点P1を挟んで基板Wの反対側の外周付近の点とする。また、点P4は点P2と点P3を結ぶ線の垂直二等分線上の基板Wの外周付近であって、ノッチN側からみて左側の点、点P5は同じく点P2と点P3を結ぶ線の垂直二等分線上の基板Wの外周付近であって、ノッチN側からみて右側の点とする。また、基板Wは、ノッチNがスパッタカソード4側となる向きでステージに載置されているものとする。
【0046】
仮に、ターゲットTに印加される電圧を一定として、基板Wを回転させることなく成膜する場合を想定する。この場合に所定時間成膜した場合の膜厚を図9に併せて示す。図9に示す表は、上記各点P1〜P5における平坦領域a1、第1側面領域a2及び第2側面領域a3のそれぞれの領域に成膜される膜厚を、点P1における平坦領域a1の膜厚を100として示すものである。
【0047】
点P1についてみると、平坦領域a1、第1側面領域a2及び第2側面領域a3のそれぞれの膜厚は異なり、第1側面領域a2の膜厚が最も大きく、第2側面領域a3膜厚が最も小さい。これは、各領域がスパッタカソード4と対向する角度が異なることにより各領域の被成膜速度(各領域が成膜される速度)が異なるためである。図10(a)及び(b)は点P1の凹凸構造sを示す模式図である。図10(a)に示すように、第1側面領域a2がスパッタカソード4の方向(第2の方向d2)となす角は、平坦領域a1のそれより大きい。また、第2側面領域a3が第2の方向となす角は平坦領域a1のそれより小さいか、または第2側面領域a3は凹凸構造sの陰となる。スパッタカソード4から照射される成膜粒子は、大部分が第2の方向から飛来するため、第2の方向となす角が垂直に近いほど単位面積当たりの飛来成膜粒子数が多く(被成膜速度が速く)なり、図10(b)に示すように膜厚に差が生じる。
【0048】
上記と同様の理由で、他の点P2〜P5のそれぞれにおいても、図9中の表に示すように第1側面領域a2の膜厚が最も大きく、第2側面領域a3膜厚が最も小さい。点P1〜P5の相互間でそれぞれ領域の膜厚が異なるのは、スパッタカソード4との距離及びスパッタカソード4と対向する角度が異なることにより被成膜速度が異なるためである。
【0049】
次に、ターゲットTに印加される電圧を一定として、基板Wを回転させて成膜する場合を想定する。この場合では、基板Wを100回回転させるとする。図11は、この場合における各点P1〜P5のそれぞれの領域の積算膜厚を算出した表である。積算膜厚は、0°、90°、180°及び270°のそれぞれの回転位置において1回ずつ成膜が行われると仮定し、図9に示した膜厚を積算したものである。
【0050】
点P1についてみると、点P1は基板Wの中心点であるので、その位置で回転するのみである。したがって、平坦領域a1については、1回の成膜で形成される膜厚100に成膜回数100を乗じた10000が0°、90°、180°、360°のそれぞれの回転位置において成膜される膜厚であり、積算すると膜厚40000となる。
【0051】
点P1の第1側面領域a2は回転角度0°においては膜厚120(図9のP1のa2、以下P1a2等のように記載する)に成膜回数100を乗じて膜厚12000となる。回転角度90°においては、第1側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向(図9において点P5の方向)に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向と反対方向(図9において点P3の方向)に対向する。このため、非回転時の第2側面領域a3と同程度に成膜されるとして膜厚45(P1a3)に成膜回数100を乗じて膜厚4500となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0052】
点P1の第2側面領域a3は、回転角度0°においては膜厚45(P1a3)に成膜回数100を乗じて膜厚4500となる。回転角度90°においては、第2側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向(図9において点P4の方向)に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向に対向する。このため、非回転時の第1側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚120(P1a2)に成膜回数100を乗じて膜厚12000となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0053】
このように点P1については、それぞれの積算膜厚は、平坦領域a1が膜厚40000、第1側面領域a2が膜厚36500、第2側面領域a3が膜厚36500となる。
【0054】
続いて点P2について検討する。点P2は基板Wが90°回転すると図9の点P5の位置に移動し、180°ではP3、270°ではP4の位置に順に移動する。したがって、平坦領域a1は回転角度0°においては膜厚160(P2a1)に成膜回数100を乗じて膜厚16000となる。回転角度90°においては、点P2は点P5の位置に移動しているので、膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180においては、点P2は点P3の位置に移動しているので、膜厚55(P3a1)に成膜回数100を乗じて膜厚5500となる。回転角度270°においては、点P2は点P4の位置に移動しているので、膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0055】
点P2の第1側面領域a2は、回転角度0°においては膜厚170(P2a2)に成膜回数100を乗じて膜厚17000となる。回転角度90°においては、第1側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向に対向する。このため、非回転時の点P5の位置における平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向と反対方向に対向する。このため、非回転時の点P3の位置における第2側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚5(P3a3)に成膜回数100を乗じて膜厚500となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0056】
点P2の第2側面領域a3は、回転角度0°においては膜厚80(P2a3)に成膜回数100を乗じて膜厚8000となる。回転角度90°においては、第2側面領域a3は、スパッタカソード4の方向と直交する方向に対向する。このため、非回転時の点P5の位置における平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向に対向する。このため、非回転時の点P3の位置における第1側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚90(P3a2)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0057】
このように点P2については、それぞれの積算膜厚は、平坦領域a1が膜厚39500、第1側面領域a2が膜厚35500、第2側面領域a3が膜厚35000となる。
【0058】
以下、点P3、P4及びP5についても点P2と同様に計算することが可能である。このようして図11に示す、各点P1〜P5のそれぞれの領域の積算膜厚が算出される。この積算膜厚について全領域の膜厚分布(標準得偏差/平均×100)を算出すると11.2%となる。一方、平坦領域a1のみの膜厚分布を算出すると0.56%となる。ここから、単純に基板Wを回転させて成膜する場合、各点P1〜P5のそれぞれの平坦領域a1の膜厚分布は良好であるものの、第1側面領域a2及び第2側面領域a3を加えた全領域の膜厚分布は良好ではないといえる。
【0059】
続いて、上記モデルを用いて本実施形態に係る成膜方法、即ち、基板Wの回転角度に応じてターゲットTに印加される電圧を変動させる成膜方法の場合に膜厚分布がどのようになるかを検討する。
【0060】
図12は、本実施形態における成膜方法により成膜した場合の、各点P1〜P5のそれぞれの領域の積算膜厚を算出した表である。積算膜厚は、0°、90°、180°及び270°のそれぞれの回転位置において1回ずつ成膜が行われると仮定し、図9に示した膜厚を積算したものである。
【0061】
上述のように本実施形態では、第1の方向と第3の方向が平行となるときはターゲットTへの印加電圧を電圧Bとし、第1の方向と第3の方向が直交するときは電圧Bより小さい電圧Aとする。上記モデルでは、基板Wの回転角度が0°及び180°のときに第1の方向と第3の方向が直交し、回転角度が90°及び270°のときに第1の方向と第3の方向が平行になるとしている。このため、回転角度0°及び180°のときに印加電圧を電圧Bとし、回転角度90°及び270°のときに印加電圧を電圧Aとする。電圧Aと電圧Bは、電圧Bのときの成膜速度に対して電圧Aのときの成膜速度が22%となるような関係とすることができる。
【0062】
点P1の平坦領域a1は、回転角度0°においては膜厚100(P1a1)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚2200となる。回転角度90°においては膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては膜厚100(P1a1)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚2200となる。回転角度270°においては膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0063】
点P1の第1側面領域a2は回転角度0°においては膜厚120(P1a2)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚2640となる。回転角度90°においては、第1側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向(図9において点P5の方向)に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向と反対方向(図9において点P3の方向)に対向する。このため、非回転時の第2側面領域a3と同程度に成膜されるとして膜厚45(P1a3)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚990となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0064】
点P1の第2側面領域a3は、回転角度0°においては膜厚45(P1a3)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚990となる。回転角度90°においては、第2側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向(図9において点P4の方向)に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚120(P1a2)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚2640となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0065】
このように点P1については、それぞれの積算膜厚は、平坦領域a1が膜厚24400、第1側面領域a2が膜厚23630、第2側面領域a3が膜厚23630となる。
【0066】
続いて点P2について検討する。点P2は基板Wが90°回転すると図9の点P5の位置に移動し、180°ではP3、270°ではP4の位置に順に移動する。したがって、平坦領域a1は回転角度0°においては膜厚160(P2a1)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚3520となる。回転角度90°においては、点P2は点P5の位置に移動しているので、膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180においては、点P2は点P3の位置に移動しているので、膜厚55(P5a1)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚1210となる。回転角度270°においては、点P2は点P4の位置に移動しているので、膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0067】
点P2の第1側面領域a2は、回転角度0°においては膜厚170(P2a2)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚3740となる。回転角度90°においては、第1側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向に対向する。このため、非回転時の点P5の位置における平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向と反対方向に対向する。このため、非回転時の点P3の位置における第2側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚5(P3a3)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚110となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0068】
点P2の第2側面領域a3は、回転角度0°においては膜厚80(P2a3)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚1760となる。回転角度90°においては、第2側面領域a3は、スパッタカソード4の方向と直交する方向に対向する。このため、非回転時の点P5の位置における平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向に対向する。このため、非回転時の点P3の位置における第1側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚90(P3a2)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚1980となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0069】
このように点P2については、それぞれの積算膜厚は、平坦領域a1が膜厚227300、第1側面領域a2が膜厚21850、第2側面領域a3が膜厚21740となる。
【0070】
以下、点P3、P4及びP5についても点P2と同様に計算することが可能である。このようして図12に示す、各点P1〜P5のそれぞれの領域の積算膜厚が算出される。この積算膜厚について全領域の膜厚分布(標準得偏差/平均×100)を算出すると6.91%となる。一方、平坦領域a1のみの膜厚分布を算出すると5.68%となる。図11に示した、単純に基板Wを回転させて成膜した場合に比べて平坦領域a1の膜厚分布は多少低下するものの、第1側面領域a2及び第2側面領域a3を加えた全領域の膜厚分布は改善されている。
【0071】
以上のように本実施形態では、電源制御部16が、検出部10により検出されたステージ3の回転角度、即ち、第1の方向と第3の方向の交差角度に基づいてスパッタカソード4を制御し、成膜速度を変動させる。これにより、第1の方向と第3の方向が直交し、成膜速度比が大きく異なる場合には成膜速度自体が低減され、形成される膜厚が小さくなる。第1の方向と第3の方向が平行であり、成膜速度比が同等の場合成膜速度が低減されることなく、均等に成膜される。この繰り返しで成膜することにより、成膜速度を変動させることなく成膜した場合に比べて膜厚分布を改善することが可能である。
【0072】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るスパッタ装置について説明する。
なお、本実施形態に係るスパッタ装置において、第1の実施形態にかかるスパッタ装置1の構成と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
[スパッタ装置の構成]
図13は、本発明の第2の実施形態に係るスパッタ装置20の概略構成図である。本実施の形態において、スパッタ装置20は、DC(Direct Current)スパッタ装置であるものとするがこれには限られず、AC(alternating current)スパッタ、RF(Radio Frequency)スパッタ、マグネトロンスパッタ等の他の方式のものであってもよい。
【0074】
同図に示すスパッタ装置20は、第1の実施形態に係るスパッタ装置1の電源制御部16に替え、駆動源制御部21を有する。駆動源制御部21は、駆動源8に接続され、駆動源8が回転軸7を回転駆動する回転駆動速度を制御する。この際、駆動源制御部21は、検出部10によって検出された回転軸7の回転角度、即ち基板Wの回転角度に基づいて回転駆動速度の制御を行う。スパッタ装置20のこの他の構成及び基板Wの構造は第1の実施形態と同様である。
【0075】
[成膜装置の動作]
以上のように構成されたスパッタ装置20の動作について説明する。
第1の実施形態と同様に、基板搬送ロボット等により、ノッチNがスパッタカソード4側になる向きで基板Wがステージ3に載置される。
【0076】
チャンバ2内が真空排気された後、スパッタガスが導入される。また、加熱源5により基板Wが所定の温度まで加熱される。これらの準備が完了すると、駆動源8によって回転軸7が回転駆動され、ステージ3上に載置された基板Wが回転する。この際、検出部10によって基板Wの回転角度が検出される。
【0077】
電源15によって基板WとターゲットTの間に電圧が印加され、イオン化したスパッタガスによるターゲットTのスパッタが開始される。スパッタにより生成したターゲット材の粒子(成膜粒子)は基板Wに向かって照射され、基板Wの被成膜面上に成膜される。
【0078】
ここで、駆動源制御部21が、検出部10によって検出された基板Wの回転角度に応じて駆動源8の回転駆動速度、即ちステージ3の回転速度を制御する。
【0079】
図14は、駆動源制御部21のステージ3の回転速度(以下、ステージ回転速度)の制御の一例を示すグラフである。同図に示すように、駆動源制御部21は、ステージ3(基板W)の回転角度が0°以上30°未満のときはステージ回転速度を速度(角速度)v1とする。基板Wの回転角度が60°以上120°未満のときはステージ回転速度を速度v1より小さい速度v2とする。回転角度が30°以上60°未満の間で回転速度を速度v1から速度v2に減速させる。同様に、回転角度が150°以上210°未満及び330°以上360°未満のときは速度v1、回転角度が240°以上300°未満のときは速度v2とする。回転角度が120°以上150°未満及び300°以上330°未満のときは速度v2から速度v1に加速させ、回転速度が210°以上240°未満のときは速度v1から速度v2に減速させる。
【0080】
このように駆動源制御部21が、駆動源8がステージ3を回転させる駆動速度を制御することにより、被成膜速度が変動する。具体的には、ステージ回転速度が速度v1である場合にスパッタカソード4に対向する領域は、スパッタカソード4に対向する時間が短いため、トータルの被成膜速度が小さくなる。一方、ステージ回転速度が速度v2である場合にスパッタカソード4に対向する領域は、スパッタカソード4に対向する時間が長いため、トータルの被成膜速度が大きくなる。
【0081】
[ステージ回転速度制御による効果]
以上のように駆動源制御部21が、駆動源8がステージ3の回転速度を制御することによる効果について、上記基板Wのモデルを用いて説明する。
【0082】
上述したように、基板Wの被成膜面はX−Y平面に対する傾斜角度が異なる平坦領域a1、第1側面領域a2及び第2側面領域a3を有する。このため、ステージ3の回転位置が、第1の方向と第3の方向が垂直となる場合には、第1側面領域a2と第2側面領域a3の被成膜速度の差が大きくなる。一方、第1の方向と第3の方向が平行となる場合には、第1側面領域a2と第2側面領域a3の被成膜速度は同等である。ここで、本実施形態に示す駆動源制御部21によりステージ3の回転角度、即ち、第1の方向と第3の方向の交差角度に応じてステージ3の回転速度を制御する。これにより、被成膜速度の差が大きい回転角度の場合には被成膜速度を抑えて膜厚差を小さくし、非成膜速度の差が大きい場合には被成膜速度を抑えることなく均等に成膜することが可能となる。この繰り返しで成膜することにより、ステージ回転速度を制御することなく成膜した場合に比べて膜厚分布を改善することが可能である
【0083】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【0084】
上記実施形態では、成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、本発明はこれ以外の成膜方法に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…スパッタ装置
3…ステージ
4…スパッタカソード
8…駆動源
10…検出部
15…電源
16…電源制御部
20…スパッタ装置
21…駆動源制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸構造を有する基板の表面に均一に薄膜を形成することが可能な成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板の表面(以下、被成膜面)に均一な膜厚で薄膜を形成するための成膜装置が種々提案されている。例えば下記特許文献1には、被成膜面に対して斜め方向に対向するように配置されたスパッタリングターゲットと、基板ホルダを基板の中心の回りに回転させるホルダモータとを有し、基板を回転させながら、蒸着粒子を被成膜面に斜め方向から入射させるスパッタ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−103026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成のスパッタ装置は、平坦な被成膜面を有する基板に対しては、良好な膜厚分布で成膜することが可能であるものの、凹凸構造のある被成膜面を有する基板に対しては、良好な膜厚分布で成膜することができないという問題がある。これは、凹凸構造の各領域によってスパッタリングターゲットに対向する角度が異なり、被成膜速度が異なるからである。基板を回転させても、被成膜面上の一点とスパッタリングターゲットとの距離が変動するために、凹凸構造の各領域における被成膜速度を均一化することはできない。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、凹凸構造を有する基板表面の膜厚分布の改善を図ることができる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る、被成膜面を有し上記記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜するため成膜装置は、ステージと、成膜源と、検出部と、成膜源制御部とを具備する。
上記ステージは、上記基板を支持し、上記被成膜面に垂直な軸の回りに回転する。
上記成膜源は、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から上記成膜粒子を照射する。
上記検出部は、上記ステージの回転角度を検出する。
上記成膜源制御部は、上記検出部の検出結果に基づいて、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように上記成膜源を制御し、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、成膜速度が上記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように上記成膜源を制御する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜するため成膜装置は、ステージと、成膜源と、検出部と、成膜源制御部とを具備する。
上記ステージは、上記基板を支持し、上記被成膜面に垂直な軸の回りに回転する。
上記成膜源は、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から上記成膜粒子を照射する。
上記検出部は、上記ステージの回転角度を検出する。
上記ステージ制御部は、上記検出部の検出結果に基づいて、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、回転速度が第1の回転速度となるように上記ステージを制御し、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、回転速度が上記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように上記ステージを制御する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜する成膜方法は、ステージに上記基板を載置して上記被成膜面に垂直な軸の周りに上記ステージを回転させる。
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させる。
成膜源制御部に、上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように上記成膜源を制御させ、上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となるときは、成膜速度が上記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように上記成膜源を制御させる。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜する成膜方法は、ステージに上記基板を載置して上記被成膜面に垂直な軸の周りに上記ステージを回転させる。
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させる。
ステージ制御部に、上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、回転速度が第1の回転速度となるように上記ステージを制御させ、上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となるときは、回転速度が上記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように上記ステージを制御させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るスパッタ装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に係るスパッタ装置のチャンバを上面方向からみた斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係るスパッタ装置が成膜対象とする基板を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るスパッタ装置のスパッタカソードと基板の位置関係を示す概念図である。
【図5】第1の実施形態に係るスパッタ装置における、基板の回転角度と第1の方向の関係を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態に係るスパッタ装置の電源制御部による印加電圧の制御の一例を示すグラフである。
【図7】第1の実施形態に係るスパッタ装置の電源制御部による印加電圧の制御の一例を示すグラフである。
【図8】第1の実施形態に係るスパッタ装置の電源制御部による印加電圧の制御の一例を示すグラフである。
【図9】第1の実施形態に係るスパッタ装置の動作を説明する上で、基板上に設定した点の位置を示す平面図である。
【図10】第1の実施形態に係るスパッタ装置が成膜対象とする基板の凹凸構造を示す図である。
【図11】比較例に係る成膜方法で成膜した場合の、基板上の位置及び領域毎の積層膜厚を示す表である。
【図12】第1の実施形態に係るスパッタ装置を用いて成膜した場合の、基板上の位置及び領域毎の積層膜厚を示す表である。
【図13】第2の実施形態に係るスパッタ装置の概略構成図である。
【図14】第2の実施形態に係るスパッタ装置の駆動源制御部によるステージ回転速度の制御の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る、被成膜面を有し、上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜するため成膜装置は、ステージと、成膜源と、検出部と、成膜源制御部とを具備する。
上記ステージは、上記基板を支持し、上記被成膜面に垂直な軸の回りに回転する。
上記成膜源は、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から上記成膜粒子を照射する。
上記検出部は、上記ステージの回転角度を検出する。
上記成膜源制御部は、上記検出部の検出結果に基づいて、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように上記成膜源を制御し、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、成膜速度が上記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように上記成膜源を制御する。
【0012】
凹凸構造が形成された基板上の一点についてみると、第1の方向と第3の方向が垂直である場合、その凹凸構造の照射源に対向する領域(以下、対向領域)は照射源に対する角度(以下、照射角度)が鈍角であるために照射源から成膜粒子の照射密度が多い。これに対し、そのその裏側の領域(以下、背面領域)は凹凸構造の陰になり、あるいは照射角度が鋭角であるために成膜粒子の照射密度が少ない。このため、第1の方向と第3の方向が垂直である場合は対向領域と背面領域で被成膜速度(領域毎の成膜される速度)が大きく異なることとなる。一方、第1の方向と第3の方向が平行となる場合、凹凸構造の領域によっては照射角度が異ならないため、成膜粒子の照射密度は同等であり、被成膜速度も同等となる。ここで、本実施形態では、成膜源制御部が、検出部により検出されたステージの回転角度、即ち、第1の方向と第3の方向の交差角度に基づいて成膜源を制御し、成膜速度(成膜源が成膜する速度)を変動させる。これにより、凹凸構造の領域によって被成膜速度が大きく異なる状況(即ち、第1の方向と第3の方向が垂直)の場合には成膜速度自体が低減され、形成される膜厚が小さくなる。凹凸構造の領域によって被成膜速度が同等の状況(即ち第1の方向と第3の方向が平行)の場合には成膜速度が低減されることなく、均等に成膜される。この繰り返しで成膜することにより、成膜速度を変動させることなく成膜した場合に比べて膜厚分布を改善することが可能である。
【0013】
上記成膜源は、スパッタリングカソードと、上記スパッタリングカソードに印加電圧を供給する電圧供給部とを含み、上記成膜源制御部は上記電圧供給部を制御することで成膜速度を制御してもよい。
【0014】
この構成によれば、スパッタリングターゲットに印加する電圧を増減することにより、成膜速度を制御することが可能である。成膜速度の制御手法は電圧の制御に限られないが、電圧は応答性よく制御することが可能であるため好適である。
【0015】
上記成膜源制御部は、上記第1の方向と上記第3の方向の交差角度が0°以上45°未満のときは上記印加電圧を第1の電圧とし、上記交差角度が45°以上90°未満のときは上記印加電圧を上記第1の電圧より低い第2の電圧としてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1の方向と第3の方向の交差角度が平行もしくは平行に近いときには成膜速度を速くし、第1の方向と第3の方向の交差角度が垂直もしくは垂直に近いときには成膜速度を遅くすることが可能である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜するため成膜装置は、ステージと、成膜源と、検出部と、成膜源制御部とを具備する。
上記ステージは、上記基板を支持し、上記被成膜面に垂直な軸の回りに回転する。
上記成膜源は、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から上記成膜粒子を照射する。
上記検出部は、上記ステージの回転角度を検出する。
上記ステージ制御部は、上記検出部の検出結果に基づいて、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、回転速度が第1の回転速度となるように上記ステージを制御し、上記ステージ上の上記基板が上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、回転速度が上記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように上記ステージを制御する。
【0018】
本実施形態では、ステージ制御部が、検出部により検出されたステージの回転角度、即ち、第1の方向と第3の方向の交差角度に基づいてステージを制御し、被成膜速度を変動させる。これにより、凹凸構造の領域によって被成膜速度が大きく異なる状況(即ち、第1の方向と第3の方向が垂直)の場合には形成される膜厚が小さくなる。凹凸構造の領域によって被成膜速度が同等の状況(即ち第1の方向と第3の方向が平行)の場合には均等に成膜される。この繰り返しで成膜することにより、ステージの回転速度を変動させることなく成膜した場合に比べて膜厚分布を改善することが可能である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜する成膜方法は、ステージに上記基板を載置して上記被成膜面に垂直な軸の周りに上記ステージを回転させる。
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させる。
成膜源制御部に、上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように上記成膜源を制御させ、上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となるときは、成膜速度が上記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように上記成膜源を制御させる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る、被成膜面を有し上記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、上記被成膜面に成膜する成膜方法は、ステージに上記基板を載置して上記被成膜面に垂直な軸の周りに上記ステージを回転させる。
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、上記ステージに支持された上記基板の上記被成膜面に、上記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させる。
ステージ制御部に、上記第1の方向と、上記第2の方向を上記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、回転速度が第1の回転速度となるように上記ステージを制御させ、上記第1の方向と上記第3の方向とが垂直となるときは、回転速度が上記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように上記ステージを制御させる。
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るスパッタ装置について説明する。
【0022】
[スパッタ装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスパッタ装置1の概略構成図である。本実施の形態において、スパッタ装置1は、DC(Direct Current)スパッタ装置であるものとするがこれには限られず、AC(alternating current)スパッタ、RF(Radio Frequency)スパッタ、マグネトロンスパッタ等の他の方式のものであってもよい。
【0023】
スパッタ装置1は、チャンバ2を備えている。チャンバ2の内部には、基板Wを支持するためのステージ3と、スパッタカソード4が設置されている。概略的には、スパッタ装置1は、チャンバ2内のステージ3上に載置された基板Wの表面に、スパッタカソード4から成膜粒子を照射し、成膜する装置である。以下、基板Wの成膜される面を被成膜面とする。
【0024】
チャンバ2は図示しない真空排気装置を介して所定の真空度にまで減圧されることが可能である。スパッタ装置1は、チャンバ2の内部にアルゴンガス等、あるいは酸素、窒素等の反応性ガスを導入するためのガス導入ノズル(図示略)を備えている。上記ガス導入ノズルは、チャンバ2の所定位置に取り付けられている。
【0025】
ステージ3は、内部に加熱源5を有するホットプレートで構成されている。この加熱源5は、ステージ3上に載置された基板Wを所定温度に加熱する。上記所定温度としては、例えば、20℃から500℃の範囲の一定温度とされる。加熱源5は、例えば抵抗加熱方式の加熱源が適用される。
【0026】
ステージ3は、絶縁性材料(例えばPBN:パイロリティックボロンナイトライド)で構成されており、その表面近傍の内部には静電チャック用電極11が適宜の位置に適宜の個数設置されている。これにより、基板Wをステージ3の表面に密着させて基板温度の面内均一化を図るようにしている。
【0027】
ステージ3は、金属(例えばアルミニウム)製の台座6の上に設置される。台座6はその下面中心部に、基板Wの被成膜面に対して垂直な方向に伸びる回転軸7が取り付けられており、モータ等の駆動源8を介して回転可能に構成されている。回転軸7は、軸受機構(図示略)及び磁性流体シール等のシール機構9を介してチャンバ2の底壁に取り付けられている。また、駆動源8には、駆動源8の回転駆動角度、即ちステージ3の回転角度を検出するための検出部10が接続されている。なお、検出部10は、回転軸7に直接設けられ、回転軸7の回転角度を検出するものであってもよい。検出部10によって検出されたステージ3の回転角度は、後述する電源制御部16に入力される。
【0028】
台座6の内部には図示せずとも冷却媒が循環する冷却ジャケットが設けられており、ステージ3を所定温度(例えば−40℃から0℃)に冷却することが可能である。この冷却媒の導入・導出管路17は、加熱源用配線12、静電チャック用配線13等とともに回転軸7の内部に設置されている。この回転軸7の内部には更に、ステージ3の温度を測定する図示しない熱電対等の測温手段に接続される測温用配線14が設置されている。
【0029】
さらに、本実施形態のスパッタ装置1には、チャンバ2の内壁面への成膜材料の付着を防止するための防着板や、基板Wに磁性膜を成膜する場合に磁性膜の磁化方向を制御するためのマグネットが設けられてもよい。
【0030】
スパッタカソード4は、ターゲットTを含み、スパッタカソード4に印加電圧を供給する電源15に接続されている。また、電源15には、電源15がスパッタカソード4に供給する電圧を制御する電源制御部16が接続されている。電源制御部16による制御を受けて電源15がスパッタカソード4に印加電圧を供給すると、チャンバ2に導入されているスパッタガス(例えばAr)がイオン化してターゲットTに衝突し、ターゲットTの材料(以下、ターゲット材)が弾き出されて成膜粒子となる。成膜粒子は運動エネルギーをもって飛翔し、基板Wの被成膜面に付着する。即ち、スパッタカソード4によって成膜粒子が生成され、基板Wに対して照射される。電源制御部16が印加電圧を制御することにより、上記ガスイオンの衝突速度及び衝突頻度が増減し、成膜速度(スパッタカソード4の基板W上に成膜する速度)を変動させることができる。
【0031】
ターゲット材の種類は特に限定されない。例えば、MRAM(Magnetic Random Access Memory)、PRAM(Phase change Random Access Memory)等の抵抗変化素子の作製においては、当該素子の少なくとも1つの機能層を構成する強磁性材料あるいは反強磁性材料を用いることができる。具体的には、Ni−Fe、Co−Fe、Pt−Mn、Ge−Sb−Te、Tb−Sb−Fe−Co系材料などが挙げられる。
【0032】
また、磁性多層膜素子における絶縁層や保護層、導電層を構成する材料のターゲット材が用いられていてもよく、例えば、Cu、Ru、Ta、Al等、作製される素子の種類に応じてターゲット材を選定することができる。また、チャンバ2内に酸素や窒素等の反応性ガスを導入して酸化膜や窒化膜を成膜することも可能である。
【0033】
図2は、チャンバ2を上面方向からみた斜視図である。同図に示すように、スパッタカソード4は、成膜粒子の照射方向が基板Wの被成膜面に対して斜め方向となるように、具体的には、ターゲットTが基板Wの被成膜面と斜め方向から対向するように配置される。なお、成膜粒子はターゲットTからある程度拡散して放出されるが、ターゲットTの被スパッタ面に対して垂直方向を成膜粒子の照射方向(後述する、「第2の方向」)とする。
【0034】
[基板について]
本実施形態に係るスパッタ装置1が成膜対象とする基板Wについて説明する。
図3(a)は基板Wを示す斜視図であり、図3(b)は基板Wの拡大図である。また、図3(c)は基板Wの模式的な断面図である。これらの図において、被成膜面上の直交する2方向をX方向及びY方向とし、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。これらの図に示すように、基板Wには、その被成膜面上の一方向に沿って複数の凹凸構造sが形成されている。この被成膜面上の一方向を「第1の方向」とし、X方向に一致するものとする。なお、これらの図に示す凹凸構造sは便宜上の大きさであり、実際には例えばミクロンオーダーの大きさが想定される。また、凹凸構造sは、被成膜面の全域に形成されていなくてもよく、少なくとも一部に形成されていればよい。基板Wの形状も円板状に限られない。また、基板Wには、基板Wをステージ3上に搬送するロボット等が基板Wの向きを確認するためのノッチ(切り欠き)Nが形成されている。ここでは、ノッチNは、ノッチNと基板Wの中心を結ぶ線が第1の方向と直交する位置に設けられるものとする。なお、ノッチNとしてオリエンテーションフラットを用いてもよい。
【0035】
これらの図に示すように、凹凸構造sは第1の方向に沿って一様に形成された凹凸状の構造であり、凹凸構造sによって被成膜面は、微細なレベルにおいてはX−Y平面に対する角度が異なる複数の領域に分けることができる。被成膜面のうち、凹凸構造sの上面及び凹凸構造sの間にあたるX−Y平面に平行な領域を平坦領域a1、凹凸構造sの一方の側面にあたりX−Y平面に対して傾斜する領域を第1側面領域a2、凹凸構造sの他方の側面にあたりX−Y平面に対して傾斜する領域を第2側面領域a3とする。ここでは、第1側面領域a2が凹凸構造sのノッチN側であり、第2側面領域a3がノッチNの反対側に位置するものとする。第1側面領域a2及び第2側面領域a3の傾斜角度は任意であり、例えばX−Y平面に対して垂直であってもよい。このような構造を有する基板として例えば、GMR(Giant ManetoResistance:巨大磁気抵)素子を作製するための基板が想定される。
【0036】
[スパッタカソードと基板の位置関係]
スパッタカソード4と基板Wの位置関係について説明する。図4(a)及び図4(b)はこれらの位置関係を示す概念図である。図4(a)は斜視図であり、図4(b)は基板Wの被成膜面に垂直な方向からみた平面図である。上述のように、基板WはX−Y平面上の被成膜面を有し、凹凸構造sはX方向である第1の方向(図中のd1)に沿って形成されている。また、スパッタカソード4の被成膜面に対する成膜粒子の照射方向は、被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向(図中のd2)である。ここで、第2の方向を被成膜面と同一面、即ちX―Y平面に投影(Z成分を0)した方向を第3の方向(図中のd3)とする。X−Y平面における、第1の方向と第3の方向が交差する角度を「交差角度」とする。図4(a)及び図4(b)に示す状態では、交差角度は90°である。
【0037】
[成膜装置の動作]
以上のように構成されたスパッタ装置1の動作について説明する。
まず、基板搬送ロボット等によりステージ3に基板Wが載置される。この際、基板Wに形成されたノッチNが基準とされ、所定の向きで基板Wが載置される。ここでは図4(b)に示すように、ノッチNがスパッタカソード4側になるように配置されるものとする。
【0038】
チャンバ2内が真空排気された後、スパッタガスが導入される。また、加熱源5により基板Wが所定の温度まで加熱される。これらの準備が完了すると、駆動源8によって回転軸7が回転駆動され、ステージ3上に載置された基板Wが回転する。この際、検出部10によって基板Wの回転角度が検出される。
【0039】
電源制御部16によって制御された電源15によって基板WとターゲットTの間に電圧が印加され、イオン化したスパッタガスによるターゲットTのスパッタが開始される。スパッタにより生成したターゲット材の粒子(成膜粒子)は基板Wに向かって照射され、基板Wの被成膜面上に成膜される。
【0040】
ここで、電源制御部16が、検出部10によって検出された基板Wの回転角度に応じて電源15のターゲットTへの印加電圧を制御する。図5(a)〜(d)は基板Wの回転角度と上記第1の方向の関係を示す模式図である。基板Wが上記の向きに配置されているため、これらの図に示すように、基板Wの回転角度が0°(図5(a))及び180°(図5(c))のときに第1の方向と第3の方向は直交し、基板Wの回転角度が回転角度が90°(図5(b))及び270°(図5(d))のときに第1の方向と第3の方向は平行となる。
【0041】
図6は、電源制御部16の印加電圧の制御の一例を示すグラフである。同図に示すように、電源制御部16はステージ3(基板W)の回転角度が0°以上45°未満のときは印加電圧を電圧Aとし、基板Wの回転角度が45°以上135°未満のときは印加電圧を電圧Aより高い電圧Bとする。同様に、回転角度が135°以上225°未満及び315°以上360°未満のときは電圧A、回転角度が225°以上315°未満のときは電圧Bとする。なお、詳細は後述するが、電圧Aと電圧Bは、例えば、電圧Bのときの成膜速度に対して電圧Aのときの成膜速度が22%となるような関係とすることができる。
【0042】
上記電圧の制御は、第1の方向と第3の方向の交差角度で規定すると以下のようになる。即ち、交差角度が0°以上45°未満のときは印加電圧を電圧Bとし、45°以上90°未満のときは電圧Aとする。
【0043】
電源制御部16の制御による印加電圧の波形は、図6に示す矩形波に限られず、回転角度が0°及び180°のときに電圧Aとなり、90°及び270°のときは電圧Aとなる波形とすることができる。例えば、図7に示す三角波、図8に示す正弦波とすることも可能である。また、交差角度が回転角度が90°のときと270°のときのみ電圧を印加するパルス波であってもよい。
【0044】
このように電源制御部16が、電源15がターゲットTに印加する電圧を制御することにより、成膜速度が変動する。具体的には、印加電圧が電圧Bである場合は、電圧Aである場合に比べてスパッタガスイオンの衝突速度及び衝突頻度が高く、成膜速度が速くなる。なお、成膜速度を変動させる手法は印加電圧の制御に限られないが、印加電圧は応答性よく制御することが可能であるため好適である。
【0045】
[電圧制御による効果]
以上のように電源制御部16が、電源15がターゲットTに印加する電圧を制御することによる効果について説明する。説明のために、複数の点を有する基板Wをモデルとして設定する。図9は基板W上に設定した点P1、P2、P3、P4及びP5の位置を示す平面図である。なお、図9において凹凸構造sの図示は省略する。点P1は基板Wの中心点、点P2は基板Wの外周付近のノッチN近傍の点、点P3は点P2から点P1を挟んで基板Wの反対側の外周付近の点とする。また、点P4は点P2と点P3を結ぶ線の垂直二等分線上の基板Wの外周付近であって、ノッチN側からみて左側の点、点P5は同じく点P2と点P3を結ぶ線の垂直二等分線上の基板Wの外周付近であって、ノッチN側からみて右側の点とする。また、基板Wは、ノッチNがスパッタカソード4側となる向きでステージに載置されているものとする。
【0046】
仮に、ターゲットTに印加される電圧を一定として、基板Wを回転させることなく成膜する場合を想定する。この場合に所定時間成膜した場合の膜厚を図9に併せて示す。図9に示す表は、上記各点P1〜P5における平坦領域a1、第1側面領域a2及び第2側面領域a3のそれぞれの領域に成膜される膜厚を、点P1における平坦領域a1の膜厚を100として示すものである。
【0047】
点P1についてみると、平坦領域a1、第1側面領域a2及び第2側面領域a3のそれぞれの膜厚は異なり、第1側面領域a2の膜厚が最も大きく、第2側面領域a3膜厚が最も小さい。これは、各領域がスパッタカソード4と対向する角度が異なることにより各領域の被成膜速度(各領域が成膜される速度)が異なるためである。図10(a)及び(b)は点P1の凹凸構造sを示す模式図である。図10(a)に示すように、第1側面領域a2がスパッタカソード4の方向(第2の方向d2)となす角は、平坦領域a1のそれより大きい。また、第2側面領域a3が第2の方向となす角は平坦領域a1のそれより小さいか、または第2側面領域a3は凹凸構造sの陰となる。スパッタカソード4から照射される成膜粒子は、大部分が第2の方向から飛来するため、第2の方向となす角が垂直に近いほど単位面積当たりの飛来成膜粒子数が多く(被成膜速度が速く)なり、図10(b)に示すように膜厚に差が生じる。
【0048】
上記と同様の理由で、他の点P2〜P5のそれぞれにおいても、図9中の表に示すように第1側面領域a2の膜厚が最も大きく、第2側面領域a3膜厚が最も小さい。点P1〜P5の相互間でそれぞれ領域の膜厚が異なるのは、スパッタカソード4との距離及びスパッタカソード4と対向する角度が異なることにより被成膜速度が異なるためである。
【0049】
次に、ターゲットTに印加される電圧を一定として、基板Wを回転させて成膜する場合を想定する。この場合では、基板Wを100回回転させるとする。図11は、この場合における各点P1〜P5のそれぞれの領域の積算膜厚を算出した表である。積算膜厚は、0°、90°、180°及び270°のそれぞれの回転位置において1回ずつ成膜が行われると仮定し、図9に示した膜厚を積算したものである。
【0050】
点P1についてみると、点P1は基板Wの中心点であるので、その位置で回転するのみである。したがって、平坦領域a1については、1回の成膜で形成される膜厚100に成膜回数100を乗じた10000が0°、90°、180°、360°のそれぞれの回転位置において成膜される膜厚であり、積算すると膜厚40000となる。
【0051】
点P1の第1側面領域a2は回転角度0°においては膜厚120(図9のP1のa2、以下P1a2等のように記載する)に成膜回数100を乗じて膜厚12000となる。回転角度90°においては、第1側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向(図9において点P5の方向)に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向と反対方向(図9において点P3の方向)に対向する。このため、非回転時の第2側面領域a3と同程度に成膜されるとして膜厚45(P1a3)に成膜回数100を乗じて膜厚4500となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0052】
点P1の第2側面領域a3は、回転角度0°においては膜厚45(P1a3)に成膜回数100を乗じて膜厚4500となる。回転角度90°においては、第2側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向(図9において点P4の方向)に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向に対向する。このため、非回転時の第1側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚120(P1a2)に成膜回数100を乗じて膜厚12000となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0053】
このように点P1については、それぞれの積算膜厚は、平坦領域a1が膜厚40000、第1側面領域a2が膜厚36500、第2側面領域a3が膜厚36500となる。
【0054】
続いて点P2について検討する。点P2は基板Wが90°回転すると図9の点P5の位置に移動し、180°ではP3、270°ではP4の位置に順に移動する。したがって、平坦領域a1は回転角度0°においては膜厚160(P2a1)に成膜回数100を乗じて膜厚16000となる。回転角度90°においては、点P2は点P5の位置に移動しているので、膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180においては、点P2は点P3の位置に移動しているので、膜厚55(P3a1)に成膜回数100を乗じて膜厚5500となる。回転角度270°においては、点P2は点P4の位置に移動しているので、膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0055】
点P2の第1側面領域a2は、回転角度0°においては膜厚170(P2a2)に成膜回数100を乗じて膜厚17000となる。回転角度90°においては、第1側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向に対向する。このため、非回転時の点P5の位置における平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向と反対方向に対向する。このため、非回転時の点P3の位置における第2側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚5(P3a3)に成膜回数100を乗じて膜厚500となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0056】
点P2の第2側面領域a3は、回転角度0°においては膜厚80(P2a3)に成膜回数100を乗じて膜厚8000となる。回転角度90°においては、第2側面領域a3は、スパッタカソード4の方向と直交する方向に対向する。このため、非回転時の点P5の位置における平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向に対向する。このため、非回転時の点P3の位置における第1側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚90(P3a2)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0057】
このように点P2については、それぞれの積算膜厚は、平坦領域a1が膜厚39500、第1側面領域a2が膜厚35500、第2側面領域a3が膜厚35000となる。
【0058】
以下、点P3、P4及びP5についても点P2と同様に計算することが可能である。このようして図11に示す、各点P1〜P5のそれぞれの領域の積算膜厚が算出される。この積算膜厚について全領域の膜厚分布(標準得偏差/平均×100)を算出すると11.2%となる。一方、平坦領域a1のみの膜厚分布を算出すると0.56%となる。ここから、単純に基板Wを回転させて成膜する場合、各点P1〜P5のそれぞれの平坦領域a1の膜厚分布は良好であるものの、第1側面領域a2及び第2側面領域a3を加えた全領域の膜厚分布は良好ではないといえる。
【0059】
続いて、上記モデルを用いて本実施形態に係る成膜方法、即ち、基板Wの回転角度に応じてターゲットTに印加される電圧を変動させる成膜方法の場合に膜厚分布がどのようになるかを検討する。
【0060】
図12は、本実施形態における成膜方法により成膜した場合の、各点P1〜P5のそれぞれの領域の積算膜厚を算出した表である。積算膜厚は、0°、90°、180°及び270°のそれぞれの回転位置において1回ずつ成膜が行われると仮定し、図9に示した膜厚を積算したものである。
【0061】
上述のように本実施形態では、第1の方向と第3の方向が平行となるときはターゲットTへの印加電圧を電圧Bとし、第1の方向と第3の方向が直交するときは電圧Bより小さい電圧Aとする。上記モデルでは、基板Wの回転角度が0°及び180°のときに第1の方向と第3の方向が直交し、回転角度が90°及び270°のときに第1の方向と第3の方向が平行になるとしている。このため、回転角度0°及び180°のときに印加電圧を電圧Bとし、回転角度90°及び270°のときに印加電圧を電圧Aとする。電圧Aと電圧Bは、電圧Bのときの成膜速度に対して電圧Aのときの成膜速度が22%となるような関係とすることができる。
【0062】
点P1の平坦領域a1は、回転角度0°においては膜厚100(P1a1)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚2200となる。回転角度90°においては膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては膜厚100(P1a1)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚2200となる。回転角度270°においては膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0063】
点P1の第1側面領域a2は回転角度0°においては膜厚120(P1a2)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚2640となる。回転角度90°においては、第1側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向(図9において点P5の方向)に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向と反対方向(図9において点P3の方向)に対向する。このため、非回転時の第2側面領域a3と同程度に成膜されるとして膜厚45(P1a3)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚990となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0064】
点P1の第2側面領域a3は、回転角度0°においては膜厚45(P1a3)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚990となる。回転角度90°においては、第2側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向(図9において点P4の方向)に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向に対向する。このため、非回転時の平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚120(P1a2)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚2640となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚100(P1a1)に成膜回数100を乗じて膜厚10000となる。
【0065】
このように点P1については、それぞれの積算膜厚は、平坦領域a1が膜厚24400、第1側面領域a2が膜厚23630、第2側面領域a3が膜厚23630となる。
【0066】
続いて点P2について検討する。点P2は基板Wが90°回転すると図9の点P5の位置に移動し、180°ではP3、270°ではP4の位置に順に移動する。したがって、平坦領域a1は回転角度0°においては膜厚160(P2a1)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚3520となる。回転角度90°においては、点P2は点P5の位置に移動しているので、膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180においては、点P2は点P3の位置に移動しているので、膜厚55(P5a1)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚1210となる。回転角度270°においては、点P2は点P4の位置に移動しているので、膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0067】
点P2の第1側面領域a2は、回転角度0°においては膜厚170(P2a2)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚3740となる。回転角度90°においては、第1側面領域a2は、スパッタカソード4の方向と直交する方向に対向する。このため、非回転時の点P5の位置における平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向と反対方向に対向する。このため、非回転時の点P3の位置における第2側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚5(P3a3)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚110となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0068】
点P2の第2側面領域a3は、回転角度0°においては膜厚80(P2a3)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚1760となる。回転角度90°においては、第2側面領域a3は、スパッタカソード4の方向と直交する方向に対向する。このため、非回転時の点P5の位置における平坦領域a1と同程度に成膜されるとして膜厚90(P5a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。回転角度180°においては、第1側面領域a2はスパッタカソード4の方向に対向する。このため、非回転時の点P3の位置における第1側面領域a2と同程度に成膜されるとして膜厚90(P3a2)に成膜回数100及び成膜速度比0.22を乗じて膜厚1980となる。回転角度270°においては、回転角度90°の場合と同様に膜厚90(P4a1)に成膜回数100を乗じて膜厚9000となる。
【0069】
このように点P2については、それぞれの積算膜厚は、平坦領域a1が膜厚227300、第1側面領域a2が膜厚21850、第2側面領域a3が膜厚21740となる。
【0070】
以下、点P3、P4及びP5についても点P2と同様に計算することが可能である。このようして図12に示す、各点P1〜P5のそれぞれの領域の積算膜厚が算出される。この積算膜厚について全領域の膜厚分布(標準得偏差/平均×100)を算出すると6.91%となる。一方、平坦領域a1のみの膜厚分布を算出すると5.68%となる。図11に示した、単純に基板Wを回転させて成膜した場合に比べて平坦領域a1の膜厚分布は多少低下するものの、第1側面領域a2及び第2側面領域a3を加えた全領域の膜厚分布は改善されている。
【0071】
以上のように本実施形態では、電源制御部16が、検出部10により検出されたステージ3の回転角度、即ち、第1の方向と第3の方向の交差角度に基づいてスパッタカソード4を制御し、成膜速度を変動させる。これにより、第1の方向と第3の方向が直交し、成膜速度比が大きく異なる場合には成膜速度自体が低減され、形成される膜厚が小さくなる。第1の方向と第3の方向が平行であり、成膜速度比が同等の場合成膜速度が低減されることなく、均等に成膜される。この繰り返しで成膜することにより、成膜速度を変動させることなく成膜した場合に比べて膜厚分布を改善することが可能である。
【0072】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るスパッタ装置について説明する。
なお、本実施形態に係るスパッタ装置において、第1の実施形態にかかるスパッタ装置1の構成と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
[スパッタ装置の構成]
図13は、本発明の第2の実施形態に係るスパッタ装置20の概略構成図である。本実施の形態において、スパッタ装置20は、DC(Direct Current)スパッタ装置であるものとするがこれには限られず、AC(alternating current)スパッタ、RF(Radio Frequency)スパッタ、マグネトロンスパッタ等の他の方式のものであってもよい。
【0074】
同図に示すスパッタ装置20は、第1の実施形態に係るスパッタ装置1の電源制御部16に替え、駆動源制御部21を有する。駆動源制御部21は、駆動源8に接続され、駆動源8が回転軸7を回転駆動する回転駆動速度を制御する。この際、駆動源制御部21は、検出部10によって検出された回転軸7の回転角度、即ち基板Wの回転角度に基づいて回転駆動速度の制御を行う。スパッタ装置20のこの他の構成及び基板Wの構造は第1の実施形態と同様である。
【0075】
[成膜装置の動作]
以上のように構成されたスパッタ装置20の動作について説明する。
第1の実施形態と同様に、基板搬送ロボット等により、ノッチNがスパッタカソード4側になる向きで基板Wがステージ3に載置される。
【0076】
チャンバ2内が真空排気された後、スパッタガスが導入される。また、加熱源5により基板Wが所定の温度まで加熱される。これらの準備が完了すると、駆動源8によって回転軸7が回転駆動され、ステージ3上に載置された基板Wが回転する。この際、検出部10によって基板Wの回転角度が検出される。
【0077】
電源15によって基板WとターゲットTの間に電圧が印加され、イオン化したスパッタガスによるターゲットTのスパッタが開始される。スパッタにより生成したターゲット材の粒子(成膜粒子)は基板Wに向かって照射され、基板Wの被成膜面上に成膜される。
【0078】
ここで、駆動源制御部21が、検出部10によって検出された基板Wの回転角度に応じて駆動源8の回転駆動速度、即ちステージ3の回転速度を制御する。
【0079】
図14は、駆動源制御部21のステージ3の回転速度(以下、ステージ回転速度)の制御の一例を示すグラフである。同図に示すように、駆動源制御部21は、ステージ3(基板W)の回転角度が0°以上30°未満のときはステージ回転速度を速度(角速度)v1とする。基板Wの回転角度が60°以上120°未満のときはステージ回転速度を速度v1より小さい速度v2とする。回転角度が30°以上60°未満の間で回転速度を速度v1から速度v2に減速させる。同様に、回転角度が150°以上210°未満及び330°以上360°未満のときは速度v1、回転角度が240°以上300°未満のときは速度v2とする。回転角度が120°以上150°未満及び300°以上330°未満のときは速度v2から速度v1に加速させ、回転速度が210°以上240°未満のときは速度v1から速度v2に減速させる。
【0080】
このように駆動源制御部21が、駆動源8がステージ3を回転させる駆動速度を制御することにより、被成膜速度が変動する。具体的には、ステージ回転速度が速度v1である場合にスパッタカソード4に対向する領域は、スパッタカソード4に対向する時間が短いため、トータルの被成膜速度が小さくなる。一方、ステージ回転速度が速度v2である場合にスパッタカソード4に対向する領域は、スパッタカソード4に対向する時間が長いため、トータルの被成膜速度が大きくなる。
【0081】
[ステージ回転速度制御による効果]
以上のように駆動源制御部21が、駆動源8がステージ3の回転速度を制御することによる効果について、上記基板Wのモデルを用いて説明する。
【0082】
上述したように、基板Wの被成膜面はX−Y平面に対する傾斜角度が異なる平坦領域a1、第1側面領域a2及び第2側面領域a3を有する。このため、ステージ3の回転位置が、第1の方向と第3の方向が垂直となる場合には、第1側面領域a2と第2側面領域a3の被成膜速度の差が大きくなる。一方、第1の方向と第3の方向が平行となる場合には、第1側面領域a2と第2側面領域a3の被成膜速度は同等である。ここで、本実施形態に示す駆動源制御部21によりステージ3の回転角度、即ち、第1の方向と第3の方向の交差角度に応じてステージ3の回転速度を制御する。これにより、被成膜速度の差が大きい回転角度の場合には被成膜速度を抑えて膜厚差を小さくし、非成膜速度の差が大きい場合には被成膜速度を抑えることなく均等に成膜することが可能となる。この繰り返しで成膜することにより、ステージ回転速度を制御することなく成膜した場合に比べて膜厚分布を改善することが可能である
【0083】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【0084】
上記実施形態では、成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、本発明はこれ以外の成膜方法に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…スパッタ装置
3…ステージ
4…スパッタカソード
8…駆動源
10…検出部
15…電源
16…電源制御部
20…スパッタ装置
21…駆動源制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜面を有し、前記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、前記被成膜面に成膜するための成膜装置であって、
前記基板を支持し、前記被成膜面に垂直な軸の回りに回転するステージと、
成膜材料から成膜粒子を生成させ、前記ステージに支持された前記基板の前記被成膜面に、前記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から前記成膜粒子を照射する成膜源と、
前記ステージの回転角度を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記ステージ上の前記基板が前記第1の方向と、前記第2の方向を前記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように前記成膜源を制御し、前記ステージ上の前記基板が前記第1の方向と前記第3の方向とが垂直である回転角度のときは、成膜速度が前記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように前記成膜源を制御する成膜源制御部と
を具備する成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記成膜源は、スパッタリングカソードと、前記スパッタリングカソードに印加電圧を供給する電圧供給部とを含み、
前記成膜源制御部は前記電圧供給部を制御することで成膜速度を制御する
成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記成膜源制御部は、前記第1の方向と前記第3の方向の交差角度が0°以上45°未満のときは前記印加電圧を第1の電圧とし、前記交差角度が45°以上90°未満のときは前記印加電圧を前記第1の電圧より低い第2の電圧とする
成膜装置。
【請求項4】
被成膜面を有し、前記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、前記被成膜面に成膜するための成膜装置であって、
前記基板を支持し、前記被成膜面に垂直な軸の回りに回転するステージと、
成膜材料から成膜粒子を生成させ、前記ステージに支持された前記基板の前記被成膜面に、前記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射する成膜源と、
前記ステージの回転角度を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記ステージ上の前記基板が前記第1の方向と、前記第2の方向を前記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、回転速度が第1の回転速度となるように前記ステージを制御し、前記ステージ上の前記基板が前記第1の方向と前記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、回転速度が前記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように前記ステージを制御するステージ制御部と
を具備する成膜装置。
【請求項5】
被成膜面を有し、前記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、前記被成膜面に成膜する成膜方法であって、
ステージに前記基板を載置して前記被成膜面に垂直な軸の周りに前記ステージを回転させ、
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、前記ステージに支持された前記基板の前記被成膜面に、前記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させ、
成膜源制御部に、前記第1の方向と、前記第2の方向を前記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように前記成膜源を制御させ、前記第1の方向と前記第3の方向とが垂直となるときは、成膜速度が前記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように前記成膜源を制御させる
成膜方法。
【請求項6】
被成膜面を有し、前記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、前記被成膜面に成膜する成膜方法であって、
ステージに前記基板を載置して前記被成膜面に垂直な軸の周りに前記ステージを回転させ、
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、前記ステージに支持された前記基板の前記被成膜面に、前記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させ、
ステージ制御部に、前記第1の方向と、前記第2の方向を前記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、回転速度が第1の回転速度となるように前記ステージを制御させ、前記第1の方向と前記第3の方向とが垂直となるときは、回転速度が前記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように前記ステージを制御させる
成膜方法。
【請求項1】
被成膜面を有し、前記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、前記被成膜面に成膜するための成膜装置であって、
前記基板を支持し、前記被成膜面に垂直な軸の回りに回転するステージと、
成膜材料から成膜粒子を生成させ、前記ステージに支持された前記基板の前記被成膜面に、前記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から前記成膜粒子を照射する成膜源と、
前記ステージの回転角度を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記ステージ上の前記基板が前記第1の方向と、前記第2の方向を前記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように前記成膜源を制御し、前記ステージ上の前記基板が前記第1の方向と前記第3の方向とが垂直である回転角度のときは、成膜速度が前記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように前記成膜源を制御する成膜源制御部と
を具備する成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記成膜源は、スパッタリングカソードと、前記スパッタリングカソードに印加電圧を供給する電圧供給部とを含み、
前記成膜源制御部は前記電圧供給部を制御することで成膜速度を制御する
成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記成膜源制御部は、前記第1の方向と前記第3の方向の交差角度が0°以上45°未満のときは前記印加電圧を第1の電圧とし、前記交差角度が45°以上90°未満のときは前記印加電圧を前記第1の電圧より低い第2の電圧とする
成膜装置。
【請求項4】
被成膜面を有し、前記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、前記被成膜面に成膜するための成膜装置であって、
前記基板を支持し、前記被成膜面に垂直な軸の回りに回転するステージと、
成膜材料から成膜粒子を生成させ、前記ステージに支持された前記基板の前記被成膜面に、前記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射する成膜源と、
前記ステージの回転角度を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記ステージ上の前記基板が前記第1の方向と、前記第2の方向を前記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となる回転角度のときは、回転速度が第1の回転速度となるように前記ステージを制御し、前記ステージ上の前記基板が前記第1の方向と前記第3の方向とが垂直となる回転角度のときは、回転速度が前記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように前記ステージを制御するステージ制御部と
を具備する成膜装置。
【請求項5】
被成膜面を有し、前記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、前記被成膜面に成膜する成膜方法であって、
ステージに前記基板を載置して前記被成膜面に垂直な軸の周りに前記ステージを回転させ、
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、前記ステージに支持された前記基板の前記被成膜面に、前記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させ、
成膜源制御部に、前記第1の方向と、前記第2の方向を前記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、成膜速度が第1の成膜速度となるように前記成膜源を制御させ、前記第1の方向と前記第3の方向とが垂直となるときは、成膜速度が前記第1の成膜速度より小さい第2の成膜速度となるように前記成膜源を制御させる
成膜方法。
【請求項6】
被成膜面を有し、前記被成膜面上の一方向である第1の方向に沿って形成された凹凸構造を有する基板の、前記被成膜面に成膜する成膜方法であって、
ステージに前記基板を載置して前記被成膜面に垂直な軸の周りに前記ステージを回転させ、
成膜源に、成膜材料から成膜粒子を生成させ、前記ステージに支持された前記基板の前記被成膜面に、前記被成膜面に対して斜めの方向である第2の方向から成膜粒子を照射させ、
ステージ制御部に、前記第1の方向と、前記第2の方向を前記被成膜面と同一面上に投影した第3の方向とが平行となるときは、回転速度が第1の回転速度となるように前記ステージを制御させ、前記第1の方向と前記第3の方向とが垂直となるときは、回転速度が前記第1の回転速度より速い第2の回転速度となるように前記ステージを制御させる
成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−246759(P2011−246759A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120792(P2010−120792)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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