説明

成膜装置及び磁気ディスクの製造方法

【課題】複数枚の非導電性の基板に対してバイアススパッタによる成膜を行う枚葉式の成膜装置において、生産性を維持したままで、良好にDCバイアスを印加することができるようにする。
【解決手段】非導電性の基板1を保持する基台6と、バイアス印加用端子13を基板1上に成膜された導電性膜に接触させることによってこの導電性膜にバイアス電圧を印加するバイアス印加手段とを備える。バイアス印加用端子13は、形状記憶合金等、温度に応じて形状が変化する部材によって形成されており、温度変化による変形によって、基台6上に保持された基板1に接離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置等に搭載される磁気ディスクの製造方法に関し、また、このような磁気ディスクの製造に使用することができる成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクドライブに搭載される磁気ディスクは、真空装置(スパッタ装置など)により、ディスク基板上に積層膜を成膜することにより製造されている。この積層膜は、例えば、基台上に保持されたディスク基板を複数のターゲットが設置されたプロセス室(成膜室)内に設置し、真空排気後、スパッタリング法、または、CVD法等によって成膜される。
【0003】
ディスク基板上に成膜される積層膜は、下地層や記録層などの膜が順次成膜されて形成される。これら各層の成膜時におけるディスク基板の温度は、膜の表面状態や膜特性に大きく影響することが知られており、真空中においてディスク基板の加熱を行うため、スパッタ装置内にはヒータが搭載されている。
【0004】
ところで、近年、このような磁気ディスクにおいては、記録密度の向上が要求されている。磁気ディスクにおける記録密度を向上させるためには、ピット寸法の微小化に伴って、信号品質を維持、向上させるとともに、自己減磁効果への耐性を向上させることが必要となる。信号品質の維持、向上のためには、ノイズを下げるため、下地層と磁性膜の間に中間非磁性層を設けることが行われている。そして、自己減磁効果への耐性の向上のためには、磁性膜の薄膜化や、高保磁力化のため、交換結合磁性膜の導入や磁性膜へのPtの導入、また、成膜時にディスク基板にバイアス電位を与えることが行われている。
【0005】
すなわち、特許文献1乃至特許文献3に記載されているように、磁性膜の成膜時に、ディスク基板に負のDCバイアス電圧(基板バイアス)を印加するバイアススパッタを行うことにより、磁気ディスクの高記録密度化が可能となることが知られている。これは、基板バイアスの印加により、磁性膜の付着力を高めること、表面粗さを小さくすること、磁性膜の高密度化により硬度を上げること、並びに、微結晶膜の配向や結晶軸の長さを変更すること等が可能になるためである。
【0006】
そして、ディスク基板として非導電性のガラス基板等を用いる場合については、特許文献4に記載されているように、第1層として金属膜からなる下地層を形成し、この下地層に基板バイアスを印加して、この下地層上に磁性層等を成膜する方法が知られている。このような場合に、バイアス印加用端子をディスク基板上の下地層に接触させる方法として、特許文献5及び特許文献6に記載されているように、各種の方法が提案されている。
【0007】
また、近年では、磁気ディスクとしては、いわゆるノート型パソコンに搭載する2.5インチタイプのものや、いわゆるデスクトップ型パソコンに搭載する3.5インチタイプのもののみならず、携帯電話、デジタルカメラ、カーナピゲーション、携帯音楽プレーヤ等の小型装置の記憶装置に搭載する1.0インチタイプのものや0.85インチタイプのものなど、小径サイズの磁気ディスクが製造されている。このような小径のディスク基板への成膜は、1つの基台上に複数枚のディスク基板を保持させて行わなければ、生産性を向上させることはできない。
【0008】
そこで、これら小径サイズの磁気ディスクの製造では、生産性向上のため、例えば、特許文献7に記載されているように、口径の大きな一つの基台上に複数枚の小径のディスク基板を保持させ、枚葉式の成膜装置を用いて、一度に複数枚のディスク基板に対する成膜を行う方法が提案されている。
【0009】
【特許文献1】IEEE‐イートランザクションズ オン マグネティクス.26巻,1282頁,1990.
【特許文献2】特開平7−225935号公報
【特許文献3】特開平5−205240号公報
【特許文献4】特開平4−79025号公報
【特許文献5】特許第3002632号公報
【特許文献6】特開平7−243037号公報
【特許文献7】特開2001‐011625公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ディスク基板にDCバイアスをかけるバイアススパッタでは、基台上に導電性材料(例えば、金属)からなる爪状の部材を設けておき、この爪状の部材によって各ディスク基板を保持させるとともに、この爪状の部材をバイアス印加用端子としても用いている。
【0011】
そして、非導電性のディスク基板を用いてバイアススパッタを行う場合には、非導電性のディスク基板上に成膜した下地層にDCバイアスをかける必要がある。この下地層は、バイアス印加用端子としても用いる爪状の部材によってディスク基板を保持させた状態で成膜する。この場合、ディスク基板において、爪状の部材に覆われている部分には、下地層が成膜されない。そのため、爪状の部材と下地層との接触が不十分となり、適切に基板バイアスを印加できない虞れがある。
【0012】
そこで、下地層を成膜した後に、爪状の部材と下地層とが十分に接触するように、ディスク基板の位置を変えて改めて爪状の部材に取り付け直すことが行われている。このようにすれば、基板バイアスを印加するために必要な電気伝導が確保されるため、その後の成膜工程において、基板バイアスを適切に印加することができる。
【0013】
ところが、ディスク基板を取り付け直すためには、ディスク基板を成膜装置の外に一旦取り出し、再び成膜装置の中に入れることになるため、生産性が著しく劣化することとなる。特に、複数のディスク基板に対して同時に成膜を行う場合には、1枚1枚のディスク基板についてDCバイアスをかける必要があることから、生産性を向上させることが困難となっている。また、ディスク基台を一旦大気中に取り出すことは、ディスク基板にパーティクルが付着する虞れを生じさせ、品質の劣化を招来する虞れもある。
【0014】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、複数枚の非導電性の基板に対してバイアススパッタによる成膜を行う枚葉式の成膜装置において、生産性を維持したままで、良好にDCバイアスを印加することができるようにするとともに、高密度記録に対応した磁気ディスクの生産性の高い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る成膜装置は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0016】
〔構成1〕
非導電性の基板に対しバイアススパッタによる成膜を行う枚葉式の成膜装置であって、少なくとも一の非導電性の基板を保持する基台と、バイアス印加用端子を有しこのバイアス印加用端子を非導電性の基板上に成膜された導電性膜に接触させることによってこの導電性膜にバイアス電圧を印加するバイアス印加手段とを備え、バイアス印加用端子は、温度に応じて形状が変化する部材によって形成されており、温度変化による変形によって、基台上に保持された非導電性の基板に接離することを特徴とするものである。
【0017】
〔構成2〕
構成1を有する成膜装置において、バイアス印加用端子をなす温度に応じて形状が変化する部材は、形状記憶合金であることを特徴とするものである。
【0018】
〔構成3〕
構成1を有する成膜装置において、バイアス印加用端子をなす温度に応じて形状が変化する部材は、バイメタルであることを特徴とするものである。
【0019】
〔構成4〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する成膜装置において、バイアス印加用端子は、成膜に伴う温度上昇によって変形して、基台上に保持された非導電性の基板に接触するとともに、成膜の終了に伴う温度降下によって変形して、基台上に保持された非導電性の基板より離間することを特徴とするものである。
【0020】
〔構成5〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する成膜装置において、バイアス印加用端子の温度を制御する温度制御手段を備え、バイアス印加用端子は、成膜中に温度制御手段により温度が上昇されることによって変形して、基台上に保持された非導電性の基板に接触するとともに、成膜の終了後に温度制御手段により温度が降下されることによって変形して、基台上に保持された非導電性の基板より離間することを特徴とするものである。
【0021】
〔構成6〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する成膜装置において、バイアス印加用端子に電流を供給する電流供給手段を備え、バイアス印加用端子は、成膜中に電流供給手段により電流を供給されて温度上昇することによって変形して、基台上に保持された非導電性の基板に接触するとともに、成膜の終了後に電流供給手段による電流供給が遮断されて温度が降下されることによって変形して、基台上に保持された非導電性の基板より離間することを特徴とするものである。
【0022】
〔構成7〕
構成1乃至構成6のいずれか一を有する成膜装置において、基板としてディスク基板を用い、このディスク基板上に下地層、磁性層及び保護層を順次成膜することを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明に係る磁気ディスクの製造方法は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0024】
〔構成8〕
非磁性及び非導電性のディスク基板上に下地層、磁性層及び保護層を順次成膜する磁気ディスクの製造方法であって、ディスク基板を基台上に保持させる工程と、真空チャンバ内において基台上に保持されたディスク基板上に導電性膜を成膜する工程と、真空チャンバ内においてバイアス印加手段のバイアス印加用端子を変形させることによりこのバイアス印加用端子をディスク基板上に成膜された導電性膜に接触させる工程と、真空チャンバ内においてバイアス印加手段によりバイアス印加用端子を介して導電性膜にバイアス電圧を印加しつつ該導電性膜上に磁性層及び保護層を順次成膜する工程とを有し、バイアス印加部材として、温度に応じて形状が変化する部材によって形成され温度変化による変形によって基台上に保持された非導電性の基板に接離するものを用いることを特徴とするものである。
【0025】
〔構成9〕
構成8を有する磁気ディスクの製造方法において、バイアス印加用端子をなす温度に応じて形状が変化する部材として、形状記憶合金を用いることを特徴とするものである。
【0026】
〔構成10〕
構成8を有する磁気ディスクの製造方法において、バイアス印加用端子をなす温度に応じて形状が変化する部材として、バイメタルを用いることを特徴とするものである。
【0027】
〔構成11〕
構成8乃至構成10のいずれか一を有する磁気ディスクの製造方法において、バイアス印加用端子を、成膜に伴う温度上昇によって変形させて、基台上に保持された非導電性の基板に接触させるとともに、成膜の終了に伴う温度降下によって変形させて、基台上に保持された非導電性の基板より離間させることを特徴とするものである。
【0028】
〔構成12〕
構成8乃至構成10のいずれか一を有する磁気ディスクの製造方法において、バイアス印加用端子の温度を制御する温度制御手段を用いて、バイアス印加用端子を、成膜中に温度上昇させることによって変形させて、基台上に保持された非導電性の基板に接触させるとともに、成膜の終了後に温度降下させることによって変形させて、基台上に保持された非導電性の基板より離間させることを特徴とするものである。
【0029】
〔構成13〕
構成8乃至構成10のいずれか一を有する磁気ディスクの製造方法において、バイアス印加用端子に電流を供給する電流供給手段を用いて、バイアス印加用端子を、成膜中に電流を供給して温度上昇させることによって変形させて、基台上に保持された非導電性の基板に接触させるとともに、成膜の終了後に電流供給を遮断して温度降下させることによって変形させて、基台上に保持された非導電性の基板より離間させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
構成1を有する本発明に係る成膜装置においては、バイアス印加用端子は、温度に応じて形状が変化する部材によって形成されており、温度変化による変形によって、基台上に保持された非導電性の基板に接離するので、真空チャンバ内等に基台を設置したままの状態で、バイアス印加用端子と基板との接触及び離間を行うことができる。
【0031】
すなわち、この成膜装置においては、バイアス印加用端子と基板とが非接触の状態で導電性膜を成膜することができ、基板においてバイアス印加用端子が接触すべき箇所にも、良好に導電性膜を成膜することができる。そのため、この導電性膜とバイアス印加用端子とを適切に電気的に接続することができる。
【0032】
また、この成膜装置においては、バイアス印加用端子の変形によってバイアス印加用端子と基板とを接触させることにより、基台を大気中に取り出すことなく、導電性の基板を用いた場合とほぼ同様の工程により、基板バイアスを印加できる。そのため、非導電性の基板を用いた場合にも、高い量産性を実現できる。
【0033】
構成2を有する本発明に係る成膜装置においては、バイアス印加用端子は、形状記憶合金からなるので、所定の温度において所望の形状に変形させることができる。
【0034】
構成3を有する本発明に係る成膜装置においては、バイアス印加用端子は、バイメタルからなるので、所定の温度変化により所望の変形量を得ることができる。
【0035】
構成4を有する本発明に係る成膜装置においては、バイアス印加用端子は、成膜及び成膜の終了に伴う温度変化によって変形して、基台上に保持された非導電性の基板に接離するので、特段の操作を行うことなく、基板に対するバイアスの印加の開始及び終了が行われる。
【0036】
構成5を有する本発明に係る成膜装置においては、温度制御手段によりバイアス印加用端子の温度を制御するので、このバイアス印加用端子の変形状態を制御することができる。
【0037】
構成6を有する本発明に係る成膜装置においては、電流供給手段によりバイアス印加用端子の温度を制御するので、このバイアス印加用端子の変形状態を制御することができる。
【0038】
構成7を有する本発明に係る成膜装置においては、基板としてディスク基板を用い、このディスク基板上に下地層、磁性層及び保護層を順次成膜するので、磁気ディスクの製造に使用することができる。
【0039】
構成8を有する本発明に係る磁気ディスクの製造方法においては、バイアス印加用端子として、温度に応じて形状が変化する部材によって形成され温度変化による変形によって基台上に保持された非導電性の基板に接離するものを用いるので、真空チャンバ内に基台を設置したままの状態で、各バイアス印加用端子と各ディスク基板との接触及び離間を行うことができる。
【0040】
すなわち、この磁気ディスクの製造方法においては、バイアス印加用端子とディスク基板とが非接触の状態で導電性膜を成膜することができ、ディスク基板においてバイアス印加用端子が接触すべき箇所にも、良好に導電性膜を成膜することができる。そのため、この導電性膜とバイアス印加用端子とを適切に電気的に接続することができる。
【0041】
また、この磁気ディスクの製造方法においては、バイアス印加用端子の変形によってバイアス印加用端子とディスク基板とを接触させることにより、ディスク基台を大気中に取り出すことなく、導電性のディスク基板を用いた場合とほぼ同様の工程により、基板バイアスを印加できる。そのため、非導電性のディスク基板を用いた場合にも、高い量産性を実現できる。
【0042】
構成9を有する本発明に係る磁気ディスクの製造方法においては、バイアス印加用端子として形状記憶合金からなるものを用いるので、バイアス印加用端子を所定の温度において所望の形状に変形させることができる。
【0043】
構成10を有する本発明に係る磁気ディスクの製造方法においては、バイアス印加用端子としてバイメタルからなるものを用いるので、バイアス印加用端子を所定の温度変化により所望の変形量とすることができる。
【0044】
構成11を有する本発明に係る磁気ディスクの製造方法においては、バイアス印加用端子を、成膜及び成膜の終了に伴う温度変化によって変形させ、基台上に保持された非導電性の基板に接離させるので、特段の操作を行うことなく、基板に対するバイアスの印加の開始及び終了を行うことができる。
【0045】
構成12を有する本発明に係る磁気ディスクの製造方法においては、温度制御手段によりバイアス印加用端子の温度を制御するので、このバイアス印加用端子の変形状態を制御することができる。
【0046】
構成13を有する本発明に係る磁気ディスクの製造方法においては、電流供給手段によりバイアス印加用端子の温度を制御するので、このバイアス印加用端子の変形状態を制御することができる。
【0047】
すなわち、本発明は、複数枚の非導電性の基板に対してバイアススパッタによる成膜を行う枚葉式の成膜装置において、生産性を維持したままで、良好にDCバイアスを印加することを可能とし、また、この成膜装置を用いることにより、高密度記録に対応した磁気ディスクの生産性の高い製造方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態について説明する。
【0049】
〔磁気ディスク及びその製造方法の概略〕
図1は、本発明に係る磁気ディスクの製造方法によって製造される磁気ディスクの構成を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【0050】
本発明に係る磁気ディスクの製造方法によって製造される磁気ディスクは、ハードディスクドライブに搭載される磁気ディスクであり、図1中の(a)に示すように、非磁性及び非導電性の材料からなり中心孔1aを備えた円形のディスク基板1を用いて、図1中の(b)に示すように、ディスク基板1の表面1b上に、下地層2、磁性層3、保護層4が、この順に積層して成膜されて構成されている。
【0051】
ディスク基板1は、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、または、ソーダライムガラスなどの化学強化ガラスからなり、1.0インチ型の場合、外径が27mm、内径(中心孔1aの直径)が7mm、厚さが、0.381mmとなっている。また、ディスク基板1の表面1bは、表面粗さが、Raで0.4nm以下、Rmaxで5nm以下となるように、鏡面研磨が施されている。
【0052】
この磁気ディスク1を製造するには、まず、ディスク基板1の表面1bに対して、DCマグネトロンスパッタリング法などの物理気相成長法により、第1の下地層2aを形成する。第1の下地層2aは、厚さが5nmのAlRu合金薄膜である。次に、第1の下地層2aの上層に、DCマグネトロンスパッタリング法などにより、第2の下地層2bを形成する。第2の下地層2bは、例えば、厚さが50nmのCrMoTi合金薄膜である。これら第1の下地層2a及び第2の下地層2bからなる下地層2は、磁性層3の結晶構造を良好にするために形成される。
【0053】
次に、下地層2(第2の下地層2b)の上層に、DCマグネトロンスパッタリングなどの物理気相成長法により、磁性層3を形成する。磁性層3は、例えば、厚さが、15nmのCoCrB合金薄膜である。
【0054】
次に、磁性層3の上層に、プラズマCVD法により、保護層4を形成する。保護層4は、例えば、厚さが3nmのアモルファスのダイヤモンドライクカーボンからなり、耐摩耗性を向上させて磁性層3を保護する機能を担っている。
【0055】
次に、保護層4の表面に、潤滑層5をディップ法により形成する。潤滑層5は、例えば、厚さが1.2nmのパーフルオロポリエーテル層などから構成され、磁気ヘッドと接触した際の衝撃を緩和するなどの機能を担っている。
【0056】
〔成膜装置の構成〕
図2は、本発明に係る成膜装置における回転搬送型の枚葉式反応チャンバの構成を示す平面図(a)及び直線搬送型の枚葉式反応チャンバの構成を示す平面図(b)である。
【0057】
本発明に係る磁気ディスクの製造装置においては、ディスク基板1の表面1bに下地層2,磁性層3及び保護層4を成膜するにあたって、本発明に係る成膜装置を使用する。この成膜装置においては、図2中の(a)に示すように、ディスク基板1は、基台(基板ホルダ)6によって、複数枚(本実施の形態においては4枚)が保持された状態で、成膜装置の反応チャンバ内において搬送されるようになっている。
【0058】
各ディスク基板1は、基台6に形成された透孔の内周側において、外周端部を支持され、一方の面を上方側に臨ませ、他方の面を下方側に臨ませて保持されている。
【0059】
この成膜装置の反応性チャンバ内には、基台6の回転搬送方向に沿って、下地層2及び磁性層3を成膜するための第1乃至第3のターゲット7,8,9が配置されている。第1のターゲット7は、第1の下地層2aを形成するためのAlRuターゲットであり、第2のターゲット8は、第2の下地層2bを形成するためのCoCrTiターゲットであり、第3のターゲット9は、磁性層3を形成するためのCoCrBターゲットである。各ターゲット7,8,9は、反応チャンバ内において、搬送されてくる基台6に保持されたディスク基板1を両面から挟むように、上面側と下面側とに配置されている。
【0060】
なお、各ターゲット7,8,9が配置させた空間は、必要に応じて、基台6の移動を許容しつつ、仕切られるようになっている。
【0061】
この成膜装置においては、基台6によって保持されたディスク基板1は、まず、第1のターゲット7に対向されて、DCマグネトロンスパッタリング法などの気相成長法により、第1の下地層2aを成膜される。次に、基台6によって保持されたディスク基板1は、加熱チャンバ10において、所定の温度まで加熱される。そして、ディスク基板1は、基台6に保持されたまま反応性チャンバ内を搬送されて、第2及び第3のターゲット8,9に順次対向されて、DCマグネトロンスパッタリング法などの気相成長法により、第2の下地層2b、磁性層3を成膜される。成膜をなれさたディスク基板1は、反応性チャンバから排出される。
【0062】
なお、この成膜装置は、図2(b)に示すように、直線搬送型の枚葉式反応チャンバを有するものとしてもよい。この成膜装置においては、ディスク基板1を保持した基台6は、反応性チャンバ内を直線状に搬送される。
【0063】
この成膜装置においては、基台6によって保持されたディスク基板1は、まず、第1のターゲット7に対向されて、DCマグネトロンスパッタリング法などの気相成長法により、第1の下地層2aを成膜される。次に、基台6によって保持されたディスク基板1は、加熱チャンバ10において、所定の温度まで加熱される。そして、ディスク基板1は、基台6に保持されたまま反応性チャンバ内を搬送されて、第2及び第3のターゲット8,9に順次対向されて、DCマグネトロンスパッタリング法などの気相成長法により、第2の下地層2b、磁性層3を成膜される。成膜をなれさたディスク基板1は、反応性チャンバから排出される。
【0064】
このようにして磁性層3までの成膜をなされたディスク基板1は、図示しないプラズマCVD室に送られ、プラズマCVDによる保護層4の成膜をなされる。
【0065】
〔基台の構成〕
図3は、本発明に係る成膜装置における基台の構成を示す平面図である。
【0066】
本発明に係る成膜装置における基台6は、図3に示すように、円盤状の基台本体(ベース)6aを有し、この基台本体6aにより、複数枚(本実施の形態においては4枚)の1.0インチ型磁気ディスク用のディスク基板1を、同一平面上として、周方向に等角度間隔で保持することができるように構成されている。
【0067】
基台本体6aは、例えば、チタン製であり、外形が、例えば、95mmである。なお、反応チャンバ内の各ターゲット7,8,9は、いずれも、外径が基台本体6aよりも大きい、例えば、外径120mmの円盤形状となっている。したがって、ディスク基板1は、基台6に保持されることにより、各ターゲット7,8,9に対しては、各ターゲット7,8,9中心と対向する位置の周囲に配置される。
【0068】
この基台本体6aには、ディスク基板1より大きい4つの透孔11が周方向に等間隔で形成されている。これら透孔11の内周部には、ディスク基板1の外周端部を挟持して保持する複数の外形チャッキング12が設けられている。
【0069】
そして、基台本体6aには、図3中の(a)に示すように、この基台本体6aに保持されるディスク基板1の枚数に対応した数のバイアス印加用端子13を有するバイアス印加手段が設けられている。このバイアス印加手段は、各バイアス印加用端子13を非導電性のディスク基板1上に成膜された導電性膜に接触させることによって、この導電性膜にバイアス電圧を印加するものである。
【0070】
各バイアス印加用端子13は、温度に応じて形状が変化する部材によって形成されており、温度変化による変形によって、基台本体6a上に保持された非導電性のディスク基板1に接離する。バイアス印加用端子13をなす温度に応じて形状が変化する部材としては、熱膨張係数が大きな材料が挙げられる。また、温度に応じて形状が変化する部材としては、いわゆる形状記憶合金やバイメタルが挙げられる
形状記憶合金は、一般に、所望の形状として高熱処理を施すことにより、このときの形状を記憶することができ、常温において変形させても、いわゆる変態温度(Af)に加熱すると、元の所望の形状に戻る性質を有する。このような形状記憶合金としては、例えば、NiTiCu線材等を用いることができる。また、バイメタルは、熱膨張係数の異なる2つの金属合金を貼り合わせたもので、温度変化により、各金属合金の熱膨張の差によって生ずる応力によって、変形(反り)を生ずるようになっている。
【0071】
各バイアス印加用端子13は、先端側を各ディスク基板1に臨ませるとともに、基端側をバイアス印加部材14に取付けられている。このバイアス印加部材14は、金属の如き導電性材料からなり、基台本体6aを囲むようにして円環状に形成されている。各バイアス印加用端子13は、基端側をバイアス印加部材14に支持された状態で、温度変化によって変形することにより、先端側を、基台本体6a上に保持された非導電性のディスク基板1に接離させる。
【0072】
なお、各バイアス印加用端子13は、バイアス印加部材14により、弾性を有する扞部15を介して支持されており、各ディスク基板1に対して接触したとき、扞部15の弾性力によって、各ディスク基板1に先端側を押接させるようになっている。
【0073】
そして、バイアス印加部材14には、基台6外に設置された直流電圧供給端子16を介して、DCバイアス電圧が印加されている。
【0074】
この基台6においては、第2の下地層2b及び磁性層3の成膜時において、各バイアス印加用端子13を基台本体6aに保持された複数のディスク基板1に接触させることにより、各ディスク基板1に対して、同時にDCバイアスを印加するようになっている。
【0075】
なお、DCバイアス電圧は、バイアス印加部材14から各バイアス印加用端子13を経てディスク基板1上に成膜された導電性膜に印加されるようにしてもよく また、図3中の(b)に示すように、外部の直流電圧供給端子16から導線17を介して各バイアス印加用端子13を経てディスク基板1上に成膜された導電性膜に印加されるようにしてもよい。
【0076】
図4は、本発明に係る成膜装置における成膜工程とバイアス印加用端子の変形の関係を示すグラフである。
【0077】
この成膜装置においては、各バイアス印加用端子13は、図4に示すように、第2の下地層2b及び磁性層3の成膜時には、図示しない温度制御手段により温度が上昇されることによって変形して、基台本体6a上に保持された非導電性のディスク基板1に先端側を接触させる。このとき、直流電圧供給端子16及びバイアス印加部材14を介して、非導電性のディスク基板1上に成膜された導電性膜にバイアス電圧が印加される。
【0078】
そして、各バイアス印加用端子13は、成膜の終了後に温度制御手段により温度が降下されることによって変形して、基台本体6a上に保持された非導電性のディスク基板1より離間する。このように、成膜の終了後に各バイアス印加用端子13がディスク基板1より離間することにより、この基台6からの各ディスク基板1の取り外しが容易となる。
【0079】
図5は、本発明に係る成膜装置におけるバイアス印加用端子の構成の他の例を示す平面図である。
【0080】
なお、基台6からの各ディスク基板1の取り外しをより容易とするためには、DCバイアスの印可後に、各バイアス印加用端子13が各ディスク基板1より大きく離間するようにすることが好ましい。すなわち、各バイアス印加用端子13は、図5中の(a)に示すように、加熱して変態温度以上となされたときに、図中矢印aで示すように、ディスク基板1に接触するように予め設定しておいた形状記憶合金からなる第1の板バネ13aと、変態温度より低い温度(例えば、室温)において第1板バネ13aをディスク基板1から離間した位置に保持する第2の板バネ13bとを組み合わせて構成することができる。このバイアス印加用端子13は、第1及び第2の板バネ13a,13bの基端側が基台本体6aに固定されており、先端側を基台本体6aに保持されたディスク基板1に臨ませている。
【0081】
このように構成したバイアス印加用端子13は、室温時には、図5中の(b)に示すように、第2の板バネ13bの力により、図中矢印bで示すように、ディスク基板1から離間した位置に保持され、変態温度以上になると、図5中の(a)に示すように、第1の板バネ13aによりディスク基板1に接触する状態となる。したがって、このバイアス印加用端子13は、基台6から各ディスク基板1を取り外すときに邪魔になることがなく、ディスク基板1の取り外しを容易とすることができる。
【0082】
また、各バイアス印加用端子13を形状記憶合金によって形成した場合には、合金成分、例えば、Ni含有量を適宜調整することや、高熱処理を行う温度を変えることにより、変態温度(Af)を変えることができる。これにより、各バイアス印加用端子13は、温度制御手段による温度制御をせずとも、成膜に伴う反応性チャンバ内の温度上昇によって変形して、基台本体6a上に保持された非導電性のディスク基板1に接触するとともに、成膜の終了に伴う真空スパッタ装置外への取り出しで温度が室温まで低下することで変態温度以下になることによって変形して、基台本体6a上に保持された非導電性のディスク基板1より離間するようにすることができる。
【0083】
さらに、各バイアス印加用端子13は、成膜中に、図示しない電流供給手段により電流を供給されて温度が上昇されることによって変形して、基台本体6a上に保持された非導電性のディスク基板1に先端側を接触させるようにしてもよい。この場合には、各バイアス印加用端子13は、成膜の終了後に電流供給手段による電流供給が遮断されて温度が降下されることによって変形して、基台本体6a上に保持された非導電性のディスク基板1より離間する。
【0084】
図6は、本発明に係る成膜装置における基台の構成の他の例を示す平面図である。
【0085】
さらに、このバイアス印加用端子13は、図6中の(a)に示すように、変位量(動作量)を大きくするために、コイルバネ状に加工しておいてもよい。このコイルバネ状のバイアス印加用端子13は、十分にディスク基板1に接触する長さとしておく。このバイアス印加用端子13は、温度変化により、図中矢印cで示すように、伸縮して、基台本体6a上に保持されたディスク基板1に対して接離する。
【0086】
この場合にも、DCバイアス電圧は、バイアス印加部材14から各バイアス印加用端子13を経てディスク基板1上に成膜された導電性膜に印加されるようにしてもよく また、図6中の(b)に示すように、外部の直流電圧供給端子16から導線17を介して各バイアス印加用端子13を経てディスク基板1上に成膜された導電性膜に印加されるようにしてもよい。
【0087】
〔本実施の形態における効果〕
この実施の形態においては、磁性層3の成膜時に、基台6によって保持されている複数枚のディスク基板1に対し、同時にDCバイアスを印加させることが可能であり、高記録密度に対応した磁気ディスクを良好な生産性において製造することができる。
【0088】
すなわち、ディスク基板1上に導電性を有する膜を成膜した後、DCバイアスをかけるために真空スパッタ装置のチャンバ内から取り出す必要がなくなり、製造プロセスが単純化されて生産性が向上し、さらに、4枚を一度に成膜できることから、一度に1枚ずつ成膜し一度大気中に取り出してバイアスを印加する従来の製造方法に比べて、生産性を4倍以上に大幅に向上させることができる。
【0089】
なお、DCバイアスの印加は、磁性層3の成膜時のみならず、第2の下地層2bの成膜時に行ってもよく、第2の下地層2b及び磁性層3の成膜の両方において行ってもよい。
【0090】
また、DCバイアスの印加は、垂直磁気記録ディスクにおける軟磁性膜の成膜時に行ってもよい。この場合、軟磁性層は、50nm程度の膜厚を必要とするので、始めにDCバイアスをかけずに軟磁性層を成膜し、この軟磁性層の厚さがDCバイアスの印加ができる程度となったときに、DCバイアスの印加を開始するようにしてもよい。
【0091】
〔磁気ディスクの製造方法の実施例〕
前述のように構成された基台6を用いて、非導電性のディスク基板(ガラス基板)1の表面に下地層2(第1の下地層(GIF層)2a及び第2の下地層(UL層)2b)、磁性層3(いわゆるAFC構造を有する場合は、スペーサにより分割された複数の磁性層)を成膜するにあたっては、まず、精密研磨及び化学強化処理を施した1.0インチ型磁気ディスク用のディスク基板1を、基台6により保持させる。なお、磁気ディスクは、ディスク基板の両面に同様の構成を有するが、ここでは、一方の面のみについて説明する。
【0092】
そして、図2に示すように、この基台6を自動搬送装置に装着し、基台6を反応性チャンバ内に導入する。基台6は、所定の搬送速度で搬送され、基台6が各ターゲット7,8,9に略同心状態に対向設置された状態で、成膜が行われる。第1の下地層(GIF層)2aを成膜した後に、加熱チャンバ10内に導入する。加熱チャンバ10では、ヒータによって、ディスク基板1を、例えば、300°C、1分間の加熱条件にて加熱する。この加熱によって、各バイアス印加用端子13が所定の元の形状に戻り、基台本体6aに保持された複数のディスク基板1の第1下地層2aが成膜されている外周端部に接触する。
【0093】
次に、第2の下地層2b及び磁性層3を成膜する。このとき、各バイアス印加用端子13が基台本体6aに保持された複数のディスク基板1の第1下地層2aが成膜されている外周端部に接触しているので、各ディスク基板1にはDCバイアスが印加される。少なくとも磁性層3は、このようにして各ディスク基板1にDCバイアスを印加した状態で成膜する。
【0094】
このようにして、ディスク基板1の両面に、膜厚5nmのAlRu層(第1の下地層2a)及び膜厚50nmのCrMoTi(第2の下地層2b)からなる下地層2と、膜厚15nmのCoCrB磁性層3とが形成される。ここで、反応性チャンバ内のスパッタリング条件は、例えば、スパッタ圧力が5mtorrであり、スパッタ雰囲気がアルゴンの不活性ガスである。
【0095】
このようにして成膜を終了すると、各ディスク基板1を保持した基台6は、反応性チャンバ内から排出される。また、反応性チャンバ内から排出されたディスク基板1に対しては、磁性層3の上層に、プラズマCVD法などにより、保護層4を形成する。さらに、この保護層4の上層には、ディッブ法により、パーフルオロエーテル系潤滑剤を塗布することにより、潤滑層5を形成する。この潤滑層5は、パーフルオロエーテル系潤滑剤の塗布後、オーブンを用いて、ディスク基板1を100°Cで1時間程度加熱処理し、ディスク基板1の最表層にパーフルオロエーテル系潤滑剤を定着させることによって形成される。なお、パーフルオロポリエーテル系の潤滑剤としては、例えば、「Solvay Solexis社」製の「Fomblin−Z−Tetraol」(商品名)を用いることができる。
【0096】
ここで、潤滑層5の膜厚を、フーリエ変換型赤外分光高度計(FTIR)で測定したところ、1.2nmであった。
【0097】
〔比較例〕
比較例(1)として、第2の下地層2b及び磁性層3の成膜をDCバイアスを印可せずに行い、他は前述の実施例と同様にして、磁気ディスクを作成した。
【0098】
また、比較例(2)として、第1の下地層(GIF層)2aを成膜した後に各ディスク基板1を大気中に取り出し、これらディスク基板1に各バイアス印加用端子13を接触させた後に反応性チャンバ内に戻して、第2の下地層2b及び磁性層3の成膜をDCバイアスを印可して行い、他は前述の実施例と同様にして、磁気ディスクを作成した。
【0099】
〔DCバイアスの効果〕
図7は、本発明に係る磁気ディスクの製造方法におけるDCバイアスの効果として、保持力との関係(a)及びSN比との関係(b)を示すグラフである。
【0100】
前述のようにして製造した磁気ディスクについて、図7中の(a)に示すように、保持力HcのDCバイアス依存性を確認したところ、DCバイアスを約400Vとすることにより、保持力Hcが最も良好となることが確認された。また、図7中の(b)に示すように、SN比のDCバイアス依存性を確認したところ、DCバイアスを高くするほど、SN比が良好となることが確認された。
【0101】
なお、DCバイアスは、負の値(マイナス)をとるが、図6においては、マイナスではなく、正の値として示してある。例えば、400Vは、−400VのDCバイアスを意味する。
【0102】
また、以下の〔表1〕に示すように、本発明の実施例の磁気ディスクは、比較例(1)の磁気ディスク(DCバイアスなし)に比較して、電磁変換特性を示すSNR(信号雑音比)が向上していることがわかった。
【0103】
そして、比較例(2)の磁気ディスクは、〔表1〕に示すように、SNRについては実施例の磁気ディスクと同等であるが、前述したように、第1の下地層2aを成膜した後に一度大気中に取り出しているため、パーティクル汚染が認められ、また、第1の下地層2aを成膜した後に取り出して各ディスク基板1に各バイアス印加用端子13を接触させるという手間が発生するため、量産性が著しく低下することが確認された。
【0104】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る磁気ディスクの製造方法によって製造される磁気ディスクの構成を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図2】本発明に係る成膜装置における回転搬送型の枚葉式反応チャンバの構成を示す平面図(a)及び直線搬送型の枚葉式反応チャンバの構成を示す平面図(b)である。
【図3】本発明に係る成膜装置における基台の構成を示す平面図である。
【図4】本発明に係る成膜装置における成膜工程とバイアス印加用端子の変形の関係を示すグラフである。
【図5】本発明に係る成膜装置におけるバイアス印加用端子の構成の他の例を示す平面図である。
【図6】本発明に係る成膜装置における基台の構成の他の例を示す平面図である。
【図7】本発明に係る磁気ディスクの製造方法におけるDCバイアスの効果として、保持力との関係(a)及びSN比との関係(b)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0106】
1 ディスク基板
2 下地層
2a 第1の下地層
2b 第2の下地層
3 磁性層
4 保護層
5 潤滑層
6 基台
6a 基台本体
7 第1のターゲット
8 第2のターゲット
9 第3のターゲット
13 バイアス印加用端子
14 バイアス印加部材
15 扞部
16 直流電圧供給端子
17 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の基板に対し、バイアススパッタによる成膜を行う枚葉式の成膜装置であって、
少なくとも一の非導電性の基板を保持する基台と、
バイアス印加用端子を有し、このバイアス印加用端子を前記非導電性の基板上に成膜された導電性膜に接触させることによって、この導電性膜にバイアス電圧を印加するバイアス印加手段と
を備え、
前記バイアス印加用端子は、温度に応じて形状が変化する部材によって形成されており、温度変化による変形によって、前記基台上に保持された非導電性の基板に接離する
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記バイアス印加用端子をなす温度に応じて形状が変化する部材は、形状記憶合金である
ことを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記バイアス印加用端子をなす温度に応じて形状が変化する部材は、バイメタルである
ことを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項4】
前記バイアス印加用端子は、成膜に伴う温度上昇によって変形して、前記基台上に保持された非導電性の基板に接触するとともに、成膜の終了に伴う温度降下によって変形して、前記基台上に保持された非導電性の基板より離間する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記バイアス印加用端子の温度を制御する温度制御手段を備え、
前記バイアス印加用端子は、成膜中に前記温度制御手段により温度が上昇されることによって変形して、前記基台上に保持された非導電性の基板に接触するとともに、成膜の終了後に前記温度制御手段により温度が降下されることによって変形して、前記基台上に保持された非導電性の基板より離間する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記バイアス印加用端子に電流を供給する電流供給手段を備え、
前記バイアス印加用端子は、成膜中に前記電流供給手段により電流を供給されて温度上昇することによって変形して、前記基台上に保持された非導電性の基板に接触するとともに、成膜の終了後に前記電流供給手段による電流供給が遮断されて温度が降下されることによって変形して、前記基台上に保持された非導電性の基板より離間する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記基板としてディスク基板を用い、このディスク基板上に下地層、磁性層及び保護層を順次成膜する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の成膜装置。
【請求項8】
非磁性及び非導電性のディスク基板上に下地層、磁性層及び保護層を順次成膜する磁気ディスクの製造方法であって、
前記ディスク基板を、基台上に保持させる工程と、
真空チャンバ内において、前記基台上に保持されたディスク基板上に導電性膜を成膜する工程と、
前記真空チャンバ内において、バイアス印加手段のバイアス印加用端子を変形させることにより、このバイアス印加用端子を前記ディスク基板上に成膜された導電性膜に接触させる工程と、
前記真空チャンバ内において、前記バイアス印加手段により、前記バイアス印加用端子を介して前記導電性膜にバイアス電圧を印加しつつ、該導電性膜上に磁性層及び保護層を順次成膜する工程と
を有し、
前記バイアス印加部材として、温度に応じて形状が変化する部材によって形成され温度変化による変形によって前記基台上に保持された非導電性の基板に接離するものを用いる
ことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【請求項9】
前記バイアス印加用端子をなす温度に応じて形状が変化する部材として、形状記憶合金を用いる
ことを特徴とする請求項8記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項10】
前記バイアス印加用端子をなす温度に応じて形状が変化する部材として、バイメタルを用いる
ことを特徴とする請求項8記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項11】
前記バイアス印加用端子を、成膜に伴う温度上昇によって変形させて、前記基台上に保持された非導電性の基板に接触させるとともに、成膜の終了に伴う温度降下によって変形させて、前記基台上に保持された非導電性の基板より離間させる
ことを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項12】
前記バイアス印加用端子の温度を制御する温度制御手段を用いて、前記バイアス印加用端子を、成膜中に温度上昇させることによって変形させて、前記基台上に保持された非導電性の基板に接触させるとともに、成膜の終了後に温度降下させることによって変形させて、前記基台上に保持された非導電性の基板より離間させる
ことを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項13】
前記バイアス印加用端子に電流を供給する電流供給手段を用いて、前記バイアス印加用端子を、成膜中に電流を供給して温度上昇させることによって変形させて、前記基台上に保持された非導電性の基板に接触させるとともに、成膜の終了後に電流供給を遮断して温度降下させることによって変形させて、前記基台上に保持された非導電性の基板より離間させる
ことを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一に記載の磁気ディスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−270189(P2007−270189A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94722(P2006−94722)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(501259732)ホーヤ マグネティクス シンガポール プライベートリミテッド (124)
【Fターム(参考)】