説明

成膜装置

【課題】基体の全幅に均一な膜を成膜できる成膜装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基体(101)の幅よりも狭い幅の基体搬送体(202)を基体(101)の裏面側に当接して搬送するとともに、基体搬送体(202)を通過する基体(101)の表面に、基体(101)よりも幅広の窓(106a)を有するシャッター(106)を介して基体(101)の表面に成膜することで、基体(101)の全幅に均一な膜を成膜できる成膜装置(200)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い膜状の基体(フィルムあるいはフォイル)上に機能材料を膜状に成膜する成膜装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
近年、基体(プラスチックの薄い膜状の基体をフィルムと呼び、金属の薄い膜状の基体をフォイルと呼ぶ)に機能材料を膜状に成膜する技術は、記録媒体やバッテリーあるいはセンサーやフィルムディスプレイなどの分野で特に必要とされるようになっている。
【0003】
膜材料粒子(機能材料粒子)を発生させ、これを膜としてフィルムやフォイルの上に形成する方法としては、蒸着やスパッタ成膜の技術が一般的である。
基体を搬送する搬送体としては、量産性を高めるためにロールtoロール方式で高速に搬送するドラム、あるいはベルトを使用した工法が一般的によく使用されている。製品の歩留まり向上のためには、基体の全幅に均一な膜が成膜されることが好ましい。だが、基体の全幅に成膜するために搬送体の基体搬送方向と平行方向の両端部を開放とすると、付着した膜により基体が基体搬送体から離れなくなるという不具合がある。そのため、搬送体の基体搬送方向と平行方向の両端部をマスクして成膜する。
【0004】
このように両端部をマスクして成膜すると、マスクにより隠された部分はロスとなる。また、マスク端部の形状によってはマスク近傍の膜厚が異なる場合もある。それに対し、マスク端部の形状を工夫することにより、マスクの近傍の膜厚を均一にしようとする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図5(a)(b)は特許文献1のDVCテープの成膜装置の側面図と、正面図の一部切り欠き図を示す。
図5(a)(b)の成膜装置100において、フィルム状の基体101は、量産ではロールtoロールと呼ばれる方法で供給され巻き取られる。102は基体101を搬送する基体搬送体である。基体搬送体102の下方には、機能材料の発生源104が配設されている。機能材料の発生源104から発生した膜材料粒子107が基体搬送体102の上の基体101に到着する直前の位置には、窓106aが形成されたシャッター106が配置されている。基体搬送体102の上の基体101とシャッター106の間には、成膜幅規制マスク105が配置されている。108は、シャッター106の窓106aと成膜幅規制マスク105に形成された窓105cを通過した膜材料粒子107が基体101に付着して形成された機能材料の膜である。この成膜装置100全体は、真空槽内に収められて動作している。
【0006】
図5(a)では、基体101が矢印Y1方向に搬送されて基体搬送体102が軸103を中心に矢印R方向に回転している。基体101の幅は620mm、基体搬送体102の幅は700mmであり、図5(b)に示すように基体101の幅よりも基体搬送体102の幅が80mmだけ広い。窓105cは、成膜幅規制マスク105の近傍の膜108の膜厚が平面部とできるだけ同等になるように、基体搬送体102の側の開口がシャッター106の側の開口よりも狭くなるテーパ状に形成されている。また、成膜幅規制マスク105のマスク幅はフィルム幅620mmに対して、片側で7.5mm狭く両方で15mm狭い605mmに設定されている。
【0007】
このように、成膜幅規制マスク105によって隠された部分(片側で7.5mm、両方で15mm)が存在する特許文献1の成膜装置では、成膜のロスは約3%となる。
また、成膜幅規制マスク105のテーパ形状によっては、膜厚制御が不十分となり、成膜幅規制マスク105の近傍の数ミリ〜数十ミリで所定の膜厚が保てず、膜厚不良となり、ロスとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−200011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来の成膜装置では、成膜幅規制マスク105によってマスクされた部分とされない部分で膜材料粒子からの受熱量が変わる。そのため、基体の全幅に亘って均等に受熱できずに熱ジワが発生してしまい、歩留を大幅に低下させる場合がある。
【0010】
本発明は、基体の全幅に均一な膜を作ることができ、ロスコストの削減は勿論のこと、熱ジワによる歩留まり低下防止及び製品の信頼性の向上に貢献できる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の成膜装置は、シート状の基体の搬送方向に回転すると共に、前記搬送方向に垂直な方向において前記基体の幅よりも狭い幅を有する基体搬送体と、前記基体搬送体に搬送される前記基体の一面側に向けて膜材料粒子を発生させる機能材料発生源と、前記基体と前記機能材料発生源との間に配設されたシャッターと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基体の全幅にわたって均一な膜を製造でき、ロスコストの削減は勿論のこと熱ジワによる歩留まり低下防止及び製品の信頼性の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)本発明の実施の形態1の成膜装置の要部の側面図、(b)本発明の実施の形態1の成膜装置の要部の正面図の一部切り欠き図
【図2】(a)本発明の実施の形態2の成膜装置の要部の側面図、(b)本発明の実施の形態2の成膜装置の要部の正面図の一部切り欠き図
【図3】(a)本発明の実施の形態3の成膜装置の要部の側面図、(b)本発明の実施の形態3の成膜装置の要部の正面図の一部切り欠き図
【図4】本発明の実施の形態1の成膜装置の全体を示す断面図
【図5】(a)特許文献1の成膜装置の側面図、(b)特許文献1の成膜装置の正面図の一部切り欠き図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
なお、同じ構成には同じ符号を付し、適宜、説明を省略している。
(実施の形態1)
図1(a)(b)は本発明の実施の形態1の成膜装置200の要部を示し、図1(a)は側面図、図1(b)は正面図の一部切り欠き図である。
【0015】
成膜装置200において、基体搬送体102であるドラムの周面には、図1(a)に示すように、シート状(薄い膜状)の基体(フィルムあるいはフォイル)101が掛け渡されている。シート状の基体101は、ロールtoロールと呼ばれる方法で供給され巻き取られて、矢印Y1方向に送り出されている。基体搬送体202は軸103と一体となっていて、この軸103を中心に矢印R方向に駆動されている。基体搬送体202の幅(X方向)は基体101の幅よりも狭く、図1(b)に示すように基体101の両側が基体搬送体202の周面からはみ出している。
【0016】
軸103によって支持されて矢印R方向に回転する基体搬送体202の下方には、Coなどの機能材料が入った発生源104が配置されている。発生源104の機能材料は、電子ビームあるいはヒータ(図示せず)などの熱源で加熱され蒸発し、膜材料粒子107となっていろいろな方向に飛翔する。発生源104から発生した膜材料粒子107が基体搬送体202の上の基体101に到着する直前の位置には、窓106aが形成されたシャッター106が配置されている。窓106aの幅は、図1(b)に示すように基体101の幅よりも広く形成されている。基体搬送体102の周面からはみ出している基体101の裏面と軸103との間には、マスク205a,205bが配置されている。このマスク205a,205bは、図1(b)に示すようにシャッター106の窓106aを通過した膜材料粒子107のうちの、基体101の表面から外れた膜材料粒子107を捕捉するためのものである。108は、シャッター106の窓106aを通過した膜材料粒子107が基体101に付着して形成された機能材料の膜である。この成膜装置200全体は、真空槽内に収められて動作している。
【0017】
基体101の表面に到着する材料粒子107は、シャッター106の窓106aが基体101の幅よりも広く形成されているため、なんら制限を受けずに基体101の表面に到着して基体101の両側まで均一な膜108を形成できる。
【0018】
基体101の材質の一例として、PETが挙げられる。膜108を厚く成膜するには、基体101が機能材料の発生源104の上を何回も往復することもある。基体搬送体202はSUS304で形成されている。
【0019】
基体搬送体202としては、ドラム状ではなくてベルト状のものが使用されることもある。
基体搬送体202には、基体101が溶融したり破壊したりしないように、通過する基体101を冷却する冷却手段を構成する。この冷却手段として、基体搬送体202に冷媒通路が形成されており、この冷媒通路には−25℃〜0℃程度に冷やされた冷媒が流される。基体101として高分子材料のフィルムを用いる場合、基体101をそのガラス転移点以下に保つ必要がある。PETフィルムの場合では、ガラス転移点は70〜80℃であり、前述の基体搬送体202が有する冷却手段によって基体101を70℃以下に冷却している。
【0020】
膜材料粒子107の基体101への付着部分を規定するためにシャッター106とマスク205a,205bが設けられており、シャッター106は基体走行方向の遮蔽を目的としている。
【0021】
シャッター106の窓106aは基体走行方向の中央部に形成されており、窓106a以外の部分に膜材料粒子107が当たると遮られて基体101に到達しない。この窓106aの部分のみを通して膜材料粒子107が基体101の表面に付着するため、基体101が膜材料粒子107に暴露する時間を正確に定め、安定な膜厚を得ることができる。
【0022】
マスク205a,205bは、膜材料粒子107が基体101の両側から漏れて軸103の表面に付着するのを防ぐために設けられている。
この実施の形態1の成膜装置200の特徴は、基体搬送体202の幅が基体101の幅よりも狭いことにある。
【0023】
従来の成膜装置100では、成膜幅規制マスク105を、基体101の表面でその両端よりも内側に設けていた。この成膜幅規制マスク105で隠された部分には膜材料粒子107が付着しないため、機能材料の膜108として用いることが出来ず、ロスとなっていた。また、成膜幅規制マスク105の付近では膜108の均一性が悪くなりさらにロスを増やしていた。
【0024】
これに対して、本実施の形態1の成膜装置200では、マスク205a,205bは、基体101の外で、基体101の測の近傍で基体101にかぶらない位置に配置されている。すなわち、本実施の形態1の成膜装置200では、マスク205a,205bは、基体101の表面より内側、すなわち軸103に近い位置に設けている。詳しくは後述するが、この位置に配置することで、膜108の均一性の向上以外の効果を生み出すこともできる。
【0025】
ここで、本実施の形態1の成膜装置200の特徴である、基体搬送体202の幅が基体101の幅よりも狭いことによる効果について説明する。
図5(b)に示すような従来の成膜装置では、基体101の両側から漏れた膜材料粒子107は、基体搬送体102に付着する。それに対し、本実施の形態1の成膜装置200では、基体101の両側とマスク205a,205bから漏れた膜材料粒子107は、主として軸103の表面に付着物として付着する。従来の成膜装置では、基体101の搬送に直接影響する基体搬送体102に膜材料粒子107が付着していたため、状態によっては基体101の搬送状態に悪影響が出ることもあった。それに対し、本実施の形態1の成膜装置200では、基体101の搬送に直接影響しない軸103(または、基体搬送体202の端面)に付着するため、基体101の搬送状態への悪影響を少なくできる。
【0026】
なお、この付着物は、定期的に行われる清掃メンテナンスの時に取り除く必要がある。そのため、本実施の形態1の成膜装置200では、清掃のときに付着した膜材料粒子107を容易に除けるように、基体搬送体202の端面や軸103にシリコン系樹脂などの剥離剤を予め塗布しておくことも有効である。
【0027】
ここで、基体101が基体搬送体202からはみ出した部分の大きさ(はみ出し量)は重要である。基体101が基体搬送体202から大きくはみ出す場合は、熱やテンションの影響があり、本来の目的である熱シワの発生防止を達成できなくなる。また、基体101が基体搬送体202より小さすぎる場合は、基体101の走行精度により基体搬送体202が基体101から外れて表面の一部が露出してしまうことになる。この基体101のはみ出し量(基体搬送体202と基体101の幅の差)は、基体101の材料の特性(熱特性や機械特性)により適宜設計しておくのが好ましい。本実施の形態1でのはみ出し量については、後述する。
【0028】
また、はみ出し量と同時に、基体搬送体202と軸103の径の差も重要である。これら径の差が大きすぎると、軸103と基体搬送体202の径方向のすき間が大きくなり、膜材料粒子107が回り込んで基体搬送体202の側面に付着する可能性が高くなる。よって、基体搬送体202と軸103の径の差は、マスク205a,205bの高さの4倍以下とするのが望ましい。
【0029】
ここで、本実施の形態1について、記録メディアであるDVCテープ( Digital Video Cassette Tape )の実施例で説明する。
基体101のフィルム材質はPET、厚みは4.2μm、幅は620mm、所定の膜厚は0.2μm±0.01μである。この基体101の場合、基体搬送体202の幅は、基体101の幅に対して片側で3mm小さくした。すなわち、本実施の形態1では、基体搬送体202の幅は614mmとした。ここで、はみ出し量を片側3mmにしたのは、基体101の走行精度が±0.5mmであることと、発明者らの実験により基体101が5mm以上はみ出すと、はみ出し部の冷却不十分が原因と思われる熱ジワが発生することが分かったためである。表1に、はみ出し量と熱ジワの関係を示す。
【0030】
【表1】

前述したように、このはみ出し量は基体101の材料の特性(熱特性や機械特性)、及び膜材料粒子の特性(膜材料の熱エネルギーや厚み等)により熱ジワが発生しない程度に適宜設計されるものであり、前述した寸法に必ずしも捉われる必要はない。
【0031】
(実施の形態2)
図2(a)(b)は本発明の実施の形態2の成膜装置を示し、図2(a)は側面図であり、図2(b)は正面図の一部切り欠き図である。
【0032】
前述の実施の形態1の基体搬送体202は、径が幅方向(X方向)に単一のドラムであったが、この実施の形態2での成膜装置300では、図2(b)に示すように、基体搬送体302の端部から内側寄りに環状溝の凹部302a,302bを形成したドラムを使用している。本実施の形態2は、この点が、実施の形態1とは異なっている。成膜装置300全体は、真空槽内に収められて動作している。
【0033】
本実施の形態2では、このように基体搬送体302の表面に凹部302a,302bを形成したことによって、基体搬送体302の周面の中央には凹部302a,302bよりも大径で基体101の幅よりも僅かに狭い幅の中央部302cが形成されている。この中央部302cの両側には凹部302a,302bを隔てて中央部302cと同じように凹部302a,302bよりも大径の端部302d,302eが形成されている。ここでは、凹部302a,302bの幅が“H”,凹部302a,302bと中央部302c,端部302d,302eとの段差は“T”である。
【0034】
矢印Y1方向に搬送される基体101は、中央が基体搬送体302の中央部302cによって支持されている。端部302d,302eの間隔は、基体101の幅よりも広く形成されている。本実施の形態2では、基体101の両方の側端を、凹部302a,302bが存在する区間に位置している。
【0035】
発生源104から発生した膜材料粒子107が基体搬送体302の上の基体101に到着する直前の位置には、窓106aが形成されたシャッター106が配置されている。窓106aの幅は基体101よりも幅広である。
【0036】
シャッター106の窓106aの近傍で、基体搬送体302の端部302d,302eとの間に、端部302d,302eに近接してマスク305a,305bが配置されている。さらに詳しくは、マスクと305a,305bは、シャッター106と基体搬送体302の端部302d,302eの周面の間に配設されると共に、基体搬送体302に中央部が支持されて基体搬送体302からはみ出している基体101の側端部に近接して配置されている。
【0037】
このように基体101の表面に到着する膜材料粒子107は、シャッター106の窓106aが基体101の幅よりも広く形成されているため、なんら制限を受けずに基体101の表面に到着して基体101の両側まで均一な膜108を形成できる。
【0038】
基体101とマスク305a,305bの隙間から漏れる膜材料粒子107は、凹部302a,302bの底部に堆積することになる。この膜材料粒子107は、凹部302a,302bの清掃時に除かれる。清掃のときに付着した膜材料粒子107が容易に除けるように凹部302a,302bの内側にシリコン系樹脂などの剥離剤を予め塗布しておくことも有効である。
【0039】
ここで、本実施の形態2について、記録メディアであるDVCテープ( Digital Video Cassette Tape )の実施例で説明する。
基体101のフィルム材質はPET、厚みは4.2μm、幅は620mm、所定の膜厚は0.2μm±0.01μである。基体搬送体302の中央部302c,端部302d,302eの直径は1000mm、凹部302a,302bの幅HはH=30mm、端部302d,302eの段差TはT=10mmとした。
【0040】
H=30mmとしたのは、堆積した膜材料粒子107の除去のための清掃作業を容易にするためで、必ずしも、この寸法である訳ではない。H=10mm〜100mm程度であればよいと考えられる。T=10mmとしたのは、基体の処理長さと膜材料の厚みから、求められた値であり、なにもこの寸法に捉われる必要はない。T=10mm〜50mm程度にするのが現実的である。
【0041】
(実施の形態3)
図3(a)(b)は本発明の実施の形態3の成膜装置を示し、図3(a)は側面図であり、図3(b)は正面図の一部切り欠き図である。
【0042】
前述の実施の形態1の基体搬送体202は、端面が面一のドラムであったが、この実施の形態3では図3(b)に示すように、基体搬送体402の端面に凹部402f,402gを形成したドラムを使用している。本実施の形態3は、この点が、実施の形態1とは異なっている。さらに、この実施の形態3ではマスク405aの先端が、基体101の裏面近傍で凹部402fに挿入されている。マスク405bの先端が、基体101の裏面近傍で凹部402gに挿入されている。凹部402f,402gの内側の外径部160と、マスク405a,405bの先端との間には隙間Cが形成されている。
【0043】
このように基体搬送体402からはみ出した基体101の裏側にマスク405a,405bの先端が入り込む構造とした場合には、基体101から外れた膜材料粒子107はマスク405a,405bにより遮蔽されて軸103に到達しないため、軸103が汚れることは無い。このことにより、軸103に剥離剤を塗布したり、軸103を清掃したりする手間を省くことが可能である。全体は真空槽内に収められて動作している。その他は実施の形態1と同じである。
【0044】
ここで、本実施の形態3について、記録メディアであるDVCテープ( Digital Video Cassette Tape )の実施例で説明する。
基体101のフィルム材質はPET、厚みは4.2μm、幅は620mm、所定の膜厚は0.2μm±0.01μである。隙間Cは、まわり込みを防ぐためにはある程度小さくする必要があるが、機械的な精度から小さすぎるのは好ましくないため、1〜5mmとした。
【0045】
凹部402f,402gの深さDに関しては、深さDが深いほど軸103への付着を防ぐことができるが、一方で、深さDが深いほど基体搬送体402(ドラム)の先端部の冷却が不十分となる。そのため、本実施の形態3では、深さD=10〜30mmとした。
【0046】
基体搬送体402の幅は、基体101の幅に対して片側で3mm小さくし、基体搬送体402の幅は614mmとした。ここで、片側3mmだけ小さくしたのは、基体101の搬送の走行精度が±0.5mmである事と、基体搬送体402から基体101が5mm以上はみ出すと、フィルムはみ出し部分の冷却不十分が原因と思われる熱ジワが発生する場合があるためである。これは、先に示した表1の発明者らの実験結果により分かったことである。
【0047】
前述したように、このはみ出し量は、基体101の材料の特性(熱特性や機械特性)、及び膜材料粒子の特性(膜材料の熱エネルギーや厚み等)により適宜設計されるものであり、前述した寸法に必ずしも捉われる必要はない。
【0048】
また、軸103の直径は40mm小さい960mmとした。直径で40mm、半径で20mm小さくしたのは、この寸法にすることによりマスク405a,405bが容易に作成でき、安価で入手可能である事また軸103の強度も十分に保つ事ができるからである。
【0049】
(実施の形態4)
図4は、前述の実施の形態1の成膜装置200を真空槽内に収めたDVC用の真空蒸着装置500を示している。この真空蒸着装置500は、実施の形態1の成膜装置200に代えて実施の形態2,実施の形態3の成膜装置を真空槽内に収めた場合もほぼ同様の構成であるため、ここでは、実施の形態1の成膜装置200を真空槽内に収めた場合のみ説明する。
【0050】
斜め蒸着を実施するこの真空蒸着装置500の動作について説明する。真空槽130内は排気口131を経て真空ポンプ(図示せず)に接続されて真空状態に保たれ、この真空槽130内で長尺フィルム状の非磁性の基体101を供給ロール111から繰り出し、冷却機能を有した基体搬送体202の表面に基体101を沿わせて搬送する。基体101を搬送しながらシャッター106を用いて入射蒸着角度を決定し、定置された機能材料の発生源104中の強磁性材料150(Co100%)表面に電子銃120からの電子ビーム120Bを照射して強磁性材料150を膜材料粒子107の状態にし、斜め蒸着を行うことにより、基体101上に機能材料の膜108を形成する。
【0051】
強磁性金属150が溶けるまでの間は、シャッター106の窓106aを閉じることによって、基体101への強磁性金属150の付着を防止する。このような強磁性金属150の蒸着に際して、ガス供給装置194から蒸着金属にガスが均一となるように供給される。このようにして強磁性金属薄膜が形成された基体101は巻取りロール112に巻き取られる。
【0052】
このような真空蒸着装置500においても、ドラム状の基体搬送体202の幅を基体101の幅よりも狭くすることにより、本発明の効果が有効に発揮される。
上記の実施の形態1では、マスク205a,205bが設けられていたが、これを省くこともできる。マスク205a,205bを省いた場合には、マスク205a,205bを設けた場合に比べてシリコン系樹脂などの剥離剤を予め塗布しておく範囲を広くすることが好ましい。
【0053】
なお、上記の各実施の形態は一例であって本発明の趣旨を実現するフィルム搬送体の構造と同様の技術は、本発明から逸脱するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は成膜装置全般に有効であり、エレクトロニクス分野だけでなく食品用あるいはその他の防湿や嫌気性を目的としたパッケージや包装紙あるいは機能性のシートなどの生産にも有効である。
【符号の説明】
【0055】
100,200,300,400 成膜装置
101 基体
102,202,302,402 基体搬送体
103 軸
104 発生源
106 シャッター
106a 窓
107 膜材料粒子
108 膜
111 供給ロール
112 巻取りロール
120 電子銃
120B 電子ビーム
130 真空槽
131 排気口
150 強磁性材料
160 外径部
194 ガス供給装置
205a,205b マスク
302a,302b 凹部
302c,302f,302g 中央部
302d,302e 端部
500 真空蒸着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基体の搬送方向に回転すると共に、前記搬送方向に垂直な方向において前記基体の幅よりも狭い幅を有する基体搬送体と、
前記基体搬送体に搬送される前記基体の一面側に向けて膜材料粒子を発生させる機能材料発生源と、
前記基体と前記機能材料発生源との間に配設されたシャッターと、
を備える成膜装置。
【請求項2】
シート状の基体の搬送方向に回転すると共に、前記搬送方向に垂直な方向において前記基体の幅よりも狭い幅を有する基体搬送体と、
前記基体搬送体に搬送される前記基体の一面側に向けて、膜材料粒子を発生させる機能材料発生源と、
前記基体と前記機能材料発生源の間に配設されたシャッターと、
前記基体搬送体の外側において前記基体の他面側とは離間して配設されたマスクと、
を備える成膜装置。
【請求項3】
シート状の基体の搬送方向に回転すると共に、前記搬送方向に垂直な方向において前記基体の幅よりも狭い幅の中央部と前記中央部の両側に凹部を介して隣接した端部とが形成された基体搬送体と、
前記基体搬送体の前記中央部に搬送される前記基体の他面側に向けて膜材料粒子を発生させる機能材料発生源と、
前記基体の他面と前記機能材料発生源との間に配設されたシャッターと、
を備える成膜装置。
【請求項4】
シート状の基体の搬送方向に回転すると共に、前記搬送方向に垂直な方向において前記基体の幅よりも狭い幅の中央部と前記中央部の両側に凹部を介して隣接した端部とが形成され、前記端部の間隔が前記基体の幅よりも広い基体搬送体と、
前記基体搬送体の前記中央部に搬送される前記基体の一面側に向かけて膜材料粒子を発生させる機能材料発生源と、
前記基体と前記機能材料発生源との間に配設されたシャッターと、
前記シャッターと前記基体搬送体の端部の周面との間に配設されたマスクと、
を備える成膜装置。
【請求項5】
シート状の基体の搬送方向に回転すると共に、前記搬送方向に垂直な方向において前記基体の幅よりも狭い幅を有し、その端面に凹部が形成された基体搬送体と、
前記基体搬送体に搬送される前記基体の一面側に向けて膜材料粒子を発生する機能材料発生源と、
前記基体と前記機能材料発生源との間に配設されたシャッターと、
を備える成膜装置。
【請求項6】
シート状の基体の搬送方向に回転すると共に、前記搬送方向に垂直な方向において前記基体の幅よりも狭い幅を有し、その端面に凹部が形成された基体搬送体と、
前記基体搬送体に搬送される前記基体の一面側に向けて膜材料粒子を発生させる機能材料発生源と、
前記基体と前記機能材料発生源との間に配設されたシャッターと、
前記基体搬送体に中央部が支持されて前記基体搬送体からはみ出している前記基体の側端部を挟んで前記シャッターとは反対側に前記基体の他面側とは離間して配設され、その先端が前記基体搬送体の側面に形成された凹部に挿入されたマスクと、
を備える成膜装置。
【請求項7】
前記基体搬送体は、その内部に冷却手段を備える請求項1〜請求項6の何れかに記載の成膜装置。
【請求項8】
膜材料粒子の付着位置に剥離剤を塗布した請求項1〜請求項6の何れかに記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102373(P2012−102373A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252396(P2010−252396)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】