説明

成膜装置

【課題】ガスの拡散を妨げることなく処理空間の容積を小さくすることができ、排気コンダクタンスの設定が容易な成膜装置を提供すること。
【解決手段】基板Wを収容し、基板Wの成膜処理が行われる処理容器1と、処理容器1内で基板を載置する載置台2と、処理容器1内に形成された、基板Wに成膜処理を行う処理空間Sと、処理空間Sに、少なくとも第1の処理ガスと、第2の処理ガスと、パージガスとを供給するガス供給部20と、処理空間Sを排気する排気部71,30,31,32と
を具備し、第1の処理ガスと第2の処理ガスとをパージガスによる処理空間Sのパージを挟んで交互に供給して所定の膜を成膜する成膜装置であって、ガス供給部20は処理空間Sの外周からガスを供給し、ガス排気部は処理空間Sの中央上部から上方へ排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALD(Atomic Layer Deposition)プロセスに好適な成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、基板である半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)に成膜処理やエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造する。
【0003】
成膜処理としては、処理ガスを化学的に反応させて成膜を行うCVD(Chemical Vapor Deposition)がある。CVDは微細な回路パターンでも良好なステップカバレッジが得られる利点がある。また、CVDの中でも膜質がより良好な膜を低温で成膜することができるALD(Atomic Layer Deposition)が注目されている。ALDは第1の処理ガスを原子層レベルで吸着させた後に第2の処理ガスを供給して反応させ、極薄い膜とする操作を繰り返して所定厚さの膜を形成するものである。
【0004】
ALDによる成膜装置は、従来、処理ガスの吸着および反応の効率を高める目的で高圧処理が行えるように極力閉構造とした処理容器を用い、ウエハの中心部分の直上に設けられたガス導入口から処理ガスを導入して外周側へ排出する構造が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−224775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでALDプロセスを行う場合には、高速でガス供給および排気を行うために、処理容器内の処理空間の容積を極力小さくしたいという要求があるが、上記特許文献1のようにウエハの中心部分の直上からガスを導入する場合、ガス導入部分にはガス拡散ブロック等の構造物が存在するため、中心のガス導入口とウエハとの距離が近くなり、ガス導入口から吐出したガスが拡散しにくく成膜分布が悪いものとなる。一方、十分なガスの拡散を確保しようとすると、処理空間の容積が大きくなってしまう。また、外周から排気する場合、排気コンダクタンスの設定が難しい。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、ガスの拡散を妨げることなく処理空間の容積を小さくすることができ、排気コンダクタンスの設定が容易な成膜装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点では、基板を収容し、その中で基板の成膜処理が行われる処理容器と、前記処理容器内で基板を載置する載置台と、前記処理容器内に形成された、基板に成膜処理を行う処理空間と、前記処理空間に、少なくとも第1の処理ガスと、第2の処理ガスと、パージガスとを供給するガス供給部と、前記処理空間を排気する排気部とを具備し、前記第1の処理ガスと前記第2の処理ガスとを前記パージガスによる前記処理空間のパージを挟んで交互に供給して所定の膜を成膜する成膜装置であって、前記ガス供給部は前記処理空間の外周からガスを供給し、前記排気部は前記処理空間の中央上部から上方へ排気することを特徴とする成膜装置を提供する。
【0009】
上記第1の観点において、前記処理容器内に前記載置台と対向して設けられ、下方に開口した前記処理空間を形成するための凹部を有するキャップ部材をさらに具備し、前記載置台により前記凹部の開口を塞ぐことにより処理空間が形成され、前記キャップ部材の前記凹部の外周部に複数のガス吐出口が形成され、前記キャップ部材の前記凹部の中央にガス排出孔が形成されている構成とすることができる。
【0010】
また、前記載置台を昇降させる昇降機構をさらに具備し、前記昇降機構により前記載置台を下降させた状態で前記載置台への基板の受け渡しが行われ、前記昇降機構により前記載置台を上昇させることにより前記キャップ部材の前記開口が塞がれて前記処理空間が形成される構成とすることができる。
【0011】
さらに、前記排気部は、前記処理空間の外側を囲うように設けられた環状の排気経路と、前記キャップ部材の前記ガス排出孔から排出されたガスを放射状に前記排気経路に導くガス排出流路とを有する構成とすることができる。
【0012】
さらにまた、前記ガス排出孔に接続されたバッファ室と、前記バッファ室にガスを供給するガスラインとを有し、前記ガスラインから前記バッファ室へのガスの供給を制御して前記バッファ室の圧力を制御することにより、前記処理空間からの排気のコンダクタンスを制御する構成とすることができる。
【0013】
本発明の第2の観点では、基板を収容し、その中で基板の成膜処理が行われる処理容器と、前記処理容器内で基板を載置する載置台と、前記処理容器内において基板に成膜処理を行う処理空間と、前記処理空間に成膜処理のための処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理空間を排気する排気部とを具備し、前記ガス供給部は前記処理空間の外周から処理ガスを供給し、前記排気部は前記処理空間の中央上部から上方へ排気することを特徴とする成膜装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガス供給部は処理空間の外周からガスを供給し、ガス排気部は処理空間の中央上部から上方へ排気するので、ガスは分散された状態で均等に基板に供給されることとなり、特別な分散機構を用いることなく分散された状態で基板にガスを供給することができる。また、従来のように処理空間の中央部にガスを分散させる機構が不要である。このように分散性が良い状態でガスを供給することができ、しかもガスを分散させる機構が不要であるため、処理空間の容積を従来よりも著しく小さくすることができ、ガス供給および排気の時間を短くすることができる。このため、高速プロセスの要求に対応することが可能となる。また、ガスの使用量を節約することができる。
【0015】
また、処理空間の中央上部からガスを排出するため、排気のコンダクタンスをガス排出孔の径や形状により設定することができ、従来のように外周からガスを排出する場合に比べて排気コンダクタンスの設定を容易に行うことができる。また、このように中央上部から排気することにより、成膜による排気コンダクタンスへの影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
【図2】図1の成膜装置の給排気流路部材とキャップ部材とを示す断面図である。
【図3】図1の成膜装置における給排気流路部材とキャップ部材とを分解して示す斜視図である。
【図4】給排気流路部材を示す底面図である。
【図5】キャップ部材を示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の要部を示す断面図である。
【図7】吸着時および反応(還元)時と、パージガスを導入してガスを置換する時の処理空間とバッファ室の差圧の例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の他の例の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。ここでは成膜装置としてTi原料ガスと窒化ガスとを用いてALDによりTiN膜を成膜する装置を例にとって説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を示す断面図、図2は図1の成膜装置の給排気流路部材とキャップ部材とを示す断面図、図3は図1の成膜装置における給排気流路部材とキャップ部材とを分解して示す斜視図、図4は給排気流路部材を示す底面図、図5はキャップ部材を示す平面図である。図1に示すように、成膜装置100は、その中に真空に保持される処理空間Sが形成される略円筒状の処理容器1を有している。処理容器1はアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されている。
【0019】
処理容器1の内部には、被処理基板であるウエハWを水平状態で載置(支持)するための載置台として、例えばAlNのようなセラミックスで構成されたサセプタ2が、その中央下部に設けられた円筒状の支持部材3により支持された状態で昇降可能に配置されている。サセプタ2の外縁部には、ウエハWをガイドするとともに処理空間を規定するための、アルミナ等のセラミックスからなるインナーリング4が設けられている。また、インナーリング4の外周には、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるカバーリング15がインナーリング4に係合するように設けられている。また、サセプタ2にはモリブデン等の高融点金属で構成されたヒーター5が埋め込まれており、このヒーター5はヒーター電源(図示せず)から給電されることにより被処理基板であるウエハWを所定の温度、例えば350〜500℃に加熱する。
【0020】
処理容器1は、上部に開口を有する下側容器1aと、下側容器1aの開口を塞ぐように設けられた円板状の天板1bとを有する。天板1bの下面の中央部には、サセプタ2よりも大径の円板からなる給排気流路部材12が取り付けられ、給排気流路部材12の下面には、給排気流路部材12とほぼ同径の円板状をなすキャップ部材13がサセプタ2に対向するように取り付けられている。これら給排気流路部材12およびキャップ部材13はアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されている。
【0021】
キャップ部材13の下面中央部にはサセプタ2よりも僅かに大径の円板状をなす凹部13aが形成されている。そして、サセプタ2が図1の実線で示す上昇された処理位置にある状態で、カバーリング15に凹部13aの外周部分13bが接触することにより、凹部13aとサセプタ2に囲まれた処理空間Sが形成される。このとき、サセプタ2はウエハWを加熱するためにヒーター5により高温に加熱されているため、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるカバーリング15への熱影響を緩和するため、インナーリング4をセラミックスで形成している。なお、給排気流路部材12およびキャップ部材13の詳細な構造は後述する。
【0022】
処理容器1の天板1bの上方にはガス供給部20が設けられている。ガス供給部20は、第1の処理ガスであるTiClガスを供給するTiClガス供給配管21と、第2の処理ガスであるNHガスを供給するNHガス供給配管22と、キャリアガスおよびパージガスとして機能するNガスを供給するNガス供給配管23と、これら配管のバルブ類およびマスフローコントローラ等の流量制御器を集合的に配置した集合バルブユニット24と、集合バルブユニット24のバルブの操作により選択的に所望のガスを処理空間Sに供給するための共通配管25とを有している。ガス供給の際のバルブ操作の制御はバルブ制御部26により行われる。共通配管25は、天板1bの中央に設けられたガス導入口27に接続されている。そして、ガス導入口27から後述するようにして処理空間Sにガスが供給される。
【0023】
上記給排気流路部材12およびキャップ部材13の周囲には、環状の排気経路30が形成されている。具体的には、排気経路30は、処理容器1の側壁と天板1bとの間に設けられたダクト部材33と、このダクト部材33の下部内側に設けられた内側リング部材34と、給排気流路部材12およびキャップ部材13とで囲まれるように形成されている。内側リング部材34とカバーリング15との間には、下側容器1aをパージするパージガスが流れている。これにより、処理空間Sの外周が排気経路30に囲まれた構成となっており、後述するように処理空間Sのガスがこの排気経路30に排出されるようになっている。排気経路30には排気配管31が接続されており、この排気配管31には自動圧力制御バルブ(APC)31aと排気装置32が接続されており、自動圧力制御バルブ(APC)31aの開度を制御しつつ排気装置32を作動させることにより処理空間S内を所定の真空度まで減圧することが可能となっている。
【0024】
支持部材3は、処理容器1の下側容器1aの底面部を貫通し、昇降板41に支持されている。昇降板41は昇降機構42のロッド42aに取り付けられ、昇降機構42により昇降可能となっており、この昇降板41の昇降により支持部材3を介してサセプタ2が図1の実線で示す処理位置と二点鎖線で示す搬送位置との間で昇降可能となっている。昇降板41と下側容器1aとの間にベローズ43が気密に接合されている。
【0025】
また、処理容器1内の下側容器1aの底面部近傍には、ウエハWをサセプタ2のウエハ載置面に対して昇降させるためのウエハ昇降部45が設けられている。ウエハ昇降部45は、下側容器1aの底面に水平に固定された支持板46と、支持板46から上方に延びる3本(図1では2本のみ図示)のウエハ支持ピン47とを有している。一方、サセプタ2にはウエハ支持ピン47が挿通される挿通孔2aが設けられている。そして、サセプタ2が二点鎖線で示す搬送位置に下降された際に、ウエハ支持ピン47がサセプタ2の挿通孔2aに挿通され、その上端がサセプタ2のウエハ載置面から突出した状態となり、図示しないウエハ搬送装置によるウエハWの受け渡しが可能となる。
【0026】
処理容器1の下側容器1aの側壁には、ウエハWの搬入および搬出を行うための搬入出口48が設けられており、搬入出口48はゲートバルブ49により開閉可能となっており、真空搬送室(図示せず)に連通している。搬入出口48は、サセプタ2が搬送位置にあるときに、搬送装置(図示せず)によるサセプタ2に対するウエハWの受け渡しを行うことができる位置に形成されている。
【0027】
次に、処理空間Sに対するガス供給および排気のための構造について具体的に説明する。
【0028】
天板1bの中心には、ガス導入口27から垂直に下方に延び、貫通するようにガス流入孔61が形成されている(図1参照)。一方、給排気流路部材12の上面にはガス流入孔61に対応するようにガス導入口62が設けられ、給排気流路部材12の内部には、ガス導入口62から複数(図では8本)の水平ガス流路63が水平かつ放射状に外側に向かって延びている(図2、4参照)。そして、これらガス水平ガス流路63の外端部からキャップ部材13に向けて垂直下方に延びる垂直ガス流路64が形成されている。垂直ガス流路64は給排気流路部材12の下面に開口している。キャップ部材13の上面の外周部には、給排気流路部材12の垂直ガス流路64に対応するように複数(図では8個)のガス導入路65が設けられており、また、キャップ部材13の内部には、環状ガス流路66が設けられていて(図2、3参照)、ガス導入路65は環状ガス流路66に接続されている。また、環状ガス流路66からキャップ部材13の凹部13aの外周部のウエハWよりも外側の位置に開口する複数(図では32個)のガス吐出口67が均等に設けられている(図2、3、5参照)。したがって、サセプタ2を処理位置に位置させた際に、ガス供給部20からガス導入口27を経て導入されたガスは、ガス流入孔61、ガス導入口62、水平ガス流路63、垂直ガス流路64、ガス導入路65、環状ガス流路66、ガス吐出口67を介して外周部から均等に処理空間Sに供給される。
【0029】
一方、キャップ部材13の下面中央(凹部13aの中央)にはガス排出孔68が形成されている。したがって、外周上面の複数のガス吐出口67から処理空間Sに供給されたガスが、ウエハWの上面を経て処理空間Sの中央上部のガス排出孔68から上方に排出される。ガス排出孔68は逆すり鉢状の下部68aと小径の上部68bとを有している。なお、ガス排出孔68の形状はこれに限らず、単純な円柱状等の他の形状であってもよい。このように、本実施形態では、処理空間Sに外周に沿って複数設けられたガス吐出口67を吐出し、処理空間Sの中央上部からガスを排出するようになっている(図2、3、5参照)。
【0030】
給排気流路部材12の下面には、複数(図では8本)のガス排出流路71が放射状に設けられており、これらガス排出流路71の外周端は、環状の排気径路30に臨むようになっている。したがって、ガス排出孔68から排出されたガスは、偏りを生じることなくガス排出流路71を通って排気経路30に導かれ、排気装置32より排気配管31を介して排出される。
【0031】
成膜装置100の各構成部、例えばバルブ制御部26、昇降機構42、ヒーター5を加熱するヒーター電源(図示せず)、自動圧力制御バルブ(APC)31a、排気装置32、ゲートバルブ49等は、全体制御部80により制御される。全体制御部80は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラと、オペレータが入力操作等を行うキーボードや、成膜装置の稼働状況等を表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェースと、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100に所定の処理を実行させるための処理レシピ等が格納された記憶部とを有している。処理レシピ等は記憶媒体に記憶されおり、記憶部において記憶媒体から読み出して実行される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。レシピ等は、必要に応じてユーザーインターフェースからの指示等にて記憶部から読み出し、コントローラに実行させることで、コントローラの制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0032】
このように構成される成膜装置100においては、排気装置32により処理容器1内を減圧状態に維持しつつ、まず、サセプタ2を搬送位置に配置した状態で、ゲートバルブ49を開けて真空搬送室から搬送装置によりウエハWをウエハ支持ピン47の上に受け渡し、搬送装置を退避させてゲートバルブ49を閉じる。その後、昇降機構42によりサセプタ2を上昇させ、サセプタ2の外周部分に取り付けられたカバーリング15をキャップ部材13の外周部分13bに接触させることで、凹部13aとサセプタ2とで形成される処理空間Sを形成する。このときサセプタ2に設けられているヒーター5によりウエハWは所定の温度、例えば350〜500℃に加熱されている。
【0033】
この状態でガス供給部20からパージガスとしてのNガスを流しつつ自動圧力制御バルブ(APC)31aの開度を制御することにより処理空間Sの圧力を制御し、圧力が安定した段階で、ALDによる成膜を開始する。成膜に際しては、TiClガスを供給してウエハW上へのTiClガスを吸着させる工程、Nガスを供給することにより処理空間Sをパージする工程、NHガスを供給してウエハW上のTiClを還元し、極薄いTiN膜を形成する工程と、Nガスを供給することにより処理空間Sをパージする工程とを所定回数繰り返す。この際のガスの切替えは、バルブ制御部26によるバルブの制御により実現される。なお、各工程における処理空間S内の圧力は、TiClガスを吸着させる工程では例えば2〜4Torr、NHガスを供給してTiClを還元する工程では例えば10〜15Torr、パージ工程では例えば2〜4Torrに設定される。
【0034】
このようにして、パージを挟んでTiClガスの供給とNHガスの供給とを繰り返すことにより、ウエハW上に所定の厚さのTiN膜が形成される。
【0035】
この場合に、ガスはキャップ部材13の処理空間Sの外周に均等に設けられた複数のガス吐出口67から吐出され、処理空間Sの中央上部のガス排出孔68から排出されるため、ガスは分散された状態で均等にウエハWに供給されることとなり、特別な分散機構を用いることなく分散された状態でウエハにガスを供給することができる。また、ガス吐出口67はウエハWの外方かつ上方に設けられているので、ガス流が直接ウエハWに噴射されるのではなく、ウエハWの表面に沿って流れ、ウエハWに対して均一にガスを供給することができる。
【0036】
このように、本実施形態では本質的に分散性が良い状態でガスを供給することができ、また、従来のように処理空間の中央部にガスを分散させる機構が不要であるため、処理空間Sの容積を従来よりも著しく小さくすることができ、ガス供給および排気の時間を短くすることができる。このため、高速プロセスの要求に対応することが可能となる。また、ガスの使用量を節約することができる。
【0037】
また、処理空間Sの中央上部のガス排出孔68からガスを排出するため、排気のコンダクタンスをガス排出孔68の径や形状により設定することができ、従来のように外周からガスを排出する場合に比べて排気コンダクタンスの設定を容易に行うことができる。また、このように中央上部から排気することにより、成膜による排気コンダクタンスへの影響を少なくでき、偏りを生じることなく均等に排気することができる。
【0038】
さらに、処理ガスの吸着および反応(還元)などの効率を高めるためには高圧での処理が必要であり、そのために処理空間を極力閉空間とすることが有利であるが、本実施形態では、サセプタ2を上昇させて、キャップ部材13に形成された凹部13aの開口を塞ぐという、極めて簡単な動作で処理空間Sを形成することができ、効率のよい処理を行うことができる。そして、このように狭くかつ閉じられた処理空間Sを形成してその中で成膜処理を行うので、処理の効率が高い。しかも、このようにサセプタ2の上方の空間で成膜処理が行われるため、サセプタ2の下方にガスが接触することがなく、サセプタ2の下方の壁部または部材に成膜や腐食が生じることを防止できる。
【0039】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では、上述したように、排気コンダクタンスの設定は従来よりも容易であるが、一度コンダクタンスを設定したら、処理中にコンダクタンスを制御することはできない。しかし、ALDの場合、ガスの置換を短時間で行うためには排気コンダクタンスを大きく設定するのが有利であり、処理ガスの吸着および反応(還元)時には圧力を高めるために排気コンダクタンスを小さく設定することが有利である。
【0040】
そこで、本実施形態では、吸着および反応(還元)時と、ガスの置換時とでコンダクタンスを変化させる。
【0041】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の要部を示す断面図である。図6において、第1の実施形態の成膜装置と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施形態では、図6に示すように、キャップ部材13のガス排出孔68の周囲にバッファ室91を設け、バッファ室91とガス排出孔68とをガス流路92で繋ぎ、バッファ室91に別個のガスライン93からNガスまたはNHガスを導入するようになっている。
【0043】
これにより、ガスライン93からのガスの供給を制御することによりバッファ室91の圧力を任意に制御することができる。したがって、吸着時および反応(還元)時は、図7の(a)に示すように、バッファ室91と処理空間Sとの差圧を小さくしてコンダクタンスを小さくすることにより、処理ガスの封じ込め効果を大きくして高圧処理を可能にし、一方、パージガスを導入してガスを置換する時には、図7の(b)に示すように、バッファ室91と処理空間Sとの差圧を大きくしてコンダクタンスを大きくすることにより、急速排気を可能にすることができる。
【0044】
なお、本実施形態のバッファ室を設けてコンダクタンスを制御する手法は、ガス排出孔の位置を問わず可能である。例えば、図8に示す、従来の中心からガスを導入して外周に排気するタイプの成膜装置でも同様に適用可能である。すなわち、図8の成膜装置は、逆すり鉢状の処理空間S′が形成されるよう構成され、中央上部からガス分散機構を備えたガス導入部材101を挿入してガスが供給され、処理空間S′の外周側に排気ライン102を均等に配置して外方の排気経路(図示せず)に排気する構造を有している。そして、排気ライン102の途中に環状をなすバッファ室103を設け、バッファ室103にガスライン104を接続し、ガスライン104を介してバッファ室103にNガスやNHガスを導入して差圧制御を行えるようになっている。このような構成でも、図6の装置と同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、TiClガスとNHガスを用いてTiN膜をALDにより成膜する場合について説明したが、本発明の原理上、ガスの種類、膜の材料は何ら限定されず、種々のガスを用いたALD成膜に適用することができる。パージガスも処理ガスに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。また、ガスは2種類に限らず、3種類以上のガスのALDにも適用できることは言うまでもない。また、ALD以外の通常のCVDにも適用できる。
【0046】
また、上記実施形態では、処理空間の外周部の上部のウエハの外方に設けられたガス吐出口からガスを吐出したが、ガス吐出口はウエハの存在する位置に設けられていてもよい。また、複数のガス吐出口を一つの円状に配置したが、二重に配置してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等にも本発明を適用することができることはもちろんである。
【符号の説明】
【0048】
1;処理容器
2;サセプタ(載置台)
3;支持部材
4;インナーリング
5;ヒーター
12;給排気流路部材
13;キャップ部材
13a;凹部
15;カバーリング
20;ガス供給部
30;排気経路
31;排気配管
31a;自動圧力制御バルブ
32;排気装置
42;昇降機構
67;ガス吐出口
68;ガス排出孔
71;ガス排出流路
80;全体制御部
91;バッファ室
92;ガス流路
93;ガスライン
100;成膜装置
S;処理空間
W;半導体ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容し、その中で基板の成膜処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内で基板を載置する載置台と、
前記処理容器内に形成された、基板に成膜処理を行う処理空間と、
前記処理空間に、少なくとも第1の処理ガスと、第2の処理ガスと、パージガスとを供給するガス供給部と、
前記処理空間を排気する排気部と
を具備し、
前記第1の処理ガスと前記第2の処理ガスとを前記パージガスによる前記処理空間のパージを挟んで交互に供給して所定の膜を成膜する成膜装置であって、
前記ガス供給部は前記処理空間の外周からガスを供給し、前記排気部は前記処理空間の中央上部から上方へ排気することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記処理容器内に前記載置台と対向して設けられ、下方に開口した前記処理空間を形成するための凹部を有するキャップ部材をさらに具備し、前記載置台により前記凹部の開口を塞ぐことにより処理空間が形成され、前記キャップ部材の前記凹部の外周部に複数のガス吐出口が形成され、前記キャップ部材の前記凹部の中央にガス排出孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記載置台を昇降させる昇降機構をさらに具備し、前記昇降機構により前記載置台を下降させた状態で前記載置台への基板の受け渡しが行われ、前記昇降機構により前記載置台を上昇させることにより前記キャップ部材の前記開口が塞がれて前記処理空間が形成されることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記排気部は、前記処理空間の外側を囲うように設けられた環状の排気経路と、前記キャップ部材の前記ガス排出孔から排出されたガスを放射状に前記排気経路に導くガス排出流路とを有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記ガス排出孔に接続されたバッファ室と、前記バッファ室にガスを供給するガスラインとを有し、前記ガスラインから前記バッファ室へのガスの供給を制御して前記バッファ室の圧力を制御することにより、前記処理空間からの排気のコンダクタンスを制御することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
基板を収容し、その中で基板の成膜処理が行われる処理容器と、
前記処理容器内で基板を載置する載置台と、
前記処理容器内において基板に成膜処理を行う処理空間と、
前記処理空間に成膜処理のための処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理空間を排気する排気部と
を具備し、
前記ガス供給部は前記処理空間の外周から処理ガスを供給し、前記排気部は前記処理空間の中央上部から上方へ排気することを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237026(P2012−237026A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105381(P2011−105381)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】