説明

所持者認証システム

【課題】所持者から所持品への情報送信による所持者認証の欠点を補う所持者認証システムを提供する。
【解決手段】コンピュータ3は、当初は、ユーザ認証を行うようになっておらず、所持品Aが所持されていることがセンサ5から通知されると、コンピュータ1からのIDでユーザ認証を行うようになる。コンピュータ3は、IDを予め記憶しており、IDが送信されるごとに、送信されたIDが記憶されているか否かを判定し(ユーザ認証)、記憶されていない(認証失敗の)場合、例えば、警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所持者から所持品への情報送信による所持者認証の欠点を補う所持者認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、所持品Aが所持品Bの所持者UBにより間違って所持されるのを防止するには、かかる所持がなされた状態で、所持者UBに装備されたコンピュータから所持者UBの所持者IDを所持者UBと所持品Aを媒体として、所持品Aに装備されたコンピュータに送信し、これにより、所持品Aに装備されたコンピュータが警告などを発すればよい。
【非特許文献1】RedTacton、[平成17年10月3日検索]、インターネット<URL: http://www.redtacton.com/jp/info/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、所持者UBに装備されたようなコンピュータを装備しない不審者などが、盗難目的などで所持品Aを所持した場合には、所持者UBなどのような所持者IDの送信がなされず、そのため、所持品Aに装備されたコンピュータが警告などを発することができず、その結果、所持品Aが盗難されてしまうようなことになる。
【0004】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所持者から所持品への情報送信による所持者認証の欠点を補う所持者認証システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明では、所持されたことを検出するセンサを備えた所持品の所持者に装備され所持者IDを記憶する所持者装備のコンピュータに通信可能な所持者装備のトランシーバと、前記所持品に装備され所持者IDを記憶する所持品装備のコンピュータに通信可能な所持品装備のトランシーバとが電極を有し、各電極が所持者と所持品に接触または近接し、所持者と所持品が所持により接触または近接している状態で、所持者装備のトランシーバは、所持者装備のコンピュータから送信される所持者IDに応じた波形の電圧を電極と所持者と所持品を介して所持品装備のトランシーバの電極に印加し、所持品装備のトランシーバは、電極に印加された電圧の波形を所持者IDとして検出し、この所持者IDを所持品装備のコンピュータへ送信し、センサは、所持品が所持されたことを所持品装備のコンピュータへ通知し、所持品装備のコンピュータは、センサからの通知を契機に、記憶した所持者IDが送信されたか否かを判定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、所持者から所持品への情報送信による所持者認証の欠点を補い、これにより、所持品盗難などを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る所持者認証システムおよび方法の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、本実施の形態に係る所持者認証システムの構成図である。
【0009】
このシステムでは、相互接続されたコンピュータ1とトランシーバ2が所持品A(例えば、カバン)を所持してよい所持者UAに装備される。所持品Aには、相互接続されたコンピュータ3とトランシーバ4、ならびに、所持品Aが所持されていることを検出するセンサ5が装備されている。
【0010】
図2(a)に示すように、センサ5は、所持品Aが所持されているときに圧力を受ける位置に圧力センサを設けて構成し、この圧力センサが圧力を受けたときは、所持品Aが所持されていることを検出したこととすればよい。
【0011】
また、図2(b)に示すように、センサ5は、所持品Aに加速度センサを設けて構成し、この加速度センサが加速度を検出したときは、センサ5が所持品Aの所持を検出したこととすればよい。
【0012】
また、図2(c)に示すように、センサ5は、所持品Aが所持されたときに温度が上昇する位置に温度センサを設けて構成し、この温度センサが温度上昇を検出したときは、センサ5が所持品Aの所持を検出したこととすればよい。
【0013】
図3は、トランシーバ2、4の構成および利用形態を示す図である。
【0014】
トランシーバ2、4は、同様な構成を有するので、これらを区別せず、トランシーバTRという。また、コンピュータ1、3をコンピュータCMPという。
【0015】
トランシーバTRは、電極TR1と、発振器TR2と電界検出部TR3と送受信回路TR4を備える。特に、トランシーバ2の電極TR1は、ユーザUの人体に常に接触している状態にされる。また、トランシーバ4の電極TR1は、所持品Aに常に接触している状態にされる。なお、トランシーバTR間では、ユーザUの人体や所持品Aと電極TR1とが近接していても通信可能なので、電極TR1の表面を絶縁体で覆ってもよい。例えば、トランシーバをカード型にし、それを服のポケットに入れた状態で通信できるようにしてもよい。
【0016】
送受信回路TR4は、コンピュータCMPから送信される情報に応じて発振器TR2を制御し、発振器TR2は、その情報に応じた電圧を電極TR1に印加するようになっている。また、送受信回路TR4は、電界検出部TR3で光電変換された電気信号を処理することで、コンピュータCMPに送信すべき情報を検出し、これをコンピュータCMPに送信するようになっている。
【0017】
電界検出部TR3は、光源TR31と、この光源TR31からの光の偏光状態を変調する電気光学結晶TR32と、この偏光変調光を強度変調光に変換する偏光板TR33と、この強度変調光を電気信号に変換する光検出器TR34とを備える。
【0018】
(実施の形態の動作)
図4は、本システムが行う所持者認証方法の一例を示すシーケンス図である。
【0019】
コンピュータ1は、例えば、時間間隔をあけて、継続的に、所持者UAを示す所持者ID(以下、ID)をトランシーバ2の送受信回路TR4に送信する。
【0020】
送受信回路TR4は、そのIDに基づいてトランシーバ2の発振器TR2を発振させる。発振器TR2は、このIDに応じた波形の電圧を、トランシーバ2の電極TR1に印加する。ユーザUの人体が所持品Aに接触あるいは近接していれば、この電圧がユーザUの人体と所持品Aを介して、トランシーバ4の電極TR1に印加される。
【0021】
トランシーバ4の電界検出部TR3では、当該電圧の波形に応じた電界を電気光学結晶TR32に印加し、光源TR31が光を電気光学結晶TR32に入射し、偏光板TR33が電気光学結晶TR32からの偏光変調光を強度変調光に変換し、光検出器TR34が強度変調光を電気信号に変換し、送受信回路TR4が電気信号の波形をIDとして検出する。そして、このIDをコンピュータ3に送信する(S1)。
【0022】
コンピュータ3は、当初は、ユーザ認証を行うようになっておらず、所持品Aが所持されていることがセンサ5から通知される(S2)と、コンピュータ1からのIDでユーザ認証を行うようになる。
【0023】
コンピュータ3は、IDを予め記憶しており、IDが送信されるごとに、送信されたIDが記憶されているか否かを判定し(ユーザ認証)、記憶されていない(認証失敗の)場合、例えば、警報を発する(S3)。よって、異なるIDを送信するコンピュータ1とトランシーバ2を所持する者が所持品Aを所持した場合に警報を発することができる。
【0024】
また、ステップS2から一定時間が経過しても、IDが送信されない場合、例えば、警報を発する(S3)。よって、コンピュータ1とトランシーバ2を所持しない者が所持品Aを所持した場合に警報を発することができる。
【0025】
一方、認証成功した場合、つまり、所持者UAが所持品Aを所持した場合は、警報発信を抑制する。よって、所持者UAが所持品Aを所持した場合の警報発信を抑制することができる。
【0026】
その後、コンピュータ3は、所持品Aが所持されていないことがセンサ5から通知される(S4)と、当初の状態、つまりユーザ認証を行わないようになり、以降、通知と通知内容により、状態が変化する。
【0027】
図5は、本システムが行う所持者認証方法の他の一例を示すシーケンス図である。
【0028】
コンピュータ3は、当初は、IDの要求を行うようになっておらず、所持品Aが所持されいることがセンサ5から通知される(S11)と、例えば、時間間隔をあけて、継続的に、IDの要求を行う。
【0029】
このとき、コンピュータ3は、コンピュータ1が行った(S1)ときと同様に、要求に応じた電圧をトランシーバ2の電極TR1に印加する。
【0030】
トランシーバ2は、トランシーバ4が行った(S1)ときと同様に、要求を検出し、コンピュータ1に送信する(S12)。
【0031】
要求により、コンピュータ1は、ステップS1の時と同様に、IDをコンピュータ3に送信する(S13)。
【0032】
コンピュータ3は、送信されたIDでユーザ認証を行い、認証失敗した場合、例えば、警報を発する(S14)。よって、異なるIDを送信するコンピュータ1とトランシーバ2を所持する者が所持品Aを所持した場合に警報を発することができる。
【0033】
また、ステップS12から一定時間が経過しても、IDが送信されない場合、例えば、警報を発する(S13)。よって、コンピュータ1とトランシーバ2を所持しない者が所持品Aを所持した場合に警報を発することができる。
【0034】
一方、認証成功した場合、つまり、所持者UAが所持品Aを所持した場合は、警報発信を抑制する。よって、所持者UAが所持品Aを所持した場合の警報発信を抑制することができる。
【0035】
その後、コンピュータ3は、所持品Aが所持されていないことがセンサ5から通知される(S15)と、当初の状態、つまりIDの要求を行わないようになり、以降、通知と通知内容により、状態が変化する。
【0036】
なお、図4の要求を行わず、図3の動作だけなら、トランシーバ4の発振器TR2と、トランシーバ2の電界検出部TR3は不要になる。
【0037】
また、実施の形態では、所持品Aを、例えば、カバンとしたが、図6(a)に示す靴(A)や、図6(b)に示す三輪車または二輪車Aなどのように、他の物としてもよい。
【0038】
また、情報伝達の媒体として人体を用いる代わりに、他の生物(動物など)や絶縁体を媒体としてもよい。
【0039】
また、実施の形態では、トランシーバでのIDなどの検出に光源、電気光学結晶、偏光板および光検出器という光学部品を用いたが、これらを用いずに、つまり電気的に検出を行ってもよい。
【0040】
また、実施の形態では、ID送受を電圧信号で行ったが、電流信号で行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施の形態に係る所持者認証システムの構成図である。
【図2】センサの例を示す図である。
【図3】トランシーバの構成および利用形態を示す図である。
【図4】本システムが行う所持者認証方法の一例を示すシーケンス図である。
【図5】本システムが行う所持者認証方法の他の一例を示すシーケンス図である。
【図6】他の所持品の例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1、3…コンピュータ
2、4…トランシーバ
A…所持品
UA…所持者
TR1…電極
TR2…発振器
TR3…電界検出部
TR4…送受信回路
TR31…光源
TR32…電気光学結晶
TR33…偏光板
TR34…光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所持されたことを検出するセンサを備えた所持品の所持者に装備され所持者IDを記憶する所持者装備のコンピュータに通信可能な所持者装備のトランシーバと、前記所持品に装備され所持者IDを記憶する所持品装備のコンピュータに通信可能な所持品装備のトランシーバとが電極を有し、
各電極が所持者と所持品に接触または近接し、所持者と所持品が所持により接触または近接している状態で、
所持者装備のトランシーバは、所持者装備のコンピュータから送信される所持者IDに応じた波形の電圧を電極と所持者と所持品を介して所持品装備のトランシーバの電極に印加し、
所持品装備のトランシーバは、電極に印加された電圧の波形を所持者IDとして検出し、この所持者IDを所持品装備のコンピュータへ送信し、
センサは、所持品が所持されたことを所持品装備のコンピュータへ通知し、
所持品装備のコンピュータは、センサからの通知を契機に、記憶した所持者IDが送信されたか否かを判定する
ことを特徴とする所持者認証システム。
【請求項2】
所持されたことを検出するセンサを備えた所持品の所持者に装備され所持者IDを記憶する所持者装備のコンピュータに通信可能な所持者装備のトランシーバと、前記所持品に装備され所持者IDを記憶する所持品装備のコンピュータに通信可能な所持品装備のトランシーバとが電極を有し、
各電極が所持者と所持品に接触または近接し、所持者と所持品が所持により接触または近接している状態で、
所持者装備のトランシーバは、所持者装備のコンピュータから送信される所持者IDに応じた波形の電圧を電極と所持者と所持品を介して所持品装備のトランシーバの電極に印加し、
所持品装備のトランシーバは、電極に印加された電圧の波形を所持者IDとして検出し、この所持者IDを所持品装備のコンピュータへ送信し、
センサは、所持品が所持されたことを所持品装備のコンピュータへ通知し、
所持品装備のコンピュータは、センサからの通知を契機に、記憶した所持者IDが送信されたか否かを判定する
ことを特徴とする所持者認証方法。
【請求項3】
請求項1記載の所持者認証システムにおいて、所持品装備のトランシーバは、電極に印加された電圧の波形に応じた電界を電気光学結晶に印加し、この電気光学結晶で光源からの光の偏光状態を変調し、この偏光変調光を強度変調光に変換し、この強度変調光を電気信号に変換し、この電気信号の波形を所持者IDとして検出し、この所持者IDを所持品装備のコンピュータへ送信する
ことを特徴とする所持者認証システム。
【請求項4】
請求項2記載の所持者認証方法において、所持品装備のトランシーバは、電極に印加された電圧の波形に応じた電界を電気光学結晶に印加し、この電気光学結晶で光源からの光の偏光状態を変調し、この偏光変調光を強度変調光に変換し、この強度変調光を電気信号に変換し、この電気信号の波形を所持者IDとして検出し、この所持者IDを所持品装備のコンピュータへ送信する
ことを特徴とする所持者認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−92065(P2008−92065A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267930(P2006−267930)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】