説明

扉の開動補助装置

【課題】例えば屋内と屋外の気圧差などにより玄関扉を開ける方向に対して非常に重くなった場合に玄関扉を開けやすくするための玄関扉の開動補助装置を提供する。
【解決手段】出入り口の上枠に玄関扉に向いて取り付けられる開動補助装置であって、ケーシング7内には、駆動モーター8と、駆動モーター8の回転軸8aから動力伝達機構を介して繋がる雄ねじ軸13と、雄ねじ軸13の長さ方向にスライド自在な2枚のプレート17,18と、2枚のプレート17,18間に介在され両端が2枚のプレート17,18に結合された緩衝用の引っ張りばね16とを備え、雄ねじ軸13の回転により2枚のプレート17,18および引っ張りばね16を一体的に移動させるとともに他方のプレート18に固定された連結棒20に取り付けられている扉押し付け具21をケーシング7の開口部22より玄関扉1側に突出させ、玄関扉1を押し開くように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションなどの集合住宅や一戸建て住宅など建物の扉の開動を補助するための扉の開動補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種扉の開動補助装置としては例えば特許文献1に開示されているような、柱枠に対して蝶番を介して回動可能に取り付けられ且つ閉鎖姿勢を保持するラッチを備えた回動扉であって、この扉を閉鎖した姿勢において扉のヒンジ側端面とこの端面に隣接する柱枠の側面の何れか一方に、扉を常時開放方向に弾力的に付勢する弾性突出棒体が出没自在に埋設されているものが知られている。
【特許文献1】特開平11−280329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている扉の開放補助機構は把手でラッチを解除して扉を開こうとするときに弾性突出棒体の突出する力が扉のヒンジ側端面に掛かり、扉を半開きの状態まで開動させることができるとあるが、弾性突出棒体を突出する方向に付勢して扉を開動させるためには相当強いばねを用いる必要がある。
【0004】
上記特許文献1に開示されている扉の開放補助機構は身障者の玄関出入り口の通行時に把手でラッチを解除するだけで扉を弾性突出棒体の付勢力により半開きの状態まで開動させ、身障者の玄関出入り口の通行を行ないやすくするものであるが、例えば突風などにより扉に対して閉じる方向に大きな力が加わった場合、上記の開放補助機構の構成では把手でラッチを解除しても弾性突出棒体のばねによる付勢力だけでは扉を開動させるのは困難である。特に、マンションなどの気密性の高い住居にあっては屋内と屋外とでは気圧差が生じ、玄関の扉を内側から押し開くか、外側から引き開く場合でも非常に重く、力の弱い女性、子供、年寄りにとっては玄関扉の開閉が困難である。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、例えば突風などにより玄関の扉に対して閉じる方向に大きな力が加わった場合や、屋内と屋外の気圧差などにより玄関の扉を開ける方向に対して非常に重くなった場合に扉を開けやすくするための扉の開動補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の扉の開動補助装置は、出入り口の扉を開扉する際に、開扉方向に開動補助する開動補助装置であって、ケーシング内に開扉方向の動力を伝達する押圧部と、押圧部を往復運動させて出退可能にする作動部と、作動部を動作させる駆動モーターと動力伝達機構からなる動力部とを有し、前記作動部は、前記駆動モーターの回転軸から動力伝達機構を介して繋がる雄ねじ軸と、この雄ねじ軸の長さ方向にスライド自在な2枚のプレートと、この2枚のプレート間に介在され両端が2枚のプレートに結合された緩衝用のばねとを備え、前記2枚のプレートの何れか一方のプレートには前記雄ねじ軸に螺合する雌ねじ部材が設けられて雄ねじ軸の回転により2枚のプレートおよびばねを一体的に雄ねじ軸の長さ方向に移動させるように構成され、前記2枚のプレートの何れか他方のプレートに固定された連結棒の他端側を前記押圧部としてケーシングの開口部に対して出退するように構成され、前記雄ねじ軸の回転により2枚のプレートおよびばねを一体的に移動させて前記連結棒の他端側の押圧部の押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の扉の開動補助装置は、出入り口の扉を開扉する際に、開扉方向に開動補助する開動補助装置であって、ケーシング内に開扉方向の動力を伝達する押圧部と、押圧部を往復運動させて出退可能にする作動部と、作動部を動作させる駆動モーターと動力伝達機構からなる動力部とを有し、前記作動部は、前記駆動モーターの回転軸から動力伝達機構を介して繋がるウオームと、このウオームに噛合するウオームギヤと、このウオームギヤと同軸上でウオームギヤとは個別に回転自在に取り付けられた作動板と、ウオームギヤの回転を作動板に連動させるために一端がウオームギヤ側に係止されるとともに他端が作動板側に係止されたコイルばねと、ウオームギヤから伝達される作動板の回転によりケーシングの開口部に対して出退するように往復運動が可能な前記押圧部を備えてなり、前記押圧部の押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の扉の開動補助装置は、押圧部に押圧体を一体的に設け、押圧体の押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする。
請求項4に記載の扉の開動補助装置は、出入り口の扉を開扉する際に、開扉方向に開動補助する開動補助装置であって、ケーシング内に開扉方向の動力を伝達する押圧部と、押圧部を往復運動させる作動部と、作動部を動作させる駆動モーターと動力伝達機構からなる動力部とを有し、前記作動部は、前記駆動モーターの回転軸から動力伝達機構を介して繋がる雄ねじ軸と、この雄ねじ軸の長さ方向にスライド自在な2枚のプレートと、この2枚のプレート間に介在され両端が2枚のプレートに結合された緩衝用のばねとを備え、前記2枚のプレートの何れか一方のプレートには前記雄ねじ軸に螺合する雌ねじ部材が設けられて雄ねじ軸の回転により2枚のプレートおよびばねを一体的に雄ねじ軸の長さ方向に移動させるように構成され、前記2枚のプレートの何れか他方のプレートに固定された連結棒の他端側を前記押圧部とし、扉に押圧体を一体的に設け、ケーシングに押圧体挿入部を形成し、前記雄ねじ軸の回転により2枚のプレートおよびばねを一体的に移動させて前記押圧部からの押圧体への押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の扉の開動補助装置は、出入り口の扉を開扉する際に、開扉方向に開動補助する開動補助装置であって、ケーシング内に開扉方向の動力を伝達する押圧部と、押圧部を往復運動させる作動部と、作動部を動作させる駆動モーターと動力伝達機構からなる動力部とを有し、前記作動部は、前記駆動モーターの回転軸から動力伝達機構を介して繋がるウオームと、このウオームに噛合するウオームギヤと、このウオームギヤと同軸上でウオームギヤとは個別に回転自在に取り付けられた作動板と、ウオームギヤの回転を作動板に連動させるために一端がウオームギヤ側に係止されるとともに他端が作動板側に係止されたコイルばねと、ウオームギヤから伝達される作動板の回転により往復運動が可能な前記押圧部を備えてなり、扉に押圧体を一体的に設け、ケーシングに押圧体挿入部を形成し、前記押圧部からの押圧体への押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の扉の開動補助装置は、ケーシング内に挿入された押圧体に対して、ピンを差し込んでケーシングと結合させることにより施錠するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の扉の開動補助装置は、例えば突風などにより玄関の扉に対して閉じる方向に大きな力が加わった場合や、屋内と屋外の気圧差などにより玄関の扉を開ける方向に対して非常に重くなった場合、駆動モーターを回転させて押圧部を移動させ、押圧部により扉を押し開くことにより扉を簡単に開くことができるものである。また、前記2枚のプレート間にはばねが介在されているので、扉を押し開く際に押圧部に衝撃が加わっても、その衝撃をばね力により吸収することができる。また、前記ウオームギヤと作動板との間にコイルばねが介在されているので、扉を押し開く際に押圧部に衝撃が加わっても、その衝撃をばね力により吸収することができる。また、扉側に押圧体を一体的に設け、押圧部が押圧体を押圧する場合も同様の効果が得られ、この押圧体をケーシング内に挿入された状態で、ピンを差し込んでケーシングと結合させることにより施錠することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき具体的に説明する。
先ず、図1〜図6に示す第1の実施の形態について説明すると、1は一側部が蝶番(図示せず)により出入り口2の縦枠3に回転自在に支持された玄関扉であって、この玄関扉1の蝶番支持側とは反対側の他側部にはラッチ錠が内蔵された把手4が設けられている。そして、この把手4が取り付けられた他側部側、つまり戸先側において室内側に位置する出入り口2の上枠5には玄関扉1に向いて開動補助装置6が取り付けられている。
【0013】
開動補助装置6は上枠5の下面に前記玄関扉1の上端内面に向き合うように取り付けられる。この開動補助装置6のケーシング7内には、駆動モーター8と、この駆動モーター8の回転軸8aに取り付けられた歯車9と、この歯車9に噛合するように前記回転軸8aと平行な軸10の一端に取り付けられた歯車11と、この歯車11を取り付ける軸10の他端に取り付けられた歯車12と、この歯車12に噛合するように前記軸10と平行な雄ねじ軸13の一端に取り付けられた歯車14を備え、これら動力伝達機構としての歯車9,11,12,14により駆動モーター8の回転数を減速し、駆動モーター8の回転力を増幅させるように構成されている。そして、これら歯車9,11,12,14は前記ケーシング7内の一端側に位置するように設けられる。前記雄ねじ軸13はケーシング7内の他端側に向ってケーシング7の両端間で他端側寄りの位置までの長さを有している。15は雄ねじ軸13を支持する軸受けである。前記雄ねじ軸13には緩衝用の引っ張りばね16と、この引っ張りばね16の両端を挟み引っ張りばね16の両端と結合される2枚のプレート17,18が雄ねじ軸13の長さ方向にスライド自在に設けられている。2枚のプレート17,18には雄ねじ軸13にスライド自在に外嵌するために丸孔(図示せず)が形成されており、ケーシング7の他端側に向く一方のプレート17の内面側には雄ねじ軸13に螺合する雌ねじ部材19が固着されている。20は前記雄ねじ軸13を挟むように一端が他方のプレート18に固定されるとともに他端が一方のプレート17を貫通して扉押し付け具21に結合された2本の連結棒である。前記扉押し付け具21は前記ケーシング7の他端側に位置するように配設されており、ケーシング7の他端側に形成された開口部22より出退可能となっている。
【0014】
以上のように構成された開動補助装置6はケーシング7の他端側、つまり扉押し付け具21が玄関扉1の上端内側に近接するように出入り口2の上枠5に取り付けられる。開動補助装置6は作動していない状態のときは図4に示すように引っ張りばね16が縮んだ状態で2枚のプレート17,18に挟まれてケーシング7の一端側に位置して扉押し付け具21は開口部22より突出していない状態となっている。
【0015】
玄関扉1を開けたいときはラッチを解除して把手4を握って玄関扉1を開けるのであるが、例えば屋内と屋外の気圧差などにより玄関扉を開ける方向に対して非常に重くなった場合、スイッチ(図示せず)を押して前記駆動モーター8を正方向に回転させることにより前記歯車9→歯車11→歯車12→歯車14と回転が伝わり、雄ねじ軸13が回転して前記雌ねじ部材19とともに一方のプレート17が雄ねじ軸13上をケーシング7の他端方向に移動する。つまり、雄ねじ軸13の回転により雌ねじ部材19とともに一方のプレート17が移動するのは2本の連結棒20が一方のプレート17を貫通しているからであり、雄ねじ軸13の回転により雌ねじ部材19とともに一方のプレート17は共回りしないように構成されているからである。前述のように一方のプレート17が雄ねじ軸13上を移動すると同時に収縮状態の引っ張りばね16および他方のプレート18も雄ねじ軸13上を移動することになり、これにより他方のプレート18に一端が固定されている連結棒20の他端に取り付けられている扉押し付け具21は図5に示すように開口部22より玄関扉1側に突出し、玄関扉1を開く方向に押すことになる。つまり、扉押し付け具21からの押圧力により、扉1を開く方向の力を補うべく応力伝達するように構成されている。このような動作により玄関扉1を少しでも開くことにより屋内と屋外の気圧差がなくなり、玄関扉1を手で容易に開くことが可能となる。扉押し付け具21が開口部21より玄関扉1側に突出して玄関扉1を押し開く際、扉押し付け具21に多少の衝撃が加わるが、その衝撃は他方のプレート18から引っ張りばね16を伸ばす方向に力が働くことにより吸収される。扉押し付け具21の突出により玄関扉1を押し開いた後は数秒後に前記駆動モーター8が逆転して雄ねじ軸13も逆転し、前記引っ張りばね16が縮んだ状態で2枚のプレート17,18をケーシング7の一端側に移動させて図4に示す状態に自動復帰させるようになっている。
【0016】
ところで、玄関扉1のラッチを解除しないままスイッチを押して前記駆動モーター8を駆動させたときは扉押し付け具21が開口部22より突出することができず、図6に示すように一方のプレート17のみが雄ねじ軸13上を移動して引っ張りばね16が伸ばされた状態となる。
【0017】
次に、図7〜図10に示す第2の実施の形態について説明すると、前記第1の実施の形態では2枚のプレート17,18間に介在させた引っ張りばね16により衝撃を吸収したり大きな負荷を吸収したりできるようになっているが、第2の実施の形態では2枚のプレート17,18間に緩衝用の圧縮ばね23に介在させ、この圧縮ばね23により衝撃を吸収したり大きな負荷を吸収したりできるようにしてある。第2の実施の形態では2枚のプレート17,18間に圧縮ばね23に介在させた点および他方のプレート18側に雄ねじ軸13に螺合する雌ねじ部材19が固着されている点、さらに一方のプレート17に他端が扉押し付け具21に結合された2本の連結棒20の一端が固定されている点で第1の実施の形態と構成が異なる。
【0018】
この第2の実施の形態において、玄関扉1のラッチを解除した状態でスイッチを押して前記駆動モーター8を駆動させることにより歯車9→歯車11→歯車12→歯車14と回転が伝わり、雄ねじ軸13が回転して図8に示す状態から雌ねじ部材19とともに他方のプレート18が雄ねじ軸13上をケーシング7の他端方向に移動する。これと同時に圧縮ばね23および一方のプレート17も雄ねじ軸13上を移動することになり、これにより一方のプレート17に一端が固定されている連結棒20の他端に取り付けられている扉押し付け具21は図9に示すように開口部22より玄関扉1側に突出し、玄関扉1を開く方向に押すことになる。つまり、扉押し付け具21からの押圧力により、扉1を開く方向の力を補うべく応力伝達するように構成されている。このような動作により玄関扉1を少しでも開くことにより屋内と屋外の気圧差がなくなり、玄関扉1を手で容易に開くことが可能となる。扉押し付け具21が開口部22より玄関扉1側に突出して玄関扉1を押し開く際、扉押し付け具21に多少の衝撃が加わるが、その衝撃は一方のプレート17から圧縮ばね23を縮める方向に力が働くことにより吸収される。
【0019】
玄関扉1のラッチを解除しないままスイッチを押して駆動モーター8を駆動させたときは扉押し付け具21が開口部22より突出することができず、図10に示すように他方のプレート18のみが雄ねじ軸13上を移動して圧縮ばね23が2枚のプレート17,18間で収縮された状態となる。
【0020】
要するに、以上述べた2つの実施の形態では、ケーシング7内に、開扉方向の動力を伝達する押圧部(扉押し付け具21)と、押圧部をケーシング7の開口部22より出退可能にする作動部(雄ねじ軸13、2枚のプレート17,18、引っ張りばね16または圧縮ばね23)と、作動部を動作させる駆動モーター8と動力伝達機構(歯車9,11,12)からなる動力部とを有しており、開口部22より突出する押圧体としての扉押し付け具21により玄関扉1を押し開くようになっているが、連結棒20の他端に扉押し付け具21を設けずに、連結棒20の他端をケーシング7より突出可能として、連結棒20の他端で直接玄関扉1を押し開くようにしても良い。
【0021】
次に、図11〜図15に示す第3の実施の形態について説明すると、この第3の実施の形態の開動補助装置24の構成は前記第1および第2の実施の形態とは動力伝達機構部の構成が異なっており、以下具体的に説明する。
【0022】
開動補助装置24のケーシング25内には、駆動モーター26と、この駆動モーター26の水平方向に向く回転軸26aに取り付けられた歯車27と、この歯車27に噛合するように前記回転軸26aと平行な軸28の一端に取り付けられた歯車29と、この歯車29を取り付ける軸28の他端に取り付けられた歯車30と、この歯車30に噛合するように前記軸28と平行な軸31の一端に取り付けられた歯車32と、この歯車32を取り付ける軸31の他端に取り付けられた傘歯車33と、この傘歯車33に噛合するように前記軸31に対して直交して水平方向に向く軸34の一端に取り付けられた傘歯車35と、この傘歯車35を取り付ける軸34の他端に取り付けられたウオーム36と、このウオーム36に噛合するように鉛直方向に向く軸37に回転自在に取り付けられた4分の1円形のウオームギヤ38と、このウオームギヤ38と同軸37上でウオームギヤ38とは個別に回転自在に取り付けられた半円形の作動板39と、ウオームギヤ38の回転を作動板39に連動させるために一端がウオームギヤ38側に係止されるとともに他端が作動板39側に係止されたコイルばね40と、ウオームギヤ38から伝達される作動板39の回転によりケーシング25の開口部41に対して出退するように往復運動が可能な扉押し付け棒42とを備えている。前記歯車27からウオームギヤ38までの動力伝達機構は駆動モーター26の回転数を減速し、駆動モーター26の回転力を増幅させ、前記作動板39から扉押し付け棒42に伝達させるためのものである。ところで、前記作動板39には下面から突出する連結ピン43が設けられ、この連結ピン43は前記扉押し付け棒42の基端部と連結され扉押し付け棒42の出退方向にスライドする摺動体44の凹部44aに上から嵌入して作動板39の回転を扉押し付け棒42の直線運動に変えて伝えるようになっている。なお、作動板39の回転により連結ピン43は円弧の軌跡上で移動するので、摺動体44の凹部44aにおいて連結ピン43は凹部44aの幅内で動くことができるように連結ピン43と摺動体44は遊びを持って繋がれている。45は摺動体44のスライドを案内するガイド部材である。
【0023】
以上のように構成された開動補助装置24は扉押し付け棒42の先端が玄関扉1の上端内側に近接するように前記第1および第2の実施の形態と同様に出入り口の上枠に取り付けられる。開動補助装置24は作動していない状態のときは図12に示すように摺動体44がガイド部材45の内端側位置にあって、扉押し付け棒42は開口部41より突出していない状態となっている。
【0024】
玄関扉1を開けたいときはラッチを解除して把手を握って玄関扉1を開けるのであるが、例えば屋内と屋外の気圧差などにより玄関扉1を開ける方向に対して非常に重くなった場合、スイッチ(図示せず)を押して前記駆動モーター26を正方向に回転させることにより前記歯車27→歯車29→歯車30→歯車32→傘歯車33→傘歯車35→ウオーム36→ウオームギヤ38と回転が伝わり、このウオームギヤ38の回転がコイルばね40を介して作動板39に伝わり、この作動板39の回転を扉押し付け棒42に直線運動に変えて伝わることにより扉押し付け棒42は図14に示すように開口部41より玄関扉1側に突出し、玄関扉1を開く方向に押すことになる。つまり、扉押し付け棒42からの押圧力により、扉1を開く方向の力を補うべく応力伝達するように構成されている。このような動作により玄関扉1を少しでも開くことにより屋内と屋外の気圧差がなくなり、玄関扉1を手で容易に開くことが可能となる。扉押し付け棒42が開口部41より玄関扉1側に突出して玄関扉1を押し開く際、扉押し付け棒42に多少の衝撃が加わるが、その衝撃は扉押し付け棒42から作動板39、作動板39からコイルばね40へと伝わることにより吸収される。扉押し付け棒42の突出により玄関扉1を押し開いた後は数秒後に前記駆動モーター26が逆転して歯車27から作動板39までの全ての部品が逆転し、扉押し付け棒42は図12に示す状態に自動復帰するようになっている。
【0025】
ところで、玄関扉1のラッチを解除しないままスイッチを押して前記駆動モーター26を駆動させたときは扉押し付け棒42は開口部41より突出することができず、図15に示すように歯車27からウオームギヤ38までが図14に示す状態と同様に回転するが、扉押し付け棒42は開口部41より突出することができないために作動板39は回転することができず、この作動板39とウオームギヤ38との間のコイルばね40は収縮した状態となる。
【0026】
要するに、以上述べた第3の実施の形態では、ケーシング25内に開扉方向の動力を伝達する押圧部(扉押し付け棒42)と、押圧部を往復運動させて出退可能にする作動部(ウオーム36、ウオームギヤ38、作動板39、コイルばね40)と、作動部を動作させる駆動モーター26と動力伝達機構(歯車27,29,30,32、傘歯車33,35)からなる動力部とを有しており、開口部40より突出する扉押し付け棒42により玄関扉1を押し開くようになっているが、扉押し付け棒42の先端に押圧体としての扉押し付け具を設けて、この扉押し付け具で玄関扉1を押し開くようにしても良い。
【0027】
以上述べた3つの実施の形態の開動補助装置6,24は、戸先側における出入り口2の上枠5に取り付けられている(図16(A)参照)が、図16(B)に示すように戸先と吊りもととの間の中間位置における出入り口2の上枠5に取り付けられても良く、また図16(C)に示すように戸先側における縦枠の上端に取り付けられても良く、さらに図16(D)に示すように戸先側における縦枠の下端に取り付けられても良い。
【0028】
さらに、以上述べた3つの実施の形態では、ケーシングより突出する押圧部あるいは押圧体により玄関扉1を押し開くようになっているが、玄関扉1側に押圧体を一体的に設け、ケーシングに押圧体挿入部を形成し、ケーシング内の押圧部からの押圧体への押圧力により、玄関扉1を押し開くようにしても良い。そして、このケーシング内に挿入された押圧体に対して、ピンを差し込んでケーシングと結合させることにより施錠するようにしても良い。さらに、以上述べた3つの実施の形態は、建物の玄関扉1の開動補助装置であるが、玄関扉に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態における開動補助装置の斜視図である。
【図2】同開動補助装置の取り付け状態を示す概略側断面図である。
【図3】同開動補助装置の取り付け状態を示す概略正面図である。
【図4】同開動補助装置の平面図である。
【図5】同開動補助装置により玄関扉が押し開かれた状態を示す平面図である。
【図6】同玄関扉のラッチを解除しないままスイッチが押された状態を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における開動補助装置の斜視図である。
【図8】同開動補助装置の平面図である。
【図9】同開動補助装置により玄関扉が押し開かれた状態を示す平面図である。
【図10】同玄関扉のラッチを解除しないままスイッチが押された状態を示す平面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における開動補助装置の斜視図である。
【図12】同開動補助装置の平面図である。
【図13】同開動補助装置の断面図である。
【図14】同開動補助装置により玄関扉が押し開かれた状態を示す平面図である。
【図15】同玄関扉のラッチを解除しないままスイッチが押された状態を示す平面図である。
【図16】(A)〜(D)は3つの実施の形態における開動補助装置の取り付け例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 玄関扉
2 出入り口
3 縦枠
4 把手
5 上枠
6 開動補助装置
7 ケーシング
8 駆動モーター
8a 回転軸
9 歯車
10 軸
11 歯車
12 歯車
13 雄ねじ軸
14 歯車
15 軸受け
16 引っ張りばね
17,18 プレート
19 雌ねじ部材
20 連結棒
21 扉押し付け具
22 開口部
23 圧縮ばね
24 開動補助装置
25 ケーシング
26 駆動モーター
26a 回転軸
27 歯車
28 軸
29 歯車
30 歯車
31 軸
32 歯車
33 傘歯車
34 軸
35 傘歯車
36 ウオーム
37 軸
38 ウオームギヤ
39 作動板
40 コイルばね
41 開口部
42 扉押し付け棒
43 連結ピン
44 摺動体
44a 凹部
45 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口の扉を開扉する際に、開扉方向に開動補助する開動補助装置であって、ケーシング内に開扉方向の動力を伝達する押圧部と、押圧部を往復運動させて出退可能にする作動部と、作動部を動作させる駆動モーターと動力伝達機構からなる動力部とを有し、前記作動部は、前記駆動モーターの回転軸から動力伝達機構を介して繋がる雄ねじ軸と、この雄ねじ軸の長さ方向にスライド自在な2枚のプレートと、この2枚のプレート間に介在され両端が2枚のプレートに結合された緩衝用のばねとを備え、前記2枚のプレートの何れか一方のプレートには前記雄ねじ軸に螺合する雌ねじ部材が設けられて雄ねじ軸の回転により2枚のプレートおよびばねを一体的に雄ねじ軸の長さ方向に移動させるように構成され、前記2枚のプレートの何れか他方のプレートに固定された連結棒の他端側を前記押圧部としてケーシングの開口部に対して出退するように構成され、前記雄ねじ軸の回転により2枚のプレートおよびばねを一体的に移動させて前記連結棒の他端側の押圧部の押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする扉の開動補助装置。
【請求項2】
出入り口の扉を開扉する際に、開扉方向に開動補助する開動補助装置であって、ケーシング内に開扉方向の動力を伝達する押圧部と、押圧部を往復運動させて出退可能にする作動部と、作動部を動作させる駆動モーターと動力伝達機構からなる動力部とを有し、前記作動部は、前記駆動モーターの回転軸から動力伝達機構を介して繋がるウオームと、このウオームに噛合するウオームギヤと、このウオームギヤと同軸上でウオームギヤとは個別に回転自在に取り付けられた作動板と、ウオームギヤの回転を作動板に連動させるために一端がウオームギヤ側に係止されるとともに他端が作動板側に係止されたコイルばねと、ウオームギヤから伝達される作動板の回転によりケーシングの開口部に対して出退するように往復運動が可能な前記押圧部を備えてなり、前記押圧部の押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする扉の開動補助装置。
【請求項3】
押圧部に押圧体を一体的に設け、押圧体の押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の扉の開動補助装置。
【請求項4】
出入り口の扉を開扉する際に、開扉方向に開動補助する開動補助装置であって、ケーシング内に開扉方向の動力を伝達する押圧部と、押圧部を往復運動させる作動部と、作動部を動作させる駆動モーターと動力伝達機構からなる動力部とを有し、前記作動部は、前記駆動モーターの回転軸から動力伝達機構を介して繋がる雄ねじ軸と、この雄ねじ軸の長さ方向にスライド自在な2枚のプレートと、この2枚のプレート間に介在され両端が2枚のプレートに結合された緩衝用のばねとを備え、前記2枚のプレートの何れか一方のプレートには前記雄ねじ軸に螺合する雌ねじ部材が設けられて雄ねじ軸の回転により2枚のプレートおよびばねを一体的に雄ねじ軸の長さ方向に移動させるように構成され、前記2枚のプレートの何れか他方のプレートに固定された連結棒の他端側を前記押圧部とし、扉に押圧体を一体的に設け、ケーシングに押圧体挿入部を形成し、前記雄ねじ軸の回転により2枚のプレートおよびばねを一体的に移動させて前記押圧部からの押圧体への押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする扉の開動補助装置。
【請求項5】
出入り口の扉を開扉する際に、開扉方向に開動補助する開動補助装置であって、ケーシング内に開扉方向の動力を伝達する押圧部と、押圧部を往復運動させる作動部と、作動部を動作させる駆動モーターと動力伝達機構からなる動力部とを有し、前記作動部は、前記駆動モーターの回転軸から動力伝達機構を介して繋がるウオームと、このウオームに噛合するウオームギヤと、このウオームギヤと同軸上でウオームギヤとは個別に回転自在に取り付けられた作動板と、ウオームギヤの回転を作動板に連動させるために一端がウオームギヤ側に係止されるとともに他端が作動板側に係止されたコイルばねと、ウオームギヤから伝達される作動板の回転により往復運動が可能な前記押圧部を備えてなり、扉に押圧体を一体的に設け、ケーシングに押圧体挿入部を形成し、前記押圧部からの押圧体への押圧力により、扉を開く方向の力を補うべく応力伝達するようにしたことを特徴とする扉の開動補助装置。
【請求項6】
ケーシング内に挿入された押圧体に対して、ピンを差し込んでケーシングと結合させることにより施錠するように構成したことを特徴とする請求項4または5記載の扉の開動補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−291483(P2008−291483A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137311(P2007−137311)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【出願人】(592163893)ジョー・プリンス竹下株式会社 (32)
【Fターム(参考)】