説明

承認システム、承認装置、承認情報管理装置、及びこれらの動作方法

【課題】承認者が正当な権利を持つものかどうかと共に承認時の状況を確認することができる承認システムを提供する。
【解決手段】承認システムは、承認対象の承認を行う承認装置と、承認装置に通信可能に接続された承認情報管理装置とを有する。承認装置は、承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得する情報取得部と、承認者が正規の使用者かどうか認証する使用者認証部と、取得された場の情報を認証された承認者及び承認対象に関連付けた承認情報として、承認情報管理装置に送信する送信部とを有する。承認情報管理装置は、承認装置より送信されてくる承認情報を受信する受信部と、受信された承認情報を確認可能に保存する情報管理部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、承認システム、承認装置、承認情報管理装置、及びこれらの動作方法に係り、特に印鑑、サインペンなどの筆記用具、携帯電話機などに搭載して用いることが可能な承認ツールと、その承認ツールに通信可能に接続された承認情報管理装置と、これらの動作方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
郵便物の受け取り、地方自治体での手続き、企業間の取引など、日常生活ではたくさんの承認を行っている。しかし、これらの承認では、承認時の状況が承認を行った本人とその場に立ち会った人しか分からないという問題がある。このため、悪意を持つ者によるなりすましが発生したり、承認者が承認を行ったことを忘れてしまったりするなど、他の問題を生むきっかけとなりやすい。
【0003】
また、印鑑やサインによる承認、またはパソコンなどで行う電子承認では、いつ、誰が、どこで、どのような状況で承認を行ったか、という証拠が残らないため、承認プロセスが正しく行われたのか、現在誰の承認待ちで止まっているのか、何者かが成りすましを行っていないかどうか、ということがわからないという問題がある。
【0004】
これに関連する先行技術として、特許文献1は、承認履歴管理をする複数システムの承認履歴統合管理実現装置であって、複数システムより承認情報を取得し、複数システムのそれぞれに対応する変換定義を保持し、取得した承認情報を変換定義情報に基づき変換し、変換した情報を承認履歴情報として格納し保持するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−191863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、通常の承認では、承認者が承認したこと自体を忘れてしまっていたり、またパスワード認証や生体認証方式では、その認証が正しく行われてしまった場合に、なりすましを検知できなかったりするなどといった問題がある。
【0007】
また、複数の承認者による承認が必要な手続きにおいては、承認者のスケジュールによって承認に時間がかかってしまうことは頻繁に発生する問題である。特に承認対象が人から人の手に渡ったり、誰かが持ち歩いてしまったりする場合、承認状況がどのような状態なのかを知ることは困難であり、急を要するときに承認者を急かすなどの対応が取りにくい。
【0008】
また、特許文献1では、承認者が本当に正当な権利を持つものかどうか確認する手段が考慮されていない。
【0009】
本発明の目的は、上記のような課題を解決し、承認者が正当な権利を持つものかどうかと共に承認時の状況を確認することができる承認システム、承認装置、承認情報管理装置、及びこれらの動作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る承認システムは、承認装置と、前記承認装置に通信可能に接続された承認情報管理装置とを有し、前記承認装置は、承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得する情報取得部と、前記承認者が正規の使用者かどうか認証する使用者認証部と、取得された場の情報を認証された前記承認者及び前記承認対象に関連付けた承認情報として、前記承認情報管理装置に送信する送信部とを有し、前記承認情報管理装置は、前記承認装置より送信されてくる承認情報を受信する受信部と、受信された承認情報を確認可能に保存する情報管理部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る承認装置は、承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得する情報取得部と、前記承認者が正規の使用者かどうか認証する使用者認証部と、取得された場の情報を認証された前記承認者及び前記承認対象に関連付けた承認情報として、通信可能に接続された承認情報管理装置に送信する送信部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る承認情報管理装置は、上記に記載の承認装置より送信されてくる承認情報を受信する受信部と、受信された承認情報を確認可能に保存する情報管理部とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る承認システムの動作方法は、承認装置が、承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得し、前記承認者が正規の使用者かどうか認証し、取得された場の情報を認証された前記承認者及び前記承認対象に関連付けた承認情報として、前記承認装置に通信可能に接続された承認情報管理装置に送信し、前記承認情報管理装置が、前記承認装置より送信されてくる承認情報を受信し、受信された承認情報を確認可能に保存することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る承認装置の動作方法は、承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得し、前記承認者が正規の使用者かどうか認証し、取得された場の情報を認証された前記承認者及び前記承認対象に関連付けた承認情報として、通信可能に接続された承認情報管理装置に送信することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る承認情報管理装置の動作方法は、上記に記載の承認装置の動作方法により送信されてくる承認情報を受信し、受信された承認情報を確認可能に保存することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る印鑑は、上記に記載の承認装置を搭載したことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る筆記用具は、上記に記載の承認装置を搭載したことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る携帯電話機は、上記に記載の承認装置を搭載したことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る通信端末は、上記に記載の承認装置を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、承認者が正当な権利を持つものかどうかと共に承認時の状況を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る承認システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る承認システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図3】図2の承認システムを用いた承認プロセスを説明する図である。
【図4】図3の承認プロセスによりサーバ側のデータベースに保存されるテーブルの情報を説明する図である。
【図5】図2に示す印鑑側の動作を説明する概略フローチャートである。
【図6】図2の承認システムを用いた他の承認プロセスを説明する図である。
【図7】図2に示すサーバ側の動作を説明する概略フローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る承認システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る承認システムの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る承認システム、承認装置、承認情報管理装置、及びこれらの動作方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る承認システムの構成を示す。
【0024】
図1に示す承認システムは、契約書類などの承認対象の承認に使用する承認ツール(承認装置)100と、この承認ツール100と所定の通信網を介して接続されるサーバからなる承認情報管理装置(以下、「サーバ」)200とを有する。通信網は、有線回線及び無線回線のいずれでも適用可能である。
【0025】
承認ツール100には、押印可能な印鑑やサイン可能な筆記用具(サインペンなど)などの承認に使用されるツールで構成され、その承認に必要とされる機能(例えば、印鑑の場合は押印機能、ペンの場合は筆記機能)(非図示)のほか、本実施の形態では、機能上、情報取得部101と、情報機能(情報処理)部102と、情報通信部103と、これら各部101〜103の動作を制御する制御部104とが搭載される。これら機能上の各部101〜103は、一体の部品で構成してもよく、機能別に個別の部品で構成してもよく、それぞれの機能を実現可能なものであれば、その物理的構成はいずれでも適用可能である。
【0026】
情報取得部101は、制御部104による制御のもとで、承認時に承認者やその場にいる関係者、承認場所、承認時刻、承認対象、承認方法などの情報(以下、「場の情報」と呼ぶ。)を取得する。
【0027】
情報機能部102は、制御部104による制御のもとで、承認者が正規の使用者かどうかを認証する使用者認証部を有する。
【0028】
情報通信部103は、制御部104による制御のもとで、取得された「場の情報」を認証された承認者及び承認対象に関連付けた承認情報として通信回線を介してサーバ200に送信する。
【0029】
サーバ200は、例えばPC(Personal Computer)サーバや専用サーバなどのネットワーク上のサーバとして機能するコンピュータ機で構成され、機能上、情報通信部201と、情報管理部202と、これら各部201、202の動作を制御する制御部203とを有する。これら機能上の各部202〜203は、それぞれの機能を実現可能なものであれば、その物理的構成はいずれのものでも適用可能である。
【0030】
情報通信部201は、通信回線に接続される通信インターフェースを有し、制御部203による制御のもとで、承認ツール100から送られてくる承認情報を通信回線を介して受信する。
【0031】
情報管理部202は、データベースを有し、制御部203による制御のもとで、受信された承認情報をそのデータベースに保存及び管理する。これにより、承認後にその承認状況をデータベースの承認情報から確認可能となっている。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、承認行為を行う際に、承認に使用する承認ツール100によりその場の周囲の状況、例えば承認者、承認時間、承認場所、関係者、承認対象、承認方法などに関する「場の情報」を取得し、承認情報管理装置200によりその場の情報を保存及び管理することにより、承認後にその承認状況を確認することが可能となっている。これによって、承認時の状況確認やなりすましの有無、証拠としての使用といった活用が行える。
【0033】
すなわち、印鑑やサインによる承認、またはパソコンなどで行う電子承認では、いつ、誰が、どこで、どのような状況で承認を行ったか、という証拠が残らないため、承認プロセスが正しく行われたのか、現在誰の承認待ちで止まっているのか、何者かが成りすましを行っていないかどうか、ということがわからないという問題があるが、本実施の形態では、このような承認時に、その周囲の情報も記録することで、承認時の状況を管理し、検索、確認することができる。
【0034】
したがって、本実施の形態によれば、承認時に承認者やその場にいる関係者、場所、時刻の情報といった場の情報を採取し、承認時の周囲の情報を記録し、活用することで、承認プロセスの確認や証拠としての活用、なりすましの防止などを行うことができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0036】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る承認システムの構成を示す。本実施の形態は、承認装置(承認ツール)として印鑑を使用し、印鑑による承認を行う場合に適用したものである。
【0037】
具体的に、図2に示す承認システムは、押印対象(承認対象)300の承認を押印で行う印鑑(承認ツール)110と、この印鑑110と所定の通信網を介して接続されるサーバからなる承認情報(押印情報)管理装置(以下、「サーバ」)210とを有する。通信網は、有線回線及び無線回線のいずれでも適用可能である。
【0038】
印鑑110は、押印機能(非図示)のほか、本実施の形態では、ICリーダ・ライタ部111、使用者認証部112、画像取得部113、時刻取得部114、位置取得部115、無線通信部116、及び押印検知部117と、これら各部111〜116の動作を制御する制御部118とを有する。
【0039】
ICリーダ・ライタ部111は、制御部118による制御のもとで、承認時に押印対象300に取り付けたIC(Integrated Circuit)タグ301に書き込まれた情報を読み取る。
【0040】
使用者認証部112は、制御部118による制御のもとで、承認時に承認者が正規の使用者かどうかを認証する。
【0041】
画像取得部113は、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子を用いたカメラによる撮像機能を有し、制御部118による制御のもとで、承認者(押印者)やその場にいる関係者などの顔写真を取得する。
【0042】
時刻取得部114は、時計を有し、制御部118による制御のもとで、承認時刻(押印時刻)を取得する。
【0043】
位置取得部115は、GPS(Global Positioning System)機能を有し、制御部118による制御のもとで、承認場所(押印場所)の位置を取得する。
【0044】
無線通信部116は、無線通信アンテナを有する無線回路を備え、制御部118による制御のもとで、各部111〜115により取得された承認(押印)時の承認者(押印者)やその場にいる関係者、承認場所(押印場所)、承認時刻(押印時刻)、承認対象(押印対象)などの情報(以下、「場の情報」と呼ぶ。)を、認証された承認者及び承認対象300と関連付けた承認情報として、通信回線を介してサーバ210に送信する。
【0045】
押印検知部117は、制御部118による制御のもとで、押印機能による押印を検知する。
【0046】
サーバ210は、例えばPCサーバや専用サーバなどのネットワーク上のサーバとして機能するコンピュータ機で構成され、機能上、無線通信部211と、情報管理部のデータベース212と、これら各部211、212の動作を制御する制御部213とを有する。これら機能上の各部212〜213は、それぞれの機能を実現可能なものであれば、その物理的構成はいずれのものでも適用可能である。
【0047】
無線通信部211は、無線通信アンテナを有する無線回路を備え、制御部213による制御のもとで、印鑑110から送られてくる承認情報を無線通信アンテナを介して受信する。
【0048】
データベース212は、制御部213による制御のもとで、受信された承認情報を保存及び管理する。これにより、承認後にその承認状況をそのデータベース212の承認情報から確認可能となっている。
【0049】
次に、本実施の形態の全体動作について説明する。
【0050】
印鑑110を用いて押印対象300に押印を行うときには、各部111〜115により取得された押印時の周囲の情報、すなわち押印対象300に貼られたICタグ301のID(識別情報)、押印者のID、押印者および関係者の顔写真、押印時刻、押印場所などの場の情報も記録し、承認情報として、無線通信部116によりサーバ210に送信し、そのデータベース212に保存する。記録された押印時の情報は、データベース212に保存された承認情報から参照することができ、これにより、押印対象300が正しいプロセスで処理されたか、承認プロセスのどこで止まっているかを確認することができる。
【0051】
次に、図3及び図4を参照して、本実施の形態による承認プロセスを説明する。
【0052】
図3の例は、ある承認プロセスにおいて、複数人の承認者が順番に承認を行っていくという例である。各承認者(押印者)A、B、C、Dは、それぞれサーバ210の異なる印鑑110を使っており(印鑑A、印鑑B、印鑑C、印鑑D)、A、B、C、Dの順番で承認を行う。
【0053】
この印鑑110には、前述した押印検知部112、使用者認証部117、ICリーダ・ライタ部111、無線通信部116、位置取得部(GPS機能)115、時刻取得部114、画像取得部(カメラ)113が付いており、押印のたびにいつ、どこで、誰が承認を行ったか、という「場の情報」がサーバ210に送信されていく。図3の例では、承認者Aは承認済み、承認者Bは承認中、承認者C、Dは未承認の状態を示している。このときのサーバ210側のデータベース212のテーブルを図4に示す。
【0054】
図4に示すデータベース212には、押印対象300である契約書類1に取り付けたICタグ301のタグIDに関連付けた承認情報として、押印者(承認者)、座標(押印場所の位置情報)、画像(画像ファイル)、押印時刻がそれぞれ格納されている。図3の例では、押印者A、Bに関する承認情報がそれぞれ格納されている。この時点で、承認者C、Dに関する承認情報は格納されていない。
【0055】
図5を参照して、印鑑110による動作について説明する。図5に示すフローチャートに対応する制御プログラムは、例えば制御部118内のメモリ(非図示)に格納され、制御部118内のプロセッサ(CPU)により実行される。
【0056】
最初に、押印機能による押印の開始(ステップSt1)に際し、印鑑110が押印対象300に押し付けられると、押印検知部117が押印を検知し(ステップSt2:YES)、動作を開始する。具体的には、まず初めに印鑑110の使用者認証部112を使って使用者IDを取得し、正規の使用者が使用しているかどうかを認証する(ステップSt3)。
【0057】
次に、位置取得部115のGPS機能を利用して現在の印鑑110の位置を取得する(ステップSt4)。そして、印鑑110の内部にあるICリーダ・ライタ部111を使用して、契約書類1のID001を取得する(ステップSt5:YES、St6)。そして、画像取得部113のカメラと時刻取得部114の時計を使用して、使用者(承認者)及びその場にいる参加者(関係者)の画像と時刻をそれぞれ取得する(ステップSt7、St8)。
【0058】
次に、認証された使用者ID、取得された印鑑110の位置、契約書類1のID001、押印者及びその場にいる関係者の画像、押印時刻の各情報に対して互いに関連付けを行い(ステップSt9)、関連付けを行った場の情報を含む各情報を承認情報として、無線通信部116を介して、サーバ210へ送信する(ステップSt10:YES、St11)。これにより、印鑑110側で取得された場の情報を含む承認情報がサーバ210側のデータベース212に保存される。図3では、承認者Aの承認が終わり、承認者Bが承認を行ったところである。
【0059】
ここで、押印対象300が承認プロセスのどこで止まっているかを確認するプロセスを説明する。
【0060】
押印対象300に貼られているICタグ301のIDがあらかじめ分かっているとする。このIDをキーとして、サーバ210上のデータベース212に問い合わせを行うと、現在までに行われた承認情報が検索できる。この承認情報で承認者を参照し、情報があればその承認者による承認は行われたと判断できる。承認者がなければ、その承認者による承認は行われていない。図3の例の場合は、ID001で検索を行うと、承認者AおよびBによる承認が終了したことが分かるので、Cの承認で止まっていることが分かる。
【0061】
次に、図6、図7を参照して、画像取得部113のカメラを使用してなりすましを検知する場合の例について説明する。
【0062】
図6の例では、A社の代表者ARとB社の代表者BRが押印対象300である契約書類1を用いて契約を行う。代表者ARと代表者BRは、それぞれ押印情報管理装置であるサーバ210を使い、承認に使用する印鑑110を持つ。印鑑110は、前述したように、位置取得部(GPS機能)115、ICタグ301のICリーダ・ライタ部111、使用者認証部113、画像取得部(カメラ)113、時刻取得部(時計)114、押印検知部117を持つ。サーバ210は、印鑑110により採取した場の情報を格納する。押印対象300の契約書類1にはICタグ301をなすICチップが付いており、ユニークなIDであるID100が割り当てられている。
【0063】
ここで、図7を参照して、代表者ARおよび代表者BRが押印対象300の契約書類1に押印した場合の、なりすましを確認するための確認プロセスを説明する。図7に示すフローチャートに対応する制御プログラムは、例えばサーバ210側の制御部213内のメモリ(非図示)に格納され、制御部213内のプロセッサ(CPU)により実行される。
【0064】
最初に、A社の代表者ARがB社との取引を確認するため、B社に押印時のデータの参照を要求する(ステップSt21)。このとき、もしデータが存在しなければ(ステップSt22:NO)、B社との取引が行われておらず、B社とは関係のない者によるなりすましであるとわかる(ステップSt26)。データが存在する場合は(ステップSt22:YES)、使用者IDの値と、画像を確認し、使用者IDが適切かどうか、使用者の外見は正しいかどうか判断する(ステップSt23、St24)。
【0065】
その結果、使用者IDが適任者でない場合は(ステップSt23:NO)、不正に印鑑を入手したものによるなりすましであることが分かる(ステップSt26)。また、使用者IDが適任者のものであっても(ステップSt23:YES)、画像に写っている使用者の外見が正しくなくその姿が適任者と異なれば(ステップSt24:NO)、不正に使用者IDを使った者によるなりすましであることが分かる(ステップSt26)。
【0066】
以上、押印時のデータが存在し(ステップSt22:YES)、使用者IDが適任者であり(ステップSt23:YES)、画像に写っている使用者の外見が正しくその姿が適任者と一致すれば(ステップSt24:YES)、なりすましがないことが分かる(ステップSt25)。
【0067】
したがって、本実施の形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0068】
(1)承認プロセスを管理・検索することができる。
【0069】
(2)承認対象がその時間にその場所にあった、という情報を自動で作成することができ、検索ができる。
【0070】
(3)承認を行った対象の一覧を作成・管理することができる。また、承認時に採取した周囲の情報に応じて、自動で付随データを登録することができる。
【0071】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0072】
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る承認システムの構成を示す。本実施の形態は、承認装置(承認ツール)としてサインペンを使用し、サインペンによる承認を行う場合に適用したものである。
【0073】
具体的に、図8に示す承認システムは、承認対象300の承認をサインで行う筆記用具であるサインペン(承認ツール)120と、このサインペン120と所定の通信網を介して接続されるサーバからなる承認情報管理装置(以下、「サーバ」)220とを有する。通信網は、有線回線及び無線回線のいずれでも適用可能である。
【0074】
サインペン120は、筆記機能(非図示)のほか、本実施の形態では、機能上、使用者認証部121、画像取得部122、時刻取得部123、位置取得部124、及び無線通信部125と、これら各部121〜125の動作を制御する制御部126とを有する。
【0075】
使用者認証部121は、制御部126による制御のもとで、承認時に承認者が正規の使用者かどうかを認証する。
【0076】
画像取得部122は、例えばCCDやCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子を用いたカメラによる撮像機能を有し、制御部126による制御のもとで、承認者やその場にいる関係者などの顔写真を取得する。
【0077】
時刻取得部123は、時計を有し、制御部126による制御のもとで、承認時刻を取得する。
【0078】
位置取得部124は、GPS機能を有し、制御部126による制御のもとで、承認場所の位置を取得する。
【0079】
無線通信部125は、無線通信アンテナを有する無線回路を備え、制御部126による制御のもとで、各部121〜124により取得された承認時の承認者やその場にいる関係者、承認場所、承認時刻、承認対象などの情報(以下、「場の情報」と呼ぶ。)を、認証された承認者及び承認対象300と関連付けた承認情報として、通信回線を介してサーバ220に送信する。
【0080】
サーバ220は、例えばPCサーバや専用サーバなどのネットワーク上のサーバとして機能するコンピュータ機で構成され、機能上、無線通信部221と、情報管理部のデータベース222と、これら各部221、222の動作を制御する制御部223とを有する。これら機能上の各部222〜223は、それぞれの機能を実現可能なものであれば、その物理的構成はいずれのものでも適用可能である。
【0081】
無線通信部221は、無線通信アンテナを有する無線回路を備え、制御部223による制御のもとで、サインペン120から送られてくる承認情報を無線通信アンテナを介して受信する。
【0082】
データベース222は、受信された承認情報を保存及び管理する。これにより、承認後にその承認状況を確認可能となっている。
【0083】
次に、本実施の形態の全体動作について説明する。
【0084】
サインペン120を用いて承認対象300に承認を行うときには、各部121〜124により取得された承認時の周囲の情報、すなわち承認者のID、承認者および関係者の顔写真、承認時刻、承認場所などの情報も記録し、無線通信部125によりサーバ220に送信し、そのデータベース222に保存する。記録された承認時の情報は、データベース222に保存されている承認情報から参照することができ、承認対象300が正しいプロセスで処理されたか、承認プロセスのどこで止まっているかを確認することができる。
【0085】
上記のように、本実施の形態では、サインペン120は、画像取得部(カメラ)122、時刻取得部(時計)123、位置取得部(GPS)124、無線通信部125、使用者認証部を有し、サインペン120を使用したときにその使用者および周囲の状況を記録するようになっている。このため、第1、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
また、欧米などでは日本での印鑑に代わりサインを承認印として使用する文化があり、このサインについても印鑑と同様にまねされて悪用されてしまうという問題を抱えているが、本実施の形態では、こういった問題に対して特に有効である。
【0087】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0088】
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る承認システムの構成を示す。本実施の形態は、承認装置(承認ツール)として携帯電話機を使用し、携帯電話機による承認を行う場合に適用したものである。
【0089】
具体的に、図9に示す承認システムは、承認対象300への承認を行うで携帯電話機(承認ツール)130と、この携帯電話機130と所定の通信網を介して接続されるサーバからなる承認情報管理装置(以下、「サーバ」)230とを有する。通信網は、有線回線及び無線回線のいずれでも適用可能である。
【0090】
携帯電話機130は、本来の通話機能、メール機能、インターネット接続機能などのほか、ICリーダ・ライタ部131、使用者認証部132、認証作業部133、画像取得部134、時刻取得部135、位置取得部136、無線通信部137、これら各部131〜136の動作を制御する制御部138とを有する。
【0091】
ICリーダ・ライタ部111は、制御部118による制御のもとで、承認時に承認対象300に取り付けたICタグ301に書き込まれた情報を読み取る。
【0092】
使用者認証部132及び認証作業部133は、制御部138による制御のもとで、インターネット上での承認時に承認者が正規の使用者かどうかを認証する。
【0093】
画像取得部134は、例えばCCDやCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子を用いたカメラによる撮像機能を有し、制御部138による制御のもとで、承認者やその場にいる関係者などの顔写真を取得する。
【0094】
時刻取得部135は、時計を有し、制御部138による制御のもとで、承認時刻を取得する。
【0095】
位置取得部136は、GPS機能を有し、制御部138による制御のもとで、承認場所の位置を取得する。なお、GPS機能以外に、例えば基地局の位置を利用して携帯電話機130の位置を特定可能な位置特定機能を有している場合には、その機能を用いてもよい。
【0096】
無線通信部137は、無線通信アンテナを有する無線回路を備え、制御部138による制御のもとで、各部131〜136により取得された承認時の承認者やその場にいる関係者、承認場所、承認時刻、承認対象などの情報(以下、「場の情報」と呼ぶ。)を、認証された承認者及び承認対象300と関連付けた承認情報として、通信回線を介してサーバ230に送信する。
【0097】
サーバ230は、例えばPCサーバや専用サーバなどのネットワーク上のサーバとして機能するコンピュータ機で構成され、機能上、無線通信部231と、情報管理部のデータベース232と、これら各部231、232の動作を制御する制御部233とを有する。これら機能上の各部232〜233は、それぞれの機能を実現可能なものであれば、その物理的構成はいずれのものでも適用可能である。
【0098】
無線通信部231は、無線通信アンテナを有する無線回路を備え、制御部233による制御のもとで、携帯電話機130から送られてくる承認情報を無線通信アンテナを介して受信する。
【0099】
データベース232は、制御部233による制御のもとで、受信された承認情報を保存及び管理する。これにより、承認後にその承認状況をデータベース232に保存されている承認情報から確認可能となっている。
【0100】
次に、本実施の形態の全体動作について説明する。
【0101】
携帯電話機130を用いて承認対象300の承認押印を行うときには、各部131〜136により取得された承認時の周囲の情報、すなわち押印対象300に貼られたICタグ301のID、承認者のID、承認者および関係者の顔写真、承認時刻、承認場所などの情報も記録し、無線通信部137によりサーバ230に送信し、そのデータベース212に保存する。記録された承認時の情報は、データベース212に保存されている承認情報から参照することができ、承認対象300が正しいプロセスで処理されたか、承認プロセスのどこで止まっているかを確認することができる。
【0102】
したがって、本実施の形態では、昨今の携帯電話機130にはさまざまな機能が付いており、ICタグの読み取りや使用者認証、GPS座標の取得といった機能が利用することができ、また情報の送信も行うことができる。そのため、普通の印鑑140やペン150と組み合わせて使用したり、インターネット上で承認を行ったりする際に、周囲の情報を取得することができる。このため、第1、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0103】
なお、本実施の形態では、承認ツールとして携帯電話機を用いた場合を説明しているが、本発明はこれに限らず、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末を含む通信端末でも適用可能である。
【0104】
また、上記各実施の形態に係る承認システムを構成する承認ツール(承認装置)及び承認情報管理装置は、そのハードウェア及びソフトウェア構成は特に限定されるものではなく、上述した各部の機能を実現可能なものであれば、いずれのものでも適用可能である。例えば、各部の機能毎に回路を独立させて構成したものでも、複数の機能を1つの回路にまとめて一体に構成したものでも、いずれのものであってもよい。或いは、全ての機能を主にソフトウェアの処理で実現するものでもあってもよい。
【0105】
また、上記の承認ツール及び承認情報管理装置の各部の少なくとも一部の機能を、プログラムコードを用いて実現する場合、かかるプログラムコード及びこれを記録する記録媒体は、本発明の範疇に含まれる。この場合、オペレーティングシステム等の他のソフトウェアと協働して上記機能が実現される場合は、それらのプログラムコードも含まれる。
【0106】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、承認、取引、契約などの作業全般で用いる承認システム、承認装置(承認ツール)、承認情報管理装置、及びこれらの動作方法などの用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
100 承認ツール
101 情報取得部
102 情報機能部
103 情報通信部
104 制御部
110 印鑑
111 ICリーダ・ライタ部
112 使用者認証部
113 画像取得部
114 時刻取得部
115 位置取得部
116 無線通信部
117 押印検知部
120 サインペン
121 画像取得部
122 使用者認証部
123 時刻取得部
124 一種都区部
125 無線通信部
126 制御部
130 携帯電話機
131 ICリーダ・ライタ部
132 使用者認証部
133 承認作業部
134 画像取得部
135 時刻取得部
136 位置取得部
137 無線通信部部
138 制御部
200、210、220、230 承認情報管理装置(サーバ)
201 情報通信部
202 情報管理部
203、213、223、233 制御部
211、221、231 無線通信部
212、222、232 データベース
300 承認対象
301 ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
承認装置と、
前記承認装置に通信可能に接続された承認情報管理装置とを有し、
前記承認装置は、
承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得する情報取得部と、
前記承認者が正規の使用者かどうかを認証する使用者認証部と、
取得された場の情報を認証された前記承認者及び前記承認対象に関連付けた承認情報として、前記承認情報管理装置に送信する送信部とを有し、
前記承認情報管理装置は、
前記承認装置より送信されてくる承認情報を受信する受信部と、
受信された承認情報を確認可能に保存する情報管理部とを有することを特徴とする承認システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、
前記承認者及び関係者の画像を取得する画像取得部と、
前記承認場所の位置を取得する位置取得部と、
前記承認時刻を取得する時刻取得部とを有することを特徴とする請求項1に記載の承認システム。
【請求項3】
前記承認対象には、その承認対象を識別可能な識別情報を含む情報を格納するICタグが貼り付けられ、
前記承認装置は、前記ICタグの情報を読み取るICリーダ・ライタ部をさらに有し、
前記送信部は、読み取った前記ICタグの情報と前記情報取得部により取得された場の情報とを互いに関連付けて前記承認情報管理装置に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の承認システム。
【請求項4】
前記承認装置は、印鑑に搭載されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の承認システム。
【請求項5】
前記承認装置は、筆記用具に搭載されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の承認システム。
【請求項6】
前記承認装置は、通信端末に搭載されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の承認システム。
【請求項7】
前記通信端末は、携帯電話機であることを特徴とする請求項6に記載の承認システム。
【請求項8】
承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得する情報取得部と、
前記承認者が正規の使用者かどうか認証する使用者認証部と、
取得された場の情報を認証された前記承認者及び前記承認対象に関連付けた承認情報として、通信可能に接続された承認情報管理装置に送信する送信部とを有することを特徴とする承認装置。
【請求項9】
請求項8に記載の承認装置より送信されてくる承認情報を受信する受信部と、
受信された承認情報を確認可能に保存する情報管理部とを有することを特徴とする承認情報管理装置。
【請求項10】
承認装置が、
承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得し、
前記承認者が正規の使用者かどうか認証し、
取得された場の情報を認証された前記承認者及び前記承認対象に関連付けた承認情報として、前記承認装置に通信可能に接続された承認情報管理装置に送信し、
前記承認情報管理装置が、
前記承認装置より送信されてくる承認情報を受信し、
受信された承認情報を確認可能に保存することを特徴とする承認システムの動作方法。
【請求項11】
承認対象の承認時に承認者及びその場にいる関係者の画像、承認場所、承認時刻の情報を含む場の情報を取得し、
前記承認者が正規の使用者かどうか認証し、
取得された場の情報を認証された前記承認者及び前記承認対象に関連付けた承認情報として、通信可能に接続された承認情報管理装置に送信することを特徴とする承認装置の動作方法。
【請求項12】
請求項11に記載の承認装置の動作方法により送信されてくる承認情報を受信し、
受信された承認情報を確認可能に保存することを特徴とする承認情報管理装置の動作方法。
【請求項13】
請求項8に記載の承認装置を搭載したことを特徴とする印鑑。
【請求項14】
請求項8に記載の承認装置を搭載したことを特徴とする筆記用具。
【請求項15】
請求項8に記載の承認装置を搭載したことを特徴とすることを特徴とする携帯電話機。
【請求項16】
請求項8に記載の承認装置を搭載したことを特徴とする通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−226621(P2010−226621A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73863(P2009−73863)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】