投影光学系、露光装置及びデバイス製造方法
【課題】 投影光学系のフォーカス位置を調整し、基板の平坦度の影響を低減して原版のパターンを基板上に投影する投影光学系を提供する事を目的とする。
【解決手段】 本発明の投影光学系は、原版のパターンの像を基板上に投影する投影光学系であって、投影光学系は、複数の光学透過素子を備えており、複数の光学透過素子の表面形状は、連続的であって、互いに異なる周期を有し、複数の光学透過素子の少なくとも1つを周期方向にシフトさせることでフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【解決手段】 本発明の投影光学系は、原版のパターンの像を基板上に投影する投影光学系であって、投影光学系は、複数の光学透過素子を備えており、複数の光学透過素子の表面形状は、連続的であって、互いに異なる周期を有し、複数の光学透過素子の少なくとも1つを周期方向にシフトさせることでフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカス位置調整を行うことができる投影光学系、それを用いた露光装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置は、半導体デバイスや液晶表示デバイス等の製造工程であるリソグラフィ工程において、原版(レチクルやマスク等)のパターンを、投影光学系を介して感光性の基板(表面にレジスト層が形成されたウエハやガラスプレート等)に転写する装置である。
【0003】
例えば、液晶表示デバイスを製造する露光装置では、パターンが形成されたマスクの面積が大型化しており、より大きな面積のパターンをガラスプレート上に露光する露光装置が求められている。
【0004】
大きな画面を露光することができる露光装置として、特許文献1に示されているような円弧状の照明領域をスキャンさせることで露光を行うステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置がある。特許文献1に示されているような投影光学系は、ミラーにより構成しているので、色収差が発生しない。
【0005】
また、一方で微細な露光を行うためにはレーリーの式で表される解像力の値を小さくすれば良い。解像力の値を小さくするには、露光装置の投影光学系のNAを大きくすればよいことが知られている。
【0006】
しかし、投影光学系のNAを大きくした場合、解像力の値は小さくなるが、露光装置の焦点深度(DOF:Depth Of Focus)の値もまた小さくなることが知られている。
【0007】
焦点深度DOFが小さくなると、露光装置のステージや基板の平坦度、レジスト塗布分布の均一度、光学系の像面湾曲など、精度の要求が厳しくなる。このような各要素の精度向上は頭打ちになっており、大幅な改善は難しくなりつつある。
【0008】
そこで、露光装置のステージや基板の平坦度が悪いときには、基板上の露光場所ごとに基板上の露光面の表面形状(平坦度)にあわせて投影光学系のフォーカス位置を変化させてこれを補正する試みがなされている。特許文献2に記載の露光装置は、投影光学系に配置された2枚のクサビ型光学部材をシフトさせることにより、投影光学系のフォーカス位置を調整している。特許文献2の露光装置は、複数の投影光学系を繋いで露光領域を作成しているため、各投影光学系に配置されたクサビ型光学部材をシフトさせることにより、露光場所ごとにフォーカス位置を変えることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭60−39205号公報
【特許文献2】特開2004−093953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2に記載の露光装置は、複数の投影光学系を繋いで露光領域を作成しているため、繋ぎ合わせの部位では異なる投影光学系の露光量のわずかな違いから露光ムラが生じる恐れがある。この露光ムラは、スキャン動作による筋ムラとなり、繋ぎ合わせの部位で原版に形成されたパターンを基板上に露光できない恐れがある。
【0011】
一方で、特許文献1に示すような繋ぎ合わせがない一括露光による投影光学系では、繋ぎ合わせの部位は無いため照度ムラは生じにくい。しかし、一つの投影光学系を用いて露光する露光装置の場合、特許文献2に示されているクサビ型光学部材を用いたフォーカス位置調整では照明領域内のフォーカス位置を補正することは難しい。
【0012】
そこで本発明は投影光学系のフォーカス位置を調整し、基板の平坦度の影響を低減して原版のパターンを基板上に投影する投影光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の投影光学系は、原版のパターンの像を基板上に投影する投影光学系であって、投影光学系は、複数の光学透過素子を備えており、複数の光学透過素子の表面形状は、連続的であって、互いに異なる周期を有し、複数の光学透過素子の少なくとも1つを周期方向にシフトさせることでフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
投影光学系のフォーカス位置を調整することで、基板の平坦度の影響を低減して原版のパターンを基板上に投影可能な投影露光装置を提供する事ができる。本発明の効果は、発明を実施するための形態を通じて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態の露光装置
【図2】マスク上での照明領域を示す図
【図3】プレート面の形状と投影光学系の像面
【図4】第1実施形態のフォーカス補正機構を示す図
【図5】第1実施形態のフォーカス補正のフローを示す図
【図6】プレートの平坦度を示すグラフ
【図7】プレートの平坦度とフォーカス補正の結果を示すグラフ
【図8】第2実施形態の露光装置
【図9】第2実施形態のフォーカス補正機構を示す図
【図10】フォーカス補正誤差を示す図
【図11】回折光束径とフォーカス位置の誤差を示す図
【図12】第3実施形態の露光装置
【図13】第3実施形態のフォーカス補正機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態の露光装置を示す概略図である。露光装置はパターンが形成された原版としてのマスク2を照明する照明光学系1と、基板としてのプレート7にパターンを投影する投影光学系を含む。照明光学系1はコンデンサレンズやコリメータレンズなどを有し、光源からの光でマスク2を均一に照明する。
【0018】
照明光学系1により、マスク2を均一に照明した光は、マスク2上に形成されたパターンにより、回折光として投影光学系に入射する。回折光は投影光学系に配置された折り曲げミラー3、凹面ミラー4、凸面ミラー5、再び凹面ミラー4および折り曲げミラー6で反射され、フォーカス調整機構80を通過し、フォトレジストが塗布されたプレート7の面上に結像する。フォーカス調整機構80はプレート7の近傍に配置されている。軸9はマスク2を照明する照明領域の中心を通る軸を表し、軸8は軸9に平行である。
【0019】
図2はマスク2を上部から見たときの露光装置の座標系とマスク2を照明する照明領域を表している。照明領域は、円弧の曲率R、露光幅L、およびスリット幅Wで規定される円弧形状をしている。尚、スリット幅方向の円弧の曲率はすべて一律でRとし、その曲率の中心を軸8とする。図のように、照明領域の中心(露光幅方向中心、スリット幅方向中心)でX、Y軸が交わるように座標系をとる。以上のようにとった座標系のZ軸は、円弧形状の照明領域中心を通り軸9と一致する。
【0020】
プレート7の露光は図2中に示すY軸方向に円弧形状の照明領域をスキャン(移動)することにより行う。スキャンは、マスク2を保持する不図示のマスクステージがY軸方向に駆動することによって行われる。マスク2をY軸に沿って相対移動させるとき、マスク2とプレート7をY軸に沿って相対移動させることにより、マスク2のパターンをプレート7に露光できる。
【0021】
図3は投影光学系において、マスク2の異なる位置から出た回折光20および21が、プレート7付近の投影光学系の像面P上に結像する様子を表している。投影光学系は、最適化設計により露光幅方向に長さLの範囲で、像面湾曲が数μm以下に抑えられているので、回折光20、21は投影光学系の像面Pでほぼ平坦な面上(図3の二点鎖線上が投影光学系の像面Pを示す)に結像する。
【0022】
しかし、実際のプレート7は図3のように、投影光学系の像面Pが作り出す平面よりも大きな数十μm程度の凹凸が製造誤差により生じている。そのため、場所によってはデフォーカスされた位置でプレート7は露光される。デフォーカスにより像のコントラストは落ちる。焦点深度DOFが小さい時に、デフォーカスされた位置でも焦点深度内に収めて露光するためには、露光装置のステージの平坦度、レジスト膜厚分布の均一度、光学系の像面湾曲など、精度の要求が厳しくなる。
【0023】
そこで、本発明の第1の実施形態では図1のようにフォーカス位置調整機構80を搭載している。図1を用いて本発明の第1実施形態の投影光学系を説明する。
【0024】
図1の投影光学系にはフォーカス調整機構80を備えており、4枚の光学透過素子81、82、83、84を備えている。フォーカス調整機構80は、プレート7の近傍に位置している。
【0025】
さらに、図1の露光装置にはプレート7の平坦度を測定するための計測光学系85、86を備えている。また、投影光学系の非点収差、倍率、歪曲などの収差を補正するための収差補正機構87を備えている。例えば、収差補正機構87は光学透過素子を曲げて変形させることにより収差を補正することができる機構である。
【0026】
また、フォーカス位置の計測を行うフォーカス計測光学系88を備えている。プレート7を保持するステージ89をZ軸方向に駆動させプレート7を通過した光の強度を計測し、フォーカスを計測する。例えば、フォーカス計測光学系88はマスク2の面上のピンホールから出た光が、プレート7の面上に設けられたピンホールを通過した光の強度を計測することができる機構である。ステージ89をZ軸方向に駆動させ、その都度、強度をサンプリングすることにより、強度が最大になったZ位置がベストフォーカス位置となる。
【0027】
図4は図1のフォーカス調整機構80付近を拡大した図である。光学透過素子81、82、83、84はそれぞれの片面に照明領域の露光幅方向に凹凸形状を有しており、その形状は周期性をもつ連続的な表面形状をしている。この連続的な表面形状の周期方向はX軸方向に形成されている。
【0028】
また、光学透過素子81、82、83、84は互いに異なる周期の表面形状をしている。本実施形態の光学透過素子81、82、83、84は第一面が平面であり、第二面はX軸方向(照明領域の露光幅方向)に周期性をもつ連続的な表面形状をしている。ここで、第一面とは投影光学系の光路においてマスク2側に近い方の面を示し、第二面とは投影光学系の光路においてプレート7側に近い方の面を示している。互いに異なる周期の方向は同一方向である。
【0029】
光学透過素子81、82、83、84の周期性をもつ連続的な表面形状は第一面でも第二面でも、どちらでもよい。図4では、分かりやすいように光学透過素子の表面形状は、誇張表現している。実際には、光学透過素子81、82、83、84の表面形状の振幅は数μm程度である。
【0030】
光学透過素子81の第一面は平面で、第二面はZ=A81cos(x/2)+Z31で表される周期的な表面形状を持つ。光学透過素子82の第一面は平面で、第二面はZ=A82cos(x)+Z32で表される周期的な表面形状を持つ。光学透過素子83の第一面は平面で、第二面はZ=A83cos(3x/2)+Z33で表される周期的な表面形状を持つ。光学透過素子84の第一面は平面で、第二面はZ=A84cos(2x)+Z34で表される周期的な表面形状を持つ。
【0031】
いま、光学透過素子81、82、83、84をX軸方向にそれぞれα81、α82、α83、α84だけ平行移動させたとする。
【0032】
その時、有効領域内(ここでは露光幅Lとする)における光学透過素子81、82、83、84の第二面の面形状はそれぞれ、次のように表現することができる。光学透過素子81はZ=A81cos((x−α81)/2)+Z31。光学透過素子82はZ=A82cos(x−α82)+Z32。光学透過素子83はZ=A83cos(3(x−α83)/2)+Z33。光学透過素子84はZ=A84cos(2(x−α84))+Z34。
【0033】
図4では例として、X軸と軸9との交点をX軸の原点とすると、α81<0、α82<0、α83<0、α84>0となっている。また、光学透過素子81、82、83、84の屈折率の大きさをn81、n82、n83、n84とし、投影光学系の像面PのZ座標をZ7とする。A81、A82、A83、A84はそれぞれ、光学透過素子81、82、83、84に有する周期的な表面形状の振幅を示す。
【0034】
マスク2の異なる位置から出た回折光20、21が、図4のようにプレート7の面上で、X=X80、X81の位置に結像している。
【0035】
互いに異なる周期の表面形状を持つ複数の光学透過素子をシフトさせることで、プレート7の様々な表面形状に合わせてフォーカス位置を形成することができる。また、プレート7の表面形状は連続的に変化している。そのため、連続的な表面形状の光学透過素子を用いることで、投影光学系のフォーカス位置を連続的にすることができる。
【0036】
また、露光場所に依らないZ軸に沿った方向の一律成分は、プレート7を支持するステージ89のZ位置調整機構を用いることで補正してもよい。この補正をここでは、ステージシフト補正と呼ぶことにする。
【0037】
図5はプレート7の平坦度を計測してフォーカス調整機構80を用いて露光場所ごとのフォーカスを調整する方法をフローチャートで示したものである。
【0038】
まずstep1として、計測光学系85および86を用いて、プレート7の表面形状(平坦度)を計測する。平坦度の計測方法の例として、計測光学系85から出た計測光はプレート7の面上で反射し、反射した計測光を計測光学系86で検出することによってプレート7の平坦度を計測する方法などがある。ステージ89を動かし、計測光学系86に入射する光の波形をサンプリングすることにより、プレート7の平坦度を2次元的に計測することができる。
【0039】
上記の方法により3枚のプレートP1、P2、P3の平坦度を、X軸方向に関して−225≦X≦225の範囲で計測する。
【0040】
図6に3枚のプレートを計測した結果を示す。プレートP1、P2、P3の表面形状がそれぞれZP1、ZP2、ZP3である。
【0041】
step2で、step1で計測したプレート7の表面形状を補正するように、フォーカス調整機構80の光学透過素子81、82、83、84の最適シフト量を求める。また、露光場所に依らずZ軸方向に一律にフォーカス位置がシフトしている場合には、ステージ89のZ位置調整量を計算する。
【0042】
フォーカス調整機構80に含まれる光学透過素子の最適なシフト量の決定の方法は、例えば、次のような方法がある。まず、プレートを−225≦X≦225の範囲で10分割し、それぞれの位置Xにおけるステージ89のZ位置調整およびフォーカス調整機構80をシフトさせた後のフォーカス位置を求める。求めたフォーカスの位置と計測光学系85、86で求めたプレート平坦度との差分が最も小さくなるように、光学透過素子の最適なシフト量を決定する。計算方法としてはRMS値が最も小さくなるように決定する方法などがある。
【0043】
例えば光学透過素子81〜84の周期的な表面形状の振幅A81、A82、A83、A84をそれぞれ15μm、屈折率n81、n82、n83、n84をそれぞれ1.5としたときの光学透過素子のシフト量とステージ89のZ位置調整の駆動量を表1に記載する。このように、プレート7の形状が異なればステージの89の駆動量もシフト量αの値もそれぞれ最適の値は異なる。異なるプレート7のそれぞれの平坦度を計測することで、最適なフォーカス位置を求めることができる。
【0044】
【表1】
【0045】
このとき、シフトさせる量や光学透過素子81、82、83、84のZ位置、もしくは投影光学系の開口数(NA)などによっては、フォーカス位置調整に付随する収差の発生が無視できない場合がある。そういった露光場所毎のフォーカス位置調整をすることによって発生する収差を補正するために、本実施形態の投影光学系には収差補正機構87が備えられている。
【0046】
step3で収差補正機構87の変形量を計算する。予め、光学透過素子81、82、83、84のシフト量に対して発生する収差の情報をもっておく。そして、光学透過素子をシフトさせた時に発生する収差を求めて、収差を補正する為の収差補正機構87の変形量を計算する。このようにして、光学透過素子81〜84のシフト量に応じて変化する投影光学系の収差を補正することができる。発生する投影光学系の収差が大きくなければ、step3は行わなくても良い。
【0047】
step4では、step2およびstep3の計算結果を元に、光学透過素子81、82、83、84、収差補正機構87、およびステージ89をそれぞれ駆動させる。
【0048】
最後に、step5で、フォーカス計測光学系88を用いて、露光場所ごとにフォーカス位置を計測する。フォーカス位置を計測した結果、step1で計測したプレート7の平坦度と比較して残差成分が大きければ、再度計測を行うことができる。例えばstep2へ戻り、再び光学透過素子の最適シフト量を求める。
【0049】
図7はプレート7の平坦度とstep4による補正の残差成分を表したものである。図7(a)はプレートP1の平坦度ZP1(プレート平坦度91)と、表1(P1)の駆動量に従ってフォーカス位置を補正した補正残差成分94を示している。補正残差成分とはフォーカス調整後のフォーカス位置とP1のプレート平坦度との差分である。図7(b)はプレートP2の平坦度ZP2(プレート平坦度91)と、表1(P2)の駆動量に従ってフォーカス位置を補正した補正残差成分94を示している。同様に、図7(c)はプレートP3の平坦度ZP3(プレート平坦度91)と表1(P3)の駆動量に従ってフォーカス位置を補正した補正残差成分94を示している。
【0050】
図7の結果によると、最大で15μmほどのプレート面の凸凹によるデフォーカス量が1/3以下の5μm以下にすることができ、これにより良好なコントラストの像が得られる。
【0051】
[第2実施形態]
図8は本発明の第2実施形態における露光装置を示す概略図を示している。第1実施形態と同じ符号のものは説明を省略する。本実施形態の露光装置にはフォーカス調整機構31および34を備える。フォーカス調整機構31は2枚の光学透過素子を有し、マスク2の近傍に配置されている。同様にフォーカス調整機構34は2枚の光学透過素子を有し、プレート7の近傍に配置されている。
【0052】
図9は図8のフォーカス調整機構31および34を拡大した図であり、折り曲げミラー3、6や凹面レンズ4、凸面レンズ5などは省略されている。フォーカス調整機構31は光学透過素子32、33からなり、フォーカス調整機構34は光学透過素子35、36からなる。光学透過素子32、33、35、36は第1実施形態の光学透過素子81、82、83、84と同様にその一面が照明領域の露光幅方向に凹凸形状を有している。また、第1実施形態同様に第一面、もしくは第二面の何れかが周期性を持つ連続的な表面形状をしており、どちらの面でも構わない。
【0053】
照明光学系1によってマスク2が照明され、マスク2から開口数NAOで出た回折光は、マスク2からd32だけ離れた位置で、光学透過素子32を通過し、マスク面2からd33だけ離れた位置で、光学透過素子33を通過する。照明光学系1は光源からの光でマスク2を照明する。そして回折光は、プレート7からd35だけ離れた位置で、光学透過素子35を通過し、プレート7からd36だけ離れた位置で、光学透過素子36を通過し、開口数NAでプレート7に結像する。
【0054】
図9の42、43はマスク2から出た回折光をXZ平面で切ったときの光束内で最も光軸からの角度が大きい両端の周辺光路を表している。同様に52、53はプレート7に結像する回折光束をXZ平面で切ったときの光束内で最も光軸からの角度が大きい両端の周辺光路を表している。
【0055】
光学透過素子32、33、35、36の少なくとも1つを、X軸方向(照明領域の露光幅方向)にシフトさせ、プレート7の面上でのフォーカス位置をZ軸方向に変化させることができる。
【0056】
ただし、このとき光学透過素子を通過するときの回折光の光束径(図9の周辺光路42、43によって、もしくは周辺光路52、53によって決まる)が光学透過素子の表面形状の周期よりも大きすぎると、所望の効果が得られない。
【0057】
図10および図11を用いて、詳しく説明する。図10は光学透過素子の一つの断面を拡大した図である。図10は、屈折率がn63、第一面がZ(X)=A63cosX+Z63で表される表面形状、第二面が平面である光学透過素子63を通過し、プレート7に開口数NAで結像する回折光を表している。
【0058】
光線60はプレート7に結像する回折光の主光線を表し、光線61はプレート7に結像する回折光束をXZ平面で切ったときの光束内で最も光軸からの角度が大きい両端の周辺光路(マージナル光)を示している。光学透過素子に入射するNAの大きさが小さい場合に、回折光が結像する位置を示した結像位置67をX軸方向にみると、振幅B63、周期2πの周期となる。但し、B63=(1/n63−1)A63である。
【0059】
開口数NAを大きくすると、回折光束内の光線61は主光線が光学透過素子63に入射する62の位置からΔDだけ離れた、図10の64の位置で光学透過素子63に入射し、プレート7よりもZ軸方向にΔHだけ離れた位置65に結像する。図10では主光線が、光学透過素子63の凸部の頂点から入射する例を示したが、これに限らない。ΔHは光学透過素子63内を通過する光路長と光学透過素子63の屈折率で表現することができる。
【0060】
【数1】
【0061】
今、フォーカス位置を回折光束内のそれぞれの光線が結像する平均Z位置と定義すると、この開口数NAを持った回折光のフォーカス位置は、プレート7からΔFだけ離れた位置66となる。ΔFは開口数0からNAまでのΔHの期待値となるので、下記式で表される。
【0062】
【数2】
【0063】
また、下記のように所望のフォーカス位置からのZ方向誤差εを定義する。
【0064】
【数3】
【0065】
ΔF(X)が大きければ、露光場所によっては、所望のフォーカス位置からZ方向に誤差が大きくなる。
【0066】
図11は、光学透過素子63を通過する際の回折光束径SおよびZ(X)の周期TによってΔF(X)がどのように振る舞うかを示している。S≒0のときはNA≒0となり、ΔF(X)≒0となる。Sを大きくしていくと、周期Tの1/8で誤差εは最大8%、1/4で最大34%、1/3で最大58%、1/2で最大97%だけ発生する。
【0067】
例えば、S=1/2×Tのとき、X=0では、この誤差を10%以下にするために、回折光束径SはT/8よりも小さいことが必要である。
【0068】
図9に示しているフォーカス調整機構31および34の光学透過素子32、33、35、36の例を表2に記載する。
【0069】
【表2】
【0070】
表2のように光学透過素子32、33、35、36の表面形状の周期をT、それぞれの光学透過素子を通過する際の、回折光束径をSとすると、S<T/8を満たしている。これにより、各光学透過素子32、33、35、36で発生するフォーカス誤差ΔF(X)を10%以下にすることができる。
【0071】
回折光41、44は光学透過素子32、33上の異なる位置を通過する。そのため、通過する光学透過素子の厚み分だけ、光路長に差ができ、結果としてプレート7の面上でフォーカス位置は異なる。また、同様に回折光51、54は光学透過素子35、36上の異なる位置を通過するので、通過する光学透過素子の厚み分だけ、光路長に差ができ、結果としてプレート面上でフォーカス位置は異なる。このように、光学透過素子の枚数が増えると、様々な場所に応じてフォーカス位置を調整することができるため、異なるプレート7に応じてフォーカス位置の調整が細かく行うことができる。
【0072】
そこで、予めプレート7の表面の凹凸形状を計測しておき、照明領域の場所に応じて所望の量だけフォーカス位置を変えて凹凸形状に合わせた像面形状に近づくように、光学透過素子32、33、35、36をそれぞれX軸に沿った方向にシフトさせる。シフトの量を決めるには、予め複数の光学透過素子のそれぞれのX軸方向のシフト量と調整されたフォーカス位置の関係を求めておく。そして、複数の光学透過素子が作り出すフォーカス位置が、予め計測したプレート7の表面形状に近づくようにそれぞれの光学透過素子のシフト量を求める。
【0073】
前述のように各光学透過素子32、33、35、36で発生するフォーカス誤差ε(X)は8%以下と十分小さいので、これにより良好なコントラストの像が得られる。
【0074】
本実施形態では4枚の光学透過素子を投影光学系のプレート側に2枚、マスク側に2枚を配置した例を説明した。4枚の配置は実施例に限られず、例えばプレート側に4枚配置しても良い。しかし、前述の誤差を低減するには、周期性をもつ形状を投影光学系の物体面又は像面に出来るだけ近づけた方が良い。そのため、2枚ごとに分けた方が投影光学系の物体面と像面に近づけて配置できる。このように、光学透過素子をマスク2またはプレート7に対向する位置に配置する事で、周期性をもつ形状の面を投影光学系の物体面または像面に近づけることができ、上述の誤差を低減する。
【0075】
フォーカス調整機構31の光学透過素子32、33とフォーカス調整機構34の光学透過素子35、36の周期性をもつ形状の面の配置する方向を決めてもよい。さらに、物体面または像面により近づけるために、フォーカス調整機構31の光学透過素子32、33は周期性をもつ形状の面の配置を決めることができる。同様にフォーカス調整機構34の光学透過素子35、36は周期性をもつ形状の面の配置を決めることができる。
【0076】
[第3実施形態]
図12および図13を用いて本発明の第3実施形態の投影光学系について説明する。図12は本発明の投影光学系を備える露光装置の概略図である。投影光学系にはフォーカス調整機構71と非球面形状の平坦化光学素子74を備えている。図13はフォーカス調整機構71とフォーカス位置を平坦にするための平坦化光学素子74の付近を拡大した図である。符号が同じものについては説明を省略する。
【0077】
フォーカス調整機構71は上述の実施形態で記載した光学透過素子と同様な特徴を持つ光学透過素子72、73を有する。ここでは、光学透過素子72、73の第一面がそれぞれ、周期性をもつ連続関数I(X)、J(X)を用いて、Z=I(X)+Z72、およびZ=J(X)+Z73で表されるものとする。
【0078】
光学透過素子の表面形状は第1実施形態で説明した余弦の式に限定されず、任意の形状でよい。複数の光学透過素子の表面形状は、連続的であって互いに異なる周期を有していればよい。これら、複数の光学透過素子の少なくとも1つを周期方向にシフトさせることでフォーカス調整を行う。
【0079】
予めプレート7の表面形状(平坦度)が分かっていたら、投影光学系の像面の形状をプレート7の表面形状に合わせるように、所望の量だけフォーカス位置を変える。照明領域の場所ごとにフォーカス位置が変わるように、光学透過素子11、12をX軸に沿った方向(照明領域の露光幅方向)にシフトさせる。あらかじめ光学透過素子11、12のシフトの大きさと場所によるフォーカスされる位置を記憶しておくことにより、プレート7の表面の凹凸形状に合わせて、それぞれの光学透過素子のシフトさせる量を決定することができる。
【0080】
予めプレート7の表面形状(平坦度)を計測しておき、投影光学系の像面の形状をプレート7の表面形状に合わせるように、所望の量だけフォーカス位置を変える。照明領域の場所に応じてフォーカス位置が変わるように、光学透過素子72、73をX軸に沿った方向にシフトさせる。異なるプレート7ごとに表面の凹凸形状を計測すれば、異なるプレート7ごとにフォーカス位置を補正する事ができる。このように、プレートごとの凹凸に対応したフォーカス位置補正を行うことで、良好なコントラストの像が得られる。
【0081】
プレート7の表面形状が平坦であった場合は、照明領域内でのフォーカス位置Zは、照明領域内で等しくする必要がある。しかし、光学透過素子72、73を如何にシフトさせても等しくならない可能性がある。その場合に備えて、光学透過素子72、73が特定の場所に位置する場合に、投影光学系の像面が平坦になるよう、図12および図13のように、非球面形状の平坦化光学素子74を有していても良い。光学透過素子72、73と平坦化光学素子74の組み合わせで投影光学系のフォーカス位置が、平坦になるような配置を記憶しておく。
【0082】
これにより、プレート7の表面形状が平坦であった場合でも、光学透過素子72、73を特定の場所へシフトさせることにより、平坦化光学素子74と組み合わせることにより、投影光学系の像面を平坦にすることができる。
【0083】
本実施形態ではフォーカス調整機構の光学透過素子が2枚のときを説明したが、3枚以上の光学透過素子からなる場合についても平坦化光学素子を備えていても良い。これにより、プレート7の表面形状が平坦であっても投影光学系のフォーカス位置を平坦にすることができる。
【0084】
本発明は、投影光学系に少なくとも2つ以上の光学透過素子を有していれば、異なる基板の表面形状に対してフォーカス調整を行うことができる。光学透過素子の数が多いほど細かい表面形状の変化に対してフォーカス調整を行うことができるが、光学透過素子による収差の影響などが大きくなってしまう。
【0085】
第1実施形態で説明したプレートの平坦度を計測する計測光学系85、86や収差補正機構87、フォーカス計測光学系88は第1実施形態に限られるものではなく、何れの実施形態にも用いることができる。同様に第3実施形態で説明した平坦化光学素子74も何れの実施形態にも用いることができる。
【0086】
本発明の何れの実施形態も、X軸方向に周期性をもつ連続的な表面形状を有する光学透過素子をX軸方向にシフトさせるものについて説明したが、これに限るものではない。例えば光学透過素子の表面形状の周期性を、軸8を中心とした円周方向に持たせ、軸8を中心にしてシフトさせても同様の効果が得られる。この場合も、フォーカス調整機構10は複数の光学透過素子を有しており、互いに異なる周期をもつ表面形状をしている。このように、互いに周期が異なる複数の光学透過素子をそれぞれシフトさせることによって、基板上のフォーカス位置を調整することができる。
【0087】
[デバイス製造方法]
つぎに、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハ等の基板に集積回路を作る前工程と、前工程で作られた基板上の集積回路を半導体チップ等の製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布された基板を露光する工程と、基板を現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。
【0088】
液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板等の基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布された基板を露光する工程と、基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 照明光学系
2 マスク
7 プレート
80 フォーカス調整機構
81、82、83、84 光学透過素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカス位置調整を行うことができる投影光学系、それを用いた露光装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置は、半導体デバイスや液晶表示デバイス等の製造工程であるリソグラフィ工程において、原版(レチクルやマスク等)のパターンを、投影光学系を介して感光性の基板(表面にレジスト層が形成されたウエハやガラスプレート等)に転写する装置である。
【0003】
例えば、液晶表示デバイスを製造する露光装置では、パターンが形成されたマスクの面積が大型化しており、より大きな面積のパターンをガラスプレート上に露光する露光装置が求められている。
【0004】
大きな画面を露光することができる露光装置として、特許文献1に示されているような円弧状の照明領域をスキャンさせることで露光を行うステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置がある。特許文献1に示されているような投影光学系は、ミラーにより構成しているので、色収差が発生しない。
【0005】
また、一方で微細な露光を行うためにはレーリーの式で表される解像力の値を小さくすれば良い。解像力の値を小さくするには、露光装置の投影光学系のNAを大きくすればよいことが知られている。
【0006】
しかし、投影光学系のNAを大きくした場合、解像力の値は小さくなるが、露光装置の焦点深度(DOF:Depth Of Focus)の値もまた小さくなることが知られている。
【0007】
焦点深度DOFが小さくなると、露光装置のステージや基板の平坦度、レジスト塗布分布の均一度、光学系の像面湾曲など、精度の要求が厳しくなる。このような各要素の精度向上は頭打ちになっており、大幅な改善は難しくなりつつある。
【0008】
そこで、露光装置のステージや基板の平坦度が悪いときには、基板上の露光場所ごとに基板上の露光面の表面形状(平坦度)にあわせて投影光学系のフォーカス位置を変化させてこれを補正する試みがなされている。特許文献2に記載の露光装置は、投影光学系に配置された2枚のクサビ型光学部材をシフトさせることにより、投影光学系のフォーカス位置を調整している。特許文献2の露光装置は、複数の投影光学系を繋いで露光領域を作成しているため、各投影光学系に配置されたクサビ型光学部材をシフトさせることにより、露光場所ごとにフォーカス位置を変えることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭60−39205号公報
【特許文献2】特開2004−093953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2に記載の露光装置は、複数の投影光学系を繋いで露光領域を作成しているため、繋ぎ合わせの部位では異なる投影光学系の露光量のわずかな違いから露光ムラが生じる恐れがある。この露光ムラは、スキャン動作による筋ムラとなり、繋ぎ合わせの部位で原版に形成されたパターンを基板上に露光できない恐れがある。
【0011】
一方で、特許文献1に示すような繋ぎ合わせがない一括露光による投影光学系では、繋ぎ合わせの部位は無いため照度ムラは生じにくい。しかし、一つの投影光学系を用いて露光する露光装置の場合、特許文献2に示されているクサビ型光学部材を用いたフォーカス位置調整では照明領域内のフォーカス位置を補正することは難しい。
【0012】
そこで本発明は投影光学系のフォーカス位置を調整し、基板の平坦度の影響を低減して原版のパターンを基板上に投影する投影光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の投影光学系は、原版のパターンの像を基板上に投影する投影光学系であって、投影光学系は、複数の光学透過素子を備えており、複数の光学透過素子の表面形状は、連続的であって、互いに異なる周期を有し、複数の光学透過素子の少なくとも1つを周期方向にシフトさせることでフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
投影光学系のフォーカス位置を調整することで、基板の平坦度の影響を低減して原版のパターンを基板上に投影可能な投影露光装置を提供する事ができる。本発明の効果は、発明を実施するための形態を通じて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態の露光装置
【図2】マスク上での照明領域を示す図
【図3】プレート面の形状と投影光学系の像面
【図4】第1実施形態のフォーカス補正機構を示す図
【図5】第1実施形態のフォーカス補正のフローを示す図
【図6】プレートの平坦度を示すグラフ
【図7】プレートの平坦度とフォーカス補正の結果を示すグラフ
【図8】第2実施形態の露光装置
【図9】第2実施形態のフォーカス補正機構を示す図
【図10】フォーカス補正誤差を示す図
【図11】回折光束径とフォーカス位置の誤差を示す図
【図12】第3実施形態の露光装置
【図13】第3実施形態のフォーカス補正機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態の露光装置を示す概略図である。露光装置はパターンが形成された原版としてのマスク2を照明する照明光学系1と、基板としてのプレート7にパターンを投影する投影光学系を含む。照明光学系1はコンデンサレンズやコリメータレンズなどを有し、光源からの光でマスク2を均一に照明する。
【0018】
照明光学系1により、マスク2を均一に照明した光は、マスク2上に形成されたパターンにより、回折光として投影光学系に入射する。回折光は投影光学系に配置された折り曲げミラー3、凹面ミラー4、凸面ミラー5、再び凹面ミラー4および折り曲げミラー6で反射され、フォーカス調整機構80を通過し、フォトレジストが塗布されたプレート7の面上に結像する。フォーカス調整機構80はプレート7の近傍に配置されている。軸9はマスク2を照明する照明領域の中心を通る軸を表し、軸8は軸9に平行である。
【0019】
図2はマスク2を上部から見たときの露光装置の座標系とマスク2を照明する照明領域を表している。照明領域は、円弧の曲率R、露光幅L、およびスリット幅Wで規定される円弧形状をしている。尚、スリット幅方向の円弧の曲率はすべて一律でRとし、その曲率の中心を軸8とする。図のように、照明領域の中心(露光幅方向中心、スリット幅方向中心)でX、Y軸が交わるように座標系をとる。以上のようにとった座標系のZ軸は、円弧形状の照明領域中心を通り軸9と一致する。
【0020】
プレート7の露光は図2中に示すY軸方向に円弧形状の照明領域をスキャン(移動)することにより行う。スキャンは、マスク2を保持する不図示のマスクステージがY軸方向に駆動することによって行われる。マスク2をY軸に沿って相対移動させるとき、マスク2とプレート7をY軸に沿って相対移動させることにより、マスク2のパターンをプレート7に露光できる。
【0021】
図3は投影光学系において、マスク2の異なる位置から出た回折光20および21が、プレート7付近の投影光学系の像面P上に結像する様子を表している。投影光学系は、最適化設計により露光幅方向に長さLの範囲で、像面湾曲が数μm以下に抑えられているので、回折光20、21は投影光学系の像面Pでほぼ平坦な面上(図3の二点鎖線上が投影光学系の像面Pを示す)に結像する。
【0022】
しかし、実際のプレート7は図3のように、投影光学系の像面Pが作り出す平面よりも大きな数十μm程度の凹凸が製造誤差により生じている。そのため、場所によってはデフォーカスされた位置でプレート7は露光される。デフォーカスにより像のコントラストは落ちる。焦点深度DOFが小さい時に、デフォーカスされた位置でも焦点深度内に収めて露光するためには、露光装置のステージの平坦度、レジスト膜厚分布の均一度、光学系の像面湾曲など、精度の要求が厳しくなる。
【0023】
そこで、本発明の第1の実施形態では図1のようにフォーカス位置調整機構80を搭載している。図1を用いて本発明の第1実施形態の投影光学系を説明する。
【0024】
図1の投影光学系にはフォーカス調整機構80を備えており、4枚の光学透過素子81、82、83、84を備えている。フォーカス調整機構80は、プレート7の近傍に位置している。
【0025】
さらに、図1の露光装置にはプレート7の平坦度を測定するための計測光学系85、86を備えている。また、投影光学系の非点収差、倍率、歪曲などの収差を補正するための収差補正機構87を備えている。例えば、収差補正機構87は光学透過素子を曲げて変形させることにより収差を補正することができる機構である。
【0026】
また、フォーカス位置の計測を行うフォーカス計測光学系88を備えている。プレート7を保持するステージ89をZ軸方向に駆動させプレート7を通過した光の強度を計測し、フォーカスを計測する。例えば、フォーカス計測光学系88はマスク2の面上のピンホールから出た光が、プレート7の面上に設けられたピンホールを通過した光の強度を計測することができる機構である。ステージ89をZ軸方向に駆動させ、その都度、強度をサンプリングすることにより、強度が最大になったZ位置がベストフォーカス位置となる。
【0027】
図4は図1のフォーカス調整機構80付近を拡大した図である。光学透過素子81、82、83、84はそれぞれの片面に照明領域の露光幅方向に凹凸形状を有しており、その形状は周期性をもつ連続的な表面形状をしている。この連続的な表面形状の周期方向はX軸方向に形成されている。
【0028】
また、光学透過素子81、82、83、84は互いに異なる周期の表面形状をしている。本実施形態の光学透過素子81、82、83、84は第一面が平面であり、第二面はX軸方向(照明領域の露光幅方向)に周期性をもつ連続的な表面形状をしている。ここで、第一面とは投影光学系の光路においてマスク2側に近い方の面を示し、第二面とは投影光学系の光路においてプレート7側に近い方の面を示している。互いに異なる周期の方向は同一方向である。
【0029】
光学透過素子81、82、83、84の周期性をもつ連続的な表面形状は第一面でも第二面でも、どちらでもよい。図4では、分かりやすいように光学透過素子の表面形状は、誇張表現している。実際には、光学透過素子81、82、83、84の表面形状の振幅は数μm程度である。
【0030】
光学透過素子81の第一面は平面で、第二面はZ=A81cos(x/2)+Z31で表される周期的な表面形状を持つ。光学透過素子82の第一面は平面で、第二面はZ=A82cos(x)+Z32で表される周期的な表面形状を持つ。光学透過素子83の第一面は平面で、第二面はZ=A83cos(3x/2)+Z33で表される周期的な表面形状を持つ。光学透過素子84の第一面は平面で、第二面はZ=A84cos(2x)+Z34で表される周期的な表面形状を持つ。
【0031】
いま、光学透過素子81、82、83、84をX軸方向にそれぞれα81、α82、α83、α84だけ平行移動させたとする。
【0032】
その時、有効領域内(ここでは露光幅Lとする)における光学透過素子81、82、83、84の第二面の面形状はそれぞれ、次のように表現することができる。光学透過素子81はZ=A81cos((x−α81)/2)+Z31。光学透過素子82はZ=A82cos(x−α82)+Z32。光学透過素子83はZ=A83cos(3(x−α83)/2)+Z33。光学透過素子84はZ=A84cos(2(x−α84))+Z34。
【0033】
図4では例として、X軸と軸9との交点をX軸の原点とすると、α81<0、α82<0、α83<0、α84>0となっている。また、光学透過素子81、82、83、84の屈折率の大きさをn81、n82、n83、n84とし、投影光学系の像面PのZ座標をZ7とする。A81、A82、A83、A84はそれぞれ、光学透過素子81、82、83、84に有する周期的な表面形状の振幅を示す。
【0034】
マスク2の異なる位置から出た回折光20、21が、図4のようにプレート7の面上で、X=X80、X81の位置に結像している。
【0035】
互いに異なる周期の表面形状を持つ複数の光学透過素子をシフトさせることで、プレート7の様々な表面形状に合わせてフォーカス位置を形成することができる。また、プレート7の表面形状は連続的に変化している。そのため、連続的な表面形状の光学透過素子を用いることで、投影光学系のフォーカス位置を連続的にすることができる。
【0036】
また、露光場所に依らないZ軸に沿った方向の一律成分は、プレート7を支持するステージ89のZ位置調整機構を用いることで補正してもよい。この補正をここでは、ステージシフト補正と呼ぶことにする。
【0037】
図5はプレート7の平坦度を計測してフォーカス調整機構80を用いて露光場所ごとのフォーカスを調整する方法をフローチャートで示したものである。
【0038】
まずstep1として、計測光学系85および86を用いて、プレート7の表面形状(平坦度)を計測する。平坦度の計測方法の例として、計測光学系85から出た計測光はプレート7の面上で反射し、反射した計測光を計測光学系86で検出することによってプレート7の平坦度を計測する方法などがある。ステージ89を動かし、計測光学系86に入射する光の波形をサンプリングすることにより、プレート7の平坦度を2次元的に計測することができる。
【0039】
上記の方法により3枚のプレートP1、P2、P3の平坦度を、X軸方向に関して−225≦X≦225の範囲で計測する。
【0040】
図6に3枚のプレートを計測した結果を示す。プレートP1、P2、P3の表面形状がそれぞれZP1、ZP2、ZP3である。
【0041】
step2で、step1で計測したプレート7の表面形状を補正するように、フォーカス調整機構80の光学透過素子81、82、83、84の最適シフト量を求める。また、露光場所に依らずZ軸方向に一律にフォーカス位置がシフトしている場合には、ステージ89のZ位置調整量を計算する。
【0042】
フォーカス調整機構80に含まれる光学透過素子の最適なシフト量の決定の方法は、例えば、次のような方法がある。まず、プレートを−225≦X≦225の範囲で10分割し、それぞれの位置Xにおけるステージ89のZ位置調整およびフォーカス調整機構80をシフトさせた後のフォーカス位置を求める。求めたフォーカスの位置と計測光学系85、86で求めたプレート平坦度との差分が最も小さくなるように、光学透過素子の最適なシフト量を決定する。計算方法としてはRMS値が最も小さくなるように決定する方法などがある。
【0043】
例えば光学透過素子81〜84の周期的な表面形状の振幅A81、A82、A83、A84をそれぞれ15μm、屈折率n81、n82、n83、n84をそれぞれ1.5としたときの光学透過素子のシフト量とステージ89のZ位置調整の駆動量を表1に記載する。このように、プレート7の形状が異なればステージの89の駆動量もシフト量αの値もそれぞれ最適の値は異なる。異なるプレート7のそれぞれの平坦度を計測することで、最適なフォーカス位置を求めることができる。
【0044】
【表1】
【0045】
このとき、シフトさせる量や光学透過素子81、82、83、84のZ位置、もしくは投影光学系の開口数(NA)などによっては、フォーカス位置調整に付随する収差の発生が無視できない場合がある。そういった露光場所毎のフォーカス位置調整をすることによって発生する収差を補正するために、本実施形態の投影光学系には収差補正機構87が備えられている。
【0046】
step3で収差補正機構87の変形量を計算する。予め、光学透過素子81、82、83、84のシフト量に対して発生する収差の情報をもっておく。そして、光学透過素子をシフトさせた時に発生する収差を求めて、収差を補正する為の収差補正機構87の変形量を計算する。このようにして、光学透過素子81〜84のシフト量に応じて変化する投影光学系の収差を補正することができる。発生する投影光学系の収差が大きくなければ、step3は行わなくても良い。
【0047】
step4では、step2およびstep3の計算結果を元に、光学透過素子81、82、83、84、収差補正機構87、およびステージ89をそれぞれ駆動させる。
【0048】
最後に、step5で、フォーカス計測光学系88を用いて、露光場所ごとにフォーカス位置を計測する。フォーカス位置を計測した結果、step1で計測したプレート7の平坦度と比較して残差成分が大きければ、再度計測を行うことができる。例えばstep2へ戻り、再び光学透過素子の最適シフト量を求める。
【0049】
図7はプレート7の平坦度とstep4による補正の残差成分を表したものである。図7(a)はプレートP1の平坦度ZP1(プレート平坦度91)と、表1(P1)の駆動量に従ってフォーカス位置を補正した補正残差成分94を示している。補正残差成分とはフォーカス調整後のフォーカス位置とP1のプレート平坦度との差分である。図7(b)はプレートP2の平坦度ZP2(プレート平坦度91)と、表1(P2)の駆動量に従ってフォーカス位置を補正した補正残差成分94を示している。同様に、図7(c)はプレートP3の平坦度ZP3(プレート平坦度91)と表1(P3)の駆動量に従ってフォーカス位置を補正した補正残差成分94を示している。
【0050】
図7の結果によると、最大で15μmほどのプレート面の凸凹によるデフォーカス量が1/3以下の5μm以下にすることができ、これにより良好なコントラストの像が得られる。
【0051】
[第2実施形態]
図8は本発明の第2実施形態における露光装置を示す概略図を示している。第1実施形態と同じ符号のものは説明を省略する。本実施形態の露光装置にはフォーカス調整機構31および34を備える。フォーカス調整機構31は2枚の光学透過素子を有し、マスク2の近傍に配置されている。同様にフォーカス調整機構34は2枚の光学透過素子を有し、プレート7の近傍に配置されている。
【0052】
図9は図8のフォーカス調整機構31および34を拡大した図であり、折り曲げミラー3、6や凹面レンズ4、凸面レンズ5などは省略されている。フォーカス調整機構31は光学透過素子32、33からなり、フォーカス調整機構34は光学透過素子35、36からなる。光学透過素子32、33、35、36は第1実施形態の光学透過素子81、82、83、84と同様にその一面が照明領域の露光幅方向に凹凸形状を有している。また、第1実施形態同様に第一面、もしくは第二面の何れかが周期性を持つ連続的な表面形状をしており、どちらの面でも構わない。
【0053】
照明光学系1によってマスク2が照明され、マスク2から開口数NAOで出た回折光は、マスク2からd32だけ離れた位置で、光学透過素子32を通過し、マスク面2からd33だけ離れた位置で、光学透過素子33を通過する。照明光学系1は光源からの光でマスク2を照明する。そして回折光は、プレート7からd35だけ離れた位置で、光学透過素子35を通過し、プレート7からd36だけ離れた位置で、光学透過素子36を通過し、開口数NAでプレート7に結像する。
【0054】
図9の42、43はマスク2から出た回折光をXZ平面で切ったときの光束内で最も光軸からの角度が大きい両端の周辺光路を表している。同様に52、53はプレート7に結像する回折光束をXZ平面で切ったときの光束内で最も光軸からの角度が大きい両端の周辺光路を表している。
【0055】
光学透過素子32、33、35、36の少なくとも1つを、X軸方向(照明領域の露光幅方向)にシフトさせ、プレート7の面上でのフォーカス位置をZ軸方向に変化させることができる。
【0056】
ただし、このとき光学透過素子を通過するときの回折光の光束径(図9の周辺光路42、43によって、もしくは周辺光路52、53によって決まる)が光学透過素子の表面形状の周期よりも大きすぎると、所望の効果が得られない。
【0057】
図10および図11を用いて、詳しく説明する。図10は光学透過素子の一つの断面を拡大した図である。図10は、屈折率がn63、第一面がZ(X)=A63cosX+Z63で表される表面形状、第二面が平面である光学透過素子63を通過し、プレート7に開口数NAで結像する回折光を表している。
【0058】
光線60はプレート7に結像する回折光の主光線を表し、光線61はプレート7に結像する回折光束をXZ平面で切ったときの光束内で最も光軸からの角度が大きい両端の周辺光路(マージナル光)を示している。光学透過素子に入射するNAの大きさが小さい場合に、回折光が結像する位置を示した結像位置67をX軸方向にみると、振幅B63、周期2πの周期となる。但し、B63=(1/n63−1)A63である。
【0059】
開口数NAを大きくすると、回折光束内の光線61は主光線が光学透過素子63に入射する62の位置からΔDだけ離れた、図10の64の位置で光学透過素子63に入射し、プレート7よりもZ軸方向にΔHだけ離れた位置65に結像する。図10では主光線が、光学透過素子63の凸部の頂点から入射する例を示したが、これに限らない。ΔHは光学透過素子63内を通過する光路長と光学透過素子63の屈折率で表現することができる。
【0060】
【数1】
【0061】
今、フォーカス位置を回折光束内のそれぞれの光線が結像する平均Z位置と定義すると、この開口数NAを持った回折光のフォーカス位置は、プレート7からΔFだけ離れた位置66となる。ΔFは開口数0からNAまでのΔHの期待値となるので、下記式で表される。
【0062】
【数2】
【0063】
また、下記のように所望のフォーカス位置からのZ方向誤差εを定義する。
【0064】
【数3】
【0065】
ΔF(X)が大きければ、露光場所によっては、所望のフォーカス位置からZ方向に誤差が大きくなる。
【0066】
図11は、光学透過素子63を通過する際の回折光束径SおよびZ(X)の周期TによってΔF(X)がどのように振る舞うかを示している。S≒0のときはNA≒0となり、ΔF(X)≒0となる。Sを大きくしていくと、周期Tの1/8で誤差εは最大8%、1/4で最大34%、1/3で最大58%、1/2で最大97%だけ発生する。
【0067】
例えば、S=1/2×Tのとき、X=0では、この誤差を10%以下にするために、回折光束径SはT/8よりも小さいことが必要である。
【0068】
図9に示しているフォーカス調整機構31および34の光学透過素子32、33、35、36の例を表2に記載する。
【0069】
【表2】
【0070】
表2のように光学透過素子32、33、35、36の表面形状の周期をT、それぞれの光学透過素子を通過する際の、回折光束径をSとすると、S<T/8を満たしている。これにより、各光学透過素子32、33、35、36で発生するフォーカス誤差ΔF(X)を10%以下にすることができる。
【0071】
回折光41、44は光学透過素子32、33上の異なる位置を通過する。そのため、通過する光学透過素子の厚み分だけ、光路長に差ができ、結果としてプレート7の面上でフォーカス位置は異なる。また、同様に回折光51、54は光学透過素子35、36上の異なる位置を通過するので、通過する光学透過素子の厚み分だけ、光路長に差ができ、結果としてプレート面上でフォーカス位置は異なる。このように、光学透過素子の枚数が増えると、様々な場所に応じてフォーカス位置を調整することができるため、異なるプレート7に応じてフォーカス位置の調整が細かく行うことができる。
【0072】
そこで、予めプレート7の表面の凹凸形状を計測しておき、照明領域の場所に応じて所望の量だけフォーカス位置を変えて凹凸形状に合わせた像面形状に近づくように、光学透過素子32、33、35、36をそれぞれX軸に沿った方向にシフトさせる。シフトの量を決めるには、予め複数の光学透過素子のそれぞれのX軸方向のシフト量と調整されたフォーカス位置の関係を求めておく。そして、複数の光学透過素子が作り出すフォーカス位置が、予め計測したプレート7の表面形状に近づくようにそれぞれの光学透過素子のシフト量を求める。
【0073】
前述のように各光学透過素子32、33、35、36で発生するフォーカス誤差ε(X)は8%以下と十分小さいので、これにより良好なコントラストの像が得られる。
【0074】
本実施形態では4枚の光学透過素子を投影光学系のプレート側に2枚、マスク側に2枚を配置した例を説明した。4枚の配置は実施例に限られず、例えばプレート側に4枚配置しても良い。しかし、前述の誤差を低減するには、周期性をもつ形状を投影光学系の物体面又は像面に出来るだけ近づけた方が良い。そのため、2枚ごとに分けた方が投影光学系の物体面と像面に近づけて配置できる。このように、光学透過素子をマスク2またはプレート7に対向する位置に配置する事で、周期性をもつ形状の面を投影光学系の物体面または像面に近づけることができ、上述の誤差を低減する。
【0075】
フォーカス調整機構31の光学透過素子32、33とフォーカス調整機構34の光学透過素子35、36の周期性をもつ形状の面の配置する方向を決めてもよい。さらに、物体面または像面により近づけるために、フォーカス調整機構31の光学透過素子32、33は周期性をもつ形状の面の配置を決めることができる。同様にフォーカス調整機構34の光学透過素子35、36は周期性をもつ形状の面の配置を決めることができる。
【0076】
[第3実施形態]
図12および図13を用いて本発明の第3実施形態の投影光学系について説明する。図12は本発明の投影光学系を備える露光装置の概略図である。投影光学系にはフォーカス調整機構71と非球面形状の平坦化光学素子74を備えている。図13はフォーカス調整機構71とフォーカス位置を平坦にするための平坦化光学素子74の付近を拡大した図である。符号が同じものについては説明を省略する。
【0077】
フォーカス調整機構71は上述の実施形態で記載した光学透過素子と同様な特徴を持つ光学透過素子72、73を有する。ここでは、光学透過素子72、73の第一面がそれぞれ、周期性をもつ連続関数I(X)、J(X)を用いて、Z=I(X)+Z72、およびZ=J(X)+Z73で表されるものとする。
【0078】
光学透過素子の表面形状は第1実施形態で説明した余弦の式に限定されず、任意の形状でよい。複数の光学透過素子の表面形状は、連続的であって互いに異なる周期を有していればよい。これら、複数の光学透過素子の少なくとも1つを周期方向にシフトさせることでフォーカス調整を行う。
【0079】
予めプレート7の表面形状(平坦度)が分かっていたら、投影光学系の像面の形状をプレート7の表面形状に合わせるように、所望の量だけフォーカス位置を変える。照明領域の場所ごとにフォーカス位置が変わるように、光学透過素子11、12をX軸に沿った方向(照明領域の露光幅方向)にシフトさせる。あらかじめ光学透過素子11、12のシフトの大きさと場所によるフォーカスされる位置を記憶しておくことにより、プレート7の表面の凹凸形状に合わせて、それぞれの光学透過素子のシフトさせる量を決定することができる。
【0080】
予めプレート7の表面形状(平坦度)を計測しておき、投影光学系の像面の形状をプレート7の表面形状に合わせるように、所望の量だけフォーカス位置を変える。照明領域の場所に応じてフォーカス位置が変わるように、光学透過素子72、73をX軸に沿った方向にシフトさせる。異なるプレート7ごとに表面の凹凸形状を計測すれば、異なるプレート7ごとにフォーカス位置を補正する事ができる。このように、プレートごとの凹凸に対応したフォーカス位置補正を行うことで、良好なコントラストの像が得られる。
【0081】
プレート7の表面形状が平坦であった場合は、照明領域内でのフォーカス位置Zは、照明領域内で等しくする必要がある。しかし、光学透過素子72、73を如何にシフトさせても等しくならない可能性がある。その場合に備えて、光学透過素子72、73が特定の場所に位置する場合に、投影光学系の像面が平坦になるよう、図12および図13のように、非球面形状の平坦化光学素子74を有していても良い。光学透過素子72、73と平坦化光学素子74の組み合わせで投影光学系のフォーカス位置が、平坦になるような配置を記憶しておく。
【0082】
これにより、プレート7の表面形状が平坦であった場合でも、光学透過素子72、73を特定の場所へシフトさせることにより、平坦化光学素子74と組み合わせることにより、投影光学系の像面を平坦にすることができる。
【0083】
本実施形態ではフォーカス調整機構の光学透過素子が2枚のときを説明したが、3枚以上の光学透過素子からなる場合についても平坦化光学素子を備えていても良い。これにより、プレート7の表面形状が平坦であっても投影光学系のフォーカス位置を平坦にすることができる。
【0084】
本発明は、投影光学系に少なくとも2つ以上の光学透過素子を有していれば、異なる基板の表面形状に対してフォーカス調整を行うことができる。光学透過素子の数が多いほど細かい表面形状の変化に対してフォーカス調整を行うことができるが、光学透過素子による収差の影響などが大きくなってしまう。
【0085】
第1実施形態で説明したプレートの平坦度を計測する計測光学系85、86や収差補正機構87、フォーカス計測光学系88は第1実施形態に限られるものではなく、何れの実施形態にも用いることができる。同様に第3実施形態で説明した平坦化光学素子74も何れの実施形態にも用いることができる。
【0086】
本発明の何れの実施形態も、X軸方向に周期性をもつ連続的な表面形状を有する光学透過素子をX軸方向にシフトさせるものについて説明したが、これに限るものではない。例えば光学透過素子の表面形状の周期性を、軸8を中心とした円周方向に持たせ、軸8を中心にしてシフトさせても同様の効果が得られる。この場合も、フォーカス調整機構10は複数の光学透過素子を有しており、互いに異なる周期をもつ表面形状をしている。このように、互いに周期が異なる複数の光学透過素子をそれぞれシフトさせることによって、基板上のフォーカス位置を調整することができる。
【0087】
[デバイス製造方法]
つぎに、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハ等の基板に集積回路を作る前工程と、前工程で作られた基板上の集積回路を半導体チップ等の製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布された基板を露光する工程と、基板を現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。
【0088】
液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板等の基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布された基板を露光する工程と、基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 照明光学系
2 マスク
7 プレート
80 フォーカス調整機構
81、82、83、84 光学透過素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターンの像を基板上に投影する投影光学系において、
前記投影光学系は、複数の光学透過素子を備えており、
前記複数の光学透過素子の表面形状は、連続的であって、互いに異なる周期を有し、
前記複数の光学透過素子の少なくとも1つを周期方向にシフトさせることでフォーカス調整を行うこと
を特徴とする投影光学系。
【請求項2】
前記互いに異なる周期の方向は同一方向であることを特徴とする請求項1に記載の投影光学系。
【請求項3】
前記複数の光学透過素子の表面形状は、円周方向に周期を有し、円周方向に前記複数の光学透過素子の少なくとも1つをシフトさせることでフォーカス調整を行うことを特徴とする、請求項1に記載の投影光学系。
【請求項4】
前記光学透過素子は、前記基板に対向する位置に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項5】
前記光学透過素子は、前記原版に対向する位置に配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項6】
前記光学透過素子の周期を有する表面が、前記基板の表面に向かい合って配置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項7】
光源からの光で原版を照明する照明光学系と、
前記原版のパターンを基板の上に投影する投影光学系と、を備える露光装置であって、
前記投影光学系は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の投影光学系であることを特徴とする露光装置。
【請求項8】
前記投影光学系を透過した光を計測することにより、前記投影光学系のフォーカス位置を求めるフォーカス計測光学系を備え、
該フォーカス計測光学系で求めたフォーカス位置から、前記複数の光学透過素子をシフトさせる量を決めることを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
請求項7に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光する工程で露光された前記基板を現像する工程と、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項1】
原版のパターンの像を基板上に投影する投影光学系において、
前記投影光学系は、複数の光学透過素子を備えており、
前記複数の光学透過素子の表面形状は、連続的であって、互いに異なる周期を有し、
前記複数の光学透過素子の少なくとも1つを周期方向にシフトさせることでフォーカス調整を行うこと
を特徴とする投影光学系。
【請求項2】
前記互いに異なる周期の方向は同一方向であることを特徴とする請求項1に記載の投影光学系。
【請求項3】
前記複数の光学透過素子の表面形状は、円周方向に周期を有し、円周方向に前記複数の光学透過素子の少なくとも1つをシフトさせることでフォーカス調整を行うことを特徴とする、請求項1に記載の投影光学系。
【請求項4】
前記光学透過素子は、前記基板に対向する位置に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項5】
前記光学透過素子は、前記原版に対向する位置に配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項6】
前記光学透過素子の周期を有する表面が、前記基板の表面に向かい合って配置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の投影光学系。
【請求項7】
光源からの光で原版を照明する照明光学系と、
前記原版のパターンを基板の上に投影する投影光学系と、を備える露光装置であって、
前記投影光学系は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の投影光学系であることを特徴とする露光装置。
【請求項8】
前記投影光学系を透過した光を計測することにより、前記投影光学系のフォーカス位置を求めるフォーカス計測光学系を備え、
該フォーカス計測光学系で求めたフォーカス位置から、前記複数の光学透過素子をシフトさせる量を決めることを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
請求項7に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光する工程で露光された前記基板を現像する工程と、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−119535(P2012−119535A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268754(P2010−268754)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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