説明

投影装置及び投影制御方法

【課題】装置の小型化に寄与し、より簡易な構成で高い精度の測距を実行可能とする。
【解決手段】光源ランプ28と、多数の微小ミラーの光源ランプ28からの光に対する各傾斜角度を制御して反射光により光像を形成するミラー素子26を駆動し、光像を投影レンズ部12を介して投影する投影系24〜34と、光源ランプ28とは別に設けられ、微小ミラーが光源ランプ28からの光を投影レンズ部12の外部に反射させる傾斜角度の状態で微小ミラーへ変調光を入射させ、その反射光が投影レンズ部12を介して出射するように配置したレーザ発光部32A〜32Cと、レーザ発光部32A〜32Cの発光で投影対象から得られる反射光を受信するレーザ受光部13と、レーザ発光部32A〜32Cの発光とレーザ受光部13の受光の位相差により投影対象までの距離を測定し、測定した距離により投影系24〜34での投影条件を制御するCPU35、メインメモリ36及びプログラムメモリ37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データプロジェクタ等に好適な投影装置及び投影制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータと接続し、各種画像をスクリーン上に大きく投影してプレゼンテーション等を行なうデータプロジェクタ装置で、予め決定された角度で出射したレーザポインタの照射位置を撮影し、撮影画像中のポインタ位置により、投影対象となるスクリーンまでの距離を測定するようにした技術が考えられている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2005−017336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、レーザポインタが投射レンズの光軸と平行な方向にレーザ光を投射するものとして記載されているが、レーザポインタと投射レンズは異なる光学系を用いるものであるので、両光軸を正確に一致させるのは困難である。加えて、測距精度を向上するべく、レーザポインタ及び投射レンズと同一面内でなるべく離れた位置に撮像レンズを設け、この撮影レンズを介して得た撮影画像中に写り込んでいるポイント位置からパララックスを利用して距離を測定するものとしている。したがって、プロジェクタの装置としての小型化を図った場合には、必然的にレーザポインタ及び投射レンズと撮影レンズとの距離も小さくなるため、測距精度も低下するものと考えられる。
【0004】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、装置の小型化に寄与し、より簡易な構成で高い精度の測距を実行することが可能な投影装置及び投影制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、光源と、アレイ状に配列された複数の微小ミラーの上記光源からの光に対する各傾斜角度を制御して反射光により光像を形成するミラー素子を駆動し、入力される画像信号に対応した光像を光学レンズ系を介して投影対象に向けて投影する投影手段と、上記光源とは別に設けられ、上記ミラー素子の微小ミラーが光源からの光を上記光学レンズ系の外部に反射させる傾斜角度にある状態で、当該微小ミラーへ変調された光を入射させ、その反射光を上記光学レンズ系を介して出射させるように配置した発光手段と、上記発光手段での発光で上記光学レンズ系を介して上記投影対象から得られる反射光を受信する受光手段と、上記発光手段での発光と上記受光手段で受信した反射光の位相差を検出することにより上記投影対象までの距離を測定する測距手段と、上記測距手段で得た距離により上記投影手段での投影条件を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記発光手段は、上記ミラー素子の異なる微小ミラー位置へ入射させる複数の発光部を有し、上記測距手段は、上記発光手段の複数の発光部での発光と上記受光手段での受光の位相差を検出することにより上記投影対象の複数位置までの各距離を測定することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記投影手段の光学レンズ系は、投影画角を可変するズーム機能を有し、上記発光手段は、上記光学レンズ系による複数の投影画角でそれぞれ発光部により発光させ、上記測距手段は、上記光学レンズ系による複数の投影画角で上記発光手段の発光部での発光と上記受光手段での受光の位相差を検出することにより上記投影対象の複数位置までの各距離を測定することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記発光手段は、レーザ光を発振するレーザ発振部と発振されたレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズとを有することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記制御手段は、上記発光手段での発光時に上記ミラー素子による光像の形成を一時的に停止させることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記制御手段は、上記発光手段での発光時に、上記ミラー素子を構成する複数の微小ミラー中、上記発光手段からの発光が照射される位置にある微小ミラーのみ光像の形成を一時的に停止させることを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、光源と、アレイ状に配列された複数の微小ミラーの上記光源からの光に対する各傾斜角度を制御して反射光により光像を形成するミラー素子を駆動し、入力される画像信号に対応した光像を光学レンズ系を介して投影対象に向けて投影する投影部とを備えた投影装置での制御方法であって、上記光源とは別に設けられ、上記ミラー素子の微小ミラーが光源からの光を上記光学レンズ系の外部に反射させる傾斜角度にある状態で、当該微小ミラーへ変調した光を入射させ、その反射光を上記光学レンズ系を介して出射させるように配置した発光部を駆動する発光工程と、上記発光工程での発光で上記光学レンズ系を介して上記投影対象から得られる反射光を受信する受光工程と、上記発光工程での発光と上記受光工程で受信した反射光の位相差を検出することにより上記投影対象までの距離を測定する測距工程と、上記測距工程で得た距離により上記投影部での投影条件を制御する制御工程とを有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の小型化に寄与し、より簡易な構成で高い精度の測距を実行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明をDLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式のデータプロジェクタ装置に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、同実施形態に係るデータプロジェクタ装置10の外観構成を示す。同図で、データプロジェクタ装置10は、直方体状の本体ケーシング11の前面に投影レンズ部12、レーザ受光部13、及びIr受光部14を配設する。
【0015】
また、同本体ケーシング11の上面には、スピーカ部15、インジケータ部16、及びキー操作部17を配設する。
【0016】
投影レンズ部12は、内部で作成された光像を拡大して投影対象となるスクリーン等に投影するものであり、合焦位置及びズーム位置(投影画角)を任意に可変できるものとする。
【0017】
レーザ受光部13は、投影レンズ部12の近傍に設置され、後述するレーザ光が投影レンズ部12を介して投影対象に投射された場合、その反射光を受信する。
【0018】
Ir受光部14は、このデータプロジェクタ装置10の図示しないリモートコントローラからの赤外線変調信号を受信する部位であり、同様の受信部をこのデータプロジェクタ装置10の背面側にも配設する。
【0019】
スピーカ部15は、画像信号と共に入力される音声信号や予めデータプロジェクタ装置10内に記憶されている音声メッセージ、ビープ音等を拡声放音する。
【0020】
インジケータ部16は、電源の投入/切断状態、後述する光源ランプの温度が異常となった場合などを内部に設けたLED(発光ダイオード)の点灯/点滅などで表示する。
【0021】
キー操作部17は、直接ユーザのキー操作を受付けて各種投影動作を制御するためのもので、例えば電源キー、入力切換えキー、ズームアップ/ダウンキー、AFK(Auto Focus/automatic Keystone correction:自動合焦/自動台形補正)キー、メニューキー、カーソルキー(「↑」「↓」「←」「→」)、エンターキー、キャンセルキー等を備える。
【0022】
また、データプロジェクタ装置10の下面前端側の左右両端部には一対の調整脚部18A,18Bが設けられる。図示はしないが、データプロジェクタ装置10の下面後端側中央にはもう1本の固定脚部が設けられるもので、計3本の脚部によりデータプロジェクタ装置10を支持すると共に、前側に位置する上記調整脚部18A,18Bの各脚長を個別に調整することにより、投影レンズ部12の投影光軸の仰角、及び投影画像の左右の傾きを調整可能となる。
【0023】
なお、ここでは図示しないが、本体ケーシング11の背面には各種画像信号を入出力するためのコネクタ部、盗難防止金具取付部、上記Ir受光部14と同様のIr受光部等を備える。
【0024】
図2は、上記データプロジェクタ装置10が備える電子回路の機能構成を示すブロック図である。
同図で、21は上記本体ケーシング11の背面側に設けられる入出力コネクタ部であり、例えばピンジャック(RCA)タイプのビデオ入力端子、D−sub15のRGB入力端子、及びUSB端子からなる。
【0025】
入出力コネクタ部21より入力される各種規格の画像信号は、入出力インタフェース(I/F)22、システムバスSBを介して画像変換部23に送られる。画像変換部23は、一般にスケーラとも称されるもので、送られてきた画像信号の解像度数、階調数等を含む所定のフォーマットの画像信号に統一された後に、投影画像処理部24へ送る。
【0026】
この際、OSD(On Screen Display)用の文字画像やポインタ等の記号も必要に応じて画像信号上に重畳加工された状態で投影画像処理部24へ送られる。
【0027】
投影画像処理部24は、送られてきた画像信号をビデオRAM25に展開して記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成する。
【0028】
投影画像処理部24は、このビデオ信号のフレームレート、例えば60[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により、空間的光変調素子(SOM)であるマイクロミラー素子26を表示駆動する。
【0029】
このマイクロミラー素子26は、アレイ状に配列された複数、例えばXGA(横1024×縦768ドット)分の微小ミラーの各傾斜角度をオン/オフ動作制御することでその反射光により光像を形成する。
【0030】
一方で、リフレクタ27内に配置された、例えば高圧水銀灯を用いた光源ランプ28が高輝度の白色光を出射する。光源ランプ28の出射した白色光は、カラーホイール29を介して時分割で原色に着色され、ここでは図示しないインテグレータで輝度分布が均一な光束とされた後にミラー30で全反射して上記マイクロミラー素子26に照射される。
【0031】
しかして、マイクロミラー素子26での反射光で光像が形成され、形成された光像が上記投影レンズ部12を介して、投影対象となるここでは図示しないスクリーンに投影表示される。
【0032】
上述した如く投影レンズ部12は、合焦位置及びズーム位置(投影画角)を任意に可変できる。すなわち、投影レンズ部12を構成する複数の光学レンズ中、図示しないフォーカスレンズ及びズームレンズはそれぞれ光軸方向に沿って前後に移動することで制御されるもので、それらレンズはステッピングモータ(M)31の回動駆動により移動する。
【0033】
また、上記マイクロミラー素子26と投影レンズ部12との空間を挟んで上記ミラー30と対峙するように3個のレーザ発光部32A〜32Cが設けられる。これらレーザ発光部32A〜32Cは、いずれもレーザダイオードとコリメータレンズとを組み合わせて構成され、例えば20[MHz]でAM変調したスポット状の平行光によるレーザ光をマイクロミラー素子26に照射する。
【0034】
すなわち、レーザ発光部32A〜32Cは、本来マイクロミラー素子26の各微小ミラーがオフ位置、すなわち光源ランプ28からの光を投影レンズ部12を外すように反射する傾斜角度となっている状態で、マイクロミラー素子26へスポット状のレーザ光を照射することで、その反射光が投影レンズ部12を介して投影対象となるここでは図示しないスクリーンに照射するものとなる。
【0035】
そして、上記光源ランプ28の点灯駆動、上記カラーホイール29用のモータ(M)33の回転駆動、上記ステッピングモータ24の回動駆動、上記レーザ発光部32A〜32Cの発光駆動、及び上記レーザ受光部13での受光をいずれも投影光処理部34が実行する。
【0036】
投影光処理部34では、後述する如くレーザ発光部32A〜32Cを時分割で発光駆動し、各発光に対してレーザ受光部13でその反射光が受光された際の出射光との位相差から時間差を算出した後に、得られた時間差の半値を光速度を除数として除算することで、投影対象までの距離を算出する。
【0037】
なお、この投影光処理部34は、レーザ発光部32A〜32Cとレーザ受光部13の駆動のみを行ない、その発光光と受光光の位相差から距離値を算出する演算は後述するCPU35が行なうものとしても良い。
【0038】
上記各回路の動作すべてをCPU35が制御する。このCPU35は、DRAMで構成されたメインメモリ36、動作プログラムや各種定型データ等を記憶した電気的書換可能な不揮発性メモリでなるプログラムメモリ37を用いてこのデータプロジェクタ装置10内の制御動作を実行する。
【0039】
上記CPU35は、操作部38からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。この操作部38は、データプロジェクタ装置10の本体に設けられる上記キー操作部17と、このデータプロジェクタ装置10専用の図示しないリモートコントローラからの赤外光を受信する上記レーザ受光部13を含み、ユーザが直接またはリモートコントローラを介して操作したキーに基づくキー操作信号をCPU35へ直接出力する。
【0040】
上記CPU35はさらに、上記システムバスSBを介して上記インジケータ部16及び音声処理部39と接続される。
【0041】
音声処理部39は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時に与えられる音声データをアナログ化し、上記スピーカ部15を駆動して拡声放音する一方で、必要によりビープ音等を発生させる。
【0042】
次に上記実施形態の動作について説明する。
図3は、電源スイッチを操作して電源を投入してから後の基本的な動作と、キー操作部17またはリモートコントローラの「AFK」キー操作に対応した処理内容について示すものである。この図3で示す動作制御は、すべてCPU32がプログラムメモリ34に記憶された動作プログラムを読出してメインメモリ33に展開しながら実行する。
【0043】
処理中、まず入出力コネクタ部21より画像信号の入力があるか否かを判断する(ステップS101)。ここで入力があると判断した場合にのみ、その入力された画像信号に対応した画像をマイクロミラー素子26で表示することで、ミラー30を介して送られてきた光源光を投射し、その反射光で光像を形成して投影レンズ部12により投影対象に向けて出射する(ステップS104)。
【0044】
図4(A)は、画像投影時のマイクロミラー素子26を構成する個々の微小ミラー26a,26a,‥‥の傾斜角度を例示するものである。このとき、各微小ミラー26a,26a,‥‥は個体(画素)単位で選択的にオン/オフ制御される。
【0045】
オンとなった個体(画素)の微小ミラー26aでは、光源光を投影レンズ部12方向に反射する。一方で、オフとなった個体(画素)の微小ミラー26aは、光源光を投影レンズ部12から外れる方向に反射する。
【0046】
なお、各画素の階調は、オンとなる時間幅で調整される。例えば、カラーホイール29がR,G,Bの3原色のカラーフィルタを有する場合、画像1フレームを構成するR,G,Bの各原色光がマイクロミラー素子26に照射される期間中、いずれもオンの状態を維持することで、そのフレームの当該画素はR,G,Bの各原色成分共フル階調で表現され、結果として当該画素が白で投影されることとなる。
【0047】
反対に、画像1フレームを構成するR,G,Bの各原色光がマイクロミラー素子26に照射される期間中、いずれもオフの状態を維持することで、そのフレームの当該画素は黒で投影されることとなる。
【0048】
その他の色に関しては、画像1フレームを構成するR,G,Bの各原色光がマイクロミラー素子26に照射される期間それぞれにおいて、オンとなる状態とオフとなる状態の時間幅を例えば8ビット中で調整することで、そのフレームの当該画素が約1677万色で中間階調表現されて投影されることとなる。
【0049】
その後、合わせて操作部38から自動合焦と自動台形補正とを指示する「AFK」キーの操作信号があったか否かを判断し(ステップS102)、操作信号がないと判断すると、次に操作部38から電源の切断を指示する電源キーの操作があったか否かを判断する(ステップS103)。
【0050】
電源キーの操作がないと判断すると、上記ステップS101に戻り、以後上記ステップS101〜S103を繰返し実行する過程で、画像信号の入力があればそれを随時投影レンズ部12より投影しながら、「AFK」キーと電源キーの操作を待機する。
【0051】
しかして、投影動作途中で「AFK」キーが操作された場合、ステップS102において操作部38からのキー操作信号でこれを判断すると、それまでの画像信号に対応したマイクロミラー素子26の駆動を一時的に停止し、マイクロミラー素子26を構成するすべての微小ミラー26a,26a,‥‥を揃ってオフ状態となるように設定する(ステップS105)。
【0052】
当然ながらこの時点で光源ランプ28からの光はすべて投影レンズ部12から外れる方向に反射され、投影レンズ部12からは一切の光が出射されない。
【0053】
このマイクロミラー素子26の全面オフ状態で、投影光処理部34により上記レーザ発光部32A〜32C中の1つ、例えばレーザ発光部32Aを用いて短時間レーザ光をAM変調して発光駆動するとともに、発射されたレーザ光が微小ミラー26a,26a,‥‥のいずれかで反射された投影レンズ部12内を通り、投影対象のスクリーンで反射して上記レーザ受光部13で受光された際の発光光と受光光との位相差から、その時間差を算出する。
【0054】
図4(B)は、マイクロミラー素子26の微小ミラー26a,26a,‥‥がオフ状態で、レーザ発光部32A〜32Cのいずれか1つがレーザ光を発し、そのレーザ光が微小ミラー26a,26a,‥‥の1つで反射されて投影レンズ部12内に導入され、同投影レンズ部12から投影対象に向けて出射している状態を例示する。
【0055】
レーザ発光部32A〜32Cはいずれも、発射したレーザ光をオフ状態の微小ミラー26a,26a,‥‥のうちの一部に投射することで、その反射光が投影レンズ部12内を通って投影対象に向けて出射する如く位置及び方向を固定的に設定されているものとする。
【0056】
加えて、レーザ発光部32A〜32Cがレーザ光を投射するマイクロミラー素子26の微小ミラー26a,26a,‥‥に対する位置は、それぞれ異なるように設定される。
図5は、レーザ発光部32A〜32Cのマイクロミラー素子26に対する配設位置及び配設方向と、投影レンズ部12を介して実際にスクリーンSCR上に照射される位置との概念を示すものである。
【0057】
同図はスクリーンSCR上の投影レンズ部12による投影範囲のみを抽出した形で示すものであり、投影範囲内でなるべく3つのレーザ光の照射位置が離れるように、マイクロミラー素子26に対するレーザ発光部32A〜32Cの配設位置及び方向を予め設定しておく。各レーザ光の照射によるスクリーンSCRからの反射光は、いずれもレーザ受光部13で受光される。
【0058】
しかるに、上記レーザ発光部32Aでの発光とレーザ受光部13での受光との位相差から時間差、すなわち光の飛行時間を測定すると、投影光処理部34においてその時間差の半値を光速度を除数として除算することで、その商が投影レンズ部12とスクリーンSCRとの距離となる(ステップS106)。
【0059】
この場合、正確には投影レンズ部12とレーザ受光部13との配設位置が異なるので、レーザ光は投影レンズ部12からスクリーンSCR、スクリーンSCRからレーザ受光部13と3角状の軌跡を有するものであるが、上述した如く投影レンズ部12とレーザ受光部13とは本体ケーシング11の前面側で隣接して配置するものとしたので、スクリーンSCRまでの距離に比してそれらの間の距離は殆ど誤差として無視できるものとする。
【0060】
同様に、時分割でレーザ発光部32B,32Cでのレーザ光の発光、及び受光による測距を連続して実行する(ステップS107,S108)。
【0061】
こうしてレーザ発光部32A〜32Cの時分割発光駆動によりスクリーンSCR上の3点までの距離を測定すると、3次元空間内で投影レンズ部12と平面であるスクリーンとの相対的な位置関係、具体的には投影レンズ部12の光軸に対するスクリーンまでの距離及びスクリーンの傾きを演算により算出する(ステップS109)。
【0062】
その算出結果に基づき、上記3点の中心位置までの距離に基づくAF(自動合焦)処理として上記投影レンズ部12の一部を構成するフォーカスレンズをステッピングモータ31の駆動により移動させると共に、スクリーン平面の傾きの角度及び方向に対応した自動台形補正処理としてマイクロミラー素子26で表示する画像を意図的に変形させる各種設定を実行する(ステップS110)。
【0063】
その後、それまでのマイクロミラー素子26の全面オフ状態を解除して、再び入力される画像信号に対応するように設定し(ステップS111)、以上で「AFK」キーの操作に応じた一連の処理を終了するものとして、上記ステップS103からの処理に進む。
【0064】
また、上記ステップS103で操作部38から電源の切断を指示する電源キーの操作があったと判断した場合には、その時点で投影動作を終了するものとして、上記光源ランプ28の消灯、投影画像処理部24のリセット等を含む所定の電源オフ処理を行なった後(ステップS112)、以上でこの図3の処理を終了する。
【0065】
なお、上記実施形態にあっては、レーザ発光部32A〜32Cが時分割で順次マイクロミラー素子26に対してレーザ光の照射を行なう位置は、例えば矩形の投影画像の上部中央の1点と、下部両端の2点の計3点に対応する位置であるものとする。
【0066】
図6は、上述したようなレーザ発光部32A〜32Cによる投影範囲内へのレーザ光の照射状態を例示する図である。同図に示すように、比較的投影画角の小さい投影範囲PR11でのレーザ光の照射位置をP11〜P13とする。
【0067】
これに対して、投影レンズ部12のズーム機能により投影画角を大きくして投影範囲PR12としたときのレーザ光の照射位置をP21〜P23とする。
各投影範囲に対するレーザ光の照射位置は相対的に同一ではあるが、当然ながら投影範囲PR12とした場合の方が各レーザ光の照射位置の間隔が絶対的に大きいため、それらの反射光をレーザ受光部13で受信して時間差から距離を算出する場合、投影画角が大きい方が距離の算出精度は向上する。
【0068】
また、一般にこの種のプロジェクタ装置では、プロジェクタ装置の設置位置に対してスクリーンの投影位置の方が高く、投影光軸が水平方向より上向きとなるように設置される可能性がより高い。
【0069】
そのため、本来矩形の投影範囲は、台形補正を行なわない状態では上辺がより広い逆台形状となることが多く、この点を考慮すると、同じ3点のレーザ光の照射を行なう場合でも、上述したような矩形の投影画像の上部中央の1点と下部両端の2点の計3点ではなく、上部両端の2点と下部中央の1点の逆三角形状の計3点で測距を行なった方が、上部両端の2点がより広がった状態で測距を行なう可能性が高いため、測距精度をより向上させることが可能となる。
【0070】
さらに、上述したように1つの投影範囲内で計3点の測距を行なうのではなく、投影レンズ部12がズーム機能を有していることを利用して、ズーム機能により投影画角を可変しながら合計で3点以上の照射位置までの距離を測定し、投影対象のスクリーン平面までの距離と傾きとを検出することも可能である。
【0071】
図7は、そのような他の動作例を示すものである。ここでは、まず比較的投影画角の小さい投影範囲PR21の上部両端の2点P31,P32でレーザ光の照射を行なって当該位置の測距を行なう。その後、投影レンズ部12でのズーム機能により投影画角を大きくした投影範囲PR22の上部両端の2点P41,P42でレーザ光の照射を行なって当該位置の測距を行なう。
【0072】
こうして得た点位置P31,P32,P41,P42の計4点の距離値により、投影対象となるスクリーン平面までの距離と傾きとを検出することが可能となる。
【0073】
このように、投影レンズ部12がズーム機能を有していることを利用して、一投影範囲あたりで測距する点位置の数を減らすことができ、結果としてレーザ発光部の構成をより簡略化することができる。
原理的には、レーザ発光部が1系統のみで構成され、1つの投影範囲に対してただ1点の照射位置のみ測距可能であるとしても、投影レンズ部12のズーム機能により投影範囲をその後に2回変更して計3回、異なる3点の照射測距を行なえば、投影対象であるスクリーンまでの距離のみならず、投影光軸に対する相対的な傾きの角度と方向とを検出することができる。
【0074】
さらに動作も簡略化して、1回の投影画角の変更で計2点までの照射による測距を行なうだけでも、当該2点を結ぶ直線方向に沿った傾きの方向と大きさは検出することができる。
【0075】
以上詳記した如く本実施形態によれば、マイクロミラー素子26を構成する微小ミラー26a,26a,‥‥がオフとなる状態で投影レンズ部12方向にレーザ光を反射するようにレーザ発光部32A〜32Cを配設し、投影レンズ部12を介して投影範囲内の測距を行なうものとしたので、装置の小型化に寄与し、より簡易な構成で高い精度の測距を実行することが可能となる。
【0076】
加えて、本実施形態では、複数の発光部から構成されるレーザ発光部32A〜32Cを備え、これらを用いて1つの投影範囲内で複数の点位置までの距離を測定可能としたため、投影対象となるスクリーンまでの距離のみならず、投影光軸に対するスクリーン平面の傾きの方向と大きさとを検出することができ、投影内容に反映して高い画質の投影を実現できる。
【0077】
また、上述した如く投影レンズ部12がズーム機能を有するものとし、複数の投影画角でそれぞれ発光部により発光させることで、結果として投影対象の複数位置までの各距離を測定することにより、発光部の構成をより簡略化しながらも、投影光軸に対する投影対象のスクリーンの傾きを検出することが可能となる。
【0078】
なお、上記実施形態では発光部の構成として、レーザ光を発振するレーザ発振部と発振されたレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズとを有するものを用いた。
【0079】
これにより、高輝度LED等を発光部に用いる場合に比べて、エネルギー密度の高いレーザ光が略平行光の状態で投影対象に照射されるので、その反射光を受信する受光部での検出をより確実にし、安定した測距動作を実現できる。
【0080】
なお、上記実施形態では、測距動作時にマイクロミラー素子26を構成する全微小ミラー26a,26a,‥‥を一時的にオフ動作させるものとした。これにより、レーザ発光部32A〜32Cによる微小ミラー26a,26a,‥‥に対する照射位置をそれほど精密に設定せずとも確実に測距を行なうことが可能となる。
【0081】
反対に、レーザ発光部32A〜32Cによる微小ミラー26a,26a,‥‥に対する照射位置を精密に設定するものとし、通常の入力される画像信号に対応した投影動作を実行しながら、レーザ発光部32A〜32Cのレーザ光が照射される位置に該当する微小ミラー26a,26a,‥‥のみを画素単位で一時的にオフ動作させることも可能である。
【0082】
この場合、投影画像の画質を損なうかどうかはその動作時間と投影範囲内での画素位置とにもよるが、投影動作を続行したままで投影対象までの測距動作を実行することができ、投影画像を見る者に違和感を感じさせないで測距動作を実現できる。
【0083】
また、上記実施形態では、レーザ受光部13は1つであって、レーザ発光部32A〜32Cを順次発光させて測距を行なったが、レーザ発光部32A〜32Cそれぞれに対応するレーザ受光部13を3つ備えていれば、レーザ発光部32A〜32Cを同時に発光させ、測距を行なうことも実現できる。
【0084】
さらに、上記実施形態では、光線の1つであるレーザ光線を利用してスクリーンとの距離測定を行なったが、レーザ光線に限らず、目標物に対して、所定の周波数で発信する基準信号を用いて変調された光線を照射し、戻ってくる受光した受光信号と基準信号との位相差を検出することで、目標物までの距離を測定できる光線であればよい。これは例えば、LEDなどの発光素子であっても出力光を変調して照射できれば可能である。
【0085】
また、上記実施形態では、反射光が受光されるまでの時間差を計測した後に、得られた時間差の半値を光速度を除数として除算することで、投影対象までの距離を算出しているが、予め、受光した受光信号と基準信号との位相差から距離が分かるような算出テーブルを記憶しておけば、計算しなくても簡単に距離を求めることが可能である。
【0086】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件により適宜の組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係るデータプロジェクタ装置の外観構成を示す斜視図。
【図2】同実施形態に係るデータプロジェクタ装置が備える電子回路の機能構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態に係る電源投入時の基本的な処理内容を示すフローチャート。
【図4】同実施形態に係るマイクロミラー素子を構成する微小ミラーと光源光、レーザ発光部、及び投影レンズ部の関係を示す図。
【図5】同実施形態に係る複数のレーザ発光部によるスクリーンへの投射の概念を示す図。
【図6】同実施形態に係る投影対象へのレーザ光照射位置を例示する図。
【図7】同実施形態に係る投影対象への他のレーザ光照射位置を例示する図。
【符号の説明】
【0088】
10…データプロジェクタ装置、11…本体ケーシング、12…投影レンズ部、13…レーザ受光部、14…Ir受光部、15…スピーカ部、16…インジケータ部、17…キー操作部、18A,18B…調整脚部、21…入出力コネクタ部、22…入出力インタフェース(I/F)、23…画像変換部、24…投影画像処理部、25…ビデオRAM、26…マイクロミラー素子、26a…微小ミラー、27…リフレクタ、28…光源ランプ、29…カラーホイール、30…ミラー、31…ステッピングモータ(M)、32A〜32C…レーザ発光部、33…モータ(M)、34…投影光処理部、35…CPU、36…メインメモリ、37…プログラムメモリ、38…操作部、39…音声処理部、SB…システムバス、SCR…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
アレイ状に配列された複数の微小ミラーの上記光源からの光に対する各傾斜角度を制御して反射光により光像を形成するミラー素子を駆動し、入力される画像信号に対応した光像を光学レンズ系を介して投影対象に向けて投影する投影手段と、
上記光源とは別に設けられ、上記ミラー素子の微小ミラーが光源からの光を上記光学レンズ系の外部に反射させる傾斜角度にある状態で、当該微小ミラーへ変調された光を入射させ、その反射光を上記光学レンズ系を介して出射させるように配置した発光手段と、
上記発光手段での発光で上記光学レンズ系を介して上記投影対象から得られる反射光を受信する受光手段と、
上記発光手段での発光と上記受光手段で受信した反射光の位相差を検出することにより上記投影対象までの距離を測定する測距手段と、
上記測距手段で得た距離により上記投影手段での投影条件を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする投影装置。
【請求項2】
上記発光手段は、上記ミラー素子の異なる微小ミラー位置へ入射させる複数の発光部を有し、
上記測距手段は、上記発光手段の複数の発光部での発光と上記受光手段での受光の位相差を検出することにより上記投影対象の複数位置までの各距離を測定する
ことを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項3】
上記投影手段の光学レンズ系は、投影画角を可変するズーム機能を有し、
上記発光手段は、上記光学レンズ系による複数の投影画角でそれぞれ発光部により発光させ、
上記測距手段は、上記光学レンズ系による複数の投影画角で上記発光手段の発光部での発光と上記受光手段での受光の位相差を検出することにより上記投影対象の複数位置までの各距離を測定する
ことを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項4】
上記発光手段は、レーザ光を発振するレーザ発振部と発振されたレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズとを有することを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記発光手段での発光時に上記ミラー素子による光像の形成を一時的に停止させることを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記発光手段での発光時に、上記ミラー素子を構成する複数の微小ミラー中、上記発光手段からの発光が照射される位置にある微小ミラーのみ光像の形成を一時的に停止させることを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項7】
光源と、アレイ状に配列された複数の微小ミラーの上記光源からの光に対する各傾斜角度を制御して反射光により光像を形成するミラー素子を駆動し、入力される画像信号に対応した光像を光学レンズ系を介して投影対象に向けて投影する投影部とを備えた投影装置での制御方法であって、
上記光源とは別に設けられ、上記ミラー素子の微小ミラーが光源からの光を上記光学レンズ系の外部に反射させる傾斜角度にある状態で、当該微小ミラーへ変調した光を入射させ、その反射光を上記光学レンズ系を介して出射させるように配置した発光部を駆動する発光工程と、
上記発光工程での発光で上記光学レンズ系を介して上記投影対象から得られる反射光を受信する受光工程と、
上記発光工程での発光と上記受光工程で受信した反射光の位相差を検出することにより上記投影対象までの距離を測定する測距工程と、
上記測距工程で得た距離により上記投影部での投影条件を制御する制御工程と
を有したことを特徴とする投影制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−186678(P2009−186678A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25526(P2008−25526)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】