投影露光装置
【課題】XY方向の倍率補正を十分な変化幅で高速に制御でき、投影光学系への影響が少なく、簡単な構成で、長期間使用が可能である露光装置を提供する。
【解決手段】フォトマスク20を通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置であって、一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズ32と、それに対応する凹型の曲面を一方に有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズ31を、各曲面が対向するように配置したレンズの組を、投影光学系とフォトマスクとの間に設け、プリント基板上に形成された配線パターン上で直交する2軸(X方向とY方向)の各方向毎に得られた基板伸縮量の情報に応じて、レンズの組の凸型の曲面と凹型の曲面との間隔を変化させて投影光学系による投影倍率の誤差を補正する。
【解決手段】フォトマスク20を通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置であって、一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズ32と、それに対応する凹型の曲面を一方に有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズ31を、各曲面が対向するように配置したレンズの組を、投影光学系とフォトマスクとの間に設け、プリント基板上に形成された配線パターン上で直交する2軸(X方向とY方向)の各方向毎に得られた基板伸縮量の情報に応じて、レンズの組の凸型の曲面と凹型の曲面との間隔を変化させて投影光学系による投影倍率の誤差を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの配線パターン像をプリント基板上に投影する露光装置に関し、特に、投影された配線パターン像の縦横方向(XY方向)それぞれの方向における拡大倍率の差を検出して倍率補正して投影する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント基板(またはプリント配線基板とも称する)の製造にはフォトリソグラフィ法が用いられている。フォトリソグラフィ法では、例えば、表面に銅箔層を設けた樹脂板(銅張積層板)等の表面にフォトレジスト等の感光材料を塗布し、その感光材料に対して配線パターン像を露光装置により感光させて焼き付けし、露光しなかった部分の銅箔層をエッチングで除去することで基板上に配線を形成する。尚、使用する薬剤等によっては露光した部分をエッチングで除去する場合もある。また、プリント基板は、近年になり、多層化、高密度化、微細化が進んでおり、特に、高密度化と微細化が進んだ配線パターンを多層化する際には、上下層間の接続または絶縁等が関係し、各層の配線パターンを露光する際の位置合わせに高い精度が要求される。しかし、プリント基板の樹脂板はフォトリソグラフィ法の化学薬品や熱により伸縮し、しかも縦方向と横方向では伸縮率が異なることから、縦方向と横方向(X方向とY方向)を一様に補正する倍率補正方法では各層の接続位置等を補正できない場合があった。
【0003】
その問題に対して、例えば、走査型の露光装置において、通常のX/Y方向(例えばXが基板上走査方向、Yが基板上でそれと直交する方向)に等しく倍率変化させる投影レンズ(単数または群)と、投影光学系内に光軸方向(Z方向)に移動可能でY方向に倍率を偏倍させることが可能なシリンドリカルレンズ(単数または群)を設けた露光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の露光装置では、X方向の倍率誤差については、走査速度を変えることで投影倍率を変えて補正すると共に、Y方向の倍率誤差については、シリンドリカルレンズを投影光学系内で光軸方向(Z方向)に移動させることで投影光学系のY方向の投影倍率を変えて補正する。
【0004】
より詳しくは、引用文献1のシリンドリカルレンズは、段落0046に示されるように、ピエゾ素子によって光軸方向(Z方向)に微小駆動されることでY方向にパワーを持ち、他の投影レンズによって均等に得られる縮小倍率(投影倍率)に対してY方向に偏倍率をかけることができる。つまり、引用文献1では、他の投影レンズによってX/Y方向に等しく倍率変化させた配線パターン像の倍率に対して、シリンドリカルレンズによりY方向に任意の偏倍倍率を設定することで、X/Y方向間の倍率の差を補正することができる。
また、引用文献1のシリンドリカルレンズは、引用文献1の段落0053及び図9に示されるように、投影光学系を設計する段階で、他の投影レンズと共に投影光学系に予め組み込まれる。また、複数の各シリンドリカルレンズ間の距離は、ピエゾ素子により光軸方向に微小駆動できる以外は、ほぼ固定された距離が確保されている。
【0005】
別の例では、拡大倍率の差を補正するために、可撓性を有する薄いガラス板等の平板をフォトマスクと投影光学系の間に挿入し、その平板を撓ませて曲率を変化させることで、上記したシリンドリカルレンズの場合と同様な効果を得る方法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。その場合の平板は、例えば対向する両側辺の組のうちの一方の組を、その中心部に向けて押圧することで、平板を下側に2字曲線状に突出するように撓ませて曲率を変化させる。
【0006】
特許文献2の露光装置では、撓ませた平板を光軸を中心に回動させることにより倍率補正の方向を微細に変更できるようになっている。特許文献2の撓ませた平板に入射した光は一方向のみに拡大(または縮小)されて射出されることで投影倍率を変化させる。平板の母線をプリント基板の縦横方向であるX方向またはY方向に合わせることにより、X方向またはY方向に拡大(または縮小)が可能になる。
【0007】
特許文献3の露光装置では、二枚の平板を上方向か下方向に撓ませ、その各平板を光軸を中心として各々逆方向に同じ角度だけ回転させて拡大縮小倍率を連続的に変更できるようになっている。特許文献3の撓ませた平板に入射した光も、特許文献2の場合と同様に、一方向のみに拡大(または縮小)されて射出されることで投影倍率を変化させる。また、特許文献3では、上方向に撓んだ平板と、下方向に撓んだ平板の組み合わせを各々逆方向に同じ角度だけ回転させることにより、X方向またはY方向に独立に連続的に拡大(または縮小)させることを可能にしている。
【特許文献1】特開平7−72293号公報
【特許文献2】特開2003−223003号公報
【特許文献3】特開2006−292902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献1のシリンドリカルレンズは、常時入射光を光学的に拡大(または縮小)して射出するものであり、投影光学系の内部に配置されていることから、補正を考える場合に、投影光学系の他のレンズの倍率も考慮する必要があって煩雑であり、光学的な設計の自由度を損なうことになり、投影のために広がり基調になっている光束に対して補正するので収差が大きくなる。また、引用文献1のシリンドリカルレンズは、倍率を変化させる必要が無い場合でも、焦点位置と収差等の光学性能が変化するので、シリンドリカルレンズの影響を考慮して投影(露光)させなければならない。
【0009】
引用文献2及び3の可撓性を有する平板を用いて補正する露光装置では、例えば、平板の保持部を中心側に可動させて平板の曲率を変化させる場合は、保持部にその可動機構が必要になり、さらに、平板の曲率を頻繁に変化させることで、長期間の使用においては平板の材料が疲労して破損する場合がある。また、可撓性を有する平板としてガラス板を用いる場合には、その平板の厚みを厚くした場合、撓み量が小さくなり必要な倍率変化をさせることが困難になる。逆に平板の厚みを薄くした場合、撓み量は比較的大きくできるが、厚みが薄いため必要な倍率の変化を得るためには撓み量を増加させる必要があり、撓み限度内の撓み量で必要な倍率変化をさせることが困難な場合がある。
【0010】
また、倍率補正に用いられる所定の曲線方程式に従う曲率になるように平板を撓ませるためには、複雑な機構が必要であり、撓ませるための時間が必要である。また、例えば、平板の表裏に同じ曲率を有するように加工することも考えられるが、これも撓ませることができる平板は厚みがとれないことから困難である。従って、各種の最適化を行って引用文献2及び3の平板を形成したとしても、十分なXY方向の倍率補正を行うための曲率を平板に持たせることは困難である。また、撓ませた2枚の平行平板の間隔を変化させることが提案されているが、2枚の平行平板では、その間隔を変えても、原理的にXY方向の倍率補正は不可能であり、XY方向の倍率補正の制御には適用できない。
【0011】
そこで本発明は、上記の課題を解決するために、XY方向の倍率補正を十分な変化幅で高速に制御でき、投影光学系への影響が少なく、簡単な構成で、長期間使用が可能である露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る投影露光装置は、光源からの光をフォトマスクに形成されたパターンに照射し、当該フォトマスクを通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置であって、一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズと、一方の面に前記凸型の曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズを、前記各曲面が対向すると共に前記プリント基板に平行となるように配置した少なくとも1組のレンズの組を、前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間に設け、前記プリント基板上に形成された配線パターンにおける前記プリント基板の表面上で直交する2軸の基板伸縮量情報に応じて、前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させることで、前記2軸の各方向を一括して変化させる前記投影光学系による投影倍率の誤差を補正することを特徴とする。請求項1の本発明によれば、必要な場合にのみ必要な補正量で、プリント基板の表面上で直交する2軸の各方向毎に前記投影光学系の倍率を補正することができる。また、本実施態様では、必要でない場合には対向する曲面の距離を無くすことで倍率補正を行わないようにすることができる。
【0013】
好ましくは、請求項2に係る本発明のように前記凸型レンズは、一方の面に前記2軸の一方のみに沿って曲率を有する凸型の曲面を有する凸型シリンドリカルレンズであり、前記凹型レンズは、一方の面に前記凸型シリンドリカルレンズの曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有する凹型シリンドリカルレンズであるようにしてもよい。本実施態様では、倍率補正をする際にレンズを撓ませる等のストレスがかからないため長期間使用することができる。
【0014】
好ましくは、請求項3に係る本発明のように前記凸型レンズは、一方の面に前記2軸の一方に沿う曲率と他方に沿う曲率が異なる凸型の曲面を有する凸型の曲面を有する凸型非球面レンズであり、前記凹型レンズは、一方の面に前記凸型非球面レンズの曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有する凹型非球面レンズであるようにしてもよい。本実施態様では、1組の凸型非球面レンズと凹型非球面レンズでX方向とY方向の倍率補正をすることができる。
【0015】
好ましくは、請求項4に係る本発明のように前記基板伸縮量を計測する基板伸縮計測部と、前記基板伸縮量の情報から、それらの差と当該差を減少させるための前記2軸の一方又は両方の投影倍率に対する補正値を演算する制御部と、前記補正値により前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させて投影倍率を補正する投影倍率補正部とを備えるようにしてもよい。本実施態様では、基板の伸縮量を計測により得て補正値を演算し、その補正値から対向するレンズの曲面の間隔を変化させることができる。
【0016】
好ましくは、請求項5に係る本発明のように前記制御部は、前記各基板伸縮量の情報から、台形歪もしくは菱形歪を検出した場合、当該台形歪もしくは菱形歪に対して、前記2軸のいずれかを回転軸として、他方の軸に沿う一端側の前記曲面間の間隔が、多端側の前記曲面間の間隔に対して大きくなるように回転させた補正値を演算するようにしてもよい。
本実施態様では、前記曲面間の間隔を、XとYの各軸方向の少なくとも一方に沿って変化させることで、基板の台形歪もしくは菱形歪を補正することができる。
【0017】
好ましくは、請求項6に係る本発明のように前記組のレンズの少なくとも一方の位置を光軸方向に移動させることができる駆動部を有し、前記制御部は、前記投影倍率に対する補正値から、前記基板伸縮量の差を補正するように生成した制御信号を前記駆動部に出力するようにしてもよい。本実施態様では、制御部で生成された制御信号を駆動部に出力して、駆動部で組のレンズを移動させることができる。本実施態様では、制御部で補正値から生成された制御信号を駆動部に出力して、駆動部で組のレンズを移動させることができる。
【0018】
好ましくは、請求項7に係る本発明のように前記組のレンズを2組用い、前記プリント基板上の2軸の各々に対応させて、各組のレンズにおける最大曲率に対応する軸方向が各々直交するように配置するようにしてもよい。本実施態様では、2か所を駆動させる駆動部により、X方向とY方向に対応させて個別に倍率の差を補正できる。
【0019】
好ましくは、請求項8に係る本発明のように前記駆動部は、前記直交配置された2組のレンズのうち、前記フォトマスクに最も近接するレンズと、前記プリント基板に最も近接するレンズを少なくとも駆動するようにしてもよい。本実施態様では、駆動するレンズを最上部と最下部の2個にでき、駆動部もその2つのみを駆動させるようにすることができる。
【0020】
好ましくは、請求項9に係る本発明のように前記駆動部は、前記2組直交させて配置された組のレンズのうち、最もフォトマスクに近接するレンズと最もプリント基板に近接するレンズとに挟まれた中間の2枚のレンズを少なくとも駆動するようにしてもよい。本実施態様では、駆動するレンズを中間の2枚のレンズにでき、中間の2枚は一括して移動させることができるので、駆動部もその1つのみを駆動させるようにすることができる。
【0021】
好ましくは、請求項10に係る本発明のように前記中間の2枚のレンズを一体化して形成するようにしてもよい。本実施態様では、中間の2枚を一体化させることで、製造工数を減少させ、接合面で減少していた光の減衰量を減らし、透過率を向上させることができる。
【0022】
好ましくは、請求項11に係る本発明のように前記駆動部は、前記対向する各曲面の間隔を変化させるために、前記組のレンズの少なくとも一方を、前記組のレンズの光軸方向に沿って平行移動させるようにしてもよい。本実施態様では、組のレンズの一方を移動させるだけでよいので、駆動部を簡潔な構成にすることができる。
【0023】
好ましくは、請求項12に係る本発明のように前記駆動部は、前記組のレンズの少なくとも一方を、前記組のレンズを支持する筐体内で平行移動させるようにしてもよい。本実施態様では、レンズの一方を、組のレンズの光軸方向に沿って筐体内で平行移動させるので、安定してレンズの平行移動を実施させることができる。
【0024】
好ましくは、請求項13に係る本発明のように前記各組のレンズは、当該レンズの周縁支持部により支持され、該周縁支持部は、各々逆方向に外向ネジが形成されると共に回転不能且つ光軸方向に移動可能に支持され、前記組のレンズを支持する筐体の内面には前記外向ネジと噛み合う内向ネジが形成され、前記駆動部は、前記筐体を回転させることで、前記レンズを光軸方向に沿って平行移動させるようにしてもよい。本実施態様では、筐体でレンズを支持し、筐体を回転させることで、レンズを光軸方向に沿って筐体内で平行移動させるので、平行移動を安定して実施できる。また、組のレンズの周縁支持部に各々逆ネジを形成することにより、筐体を回転させることで、筐体内の組の各レンズを近づけたり遠ざけたりすることができる。
【0025】
好ましくは、請求項14に係る本発明のように組のレンズは、入射光が光軸に平行である場合、出射光が光軸に平行になるテレセントリック光学系であるようにしてもよい。本実施態様では、平行な入射光の場合、補正を実施した後の出射光も光軸に平行にできる。
【0026】
好ましくは、請求項15に係る本発明のように組のレンズの対向する各々の曲面の曲率は、僅かに異なるようにしてもよい。本実施態様では、組のレンズの対向間隔により、入射光を集光させることと発散させることができ、その結果、倍率を、XとYの2軸方向の倍率の差を縮小する側から拡大する側まで連続して補正する事が可能となる。
【0027】
好ましくは、請求項16に係る本発明のように投影光学系とフォトマスクとの間、または、投影光学系とプリント基板との間のうち、投影倍率補正部が配置されない方に設置され、組のレンズの合計の厚みと同様な厚み寸法を有し、組のレンズと同様な材料で形成された収差補正板を有するようにしてもよい。本実施態様では、組のレンズの収差を収差補正板で補正することができる。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の請求項17に係るプリント基板の製造方法は、光源からの光をフォトマスクに形成されたパターンに照射し、当該フォトマスクを通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置によるプリント基板の製造方法であって、一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズと、一方の面に前記凸型の曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズを、前記各曲面が対向すると共に前記プリント基板に平行となるように配置した少なくとも1組のレンズの組を、前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間に設ける工程と、前記プリント基板上に形成された配線パターンにおける前記プリント基板の表面上で直交する2軸(X方向とY方向)の基板伸縮量を計測する工程と、前記検出された2軸方向の基板伸縮量の情報から、それらの差と当該差を減少させるための前記2軸の一方又は両方の投影倍率に対する補正値を演算する工程と、前記補正値により、前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させ、前記2軸の各方向を一括して変化させる前記投影光学系による投影倍率の誤差を補正する工程とを有する。請求項17の本発明によれば、必要な場合にのみ必要な補正量でシリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸と直交する方向の倍率補正ができる投影露光装置を提供することができる。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明の請求項18に係るプリント基板の製造方法は、前記基板伸縮量を計測する工程で、前記各基板伸縮量の情報から、台形歪もしくは菱形歪を検出した場合、前記補正値を演算する工程では、前記台形歪もしくは菱形歪に対して、前記2軸のいずれかを回転軸として、他方の軸に沿う一端側の前記曲面間の間隔が、多端側の前記曲面間の間隔に対して大きくなるように回転させた補正値を演算する。請求項18の本発明によれば、基板に対する台形歪もしくは菱形歪等の倍率補正ができる投影露光装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の投影露光装置によれば、XY方向の倍率補正を十分な変化幅で高速に制御でき、投影光学系への影響が少なく、簡単な構成で、長期間使用が可能であり、また、必要な場合にのみ必要な補正量でシリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸と直交する方向の倍率補正をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の投影露光装置の実施の形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の投影露光装置の概略構成を示すブロック図である。
投影露光装置1は、光源部10からの出射光をフォトマスク20に形成された配線パターンに照射し、そのフォトマスク20を通過した配線パターンの像を含む光を、投影光学系50を介してプリント基板100上に投影して露光させる投影露光装置である。より詳しくは、露光前のプリント基板材料の上に均等に塗布された感光材料(フォトレジスト)に、配線パターンを露光させることで、プリント基板材料の上にプリント配線部を形成する装置である。露光装置には、使用される感光材料に対応してソルダレジスト用とパターンレジスト(ドライフィルムレジスト等)用がある。後工程ではんだを付着させる場合にはソルダレジストが用いられ、基板の銅箔層をエッチングする場合には、パターンレジストが用いられる。
【0033】
ソルダレジストは、例えば、はんだが付いてはいけない場所へのはんだの付着を防いだ状態ではんだ槽にディップすること等によって、配線または銅箔パターンの保護層を形成するものである。感光性のソルダレジストを用いた場合は、露光した部分のみか、露光した部分を除いて、はんだを付着させることができる。感光性のパターンレジストは、プリント基板材料(例えば表面に銅箔層を有する樹脂板:銅張積層板等)における銅箔等の上に均等に塗布され、その感光性パターンレジストに対して基板パターンを露光装置により感光させて焼き付けし、露光しなかった感光性パターンレジストを除去してから銅箔層をエッチングすることで露光した部分のみか、露光した部分を除いて、銅箔をエッチング等で除去することができる。
【0034】
光源部10は、例えば、レーザー光発生器、アークランプ、または、水銀灯等であり、感光性のフォトレジストを感光させることができる。また、光源部10には、照射光を平行光にするためのレンズ等の光学系を含んでいてもよい。
【0035】
フォトマスク20は、レチクルとも称され、光源部から出射された光を、配線パターンの部分を除いて通過させるか、又は、配線パターンの部分だけ通過させ、残りの部分の光は遮る遮蔽板である。
【0036】
投影倍率補正部30は、フォトマスク20と投影光学系50との間で特にフォトマスク20の直下、または、投影光学系50とプリント基板100との間で特に基板100の直上に配置され、配線パターンにおけるX方向とY方向の倍率差(偏り)を減少させるように投影光を補正する。より詳しくは、投影倍率補正部30は、プリント基板上で直交するX方向とY方向のうちの何れか一方の方向の変倍率を補正する。補正方法については、図2〜図4を用いてさらに詳しく後述する。
【0037】
投影光学系50は、配線パターンを露光させる光を基板上に投影するレンズ等を含む光学系であり、入射した光は内部で一旦集光されてから拡散して、基板に対して出射される。
【0038】
ステージ60は、例えば、プリント基板材料が設置される台であり、X方向とY方向に移動させて露光位置を微調整することができる。
【0039】
基板伸縮量計測部70は、プリント基板上に形成された配線パターンにおける平面上で直交する2軸(X方向とY方向)の倍率の差(偏り)を計測する。例えば、フォトマスク側に第1の基準マークを設けておき、プリント基板上に第2の基準マーク(フォトマスクの第1の基準マークに対応する)を設けておく。第2の基準マークは、プリント基板のX方向とY方向の偏りが全く無い場合に、投影倍率の誤差が無い投影光学系で投影された第1の基準マークに完全に一致するように形成しておく。そして、カメラで第2の基準マーク上の投影された第1の基準マークを撮影し、その撮影画像を解析して第2の基準マークに対して第1の基準マークがX方向とY方向にどれだけ偏っているかを計測する。本実施形態の基板伸縮量計測部70は、このようにして、基板に形成された配線パターンにおけるX方向とY方向の偏りを検出するが、検出処理については後述する制御部で実施してもよい。
【0040】
投影倍率計測部75は、例えば、カメラで第2の基準マーク上の投影された第1の基準マークを撮影し、その撮影画像を解析して、基板伸縮量計測部70で検出された基板に形成された配線パターンにおけるX方向とY方向の偏りを補正した第2の基準マークに対して、投影光学系50を介して投影された第1の基準マークがX方向とY方向にどれだけ偏っているかを計測する。本実施形態の投影倍率計測部75は、このようにして、露光光におけるX方向とY方向の偏りを検出するが、検出処理については後述する制御部で実施してもよい。
【0041】
制御部80は、例えば、マイクロプロセッサ等の演算素子と記憶素子と各周辺装置とのインターフェースを含み、倍率差を低減させるように生成した制御信号を駆動部90に出力する。言い換えれば、投影倍率補正部30の対向する各曲面の間隔を可変させることでX方向とY方向の倍率差を減少させる。さらに詳しくは、制御部80は、投影倍率計測部75からの露光光におけるX方向とY方向の偏りデータが入力され、その偏り量を低減させるか0にする投影倍率補正部30の補正値を演算し、その補正値を得るための制御信号を駆動部90に出力する。
【0042】
駆動部90は、組のレンズ31、32の少なくとも一方(本実施形態では31のみ)の位置を光軸方向に移動させることができる。さらに詳しくは、制御部80からの制御信号を受けて、例えば、モータと各種ギア等の駆動機構で投影倍率補正部30内のシリンドリカルレンズを駆動する。駆動方法については図2及び図3等を用いて後述する。
【0043】
基板100は、ベースとなる絶縁樹脂の表面上に銅の薄板等を貼り付けた基板材料であり、投影露光装置1に設置する場合には、さらに銅板上にパターンレジストが塗布される。このパターンレジストに対してフォトマスク20を通過した配線パターンの露光光が照射されることで、パターンレジストが露光される。基板の種類としては、例えば、芯材の紙に熱硬化性のフェノール樹脂を含浸させた紙フェノール基板、芯材の紙に熱硬化性のエポキシ樹脂を含浸させた紙エポキシ基板、芯材のガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板等がある。
【0044】
図2は、図1の投影倍率補正部の上面図であり、図3(a)と(b)は、各々図2のA−A断面図であり、図4(a)と(b)は、図3(a)と(b)の各シリンドリカルレンズの斜視図である。
【0045】
本実施形態の投影倍率補正部30には、一方の面に凸型の曲面を有し他方の面が平面である凸型シリンドリカルレンズ32と、一方の面に凹型の曲面を有し他方の面が平面である凹型シリンドリカルレンズ31を、各曲面が対向すると共にプリント基板100に平行となるように配置した1組のレンズの組が用いられる。各シリンドリカルレンズ31、32の組における、各レンズ31、32の他方の面は、光軸に対して垂直な平面である。投影倍率補正部30は、シリンドリカルレンズ31、32の組における凸型の曲面と凹型の曲面との間隔を調整する。また、図2では、シリンドリカルレンズの平面外形をその他のレンズに合わせて円形としているが、透過光の通過領域を全てカバーできれば図4に示したように方形としてもよい。また、組のレンズ31、32の対向する各々の曲面の曲率は、略同様である。また、本実施形態の組のレンズ31、32は、入射光が光軸に平行である場合、出射光が光軸に平行になるテレセントリック光学系である。
【0046】
凹型シリンドリカルレンズ31は、その周縁部が支持枠41により保持される。同様にして凸型シリンドリカルレンズ32は、その周縁部が支持枠42により保持される。
【0047】
支持枠41と支持枠42は、支持筒33内を光軸に平行な方向に摺動することができる。支持枠41と支持枠42の外周には、支持筒33の隙間を通って外部の駆動部90と接続する接続腕部94が外部へ突出するように設けられている。各接続腕部94の先端には、対象面上に点接触して摺動するように、接触部が円弧状に形成された接触部93が接続されている。
【0048】
駆動部90は、モータ91と、モータの回転運動を直線運動に変換する変換部(不図示)と、変換部の直線運動側に接続されて支持筒33に向かう動きを支持筒33の軸に平行方向の動きに変換するくさび型カム92とを有する。変換部は、例えば、ラックアンドピニオンのように回転運動を直線運動に変換する機械要素である。また、くさび型カム92の先端には、支持筒33の外壁との間にばねを設けて、くさび型カム92が支持筒33の外周から外側に放射する方向に戻る動作を補助するようにしてもよい。この構成により駆動部90は、組のレンズ31、32の少なくとも一方(本実施形態では凹型シリンドリカルレンズ31のみ)を、組のレンズを支持する支持筒33(筐体)内で、組のレンズの光軸方向(本実施形態ではZ方向)に沿って平行移動させて、対向する各曲面の間隔を変化させることができる。
【0049】
投影倍率補正部30は、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凹型シリンドリカルレンズ31を凸型シリンドリカルレンズ32から離間させ、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔を0からD1に変化させる。図3(a)と図4(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過して、平行光L3として出射される。それに対して図3(b)と図4(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔がD1の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC1で拡大されてから、平行光L3として出射される。
【0050】
つまり、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向で、且つ、プリント基板100の表面に平行な方向における投影光の変倍率と、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率との差を拡大側に補正することができる。この場合、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率は変わらないので、その変倍率を基準として、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向の変倍率をY方向に拡大する側で補正する。
【0051】
実際に本実施形態の組のレンズを設計する場合は、例えば、1体1の投影光学系のレンズ径を200(mm)とした場合、フォトマスク20と投影光学系50との間に配置される組のレンズのレンズ径は、NAを考慮すると220(mm)程度の直径を有する必要がある。その外周の場合で1°程度の接線を有するレンズの曲率は、以下の式で得られた値の半径を有する円の外周により求められる。尚、シリンドリカルレンズのガラス厚は設計上の各種仕様により決まり、本願の特許内容では特に制約されないが、例えば、0.5(mm)程度でよい。
220・2*sin1°=6303(mm)
【0052】
次に、例えば凹型シリンドリカルレンズ31に入射した光束L2が、上記した曲率の傾きを有するガラス層(屈折率1.6)から空気層(屈折率1)に光束LC1として出射する場合の傾きθ(入射光束L2に対する傾き)を求めると以下の式となる。
1.6/1*sin1°=0.028=asin(θ+1°)
θ=0.6°
【0053】
例えば凹型シリンドリカルレンズ31から出射した光束LC1は、θ=0.6°の傾きで拡大しながら空気層(屈折率1)を進行する。そして、ガラス層(屈折率1.6)の凸型シリンドリカルレンズ32に入射するときの境界面で、再びθ=0°(入射光束L2の角度)に戻される。
【0054】
次に、上記の組のレンズを用いて倍率補正をする場合には、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔D1はどのようにして求めるかについて説明する。例えば、倍率補正量が100ppmの場合、凸型シリンドリカルレンズ32の周辺部では、凹型シリンドリカルレンズ31からの光を22μm外側にシフトさせる必要がある。従って、間隔D1は以下の式で求めることができる。
D1=0.022(mm)/2/sin0.6°=1.05(mm)
【0055】
つまり、X方向とY方向の間で100ppmの倍率補正を実施する場合には、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔D1を1.05(mm)だけ開ければよいことになる。また、例えば、X方向とY方向の間で1000ppmの倍率補正を実施する場合には、間隔D1を10.5(mm)だけ開ければよいことになる。
【0056】
以上のようにして、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面の各周辺部の曲率を、例えば1°以下の小さい値にすれば、補正の精度を高くすることができ、逆に曲率を大きくすれば、倍率補正量を多くできる。
【0057】
図5は、本実施形態の投影露光装置1を用いてプリント基板に配線パターンを形成する場合の一例を示すフローチャートである。
【0058】
まず、投影露光装置1には、事前に、一方の面に凸型の曲面を有する凸型シリンドリカルレンズ32と、一方の面に凹型の曲面を有する凹型シリンドリカルレンズ31を、各曲面が対向すると共にプリント基板100に平行となるように配置したレンズの組を設けておく。
【0059】
投影露光装置1で露光させる配線パターンのフォトマスク20を作成する(S1)。次に、銅張積層板等のプリント基板材料を露光させるサイズに切断し(S2)、その銅箔層の表面にフォトレジストを塗布し(S3)、そのプリント基板材料を投影露光装置1のステージ60上に設置する(S4)。投影露光装置1は、投影倍率計測部75等を用いてプリント基板材料の伸縮状態を検出する(S5)。ここで投影露光装置1は、投影露光装置1に設置されたプリント基板材料100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸(X方向とY方向)の倍率の差を検出している。
【0060】
投影露光装置1は、検出された2軸方向の倍率の差(プリント基板材料の伸縮状態)に基づいて、投影倍率補正部30で実施する補正量を演算する(S6)。投影露光装置1は、演算された補正量に基づいて、投影倍率補正部30で露光光のX方向とY方向の変倍率を補正して、プリント基板材料に配線パターンを露光させる(S7)。その際に投影露光装置1は、露光光のX方向とY方向の変倍率を補正するために、レンズの組31、32における凸型の曲面と凹型の曲面との間隔を変化させることで、シリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸(X方向)と直交し、且つ、プリント基板100に平行である方向(Y方向)における投影光の変倍率の、シリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸方向(X方向)における投影光の変倍率に対する差を減少させるように投影光を補正する。
【0061】
露光後のプリント基板材料をエッチングすることにより、不要な配線部分を除去する(S8)。エッチングが終了したらフォトレジストを除去し(S9)、プリント基板材料にスルーホール加工等の後工程を実施し(S10)、最後にプリント基板の表面を保護するコーティングを実施する(S11)。
【0062】
以上のように本実施形態の投影露光装置1は、必要な場合にのみ必要な補正量で各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向の倍率補正ができる。このことから本実施形態の投影露光装置1は、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差をY方向に拡大する側で補正できる。
【0063】
また、本実施形態の投影露光装置1は、筐体(支持筒33)でレンズを支持して、筐体内でレンズの一方を組のレンズの光軸方向(Z方向)に沿って平行移動させるだけなので、平行移動を安定して実施でき、駆動部を簡単な構成にすることができる。
【0064】
また、本実施形態の投影露光装置1は、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔を0とすることで、必要でない場合には倍率補正を行わないようにすることができ、投影倍率補正部30への入射光が光軸に平行である場合、補正を実施した後の出射光も光軸に平行にできる。
【0065】
また、本実施形態の投影倍率補正部30は、2枚の組のシリンドリカルレンズの対向する曲面間の間隔を変化させて補正するので、従来の平行平板を撓ませる方法のように、平行平板の厚みが固定寸法であるため自由度が少なくなることがなく、間隔を任意の厚みとして光学的に補正することができ、さらに各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸に沿って間隔の厚みを変えて楔形にすることもできる。
【0066】
また、本実施形態の組のレンズは2枚の組のレンズを総合すると、光束の入射面と出射面が一枚の平行平板ガラスと同様になるので、レンズによる収差の発生を抑制でき、さらにオフセット変動やフォーカスずれの発生も抑制できる。本実施形態では、この投影倍率補正部30を、光束の広がりが少ないフォトマスク20の直下、または、基板の直上に配置することで収差をほとんど発生させないようにすることができる。従って、既存の投影露光装置に後付けで投影倍率補正部を追加することが可能になる。
【0067】
また、各シリンドリカルレンズ31、32の片面を平面としたことで、曲面側の加工が容易になり、製造コストを低減させることができる。このシリンドリカルレンズの製造方法は、例えば、まず、本実施形態のシリンドリカルレンズの曲面の型に平行平板のガラスを貼り付け、その状態でガラスの解放側の面をフラットに研磨する。その後、型からガラスを外すと、ガラスの弾性により、ガラスの型に貼り付いていた面がフラットに戻り、研磨した面が型の反転形状(型が凹形状なら反転した凸形状、型が凸形状なら反転した凹形状)と同様な曲面となる。但し、この場合のガラスの平板の面は、型に貼り付いていた状態から元に戻る際にわずかに残留曲率を残す場合がある。従って、本発明における各シリンドリカルレンズ31、32の片面の平面とは、基本的に光軸に対して垂直な平面であるが、上記したような加工時の残留曲率を有している場合を含むものである。
【0068】
また、本実施形態の投影露光装置では、投影倍率補正部30でX方向またはY方向の倍率を補正できるだけでなく、例えば、基板パターンの四辺形の対角線方向とXY方向のうちの補正可能な方向を回転させて一致させることで菱形歪を補正することが可能になる。例えば、本実施形態では、各シリンドリカルレンズ31、32は、基板と平行の状態だけでなく、図2に示した複数の駆動部90の駆動量を制御して組のレンズのX方向に角度をつけ、X方向における各シリンドリカルレンズの曲面間の距離が漸増または漸減するようにチルトさせることができる。その結果、X方向の軸に沿って、シリンドリカルレンズ31をシリンドリカルレンズ32に対して傾けることができ、上記した間隔の厚みを変えて楔形にすることができるので、X軸方向の場所ごとに倍率が変わり、台形歪を補正することが可能になる。また、菱形歪についても、同様にして補正することが可能になる。
【0069】
このように本実施形態の投影露光装置では、XY方向の倍率補正をX方向とY方向の間で1000ppm等の十分な変化幅で制御でき、しかも、従来の平行平板のように撓ませる必要が無いので高速に制御できる。
【0070】
また、本実施形態では、組のレンズの入射側と出射側の面が平行平面であるので投影光学系への影響が少なく、曲率が略等しい凹凸2個のシリンドリカルレンズを対向させる簡単な構成であり、レンズを撓ませる等のストレスがかからないため長期間使用が可能であり、必要な場合にのみ必要な補正量で組のシリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸と直交する方向の倍率補正をすることができる。
【0071】
<第2実施形態>
図6(a)と(b)は、本発明の第2実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図であり、図7(a)と(b)は、図6(a)と(b)の各シリンドリカルレンズの斜視図である。尚、図6(a)と(b)は、第1実施形態の図3(a)と(b)に対応し、図7(a)と(b)は、第1実施形態の図4(a)と(b)に対応する図でもある。
【0072】
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、第2実施形態では、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面を上下が逆になるように入れ替えた点である。第2実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0073】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凸型シリンドリカルレンズ32を凹型シリンドリカルレンズ31から離間させ、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔を0からD2に変化させる。図6(a)と図7(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で縮小されることなくそのまま透過して、平行光L3として出射される。それに対して図6(b)と図7(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔がD2の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC2で縮小されてから、平行光L3として出射される。
【0074】
つまり、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向で、且つ、プリント基板100の表面に平行な方向における投影光の変倍率と、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率との差を縮小側に補正することができる。この場合、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率は変わらないので、その変倍率を基準として、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向の変倍率をY方向に縮小する側で補正する。
【0075】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を縮小する側で補正でき、第1実施形態における前記した以外の効果と同様な効果を得ることができる。
【0076】
<第3実施形態>
図8(a)と(b)は、本発明の第3実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。尚、図8(a)と(b)は、第1実施形態の図3(a)と(b)に対応する図でもある。
【0077】
第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、第3実施形態では、支持枠44と支持枠45が支持筒36内を摺動しないで、支持枠44と支持枠45の外周と支持筒36の内周に形成されたネジ溝により支持筒36内を各々逆方向に上下する点である。その際に支持筒36はモータ91の回転軸に接続されたギヤまたはプーリー等(不図示)により回転される。また、支持枠44の外周に形成されたネジ溝と、支持枠45の外周に形成されたネジ溝は、右ネジ溝と左ネジ溝が逆になるように形成される。本実施形態の駆動部90には、くさび型カム92とばね等は設けられない。第3実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0078】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90のモータ91により支持筒36を回転させる動きにより、凹型シリンドリカルレンズ34と凸型シリンドリカルレンズ35が互いに上下逆方向に移動して相互に離間し、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ35の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ34の凹型の曲面との間隔を0からD3に変化させる。図8(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ35の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ34の凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で縮小されることなくそのまま透過して、平行光L3として出射される。それに対して図8(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ35の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ34の凹型の曲面との間隔がD3の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC3でY方向に拡大されてから、平行光L3として出射される。
【0079】
つまり、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸と直交する方向で、且つ、プリント基板100の表面に平行な方向における投影光の変倍率と、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率との差を拡大側に補正することができる。この場合、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率は変わらないので、その変倍率を基準として、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸と直交する方向の変倍率をY方向に拡大する側で補正する。尚、本実施形態では、各シリンドリカルレンズ34、35は、基板と平行にのみ移動できるので、台形歪もしくは菱形歪を補正するためにX又はY方向の軸に沿って傾けることはできない。
【0080】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、第1実施形態よりもさらに駆動部を簡単な構成にすることができ、第1実施形態における前記した以外の効果と同様な効果を得ることができる。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に凹型シリンドリカルレンズ34を上側、凸型シリンドリカルレンズ35を下側としたが、第2実施形態と同様に凹型シリンドリカルレンズ34を下側、凸型シリンドリカルレンズ35を上側としても本実施形態のように支持枠44と支持枠45の外周と支持筒36の内周にネジ溝を形成して、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸と直交する方向の変倍率をY方向に縮小する側で補正できるようにしてもよい。
【0081】
<第4実施形態>
図9(a)と(b)は、本発明の第4実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。尚、図9(a)と(b)は、第1実施形態の図4(a)と(b)に対応する図でもある。
【0082】
第4実施形態が第1実施形態と異なる点は、第4実施形態では、シリンドリカルレンズ31、32の組を2組用いて、各組をプリント基板100の表面上の直交するX軸(X方向)とY軸(Y方向)に対応させて、直交配置となるように上下に重ねた点である。また、本実施形態では、駆動部90は、2組のシリンドリカルレンズ31、32の組を重ねた構成の内、最上部のシリンドリカルレンズ31aと最下部のシリンドリカルレンズ32bに接続されて、それらを個々に駆動する。一方、2組のシリンドリカルレンズ31、32の組を重ねた構成の内、中央のシリンドリカルレンズ32aとシリンドリカルレンズ31bは固定配置される。従って、本実施形態の駆動部90では、くさび型カム92とばね等がシリンドリカルレンズ31aとシリンドリカルレンズ32b用に2組使用される。第4実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0083】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90が一組目のくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凹型シリンドリカルレンズ31aを凸型シリンドリカルレンズ32aから離間させ、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ32aの凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31aの凹型の曲面との間隔を0からD5に変化させる。図9(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32aの凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31aの凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30の1組目のシリンドリカルレンズ31a、32aに入射する平行光L1は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過する。それに対して図9(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32aの凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31aの凹型の曲面との間隔がD5の場合には、投影倍率補正部30の1組目のシリンドリカルレンズ31a、32aに入射する平行光L1は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC5でY方向に拡大される。
【0084】
上記と同様に本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90が二組目のくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凸型シリンドリカルレンズ32bを凹型シリンドリカルレンズ31bから離間させ、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ32bの凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31bの凹型の曲面との間隔を0からD4に変化させる。
【0085】
図9(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32bの凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31bの凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30の2組目のシリンドリカルレンズ31b、32bに入射する光は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過して、平行光L3として出射される。それに対して図9(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32bの凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31bの凹型の曲面との間隔がD4の場合には、投影倍率補正部30の2組目のシリンドリカルレンズ31b、32bに入射する光は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC4でX方向に拡大されて、平行光L3として出射される。
【0086】
従って、上記した第1〜第3の実施形態ではX方向が固定でY方向に拡大か縮小させる側に補正させていたが、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、プリント基板100の表面におけるX方向とY方向の投影光の変倍率を個別に拡大側に補正することができる。
【0087】
実際に本実施形態の組のレンズを設計する場合は、例えば、第1実施形態のX方向のシリンドリカルレンズの組の下に、もう一組のY方向のシリンドリカルレンズの組を設置し、最上層のシリンドリカルレンズと最下層のシリンドリカルレンズを駆動部90により駆動することで、X方向のレンズの組の間隔D5とY方向のレンズの組の間隔D4の各々において約10(mm)駆動させることで、X方向にも、Y方向にも1000ppmの倍率補正を実施することができる。例えば、1体1の投影光学系のレンズ径を200(mm)とした場合、第1実施形態と同様にフォトマスク20と投影光学系50との間に配置される組のレンズのレンズ径は220(mm)程度の直径を有し、曲率の半径は6303(mm)となる。積層された2組のレンズの内の中央の2枚は、例えば、両面研磨が可能であれば1枚にまとめることができる。
【0088】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を各方向個別に拡大する側で補正でき、第1実施形態における前記した以外の効果と同様な効果を得ることができる。また、本実施形態の投影露光装置では、投影倍率補正部30でX方向またはY方向の倍率を補正できるだけでなく、例えば、基板パターンの四辺形の対角線方向とXY方向を回転させて一致させることで菱形歪を補正することが可能になり、あるいは、図2に示した複数の駆動部90の駆動量を制御して組のレンズのX方向に角度をつけ、X方向における各シリンドリカルレンズの曲面間の距離が漸増または漸減するようにチルトさせることで台形歪を補正することが可能になる。
【0089】
<第5実施形態>
図10(a)〜(c)は、本発明の第5実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。尚、図10(a)〜(c)は、第4実施形態の図9(a)と(b)に対応する図でもある。
【0090】
第5実施形態が第4実施形態と異なる点は、第5実施形態では、第4実施形態における2組のシリンドリカルレンズ31、32の組を重ねた構成の内、中央のシリンドリカルレンズ32aとシリンドリカルレンズ31bが一体化されてシリンドリカルレンズ37になっており、駆動部90は、そのシリンドリカルレンズ37に接続されて、それを駆動する。一方、最上部のシリンドリカルレンズ31aと最下部のシリンドリカルレンズ32bは固定配置される。従って、本実施形態の駆動部90では、くさび型カム92とばね等がシリンドリカルレンズ37用に1組だけ使用される。第5実施形態のその他の構成及び動作については、第4実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0091】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる前の状態では、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面が最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面に接触しているが、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と最下部のシリンドリカルレンズ32bの上側の凸型の曲面とは間隔D6だけ離間している。図10(a)に示したようにシリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31aの凹型の曲面との間隔が0で、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と凸型シリンドリカルレンズ32bとの間隔がD5の場合には、投影倍率補正部30のシリンドリカルレンズ31aに入射する平行光L1は、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と、凸型シリンドリカルレンズ32bの凹型の曲面との間の非平行光LC6でX方向に拡大される。その際に、入射する平行光L1は、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面が最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過する。この場合のX方向の拡大倍率はY方向の拡大倍率よりも大きくなる。
【0092】
次に、図10(b)に示したように駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面とが間隔D8だけ離間し、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と最下部のシリンドリカルレンズ32bの上側の凸型の曲面とが間隔D7だけ離間する場合には、投影倍率補正部30のシリンドリカルレンズ31aに入射する平行光L1は、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面との間の非平行光LC8でY方向に拡大され、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と、凸型シリンドリカルレンズ32bの凹型の曲面との間の非平行光LC7でX方向に拡大される。この場合で、例えば、間隔D7と間隔D8が同じである場合、Y方向の拡大倍率と、X方向の拡大倍率は同等になる。
【0093】
最後に、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせきった状態では、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面が最下部のシリンドリカルレンズ32bの上側の凸型の曲面に接触しているが、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面とは間隔D9だけ離間している。図10(c)に示したようにシリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と凸型シリンドリカルレンズ32bの凸型の曲面との間隔が0で、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31aとの間隔がD9の場合には、投影倍率補正部30のシリンドリカルレンズ31aに入射する平行光L1は、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と、最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面との間の非平行光LC6でY方向に拡大され、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と、凸型シリンドリカルレンズ32bの凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過する。この場合のX方向の拡大倍率はY方向の拡大倍率よりも小さくなる。
【0094】
従って、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、プリント基板100の表面におけるX方向とY方向の投影光の変倍率を個別に、且つ、連続的に拡大側に補正することができる。
【0095】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を各方向個別に、且つ、連続的に拡大する側で補正できる。また、第1実施形態における前記した以外の効果と同様な効果を得ることができる。
【0096】
<第6実施形態>
上記した第4実施形態と第5実施形態を組み合わせて、上端、中央、下端の全シリンドリカルレンズを上下に駆動できるようにすることができ、それを第6実施形態の投影露光装置とする。その場合、構成上は、上記第4実施形態と第5実施形態に記載した内容を、重複する部分を除いて備えることになる。第6実施形態の投影露光装置の構成で倍率補正を実施する場合には、例えば、まず、上端と下端のシリンドリカルレンズを駆動部90で同じ距離だけ上下反対方向(離間方向)に駆動することで、X方向とY方向の両方向に共通の倍率(平均倍率)で補正することができる。その後、駆動部90で中央のシリンドリカルレンズを上下に駆動することで、平均倍率からX方向またはY方向に独立した倍率補正を実施することができる。
【0097】
X方向とY方向の両方向に共通の倍率(平均倍率)の補正は、従来の投影露光装置及び上記した他の実施形態でも、投影光学系50内のレンズを上下駆動することで補正することができる。しかし、投影光学系50内のレンズを上下駆動して平均倍率を補正する場合、拡大基調または縮小基調の光束の途中でレンズを上下に駆動するので、投影像のフォーカスを維持しながらレンズの位置を制御することは難しく、位置合わせに時間がかかることからスループットが低下する。また、投影像がオフセットしてしまう可能性を有している。さらに、フォーカス位置が固定のオフアクシスアライメント光学系で平均倍率補正のために投影光学系50内のレンズを上下駆動した場合、倍率補正によりフォーカスが大きくずれてしまい補正できない。それに対して本実施形態では、第1実施形態でも説明したように組のレンズを総合すると、光束の入射面と出射面が一枚の平行平板ガラスと同様になる。更に、本実施形態の組のレンズは、投影光学系とフォトマスクとの間、若しくは、投影光学系と前記プリント基板との間に設置してあることから、拡大基調または縮小基調の光束の途中でレンズを上下に駆動するわけではないので、オフセット変動やフォーカスずれを抑制でき、収差も発生させないようにできる。また、例えば、フィールドレンズでは像の大きさや位置等の結像状態に影響を与えずに光束の指向性を変化させることができるが、本実施形態の組のレンズでは、像の結像状態に影響を与えずに、プリント基板100上の2軸方向の倍率の差を各方向個別に、且つ、連続的に拡大する側で補正できる。
【0098】
<第7実施形態>
図11(a)と(b)は、本発明の第7実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。尚、図11(a)と(b)は、第2実施形態の図6(b)に対応する図でもある。
【0099】
第7実施形態が第2実施形態と異なる点は、第7実施形態では、凸型シリンドリカルレンズ39の凸型の曲面の曲率と、凹型シリンドリカルレンズ38の凹型の曲面の曲率をわずかに異ならせた点である。例えば、凸型シリンドリカルレンズ39の凸型の曲面の曲率を凹型シリンドリカルレンズ38の凹型の曲面の曲率よりもわずかに緩くする。以下、この場合について説明する。第7実施形態のその他の構成及び動作については、第2実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0100】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凸型シリンドリカルレンズ32を凹型シリンドリカルレンズ31から離間させ、最終的に、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔を0からD11に変化させる。その途中の図11(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔がD10の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、まず、凸型の曲面と凹型の曲面との間で第2実施形態よりもわずかに少ない縮小率で、第2実施形態よりも小さい間隔D10の分だけ縮小され、その後、第2実施形態と同様な拡大率で拡大されるので、凸型の曲面と凹型の曲面の曲率の相違により、平行光にはならずわずかに発散する。しかし、投影倍率補正部30と投影光学系50との間隔は凸型の曲面と凹型の曲面との間隔D10よりもかなり大きいので、結果的に間隔D10で縮小された以上に、投影倍率補正部30と投影光学系50との間で拡大される。従って、投影倍率補正部30は、最終的には入射する平行光L2を拡大させて出力する。
【0101】
それに対して、図11(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔がD10よりも増加してD11になった場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、まず、凸型の曲面と凹型の曲面との間で第2実施形態よりもわずかに少ない縮小率で、第2実施形態と同様な間隔D11の分だけ縮小される。間隔D11の場合の縮小率は、間隔D10の場合の縮小率よりも多く、その後の第2実施形態と同様な拡大率で拡大されて発散しても、縮小率の方が多いため、投影倍率補正部30は、最終的には入射する平行光L2を縮小させて出力する。
【0102】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、凸型シリンドリカルレンズ39の凸型の曲面の曲率と、凹型シリンドリカルレンズ38の凹型の曲面の曲率をわずかに異ならせ、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を対向する2枚のレンズの組み合わせのみで、縮小する側から拡大する側まで連続して補正できる。
【0103】
また、本実施形態は、第2実施形態のシリンドリカルレンズの組の対向する曲面のうちの上側の曲面を緩くした場合を示したが、例えば、第1実施形態のシリンドリカルレンズの組の対向する曲面のうちの上側の曲面を緩くした場合、まず拡大してから縮小させることができるので、本実施形態と同様に、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を対向する2枚のレンズの組み合わせのみで、縮小する側から拡大する側まで連続して補正することができる。
【0104】
<第8実施形態>
図12は、本発明の第8実施形態の投影露光装置の一部構成のブロック図である。尚、図12は、第1実施形態の図1に対応する図でもある。
【0105】
第8実施形態が第1実施形態と異なる点は、第8実施形態では、投影光学系50とプリント基板100との間に投影倍率補正部30による収差を吸収する収差補正板110を追加した点である。
【0106】
収差補正板110は、投影露光装置の投影倍率補正部30に使用された組のレンズ31、32の合計の厚みと同様な厚み寸法を有し、その組のレンズと同様な材料で形成される。第8実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0107】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、収差補正板110により、投影倍率補正部30による収差を吸収することができ、投影露光装置の精度をさらに向上させることができる。なお、本実施形態では、収差補正板110を投影光学系50とプリント基板100との間に設けたが、投影倍率補正部30が投影光学系50とプリント基板100との間に設置される場合には、フォトマスク20と投影光学部50との間に設置してもよい。また、収差補正板110を第4実施形態又は第5実施形態に適用する場合は、使用された2組のレンズと同様な材料でその総合厚みと同様な厚みとすればよい。
【0108】
<第9実施形態>
図13(a)、(b)は、本発明の第9実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。図14(a)と(b)は、本発明の第9実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部のY方向とX方向の各々の断面図である。尚、図13(a)と(b)は、第1実施形態の図4(a)と(b)に対応し、図14(a)と(b)は、第1実施形態の図3(b)に対応してY方向とX方向の断面を各々示す図でもある。
【0109】
第9実施形態が第1実施形態と異なる点は、第9実施形態では、凸型非球面レンズ132の凸型の曲面の曲率と、凹型非球面レンズ131の凹型の曲面の曲率において、第1実施形態では、X方向のみに曲率を有してY方向には曲率を有していなかったものを、第9実施形態ではY方向にもX方向とは異なる曲率を有するようにした点である。
【0110】
図に示したように凸型非球面レンズ132の曲面と、凹型非球面レンズ131の曲面は、X方向の曲率と比較して小さい曲率をY方向に有している。その結果、組のレンズの各曲面間の距離D12が0でない場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、X方向だけでなくY方向にも拡大されて平行光L3として出射されるが、X方向の拡大率よりもY方向の拡大率は小さくなる。本実施形態の投影露光装置1は、このX方向とY方向の拡大率の差を利用して、X方向とY方向の倍率を補正することができる。本実施形態の第9実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0111】
以上、本発明に係る投影露光装置を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施の形態に記載された範囲には限定されるものではなく、投影光のXY2軸の一方、又は、双方を補正する各種の投影露光装置に適用することができる。例えば、駆動部90は、他の方式により組のレンズをZ方向に駆動してもよく、組のレンズの一方だけでなく両方を駆動してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1実施形態の投影露光装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の投影倍率補正部の上面図である。
【図3】(a)と(b)は、各々図2のA−A断面図である。
【図4】(a)と(b)は、各々図3(a)と(b)の各シリンドリカルレンズの斜視図である。
【図5】本実施形態の投影露光装置1を用いてプリント基板に配線パターンを形成する場合の一例を示すフローチャートである。
【図6】(a)と(b)は、本発明の第2実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。
【図7】(a)と(b)は、各々図6(a)と(b)の各シリンドリカルレンズの斜視図である。
【図8】(a)と(b)は、本発明の第3実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。
【図9】(a)と(b)は、本発明の第4実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の第5実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。
【図11】(a)と(b)は、本発明の第7実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態の投影露光装置の一部構成のブロック図である。
【図13】(a)と(b)は、本発明の第9実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の各シリンドリカルレンズの斜視図である。
【図14】(a)は図13(b)のY方向断面図であり、(b)は図13(b)のX方向断面図である。
【符号の説明】
【0113】
1 投影露光装置、
10 光源部、
20 フォトマスク、
30 投影倍率補正部、
31、31a、31b、38 凹型シリンドリカルレンズ、
32、32a、32b、39 凸型シリンドリカルレンズ、
33、36 支持筒、
37 上凸下凹型シリンドリカルレンズ、
41、42、44、45 支持枠、
50 投影光学系、
60 ステージ、
70 基板伸縮量計測部、
75 投影倍率計測部、
80 制御部、
90 駆動部、
91 モータ、
92 くさび型カム、
93 接触部、
94 接続腕部、
100 基板、
110 収差補正板、
131 凹型非球面レンズ
132 凸型非球面レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの配線パターン像をプリント基板上に投影する露光装置に関し、特に、投影された配線パターン像の縦横方向(XY方向)それぞれの方向における拡大倍率の差を検出して倍率補正して投影する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント基板(またはプリント配線基板とも称する)の製造にはフォトリソグラフィ法が用いられている。フォトリソグラフィ法では、例えば、表面に銅箔層を設けた樹脂板(銅張積層板)等の表面にフォトレジスト等の感光材料を塗布し、その感光材料に対して配線パターン像を露光装置により感光させて焼き付けし、露光しなかった部分の銅箔層をエッチングで除去することで基板上に配線を形成する。尚、使用する薬剤等によっては露光した部分をエッチングで除去する場合もある。また、プリント基板は、近年になり、多層化、高密度化、微細化が進んでおり、特に、高密度化と微細化が進んだ配線パターンを多層化する際には、上下層間の接続または絶縁等が関係し、各層の配線パターンを露光する際の位置合わせに高い精度が要求される。しかし、プリント基板の樹脂板はフォトリソグラフィ法の化学薬品や熱により伸縮し、しかも縦方向と横方向では伸縮率が異なることから、縦方向と横方向(X方向とY方向)を一様に補正する倍率補正方法では各層の接続位置等を補正できない場合があった。
【0003】
その問題に対して、例えば、走査型の露光装置において、通常のX/Y方向(例えばXが基板上走査方向、Yが基板上でそれと直交する方向)に等しく倍率変化させる投影レンズ(単数または群)と、投影光学系内に光軸方向(Z方向)に移動可能でY方向に倍率を偏倍させることが可能なシリンドリカルレンズ(単数または群)を設けた露光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の露光装置では、X方向の倍率誤差については、走査速度を変えることで投影倍率を変えて補正すると共に、Y方向の倍率誤差については、シリンドリカルレンズを投影光学系内で光軸方向(Z方向)に移動させることで投影光学系のY方向の投影倍率を変えて補正する。
【0004】
より詳しくは、引用文献1のシリンドリカルレンズは、段落0046に示されるように、ピエゾ素子によって光軸方向(Z方向)に微小駆動されることでY方向にパワーを持ち、他の投影レンズによって均等に得られる縮小倍率(投影倍率)に対してY方向に偏倍率をかけることができる。つまり、引用文献1では、他の投影レンズによってX/Y方向に等しく倍率変化させた配線パターン像の倍率に対して、シリンドリカルレンズによりY方向に任意の偏倍倍率を設定することで、X/Y方向間の倍率の差を補正することができる。
また、引用文献1のシリンドリカルレンズは、引用文献1の段落0053及び図9に示されるように、投影光学系を設計する段階で、他の投影レンズと共に投影光学系に予め組み込まれる。また、複数の各シリンドリカルレンズ間の距離は、ピエゾ素子により光軸方向に微小駆動できる以外は、ほぼ固定された距離が確保されている。
【0005】
別の例では、拡大倍率の差を補正するために、可撓性を有する薄いガラス板等の平板をフォトマスクと投影光学系の間に挿入し、その平板を撓ませて曲率を変化させることで、上記したシリンドリカルレンズの場合と同様な効果を得る方法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。その場合の平板は、例えば対向する両側辺の組のうちの一方の組を、その中心部に向けて押圧することで、平板を下側に2字曲線状に突出するように撓ませて曲率を変化させる。
【0006】
特許文献2の露光装置では、撓ませた平板を光軸を中心に回動させることにより倍率補正の方向を微細に変更できるようになっている。特許文献2の撓ませた平板に入射した光は一方向のみに拡大(または縮小)されて射出されることで投影倍率を変化させる。平板の母線をプリント基板の縦横方向であるX方向またはY方向に合わせることにより、X方向またはY方向に拡大(または縮小)が可能になる。
【0007】
特許文献3の露光装置では、二枚の平板を上方向か下方向に撓ませ、その各平板を光軸を中心として各々逆方向に同じ角度だけ回転させて拡大縮小倍率を連続的に変更できるようになっている。特許文献3の撓ませた平板に入射した光も、特許文献2の場合と同様に、一方向のみに拡大(または縮小)されて射出されることで投影倍率を変化させる。また、特許文献3では、上方向に撓んだ平板と、下方向に撓んだ平板の組み合わせを各々逆方向に同じ角度だけ回転させることにより、X方向またはY方向に独立に連続的に拡大(または縮小)させることを可能にしている。
【特許文献1】特開平7−72293号公報
【特許文献2】特開2003−223003号公報
【特許文献3】特開2006−292902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献1のシリンドリカルレンズは、常時入射光を光学的に拡大(または縮小)して射出するものであり、投影光学系の内部に配置されていることから、補正を考える場合に、投影光学系の他のレンズの倍率も考慮する必要があって煩雑であり、光学的な設計の自由度を損なうことになり、投影のために広がり基調になっている光束に対して補正するので収差が大きくなる。また、引用文献1のシリンドリカルレンズは、倍率を変化させる必要が無い場合でも、焦点位置と収差等の光学性能が変化するので、シリンドリカルレンズの影響を考慮して投影(露光)させなければならない。
【0009】
引用文献2及び3の可撓性を有する平板を用いて補正する露光装置では、例えば、平板の保持部を中心側に可動させて平板の曲率を変化させる場合は、保持部にその可動機構が必要になり、さらに、平板の曲率を頻繁に変化させることで、長期間の使用においては平板の材料が疲労して破損する場合がある。また、可撓性を有する平板としてガラス板を用いる場合には、その平板の厚みを厚くした場合、撓み量が小さくなり必要な倍率変化をさせることが困難になる。逆に平板の厚みを薄くした場合、撓み量は比較的大きくできるが、厚みが薄いため必要な倍率の変化を得るためには撓み量を増加させる必要があり、撓み限度内の撓み量で必要な倍率変化をさせることが困難な場合がある。
【0010】
また、倍率補正に用いられる所定の曲線方程式に従う曲率になるように平板を撓ませるためには、複雑な機構が必要であり、撓ませるための時間が必要である。また、例えば、平板の表裏に同じ曲率を有するように加工することも考えられるが、これも撓ませることができる平板は厚みがとれないことから困難である。従って、各種の最適化を行って引用文献2及び3の平板を形成したとしても、十分なXY方向の倍率補正を行うための曲率を平板に持たせることは困難である。また、撓ませた2枚の平行平板の間隔を変化させることが提案されているが、2枚の平行平板では、その間隔を変えても、原理的にXY方向の倍率補正は不可能であり、XY方向の倍率補正の制御には適用できない。
【0011】
そこで本発明は、上記の課題を解決するために、XY方向の倍率補正を十分な変化幅で高速に制御でき、投影光学系への影響が少なく、簡単な構成で、長期間使用が可能である露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る投影露光装置は、光源からの光をフォトマスクに形成されたパターンに照射し、当該フォトマスクを通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置であって、一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズと、一方の面に前記凸型の曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズを、前記各曲面が対向すると共に前記プリント基板に平行となるように配置した少なくとも1組のレンズの組を、前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間に設け、前記プリント基板上に形成された配線パターンにおける前記プリント基板の表面上で直交する2軸の基板伸縮量情報に応じて、前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させることで、前記2軸の各方向を一括して変化させる前記投影光学系による投影倍率の誤差を補正することを特徴とする。請求項1の本発明によれば、必要な場合にのみ必要な補正量で、プリント基板の表面上で直交する2軸の各方向毎に前記投影光学系の倍率を補正することができる。また、本実施態様では、必要でない場合には対向する曲面の距離を無くすことで倍率補正を行わないようにすることができる。
【0013】
好ましくは、請求項2に係る本発明のように前記凸型レンズは、一方の面に前記2軸の一方のみに沿って曲率を有する凸型の曲面を有する凸型シリンドリカルレンズであり、前記凹型レンズは、一方の面に前記凸型シリンドリカルレンズの曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有する凹型シリンドリカルレンズであるようにしてもよい。本実施態様では、倍率補正をする際にレンズを撓ませる等のストレスがかからないため長期間使用することができる。
【0014】
好ましくは、請求項3に係る本発明のように前記凸型レンズは、一方の面に前記2軸の一方に沿う曲率と他方に沿う曲率が異なる凸型の曲面を有する凸型の曲面を有する凸型非球面レンズであり、前記凹型レンズは、一方の面に前記凸型非球面レンズの曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有する凹型非球面レンズであるようにしてもよい。本実施態様では、1組の凸型非球面レンズと凹型非球面レンズでX方向とY方向の倍率補正をすることができる。
【0015】
好ましくは、請求項4に係る本発明のように前記基板伸縮量を計測する基板伸縮計測部と、前記基板伸縮量の情報から、それらの差と当該差を減少させるための前記2軸の一方又は両方の投影倍率に対する補正値を演算する制御部と、前記補正値により前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させて投影倍率を補正する投影倍率補正部とを備えるようにしてもよい。本実施態様では、基板の伸縮量を計測により得て補正値を演算し、その補正値から対向するレンズの曲面の間隔を変化させることができる。
【0016】
好ましくは、請求項5に係る本発明のように前記制御部は、前記各基板伸縮量の情報から、台形歪もしくは菱形歪を検出した場合、当該台形歪もしくは菱形歪に対して、前記2軸のいずれかを回転軸として、他方の軸に沿う一端側の前記曲面間の間隔が、多端側の前記曲面間の間隔に対して大きくなるように回転させた補正値を演算するようにしてもよい。
本実施態様では、前記曲面間の間隔を、XとYの各軸方向の少なくとも一方に沿って変化させることで、基板の台形歪もしくは菱形歪を補正することができる。
【0017】
好ましくは、請求項6に係る本発明のように前記組のレンズの少なくとも一方の位置を光軸方向に移動させることができる駆動部を有し、前記制御部は、前記投影倍率に対する補正値から、前記基板伸縮量の差を補正するように生成した制御信号を前記駆動部に出力するようにしてもよい。本実施態様では、制御部で生成された制御信号を駆動部に出力して、駆動部で組のレンズを移動させることができる。本実施態様では、制御部で補正値から生成された制御信号を駆動部に出力して、駆動部で組のレンズを移動させることができる。
【0018】
好ましくは、請求項7に係る本発明のように前記組のレンズを2組用い、前記プリント基板上の2軸の各々に対応させて、各組のレンズにおける最大曲率に対応する軸方向が各々直交するように配置するようにしてもよい。本実施態様では、2か所を駆動させる駆動部により、X方向とY方向に対応させて個別に倍率の差を補正できる。
【0019】
好ましくは、請求項8に係る本発明のように前記駆動部は、前記直交配置された2組のレンズのうち、前記フォトマスクに最も近接するレンズと、前記プリント基板に最も近接するレンズを少なくとも駆動するようにしてもよい。本実施態様では、駆動するレンズを最上部と最下部の2個にでき、駆動部もその2つのみを駆動させるようにすることができる。
【0020】
好ましくは、請求項9に係る本発明のように前記駆動部は、前記2組直交させて配置された組のレンズのうち、最もフォトマスクに近接するレンズと最もプリント基板に近接するレンズとに挟まれた中間の2枚のレンズを少なくとも駆動するようにしてもよい。本実施態様では、駆動するレンズを中間の2枚のレンズにでき、中間の2枚は一括して移動させることができるので、駆動部もその1つのみを駆動させるようにすることができる。
【0021】
好ましくは、請求項10に係る本発明のように前記中間の2枚のレンズを一体化して形成するようにしてもよい。本実施態様では、中間の2枚を一体化させることで、製造工数を減少させ、接合面で減少していた光の減衰量を減らし、透過率を向上させることができる。
【0022】
好ましくは、請求項11に係る本発明のように前記駆動部は、前記対向する各曲面の間隔を変化させるために、前記組のレンズの少なくとも一方を、前記組のレンズの光軸方向に沿って平行移動させるようにしてもよい。本実施態様では、組のレンズの一方を移動させるだけでよいので、駆動部を簡潔な構成にすることができる。
【0023】
好ましくは、請求項12に係る本発明のように前記駆動部は、前記組のレンズの少なくとも一方を、前記組のレンズを支持する筐体内で平行移動させるようにしてもよい。本実施態様では、レンズの一方を、組のレンズの光軸方向に沿って筐体内で平行移動させるので、安定してレンズの平行移動を実施させることができる。
【0024】
好ましくは、請求項13に係る本発明のように前記各組のレンズは、当該レンズの周縁支持部により支持され、該周縁支持部は、各々逆方向に外向ネジが形成されると共に回転不能且つ光軸方向に移動可能に支持され、前記組のレンズを支持する筐体の内面には前記外向ネジと噛み合う内向ネジが形成され、前記駆動部は、前記筐体を回転させることで、前記レンズを光軸方向に沿って平行移動させるようにしてもよい。本実施態様では、筐体でレンズを支持し、筐体を回転させることで、レンズを光軸方向に沿って筐体内で平行移動させるので、平行移動を安定して実施できる。また、組のレンズの周縁支持部に各々逆ネジを形成することにより、筐体を回転させることで、筐体内の組の各レンズを近づけたり遠ざけたりすることができる。
【0025】
好ましくは、請求項14に係る本発明のように組のレンズは、入射光が光軸に平行である場合、出射光が光軸に平行になるテレセントリック光学系であるようにしてもよい。本実施態様では、平行な入射光の場合、補正を実施した後の出射光も光軸に平行にできる。
【0026】
好ましくは、請求項15に係る本発明のように組のレンズの対向する各々の曲面の曲率は、僅かに異なるようにしてもよい。本実施態様では、組のレンズの対向間隔により、入射光を集光させることと発散させることができ、その結果、倍率を、XとYの2軸方向の倍率の差を縮小する側から拡大する側まで連続して補正する事が可能となる。
【0027】
好ましくは、請求項16に係る本発明のように投影光学系とフォトマスクとの間、または、投影光学系とプリント基板との間のうち、投影倍率補正部が配置されない方に設置され、組のレンズの合計の厚みと同様な厚み寸法を有し、組のレンズと同様な材料で形成された収差補正板を有するようにしてもよい。本実施態様では、組のレンズの収差を収差補正板で補正することができる。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の請求項17に係るプリント基板の製造方法は、光源からの光をフォトマスクに形成されたパターンに照射し、当該フォトマスクを通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置によるプリント基板の製造方法であって、一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズと、一方の面に前記凸型の曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズを、前記各曲面が対向すると共に前記プリント基板に平行となるように配置した少なくとも1組のレンズの組を、前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間に設ける工程と、前記プリント基板上に形成された配線パターンにおける前記プリント基板の表面上で直交する2軸(X方向とY方向)の基板伸縮量を計測する工程と、前記検出された2軸方向の基板伸縮量の情報から、それらの差と当該差を減少させるための前記2軸の一方又は両方の投影倍率に対する補正値を演算する工程と、前記補正値により、前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させ、前記2軸の各方向を一括して変化させる前記投影光学系による投影倍率の誤差を補正する工程とを有する。請求項17の本発明によれば、必要な場合にのみ必要な補正量でシリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸と直交する方向の倍率補正ができる投影露光装置を提供することができる。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明の請求項18に係るプリント基板の製造方法は、前記基板伸縮量を計測する工程で、前記各基板伸縮量の情報から、台形歪もしくは菱形歪を検出した場合、前記補正値を演算する工程では、前記台形歪もしくは菱形歪に対して、前記2軸のいずれかを回転軸として、他方の軸に沿う一端側の前記曲面間の間隔が、多端側の前記曲面間の間隔に対して大きくなるように回転させた補正値を演算する。請求項18の本発明によれば、基板に対する台形歪もしくは菱形歪等の倍率補正ができる投影露光装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の投影露光装置によれば、XY方向の倍率補正を十分な変化幅で高速に制御でき、投影光学系への影響が少なく、簡単な構成で、長期間使用が可能であり、また、必要な場合にのみ必要な補正量でシリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸と直交する方向の倍率補正をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の投影露光装置の実施の形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の投影露光装置の概略構成を示すブロック図である。
投影露光装置1は、光源部10からの出射光をフォトマスク20に形成された配線パターンに照射し、そのフォトマスク20を通過した配線パターンの像を含む光を、投影光学系50を介してプリント基板100上に投影して露光させる投影露光装置である。より詳しくは、露光前のプリント基板材料の上に均等に塗布された感光材料(フォトレジスト)に、配線パターンを露光させることで、プリント基板材料の上にプリント配線部を形成する装置である。露光装置には、使用される感光材料に対応してソルダレジスト用とパターンレジスト(ドライフィルムレジスト等)用がある。後工程ではんだを付着させる場合にはソルダレジストが用いられ、基板の銅箔層をエッチングする場合には、パターンレジストが用いられる。
【0033】
ソルダレジストは、例えば、はんだが付いてはいけない場所へのはんだの付着を防いだ状態ではんだ槽にディップすること等によって、配線または銅箔パターンの保護層を形成するものである。感光性のソルダレジストを用いた場合は、露光した部分のみか、露光した部分を除いて、はんだを付着させることができる。感光性のパターンレジストは、プリント基板材料(例えば表面に銅箔層を有する樹脂板:銅張積層板等)における銅箔等の上に均等に塗布され、その感光性パターンレジストに対して基板パターンを露光装置により感光させて焼き付けし、露光しなかった感光性パターンレジストを除去してから銅箔層をエッチングすることで露光した部分のみか、露光した部分を除いて、銅箔をエッチング等で除去することができる。
【0034】
光源部10は、例えば、レーザー光発生器、アークランプ、または、水銀灯等であり、感光性のフォトレジストを感光させることができる。また、光源部10には、照射光を平行光にするためのレンズ等の光学系を含んでいてもよい。
【0035】
フォトマスク20は、レチクルとも称され、光源部から出射された光を、配線パターンの部分を除いて通過させるか、又は、配線パターンの部分だけ通過させ、残りの部分の光は遮る遮蔽板である。
【0036】
投影倍率補正部30は、フォトマスク20と投影光学系50との間で特にフォトマスク20の直下、または、投影光学系50とプリント基板100との間で特に基板100の直上に配置され、配線パターンにおけるX方向とY方向の倍率差(偏り)を減少させるように投影光を補正する。より詳しくは、投影倍率補正部30は、プリント基板上で直交するX方向とY方向のうちの何れか一方の方向の変倍率を補正する。補正方法については、図2〜図4を用いてさらに詳しく後述する。
【0037】
投影光学系50は、配線パターンを露光させる光を基板上に投影するレンズ等を含む光学系であり、入射した光は内部で一旦集光されてから拡散して、基板に対して出射される。
【0038】
ステージ60は、例えば、プリント基板材料が設置される台であり、X方向とY方向に移動させて露光位置を微調整することができる。
【0039】
基板伸縮量計測部70は、プリント基板上に形成された配線パターンにおける平面上で直交する2軸(X方向とY方向)の倍率の差(偏り)を計測する。例えば、フォトマスク側に第1の基準マークを設けておき、プリント基板上に第2の基準マーク(フォトマスクの第1の基準マークに対応する)を設けておく。第2の基準マークは、プリント基板のX方向とY方向の偏りが全く無い場合に、投影倍率の誤差が無い投影光学系で投影された第1の基準マークに完全に一致するように形成しておく。そして、カメラで第2の基準マーク上の投影された第1の基準マークを撮影し、その撮影画像を解析して第2の基準マークに対して第1の基準マークがX方向とY方向にどれだけ偏っているかを計測する。本実施形態の基板伸縮量計測部70は、このようにして、基板に形成された配線パターンにおけるX方向とY方向の偏りを検出するが、検出処理については後述する制御部で実施してもよい。
【0040】
投影倍率計測部75は、例えば、カメラで第2の基準マーク上の投影された第1の基準マークを撮影し、その撮影画像を解析して、基板伸縮量計測部70で検出された基板に形成された配線パターンにおけるX方向とY方向の偏りを補正した第2の基準マークに対して、投影光学系50を介して投影された第1の基準マークがX方向とY方向にどれだけ偏っているかを計測する。本実施形態の投影倍率計測部75は、このようにして、露光光におけるX方向とY方向の偏りを検出するが、検出処理については後述する制御部で実施してもよい。
【0041】
制御部80は、例えば、マイクロプロセッサ等の演算素子と記憶素子と各周辺装置とのインターフェースを含み、倍率差を低減させるように生成した制御信号を駆動部90に出力する。言い換えれば、投影倍率補正部30の対向する各曲面の間隔を可変させることでX方向とY方向の倍率差を減少させる。さらに詳しくは、制御部80は、投影倍率計測部75からの露光光におけるX方向とY方向の偏りデータが入力され、その偏り量を低減させるか0にする投影倍率補正部30の補正値を演算し、その補正値を得るための制御信号を駆動部90に出力する。
【0042】
駆動部90は、組のレンズ31、32の少なくとも一方(本実施形態では31のみ)の位置を光軸方向に移動させることができる。さらに詳しくは、制御部80からの制御信号を受けて、例えば、モータと各種ギア等の駆動機構で投影倍率補正部30内のシリンドリカルレンズを駆動する。駆動方法については図2及び図3等を用いて後述する。
【0043】
基板100は、ベースとなる絶縁樹脂の表面上に銅の薄板等を貼り付けた基板材料であり、投影露光装置1に設置する場合には、さらに銅板上にパターンレジストが塗布される。このパターンレジストに対してフォトマスク20を通過した配線パターンの露光光が照射されることで、パターンレジストが露光される。基板の種類としては、例えば、芯材の紙に熱硬化性のフェノール樹脂を含浸させた紙フェノール基板、芯材の紙に熱硬化性のエポキシ樹脂を含浸させた紙エポキシ基板、芯材のガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板等がある。
【0044】
図2は、図1の投影倍率補正部の上面図であり、図3(a)と(b)は、各々図2のA−A断面図であり、図4(a)と(b)は、図3(a)と(b)の各シリンドリカルレンズの斜視図である。
【0045】
本実施形態の投影倍率補正部30には、一方の面に凸型の曲面を有し他方の面が平面である凸型シリンドリカルレンズ32と、一方の面に凹型の曲面を有し他方の面が平面である凹型シリンドリカルレンズ31を、各曲面が対向すると共にプリント基板100に平行となるように配置した1組のレンズの組が用いられる。各シリンドリカルレンズ31、32の組における、各レンズ31、32の他方の面は、光軸に対して垂直な平面である。投影倍率補正部30は、シリンドリカルレンズ31、32の組における凸型の曲面と凹型の曲面との間隔を調整する。また、図2では、シリンドリカルレンズの平面外形をその他のレンズに合わせて円形としているが、透過光の通過領域を全てカバーできれば図4に示したように方形としてもよい。また、組のレンズ31、32の対向する各々の曲面の曲率は、略同様である。また、本実施形態の組のレンズ31、32は、入射光が光軸に平行である場合、出射光が光軸に平行になるテレセントリック光学系である。
【0046】
凹型シリンドリカルレンズ31は、その周縁部が支持枠41により保持される。同様にして凸型シリンドリカルレンズ32は、その周縁部が支持枠42により保持される。
【0047】
支持枠41と支持枠42は、支持筒33内を光軸に平行な方向に摺動することができる。支持枠41と支持枠42の外周には、支持筒33の隙間を通って外部の駆動部90と接続する接続腕部94が外部へ突出するように設けられている。各接続腕部94の先端には、対象面上に点接触して摺動するように、接触部が円弧状に形成された接触部93が接続されている。
【0048】
駆動部90は、モータ91と、モータの回転運動を直線運動に変換する変換部(不図示)と、変換部の直線運動側に接続されて支持筒33に向かう動きを支持筒33の軸に平行方向の動きに変換するくさび型カム92とを有する。変換部は、例えば、ラックアンドピニオンのように回転運動を直線運動に変換する機械要素である。また、くさび型カム92の先端には、支持筒33の外壁との間にばねを設けて、くさび型カム92が支持筒33の外周から外側に放射する方向に戻る動作を補助するようにしてもよい。この構成により駆動部90は、組のレンズ31、32の少なくとも一方(本実施形態では凹型シリンドリカルレンズ31のみ)を、組のレンズを支持する支持筒33(筐体)内で、組のレンズの光軸方向(本実施形態ではZ方向)に沿って平行移動させて、対向する各曲面の間隔を変化させることができる。
【0049】
投影倍率補正部30は、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凹型シリンドリカルレンズ31を凸型シリンドリカルレンズ32から離間させ、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔を0からD1に変化させる。図3(a)と図4(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過して、平行光L3として出射される。それに対して図3(b)と図4(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔がD1の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC1で拡大されてから、平行光L3として出射される。
【0050】
つまり、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向で、且つ、プリント基板100の表面に平行な方向における投影光の変倍率と、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率との差を拡大側に補正することができる。この場合、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率は変わらないので、その変倍率を基準として、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向の変倍率をY方向に拡大する側で補正する。
【0051】
実際に本実施形態の組のレンズを設計する場合は、例えば、1体1の投影光学系のレンズ径を200(mm)とした場合、フォトマスク20と投影光学系50との間に配置される組のレンズのレンズ径は、NAを考慮すると220(mm)程度の直径を有する必要がある。その外周の場合で1°程度の接線を有するレンズの曲率は、以下の式で得られた値の半径を有する円の外周により求められる。尚、シリンドリカルレンズのガラス厚は設計上の各種仕様により決まり、本願の特許内容では特に制約されないが、例えば、0.5(mm)程度でよい。
220・2*sin1°=6303(mm)
【0052】
次に、例えば凹型シリンドリカルレンズ31に入射した光束L2が、上記した曲率の傾きを有するガラス層(屈折率1.6)から空気層(屈折率1)に光束LC1として出射する場合の傾きθ(入射光束L2に対する傾き)を求めると以下の式となる。
1.6/1*sin1°=0.028=asin(θ+1°)
θ=0.6°
【0053】
例えば凹型シリンドリカルレンズ31から出射した光束LC1は、θ=0.6°の傾きで拡大しながら空気層(屈折率1)を進行する。そして、ガラス層(屈折率1.6)の凸型シリンドリカルレンズ32に入射するときの境界面で、再びθ=0°(入射光束L2の角度)に戻される。
【0054】
次に、上記の組のレンズを用いて倍率補正をする場合には、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔D1はどのようにして求めるかについて説明する。例えば、倍率補正量が100ppmの場合、凸型シリンドリカルレンズ32の周辺部では、凹型シリンドリカルレンズ31からの光を22μm外側にシフトさせる必要がある。従って、間隔D1は以下の式で求めることができる。
D1=0.022(mm)/2/sin0.6°=1.05(mm)
【0055】
つまり、X方向とY方向の間で100ppmの倍率補正を実施する場合には、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔D1を1.05(mm)だけ開ければよいことになる。また、例えば、X方向とY方向の間で1000ppmの倍率補正を実施する場合には、間隔D1を10.5(mm)だけ開ければよいことになる。
【0056】
以上のようにして、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面の各周辺部の曲率を、例えば1°以下の小さい値にすれば、補正の精度を高くすることができ、逆に曲率を大きくすれば、倍率補正量を多くできる。
【0057】
図5は、本実施形態の投影露光装置1を用いてプリント基板に配線パターンを形成する場合の一例を示すフローチャートである。
【0058】
まず、投影露光装置1には、事前に、一方の面に凸型の曲面を有する凸型シリンドリカルレンズ32と、一方の面に凹型の曲面を有する凹型シリンドリカルレンズ31を、各曲面が対向すると共にプリント基板100に平行となるように配置したレンズの組を設けておく。
【0059】
投影露光装置1で露光させる配線パターンのフォトマスク20を作成する(S1)。次に、銅張積層板等のプリント基板材料を露光させるサイズに切断し(S2)、その銅箔層の表面にフォトレジストを塗布し(S3)、そのプリント基板材料を投影露光装置1のステージ60上に設置する(S4)。投影露光装置1は、投影倍率計測部75等を用いてプリント基板材料の伸縮状態を検出する(S5)。ここで投影露光装置1は、投影露光装置1に設置されたプリント基板材料100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸(X方向とY方向)の倍率の差を検出している。
【0060】
投影露光装置1は、検出された2軸方向の倍率の差(プリント基板材料の伸縮状態)に基づいて、投影倍率補正部30で実施する補正量を演算する(S6)。投影露光装置1は、演算された補正量に基づいて、投影倍率補正部30で露光光のX方向とY方向の変倍率を補正して、プリント基板材料に配線パターンを露光させる(S7)。その際に投影露光装置1は、露光光のX方向とY方向の変倍率を補正するために、レンズの組31、32における凸型の曲面と凹型の曲面との間隔を変化させることで、シリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸(X方向)と直交し、且つ、プリント基板100に平行である方向(Y方向)における投影光の変倍率の、シリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸方向(X方向)における投影光の変倍率に対する差を減少させるように投影光を補正する。
【0061】
露光後のプリント基板材料をエッチングすることにより、不要な配線部分を除去する(S8)。エッチングが終了したらフォトレジストを除去し(S9)、プリント基板材料にスルーホール加工等の後工程を実施し(S10)、最後にプリント基板の表面を保護するコーティングを実施する(S11)。
【0062】
以上のように本実施形態の投影露光装置1は、必要な場合にのみ必要な補正量で各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向の倍率補正ができる。このことから本実施形態の投影露光装置1は、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差をY方向に拡大する側で補正できる。
【0063】
また、本実施形態の投影露光装置1は、筐体(支持筒33)でレンズを支持して、筐体内でレンズの一方を組のレンズの光軸方向(Z方向)に沿って平行移動させるだけなので、平行移動を安定して実施でき、駆動部を簡単な構成にすることができる。
【0064】
また、本実施形態の投影露光装置1は、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔を0とすることで、必要でない場合には倍率補正を行わないようにすることができ、投影倍率補正部30への入射光が光軸に平行である場合、補正を実施した後の出射光も光軸に平行にできる。
【0065】
また、本実施形態の投影倍率補正部30は、2枚の組のシリンドリカルレンズの対向する曲面間の間隔を変化させて補正するので、従来の平行平板を撓ませる方法のように、平行平板の厚みが固定寸法であるため自由度が少なくなることがなく、間隔を任意の厚みとして光学的に補正することができ、さらに各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸に沿って間隔の厚みを変えて楔形にすることもできる。
【0066】
また、本実施形態の組のレンズは2枚の組のレンズを総合すると、光束の入射面と出射面が一枚の平行平板ガラスと同様になるので、レンズによる収差の発生を抑制でき、さらにオフセット変動やフォーカスずれの発生も抑制できる。本実施形態では、この投影倍率補正部30を、光束の広がりが少ないフォトマスク20の直下、または、基板の直上に配置することで収差をほとんど発生させないようにすることができる。従って、既存の投影露光装置に後付けで投影倍率補正部を追加することが可能になる。
【0067】
また、各シリンドリカルレンズ31、32の片面を平面としたことで、曲面側の加工が容易になり、製造コストを低減させることができる。このシリンドリカルレンズの製造方法は、例えば、まず、本実施形態のシリンドリカルレンズの曲面の型に平行平板のガラスを貼り付け、その状態でガラスの解放側の面をフラットに研磨する。その後、型からガラスを外すと、ガラスの弾性により、ガラスの型に貼り付いていた面がフラットに戻り、研磨した面が型の反転形状(型が凹形状なら反転した凸形状、型が凸形状なら反転した凹形状)と同様な曲面となる。但し、この場合のガラスの平板の面は、型に貼り付いていた状態から元に戻る際にわずかに残留曲率を残す場合がある。従って、本発明における各シリンドリカルレンズ31、32の片面の平面とは、基本的に光軸に対して垂直な平面であるが、上記したような加工時の残留曲率を有している場合を含むものである。
【0068】
また、本実施形態の投影露光装置では、投影倍率補正部30でX方向またはY方向の倍率を補正できるだけでなく、例えば、基板パターンの四辺形の対角線方向とXY方向のうちの補正可能な方向を回転させて一致させることで菱形歪を補正することが可能になる。例えば、本実施形態では、各シリンドリカルレンズ31、32は、基板と平行の状態だけでなく、図2に示した複数の駆動部90の駆動量を制御して組のレンズのX方向に角度をつけ、X方向における各シリンドリカルレンズの曲面間の距離が漸増または漸減するようにチルトさせることができる。その結果、X方向の軸に沿って、シリンドリカルレンズ31をシリンドリカルレンズ32に対して傾けることができ、上記した間隔の厚みを変えて楔形にすることができるので、X軸方向の場所ごとに倍率が変わり、台形歪を補正することが可能になる。また、菱形歪についても、同様にして補正することが可能になる。
【0069】
このように本実施形態の投影露光装置では、XY方向の倍率補正をX方向とY方向の間で1000ppm等の十分な変化幅で制御でき、しかも、従来の平行平板のように撓ませる必要が無いので高速に制御できる。
【0070】
また、本実施形態では、組のレンズの入射側と出射側の面が平行平面であるので投影光学系への影響が少なく、曲率が略等しい凹凸2個のシリンドリカルレンズを対向させる簡単な構成であり、レンズを撓ませる等のストレスがかからないため長期間使用が可能であり、必要な場合にのみ必要な補正量で組のシリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸と直交する方向の倍率補正をすることができる。
【0071】
<第2実施形態>
図6(a)と(b)は、本発明の第2実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図であり、図7(a)と(b)は、図6(a)と(b)の各シリンドリカルレンズの斜視図である。尚、図6(a)と(b)は、第1実施形態の図3(a)と(b)に対応し、図7(a)と(b)は、第1実施形態の図4(a)と(b)に対応する図でもある。
【0072】
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、第2実施形態では、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面を上下が逆になるように入れ替えた点である。第2実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0073】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凸型シリンドリカルレンズ32を凹型シリンドリカルレンズ31から離間させ、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔を0からD2に変化させる。図6(a)と図7(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で縮小されることなくそのまま透過して、平行光L3として出射される。それに対して図6(b)と図7(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔がD2の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC2で縮小されてから、平行光L3として出射される。
【0074】
つまり、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向で、且つ、プリント基板100の表面に平行な方向における投影光の変倍率と、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率との差を縮小側に補正することができる。この場合、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率は変わらないので、その変倍率を基準として、各シリンドリカルレンズ31、32の円筒形状の中心軸と直交する方向の変倍率をY方向に縮小する側で補正する。
【0075】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を縮小する側で補正でき、第1実施形態における前記した以外の効果と同様な効果を得ることができる。
【0076】
<第3実施形態>
図8(a)と(b)は、本発明の第3実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。尚、図8(a)と(b)は、第1実施形態の図3(a)と(b)に対応する図でもある。
【0077】
第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、第3実施形態では、支持枠44と支持枠45が支持筒36内を摺動しないで、支持枠44と支持枠45の外周と支持筒36の内周に形成されたネジ溝により支持筒36内を各々逆方向に上下する点である。その際に支持筒36はモータ91の回転軸に接続されたギヤまたはプーリー等(不図示)により回転される。また、支持枠44の外周に形成されたネジ溝と、支持枠45の外周に形成されたネジ溝は、右ネジ溝と左ネジ溝が逆になるように形成される。本実施形態の駆動部90には、くさび型カム92とばね等は設けられない。第3実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0078】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90のモータ91により支持筒36を回転させる動きにより、凹型シリンドリカルレンズ34と凸型シリンドリカルレンズ35が互いに上下逆方向に移動して相互に離間し、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ35の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ34の凹型の曲面との間隔を0からD3に変化させる。図8(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ35の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ34の凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で縮小されることなくそのまま透過して、平行光L3として出射される。それに対して図8(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ35の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ34の凹型の曲面との間隔がD3の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC3でY方向に拡大されてから、平行光L3として出射される。
【0079】
つまり、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸と直交する方向で、且つ、プリント基板100の表面に平行な方向における投影光の変倍率と、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率との差を拡大側に補正することができる。この場合、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸方向における投影光の変倍率は変わらないので、その変倍率を基準として、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸と直交する方向の変倍率をY方向に拡大する側で補正する。尚、本実施形態では、各シリンドリカルレンズ34、35は、基板と平行にのみ移動できるので、台形歪もしくは菱形歪を補正するためにX又はY方向の軸に沿って傾けることはできない。
【0080】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、第1実施形態よりもさらに駆動部を簡単な構成にすることができ、第1実施形態における前記した以外の効果と同様な効果を得ることができる。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に凹型シリンドリカルレンズ34を上側、凸型シリンドリカルレンズ35を下側としたが、第2実施形態と同様に凹型シリンドリカルレンズ34を下側、凸型シリンドリカルレンズ35を上側としても本実施形態のように支持枠44と支持枠45の外周と支持筒36の内周にネジ溝を形成して、各シリンドリカルレンズ34、35の円筒形状の中心軸と直交する方向の変倍率をY方向に縮小する側で補正できるようにしてもよい。
【0081】
<第4実施形態>
図9(a)と(b)は、本発明の第4実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。尚、図9(a)と(b)は、第1実施形態の図4(a)と(b)に対応する図でもある。
【0082】
第4実施形態が第1実施形態と異なる点は、第4実施形態では、シリンドリカルレンズ31、32の組を2組用いて、各組をプリント基板100の表面上の直交するX軸(X方向)とY軸(Y方向)に対応させて、直交配置となるように上下に重ねた点である。また、本実施形態では、駆動部90は、2組のシリンドリカルレンズ31、32の組を重ねた構成の内、最上部のシリンドリカルレンズ31aと最下部のシリンドリカルレンズ32bに接続されて、それらを個々に駆動する。一方、2組のシリンドリカルレンズ31、32の組を重ねた構成の内、中央のシリンドリカルレンズ32aとシリンドリカルレンズ31bは固定配置される。従って、本実施形態の駆動部90では、くさび型カム92とばね等がシリンドリカルレンズ31aとシリンドリカルレンズ32b用に2組使用される。第4実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0083】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90が一組目のくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凹型シリンドリカルレンズ31aを凸型シリンドリカルレンズ32aから離間させ、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ32aの凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31aの凹型の曲面との間隔を0からD5に変化させる。図9(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32aの凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31aの凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30の1組目のシリンドリカルレンズ31a、32aに入射する平行光L1は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過する。それに対して図9(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32aの凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31aの凹型の曲面との間隔がD5の場合には、投影倍率補正部30の1組目のシリンドリカルレンズ31a、32aに入射する平行光L1は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC5でY方向に拡大される。
【0084】
上記と同様に本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90が二組目のくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凸型シリンドリカルレンズ32bを凹型シリンドリカルレンズ31bから離間させ、結果的に、凸型シリンドリカルレンズ32bの凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31bの凹型の曲面との間隔を0からD4に変化させる。
【0085】
図9(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32bの凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31bの凹型の曲面との間隔が0の場合には、投影倍率補正部30の2組目のシリンドリカルレンズ31b、32bに入射する光は、凸型の曲面と凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過して、平行光L3として出射される。それに対して図9(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32bの凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31bの凹型の曲面との間隔がD4の場合には、投影倍率補正部30の2組目のシリンドリカルレンズ31b、32bに入射する光は、凸型の曲面と凹型の曲面との間の非平行光LC4でX方向に拡大されて、平行光L3として出射される。
【0086】
従って、上記した第1〜第3の実施形態ではX方向が固定でY方向に拡大か縮小させる側に補正させていたが、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、プリント基板100の表面におけるX方向とY方向の投影光の変倍率を個別に拡大側に補正することができる。
【0087】
実際に本実施形態の組のレンズを設計する場合は、例えば、第1実施形態のX方向のシリンドリカルレンズの組の下に、もう一組のY方向のシリンドリカルレンズの組を設置し、最上層のシリンドリカルレンズと最下層のシリンドリカルレンズを駆動部90により駆動することで、X方向のレンズの組の間隔D5とY方向のレンズの組の間隔D4の各々において約10(mm)駆動させることで、X方向にも、Y方向にも1000ppmの倍率補正を実施することができる。例えば、1体1の投影光学系のレンズ径を200(mm)とした場合、第1実施形態と同様にフォトマスク20と投影光学系50との間に配置される組のレンズのレンズ径は220(mm)程度の直径を有し、曲率の半径は6303(mm)となる。積層された2組のレンズの内の中央の2枚は、例えば、両面研磨が可能であれば1枚にまとめることができる。
【0088】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を各方向個別に拡大する側で補正でき、第1実施形態における前記した以外の効果と同様な効果を得ることができる。また、本実施形態の投影露光装置では、投影倍率補正部30でX方向またはY方向の倍率を補正できるだけでなく、例えば、基板パターンの四辺形の対角線方向とXY方向を回転させて一致させることで菱形歪を補正することが可能になり、あるいは、図2に示した複数の駆動部90の駆動量を制御して組のレンズのX方向に角度をつけ、X方向における各シリンドリカルレンズの曲面間の距離が漸増または漸減するようにチルトさせることで台形歪を補正することが可能になる。
【0089】
<第5実施形態>
図10(a)〜(c)は、本発明の第5実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。尚、図10(a)〜(c)は、第4実施形態の図9(a)と(b)に対応する図でもある。
【0090】
第5実施形態が第4実施形態と異なる点は、第5実施形態では、第4実施形態における2組のシリンドリカルレンズ31、32の組を重ねた構成の内、中央のシリンドリカルレンズ32aとシリンドリカルレンズ31bが一体化されてシリンドリカルレンズ37になっており、駆動部90は、そのシリンドリカルレンズ37に接続されて、それを駆動する。一方、最上部のシリンドリカルレンズ31aと最下部のシリンドリカルレンズ32bは固定配置される。従って、本実施形態の駆動部90では、くさび型カム92とばね等がシリンドリカルレンズ37用に1組だけ使用される。第5実施形態のその他の構成及び動作については、第4実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0091】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる前の状態では、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面が最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面に接触しているが、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と最下部のシリンドリカルレンズ32bの上側の凸型の曲面とは間隔D6だけ離間している。図10(a)に示したようにシリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31aの凹型の曲面との間隔が0で、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と凸型シリンドリカルレンズ32bとの間隔がD5の場合には、投影倍率補正部30のシリンドリカルレンズ31aに入射する平行光L1は、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と、凸型シリンドリカルレンズ32bの凹型の曲面との間の非平行光LC6でX方向に拡大される。その際に、入射する平行光L1は、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面が最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過する。この場合のX方向の拡大倍率はY方向の拡大倍率よりも大きくなる。
【0092】
次に、図10(b)に示したように駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面とが間隔D8だけ離間し、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と最下部のシリンドリカルレンズ32bの上側の凸型の曲面とが間隔D7だけ離間する場合には、投影倍率補正部30のシリンドリカルレンズ31aに入射する平行光L1は、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面との間の非平行光LC8でY方向に拡大され、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と、凸型シリンドリカルレンズ32bの凹型の曲面との間の非平行光LC7でX方向に拡大される。この場合で、例えば、間隔D7と間隔D8が同じである場合、Y方向の拡大倍率と、X方向の拡大倍率は同等になる。
【0093】
最後に、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせきった状態では、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面が最下部のシリンドリカルレンズ32bの上側の凸型の曲面に接触しているが、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面とは間隔D9だけ離間している。図10(c)に示したようにシリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と凸型シリンドリカルレンズ32bの凸型の曲面との間隔が0で、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31aとの間隔がD9の場合には、投影倍率補正部30のシリンドリカルレンズ31aに入射する平行光L1は、シリンドリカルレンズ37の上面の凸型の曲面と、最上部のシリンドリカルレンズ31aの下側の凹型の曲面との間の非平行光LC6でY方向に拡大され、シリンドリカルレンズ37の下面の凹型の曲面と、凸型シリンドリカルレンズ32bの凹型の曲面との間で拡大されることなくそのまま透過する。この場合のX方向の拡大倍率はY方向の拡大倍率よりも小さくなる。
【0094】
従って、本実施形態の場合の投影倍率補正部30は、プリント基板100の表面におけるX方向とY方向の投影光の変倍率を個別に、且つ、連続的に拡大側に補正することができる。
【0095】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を各方向個別に、且つ、連続的に拡大する側で補正できる。また、第1実施形態における前記した以外の効果と同様な効果を得ることができる。
【0096】
<第6実施形態>
上記した第4実施形態と第5実施形態を組み合わせて、上端、中央、下端の全シリンドリカルレンズを上下に駆動できるようにすることができ、それを第6実施形態の投影露光装置とする。その場合、構成上は、上記第4実施形態と第5実施形態に記載した内容を、重複する部分を除いて備えることになる。第6実施形態の投影露光装置の構成で倍率補正を実施する場合には、例えば、まず、上端と下端のシリンドリカルレンズを駆動部90で同じ距離だけ上下反対方向(離間方向)に駆動することで、X方向とY方向の両方向に共通の倍率(平均倍率)で補正することができる。その後、駆動部90で中央のシリンドリカルレンズを上下に駆動することで、平均倍率からX方向またはY方向に独立した倍率補正を実施することができる。
【0097】
X方向とY方向の両方向に共通の倍率(平均倍率)の補正は、従来の投影露光装置及び上記した他の実施形態でも、投影光学系50内のレンズを上下駆動することで補正することができる。しかし、投影光学系50内のレンズを上下駆動して平均倍率を補正する場合、拡大基調または縮小基調の光束の途中でレンズを上下に駆動するので、投影像のフォーカスを維持しながらレンズの位置を制御することは難しく、位置合わせに時間がかかることからスループットが低下する。また、投影像がオフセットしてしまう可能性を有している。さらに、フォーカス位置が固定のオフアクシスアライメント光学系で平均倍率補正のために投影光学系50内のレンズを上下駆動した場合、倍率補正によりフォーカスが大きくずれてしまい補正できない。それに対して本実施形態では、第1実施形態でも説明したように組のレンズを総合すると、光束の入射面と出射面が一枚の平行平板ガラスと同様になる。更に、本実施形態の組のレンズは、投影光学系とフォトマスクとの間、若しくは、投影光学系と前記プリント基板との間に設置してあることから、拡大基調または縮小基調の光束の途中でレンズを上下に駆動するわけではないので、オフセット変動やフォーカスずれを抑制でき、収差も発生させないようにできる。また、例えば、フィールドレンズでは像の大きさや位置等の結像状態に影響を与えずに光束の指向性を変化させることができるが、本実施形態の組のレンズでは、像の結像状態に影響を与えずに、プリント基板100上の2軸方向の倍率の差を各方向個別に、且つ、連続的に拡大する側で補正できる。
【0098】
<第7実施形態>
図11(a)と(b)は、本発明の第7実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。尚、図11(a)と(b)は、第2実施形態の図6(b)に対応する図でもある。
【0099】
第7実施形態が第2実施形態と異なる点は、第7実施形態では、凸型シリンドリカルレンズ39の凸型の曲面の曲率と、凹型シリンドリカルレンズ38の凹型の曲面の曲率をわずかに異ならせた点である。例えば、凸型シリンドリカルレンズ39の凸型の曲面の曲率を凹型シリンドリカルレンズ38の凹型の曲面の曲率よりもわずかに緩くする。以下、この場合について説明する。第7実施形態のその他の構成及び動作については、第2実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0100】
本実施形態の投影倍率補正部30は、駆動部90がくさび型カム92を支持筒33に向かわせる動きにより、凸型シリンドリカルレンズ32を凹型シリンドリカルレンズ31から離間させ、最終的に、凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と、凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔を0からD11に変化させる。その途中の図11(a)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔がD10の場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、まず、凸型の曲面と凹型の曲面との間で第2実施形態よりもわずかに少ない縮小率で、第2実施形態よりも小さい間隔D10の分だけ縮小され、その後、第2実施形態と同様な拡大率で拡大されるので、凸型の曲面と凹型の曲面の曲率の相違により、平行光にはならずわずかに発散する。しかし、投影倍率補正部30と投影光学系50との間隔は凸型の曲面と凹型の曲面との間隔D10よりもかなり大きいので、結果的に間隔D10で縮小された以上に、投影倍率補正部30と投影光学系50との間で拡大される。従って、投影倍率補正部30は、最終的には入射する平行光L2を拡大させて出力する。
【0101】
それに対して、図11(b)に示したように凸型シリンドリカルレンズ32の凸型の曲面と凹型シリンドリカルレンズ31の凹型の曲面との間隔がD10よりも増加してD11になった場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、まず、凸型の曲面と凹型の曲面との間で第2実施形態よりもわずかに少ない縮小率で、第2実施形態と同様な間隔D11の分だけ縮小される。間隔D11の場合の縮小率は、間隔D10の場合の縮小率よりも多く、その後の第2実施形態と同様な拡大率で拡大されて発散しても、縮小率の方が多いため、投影倍率補正部30は、最終的には入射する平行光L2を縮小させて出力する。
【0102】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、凸型シリンドリカルレンズ39の凸型の曲面の曲率と、凹型シリンドリカルレンズ38の凹型の曲面の曲率をわずかに異ならせ、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を対向する2枚のレンズの組み合わせのみで、縮小する側から拡大する側まで連続して補正できる。
【0103】
また、本実施形態は、第2実施形態のシリンドリカルレンズの組の対向する曲面のうちの上側の曲面を緩くした場合を示したが、例えば、第1実施形態のシリンドリカルレンズの組の対向する曲面のうちの上側の曲面を緩くした場合、まず拡大してから縮小させることができるので、本実施形態と同様に、プリント基板100上に投影された配線パターンの平面上で直交する2軸方向の倍率の差を対向する2枚のレンズの組み合わせのみで、縮小する側から拡大する側まで連続して補正することができる。
【0104】
<第8実施形態>
図12は、本発明の第8実施形態の投影露光装置の一部構成のブロック図である。尚、図12は、第1実施形態の図1に対応する図でもある。
【0105】
第8実施形態が第1実施形態と異なる点は、第8実施形態では、投影光学系50とプリント基板100との間に投影倍率補正部30による収差を吸収する収差補正板110を追加した点である。
【0106】
収差補正板110は、投影露光装置の投影倍率補正部30に使用された組のレンズ31、32の合計の厚みと同様な厚み寸法を有し、その組のレンズと同様な材料で形成される。第8実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0107】
このようにして本実施形態の投影露光装置1は、収差補正板110により、投影倍率補正部30による収差を吸収することができ、投影露光装置の精度をさらに向上させることができる。なお、本実施形態では、収差補正板110を投影光学系50とプリント基板100との間に設けたが、投影倍率補正部30が投影光学系50とプリント基板100との間に設置される場合には、フォトマスク20と投影光学部50との間に設置してもよい。また、収差補正板110を第4実施形態又は第5実施形態に適用する場合は、使用された2組のレンズと同様な材料でその総合厚みと同様な厚みとすればよい。
【0108】
<第9実施形態>
図13(a)、(b)は、本発明の第9実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。図14(a)と(b)は、本発明の第9実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部のY方向とX方向の各々の断面図である。尚、図13(a)と(b)は、第1実施形態の図4(a)と(b)に対応し、図14(a)と(b)は、第1実施形態の図3(b)に対応してY方向とX方向の断面を各々示す図でもある。
【0109】
第9実施形態が第1実施形態と異なる点は、第9実施形態では、凸型非球面レンズ132の凸型の曲面の曲率と、凹型非球面レンズ131の凹型の曲面の曲率において、第1実施形態では、X方向のみに曲率を有してY方向には曲率を有していなかったものを、第9実施形態ではY方向にもX方向とは異なる曲率を有するようにした点である。
【0110】
図に示したように凸型非球面レンズ132の曲面と、凹型非球面レンズ131の曲面は、X方向の曲率と比較して小さい曲率をY方向に有している。その結果、組のレンズの各曲面間の距離D12が0でない場合には、投影倍率補正部30に入射する平行光L2は、X方向だけでなくY方向にも拡大されて平行光L3として出射されるが、X方向の拡大率よりもY方向の拡大率は小さくなる。本実施形態の投影露光装置1は、このX方向とY方向の拡大率の差を利用して、X方向とY方向の倍率を補正することができる。本実施形態の第9実施形態のその他の構成及び動作については、第1実施形態と同様であるので重複する説明については省略する。
【0111】
以上、本発明に係る投影露光装置を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施の形態に記載された範囲には限定されるものではなく、投影光のXY2軸の一方、又は、双方を補正する各種の投影露光装置に適用することができる。例えば、駆動部90は、他の方式により組のレンズをZ方向に駆動してもよく、組のレンズの一方だけでなく両方を駆動してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1実施形態の投影露光装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の投影倍率補正部の上面図である。
【図3】(a)と(b)は、各々図2のA−A断面図である。
【図4】(a)と(b)は、各々図3(a)と(b)の各シリンドリカルレンズの斜視図である。
【図5】本実施形態の投影露光装置1を用いてプリント基板に配線パターンを形成する場合の一例を示すフローチャートである。
【図6】(a)と(b)は、本発明の第2実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。
【図7】(a)と(b)は、各々図6(a)と(b)の各シリンドリカルレンズの斜視図である。
【図8】(a)と(b)は、本発明の第3実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。
【図9】(a)と(b)は、本発明の第4実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の第5実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部におけるレンズ部を示した斜視図である。
【図11】(a)と(b)は、本発明の第7実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態の投影露光装置の一部構成のブロック図である。
【図13】(a)と(b)は、本発明の第9実施形態の投影露光装置の投影倍率補正部の各シリンドリカルレンズの斜視図である。
【図14】(a)は図13(b)のY方向断面図であり、(b)は図13(b)のX方向断面図である。
【符号の説明】
【0113】
1 投影露光装置、
10 光源部、
20 フォトマスク、
30 投影倍率補正部、
31、31a、31b、38 凹型シリンドリカルレンズ、
32、32a、32b、39 凸型シリンドリカルレンズ、
33、36 支持筒、
37 上凸下凹型シリンドリカルレンズ、
41、42、44、45 支持枠、
50 投影光学系、
60 ステージ、
70 基板伸縮量計測部、
75 投影倍率計測部、
80 制御部、
90 駆動部、
91 モータ、
92 くさび型カム、
93 接触部、
94 接続腕部、
100 基板、
110 収差補正板、
131 凹型非球面レンズ
132 凸型非球面レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光をフォトマスクに形成されたパターンに照射し、当該フォトマスクを通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置であって、
一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズと、一方の面に前記凸型の曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズを、前記各曲面が対向すると共に前記プリント基板に平行となるように配置した少なくとも1組のレンズの組を、前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間に設け、
前記プリント基板上に形成された配線パターンにおける前記プリント基板の表面上で直交する2軸(X方向とY方向)の基板伸縮量情報に応じて、前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させることで、
前記2軸の各方向を一括して変化させる前記投影光学系による投影倍率の誤差を補正する
ことを特徴とする投影露光装置。
【請求項2】
前記凸型レンズは、一方の面に前記2軸の一方に沿う曲率と他方に沿う曲率が異なる凸型の曲面を有する凸型の曲面を有する凸型非球面レンズであり、
前記凹型レンズは、一方の面に前記凸型非球面レンズの曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有する凹型非球面レンズである
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置。
【請求項3】
前記凸型レンズは、一方の面に前記2軸の一方のみに沿って曲率を有する凸型の曲面を有する凸型シリンドリカルレンズであり、前記凹型レンズは、一方の面に前記凸型シリンドリカルレンズの曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有する凹型シリンドリカルレンズである
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置。
【請求項4】
前記基板伸縮量を計測する基板伸縮計測部と、
前記各基板伸縮量の情報から、それらの差と当該差を減少させるための前記2軸の一方又は両方の投影倍率に対する補正値を演算する制御部と、
前記補正値により前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させて投影倍率を補正する投影倍率補正部と
を備える
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記各基板伸縮量の情報から、台形歪もしくは菱形歪を検出した場合、当該台形歪もしくは菱形歪に対して、前記2軸のいずれかを回転軸として、他方の軸に沿う一端側の前記曲面間の間隔が、多端側の前記曲面間の間隔に対して大きくなるように回転させた補正値を演算する
ことを特徴とする請求項4に記載の投影露光装置。
【請求項6】
前記組のレンズの少なくとも一方の位置を光軸方向に移動させることができる駆動部
を有し、
前記制御部は、前記投影倍率に対する補正値から、前記基板伸縮量の差を補正するように生成した制御信号を前記駆動部に出力する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の投影露光装置。
【請求項7】
前記組のレンズを2組用い、前記プリント基板上の2軸の各々に対応させて、各組のレンズにおける最大曲率に対応する軸方向が各々直交するように配置する
ことを特徴とする請求項6に記載の投影露光装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記直交配置された2組のレンズのうち、前記フォトマスクに最も近接するレンズと、前記プリント基板に最も近接するレンズを少なくとも駆動すること
ことを特徴とする請求項7に記載の投影露光装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記2組直交させて配置された組のレンズのうち、最もフォトマスクに近接するレンズと最もプリント基板に近接するレンズとに挟まれた中間の2枚のレンズを少なくとも駆動する
ことを特徴とする請求項7に記載の投影露光装置。
【請求項10】
前記中間の2枚のレンズを一体化して形成する
ことを特徴とする請求項9に記載の投影露光装置。
【請求項11】
前記駆動部は、前記対向する各曲面の間隔を変化させるために、前記組のレンズの少なくとも一方を、前記組のレンズの光軸方向に沿って平行移動させる
ことを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項12】
前記駆動部は、前記組のレンズの少なくとも一方を、前記組のレンズを支持する筐体内で平行移動させる
ことを特徴とする請求項11に記載の投影露光装置。
【請求項13】
前記各組のレンズは、当該レンズの周縁支持部により支持され、該周縁支持部は、各々逆方向に外向ネジが形成されると共に回転不能且つ光軸方向に移動可能に支持され、前記組のレンズを支持する筐体の内面には前記外向ネジと噛み合う内向ネジが形成され、
前記駆動部は、前記筐体を回転させることで、前記レンズを光軸方向に沿って平行移動させる
ことを特徴とする請求項12に記載の投影露光装置。
【請求項14】
前記組のレンズは、入射光が光軸に平行である場合、出射光が光軸に平行になるテレセントリック光学系である
ことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項15】
前記組のレンズの対向する各々の曲面の曲率は、僅かに異なる
ことを特徴とする請求項14に記載の投影露光装置。
【請求項16】
前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間のうち、前記投影倍率補正部が配置されない方に設置され、前記組のレンズの合計の厚みと同様な厚み寸法を有し、前記組のレンズと同様な材料で形成された収差補正板を有する
ことを特徴とする請求項1〜15の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項17】
光源からの光をフォトマスクに形成されたパターンに照射し、当該フォトマスクを通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置によるプリント基板の製造方法であって、
一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズと、一方の面に前記凸型の曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズを、前記各曲面が対向すると共に前記プリント基板に平行となるように配置した少なくとも1組のレンズの組を、前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間に設ける工程と、
前記プリント基板上に形成された配線パターンにおける前記プリント基板の表面上で直交する2軸(X方向とY方向)の基板伸縮量を計測する工程と、
前記検出された2軸方向の基板伸縮量の情報から、それらの差と当該差を減少させるための前記2軸の一方又は両方の投影倍率に対する補正値を演算する工程と、
前記補正値により、前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させ、前記2軸の各方向を一括して変化させる前記投影光学系による投影倍率の誤差を補正する工程と
を有することを特徴とするプリント基板の製造方法。
【請求項18】
前記基板伸縮量を計測する工程で、前記各基板伸縮量の情報から、台形歪もしくは菱形歪を検出した場合、
前記補正値を演算する工程では、前記台形歪もしくは菱形歪に対して、前記2軸のいずれかを回転軸として、他方の軸に沿う一端側の前記曲面間の間隔が、多端側の前記曲面間の間隔に対して大きくなるように回転させた補正値を演算する
ことを特徴とする請求項17に記載の投影露光装置。
【請求項1】
光源からの光をフォトマスクに形成されたパターンに照射し、当該フォトマスクを通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置であって、
一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズと、一方の面に前記凸型の曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズを、前記各曲面が対向すると共に前記プリント基板に平行となるように配置した少なくとも1組のレンズの組を、前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間に設け、
前記プリント基板上に形成された配線パターンにおける前記プリント基板の表面上で直交する2軸(X方向とY方向)の基板伸縮量情報に応じて、前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させることで、
前記2軸の各方向を一括して変化させる前記投影光学系による投影倍率の誤差を補正する
ことを特徴とする投影露光装置。
【請求項2】
前記凸型レンズは、一方の面に前記2軸の一方に沿う曲率と他方に沿う曲率が異なる凸型の曲面を有する凸型の曲面を有する凸型非球面レンズであり、
前記凹型レンズは、一方の面に前記凸型非球面レンズの曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有する凹型非球面レンズである
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置。
【請求項3】
前記凸型レンズは、一方の面に前記2軸の一方のみに沿って曲率を有する凸型の曲面を有する凸型シリンドリカルレンズであり、前記凹型レンズは、一方の面に前記凸型シリンドリカルレンズの曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有する凹型シリンドリカルレンズである
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置。
【請求項4】
前記基板伸縮量を計測する基板伸縮計測部と、
前記各基板伸縮量の情報から、それらの差と当該差を減少させるための前記2軸の一方又は両方の投影倍率に対する補正値を演算する制御部と、
前記補正値により前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させて投影倍率を補正する投影倍率補正部と
を備える
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記各基板伸縮量の情報から、台形歪もしくは菱形歪を検出した場合、当該台形歪もしくは菱形歪に対して、前記2軸のいずれかを回転軸として、他方の軸に沿う一端側の前記曲面間の間隔が、多端側の前記曲面間の間隔に対して大きくなるように回転させた補正値を演算する
ことを特徴とする請求項4に記載の投影露光装置。
【請求項6】
前記組のレンズの少なくとも一方の位置を光軸方向に移動させることができる駆動部
を有し、
前記制御部は、前記投影倍率に対する補正値から、前記基板伸縮量の差を補正するように生成した制御信号を前記駆動部に出力する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の投影露光装置。
【請求項7】
前記組のレンズを2組用い、前記プリント基板上の2軸の各々に対応させて、各組のレンズにおける最大曲率に対応する軸方向が各々直交するように配置する
ことを特徴とする請求項6に記載の投影露光装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記直交配置された2組のレンズのうち、前記フォトマスクに最も近接するレンズと、前記プリント基板に最も近接するレンズを少なくとも駆動すること
ことを特徴とする請求項7に記載の投影露光装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記2組直交させて配置された組のレンズのうち、最もフォトマスクに近接するレンズと最もプリント基板に近接するレンズとに挟まれた中間の2枚のレンズを少なくとも駆動する
ことを特徴とする請求項7に記載の投影露光装置。
【請求項10】
前記中間の2枚のレンズを一体化して形成する
ことを特徴とする請求項9に記載の投影露光装置。
【請求項11】
前記駆動部は、前記対向する各曲面の間隔を変化させるために、前記組のレンズの少なくとも一方を、前記組のレンズの光軸方向に沿って平行移動させる
ことを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項12】
前記駆動部は、前記組のレンズの少なくとも一方を、前記組のレンズを支持する筐体内で平行移動させる
ことを特徴とする請求項11に記載の投影露光装置。
【請求項13】
前記各組のレンズは、当該レンズの周縁支持部により支持され、該周縁支持部は、各々逆方向に外向ネジが形成されると共に回転不能且つ光軸方向に移動可能に支持され、前記組のレンズを支持する筐体の内面には前記外向ネジと噛み合う内向ネジが形成され、
前記駆動部は、前記筐体を回転させることで、前記レンズを光軸方向に沿って平行移動させる
ことを特徴とする請求項12に記載の投影露光装置。
【請求項14】
前記組のレンズは、入射光が光軸に平行である場合、出射光が光軸に平行になるテレセントリック光学系である
ことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項15】
前記組のレンズの対向する各々の曲面の曲率は、僅かに異なる
ことを特徴とする請求項14に記載の投影露光装置。
【請求項16】
前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間のうち、前記投影倍率補正部が配置されない方に設置され、前記組のレンズの合計の厚みと同様な厚み寸法を有し、前記組のレンズと同様な材料で形成された収差補正板を有する
ことを特徴とする請求項1〜15の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項17】
光源からの光をフォトマスクに形成されたパターンに照射し、当該フォトマスクを通過したパターン像を含む光を、投影光学系を介してプリント基板上に投影して露光させる投影露光装置によるプリント基板の製造方法であって、
一方の面に凸型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凸型レンズと、一方の面に前記凸型の曲面に対応して曲率が略同様である凹型の曲面を有して他方の面に光軸に対して垂直な平面を有する凹型レンズを、前記各曲面が対向すると共に前記プリント基板に平行となるように配置した少なくとも1組のレンズの組を、前記投影光学系と前記フォトマスクとの間、または、前記投影光学系と前記プリント基板との間に設ける工程と、
前記プリント基板上に形成された配線パターンにおける前記プリント基板の表面上で直交する2軸(X方向とY方向)の基板伸縮量を計測する工程と、
前記検出された2軸方向の基板伸縮量の情報から、それらの差と当該差を減少させるための前記2軸の一方又は両方の投影倍率に対する補正値を演算する工程と、
前記補正値により、前記レンズの組の前記凸型の曲面と前記凹型の曲面との間隔を変化させ、前記2軸の各方向を一括して変化させる前記投影光学系による投影倍率の誤差を補正する工程と
を有することを特徴とするプリント基板の製造方法。
【請求項18】
前記基板伸縮量を計測する工程で、前記各基板伸縮量の情報から、台形歪もしくは菱形歪を検出した場合、
前記補正値を演算する工程では、前記台形歪もしくは菱形歪に対して、前記2軸のいずれかを回転軸として、他方の軸に沿う一端側の前記曲面間の間隔が、多端側の前記曲面間の間隔に対して大きくなるように回転させた補正値を演算する
ことを特徴とする請求項17に記載の投影露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−39347(P2010−39347A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204103(P2008−204103)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(501466938)株式会社目白プレシジョン (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(501466938)株式会社目白プレシジョン (31)
【Fターム(参考)】
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