説明

抗歯周病剤、および当該抗歯周病剤を含有する飲食物又は口腔衛生剤

【課題】 歯周病菌に対する高い抗菌効果を有し、歯周病の予防や治療をすることができる抗歯周病剤の提供、並びにかかる抗歯周病剤を適用した飲食物や口腔衛生剤の提供。
【解決手段】 式〔1〕のω−アルケニルイソチオシアナート化合物、式〔2〕のω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物、及び式〔3〕のω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含む抗歯周病剤、当該抗歯周病剤を含有する飲食物、口腔衛生剤。 式〔1〕:CH2=CH−(CH2)m−NCS (式中、mは1〜10の整数を表す) 式〔2〕:R−S−(CH2)n−NCS (式中、nは1〜10の整数を表し、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す) 式〔3〕:Ph−(CH2)p−NCS (式中、Phはフェニル基を表し、pは1〜10の整数を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ω−アルケニルイソチオシアナート化合物、ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物およびω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含む抗歯周病剤、および当該抗歯周病剤を含有する飲食物又は口腔衛生剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病はポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)を代表とする嫌気性グラム陰性菌の感染により発症する。わが国における罹患率は年齢に伴い増加傾向である(浜田茂幸ら、「口腔微生物学・免疫」、医歯薬出版(株) p.291、2000年)ことから、高齢化社会を迎えるわが国にとって深刻な疾患である。
その症状は初期では歯肉の腫れ、出血などの歯肉炎が生じ、さらには炎症が歯槽骨、歯根骨にまで波及し、歯の動揺、歯肉の減退、口臭、歯の着色などがあらわれる歯周炎へ進行し、ついには歯を喪失することとなる。
【0003】
このような症状は感染した原因菌の菌体構造物および菌体成分などが歯周組織細胞を刺激し、炎症性サイトカインの産生を促し、産生されたサイトカインの多種多様な生物学的作用を介して歯肉の炎症や歯槽骨の吸収という病態を成立させるものと考えられている。さらに歯周病には様々な病型が含まれ、歯肉炎では慢性歯肉炎、思春期性歯肉炎、妊娠性歯肉炎および急性壊死性潰瘍性歯肉炎、歯周炎では成人性歯周炎、早期発症型歯周炎、急速進行性歯周炎および難治性歯周炎などがあり、特定の病型と特定の細菌との関連が提唱されている。
【0004】
そのためポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis、以下「P.g菌」と略する)が歯周病に関わる代表的な嫌気性グラム陰性菌であると言われているが、他にも病型により深い関連が示唆される細菌が存在し、それら細菌はP.g菌と生態の異なるものであることから、P.g菌を含め他の細菌についても網羅した包括的な治療法および予防法を考えなければなければならない。
【0005】
P.g菌の他に歯周病との関連が示唆されている細菌には、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum subsp, nucleatum、以下「F.n菌」と略する)、プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens、以下「P.n菌」と略する)およびプレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia、以下「P.i菌」と略する)などがあげられる。これら細菌のうちF.n菌は再発頻度の高い難治性部位で検出され、慢性歯肉炎、成人性歯周炎においてもみられ、P.i菌およびP.n菌は思春期性および妊娠性歯肉炎、急性壊死性潰瘍性歯肉炎の病巣局所に圧倒的に多く、P.g菌とともに成人性歯周病の活動部位でも高頻度で検出される(梅本俊夫ら、「図説口腔微生物学」、(株)学建書院 p.354−357、1982年)などの特徴がある。このような細菌の増殖を抑制し、殺菌することは包括的な歯周病の予防や治療に有効であるといえる。
【0006】
また、歯周病罹患者にはこれら歯周に関する病態だけでなく、脳梗塞や動脈硬化などが多いことが報告され(奥田克爾著、「デンタルプラーク細菌 第二版」、医歯薬出版(株) p.161−163、1993年)、近年では全身の疾患との関わりが注目されている。そのため、歯周病原因菌の増殖を抑制し、殺菌することは歯周病の予防や治療、さらには全身疾患につながる病因を減滅することに有効であるといえる。
【0007】
歯周病の予防や改善に有効とされているのは合成抗菌剤であり、なかでも塩酸クロルヘキシジンなどの医薬品が多用されている。合成抗菌剤は微生物全般に対する活性が高いため、効果的に歯周病菌の増殖を抑制することができるが、口腔内の常在菌層のバランスを崩してしまう危険性がある。とりわけ繰り返しの使用や、長期間服用する場合は十分注意する必要があり、合成抗菌剤に代わる天然由来で安全性の高い抗歯周病剤が求められている。
【0008】
こうした状況の下、植物の精油成分は多くの生理活性を有していることが近年の研究から明らかにされつつあり、精油成分の多くが抗菌効果を有していることに着目して、食品として摂取可能な植物中の成分に前記歯周病菌(P.g菌、F.n菌、P.n菌およびP.i菌)に対する抗菌性を示す物質を見出す試みがなされている(特許文献1〜3)。こうした植物成分は、人体に安全であるが、マイルドな抗菌作用である分、口腔で効果のある濃度域が高すぎる。そのため、効果的な量を保持しようとすると大量に投与する必要があり、添加後の食品や口腔衛生剤の香味や色に大きく影響してしまう問題があった。
【0009】
また、香辛料のワサビに含まれるイソチオシアナート化合物がもたらす抗菌作用に着目し、同化合物を用いてストレプトコッカス・ミュータンスによる歯垢形成を抑制して間接的に歯周病を予防する方法(特許文献4)も提案されている。すなわち、特許文献4では、歯垢形成の抑制によって歯垢中に繁殖するグラム陰性菌の繁殖を防止でき、これにより歯周病の予防が可能であると記載されている。しかし、当該イソチオシアナート化合物の前記歯周病菌に対する抗菌効果については述べられていない。
イソチオシアナート化合物はワサビ香味に特徴的な成分であり、香りの閾値が低く、強いワサビ様の刺激を有しており、前記特許文献1〜3の植物由来の抗菌成分と同様に実用面で有効性を充分に期待できるものでもなかった。
【特許文献1】特許第2582736号公報
【特許文献2】特公平7−25670号公報
【特許文献3】特開2004−18470公報
【特許文献4】特許第3749604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来技術における上記のような問題点を解決し、古くから食用に供されて安全性に問題がない植物中の成分に由来し、しかも独特の香辛料様の香味がなく、その一方で、歯周病原因菌に対する高い抗菌効果を有し、歯周病の予防や治療をすることができる抗歯周病剤を提供すること、並びにかかる抗歯周病剤を適用した飲食物や口腔衛生剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ω−アルケニルイソチオシアナート化合物、ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナートおよびω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物と、ミント精油またはミント精油成分との混合物を歯周病原因菌に暴露したときに、抗歯周病剤として使用可能な抗菌活性効果を持つことを見出し、長い食経験の裏付けも考え合わせ、安全で効果的に歯周病を予防もしくは治療する抗歯周病剤として応用できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記式〔1〕で表されるω−アルケニルイソチオシアナート化合物、下記式〔2〕で表されるω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物、及び下記式〔3〕で表されるω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含むことを特徴とする抗歯周病剤である。
式〔1〕:CH2=CH−(CH2)m−NCS
(式中、mは1〜10の整数を表す)
式〔2〕:R−S−(CH2)n−NCS
(式中、nは1〜10の整数を表し、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す)
式〔3〕:Ph−(CH2)p−NCS
(式中、Phはフェニル基を表し、pは1〜10の整数を表す)
【0013】
また、本発明は、アリルイソチオシアナート、3−ブテニルイソチオシアナート、4−ペンテニルイソチオシアナート、5−ヘキセニルイソチオシアナート、6−ヘプテニルイソチオシアナート、メチルチオメチルイソチオシアナート、エチルチオメチルイソチオシアナート、n−プロピルチオメチルイソチオシアナート、イソプロピルチオメチルイソチオシアナート、n−ブチルチオメチルイソチオシアナート、イソブチルチオメチルイソチオシアナート、sec−ブチルチオメチルイソチオシアナート、2−メチルチオエチルイソチオシアナート、2−エチルチオエチルイソチオシアナート、2−n−プロピルチオエチルイソチオシアナート、3−メチルチオプロピルイソチオシアナート、4−メチルチオブチルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8−メチルチオオクチルイソチオシアナート、9−メチルチオノニルイソチオシアナート、ベンジルイソチオシアナート及びフェネチルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物からなる抗歯周病剤であり、また、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート及びベンジルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含むことを特徴とする抗歯周病剤である。
【0014】
また、本発明は、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、アリルイソチオシアナート及びベンジルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含むことを特徴とする抗歯周病剤である。
【0015】
また、上記の抗歯周病剤において、ミント精油またはミント精油成分が、ペパーミント精油、スペアミント精油中に含まれるメントール、メントン、カルボン、メンチルアセテート、1,8−シネオール、リモネン、β−カリオフィレンからなる群より選ばれる少なくとも1つまたは2つ以上の成分の混合物であること;イソチオシアナート化合物100重量部に対して、ミント精油またはミント精油成分を0.01〜10000重量部配合してなることをそれぞれ特徴とする。
さらに、本発明は、上記抗歯周病剤を含有する飲食物又は口腔衛生剤であり、また、上記抗歯周病剤を0.001〜1質量%含有する飲食物又は口腔衛生剤である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の抗歯周病剤は、前記各種の歯周病原因菌に対して、高濃度では殺菌作用を示し、また低濃度であっても歯周病原因菌の増殖を抑制し、歯周病原因菌の増殖に伴う歯肉の炎症や悪臭の発生を予防、改善することから抗歯周病剤として有効である。
また、本発明の抗歯周病剤の成分は、古くから食に供されているわさびの香味成分に含まれている天然物のイソチオシアナート化合物およびミント精油成分であるので安全性が高い。
さらに、イソチオシアナート化合物やミント精油またはミント精油成分は、それぞれ独特の香味を有するが、それらを組み合わせることにより顕著な抗菌効果がもたらされることから本発明の抗歯周病剤の有効濃度が低濃度でも十分であるため、最終製品に対してそれらの香味を大きく損なうことはない。従って、菓子類、ジュースのような飲食物あるいは歯磨き、口中洗浄剤のような口腔衛生剤に配合して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
<A>抗歯周病剤
本発明は、下記に詳述するイソチオシアナート化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含む抗歯周病剤である。
【0018】
(1)イソチオシアナート化合物
本発明に使用するイソチオシアナート化合物は、ω−アルケニルイソチオシアナート化合物、ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物、及びω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物である。
【0019】
(a)ω−アルケニルイソチオシアナート化合物は、下記式〔1〕で表される。
式〔1〕:CH2=CH−(CH2)m−NCS
上記式中、mは1〜10の整数を表すが、2〜8が好ましく、2〜4が特に好ましい。
式〔1〕の構造を有する化合物の具体例としては、アリルイソチオシアナート、3−ブテニルイソチオシアナート、4−ペンテニルイソチオシアナート、5−ヘキセニルイソチオシアナート、6−ヘプテニルイソチオシアナートなどが挙げられる。これらの中でも、刺激臭が比較的弱く、残香性が比較的低いといった点から5−ヘキセニルイソチオシアナートが好ましい。
【0020】
式〔1〕において、mが5以下である化合物は、ワサビやホースラディッシュなどの香気成分の中に含まれていることが知られているが、それらの量は極めて微量であるので工業的に得るには合成によるのが適切である。
当該化合物の合成方法は、例えば特開平2−221255号公報に開示されているが、その概略は、不活性溶媒中、
CH2=CH−(CH2)m−X
(式中、mは前述したものと同一の意味を有し、Xは臭素、塩素、ヨウ素のようなハロゲン原子を表す)
の構造を有するω−アルケニルハライドをチオシアン酸塩と反応させ、得られたω−アルケニルチオシアナートを極性非プロトン性溶媒中で異性化することにより得られる。
【0021】
(b)ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物は、下記式〔2〕で表される。
式〔2〕:R−S−(CH2)n−NCS
上記式中、nは1〜10の整数を表すが、3〜8が好ましく、4〜7が特に好ましい。また、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を表すが、好ましい例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルなどが挙げられ、香味にくせがなく、残香性が比較的低いといった点からメチル基が好ましい。
【0022】
式〔2〕の構造を有する化合物の例としては、メチルチオメチルイソチオシアナート、エチルチオメチルイソチオシアナート、n−プロピルチオメチルイソチオシアナート、イソプロピルチオメチルイソチオシアナート、n−ブチルチオメチルイソチオシアナート、イソブチルチオメチルイソチオシアナート、sec−ブチルチオメチルイソチオシアナート、2−メチルチオエチルイソチオシアナート、2−エチルチオエチルイソチオシアナート、2−n−プロピルチオエチルイソチオシアナート、3−メチルチオプロピルイソチオシアナート、4−メチルチオブチルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8−メチルチオオクチルイソチオシアナート、9−メチルチオノニルイソチオシアナートなどが挙げられる。
これらの中でも、香味にくせがなく、残香性が比較的低いといった点から6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナートが好ましい。
【0023】
式〔2〕において、nが8以下である化合物は、ワサビやホースラディッシュなどの香気成分の中に含まれていることが知られているが、それらの量は極めて微量であるので工業的に得るには合成によるのが適切である。
当該化合物の合成方法は、例えば特開平7−215931号公報に開示されているが、その概略は、不活性溶媒中、
CH2=CH−(CH2)n-2−NCS
(式中、nは3〜10の整数を表す)
の構造を有するω−アルケニルイソチオシアナートを、
R−SH
(式中、Rは前述したものと同一の意味を有する)
を有するアルキルメルカプタンと反応させることにより得られる。
【0024】
(c)ω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物は、下記式〔3〕で表される。
式〔3〕:Ph−(CH2)p−NCS
(Phはフェニル基である)
上記式中、pは1〜10の整数を表すが、好ましくは1〜8、特に1または2が好ましい。
式〔3〕の構造を有する化合物の例としては、ベンジルイソチオシアナート、フェネチルイソチオシアナートなどが挙げられるが、刺激臭が比較的弱く、残香性が比較的低いといった点からベンジルイソチオシアナートが好ましい。
式〔3〕において、pが2以下である化合物は、ワサビやホースラディッシュなどの香気成分の中に含まれていることが知られているが、それらの量は極めて微量であるので工業的に得るには合成によるのが適切である。
【0025】
当該化合物の合成方法は、例えば特開平2−221255号公報に開示されているが、その概略は、不活性溶媒中、
Ph−(CH2)p−X
(式中、pは前述したものと同一の意味を有し、Xは臭素、塩素、ヨウ素のようなハロゲン原子を示す)
を有するω−フェニルアルキルハライドをチオシアン酸塩と反応させ、得られたω−フェニルアルキルチオシアナートを極性非プロトン溶媒中で異性化することにより得られる。
【0026】
(2)ミント精油またはミント精油成分
本発明に使用するミント精油またはミント精油成分は、ペパーミント精油、スペアミント精油中に含まれるメントール、メントン、カルボン、メンチルアセテート、1,8−シネオール、リモネン、β−カリオフィレンからなる群より選ばれる少なくとも1つまたは2つ以上の成分の混合物である。
【0027】
本発明の抗歯周病剤においてはイソチオシアナート化合物100重量部に対して、ミント精油またはミント精油成分を0.01〜10000重量部配合することが両成分の相乗効果を得るために好ましい。
【0028】
(3)その他の成分
抗歯周病剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、保存料、安定剤、賦形剤、添加剤、色素、香料、酸化防止剤、エタノール、湿潤剤、界面活性剤、研磨剤等を適宜配合することができる。
【0029】
<B>抗歯周病剤を含有する飲食物、口腔衛生剤
本発明の抗歯周病剤は、飲食物又は口腔衛生剤に添加して適用することができる。添加する口腔衛生剤の剤型は液剤、固形剤、半固形剤のいずれであっても良く、歯磨き剤、トローチ剤、液状又は粉末状うがい薬、塗布液、チューインガムなどに適用可能である。
また、本発明の抗歯周病剤組成物を配合する飲食物としてはジュースなどの清涼飲料、キャンデー、チューインガムなどの菓子類が適当である。
【0030】
本発明の抗歯周病剤は、上記最終製品に対し、好ましくは0.001〜2質量%の濃度で、特に好ましくは0.002〜0.1質量%程度の濃度になるように添加して使用される。添加量が下限質量未満では歯周病抑制効果が発揮されず、一方、添加量が上限質量を超えると、わさび様やミント刺激臭が強く感じられるため、抗歯周病剤として飲食物や口腔衛生剤等に配合するには適さないこともある。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<A>抗歯周病剤の調製例
抗歯周病剤を構成するイソチオシアナート化合物を、下記参考例1〜4のとおり合成した。
【0032】
〔参考例1〕5−ヘキセニルイソチオシアナートの合成
臭化5−ヘキセニル35gを1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン40gに溶解し、チオシアン酸カリウム24gと炭酸カルシウム5.5gを加え、混合液を75℃で1時間加熱攪拌した。
次いで、内温155℃まで加温上昇させて6時間、加熱攪拌した。不溶物を除去後、塩化メチレンで抽出し、粗油を得た。粗油を減圧蒸留し、5−ヘキセニルイソチオシアナート9.4gを得た。収率31%、沸点74℃/3.5mmHgであった。
【0033】
〔参考例2〕5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの合成
4−ペンテニルイソチオシアナート38gおよびメチルメルカプタンのメタノール溶液(30%)144gの混合物にアゾビスイソブチロニトリル0.9gを加え、室温で9時間攪拌した。酢酸エチルを加え、水洗後、蒸留し5−メチルチオペンチルイソチオシアナート33gが得られた。収率63%、沸点101〜103℃/1mmHgであった。
【0034】
〔参考例3〕6−メチルチオヘキシルイソチオシアナートの合成
5−ヘキセニルイソチオシアナート28gおよびメチルメルカプタンのメタノール溶液(30%)50gの混合物にt−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)0.4gを加え、室温で2時間攪拌した。酢酸エチルを加え、水洗後、蒸留し6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート32gが得られた。収率82%、沸点119℃/0.5mmHgであった。
【0035】
〔参考例4〕ベンジルイソチオシアナートの合成
臭化ベンジル17gを1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン40gに溶解し、チオシアン酸カリウム10gと炭酸カルシウム3.5gを加え、混合液を75℃で1時間加熱攪拌した。次いで、内温155℃まで加温上昇させて6時間加熱攪拌した。不溶物を除去後、塩化メチレンで抽出し、粗油を得た。粗油を減圧蒸留し、ベンジルイソチオシアナート9.6gを得た。収率65%、沸点110℃/10mmHg。
【0036】
上記イソチオシアネートに混合するミント精油成分はペパーミント精油およびスペアミント精油から分離精製されるものであって、メントール、メントン、カルボン、メンチルアセテート、1,8−シネオール、リモネン、β−カリオフィレンなどがある。これらは一般に市販されているものを用いることもできる。
【0037】
〔試験例1〕
次に、参考例1〜4で合成した各種イソチオシアナート化合物およびアリルイソチオシアナート(シグマ・アルドリッチジャパン(株)製)、5−メチルチオペンチルイソチオシナート(小川香料(株)製)、ベンジルイソチオシアナート(シグマ・アルドリッチジャパン(株)製)およびミント精油成分であるメントール、メントン、カルボン、メンチルアセテート、1,8−シネオール、リモネン、β−カリオフィレンを用いて、本発明の抗歯周病剤が、歯周病原因菌に対して強い増殖抑制作用を持つことを、(1)薬剤の併用効果の評価に用いられるアイソボログラム(isobologram)と、(2)暴露時間における菌数の変化を測定、および(3)2剤の併用効果を評価するFICインデックスを算出することで確認した。
【0038】
評価に用いた菌株は、予め凍結保存してあるATCC(American Type Culture Collection)から分譲された代表的な歯周病原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)ATCC33277株(P.g菌)およびJCM(Japan Correction of Microorganisms)から分譲されたフソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum subsp,nucleatum)JCM8532株(F.n菌)、プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens)JCM6322株(P.n菌)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)JCM12248株(P.i菌)である。
これらの菌株を変法GAM液体培地5mlに植菌し、37℃でP.g菌およびF.n菌は44時間、P.i菌およびP.n菌は24時間前培養した。次いで、これらを新しい変法GAM液体培地に植え、最終生菌数が1.0×108CFU/mlとなるように調整した。
【0039】
(1)アイソボログラム(isobologram)による評価
調整菌液とDMFに溶解させたサンプルを用いて、マイクロプレートチェッカーボード法による抗菌活性の測定を行った。すなわち、96穴マイクロプレート中の変法GAM液体培地に1.0×108CFU/mlになるように前培養菌液を添加し、縦一列に所定の濃度に調整したイソチオシアナート化合物を加えよく混合した。
一方で横一列に所定の濃度に調整したミント精油成分をよく混合した。縦一列の始発レーンから以降のレーン(右隣り)に段階的に混合しながら移すことで2倍希釈系列を作成した。ついで横一列の始発レーンから以降のレーン(下隣り)に段階的に混合しながら移すことで2倍希釈系列を作成した。
この操作により横方向にイソチオシアナート化合物の希釈系列が、縦方向にミント精油成分の希釈系列およびその混合の希釈系列ができた。隣り合うウェルどうしのクロスコンタミネーションを防ぐため、シリコンプレートシールを使い密閉し、37℃でP.g菌は44時間、P.i菌は24時間培養した。培養および各操作は全て嫌気グローブボックス内で行った。
【0040】
試料を添加しないコントロールとして溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、陽性指標として塩酸クロルヘキシジンを用いてコンタミネ−ション等の確認を試験毎に行った。
菌の生育の有無の判定は各ウェルの655nmにおける吸収を測定し、0.05abs
以下であるものを生育阻害効果ありとした。生育阻害効果の見られた各濃度の交差点をプロットして作成されるグラフであるアイソボログラム(isobologram)から、併用効果が相乗、相加、拮抗のいずれにあたるかを判定した。MIC(Minimum Inhibitory Concentration、最小発育阻止濃度)どうしを結ぶ線より内側が相乗、誤差範囲内であれば相加、外側であれば拮抗作用を示す。
各イソチオシアナート化合物とミント精油成分の併用効果を図1〜6のアイソボログラム(isobologram)で示した。
【0041】
(2)菌数変化の測定
調整した菌液のうち4.9mlを滅菌した試験管に分注し、所定の濃度に調整した各サンプル(対照としてDMF、イソチオシアナート類およびミント精油成分)を50μlずつ添加した。濃度調整おいて溶媒であるDMFの影響が菌体に及ばないよう、DMFの最終濃度を0.25%以下になるようにした。各サンプルを添加後よく混合し、0分、3分後、6分後に試験管から取り出した菌液を予備還元済みの変法GAM寒天平板に塗末した。菌液は必要に応じて希釈をし、寒天平板に塗末した。塗末した平板を嫌気培養し、生じたコロニー数をカウントして被検菌液の菌数を算出した。植菌から培養までの全ての操作は嫌気的に行った。
各イソチオシアナート化合物とミント精油成分の併用効果は図7〜10の菌数変化プロットで表した。
【0042】
(3)FICインデックスによる評価
P.g菌を用いて、本発明の2剤配合の併用効果の指標としてFIC(Fractional Inhibitory Concentration)インデックスという概念を用いた(化学療法ハンドブック改訂第3版、上田 泰、清水喜八郎 編、永井書店、p.97、1986年)。FICインデックス値が低いほど相乗効果が高いとされる。
サンプルAおよびサンプルBの併用における系ではFICインデックスは以下の式で表される。
AのFICインデックス = 併用時のAのMIC/単独使用時のAのMIC
BのFICインデックス = 併用時のBのMIC/単独使用時のBのMIC
本発明における実験では試験数を3回設け、その誤差範囲を含めた値が1未満であれば相乗作用、1ならば相加作用、1を超えれば拮抗作用とした。
【0043】
イソチオシアナート化合物のうちアリルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナートおよびベンジルイソチオシアナートと、ミント精油成分とを併用したもののP.g菌に対するFICインデックスを表1に示す。表1の結果より、各イソチオシアナート化合物とミント精油成分との混合物においてP.g菌に対する単純和以上の抗菌効果が見られた。
【0044】
【表1】

【0045】
<B>抗歯周病剤の適用例
〔実施例1〕
下記の処方により5−メチルチオペンチルイソチオシアナートおよびl−リモネンを配合した歯磨き1を得た。
【0046】
【表2】

【0047】
〔実施例2〕
実施例1の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりにアリルイソチオシアナートを配合して歯磨き2を得た。
【0048】
〔実施例3〕
実施例1の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりに6−メチルチオヘキシルイソチオシアナートを配合して配合して歯磨き3を得た。
【0049】
〔実施例4〕
実施例1の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりにベンジルイソチオシアナートを配合して歯磨き4を得た。
【0050】
〔試験例2〕
実施例1の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりに水を配合して作成した歯磨きの香味をコントロールとして、歯磨き1〜4の香味風味評価を専門パネル10人で行った。結果は下記の表3のとおりである。
【0051】
〔実施例5〕
実施例1の処方中のl−リモネンの代わりにl−メントールを配合して歯磨き5を得た。
【0052】
〔実施例6〕
実施例1の処方中のl−リモネンの代わりにl−メントンを配合して配合して歯磨き6を得た。
【0053】
〔実施例7〕
実施例1の処方中のl−リモネンの代わりにl−1,8−シネオールを配合して歯磨き7を得た。
【0054】
〔実施例8〕
実施例1の処方中のl−リモネンの代わりにl−カルボンを配合して歯磨き8を得た。
【0055】
〔実施例9〕
実施例1の処方中のl−リモネンの代わりにl−メンチルアセテートを配合して歯磨き9を得た。
【0056】
〔実施例10〕
実施例1の処方中のl−リモネンの代わりにl−β−カリオフィレンを配合して歯磨き10を得た。
【0057】
〔試験例3〕
実施例1の処方中のl−リモネンの代わりに水を配合して作成した歯磨きの香味をコントロールとして、歯磨き5〜10の香味風味評価を専門パネル10人で行った。結果は下記の表3のとおりである。
【0058】
【表3】

【0059】
〔実施例11〕
下記の表4の処方により本発明の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンを配合したチューインガム1を得た。
【0060】
【表4】

【0061】
〔実施例12〕
実施例11の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりにアリルイソチオシアナートを配合してチューインガム2を得た。
【0062】
〔実施例13〕
実施例11の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりに6−メチルチオヘキシルイソチオシアナートを配合して配合してチューインガム3を得た。
【0063】
〔実施例14〕
実施例11の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりにベンジルイソチオシアナートを配合してチューインガム4を得た。
【0064】
〔試験例4〕
実施例11の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりに水を配合して作成したチューインガムの香味をコントロールとして、チューインガム1〜4の香味風味評価を専門パネル10人で行った。結果を下記の表5に示す。
【0065】
〔実施例15〕
実施例11の処方中のl−リモネンの代わりにl−メントールを配合してチューインガム5を得た。
【0066】
〔実施例16〕
実施例11の処方中のl−リモネンの代わりにl−メントンを配合して配合してチューインガム6を得た。
【0067】
〔実施例17〕
実施例11の処方中のl−リモネンの代わりにl−1,8−シネオールを配合してチューインガム7を得た。
【0068】
〔実施例18〕
実施例11の処方中のl−リモネンの代わりにl−カルボンを配合してチューインガム8を得た。
【0069】
〔実施例19〕
実施例11の処方中のl−リモネンの代わりにl−メンチルアセテートを配合してチューインガム9を得た。
【0070】
〔実施例20〕
実施例11の処方中のl−リモネンの代わりにl−β−カリオフィレンを配合してチューインガム10を得た。
【0071】
〔試験例5〕
実施例11の処方中のl−リモネンの代わりに水を配合して作成したチューインガムの香味をコントロールとして、チューインガム5〜10の香味風味評価を専門パネル10人で行った。結果を下記の表5に示す。
【0072】
【表5】

【0073】
〔実施例21〕
下記の表6の処方により本発明の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンを配合した口中洗浄剤1を得た。
【0074】
【表6】

【0075】
〔実施例22〕
実施例21の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりにアリルイソチオシアナートを配合して口中洗浄剤2を得た。
【0076】
〔実施例23〕
実施例21の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりに6−メチルチオヘキシルイソチオシアナートを配合して配合して口中洗浄剤3を得た。
【0077】
〔実施例24〕
実施例21の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりにベンジルイソチオシアナートを配合して口中洗浄剤4を得た。
【0078】
〔試験例6〕
実施例21の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりに水を配合して作成した口中洗浄剤の香味をコントロールとして、口中洗浄剤1〜4の香味風味評価を専門パネル10人で行った。結果を下記の表7に示す。
【0079】
〔実施例25〕
実施例21の処方中のl−リモネンの代わりにl−メントールを配合して口中洗浄剤5を得た。
【0080】
〔実施例26〕
実施例21の処方中のl−リモネンの代わりにl−メントンを配合して配合して口中洗浄剤6を得た。
【0081】
〔実施例27〕
実施例21の処方中のl−リモネンの代わりにl−1,8−シネオールを配合して口中洗浄剤7を得た。
【0082】
〔実施例28〕
実施例21の処方中のl−リモネンの代わりにl−カルボンを配合して口中洗浄剤8を得た。
【0083】
〔実施例29〕
実施例21の処方中のl−リモネンの代わりにl−メンチルアセテートを配合して口中洗浄剤9を得た。
【0084】
〔実施例30〕
実施例21の処方中のl−リモネンの代わりにl−β−カリオフィレンを配合して口中洗浄剤10を得た。
【0085】
〔試験例7〕
実施例21の処方中のl−リモネンの代わりに水を配合して作成した歯磨きの香味をコントロールとして、口中洗浄剤5〜10の香味風味評価を専門パネル10人で行った。結果を下記の表7に示す。
【0086】
【表7】

【0087】
〔実施例31〕
ハードキャンデー
下記の表8の処方により本発明の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンを配合したハードキャンデー1を得た。
【0088】
【表8】

【0089】
〔実施例32〕
実施例31の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりにアリルイソチオシアナートを配合してハードキャンデー2を得た。
【0090】
〔実施例33〕
実施例31の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりに6−メチルチオヘキシルイソチオシアナートを配合して配合してハードキャンデー3を得た。
【0091】
〔実施例34〕
実施例31の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりにベンジルイソチオシアナートを配合してハードキャンデー4を得た。
【0092】
〔試験例8〕
実施例31の処方中の5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの代わりに水を配合して作成したハードキャンデーの香味をコントロールとして、ハードキャンデー1〜4の香味風味評価を専門パネル10人で行った。結果を下記の表9に示す。
【0093】
〔実施例35〕
実施例31の処方中のl−リモネンの代わりにl−メントールを配合してハードキャンデー5を得た。
【0094】
〔実施例36〕
実施例31の処方中のl−リモネンの代わりにl−メントンを配合して配合してハードキャンデー6を得た。
【0095】
〔実施例37〕
実施例31の処方中のl−リモネンの代わりにl−1,8−シネオールを配合してハードキャンデー7を得た。
【0096】
〔実施例38〕
実施例31の処方中のl−リモネンの代わりにl−カルボンを配合してハードキャンデー8を得た。
【0097】
〔実施例39〕
実施例31の処方中のl−リモネンの代わりにl−メンチルアセテートを配合してハードキャンデー9を得た。
【0098】
〔実施例40〕
実施例31の処方中のl−リモネンの代わりにl−β−カリオフィレンを配合してハードキャンデー10を得た。
【0099】
〔試験例9〕
実施例31の処方中のl−リモネンの代わりに水を配合して作成したハードキャンデーの香味をコントロールとして、ハードキャンデー5〜10の香味風味評価を専門パネル10人で行った。
前記試験例8と試験例9の結果を表9に示す。
【0100】
【表9】

【0101】
以上の結果より、本発明の抗歯周病剤を用いた時、イソシアナート化合物やミント精油成分の風味は感じるものの、食品として違和感のない風味であると共に、製品への添加量も少量で十分効果があるため、製品の香味風味を大きく損なわないことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の抗歯周病剤は、代表的な歯周病原因菌群による口腔疾患を抑制するため、歯周病の予防剤として有効である。本発明の抗歯周病剤は、わさび香味成分に含まれている天然物であるイソチオシアナート化合物およびミント精油成分であるため安全性が高く、添加量が低いにもかかわらず抗歯周病効果が大きく、最終製品に対してそれらの味が大きく影響することはない。
従って、菓子類、ジュースのような飲食物あるいは歯磨き、口中洗浄剤のような口腔衛生剤に配合して使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】アリルイソチオシアナートとl−リモネンをP.g菌に添加したときの結果を示したアイソボログラムである。
【図2】5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンをP.g菌に添加したときの結果を示したアイソボログラムである。
【図3】ベンジルイソチオシアナートとl−リモネンをP.g菌に添加したときの結果を示したアイソボログラムである。
【図4】5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−メントールをP.i菌に添加したときの結果を示したアイソボログラムである。
【図5】5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンをP.i菌に添加したときの結果を示したアイソボログラムである。
【図6】5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−カルボンをP.i菌に添加したときの結果を示したアイソボログラムである。
【図7】5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンをP.g菌に添加後、菌数の経時変化を測定した結果を表したグラフである。 なお、5−メチルチオペンチルイソチオシアネートの添加量はMICと同じ65ppm、l−リモネンの添加量はMICと同じ350ppmである。
【図8】5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンをP.n菌に添加後、菌数の経時変化を測定した結果を表したグラフである。 なお、5−メチルチオペンチルイソチオシアネートの添加量はMICと同じ50ppm、l−リモネンの添加量はP.g菌でのMICと同じ350ppmである。(l−リモネンのP.n菌に対するMICは約10000ppmと高かったため、P.g菌でのMICを用いた。)
【図9】5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンをP.i菌に添加後、菌数の経時変化を測定した結果を表したグラフである。 なお、5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの添加量はMICと同じ50ppm、l−リモネンの添加量はP.g菌でのMICと同じ350ppmである。(l−リモネンはP.i菌に対し活性を示さなかったため、P.g菌でのMICを用いた。)
【図10】5−メチルチオペンチルイソチオシアナートとl−リモネンをF.n菌に添加後、菌数の経時変化を測定した結果を表したグラフである。 なお、5−メチルチオペンチルイソチオシアナートの添加量はMICと同じ220ppm、l−リモネンの添加量はP.g菌でのMICと同じ350ppmである。(l−リモネンはF.n菌に対し活性を示さなかったため、P.g菌でのMICを用いた。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式〔1〕で表されるω−アルケニルイソチオシアナート化合物、下記式〔2〕で表されるω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート化合物、及び下記式〔3〕で表されるω−フェニルアルキルイソチオシアナート化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアナート化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含むことを特徴とする抗歯周病剤。
式〔1〕:CH2=CH−(CH2)m−NCS
(式中、mは1〜10の整数を表す)
式〔2〕:R−S−(CH2)n−NCS
(式中、nは1〜10の整数を表し、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す)
式〔3〕:Ph−(CH2)p−NCS
(式中、Phはフェニル基を表し、pは1〜10の整数を表す)
【請求項2】
アリルイソチオシアナート、3−ブテニルイソチオシアナート、4−ペンテニルイソチオシアナート、5−ヘキセニルイソチオシアナート、6−ヘプテニルイソチオシアナート、メチルチオメチルイソチオシアナート、エチルチオメチルイソチオシアナート、n−プロピルチオメチルイソチオシアナート、イソプロピルチオメチルイソチオシアナート、n−ブチルチオメチルイソチオシアナート、イソブチルチオメチルイソチオシアナート、sec−ブチルチオメチルイソチオシアナート、2−メチルチオエチルイソチオシアナート、2−エチルチオエチルイソチオシアナート、2−n−プロピルチオエチルイソチオシアナート、3−メチルチオプロピルイソチオシアナート、4−メチルチオブチルイソチオシアナート、5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアナート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8−メチルチオオクチルイソチオシアナート、9−メチルチオノニルイソチオシアナート、ベンジルイソチオシアナート及びフェネチルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含むことを特徴とする抗歯周病剤。
【請求項3】
5−メチルチオペンチルイソチオシアナート、アリルイソチオシアナート及びベンジルイソチオシアナートからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物と、ミント精油またはミント精油成分とを含むことを特徴とする抗歯周病剤。
【請求項4】
ミント精油またはミント精油成分が、ペパーミント精油、スペアミント精油中に含まれるメントール、メントン、カルボン、メンチルアセテート、1,8−シネオール、リモネン、β−カリオフィレンからなる群より選ばれる少なくとも1つまたは2つ以上の成分の混合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗歯周病剤。
【請求項5】
イソチオシアナート化合物100重量部に対して、ミント精油またはミント精油成分を0.01〜10000重量部配合してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗歯周病剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗歯周病剤を含有することを特徴とする飲食物又は口腔衛生剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗歯周病剤を0.001〜1質量%の濃度で含有することを特徴とする飲食物又は口腔衛生剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−308378(P2007−308378A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136164(P2006−136164)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年12月15日 日本化学会主催の「2005環太平洋国際化学会議」において文書をもって発表
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】