説明

抗糖尿病性二環式化合物

薬学上許容される塩およびそのプロドラッグを含む、縮環ピリジン環を持つ二環式化合物は、Gタンパク質共役型受容体40(GPR40)のアゴニストであり、特に、2型糖尿病、およびしばしばこの疾患に伴う病状、たとえば、肥満、混合性または糖尿病性脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症および高トリグリセリド血症のような脂質障害の治療において治療用化合物として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学上許容されるその塩およびプロドラッグを含む、縮環ピリジン環を持つ二環式化合物に関し、Gタンパク質共役型受容体40(GPR40)のアゴニストであり、治療用化合物として有用であり、特に2型糖尿病、および肥満や脂質障害を含むしばしばこの疾患に伴う病状の治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は多くの原因因子に由来する疾患であり、絶食状態において、または経口ブドウ糖負荷試験におけるブドウ糖投与後、血漿中ブドウ糖が高値(高血糖)になることにより特徴づけられる。糖尿病には一般的に2つの型が認められている。1型糖尿病またはインスリン依存型糖尿病(IDDM)では、患者は、グルコース利用を調節するホルモンであるインスリンをほとんど又は全く産生しない。2型糖尿病またはインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)においては、インスリンは依然として体内で産生されている。2型糖尿病の患者は、筋、肝臓、脂肪組織といった主なインスリン感受性組織におけるグルコースや脂質の代謝を促進するというインスリンの作用に対し抵抗性を示す。これらの患者は、インスリンが正常値であることが多く、インスリンの分泌量を増加することでインスリンの低い効き目を補うため、高インスリン血症(高い血漿中インスリン濃度)を示すことがある。インスリン抵抗性は、主としてインスリン受容体数の低下により引き起こされるのではなく、未だ完全には判っていないインスリン受容体への結合後の欠陥(post-insulin receptor binding defect)により引き起こされる。このインスリンに対する応答性の欠如は、インスリンを介する筋でのグルコースの取込み、酸化、貯蔵の活性化を不十分にし、インスリンを介する脂肪組織での脂肪分解の抑制を不十分にし、インスリンを介する肝でのグルコース産生・分泌の抑制を不十分にする。
【0003】
糖尿病で起こる持続的または未制御の高血糖は、早期に罹病し死亡する率の増大と関係する。しばしば、異常な糖恒常性は、肥満、高血圧、脂質、リポタンパク質、アポリポタンパク質の代謝の変調、その他の代謝性疾患、血行動態疾患と直接間接に関係する。2型糖尿病患者は、アテローム硬化症、冠状動脈疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害、網膜症を含む大血管および微小血管合併症の危険性が有意に高くなる。したがって、糖の恒常性、脂質代謝、肥満および高血圧の治療的制御は、糖尿病を臨床的に管理、治療する上で決定的に重要である。
【0004】
インスリン抵抗性を示す患者は、集合的にX症候群またはメタボリック症候群と呼ばれる幾つかの症状を持つことが多い。一つの広く用いられている定義によれば、メタボリック症候群を示す患者は、以下の5つの症状からなる群から選択される3つ以上の症状を持つという特徴がある:(1)腹部の肥満;(2)高トリグリセリド血症;(3)低高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)の低下;(4)高い血圧;(5)高い空腹時血糖値。患者が糖尿病も持っていれば、これらの症状は2型糖尿病に特有の範囲内にあると思われる。これらの症状の各々は、Third Report of the National Cholesterol Education Program Expert Panel on Detection, Evaluation and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III,or ATP III)(National Institutes of Health,2001,NIH Publication No.01−3670)において臨床的に定義されている。メタボリック症候群の患者は、明白な糖尿病を示すか発症しているかに係らず、アテローム硬化症、冠状動脈疾患のような2型糖尿病で起こる大血管および微小血管合併症を発症する危険が高い。
【0005】
2型糖尿病には幾つか治療法があるが、それらは各々それ自体の限界や潜在的リスクがある。運動や食事からのカロリー摂取の減少は、糖尿病の病状を劇的に改善することが多く、2型糖尿病およびインスリン抵抗性に伴う前糖尿病状態に通常推奨される第一線の治療法である。しかしながら、強固に根づいた座り癖の生活様式および過剰な食物消費、特に、多量の脂肪や炭水化物を含有する食物の過度の消費が原因で、この治療法への遵守はきわめて悪い。薬物治療は以下の3つの病態分野に集中している:(1)肝でのグルコース産生(ビグアナイド系)、(2)インスリン抵抗性(PPARアゴニスト)、(3)インスリン分泌。
【0006】
ビグアナイド剤は、2型糖尿病の治療に広く用いられている薬剤群である。最もよく知られているビグアナイド剤2剤、すなわちフェンホルミンとメトホルミンは高血糖をある程度是正する。ビグアナイド剤は、主として肝での糖産生を阻害することにより働き、インスリン感受性をわずかに改善するとも考えられている。ビグアナイド剤は、単独療法としてまたは低血糖の危険を高めないインスリンまたはインスリン分泌促進薬のような他の糖尿病剤と併用して使用できる。しかしながら、フェンホルミンとメトホルミンは、乳酸アシドーシスおよび吐き気/下痢を誘発する可能性がある。メトホルミンはフェンホルミンより副作用の危険は少ないので、2型糖尿病の治療には広く処方される。
【0007】
グリタゾン類(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2、4−ジオン類)は、高血糖や2型糖尿病の他の症状を改善することができる新しい化合物群である。現在市販されているグリタゾン類(ロシグリタゾンとピオグリタゾン)は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR;peroxisome proliferator activated receptor)ガンマサブタイプのアゴニストである。PPAR−γ−アゴニストは、2型糖尿病の幾つかの動物モデルの筋、肝、脂肪組織におけるインスリン感受性を実質的に高め、低血糖を起こすことなく高血糖値を部分的または完全に是正する。PPAR−γ−アゴニスト作用は、グリタゾン類で治療中のヒト患者で認められるインスリン感受性の改善の原因となっていると考えられる。新しいPPARアゴニストが現在開発中である。新しいPPAR化合物の多くは、PPAR−α−、γ−およびδ−サブタイプ類の1種以上のアゴニストである。PPAR−α−サブタイプおよびPPAR−γ−サブタイプの両方のアゴニスト(PPAR−α/γ−二重アゴニスト)である化合物は、高血糖を低下し、脂質代謝も改善するので有望である。現在市販されているPPAR−γ−アゴニストは、血漿中グルコースおよびヘモグロビンA1Cを低下させるのにわずかに有効である。これらの現在市販されている化合物は、脂質代謝を大きくは改善せず、実際には脂質プロフィールに対しマイナスの影響を及ぼすことがある。したがって、これらのPPAR化合物は糖尿病治療の重要な進歩を表すものであるが、いっそうの改善が依然として必要である。
【0008】
もう一つの広く用いられている薬物治療には、スルホニル尿素剤(例えばトルブタミドとグリピジド)のようなインスリン分泌促進剤の投与がある。これらの薬剤は、膵臓β細胞を刺激して、より多くのインスリンを分泌させることにより、インスリンの血中濃度を高める。膵臓β細胞におけるインスリン分泌は、グルコースおよび様々な代謝信号、神経信号、ホルモン信号により厳しく制御されている。グルコースは、代謝を通してインスリン産生および分泌を刺激し、ATPその他の信号伝達分子を生成する。一方、他の細胞外信号は、細胞膜上に存在するPGCRを介してインスリン分泌の賦活剤または阻害剤として作用する。スルホニル尿素剤および関連のインスリン分泌促進剤は、インスリン放出の刺激と共に細胞の脱分極および電圧依存性Ca2+チャンネルの開放を起こすβ細胞のATP依存性K+チャンネルを遮断することにより作用する。このメカニズムはグルコース依存性でないので、インスリン分泌は周囲のグルコース濃度に係らず起こりうる。これは、グルコース濃度が低くともインスリン分泌を引き起こすことが出来るので、低血糖をもたらし、重症例では命にかかわることがある。したがって、インスリン分泌促進剤の投与は慎重に制御しなければならない。インスリン分泌促進剤は、しばしば2型糖尿病の第一線薬物療法として用いられる。
【0009】
グルコース依存性インスリン分泌により制御される膵島系のインスリン分泌に新たな注目が集まっている。このアプローチは、β細胞機能を安定化させ回復させる能力がある。この点について、幾つかのオーファンGタンパク質共役型受容体(GPCR)が最近同定されており、これらはβ細胞で優先的に発現され、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)に関係している。GPR40は細胞表面GPCRであり、これは、インスリン分泌性細胞系だけでなく、ヒト(およびげっ歯類)の膵島でも高度に発現されている。チアゾリジンジオン群のPPARγアゴニストの数種を含む、合成化合物だけでなく天然の中鎖ないし長鎖脂肪酸(FA)の数種は、最近GPR40のリガンドと同定されている(Itoh,Y.et al.,Nature.422:173[2003];Briscoe,C.P.et al.,J.Biol.Chem.278:11303[2003];Kotarsky,K.et al.,Biochem.Biophy.Res.Comm.301:406[2003])。高血糖条件下では、GPR40アゴニストは膵島細胞からのインスリン放出を強めることができる。この応答の特異性は、siRNAによるGPR40活性の阻害がFA誘発のGSIS増幅を減衰させるという結果により示唆される。これらの知見は、インスリン放出を促進させると考えられるFAの脂質誘導体の細胞内生成に加え、FA(および他の合成GPR40アゴニスト)も、FA誘発インスリン分泌を仲介する際にGPR40に結合する細胞外リガンドとして作用することがあることを示している。GPR40が、2型糖尿病の治療する際の標的となりうることについて幾つかの利点が考えられる。第一に、GPR40を介するインスリン分泌はグルコース依存性であり、低血糖の恐れは少ないか全くない。第二に、GPR40の限られた組織分布(主に膵島で)は、他の組織においてGRP40活性に伴う副作用の危険がより少ないことを示唆している。第三に、膵島で活性のGPR40アゴニストは、膵島機能を回復または保持する能力があると思われる。これは極めて好都合であろう。何故なら長期の糖尿病治療は膵島活性を次第に弱めることが多いので、長期治療の後には、2型糖尿病患者を毎日のインスリン注射で治療することがしばしば必要になるからである。GPR40アゴニストは、膵島機能を回復または保持することにより2型糖尿病患者の膵島機能の低下または喪失を遅らせるか防止すると思われる。
【0010】
(発明の要約)
本明細書中に記載した化合物類は、新しいGPR40アゴニスト類である。これらの化合物は、GPR40アゴニストにより調節される疾患、すなわち、2型糖尿病、2型糖尿病または前糖尿病性インスリン抵抗性に関連すると思われる高血糖、妊娠性糖尿病、および肥満を含む疾患の治療に有用である。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、以下の式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩(その個々のジアステレオマー類、鏡像異性体類、またはジアステレオマー類および/または鏡像異性体類の混合物を含む)を導く:
【0012】
【化1】

式中、Zは、−CRCO、−OCRCO、−N(R)(CRCO)、−SCRCO、テトラゾール、および以下の複素環IIからなる群から選択され:
【0013】
【化2】

式中、Aは、−N−または−CR−であり;
Bは、S、−NR−、−CH−およびOから選択され;
Yは、O、S、−C(=O)−および−NR−からなる群から選択され;
Wは、O、S、−CH−、−CF−および−NR−から選択され;
は、フェニル、ナフチル、C−Cシクロアルキル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾピラニル、1,4−ベンゾジオキサニル、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキノリン、イソキサゾール、イソチアゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン、チエン、ピリダジン、ピラジン、ベンゾイソキサゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン(Sオキシドおよびジオキシドを含む)、フロ(2,3−b)ピリド、キノール、インドール、イソキノール、キナゾリン、およびジベンゾゾフランからなる群から選択される環式置換基であり、上記Rは、ハロゲン、−OH、−CN、−NO、−NR、C−Cアルキル、−OC−Cアルキル、−C(=O)C−Cアルキルおよび−S(O)−Cアルキルから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよく、ここでC−Cアルキル、ならびに−OC−Cアルキル、−C(=O)C−Cアルキルおよび−S(O)−Cアルキルのアルキル基は、1乃至3個のハロゲンで置換されていてよく;
は、ハロゲン、−OH、−CN、−NO、−NR、C−Cアルキルおよび−OC−Cアルキルからなる群から選択され、ここでC−Cアルキルおよび−OC−Cアルキルのアルキル基は、1乃至3個のハロゲンで置換されていてよく;
およびRは、H、および1乃至3個のFで置換されていてよいC−Cアルキルからなる群から各々独立して選択され;
は、H、および1乃至3個のFで置換されていてよいC−Cアルキルからなる群から選択され;
、RおよびRは、HおよびC−Cアルキルからなる群から各々独立して選択され;
は、H、C−CアルキルおよびCFからなる群から選択され;
nは、1乃至3の整数であり;
pは、0、1または2であり;そして
qは、0、1または2である。
【0014】
上記の定義および以下の定義において、アルキル基は特に明記しない限り直鎖状または分岐鎖状でよい。
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下に要約した多数の実施形態を有する。これらの実施形態は、化合物、これらの化合物の薬学的に許容される塩、これらの化合物と薬学的に許容される担体とからなる医薬組成物を含む。これらの実施形態は、インスリン抵抗性、2型糖尿病、2型糖尿病とインスリン抵抗性に関連する脂質異常症の治療に特に有用であろう。
【0016】
式Iの化合物の好ましいサブグループにおいては、Rは、フェニルまたは2−ピリジニルであり、ここでRは、ハロゲン、−OH、−CN、−NO、−NR、C−Cアルキル、−OC−Cアルキル、−C(=O)C−Cアルキル、および−S(O)−Cアルキルから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよく、ここでC−Cアルキル、ならびに−OC−Cアルキル、−C(=O)C−Cアルキルおよび−S(O)−Cアルキルのアルキル基は、1乃至3個のハロゲンで置換されていてよく;
、R、RおよびRは、Hであり;
およびRは、独立してHおよびCHから選択され;
は、HおよびC−Cアルキルから選択され;
pは、0である。
【0017】
多くの好ましい式Iの化合物においては、RおよびRはHであり;RはHおよびCHから選択される。
【0018】
さらに細分化した多くの好ましい群は、RがHである式Iの化合物を含む。
【0019】
多くの好ましいより細分化した群は、Rが、F、Cl、Br、CH、CF、−OCH、−OCF、−CN、−NOおよび−OHから独立して選択される1乃至3個の基で置換されている式Iの化合物を含む。
【0020】
式Iで表される多くの好ましい化合物において、Zは、−CHCOHおよび以下の複素環IIaから選択される:
【0021】
【化3】

式中、Rは、HおよびC−Cアルキルから選択され、Bは、S、Oおよび−NH−から選択される。
【0022】
式Iで表される多くの好ましい化合物において、YはOである。
【0023】
式Iで表される多くの好ましい化合物において、Wは−CH−であり、nは1または2である。
【0024】
式Iで表される化合物のより細分化した好ましい群は、以下の式Iaを持ち、
【0025】
【化4】

薬学的に許容されるその塩類、およびそのジアステレオマー類、鏡像異性体類、またはジアステレオマー類および/または鏡像異性体類の混合物を含み、
式中、Zは−CHCOおよび以下の複素環IIaからなる群から選択され:
【0026】
【化5】

式中、Bは、S、Oおよび−NH−から選択され;
は、フェニルまたは2−ピリジニルであり、ここでRは、F、Cl、Br、CH、CF、−OCH、−OCF、−CN、−NOおよび−OHから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよく、
は、H、または1乃至3個のFで置換されていてよいC−Cアルキルであり;
は、HまたはC−Cアルキルであり;そして
nは1または2である。
【0027】
式IまたはIaの好ましい化合物においては、RおよびRは、Hである。
【0028】
式IまたはIaの好ましい化合物においては、BはSであり;
はフェニルまたは2−ピリジニルであり、ここでRは、F、Cl、CHおよびCFから独立して選択される2個の置換基で置換されている。
【0029】
式Iで表される化合物の、より細分化した非常に好ましい群は、以下の式Ibを持ち、薬学的に許容されるその塩を含み、
【0030】
【化6】

式中、Rはフェニル、2−ピリジニル、インダニル、ナフチルまたはキノリルであり、これらはF、Cl、Br、CH、CF、−OCH、−OCF、−CN、−NOおよび−OHから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよく;
Bは、S、Oおよび−NH−から選択され;
nは、1または2である。
【0031】
上記の式Ibの化合物は、個々のジアステレオマー類、鏡像異性体類またはジアステレオマー類および/または鏡像異性体類の混合物でよい。
【0032】
式Ibのサブグループにおいて、Rはフェニルまたは2−ピリジニルであり、これらはF、Cl、Br、CH、CF、−OCH、−OCF、−CN、−NOおよび−OHから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよい。
【0033】
上に述べ、本明細書中他の箇所にも述べた化合物およびより細分化した群の化合物の全てにおいて、“化合物”とは、その化合物の薬学的に許容される塩を含み、立体化学的データが示されていない場合、当該化合物の個々のジアステレオマー類、または鏡像異性体類、およびジアステレオマー類および/または鏡像異性体類の全ての混合物も含む。
【0034】
特定の化合物の構造、およびこれらの化合物を製造するための合成方法を実施例に開示する。本発明の特定の例の構造および名称を以下の表1に開示する。追加の化合物は実施例8〜13に示す。表1中の化合物および他の例も、その化合物の薬学的に許容される塩を含み、立体化学的データが示されていない場合、当該化合物の個々のジアステレオマー類および鏡像異性体類、またはジアステレオマー類および/または鏡像異性体類の混合物も含む。
【0035】
【表1】

【0036】
本発明の化合物は、上記化合物または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として用いられてよい。本発明の化合物は、活性のある1つ以上の他の医薬品成分を含む医薬組成物として用いられてよい。本発明の化合物は、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩が唯一の有効成分である医薬組成物として用いられてもよい。
【0037】
式1の化合物または薬学的に許容されるその塩は、ヒトまたは他の哺乳類の患者における2型糖尿病の治療薬の製造に用いられてよい。
【0038】
2型糖尿病の治療法は、式1の化合物または薬学的に許容されるその塩、もしくは当該化合物を含む医薬組成物の治療有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む。式1の化合物の他の医学的用途を以下に説明する。
【0039】
定義
“Ac”はアセチルであり、CHC(=O)−である。
“アルキル”は、直鎖状または分岐鎖状、またはそれらの組み合わせでよい飽和炭素鎖を意味するが、炭素鎖が他の定義を持つ場合には、この限りでない。アルコキシおよびアルカノイルのような、接頭辞“アルク”(alk)を持つ他の基も、直鎖状または分岐鎖状、またはそれらの組み合わせでよいが、炭素鎖が他の定義を持つ場合には、この限りでない。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−およびtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル等が含まれる。
【0040】
“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を持ち、直鎖状または分岐鎖状、またはそれらの組み合わせでよい炭素鎖を意味する。アルケニルの例には、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル等が含まれる。
【0041】
“アルキニル”は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を持ち、直鎖状または分岐鎖状、またはそれらの組み合わせでよい炭素鎖を意味する。アルキニルの例には、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−ヘプチニル等が含まれる。
【0042】
“シクロアルキル”は飽和炭素環を意味し、特定の数の炭素原子を持つ。この用語は、アリール基に縮環した炭素環を説明する場合にも用いられる。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が含まれる。“シクロアルケニル”環は、1つの二重結合を有するシクロアルキルである。
【0043】
構造中の置換基または基を説明するのに用いられる“アリール”(および“アリーレン”)は、単環式、二環式または三環式化合物を意味し、全ての環は芳香環であり、この化合物には炭素環原子だけが含まれている(但し、他の定義を持つ場合には、この限りでない)。“ヘテロシクリル”、“複素環”および“複素環式”は、N、SおよびOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を持つ、全体的または部分的に飽和された単環式、二環式または三環式環系を意味し、これら環の各々は3〜10個の原子を持ち、当該環系は縮環されたアリール環を含むこともある。アリール置換基の例には、フェニルとナフチルが含まれる。シクロアルキルまたはシクロアルケニルに縮環されたアリール環は、インダニル、インデニルおよびテトラヒドロナフチルに認められる。複素環基に縮環されたアリールの例は、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾピラニル、1,4−ベンゾジオキサニル等に認められる。複素環の例には、テトラヒドロフラン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリンが含まれる。好ましいアリール基はフェニルまたはナフチルである。フェニルが一般的に最も好ましいアリール基である。
【0044】
“ヘテロアリール”(およびヘテロアリーレン)は、N、OおよびS(SOおよびSOを含む)から選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子を持つ、単環式、二環式または三環式芳香環を意味し、各々の環は5〜6個の原子を持つが、他の定義を持つ場合には、この限りでない。ヘテロアリールの例には、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル(Sオキシドおよびジオキシドを含む)、フロ(2,3−b)ピリジル、キノリル、インドリル、イソキノリル、キナゾリニル、ジベンゾゾフラニル等が含まれる。
【0045】
“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む。
【0046】
“Me”はメチルを表す。
【0047】
“薬学的に許容される”という表現は、本明細書中では、健全な医学的判断を用い、全ての該当する政府の規則に従えば、安全であり、人類または動物への投与に適した化合物、材料、組成物、塩および/または剤形を表すのに用いられる。
【0048】
医薬組成物における“組成物”という用語は、有効成分、および担体を構成する不活性な成分、さらにこれら成分のうち2種以上の成分の組み合わせ、複合化、または集合から、またはこれら成分のうち1種以上の成分の解離から、またはこれら成分のうち1種以上の成分の他の種類の反応または相互作用から、直接または間接に生じる産物からなる製品を包含するものである。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを混合することにより調製された組成物を包含する。
【0049】
置換基である“テトラゾール”は、2H−テトラゾール−5−イル置換基およびその互変異性体を意味する。
【0050】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
式Iの化合物は1つ以上の不斉中心を持つことがあるので、ラセミ体、ラセミ体混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物、および個々のジアステレオマーとして生ずる可能性がある。本発明は、式Iの化合物のそのような異性体形態の全てを含むものとする。特に、本発明の化合物は少なくとも1つの不斉中心を持ち、この不斉中心は、Z基が環に結合している点においてピリジン環に縮環した環上に位置する。チアゾリジンジオンやオキサゾリジンジオンのような複素環式酸官能基を持つ化合物では、複素環の結合点に第2の不斉中心もある。分子上の様々な置換基の性質によっては、更なる不斉中心が存在することもある。そのような各々の不斉中心は、独立して2つの光学異性体を作るであろうから、混合物中のおよび純粋の化合物としての、又は部分的に精製された化合物としての考えられる光学異性体、立体異性体、ジアステレオマーの全て(すなわち、純粋の化合物としての、または混合物としての不斉中心を持つ全ての可能性のある組み合わせ)が本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0051】
本明細書中に記載された化合物の幾つかは、オレフィン性の二重結合を持つことがあり、特に明記しない限り、EおよびZ幾何異性体の両方を含むものとする。
【0052】
本明細書中に記載された化合物の幾つかは、水素の結合点が異なっていることがあり、互変異性体と呼ぶ。一例はケトンとそのエノール形であり、ケト−エノール互変異性体として知られている。式Iの化合物には、個々の互変異性体ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0053】
1つ以上の不斉中心を持つ式Iの化合物は、当業界で周知の方法によりジアステレオマー、鏡像異性体等に分離されてよい。
【0054】
または、キラル中心を持つ鏡像異性体その他の化合物は、光学的に純粋な出発物質および/または既知の立体配置を持つ試薬を用いて立体特異的合成により合成してもよい。
【0055】

“薬学的に許容される塩”という用語は、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む薬学的に許容される無毒な塩基または酸から調製された塩を表す。無機塩基に由来する塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩を含む。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩である。固体形状の塩は1つより多い結晶構造で存在することがあり、水和物の形態にあることもある。薬学的に許容される無毒な有機塩基に由来する塩は、第一、第二および第三アミン、天然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、そしてアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩基性イオン交換樹脂の塩を含む。
【0056】
本発明の化合物が塩基性であるか、またはその構造中に塩基性の置換基を持っている場合、無機および有機酸を含む薬学的に許容される無毒な酸から塩を調製してもよい。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、燐酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が含まれる。特に好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、燐酸、硫酸および酒石酸である。
【0057】
本明細書中で用いられるように式Iの化合物について言及した場合には、その薬学的に許容される塩も含むものとする。
【0058】
代謝物−プロドラッグ
治療に有効な代謝物自身が本願に請求された発明の範囲に該当する場合、これらの代謝物も本発明の化合物である。患者に投与されているとき、または患者に投与された後、本願に請求された化合物に変換される化合物であるプロドラッグも、本発明の化合物である。
【0059】
実用性
本発明の化合物はGPR40受容体の強力なリガンドであり、GPR40受容体のアゴニストである。本発明の化合物および薬学的に許容されるその塩は、GPR40リガンドおよびアゴニストにより調節される疾患の治療に有効であると思われる。これらの疾患の多くを以下に要約する。
【0060】
以下の疾患の1つ以上は、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を治療を必要とする患者に投与することにより治療されうる。本発明の化合物は、これらの疾患の1つ以上を治療するための薬物の製造に用いられうる。
(1)インスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病);
(2)高血糖;
(3)メタボリック症候群;
(4)肥満;
(5)高コレステロール血症;
(6)高トリグリセリド血症(トリグリセリドに富んだリポタンパク質の高値);
(7)混合性または糖尿病性脂質異常症;
(8)低HDLコレステロール;
(9)高LDLコレステロール;
(10)高アポBリポタンパク質血症;および
(11)アテローム硬化症。
【0061】
本化合物の好ましい用途は、治療を必要とする患者に治療有効量を投与することにより以下の疾患の1つ以上を治療することである。これらの化合物は、これらの疾患の1つ以上を治療するための薬物の製造に用いられうる。
【0062】
(1)2型糖尿病、特に高血糖;
(2)メタボリック症候群;
(3)肥満;および
(4)高コレステロール血症。
【0063】
上記化合物は、糖尿病患者ならびに耐糖能が障害されている、および/または前糖尿病状態にある非糖尿病患者において、糖、脂質およびインスリンを低下させるのに有効であることが期待される。これらの化合物は、糖尿病患者または前糖尿病患者でしばしば起こる血清中グルコース濃度の周期的変化を調節することにより、これらの患者にしばしば見られる高インスリン血症を改善すると思われる。これらの化合物は、インスリン抵抗性を治療または低下させるのにも有効であろう。さらに、これらの化合物は、妊娠性糖尿病を治療または防止するのに有効であろう。
【0064】
本明細書中で説明した上記化合物、組成物および薬物はまた、メタボリック症候群に伴う有害な後遺症の危険性を低下させ、アテローム硬化症を発症する危険性を低下し、アテローム硬化症の発症を遅らせ、および/またはアテローム硬化症の後遺症の危険性を低下させるのにも有効であろう。アテローム硬化症の後遺症には、狭心症、跛行、心臓発作、脳卒中、その他が含まれる。
【0065】
高血糖を制御することにより、上記の化合物は、血管再狭窄および糖尿病性網膜症を遅延または防止するにも有効であろう。
【0066】
本発明の化合物は、β細胞機能を改善または回復する活性がありうるので、1型糖尿病を治療するか、または2型糖尿病患者がインスリン療法の必要性を遅らせるか防止するのに有用であろう。
【0067】
一般的に、上記化合物は以下の疾患の1つ以上を治療するのに有効であろう:(1)2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病またはNIDDMとしても知られている);(2)高血糖、(3)低耐糖能、(4)インスリン抵抗性、(5)肥満、(6)脂質障害、(7)脂質異常症、(8)高脂血症、(9)高トリグリセリド血症、(10)高コレステロール血症、(11)低HDL値、(12)高LDL値、(13)アテローム硬化症およびその後遺症、(14)血管再狭窄、(15)腹部肥満、(16)網膜症、(17)メタボリック症候群、(18)高い血圧、そして、(19)インスリン抵抗性。
【0068】
本発明の1局面は、混合性または糖尿病性脂質異常症、高コレステロール血症、アテローム硬化症、低HDL値、高LDL値、高脂血症および/または高トリグリセリド血症の治療および制御方法であって、そのような治療を必要とする患者に治療有効量の式Iの化合物を投与することを包含する方法を提供することである。この化合物は、単独で用いられるか、またはコレステロール生合成阻害剤、特に、ロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、またはZD−4522のようなHMG−CoAレダクターゼ阻害剤とともに投与されるのが好都合であろう。上記化合物は、コレステロール吸収阻害剤(例えばスタノールエステル、チケシドのようなステロールグリコシド、エゼチミベのようなアゼチジノン)、ACAT阻害剤(アバシミベ等)、CETP阻害剤(例えばトルセトラピブ)、ナイアシン、胆汁酸封鎖剤、ミクロソームトリグリセリド輸送阻害剤、および胆汁酸再取込阻害剤のような他の脂質降下剤と併用しても有利であろう。これらの併用療法は、高コレステロール血症、アテローム硬化症、高脂血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症、高LDL値、および低HDL値からなる群から選択される1つ以上の関連病状の治療または制御に有効であろう。
【0069】
投与および用量範囲
本発明の化合物の有効用量を哺乳類、特にヒトに提供するには、どの適当な投与経路を用いてもよい。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼、肺、鼻等を用いてよい。剤形には、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアゾール等が含まれる。好ましくは、式Iの化合物は経口投与される。
【0070】
用いられる有効成分の有効な投与量は、用いられる特定の化合物、投与法、治療する病状、治療する病状の重症度により異なることがある。このような投与は、当業者により容易に確かめられる。
【0071】
糖尿病および/または高血糖または高トリグリセリド血症または式Iの化合物が適応となるその他の疾患を治療または制御する場合、本発明の化合物を動物の体重1kg当たり約0.1mg〜約100mgの日用量、好ましくは1日1回投与または1日2〜6回の分割投与、または徐放型で投与すると一般的に満足な結果が得られる。ほとんどの大型哺乳類では、合計の日用量は約1.0mg〜約1,000mgである。70kgの成人男性の場合、日用量の合計は一般的に約1mg〜約350mgであろう。特に強力な化合物では、成人男性の用量は0.1mgという少量でもよい。投与レジメは、最適な治療反応を得るために上記の範囲内でまたはこの範囲外で調節してよい。
【0072】
経口投与は通常、錠剤またはカプセルを用いて実施される。錠剤およびカプセルでの投与の例は、0.5mg、1mg、2mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mgおよび350mgである。その他の経口形式も、これと同一のまたは類似した用量であろう。
【0073】
医薬組成物
本発明の他の局面は、式Iの化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、有効成分としての式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体とを含み、その他の治療成分を含んでいてもよい。“薬学的に許容される塩”という用語は、無機塩基または酸および有機塩基または酸を含む薬学的に許容される無毒な塩基または酸から調製された塩を示す。プロドラッグが投与されるならば、医薬組成物は、プロドラッグまたはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。
【0074】
上記組成物は、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内、静脈内を含む)、眼(眼科)、肺(鼻または口腔吸入)、または経鼻投与に適した組成物を含むが、どの場合でも最も適切な投与経路は、治療している病状の性質と重症度および有効成分の性質により異なるであろう。これらの組成物は、適宜、単一の剤形で提供され、製剤分野で周知の方法により調製してよい。
【0075】
実用上、式Iの化合物は、従来の製薬配合技術に従い製薬用担体と均質に混合させた有効成分として併用されうる。この担体は、投与に望ましい製剤形態、例えば経口または非経口(静脈内を含む)に依存した広範な形態を取ってよい。経口剤形用の組成物を調製する場合、通常の製薬用媒体のいずれを用いてもよい。例えば、懸濁液、エリキシル剤、溶液等の経口用液剤の場合、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤等であり;例えば、散剤、硬カプセル剤や軟カプセル剤、錠剤等の経口用固形製剤の場合、澱粉、砂糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤のような担体であり、固形の経口剤は液剤より好ましい。
【0076】
投与を容易にするため、錠剤とカプセル剤は最も有利な経口の投与単位形態であり、この場合には、明らかに固形の製薬用担体が用いられる。所望ならば、錠剤は標準的な水性または非水性技術によりコーティングしてもよい。このような組成物や製剤は、少なくとも0.1%の有効成分である化合物を含むこととする。これらの組成物における有効化合物の比率はもちろん変えてよく、当該単位の重量の約2%〜約60%が都合がよい。そのような治療に有用な組成物における有効化合物の量は、有効な投与が得られるような量である。この有効化合物は、例えば点鼻剤やスプレー剤として鼻腔内に投与してもよい。
【0077】
錠剤、丸剤、カプセル剤等は、トラガント、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンのような結合剤;リン酸水素カルシウムのような賦形剤;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸のような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味料を含有していてもよい。投与単位形態がカプセル剤の場合、上述の種類の材料に加え、脂肪油のような液状担体を含有してもよい。
【0078】
他の様々な材料はコーティング剤としてあるいは投与単位の物理的形状を変更するために存在してもよい。例えば、錠剤はセラック、砂糖またはその両者でコーティングしてよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、有効成分に加え、甘味料としてショ糖を、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベンを、染料およびチェリー味またはオレンジ味のような香味料を含有してもよい。
【0079】
式Iの化合物は非経口的に投与してもよい。これらの有効化合物の溶液または懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適宜混合した水で調製できる。分散液もグリセロール、液状ポリエチレングリコールおよびそれらの油中混合物で調製できる。通常の保存および使用条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐため保存剤を含有している。
【0080】
注射可能な用途にふさわしい製剤形態は、無菌水溶液または分散液、および注射用無菌溶液または分散液の用時調製用の無菌粉剤を含む。どの場合でも、このような形態は無菌でなければならず、容易にシリンジで注入可能な程度に流動性がなければならない。製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌や真菌のような微生物の汚染作用から保護されていなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコール)、それらの適当な混合物、および植物油を含有する溶剤または分散媒であろう。
【0081】
併用療法
式Iの化合物は、式Iの化合物が有用であるような疾患または病状の治療もしくは改善に有用でありえる他の薬剤と併用してよい。そのような他の薬剤は、通常用いられる経路および量で式Iの化合物と同時または順次に投与してよい。2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、メタボリック症候群、およびこれらの疾患に伴う共存症の患者の治療においては、1を超える薬剤が通常投与される。本発明の化合物は、一般的には、これらの病状に対し1つ以上の他剤を既に投与されている患者に投与されうる。
【0082】
式Iの化合物が1つ以上の他の薬剤と同時に用いられる場合、そのような他剤と式Iの化合物を含有する単一の投与形態の医薬組成物が好ましい。しかしながら、併用療法には、式Iの化合物と1種以上の他剤が様々に重複するスケジュールで投与される療法も含まれる。1種以上の他の有効成分と併用される場合、本発明の化合物と他の有効成分は、各々が単独で用いられる場合より低い用量で用いることも考えられる。したがって、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物に加え1種以上の他の有効成分を含有する医薬組成物を含む。
【0083】
式Iの化合物と組み合わせて、別個にまたは同一の医薬組成物中で投与されてよい他の有効成分の例には以下の薬剤が含まれるが、これらに限定されることはない:
(a)グリタゾン類と非グリタゾン類(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン、バラグリタゾン、ネトグリタゾン、T−131、LY−300512、LY−818)を含むPPAR−γ−アゴニストおよび部分アゴニスト;
(b)メトホルミンとフェンホルミンのようなビグアナイド剤;
(c)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤;
(d)MK−0431やLAF−237のようなジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤;
(e)インスリンまたはインスリン模擬薬;
(f)トルブタミドとグリピジドまたは関連物質のようなスルホニル尿素剤;
(g)α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース等);
(h)患者の脂質プロフィールを改善する薬剤、例えば、(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、ZD−4522および他のスタチン類)、(ii)胆汁酸封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール、架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸、またはその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラート)のようなPPARαアゴニスト、(v)エゼチミベのようなコレステロール吸収阻害剤、(vi)アバシミベのようなアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、(vii)トルセトラピブのようなCETP阻害剤、(viii)プロブコールのようなフェノール系抗酸化剤;
(i)ムラグリタザール、テサグリタザール、ファルグリタザール、JT−501のようなPPARα/γ二重アゴニスト;
(j)WO97/28149に開示されたようなPPARδアゴニスト;
(k)抗肥満化合物、例えばフェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、フェンチラミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY5阻害剤、Mc4rアゴニスト、カンナビノイド受容体1(CB−1)アンタゴニスト/インバースアゴニスト、β3アドレナリン受容体アゴニスト;
(l)回腸胆汁酸輸送体阻害剤;
(m)アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤、グルココルチコイド、アズフィジン、シクロオキシゲナーゼ2選択的阻害剤のような炎症状態における使用を意図した薬剤;
(n)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(o)GLP−1、
(p)GIP−1、
(q)エキセンジン類、例えばエキセニチドのようなGLP−1類縁体、および
(r)ヒドロキシステロールデヒドロゲナーゼ−1(HSD−1)阻害剤。
【0084】
上記の組み合わせには、本発明の化合物と1種の他の有効化合物だけでなく、2種以上の他の有効化合物との組み合わせも含まれる。非限定的な例には、式Iの化合物と、ビグアナイド剤、スルホニル尿素剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、他のPPARアゴニスト、PTP−1B阻害剤、DP−IV阻害剤、および抗肥満化合物から選択される2種以上の有効化合物との組み合わせが含まれる。
【0085】
生物学的アッセイ
GPR40発現細胞の生成
ヒトおよびマウスGPR40安定細胞系を、NFAT BLA(ベータラクタマーゼ)を安定して発現するCHO細胞で生成した。ヒトGPR40安定細胞系は、エクオリン発現リポーターを安定して発現するHEK細胞で生成した。発現プラスミドは、リポフェクタミン(Life Technologies社)を用い、メーカーの指示に従ってトランスフェクトした。安定な細胞系は薬剤選択により生成した。
【0086】
FLIPRアッセイ
FLIPR(Fluorimetric maging Plate Reader、Molecular Devices社)アッセイを実施して、安定なクローンのアゴニスト誘発カルシウム流動を測定した。FLIPRアッセイには、アッセイの1日前にGPR40/CHO NFAT BLA細胞を黒い壁で透明底の384個のウエルを持つプレート(Costar)に1.4×10e4細胞/20μl培地/ウエルの割合で播種した。細胞は、8μMのフロ−4,AM,0.08%プルロニック酸を含有する20μl/ウエルのアッセイ緩衝液(HBSS、0.1%BSA、20mMHEPES、2.5mMプロベネシド、pH7.4)とともに室温で100分間培養した。蛍光出力はFLIPRを用いて測定した。化合物はDMSOに溶解し、アッセイ緩衝液で所望の濃度に希釈した。13.3μl/ウエルの化合物溶液を添加した。
【0087】
イノシトールリン酸代謝回転アッセイ
96ウエル形式でアッセイを行う。ヒトGPR40を安定して発現するHEK細胞を平板培養し、72時間以内に60〜80%集密にする。72時間後、プレートを吸引し、イノシトールを含有しないDMEM(ICN)で細胞を洗浄する。洗浄媒体を150μlの3H−イノシトール標識培地(0.4%のヒトアルブミンまたは0.4%のマウスアルブミン、1倍のペニシリン/ストレプトマイシン抗生剤、グルタミン、25mMのHEPESを含有するイノシトール非含有培地に3H−myo−イノシトールNEN#NET114A 1mCi/mLを加えたもの、25Ci/mmol、充填媒体で150倍希釈し最終比放射能1μCi/150μLとした)に交換する。あるいは、ヒトおよびマウスアルブミンを一晩の標識工程の後、LiClの添加前に添加できる。
【0088】
このアッセイは、18時間の標識の翌日に行うのが典型的である。アッセイの当日、300mMのLiClの5μlを全てのウエルに加え、37℃で20分間インキュベートする。200倍の化合物0.75μlを加え、細胞と共に60分間37℃でインキュベートする。その後、培地を吸引して捨て、10mMの蟻酸60μlを添加してアッセイを終わらせる。細胞は室温で60分間溶解させる。溶解産物の15〜30μlをYSi SPAビーズ(Amersham)70μl/1mgと透明底のイソプレート(Isoplate)中で混合する。プレートを室温で2時間振とうする。ビーズを沈降させ、プレートをワリックマイクロベータ(Wallac Microbeta)でカウントする。
【0089】
In Vivo試験
雄C57BL/6Nマウス(7〜12週齢)を1ケージ当たり10匹収容し、通常食であるげっ歯類の餌と水を自由に与える。マウスは無作為に治療群に振り分け、4〜6時間絶食させる。基礎血糖値を尾の切り込みからの血からグルコース計で決める。その後、動物にビヒクル(0.25%メチルセルロース)または試験化合物を経口投与する。血糖値を投与時(t=0分)から所定の時点で測定し、その後マウスにデキストロース(2g/kg)を腹腔内投与する。ビヒクル投与マウスの1群には、ネガティブコントロールとして生理食塩水を投与する。血糖値をデキストロース投与から20、40、60分後に採取した尾出血から決定する。t=0からt=60までの血糖値変動曲線を用いて、各投与群での血中濃度−時間曲線下面積(AUC)を積分する。各投与群での阻害率(%)を、生理食塩水投与対照群に対し正規化させたAUCデータから得る。
【実施例】
【0090】
実施例
以下の実施例は本発明を例示するために示すものであり、発明を限定するものと解釈すべきではない。発明の範囲は添付の請求範囲により規定する。
【0091】
【化7】

【0092】
中間体5−1
【0093】
【化8】

【0094】
工程A
【0095】
【化9】

1−メチル−3,5−ジニトロ−2−ピリドン(11.7g、59mmol)とシクロペンタノン酢酸エチル(10g、59mmol)との混合物の2MのNH/MeOH(300mL)溶液を一晩還流させ、その後、室温まで冷やした。メタノールを真空中で除去し、残渣をEtOAc(200mL)と水(400mL)との間で分配した。水層はさらにEtOAcで抽出した(2×150mL)。有機層を合わせ、塩水(150mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空中で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0〜20%EtOAc/ヘキサンのグラジエントで溶離)で精製し、純粋な生成物を淡黄色の油状で得た。C1215のLC−MS[M+H]:計算値251.1、実測値251.2。
【0096】
工程B
【0097】
【化10】

工程Aの生成物(9.6g、38.4mmol)のEtOH(200mL)溶液に10%Pd/C(5g)を添加した。反応系をパーシェーカー中30psiで1時間水素添加させた。その後、混合物をセライトでろ過し、ろ液を濃縮して純粋な生成物を黄色固体として得た。C1217のLC−MS[M+H]:計算値221.1、実測値221.2。
【0098】
工程C
【0099】
【化11】

工程Bの生成物(2.9g、13.2mmol)の20%HSO(30mL)溶液に、氷浴下、NaNO(13.2mmol、911mg)の水(5mL)溶液を緩徐に添加した。添加中、少量の砕いた氷を加えて反応温度を慎重に4℃より低く調節した。添加後、NaI(15mmol、2.25g)の水(10mL)溶液を加える前に、反応系を0℃で30分間さらに攪拌した。さらに30分間攪拌した後、EtOAc(50mL)を添加し、反応系を固形のNaHCOで慎重に中和した。混合物をEtOAc(50mL)と水(100mL)との間で分配した。水層はさらにEtOAcで抽出した(2×50mL)。有機層を合わせ、塩水(50mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空中で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0〜20%EtOAc/ヘキサンのグラジエントで溶離)で精製し、純粋な生成物を淡黄色油状で得た。C1215INOのLC−MS[M+H]:計算値332.01、実測値332.0。
【0100】
工程D
【0101】
【化12】

工程Cの生成物(17.5mmol)のTHF(60mL)、MeOH(40mL)および水(10mL)の溶液に、LiOH・HO(1.98g)を添加した。反応系を室温で一晩攪拌し、次に真空中で濃縮した。残渣を水(400mL)とCHCl(150mL)とで分配した。水層を分離し、6NのHClでpH3まで酸性化し、次にEtOAcで抽出した(3×200mL)。有機層を合わせ、塩水(150mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOH/CHClで溶離)で精製し、純粋な生成物を淡黄色固体として得た。C1011INOのLC−MS[M+H]:計算値304.0、実測値304.0。
【0102】
工程E
【0103】
【化13】

工程Dの生成物(4.6g、15.2mmol)のTHF(100mL)溶液に、0℃でEtN(45.5mmol、6.4mL)、さらにPivCl(23mmol、2.8mL)を添加した。反応系を30分かけて室温まで温まるように放置した。その後、反応系に固形のLiCl(24.3mmol、1.03g)を添加し、さらに(s)−4−ベンジル−オキサゾリジオン(22.8mmol、4.00g)を添加した。混合物をさらに室温で2時間攪拌した。次に、反応系をEtOAc(100mL)と水(200mL)とで分配した。水層はさらにEtOAcで抽出した(2×100mL)。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(4%EtOAc/CHClで溶離)で精製し、異性体A(より極性の低い異性体)と異性体B(より極性の高い異性体)をいずれも淡黄色油状で得た。C2020INのLC−MS[M+H]:計算値463.0、実測値463.0。
【0104】
工程F
【0105】
【化14】

工程Eの異性体B(2.9g、6.3mmol)のTHF(35mL)および水(8mL)の溶液を氷浴中0℃に冷却した。LiOH・HO(12.6mmol、530mg)を添加し、その後すぐにH(30%水溶液2.10mL、18.9mmol)を添加した。反応系をTLCにより監視した。0℃で4時間後、反応が完了した。水(120mL)を添加し、混合物をEtOAcで洗浄した(2×50mL)。合わせた有機層を水で抽出した(1×50mL)。水層を合わせ、6NのHClで酸性化し(pH3まで)、次にEtOAcで抽出した(3×100mL)。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。この粗化合物は、さらに精製することなく次の工程に直接用いた。C1011INOのLC−MS[M+H]:計算値304.0、実測値304.0。
【0106】
工程G
【0107】
【化15】

工程Fの粗生成物(〜6.3mmol)のEtOH(50mL)溶液に、4NのHClのジオキサン(8mL)溶液を添加した。反応系を1.5時間還流し、その後冷却した。次に、反応系を真空中で濃縮した。残渣をEtOAc(100mL)と飽和NaHCO水溶液(100mL)とで分配した。水層はさらにEtOAcで抽出した(2×100mL)。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘキサンで溶離)で精製し、中間体5−1を淡黄色油状で得た。C1215INOのLC−MS[M+H]:計算値332.01、実測値332.0。
【0108】
中間体5−2
【0109】
【化16】

【0110】
工程A
【0111】
【化17】

中間体5−1(315mg、0.952mmol)、1,10−フェナントロリン(0.19mmol、34mg)、CsCO(1.90mmol、620mg)およびCuI(0.0952mmol、19mg)の混合物にBnOH(1mL)を添加した。反応系を120℃で4時間加熱し、その後冷却した。その後、反応系をEtOAc(20mL)と水(50mL)とで分配した。水層を分離し、さらにEtOAcで洗浄した(2×20mL)。有機層を合わせ、水で抽出した(1×20mL)。水層を合わせ、6NのHClでpH3まで酸性化し、その後EtOAcで抽出した(3×40mL)。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮し、粗生成物を得た。C1718NOのLC−MS[M+H]:計算値284.1、実測値284.1。
【0112】
工程B
【0113】
【化18】

工程Aの粗生成物のEtOH(15mL)溶液に4NのHClのジオキサン(3mL)溶液を添加した。反応系を2時間還流し、冷却し、その後真空中で濃縮した。残渣をEtOAc(30mL)と飽和NaHCO水溶液(50mL)とで分配した。水層はさらにEtOAcで抽出した(2×30mL)。有機層を合わせ、塩水(30mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘキサンで溶離)で精製し、148mg(2工程で50%)の中間体5−2を淡黄色油状で得た。C1922NOのLC−MS:計算値312.1、実測値312.1。
【0114】
中間体5−3
【0115】
【化19】

工程A
NaHMDS(1.24mmol、1M−THF溶液1.24mL)のTHF(3mL)溶液に中間体5−1(344mg、1.04mmol)のTHF(1mL)溶液を−78℃で添加した。30分後、TMSCI(1M−THF溶液、1.24mL)を添加した。−78℃でさらに30分後、NBS(1.2mmol、231mg)を一度に添加した。反応系を40分かけて0℃まで放置して昇温し、その後NaHCO水溶液(20mL)でクエンチした。混合物をEtOAcで抽出した(3×15mL)。有機層を合わせ、塩水(20mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空中で濃縮した。この物質は次の工程に直接使用した。C1214BrINOのLC−MS[M+H]:計算値409.9、実測値409.8。
【0116】
工程B
工程Aの粗生成物(1.04mmol)のEtOH(5mL)懸濁液に、チオ尿素(1.4mmol、106mg)とNaOAc(2mmol、164mg)を添加した。反応系を85℃で一晩加熱し、濃縮した。次に、この残渣にEtOH(6mL)と6NのHCl(3mL)を添加した。反応系を85℃で一晩加熱した。次に、反応系を真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、20%〜80%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製し、中間体5−3を固体として得た。C1110INSのLC−MS[M+H]:計算値360.99、実測値361.0。
【0117】
中間体5−4
【0118】
【化20】

これは、中間体5−3の手順に従い中間体5−2から調製した。C1817SのLC−MS[M+H]:計算値341.1、実測値341.1。
【0119】
中間体5−5
【0120】
【化21】

中間体5−4(300mg、0.88mmol)のEtOH(20mL)懸濁液に4NのHCl−ジオキサン(500μL)および10%Pd/C(500mg)を添加した。反応系を1気圧のHで2時間水素添加し、反応を終了させた。次に、混合物をセライトでろ過した。ろ液を真空中で濃縮し、中間体5−5を黄色固体として得た。C1111SのLC−MS[M+H]:計算値251.0、実測値251.0。
【0121】
中間体5−6
【0122】
【化22】

これは、中間体5−5の手順に従い中間体5−2から調製した。C1216NOのLC−MS[M+H]:計算値222.1、実測値222.1。
【0123】
実施例1
【0124】
【化23】

中間体5−3(0.1mmol、36mg)、CuI(0.02mmol、4mg)、N,N−ジメチルグリシンHCl塩(0.06mmol、8.4mg)、2−メチル−4−フルオロ−フェノール(0.15mmol、19mg)およびCsCO(0.47mmol、153mg)の混合物にジオキサン(1mL)を添加した。反応系を95℃で一晩加熱し、次にろ過した。ろ液をTFA(0.5mL)で酸性化し、次に濃縮した。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、20%〜80%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製し、純粋な生成物を固体として得た。C1816FNSのLC−MS[M+H]:計算値359.1、実測値359.0。
【0125】
実施例2
【0126】
【化24】

中間体5−3(0.1mmol、36mg)、CuI(0.02mmol、4mg)、N,N−ジメチルグリシンHCl塩(0.06mmol、8.4mg)、2,4−ジクロロ−フェノール(0.15mmol、25mg)およびCsCO(0.47mmol、153mg)の混合物にジオキサン(1mL)を添加した。反応系を95℃で一晩加熱し、次にろ過した。ろ液をTFA(0.5mL)で酸性化し、次に濃縮した。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、20%〜80%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製し、純粋な生成物を固体として得た。C1713ClSのLC−MS[M+H]:計算値395.0、実測値394.9。
【0127】
実施例3
【0128】
【化25】

中間体5−5(25mg、0.1mmol)のDMF(0.5mL)溶液にCsCO(0.3mmol、98mg)を添加し、次に3−クロロ−2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン(0.15mmol)を添加した。反応系を50℃で1時間加熱し、CHCN(1mL)で希釈し、次にトリフルオロ酢酸(0.4mL)で酸性化した。混合物を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、20%〜80%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製し、純粋な生成物を固体として得た。C1712ClFSのLC−MS[M+H]:計算値430.0、実測値430.0。
【0129】
中間体6−1
【0130】
【化26】

これは、中間体5−1の手順に従いシクロヘキサノン酢酸エチルから調製した。C1317INOのLC−MS[M+H]:計算値346.0、実測値346.0。
【0131】
中間体6−2
【0132】
【化27】

これは、中間体5−1を5−2に変換するのに用いられる手順を用いて、中間体6−1から調製する。
【0133】
反応式B
【0134】
【化28】

【0135】
中間体6−6
【0136】
【化29】

【0137】
工程A
【0138】
【化30】

3−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン(15g、70mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液に3−クロロ過オキシ安息香酸(最大77%、31.7g、140mmol)を添加した。反応系を2時間還流下に攪拌した。冷却した反応混合物に水酸化カルシウム(21g、280mmol)を添加し、この溶液を一晩攪拌した。固体を真空ろ過により除去し、ジクロロメタン(100mL)で洗浄した。合わせたろ液と洗液を真空中で濃縮した。粗生成物は次の反応に直接付した。C10BrNOのLC−MS[M+H]:計算値228.0、実測値228.0。
【0139】
工程B
【0140】
【化31】

工程Aの粗生成物(約70mmol)に無水酢酸(75mL)を添加した。反応系を55℃で一晩攪拌した。反応混合物を真空中で濃縮した。粗生成物は次の反応に直接付した。C1112BrNOのLC−MS[M+H]:計算値270.0、実測値270.2。
【0141】
工程C
【0142】
【化32】

工程Bの粗生成物(約70mmol)のメタノール(300mL)溶液に炭酸カリウム(37g、268mmol)を添加した。反応系を周囲温度で2時間攪拌した。反応混合物を真空中で濃縮した。残渣を水(500mL)と酢酸エチル(750mL)との間で分配した。水層は酢酸エチル(750mL)で抽出した。合わせた有機層を水(200mL)と塩水(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した。残渣をMPLC(バイオテージ(Biotage)40+Mシリカカラム、20%〜60%のEtOAc/CHCl)で精製した。合わせた生成物の画分を真空中で濃縮し、純粋な生成物を得た。C10BrNOのLC−MS[M+H]:計算値228.0、実測値228.0。
【0143】
工程D
【0144】
【化33】

工程Cの生成物(1.39g、6.08mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液にデスマーチンペリヨージナン(Dess−Martin periodinane)(15重量%のCHCl溶液、30g、10.6mmol)を添加した。反応系を周囲温度で2.5時間攪拌した。反応系を真空中で濃縮した。残渣をMPLC(バイオテージ(Biotage)40+Mシリカカラム、0%〜20%のEtOAc/CHCl)で精製した。合わせた生成物画分を真空中で濃縮し、中間体6−6を得た。CBrNOのLC−MS[M+H]:計算値226.0、実測値226.1。
【0145】
中間体6−7
【0146】
【化34】

中間体6−6の手順に従い3−ベンジルオキシ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリンから調製した。C1616NOのLC−MS[M+H]:計算値254.1、実測値254.1。
【0147】
実施例4
【0148】
【化35】

【0149】
工程A
【0150】
【化36】

中間体6−6(300mg、1.33mmol)、炭酸セシウム(626mg、1.92mmol)および2,4−ジクロロフェノール(325mg、2.0mmol)の混合物にN,N−ジメチルホルムアミド(6mL)を添加した。反応容器を排気し、窒素で満たした。反応系を140℃で4時間攪拌した。反応混合物を冷却し、その後、水(100mL)に注入した。生成物を酢酸エチルで抽出した(2×250mL)。合わせた有機層を水(2×100mL)と塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した。残渣をMPLC(バイオテージ(Biotage)25+Mシリカカラム、0%〜20%のEtOAc/CHCl)で精製した。合わせた生成物の画分を真空中で濃縮し、純粋な生成物を得た。C1511ClNOのLC−MS[M+H]:計算値308.0、実測値308.1。
【0151】
工程B
【0152】
【化37】

工程Aの生成物(146.7mg、0.476mmol)に、2,4−チアゾリジンジオン(55.8mg、0.476mmol)と酢酸ナトリウム(78.1mg、0.952mmol)を添加した。これらの試薬を混合し、均質な粉末とした。反応系を真空下(100mmHg)に置き、160℃で1.5時間加熱した。残渣を水(30mL)と酢酸エチルとの間で分配した。生成物を酢酸エチルで抽出した(2×250mL)。合わせた有機層を水(2×100mL)と塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した。残渣をMPLC(バイオテージ(Biotage)25+Mシリカカラム、0%〜20%のEtOAc/CHCl)で精製した。合わせた生成物の画分を真空中で濃縮し、純粋な生成物を得た。C1812ClSのLC−MS[M+H]:計算値407.0、実測値407.2。
【0153】
工程C
【0154】
【化38】

工程Bの生成物(100.0mg、0.246mmol)に、ピリジン(0.5mL)、テトラヒドロフラン(0.5mL)および水素化ホウ素リチウム溶液(2M−THF溶液、1.1mL、2.2mmol)を添加した。反応系を排気し、窒素で置換し、90℃で6時間加熱した。反応系を冷却し、次にメタノールでクエンチした。反応系を真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、40%〜100%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製した。生成物の画分を真空中で濃縮した。その後、粗生成物を分取TLC(1,000ミクロン、シリカ、15%のEtOAc/CHCl)で精製し、純粋な生成物をジアステレオマーの混合物として得た。この混合物をさらにキラルHPLC(キラルパックプロOD、25%のEtOH/ヘプタン、イソクラティック溶離)で精製し、純粋な生成物(より極性の高い主ピーク、8mg、8%)を単一の鏡像異性体として得た。C1814ClSのLC−MS[M+H]:計算値409.0、実測値409.0。
【0155】
実施例5
【0156】
【化39】

【0157】
工程A
【0158】
【化40】

実施例4における工程Aの生成物(70mg、0.227mmol)および水素化ナトリウム(油中60%、27.3mg、0.682mmol)の混合物に、テトラヒドロフラン(0.5mL)およびホスホノ酢酸トリエチル(137μL、0.682mmol)を添加した。反応容器を排気し、窒素で満たした。反応系を周囲温度で一晩攪拌した。反応混合物を真空中で濃縮した。残渣を分取TLC(1,000ミクロン、シリカ、4%のEtOAc/CHCl)で精製し、純粋な生成物を得た。C1917ClNOのLC−MS[M+H]:計算値378.1、実測値378.1。
【0159】
工程B
【0160】
【化41】

工程Bの生成物(45mg、0.12mmol)の無水エタノール(10mL)に、10%パラジウム炭素(45mg)を添加した。反応容器を排気し、水素を充填した(1気圧)。反応系を周囲温度で30分間攪拌した。その後、触媒を真空ろ過で除去した。ろ液を真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、40%〜100%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製した。合わせた純粋な画分を一晩凍結乾燥し、純粋な生成物を得た。C1919ClNOのLC−MS[M+H]:計算値380.1、実測値380.3。
【0161】
工程C
【0162】
【化42】

工程Bの生成物(20mg、0.053mmol)と水酸化リチウム一水和物(15mg、0.36mmol)との混合物にメタノール/テトラヒドロフラン/水(2:2:1混合物、8mL)を添加した。反応系を周囲条件下で一晩攪拌した。反応物を真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、20%〜80%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製した。合わせた純粋な画分を一晩凍結乾燥し、純粋な生成物を得た。
1715ClNOのLC−MS[M+H]:計算値352.1、実測値352.1。
【0163】
実施例6
【0164】
【化43】

【0165】
工程A
【0166】
【化44】

実施例4における工程Aの生成物についての手順に従い中間体6−6と3,5−ジメチル−フェノールから調製した。C1718NOのLC−MS[M+H]:計算値268.1、実測値268.2。
【0167】
工程B
【0168】
【化45】

実施例5の手順に従い工程Aの生成物から調製した。C1922NOのLC−MS[M+H]:計算値312.1、実測値312.2。
【0169】
実施例7
【0170】
【化46】

【0171】
工程A
【0172】
【化47】

中間体6−6(1.13g、4.48mmol)に、2,4−チアゾリジンジオン(551mg、4.7mmol)と酢酸ナトリウム(385.5mg、4.7mmol)を添加した。これらの試薬を混合し、均質な粉末とした。反応系を窒素雰囲気下160℃で一晩加熱した。残渣を水(200mL)と酢酸エチル(200mL)との間で分配した。水層を酢酸エチル(200mL)で洗浄した。合わせた有機画分を塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次に真空中で濃縮した。粗固形物をジクロロメタンおよび酢酸エチルとともに研和し、粗生成物を得た。C1916SのLC−MS[M+H]:計算値353.1、実測値353.3。
【0173】
工程B
【0174】
【化48】

工程Aの粗生成物(400mg、1.135mmol)を無水エタノール(30mL)とテトラヒドロフラン(35mL)中で、10%パラジウム炭素(400mg)と塩酸(2M−THF、1.14mL、2.28mmol)を添加した。反応容器を排気し、水素を充填した(1気圧)。反応系を周囲温度で3時間攪拌した。反応系を脱ガスし、触媒をセライトで真空ろ過により除去した。ろ液を真空中で濃縮し、純粋な生成物を得た。C1210SのLC−MS[M+H]:計算値263.1、実測値263.2。
【0175】
工程C
【0176】
【化49】

工程Bの生成物(301mg、0.98mmol)に、3−クロロ−4−フルオロベンゾトリフルオリド(214mg、1.08mmol)、炭酸セシウム(1.30g、4.0mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)を添加した。反応系を窒素雰囲気下140℃で4時間加熱した。過剰の塩基をシリンジろ過により除去し、ろ液に酢酸(0.5mL)を添加した。ろ液を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、40%〜100%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製した。合わせた生成物画分を凍結乾燥し、純粋な生成物を得た。C1912ClFSのLC−MS[M+H]:計算値441.0、実測値441.3。
【0177】
工程D
【0178】
【化50】

工程Cの生成物(270.0mg、0.612mmol)に、ピリジン(5mL)、テトラヒドロフラン(5mL)および水素化ホウ素リチウム溶液(2M−THF、3.1mL、6.2mmol)を添加した。反応系を排気し、窒素で置換し、80℃で一晩加熱した。反応系を冷却し、次にメタノールでクエンチした。反応系を真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、40%〜100%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製した。生成物の画分を凍結乾燥し、純粋な生成物をジアステレオマーの混合物として得た。この混合物をキラルHPLC(キラルパックAS、30%のIPA/ヘプタン、イソクラティック溶離)で精製した。より極性の低い主ピークを集め、所望の生成物を単一の鏡像異性体として得た。
1914ClFSのLC−MS[M+H]:計算値443.0、実測値443.0。
【0179】
中間体7
【0180】
【化51】

【0181】
工程A
【0182】
【化52】

中間体6−2(110mg、0.336mmol)のTHF溶液にNaHMDSを−78℃で添加した。30分後、デービスの酸化体(128mg、0.49mmol、J.of Am.Chem.Soc.,1980,102,2004に報告されたように調製)を1回で添加し、反応系を1時間かけて室温まで昇温するように放置し、その後飽和NaHCO(100mL)でクエンチした。混合物をEtOAcで抽出した(3×80mL)。有機層を合わせ、塩水で洗浄し(1×50mL)、無水NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、10%〜100%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製し、所望の生成物を白色固体として得た。C2024NOのLC−MS[M+H]:計算値342、実測値342。
【0183】
工程B
【0184】
【化53】

工程Aのヒドロキシエステル(70mg)を7Nのアンモニア−メタノール(10mL)と混合し、封管中55℃で5日間加熱した。次に、反応系を真空中で濃縮し、残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、10%〜100%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製し、所望の生成物を白色固体として得た。C1821のLC−MS[M+H]:計算値312、実測値312。
【0185】
工程C
【0186】
【化54】

工程Bのヒドロキシアミド(280mg、0.9mmol)と炭酸ジエチル(747mg、6.335mmol)をナトリウムメトキシド(345mg、6.335mmol)およびエタノール(10mL)と混合した。混合物を3時間還流し、その後蒸発させた。残渣を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、10%〜100%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製し、所望の生成物を白色固体として得た。LC−MSでC1918の計算値:338;実測値:339(M+H)。
【0187】
工程D
【0188】
【化55】

工程Cの生成物(180mg)のエタノール(15mL)溶液に10%Pd/C(200mg)を添加し、次に4NのHCl/ジオキサン(2mL)を添加した。反応系をパーシェーカー中50psiで2時間水素化した。次に、混合物をセライトのパッドでろ過し、ろ液を真空中で濃縮して、白色固体をHCl塩として得た。LC−MS:C1212の計算値:248;実測値:249(M+H)。
【0189】
実施例8
【0190】
【化56】

中間体7(50mg、0.176mmol)に、3−クロロ−4−フルオロベンゾトリフルオリド(70mg、0.352mmol)、炭酸セシウム(172mg、0.528mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(1mL)を添加した。反応系を窒素雰囲気下110℃で23時間加熱した。過剰の塩基をシリンジろ過により除去し、ろ液に酢酸(0.5mL)を添加した。ろ液を逆相HPLC(YMC−パックプロC18、5ミクロン、40%〜100%のCHCN/HO/0.1%TFA)で精製した。合わせた生成物画分を凍結乾燥し、純粋な生成物をTFA塩として得た。C1914ClFのLC−MS[M+H]:計算値426、実測値427[M+H]。
【0191】
実施例9
【0192】
【化57】

実施例8の手順に従い中間体7と4,7−ジクロロキノリンから調製した。C2116ClNのLC−MS:計算値409、実測値410[M+H]。
【0193】
実施例10
【0194】
【化58】

実施例8の手順に従い中間体7と1−シアノ−4−フルオロナフタレンから調製した。C2317のLC−MS:計算値399、実測値400[M+H]。
【0195】
実施例11
【0196】
【化59】

実施例8の手順に従い中間体7と1,3−ジクロロ−4−フルオロベンゼンから調製した。C1814ClのLC−MS:計算値392、実測値393[M+H]。
【0197】
実施例12
【0198】
【化60】

実施例8の手順に従い中間体7と4−フルオロ−3−メチルベンゾニトリルから調製した。C2017のLC−MS:計算値363、実測値364[M+H]。
【0199】
実施例13
【0200】
【化61】

実施例8の手順に従い中間体7と1−クロロインダンから調製した。
2120のLC−MS:計算値364、実測値365[M+H]。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩:
【化1】

式中、Zは、−CRCO、−OCRCO、−N(R)CRCO、−SCRCO、テトラゾール;および以下の複素環IIからなる群から選択され;
【化2】

式中、Aは、−N−または−CR−であり;
Bは、S、−NR−、−CH−およびOから選択され;
Yは、O、S、−C(=O)−および−NR−からなる群から選択され;
Wは、O、S、−CH−、−CF−および−NR−から選択され;
は、フェニル、ナフチル、C−Cシクロアルキル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾピラニル、1,4−ベンゾジオキサニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、フリル、ピロリル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキノリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、チエニル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル(Sオキシドおよびジオキシドを含む)、フロ(2,3−b)ピリジル、キノリル、インドリル、キナゾリニル、およびジベンゾゾフラニルからなる群から選択される環式置換基であり、上記Rは、ハロゲン、−OH、−CN、−NO、−NR、C−Cアルキル、−OC−Cアルキル、−C(=O)C−Cアルキルおよび−S(O)−Cアルキルから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよく、ここでC−Cアルキル、ならびに−OC−Cアルキル、−C(=O)C−Cアルキルおよび−S(O)−Cアルキルのアルキル基は、1乃至3個のハロゲンで置換されていてよく;
は、ハロゲン、−OH、−CN、−NO、−NR、C−Cアルキルおよび−OC−Cアルキルからなる群から選択され、ここでC−Cアルキルおよび−OC−Cアルキルのアルキル基は、1乃至3個のハロゲンで置換されていてよく;
およびRは、H、および1乃至3個のFで置換されていてよいC−Cアルキルからなる群から各々独立して選択され;
は、H、および1乃至3個のFで置換されていてよいC−Cアルキルからなる群から選択され;
、RおよびRは、HおよびC−Cアルキルからなる群から各々独立して選択され;
は、H、C−CアルキルおよびCFからなる群から選択され;
nは、1乃至3の整数であり;
pは、0、1または2であり;そして
qは、0、1または2である。
【請求項2】
は、フェニル、2−ピリジニル、キノリル、インダニルおよびナフチルからなる群から選択され、上記Rは、ハロゲン、−OH、−CN、−NO、−NR、C−Cアルキル、−OC−Cアルキル、−C(=O)C−Cアルキルおよび−S(O)−Cアルキルから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよく、ここでC−Cアルキル、ならびに−OC−Cアルキル、−C(=O)C−Cアルキルおよび−S(O)−Cアルキルのアルキル基は、1乃至3個のハロゲンで置換されていてよく;
、R、RおよびRは、Hであり;
およびRは、HおよびCHから独立して選択され;
は、HおよびC−Cアルキルから選択され;そして
pは、0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRがHであり;Rは、HおよびCHから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、F、Cl、Br、CH、CF、−OCH、−OCF、−CN、−NOおよび−OHから独立して選択される1乃至3個の基で置換されている、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
Zは、−CHCOHおよび以下の複素環IIaから選択され:
【化3】

式中、Rは、HおよびC−Cアルキルから選択され、Bは、S、Oおよび−NH−から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
YがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Wが−CH−であり;nは1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式Iaを有する請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩:
【化4】

式中、Zは、−CHCOおよび以下の複素環IIaからなる群から選択され:
【化5】

式中、BはS、Oおよび−NH−から選択され;
は、フェニル、2−ピリジニル、インダニル、キノリルまたはナフチルであり、ここでRは、F、Cl、Br、CH、CF、−OCH、−OCF、−CN、−NOおよび−OHから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよく;
は、H、および1乃至3個のFで置換されていてよいC−Cアルキルからなる群から選択され;
は、HおよびC−Cアルキルから選択され;そして
nは、1または2である。
【請求項10】
およびRはHであり;BはSまたはOである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
は、フェニルまたは2−ピリジニルであり、そしてRは、F、Cl、CHおよびCFから独立して選択される2個の置換基で置換されている、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
式Ibを有する請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩:
【化6】

式中、Rはフェニル、2−ピリジニル、インダニル、キノリルまたはナフチルであり、ここでRは、F、Cl、Br、CH、CF、−OCH、−OCF、−CN、−NOおよび−OHから独立して選択される1乃至3個の置換基で置換されていてよく;
Bは、S、Oおよび−NH−から選択され;そして
nは、1または2である。
【請求項13】
BはSまたはOであり;Rはフェニルまたは2−ピリジニルである、請求項12に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩:
【請求項14】
以下からなる化合物群から選択される、請求項10に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩:
【化7】

【化8】

【請求項15】
請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を包含する医薬組成物。
【請求項16】
2型糖尿病の治療用医薬の製造のための請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項17】
以下を包含する医薬組成物:
(1) 請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩;
(2) 以下の化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物:
(a)PPAR−γ−アゴニストおよび部分アゴニスト;
(b)ビグアナイド剤;
(c)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤;
(d)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤;
(e)インスリンまたはインスリン模擬薬;
(f)スルホニル尿素剤;
(g)α−グルコシダーゼ阻害剤;
(h)患者の脂質プロフィールを改善する薬剤であって、(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(ii)胆汁酸封鎖剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸、またはその塩、(iv)PPARαアゴニスト、(v)コレステロール吸収阻害剤、(vi)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、(vii)CETP阻害剤、および(viii)フェノール系抗酸化剤からなる群から選択される薬剤;
(i)PPARα/γ二重アゴニスト;
(j)PPARδアゴニスト;
(k)抗肥満化合物;
(l)回腸胆汁酸輸送体阻害剤;
(m)抗炎症剤;
(n)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(o)GLP−1;
(p)GIP−1;
(q)GLP−1類縁体;および
(r)HSD−1阻害剤;ならびに
(3) 薬学的に許容される担体。

【公表番号】特表2008−528590(P2008−528590A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553165(P2007−553165)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/002395
【国際公開番号】WO2006/083612
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】