説明

抗腫瘍活性を有するポリエンオキサゾール、及びストレプトミセス株を使用するその調製方法

本発明は、式(I)の生物学的に活性のある新規なポリエンオキサゾール、薬剤として許容されるその塩及び誘導体、並びにこれらの取得方法に関する。化合物を得るための一方法は、ストレプトミセススパルソゲネス(Streptomyces sparsogenes)NRRL2940又はその突然変異体若しくは変異体を培養するものである。本発明の化合物を含む薬剤組成物は、細胞毒として、また癌細胞の増殖の抑制に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的に活性のある新規なポリエンオキサゾール;薬剤として許容されるその塩及び誘導体、並びにこれらの取得方法に関する。化合物を得るための一方法は、ストレプトミセススパルソゲネス(Streptomyces sparsogenes)NRRL2940又はその突然変異体若しくは変異体を培養するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年6月13日出願の米国特許仮出願第60/477,931号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
ポリケチドは、一般的には真菌及び菌糸を含む様々な生物、特に放線菌によって産生される、自然に存在する多様なクラスの分子である。ポリケチドは多岐にわたる構造を有するが、ポリケチドはすべて、2個の炭素、又はケチドと呼ばれる、置換された2炭素の単位が連続して段階的に付加されてこれら分子の炭素主鎖が組み立てられる、共通の生合成経路を有する仲間であるので、まとめて分類される。ポリエンポリケチドは、マルチモジュール型ポリケチドシンターゼタンパク質による一連の酵素反応によって一列につなげられた、ケチド単位の鎖を含む。
【0004】
ポリケチドは、通常、その自然のままの環境では微量しか見出されない。その上、構造が複雑であるために、ポリケチドは、化学的に合成しにくいことで有名である。それにもかかわらず、ポリエンオキサゾールポリケチドは、抗菌活性及び抗ウイルス活性を示すことが知られている。クロマイシンA及びBは、抗菌活性を有することが報告されている(Ogura et al., J. Antibiotics, Vol. 38, No.5, 669-673 (1985);M. Ogura et al, Agric. Biol. Chem., Vol. 49, No. 6, 1909-1910 (1985)。オキサゾロマイシンも、抗菌活性及び抗ウイルス活性の他、場合によってはP388白血病細胞に対する抗腫瘍活性も示すことが報告されている((Kansaki et al., Biosc. Biotechnol. Biochem., Vol. 62, No. 3, 438-442 (1998);Mori et al., Tetrahedron Letters, Vol. 26, No. 8, 1073-1076 (1985);Tonew et al., Acta Virol., Vol. 36, 166-177 (1992))。これらの化合物はすべて、分子の一方の端にピログルタマートスピロβラクトン環を有する。
【非特許文献1】(Ogura et al., J. Antibiotics, Vol. 38, No.5, 669-673 (1985)
【非特許文献2】M. Ogura et al, Agric. Biol. Chem., Vol. 49, No. 6, 1909-1910 (1985)
【非特許文献3】(Kansaki et al., Biosc. Biotechnol. Biochem., Vol. 62, No. 3, 438-442 (1998)
【非特許文献4】Mori et al., Tetrahedron Letters, Vol. 26, No. 8, 1073-1076 (1985)
【非特許文献5】Tonew et al., Acta Virol., Vol. 36, 166-177 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
治療上重要なポリケチドが多数同定されているが、特性が強化され、又はまったく新しい生物活性を有する新規なポリケチドを得る必要があることに変わりない。モジュール型ポリケチドシンターゼによって産生されるポリケチド複合体は、抗蠕虫剤、殺虫剤、免疫抑制剤、細胞毒、抗ウイルス剤、抗真菌剤、又は抗菌剤としての既知の効用を有する化合物を含むという点で、特に有益である。そのような新規なポリケチドは、その構造が複雑であるために、完全な化学合成によって得るのは容易ではない。本発明は、治療に役立つ活性を有する新しいクラスのポリエンオキサゾールポリケチド化合物を提供して、このニーズに対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す化合物1のポリエンオキサゾール又は薬剤として許容される化合物1の塩を提供する。
【0007】
【化1】

本発明はさらに、以下に示す化合物2のポリエンオキサゾール又は薬剤として許容される化合物2の塩を提供する。
【0008】
【化2】

別の態様では、本発明は、化合物1又は化合物2を化学修飾して得ることのできる、以下に示す式Iのポリエンオキサゾール又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0009】
【化3】

[式中、
は、H、C1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール又はヘテロアリール、−C(O)C1〜6アルキル、−C(O)C2〜7アルケニル、−C(O)C6〜10アリール又はヘテロアリールから選択され、
は水素であり、或いは
及びRが一緒になって、結合している酸素原子と炭素原子の間に第二の結合を作ってカルボニルを形成していてもよく、
は、H又はCHから選択され、
は、−COOH、−COOR、−CHOC(O)R、及び−CHORから選択され、
及びRは、C1〜6アルキル、C6〜10アリール又はアリールアルキルから選択され、
は、H又はC1〜6アルキルから選択され、
は、H、OH、−OC(O)C1〜6アルキル、−OC(O)C6〜10アリール、又は−OC(O)C6〜16アリールアルキルから選択され、
及びR10は、H及びC1〜6アルキルからそれぞれ独立に選択され、或いは
及びR10は、結合している酸素原子及び炭素原子と一緒になって、次式の1,3−ジオキソラン環を形成していてもよく、
【0010】
【化4】

11及びR12は、H、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、又はC6〜16アリールアルキルからそれぞれ独立に選択される。]
一実施形態では、本発明は、Rが水素であり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、Rが水素であり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、R及びRが水素であり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、Rが水素であり、Rがメチルであり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、RがC1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール又はヘテロアリールであり、Rがメチルであり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、RがC(O)C1〜6アルキル、C(O)C2〜7アルケニル、C(O)C6〜10アリール又はヘテロアリールであり、Rが水素であり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、RがC(O)C1〜6アルキル、C(O)C2〜7アルケニル、C(O)C6〜10アリール又はヘテロアリールであり、Rがメチルであり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0017】
以下は、好例となる本発明の化合物である。
【0018】
【化5】








又は化合物1〜26のいずれか1種の薬剤として許容される塩。
【0019】
本発明はさらに、式Iの化合物と薬剤として許容される担体とからなる組成物に関する。一実施形態では、本発明は、治療有効量の化合物I、化合物2、又は化合物1若しくは2の薬剤として許容される塩と、薬剤として許容される担体をと含む薬剤組成物に関する。別の実施形態では、本発明は、治療有効量の、化合物1〜26から選択された少なくとも1種の化合物又は化合物1〜26から選択された化合物の薬剤として許容される塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物に関する。
【0020】
本発明はさらに、(a)好気性条件下、少なくとも1種の炭素原子供給源及び少なくとも1種の窒素原子供給源を含む栄養培地でストレプトミセス株を培養するステップと、(b)(a)で培養した細菌からポリエンオキサゾールを単離するステップとを含む方法によって得られるポリエンオキサゾールを提供する。一実施形態では、菌株は、ストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940又はその突然変異体である。別の実施形態では、菌株は、カナダの国際寄託当局に寄託され、アクセッション番号が270504−04であるストレプトミセススパルソゲネスである。別の実施形態では、ポリエンオキサゾールは、本質的に図3、図4、又は図5に示すようなH NMRスペクトルを生じる。別の実施形態では、ポリエンオキサゾールは、化合物1又は化合物2である。別の実施形態では、栄養培地は、表1の培地から選択される。
【0021】
本発明はさらに、少なくとも1種の炭素原子供給源及び少なくとも1種の窒素原子供給源を含む栄養培地でストレプトミセス株を培養するステップと、ポリエンオキサゾールを単離精製するステップとを含む、本発明のポリエンオキサゾールの製造方法を提供する。別の実施形態では、菌株は、ストレプトミセススパルソゲネスである。別の実施形態では、菌株は、ストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940又はその突然変異体である。別の実施形態では、菌株は、カナダの国際寄託当局に寄託されているアクセッション番号270504−04のストレプトミセススパルソゲネス株である。別の実施形態では、炭素及び窒素供給源は、表1の成分から選択される。別の実施形態では、栄養培地は、表1の培地から選択される。別の実施形態では、好気性条件下で培養を行う。別の実施形態では、約18℃〜約40℃、好ましくは18℃〜30℃の範囲の温度で培養を行う。別の実施形態では、約6〜約9の範囲のpHで培養を行う。
【0022】
本発明はさらに、化合物1若しくは化合物2の誘導体又は構造類似体である式Iのポリエンオキサゾールを提供する。一実施形態では、式Iのポリエンオキサゾールを、化合物1若しくは化合物2の合成後化学修飾によって製造する。
【0023】
本発明はさらに、カナダの国際寄託当局に寄託されているアクセッション番号270504−04のストレプトミセススパルソゲネス株を提供する。
【0024】
本発明はさらに、式Iの化合物の、腫瘍細胞の増殖を抑制する用途を提供する。一実施形態では、本発明は、そのような処置を必要とする対象において腫瘍細胞の増殖を抑制する方法であって、その対象に有効量の式Iの化合物を投与するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、方法は、前記対象への治療有効量の化合物1又は化合物2の投与を含む。さらに別の実施形態では、方法は、前記対象への、化合物1又は化合物2の薬剤として許容される塩の投与を含む。別の実施形態では、方法は、前記対象への、化合物1又は化合物2と薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物の投与を含む。別の実施形態では、本発明は、化合物1、化合物2、又は式Iの化合物の、細胞増殖を抑制するための細胞毒としての用途を提供する。別の実施形態では、本発明は、化合物1又は化合物2の、腫瘍の増殖を抑制する医薬の調製における用途を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、放線菌である、ストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940又はその突然変異体若しくは変異体などのストレプトミセス種の菌株から単離された、本明細書では化合物1及び化合物2と示される新規なポリエンオキサゾールに関する。
【0026】
本発明はさらに、化合物1及び化合物2の薬剤として許容される塩及び誘導体、並びにそのような化合物の獲得方法に関する。化合物を得る一方法は、適切なストレプトミセス種培養条件下で、ストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940又はその突然変異体若しくは変異体を、好ましくは以下で述べる発酵プロトコルを使用して培養することによるものである。
【0027】
本発明はまた、化合物1又は化合物2から、本明細書に記載され、自然産物合成の技術者によく知られている技術を使用する化合物1又は化合物2の選択的な化学修飾によって製造される式Iのポリエンオキサゾールに関する。
【0028】
本発明はまた、化合物1、化合物2、化合物1又は2の薬学的に許容できる塩、及び式Iによって規定される化合物1又は2の誘導体から選択されたポリエンオキサゾールを含む薬剤組成物に関する。本発明の一態様では、化合物1及び化合物2はそれぞれ、細胞毒として有用であり、また癌細胞増殖の抑制剤としての使用に有用である。したがって、本発明の一態様は、本発明の化合物1又は化合物2と薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物、並びにその組成物の、細胞増殖を抑制する細胞毒としての使用方法に関する。
【0029】
I.定義
ある用語は、本出願で使用するとき、別段の指定がない限り、その一般的な意味を有する。便宜上、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲において使用する一部の用語及び語句の意味を以下に示す。
【0030】
アルキルという用語は、線状、分枝状、又は環状の炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘキシメチルなどが挙げられる。アルキル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、オキソ、グアニジノ、及びホルミルから選択された置換基によって置換されていてもよい。
【0031】
アルケニルという用語は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む、線状、分枝状、又は環状の炭化水素基を指す。アルケニル基の例としては、限定するものではないが、ビニル、1−プロペン−2−イル、1−ブテン−4−イル、2−ブテン−4−イル、及び1−ペンテン−5−イルなどが挙げられる。アルケニル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、ホルミル、オキソ、及びグアニジノから選択された置換基によって置換されていてもよい。不飽和炭化水素鎖の二重結合部分は、シス又はトランス立体配置のどちらでもよい。
【0032】
シクロアルキル又はシクロアルキル環という用語は、3個〜15個の環員を有する単一若しくは縮合炭素環系の飽和若しくは部分的に不飽和の炭素環を指す。シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが挙げられる。シクロアルキル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキサミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択された置換基によって置換されていてもよい。
【0033】
ヘテロシクリル、複素環式、又は複素環という用語は、3個〜15個の環員を有する単一若しくは縮合複素環系中に、O、N、NH、NR、PO、S、SO、又はSOから選択された1個〜4個のヘテロ原子又はヘテロ基を含む、飽和若しくは部分的に不飽和の環を指す。ヘテロシクリル、複素環式、又は複素環の例としては、限定するものではないが、モルホリニル、ピペリジニル、及びピロリジニルが挙げられる。ヘテロシクリル、複素環式、又は複素環は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、オキソ、チオカルボニル、イミノ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択された置換基によって置換されていてもよい。
【0034】
ハロという用語は、臭素、塩素、フッ素、又はヨウ素の各置換基を指す。
【0035】
アリール又はアリール基という用語は、5個〜15個の環員を有する単一若しくは縮合環系の芳香族基を指す。アリールの例としては、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニルが挙げられる。アリールは、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、アジド、アルキルチオ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スリフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択された1個又は複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0036】
用語ヘテロアリール又はヘテロアリール環とは、5個〜15個の環員を有し、O、N、Sなどの少なくとも1個のヘテロ原子、又はSOやSOなどの少なくとも1個のヘテロ原子基を含む、単一若しくは縮合環系の芳香族基を指す。ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、ピリジニル、トリアゾリル、チアジアゾイル、イソキノリニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾイル、トリアゾリル、及びピロリルの各基が挙げられる。ヘテロアリール基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、チオカルボニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択された1個又は複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0037】
本発明の化合物は、1個又は複数の不斉炭素原子を有し、光学異性体として存在して、ラセミ化合物又は非ラセミ化合物の混合物をなすことがある。本発明の化合物は、単一の異性体としても、又は立体化学的な各異性体形態の混合物としても有用である。ジアステレオ異性体、すなわち、重ね合わせられない立体化学異性体は、クロマトグラフィー、蒸留、結晶化、昇華などの従来の手段によって分離することができる。従来の方法に従いラセミ混合物を分割して、各光学異性体を得ることができる。
【0038】
本発明は、単離又は精製された化合物を含む。「単離」又は「精製」された化合物とは、混合物中に存在する本発明の化合物の少なくとも10%、20%、50%、80%、又は90%に相当する化合物を指すが、但し、本発明の化合物を含む混合物は、当業者に知られている従来の生物学検定で試験したときに、実証できる(すなわち、統計学的に有意な)細胞障害活性などの生物学的活性を有するものとする。
【0039】
本明細書では、用語「治療」とは、障害、たとえば、疾患若しくは状態、疾患の症状、又は疾患の素因を有する患者に、或いはそうした患者から単離された組織若しくは細胞系に、疾患、疾患の症状、又は疾患の素因を治癒、回復させ、緩和、軽減、変化、治療し、寛解させ、改善し、又はそれに影響を与える目的で、治療用薬剤を適用又は投与することを指す。
【0040】
本明細書では、「薬剤組成物」は、薬理学的有効量の本発明の化合物と、薬剤として許容される担体とを含む。本明細書では、「薬理学的有効量」、「治療有効量」、又は単に「有効量」とは、目的の薬理学的成果、治療成果、又は予防成果を上げるのに有効なポリエンオキサゾールの量を指す。たとえば、疾患又は障害と関連付けられる測定可能なパラメータが少なくとも25%の低下を示しているとき所与の臨床的治療を有効であるとみなすと、その疾患又は障害の治療のための薬物の治療有効量は、そのパラメータを少なくとも25%低減するのに必要な量である。
【0041】
「薬剤として許容される担体」という用語は、治療用薬剤の投与に向いた担体を指す。そのような担体には、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びこれらの混合物が含まれるがこの限りでない。この用語には、特に細胞培養培地は含まれない。経口投与される薬物では、薬剤として許容される担体には、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、着香剤、着色剤、保存剤などの薬剤として許容される賦形剤が含まれるがこの限りでない。適切な不活性希釈剤には、ナトリウム及びカルシウムの炭酸塩、ナトリウム及びカルシウムのリン酸塩、及びラクトースが含まれ、コーンスターチ及びアルギン酸が適切な崩壊剤である。結合剤としては、デンプン及びゼラチンを挙げることができ、滑沢剤は、存在するとすれば、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクになるであろう。所望であれば、消化管での吸収を遅らせるために、錠剤をモノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの材料でコーティングしてもよい。
【0042】
「薬剤として許容される塩」という用語は、酸付加塩及び塩基付加塩を指す。薬剤として許容されるのであれば、塩の性質は決定的でない。好例となる酸付加塩としては、限定するものではないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩、エンボン酸塩(パモ酸塩)、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、パントテン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、スルファニル酸塩、メシル酸塩、シクロヘキシルアミノスルホン酸塩、ステアリン酸塩、アルギン酸塩、βヒドロキシ酪酸塩、マロン酸塩、ガラクタル酸塩、及びガラクツロン酸塩等が挙げられる。薬剤として許容される適切な塩基付加塩には、限定するものではないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛からできる金属塩、又はN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リシン、及びプロカイン等からできる有機塩が含まれる。薬剤として許容される塩の追加の例は、Journal of Pharmaceutical Sciences (1977) 66:2に列挙されている。これらの塩はすべて、本発明のポリケチド化合物から、化合物を適切な酸又は塩基で処理することによる従来の手段によって調製することができる。
【0043】
別段の指摘がない限り、本明細書及び特許請求の範囲の中で使用する、成分の量、分子量などの特性、反応条件、及びIC50等を示すすべての数字は、あらゆる場合において用語「約」によって緩和されるものと理解される。したがって、そうでないと指摘しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、概数である。少なくとも、特許請求の範囲との同等物の原則の適用を制限しようとするものでもなく、各数値パラメータは少なくとも、有効数字の数値を考慮し、通常の丸め法を当てはめて解釈すべきである。本発明の広い範囲に記載する数値による範囲及びパラメータは概数であるにもかかわらず、実施例、表、及び図面に記載する数値は、できる限り正確に報告する。どんな数値も、実験、試験測定法、統計分析などのばらつきによる一定の誤差を本質的に含むことがある。
【0044】
II.本発明の化合物
この実施形態の一態様では、本発明は、本明細書では化合物1若しくは化合物2と呼ぶ次の新規なポリエンオキサゾール、又は化合物1若しくは化合物2の薬剤として許容される塩に関する。
【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

化合物1及び2は、その質量分析、紫外分光法、及びNMR分光法の各データなど、以下で示すその物理化学的性質及びスペクトルの性質のいずれか1種又は複数によって特徴付けることができる。
【0047】
別の態様では、本発明は、次式Iのポリエンオキサゾールによって示されるような、化合物1若しくは化合物2の誘導体、又は薬剤として許容されるその塩に関する。
【0048】
【化8】

[式中、
は、H、C1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール又はヘテロアリール、−C(O)C1〜6アルキル、−C(O)C2〜7アルケニル、−C(O)C6〜10アリール又はヘテロアリールから選択され、
は水素であり、或いは
及びRが一緒になって、結合している酸素原子と炭素原子の間に第二の結合を作ってカルボニルを形成していてもよく、
は、H又はCHから選択され、
は、−COOH、−COOR、−CHOC(O)R、及び−CHORから選択され、
及びRは、C1〜6アルキル、C6〜10アリール又はアリールアルキルから選択され、
は、H又はC1〜6アルキルから選択され、
は、H、OH、−OC(O)C1〜6アルキル、−OC(O)C6〜10アリール、又は−OC(O)C6〜16アリールアルキルから選択され、
及びR10は、H及びC1〜6アルキルからそれぞれ独立に選択され、或いは
及びR10は、結合している酸素原子及び炭素原子と一緒になって、次式の1,3−ジオキソラン環を形成していてもよく、
【0049】
【化9】

11及びR12は、H、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、又はC6〜16アリールアルキルからそれぞれ独立に選択される。]
別の実施形態では、本発明は、Rが水素であり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、Rが水素であり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、R及びRが水素であり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、Rが水素であり、Rがメチルであり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、RがC1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール若しくはヘテロアリールであり、Rがメチルであり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、RがC(O)C1〜6アルキル、C(O)C2〜7アルケニル、C(O)C6〜10アリール若しくはヘテロアリールであり、Rが水素であり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、RがC(O)C1〜6アルキル、C(O)C2〜7アルケニル、C(O)C6〜10アリール若しくはヘテロアリールであり、Rがメチルであり、他のすべての基が予め規定したとおりである、式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩を提供する。
【0056】
以下は、好例となる本発明の化合物である。
【0057】
【化10】








又は化合物1〜26のいずれか1種の薬剤として許容される塩。ある実施形態は、式1の化合物のうちの1種又は複数を除外することがある。
【0058】
III.本発明の化合物を含む薬剤組成物
もう一つの実施形態では、本発明は、前項で述べた本発明のポリエンオキサゾールと、以下で述べる薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物に関する。本発明の化合物を含む薬剤組成物は、細胞毒として、また癌細胞の増殖の抑制に有用である。
【0059】
本発明の化合物又は薬剤として許容されるその塩は、細胞毒として、疾患、特に腫瘍増殖の治療処置又は予防処置に向けて、経口、静脈内、筋肉内、皮下、眼内、局所、若しくは非経口投与用に製剤することができる。経口若しくは非経口投与では、本発明の化合物は、従来の薬剤用担体及び賦形剤と混合し、錠剤、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、及びオブラート等の形で使用することができる。本発明の化合物を含む組成物は、重量で約0.1%〜約99.9%、約5%〜約95%、約10%〜約80%、又は約15%〜約60%の活性化合物を含有することになる。
【0060】
本明細書で開示する薬剤調製物は、標準の手順に従って調製し、腫瘍の増殖を低減、予防、又は解消するように選択された投与量で投与する(たとえば、"Remington's Pharmaceutical Sciences", Mack Publishing Company, Easton, PA、及び"Goodman and Gilman's the Pharmaceutical Basis of Therapeutics", Pergamon Press, New York, NY,を参照のこと。これらの内容を参照により本明細書に援用する)。本発明の組成物は、制御放出(たとえばカプセル)又は持続放出の送達系(たとえば生体分解性基材)を使用して送達することができる。本発明の(好ましくは式Iの)組成物の投与に適する、好例となる薬物送達用遅延放出送達系は、(Kentに発行された)米国特許第4,452,775号、(Leonardに発行された)同第5,239,660号、(Zaffaroniに発行された)同第3,854,480号に記載されている。
【0061】
本発明の薬剤として許容される組成物は、1種又は複数の本発明の化合物と共に、本明細書では一まとめにして「担体材料」と呼ぶ、1種又は複数の非毒性の薬剤として許容される担体及び/若しくは希釈剤及び/若しくは佐剤及び/若しくは賦形剤、及び所望であれば他の活性成分を含む。組成物は、コーンスターチ若しくはゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウム、アルギン酸などの一般的な担体及び賦形剤を含有していてよい。組成物は、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース、ナトリウムデンプングリコラート、及びアルギン酸を含有していてもよい。
【0062】
含めることのできる錠剤結合剤は、アカシア、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、デンプン、及びエチルセルロースである。
【0063】
使用することのできる滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム若しくは他の金属ステアリン酸塩、ステアリン酸、シリコーン油、タルク、ろう、油、及びコロイドシリカが含まれる。
【0064】
ペパーミント、冬緑油、チェリー風味などの着香剤を使用することもできる。着色剤を加えて、剤形の見た目をより美しくし、又は本発明の化合物を含む製品を識別しやすくすることも望ましいといえる。
【0065】
経口的な使用では、錠剤やカプセルなどの固体製剤が特に有用である。持続放出型又は腸溶コーティング型の製剤を考案してもよい。小児及び老人への適用には、懸濁液、シロップ、及びチュアブル錠が特に適する。経口投与では、治療用組成物は、たとえば、錠剤、カプセル、懸濁液、又は液体の形である。薬剤組成物は、治療有効量の活性成分を含有する剤形単位の形にすることが好ましい。そのような剤形単位の例は、錠剤及びカプセルである。錠剤及びカプセルは、治療目的で、活性成分に加え、結合剤、たとえばアカシアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、トラガカント;充填剤、たとえばリン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトール、スクロース;滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、タルク;崩壊剤、たとえばジャガイモデンプン;着香剤;着色剤;又は許容される湿潤剤などの従来の担体を含有していてよい。経口液体製剤は、一般に、水性若しくは油性の溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、又はエリキシルの形であり、懸濁化剤、乳化剤、非水性物質、保存剤、着色剤、着香剤などの従来の添加剤を含有していてよい。液体製剤用添加剤の例としては、アカシア、扁桃油、エチルアルコール、精留ヤシ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、水添食用脂、レシチン、メチルセルロース、p−ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル、プロピレングリコール、ソルビトール、又はソルビン酸が挙げられる。
【0066】
静脈内(IV)での使用については、本発明の化合物は、通常使用される静脈内用の液体のいずれかに溶解又は懸濁させ、注入によって投与することができる。静脈内用の液体には、限定するものではないが、生理食塩水又はRinger's(登録商標)液が含まれる。
【0067】
非経口投与用の製剤は、水性若しくは非水性の等張性無菌注射溶液若しくは懸濁液の形にすることができる。これらの溶液又は懸濁液は、経口投与用製剤での使用について述べた担体のうちの1種又は複数を含む無菌の粉末又は顆粒から調製することができる。化合物は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、及び/又は様々な緩衝液に溶解させることができる。
【0068】
筋肉内用の製剤については、本発明の化合物又は化合物をなす適切な可溶性の塩の無菌製剤を注射用蒸留水(WFI)、生理食塩水、5%グルコースなどの薬剤用希釈剤に溶解させ投与することができる。化合物の適切な不溶性形態を、水性基剤又は薬剤として許容される油基剤、たとえば、オレイン酸エチルなどの長鎖脂肪酸エステル中の懸濁液として調製し投与してもよい。
【0069】
局所的な使用については、本発明の化合物は、皮膚、又は鼻及び喉の粘膜への適用に適する形態で調製することもでき、クリーム、軟膏、液体のスプレー若しくは吸入剤、トローチ剤、又は喉用塗布剤の形を取ることができる。このような局所用製剤はさらに、活性成分の表面での浸透を促進するためにジメチルスルホキシド(DMSO)などの化学化合物を含んでもよい。
【0070】
眼又は耳への適用については、本発明の化合物は、疎水性又は親水性の基剤中に軟膏、クリーム、ローション、塗布剤、又は粉末として製剤された液体又は半液体の形態にして提供することができる。
【0071】
直腸投与については、本発明の化合物は、カカオ脂、ろう、又は他のグリセリドなどの従来の担体と混ぜられた坐剤の形で投与することができる。
【0072】
或いは、本発明の化合物は、送達時に薬剤として許容される適切な担体で再形成するための粉末形態にすることもできる。別の実施形態では、化合物の単位式剤形を、化合物又はその塩を無菌の密閉アンプルに入った適切な希釈剤に溶かした溶液にしてもよい。
【0073】
単位投与量中の本発明の化合物の量は、少なくとも1種の本発明の活性化合物の治療有効量からなり、その量は、受取対象、投与経路、及び投与頻度に応じて様々でよい。受取対象とは、植物、細胞培養物、ヒツジなどの動物、又はヒトを含む哺乳動物を指す。
【0074】
本発明のこの態様によれば、本明細書で開示する新規な化合物は、薬剤として許容される担体中に入れられ、既知の薬物送達法に従って(ヒト対象を含む)受取対象に送達される。一般に、in vivoで本発明の組成物を送達する本発明の方法は、当業界で容認されているプロトコルを使用しており、当業界で容認されているプロトコルの薬物の代わりに本発明の化合物を用いることが唯一の実質的な手順の変更である。
【0075】
同様に、培養物中の細胞を処理するための特許請求の範囲に記載の組成物の使用法は、当業界で容認されているプロトコルの薬剤の代わりに本発明の化合物を用いる実質的な手順の変更のみを行った、当業界で容認されている細胞培養物の細胞毒処理プロトコルを利用している。
【0076】
本発明の化合物は、腫瘍の増殖、及び前癌状態若しくは癌状態の治療方法を提供する。本明細書では、用語単位投与量とは、所望の治療応答を誘発する、治療有効量の本発明の化合物の量を指す。本明細書では、「治療有効量」という語句は、発症を予防し、症状を緩和し、又は細菌感染、真菌感染、前癌状態、若しくは癌状態の進行を停止する本発明の化合物の量を意味する。「治療する」という用語は、細菌感染、真菌感染、前癌状態、若しくは癌状態が起こるのを予防し、又は細菌感染、真菌感染、前癌状態、若しくは癌状態を制御し、若しくは消失させるために、対象に、少なくとも1種の本発明の化合物を治療有効量投与することであると定義される。「所望の治療応答」という用語は、受取対象において細菌感染、真菌感染、前癌状態、若しくは癌状態が逆転し、阻止され又は予防されるように、本発明の化合物によって受取対象を治療することを指す。
【0077】
本発明の化合物は、単回1日用量として投与することも、又は1日に複数回の用量で投与することもできる。治療レジメでは、延長された期間、たとえば、数日間又は2〜4週間かけての投与が求められることもある。投与される1回分あたりの量又は合計投与量は、感染若しくは疾患の状態の性質及び重症度、受取対象の年齢及び全般的な健康状態、受取対象の化合物に対する許容度、及び癌の種類などの要因に応じて決まる。
【0078】
本発明による化合物は、患者又は動物の食事又は飼料に含めて投与してもよい。動物用の食餌は、化合物を加えることのできる通常の食材でもよいし、又は化合物をプレミックスに加えてもよい。
【0079】
本発明の化合物は、その治療を必要とする受取対象を治療するために、臨床用に認可されている既知の抗菌剤、抗真菌剤、又は抗癌剤と組み合わせて、同時又は別々に服用してもよい。
【0080】
IV.本発明の化合物の製造方法
一実施形態では、化合物1及び2は、ストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940の菌株を培養して得る。ストレプトミセススパルソゲネス株NRRL2940は、米国Agricultural Research Service Culture Collection, National Center for Agricultural Utilization Research, 1815N.University Street,Peoria IL 61604, USAから入手できる。しかし、本発明は、特にその菌株NRRL2940の使用に限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明は、化合物1又は化合物2を産生する他の生物の使用を企図する。
【0081】
NRRL2940の突然変異体又は変異体は、この生物から、X線照射、紫外線照射、窒素マスタードなどの化学変異原による処置、ファージによる感作、抗生物質耐性による選択など、既知の手段によって得ることができる。化合物1及び化合物2の製造のために生み出された一改良菌株は、ストレプトミセススパルソゲネス[S03]022であり、2004年5月27日付けでカナダの国際寄託当局(IDAC)(Bureau of Microbiology,Health Canada, 1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)にアクセッション番号270504−04で寄託してある。寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約に則って行った。寄託された菌株は、特許が発行されると取り消せなくなり、制限若しくは条件なしに、世間に公開されることになる。寄託された菌株は、当業者に便宜を図るためにのみ提供され、合衆国法典第35編第112章におけるような実施可能要件が存在することを承認するものではない。
【0082】
したがって、本発明の化合物は、放線菌類とも呼ばれるorder放線菌目の細菌を含むがこの限りではない様々な微生物によって生合成される。放線菌類属に所属のメンバーの非限定的な例としては、ノカルジア属、ゲオデルマトフィルス属、アクチノプラーネス属、ミクロモノスポラ属、ノカルジア属、Saccharothrix属、Amycolatopsis属、Kutzneria属、Saccharomonospora属、Saccharopolyspora属、Kitasatospora属、ストレプトミセス属、ミクロビスポラ属、Streptosporangium属、及びアクチノマズラ属が挙げられる。放線菌の分類学は複雑であり、Goodfellow, Suprageneric Classification of Actinomycetes (1989); Bergey's Manual of Systematic Bacteriology, Vol. 4 (Williams and Wilkins, Baltimore, pp. 2322-2339); and to Embley and Stackebrandt, "The molecular phylogeny and systematics of the actinomycetes," Annu. Rev. Microbiol. (1994) 48:257-289が参照され、これらそれぞれの全体を、本発明の化合物を合成し得る属について、参照により本明細書に援用する。
【0083】
放線菌株を選択し、同化できる炭素及び窒素供給源に加え、オプションの無機塩及び他の既知の増殖因子を含み、pHが約6〜約9である、放線菌用の既知の栄養源を含有する培養培地で培養する。適切な培地成分としては、グルコース、スクロース、マンニトール、ラクトース、サトウキビ糖蜜、可溶性デンプン、コーンスターチ、コーンデキストリン、ポテトデキストリン、亜麻仁粕、コーンスティープソリッド(corn steep solids)、コーンスティープリカー、Distiller's Solubles(登録商標)、乾燥酵母、酵母抽出物、麦芽抽出物、Pharmamedia(登録商標)、グリセロール、N−ZアミンA、大豆粉末、大豆粉、粗挽き大豆粉、牛肉抽出物、獣肉抽出物、魚粉、バクトペプトン、バクトトリプトン、カサミノ酸、チアミン、L−グルタミン、L−アルギニン、トマトペースト、オートミール、MgSO・7HO、MgSO、MgCl・6HO、CaCO、NaCl、酢酸Na、KHPO、KHPO、KSO、NaHPO、FeSO・7HO、FeCl・4HO、クエン酸鉄アンモニウム、KI、NaI、(NHSO、NHPO、NHNO、KSO、ZnCl、ZnSO・7HO、ZnSO・5HO、MnCl・4HO、MnSO、CuSO・5HO、CoCl・2HO、フィチン酸、カサミノ酸、プロフロー油(Proflo Oil)、及びモルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)が挙げられるがこの限りでない。増殖培地の非限定的な例を以下の表1に示す。
【0084】
【表1】


本発明の化合物を産生する微生物を播種した培養培地は、播種を行った培養培地を、たとえばロータリーシェーカー又は振動水浴によって振盪してかきまぜながらインキュベートして曝気することができる。曝気は、インキュベートする間、播種を行った培養培地に空気、酸素、又は適切な気体混合物を注入して実施してもよい。微生物は、培養温度約20℃〜約40℃で約3〜約40日間培養する。
【0085】
培養後は、微生物によって産生された化合物を、たとえば遠心分離、クロマトグラフィー、吸着、濾過を含む、当業者に知られている技術及び/又は本明細書で開示する技術によって、培養を行った培養培地から抽出し、単離することができる。たとえば、培養を行った培養培地を、n−ブタノール、酢酸n−ブチル、4−メチル−2−ペンタノンなどの適切な有機溶媒と混合することができ、たとえば遠心分離によって有機層を分離した後、蒸発乾燥又は真空中での蒸発乾燥によって溶媒を除去することができる。得られる残渣は、任意選択で、たとえば水、エタノール、酢酸エチル、メタノール、又はこれらの混合物で再形成し、ヘキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、又はこれらの混合物などの適切な有機溶媒で抽出し直してもよい。溶媒を除去した後、クロマトグラフィーなどの標準の技術を使用して化合物をさらに精製することができる。
【0086】
化合物1や化合物2などの、微生物によって生合成されたポリエンオキサゾールは、任意選択で、ランダム及び/又は定方向の化学修飾にかけて、式Iの誘導体又は構造類似体を生成してもよい。化合物1又は化合物2と類似の機能活性を有する式Iの誘導体又は構造類似体は、本発明の範囲内である。式Iの誘導体又は構造類似体の製造には、当業界で知られ、本明細書に記載する方法を使用する。
【0087】
V.化合物1及び化合物2の化学修飾
化合物1又は化合物2は、標準の有機化学修飾によって改変することができる。官能性部分、反応性、及び共通のプロトコルを含む、化合物1及び化合物2の生成及び操作に必要な有機化学の一般原理は、たとえば、"Advanced Organic Chemistry", 3rd Edition by Jerry March (1985)に記載されており、この文献の全体を参照により本明細書に援用する。さらに、本明細書に記載の合成法では、はっきりと記載されているかどうかはいずれにせよ、様々な保護基を使用してよいことが当業者にはわかるであろう。「保護基」とは、本明細書では、多官能価化合物において、反応が別の反応性部位で選択的に起こり得るよう、酸素、硫黄、又は窒素を含む反応性基などの1個又は複数の官能性部分をブロックするために使用される部分を意味する。保護基の使用についての一般原理、特定の官能基へのその適用可能性、及びその使用法は、たとえば、T.H. Greene and P.G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, New York (1999)に記載されている。
【0088】
当業者ならば、化合物1又は化合物2の改変には数多くの化学合成法が使用できることは容易に理解されよう。以下のスキームは、式Iの化合物の製造に使用できる常法どおりの化学修飾の例である。本明細書に記載の構造をもたらす、当業者に知られているどんな化学合成法を使用してもよく、したがって、そのような合成法が本発明に含まれる。
【0089】
スキーム1:N−ヒドロキシルアミド還元
【0090】
【化11】

スキーム1では、水溶HCl中Znなどの試薬を使用するN−ヒドロキシルアミドの還元によってアミドを得る。スキーム1を使用して、化合物1から化合物7を、化合物2から化合物8を得る。
【0091】
スキーム2:エステル生成、加水分解、及び還元
【0092】
【化12】

[式中、R及びRは、以前に規定したとおりである。]
スキーム2では、トリエチルアミンなどの塩基の存在下でRC(O)X(Xは、Cl及びBrなどの適切な脱離基である)を付加するような標準の手順によってアルコールをエステル化して、エステルを得る。このエステルは、水酸化ナトリウム水溶液などの適切な条件下で加水分解してカルボン酸にすることができる。LiAlH(水酸化リチウムアルミニウム)などの還元剤を使用して、このエステルを第一級アルコールに還元してもよい。化合物1から、スキーム2を使用して化合物9、11、13、及び15を得る。化合物2から、スキーム2を使用して化合物10、12、14、及び16を得る。化合物7から、スキーム2を使用して化合物17、19、及び21を得る。化合物8から、同じくスキーム2を使用して化合物18、20、及び22を得る。
【0093】
スキーム3:アセタール生成及び加水分解
【0094】
【化13】

[R11及びR12は、以前に規定したとおりである。]
スキーム3では、pTSA(p−トルエンスルホン酸)などの酸触媒作用のもと、ジオールとケトン又はアルデヒドを、生成された水を除去(たとえば、分子ふるい又はDean Stark装置)しながら無水溶媒中で反応させて、アセタールを生成する。スキーム3では、水性の酸性条件下でアセタールを加水分解してジオールを得る。化合物1から、スキーム3を使用して化合物3及び5を得る。化合物2から、スキーム3を使用して化合物4及び6を得る。化合物7から、スキーム3を使用して化合物25を得る。化合物8から、同じくスキーム3を使用して化合物26を得る。
【0095】
スキーム4:アルコールの酸化
【0096】
【化14】

スキーム4では、二クロム酸カリウム(KCr)、Dess Martinペルヨージナン(1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール−3(1H)オン)、Swern酸化条件(ジメチルスルホキシド中塩化オキサリル)などの酸化剤によって第二級アルコールを酸化してケトンを得る。スキーム4を使用して、化合物1から化合物23を、化合物2から化合物24を得る。
【0097】
VI.腫瘍増殖を抑制する方法
別の実施形態では、本発明は、腫瘍増殖を抑制する方法に関する。本発明の化合物は、細胞障害活性を有する。化合物は、白血病細胞系、黒色種細胞系、乳癌細胞系、肺癌細胞系、腎癌細胞系、結腸癌細胞系、前立腺細胞系、膀胱細胞系、グリア芽細胞腫細胞系などの哺乳動物腫瘍細胞系に対して有効である。本発明の抗腫瘍方法は、腫瘍細胞の抑制をもたらす。「抑制」という用語は、抗腫瘍方法に関連して使用するとき、腫瘍細胞の抑止、死滅、静止、又は破壊を指す。抗腫瘍方法は、腫瘍細胞の浸潤活性及び関連のある転移の予防、低減、又は解消をもたらすことが好ましい。「有効量」という用語は、抗腫瘍細胞型の方法に関連して使用するとき、哺乳動物腫瘍細胞の抑制をもたらすのに十分な化合物の量を指す。
【0098】
本発明の抗腫瘍方法では、経口若しくは非経口的に投与する化合物の典型的な有効用量は、対象の体重1kgあたり約5〜約100mgとなり、1日用量は、対象の体重1kgあたり約15〜約300mgの範囲となるはずである。
【0099】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定するものとは解釈されない。別段の注釈がない限り、すべての試薬は、Sigma Chemical Co.(米国ミズーリ州セントルイス)(Aldrich社)から購入した。
【実施例1】
【0100】
化合物1及び化合物2の製造
[S03]022は、25μg/mlのストレプトマイシンを含有するトマトペーストオートミール寒天上で選択して得た、ストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940の自然突然変異体である。[S03]022を使用して、化合物1及び2を得た。菌株[S03]022は、寒天培地GYM(グルコース4g、酵母抽出物4g、麦芽抽出物10g、N−ZアミンA 1g、NaCl 2g、寒天20g、蒸留水で1リットルにし、滅菌前にpHを7.2に調製したもの)又はトマトペーストオートミール寒天(ATCC培地1360)で7〜10日間以内に増殖して、ベージュ色の栄養型菌糸体として現れ、その約3週間後に暗灰色の芽胞を生成する。
【0101】
数枚のトマトペーストオートミール寒天プレート上で、菌株[S03]022を28℃で約3週間増殖させた。芽胞を各プレートから5mlの無菌蒸留水中に集め、5000rpmでの遠心分離(10分間)によって沈め、上清をデカントし、10mlの無菌水中に分散させ、同じ条件下で再度遠心分離にかけた。芽胞を無菌25%グリセロール2mlに再懸濁し、−80℃で保存した。グリセロール保存のほか、芽胞を15%の無菌脱脂乳に再懸濁し、0.5mlの一定分量としてガラス製アンプルに分注し、標準の手順に従って凍結乾燥させ、真空中で密閉した。
【0102】
菌株[S03]022を保守し、トマトペーストオートミール寒天上に移した。凍結した菌糸体又は芽胞を含有するバイアルを冷凍庫から取り出し、ドライアイスによって凍結を保った。無菌条件下で、一白金耳量の凍結保存物を取り、トマトペーストオートミール寒天プレートの表面に画線し、28℃で栄養型の菌糸体が現れるまで最低でも7〜10日間インキュベートした。芽胞形成にはより長いインキュベートが必要である。
【0103】
菌株[S03]022、ストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940から得られた芽胞を個々の一定分量にして−80℃で保守した。無菌条件下で、一白金耳量の凍結培養物を取り、トマトペーストオートミール寒天プレート(ATCC培地1360)上に画線し、28℃で栄養型の菌糸体が現れるまで(約15〜約20日間)インキュベートした。トマトペーストオートミール寒天プレート上の表面増殖物2〜3白金耳量を、24gのポテトデキストリン、3gの牛肉抽出物、5gのバクトカジトン、5gのグルコース、5gの酵母抽出物、及び4gのCaCOを蒸留水で1リットルにしたものからなり、pHを約7.0に調整した25mlの無菌培地を含有する125ml容フラスコに移した。これを約250rpmに設定したロータリーシェーカーに載せて約28℃で約60時間インキュベートした。インキュベート期間の後、約10mlの一定分量を、pHを約7.0に調整した表1の無菌培地VB 500mLを含有する2L容バッフル付きフラスコに移した。これを、約250rpmに設定したロータリーシェーカーを用いて約28℃で約7日間インキュベートして、発酵ブロスを得る。
【0104】
化合物1及び化合物2は、表1の増殖培地DA、DZ、ET、JA、MY、NA、及びQBでも産生された。化合物1及び化合物2はさらに、ストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940から得られる芽胞を使用しても産生された。
【実施例2】
【0105】
単離
収集時に、実施例1の発酵ブロスを10分間遠心分離にかけ、固体(菌糸体)成分と液体(上清)成分をデカントによって分離した。上清液に、60mLのHP−20樹脂を加え、20分間攪拌した。スラリーを、ブフナー漏斗に載せた新鮮な樹脂床(60ml)で濾過した。これを100mLの水で洗浄し、溶出液を取っておき、抽出物5のラベルを貼った。次いで、カラムをメタノールと水の混合物(3:2、v/v)100mLで洗浄し、溶出液を取っておき、抽出物3のラベルを貼った。その次に、100%のメタノール100mL、アセトニトリル100mLで順次洗浄し、溶出液を合わせて取っておき、抽出物4のラベルを貼った。
【0106】
菌糸体に、100%のメタノール約100mLを加えた。混合物を約15分間攪拌し、約10分間の遠心分離にかけた。メタノール上清を除去し、取っておいた。ペレットに、約100mLのアセトンを加え、約15分間攪拌し、10分間の遠心分離にかけ、上清をメタノール上清に加え、抽出物1のラベルを貼った。ペレットに、約100mLのメタノールと水(1:4、v/v)を加え、約15分間攪拌し、約10分間の遠心分離にかけた。上清をデカントし、抽出物2のラベルを貼り、残っているペレットを廃棄した。
【実施例3】
【0107】
精製
各抽出物のサンプルをウェルプレートに移した。抽出物1、2、3、及び4については20μl、10μl、5μl、及び2μlの一定分量を、抽出物5については120μl、60μl、30μl、及び15μlの一定分量をウェルプレートに移した。ウェルプレート中の分を蒸発にかけ、かつ/又は−80℃で保管した。実施例2からの抽出物1を濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、更なる分別に備えて凍結乾燥した。最初の分別は、STRATA C18−E(50μm、70A)、10g、60ml管を使用する逆相シリカゲルクロマトグラフィーによって、水−メタノール(80:20)からメタノール(100%)への5段階の勾配溶離(各段階200mLずつ)を用いて実施した。5画分を収集し、真空中で濃縮乾燥し、HPLC分析を行った。活性画分(水−メタノール、20:80)のHPLC分析は、滞留時間が20.4分及び21.4分である2箇所の主ピーク、並びにいくつかの副次的なピークを示した。水−アセトニトリルの移動相、(60:40)から(0:100)への勾配溶離、流速=5.0mL/分による35分間の逆相半分取HPLCによって、この画分(水−アセトニトリル10:90に溶解させたもの)をさらに精製して、図1に示すように、滞留時間が20.4分の化合物1(6mg/Lの発酵ビール)及び滞留時間が21.4分の化合物2(8mg/Lの発酵ビール)を得た。どちらの化合物も、クリーム色の非結晶粉末として得られた。化合物1及び2の純度は、HPLC(水−アセトニトリル、40:60、30分間の線形勾配、流速=1.0ml/分を使用)によって確認した。
【実施例4】
【0108】
構造データ
化合物1及び2の構造は、質量分析、紫外分光法、IR分光分析、及びNMR分光法を含むスペクトルデータから導いた。質量は、エレクトロスプレー質量分析によって決定し、紫外スペクトルは、UVλmax276及び340nmを示した(図2)。プロトン(図3、4、及び5)、炭素−13、及び多次元のパルス配列gDQCOSY、gHSQC、gHMBC、及びTOCSYを含めて、アセトニトリル−d、メタノール−d4、又はDMSO−d6で収集されるNMRデータを500MHzで測定した。化合物1のIRスペクトルは、NaClプレート上のCHClスメアとして測定した(図6)。
【0109】
【化15】

【0110】
【表2】

線状ポリエン部分(C1〜10及びC1’〜16’)の割当ては、常法どおりのNMR分析によって容易に実現した。改変型のセリン−スレオニン構造の割当ては、次のようなgHMBC NMRによるプロトン−炭素長距離相関関係データによる裏付けを行った。
【0111】
【化16】

明瞭にする目的で、1種の回転異性体のみのNMRデータを表に含めた。
【実施例5】
【0112】
癌細胞系に対するin vitro細胞障害効力
以下に挙げる細胞系を使用して、式Iを代表する化合物の細胞障害性を特徴付けた。マイコプラズマに感染していないことが示された細胞系を、37℃の5%CO2中で、適切な培地で保守し、10%の熱失活処理ウシ胎児血清及び1%のペニシリン−ストレプトマイシンを補充した。毎週2〜3回細胞を継代した。トリパンブルー染色によって細胞生存度を調べ、細胞生存度が>95%であったフラスコのみを細胞障害性の決定に使用した。
【0113】
指数関数的に増殖する細胞(100μlあたり1〜3×10細胞)を96ウェルプレートに播き、16時間インキュベートした。次いで、血清を補充した培地中の様々な濃度の式Iの化合物に連続的に細胞を曝した。培養培地を、10mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液(pH7.4)を含有する150μlの新鮮な培地に取り替えることによって、96時間後に細胞生存度を評価した。次に、2.5mg/mlのリン酸緩衝液(pH7.4)中臭化3−(4,5−ジメチルチアゾ−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT;Sigma社製、米ミズーリ州セントルイス)50μlを加えた。37℃で3〜4時間インキュベートした後、培地及びMTTを除去し、200μlのジメチルスルホキシドを加えて還元型MTTの沈殿を溶解させた後、25μlのグリシン緩衝液(0.1Mのグリシンに0.1MのNaClを加えたもの、pH10.5)を加えた。マイクロプレートリーダー(BIORAD社製)によって570nmで吸光度を測定した。細胞生存度を、賦形剤のみで処理した細胞に対する%として評価した。化合物1及び化合物2の細胞障害性の結果を表3に示す。
【0114】
【表3】

【実施例6】
【0115】
化合物1の加水分解による化合物5の合成
【0116】
【化17】

化合物1をTHFと1M HClの1:1混合物に溶かした溶液を終夜加熱還流する。得られる混合物を酢酸エチルでの抽出にかける。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、メタノールと塩化メチレンの混合物を溶離液として使用するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけた後、化合物1を得る。
【実施例7】
【0117】
化合物5のアセタール化による化合物3の合成
【0118】
【化18】

化合物5及び2−ブタノンのベンゼン溶液に、0.1当量のp−トルエンスルホン酸を加える。Dean Stark装置を使用して反応混合物を終夜加熱還流し、水を除去する。真空中で溶媒を除去し、残渣を、メタノールと塩化メチレンの混合物を溶離液として使用するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物3を得る。
【実施例8】
【0119】
化合物1のエステル化からの化合物9の合成
【0120】
【化19】

化合物1及びトリエチルアミンのテトラヒドロフラン(THF)溶液に、塩化プロピオニルを加え、反応液を終夜攪拌する。トリエチルアミン塩酸塩をCelite(登録商標)545パッドで濾過する。濾液をエーテルで希釈し、水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残渣を、メタノールと塩化メチレンの混合物を溶離液とするシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物9を得る。
【実施例9】
【0121】
化合物1の加水分解からの化合物13の合成
【0122】
【化20】

化合物1を、最小限の量のメタノールを使用して2Mの水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、終夜攪拌する。反応混合物を、1Mの硫酸を使用して酸性にし、酢酸エチルでの抽出にかける。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残渣を、メタノールと塩化メチレンの混合物を溶離液とするシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物13を得る。
【実施例10】
【0123】
化合物7の還元からの化合物17の合成
【0124】
【化21】

化合物1の0℃の無水テトラヒドロフラン溶液に、水素化リチウムアルミニウムをゆっくりと加え、室温で終夜又は完了するまで攪拌する。飽和塩化アンモニウムを使用して0℃で反応を失活させ、室温で1時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチル及び水で希釈し、層を分離する。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残渣を、メタノールと塩化メチレンの混合物を溶離液とするシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物17を得る。
【実施例11】
【0125】
化合物1の酸化からの化合物23の合成
【0126】
【化22】

Dess-Martinペルヨージナンの塩化メチレン溶液に、化合物1の塩化メチレン溶液を加え、反応液を室温で1時間攪拌する。混合物をジエチルエーテル、及びチオ硫酸ナトリウムを含有する炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で希釈する。有機層を分離し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液、水、及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残渣を、メタノールと塩化メチレンの混合物を溶離液とするシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物23を得る。
【0127】
本明細書で引用したすべての特許、特許出願、及び発行されている参照文献の全体を参照により本明細書に援用する。本発明を特にその好ましい実施形態に即して示し、述べてきたが、当業者ならば、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、そこに形態及び細部の様々な変更を行なってもよいことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1a】化合物1及び2の単離のHPLCクロマトグラム線を示すグラフである。図1aは粗製混合物のHPLCクロマトグラム線である。
【図1b】化合物1及び2の単離のHPLCクロマトグラム線を示すグラフである。図1bは純粋な化合物1のHPLCクロマトグラム線である。
【図1c】化合物1及び2の単離のHPLCクロマトグラム線を示すグラフである。図1cは純粋な化合物2のHPLCクロマトグラム線である。
【図2a】紫外スペクトルを示すグラフである。図2aは化合物1の紫外スペクトルである。
【図2b】紫外スペクトルを示すグラフである。図2bは化合物2の紫外スペクトルである。
【図3】化合物1のCDOD溶媒でのH NMRスペクトルを示すグラフである。
【図4】化合物2のCDCN溶媒でのH NMRスペクトル示すグラフである。
【図5】化合物2の(CDSO溶媒でのH NMRスペクトルを示すグラフである。
【図6】化合物2の赤外スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化1】

[式中、Rは、H及びメチルから選択される。]
【請求項2】
次式の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化2】

【請求項3】
次式の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化3】

【請求項4】
次式の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【化4】

[式中、Rは、H及びメチルから選択される。]
【請求項5】
次式の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【化5】

【請求項6】
次式の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【化6】

【請求項7】
次式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化7】

[式中、
は、H、C1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール若しくはヘテロアリール、−C(O)C1〜6アルキル、−C(O)C2〜7アルケニル、又は−C(O)C6〜10アリールから選択され、
は水素であり、或いは
及びRが一緒になって、結合している酸素原子と炭素原子の間に第二の結合を作ってカルボニルを形成していてもよく、
は、H又はCHから選択され、
は、−COOH、−COOR、−CHOC(O)R、及び−CHORから選択され、
及びRは、C1〜6アルキル、C6〜10アリール又はアリールアルキルから選択され、
は、H又はC1〜6アルキルから選択され、
は、H、OH、−OC(O)C1〜6アルキル、−OC(O)C6〜10アリール、又は−OC(O)C6〜16アリールアルキルから選択され、
及びR10は、H及びC1〜6アルキルからそれぞれ独立に選択され、或いは
及びR10は、結合している酸素原子及び炭素原子と一緒になって、次式の1,3−ジオキソラン環を形成していてもよく、
【化8】

11及びR12は、H、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、又はC6〜16アリールアルキルからそれぞれ独立に選択される。
【請求項8】
が水素である、請求項7に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項9】
が、C1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール又はヘテロアリールからなる群から選択される、請求項7若しくは8に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項10】
が、C1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール又はヘテロアリールからなる群から選択される、請求項7、8、若しくは9に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項11】
が、−C(O)C1〜6アルキル、−C(O)C2〜7アルケニル、又は−C(O)C6〜10アリールからなる群から選択される、請求項7から10のいずれか一項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項12】
次式からなる群から選択される化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化9】








【請求項13】
請求項12に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【請求項14】
請求項7から10のいずれか一項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【請求項15】
(a)好気性条件下、少なくとも1種の炭素原子供給源及び少なくとも1種の窒素原子供給源を含む栄養培地でストレプトミセススパルソゲネス株を培養するステップと、
(b)ステップa)で培養した菌株からポリエンオキサゾールを単離するステップと
を含む方法によって得られるポリエンオキサゾール。
【請求項16】
培養する菌株がストレプトミセススパルソゲネスNRRL2940又はその突然変異体である、請求項15に記載のポリエンオキサゾール。
【請求項17】
菌株の寄託アクセッション番号がIDAC270504−04の[S03]022である、請求項16に記載のポリエンオキサゾール。
【請求項18】
本質的に図3に示すようなプロトンNMRスペクトルを生じる、請求項15から17のいずれか一項に記載のポリエンオキサゾール。
【請求項19】
本質的に図4又は図5に示すようなプロトンNMRスペクトルを生じる、請求項15から17のいずれか一項に記載のポリエンオキサゾール。
【請求項20】
少なくとも1種の炭素原子供給源及び少なくとも1種の窒素原子供給源を含む栄養培地でのストレプトミセススパルソゲネス株の培養と、化合物の単離及び精製の各ステップを含む、請求項1に記載のポリエンオキサゾールの製造方法。
【請求項21】
ストレプトミセススパルソゲネス株がNRRL2940又はその突然変異体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
突然変異体が菌株[S03]022(寄託アクセッション番号IDAC270504−04)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
好気性条件下で培養を行う、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
炭素原子供給源及び窒素原子供給源が表1に示す成分から選択される、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
培養を18℃〜40℃の範囲の温度で実施する、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
培養を6〜9の範囲のpHで実施する、請求項20から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
IDACアクセッション番号270504−04のストレプトミセススパルソゲネス。
【請求項28】
癌細胞の増殖を抑制する方法であって、前記癌細胞を請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物と、前記癌細胞の増殖が抑制されるように接触させるステップを含む方法。
【請求項29】
癌細胞の増殖を抑制する方法であって、前記癌細胞を請求項7から12のいずれか一項に記載の化合物と、前記癌細胞の増殖が抑制されるように接触させるステップを含む方法。
【請求項30】
哺乳動物において癌細胞の増殖を抑制する方法であって、癌細胞を含む哺乳動物に請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物を、前記哺乳動物において前記癌細胞の増殖が抑制されるように投与するステップを含む方法。
【請求項31】
哺乳動物において癌細胞の増殖を抑制する方法であって、癌細胞を含む哺乳動物に請求項7から12のいずれか一項に記載の化合物を、前記哺乳動物において前記癌細胞の増殖が抑制されるように投与するステップを含む方法。
【請求項32】
癌細胞の増殖を抑制する方法であって、前記癌細胞を請求項4から6のいずれか一項に記載の薬剤組成物と、前記癌細胞の増殖が抑制されるように接触させるステップを含む方法。
【請求項33】
癌細胞の増殖を抑制する方法であって、前記癌細胞を請求項13又は14に記載の薬剤組成物と、前記癌細胞の増殖が抑制されるように接触させるステップを含む方法。
【請求項34】
哺乳動物において癌細胞の増殖を抑制する方法であって、癌細胞を含む哺乳動物に請求項4から6のいずれか一項に記載の薬剤組成物を、前記哺乳動物において前記癌細胞の増殖が抑制されるように投与するステップを含む方法。
【請求項35】
哺乳動物において癌細胞の増殖を抑制する方法であって、癌細胞を含む哺乳動物に請求項13又は14に記載の薬剤組成物を、前記哺乳動物において前記癌細胞の増殖が抑制されるように投与するステップを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式Iの化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化1】

[式中、
は、H、C1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール若しくはヘテロアリール、−C(O)C1〜6アルキル、−C(O)C2〜7アルケニル、又は−C(O)C6〜10アリールから選択され、
は水素であり、或いは
及びRが一緒になって、結合している酸素原子と炭素原子の間に第二の結合を作ってカルボニルを形成していてもよく、
は、H又はCHから選択され、
は、−COOH、−COOR、−CHOC(O)R、及び−CHORから選択され、
及びRは、C1〜6アルキル、C6〜10アリール又はアリールアルキルから選択され、
は、H又はC1〜6アルキルから選択され、
は、H、OH、−OC(O)C1〜6アルキル、−OC(O)C6〜10アリール、又は−OC(O)C6〜16アリールアルキルから選択され、
及びR10は、H及びC1〜6アルキルからそれぞれ独立に選択され、或いは
及びR10は、結合している酸素原子及び炭素原子と一緒になって、次式の1,3−ジオキソラン環を形成していてもよく、
【化2】

11及びR12は、H、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、又はC6〜16アリールアルキルからそれぞれ独立に選択される。
【請求項2】
が水素である、請求項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項3】
が、C1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール又はヘテロアリールからなる群から選択される、請求項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項4】
が、C1〜6アルキル、C2〜7アルケニル、C6〜10アリール又はヘテロアリールからなる群から選択される、請求項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項5】
が、−C(O)C1〜6アルキル、−C(O)C2〜7アルケニル、又は−C(O)C6〜10アリールからなる群から選択される、請求項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項6】
次式からなる群から選択される請求項1に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化3】








【請求項7】
次式の化合物である請求項1に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化4】

[式中、Rは、H及びメチルから選択される。]
【請求項8】
次式の化合物である請求項7に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化5】

【請求項9】
次式の化合物である請求項7に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩。
【化6】

【請求項10】
請求項7に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【請求項11】
請求項8に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【請求項13】
請求項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【請求項14】
請求項からのいずれか一項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物。
【請求項15】
(a)好気性条件下、少なくとも1種の炭素原子供給源及び少なくとも1種の窒素原子供給源を含む栄養培地でストレプトミセススパルソゲネス株を培養するステップと、
(b)ステップa)で培養した菌株からポリエンオキサゾールを単離するステップと
を含む方法によって得られる、本質的に図3に示すようなプロトンNMRスペクトルを生じるポリエンオキサゾール。
【請求項16】
(a)好気性条件下、少なくとも1種の炭素原子供給源及び少なくとも1種の窒素原子供給源を含む栄養培地でストレプトミセススパルソゲネス株を培養するステップと、
b)ステップa)で培養した菌株からポリエンオキサゾールを単離するステップと
を含む方法によって得られる、本質的に図4又は図5に示すようなプロトンNMRスペクトルを生じるポリエンオキサゾール。
【請求項17】
少なくとも1種の炭素原子供給源及び少なくとも1種の窒素原子供給源を含む栄養培地でのストレプトミセススパルソゲネス株の培養と、化合物の単離及び精製の各ステップを含む、請求項に記載のポリエンオキサゾールの製造方法。
【請求項18】
ストレプトミセススパルソゲネス株がNRRL2940又はその突然変異体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
突然変異体が菌株[S03]022(寄託アクセッション番号IDAC270504−04)である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
好気性条件下で培養を行う、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
炭素原子供給源及び窒素原子供給源が表1に示す成分から選択される、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
培養を18℃〜40℃の範囲の温度で実施する、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
培養を6〜9の範囲のpHで実施する、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
IDACアクセッション番号270504−04のストレプトミセススパルソゲネス。
【請求項25】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物の抗腫瘍剤としての使用。
【請求項26】
請求項7から9のいずれか一項に記載の化合物の抗腫瘍剤としての使用。
【請求項27】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物の、哺乳動物における腫瘍細胞の増殖を抑制する医薬の製剤に向けた使用。
【請求項28】
請求項7から9のいずれか一項に記載の化合物の、哺乳動物における腫瘍細胞の増殖を抑制する医薬の製剤に向けた使用。
【請求項29】
請求項10から12のいずれか一項に記載の薬剤組成物の抗腫瘍剤としての使用。
【請求項30】
請求項13又は14に記載の薬剤組成物の抗腫瘍剤としての使用。
【請求項31】
請求項10から12のいずれか一項に記載の薬剤組成物の、哺乳動物における腫瘍細胞の増殖を抑制する医薬の製剤に向けた使用。
【請求項32】
請求項13又は14に記載の薬剤組成物の、哺乳動物における腫瘍細胞の増殖を抑制する医薬の製剤に向けた使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−527208(P2006−527208A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515591(P2006−515591)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000872
【国際公開番号】WO2004/110439
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503355580)エコピア バイオサイエンシーズ インク (5)
【Fターム(参考)】